説明

熱可塑性被成形材料の押出成形装置

【課題】ケーシングの内部で熱により軟化させ熱可塑性の被成形材料をノズルを通し外部に押し出すことにより、所定断面形状の固形品を成形する場合において、この固形品を所望強度にできるようにして、この固形品が、その取り扱い過程において、所定形状を維持できるようにする。
【解決手段】熱可塑性被成形材料の押出成形装置は、ほぼ水平に延びる軸心8を有し、その内部に熱可塑性の被成形材料2が投入可能とされる筒形状のケーシング9と、このケーシング9に固着され、このケーシング9の内部を外部に連通させるノズル孔10が形成されたノズル11と、ケーシング9の内部に設けられ、軸心8回りに回転駆動することにより、被成形材料2をノズル11のノズル孔10を通し外部に押し出し可能とする押出機12とを備える。ノズル11を加熱するヒータ48を設けると共に、ノズル11のノズル孔10の内面から突出するフィン49を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングの内部で熱により軟化させた熱可塑性の被成形材料をノズルを通し外部に押し出すことにより、所定断面形状の固形品を成形するようにした熱可塑性被成形材料の押出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記押出成形装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、押出成形装置は、ほぼ水平に延びる軸心を有し、その内部に熱可塑性の被成形材料が投入可能とされる筒形状のケーシングと、このケーシングに固着され、このケーシングの内部を外部に連通させるノズル孔が形成された複数のノズルと、上記ケーシングの内部に設けられ、上記軸心回りに回転駆動することにより、上記被成形材料を上記ノズルのノズル孔を通し外部に押し出し可能とする押出機とを備えている。上記の場合、複数のノズルは互いに一体的に形成されて、全体として板形状のダイとされ、このダイは、上記ケーシングの軸方向の端面板を構成している。
【0003】
上記被成形材料は、例えば、熱可塑性の廃棄樹脂である。この被成形材料が上記ケーシングに投入され、熱により軟化させられた状態で、上記押出機を回転駆動させる。すると、この押出機の押圧力により、上記被成形材料は上記各ノズルのノズル孔を通り外部に押し出される。これにより、断面形状が円形の長尺固形品が連続的に成形される。この固形品は、一般に、上記ノズル孔を通り押し出された直後にカッターにより所定長さに次々と切断されて、粒状とされる。そして、これら粒状の固形品は、例えば、固形燃料として利用される。
【特許文献1】特開2006−272613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の技術では、次のような問題点がある。
【0005】
即ち、上記各ノズルのノズル孔の直径は、得ようとする固形品の直径に相応するよう定められるが、この値は、例えば、10〜40mm程度であり、かなり大きい。このため、上記ノズル孔を押し出されるよう通る被成形材料が、上記ノズル孔の内面から与えられる摩擦力は小さく抑制され、よって、上記ノズル孔を通る被成形材料の流速(mm/sec)は速くなりがちである。この結果、上記ノズル孔を通る際の被成形材料の物質同士の圧接時間が短くなり、このため、これら物質同士の結合が不十分になって、その固形品に所望強度を確保することが困難になるおそれがある。
【0006】
そして、上記のように固形品に所望強度を確保できない場合には、燃焼など固形品の取り扱い過程において、この固形品を所定形状に維持することが困難となり、これは、この固形品の取り扱い上、好ましくない。
【0007】
しかも、特に、上記従来の技術では、複数ノズルのうちの一部ノズルは、ケーシングの外周部分に周方向に並ぶよう設けられている。この場合、このケーシングの内部における被成形材料は、その自重により、上、下部の内部の圧力が相違する。このため、上記複数のノズルを通しそれぞれ被成形材料が押し出されるとき、上側のノズルを通る被成形材料の流速(例えば、7mm/sec)よりも下側のノズルを通る流速(例えば、14mm/sec)の方が速くなりがちである。よって、下側のノズルを通る際の被成形材料の物質同士の互いの圧接時間が更に短くなりがちであって、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、ケーシングの内部で熱により軟化させた熱可塑性の被成形材料をノズルを通し外部に押し出すことにより、所定断面形状の固形品を成形する場合において、この固形品を所望強度にできるようにして、この固形品が、その取り扱い過程において、所定形状を維持できるようにすることことである。
【0009】
