説明

熱交換システム

【課題】気体ブライン、高圧流体、または超臨界流体の適用を可能とする熱交換システムを提供する。
【解決手段】熱を吸収する高温側熱交換器4と、熱を放出する低温側熱交換器3とを、管路5を介して閉ループ環境で連結し、当該閉ループ環境内に炭酸ガス、メタン、エタンまたは空気等の高圧気体ブラインからなる媒体を、相変化を起こさない状態で循環可能に封入し、両熱交換器の内のいずれか一方を利用側の熱交換器、他方を熱源側の熱交換器として配置し、少なくとも熱源側の熱交換器を、管路に連なる多数の細孔流路22を備えた熱交換器で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体ブラインを用いて基本的に相変化させずに熱交換を行う熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫、エアコン、冷凍機、或いはヒートポンプには、液体が気体に相変化する際に大きな蒸発熱が生じる冷媒又は熱媒が使用されている。この冷媒としては、例えば、アンモニア、メチルクラロイド、フレオンF−11、フレオンF−22が用いられており、これらの気体の他に、炭酸ガス(CO2)も使用されている。
【0003】
また、原子力発電所等の高温熱交換器においては、融点が低く、沸点の高い、ナトリウム(融点=97.8(℃)、沸点=760(℃))、ナトリウムーカリウム合金(融点=19(℃)、沸点=825(℃))等の溶融金属が使用されている。
【0004】
一方、熱を伝える媒体として、冷媒又は熱媒の他に、ブライン(気体と液体とで相状態が変換しない媒体)が使用されている。このブラインの種類は、液体ブラインと気体ブラインとに分けることができる。
【0005】
液体ブラインとしては、例えば、水、無機質ブライン(塩化カルシウム溶液、塩化マグネシウム溶液)、有機質ブライン(エチレングリコール、プロピレングリコール)等の液体が使用されている。この液体ブラインとしての水は、例えば、自動車用エンジンの冷却に使用されており、自動車用エンジンの適切な温度管理を可能にしている。他方、自動二輪車用のエンジンは、空気冷却による開放型の熱交換システムであるが、水も液体ブラインとして使用されている。
【0006】
気体ブラインは、熱安定性(熱により分解しない性格)、安全性(毒性がないこと)、粘性係数(循環時の圧力損失(エネルギー損失))に優れている。この気体ブラインとしては、例えば、水蒸気(定圧比熱=2.05(J/g/℃)at 100(℃))がある。この水蒸気は、非常に安定したブラインであり、高温用ブラインとしても活用される、優れた媒体である。この気体ブラインとしての水蒸気は、例えば、ボイラーやスチーム・ヒーター等に使用されている。
【0007】
しかしながら、上述の気体ブラインにおいて、水蒸気を利用したボイラーやスチーム・ヒーターは、システム全体として考えれば、水蒸気と水との相変化を上手く活用したものであり、作動原理として見ると、単純に気体ブラインを利用したシステムではない。また、水蒸気と同様に、輻射熱の吸収・放射効果を有する炭酸ガスをブラインとして活用している例は見当たらない。
【0008】
また、複数本の蓮根状の細孔流路によって熱交換器を構成する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。この技術では、直径約20μmの細孔状の細孔流路を複数設けることにより、ブラインが送流される細孔流路の流路断面積(熱交換面積A)の総面積を増加させることができる。
【特許文献1】特許第3040371号公報
【特許文献2】特願2000−26223号公報
【特許文献3】特願2001−247144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の通り、現状では、液体ブラインは使用されているが、気体ブラインは使用されていない。従来において、例えば、自動車用エンジンや原子力発電所等に活用するもので、当該システムにおける適切な伝熱媒体としては、比熱が大きく、熱度伝導率が大きく、比重量が大きく、粘性係数が小さく、低い充填圧力で液体となる、安定した安全な媒体が望まれる。しかし、基本的には、このような特性を満たす最適なブラインとしての気体は存在せず、水と比べて、比重量、熱伝導率とも著しく劣っており、優れている点は、気体特有の粘性係数が小さい点のみと言っても過言ではない。
【0010】
すなわち、気体ブラインが使用されていない原因としては、以下の(1)、(2)の2つの理由が挙げられる。
(1)「比重量Cp×比熱γの積」が液体に比して、約1/200〜1/300倍小さいこと、すなわち、「熱容量」が小さいことが挙げられる。
【0011】
これは、「熱交換量dQ(kJ/s)」は、媒体の比熱を「Cp(kJ/kg/k)」、比重量を「γ(kg/m3)」、容積流量を「dV(m3/s)」、温度差を「ΔT(k)」とすると、熱交換量は次式で与えられる。
【0012】
dQ=(Cp×γ)×dV×ΔT ・・・ (A)
上記の式のごとく、同じ「dQ」を、同じ「ΔT」で得るためには、(Cp×γ)が小さい分、流量dVをその割合分増加させなければならないが、この流量dVを200倍〜300倍以上増加させること(液体ブラインが水の場合と比べると、水と同じ性能を得るためには、約4000倍の流量dVが必要)は現実的に不可能である。
(2)気体の「熱伝導率」が液体に比して小さいことが挙げられる。
【0013】
熱交換dQを考える場合、熱通過率をH、熱交換面積(管路内でブラインが接する面積)をA、温度差をΔTとすると、熱通過率との関係は、次式で与えられる。
【0014】
dQ=H×A×ΔT ・・・ (B)
(ただし、H=1/(1/α+L/λ)、α=熱伝達率、L=厚さ、λ=熱伝導率)
上記の式のごとく、実際の熱通過率は、「熱伝導率、熱伝達率」より構成されるが、ここでは、単純化して、「H∝λ」と考えると、ΔTが同じ条件で、「水」に対する「炭酸ガス」の熱交換量dQを等しくするには、「A」水/「A」炭酸ガス=2.2/600=1/273となる。これより明らかなごとく、そのまま炭酸ガスを用いた場合は、水の場合の273倍の熱交換面積が必要となる。この数値も、現在の熱交換器の構造からは困難である。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、システム全体を大きくすることなく気体ブライン、高圧流体、または超臨界流体の適用を可能とし、これらの気体ブライン等を送流させるための動力を低減させることができる熱交換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、熱を吸収する高温側熱交換器と、熱を放出する低温側熱交換器とを、管路を介して閉ループ環境で連結し、当該閉ループ環境内に炭酸ガス、メタン、エタンまたは空気等の高圧気体ブラインからなる媒体を、相変化を起こさない状態で循環可能に封入し、両熱交換器の内のいずれか一方を利用側の熱交換器、他方を熱源側の熱交換器として配置し、少なくとも前記熱源側の熱交換器を、前記管路に連なる多数の細孔流路を備えた熱交換器で構成したことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、高圧気体ブラインを用いたとしても、システム全体を大きくすることなく熱交換を行うことができる。
【0018】
また、本発明では、熱を吸収する高温側熱交換器と、熱を放出する低温側熱交換器とを、管路を介して閉ループ環境で連結し、当該閉ループ環境内にエタン、プロパン、エチレン、炭酸ガス等の高圧液体からなる媒体を、相変化を起こさない状態で循環可能に封入し、両熱交換器の内のいずれか一方を利用側の熱交換器、他方を熱源側の熱交換器として配置し、少なくとも前記熱源側の熱交換器を、前記管路に連なる多数の細孔流路を備えた熱交換器で構成したことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、高圧流体を用いたとしても、システム全体を大きくすることなく熱交換を行うことができる。
【0020】
