説明

熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法及び射出成形装置

【目的】熱硬化反応の加熱温度が比較的低く、しかもその硬化開始温度以上になれば急速に硬化する、温度幅の狭い熱硬化性発泡ウレタンゴムの異形成形品の射出成形が可能な射出成形法及び射出成形装置を提供する。
【構成】高粘度材料へのガス混入方法を用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成し、これを射出成形機ノズルに導入し、この射出成形機ノズルから、前記熱硬化性発泡ウレタンゴム材料が金型のキャビティに射出充填され、この充填完了直前又は充填後に、前記キャビティがIHコイルによって加熱制御されることを特徴とする熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱硬化性発泡ウレタンゴムの射出成形法及び射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成形材料を発泡して使うことにより、省資源につながり、軽量化と更にクッション性が向上する等の数々の利点を有している熱硬化性発泡ウレタンゴムは、家庭用品、家電、OA機器、自動車機器などに幅広い用途がある。
【0003】
しかし、従来の熱硬化性ウレタンゴムは熱硬化の温度が高く反応が速く、また温度幅が狭いため、シート状物のカレンダー成形や、異形状成形品の押出成形は可能であるが、異形成形品の射出成形は困難であった。
【0004】
ところで本発明者らは、特許文献1及び特許文献2に示されるように高粘度材料の発泡方法及び装置、また特許文献3に示す50℃以下では硬化反応が進行せず、100℃以下の加熱温度で熱硬化する熱硬化性ウレタンゴム、更に特許文献4の金型のキャビティーに成形材料を射出する開閉ゲートに好適な射出成形機用ノズルを先に提案しているが、これらの技術によっても熱硬化性発泡ウレタンゴムの異形成形品の射出成形は、上述した性質故にゲート付近の樹脂の流れが悪くて不均一になり、成形品にフローマークがつき易いという課題を有することがわかった。
【0005】
【特許文献1】特許第3212533号公報
【特許文献2】特許第3482309号公報
【特許文献3】特許第3131224号公報
【特許文献4】特許第2850203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、熱硬化反応の加熱温度が比較的低く、しかもその硬化開始温度以上になれば急速に硬化する、温度幅の狭い熱硬化性発泡ウレタンゴムの異形成形品の射出成形が可能な射出成形法及び射出成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
1.高粘度材料へのガス混入方法を用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成し、これを射出成形機ノズルに導入し、この射出成形機ノズルから、前記熱硬化性発泡ウレタンゴム材料が金型のキャビティに射出充填され、この充填完了直前又は充填後に、前記キャビティがIHコイルによって加熱制御されることを特徴とする熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【0008】
2.高粘度材料へのガス混入方法を用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成し、これをゲートの開閉動作をオープンゲート方式、空気圧・油圧式又はスプリング方式等により行う射出成形機ノズルに導入し、この射出成形機ノズルから、前記熱硬化性発泡ウレタンゴム材料が金型のキャビティに射出充填され、この充填完了直前又は充填後に、前記キャビティがIHコイルによって加熱制御されることを特徴とする熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【0009】
3.ゲートの開閉動作がスプリング方式であり、ノズルの流路の中央にニードルを配置し、このニードルの先端部をノズルのゲートに係合させると共に、該ニードルの後端大径部側にスプリングを配置して、該スプリングによる押圧力と前記流路に導入される成形用材料の圧力との差により該ニードルを移動させて前記ノズルのゲートの開閉制御を行うノズルにおいて、多数個取りまたは多点ゲート金型に対して複数のノズルが備えられており、それぞれのノズルには、スプリングの押圧力を調整する機構が備えられていることを特徴とする前記2に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【0010】
4.キャビティを構成する金型が55℃以下に保持されており、射出充填後に60℃以上、100℃以下に加熱されることを特徴とする前記1又は2に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【0011】