請求項1の発明は、ほぼ水平に延びる軸心8を有し、その内部に熱可塑性の被成形材料2が投入可能とされる筒形状のケーシング9と、このケーシング9に固着され、このケーシング9の内部を外部に連通させるノズル孔10が形成されたノズル11と、上記ケーシング9の内部に設けられ、上記軸心8回りに回転駆動することにより、上記被成形材料2を上記ノズル11のノズル孔10を通し外部に押し出し可能とする押出機12とを備えた熱可塑性被成形材料の押出成形装置において、
上記ノズル11を加熱するヒータ48を設けると共に、上記ノズル11のノズル孔10の内面から突出するフィン49を設けたことを特徴とする熱可塑性被成形材料の押出成形装置である。
【0010】
請求項2の発明は、上記ケーシング9に対し上記ノズル11を着脱可能に固着したことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置である。
【0011】
請求項3の発明は、上記ノズル孔10における上記被成形材料2の上流側の内面に上記フィン49を突出させたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置である。
【0012】
請求項4の発明は、上記ケーシング9の周方向に上記ノズル11を複数設け、これらノズル11のうち、下側に位置するノズル11に設けたフィン49の表面積を上側に位置するノズル11のそれよりも大きくしたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置である。
【0013】
請求項5の発明は、上記ケーシング9の周方向に上記ノズル11を複数設け、これらノズル11のうち、下側に位置するノズル11の軸方向の長さを、上側に位置するノズル11のそれよりも大きくしたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置である。
【0014】
請求項6の発明は、上記各ノズル11に対し上記ヒータ48をそれぞれ設け、これら各ヒータ48のうち、下側に位置するヒータ48の加熱設定温度を、上側に位置するヒータ48のそれよりも大きくしたことを特徴とする請求項4、もしくは5に記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置である。
【0015】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明による効果は、次の如くである。
【0017】
請求項1の発明は、ほぼ水平に延びる軸心を有し、その内部に熱可塑性の被成形材料が投入可能とされる筒形状のケーシングと、このケーシングに固着され、このケーシングの内部を外部に連通させるノズル孔が形成されたノズルと、上記ケーシングの内部に設けられ、上記軸心回りに回転駆動することにより、上記被成形材料を上記ノズルのノズル孔を通し外部に押し出し可能とする押出機とを備えた熱可塑性被成形材料の押出成形装置において、
上記ノズルを加熱するヒータを設けると共に、上記ノズルのノズル孔の内面から突出するフィンを設けている。
【0018】
このため、上記ノズル孔を押し出されるよう通る被成形材料の流速が速くて、上記ノズル孔を通る際の被成形材料の物質同士の圧接時間が短いとしても、この被成形材料の外面側は上記ノズルを介しヒータにより加熱されると共に、被成形材料の内部は上記ノズルからフィンに伝達された熱により加熱される。これにより、上記被成形材料が全体的に、より加熱溶融されて、この被成形材料の物資同士が互いに十分に結合させられる。よって、上記固形品を所望強度にさせることができ、燃焼など、その取り扱い過程において、この固形品を所定形状に維持させることができる。
【0019】
また、上記したように、ノズル孔の内面にフィンを突出させたため、上記ノズル孔を被成形材料が通るとき、この被成形材料は、上記フィンから抵抗力を与えられる。よって、上記被成形材料の流速が減速させられて、この被成形材料の物質同士の圧接時間を長くでき、また、被成形材料の内部の圧力が増大させられ、更に、この被成形材料とフィンとの摩擦熱によって、この被成形材料が加熱される。この結果、上記被成形材料の物質同士の結合が、より促進されて、その固形品を、より所望強度にさせることができる。
【0020】
請求項2の発明は、上記ケーシングに対し上記ノズルを着脱可能に固着している。
【0021】
このため、上記被成形材料の物性が、ある期間毎に変化するような場合や、上記ノズルやフィンが損耗したときには、これらを、上記被成形材料の物性に合致したものや、新しいものに交換することが容易にできて便利である。
【0022】
請求項3の発明は、上記ノズル孔における上記被成形材料の上流側の内面に上記フィンを突出させている。
【0023】