さらに、本発明では、熱を吸収する高温側熱交換器と、熱を放出する低温側熱交換器とを、管路を介して閉ループ環境で連結し、当該閉ループ環境内にエタン、プロパン、エチレン、炭酸ガス、水等の超臨界流体からなる媒体を、相変化を起こさない状態で循環可能に封入し、両熱交換器の内のいずれか一方を利用側の熱交換器、他方を熱源側の熱交換器として配置し、少なくとも前記熱源側の熱交換器を、前記管路に連なる多数の細孔流路を備えた熱交換器で構成したことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、超臨界流体を用いたとしても、システム全体を大きくすることなく熱交換を行うことができる。
【0022】
この場合において、前記細孔流路の熱交換面積が当該細孔流路を設けない場合の流路の熱交換面積と比べて大きくなるように前記細孔流路の孔径が形成されている。
【0023】
この構成によれば、前記細孔流路の孔径を、現在、自動車用ラジエーターで使用されている最少径であるφ6より、更に小さな、例えば、φ2〜20μm以下にすることで、熱交換面積を大きくすることができる。
【0024】
また、利用側の熱交換器と熱源側の熱交換器を垂直配置し、両熱交換器を連結する管路を中心軸管とその周囲を取り囲む外装管の二重管で構成することができる。
【0025】
この構成によれば、気体ブライン等に上昇流及び下降流を生じさせることにより、強制的に送流させる機器を不要とすることができる。
【0026】
さらに、前記管路に永久磁石等で構成されたピストンまたはインペラを内在すると共に、当該管路の外部に、循環のためのピストンまたはインペラを駆動する電磁石を配置し、ピストンまたはインペラの駆動により前記媒体を循環させることができる。
【0027】
この構成によれば、変性しない単純組成の気体ブラインを用いた完全密封構造の熱交換器を構成することができる。
【0028】
さらに、前記管路に当該管路内の圧力が異常高圧に至った場合に開放される開放弁を連結し、開放弁に前記媒体を膨張させるボックスを連結することができる。
【0029】
この構成によれば、管路内の異常高圧を防止する安全システムを設けることができる。
【0030】
また、前記低温側熱交換器がエンジン冷却用ジャケットであってもよい。
【0031】
この構成によれば、本システムをエンジン冷却に利用することができる。
【0032】
また、前記低温側熱交換器がコンピューター熱発生部に配置されていてもよい。
【0033】
この構成によれば、本システムをコンピューター熱発生部の冷却に利用することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、気体ブラインを使用しているので、細孔流路を用いたとしても、気体ブラインの粘性係数による圧損が小さく、気体ブラインの変性によるデポジットの形成や目詰まりのおそれがない。そのため、細孔流路を用いて熱交換面積を大きく確保することができる。その結果、熱交換面積を大きくするためにシステム全体を大きくする必要がない。また、粘性係数の小さな気体ブラインを用いて熱交換を行うことにより、気体ブラインを送流させるための動力を小さくすることができる。また、炭酸ガスを始めとするメタンやエタン等の気体を有効に利用することができる。
【0035】
また、本発明によれば、高圧液体又は超臨界流体を使用しているので、細孔流路を用いたとしても、気体ブラインの粘性係数による圧損が小さく、気体ブラインの変性によるデポジットの形成や目詰まりのおそれがない。そのため、細孔流路を用いて熱交換面積を大きく確保することができる。その結果、熱交換面積を大きくするためにシステム全体を大きくする必要がない。また、粘性係数の小さな気体ブラインを用いて熱交換を行うことにより、気体ブラインを送流させるための動力を小さくすることができる。また、炭酸ガスを始めとするメタンやエタン等の気体を有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は、本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、ブロアーを用いて気体ブラインを送流させる「密閉サイクル」の概要図である。この図1を用いて、「気体ブライン」の適用を可能とさせる技術について説明する。
【0037】
この熱交換システム1は、図1に示すように、気体ブラインを送流させるブロアー2と、低温領域(外気領域)に接続されて放熱する低温側熱交換器3と、高温領域に接続されて吸熱する高温側熱交換器4とを備えている。この低温側熱交換器3の内部及び高温側熱交換器4の内部には、熱交換ユニット6をそれぞれ備えている。また、ブロアー2、低温側熱交換器3の熱交換ユニット6、高温側熱交換器4の熱交換ユニット6とは、それぞれ流路(管路)5で連結され、閉ループ環境における循環路が形成されている。この流路5内には気体ブラインが充填されており、ブロアー2によって送流された気体ブラインは、循環路内を循環するようになっている。
【0038】
このブロアー2は、図1において、時計回りに送流させることにより、高温側10から熱を奪い、低温側11で熱を放出することができるようにしている。また、反時計回りに送流させることにより、低温側11から熱を吸収し、高温側で熱を放出することができるようにしている。
【0039】
図2(A)は、低温側熱交換器3及び高温側熱交換器4に使用される熱交換ユニット6を示す側部断面図であり、図2(B)は図2(A)の断面図である。
【0040】
熱交換ユニット6には、図2(A)及び図2(B)に示すように、気体ブラインが通過する複数のステンレス製パイプ21(図2(B)において19本のパイプ21が記載されているが、例えば、10,000本やそれ以上にすることもできる)を備えている。このステンレス(その他、金属製も含む)製パイプ21は貫通孔(細孔流路)22を備えている。この細孔流路22は、例えば、現状の技術であれば直径約0.02mm(約20μm)である。また、将来的には直径約0.001mm(約1μm)以下程度であれば、実現可能であり、約100MPaを超える耐圧性能を確保することができる。これらの細孔流路22は、流路5とそれぞれ接続されている。なお、細孔流路22の長手方向に対し直交する断面における形状は、丸形以外の形状であっても、例えば、製作が可能であれば四角形や他の形状であってもよい。
【0041】
これらのステンレス(その他、金属製も含む)製パイプ21は、大きなステンレス製の外管23内に収納され、この外管23の内側であって複数本のステンレス製パイプ21の外側面との隙間には、金属製隙間充填材料24が充填されている。この金属製隙間充填材料24は、ステンレス製の外管23よりも融点の低い例えばアルミニウム、錫、鉛、真鍮、銀、金、銅等の粉末状のものであり、この金属製隙間充填材料24が溶融する温度下で溶融させてポーラス状に充填されている。
【0042】
この熱交換ユニット6では、すべての貫通孔22に気体ブラインを送流すると、気体ブラインの熱は、優れた熱伝導率で上記ポーラス状の金属製隙間充填材料24に伝熱されるようになる。また、この金属製隙間充填材料24の充填部は、多孔性を有するポーラス状であるため大きな熱交換面積を有しており、この金属製隙間充填材料24の充填部に、例えば、空気や水素等の流体を流せば、空気や水素等の流体を極めて高い熱交換効率で加熱或いは冷却することができる。
【0043】
なお、上述した熱交換ユニット6の構成は1つの例であり、細孔流路22を備えた他の熱交換ユニットの構造も、本実施の形態の技術的思想に含まれるものである。例えば、図3に示すように、熱交換器ユニット25には、管体29の内側に金属製の縄状熱交換エレメント26を配置して構成されている。この熱交換エレメント26は複数の流路を備え、この流路内に媒体を通して熱交換が行われる。この縄状熱交換エレメント26は、図4に示すように、媒体が通る流路を備えたステンレス(その他、金属製も含む)製の複数本(例えば6本)の細管27を撚って複数(例えば3つ)の基本素材28を形成し、各基本素材28をさらに撚って形成される。この製造方法によれば、多数の細孔流路22を備えた縄状熱交換エレメント26を簡単に製造することができる。また、その他の構成であっても、熱交換面積を増加させるものであれば、本実施の技術的思想に含まれる。
