説明

熱可塑性材料からフィルムウェブを形成するための方法および装置、ならびにそれにより形成されるフィルム

【課題】従来技術を改良する、あるいは従来技術に対して代替形態を提供する。
【解決手段】熱可塑性材料でできたフィルムウェブを形成するための方法および装置に関し、熱可塑性材料が、プラスチック溶融物として押出し方向にワイドスリットノズル2から少なくとも1つの層に押し出され、その後、少なくともローラ3の上を先に進むように誘導され、押出し方向、および押出し方向に対して横向きに張力が行使されることで、フィルムウェブを長手方向と横方向に延伸させ、張力を押出し方向、および押出し方向に対して横向きに加える際のフィルムウェブの温度は、少なくともその溶融温度に相当する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明、熱可塑性材料でできたフィルムウェブを形成するための方法に関する。詳細には本発明は、熱可塑性材料が、プラスチック溶融物として押出し方向にワイドスリットノズルから少なくとも1つの層に押し出され、その後少なくとも1つのローラの上を先に進むように誘導され、押出し方向および押出し方向を横切るように張力が行使されることで、このフィルムウェブを長手方向および横方向に延伸させる方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、このようなフィルムウェブを形成するための装置に関する。
【0003】
これに加えて、本発明はこれにより形成されるフィルムウェブに関する。
【背景技術】
【0004】
溶融物の押出し成型を利用して、熱可塑性材料からフィルムウェブを形成する際、2つの異なる方法には実質的に違いがあり、すなわち一方は、ワイドスリットノズルから平坦なフィルムを形成し、一方は円形スリットノズルからブローフィルムを作製する。
【0005】
ワイドスリットノズルを使用して平坦なフィルムを形成する際、ワイドスリットノズルから出てくる溶融物は、特定の厚さに引き伸ばされ、冷却される。フィルムの透過性、つやおよび何らかの機械的な特徴が、強く影響を受ける。典型的には得られるフィルムウェブは、押出し方向にポリマー鎖の配向を獲得し、これが、フィルムウェブの異方性の特性につながる。対応する方法は、例えば欧州特許第0319401号B1、米国特許第5,709,932号または欧州特許第1900498号A1より既知である。
【0006】
米国特許出願第2007/0267774号A1は、ワイドスリットノズルからフィルムウェブを押し出すためのシステムを開示している。押し出された溶融物は、冷却ローラに適用され、このローラの周りを進み、冷却ローラの面と接触する際に結晶化する。それは固体フィルムの形態で、冷却ローラから取り出され、その後最初に長手方向の延伸区域を通り、その後、横方向の延伸区域を通って進み、最終的にそれは巻き取られる。
【0007】
これとは対照的に、ブローフィルム工程では、管状の工具から出てくるプラスチック溶融物が、その後1つの管に形成される押出し成型であり、この溶融物は、いわゆる管形成区域において長手方向および横方向に引っ張られる。これは、押し出されたポリマーの溶融範囲を超えて、すなわち溶融形態で行なわれる。フィルムは、それが押出された速度よりも急速にドローオフ装置によって引っ張られる。その結果、フィルムは長手方向に延伸される。フィルムはさらに、ブロー成形によって横方向に延伸される。したがってその結果、二軸延伸されたフィルムとなるが、さほど強力に冷却されなかった結果として、平坦なフィルムと比べて光学的特性に欠点がある。
【0008】
ちょうど50年前、米国特許第3,471,606号は、ワイドスリットノズルから押し出されたフィルムを、最初2組の輪になった鎖の配列に取り入れることを提案した。2組の輪になった鎖が、フィルム搬送装置に配置されることで、その鎖の高さと角度を調節することができる。具体的には押出し方向で、したがって示される例では下向きに、それらを分岐するように配置することができることで、新たに押し出されたフィルムが、輪になった鎖の組を通って進む際に横方向に把持され、これにより横方向に延伸される。任意選択の冷却ローラをその後設けることができ、このローラを利用して長手方向の延伸を行なうことができる。通常、米国特許第3,471,606号は、溶融物の形態のフィルムウェブを一組の輪になった鎖を通るように誘導することで、溶融形態のフィルムウェブによって、すなわち、溶融範囲を超える温度で横方向の延伸を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0319401号B1
【特許文献2】米国特許第5,709,932号
【特許文献3】欧州特許第1900498号A1
【特許文献4】米国特許出願第2007/0267774号A1
【特許文献5】米国特許第3,471,606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術を改良する、あるいは従来技術に対して代替形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の最初の態様によると、熱可塑性材料でできたフィルムウェブを形成するための方法によって明確に示されたこの目的が解決され、この方法では、プラスチックが、ワイドスリットノズルから押出し方向に1つの層で押し出され、その後ローラの上を先に進むように誘導され、押出し方向および押出し方向に対して横向きの張力が、フィルムウェブに行使されることで、フィルムウェブを長手方向および横方向に延伸させ、この層は、フィルムの形態または溶融物の形態を交互に取ることができ、この場合フィルム形態は、溶融範囲を下回るように層を冷却する際に確立される、あるいは溶融形態は、溶融範囲を超えて層を加熱する際確立され、この場合フィルムウェブは、(a)最初は押出し速度で溶融形態で押し出され、(b)次いでその後、溶融形態で冷却ローラ構成まで直接誘導され、この場合フィルムウェブは、押出し速度より速い周速度で冷却または平滑化ローラの周りに誘導されることで、フィルムウェブは長手方向の延伸を受け、(c)続いて、冷却ローラ構成から出るように誘導され、(d)その後横方向の延伸を受け、この場合長手方向と横方向の2つの延伸ステップが共に、溶融形態の層に対して行なわれることで、延伸は、両方の場合とも溶融物を引っ張るような形態で行なわれる。
【0012】
以下はこの問題に関して概念的に説明すべきである。
【0013】
「熱過疎性材料」は、一般的に知られている。フィルムウェブ形成を実践する際、最も一般的に利用されるのは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE、HDPE、LDPE)、ポリアクリル酸(PA)、ポリスチレン(PS)またはポリ塩化ビニル(PVC)を利用した、またはそれらで作製されたポリマー合成物である。
【0014】
本発明の構成の範囲内で、本明細書で一般的なポリマー合成物について述べることが可能である。
【0015】