このため、上記ノズル孔を通る被成形材料の物質は、上記ノズル孔の上流側で上記フィンにより、一旦、切り裂かれるが、この切り裂かれることにより生じた両面は上記フィンにより加熱された面であり、しかも、これら両面同士は、上記ノズル孔の下流側で、このノズル孔の内面から与えられる摩擦力などの反力により互いに圧接させられて結合される。よって、上記ノズル孔内で、上記フィンから被成形材料に与えられた傷は、上記ノズル孔の下流側で消失させられることから、断面が所定形状であって、傷の無い所望強度の固形品を得ることができる。
【0024】
請求項4の発明は、上記ケーシングの周方向に上記ノズルを複数設け、これらノズルのうち、下側に位置するノズルに設けたフィンの表面積を上側に位置するノズルのそれよりも大きくしている。
【0025】
ここで、上記発明によれば、各ノズルは、ケーシングの周方向に並ぶよう設けられている。この場合、このケーシングの内部における被成形材料は、その自重により、上、下部の内部の圧力が相違する。このため、上記複数のノズルを通しそれぞれ被成形材料が押し出されるとき、上側のノズルを通る被成形材料の流速よりも下側のノズルを通る流速の方が速くなりがちである。よって、下側のノズルを通る際の被成形材料の物質同士の互いの圧接時間が更に短くなりがちである。
【0026】
そこで、上記発明のように、下側のフィンの表面積を、より大きくしている。
【0027】
このため、上記下側のノズルのノズル孔を被成形材料が通るとき、この被成形材料は、上記した表面積がより大きいフィンからより大きい熱量と抵抗力とを与えられる。これにより、上記被成形材料が全体的に、より加熱溶融されると共に、この被成形材料の流速が減速させられて、被成形材料の物質同士の圧接時間がより長くされる。よって、上記のように、下側のノズルを通る被成形材料の物質同士についても、より確実に結合させることができて、上記下側のノズルを通る被成形材料により成形される固形品も所望強度にさせることができる。
【0028】
請求項5の発明は、上記ケーシングの周方向に上記ノズルを複数設け、これらノズルのうち、下側に位置するノズルの軸方向の長さを、上側に位置するノズルのそれよりも大きくしている。
【0029】
このため、前記したように、下側のノズルを通る際の被成形材料の物質同士の互いの圧接時間は短くなりがちではあるが、上記下側のノズルのノズル孔を被成形材料が通るとき、この被成形材料は、上記した長さがより大きいノズルのノズル孔の内周面からより大きい熱量と抵抗力とを与えられる。これにより、上記被成形材料が全体的に、より加熱溶融されると共に、この被成形材料の流速が減速させられて、被成形材料の物質同士の圧接時間がより長くされる。よって、上記のように、下側のノズルを通る被成形材料の物質同士についても、より確実に結合させることができて、上記下側のノズルを通る被成形材料により成形される固形品も所望強度にさせることができる。
【0030】
請求項6の発明は、上記各ノズルに対し上記ヒータをそれぞれ設け、これら各ヒータのうち、下側に位置するヒータの加熱設定温度を、上側に位置するヒータのそれよりも大きくしている。
【0031】
このため、前記したように、下側のノズルを通る際の被成形材料の物質同士の互いの圧接時間は短くなりがちではあるが、上記下側のノズルのノズル孔を被成形材料が通るとき、この被成形材料は、上記した加熱設定温度がより大きいヒータにより、より十分に加熱溶融される。よって、上記のように、下側のノズルを通る被成形材料の物質同士についても、より確実に結合させることができて、上記下側のノズルを通る被成形材料により成形される固形品も所望強度にさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の熱可塑性被成形材料の押出成形装置に関し、ケーシングの内部で熱により軟化させ熱可塑性の被成形材料をノズルを通し外部に押し出すことにより、所定断面形状の固形品を成形する場合において、この固形品を所望強度にできるようにして、この固形品が、その取り扱い過程において、所定形状を維持できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0033】
即ち、熱可塑性被成形材料の押出成形装置は、ほぼ水平に延びる軸心を有し、その内部に熱可塑性の被成形材料が投入可能とされる筒形状のケーシングと、このケーシングに固着され、このケーシングの内部を外部に連通させるノズル孔が形成されたノズルと、上記ケーシングの内部に設けられ、上記軸心回りに回転駆動することにより、上記被成形材料を上記ノズルのノズル孔を通し外部に押し出し可能とする押出機とを備える。上記ノズルを加熱するヒータを設けると共に、上記ノズルのノズル孔の内面から突出するフィンを設けている。
【実施例】
