説明

燃料ガス供給システム、及びその圧力制御方法

【課題】 複雑な圧力制御を行うことなく且つ簡易なシステム構成で、小流量から大流量までの広範囲において燃料ガス消費器への供給圧力を高精度で制御できる燃料ガス供給システムを提供する。
【解決手段】 燃料ガス供給システム1は、供給通路4を介して高圧タンク3の燃料ガスを燃料ガス消費器2に供給するように構成されており、供給通路4は、第1及び第2流路11,12に分岐し、その後1つの合流流路14に合流している。第1流路11には、そこを開閉する電磁式開閉弁6が設けられており、第2流路12には、そこを流れる燃料ガスを調圧する電磁式調圧弁7が設けられている。そして、電磁式調圧弁7は、そのCv値が電磁式開閉弁6のCv値よりも小さくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに貯蔵された燃料ガスを燃料ガス消費器に供給する燃料ガス供給システム、及びその圧力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車として、ガソリンを使用するガソリン自動車や軽油を使用するディーゼル車等があるが、それらの他にも圧縮天然ガス(CNG)や圧縮水素等の燃料ガスを使用するガスエンジン自動車や燃料電池自動車が知られている。これらのガスエンジン自動車や燃料電池自動車では、燃料ガスが高圧タンク等に貯蔵されており、貯蔵された高圧の燃料ガスが燃料ガス供給システムを介してガスエンジンや燃料電池スタックに夫々供給されて消費される。燃料電池自動車の燃料ガス供給システムを含むシステムとして、例えば特許文献1のような燃料電池システムが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の燃料電池システムは、水素ボンベと燃料スタックとの間に2つの水素調圧弁が並列的に設けられている。燃料電池システムでは、2つの水素調圧弁の開度を調整することで燃料スタックへの水素ガスの供給圧を調整するようになっている。これら2つの水素調圧弁は、燃料スタックへの供給流量が異なるように構成されており、大流量を供給可能な大型調圧弁と小流量を供給可能な小型調圧弁とを組み合わせて使用することで燃料スタックに必要流量を供給するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−231277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の燃料電池システムで使用される調圧弁は、減圧弁や開閉弁に比べて構造が複雑であり且つ構成する部品点数が多いため、製造コストが高い。それ故、調圧弁を複数使用するとシステム構成が複雑になり、製造コストが高くなる。また、所望の供給圧を得るために、2つの調圧弁の開度を組み合わせる必要があり、システム全体における圧力制御が複雑になる。
【0006】
そこで本発明は、複雑な圧力制御を行うことなく且つ簡易なシステム構成で、小流量から大流量までの広範囲において燃料ガス消費器への供給圧力を高精度で制御できる燃料ガス供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料ガス供給システムは、第1及び第2流路に分岐した後に1つに合流する供給通路を介してタンクに貯蔵された燃料ガスを燃料ガス消費器に供給する燃料ガス供給システムであって、前記第1流路に設けられ、前記タンクと前記燃料ガス消費器との間を開閉する電磁式開閉弁と、前記第2流路に設けられ、前記タンクから前記燃料ガス消費器に導かれる燃料ガスを調圧する電磁式調圧弁とを備え、前記電磁式調圧弁は、前記電磁式開閉弁に比べて容量係数が小さくなっているものである。
【0008】
本発明に従えば、燃料ガス消費器にて大流量の燃料ガスが必要な場合、電磁式調圧弁に比べて容量係数が大きい電磁式開閉弁により大流量の燃料ガスを燃料ガス消費器に供給し、電磁式開閉弁に対して並列的に第2流路に設けられている電磁式調圧弁により燃料ガス消費器への供給圧力を調圧することができる。他方、燃料ガス消費器にて必要な燃料ガスが小流量である場合、電磁式開閉弁により第1流路を閉じ、電磁式調圧弁により燃料ガス消費器への供給圧力を調圧することができる。このように電磁式開閉弁と電磁式調圧弁とを用いる簡易なシステム構成で且つ複雑な圧力制御を行うことなく、小流量から大流量の広範囲において供給圧力を高精度で制御することができる。
【0009】
また、本発明では、電磁式調圧弁の容量係数を電磁式開閉弁のそれより小さくすることで、電磁式開閉弁より構成が複雑で且つ部品点数の多い電磁式調圧弁の小形化を図ることができる。これにより、電磁式調圧弁の製造コストを低減させることができると共に、燃料ガス供給システムの製造コストを低減することができる。
【0010】
上記発明において、前記容量係数は、Cv値であり前記電磁式調圧弁は、前記電磁式開閉弁のCv値の50%以下のCv値を有していることが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、電磁式調圧弁のCv値を電磁式開閉弁のCv値の50%以下にすることで電磁式調圧弁の小形化を図ることができ、電磁式調圧弁の製造コストを抑えることができる。これにより、燃料ガス供給システムの製造コストをより低減することができる。他方、電磁式開閉弁のCv値を確保することができるので、より大きな流量を燃料ガス消費器に流すことができる。
【0012】
