燃料噴射制御装置
【課題】検出される燃圧の挙動に基づき燃料噴射弁による燃料噴射量を見越して検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御を行なう燃料噴射制御装置において、燃料噴射弁の通電不良異常による燃圧の制御性の低下を好適に抑制する。
【解決手段】1番気筒〜3番気筒(#1〜#3)からなる第1のグループの燃料噴射弁に共通の給電経路に断線が生じたとき、この第1のグループの燃料噴射弁と圧縮上死点が対向するプランジャによる燃料の圧送を強制的にゼロとする。
【解決手段】1番気筒〜3番気筒(#1〜#3)からなる第1のグループの燃料噴射弁に共通の給電経路に断線が生じたとき、この第1のグループの燃料噴射弁と圧縮上死点が対向するプランジャによる燃料の圧送を強制的にゼロとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧状態で燃料を蓄えるとともに該燃料を燃料噴射弁に供給する蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室内の燃圧を検出する検出手段とを備える多気筒内燃機関の燃料噴射装置に適用され、前記燃料噴射による前記蓄圧室からの燃料の流出を前記検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって補う燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料噴射装置としては、ディーゼル機関の各気筒の燃料噴射弁に高圧の燃料を供給する共通の蓄圧室(コモンレール)を備えるものが周知である(特許文献1)。このコモンレール式のディーゼル機関によれば、機関運転状態に応じてコモンレール内の燃圧の目標値(目標燃圧)を自由に設定することができ、ひいては燃料噴射弁に供給される燃圧を自由に制御することができる。
【0003】
一方、上記燃料噴射制御装置は、コモンレール内の燃圧を目標燃圧に追従させるべく、通常、燃圧センサによって検出されるコモンレール内の燃圧と目標燃圧との差に基づくフィードバック制御を行っている。例えば、検出される燃圧及び目標燃圧に基づく比例項や積分項等に基づき燃料ポンプに対する吐出量の指令値(指令吐出量)を算出した後、この指令吐出量を燃料ポンプの操作量としての駆動電流値に換算する。これにより、検出される燃圧を目標燃圧に追従させるために要求される燃料量が燃料ポンプから吐出されることとなる。
【0004】
上記フィードバック制御を燃料噴射と加圧供給とが一対一に対応する同期システムに適用する場合、各燃料噴射によってコモンレールから流出する燃料量が各加圧供給によって補償される。これにより、コモンレールから流出する燃料とコモンレールへ流入する燃料とが定常的な平衡状態となる。
【0005】
ただし、燃料噴射弁に通電を行なう配線の断線等により特定の燃料噴射弁に通電不良異常が生じたときには、この燃料噴射弁を介した燃料噴射が行なわれないために、燃料噴射と加圧供給との同期が崩れ、ひいてはコモンレールから流出する燃料とコモンレールへ流入する燃料との平衡状態が崩れる。これにより、コモンレール内の燃圧の変動が大きくなり、ひいては燃圧の制御性が低下するおそれがある。
【0006】
なお、上記のものに限らず、検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって燃料噴射による燃料の流出を補う燃料噴射制御装置にあっては、燃料噴射弁の作動不良異常により燃圧の制御性が低下するこうした実情も概ね共通したものとなっている。
【特許文献1】特開平62−258160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって燃料噴射による燃料の流出を補う燃料噴射制御装置において、燃料噴射弁の作動不良異常による燃圧の制御性の低下を好適に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、前記燃料噴射弁の作動不良異常の有無を診断する診断手段と、前記燃料噴射弁に作動不良異常があると判断されるとき、前記作動不良異常の生じた燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと近接するタイミングにて行なわれる前記加圧供給の燃料量を減量すべく、前記フィードバック制御の態様を強制的に変更する変更手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、作動不良異常があると判断されるとき、その燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと近接するタイミングにて行なわれる加圧供給の燃料量が減量される。これにより、作動不良異常の生じた燃料噴射弁による燃料噴射のタイミング近傍において蓄圧室内に過剰な燃料が加圧供給されることを抑制することができる。このため、各加圧供給の燃料量が、同加圧供給のタイミング近傍において蓄圧室から流出する燃料量を大きく上回ることを回避することができる。したがって、蓄圧室内への燃料の加圧供給と蓄圧室からの燃料の流出とを平衡させて燃圧の変動を抑制することができ、ひいては、蓄圧室内の燃圧の制御性の低下を好適に抑制することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記燃料噴射装置は、前記燃料噴射と前記加圧供給とが1対1に対応する同期システムとして構成されてなり、前記変更手段は、前記作動不良異常があると判断される燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと隣接するタイミングにて行なわれる前記加圧供給の燃料量を強制的に減量することを特徴とする。
【0012】
上記構成では、燃料噴射装置が同期システムとして構成されているために、燃料噴射弁による各燃料噴射により蓄圧室内から流出する燃料量と、蓄圧室に加圧供給される各燃料量とが1対1に対応付けられ、これらの定常的な平衡状態の実現を容易としている。しかし、このシステムにおいて、特定の燃料噴射弁に作動不良異常が生じると、上記対応関係が崩れるために、定常状態の実現が困難となる。この点、上記構成では、作動不良異常があると判断される燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと隣接するタイミングにて行なわれる加圧供給の燃料量を減量することで、作動不良異常の生じた燃料噴射弁による燃料噴射のタイミング近傍における蓄圧室への過剰な加圧供給を回避することができ、ひいては、定常的な平衡状態の実現が可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記燃料噴射弁は、複数のグループにグループ分けされて且つグループ毎に給電経路を共有するものであり、前記燃料ポンプは、前記加圧供給する燃料量を調節する調量弁を前記各グループと対応させて各別に備えており、前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に減量することを特徴とする。
【0014】
上記構成では、グループ毎に給電経路が共有されるために、グループ内の燃料噴射弁の全てに作動不良異常が生じることがある。この点、上記構成では、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に減量することで、特定のグループの燃料噴射のタイミング近傍における加圧供給量が過剰となることを好適に抑制することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとすることを特徴とする。
【0016】
上記構成では、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとすることで、特定のグループの燃料噴射が行なわれなくなった場合であっても、燃料噴射と加圧供給とを1対1に対応させることができ、ひいては、蓄圧室内の燃圧の制御性の低下を好適に抑制することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に予め定められた量に減量することを特徴とする。
【0018】
特定のグループに作動不良異常が生じることでこのグループの燃料噴射が行なわれなくなったとしても、このグループの圧縮工程において蓄圧室から微量の燃料が流出する。この点、上記構成では、特定のグループの作動不良異常時において、このグループにおいて本来なら燃料噴射が行なわれるべき期間における微量なリーク燃料を、予め定められた量「>0」の燃料の加圧供給によって補償することができる。しかも、このように予め定められた量の燃料をフィードフォワード制御によって与えることで、フィードバック制御によって微量のリーク燃料を補償する場合と比較して、蓄圧室から流出する燃料量と蓄圧室に加圧供給される燃料量との定常的な平衡状態を早期に実現することができる。
【0019】
また、上記構成では、特定のグループ以外のグループの燃料噴射に対応した1回の吐出量が燃料ポンプによる最大吐出量に近似することで、特定のグループ以外のグループと対応する調量弁によっては上記微量な燃料量を補償することができない場合であっても、特定のグループと対応する調量弁により、これを補償することができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記燃料噴射装置は、前記燃料噴射と前記加圧供給とが1対1に対応する同期システムとして構成されてなり、前記燃料噴射弁は、複数のグループにグループ分けされて且つグループ毎に給電経路を共有するものであり、前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記検出される燃圧のサンプリング周期を強制的に変更することで前記フィードバック制御の態様の強制的な変更を行なうことを特徴とする。
【0021】
上記構成では、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、検出される燃圧のサンプリング周期を変更することで、サンプリングされる燃圧と目標燃圧とに基づくフィードバック制御によって、燃料噴射から次の燃料噴射までの期間における加圧供給量と1回の燃料噴射量とを対応付けることができる。このため、特定のグループ以外のグループの燃料噴射により蓄圧室から流出する燃料と蓄圧室に加圧供給される燃料との定常的な平衡状態を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる燃料噴射制御装置をコモンレール式のディーゼル機関の燃料噴射制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1に、本実施形態にかかるエンジンシステムの全体構成を示す。