【0044】
送流される気体ブラインには、「熱変性しない安定な気体ブライン」を使用する。この気体ブラインは、液体ブラインと比べて粘性係数が低いという利点を有することから、液体ブラインを使用する際に問題となる粘性係数による圧損や、熱媒体の変性によるデポジットの形成や目詰まりという大きな問題を解決することができる。しかも、この熱変性しない安定性を生かして、−200℃〜1500℃に至る広範囲の熱交換システムを可能にしている。
【0045】
この気体ブラインとしては、例えば、炭酸ガス(CO2)、メタン、エタン、または空気等が使用されている。例えば、この炭酸ガスは、高温(炭酸ガスの融点であって、例えば1500℃)であって高圧(例えば、100MPa以上)に処理された超臨界流体である。また、この炭酸ガスは、メタン、エタン、空気等を超臨界流体に至る温度環境で代替使用することもできる。
【0046】
また、気体ブラインの他、エタン、プロパン、エチレン、炭酸ガス等の高圧液体からなる媒体や、エタン、プロパン、エチレン、炭酸ガス、水等の超臨界流体からなる媒体を送流させることもできる。
【0047】
このような構成に基づく熱交換システム1によれば、例えば、細孔流路22がN=10,000本形成されている場合、熱交換面積A(流路面積A)は、単管の√N倍=100倍となるため、同じ条件ならば、dQも100倍となる。ゆえに、100MPaに至る高耐圧性能において、熱伝達の基本式
dQ=C×A×ΔT
(dQ=単位時間当たりに伝えられる熱量、C=熱伝達係数、A=熱交換面積、ΔT=熱交換温度差)
において、気体ブラインを、高圧化「気体」/高圧化「液体」/高圧化「超臨界流体」の形態で、充填循環させて、「冷媒」領域(−200℃以上)から「熱媒」領域(1500℃以下)の広い範囲で適用することを可能にしている。
【0048】
この流路断面積Aを試算すると、例えば、自動車用ラジエーターの代表例としての「直径8mmの放熱管×20本×L300mm」の流路断面積A0と等価な、一例として、「20μmの細孔流路×L300mm」のマルチチューブ構造の熱交換エレメント(MT)の流路断面積A1の比α1は、
α1=A1/A0
=MT型の流路本数×MT型の熱交換面積/市販ラジエーターの熱交換面積
=(82×20/0.022)×(0.02π×300)/(8π×20×300)
=400倍
となる。すなわち、400倍もの大きな熱交換が可能となる。
【0049】
また、細孔流路22を直径1μmで構成したマルチチューブ構造の熱交換エレメント(MT)の流路断面積A2の比α2は、
α2=A2/A0
=MT型の流路本数×MT型の熱交換面積/市販ラジエーターの熱交換面積
=(82×20/0.0012)×(0.001π×300)/(8π×20×300)
=8000倍
となり、すなわち、8000倍もの大きな熱交換が可能となる。
【0050】
他方、粘性係数について説明すると、超臨界流体の粘性は、層流状態では「粘性係数に比例」し、乱流状態では「粘性係数の二乗に比例」する特性を有する。しかし、気体の粘性係数は水等の液体に比べて極めて小さく、特に「超臨界流体」の場合、液体の特性を有しながら気体の物性値を有し、粘性係数が小さい。すなわち、高圧気体ブラインの使用は、ブロアー2(循環ポンプ)の仕事の低減も図ることが可能である。
【0051】
例えば、0℃の状態で比較すると、
「水」の粘性係数=1.829×10-4(kg・s/m2
(動粘性係数=64.4×10-4(m2/hour))に対して、
「炭酸ガス」の粘性係数=1.58×10-5(kg・s/m2
(動粘性係数=4.83×10-4(m2/hour))
であり、
炭酸ガスの粘性係数/「水」の粘性係数≫≒(1/11.6)
(動粘性係数;(1/13.3))
と、炭酸ガスの粘度は大幅に小さいため、同じ熱容量の確保のために、2倍程度に循環流量を増加させても、流路圧損は、寧ろ、1/2〜1/5程度小さいと予測される。すなわち、同じ熱交換性能を維持しても、循環ポンプ(ボイラー)の駆動エネルギーを1/2〜1/5程低減させることが可能である。
【0052】
また、上述の気体ブラインを使用するとともに、気体ブラインの熱伝導率に対する水の熱伝導率の割合以上に熱交換器面積Aを増加させることにより、(Cp×γ)の値を大きくすることができる。
【0053】
一例として、原子力発電所等で使用されている金属ナトリウム(200℃)の場合には、比熱と比重量の積(Cp×γ)Naは、
(Cp×γ)Na=1.325(kJ/kg・k)×903(kg/m3
≒1197(kJ/kg・k)・(kg/m3
である。
【0054】
また、これと同等の熱容量で、単純に高圧化を図った気体ブラインであって炭酸ガス(CO2)の場合には、比熱と比重量の積(Cp×γ)CO2は、
(Cp×γ)CO2=1.977(kJ/kg・k)×0.82(kg/m3
≒1.62(kJ/kg・k)・(kg/m3
である。
【0055】
これらの比αは、
α=(Cp×γ)Na/(Cp×γ)CO2
=1197/1.62
≒738倍
となる。すなわち、大気圧基準で考えれば、
α=738×0.1013≒74.8(MPa abs)で等価になる。
すなわち、100MPa以上の耐圧の熱交換器を用意しておけば、原理的には、水と同じ熱容量での熱交換が可能となる。
【0056】
一方、気体は、高圧化により液化を生じ、更に臨界点を超えると、超臨界流体となる。液化炭酸ガスの場合、「γ」≒933kg/m3、比熱「Cp」≒1.97kJ/kg・kであるので、
(Cp×γ)CO2液体=1.97(kJ/kg・k)×933(kg/m3
≒1838(kJ/kg・k)×(kg/m3
となる。
【0057】
また、水の場合は、
(Cp×γ)水=4.18(kJ/kg・k)×998(kg/m3
=4172(kJ/kg・k)×(kg/m3
である。
【0058】
これらから、「冷却水」を用いたシステムでは、「液体炭酸ガス」を用いたシステムと比べて、
「4172/1838」≒2.3倍
の循環流量が必要となる。
【0059】
一方、0(℃)状態で比較すると、
「水」の粘性係数=1.829×10-4(kg・s/m2){動粘性係数=64.4×10−4(m2/hour)}
に対して、
「炭酸ガス」の粘性係数=1.58×10-5(kg・s/m2) {動粘性係数=4.83×10-4(m2/hour)}}
であり、
「炭酸ガス」の粘性係数/「水」の粘性係数≫≒(1/11.6){動粘性係数;(1/13.3)}
となる。
「炭酸ガス」の粘度は大幅に小さいため、2倍程度に循環流量を増加させても、流路圧損は、寧ろ、1/2(乱流)〜1/5(層流)程度小さいと予測される。
【0060】
ここで、高圧の気体ブラインについて説明する。
【0061】
気体を高圧化すると、一般に、
比重量(G/V)=(P/RT)
(但し、P=充填圧力、R=当該気体のガス定数、T=気体温度)
の式で表され、充填圧力Pと一次比例の関係で増加することになる。しかし、図5に示す「水」及び「炭酸ガス」の相変化図式の例から明らかな如く、気体ブラインの高圧化は、温度との関わりで、「高圧気体 → 液化気体 → 超臨界流体」と、相変化を生じる。本実施の形態では、これらの「高圧気体 → 液化気体 → 超臨界流体」の総てに適用可能な技術を提案するものである。すなわち、気体ブラインの適用を阻む(Cp×γ)を、気体ブラインを高圧化して「γ」等の改善を図ることにより、熱容量を大きくして、効率的な熱交換が行い得るようにしている。
【0062】
図6に、各種気体の臨界圧力と温度の一覧を、また、図7には、各種気体の「温度と飽和圧力」の関係を示す。図7より明らかな如く、水は、0℃以上の領域では、飽和圧力で液体を維持しており、優れた熱媒体であることが分かる。そして、古典的なアンモニアは、約0,5MPa以下の負荷で液体となり、−78℃以上の近くの領域からの使用では得がたい熱媒体であることが分かる。
【0063】