5.熱硬化性ウレタンゴムがイソシアネート基含有化合物と、融点が50℃以上固形ポリアミンの表面アミノ基を不活性化した潜在性硬化剤を主成分とすることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【0012】
6.キャビティを構成する金型は、55℃以下に冷却する冷却手段と60℃以上、100℃以下に加熱するIHコイルが設けられていることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の熱硬化性ウレタンゴム射出成形法。
【0013】
7.高粘度材料へのガス混入方法を用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成する発泡ウレタンゴム形成装置と、ゲートの開閉動作をオープンゲート方式、空気圧・油圧式又はスプリング方式等により行う射出成形機ノズルと、前記射出成形機の金型のキャビティを過熱制御するIHコイルとを有することを特徴とする熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。
【0014】
8.固定型と可動型とからなる金型(モールド)の各々に、
キャビティに対向し、且つ相互に対向するように凹部が設けられ、該凹部の各々にIHコイルが配設されていると共に、
前記凹部の各々に冷媒路が配設されている
構成であることを特徴とする前記7に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。
【0015】
9.固定型と可動型とからなる金型(モールド)の各々に、
キャビティに対向し、且つ相互に対向するように凹部が設けられ、該凹部の各々に冷媒路が配設されていると共に、
前記凹部を取り囲むように環状溝が設けられ、該環状溝の各々にIHコイルが配設されている
構成であることを特徴とする前記7に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。
【0016】
10.前記凹部の表面が波形であることを特徴とする前記7〜9のいずれかに記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。
【0017】
11.前記環状溝が波形又は上下若しくは下方に突き抜けた直線状であることを特徴とする前記7、9又は10に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に示す本発明によれば、高粘度材料へのガス混入方法を用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成し、該熱硬化性発泡ウレタンゴムを金型のキャビティに射出充填した後に、前記キャビティがIHコイルによって加熱制御する構成とすることで、熱硬化反応が速く、また温度幅が狭い熱硬化性発泡ウレタンゴムの異形成形品の射出成形が可能となった。
【0019】
請求項2又は3に示す本発明によれば、汎用の射出成形ノズルを使用した上で、熱硬化反応が速く、また温度幅が狭い熱硬化性発泡ウレタンゴムの異形成形品の射出成形が可能となった。
【0020】
また請求項4に示す本発明によれば、キャビティを構成する金型を55℃以下に保持し、射出充填後に60℃以上、100℃以下に加熱する構成とすることで、ゲート付近の樹脂の流れが阻害されることなく、成形品にフローマークやウエルドラインがつき難いという効果を発揮できる。
【0021】
請求項5に示す本発明によれば、55℃以下の加熱温度では硬化反応が進行せいず、粘稠な流動状態であり、加熱温度であり、加熱温度が60℃以上、望ましくは80℃以上、100℃以下で即硬化する熱硬化反応が速く、また温度幅が狭い熱硬化性ウレタンゴムを用いることによりゲート付近の樹脂の流れが阻害されることなく、成形品にフローマークやウェルドラインがつき難いという効果を発揮できるのである。
【0022】
請求項6に示す本発明によれば、射出成形機の金型の加熱においてIHヒータを用いて60℃以上、100℃以下に即加熱でき、また一方、前記金型に55℃以下に即冷却する冷却手段を用いるので、加熱硬化反応が速く、また温度幅が狭いウレタンゴムの射出成形に好適に対応できるのであり、ゲート付近の樹脂の流れが阻害されることなく、成形品にフローマークやウェルドラインがつき難いという効果を発揮できる。
【0023】
請求項7に示す本発明によれば、上記本発明法を実施する装置が提供できる。
【0024】
請求項8に示す本発明によれば、固定型と可動型とからなる金型(モールド)の各々に、キャビティに対向し、且つ相互に対向するように凹部が設けられ、該凹部の各々にIHコイルが配設されていると共に、前記凹部の各々に冷媒路が配設されている、即ち、IHコイル及び冷媒路を金型(モールド)に埋設するのではなく外装した構成を有してIHコイルと冷媒を併用してキャビティの加熱制御及び冷却を行うので、成形品のウエルドラインを効果的に抑制することができる。