【0034】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0035】
図中、符号1は、熱可塑性の被成形材料2を押し出すことにより、所定断面形状の固形品3を成形するものである。
【0036】
上記被成形材料2は、可燃性の廃棄樹脂を主原料物質としている。具体的には、この廃棄樹脂は、軟質系PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)が主体であって、これに硬質系PPやPEが含有され、また、紙くず、木くずも含有される。
【0037】
上記固形品3は、例えば、直径が10〜40mm、押し出し成形直後の切断により成形される粒状体の長さは50〜100mm、見掛け比重は0.2〜0.3、カロリーは5000〜6000kcal/kgである。そして、上記固形品3は、ボイラ用などの固形燃料として、化石燃料である石炭に代え利用される。
【0038】
上記押出成形装置1は、作業面6上に支持される架台7と、この架台7に支持され、ほぼ水平に延びる軸心8を有し、その内部に上記被成形材料2が投入可能とされる円筒形状のケーシング9と、このケーシング9の軸方向の一端部(図2に向かって左方向の端部)における外周部分に、周方向に並ぶよう複数設けられ、上記ケーシング9の内部を径方向外方に向かって連通させるノズル孔10を有する複数(20〜70本)のノズル11とを備えている。上記各ノズル11は、上記ケーシング9の一端部の外周部分にほぼ全周にわたり連続的に設けられている。上記各ノズル11の突出端部のノズル孔10の開口は、互いに同形同大とされている。また、ノズル11は鉄製であるが、アルミ合金やステンレス製としてもよい。
【0039】
また、上記押出成形装置1は、上記ケーシング9の内部に設けられ、上記軸心8回りに回転可能な押出機12と、上記架台7に支持され、上記押出機12を減速機13を介し一方向に回転Rさせるよう駆動する電動機14とを備えている。上記押出機12を上記軸心8回りに回転R駆動させれば、上記ケーシング9内で熱により軟化させられている被成形材料2が混練されて、上記ノズル11のノズル孔10を通し外部に押し出し可能とされる。
【0040】
上記ケーシング9は、上記軸心8を有する円筒体17と、この円筒体17の軸方向の一端部(図2に向かって左方向の端部)に形成される外向きフランジ18と、上記円筒体17の軸方向各端部の開口を閉じて、これら各端部に固定される蓋体19,20と、上記円筒体17の他端部側の内部に上記被成形材料2を投入可能とするシュート21とを備えている。
【0041】
上記各ノズル11は、円形のほぼ直管であるノズルパイプ24と、このノズルパイプ24の一端部である基部24aに一体的に形成される外向きのノズルフランジ25とを備えている。これら各ノズル11は、上記ケーシング9の一端部の外周部に固着具26により着脱可能に固着されている。
【0042】
上記固着具26は、上記ケーシング9の外向きフランジ18と蓋体19の外周部分との間で、このケーシング9の周方向に連続的に並ぶよう配置される複数の固着ブロック28と、これら各固着ブロック28を上記外向きフランジ18と蓋体19とにそれぞれ個別に着脱可能に固着させる締結具29とを備えている。上記蓋体19は、上記各固着ブロック28と締結具29とにより、上記円筒体17の一端部に固着されている。上記各固着ブロック28は互いに同形同大とされている。上記各固着ブロック28は、上記ケーシング9の軸方向に沿った視線で見て(図3,4)、その径方向内方に向かってのテーパ形状(楔形状)とされ、周方向で互いに隣り合う固着ブロック28,28同士の互いの対向面30,30は互いに面接触させられている。
【0043】
上記ケーシング9の径方向に沿った視線で見て(図5)、上記固着ブロック28の各対向面30,30には、それぞれ半円形の切り欠き31が形成されている。この切り欠き31における上記ケーシング9の径方向外端部には、上記各ノズル11のノズルフランジ25を嵌脱可能に嵌入させる嵌合溝32が形成されている。
【0044】
上記ケーシング9に対し上記各ノズル11を固着具26により固着した状態では(図1,4)、この固着具26の固着ブロック28群の外周面に上記各ノズル11のノズルフランジ25の端面が当接する。そして、上記各ノズル11は、上記ケーシング9の軸心8を中心として上記ケーシング9側から外方に放射状に突出させられている。
【0045】
上記ケーシング9の周方向で互いに隣り合う固着ブロック28,28の間には、互いに対向する両切り欠き31,31により、断面円形の導入孔34が形成される。この導入孔34は、上記各ノズル11の軸心35上に位置し、上記ノズル孔10における上記ケーシング9の径方向内端部側とほぼ同径とされている。上記固着ブロック28群の内周面には、上記ケーシング9の軸心8を中心とする周溝36が形成されている。この周溝36の底面に、上記導入孔34が開口し、これら導入孔34は、上記ケーシング9内を上記各ノズル孔10に連通させている。
