説明

熱交換器のチューブ幅検査方法及び装置

【課題】フィン(13)とチューブ(12)を具備する熱交換器のコア(11)の外観検査方法を提供する。
【解決手段】フィン(13)とチューブ(12)を具備する熱交換器のコア(11)の外観検査方法において、単一チューブが撮像されている領域(W)を特定し、前記領域(W)における撮像データを平均化処理と動的2値化処理をしてチューブの画像のみを取り出し、前記領域を複数のブロックに分割し、分割した各ブロックにおいて、チューブを囲む最小四角形を求めることでチューブの幅寸法(a1〜a5)を求め、求められた各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)を、所定の閾値(A)と比較し、各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)が全て前記所定の閾値(A)以下の場合に、良品と判別することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の外観検査装置に係り、特に車両用ヒータ等に使用されるフィンアンドチューブタイプの熱交換器の外観検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、車両用ヒータ等に使用される一般的なフィンアンドチューブタイプの熱交換器10を図解的に示す。図2は、90度回転して、フィンとチューブを拡大した図解図である。熱交換器10は熱交換部であるコア11を具備しており、コア11は、熱交換媒体となる流体が通る複数のチューブ12と、それらのチューブ表面に取り付けられて伝熱面積を増大させる多数のフィン13とを具備する。14はタンク部であり、15はサイドプレートである。
【0003】
フィンアンドチューブタイプの熱交換器10のコア11は、直線状のチューブ12とその表面にジャバラ状に取り付けられたフィン13とを具備し、1列のチューブ12とフィン13の単位要素構造を、規則的に繰り返して複数つなぐことにより形成される。この1列の単位要素構造において、フィン13は、平板をS字状に折り返し、これを繰り返してジャバラ状に形成されており、折り返し部である複数のフィンR部を具備する。この様な熱交換器のチューブ12及びフィン13の不良品は、かなりの割合が外観検査により検出可能である。この様な外観検査に関して、自動化、省力化、更には精度を上げるための改善が実施されてきており、近年、画像処理の手法を使用した検査方法が導入されている。
【0004】
このような画像処理の手法を使用した検査方法として、従来、特許文献1に示されるような検査方法が知られている。
この検査方法によれば、チューブとフィンの2つの繰り返し的パターンを有する熱交換器コア面の外観検査において、画像処理による欠陥検出手法を適用するにあたり、被検部の画像を、1枚は明るさを制御してフィン成分を抑制したチューブ検査画像として撮像し、もう1枚はフィン検査可能な明るさで撮像した画像を検査画像とする。そして、チューブ、又はフィンの検査画像を2次元フーリエ変換し空間周波数領域での検査画像を得る。その上で、例えば、入力画像の一部を利用して、良品サンプルのマスク画像データを作成し、良品の周波数成分を除去した後に、更に2次元フーリエ逆変換して、欠陥検出画像を得るものである。
【0005】
しかしながら、上記従来技術により、チューブの検査を行う場合、次のような課題が生じていた。すなわち、チューブ抽出するためにチューブ及びフィンにそれぞれに適した明るさで別の画像を2枚撮像しており、特にチューブの検査画像を得る場合には光量の強弱を調整してフィンを見えなくして撮像するため、ワークの表面状態の違いが誤検出要因として影響を与えていた。
【0006】
チューブの検査において周波数解析(FFT)を行なう場合、自分自身の画像の正常チューブ部の周波数変換画像と自分自身の画像の周波数変換画像とを用いて不良を見つける方法であって、チューブがすべて等ピッチの場合でないと精度良く検出できない。また、コア全体を周波数処理することで、誤検出要因が生じると共に、データ量が膨大となり、FFTの場合正逆の2回行なわないと不良が検出できず、処理スピードの低下を来たしていた。さらに、検査処理が周波数解析の場合、寸法閾値による判定が困難であった。
【0007】
一方、検査処理が周波数解析によらない場合は、検査対象物である熱交換器のコアを照明手段により照射し、撮像手段がコア部のチューブとフィンを撮像して、画像を256階調等の画像データに変換し、このデータを画像処理してチューブの骨格を検出し、チューブの検査を行ってきた。チューブの検査に使う良否の判断基準は、基本的にチューブの長さとチューブの幅である。そして、チューブの幅を計測する場合、以下のような問題が発生していた。
