説明

燃料遮断弁

【課題】エバポライン側から弁内部に液体燃料が流れ込んでくることを抑制し、キャニスタ側へ流れ込むのを阻止できる燃料遮断弁を提供する。
【解決手段】この燃料遮断弁10は、仕切壁23を介し下方空間R1と上方空間R2とに分けられたハウジング本体20と、第1開口24に接離するフロート弁40と、上方空間R2を封止する蓋体50と、上方空間R2に連通するエバポライン用接続管55と、同じく上方空間R2に連通するキャニスタ用接続管57とを備え、エバポライン用接続管55の連結部に形成された第2開口55aと、キャニスタ用接続管57の連結部に形成された第3開口57aとは、ハウジング本体20及び/又は蓋体50に形成された壁によって周囲を囲まれ、該壁を乗り越えた上方空間R2でのみ互いに連通するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられて、燃料タンク内の燃料蒸気をキャニスタに逃がすと共に、液体燃料がキャニスタへ流動するのを抑制する燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の燃料タンクには、燃料タンク内の燃料蒸気を、燃料タンクの外部に配置されたキャニスタに逃がすと共に、液体燃料が燃料タンクの外部へ排出されるのを防止する、燃料遮断弁が取付けられている。燃料遮断弁は、燃料の外部流出を防ぐだけでなく、給油時に給油量の上限値で給油を停止させるための満タン規制弁として利用される場合もある。
【0003】
この燃料遮断弁には、キャニスタに接続されて燃料タンクの外部に連通する接続管の他に、燃料タンクに配置される、圧力調整弁や、ロールオーバーバルブなどの他の弁どうしを連結するエバポラインを接続するための接続管が設けられることがある。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、燃料タンク内を外部に連通する為の連通路に接続された弁室を形成するケース本体と、上記弁室内に収納され、上記弁室に出入りする燃料タンク内の燃料で浮力を増減して上下方向へ移動することにより、上記連通路を開閉するフロート弁体と、上記ケース本体の側壁部の内周壁面との摺動抵抗を小さくするように、上記フロート弁体の側壁部の上下方向に沿って突設されたフィンと、上記ケース本体の側壁部上部に設けられ、燃料タンク内と弁室を通気する通気孔と、を備える燃料遮断弁が開示されている。
【0005】
また、ケース本体の上部には、ケース上部が溶着により取付けられている。このケース上部の外周には、キャニスタに連通する接続管が突設されていると共に、エバポラインに連通する接続管も突設され、両接続管はケース部内周にて連通するようになっている。
【0006】
更に、ケース本体上方には、中央に連通孔を有する上壁部が形成されており、この連通孔に燃料液面上昇に伴って浮動するフロート弁体が接触することにより、連通孔が閉塞されてキャニスタ側への液体燃料の漏出が阻止されるようになっている。また、上壁部の上面には、前記ケース上部の内周に対して所定隙間を設けた位置から、連通孔を囲むようにリブが突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−97599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料タンクに利用されている燃料遮断弁や、ロールオーバーバルブなどのようなフロート弁は、燃料の液面の上昇によってフロート弁体が連通孔を塞いで燃料が外部に漏れることを防止しているが、車両が大きく揺れたときなどに燃料が連通孔から漏れて、外部に連通する上部空間に漏れることがあった。
【0009】
このため、燃料遮断弁に、キャニスタに連通する接続管の他に、エバポラインに連通する接続管も連結されている場合、エバポライン側の接続管を通して、エバポラインに接続された別の弁から進入した燃料が、燃料遮断弁の上部空間に流入することがあった。
【0010】
上記特許文献1の燃料遮断弁では、上壁部の上面に、ケース上部の内周に対して所定隙間を設けた位置から、連通孔を囲むようにリブが突設されているので、同燃料遮断弁の連通孔から漏れた燃料は、上記リブ内に貯留されてキャニスタ側への進入を阻止できる。
【0011】