このように、(Cp×γ)の改善を図るために、気体ブラインを高圧化して、「液化気体〜超臨界流体」と相変化を生じさせる。「熱媒体」としては、気体としての(Cp×γ)や「熱伝導率」が大きく、液化圧力(飽和圧力)が低く、臨界条件が低く、安全且つ環境に優しい、等々が要求される。しかし、これら総てを満たす気体ブラインは無いと言っても過言でない。したがって、これら総ての気体に対応可能な、「100MPa以上に至る超高耐圧」を実現させると共に、上述のように「熱通過率(熱伝達率、熱伝達率)×熱交換面積」性能の技術構成を実現することにより、気体ブラインを用いた熱交換システムを構築している。
【0064】
自動車用エンジンの冷却システムには、(Cp×γ)が比較的大きく、液化圧力も低いため、「エタン」や「プロパン」等の炭化水素系が望ましいが、着火性を有している等の安全性の面で、問題がある。このため、臨界温度が31℃と低く、エンジンの管理適温である80℃近傍では、超臨界流体作動が期待されること、また、地球温暖化物質として削減及び固定化が社会的問題で、これを、「自動車用エンジン」の冷却媒体として充填・固定されれば、社会的な意義を有することから、「炭酸ガス」の自動車用エンジンへの適用を考えた。
【0065】
図5に示すように、炭酸ガスの相状態は、充填圧力と温度により変化する。炭酸ガスは、臨界圧力7.38MPa(73kg/cm2 gauge)以上、臨界温度31℃以上では、超臨界流体となる。超臨界流体は、液体と気体の種別のつかない流体で、分子密度のゆらぎが大きく、分子密度は液体に近いが、粘性係数は気体に近くて小さく、拡散が早
く、熱伝導特性は液体並に大きいという特徴がある。この特性は、多数の細孔流路を有するマルチチューブ型熱交換エレメントのように、細孔流路を有する熱交換器では、流路圧損の低減が図れるため、多数の細孔流路構成で熱伝達面積を大幅に向上させる方法に最適である。
【0066】
この特性は、炭酸ガスに限らず、エタン等の他の気体に対しても適用可能である。とりわけ、エチレン(CH2=CH2)の場合は、分子量も大きく、臨界点が、5.04MPa、9.2℃と、エンジンの作動温度に近いために、環境負荷(漏洩、大気開放した場合の環境への影響)を除けば有効と考えられる。自動車用エンジンへの高圧炭酸ガスブラインとしての適用の場合には、例えば、充填圧力≒5MPa程度の場合は、20℃環境では、液体状態が保持される。しかし、エンジン温度が上昇すると、当該部分で液体から気体へ変化して、密度が減少する。この結果、強い対流現象が起きる。更に、エンジンの放熱で充填ブラインの温度が上昇すると、その温度により充填圧力が増加し、仮に、7.38MPa以上を越えると、超臨界流体状態に移行する。超臨界流体では、密度は温度の他に圧力にも影響も大きく受けるため、拡散性、強い対流も期待される。このようにして、循環ポンプが不要な冷却システムが考えられる。このため、この例の場合は、シンプル且つ軽量なシステムが要求される「二輪車用エンジン」への適用が考えられる。但し、大型「自動車用エンジン」等、放熱が不足の場合は、循環ポンプが併用される。
【0067】
これらのシステムを可能とさせるのが、100MPa以上に至る超耐圧性能を有し、超巨大な熱交換器面積を可能とさせる、熱交換器技術を用いた高圧気体ブラインシステムである。
【0068】
このような構成において、例えば、図1に示す熱交換システムで自動車用エンジンを冷却する場合には、高温側10がエンジンに相当する場所に配置され、エンジンのシリンダー外壁からエンジンの放熱を受け取り、流路5を介して、低温側11(外気)に連接される。そして、放熱のための低温側11に配置された低温側熱交換器3(ラジエーター)で外気冷却されて、ブロアー2で再びエンジンのシリンダー外壁に冷却された気体ブラインが供給されるようになっている。
【0069】
現在は、「熱媒体」として、「不凍液添加―冷却水」が用いられている。これを「高圧炭酸ガス」成分のブラインに変えることにより、「腐食性がないこと、永久安定素材であること」等々により、赤錆の発生や蒸発による損失等の経時変化が全くないため、安定したエンジン状態の確保が可能となる。
【0070】
冷媒としての液体炭酸ガスブラインは、通常考えられる使用方法であって、冷却熱媒として使用する場合には、温度維持範囲が80℃内外で、例えば、5MPa程度のブライン圧力において、エンジンの熱を受けて気体化し、熱交換を阻害するおそれがある。このような「自動車用エンジン」の冷却システムに使用するには、炭酸ガスの臨界圧力である7.43MPa以上の充填圧力でブラインを封入して使用することになる。この結果、「充填された炭酸ガス」は「超臨界流体」となり、一般に、「超臨界流体」では拡散性が向上することから、熱交換を阻害する温度境界層が破壊されて、熱伝達の基本式「dQ=C×A×ΔT」において、同じ温度差ΔT、同じ熱交換面積Aで、熱伝達率「C」の大幅向上される効果が期待される結果、単位時間当たりの伝達熱量dQが改善される効果が期待される。しかも、「シリンダー・ライナー内側では、6MPa内外の燃焼圧力」が反復負荷されており、漏れに対する懸念はないため、適用が易しいと言える。
【0071】
なお、上述した温度境界層とは、例えば、熱い風呂に、体の周りに乱れを生じないように、静かに入浴したときに、皮膚の周りに形成される層と同じものであり、攪拌すると、急激に熱くなるのは、この温度境界層が破壊されるためである。
【0072】
現在、ブラインは、冷媒用、熱媒用とその使用領域が区分けされているのが現状である。しかし、「高耐圧」且つ「高熱交換」性能を有する熱交換器を用いることにより、水蒸気を含む、炭酸ガスや空気等との気体ブラインを、冷媒領域(−200℃以上)〜熱媒領域(1500℃以下)の広い範囲で適用することを可能とした。特に、自動車用エンジンにおいては、炭酸ガスの高圧(例えば、7.5MPa以上)充填を行うことにより、拡散特性を活かすことにより、現状の水冷却以上の温度管理を行うことが可能となる。
【0073】
図8は、本発明の実施の形態に係る熱交換システム100であって、「対流式の密閉サイクル」の概要図である。
【0074】
この「対流式の密閉サイクル」では、図8に示すように、利用側の熱交換器と熱源側の熱交換器を垂直配置し、両熱交換器を連結する管路を中心軸管とその周囲を取り囲む外装管の二重管で構成している。例えば、自動車用エンジンを冷却する場合、高温側110がエンジンに相当する場所に配置され、高温側熱交換器104がエンジンのシリンダー外壁からエンジンの放熱を受け取り、システムに充填されている気体ブラインが加熱されて、密度が低下して、連絡流路105で上昇流れを生じる。一方、低温側111(外気)に設けられた放熱のための低温側熱交換器103により、気体ブラインは冷却されて密度が大となり、下降流を生じる。このように、「対流式」では、図1で構成されていたブロアー2が不要であり、冷却システムがよりコンパクト且つ省エネルギー化が可能となる。
【0075】
また、図8に示すシステムの「熱媒体」として、超臨界炭酸ガスを用いた場合は、エンジンのおおよその維持温度である80℃に対して、臨海温度条件が31℃以上と低いため、小さな隙間にも進入できる拡散性能(熱伝達率の向上が期待される)、流動性(気体の特性を有するため、対流が期待される)等々から、安定した冷却状態が期待される。
【0076】
なお、図8と同じ作動を行うものに、ヒートパイプがある。これは、熱交換器内部に微量の水やアルコールを充填し、その内圧を真空として、気化(蒸発)と凝縮(液化)とを利用したもので、ほぼ音速で熱伝導が行われるため、機材の冷却や外気の冷エネルギーの蓄熱、融雪等に大きな力を発揮する。しかしながら、このヒートパイプを機能させるには、一端に、必ず、凝縮(液化)部分(低温部分)を構成させなければならず、この面での制約がある。これに対して、本実施の形態のように熱媒体を用いる方式では、例えば1000℃の高温側から受熱し、低温側で1000(℃)の蓄熱を行うことが可能となる。
【0077】
図9は、気体ブラインを用いた熱交換システム200であって、絞り流路を有する循環式熱交換器(いわゆる、ヒートポンプ)を示す概要図である。
【0078】