フィルムウェブの押出し成型は、「少なくとも1つの層で」行なうべきである。単一層のフィルムの押出し成型は恐らく、実践するのに最も簡単なケースである。しかしながら複数の層を同時に押出し成型することもできる。この場合、必ずしもポリマー合成物全体を溶融形態でそのそれぞれの層に長手方向および横方向に延伸させる必要はないが、このような条件が単に1つの層に関して満たされる場合にも、本発明は提示される。
【0016】
しかしながら好ましくは、多層フィルムウェブの複数のまたはさらには全ての層が、溶融形態で存在する限りは、フィルムウェブは、長手方向または横方向に延伸される。
【0017】
本明細書の本出願の意味において、フィルムウェブの長手方向の延伸は、押出し方向の延伸と理解される、すなわち延伸は、フィルムウェブがワイドスリットノズルから出て、その後さらにシステムの部品を通って搬送される方向であるのに対して、横方向の延伸は、押出し方向に対して90°ひねった延伸として理解される。
【0018】
一般に、この特許出願の構成の範囲内で、曖昧な物品や曖昧な数値的な単語は、「少なくとも」情報として理解すべきであることに留意されたい。したがって「1つ」、「2つ」などの記述がある場合は常に、それが、その場所「正確に1つ」、「正確に2つ」などを意味する特定の文脈から用いられているのでなければ、これは「少なくとも」情報として理解すべきである。
【0019】
用語「延伸」は、この出願の構成の範囲内で、包括的な用語として理解すべきである。延伸が、結晶化したフィルムウェブに対して行なわれる場合、すなわちフィルム形態のフィルムウェブに対して行なわれる場合、包括的用語という形で「引き伸ばす」ことを言い表す必要がある。一方、延伸が、溶融形態のフィルムウェブに対して行なわれる場合、好ましくは高度に粘性のある溶融物に対して行なわれる、すなわち溶融範囲を超え、かつ気体状態に移行する範囲を下回る温度で行なわれる場合、そのときそれは、「引き延ばす」ことを言い表す必要がある。
【0020】
「溶融範囲」は、それを下回ると、押し出された層がもはや溶融物として存在せず、固化したフィルムとして存在する温度範囲または温度を、簡単な言葉で表すことを目的としている。平坦なフィルムを形成する際、このような特性の変化は通常、ワイドスリットノズルの直後の冷却ローラ構成の冷却ローラ上で起こり、この場合冷却ローラ構成は、1つの冷却ローラまたは平滑化機構のいずれかである。
【0021】
プラスチックの温度が、溶融範囲を超えている場合、このときプラスチックは溶融形態を採る。一方温度が溶融範囲を下回る場合、このときプラスチックはフィルム形態を採る。その間に中立の範囲がある。
【0022】
溶融形態とフィルム形態は、急速に短時間変形させた後、元の状態への復元を観察することによって区別することができ、溶融物では、変形が緩められたとき、フィルムの場合より復元が有意に小さくなる。フィルムがほとんど流れ出ることができないのに対して、溶融物は流れ出る。
【0023】
マクスウェルスプリングダンパーモデルでは、溶融物には、ほとんどバネはなく、弱いダンパーのみを有する。
【0024】
いくつかの熱可塑性材料では、結晶化を観察することができる。ここでポリマー中の分子鎖の一部の順序付けは、溶融物の固化中に生じる。結晶化原子核から始まり、分子鎖は一団となり、いわゆるラメラを形成する。
【0025】
微結晶の形成は、冷却状況、ポリマー中の添加剤や充填剤および固化する際の流れ状況に左右される。その後の延伸が、この分子の配列を変えることで材料の特性を変える。
【0026】
先に述べたように、ポリマー材料の結晶化に関する多くの現象は、最終的には理解されていない、あるいは実証すらされていない。様々なモデルが、実験に基づく知見によって支持されており、容認されてきた。
【0027】
全てのポリマーは、極めて長い分子鎖で構築されている。熱可塑性ポリマーは、それらが、温度上昇に伴って溶融することを特徴とする。溶融物では、分子鎖は、ノット型で不規則に配列されており、このノットは、互いの中を何度も通過している。多くの熱可塑性ポリマーでは、この無秩序状態は、固化した固体にある非結晶構造として冷却中維持される。一方で、一部が結晶のポリマーの溶融物が冷却されると、この鎖は次第に余り動かなくなり、ひとりでに規則的に配列し始める。これにより、結晶化と呼ばれる正しく並べられた状態が形成される。
【0028】
ポリマーを結晶化する際、分子鎖の一部は、互いに対して平行になるようにして落ち着く。エネルギー的に最も好ましいのは、分子がこの分子鎖の全長にわたって平行に配列された場合である。しかしながら溶融物の分子鎖は、絡み合ったノットとして存在しているため、現実にはこの順序を実現することができない、あるいは極めて高い圧力においてのみ実現することができる。したがって実際には、折り畳まれた分子鎖の微結晶が形成され、この微結晶が、例えばラメラ構造などのより大きな構造ユニットの基本構造を形成する。この順序は、完璧な形としては見られない。したがって各々の微結晶は、正しく並べられた(微結晶)および無秩序な(アモルファス)小領域で構成される。
【0029】
一般に、熱可塑性材料は、加熱する際のその挙動において低分子の固体物質とは異なっている。小さなまたは低モル質量を有する全ての純粋な、確定された有機物は、固定された溶融点を持つ。摂氏10分の1まで正確に決めることができる特定の温度において、この物質は、固体から液体状態に切り換わる。
【0030】
一方熱可塑性物質は、異なる長さと異なる分岐の個々のポリマー鎖を有する。したがってこのポリマーは、厳密な溶融地点ではなく、いわゆる「溶融範囲」を有する。このポリマーは、これより高い温度で、柔らかくなり、プラスチックになる。この粘性のある溶融物は変形させることができ、冷却する際に固体状態に戻される。
【0031】
したがってこの処理温度の基準点が、ポリマーの溶融範囲である。例えばポリエチレンの場合、溶融範囲は110℃から135℃にあり、ポリプロピレンの場合は、165℃前後、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネトの場合は、260℃前後である。ポリ塩化ビニルは、初期分解と共におよそ160℃で溶融する。
【0032】
微結晶溶融点を決めることによって、熱可塑性材料の結晶領域に関する量的な記述が可能になる。アモルファス分率に関して、そのガラス転移温度は、これに相当する温度範囲である。ガラス転移は、高分子材料の、壊れやすい、堅い、ガラス質状態から、可撓性の柔らかい弾性のある挙動への可逆的な変化として理解される。この転移は、狭い温度範囲で、すなわちガラス転移温度内で加熱する際に生じる。「凍結温度」という呼称は、同義語として理解すべきであり、ポリマーを冷却する際の同一の工程を表している。ガラス転移は、プラスチックの機械的特性に関して特に重要である。フィルムを作製するのに使用される大半のポリマーは、アモルファス領域と結晶領域の両方を有するため、ガラス転移温度および微結晶溶融点は、フィルムの加工および適用に関して重要な温度範囲である。
【0033】
ポリマーの溶融範囲は時には、せん断弾性曲線で正確に確定することができない場合もある。いわゆるDSC曲線において、すなわち温度と比較して吸熱性の熱流または発熱性の熱流をグラフ化する際、一方で確定された最大値によって溶融範囲を十分に割り出すことができる。
【0034】