すなわち、一般的に熱交換器のコアの製造において、チューブ、フィン、タンク、サイドプレートを組立てた後、組立てを固定するために、炉中ろう付け工程にて一体ろう付けされる。その際、コアに発生する炉での熱歪の影響により、チューブが両側で弓状に撓んで、いわゆる樽型のコアが発生することがある。図3は、樽型のコアが発生した場合の熱交換器のコアのフィンとチューブを図解的に表示した図である。このような樽型のコアは、不良ではなく良品と判定すべきものである。しかしながら、画像処理して、各チューブの幅を、チューブを囲む最小四角形の幅として検出する場合には、弓状に撓んでいるチューブは、その幅が良品に比べて大きくなっており、良品であるべきものを不良と判定してしまう問題が生じていた。なお、図4は、チューブを囲む最小四角形の幅として検出する場合を模式的に示した図である。図4の(a)は、正常な直線状のチューブを検査する場合であり、図4の(b)は、それと同様にして弓状に撓んでいるチューブを検査する場合を表している。
【0008】
【特許文献1】特開2005−321300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、湾曲チューブを不良ではなく、良品と判別できるようにしたフィンアンドチューブタイプの熱交換器のチューブ幅検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、フィン(13)とチューブ(12)を具備する熱交換器のコア(11)の外観検査方法において、撮像手段(3〜5、7)が該コアを撮像して、画像処理装置(2)に、撮像データを入力して記憶させるステップと、前記撮像データにおいて、単一チューブが撮像されている領域(W)を特定するステップと、
前記領域(W)における撮像データを平均化処理と動的2値化処理をしてチューブの画像のみを取り出すステップと、前記領域(W)を複数のブロックに分割するステップと、分割した各ブロックにおいて、チューブを囲む最小四角形を求めることでチューブの幅寸法(a1〜a5)を求めるステップと、求められた各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)を、所定の閾値(A)と比較するステップと、各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)が、全て、前記所定の閾値(A)以下の場合に、良品と判別するステップからなる熱交換器のコアの外観検査方法である。
これにより、弓状に撓んでいるチューブを、良品であるべきものを不良と判定してしまうことを避けることができるとともに、処理スピードを高めることができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記撮像手段が、スキャナ(7)であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記撮像手段が、CCDカメラ(3)と、集光・照明手段(4)と、ベルトコンベア(5)を具備することを特徴とするものである。
これにより、検査工程を自動化・省力化した上で、弓状に撓んでいるチューブを、良品であるべきものを不良と判定してしまうことを避けることができるとともに、処理スピードを高めることができる。
【0013】
請求項4の発明は、 フィン(13)とチューブ(12)を具備する熱交換器(10)のコア(11)の外観検査装置であって、該概観検査装置が、撮像手段(3〜5、7)と画像処理装置(2)を具備しており、該画像処理装置(2)が、撮像手段(3〜5、7)が該コア(11)を撮像した撮像データを入力し記憶する記憶手段と、前記撮像データにおいて、単一チューブが撮像されている領域(W)を特定し、前記領域(W)における撮像データを平均化処理と動的2値化処理をしてチューブの画像のみを取り出して、前記領域を複数のブロックに分割する画像処理手段と、分割した各ブロックにおいて、チューブを囲む最小四角形を求めることでチューブの幅寸法(a1〜a5)を求める演算手段と、求められた各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)を、所定の閾値(A)と比較し、各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)が、全て、前記所定の閾値(A)以下の場合に、良品と判別する判別手段とからなる熱交換器のコアの外観検査装置である。
これにより、請求項1の発明と同様に、弓状に撓んでいるチューブを、良品であるべきものを不良と判定してしまうことを避けることができるとともに、処理スピードを高めることができる。
【0014】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図5のうちで、本発明の一実施態様としての図5(a)は、ベルトコンベアによる場合のチューブ幅検査装置の装置概要図であり、図5(b)は、スキャナ7による場合のチューブ幅検査装置の装置概要図である。