既存の技術としては、環境問題から、熱媒体として「炭酸ガス」が一般的に使用されている。この他にも、「フレオン」、「アンモニア」等の沸点の高いものが使用されている。このように、良く知られたヒートポンプでも、本実施の形態とは稼動システムが異なる。すなわち、ヒートポンプでは、低温側211が室内温度を下げたい領域(例えば、エアコン)とすると、流路205内に炭酸ガスを充填し、圧縮機202でこれを圧縮し、発生した熱を高温側210の高温側熱交換器204を介して、生活温水利用のための水で放熱して、熱媒体の炭酸ガスを液化させる。次いで、液化熱媒体を絞り206を通じて膨張させて、その蒸発熱により熱媒体温度を下げて、低温側熱交換器203で室内空気温度を低下させている。この例の場合は、高温側210の温度を低下させればさせる程、低温側熱交換器203の温度は低温が得られる。一方、高温側210を給湯器等に利用する場合は、低温側熱交換器203の温度を高めて、例えば、廃熱利用、太陽熱利用することになる。しかし、何れも、気体から液体への相変化時の蒸発熱(凝縮熱)を利用したものであり、本実施の形態のように、相変化しない「高圧気体ブライン」の適用例とは異なる。なお、この相変化しないということには、例えば、微量の気体が意図せずに液体になってしまう場合などを含まず、基本的に相変化をさせないでという意味である。
【0079】
図10は、本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、高圧気体ブラインを用いた「密閉−対流式熱交換器」の概要図を示す。
【0080】
基本的な構成は、図1に示すシステムと同じである。すなわち、エンジン320内の冷却ジャケット部321が、高温側熱交換器の一端として構成されている。エンジン320の冷却のための熱媒体として、高圧気体ブライン(例えば、炭酸ガス)が、システム内に充填されている。エンジン320と放熱(冷却)のための低温側熱交換器303とは、流路305で連接されている。
【0081】
流路305は、エンジン320の上側に連接され、エンジン320で加熱された熱媒体が比重量の減少により上昇対流を生じる構造としている。その熱媒体温度が、例えば60℃を越えた時、サーモスタット弁322等の温度制御弁が開放されて、低温側熱交換器303への熱媒体の流入を促す。なお、充填気体が正常か否かの確認のための圧力計323が流路305等(場所は、密閉構造のため、どこでも良い)に接続されている。
低温側熱交換器303で熱媒体が冷却されることにより「比重量」が増加し、下降流れを起こす。これを流路324により、エンジン320の下側に連接させ、「流路324から流路305」の循環流れを形成させている。このようにして、「循環ポンプ」不要での冷却システムを構成させている。
【0082】
なお、低温側熱交換器303には、(1)耐圧性能及び(2)熱交換効率(熱交換面
積)に極めて優れる、例えば、「蓮根状の多数の細孔流路から構成される熱交換器(図2参照)が使用される。
【0083】
また、低温側熱交換器303での負荷の低減のために、エンジン320の外周部には、放熱フィン325が設けられることもある。低温側熱交換器303及び放熱フィン325によるエンジン・ルーム内温度の低減のために、冷却ファン326が設けられており、温度計327から熱媒体温度あるいはエンジン・ルーム内温度の信号を受けて、電磁クラッチ328(あるいは電動モーター)が機能して、冷却ファン326を駆動させる。その他、万一の際の安全性確保のために、流路に連接して自動弁329(開放弁)が装備されることがある。すなわち、流路内圧力が任意の圧力を越えた場合、「スプリングの押し付け力と背圧」に勝って、当該自動弁329が開放され、熱媒体圧力を逃がす。そして、それを大気開放若しくは、リザーバー・タンク(ボックス)330に逃がされる。
【0084】
図10に示すシステムの優れる点は、(イ)熱媒体として「炭酸ガス」等の安定な物質を使用しているため、半永久的な稼動が期待されること、(ロ)「超臨界流体」領域では、その拡散性により、均質なエンジン温度管理が可能となること、(ハ)「超臨界流体」では、液体の「比重量×比熱」の特性で、気体の「粘性係数」を活用して、多数の蓮根状流路から構成される高性能熱交換器等の使用が可能となること、(ニ)自然対流を利用しているため、「循環ポンプ」が不要のため、当該駆動のためのエネルギー削減が図れること、(ホ)不凍液等の添加物無しで、−50℃〜の環境温度でメンテンナンス・フリーの稼動が出来ること、(へ)炭酸ガスの資源化・固定化技術のため、環境保全に貢献できること、等々が上げられる。このシステムは、二輪車用エンジンに対しても応用可能である。
【0085】
図11は、本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、高圧気体ブラインを用いた「密閉−循環式熱交換器」の概要図(基本的な作動図で有り、冷却ファン等の補機を割愛)を示す。基本的な構成は、図8に示すシステムと同じである。
【0086】
大型自動車用エンジンの場合や高出力エンジンの場合には、前掲の自然対流式熱交換器では充分な冷却管理が不可能な場合がある。このために、エンジン内の熱媒体を強制的に循環させて、エンジンの温度管理を図るシステムが、図11の実施例である。
【0087】
エンジン420には、熱媒体として、「高圧気体ブライン(例えば、炭酸ガス等)」が充填されている。エンジン420を冷却した熱媒体は、エンジン420に連接された流路405を経て、放熱のための低温側熱交換器403に導かれる。低温側熱交換器403で冷却された熱媒体は、循環ポンプ421により流路424を経て、エンジン420に循環される。
【0088】
図11の例では、エンジン420の上側(高温側)から下側(低温側)への循環流路であるが、エンジン420温度の均質化のために、流路はこの説明と逆でも構わない。「高圧気体ブライン」が適正充填されているかの確認・管理のために、流路405に圧力計423が設けられている。また、エンジン420温度の適正管理のために、温度計427と、PID制御等の機能を有するモーター・コントローラー428が装備されている。そして、このPID制御等の機能を有するモーター・コントローラー428により、熱媒体の適正な循環流量管理が行なわれる。
【0089】
このシステムの優れる点は、(イ)熱媒体として炭酸ガス等の安定な物質を使用しているため、半永久的な稼動が期待されること、(ロ)超臨界流体領域では、その拡散性により、均質なエンジン温度管理が可能となること、(ハ)「超臨界流体」では、液体の「比重量×比熱」の特性で、気体の粘性係数を活用して、多数の蓮根状流路から構成される高性能熱交換器等の使用が可能となること、(ニ)強制循環を行うことにより、現在の「冷却水システム」と同等以上の温度管理が可能なこと、(ホ)不凍液等の添加物無しで、「−50(℃)〜」の環境温度でメンテンナンス・フリーの稼動が出来ること、(へ)「炭酸ガス」の資源化・固定化技術のため、環境保全に貢献できること、等々が上げられる。
【0090】
なお、図にはないが、循環ポンプ421が故障の場合の安全性確保のために、図10の例と同様に、流路のライン圧力が異状に上昇した際、その圧力を逃がす図示しない自動弁と、熱媒体を一時保管する図示しないリザーバー・タンクを付設する場合もある。
【0091】
ここで、自動車用エンジンの冷却熱媒体として、炭酸ガスを用いた場合の炭酸ガスの削減効果について記述する。
【0092】
2004年の統計に見る世界の自動車生産台数は、凡そ6200万台で、日本の生産台数は凡そ2000万台で、益々増加の一途にある。自動車用エンジンの冷却熱媒体としての「液化炭酸ガス」の量を5(リットル/台)とし、世界生産の10%の新車がこれを用いたと仮定する。この結果、62000000台/年×0.1×5リットル=31000000(リットル/年)=31000(キロリットル/年)の炭酸ガスが固定化される。この量は、200リットルドラム缶換算で、31000000(リットル/年)/200=155000(缶/年)≒16万(缶/年)に相当する。
【0093】