ポリプロピレンの例に関して、確定された最大値は、ポリマーを160℃前後から170℃前後で加熱する際に確立されると仮定することができる。この範囲はまた、微結晶溶融範囲とも呼ばれる。
【0035】
ポリプロピレンを冷却する際、発熱性の最大値は、115℃前後で見られる。
【0036】
本特許出願の構成の範囲内における拡大した観点では、「溶融範囲」は、微結晶溶融範囲と再結晶化温度の間の温度範囲として解釈される。これより狭義の観点では、微結晶溶融範囲または再結晶化温度の1つのみが、溶融温度として解釈されるべきである。押し出された溶融物が、両方の延伸工程において微結晶溶融温度を超えて保持された場合、二軸延伸を確実に溶融形態で行なうことができる。
【0037】
この溶融物が、なお再結晶化温度を超えている限り、溶融物の処理に適した有利な特性を失わずに、微結晶溶融温度未満で行なうことも実現可能である、
【0038】
「フィルムウェブ」は、フィルム形態または溶融形態で存在することができる。「フィルムウェブ」は、「溶融物」および「フィルム」の包括的な用語として本明細書では理解すべきである。
【0039】
フィルムウェブが「後に」冷却ローラ構成から出るように誘導され、「その後」横方向の延伸を受けるという事実は、各々のケースにおいて、「任意の後に」として、あるいは「任意のその後」として理解すべきである。したがってそれは、その後に「直ぐに」、すなわち「直後に」が続く必要はない。
【0040】
本発明は有利には、その最初の態様によって、フィルムウェブに対して、光学的および機械的に調節可能であるという特性を持つ工程を実行することができるということを達成する。フィルムウェブの層が溶融形態である限り、両方の延伸ステップが実行されるため、大規模な設備費用や労力なしに、二軸式に延伸されたフィルムを形成することができる。
【0041】
フィルムウェブは、押出し成型ステップと、冷却ローラ構成における長手方向の延伸の間は溶融形態で保持される。フィルムウェブはワイドスリットノズルから出てくると、いかなる場合でも高温であり、必然的に溶融形態である。したがってこの最初の熱を維持して、冷却ローラ構成において長手方向の延伸を行なうことが提案されている。このとき加熱措置も、過度に温度を維持する措置も実施する必要がなくなる。
【0042】
本発明は、この溶融物が最初に長手方向の延伸を受け、その後始めて横方向の延伸を受けることを望んでいる。この両方の延伸ステップは、フィルムウェブの層がなお溶融物として存在している限り、本発明に従って行なわれるべきであるが、具体的には、冷却ローラ配置の冷却ローラ上で溶融物を急速かつ強度に冷却することにより、平坦なフィルム押出し工程において形成されるフィルムウェブに優れた光学特性を与えることが知られている。
【0043】
US 3,471,606が横方向の延伸を最初に行なうことにより、比較的厳密に制限されているのに対して、本発明は、長手方向の延伸が最初に行なわれた場合、それが有意に1つの利点となることを示した。したがって、ワイドスリットノズルの直後にローラを利用して長手方向の延伸を行なうことがとりわけ可能であり、この場合、このローラは好ましくは、冷却ローラであってよい。このような構造の場合、その地点までのシステムには、従来の平坦なフィルム押出しシステムとは実質的な違いはない。したがって、所望されるフィルムの結果によって、この工程が横方向に延伸する前に、急速冷却によって行なわれるべきか、またはむしろゆっくりとした冷却によって行なわれるべきか、あるいはわずかに冷却されるのかを調節することができる。
【0044】
1つの可能な実施形態では、フィルムウェブは、冷却ローラ上に保持され、横方向の延伸まで溶融範囲を超える温度に維持される。
【0045】
好ましい一実施形態では、フィルムウェブは、フィルム形態に関する限り冷却ローラ上で冷却され、これは、溶融形態よりも簡単に冷却ローラから解放される。
【0046】
本発明は、簡素な冷却ローラと、平滑化機構の両方を利用して実行することができ、平滑化機構の場合、押出し成型が、冷却ローラに対して行なわれるか、カウンターローラに対して行なわれるかは関係ないことに留意されたい。本出願の構成の範囲内で、一部の場合において、より読みやすくするために冷却ローラについてのみ述べることにする。この文脈の後にこれとは反対のことが書かれていなければ、冷却ローラはそれぞれ、「簡素の冷却ローラまたは平滑化機構ローラ」として理解すべきである。
【0047】
解放装置を使用して、とりわけ圧縮空気または吸引手段を使って、冷却ローラからフィルムウェブを解放するのが好ましい。より強力に冷却ローラからフィルムウェブを解放するのを助ける程、より温かい状態でフィルムウェブが冷却ローラから進むことが可能になる。その後、横方向に延伸させるためにフィルムウェブを溶融形態にする、またはそこに保持するのに必要な加熱エネルギーが少なくて済む。
【0048】
2つの延伸ステップにおけるフィルムウェブの少なくとも1つの層が、その溶融温度よりも高い温度を有することができることにより、延伸ステップは、引き延ばし工程であり、すなわち溶融形態の層の延伸、または理想的には溶融形態のフィルムウェブ全体の延伸である。これを行なうのに強い力は必要でないため、システム全体を極めて費用効果的に、かつコンパクトに構築することができる。
【0049】
2つの延伸ステップにおけるフィルムウェブの層は、その再結晶化温度よりも高い温度を有することができることは既に言及している。これは通常、微結晶溶融温度よりも低い。しかしながらこれら2つの温度の間にあるその窓において、層は、そうする間に微結晶溶融温度に再度達することなく、予め再結晶化温度に達しない限り、溶融物として存在することになる。
【0050】
冷却ローラを使用して溶融物を、押出し成型温度より有意に低くはあるが、それでも溶融範囲を超える、あるいは溶融範囲にある温度まで冷却することは、とりわけ実現可能である。冷却ローラの温度を利用して、押出しステップの後にフィルムウェブをどの位冷却すべきか、フィルムをどの位高温にしたままにするかを調節することも容易に可能である。冷却ローラの後に結果として生じるフィルムウェブの温度は、とりわけローラの温度、接触領域および接触時間により影響される。
【0051】
進行中の工程における冷却ローラの温度は、微結晶の大きさに影響を与え、よってとりわけ容易に調節可能なやり方でフィルムウェブの特性にも影響を与える。今日のシステムでは、冷却ローラの温度は、好適な技術措置によって2Kの範囲内に容易に一定に維持することができる。通常実際には、冷却流体が冷却ローラの中に汲み上げられて、冷却ローラの温度を調整する。この温度は通常、ローラから戻ってきた冷却流体で測定される。ローラの表面温度と、フィルムの温度の差を容認することは、各々の場合の戻り温度が、ローラの表面温度にほぼ一致することを意味するものと推測される。
【0052】
当然のことながら、フィルムおよび/またはローラの表面の温度を、非接触性の赤外線測定を利用して測定することも可能である。
【0053】