上記発明において、前記電磁式開閉弁の開閉動作及び前記電磁式調圧弁の調圧動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記燃料ガス消費器の燃料ガスの供給圧力と目標圧力との差圧が規定値以上である場合、前記電磁式開閉弁により前記第1流路を開くことで前記燃料ガス消費器の供給圧力を昇圧し、前記差圧が規定値未満である場合、前記電磁式開閉弁により前記第1流路を閉じて前記電磁式調圧弁により前記燃料ガス消費器の供給圧力を調圧するようになっていることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、制御装置は、供給圧力と目標圧力との差圧が規定値以上の場合、供給圧力を目標圧力に近づけるべく、第1流路を開いて大流量の燃料ガスを燃料ガス消費器に供給し、供給圧力を大きく上昇させる。また、制御装置は、差圧が規定値未満の場合、供給すべき流量が多くないため電磁式開閉弁により第1流路を開じ、小流量を供給可能な電磁式調圧弁により供給圧力を調整する。このように電磁式開閉弁の開閉動作と電磁式調圧弁の調圧動作とだけで小流量から大流量の広範囲において供給圧力を高精度で調整することができる。それ故、制御装置における圧力制御が容易である。
【0014】
上記発明において、前前記制御装置は、前記差圧が規定値以上であって前記供給圧力を昇圧した場合、前期供給圧が目標圧力に達するまで前記差圧が規定値未満になっても前記前記電磁式開閉弁の開状態を保持するようになっていることが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、差圧が規定値以上となり多量の燃料ガスの供給が必要なとき、例えば運転始動時において、供給圧力が昇圧されて差圧が規定値未満になっても供給圧力が目標圧力に達するまでは電磁式開閉弁を開状態で保持される。また、高負荷運転時において多量の燃料ガスを消費して供給圧力と目標圧力との差圧が一度規定値以上になり、その後電磁式開閉弁により第一流路が開かれて差圧が規定値未満に回復した場合でも、供給圧力が目標圧力に達するまでは電磁式開閉弁が開状態に保持される。これにより、速やかな昇圧支援が可能となり、供給圧力を迅速に目標圧力まで昇圧させることができる。それ故、燃料ガス供給システムの応答性が向上する。
【0016】
上記発明において、前記燃料ガス消費器への供給圧力を検出する供給圧力検出器を更に有し、前記制御装置は、前記燃料ガス消費器への供給圧力を前記供給圧力検出器の検出結果から得るようになっていることが好ましい。
【0017】
上記構成に従えば、供給圧力をフィードバック制御することができ、供給圧力を指令値に応じた圧力により正確に制御することができる。
【0018】
上記発明において、前記第1流路において電磁式開閉弁の上流側に設けられ、前記タンクから供給される燃料ガスを所定圧力に減圧する減圧弁を備えることが好ましい。
【0019】
上記構成に従えば、タンク圧が高圧の場合であっても減圧弁により低圧に減圧した後に電磁式開閉弁から所定圧力の燃料ガスを供給することができるので、低圧仕様の燃料ガス消費器に対しても高圧タンクを適用することができる。また、減圧弁を用いることで電磁式開閉弁から燃料ガス消費器に供給される燃料ガスの圧力が安定する。
【0020】
本発明の燃料ガス供給システムの圧力制御方法は、第1及び第2流路に分岐した後に1つに合流する供給通路を介してタンクに貯蔵された燃料ガスを燃料ガス消費器に供給する燃料ガス供給システムの圧力制御方法であって、前記燃料ガス消費器の燃料ガスの供給圧力と目標圧力との差圧を算出する差圧算出工程と、前記差圧が規定値以上である場合、第1の流路に設けられている電磁式開閉弁により前記第1流路を開いて前記タンクから前記燃料ガス消費器に導き、前記供給圧力を昇圧する昇圧工程と、前記差圧が規定値未満である場合、前記電磁式開閉弁により前記第1流路を閉じ、前記第2流路に設けられ且つ前記電磁式開閉弁に比べて容量係数が小さい電磁式調圧弁により前記供給圧力を調圧する調圧工程とを有する方法である。
【0021】
本発明の燃料ガス供給システムの圧力制御方法に従えば、燃料ガス消費器の燃料ガスの供給圧力と目標圧力との差圧が規定値以上の場合、供給圧力を目標圧力に近づけるべく、電磁式開閉弁により第1流路を開くことで大流量の燃料ガスを燃料ガス消費器に供給して供給圧力を大きく上昇させる。また、制御装置は、差圧が規定値未満の場合、供給すべき流量が多量に必要でないため電磁式開閉弁により第1流路を開じ、小流量を供給可能な電磁式調圧弁により供給圧力を調整する。このように電磁式開閉弁の開閉動作と電磁式調圧弁の調圧動作とだけで小流量から大流量の広範囲において供給圧力を目標圧力に高精度で調整することができる。それ故、制御装置における圧力制御が容易である。
【0022】
上記本発明において、前記昇圧工程により昇圧される前記供給圧力が前記目標圧力に達するまで前記差圧が規定値未満になっても前記電磁式開閉弁の開状態を保持する開弁保持工程を有し、前記調圧工程は、前記開弁保持工程後に実行されることが好ましい。
【0023】
上記構成に従えば、差圧が規定値以上となり多量の燃料ガスの供給が必要なとき、例えば運転始動時において、電磁式開閉弁により第1流路が開かれて供給圧力と目標圧力との差圧が規定値未満となった場合でも、供給圧力が目標圧力に達するまでは電磁式開閉弁を開状態に保持される。また、例えば高負荷運転時において、多量の燃料ガスを消費して供給圧力と目標圧力との差圧が一度規定値以上になり、その後電磁式開閉弁により第一流路が開かれて差圧が規定値未満に回復した場合でも、供給圧力が目標圧力に達するまでは電磁式開閉弁を開状態に保持される。これにより、速やかな昇圧支援が可能となり、供給圧力を迅速に目標圧力まで昇圧させることができる。それ故、燃料ガス供給システムの応答性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複雑な圧力制御を行うことなく且つ簡易なシステム構成で、小流量から大流量までの広範囲において燃料ガス消費器への供給圧力を高精度で制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかる燃料ガス供給システムの構成を示す油圧回路図である。
【図2】図1の燃料ガス供給システムに備わる電磁式調圧弁を示す断面図である。