重量基準で考えると、臨界(液化)時の比重量を925(kg/m3)(0℃;内田秀雄―伝熱工学P.379 裳華房)と仮定すると、31000000(リットル/年)×925(kg/m3)/1000(m3/リットル)=28675000(kg/年)≒28675(ton/年)の削減効果が期待される。なお、仮に、30%の新車が採用した場合は、自動車分野のみで、28675×3=86025(ton/年)の削減効果が期待される。
【0094】
図12(A)及び図12(B)は、本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、「高圧気体ブライン」を用いた「循環式―熱交換器」の概要図を示したものである。
【0095】
人間の生活環境を維持するための温度管理を、石油等の熱エネルギーや変換された電気エネルギーから得ることは極めて、不効率である。例えば、50℃の1kg当たりの熱エネルギーは、落差100mのダムの約217倍に相当する(東京大学名誉教授 田沼静一著「エネルギー変換」(株)裳華房 P.9)。すなわち、外気温度が0℃の環境下で、室温=0℃から、6畳相当の3.6m×2.7m×H3mの部屋を25℃に暖めるとすると、(25/50)×3.6×2.7×3×1.29kg/m3×217≒4081と言うように、落差100mのダムの何と「4081倍」相当のエネルギーを要してしまう。このように、「多用途性エネルギー(電気は、光、モーター、熱等々、多くの形態に変換できる)」である、電気エネルギー変換されたエネルギーを、再び、熱エネルギーに再変換することは極めて無駄と言える。このためには、自然エネルギーに恵まれた寒暖の差のある地方では、大気の自然エネルギーの活用を図ることが重要である。
【0096】
図12(A)の「循環式熱交換器」(一端が凝固(液化)する状態の温度範囲の場合は、ヒートパイプの方が優れる。例えば、冷エネルギーの貯蔵の場合)では、「蓄熱槽」に、太陽熱等の暖エネルギーを貯熱する場合のシステム構成を有する。熱媒体には、高圧気体ブラインが用いられている。
【0097】
蓮根状の細孔流路501から構成される、マルチチューブ型熱交換エレメント等の高性能熱交換器の外周部に、集熱フィン525が設けられている。この集熱フィン525により加温された熱媒体は、反転槽530で反転させられ、中心軸531に設けられた「熱媒体油送管」を介して、蓄熱槽側に送られる。高温熱媒体を中心軸531に設けられた「熱媒体油送管」を介して送ることにより、輸送の際の熱損失の改善が図られている。そして、逆支弁532を経て反転槽530で反転させられ、マルチチューブ型熱交換エレメント533に送られ、放熱フィン534により、蓄熱槽の熱媒体に暖エネルギーが伝えられる。
【0098】
蓄熱槽に暖エネルギーを伝えた熱媒体は、外周に配置された熱媒体輸送管535を介して、「集熱部」に送られる。熱媒体の循環は、熱媒体輸送管535内部に設けられた、図12(A)の例では、スプリング536、永久磁石537、リード弁(フェーザー弁)538、ラビリンス・シール539から構成されるピストン弁540と、電磁駆動装置541により行なわれる。詳細には、電磁駆動装置541が動作すると、スプリング536の弾性に抗してリード弁538の永久磁石537が電磁駆動装置541側へ引き寄せられ、ピストン弁540を開放させるようになっている。
【0099】
上述の構造は、変性しない単純組成の気体ブラインを用いた完全密封構造の熱交換器のため、内部劣化を生じない。この結果、永久稼動が可能となる。また、上記、循環用ピストン弁540の代わりに、例えば、図示しない、循環用インペラを用いて熱媒体を循環させてもよい。
【0100】
また、図12(B)は、「蓄冷槽」に、太陽熱等の「冷エネルギー」を貯熱する場合のシステム構成を示している。作動システムは、前述の「蓄冷システム」と全く同じで、熱媒体には、「高圧気体ブライン」が用いられている。異なる点は、循環方向(流体の流れ方向)が逆で、冷却された熱媒体が、外周に配置された熱媒体輸送管635を介して、「蓄冷槽」に送られる。すなわち、蓮根状の細孔流路601から構成されるマルチチューブ型熱交換エレメント633等の高性能熱交換器の外周部に、集冷フィン625が設けられている。この集冷フィン625により冷却された熱媒体は、外周に配置された熱媒体輸送管635を介して、図12(B)の例では、外周に配置された熱媒体輸送管635内部に設けられた、スプリング636、永久磁石637、リード弁(フェーザー弁)638、ラビリンス・シール639から構成されるピストン弁640と、電磁駆動装置641により循環が行なわれる。また、上記ピストン弁640の代わりに、例えば、インペラを用いて熱媒体を循環させてもよい。
【0101】
マルチチューブ型熱交換エレメント633に送られた熱媒体は、放熱フィン634により「蓄冷槽の熱媒体」に「冷エネルギー」が伝えられる。そして、反転槽630で反転させられ、中心軸631に設けられた熱媒体油送管を介して、集冷部に送られる。上昇した熱媒体は、逆支弁632を経て反転槽630で反転させられ、マルチチューブ型熱交換エレメント633に送られ、集冷フィン625により「冷エネルギー」を受け取る(冷エネルギーの貯冷に限れば、ヒートパイプの方が優れる)。
【0102】
この作動説明は、「強制循環式熱交換器」の一般的作動例を説明したもので、詳細は後述する図13に示す「自然対流式熱交換器」等の適用も、本実施の形態の「高圧気体ブライン」を使用したシステムに含まれる。
【0103】
図13は、本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、図13(A)に「蓄熱システム」、図13(B)に「蓄冷システム」を示している。また、図13(C)は、図13(A)のA−A線で切断した断面図、図13(D)は、図13(A)のB部の拡大図である。なお、この2つは、対流による流れ方向が異なる以外は同じ基本構造であるので、以下、「蓄熱システム」について説明する。
【0104】
図13の説明の前に、「熱媒体」を用いた、既存の「蓄冷システム」を図14を用いて簡単に説明する。
【0105】
既存のシステムにおいて、蓄冷槽701の蓄冷剤702(熱媒体)には、低温側熱交換器703内で熱の授受を行う熱媒体と同じものが使用されてきた。例えば、そのような熱媒体としては、塩化カルシウム溶液や塩化マグネシウム溶液等の、比重量、比熱、熱伝導率等の大きな液体の方が、効率的なシステム構築が簡単に可能なためである。この例の場合は、蓄冷槽701の蓄冷剤702上端中に、流路705が挿入され、その一端が、寒冷外気から熱吸収するための低温側熱交換器703に接続されている。そして低温側熱交換器703の他端と蓄冷槽701の底付近と流路705で接続されている。
【0106】
低温側熱交換器703で熱媒体が冷却されることにより、熱媒体の比重量が大となるため、図14の矢印706に示すように、下向きの流れを生じる。蓄冷剤702の温度と並行すると、この対流作用は停止される。このように、循環ポンプ無しの蓄冷システムは、従来でも可能であるが、蓄冷槽701も含めた密閉サイクルを構成しないと難しいため、通常は、循環ポンプが使用されている。この従来仕様の場合は、「比重量×比熱」の問題から、低温側熱交換器703を通る熱媒体に、気体ブラインを使用することは困難である。
【0107】
図13(A)に戻って、本発明の「蓄熱システム」について説明する。
【0108】
蓄熱槽801には、液体、粉体、固体も含めた「比重量×比熱」の大きい最適な蓄熱剤802が選定される。蓄熱剤802の中には、放熱(蓄熱)のための高温側熱交換器804が埋設されている。高温側熱交換器804に連接した流路805内には、高圧気体ブラインが充填されている。そして、高温側熱交換器804により吸熱し、熱媒体温度が上昇することにより、比重量が減少して、上昇方向の流れを生じる。一方、高温側熱交換器804と流路805に連接した熱交換器807では、蓄熱剤802への放熱が行なわれる。この結果、熱媒体の温度の低下と比重量の増加により、下降流れを生じる。このようにして自然対流により、蓄熱槽801へのエネルギー蓄積が行なわれる。
【0109】