【0046】
上記固着ブロック28群のうち、少なくとも1つは、上記切り欠き31と嵌合溝32とを有していない楔体37とされている。上記ケーシング9から各ノズル11を離脱させる作業をするときには、まず、上記楔体37の締結具29を弛緩して、この楔体37を上記ケーシング9の径方向外方に離脱させる(図4中、一点鎖線)。
【0047】
次に、図5で示すように、上記楔体37の隣りに位置していた固着ブロック28の締結具29を弛緩し、この固着ブロック28を上記楔体37の原存在位置側に移動Aさせ、この固着ブロック28の嵌合溝32を上記ノズル11のノズルフランジ25から離脱させる。また、このノズル11を上記移動A方向と同方向に移動Bさせて、このノズル11のノズルフランジ25を上記固着ブロック28に隣り合っていた他の固着ブロック28の嵌合溝32から離脱させる。これにより、上記ノズル11は、上記ケーシング9から離脱可能とされる。以下、上記動作を繰り返すことにより、上記ノズル11が全て離脱可能とされる。上記ケーシング9に各ノズル11を固着させるときには、上記と逆の作業をすればよい。
【0048】
前記押出機12は、上記ケーシング9の軸心8上に配置され、上記各蓋体19,20に対し軸受40,41により支持される回転軸42と、上記ケーシング9の他端部側に内有され、上記回転軸42に支持されるスクリュー式押出機本体43と、上記ケーシング9の一端部に内有され、上記回転軸42に突設されるカウンタウェイト付アーム44と,このアーム44の突出端部に支軸45により支持され、上記回転軸42の回転Rに伴い、上記周溝36の内底面を転動する加圧回転輪46とを備えている。上記回転軸42は、上記減速機13を介し上記電動機14に連動連結されている。
【0049】
上記ノズル11には、その外面のほぼ全体に接するよう電熱式のヒータ48が外嵌されて、固着され、このヒータ48は、上記ノズル11を加熱する。なお、上記ヒータ48は、上記ケーシング9の円筒体17の一端部、外向きフランジ18、および蓋体19の外周部のいずれかを加熱して、上記ノズル11を間接加熱するものであってもよい。
【0050】
上記各ノズル11のノズル孔10の内面から、このノズル11の径方向の内方に突出する周方向で複数(4枚)のフィン49が設けられている。これら各フィン49は、上記ノズル11の径方向かつ軸方向に延びる板形状とされ、上記ノズル孔10の内面に溶接により固着されている。また、上記各フィン49はノズル11と同材質とされている。この場合、上記各フィン49は、上記ノズル孔10における上記被成形材料2の上流側の内面にのみ突出させられている。
【0051】
上記押出成形装置1の駆動により被成形材料2から固形品3を成形する場合には、上記被成形材料2が上記ケーシング9に投入され、熱により軟化させられた状態で、上記押出機12を回転R駆動させる。すると、上記押出機本体43により上記被成形材料2が混練されながら上記ケーシング9の一端部側に加圧されて送り込まれる。次に、上記被成形材料2は周溝36に押し込まれると共に、この周溝36を転動する加圧回転輪46の押圧力により、上記被成形材料2は上記各導入孔34と各ノズル11のノズル孔10とを順次通り外部に押し出される。これにより、断面形状が円形の長尺固形品3が連続的に成形される。この固形品3は、一般に、上記ノズル孔10を通り押し出された直後にカッターにより所定長さに次々と切断されて、粒状とされる。
【0052】
上記構成によれば、ノズル11を加熱するヒータ48を設けると共に、上記ノズル11のノズル孔10の内面から突出するフィン49を設けている。
【0053】
このため、上記ノズル孔10を押し出されるよう通る被成形材料2の流速(mm/sec)が速くて、上記ノズル孔10を通る際の被成形材料2の物質同士の圧接時間が短いとしても、この被成形材料2の外面側は上記ノズル11を介しヒータ48により加熱されると共に、被成形材料2の内部は上記ノズル11からフィン49に伝達された熱により加熱される。これにより、上記被成形材料2が全体的に、より加熱溶融されて、この被成形材料2の物質同士が互いに十分に結合させられる。よって、上記固形品3を所望強度にさせることができ、燃焼など、その取り扱い過程において、この固形品3を所定形状に維持させることができる。
【0054】
また、上記したように、ノズル孔10の内面にフィン49を突出させたため、上記ノズル孔10を被成形材料2が通るとき、この被成形材料2は、上記フィン49から抵抗力を与えられる。よって、上記被成形材料2の流速が減速させられて、この被成形材料2の物質同士の圧接時間を長くでき、また、被成形材料2の内部の圧力が増大させられ、更に、この被成形材料2とフィン49との摩擦熱によって、この被成形材料2が加熱される。この結果、上記被成形材料2の物質同士の結合が、より促進されて、その固形品3を、より所望強度にさせることができる。