【図3】図1の燃料ガス供給システムにより燃料ガスを供給する際の手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の燃料ガス供給システムにより入力される目標圧力に応じて燃料ガスを供給するときの(a)目標圧力、(b)電磁式調圧弁に供給される電流、(c)電磁式開閉弁に供給される電圧、(d)各流路の流量、及び(e)供給圧力の経時変化について示すグラフである。
【図5】図1の燃料ガス供給システムにより別の供給方法で燃料ガスを供給する際の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る燃料ガス供給システム(以下、単に「燃料ガス供給システム」ともいう)1について説明する。なお、以下に説明する燃料ガス供給システム1は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0027】
圧縮天然ガス自動車や水素ガス自動車等の車両は、ガスエンジンを有しており、このガスエンジンにて燃料ガス(圧縮天然ガス(CNG)や水素ガス等)を燃焼することによって駆動力を得て駆動輪を動かすようになっている。また、燃料電池自動車は、燃料電池スタックを有しており、この燃料電池スタックでは、燃料ガスを消費して発電し、発電した電力をモータに与えて駆動力を発生させるようになっている。ガスエンジンや燃料電池スタック等のように燃料ガスを消費して駆動力を発生させる燃料ガス消費器2は、燃料ガス供給システム1を介して高圧タンク3に接続されている。高圧タンク3は、例えば35〜70MPa、又はそれ以上の高圧の燃料ガスを貯蔵することができるようになっている。燃料ガス供給システム1は、高圧タンク3に貯蔵されている燃料ガスを燃料ガス消費器2に供給するようになっている。以下では、燃料ガス供給システム1の構成について説明する。
【0028】
<燃料ガス供給システム>
燃料ガス供給システム1は、アクセルペダルやスロットルグリップ等の図示しない入力手段からの指令値に応じて燃料ガス消費器2への燃料ガスの供給量を調整するようになっている。燃料ガス供給システム1は、供給通路4と、減圧弁5と、電磁式開閉弁6と、電磁式調圧弁7と、圧力センサ8と、制御装置9とを備えている。供給通路4は、燃料ガスが流れる通路であり、その一端に高圧タンク3、他端に燃料ガス消費器2が繋がっている。また、供給通路4は、途中で第1流路11と第2流路12とに分岐している。第1流路11には、減圧弁5と、電磁式開閉弁6とが設けられ、第2流路12には、電磁式調圧弁7が設けられている。また、第1流路11及び第2流路12は、夫々電磁式開閉弁6及び電磁式調圧弁7を経由して合流地点13にて合流し、1つの合流流路14を形成して燃料ガス消費器2に繋がっている。
【0029】
減圧弁5は、機械式の減圧弁であり、一次側が高圧タンク3に繋がっている。減圧弁5は、高圧タンク3から流出する高圧の燃料ガスを設定圧力、具体的には燃料ガス消費器2の許容最大圧力以下の一定圧力に減圧して二次側(下流側)へ排出するようになっている。減圧弁5の二次側には、電磁式開閉弁6が設けられている。電磁式開閉弁6は、いわゆる電磁式の開閉弁であり、後述する制御装置9から入力される開閉指令に応じて第1流路11を開閉するようになっている。
【0030】
他方、電磁式調圧弁7は、電磁式開閉弁6に対して並列的に第2流路12に設けられており、一次側が高圧タンク3に繋がっている。電磁式調圧弁7は、高圧タンク3から流出する高圧の燃料ガスをそこに流される電流に応じた低圧の圧力に調圧して二次側(下流側)へ出力するようになっている。電磁式調圧弁7は、電磁式開閉弁6に対して容量係数、具体的にはCv値が小さく、電磁式開閉弁6よりも排出できる流量が小さく構成されている。電磁式調圧弁7のCv値は、電磁式開閉弁6のCv値の50%以下に設定されている。
【0031】
このように構成されている3つの弁5〜7が夫々介在する2つの流路11,12は、それら3つの弁5〜7より下流側の合流地点13にて繋がっており、それより下流側の合流流路14に圧力センサ8が設けられている。圧力センサ8は、合流流路14における燃料ガスのガス圧、つまり燃料ガス消費器2に供給される供給圧力を検出するようになっている。この圧力センサ8は、制御装置9に電気的に繋がっており、圧力センサ8の検出結果は、制御装置9に送信されるようになっている。
【0032】
制御装置9は、図示しない電子演算回路(以下、ECUとする)と圧力センサ8とに接続されている。制御装置9は、燃料ガス消費器2に供給される供給圧力に対する目標圧力が入力される。制御装置9は、圧力センサ8の検出圧と目標圧力との差圧に基づいて、電磁式開閉弁6に開閉の指令を与え、また電磁式調圧弁7に電流を流してその二次圧pを調圧するようになっている。
【0033】
さらに具体的に説明すると、制御装置9は、圧力センサ8の検出圧と目標圧力との差圧が規定値以上であるとき、電磁式開閉弁6に対して第1流路11を開く開指令を送信し、目標圧力と検出圧との差圧が規定値未満であるとき、電磁式開閉弁6に対して第1流路11を閉じる閉指令を送信するようになっている。また、制御装置9は、供給圧力が目標圧力になるように目標圧力と検出圧との差圧に基づいて電磁式調圧弁7に流す電流を調整する、つまり電磁式調圧弁7に流す電流をフィードバック制御するようになっている。
【0034】
<電磁式調圧弁>
電磁式調圧弁7は、高圧タンク3に貯蔵される高圧の燃料ガスを低圧まで減圧することができる弁であり、以下にその構成について詳述する。なお、以下の説明における上下、左右、及び前後等の方向の概念は、説明の便宜上使用するものであって、電磁式調圧弁7に関して、それらの構成の配置及び向き等をその方向に限定することを示唆するものではない。また、以下で説明する電磁式調圧弁7は、電磁式調圧弁の一実施形態に過ぎず、後述する形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0035】