【0024】
燃料タンク2内に貯蔵される燃料は、燃料ポンプ4によって汲み上げられる。燃料ポンプ4は、図示しない第1及び第2のプランジャと、これらと対応する第1の調量弁6及び第2の調量弁8とを備えている。これら第1の調量弁6及び第2の調量弁8は、燃料タンク2から汲み上げられた燃料のうち、吐出される燃料量を調節する吐出調量弁である。詳しくは、第1の調量弁6及び第2の調量弁8は、第1及び第2のプランジャが下死点から上死点へ向けて変位する期間において閉弁状態となることで、燃料ポンプ4から燃料を吐出させる。
【0025】
燃料ポンプ4から吐出される燃料は、コモンレール10に加圧供給(圧送)される。そして、コモンレール10は、各気筒(ここでは、6気筒を例示)の燃料噴射弁12に燃料を供給する。
【0026】
一方、電子制御装置(ECU20)は、第1の調量弁6や第2の調量弁8、燃料噴射弁12等のディーゼル機関のアクチュエータを操作することで、ディーゼル機関の出力制御を行なう。図2に、ECU20の構成を示す。
【0027】
図示されるように、ECU20は、マイクロコンピュータ(マイコン21)を主体として構成されている。ECU20は、第1の調量弁6及び第2の調量弁8のそれぞれを駆動する第1のドライバ22及び第2のドライバ23を備えている。そして、第1のドライバ22、第1の調量弁6及びリレー30により、第1の調量弁6の給電経路が構成される。一方、第2のドライバ23、第2の調量弁8及びリレー30により、第2の調量弁8の給電経路が構成される。
【0028】
更に、ECU20は、電源回路24と電源回路25とを備えている。ここで、電源回路24は、1番気筒から3番気筒までの燃料噴射弁12に給電を行なうための回路であり、昇圧回路や、定電流を流す定電流回路等を備えて構成されている。一方、電源回路25は、4番気筒から6番気筒までの燃料噴射弁12に給電を行なうための回路であり、昇圧回路や、定電流を流す定電流回路等を備えて構成されている。また、ECU20は、各燃料噴射弁12と接地との間を導通及び遮断するスイッチング素子SW1〜SW6を備えている。これにより、電源回路24、燃料噴射弁12及びスイッチング素子SW1〜SW3により、1番気筒から3番気筒の燃料噴射弁12の給電経路が構成されている。また、電源回路25、燃料噴射弁12及びスイッチング素子SW4〜SW6により、4番気筒から6番気筒の燃料噴射弁12の給電経路が構成されている。このように、本実施形態では、1番気筒から3番気筒までが第1のグループとなり、4番気筒から6番気筒までが第2のグループとなって、これら各グループ内で給電経路が共有されている。
【0029】
ECU20は、更に、上記コモンレール10内の燃圧を検出する燃圧センサ32やディーゼル機関のクランク軸の回転角度を検出するクランク角センサ34、コモンレール10内の燃料の温度を検出する燃温センサ36等、ディーゼル機関の運転状態を検出する各種センサの検出値を取り込む。また、ECU20は、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ38の検出値を取り込む。
【0030】
そして、ECU20は、上記各種センサの検出値に基づき、ディーゼル機関の出力を制御する。特にECU20は、ディーゼル機関の出力制御を良好に行なうべく、コモンレール10内の燃圧を目標値(目標燃圧)にフィードバック制御する。図3に、燃圧のフィードバック制御にかかる処理の手順を示す。この処理は、ECU20により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0031】
この一連の処理では、まずステップS10において、アクセルセンサ38によって検出されるアクセルペダルの操作量と、クランク角センサ34の出力に基づくクランク軸の回転速度とに基づき、燃料噴射弁12に対する噴射量の指令値(指令噴射量)を算出する。続いてステップS12においては、指令噴射量と回転速度とに基づき、目標燃圧を算出する。次に、ステップS14において、燃圧センサ32によって検出される燃圧と、目標燃圧との差圧に基づき、比例項、積分項及び微分項を算出する。すなわち、本実施形態では、フィードバック制御として、PID制御を行う。続くステップS16では、比例項、積分項及び微分項の和に基づき、燃料ポンプ4(調量弁6,8)に対する吐出量の指令値(指令吐出量)を算出する。そして、ステップS18では、指令吐出量の燃料を燃料ポンプ4によって吐出させるべく、指令吐出量に応じて調量弁6,8の通電タイミングを設定して調量弁6,8を操作する。
【0032】
図4に、上記フィードバック制御の態様を例示する。図4(a)は燃料噴射期間を示し、図4(b)はコモンレール10内の燃圧の挙動を示し、図4(c)は燃圧センサ32の出力のサンプリングタイミングのうち、フィードバック制御の演算に用いるサンプリングタイミングを示している。また、図4(d)は第1プランジャの変位態様を示し、図4(e)は第2プランジャの変位態様の推移を示し、図4(f)は第1の調量弁6の操作態様を示し、図4(g)は第2の調量弁8の操作態様の推移を示す。
【0033】
図示されるように、本実施形態では、燃料噴射と圧送とが1対1に対応する同期システムが採用されている。詳しくは、第1の調量弁6が、第1のグループの燃料噴射弁12による燃料噴射の直前の圧送を行い、第2の調量弁8が、第2のグループの燃料噴射弁12による燃料噴射の直前の圧送を行なう。そして、図中、破線にて示すように、燃圧の各サンプリング値は、略「220°CA」後に圧送上死点となるプランジャの圧送工程における吐出量を決定するために用いられる。
【0034】
図4では、燃料噴射から燃料噴射までの間の燃料の圧送量が1回の燃料噴射量と対応付けられ、燃料噴射等によりコモンレール10から流出する燃料と、コモンレール10に圧送される燃料とが定常的な平衡状態となっている。このため、燃料噴射に際しての燃圧を所望の燃圧とすることができる。なお、図示するような定常的な平衡状態が実現されているときには、サンプリングタイミングにおいて、検出される燃圧と目標燃圧とが一致し、先の図3に示した処理における指令吐出量は、積分項によって算出される。
【0035】
ところで、先の図2に示した燃料噴射弁12の給電経路に断線が生じる等、燃料噴射弁12の通電不良異常が生じることがある。この場合、燃料噴射と圧送とが1対1に対応しなくなるため、コモンレール10内の燃圧の定常的な平衡状態を実現することができず、コモンレール10内の燃圧の変動が増大するおそれがある。図5に、上記第1のグループに通電不良異常が生じた場合を例示する。この第1のグループの通電不良異常は、例えば第1のグループに共通の給電経路(燃料噴射弁12と電源回路24との間)の断線等によって生じ得る。ちなみに、図5(a)〜図5(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0036】
図示される例では、3番気筒において燃料噴射がなされなくなることで、3番気筒の燃料噴射タイミング近傍において燃料ポンプ4から圧送される燃料量が過剰となり、コモンレール10内の燃圧がオーバーシュートしている。この過大な燃圧は、先の図3に示したフィードバック制御によりやがては解消する。しかし、燃料噴射と圧送とが1対1に対応しないため、コモンレール10内の燃圧の定常的な平衡状態を実現することができず、コモンレール10内の燃圧の制御性が低下する。
【0037】
そこで本実施形態では、第1のグループと第2のグループとのいずれか一方に通電不良異常が生じるとき、そのグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとするフェールセーフ処理を行なう。図6に、このフェールセーフ処理の手順を示す。この処理は、ECU20により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0038】
この一連の処理では、まずステップS20において、通電不良異常の有無を診断する。ここでは、先の図2に示したスイッチング素子SW1〜SW6と接地との間を流れる電流をモニタし、燃料噴射弁12に対する通電操作がなされているにもかかわらず、電流を検出できないことに基づき通電不良異常と判断する。詳しくは、1番気筒から3番気筒までの全ての燃料噴射弁12に対する通電操作がなされたにもかかわらず、これらにおいて電流を検出できないときに第1のグループの通電不良異常と判断する。また、4番気筒から6番気筒までの全ての燃料噴射弁12に対する通電操作がなされたにもかかわらず、これらにおいて電流を検出できないときに第2のグループの通電不良異常と判断する。また、電源回路24、25の内部に備えられる昇圧回路や定電流回路についてもこれに流れる電流をモニタし、電流が検出できないときに異常と判断する。
【0039】
そして、第1のグループに通電不良異常が生じていると判断されると(ステップS22:YES)、第1の調量弁6の作動を停止させる(ステップS26)。一方、第2のグループに通電不良異常が生じていると判断されると(ステップS24:YES)、第2の調量弁8の作動を停止させる(ステップS28)。なお、上記ステップS24において否定判断されるときや、ステップS26、S28の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
【0040】
図7に、上記フェールセーフ処理による燃圧の制御態様を示す。なお、図7(a)〜図7(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0041】
図示されるように、第1の調量弁6が停止されることで、第1のプランジャの圧送量がゼロとなっている。そして、第2の調量弁8によって調節された燃料量の圧送の後、第2のグループの燃料噴射が行なわれる。このため、燃料噴射から燃料噴射までの間の燃料の圧送量と1回の燃料噴射量とを対応付けることができる。これにより、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とが定常的な平衡状態となり、コモンレール10内の燃圧の変動を抑制することができる。ちなみに、図7では、上記平衡状態の実現により、第2の調量弁8の操作に際して参照される燃圧のサンプリングタイミングで検出される燃圧と目標燃圧とが一致し、第2の調量弁8に対する指令吐出量は、先の図3に示した積分項によって算出されている。