ノズルから出てくる溶融フィルムを、できるだけ冷却ローラの表面に近づけて載せるために、エアナイフ、真空箱および/またはエアブラシを使用すべきであることが提案されている。これらは、空気流の助けを借りて機能する。結果として、冷却ローラとフィルムの間の空気の吸い込みが回避されるが、これは、空気を吸い込むことによって、冷却を遅らせ、よってフィルムの濁度や他の特性の低下を引き起こす可能性があるためである。
【0054】
冷却ローラ構成と横方向の延伸の間で、フィルムウェブを、加熱ステーションを通るように誘導することができる。本出願の意味における「加熱ステーション」は、能動的な加熱手段に適合されることで、通り過ぎていくフィルムウェブの温度を維持する、あるいは上昇させるステーションとして理解すべきである。作業中に単に加熱するだけの機械フレームは、本明細書に含むべきではない。むしろ能動的加熱手段は、仮に加熱させることを目的として独立して作動させることができる場合、したがって例えば水または油などの流体を加熱するための流路と帰路、ならびに/あるいは動力接続部をとりわけ有するようなものとして単に理解すべきである。簡単なケースでは、これは例えば、好ましくは流体、または電気を利用してその内部が加熱された、あるいは例えばレーザービームを利用して外側または内側から加熱された加熱ローラであってよく、あるいはそれは、フィルムウェブがそこを通って進む放熱装置または加熱炉であってよい。冷却ローラ構成における最初の延伸ステップと、横方向の2番目の延伸ステップの間にフィルムウェブを加熱する際、とりわけフィルムウェブの冷却ローラから予め熱エネルギーが既に回収されているとき、溶融形態のフィルムウェブによってこの2番目の延伸ステップを実行し易くなる。
【0055】
フィルムウェブの温度は、横方向の延伸ステップの間に調整することができ、この延伸ステップによって、より信頼できるフィルムの成果につなげることができる。
【0056】
しかしながら本発明のこの評定によると、システムを好適に構成した場合、横方向の延伸ステップの間にフィルムウェブの温度を調整したり、フィルムウェブが加熱ステーションを通るようにする必要はない。
【0057】
進歩的な態様の構造上の実施形態では、フィルムウェブは、2つの回転式の調節可能なディスクの間で横方向の延伸を受けることができる。このようなディスクを備えた幅の広い延伸ステーションは、極めてコンパクトに構築することができるにも関わらず、この工程に高い調節能力を与える。
【0058】
冷却ローラ構成の最初で行なわれる長手方向の延伸の後に実現されるべきフィルムウェブの横方向の延伸は、フィルムウェブにあてがわれる2つの回転ディスクを利用して行なわれ、このディスクを介して、フィルムウェブを少なくとも溶融温度で誘導することがとりわけ実現可能であり、この場合フィルムウェブは、せいぜいランーイン位置とランーアウト位置の間でディスクの円周のほぼ半分を囲み、ディスクは、ランーイン位置とランーアウト位置の間にある仮想接続ラインに対して、垂直方向に対して角度αで傾斜している。とりわけフィルムウェブが、完全に溶融形態で存在している場合、所望される横方向の延伸のために、もっぱら低い張力を押し出し方向に対して横方向に加えるだけでよく、これは、ディスクを垂直方向に対して傾斜させて進めることによってわずかな労力で容易に達成することができる。
【0059】
ディスクの角度は好ましくは調節可能であることにより、押出し方向に対して横方向に様々な延伸比を設定し、このような方法で構成された装置を容易に始動させることができる。
【0060】
2つの回転ディスクによるこの構造上の実施形態の代替として、あるいはそれにさらに加えて、フィルムウェブが、2つの分岐バンドを利用して横方向の延伸ステップを受けることが提案されている。
【0061】
とりわけ、長手方向の延伸の後に、フィルムウェブがその縁部において、輪になった循環式のバンドの組の間に留められ、押出し方向から見たとき、このバンドの組が、互いから離れるような距離を有することで、フィルムウェブは、そこを通過して進むとき、その縁部においてバンドの組の中に留められ、これらバンドの距離が次第に大きくなる結果として、押出し方向に対して横方向に延伸されるということが実現可能である。
【0062】
当業者は、本発明によって小さな力しか必要とされなくなった結果として、横方向の延伸に必要な横方向の運動を行なうのに複数の別の解決法を利用することができることを認識するであろう。
【0063】
横方向に延伸する際に、締まり嵌めを利用してフィルムウェブを横方向に保持することにより、とりわけフィルムウェブをその縁部において確実に留めることにより、押出し方向に対して横方向の張力の取り込みを改善させることができることを規定されている。
【0064】
横方向の延伸の後、フィルムウェブの層を、フィルム形態に冷却することができるが、あるいはそれは依然として溶融形態のまま存在する場合もある。後者の場合、そのときフィルムウェブをそれがフィルム形態になるまで冷却することが規定されており、そのためには、例えば少なくとも1つの冷却ローラの上にそれを誘導する、および/または冷却用の空気流にそれを曝すことが可能である。
【0065】
この層のフィルム形態のフィルムウェブは、冷却ローラ構成と横方向の延伸の間に、長手方向の引き伸ばし加工および/または温度調節工程を受けることを規定することができる。
【0066】
長手方向の引き伸ばし加工は、長手方向の引き伸ばしデバイス(「MDO」と呼ばれる)によって実現することができ、ここではフィルムウェブは通常、保持ローラと引き伸ばしローラの間で元の長さの5%以上長く伸ばされるが、元の長さの10倍まで、およびそれ以上にも容易に伸ばされる。このフィルム形態の結果として、フィルムウェブまたは層の「引き伸ばし加工」について述べる。
【0067】
温度調節工程、進行するフィルムウェブは、通常温度調節ローラ、または複数の温度調節ローラを備えた温度調節部を利用して温度処理を受ける。この温度調節処理は、能動的加熱手段または冷却手段を利用してフィルムウェブの温度に影響を及ぼすことで、フィルムウェブの温度を維持する、わずかに冷却する、あるいはわずかに上昇させることで成り立っている。例えば温度調節ローラは、送り装置、内部の誘導装置、および流体用の排水路を有しており、流体を流体回路に接続することができ、この回路で流体、主に水や油が自発的に加熱され、冷却される、および/またはその温度を測定することができる。簡素な例では、流体の戻り温度が流体回路において測定され、この温度から小さな誤差が考慮されて、ローラの温度が決められる。温度調節工程は調節可能であるため、進行するフィルムウェブは、一方で温度調節ローラへの流れにおけるフィルムウェブの温度と、一方で温度調節ローラから排水路へのフィルムウェブの温度の差に関連して、例えば+/−50K、+/−30K、+/−10Kまたはそれ未満の温度変動を受ける。
【0068】
本出願の構成の範囲内で、技術的な平均温度について述べられていることを理解されたい。プラスチックの温度は、溶融形態およびフィルム形態の両方でフィルムウェブ内で2K以上の変動が容易にあり得る。
【0069】