電磁式調圧弁7は、図2に示すようにハウジング21を備えている。ハウジング21には、一次ポート21a、弁体孔21b、及び二次ポート21cが形成されている。一次ポート21aは、高圧タンク3(図1参照)に繋がっており、ハウジング21に形成されている一次側通路21dを介して弁体孔21bに繋がっている。
【0036】
弁体孔21bは、上下に延在する軸線L1に沿って延在しており、その断面が円形状になっている。弁体孔21bは、その中間部分に残余部より大径に形成された弁空間21eを有しており、この弁空間21eに一次側通路21dが繋がっている。また、弁体孔21bは、前記弁空間21eより上側の二次側領域21gで二次側通路21fと繋がっている。二次側通路21fは、ハウジング21に形成されており、弁体孔21bは、この二次側通路21fを介して二次ポート21cに繋がっている。二次ポート21cは、第2流路12及び合流流路14を介して燃料ガス消費器2と繋がっている。このように一次ポート21aと二次ポート21cとは、一次側通路21d、弁空間21e、二次側領域21g及び二次側通路21fを介して繋がっており、一次側通路21d、弁空間21e、二次側領域21g及び二次側通路21fによって、一次ポート21aと二次ポート21cとを繋ぐ弁通路22が構成されている。
【0037】
また、ハウジング21は、座部23を有している。座部23は、二次側領域21gと弁空間21eとを繋ぐ開口を外囲するように形成されている。そして、この座部23に着座するようにハウジング21の弁体孔21bに弁体24が挿入されている。弁体24は、弁体孔21bの軸線L1に沿って配置されており、その先端部(つまり、上端部)24aが二次側領域21gに位置している。弁体24は、大略的に円柱状になっており、先端部24a側にテーパ部24bを有している。テーパ部24bは、上側に向かって先細りのテーパ形状になっており、弁体24が図2に示すような閉位置に位置しているときに座部23に着座して弁通路22を閉じている。
【0038】
更に、ハウジング21は、弁空間21eより下側にシール取付部25を有している。シール取付部25は、ハウジング21の内周面において周方向全周にわたって形成され、且つ前記内周面に弁体孔21bに突き出るように形成されている。シール取付部25の内径は、二次側領域21gの孔径及び弁体24の外径(テーパ部24bより下端24d側の部分の外径)と略一致している。また、ハウジング21のシール取付部25より下側の内径は、シール取付部25の内径より僅かに大径になっている。これにより、弁体24の下端側の周りには、ハウジング21との間に大略円環状の軸受部材収容空間26が形成されている。この軸受部材収容空間26には、軸受部材27が収容されている。
【0039】
軸受部材27は、大略的に円筒状に形成されており、例えばボールガイド、ボール軸受、又はすべり軸受によって構成されている。軸受部材27は、弁体24に外装されて弁体24とハウジング21との間に介在し、弁体24を支持している。これにより、弁体24は、ハウジング21内を軸線L1に沿って上下方向に円滑に移動できるようになっている。
【0040】
このように軸受部材27が配置された軸受部材収容空間26の上側には、そこを塞ぐべく、高圧シール部材28が設けられている。高圧シール部材28は、シール取付部25の内周部に嵌め込むように取付けられ、弁体24の外周に当接するように配置されている。このように配置された高圧シール部材28は、弁体24とシール取付部25との間隙を封止している。
【0041】
また、軸受部材収容空間26の下側には、そこを塞ぐべく、ダイヤフラムシール29が設けられている。ダイヤフラムシール29は、大略的に円環状に形成されたダイヤフラムであり、弁体24の外周に配置されている。ダイヤフラムシール29の内縁部は弁体24に取付けられ、外縁部はハウジング21に取付けられている。詳述すると、ダイヤフラムシール29の内縁部は、弁体24の下端24dとそこに取り付けられた取付部材24cとで挟むことで、弁体24に取付けられている。他方、ダイヤフラムシール29の外縁部は、ハウジング21を上下に2つに分割可能に構成し、それら2つの部分の間に挟まれることでハウジング21に取付けられている。
【0042】
このように軸受部材27の上下両側は、2つのシール部材28,29によって封止されている。つまり、軸受部材収容空間26は、ハウジング21内に形成されている他の空間(例えば、弁空間21eや二次側領域21g等)から遮断されて隔離されている。これにより、軸受部材27が燃料ガスに曝されることがないので、燃料ガスに対する腐食耐性がない材料も軸受部材に使用することが可能になり、軸受部材の材料の選択肢が増加する。また、弁体24の動きを更に滑らかにし、且つ耐久性を向上させるべく軸受部材27をグリス潤滑することができる。
この軸受部材収容空間26は、ハウジング21に形成された大気連通路30を介して大気に開放されている。
【0043】
弁体孔21bのダイヤフラムシール29より下側には、圧力帰還室31が形成されている。圧力帰還室31は、ハウジング21の底部、及びダイヤフラムシール29によって囲まれた大略円板状の空間である。この圧力帰還室31には、弁体24の下端24d側(具体的には、取付部材24c)が対向している。この圧力帰還室31は、ダイヤフラムシール29によって軸受部材収容空間26から隔離されており、弁体24に形成されている均圧通路32によって二次側通路21fに繋がっている。圧力帰還室31は、均圧通路32によって二次ポート21cと常時繋がっており、二次ポート21cに導かれる二次圧pが均圧通路32により圧力帰還室31に導かれるようになっている。
【0044】