しかしながら、エバポラインを通して、他の弁から漏れた燃料が進入すると、リブの外周の空間を通ってキャニスタ側に直接流れ込んでしまうという問題があった。そして、キャニスタ側に液体の燃料が流れ込んでしまうと、キャニスタで処理することができず、燃料が外部に流出してしまう可能性があった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、エバポライン側の配管から弁内部に液体燃料が流れ込んできても、該液体燃料がキャニスタ側の配管へ流れ込んでしまうのを阻止できるようにした燃料遮断弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、仕切壁を介して下方空間と上方空間とに分けられ、該仕切り壁に第1開口が設けられたハウジング本体と、
前記下方空間に上下昇降可能に配置され、前記第1開口に接離するフロート弁と、
前記ハウジング本体の上部に被せられ、前記上方空間を封止する蓋体と、
前記ハウジング本体又は前記蓋体に連結され、前記上方空間に連通するエバポライン用接続管と、
前記ハウジング本体又は前記蓋体に連結され、前記上方空間に連通するキャニスタ用接続管とを備え、
前記エバポライン用接続管の連結部に形成された第2開口と、前記キャニスタ用接続管の連結部に形成された第3開口とは、前記ハウジング本体及び/又は前記蓋体に形成された壁によって周囲を囲まれ、該壁を乗り越えた上方空間でのみ互いに連通していることを特徴とする燃料タンク用フロート弁装置を提供する。
【0014】
本発明においては、前記ハウジング本体には、前記第1開口を囲むリブ又は壁が設けられており、該リブ又は壁で囲まれた空間がチャンバーをなしていることが好ましい。
【0015】
本発明においては、前記蓋体は、前記ハウジング本体の上部周壁を囲む周壁を有しており、この蓋体の周壁の異なる箇所に、前記エバポライン用接続管及び前記キャニスタ用接続管が連結され、前記ハウジング本体の上部周壁には、前記エバポライン用接続管が連結された第2開口と、前記キャニスタ用接続管が連結された第3開口とに位置する部分にそれぞれへこみ部が設けられており、このへこみ部によって、前記第2開口及び前記第3開口は、前記蓋体及び前記ハウジング本体の壁に囲まれて、該壁を乗り越えた上方空間でのみ互いに連通していることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、自動車の燃料がハウジング本体の下方空間内に流入し、その液面が所定高さ以上に上昇すると、フロート弁が上昇して仕切壁の第1開口を閉塞し、燃料が第1開口を通して上方空間に流入することを防止できる。したがって、例えば、自動車の燃料タンクのカットオフバルブや、満タン規制バルブなどに適用して、燃料がキャニスタ用接続管を通って燃料タンク外部への燃料の漏れを防止したり、或いは、給油時の満タン規制を行ったりすることができる。
【0017】
そして、エバポライン用接続管の第2開口及びキャニスタ用接続管の第3開口は、ハウジング本体及び/又は蓋体に形成された壁によって周囲を囲まれ、壁を乗り越えた上方空間でのみ互いに連通しているので、エバポライン用接続管の第2開口からハウジング本体内に流入した燃料蒸気は、前記上方空間を通って第3開口からキャニスタ用接続管へと流動してキャニスタへと流出し、その一方、他のバルブ等から漏れ出した液体燃料が、第2開口からハウジング本体内に流れ込もうとしても、前記壁で遮られて上方空間内に流入することが阻止される。
【0018】
このように、この燃料遮断弁においては、燃料蒸気をキャニスタ側へ確実に送ることができる一方、キャニスタでは処理できない液体燃料をキャニスタ側へ流れ込むことを阻止することができ、燃料タンク外へ燃料が漏れることを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による燃料遮断弁の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同燃料遮断面の一部を破断した拡大斜視図である。
【図3】同燃料遮断弁において、燃料液面が下方にあり、フロート弁が下降した状態を示す断面図である。
【図4】同燃料遮断弁において、燃料液面が上昇し、フロート弁が第1開口を閉塞した状態を示す断面図である。
【図5】本発明による燃料遮断弁の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図6】同燃料遮断弁の斜視図である。
【図7】同燃料遮断弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜4を参照して、本発明の燃料遮断弁の一実施形態について説明する。
【0021】
図1に示すように、この実施形態に係る燃料遮断弁10は、底蓋35を有するハウジング本体20と、このハウジング本体20内に収容されるフロート弁40と、前記ハウジング本体20の上部に組付けられる蓋体50と、該蓋体50に一体成形された、エバポライン用接続管55と、キャニスタ用接続管57とを主として有している。