【0042】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0043】
(1)特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常が生じるとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとした。これにより、通電不良異常の生じていないグループの燃料噴射と圧送とを1対1に対応付けることができ、ひいては、コモンレール10内の燃圧の変動を抑制することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0045】
本実施形態では、特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常が生じるとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に予め定められた量に減量する。
【0046】
図8に、本実施形態にかかるフェールセーフ処理時の燃圧の制御態様を示す。なお、図8(a)〜図8(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0047】
図示されるように、第1のグループに通電不良異常が生じているときには、第1の調量弁6については、先の図3に示したフィードバック制御の処理手順に従う代わりに、予め定められた量の燃料を吐出するように操作する。ここで、予め定められた量は、燃料噴射弁12からの燃料噴射以外にコモンレール10から流出する静的リーク量のうち、特に第1のグループが正常であるときに第1の調量弁6によって補償されていた静的リーク量相当とする。換言すれば、「(720÷6)°CA」当たりの静的リーク量相当とする。
【0048】
これにより、例えば電源回路24,25の昇圧回路等の異常のように、通電不良異常のあるグループの燃料噴射タイミングに先立ってその異常を判断することができるときには、第1のグループの通電不良異常が生じることで第1の調量弁6によって調節される燃料をゼロとする場合よりも、上述した定常的な平衡状態をより迅速に実現することができる。すなわち、第1の調量弁6によって調節される燃料量をゼロとすると、それまで第1の調量弁6によって調節されてきた静的リークを補償するための燃料量を第2の調量弁8によって調節させるために、この調節が完了するまでに時間がかかる。これに対し、それまで第1の調量弁6によって調節されてきた静的リークを補償するための燃料量をフィードフォワード制御によって与えることで、上記定常的な平衡状態をより迅速に実現することができる。
【0049】
更に、異常が生じる直前の燃料ポンプ4の吐出量がその最大値近傍である場合には、それまで第1の調量弁6によって調節されてきた静的リークを補償するための燃料量までをも第2の調量弁8にて調節することは困難である。このため、本実施形態のようにこの静的リークを補償するための燃料を第1の調量弁6によって調節することは有効である。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0051】
(2)特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常が生じたとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に予め定められた量に減量した。これにより、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料との定常的な平衡状態を早期に実現することや、特定のグループ以外のグループと対応する調量弁によっては上記微量な燃料量を補償することができない場合にこれを補償することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0053】
図9に、本実施形態にかかるフェールセーフ処理の手順を示す。この処理は、ECU20により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0054】
この一連の処理では、まずステップS30において、先の図6のステップS20と同様の処理を行なう。そして、第1のグループに通電不良異常がある場合(ステップS32:YES)や、第2のグループに通電不良異常がある場合(ステップS34:YES)には、まず、回転速度、燃圧、及び燃料の温度に基づき、異常があるグループの調量弁によって調節させる燃料ポンプ4の吐出量を算出する(ステップS36、S38)。この吐出量は、上記第2の実施形態と同様、異常が生じたグループと対応する調量弁によって調節されていた静的リークを補償するための燃料量である。この静的リーク量は、回転速度や燃圧、燃温によって変化するため、本実施形態では、これら3つのパラメータに基づき吐出量を可変設定する。
【0055】
こうして吐出量が算出されると、これに基づき異常があるグループと対応する調量弁を操作する(ステップS40、S42)。なお、ステップS34にて否定判断されるときや、ステップS40、S42の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
【0056】
以上詳述した本実施形態によれば、先の第2の実施形態の上記(2)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0057】
(3)特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常が生じるとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に減量するに際し、その減量される燃料量を、回転速度や燃圧、燃温に応じて可変設定した。これにより、異常が生じたグループと対応する調量弁によって調節されていた静的リークを、異常が生じたグループと対応する調量弁を用いてより適切に補償することができる。
【0058】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0059】
本実施形態では、グループの全ての燃料噴射弁12の通電不良異常の有無ではなく、特定の気筒の燃料噴射弁12の通電不良異常の有無を診断する。これは、燃料噴射弁12に対する通電操作がなされているにもかかわらず、この通電操作のために導通状態とされるスイッチング素子(SW1〜SW6のいずれか)と接地との間を電流が流れないときに異常ありと判断することで行なうことができる。そして、異常があると判断されるときには、図10に例示する態様にてこれに対処する。なお、図10(a)〜図10(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0060】
図10では、6番気筒と2番気筒とにおいて、燃料噴射弁12に通電不良異常が生じている例を示している。このため、これら6番気筒と2番気筒との燃料噴射タイミングのそれぞれの直前の燃料の圧送タイミングにおける圧送量を「0」とする。これにより、燃料噴射と圧送とを1対1に対応させることができ、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とを定常的な平衡状態とすることができる。ちなみに、図10では、定常的な平衡状態が実現しているときを示しているため、燃圧のサンプリング時において、実際の燃圧(実線)が目標燃圧(一点鎖線)と一致しており、指令吐出量は、先の図3に示した積分項によって算出されている。
【0061】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0062】
(4)通電不良異常の生じた燃料噴射弁12による燃料噴射の直前の圧送タイミングにおける圧送量を強制的にゼロとすることで、燃料噴射と圧送とを1対1に対応させることができ、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とを定常的な平衡状態とすることができる。
【0063】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0064】
本実施形態では、特定のグループの給電経路に異常があるとき、先の図3に示したフィードバック制御の演算に用いる燃圧のサンプリング周期を間引く。詳しくは、フィードバック制御の演算に用いる燃圧のサンプリング周期を、各圧縮上死点の周期とするものから通電不良異常の生じていない燃料噴射弁12の燃料噴射の周期とするものへと変更する。図11に、本実施形態にかかるフェールセーフ処理の態様を示す。なお、図11(a)〜図11(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0065】
図11では、第1のグループの給電経路に異常が生じたため、第2のグループの圧縮上死点近傍のタイミングのみをサンプリングタイミングとする間引きを行なった。これにより、2回の圧送と1回の燃料噴射とを対応付けることができ、燃料噴射間の圧送量と1回の燃料噴射量とを対応付けることができる。このため、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料との定常的な平衡状態を実現することができる。ちなみに、図11では、上記平衡状態の実現により、サンプリングタイミングにおいて、実際の燃圧(実線)が目標燃圧(一点鎖線)と一致し、指令吐出量が先の図3に示した積分項によって算出されている状態を示した。
【0066】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0067】
(5)特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常があるとき、検出される燃圧のサンプリング周期を強制的に変更した。これにより、特定のグループ以外のグループの燃料噴射によりコモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に加圧供給される燃料との定常的な平衡状態を実現することができる。
【0068】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0069】