また、弁体24は、フランジ24eを有している。フランジ24eは、テーパ部24bの下側に位置しており、弁体24の外周部において周方向全周にわたって形成されている。フランジ24eは、テーパ部24bから更に半径方向外方に向かって突出しており、シール取付部25の上端に対向するように位置している。フランジ24eとシール取付部25の上端との間には、復帰用ばね33が配置されている。復帰用ばね33は、いわゆる圧縮コイルばねであり、圧縮された状態で弁体24に外装され、弁体24を閉位置方向(弁体24が閉位置に向かう方向)に付勢している。付勢された弁体24は、座部23に着座し、弁通路22を閉じている。ハウジング21の開口端部(即ち、上端部)には、復帰用ばね33の付勢に抗する力を弁体24に与えるべく、電磁比例ソレノイド34が設けられている。
【0045】
電磁比例ソレノイド34は、ハウジング21の開口端部の外周に螺合して固定されている。電磁比例ソレノイド34は、ソレノイドコイル35を有している。ソレノイドコイル35は、大略的に円筒状に形成され、その下端側にハウジング21が螺合されている。ソレノイドコイル35は、大略円筒状のケース35aを有し、その中にボビン35bとコイル線35cとが設けられている。ボビン35bもまた大略円筒状に形成され、このボビン35bにコイル線35cを巻きつけることによってソレノイドコイル35が構成されている。コイル線35cは、制御装置9に電気的に接続されている。また、ソレノイドコイル35内の下端側には、ヨーク36が設けられており、上端部はカバー37によって塞がれている。そして、ヨーク36とカバー37との間には、可動部材38が設けられている。
【0046】
可動部材38は、磁性材料から成り、大略円柱状に形成されており、軸線L1に沿って配置されている。可動部材38の外径は、ソレノイドコイル35の内径より小さくなっている。可動部材38とソレノイドコイル35との間には、円環状のガイド部材39が介在している。ガイド部材39は、非磁性体から成り、可動部材38を軸線L1に沿って上下方向に摺動可能に支持している。ヨーク36は、可動部材38の下端部に上下方向に対向し、互いに間隔をあけた状態で位置している。ヨーク36は、磁性材料から成り、大略円環状に形成されている。ヨーク36及び可動部材38は、ソレノイドコイル35に電流を流すことで磁化し、ヨーク36は、可動部材38を吸引するようになっている。
【0047】
また、可動部材38の上端部とカバー37との間には、圧縮コイルばね40が設けられており、圧縮コイルばね40により可動部材38が弁体24側へと付勢されている。可動部材38の下端部には、押圧部材41が設けられている。押圧部材41は、軸線L1に沿って延在し、ヨーク36内に挿通されている。押圧部材41の基端部は、可動部材38に固定されている。押圧部材41の先端は、部分球面状に形成されており、弁体24の先端部24aに当接している。また、押圧部材41は、可動部材38を介して圧縮コイルばね40により付勢されており、その先端が弁体24の先端部24aに押し付けられている。それ故、押圧部材41は、ソレノイドコイル35に電流を流して可動部材38をヨーク36の方に吸引させることで電流に応じた力で弁体24を開位置方向に押して弁通路22を開くようになっている。
【0048】
このように構成されている電磁式調圧弁7は、弁体24のテーパ部24b及びフランジ24eの上面(第1受圧面に相当する受圧面P1)で高圧タンク3から弁空間21eに導かれた一次圧p1を開位置方向に受圧し、フランジ24eの下面(第2受圧面に相当する受圧面P2)において、前記一次圧p1を閉位置方向に受圧している。なお、受圧面P1は、テーパ面の一部分の領域であって、平面視で二次側領域21gより半径方向外側の領域である。各受圧面P1,P2において、一次圧p1は、互いに抗する方向に作用しており、互いに打ち消し合っている。受圧面P1,P2の受圧面積は、弁体24のフランジ24eより下端24d側の外径rと二次側領域21gの内径(つまり、シート径r)とが略同じ径を有しているので、略同一になっている。それ故、受圧面P1で受ける一次圧p1による作用力と、受圧面P2で受ける一次圧p1による作用力とが互いに相殺され、弁体24における一次圧p1の変動による影響を略ゼロにすることができる。なお、受圧面P2の受圧面積は、受圧面P1の受圧面積より大きくてもよい。
【0049】
また、電磁式調圧弁7は、弁体24の先端及びテーパ部24bのテーパ面(受圧面P3)において二次側領域21gを流れる二次圧pを開位置方向に受圧し、ダイヤフラムシール29及び弁体24の下端24d(受圧面P4)において圧力帰還室31に導かれた二次圧pを閉位置方向に受圧する。なお、受圧面P3は、平面視で二次側領域21gに重なる領域である。受圧面P3,P4で受圧する二次圧pは、互いに抗する方向に作用している。
【0050】
受圧面P3の受圧面積は、シート径rに応じて決まり、受圧面P4の受圧面積は、ダイヤフラムシール29の有効径rに応じて決まる。シート径rが弁体24の外径rと略同じであるのに対して、ダイヤフラムシール29の有効径rは、前記シート径r及び弁体24の外径rより大きくなっている。それ故、受圧面P3に比べて受圧面P4の方が受圧面積が大きくなっている。これにより、弁体24には、各受圧面P3,P4で受ける二次圧pによる作用力が完全に相殺されず、各受圧面P3,P4における受圧面積の差に応じた作用力が閉位置方向に作用している。
【0051】
また、弁体24は、このような作用力を受けているだけでなく復帰用ばね33によっても閉位置方向に付勢されている。そのため、電磁式調圧弁7は、ソレノイドコイル35への電流が遮断された状態で弁体24が座部23に着座するようになっており、ノーマルクローズ形の弁として構成されている。このように構成される電磁式調圧弁7は、遮断弁として利用されており、制御装置9は、圧力センサ8の検出圧が許容圧力以上になると、ソレノイドコイル35に流す電流を遮断して電磁式調圧弁7によって弁通路22を緊急遮断する。このように緊急遮断することにより、例えば、燃料ガス消費器2に意図しない高圧の燃料ガスが供給されても第2流路12を直ぐに遮断することができ、燃料ガス消費器2が損傷することを防ぐことができる。
【0052】
<電磁式調圧弁の動作>