本発明の第2の態様によると、明確に示された目的は、熱可塑性材料からフィルムウェブを形成するための装置によって解決され、この装置は、ワイドスリットノズルと通じている押出機と、ワイドスリットノズルの下流にあるローラを備えており、このローラを介して、ワイドスリットノズルから出てきたフィルムウェブを、1つの層を有する溶融物として取り出すことができ、またワイドスリットノズルの直後にある冷却ローラ構成と、その後に続く流路にある同一の装置に配置された横方向の延伸ステーションを備えており、この装置は、フィルムウェブを、この層の溶融範囲を超える温度で溶融形態で、冷却ローラ構成および横方向の延伸ステーションに供給するように適合されている。
【0070】
冷却ローラ構成と、横方向の延伸ステーションの双方がそれぞれ、溶融形態のフィルムウェブによって延伸工程を行なうことができるならば、すなわち単にこの溶融物を引っ張る作業を行なうだけで済むならば、この装置は、極めてコンパクトに、それでいて極めて効果的に構築することができることは既に説明してきた。
【0071】
換言すると、熱可塑性材料のフィルムウェブを形成するための装置は、フィルムウェブを長手方向と横方向に延伸させるためのデバイスを有することができ、その場合フィルムウェブを少なくとも溶融範囲に相当する温度でこのデバイスに供給して長手方向と横方向に延伸させることができ、この場合供給および/または調整手段が設けられ、2つのデバイスに溶融形態のフィルムウェブを供給するように適合されている。
【0072】
フィルムウェブを長手方向に延伸するデバイスは、冷却ローラによって形成されるべきであり、この冷却ローラはワイドスリットノズルの下流に配置され、溶融形態でワイドスリットノズルから出てくるフィルムウェブによって直接作用される。
【0073】
したがって古典的な平坦な押出し成型システムより知られる冷却ローラが設けられ、このローラが、2つの異なる機能を引き受ける、すなわち一方でそれは、ワイドスリットノズルからの押出し速度より速い表面の周速度で回転することができる。これが、フィルムウェブの長手方向の延伸につながる。これと同時にローラは、冷却ローラとして構成されており、冷却流体用の流体供給装置を有しており、この冷却流体によって、ローラが、溶融温度を下回り、かつローラに対するフィルムウェブの入り口温度を下回る温度に維持される。
【0074】
例えば冷却ローラの温度は、溶融物がその上を進む温度より10Kから200K低くてよい。
【0075】
一般に、本出願の構成の範囲内で、「調整する」とは、包括的な用語として理解されることに注目すべきである。したがって「調整する」には、制御することも含まれるが、技術的に正確な意味における調整、すなわち所望の値と、実際に測定された実際値の比較によるものが含まれる。
【0076】
装置が、ウェブの最初の行程と、2回目の行程に関して、それを誘導するような幾何学形状を有することで、一方で最初のウェブの行程が、横方向の延伸ステーションを含み、一方で2回目のウェブの行程が、横方向の延伸ステーションを迂回するといった2つの作動モードを選択することが提案されており、横方向の延伸ステーションの迂回とは、横方向の延伸ステーションの構成部品を通過するが、これらがフィルムウェブに対して全く横方向の延伸力を行使しない構成として理解すべきである。例えば横方向の延伸ステーションが回転ディスクの場合、これらのディスクは、互いに平行に配置することができる、あるいは輪になった循環式のコンベヤベルトの場合、これらは、互いに平行に配置することができる。
【0077】
代替として、あるいはこれに加えて、制御手段を予め定義することで、装置の2つの作動モードの比率に互いに影響を及ぼすことが提案されている。例えば、フィルムウェブを平坦なフィルムの押出し成型物として形成するために、冷却ローラを、ワイドスリットノズルの直後に冷却することで、横方向延伸ステーションに到達するまでにはなおさら、例えば冷却ローラを離れる際には、もはや溶融形態は存在せず、フィルムは既に固化されている。あるいはこれと反対に、作動モードは、急速な冷却が回避され、フィルムウェブが、できるだけ温かい状態で横方向の延伸工程まで誘導され、そこでフィルムウェブは、フィルムウェブをより適切に誘導することができ、ローラから解放することができるほどにしか冷却されない。あるいは理想的には、1つまたは複数のまたは連続して、各々の作動地点をこれらの2つの極値の間に設定することができる。
【0078】
フィルムウェブを横方向に延伸させるためのデバイスは、2つのディスクを備えており、これら2つのディスクが、互いから離間され、フィルムウェブの縁部にあてがわれており、このディスク上でフィルムウェブを、その円周の周りで部分的に輪を描きながら、ランーイン領域とランーアウト領域の間で誘導させることができることが、横方向の延伸ステーションに対して構造上提案されており、この場合ディスクは、それらが調節デバイスを利用して、ランーアウト位置とランーイン位置の間の仮想接続ラインの領域内で垂直方向からおよそ角度αで回転することができるように配置されている。
【0079】
フィルムウェブを誘導するのに使用されるディスクの円周領域は、フィルムウェブを保持するために手段を備えるように構成されることをさらに規定することができる。本明細書では、例えば半径方向に突出する針、またはランーイン領域とランーアウト領域の間でディスクの周りで輪を描くベルトが考察される。
【0080】
フィルムウェブを横方向に延伸させるためのデバイスは代替として、2組の輪になった循環式のバンドであり、これらは互いから離間され、フィルムウェブの縁部にあてがわれることは既に言及してきたが、このバンドはそれぞれ、バンドギャップを画定し、その中にフィルムウェブをその縁部において留めることが可能であり、輪になった循環式のバンドの組の間の距離は、フィルムウェブが通り抜ける方向から見たとき、広がるように構成されている。
【0081】
横方向の延伸を行なうために本明細書に列記される解決法は単に、例としての役目をしているだけであり、横方向の動きを実現するのに物理的に多くの可能性があることは当業者に明白である。
【0082】
各々の場合において、フィルムウェブを横方向に延伸させるためのデバイスを、断熱式で任意選択式に能動的に加熱される筐体の中に収容することで、フィルムウェブを横方向に延伸する際に、フィルムウェブまたはその少なくとも1つの層が、確実に溶融範囲を超える温度を有することを規定することができる。
【0083】
この装置は、提案されたそれぞれの処理ステップに関して特定のステーションを有することができる。
【0084】
本発明の意味において、フィルムウェブは、必ずしも層が1つのみの熱可塑性材料で構成されるのではなく、それは多層になるように構成することも可能であり、その場合個々の層は、同一のポリマーおよび異なるポリマーで構成されてよい。
【0085】
本発明は、極めて簡単な方法で、フィルムまたは層に横方向に追加の配向を与えるためのいくつかの可能性を示している。この解決法は、比較的簡単であるため、極めて費用が安くなり、これはフィルムの他の特性にもつながる。
【0086】
添付の図面を参照して、本発明を、2つの例示の実施形態を利用して以後詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明による装置の極めて概略的な図である。
【図2】図1によるフィルムを横方向に延伸させるための装置の図である。
【図3】図2による装置の側面図である。