【0022】
この実施形態における蓋体50は、ハウジング本体20の上部に被せられて、同ハウジング本体20の上方空間R2(図2参照)を封止するもので、ハウジング本体20の上部周壁27を囲む周壁51を有している。この周壁51は、その上方が天井壁51aで閉塞されていると共に、下方が開口した略円筒状をなしている。
【0023】
図2,3に示すように、前記周壁51の上部外周には、燃料タンクT(図3参照)に配置される図示しないロールオーバーバルブや圧力調整弁等に連結されて、燃料蒸気(気体燃料)や空気が流動する配管(エバポラインを構成する配管)に接続されるエバポライン用接続管55と、燃料タンク外部の図示しないキャニスタに連通する配管に接続されるキャニスタ用接続管57とが、それぞれ連結されている。この実施形態では、両接続管55,57は、蓋体50の周壁51に、ほぼ90度の間隔を設けて互いに直交して配置されている。各接続管55,57の蓋体50に対する連結部には、第2開口55a及び第3開口57aがそれぞれ形成されており、各開口55a,57aは、蓋体50内部及びハウジング本体20の上方空間R2に連通している。
【0024】
図3に示すように、周壁51の下方開口部の外周には、後述するハウジング本体20の接合フランジ25に接合される、環状の接合部59が突設されている。この接合部59の下方周縁には、接合フランジ25の環状凸部25aを受け入れる環状凹部59aが設けられている。
【0025】
更に、接合部59の外側には、樹脂製の燃料タンクTに溶着可能なポリエチレン等の合成樹脂からなり、蓋体50とは別体とされた環状のタンク取付部材60が、インサート成形により、蓋体50に一体に形成されている。このタンク取付部材60の外周縁部は、下方に向けて所定高さで突出し、燃料タンクTの開口部Taの表側周縁への溶着部をなしている(図3参照)。
【0026】
次に、図1〜3を参照してハウジング本体20について説明する。
【0027】
このハウジング本体20は、略円筒状の周壁21を有し、周壁21は、下方が開口すると共に、上端からやや下がった位置に仕切壁23が設けられている。そして、この仕切壁23を介して下方空間R1と上方空間R2とに区分けされた構造となっている。また、仕切壁23の中央には、円形状の第1開口24が貫通して設けられ、この第1開口24を通して、下方空間R1と上方空間R2とが連通されている。更に、第1開口24の下面周縁は、所定高さで円筒状に突設し、後述するフロート弁40の弁体43が接離する弁座24aをなしている。
【0028】
周壁21の高さ方向所定箇所からは、前記蓋体50の接合部59に接合する接合フランジ25が外径方向に向けて環状に突設されている。接合フランジ25の上部周縁からは、前記蓋体50の接合部59の環状凹部59aに挿入される環状凸部25aが突設されている。そして、この接合フランジ25よりも、周壁21の上方部分が上部周壁27をなし、同接合フランジ25よりも、周壁21の下方部分が下部周壁29をなしている。後者の下部周壁29の下方外周には、後述する底蓋35の係合孔36aに係合する係合突起29aが、周方向に沿って複数突設されている。
【0029】
また、上部周壁27は、仕切壁23の外周から上方に所定長さで突出し、この上部周壁27の突出部で囲まれた空間が、第1開口24から漏れた液体燃料を貯留するチャンバーをなしている。なお、この実施形態では、上部周壁27の突出部の内側がチャンバーをなしているが、第1開口24の周囲を囲む別の壁やリブを設けて、その内側をチャンバーとすることもできる。
【0030】
また、上部周壁27は、前記蓋体50の周壁51の内径にほぼ適合した外径で形成されており、ハウジング本体20に蓋体50を装着させたときに、周壁51内周に上部周壁27外周がほぼ密接するようになっている。また、上部周壁27の仕切壁23上に突出する高さは、ハウジング本体20に蓋体30を組付けたときに、蓋体30の天井壁51aよりも低くなるように設定されている(図3参照)。
【0031】
更に、上部周壁27には、前記エバポライン用接続管55の第2開口55aと、前記キャニスタ用接続管57の第3開口57aとに位置する部分に、それぞれへこみ部31,33が設けられている。
【0032】
図1に示すように、第2開口55aに対応する位置に形成されたへこみ部31は、上部周壁27の接線方向に交差して内径側に伸びる一対の側面31a,31aと、両側面31a,31aの内径側端部に連結された内面31bと、底面31cとからなり、上方及び側方が開口すると共に、上方から見たとき略コ字状に凹んだ形状をなしている。