・第5の実施形態において、サンプリングタイミングを間引く代わりに、先の図3にて算出される指令吐出量の「1/2」の量を算出し、これに基づき調量弁6,8を操作するようにしてもよい。
【0070】
・第4の実施形態では、特定の気筒の燃料噴射弁12に通電不良異常が生じたとき、異常のある燃料噴射弁12による噴射タイミングの直前の圧送タイミングでの圧送量をゼロとしたが、これに限らない。図12に、特定の気筒の燃料噴射弁12に通電不良異常が生じるとき、異常のある気筒の燃料噴射のタイミングの直後の圧送タイミングでの圧送量を強制的にゼロとする例を示す。この図12では、圧送から燃料噴射までの間にコモンレール10との間の燃料の流出入がない期間を有する設定とされており、その期間にサンプリングを行なう例を示している。ちなみに、図12(a)〜図12(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0071】
・燃料ポンプ4としては、プランジャの数と等しい数の調量弁を備えるものに限らない。例えば第1の実施形態において、プランジャを2つ備えて且つ調量弁をこれら2つのプランジャで共有するものである場合、特定のグループの燃料噴射弁12に通電不良異常が生じたなら、これと対応する圧送タイミングにおいて圧送量をゼロとすればよい。
【0072】
・調量弁としては、吐出調量弁に限らず、燃料ポンプに吸入する燃料量を調節することで燃料ポンプの吐出量を調節する吸入調量弁であってもよい。また、調量弁としては、開操作及び閉操作の2値的な動作によって燃料ポンプの吐出量を調整するものに限らず、開度を連続的に調節可能なものであってもよい。この場合であっても、例えば第1の実施形態のような手法を用いる場合には、対応する圧送タイミングにおいて圧送量がゼロとなるように調量弁を操作すればよい。
【0073】
・フィードバック制御の態様としては、先の図3に例示したものに限らない。例えば目標燃圧に基づくフィードフォワード項を備えて、目標燃圧の変化を補償する燃料量を算出し、これに基づき指令吐出量を算出してもよい。こうした場合であっても、指令噴射量に基づくフィードフォワード項を備えない構成であるなら、燃料噴射によるコモンレールからの燃料の流出を検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって補うこととなる。このため、特定の燃料噴射弁12に通電不良異常が生じることでコモンレール10内の燃圧の変動の規則性が崩れると、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料との定常的な平衡状態を実現することが困難となるため、本発明の適用が有効である。
【0074】
また、過去の燃圧の挙動に基づきコモンレール10からの燃料の流出量を見越して吐出量を算出するフィードバック制御を行う構成であるなら、燃料噴射弁12の通電不良異常時に燃圧を安定させることが特に困難となる。すなわち、上記各実施形態では、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とが定常的な平衡状態となるとき、積分項によって指令吐出量を算出した。この積分項によれば、指令噴射量のみならず、コモンレール10からリークする静的リーク量等を含めてコモンレール10からの総流出量を見越して指令吐出量を算出することができるため、コモンレール10内の燃圧の変動を抑制することができる。しかも、積分項による総流出量を見越した指令吐出量の算出は、フィードフォワード制御によるものよりも精度がよい。これは、上記静的リーク量がコモンレール10等の個体差に起因したばらつきを生じるからである。その反面、特定の燃料噴射弁12に通電不良が生じるときには、積分項を用いて総流出量の算出を適切に行なうことができず、結果としてコモンレール10内の燃圧の変動が大きくなるおそれがある。したがって、こうした状況にあっては、本発明の適用が特に有効となる。
【0075】
・上記各実施形態では、燃料噴射と圧送とが1対1に対応する同期システムに本発明を適用したが、これに限らない。図13に、非同期システムの例を示す。図13(a)〜図13(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。この例では、圧送と燃料噴射との比が「1:2」となっている。このため、2回の燃料噴射によってコモンレール10から流出した燃料量を、1回の圧送にて補う。図13に示す例では、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とが定常的な平衡状態となっている状態を示している。この状態では、燃圧のサンプリングタイミングにおいて、検出される燃圧と目標燃圧とが一致し、指令吐出量は先の図3に示した積分項によって算出されている。このシステムにおいても、図14に例示するように、特定の気筒の燃料噴射弁12に通電不良異常が生じることがある。ちなみに、図14(a)〜図14(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。そして、異常が生じるときには、特定の圧送タイミングにおける圧送量を強制的に減量することで、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とを定常的な平衡状態とすることができる。
【0076】
・燃料噴射弁12の通電不良異常としては、給電経路の断線に限らず、例えば導通不良等により燃料噴射弁12に対する通電量が燃料噴射弁12を開弁させることのできるレベルに達しない異常をも含む。更に通電不良異常に限らず、燃料噴射弁12の可動部に異物が混入することなどによる作動不良異常等、要は、燃料噴射弁12による燃料噴射を行なうことができなくなる作動不良異常時に本発明を適用することができる。
【0077】
・多気筒内燃機関としては、ディーゼル機関に限らず、例えば筒内噴射式ガソリン機関であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態にかかるエンジンシステムの全体構成を示す図。
【図2】同実施形態にかかるECUの構成を示す図。
【図3】正常時のコモンレール内の燃圧のフィードバック制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】上記フィードバック制御の態様を示すタイムチャート。
【図5】燃料噴射弁の通電不良異常時の燃圧のフィードバック制御の態様を示すタイムチャート。
【図6】上記実施形態におけるフェールセーフ処理の手順を示すフローチャート。
【図7】上記フェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図8】第2の実施形態におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図9】第3の実施形態におけるフェールセーフ処理の手順を示すフローチャート。
【図10】第4の実施形態におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図11】第5の実施形態におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図12】第4の実施形態の変形例におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図13】上記各実施形態の変形例におけるフィードバック制御の態様を示すタイムチャート。
【図14】上記変形例におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0079】
4…燃料ポンプ、6,8…調量弁、10…コモンレール、12…燃料噴射弁、20…ECU(燃料噴射制御装置の一実施形態)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧状態で燃料を蓄えるとともに該燃料を燃料噴射弁に供給する蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室内の燃圧を検出する検出手段とを備える多気筒内燃機関の燃料噴射装置に適用され、前記燃料噴射による前記蓄圧室からの燃料の流出を前記検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって補う燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料噴射装置としては、ディーゼル機関の各気筒の燃料噴射弁に高圧の燃料を供給する共通の蓄圧室(コモンレール)を備えるものが周知である(特許文献1)。このコモンレール式のディーゼル機関によれば、機関運転状態に応じてコモンレール内の燃圧の目標値(目標燃圧)を自由に設定することができ、ひいては燃料噴射弁に供給される燃圧を自由に制御することができる。
【0003】
一方、上記燃料噴射制御装置は、コモンレール内の燃圧を目標燃圧に追従させるべく、通常、燃圧センサによって検出されるコモンレール内の燃圧と目標燃圧との差に基づくフィードバック制御を行っている。例えば、検出される燃圧及び目標燃圧に基づく比例項や積分項等に基づき燃料ポンプに対する吐出量の指令値(指令吐出量)を算出した後、この指令吐出量を燃料ポンプの操作量としての駆動電流値に換算する。これにより、検出される燃圧を目標燃圧に追従させるために要求される燃料量が燃料ポンプから吐出されることとなる。
【0004】
上記フィードバック制御を燃料噴射と加圧供給とが一対一に対応する同期システムに適用する場合、各燃料噴射によってコモンレールから流出する燃料量が各加圧供給によって補償される。これにより、コモンレールから流出する燃料とコモンレールへ流入する燃料とが定常的な平衡状態となる。
【0005】
ただし、燃料噴射弁に通電を行なう配線の断線等により特定の燃料噴射弁に通電不良異常が生じたときには、この燃料噴射弁を介した燃料噴射が行なわれないために、燃料噴射と加圧供給との同期が崩れ、ひいてはコモンレールから流出する燃料とコモンレールへ流入する燃料との平衡状態が崩れる。これにより、コモンレール内の燃圧の変動が大きくなり、ひいては燃圧の制御性が低下するおそれがある。
【0006】
なお、上記のものに限らず、検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって燃料噴射による燃料の流出を補う燃料噴射制御装置にあっては、燃料噴射弁の作動不良異常により燃圧の制御性が低下するこうした実情も概ね共通したものとなっている。