以下では、図2を参照しながら電磁式調圧弁7の動作について説明する。まず、制御装置9がECU(図示せず)から受信する目標圧力と供給圧力との差圧に応じて電流をソレノイドコイル35に流す。そうすると、可動部材38に励磁力が作用し、可動部材38がヨーク36の方へ吸引される。これにより、押圧部材41によって弁体24が開位置方向に押されて座部23から離れる。そうすると、弁通路22が開き、高圧タンク3から導かれた弁空間21eの燃料ガスが二次側領域21gへと流れる。この際、弁体24と座部23との間に形成されるオリフィス(図示せず)により弁空間21eから二次側領域21gに流れる燃料ガスが二次圧pに減圧される。
【0053】
このようにして減圧された二次圧pの燃料ガスは、二次側通路21fを通って二次ポート21cから出力されると共に、一部が均圧通路32を通って圧力帰還室31に導かれる。ダイヤフラムシール29は、圧力帰還室31に導かれた燃料ガスの二次圧pを受圧する。弁体24は、可動部材38が受ける励磁力、受圧面P3,P4で夫々受ける二次圧pによる作用力、及び復帰用ばね33のばね力が釣り合う位置まで移動し、前記力が釣り合うように弁通路22の開度(つまり、オリフィスの開度)を調整する。そのため、二次圧pが変動しても弁通路22の開度が調整されて二次圧pが電流に応じた一定圧力に維持される。つまり、二次圧pが電流に応じた一定圧力にて保持される。
【0054】
更に具体的に説明すると、例えば、二次圧pが前記一定圧力より低い場合、励磁力による開位置方向の力が二次圧pによる作用力及びばね力による閉位置方向の力より大きくなり、弁体24が座部23から離れるように開位置方向に移動する。それ故、弁通路22の開度が広がって二次圧pが上昇し、二次圧pによる作用力、励磁力、及び復帰用ばね33のばね力が釣り合う位置、つまり二次圧pが前記一定圧力になる位置まで弁体24が移動し、二次圧pが前記一定圧力に戻される。このように、電磁式調圧弁7は、二次圧pが変動してもそれに合わせて弁通路22の開度を制御し、二次圧pを目標圧力に調圧することができる。従って、電磁式調圧弁7は、圧力制御性が高く、高圧の燃料ガスをより正確に低い圧力に可変調圧することができる。なお、二次圧pが前記一定圧力より高い場合、前述する動きとは逆に、二次圧pが前記一定圧力に戻すように弁体24が閉方向に移動する。
【0055】
このように動作する電磁式調圧弁7では、弁体24が軸受部材27により支持されて円滑に移動できるようになっている。それ故、二次圧pが変動しても二次圧pを前記一定圧力に戻すべく弁体24が素早く動くので、電磁式調圧弁7の前記一定圧力に対する追従性を向上させることができる。これにより、二次圧pの変動幅を小さくすることができる。
【0056】
<燃料ガスの供給方法>
以下では、燃料ガス供給システム1における燃料ガスの供給方法について図3のフローチャート及び図4のグラフを参照しながら説明する。燃料ガス供給システム1では、図4(a)の時刻t1に示されるように、制御装置9に目標圧力が入力されると燃料ガス供給処理を開始し、ステップS1に移行する。差圧算出工程であるステップS1では、圧力センサ8で検出される供給圧力と目標圧力との差圧を算出する。差圧が算出されると、ステップS2に移行する。
【0057】
目標圧力判定工程であるステップS2では、ステップS1で算出された差圧が予め定められた規定値以上であるか否かを制御装置9が判定する。規定値以上であると判定されると、ステップS3に移行する。昇圧工程であるステップS3では、制御装置9が電磁式開閉弁6に電流を流して第1流路11を開く(図4(c)の時刻t1参照)。これにより、減圧弁5によって減圧された燃料ガスが電磁式開閉弁6を通って燃料ガス消費器2へと導かれる。電磁式開閉弁6のCv値が電磁式調圧弁7のそれに比べて大きいため、大流量の燃料ガスが燃料ガス消費器2に導かれて供給圧力が素早く上昇する。ステップS3にて電磁式開閉弁6に電圧を印加して第1流路11を開くと、ステップS4に移行する。
【0058】
調圧工程であるステップS4では、制御装置9が電磁式開閉弁6に電圧を印加するのと同時に電磁式調圧弁7に電流を流して電磁式調圧弁7を動作させる(図4(b)の時刻t1参照)。これにより、第2流路12から燃料ガス消費器2に小流量の燃料ガスが導かれる。この際、制御装置9は、圧力センサ8で検出される供給圧力と目標圧力との差圧に応じて電磁式調圧弁7に流す電流を制御して弁通路22の開度を調整し、供給圧力が目標圧力になるように二次圧pを調圧する(図4(b)の時刻t2〜t3参照)。つまり、供給圧力が目標圧力になるように制御装置9が電磁式調圧弁7をフィードバック制御する。
【0059】
このように圧力センサ8の検出結果に基づいて供給圧力をフィードバック制御することで、供給圧力をより正確に目標圧力に制御することができる。制御装置9がフィードバック制御を始めるとステップS1に戻り、制御装置9が再び差圧を算出する。そして、ステップS2にて算出された差圧が規定値以上であると判定されれば上述の制御を繰り返し(図4(b)〜(e)の時刻t2〜t3参照)、差圧が規定値未満になったと判定されるとステップS5に移行する。
【0060】
閉弁工程であるステップS5では、制御装置9が電磁式開閉弁6への電圧の印加を止めて電磁式開閉弁6を閉弁し、第1流路11を閉じる(図4(c)の時刻t3参照)。第1流路11が閉じられると、ステップS4に移行する。ステップS4に移行すると、制御装置9は、圧力センサ8で検出される供給圧力と目標圧力との差圧に応じて電磁式調圧弁7に流す電流をフィードバック制御する(図4(a)、(b)及び(e)の時刻t3〜t4参照)。そして、ステップS1に戻る。
【0061】