【0025】
請求項9に示す本発明によれば、固定型と可動型とからなる金型(モールド)の各々に、キャビティに対向し、且つ相互に対向するように凹部が設けられ、該凹部の各々に冷媒路が配設されていると共に、前記凹部を取り囲むように環状溝が設けられ、該環状溝の各々にIHコイルが配設されている、即ち、冷媒路及びIHコイルを金型(モールド)に埋設するのではなく外装した構成を有してIHコイルと冷媒を併用してキャビティの加熱制御及び冷却を行うので、成形品のウエルドラインを効果的に抑制することができる。
【0026】
請求項10に示す本発明によれば、前記凹部の表面が波形であるので、、該凹部の表面積を大とすることできるため熱効率が上がる。
【0027】
請求項11に示す本発明によれば、前記環状溝が波形又は上下若しくは下方に突き抜けた直線状であるので、熱効率が向上し、メンテナンスが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
先ず、本発明に用いる熱硬化性ウレタンゴムについて説明する。熱硬化性ウレタンゴムの詳細な技術的内容は特許文献3に示すものを利用することができる。すなわち、熱硬化性ウレタンゴムとは、イソシアネート基含有化合物と、融点が50℃以上の固形ポリアミンの表面アミノ基を不活性化した潜在性硬化剤を主成分とするものである。
【0029】
詳細にはイソシアネート基含有化合物は活性水素基含有化合物と反応し硬化するものであり、活性水素化合物としては空気中の湿気やアミン化合物、水酸基含有化合物、メルカプト基含有化合物等が挙げられる。
【0030】
これらの活性水素基は通常、室温でイソシアネート基と反応するものであるが、本発明の潜在性硬化剤は室温で固形のポリアミンの表面を微粉体で被覆してアミノ基を不活性化したものである。不活性化された室温固形のポリアミンは、融点ないし融点以上、たとえば本発明では60℃以上に加熱すると、固形ポリアミンが融解し、活性なアミノ基が再生するものである。
【0031】
再生された活性なアミノ基はイソシアネート基と直ちに反応し硬化するのである。室温以上に融点を有する微粉体で被覆されたポリアミンは、融点より低い温度では固形状態で存在し、その被覆状態ではアミノ基は存在しないので、イソシアネート基と反応して硬化することがなく、室温で粘稠な流動状態になっている。
【0032】
しかし、ポリアミンが融解する温度に加熱した時には、アミノ基が再生され活性化するので、イソシアネート基と反応し硬化する。従って、本発明の熱硬化性発泡ウレタンゴムは、固形ポリアミンの融点に依存して熱硬化反応の加熱温度が比較的低く、しかもその硬化開始温度以上になれば急速に硬化する、温度幅の狭い熱硬化性発泡ウレタンゴムの異形成形品の射出成形が可能になったのである。
【0033】
次に、添付の図面に従って本発明を更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る射出成形装置の一実施例を示す概略断面図、図2は図1のII−II線概略横断面図、図3は本発明に係る射出成形装置の他の実施例を示す概略断面図、図4は図3のIV−IV線概略横断面図、図5は高粘度材料へのガス混入方法に用いられる装置の回路図、図6はバルブノズル(ゲート閉状態)の一例を示す断面図、図7は図6のバルブノズルのゲート開状態を示す断面図である。
【0034】
図1に示すように、本発明に係る射出成形装置は、ガス混入装置1、ノズル例えば、バルブノズル2、金型3(上型31、下型32)とから主として構成されている。
【0035】
ガス混入装置1による高粘度材料へのガス混入方法を用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成し、これをバルブノズル2に導入し、該バルブノズル2によって金型3のキャビティ33に射出充填し、この充填後に、キャビティ33をIHコイル35によって加熱制御することで熱硬化性発泡ウレタンゴムの異形成形品の射出成形が可能となる。
【0036】
キャビティ33を構成する金型3は、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料の充填前乃至は充填中は、冷却制御する冷却手段34により、好ましくは55℃以下に保持されており、射出充填後に、高周波電磁誘電加熱法によって加熱制御するIHコイル35により、好ましくは熱硬化反応温度域である60℃以上、100℃以下に加熱される。
【0037】
高周波電磁誘電加熱法によって加熱制御するIHコイル35は、公知公用の高周波電磁誘電加熱法によるIHコイルを用いることができ、例えば、IHコイル35を金型3(上型31、下型32)に形成した凹部31A・32Aに絶縁耐熱シート36を介して組み込むことが好ましい。該IHコイル35の配設位置は、図2に示すようにキャビティ33を囲むように巻き配設されることが好ましい。