【0055】
また、前記したように、ケーシング9に対し上記ノズル11を着脱可能に固着している。
【0056】
このため、上記被成形材料2の物性が、ある期間毎に変化するような場合や、上記ノズル11やフィン49が損耗したときには、これら11,49を、上記被成形材料2の物性に合致したものや、新しいものに交換することが容易にできて便利である。
【0057】
また、前記したように、ノズル孔10における上記被成形材料2の上流側の内面に上記フィン49を突出させている。
【0058】
このため、上記ノズル孔10を通る被成形材料2の物質は、上記ノズル孔10の上流側で上記フィン49により、一旦、切り裂かれるが、この切り裂かれることにより生じた両面は上記フィン49により加熱された面であり、しかも、これら両面同士は、上記ノズル孔10の下流側で、このノズル孔10の内面から与えられる摩擦力などの反力により互いに圧接させられて結合される。よって、上記ノズル孔10内で、上記フィン49から被成形材料2に与えられた傷は、上記ノズル孔10の下流側で消失させられることから、断面が所定形状であって、傷の無い所望強度の固形品3を得ることができる。
【0059】
また、上記ノズル孔10の上流側の径寸法(断面積)よりも、下流側のそれが小さくされている。
【0060】
このため、上記ノズル孔10の下流側を通る被成形材料2は、上記ノズル孔10の下流側の内周面から、より大きい摩擦力などの反力を与えられる。よって、フィン49により切り裂かれた被成形材料2の両面同士は、上記ノズル孔10の下流側で、より大きく圧接させられて、より確実に結合される。
【0061】
また、前記したように、ケーシング9の周方向に上記ノズル11を複数設けた場合において、図示しないが、これらノズル11のうち、下側に位置するノズル11に設けたフィン49の表面積を上側に位置するノズル11のそれよりも大きくしている。
【0062】
ここで、上記構成によれば、各ノズル11は、ケーシング9の周方向に並ぶよう設けられている。この場合、このケーシング9の内部における被成形材料2は、その自重により、上、下部の内部の圧力が相違する。このため、上記複数のノズル11を通しそれぞれ被成形材料2が押し出されるとき、上側のノズル11を通る被成形材料2の流速(例えば、7mm/sec)よりも下側のノズル11を通る流速(例えば、14mm/sec)の方が速くなりがちである。よって、下側のノズル11を通る際の被成形材料2の物質同士の互いの圧接時間が更に短くなりがちである。
【0063】
そこで、上記構成のように、下側のフィン49の表面積を、より大きくしている。
【0064】
このため、上記下側のノズル11のノズル孔10を被成形材料2が通るとき、この被成形材料2は、上記した表面積がより大きいフィン49からより大きい熱量と抵抗力とを与えられる。これにより、上記被成形材料2が全体的に、より加熱溶融されると共に、この被成形材料2の流速が減速させられて、被成形材料2の物質同士の圧接時間がより長くされる。よって、上記のように、下側のノズル11を通る被成形材料2の物質同士についても、より確実に結合させることができて、上記下側のノズル11を通る被成形材料2により成形される固形品3も所望強度にさせることができる。
【0065】
なお、上記フィン49の表面積をより大きくさせる手段として、上、下側の各ノズル11における各フィン49を互いに同形同大として、下側のノズル11のフィン49の枚数を1〜3枚程度、より多くしてもよい。また、下側のノズル11のフィン49におけるノズル11の径方向や軸方向での寸法を、より長くしてもよい。
【0066】
また、前記したように、ケーシング9の周方向に上記ノズル11を複数設けた場合において、図示しないが、これらノズル11のうち、下側に位置するノズル11の軸方向の長さを、上側に位置するノズル11のそれよりも大きくしている。
【0067】
このため、前記したように、下側のノズル11を通る際の被成形材料2の物質同士の互いの圧接時間は短くなりがちではあるが、上記下側のノズル11のノズル孔10を被成形材料2が通るとき、この被成形材料2は、上記した長さがより大きいノズル11のノズル孔10の内周面からより大きい熱量と抵抗力とを与えられる。これにより、上記被成形材料2が全体的に、より加熱溶融されると共に、この被成形材料2の流速が減速させられて、被成形材料2の物質同士の圧接時間がより長くされる。よって、上記のように、下側のノズル11を通る被成形材料2の物質同士についても、より確実に結合させることができて、上記下側のノズル11を通る被成形材料2により成形される固形品3も所望強度にさせることができる。