次に、目標圧力が変更された場合について説明する。目標圧力が変更されて低くなると(図4(a)の時刻t4参照)、目標圧力が供給圧力より小さくなるためステップS2で前記差圧が規定値未満であると制御装置9が判定し、ステップS5に移行する。ステップS5では、制御装置9が電磁式開閉弁6の閉弁状態を維持し、ステップ4に移行する。ステップS4では、制御装置9が圧力センサ8で検出される供給圧力と目標圧力との差圧に基づいて電磁式調圧弁7に流す電流をフィードバック制御し、供給圧力を低下させる(図4(b)及び(c)の時刻t4参照)。
【0062】
また、目標圧力が変更されて高くなると(時刻t5参照)、ステップS2で前記差圧が規定値以上か否かを制御装置9が判定する。ここでは、制御装置9が前記差圧が規定値未満であると判定し、ステップS5に移行する。ステップS5では、目標圧力が低くなった場合と同様に制御装置9が電磁式開閉弁6の閉弁状態を維持し、供給圧力が目標圧力になるようにステップ4にて制御装置9が電磁式調圧弁7に流す電流をフィードバック制御する(図4(b)及び(c)の時刻t5参照)。
【0063】
他方、目標圧力が大幅に変更されてステップS2で前記差圧が規定値以上であると制御装置9が判定すると、ステップS3に移行する(図4(a)〜(e)の時刻t6参照)。ステップS3では、制御装置9が電磁式開閉弁6に電圧を印加して第1流路11を開く。これにより、第一流露11から燃料ガス消費器2に大流量の燃料ガスが供給され、供給圧力が上昇する。他方、制御装置9は、ステップS4において供給圧力が目標圧力になるように電磁式調圧弁7のフィードバック制御を再び行う。そして、ステップS1に戻って前記差圧を算出し、ステップS2において前記差圧が規定値未満であると判定されると、制御装置9は、ステップS5において電磁式開閉弁6を閉弁して第1流路11を閉じ、電磁式調圧弁7によって供給圧力を目標圧力に調整する(図4(a)及び(c)の時刻t7参照)。
【0064】
このように燃料ガス供給システム1では、電磁式調圧弁7と電磁式開閉弁6とを動作させるだけで小流量から大流量の広範囲において、供給圧力を変動する目標圧力に合わせて高精度で制御することができる。それ故、目標圧力が大小変動するような場合でも制御装置9における圧力制御が容易である。また、電磁式開閉弁6に対して電磁式調圧弁7の方がCv値を小さくすることで、電磁式開閉弁6より構成が複雑で且つ部品点数の多い電磁式調圧弁7の小形化を図ることができる。これにより、電磁式調圧弁7の製造コストを低減させることができ、その結果、燃料ガス供給システム1の製造コストを低減することができる。
【0065】
更に、燃料ガス供給システム1では、電磁式開閉弁6の上流側に減圧弁5が設けられているので、高圧タンク3内の燃料ガスの残量に関わらず電磁式開閉弁6から所定圧力の燃料ガスを供給することができる。これにより、低圧仕様の燃料ガス消費器2に対しても高圧タンク3を適用することができる。また、減圧弁5を用いることで電磁式開閉弁6から燃料ガス消費器2に供給される燃料ガスの圧力が安定するので、電磁式調圧弁7による供給圧力の調圧動作が安定する。また、電磁式調圧弁7が高圧の燃料ガスを低圧まで減圧することができるため、第2流路12には減圧弁を設ける必要がない。そのため、第2流路12に介在する弁を少なくすることができ、第2流路12の圧力損失を低減することができる。これにより、燃料ガス供給システム1の圧力損失を低減することができ、高圧タンク3における使用限界圧力を低くすることができる。
【0066】
<燃料ガスの別の供給方法>
以下では、燃料ガス供給システム1における燃料ガスの別の供給方法について図5のフローチャートを参照しながら説明する。以下で説明する、燃料ガスの別の供給方法は、前述した供給方法とその手順が類似している。従って、手順が異なる点についてだけ説明し、同一の点については、同一の符号を付してその説明を省略する。別の供給方法では、ステップS2で前記差圧が規定値未満であると判定されると、ステップS11に移行する。
【0067】
開閉状態判定工程であるステップS11では、電磁式開閉弁6に印加する電圧に基づいてその開閉状態を制御装置9が判定する。電磁式開閉弁6が開状態のとき、つまり前記差圧が規定値以上から規定値未満へと移行した場合、ステップS12へと移行する。目標圧力達成判定工程であるステップS12では、制御装置9が圧力センサ8で検出される供給圧力が目標圧力に達しているか否か、つまり供給圧力が目標圧力以上であるか否かを判定する。供給圧力が目標圧力未満である場合、ステップS4に移行し、制御装置9は電磁式開閉弁6の開状態を保持する。制御装置9が電磁式開閉弁6の開状態を保持して、ステップS12にて供給圧力が目標圧力以上であると判定されるとステップS5に移行し、ステップS5にて制御装置9が電磁式開閉弁6により第1流路11を閉じる。なお、開閉状態判定工程、目標圧力達成判定工程及び閉弁工程の3つの工程により開弁保持工程が構成されている。
【0068】
このようにして電磁式開閉弁6が閉状態になった後は、ステップS11で電磁式開閉弁6が閉状態であると制御装置9が判定するとステップS4に移行する。そして、ステップS4からステップS1に戻り、ステップS2で前記差圧が規定値以上であると判定されるまで電磁式調圧弁7だけで供給圧力が目標圧力になるように調圧する。ステップS2において前記差圧が規定値以上であると判定されると、電磁式開閉弁6を再び開状態にし、大流量の燃料ガスが供給される。
【0069】
このような燃料ガスの別の供給方法によれば、前記差圧が規定値以上となり多量の燃料ガスの供給が必要なとき、例えば運転始動時において、供給圧力が昇圧されて差圧が規定値未満になっても供給圧力が目標圧力に達するまでは電磁式開閉弁6が開状態で保持される。また、高負荷運転時において多量の燃料ガスを消費して供給圧力と目標圧力との差圧が一度規定値以上になり、その後電磁式開閉弁により第一流路が開かれて差圧が規定値未満に回復した場合でも、供給圧力が目標圧力に達するまでは電磁式開閉弁が開状態に保持される。これにより、速やかな昇圧支援が可能となり、供給圧力を迅速に目標圧力まで昇圧させることができる。それ故、燃料ガス供給システムの応答性が向上する。
【0070】