【特許文献1】特開平62−258160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって燃料噴射による燃料の流出を補う燃料噴射制御装置において、燃料噴射弁の作動不良異常による燃圧の制御性の低下を好適に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、前記燃料噴射弁の作動不良異常の有無を診断する診断手段と、前記燃料噴射弁に作動不良異常があると判断されるとき、前記作動不良異常の生じた燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと近接するタイミングにて行なわれる前記加圧供給の燃料量を減量すべく、前記フィードバック制御の態様を強制的に変更する変更手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、作動不良異常があると判断されるとき、その燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと近接するタイミングにて行なわれる加圧供給の燃料量が減量される。これにより、作動不良異常の生じた燃料噴射弁による燃料噴射のタイミング近傍において蓄圧室内に過剰な燃料が加圧供給されることを抑制することができる。このため、各加圧供給の燃料量が、同加圧供給のタイミング近傍において蓄圧室から流出する燃料量を大きく上回ることを回避することができる。したがって、蓄圧室内への燃料の加圧供給と蓄圧室からの燃料の流出とを平衡させて燃圧の変動を抑制することができ、ひいては、蓄圧室内の燃圧の制御性の低下を好適に抑制することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記燃料噴射装置は、前記燃料噴射と前記加圧供給とが1対1に対応する同期システムとして構成されてなり、前記変更手段は、前記作動不良異常があると判断される燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと隣接するタイミングにて行なわれる前記加圧供給の燃料量を強制的に減量することを特徴とする。
【0012】
上記構成では、燃料噴射装置が同期システムとして構成されているために、燃料噴射弁による各燃料噴射により蓄圧室内から流出する燃料量と、蓄圧室に加圧供給される各燃料量とが1対1に対応付けられ、これらの定常的な平衡状態の実現を容易としている。しかし、このシステムにおいて、特定の燃料噴射弁に作動不良異常が生じると、上記対応関係が崩れるために、定常状態の実現が困難となる。この点、上記構成では、作動不良異常があると判断される燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと隣接するタイミングにて行なわれる加圧供給の燃料量を減量することで、作動不良異常の生じた燃料噴射弁による燃料噴射のタイミング近傍における蓄圧室への過剰な加圧供給を回避することができ、ひいては、定常的な平衡状態の実現が可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記燃料噴射弁は、複数のグループにグループ分けされて且つグループ毎に給電経路を共有するものであり、前記燃料ポンプは、前記加圧供給する燃料量を調節する調量弁を前記各グループと対応させて各別に備えており、前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に減量することを特徴とする。
【0014】
上記構成では、グループ毎に給電経路が共有されるために、グループ内の燃料噴射弁の全てに作動不良異常が生じることがある。この点、上記構成では、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に減量することで、特定のグループの燃料噴射のタイミング近傍における加圧供給量が過剰となることを好適に抑制することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとすることを特徴とする。
【0016】
上記構成では、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとすることで、特定のグループの燃料噴射が行なわれなくなった場合であっても、燃料噴射と加圧供給とを1対1に対応させることができ、ひいては、蓄圧室内の燃圧の制御性の低下を好適に抑制することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に予め定められた量に減量することを特徴とする。
【0018】
特定のグループに作動不良異常が生じることでこのグループの燃料噴射が行なわれなくなったとしても、このグループの圧縮工程において蓄圧室から微量の燃料が流出する。この点、上記構成では、特定のグループの作動不良異常時において、このグループにおいて本来なら燃料噴射が行なわれるべき期間における微量なリーク燃料を、予め定められた量「>0」の燃料の加圧供給によって補償することができる。しかも、このように予め定められた量の燃料をフィードフォワード制御によって与えることで、フィードバック制御によって微量のリーク燃料を補償する場合と比較して、蓄圧室から流出する燃料量と蓄圧室に加圧供給される燃料量との定常的な平衡状態を早期に実現することができる。
【0019】
また、上記構成では、特定のグループ以外のグループの燃料噴射に対応した1回の吐出量が燃料ポンプによる最大吐出量に近似することで、特定のグループ以外のグループと対応する調量弁によっては上記微量な燃料量を補償することができない場合であっても、特定のグループと対応する調量弁により、これを補償することができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記燃料噴射装置は、前記燃料噴射と前記加圧供給とが1対1に対応する同期システムとして構成されてなり、前記燃料噴射弁は、複数のグループにグループ分けされて且つグループ毎に給電経路を共有するものであり、前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記検出される燃圧のサンプリング周期を強制的に変更することで前記フィードバック制御の態様の強制的な変更を行なうことを特徴とする。
【0021】
上記構成では、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、検出される燃圧のサンプリング周期を変更することで、サンプリングされる燃圧と目標燃圧とに基づくフィードバック制御によって、燃料噴射から次の燃料噴射までの期間における加圧供給量と1回の燃料噴射量とを対応付けることができる。このため、特定のグループ以外のグループの燃料噴射により蓄圧室から流出する燃料と蓄圧室に加圧供給される燃料との定常的な平衡状態を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる燃料噴射制御装置をコモンレール式のディーゼル機関の燃料噴射制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1に、本実施形態にかかるエンジンシステムの全体構成を示す。
【0024】
燃料タンク2内に貯蔵される燃料は、燃料ポンプ4によって汲み上げられる。燃料ポンプ4は、図示しない第1及び第2のプランジャと、これらと対応する第1の調量弁6及び第2の調量弁8とを備えている。これら第1の調量弁6及び第2の調量弁8は、燃料タンク2から汲み上げられた燃料のうち、吐出される燃料量を調節する吐出調量弁である。詳しくは、第1の調量弁6及び第2の調量弁8は、第1及び第2のプランジャが下死点から上死点へ向けて変位する期間において閉弁状態となることで、燃料ポンプ4から燃料を吐出させる。
【0025】
燃料ポンプ4から吐出される燃料は、コモンレール10に加圧供給(圧送)される。そして、コモンレール10は、各気筒(ここでは、6気筒を例示)の燃料噴射弁12に燃料を供給する。
【0026】
一方、電子制御装置(ECU20)は、第1の調量弁6や第2の調量弁8、燃料噴射弁12等のディーゼル機関のアクチュエータを操作することで、ディーゼル機関の出力制御を行なう。図2に、ECU20の構成を示す。
【0027】
図示されるように、ECU20は、マイクロコンピュータ(マイコン21)を主体として構成されている。ECU20は、第1の調量弁6及び第2の調量弁8のそれぞれを駆動する第1のドライバ22及び第2のドライバ23を備えている。そして、第1のドライバ22、第1の調量弁6及びリレー30により、第1の調量弁6の給電経路が構成される。一方、第2のドライバ23、第2の調量弁8及びリレー30により、第2の調量弁8の給電経路が構成される。
【0028】
更に、ECU20は、電源回路24と電源回路25とを備えている。ここで、電源回路24は、1番気筒から3番気筒までの燃料噴射弁12に給電を行なうための回路であり、昇圧回路や、定電流を流す定電流回路等を備えて構成されている。一方、電源回路25は、4番気筒から6番気筒までの燃料噴射弁12に給電を行なうための回路であり、昇圧回路や、定電流を流す定電流回路等を備えて構成されている。また、ECU20は、各燃料噴射弁12と接地との間を導通及び遮断するスイッチング素子SW1〜SW6を備えている。これにより、電源回路24、燃料噴射弁12及びスイッチング素子SW1〜SW3により、1番気筒から3番気筒の燃料噴射弁12の給電経路が構成されている。また、電源回路25、燃料噴射弁12及びスイッチング素子SW4〜SW6により、4番気筒から6番気筒の燃料噴射弁12の給電経路が構成されている。このように、本実施形態では、1番気筒から3番気筒までが第1のグループとなり、4番気筒から6番気筒までが第2のグループとなって、これら各グループ内で給電経路が共有されている。
【0029】
ECU20は、更に、上記コモンレール10内の燃圧を検出する燃圧センサ32やディーゼル機関のクランク軸の回転角度を検出するクランク角センサ34、コモンレール10内の燃料の温度を検出する燃温センサ36等、ディーゼル機関の運転状態を検出する各種センサの検出値を取り込む。また、ECU20は、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ38の検出値を取り込む。
【0030】