【0038】
冷却手段34は、前記凹部31A・32Aを取り囲むように設けた環状溝31B・32Bに配設することが好ましい。金型3(上型31、下型32)に直接又は間接的にエア等の冷媒を接触させて冷却する手段等の公知公用の冷却手段を採ることができ、例えば、本実施例では、凹部31B・32Bの各々を囲むように遮蔽体37を冠せることで冷却手段34の冷媒路を形成している。図2において、符号38は冷却手段34の冷媒の入口であり、符号39は冷媒の出口である。
【0039】
金型3は、高周波電磁誘電加熱法によるIHコイル35及び冷却手段34以外の基本的な構成は公知公用の射出成形用金型を特別の制限なく用いることができる。
【0040】
金型3(上型31、下型32)に形成される凹部31A・32Aは、図1に示すように表面が波形であることが好ましい。凹部31A・32Aの表面を波形とすることで、該凹部31A・32Aの表面積を大とすることができるため熱効率が上がる。
【0041】
ここで、高周波電磁誘電加熱法について説明する。
鉄を多く含む金属の周囲または近くにコイルを配設して、コイルに電流が流れると磁力線が発生する。磁力線は金属を通過するが、例えば、交流は大きさや向きが絶えず変化するため、発生する磁力線も絶えず変化することになる。このように金属に磁力線の変化を与えると、電磁誘導作用によって渦電流が流れ鉄系金属は抵抗が大きいので熱くなる。電磁誘導作用とは、磁力線の変化がコイルに電気を誘導する働きをいう。本発明では、例えば、10KHz〜200KHz、好ましくは15KHz〜100KHzを用いる。この高周波は鉄系金属加熱に適していて、効率がよく、急速に加熱が可能である。
【0042】
このような高周波電磁誘電加熱法は、加熱効率がよく、急速かつ均一な加熱が可能で、加熱レスポンスがよいので制御が容易であることから、熱硬化性発泡ウレタンゴムの狭い温度幅であっても金型温度を制御できるので、キャビティ33内への充填が完全に終了した時点で熱硬化反応させることができる。従って、射出中に熱硬化反応が始まってゲート付近乃至はキャビティ33隅部への樹脂の流れが悪くなることがないため、これまで困難であった熱硬化性発泡ウレタンゴムの異形成形品の射出成形が極めて容易となる。しかも、異形成形品へのフローマークもつき難い。
【0043】
次に、図3及び図4に基づき、本発明の他の実施例について説明する。
図3に示すように、本発明に係る射出成形装置は、上型31と下型32とからなり、キャビティ33を有する金型(モールド)3と、該キャビティ33に対向し、且つ相互に対向するように設けられた凹部31A・32Aと、該凹部31A・32Aの各々に冷却手段34が配設されていると共に、前記凹部31A・32Aを取り囲むように環状溝31B・32Bが設けられ、該環状溝31B・32Bの各々にIHコイル35が絶縁体熱シート36を介して配設される構成である。38は冷却手段34の冷媒の入口であり、39は出口である。
【0044】
本実施例における環状溝31B・32Bは、図3に示すように溝部分の端部が、上型31においては上方(図面上において上方向)に、下型32においては下方(図面上において下方向)に突き抜けた直線状となっている。従って、環状溝31B・32Bに配設したIHコイル35のメンテナンス等(交換を含む)の際には、上型31のIHコイル35は上方向に、下型32のIHコイル35は下方向に各々容易に取り外すことができるのでメンテナンス性が高い。
【0045】
冷却手段34は、図4に示すようにキャビティ33を囲むように配設されており、該キャビティ33及び冷却手段34を囲むようにIHコイル35が巻き配設されている。
【0046】
即ち、本実施例は、上記した実施例とは基本的にはIHコイル35と冷却手段34の配設位置が入れ替わると共に環状溝31B・32Bの形状が異なった構成となっている。かかる構成以外の各構成については上記した実施例と同様である。
【0047】
次に。本発明に用いられる高粘度材料へのガス混入方法の一例について説明する。
ピストンがシリンダー内を往復移動して吸入行程と吐出工程を行うピストンポンプを用い、前記ピストンポンプの吸入工程において前記シリンダー内に例えば0.1〜5kg/cm2のガスを供給し、前記ピストンが吸入端に達して吸入工程が終了し且つ前記シリンダー内に調整された圧力のガスが充填された状態となった後で、前記シリンダー内に高粘度材料を供給し、前記高粘度材料の供給の終了後に前記ピストンポンプの吐出工程を行い、前記吐出工程において前記ガス及び高粘度材料をバルブノズルに導入する。
【0048】
図5は、高粘度材料へのガス混入方法に用いられるガス混入装置の回路図である。