燃料ガスの別の供給方法は、その他、前述する燃料ガスの供給方法と同じ作用効果を奏する。
【0071】
[その他の実施形態について]
本実施形態の燃料ガス供給システム1では、電磁式開閉弁6を1つしか備えていないが、2つ以上の電磁式開閉弁6を備えていてもよい。例えば、供給通路4を3つ以上の流路に分岐させ、1つの流路に電磁式調圧弁を介在させ、それ以外の各流路に電磁式開閉弁を1つずつ介在させてもよい。この場合、全ての電磁式開閉弁のCv値を異なるように構成し、燃料ガス消費器2において必要な流量に応じて動作させる電磁式開閉弁を変えるようにすることが好ましい。また、減圧弁5は、電磁式調圧弁7に並列的に設けられているが、電磁式調圧弁7に直列的に設けてもよい。つまり、供給通路4が2つの流路11,12に分岐する分岐点より高圧タンク3側に減圧弁5を設けてもよい。
【0072】
また、制御装置9は、差圧が規定値以上になった場合、電磁式開閉弁6により第1流路11を開きつつ電磁式調圧弁7により供給圧力を調整しているが、一時的に電磁式調圧弁7を停止して電磁式開閉弁6から所定圧力だけを供給するようにしてもよい。また、制御装置9は、圧力センサ8の検出結果に基づいて電磁式調圧弁7の開度をフィードバック制御しているが、制御直前の目標圧力を供給圧力と仮定し、その供給圧力と受信した目標圧力との差圧に基づいて電磁式調圧弁7の動作を制御するようになっていてもよい。本実施形態では、容量係数としてCv値を適用しているが、容量係数は、バルブを全開にした時に単位時間あたりに弁を通過する流体の体積、又は重量を示す係数であり、Kv値やAv値であってもよい。
【0073】
また、本実施形態では、プッシュ形の電磁式調圧弁7が用いられているが、プル形の電磁式調圧弁7であってもよい。また、駆動機器として電磁比例ソレノイド34が用いられているが、フォースモータや圧電素子であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料ガス供給システム
2 燃料ガス消費器
3 高圧タンク
4 供給通路
5 減圧弁
6 電磁式開閉弁
7 電磁式調圧弁
8 圧力センサ
9 制御装置
11 第1流路
12 第2流路
14 合流流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2流路に分岐した後に1つに合流する供給通路を介してタンクに貯蔵された燃料ガスを燃料ガス消費器に供給する燃料ガス供給システムであって、
前記第1流路に設けられ、前記タンクと前記燃料ガス消費器との間を開閉する電磁式開閉弁と、
前記第2流路に設けられ、前記タンクから前記燃料ガス消費器に導かれる燃料ガスを調圧する電磁式調圧弁とを備え、
前記電磁式調圧弁は、前記電磁式開閉弁に比べて容量係数が小さくなっている、燃料ガス供給システム。
【請求項2】
前記容量係数は、Cv値であり
前記電磁式調圧弁は、前記電磁式開閉弁のCv値の50%以下のCv値を有している、請求項1に記載のガス供給システム。
【請求項3】
前記電磁式開閉弁の開閉動作及び前記電磁式調圧弁の調圧動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記燃料ガス消費器の燃料ガスの供給圧力と目標圧力との差圧が規定値以上である場合、前記電磁式開閉弁により前記第1流路を開くことで前記燃料ガス消費器の供給圧力を昇圧し、前記差圧が規定値未満である場合、前記電磁式開閉弁により前記第1流路を閉じて前記電磁式調圧弁により前記燃料ガス消費器の供給圧力を調圧するようになっている、請求項1又は2に記載の燃料ガス供給システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記差圧が規定値以上であって前記供給圧力を昇圧した場合、前期供給圧が目標圧力に達するまで前記差圧が規定値未満になっても前記前記電磁式開閉弁の開状態を保持するようになっている、請求項3に記載の燃料ガス供給システム。
【請求項5】
前記燃料ガス消費器の供給圧力を検出する供給圧力検出器を更に有し、
前記制御装置は、前記燃料ガス消費器の供給圧力を前記供給圧力検出器の検出結果から得るようになっている、請求項1乃至4の何れか1つに記載の燃料ガス供給システム。
【請求項6】
前記第1流路において電磁式開閉弁の上流側に設けられ、前記タンクから供給される燃料ガスを所定圧力に減圧する減圧弁を備える、請求項1乃至5の何れか1つに記載の燃料ガス供給システム。
【請求項7】
第1及び第2流路に分岐した後に1つに合流する供給通路を介してタンクに貯蔵された燃料ガスを燃料ガス消費器に供給する燃料ガス供給システムの圧力制御方法であって、
前記燃料ガス消費器の燃料ガスの供給圧力と目標圧力との差圧を算出する差圧算出工程と、
前記差圧が規定値以上である場合、第1の流路に設けられている電磁式開閉弁により前記第1流路を開いて前記タンクから前記燃料ガス消費器に導き、前記供給圧力を昇圧する昇圧工程と、
前記差圧が規定値未満である場合、前記電磁式開閉弁により前記第1流路を閉じ、前記第2流路に設けられ且つ前記電磁式開閉弁に比べて容量係数が小さい電磁式調圧弁により前記供給圧力を調圧する調圧工程とを有する、燃料ガス供給システムの圧力制御方法。
【請求項8】
前記昇圧工程により昇圧される前記供給圧力が前記目標圧力に達するまで前記差圧が規定値未満になっても前記電磁式開閉弁の開状態を保持する開弁保持工程を有し、
前記調圧工程は、前記開弁保持工程後に実行される、請求項7に記載の燃料ガス供給システムの圧力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−19527(P2013−19527A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155704(P2011−155704)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】