そして、ECU20は、上記各種センサの検出値に基づき、ディーゼル機関の出力を制御する。特にECU20は、ディーゼル機関の出力制御を良好に行なうべく、コモンレール10内の燃圧を目標値(目標燃圧)にフィードバック制御する。図3に、燃圧のフィードバック制御にかかる処理の手順を示す。この処理は、ECU20により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0031】
この一連の処理では、まずステップS10において、アクセルセンサ38によって検出されるアクセルペダルの操作量と、クランク角センサ34の出力に基づくクランク軸の回転速度とに基づき、燃料噴射弁12に対する噴射量の指令値(指令噴射量)を算出する。続いてステップS12においては、指令噴射量と回転速度とに基づき、目標燃圧を算出する。次に、ステップS14において、燃圧センサ32によって検出される燃圧と、目標燃圧との差圧に基づき、比例項、積分項及び微分項を算出する。すなわち、本実施形態では、フィードバック制御として、PID制御を行う。続くステップS16では、比例項、積分項及び微分項の和に基づき、燃料ポンプ4(調量弁6,8)に対する吐出量の指令値(指令吐出量)を算出する。そして、ステップS18では、指令吐出量の燃料を燃料ポンプ4によって吐出させるべく、指令吐出量に応じて調量弁6,8の通電タイミングを設定して調量弁6,8を操作する。
【0032】
図4に、上記フィードバック制御の態様を例示する。図4(a)は燃料噴射期間を示し、図4(b)はコモンレール10内の燃圧の挙動を示し、図4(c)は燃圧センサ32の出力のサンプリングタイミングのうち、フィードバック制御の演算に用いるサンプリングタイミングを示している。また、図4(d)は第1プランジャの変位態様を示し、図4(e)は第2プランジャの変位態様の推移を示し、図4(f)は第1の調量弁6の操作態様を示し、図4(g)は第2の調量弁8の操作態様の推移を示す。
【0033】
図示されるように、本実施形態では、燃料噴射と圧送とが1対1に対応する同期システムが採用されている。詳しくは、第1の調量弁6が、第1のグループの燃料噴射弁12による燃料噴射の直前の圧送を行い、第2の調量弁8が、第2のグループの燃料噴射弁12による燃料噴射の直前の圧送を行なう。そして、図中、破線にて示すように、燃圧の各サンプリング値は、略「220°CA」後に圧送上死点となるプランジャの圧送工程における吐出量を決定するために用いられる。
【0034】
図4では、燃料噴射から燃料噴射までの間の燃料の圧送量が1回の燃料噴射量と対応付けられ、燃料噴射等によりコモンレール10から流出する燃料と、コモンレール10に圧送される燃料とが定常的な平衡状態となっている。このため、燃料噴射に際しての燃圧を所望の燃圧とすることができる。なお、図示するような定常的な平衡状態が実現されているときには、サンプリングタイミングにおいて、検出される燃圧と目標燃圧とが一致し、先の図3に示した処理における指令吐出量は、積分項によって算出される。
【0035】
ところで、先の図2に示した燃料噴射弁12の給電経路に断線が生じる等、燃料噴射弁12の通電不良異常が生じることがある。この場合、燃料噴射と圧送とが1対1に対応しなくなるため、コモンレール10内の燃圧の定常的な平衡状態を実現することができず、コモンレール10内の燃圧の変動が増大するおそれがある。図5に、上記第1のグループに通電不良異常が生じた場合を例示する。この第1のグループの通電不良異常は、例えば第1のグループに共通の給電経路(燃料噴射弁12と電源回路24との間)の断線等によって生じ得る。ちなみに、図5(a)〜図5(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0036】
図示される例では、3番気筒において燃料噴射がなされなくなることで、3番気筒の燃料噴射タイミング近傍において燃料ポンプ4から圧送される燃料量が過剰となり、コモンレール10内の燃圧がオーバーシュートしている。この過大な燃圧は、先の図3に示したフィードバック制御によりやがては解消する。しかし、燃料噴射と圧送とが1対1に対応しないため、コモンレール10内の燃圧の定常的な平衡状態を実現することができず、コモンレール10内の燃圧の制御性が低下する。
【0037】
そこで本実施形態では、第1のグループと第2のグループとのいずれか一方に通電不良異常が生じるとき、そのグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとするフェールセーフ処理を行なう。図6に、このフェールセーフ処理の手順を示す。この処理は、ECU20により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0038】
この一連の処理では、まずステップS20において、通電不良異常の有無を診断する。ここでは、先の図2に示したスイッチング素子SW1〜SW6と接地との間を流れる電流をモニタし、燃料噴射弁12に対する通電操作がなされているにもかかわらず、電流を検出できないことに基づき通電不良異常と判断する。詳しくは、1番気筒から3番気筒までの全ての燃料噴射弁12に対する通電操作がなされたにもかかわらず、これらにおいて電流を検出できないときに第1のグループの通電不良異常と判断する。また、4番気筒から6番気筒までの全ての燃料噴射弁12に対する通電操作がなされたにもかかわらず、これらにおいて電流を検出できないときに第2のグループの通電不良異常と判断する。また、電源回路24、25の内部に備えられる昇圧回路や定電流回路についてもこれに流れる電流をモニタし、電流が検出できないときに異常と判断する。
【0039】
そして、第1のグループに通電不良異常が生じていると判断されると(ステップS22:YES)、第1の調量弁6の作動を停止させる(ステップS26)。一方、第2のグループに通電不良異常が生じていると判断されると(ステップS24:YES)、第2の調量弁8の作動を停止させる(ステップS28)。なお、上記ステップS24において否定判断されるときや、ステップS26、S28の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
【0040】
図7に、上記フェールセーフ処理による燃圧の制御態様を示す。なお、図7(a)〜図7(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0041】
図示されるように、第1の調量弁6が停止されることで、第1のプランジャの圧送量がゼロとなっている。そして、第2の調量弁8によって調節された燃料量の圧送の後、第2のグループの燃料噴射が行なわれる。このため、燃料噴射から燃料噴射までの間の燃料の圧送量と1回の燃料噴射量とを対応付けることができる。これにより、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とが定常的な平衡状態となり、コモンレール10内の燃圧の変動を抑制することができる。ちなみに、図7では、上記平衡状態の実現により、第2の調量弁8の操作に際して参照される燃圧のサンプリングタイミングで検出される燃圧と目標燃圧とが一致し、第2の調量弁8に対する指令吐出量は、先の図3に示した積分項によって算出されている。
【0042】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0043】
(1)特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常が生じるとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとした。これにより、通電不良異常の生じていないグループの燃料噴射と圧送とを1対1に対応付けることができ、ひいては、コモンレール10内の燃圧の変動を抑制することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0045】
本実施形態では、特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常が生じるとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に予め定められた量に減量する。
【0046】
図8に、本実施形態にかかるフェールセーフ処理時の燃圧の制御態様を示す。なお、図8(a)〜図8(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0047】
図示されるように、第1のグループに通電不良異常が生じているときには、第1の調量弁6については、先の図3に示したフィードバック制御の処理手順に従う代わりに、予め定められた量の燃料を吐出するように操作する。ここで、予め定められた量は、燃料噴射弁12からの燃料噴射以外にコモンレール10から流出する静的リーク量のうち、特に第1のグループが正常であるときに第1の調量弁6によって補償されていた静的リーク量相当とする。換言すれば、「(720÷6)°CA」当たりの静的リーク量相当とする。
【0048】
これにより、例えば電源回路24,25の昇圧回路等の異常のように、通電不良異常のあるグループの燃料噴射タイミングに先立ってその異常を判断することができるときには、第1のグループの通電不良異常が生じることで第1の調量弁6によって調節される燃料をゼロとする場合よりも、上述した定常的な平衡状態をより迅速に実現することができる。すなわち、第1の調量弁6によって調節される燃料量をゼロとすると、それまで第1の調量弁6によって調節されてきた静的リークを補償するための燃料量を第2の調量弁8によって調節させるために、この調節が完了するまでに時間がかかる。これに対し、それまで第1の調量弁6によって調節されてきた静的リークを補償するための燃料量をフィードフォワード制御によって与えることで、上記定常的な平衡状態をより迅速に実現することができる。
【0049】
更に、異常が生じる直前の燃料ポンプ4の吐出量がその最大値近傍である場合には、それまで第1の調量弁6によって調節されてきた静的リークを補償するための燃料量までをも第2の調量弁8にて調節することは困難である。このため、本実施形態のようにこの静的リークを補償するための燃料を第1の調量弁6によって調節することは有効である。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0051】