【図4】図2および図3による装置の動作モードを示す図である。
【図5】平坦なフィルムシステムの代替の一実施形態の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
いわゆる平坦なフィルムを押出し成型する方法によって、熱可塑性材料からフィルムウェブを形成するための装置を、極端に簡素化された概略図において図1から見ることができる。装置は押出機1を備えており、この押出機は、溶融物送り装置10を介してワイドスリットノズル2とつながっており、押出機1において準備された熱可塑性材料の溶融物の流れが、このノズル2から、冷却された鋳造ローラ3上に置かれ、このローラが、指示された回転方向に作動し、ワイドスリットノズルから溶融物を取り出して、フィルムウェブを形成する。押出機1を1つだけ備える本明細書に示される装置の代わりに、複数の押出機を設けることで、対応する熱可塑性材料の多層フィルムウェブを形成することもできることを理解されたい。
【0089】
鋳造ローラ3が指示された回転の方向に一定の周速度で作動され、この周速度は、ワイドスリットノズル2からの溶融物としてフィルムウェブが存在する出口速度に同期する速度を超えるように調節され、その結果、いわゆる押出し方向でワイドスリットノズル2から出てくるフィルムウェブが、押出し方向に張力を受け、この点において、フィルムウェブは長手方向に延伸される。加えられる張力の大きさ、および結果として確立される長手方向の延伸の程度は、先に記載した、ワイドスリットノズルからのフィルムウェブの出口速度に同期する速度に対する鋳造ローラ3の周速度の上昇を利用して決められる。これに加えて、ワイドスリットノズル2からのその出口におけるフィルムウェブは、このような工程のために、少なくともこのフィルムウェブの溶融温度に相当する温度を有するため、先に説明した長手方向の延伸は、フィルムウェブがまだ溶融状態であるため、小さな力を加えるだけで済むときに行なわれる。
【0090】
鋳造ローラ3において既に長手方向にある程度まで伸ばされたフィルムウェブはその後、図1に概略的に示したようにフィルムウェブを横方向に延伸させるためにデバイス4に、具体的にはEによって示されるデバイス4の入り口に供給され、デバイス4を通過し横方向に延伸された後、フィルムウェブは、Aによって描写される出口においてデバイス4を出て、例えば巻き取りなどの別の処理工程へと供給することができる。
【0091】
フィルムウェブを横方向に延伸させるデバイス4の正確な構造を、図2および図3に見ることができる。
【0092】
フィルムウェブは、入り口Eにおいて、デバイス4を取り囲んでいる断熱性の筐体46へと進入し、最初は複数の加熱ローラ48の上に誘導され、このローラが温度調節されることで、入り口Eにおいてデバイス4に進入するフィルムウェブが、その他の方法でその溶融温度を超える温度にならない限り、フィルムウェブの温度は再度、少なくともその溶融温度に一致するようになる。
【0093】
その溶融温度を超える程度まで温度調節されたフィルムウェブは、その縁部においてセンタリング装置45を介して2つのディスク40へと進み、このディスクは、駆動装置41を利用して回転式に駆動させることができ、これに対応するように指示された配向に設置されている。このデバイスの構造が、図2に見ることができる中心軸Mに対する鏡像として実施されることで、本明細書に提示されるデバイス4に関する説明は、中心線Mに対して装置の右半分と左半分の両方の鏡像として適用される。
【0094】
このディスクは、フィルムウェブの最初の幅BA、すなわちセンタリング装置45の領域にある幅に適合するように、幅調節ユニット42を利用して中心軸Mに対するその位置に関して調節することができる。
【0095】
さらに角度調節ユニット43が設けられ、このユニットによって、ディスクを、垂直方向から角度αだけ傾斜して設置することができる。
【0096】
とりわけ図3から見ることができるように、センタリング装置45を介して供給され、少なくとも溶融温度を有するフィルムウェブは、ほぼ6時の方向でランーイン位置400においてディスク40の外周上を進み、さらに通過しながら、ディスク40の外周の約半分の周りで輪を描き、最終的にはほぼ12時の位置にある401によって特定されるランーアウト位置において、それが再びディスクの円周から持ち上がり、複数の偏向ローラと温度調節ローラ49を介して、装置4から出口Aに供給される。
【0097】
ディスクのランーアウト位置401とランーイン位置400の間の仮想接続ラインを、角度調節ユニット43を利用して垂直方向から角度αだけ回転させることができるため、フィルムウェブは、ランーイン位置400からランーアウト位置401に進む際、その縁部においてディスクの外周に載っていることから、結果として押出し方向に対して横方向の延伸を受けることになり、これにより押出し方向に対して横方向に向けられた張力の作用により、フィルムウェブの元の幅BAが、最終的な幅BEに変わる。
【0098】
デバイス4を通過する際のフィルムウェブは、少なくともその溶融温度に相当する温度に維持されるため、押出し方向に対して横方向にフィルムウェブの幅を広げるのに必要な張力は、比較的小さく、垂直方向に対してこのような範囲まで傾斜して配置されたディスク40によって採り入れることができる。
【0099】
このようなデバイス4を始動させるために、ディスク40は、角度調節ユニット43によって最初は垂直方向に整列されて、すなわち角度αがゼロになるように設置されており、フィルムウェブは、横方向に延伸されないし、幅も拡張されない。フィルムウェブが、継続してデバイス4を通って進む間、ディスク40が、角度調節ユニット43を利用して所望の傾斜角αまで移動されることで、フィルムウェブの所望される横方向の延伸および幅の拡張が徐々に実現する。
【0100】
とりわけ図4による図から見ることができるように、横方向の延伸の大きさまたは程度は、この傾斜によって決まる、すなわち2つのディスク40の傾斜角αによって決まる。延伸比率「R」は、指示された大きさから図1による図により決めることができ、この場合、Dは、ディスク40の直径を決め、αは、ディスクの傾斜角であり、BAは、フィルムの最初の幅で、BEは、フィルムの最終的な幅または完成した幅であり、以下の関係式は、BAとBEの間で成り立つ。
BE=BA÷2・D・sinα
【0101】
延伸比率Rは、このとき以下のようにして得られる。
【0102】

【0103】
横方向に延伸させるためにフィルムに加えられる張力を高めるために、ディスク40は、例えばその円周領域にあてがわれた針ホルダー44に適合させることができ、この針ホルダーはそれぞれ針を持っており、この針がフィルムウェブを突き通すことにより、フィルムウェブとディスク40の間に締まり嵌めを形成し、ディスク40が、垂直方向から角度αだけ傾斜したことにより、ほとんどロスがなく張力をフィルムウェブに採り入れる。フィルムウェブの縁部領域にあるこれに伴う打ち抜き穴は、均一な縁部のフィルムウェブを達成する目的で、打ち抜き穴が離れている場合、フィルムウェブは巻き取り工程の前に縁部のトリミングを受けるため容認することができる。
【0104】