【0016】
以下、図5(a)を参照して、ベルトコンベアによる場合のチューブ幅検査装置について、本発明の一実施形態を説明する。
以下の実施態様において、検査対象は自動車のヒータ等に使用されるフィンアンドチューブタイプの熱交換器10のコア11である。検査対象であるフィンアンドチューブタイプの熱交換器の要素部分は、図1と同じ参照符号により指定されている。
【0017】
検査装置1は、フィンアンドチューブタイプの熱交換器10のコア上面を検査するための検査装置を示す。コア下面検査においても同様の構成の検査装置1を使用して、同様の作動により検査を実施する。検査装置1は、画像処理装置2、CCDカメラなどの撮像手段3と、集光・照明手段4と、ベルトコンベア5と、ベルトコンベアの駆動装置に連結付属したエンコーダ6(必ずしも必要ではない)を具備する。
【0018】
エンコーダ6からの信号に連動して、検査対象物である熱交換器のコア11を照明手段4により照射し、撮像手段3がコア部のチューブとフィンを撮像して、画像処理装置2に撮像データを送付する。画像処理装置2では、A/D変換後、画像を256階調等の画像データに変換し、原画像データとして蓄積する。
なお、図5(b)に示すようなスキャナ7による場合のチューブ幅検査装置にあっては、以下の処理は、図5(a)のベルトコンベアによる場合のチューブ幅検査装置と同様なものとなる。
【0019】
この原画像データから、判定を行うべき単一チューブを選定するには様々な手段が考えられる。この原画像データのうちで処理すべき範囲を設定するために、まず基準点を決定して原画像データに対して第1ウィンドウを設定する必要がある。第1ウィンドウにおいては、チューブの長手方向をY軸として、基準点を決定する。基準点の決定方法としては、一例として、コア11がベルトコンベア上を搬送ガイドに沿って移送するようにして、撮像手段3がコア11の先端を検知し、既に入力済みの製品寸法データと照合して基準点を設定することができる。その他、画像処理して全体の外形形状を割り出して、基準点を設定してもよい。
【0020】
製品寸法データまたは画像処理により、それぞれのチューブの中心基準位置は割り出せるので、そのうちから対象とする判定を行うべき単一チューブを選定する。前記中心位置を基準に、チューブ長手方向(Y軸)と直角方向(X軸)に矩形の第2ウィンドウWを設定する。第2ウィンドウWのY軸方向も、チューブ長手方向である。
【0021】
チューブに対して横幅がチューブ幅3倍以上、縦方向の大きさ1画素(チューブ幅10画素の場合)の矩形内で平均化するとチューブが消え、その画像と原画像の差分をとるとフィンが消されチューブのみが残る画像となり、ノイズを取ればチューブのみの画像が得られる。原画像データを動的2値化処理し、背景輝度むらを排除する。
【0022】
この第2ウィンドウWにおいて、チューブを囲む最小四角形を求め、X軸方向の幅を算出する。この幅が、チューブが製品寸法データからみて、ほぼ直線とみなせる許容値と比較する。許容値未満なら、次の単一チューブの判定に入る。一方、許容値以上の場合、次に述べるチューブが弓状に撓んでいる場合の処理に入る。
許容値の設定の仕方は、様々考えられる。一例としては、コアのうちで比較的弓状に撓むことのない領域(例えば中心部)で測定した複数本のチューブの幅の平均値を求め、それに経験的に得られた一定値を加算して、許容値とすればよい。
【0023】
次に、チューブが弓状に撓んでいる場合の処理について述べる。この処理は、本発明の特徴部分である。
第2ウィンドウW上には、1本のチューブが取り出されている。この第2ウィンドウWをY軸方向に整数n個のブロックに分割する。図6は、第2ウィンドウWに表示されたチューブをブロックに分割した図である。各ブロックにおいてチューブの分割セグメントに対して最小四角形を求めて、X軸方向の幅を算出する。図6の場合では、a1、a2、a3、a4、a5を求める。図7は、測定したa1、a2、a3、a4、a5をプロットした図である。あらかじめ、チューブが弓状に撓んでいる場合に良品と判別可能な幅の閾値Aと比較して、全てそれ未満の場合、良品と判別する。
各ブロックに、少なくとも1つでも閾値Aを超えた場合、凹角部、変形曲がり、異物付着などの不良品と判別する。
【0024】
閾値の設定の仕方は、様々考えられる。一例としては、コアのうちで比較的弓状に撓むことのない領域(例えば中心部)で測定した複数本のチューブの幅の平均値を基準値として、それに経験的に得られた一定値を加算して、閾値とすればよい。あるいは、測定したa1、a2、a3、a4、a5等を蓄積しておき、統計的に処理をして閾値を決めてもよい。
【0025】