【0033】
一方、第3開口57aに対応する位置に形成されたへこみ部33は、上部周壁27を直線状に横切る横断面33aと、底面33bとからなり、上方から見たとき略三日月状に凹んだ形状をなしている。
【0034】
なお、エバポライン用接続管55の第2開口55aは、キャニスタ用接続管57の第3開口57aに対して、高い位置に配置されている。ただし、上部周壁27の突出部によって形成される障壁の高さは同じとなっている。
【0035】
この実施形態におけるへこみ部31,33は、エバポライン用接続管55及びキャニスタ用接続管57に対応して、上部周壁27に対してほぼ90度の間隔を設けて互いに直交するように設けられているが、タンク内の配置によって上記角度は任意に設定できる。
【0036】
上記ハウジング本体20と蓋体50とは、次のようにして組付けることができる。まず、ハウジング本体20に形成されたへこみ部31,33を、蓋体50に連結されたエバポライン用接続管55及びキャニスタ用接続管57にそれぞれ整合させる。その位置でハウジング本体20の上部に蓋体50を被せていき、ハウジング本体20の上部周壁27を蓋体50の周壁51内に挿入する。それと共に、ハウジング本体20の接合フランジ25の環状凸部25aを、蓋体50の接合部59の環状凹部59aに嵌入し、超音波溶着や高周波溶着等の溶着手段で、接合部59及び接合フランジ25を溶着して互いに接合させることにより、ハウジング本体20の上部に蓋体50を、上方空間R2を封止するように組付けることができる。
【0037】
その結果、図2,3に示すように、蓋体50の周壁51内周に、ハウジング本体20の上部周壁27の外周がほぼ密接する。このとき、へこみ部31,33の側方開口部分には、蓋体50の周壁51及び該周壁51に形成された第2開口部55a又は第3開口部57aが位置し、両へこみ部31,33の上方開口部分は、それぞれ上方空間R2に開放された状態となる。
【0038】
そして、エバポライン用接続管55の第2開口55aは、その外周が蓋体50の周壁51に囲まれ、開口部前方がハウジング本体20のへこみ部31により囲まれる。同様に、キャニスタ用接続管57の第3開口57aは、その外周が蓋体50の周壁51に囲まれ、開口部前方がへこみ部33により囲まれる。すなわち、第2開口55a及び第3開口57aは、蓋体50の周壁51及び両へこみ部31,31に囲まれて、上部空間R2にのみ開放され、周壁51及びへこみ部31,33を乗り越えた上方空間R2を介して互いに連通するようになっている。
【0039】
上記構造のハウジング本体20の下方開口部に装着される底蓋35は、円板状をなす基体の外周に立設した複数の舌片36を有している。各舌片36には、前記ハウジング本体20の係合突起29aに係合する係合孔36aが形成されている。また、底蓋35の底面中央部には、連通孔37aを介してバネ受台37が設置され、その中央上面からフロート支持柱38が垂設されている。
【0040】
付勢バネ45により付勢されるフロート弁40は、大径部41a及びその上方に連設された小径部41bからなる基部41と、該基部41の小径部41bの上端面に装着された、ゴムや弾性エラストマー等の弾性シール部材からなる弁体43とから形成されている。また、前記基部41の大径部41aの外周には、複数枚のガイドフィン41cが、ハウジング本体20の下方空間R1の内周に適合する大きさで、外方に向けて延出されている。
【0041】
そして、フロート弁40の下方に形成された凹部41dに、付勢バネ45を挿入した状態で、フロート弁40をハウジング本体20の下方空間R1内に収容し、その後、ハウジング本体20の係合突起29aに、底蓋35の係合孔36aを整合させて、底蓋35をハウジング本体20の下方開口部に向けて押し込んで、係合孔36aに係合突起29aを係合させることにより、ハウジング本体20の下方に底蓋35を装着することができる。
【0042】
このとき、フロート弁40の下方中央にフロート支持柱38が挿入されると共に、フロート弁40と底蓋35との間に付勢バネ45が介装され、下方空間R1内にフロート弁40が上下昇降可能に収容される。このフロート弁40は、燃料に浸漬しない状態で、自重により付勢バネ45を圧縮して、底蓋35上に載置される。また、付勢バネ45は、車両の傾き等により燃料が上昇し、フロート弁40が燃料に浸漬されたとき、フロート弁40に生じる浮力と合わせて、フロート弁40に上向きの付勢力を与えるようになっている。
【0043】
次にこの燃料遮断弁10の作用効果を説明する。
【0044】