(2)特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常が生じたとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に予め定められた量に減量した。これにより、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料との定常的な平衡状態を早期に実現することや、特定のグループ以外のグループと対応する調量弁によっては上記微量な燃料量を補償することができない場合にこれを補償することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0053】
図9に、本実施形態にかかるフェールセーフ処理の手順を示す。この処理は、ECU20により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0054】
この一連の処理では、まずステップS30において、先の図6のステップS20と同様の処理を行なう。そして、第1のグループに通電不良異常がある場合(ステップS32:YES)や、第2のグループに通電不良異常がある場合(ステップS34:YES)には、まず、回転速度、燃圧、及び燃料の温度に基づき、異常があるグループの調量弁によって調節させる燃料ポンプ4の吐出量を算出する(ステップS36、S38)。この吐出量は、上記第2の実施形態と同様、異常が生じたグループと対応する調量弁によって調節されていた静的リークを補償するための燃料量である。この静的リーク量は、回転速度や燃圧、燃温によって変化するため、本実施形態では、これら3つのパラメータに基づき吐出量を可変設定する。
【0055】
こうして吐出量が算出されると、これに基づき異常があるグループと対応する調量弁を操作する(ステップS40、S42)。なお、ステップS34にて否定判断されるときや、ステップS40、S42の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
【0056】
以上詳述した本実施形態によれば、先の第2の実施形態の上記(2)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0057】
(3)特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常が生じるとき、特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に減量するに際し、その減量される燃料量を、回転速度や燃圧、燃温に応じて可変設定した。これにより、異常が生じたグループと対応する調量弁によって調節されていた静的リークを、異常が生じたグループと対応する調量弁を用いてより適切に補償することができる。
【0058】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0059】
本実施形態では、グループの全ての燃料噴射弁12の通電不良異常の有無ではなく、特定の気筒の燃料噴射弁12の通電不良異常の有無を診断する。これは、燃料噴射弁12に対する通電操作がなされているにもかかわらず、この通電操作のために導通状態とされるスイッチング素子(SW1〜SW6のいずれか)と接地との間を電流が流れないときに異常ありと判断することで行なうことができる。そして、異常があると判断されるときには、図10に例示する態様にてこれに対処する。なお、図10(a)〜図10(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0060】
図10では、6番気筒と2番気筒とにおいて、燃料噴射弁12に通電不良異常が生じている例を示している。このため、これら6番気筒と2番気筒との燃料噴射タイミングのそれぞれの直前の燃料の圧送タイミングにおける圧送量を「0」とする。これにより、燃料噴射と圧送とを1対1に対応させることができ、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とを定常的な平衡状態とすることができる。ちなみに、図10では、定常的な平衡状態が実現しているときを示しているため、燃圧のサンプリング時において、実際の燃圧(実線)が目標燃圧(一点鎖線)と一致しており、指令吐出量は、先の図3に示した積分項によって算出されている。
【0061】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0062】
(4)通電不良異常の生じた燃料噴射弁12による燃料噴射の直前の圧送タイミングにおける圧送量を強制的にゼロとすることで、燃料噴射と圧送とを1対1に対応させることができ、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とを定常的な平衡状態とすることができる。
【0063】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0064】
本実施形態では、特定のグループの給電経路に異常があるとき、先の図3に示したフィードバック制御の演算に用いる燃圧のサンプリング周期を間引く。詳しくは、フィードバック制御の演算に用いる燃圧のサンプリング周期を、各圧縮上死点の周期とするものから通電不良異常の生じていない燃料噴射弁12の燃料噴射の周期とするものへと変更する。図11に、本実施形態にかかるフェールセーフ処理の態様を示す。なお、図11(a)〜図11(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0065】
図11では、第1のグループの給電経路に異常が生じたため、第2のグループの圧縮上死点近傍のタイミングのみをサンプリングタイミングとする間引きを行なった。これにより、2回の圧送と1回の燃料噴射とを対応付けることができ、燃料噴射間の圧送量と1回の燃料噴射量とを対応付けることができる。このため、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料との定常的な平衡状態を実現することができる。ちなみに、図11では、上記平衡状態の実現により、サンプリングタイミングにおいて、実際の燃圧(実線)が目標燃圧(一点鎖線)と一致し、指令吐出量が先の図3に示した積分項によって算出されている状態を示した。
【0066】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0067】
(5)特定のグループの給電経路に異常が生じる通電不良異常があるとき、検出される燃圧のサンプリング周期を強制的に変更した。これにより、特定のグループ以外のグループの燃料噴射によりコモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に加圧供給される燃料との定常的な平衡状態を実現することができる。
【0068】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0069】
・第5の実施形態において、サンプリングタイミングを間引く代わりに、先の図3にて算出される指令吐出量の「1/2」の量を算出し、これに基づき調量弁6,8を操作するようにしてもよい。
【0070】
・第4の実施形態では、特定の気筒の燃料噴射弁12に通電不良異常が生じたとき、異常のある燃料噴射弁12による噴射タイミングの直前の圧送タイミングでの圧送量をゼロとしたが、これに限らない。図12に、特定の気筒の燃料噴射弁12に通電不良異常が生じるとき、異常のある気筒の燃料噴射のタイミングの直後の圧送タイミングでの圧送量を強制的にゼロとする例を示す。この図12では、圧送から燃料噴射までの間にコモンレール10との間の燃料の流出入がない期間を有する設定とされており、その期間にサンプリングを行なう例を示している。ちなみに、図12(a)〜図12(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。
【0071】
・燃料ポンプ4としては、プランジャの数と等しい数の調量弁を備えるものに限らない。例えば第1の実施形態において、プランジャを2つ備えて且つ調量弁をこれら2つのプランジャで共有するものである場合、特定のグループの燃料噴射弁12に通電不良異常が生じたなら、これと対応する圧送タイミングにおいて圧送量をゼロとすればよい。
【0072】
・調量弁としては、吐出調量弁に限らず、燃料ポンプに吸入する燃料量を調節することで燃料ポンプの吐出量を調節する吸入調量弁であってもよい。また、調量弁としては、開操作及び閉操作の2値的な動作によって燃料ポンプの吐出量を調整するものに限らず、開度を連続的に調節可能なものであってもよい。この場合であっても、例えば第1の実施形態のような手法を用いる場合には、対応する圧送タイミングにおいて圧送量がゼロとなるように調量弁を操作すればよい。
【0073】
・フィードバック制御の態様としては、先の図3に例示したものに限らない。例えば目標燃圧に基づくフィードフォワード項を備えて、目標燃圧の変化を補償する燃料量を算出し、これに基づき指令吐出量を算出してもよい。こうした場合であっても、指令噴射量に基づくフィードフォワード項を備えない構成であるなら、燃料噴射によるコモンレールからの燃料の流出を検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって補うこととなる。このため、特定の燃料噴射弁12に通電不良異常が生じることでコモンレール10内の燃圧の変動の規則性が崩れると、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料との定常的な平衡状態を実現することが困難となるため、本発明の適用が有効である。
【0074】
また、過去の燃圧の挙動に基づきコモンレール10からの燃料の流出量を見越して吐出量を算出するフィードバック制御を行う構成であるなら、燃料噴射弁12の通電不良異常時に燃圧を安定させることが特に困難となる。すなわち、上記各実施形態では、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とが定常的な平衡状態となるとき、積分項によって指令吐出量を算出した。この積分項によれば、指令噴射量のみならず、コモンレール10からリークする静的リーク量等を含めてコモンレール10からの総流出量を見越して指令吐出量を算出することができるため、コモンレール10内の燃圧の変動を抑制することができる。しかも、積分項による総流出量を見越した指令吐出量の算出は、フィードフォワード制御によるものよりも精度がよい。これは、上記静的リーク量がコモンレール10等の個体差に起因したばらつきを生じるからである。その反面、特定の燃料噴射弁12に通電不良が生じるときには、積分項を用いて総流出量の算出を適切に行なうことができず、結果としてコモンレール10内の燃圧の変動が大きくなるおそれがある。したがって、こうした状況にあっては、本発明の適用が特に有効となる。