図5において、ガス混入装置1は、ガス供給装置10、高粘度材料供給装置11、ガス導入装置12、制御装置19、加圧装置13、分散装置14、吐出装置15から構成されている。
【0049】
ガス供給装置10は、例えば、0.1〜5kg/cm2程度の範囲内、好ましくは0.1〜3kg/cm2程度の範囲内で調整された低圧力のガスを供給するものであり、コンプレッサからの圧縮空気を受け入れるポート101、圧力調整弁104、ガス流量計105等から構成される。該ガス供給装置10としては、圧力空気を供給する。
【0050】
高粘度材料供給装置11は、高粘度材料を、例えば、100〜300kg/cm2程度の範囲内、好ましくは150〜250kg/cm2程度の範囲内で調整された高圧力で管路111に送出する。該高粘度材料供給装置11としては、例えば、フォロアプレート式のプランジャーポンプ112等が用いられる。プランジャーポンプ112は、収納缶に充填された高粘度材料(熱硬化性発泡ウレタンゴム原料)4を高圧で管路111に送出する。
【0051】
ガス導入装置12は、交互に動作する2つのピストンポンプ121・122からなっている。各ピストンポンプ121・122は、夫々のピストンがモーター123・124によって往復直線駆動され、これによってピストンがシリンダー内を往復移動して吸入工程と吐出工程を行う。ピストンポンプ121・122は、管路111と管路125との間に介在し、高粘度材料供給装置11から圧送される高粘度材料4と、ガス供給装置10から送出されるガスとを、所定の比率で、夫々別々にバッチ式に導入する。
【0052】
制御装置19は、各ピストンポンプ121・122のシリンダー内に、吸入工程においてガスを供給し、吸入工程の後に高粘度材料4を供給し、高粘度材料4の供給の終了後に吐出工程を行ってガス及び高粘度材料4を管路125に吐出するように、モーター113・123・124及び弁を制御する。
【0053】
加圧装置13は、モーターにより直線往復駆動されるピストンによって流体を加圧するピストンポンプ131・132、開閉弁133・134・135・136、圧力センサー137・138等から構成されている。
【0054】
管路125を通りガス導入装置12から送出された混入状物は、交互に動作するピストンポンプ131・132によって加圧され、管路139に圧送される。シリンダー内の圧力は圧力センサ137・138によって検出され、検出信号が制御装置19に送られる。ピストンポンプ131・132からの押出し圧力は、例えば、150kg/cm2以上である。ピストンを駆動するモータは制御装置19からの信号によって制御され、これによってピストンポンプ131・132の吸入と押出し、及びその流量(押出し量)が制御されている。
【0055】
分散装置14は、分散用管路141、開閉弁142からなる。分散用管路141内において、混合状物の圧力は、例えば、150kg/cm2以上、200〜250kg/cm2、流量は100〜1000ml/min.程度である。加圧された混合状物が分散用管路141を流通する間に、ガスが平均直径0.01mm程度の微細なものとなって高粘度材料4内に分散する。
【0056】
吐出装置15は、分散装置14から送出する混合状物を常圧に戻して吐出させ発泡させるためのものである。吐出装置15は、吐出用管路151、吐出開閉弁152、ノズル153などからなっている。
【0057】
分散装置14から送出された混合状物は、吐出開閉弁152が開いているときは、高粘度材料4とガスとの混合状物がノズル153から射出成形装置のノズル、例えば、バルブノズルに導入される。そしてキャビティ220内の大気圧中に射出したときにガスが膨張して発泡する。
【0058】
本発明は上記のような高粘度材料へのガス混入方法、又は公知公用のガス混入方法を特別の制限なく用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成する。
【0059】
本発明に用いられる射出成形装置のノズルの一例について図6及び図7に基づき説明する。なお、射出成形機ノズルについては特許文献4に示すものが一例である。
【0060】
図6、図7に示す例では、ノズル210が複数配置されており、それぞれのノズル210を通して加圧された成形材料が多数個取りまたは多点ゲートのキャビティ220内に射出される。尚、この例は熱硬化性発泡ウレタンゴム(UG)を射出成形するものとして設計されている。
【0061】
ノズル210は、先端にゲート211が備えられている流路212と、この流路212の中心に配置されるニードル213とで構成されており、このニードル213の先端部214は、ゲート211に対して挿入・引抜き動作を行う弁となっている。また、ニードル213の後部は大径部215となっており、この大径部215はニードル213との断面積差を大きくすることにより低圧力でも射出を可能にすることができる。
【0062】