【0068】
また、前記したように、各ノズル11に対し上記ヒータ48をそれぞれ設けた場合において、図示しないが、これら各ヒータ48のうち、下側に位置するヒータ48の加熱設定温度を、上側に位置するヒータ48のそれよりも大きくしている。
【0069】
このため、前記したように、下側のノズル11を通る際の被成形材料2の物質同士の互いの圧接時間は短くなりがちではあるが、上記下側のノズル11のノズル孔10を被成形材料2が通るとき、この被成形材料2は、上記した加熱設定温度がより大きいヒータ48により、より十分に加熱溶融される。よって、上記のように、下側のノズル11を通る被成形材料2の物質同士についても、より確実に結合させることができて、上記下側のノズル11を通る被成形材料2により成形される固形品3も所望強度にさせることができる。
【0070】
なお、上記フィン49はノズル孔10の軸方向のほぼ全体にわたり形成してもよい。また、上記ノズル11を上記ケーシング9の少なくとも外周部分に、周方向に並ぶよう複数設け、かつ、上記ケーシング9の軸方向端面部に全体的に設け、その各ノズル孔10がケーシング9の軸方向の外方に向かって開口するようにしてもよい。この場合、上記押出機12を、全体的にスクリュー式やパドル式にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図4のI−I線矢視拡大断面図である。
【図2】押出成形装置の全体側面図である。
【図3】押出成形装置の全体正面図である。
【図4】図3の部分拡大部分断面図である。
【図5】図4のV−V線矢視作用説明図である。
【図6】(1)は図4の部分拡大断面図であり、(2)は(1)の(2)−(2)線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 押出成形装置
2 被成形材料
3 固形品
6 作業面
8 軸心
9 ケーシング
10 ノズル孔
11 ノズル
12 押出機
17 円筒体
18 外向きフランジ
19 蓋体
24 ノズルパイプ
24a 基部
25 ノズルフランジ
26 固着具
28 固着ブロック
35 軸心
48 ヒータ
49 フィン
A 移動
B 移動
R 回転

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ水平に延びる軸心を有し、その内部に熱可塑性の被成形材料が投入可能とされる筒形状のケーシングと、このケーシングに固着され、このケーシングの内部を外部に連通させるノズル孔が形成されたノズルと、上記ケーシングの内部に設けられ、上記軸心回りに回転駆動することにより、上記被成形材料を上記ノズルのノズル孔を通し外部に押し出し可能とする押出機とを備えた熱可塑性被成形材料の押出成形装置において、
上記ノズルを加熱するヒータを設けると共に、上記ノズルのノズル孔の内面から突出するフィンを設けたことを特徴とする熱可塑性被成形材料の押出成形装置。
【請求項2】
上記ケーシングに対し上記ノズルを着脱可能に固着したことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置。
【請求項3】
上記ノズル孔における上記被成形材料の上流側の内面に上記フィンを突出させたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置。
【請求項4】
上記ケーシングの周方向に上記ノズルを複数設け、これらノズルのうち、下側に位置するノズルに設けたフィンの表面積を上側に位置するノズルのそれよりも大きくしたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置。
【請求項5】
上記ケーシングの周方向に上記ノズルを複数設け、これらノズルのうち、下側に位置するノズルの軸方向の長さを、上側に位置するノズルのそれよりも大きくしたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置。
【請求項6】
上記各ノズルに対し上記ヒータをそれぞれ設け、これら各ヒータのうち、下側に位置するヒータの加熱設定温度を、上側に位置するヒータのそれよりも大きくしたことを特徴とする請求項4、もしくは5に記載の熱可塑性被成形材料の押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−148899(P2009−148899A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326139(P2007−326139)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(502253401)大栄環境株式会社 (4)
【Fターム(参考)】