上記の実施態様においては、第2ウィンドウにおいて、まず前記許容値を超えた場合に、チューブをブロックに分割してセグメントの幅を測定したが、全てのチューブに対して、チューブをブロックに分割してセグメントの幅を測定するやり方で求めてもよい。この場合は、チューブの幅の測定精度が向上できる。
【0026】
以上述べたように、本発明によれば、弓状に撓んでいるチューブを、良品であるべきものを不良と判定してしまうことを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】車両用ヒータ等に使用される一般的なフィンアンドチューブタイプの熱交換器10を、図解的に示す図である。
【図2】フィンとチューブを拡大した図解図である。
【図3】樽型のコアが発生した場合の熱交換器のコアのフィンとチューブを、図解的に表示した図である。
【図4】図4(a)は、正常な直線状のチューブを検査する場合の説明図である。図4(b)は、弓状に撓んでいるチューブを検査する場合の説明図である。
【図5】図5(a)は、ベルトコンベアによる場合のチューブ幅検査装置の装置概要図である。図5(b)は、スキャナ7による場合のチューブ幅検査装置の装置概要図である。
【図6】第2ウィンドウWに表示されたチューブをブロックに分割した図である。
【図7】各ブロックにおけるチューブの分割セグメントの幅を測定したa1、a2、a3、a4、a5をプロットした図である。
【符号の説明】
【0028】
1 検査装置
2 画像処理装置
3 撮像手段
4 集光・照明手段
5 ベルトコンベア
6 エンコーダ
7 スキャナ
10 熱交換器
11 コア
12 チューブ
13 フィン
14 タンク部
15 サイドプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィン(13)とチューブ(12)を具備する熱交換器のコア(11)の外観検査方法において、
撮像手段(3〜5、7)が該コアを撮像して、画像処理装置(2)に、撮像データを入力して記憶させるステップと、
前記撮像データにおいて、単一チューブが撮像されている領域(W)を特定するステップと、
前記領域(W)における撮像データを平均化処理と動的2値化処理をしてチューブの画像のみを取り出すステップと、
前記領域(W)を複数のブロックに分割するステップと、
分割した各ブロックにおいて、チューブを囲む最小四角形を求めることでチューブの幅寸法(a1〜a5)を求めるステップと、
求められた各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)を、所定の閾値(A)と比較するステップと、
各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)が、全て、前記所定の閾値(A)以下の場合に、良品と判別するステップからなる熱交換器のコアの外観検査方法。
【請求項2】
前記撮像手段が、スキャナ(7)であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器のコアの外観検査方法。
【請求項3】
前記撮像手段が、CCDカメラ(3)と、集光(レンズ)・照明手段(4)と、ベルトコンベア(5)を具備することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器のコアの外観検査方法。
【請求項4】
フィン(13)とチューブ(12)を具備する熱交換器(10)のコア(11)の外観検査装置であって、該外観検査装置が、撮像手段(3〜5、7)と画像処理装置(2)を具備しており、
該画像処理装置(2)が、撮像手段(3〜5、7)が該コア(11)を撮像した撮像データを入力し記憶する記憶手段と、前記撮像データにおいて、単一チューブが撮像されている領域(W)を特定し、前記領域(W)における撮像データを平均化処理と動的2値化処理をしてチューブの画像のみを取り出して、前記領域を複数のブロックに分割する画像処理手段と、分割した各ブロックにおいて、チューブを囲む最小四角形を求めることでチューブの幅寸法(a1〜a5)を求める演算手段と、求められた各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)を、所定の閾値(A)と比較し、各ブロックでのチューブ幅寸法(a1〜a5)が、全て、前記所定の閾値(A)以下の場合に、良品と判別する判別手段とからなる熱交換器のコアの外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−38650(P2010−38650A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200024(P2008−200024)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】