流路212に図示しない吐出装置15のノズル153から射出成形機のノズルにUGが導入され、流路212が一定値以上の圧力に至ると、ニードル213は、スプリング217の押圧力に抗して図面上において上方向に移動され、ゲート211に挿入されていた先端部214が後退する結果、ゲート211が開となり、UGがキャビティ220内に射出される。一定時間のUGの射出が行われた後、キャビティ内の加熱発泡ウレタン材料が一定値以上の圧力に至り、流路212の圧力が一定値以下に下がり、また射出成形機ノズルのがゲート211から相対的に離れるように移動するので、ニードル213は、スプリング217の押圧力が開放され、ゲート211に挿入されていた先端部214が後進する結果、ゲート211が閉となり、図面上において下方向に移動され先端部214がゲート211に挿入されゲート211が閉鎖される結果、UGの射出は停止される。
【0063】
上記において、ニードル213の作動、即ち、ゲート211の開閉制御は、射出成形機ノズル210等により導入されるUGの圧力とスプリング217の強さに関係している。従って、スプリング217の押圧力が強ければ流路212に導入されるUGの圧力をより高くしなければゲート211を開とすることができない。
【0064】
ノズル210が複数個配置されている多数個取り多点ゲートのキャビティ220による射出成形では、ノズル210毎にUGの射出・射出停止(ゲート211の開・閉)のタイミングを制御することが必要である。そこで本発明に係る射出成形機ノズルでは、各ノズル210毎にスプリング217の押圧力を調整する機構が用意されている。
【0065】
上記の機構としては、例えば、スプリング217の基端を支持するプレート231に連続するブロック232に対しテーパー部で接触する調整ブロック233を配置し、この調整ブロック233を、調整ネジ234の正回転・逆回転操作により往復直線運動させることにより、スプリング217の基端を支持するプレート231の位置を、図面上において上下に移動させる機構が適用される。プレート231が図面上において上方向に移動されるとスプリング217の押圧力は弱められ、逆に下方向に移動されるとスプリング217の押圧力は強められる。
【0066】
従って、高粘度材料へのガス混入装置1の吐出装置15のノズル153により導入されるUGの圧力が低くてもゲート211が開となるようにノズル210を調整するためには、調整ブロック233を、図面上のおいて左方向に移動させて、スプリング217の押圧力を弱めればよい。逆の操作では、調整ブロック233を、図面上のおいて右方向に移動させて、スプリング217の押圧力を強めればよい。
【0067】
上記から自明なように、ノズル210の開閉制御は、吐出装置15のノズル153から導入されるUGの圧力とスプリング217の押圧力との関数で決定されるが、本発明においては、各ノズル210毎にスプリング217の押圧力を調整する機構が設けられているので、UGの圧力を優先とする制御が好ましく実施可能となる。
【0068】
スプリング217の押圧力を調整する機構としては、スプリング217の基端を支持するプレート231の位置を移動させる様々な機構が採用可能であり、図示した機構でいえば、調整ネジ234をモーターにより正逆回転させる機構、調整ブロック233をソレノイドにより移動させる機構、とすることができ、更に、調整ブロック233に代えて偏心カムを利用し、その回動位置によりバネ圧を調整する機構、ニードル213と同軸線上でプレート231に連続して調整ネジを配置して、この調整ネジの回転操作によりプレート231の位置を変更してバネ圧を調整する機構、等が採用可能である。
【0069】
更に好ましい態様では、吐出装置15のノズル153によるUGの圧力をある一定の値としたときの、各スプリング217の押圧力の調整が自動制御される。即ち、射出シリンダー等の内圧の自動制御に連動してスプリング217の押圧力を自動制御する方式である。
【0070】
本発明は上記のようなノズル、又は公知公用のノズルを特別の制限なく用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を射出し、成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る射出成形装置の一実施例を示す概略断面図
【図2】図1のII−II線概略横断面図
【図3】本発明に係る射出成形装置の他の実施例を示す概略断面図
【図4】図3のIV−IV線概略横断面図
【図5】高粘度材料へのガス混入方法に用いられる装置の回路図
【図6】ノズルの一例を示す断面図
【図7】図6の中央部縦断面図
【符号の説明】
【0072】
1 ガス混入装置
2 ノズル
3 金型