直径1μmに至る細孔流路構造を有する熱交換器807及び高温側熱交換器804に、高圧気体ブラインを用いることにより、目詰まりや熱媒体の変性等の経時変化無しで、半永久的な稼動が可能となる。原子力発電所での適用では、高温側熱交換器804が原子炉炉心での熱交換に該当し、タービン駆動は、流路805熱媒体と隔離された蓄熱剤802の熱エネルギーを利用して行なわれるため、汚損物質が外部に漏出されることはない。
【0110】
図15は、本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、「循環ポンプ」を用いてコンピューターへ応用した概要図を示す。
【0111】
流路901内には、高圧気体ブラインとして、例えば、液化炭酸ガスが封入されている。循環ポンプ902により、コンピューター熱発生部903内に設けられた、マルチチューブ型熱交換エレメント904のごとく高性能熱交換器に供給される。ここで、コンピューターの発生熱を受熱し、連接流路905を介して、放熱用熱交換器906に導かれ、コンピューターの発生熱を排出する(循環ポンプを使用しない、自然対流型も可能)。
【0112】
炭酸ガス等の高圧気体ブライン(液化炭酸ガス、超臨界流体)を使用することのメリットは、一例として、「炭酸ガス」の例で言えば、(1)金属への反応性がないため、腐食に対する考慮をせずに、最適な熱伝導率材料を使用できる。(2)熱変性等の経時変化が無いため、半永久的な稼動が可能。(3)粘性係数が「水」媒体の「約1/10」と小さく、同じ熱容量循環とするために約2倍の流量としても、循環圧損を「水」の場合の「1/2(乱流)〜1/5(層流)」とすることが可能。(4)「熱媒体」が漏洩した場合、「漏洩熱媒体」が機器損傷することが無い。(5)作動温度環境が、「水の0℃〜」に対して、「炭酸ガスの場合は、−50(℃)〜」が期待されるので、0(℃)以下の寒冷地でも、安心して活用できる、等が上げられる。
【0113】
本発明の実施の形態に係る熱交換システムは、以下のような工業的利用価値を有する。
(1)高圧気体ブラインを使用することで、原子力発電所等の高温エネルギーからの熱交換を始めとして、凡そ−200℃〜1500℃の広い温度範囲での熱交換を可能とする。
(2)しかも、熱変性しないため、多数の細孔流路から構成されるマルチチューブ型熱交換エレメント等の熱交換器のデポジット形成や目詰まりを生じさせないため、経時変化なしで、半永久的な稼動を可能としてくれる。
(3)温室効果ガスとして、固定化や深海への投棄が望まれる炭酸ガス等の気体ブラインを用いた高性能熱交換器を提供することができる。とりわけ、超臨界流体では、臨界点では、圧力、温度による密度変気圧力が大きく、その特徴を活かした効果的な自然対流による熱交換器の実現が期待される。
(4)熱伝導率に劣る気体をブラインとして使用することにより、熱交換器以外からの不要な外部への熱損失を低下することができる。ただし、熱交換性能部分には、巨大な熱交換面積を可能とするマルチチューブ型熱交換エレメント等を用いて、水と等価な熱伝導率を可能することにより、熱損失の少ないシステムを構築することが可能となる。
(5)気体を高圧充填することにより、「比熱×比重量」の小さい気体ブラインの欠点を補う技術を提供することができる。また、粘性係数が小さいため、マルチチューブ型熱交換エレメント構造のように細孔流路構成しても、流路圧損が小さくて良いため、循環ポンプに必要駆動仕事が小さくて済む。この結果、太陽熱利用の際に、当該駆動動力を太陽光発電で賄うことが可能となる。
(6)本実施の形態の熱交換器により、充填気体の圧力の程度に応じて、高圧気体、液化気体、超臨界流体の総ての状態で、その特徴に合せた熱交換器を提供可能となる。
【0114】
本発明の実施の形態に係る熱交換システムでは、窒素ガス、空気、炭酸ガス等の気体ブラインを使用することにより、環境に安全な熱交換システムを実現させることができる。また、蒸発や損失等の経時変化がない永久安定素材である気体ブラインを用いて永久稼動熱交換器を実現させることができる。
【0115】
また、低温側熱交換器3及び高温側熱交換器4を、複数の細孔流路22によって100MPa以上の耐圧性能を有する熱交換器で構成し、気体ブラインとして超臨界流体を使用することにより、(Cp×γ)の値を大きくすることができ、熱量Qの量を、液体ブラインと同等の性能に近付けることができる。
【0116】
さらに、「熱伝導率」に対しては、多数の細孔流路22から構成される高性能熱交換器(マルチチューブ構造の熱交換エレメント)等を用いて、「使用気体の熱伝導率」に対する水の熱伝導率の割合α(α=例えば、空気の場合、水の熱伝導率/空気の熱伝導率=600/2=300)相当まで、熱交換面積を増加させて、同等の熱交換性能にすることができる。
【0117】
さらにまた、従来では、高温熱源からの熱交換の場合、腐食性や反応性の強い液状金属が一般的であるが、気体ブラインとして高圧炭酸ガス成分を使用することにより、赤錆の発生等による腐食のおそれがなくなる。
【0118】
さらにまた、液状金属ではその融点以上の温度でしか利用できなかったが、例えば、炭酸ガスの場合では、−50℃〜1500℃、窒素ガスの場合は、−140℃〜1500℃のような広範囲での熱交換が可能である。
【0119】
他方、自動車等から排出される温室効果ガスの一種として、炭酸ガスの増加が大きな問題となっており、その削減や、固定化、更には地中や深海への投棄が叫ばれて、炭酸ガスの販売権が商業化され、炭酸ガスの削減ができない国から低発生国への販売が行われようとしている。本実施の形態の熱交換システムでは、液体化された「投棄用の炭酸ガス」を、その製造エネルギーも含めて有効活用することができる。すなわち、「投棄用の炭酸ガス」を、熱媒/冷媒用のブラインとして使用可能な「熱交換器」を提供し、半永久的に隔離・有効利用することができる。このように、自動車エンジンへの適用は、このような炭酸ガスの有効活用と共に、地球環境保全に貢献することになる。
【0120】
また、自動車用エンジンに使用した場合には、「小型・軽量」の新しい冷却システムの提供が可能となると共に、安定したエンジン状態の確保が可能となる。
【0121】
他方、同じ温度条件で、熱交換性能を向上させるには、「熱伝達の基本式―dQ=C×A×ΔT」において、熱伝達率や熱伝導率等の係数「C」や熱交換面積「A」を向上させる必要があるが、蓮根状の多数の細孔から構成される熱交換器では、細孔流路22の内径を1μm以下にすることも可能であるが、このような細孔流路22を有する「熱交換器」では、作動流体の変性による「デポジット」や「流路の目詰まり」が問題であった。しかし、「安定した気体ブライン」の使用は、このような懸念を払拭し、しかも、液体の特性を有しながら、気体の拡散性を有する超臨界流体は、粘性係数による流路圧損の軽減を図ることができる。
【0122】
また、利用側の熱交換器と熱源側の熱交換器を垂直配置し、両熱交換器を連結する管路を中心軸管とその周囲を取り囲む外装管の二重管で構成しているので、気体ブライン等に上昇流及び下降流を生じさせることにより、強制的に送流させる機器を不要とすることができる。その結果、使用エネルギーの省力化、及びシステム構成の簡素化を実現することができる。
【0123】
さらに、管路535に永久磁石等で構成された、循環用ピストン540またはインペラを内在すると共に、管路535の外部にピストン540またはインペラを駆動する電磁駆動装置541を配置し、ピストンまたはインペラの駆動により前記媒体を循環させているので、変性しない単純組成の気体ブラインを用いた完全密封構造の熱交換器を構成することができる。
【0124】
さらに、管路に当該管路内の圧力が異常高圧に至った場合に開放される自動弁329を連結し、自動弁329に前記媒体を膨張させるリザーバー・タンク330を連結しているので、管路内の異常高圧を防止する安全システムをシステム内に構築することができる。
【0125】
また、低温側熱交換器をエンジン冷却用ジャケット321として使用することにより、本システムをエンジン冷却に利用することができる。
【0126】