先に記載した実施形態の変形形態において、フィルムウェブが最初に鋳造ローラ3上で長手方向に延伸されず、但し例えば最初に溶融地点を下回る温度まで急冷されることで、高度のつやを実現するのであれば、示されるデバイス4の中の入り口Eにおけるフィルムウェブの供給速度より速い周速度でディスク40を作動させることも実現可能であるように思われる。このような場合、フィルムウェブは最初に、加熱ローラによって溶融温度を超える温度まで再度加熱され、その後デバイス4を通って進み、ディスク40上に進む前に、最初に押出し方向に、すなわち長手方向に延伸され、その後ディスク40上に載っている間に押出し方向に対して横方向に延伸される。
【0105】
図3による図において、ディスク40の少なくとも部分的に輪を描く領域に、加熱デバイス47、例えば調節可能な赤外線ヒーターを設けることで、フィルムウェブの温度が、デバイス4を通って進む間に、とりわけディスク40が作用している間に、その規定された引き伸ばし温度を下回る温度まで下がるのを回避する。
【0106】
本発明による装置とその方法を利用することで、低コストで、平坦なフィルム法によってワイドスリットノズルから押し出されるフィルムウェブを形成することが可能になり、このフィルムウェブは、インフレートフィルムでも同様に、押出し方向と、それに対して横方向の両方で溶解した液体の状態で特定の延伸を受けることで、簡単な方法で長手方向と横方向に追加の配向を獲得する。長手方向および横方向に延伸する際のフィルムウェブの温度は、それが、少なくとも溶融温度が存在することを保証する限り、ほとんど管理されずに誘導することができる、あるいは温度センサ、およびローラ、放射熱ヒータなどの対応する温度調節要素を設けることで、長手方向および横方向に延伸する際のフィルムウェブの温度を調節して誘導することができる。
【0107】
多層の複合物を形成してフィルムウェブを形成する場合、フィルムウェブの個々の層の少なくとも1つが、長手方向および横方向の延伸が行なわれる間、少なくとも溶融温度に相当する本発明により規定された温度を有することが、本発明によって規定されている。
【0108】
設置費用がわずかに増える代わりに、本発明による装置は、フィルムウェブを形成する新たな装置の形成と、平坦なフィルム法によって作動する既に存在する装置をレトロフィットさせることの両方に適している。
【0109】
本発明により規定されたまだ溶融状態にあるフィルムウェブを長手方向と横方向に延伸させることにより、フィルムの特性、例えば透明性、平坦さおよび強度を高めることで、平坦なフィルムの押出し成型法によってこのようにして形成されるフィルムウェブを、インフレートフィルム法によってこれまで作製されたフィルムウェブの代わりとして使用することができ、これにより過度に投資条件を増やさずに、平坦なフィルム法によって作動する設備の作動する設備の製造に関する自由度がさらに大きくなる。
【0110】
図5の平坦なフィルムシステム50は、実質的に押出機(図示せず)で構成されており、この押出機の後に、押出し方向に、ワイドスリットノズル52を有する押出しノズル51が続く。ここから作動中、例えばポリプロピレン溶融物でできたフィルムウェブ53が出てくる。ポリプロピレンの場合のフィルムウェブ53の温度の典型的な値は、210℃から290℃である。
【0111】
ワイドスリットノズル52の直後、フィルウェブ53は、冷却ローラ54上を進む。冷却ローラ54は、例えばおよそ200℃の最大値まで温度調節することができる。熱流体として、例えば伝熱油が供給され、この伝熱油は、この回路内の加熱デバイスと冷却ローラ54の間にある流路と帰路(共に示されない)を通るように汲み上げることができる。
【0112】
作動中、フィルムウェブ53が、より温度が低い冷却ローラ54の上を進むことで、その特性が緩やかに事前に決められるが、それはまだ溶融形態のままである。発明者等による代表的なテストは、冷却ローラ54から出口55におけるポリプロピレンでできたフィルムウェブ53の温度は、140℃から180℃の間であることを示した。
【0113】
冷却ローラ54の出口55の後に、横方向の延伸ステーション56が続いており、これは横方向の延伸用の2つのキャタピラ57、58の形態であり、これらは、空気圧機構(図示せず)を利用してフィルムウェブ53に対して据えることができる。この空気圧機構は、2つの横方向の延伸キャタピラ57、58を運動方向59、60に沿って移動させることができる。
【0114】
横方向の延伸ステーション56は任意選択で、冷却ローラより速い搬送速度で駆動させることができる。このとき、横方向の延伸に加えて、長手方向の延伸を行なうことができ、フィルムウェブ53は、なお溶融状態のままで長手方向に引っ張られる。
【0115】
これと同時に、横方向の延伸キャタピラ57、58の把持要素が、フィルムウェブ53の縁部に分岐するような配置で押出し方向に対して配置されることで、横方向の延伸ステーション56は、出口63と比べて入り口62の方がフィルムに対する幅が狭くなる。これにより、溶融形態のフィルムウェブ53の横方向の引き伸ばしが誘発される。
【0116】
横方向の延伸ステーション56から出口63を出た後、フィルムウェブ53は、冷却ローラ61の周りを進み、この冷却ローラは、例えば据え付け組立体の室温に近い温度、例えば15℃から40℃の範囲まで冷却される。フィルムウェブ53は、大きな巻き付き角度で、冷却ローラ61の周りを進み、それと同時にそこに、フィルムウェブ53と冷却ローラ61の表面を良好に接触させるために吸引システム64が設けられることで、フィルムウェブ53から冷却ローラ61の内部への熱伝達を助ける。これに加えてプレスローラ65が設けられる。
【0117】
別の冷却ローラ66がその後に続き、同様にフィルムウェブ53がその周りを進む。これは、例えばほぼ室温に設定されており、好ましくは最初の冷却ローラ61よりもわずかに温かくなるように、例えばおよそ25℃から60℃の温度範囲に設定することができる。
【0118】
本明細書に示される例示の実施形態では、他の冷却ローラ66に清掃ローラ67が設けられている。
【0119】
別の冷却ローラ66を通って進んだ後、最初の冷却ローラ61と別の冷却ローラ66全体で、フィルムウェブ53のための最終的な冷却ステーションを形成しており、フィルムウェブ53は、もはや溶融形態ではなく固化した状態である。フィルムの温度は、少なくともその外側の層に関して、但し好ましくは全ての層において、再結晶化温度を下回るまで下がっている。
【0120】
厚み測定ステーション68において、結果として生じる外に進むフィルムウェブ69の厚さが決定され、記録される。
【符号の説明】
【0121】
1 押出機
2 ワイドスリットノズル
3 鋳造ローラ
4 横方向に延伸させるデバイス
10 送り装置
40 ディスク
41 駆動装置
42 幅調節ユニット
43 角度調節ユニット
44 針ホルダー
45 センタリング装置
46 筐体
47 加熱デバイス
48 加熱ローラ
49 偏向ローラと温度調節ローラ
400 ランーイン位置
401 ランーアウト位置
50 平坦なフィルムシステム
51 押出しノズル
52 ワイドスリットノズル
53 フィルムウェブ
54 冷却ローラ