4 高粘度材料(熱硬化性発泡ウレタンゴム原料)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度材料へのガス混入方法を用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成し、これを射出成形機ノズルに導入し、この射出成形機ノズルから、前記熱硬化性発泡ウレタンゴム材料が金型のキャビティに射出充填され、この充填完了直前又は充填後に、前記キャビティがIHコイルによって加熱制御されることを特徴とする熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【請求項2】
高粘度材料へのガス混入方法を用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成し、これをゲートの開閉動作をオープンゲート方式、空気圧・油圧式又はスプリング方式等により行う射出成形機ノズルに導入し、この射出成形機ノズルから、前記熱硬化性発泡ウレタンゴム材料が金型のキャビティに射出充填され、この充填完了直前又は充填後に、前記キャビティがIHコイルによって加熱制御されることを特徴とする熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【請求項3】
ゲートの開閉動作がスプリング方式であり、ノズルの流路の中央にニードルを配置し、このニードルの先端部をノズルのゲートに係合させると共に、該ニードルの後端大径部側にスプリングを配置して、該スプリングによる押圧力と前記流路に導入される成形用材料の圧力との差により該ニードルを移動させて前記ノズルのゲートの開閉制御を行うノズルにおいて、多数個取りまたは多点ゲート金型に対して複数のノズルが備えられており、それぞれのノズルには、スプリングの押圧力を調整する機構が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【請求項4】
キャビティを構成する金型が55℃以下に保持されており、射出充填後に60℃以上、100℃以下に加熱されることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【請求項5】
熱硬化性ウレタンゴムがイソシアネート基含有化合物と、融点が50℃以上固形ポリアミンの表面アミノ基を不活性化した潜在性硬化剤を主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形法。
【請求項6】
キャビティを構成する金型は、55℃以下に冷却する冷却手段と60℃以上、100℃以下に加熱するIHコイルが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性ウレタンゴム射出成形法。
【請求項7】
高粘度材料へのガス混入方法を用いて、熱硬化性発泡ウレタンゴム材料を形成する発泡ウレタンゴム形成装置と、ゲートの開閉動作をオープンゲート方式、空気圧・油圧式又はスプリング方式等により行う射出成形機ノズルと、前記射出成形機の金型のキャビティを過熱制御するIHコイルとを有することを特徴とする熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。
【請求項8】
固定型と可動型とからなる金型(モールド)の各々に、
キャビティに対向し、且つ相互に対向するように凹部が設けられ、該凹部の各々にIHコイルが配設されていると共に、
前記凹部の各々に冷媒路が配設されている
構成であることを特徴とする請求項7に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。
【請求項9】
固定型と可動型とからなる金型(モールド)の各々に、
キャビティに対向し、且つ相互に対向するように凹部が設けられ、該凹部の各々に冷媒路が配設されていると共に、
前記凹部を取り囲むように環状溝が設けられ、該環状溝の各々にIHコイルが配設されている
構成であることを特徴とする請求項7に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。
【請求項10】
前記凹部の表面が波形であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。
【請求項11】
前記環状溝が波形又は上下若しくは下方に突き抜けた直線状であることを特徴とする請求項7、9又は10に記載の熱硬化性発泡ウレタンゴム射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−35617(P2006−35617A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218246(P2004−218246)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(394018225)フィーサ株式会社 (29)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】