また、低温側熱交換器をコンピューター熱発生部903に配置することにより、本システムをコンピューター熱発生部の冷却に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、ブロアーを用いて気体ブラインを送流させる「密閉サイクル」の概要図である。
【図2】図1の熱交換器に使用される熱交換ユニットであって、図2(A)は、断面図、図2(B)は図2(A)の側面図である。
【図3】熱交換ユニットの他の構成を示す概要図である。
【図4】縄状熱交換エレメントを示す斜視図である。
【図5】気体の相変化を示す図である。
【図6】各種気体の臨界圧力と温度を示す表である。
【図7】温度と飽和圧力の関係を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、「対流式の密閉サイクル」の概要図である。
【図9】気体ブラインを用いた熱交換システムであって、絞り流路を有する循環式熱交換器(ヒートポンプ)を示す概要図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、高圧気体ブラインを用いた「密閉−対流式熱交換器」の概要図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、高圧気体ブラインを用いた「密閉−循環式熱交換器」の概要図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、「高圧気体ブライン」を用いた「循環式―熱交換器」の概要図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、図13(A)は、蓄熱システムの概要図、図13(B)は、蓄冷システムの概要図、図13(C)は、図13(A)のA−A線で切断した断面図、図13(D)は、図13(A)のB部拡大図である。
【図14】図13(B)に示す「蓄冷システム」の既存のシステムを示す概要図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る熱交換システムであって、「循環ポンプ」を用いてコンピューターへ応用した概要図である。
【符号の説明】
【0128】
1 熱交換システム
2 ブロアー
3 低温側熱交換器
4 高温側熱交換器
5 流路
6 熱交換ユニット
10 高温側
11 低温側
21 ステンレス製パイプ
22 細孔流路(貫通孔)
23 ステンレス製の外管
24 金属製隙間充填材料
103 低温側熱交換器
105 連絡流路
110 高温側
111 低温側
203 低温側熱交換器
204 高温側熱交換器
205 流路
206 絞り
210 高温側
211 低温側
303 低温側熱交換器
304 高温側熱交換器
305 流路
320 エンジン
321 冷却ジャケット部
322 サーモスタット弁
323 圧力計
324 流路
325 放熱フィン
326 冷却ファン
327 温度計
328 電磁クラッチ(電動モーター)
329 自動弁
330 リザーバー・タンク(ボックス)
403 低温側熱交換器
405 流路
420 エンジン
421 循環ポンプ
423 圧力計
424 流路
427 温度計
428 PID制御等の機能を有するモーター・コントローラー
501、601 細孔流路
525 集熱フィン
530、630 反転槽
531、631 中心軸
532、632 逆止弁
533、633 マルチチューブ型熱交換エレメント
534、634 放熱フィン
535、635 熱媒体輸送管
536、636 スプリング
537、637 永久磁石
538、638 リード弁(フェーザー弁)
539、639 ラビリンス・シール
540、640 ピストン弁
541、641 電磁駆動装置
625 集冷フィン
701 蓄冷槽
702 蓄冷剤
703 低温側熱交換器
705 流路
706 矢印
801 蓄熱槽
802 蓄熱剤
804 高温側熱交換器
805 流路
806 矢印
807 熱交換器
901 流路
902 循環ポンプ
903 コンピューター熱発生部
904 マルチチューブ型熱交換エレメント
905 連接流路
906 放熱用熱交換器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を吸収する高温側熱交換器と、熱を放出する低温側熱交換器とを、管路を介して閉ループ環境で連結し、当該閉ループ環境内に炭酸ガス、メタン、エタンまたは空気等の高圧気体ブラインからなる媒体を、相変化を起こさない状態で循環可能に封入し、両熱交換器の内のいずれか一方を利用側の熱交換器、他方を熱源側の熱交換器として配置し、少なくとも前記熱源側の熱交換器を、前記管路に連なる多数の細孔流路を備えた熱交換器で構成したことを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
熱を吸収する高温側熱交換器と、熱を放出する低温側熱交換器とを、管路を介して閉ループ環境で連結し、当該閉ループ環境内にエタン、プロパン、エチレン、炭酸ガス等の高圧液体からなる媒体を、相変化を起こさない状態で循環可能に封入し、両熱交換器の内のいずれか一方を利用側の熱交換器、他方を熱源側の熱交換器として配置し、少なくとも前記熱源側の熱交換器を、前記管路に連なる多数の細孔流路を備えた熱交換器で構成したことを特徴とする熱交換システム。
【請求項3】
熱を吸収する高温側熱交換器と、熱を放出する低温側熱交換器とを、管路を介して閉ループ環境で連結し、当該閉ループ環境内にエタン、プロパン、エチレン、炭酸ガス、水等の超臨界流体からなる媒体を、相変化を起こさない状態で循環可能に封入し、両熱交換器の内のいずれか一方を利用側の熱交換器、他方を熱源側の熱交換器として配置し、少なくとも前記熱源側の熱交換器を、前記管路に連なる多数の細孔流路を備えた熱交換器で構成したことを特徴とする熱交換システム。
【請求項4】
前記細孔流路の熱交換面積が当該細孔流路を設けない場合の流路の熱交換面積と比べて大きくなるように前記細孔流路の孔径が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【請求項5】
利用側の熱交換器と熱源側の熱交換器を垂直配置し、両熱交換器を連結する管路を中心軸管とその周囲を取り囲む外装管の二重管で構成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【請求項6】
前記管路に永久磁石等で構成された、循環のためのピストンまたはインペラを内在すると共に、当該管路の外部にピストンまたはインペラを駆動する電磁石を配置し、ピストンまたはインペラの駆動により前記媒体を循環することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【請求項7】
前記管路に当該管路内の圧力が異常高圧に至った場合に開放される開放弁を連結し、開放弁に前記媒体を膨張させるボックスを連結したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【請求項8】
前記低温側熱交換器がエンジン冷却用ジャケットであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【請求項9】
前記低温側熱交換器がコンピューター熱発生部に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の熱交換システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−25973(P2008−25973A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202086(P2006−202086)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(591160338)株式会社技術開発総合研究所 (12)
【出願人】(506147744)榎本工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】