【0075】
・上記各実施形態では、燃料噴射と圧送とが1対1に対応する同期システムに本発明を適用したが、これに限らない。図13に、非同期システムの例を示す。図13(a)〜図13(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。この例では、圧送と燃料噴射との比が「1:2」となっている。このため、2回の燃料噴射によってコモンレール10から流出した燃料量を、1回の圧送にて補う。図13に示す例では、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とが定常的な平衡状態となっている状態を示している。この状態では、燃圧のサンプリングタイミングにおいて、検出される燃圧と目標燃圧とが一致し、指令吐出量は先の図3に示した積分項によって算出されている。このシステムにおいても、図14に例示するように、特定の気筒の燃料噴射弁12に通電不良異常が生じることがある。ちなみに、図14(a)〜図14(g)は、先の図4(a)〜図4(g)と同様である。そして、異常が生じるときには、特定の圧送タイミングにおける圧送量を強制的に減量することで、コモンレール10から流出する燃料とコモンレール10に圧送される燃料とを定常的な平衡状態とすることができる。
【0076】
・燃料噴射弁12の通電不良異常としては、給電経路の断線に限らず、例えば導通不良等により燃料噴射弁12に対する通電量が燃料噴射弁12を開弁させることのできるレベルに達しない異常をも含む。更に通電不良異常に限らず、燃料噴射弁12の可動部に異物が混入することなどによる作動不良異常等、要は、燃料噴射弁12による燃料噴射を行なうことができなくなる作動不良異常時に本発明を適用することができる。
【0077】
・多気筒内燃機関としては、ディーゼル機関に限らず、例えば筒内噴射式ガソリン機関であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態にかかるエンジンシステムの全体構成を示す図。
【図2】同実施形態にかかるECUの構成を示す図。
【図3】正常時のコモンレール内の燃圧のフィードバック制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】上記フィードバック制御の態様を示すタイムチャート。
【図5】燃料噴射弁の通電不良異常時の燃圧のフィードバック制御の態様を示すタイムチャート。
【図6】上記実施形態におけるフェールセーフ処理の手順を示すフローチャート。
【図7】上記フェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図8】第2の実施形態におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図9】第3の実施形態におけるフェールセーフ処理の手順を示すフローチャート。
【図10】第4の実施形態におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図11】第5の実施形態におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図12】第4の実施形態の変形例におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【図13】上記各実施形態の変形例におけるフィードバック制御の態様を示すタイムチャート。
【図14】上記変形例におけるフェールセーフ処理の態様を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0079】
4…燃料ポンプ、6,8…調量弁、10…コモンレール、12…燃料噴射弁、20…ECU(燃料噴射制御装置の一実施形態)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧状態で燃料を蓄えるとともに該燃料を燃料噴射弁に供給する蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室内の燃圧を検出する検出手段とを備える多気筒内燃機関の燃料噴射装置に適用され、前記燃料噴射による前記蓄圧室からの燃料の流出を前記検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって補う燃料噴射制御装置において、
前記燃料噴射弁の作動不良異常の有無を診断する診断手段と、
前記燃料噴射弁に作動不良異常があると判断されるとき、前記作動不良異常の生じた燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと近接するタイミングにて行なわれる前記加圧供給の燃料量を減量すべく、前記フィードバック制御の態様を強制的に変更する変更手段とを備えることを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記燃料噴射装置は、前記燃料噴射と前記加圧供給とが1対1に対応する同期システムとして構成されてなり、
前記変更手段は、前記作動不良異常があると判断される燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと隣接するタイミングにて行なわれる前記加圧供給の燃料量を強制的に減量することを特徴とする請求項1記載の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記燃料噴射弁は、複数のグループにグループ分けされて且つグループ毎に給電経路を共有するものであり、
前記燃料ポンプは、前記加圧供給する燃料量を調節する調量弁を前記各グループと対応させて各別に備えており、
前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に減量することを特徴とする請求項2記載の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとすることを特徴とする請求項3記載の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に予め定められた量に減量することを特徴とする請求項4記載の燃料噴射制御装置。
【請求項6】
前記燃料噴射装置は、前記燃料噴射と前記加圧供給とが1対1に対応する同期システムとして構成されてなり、
前記燃料噴射弁は、複数のグループにグループ分けされて且つグループ毎に給電経路を共有するものであり、
前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記検出される燃圧のサンプリング周期を強制的に変更することで前記フィードバック制御の態様の強制的な変更を行なうことを特徴とする請求項1記載の燃料噴射制御装置。
【請求項1】
高圧状態で燃料を蓄えるとともに該燃料を燃料噴射弁に供給する蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室内の燃圧を検出する検出手段とを備える多気筒内燃機関の燃料噴射装置に適用され、前記燃料噴射による前記蓄圧室からの燃料の流出を前記検出される燃圧の目標燃圧へのフィードバック制御によって補う燃料噴射制御装置において、
前記燃料噴射弁の作動不良異常の有無を診断する診断手段と、
前記燃料噴射弁に作動不良異常があると判断されるとき、前記作動不良異常の生じた燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと近接するタイミングにて行なわれる前記加圧供給の燃料量を減量すべく、前記フィードバック制御の態様を強制的に変更する変更手段とを備えることを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記燃料噴射装置は、前記燃料噴射と前記加圧供給とが1対1に対応する同期システムとして構成されてなり、
前記変更手段は、前記作動不良異常があると判断される燃料噴射弁の燃料噴射タイミングと隣接するタイミングにて行なわれる前記加圧供給の燃料量を強制的に減量することを特徴とする請求項1記載の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記燃料噴射弁は、複数のグループにグループ分けされて且つグループ毎に給電経路を共有するものであり、
前記燃料ポンプは、前記加圧供給する燃料量を調節する調量弁を前記各グループと対応させて各別に備えており、
前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に減量することを特徴とする請求項2記載の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的にゼロとすることを特徴とする請求項3記載の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記特定のグループと対応する調量弁によって調節される燃料量を強制的に予め定められた量に減量することを特徴とする請求項4記載の燃料噴射制御装置。
【請求項6】
前記燃料噴射装置は、前記燃料噴射と前記加圧供給とが1対1に対応する同期システムとして構成されてなり、
前記燃料噴射弁は、複数のグループにグループ分けされて且つグループ毎に給電経路を共有するものであり、
前記変更手段は、特定のグループに作動不良異常が生じるとき、前記検出される燃圧のサンプリング周期を強制的に変更することで前記フィードバック制御の態様の強制的な変更を行なうことを特徴とする請求項1記載の燃料噴射制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−154758(P2007−154758A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350708(P2005−350708)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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