55 出口
56 横方向の延伸ステーション
57、58 キャタピラ
59、60 運動方向
61 冷却ローラ
62 入り口
63 出口
64 吸引システム
65 プレスローラ
66 別の冷却ローラ
67 清掃ローラ
68 厚み測定ステーション
69 結果として生じるフィルムウェブ
α 傾斜角
A 出口
D ディスクの直径
E 入り口
BA フィルムウェブの元の幅
BE フィルムウェブの最終的な幅
M 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料でできたフィルムウェブを形成することを目的とし、該プラスチックが、押出し方向にワイドスリットノズルから1つの層に押し出され、その後ローラの上を先に進むように誘導される方法において、押出し方向、および押出し方向に対して横向きの張力が、前記フィルムウェブに行使されることで、前記フィルムウェブを長手方向と横方向に延伸させ、該層が、フィルム形態と溶融形態を交互に採ることができ、すなわち前記層を溶融範囲を下回るように冷却する際にフィルム形態が確立され、あるいは前記層を溶融範囲を超えるまで加熱する際に溶融形態が確立される方法であって、
前記フィルムウェブが、
a.最初に、前記ワイドスリットノズルにおいて、またはワイドスリットノズルを出た直後に、一定の押出し速度で溶融形態で押し出され、
b.次いで溶融形態でその後に冷却ローラ構成に誘導され、前記フィルムウェブが好ましくは前記押出し速度より速い一定の周速度で冷却または平滑化ローラの周囲に誘導されることで、前記フィルムウェブが、長手方向の延伸を受け、
c.続いて前記冷却ローラ構成から外に出るように誘導され、
d.次いで横方向の延伸を受け、
長手方向と横方向の2つの延伸ステップが、溶融形態の前記層に対して行なわれることで、両方の場合において、延伸工程が溶融物の引き延ばしの形態で行なわれることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フィルムウェブが、フィルム形態に達するまで前記冷却または平滑化ローラ上で冷却され、この状態で前記冷却または平滑化ローラから解放されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
延伸する際の前記フィルムウェブの層が、その微結晶溶融温度より高い温度を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
延伸する際の前記フィルムウェブの層が、その再結晶化温度より高い温度を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
とりわけ過剰な空気圧を生成する手段、あるいは空気圧が低い状況を形成する手段を有する解放装置が利用されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルムウェブが、前記冷却ローラ構成と前記横方向の延伸工程の間にある加熱ステーションを通るように誘導されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルムウェブの温度が、前記横方向の延伸工程において調整されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルムウェブの温度が、横方向の延伸工程において調整されないことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルムウェブが、2つの回転式の調節可能なディスクの間で横方向の延伸を受けることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルムウェブが、2つの分岐するバンドを利用して横方向の延伸を受けることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルムウェブの層が、横方向の延伸の後に溶融形態を採ることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記横方向の延伸工程の後、前記フィルムウェブが、冷却ステーションを通るように誘導され、最終的に前記フィルムウェブの層が、フィルム形態を採ることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルム形態のフィルムウェブが、前記冷却ローラ構成と、前記横方向の延伸工程の間に、長手方向の引き伸ばし工程および/または温度調節工程を受けることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
熱可塑性材料からフィルムウェブを形成することを目的とし、ワイドスリットノズルにつながる押出機と、該ワイドスリットノズルの下流にあるローラを備え、該ローラによって前記ワイドスリットノズルから出てくる前記フィルムウェブを、1つの層を有する溶融物として取り出すことができ、また前記ワイドスリットノズルの直後にある冷却ローラ構成と、これに続く流路内の該装置に配置された横方向の延伸ステーションを備えた装置であって、
前記フィルムウェブを、前記層の溶融範囲を超える温度で、すなわち溶融状態で前記冷却ローラ構成および前記横方向の延伸ステーションに供給するように適合されていることを特徴とする装置。
【請求項15】
前記横方向の延伸ステーションが、2つのディスクであり、該ディスクが互いから離間され、前記フィルムウェブの縁部にあてがわれており、該ディスク上で前記フィルムウェブを、ディスクの外周の周りで部分的に輪を描きながらランーイン領域とランーアウト領域の間を誘導することができ、前記ディスクが、これらディスクが、ランーアウト位置とランーイン位置の間の仮想接続ラインの領域において、調節デバイスを利用して垂直方向から一定の角度で回転することができるように配置されることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
ウェブの最初の行程と、2回目の行程に関して、ウェブを誘導するような幾何学形状を有することで、一方で最初のウェブの行程が、前記横方向の延伸ステーションを組み入れ、一方で2回目のウェブの行程が、前記横方向の延伸ステーションを迂回するといった2つの作動モードを選択することを特徴とする、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
請求項1から13の一項に記載の方法によって、および/または請求項14から16の一項に記載の装置を利用して作製されたフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−39831(P2013−39831A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−181012(P2012−181012)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【出願人】(512215244)リーフェンハウザー ゲーエムベーハー ウント シーオー.ケージー マシネンファブリク (1)
【Fターム(参考)】