この燃料遮断弁10は、図3,4に示すように、燃料タンクTの開口部Taの表側周縁に、タンク取付部材60の下方突出部を溶着することにより、燃料タンクTに取付けられるようになっている。エバポライン用接続管55には、燃料タンクTの内外の図示しないバルブ等に連通する配管が接続され、キャニスタ用接続管57には、燃料タンクTの外部の図示しないキャニスタに連通する配管が接続される。また、この燃焼遮断弁10は、常時は、フロート弁40の自重により、付勢バネ45が圧縮され、フロート弁40の弁体43が、弁座24aから離れて、第1開口24が開いた状態となっている(図3参照)。そして、この燃料遮断弁10は、燃料満タン規制バルブやカットオフバルブとして用いることができるが、まず、燃料満タン規制バルブとして用いた例について説明する。
【0045】
すなわち、燃料タンクT内に燃料が給油されると、燃料の液面が徐々に上昇するため、燃料タンク内の空気及び燃料蒸気は、外部に流出させる必要がある。このとき、底蓋35の連通孔37a(図3参照)から、燃料タンク内の空気や燃料蒸気がハウジング本体20の下方空間R1内に流入し、第1開口24を通して上方空間R2に流れ、更に第3開口57aからキャニスタ用接続管57に流れ込み、同接続管57に接続された図示しない配管を介して、燃料タンクTの外部に配設されたキャニスタに送られる。
【0046】
したがって、給油される燃料の体積に応じた体積の空気や燃料蒸気が外部へ抜けることによって、給油が進行されることになる。そして、図4に示すように、燃料Fの液面が上限に近づくと、連通孔37aから下方空間R1内に侵入した燃料により、フロート弁40に浮力が付与され、付勢バネ45の付勢力と相まってフロート弁40が浮上する。
【0047】
そして、燃料Fの液面が上限に達すると、フロート弁40の弁体43が第1開口24の弁座24aに当接し、第1開口24を閉塞する。その結果、燃料タンク内の空気や燃料蒸気が外部に逃げることができなくなり、燃料タンクTの内圧が高まるため、公知の機構によって給油ガンによる給油が自動的に停止されるようになっている。このようにして、給油時における満タン規制を行うことができる。
【0048】
一方、カットオフバルブとして、この燃料遮断弁10を用いた場合は、次のように機能する。すなわち、車両が揺れず、燃料タンク内の燃料Fの液面が傾かない状態では、上述のように第1開口24が開いている(図3参照)。この状態で、車両が旋回したり大きく傾いたりして燃料の液面が上昇し、フロート弁40に燃料Fが所定高さ以上浸漬すると、フロート弁40が浮力及び付勢バネ45の付勢力により浮上し、第1開口24の弁座24aに当接して第1開口24が閉塞され(図4参照)、燃料Fが上方空間R2内に流入することが阻止され、燃料タンクTの外部への燃料漏れを防止することができる。
【0049】
そして、この燃料遮断弁10のエバポライン用接続管55には、燃料タンクTの内外の図示しないバルブ等に連通して、空気や燃料蒸気が流動する配管が接続されているため、図示しない他のバルブ等から漏れてしまった液体燃料が、第2開口55aを通って上方空間R2内に流れ込んでくることがある。
【0050】
これに関連して説明すると、この燃料遮断弁10においては、上述したように、エバポライン用接続管55の第2開口55a及びキャニスタ用接続管57の第3開口57aは、蓋体50の周壁51及びハウジング本体20に形成されたへこみ部31,31により囲まれて、へこみ部31,33の壁を乗り越えた上方空間R2でのみ互いに連通するようになっている。
【0051】
したがって、エバポライン用接続管55の第2開口55aから上方空間R2内に流入した空気や燃料蒸気は、図3の矢印で示すように、上方空間R2を通って第3開口57aからキャニスタ用接続管57へと流動してキャニスタへと流出するようになっている。
【0052】
これに対して、他のバルブ等より漏れ出して第2開口55aから流れ込んできた液体燃料は、第2開口55aを覆うへこみ部31の壁により遮られるので、第3開口57a側へ直接流れ込むことはなく、上部周壁27の突出部で囲まれた空間(チャンバー)に流れ込むことも抑制される。また、仮に、第2開口55aから流れ込んだ液体燃料が、へこみ部31の壁を越えて、上部周壁27の突出部で囲まれた空間(チャンバー)に流れ込んだとしても、該チャンバー内は、上部周壁27の突出部で囲まれているので、第3開口57aに流れ込むことはない。そして、該チャンバー内に流れ込んだ液体燃料は、第1開口24が開いたときに、燃料タンク内に戻すことができる。
【0053】
このように、この燃料遮断弁10においては、燃料蒸気をキャニスタ側へ確実に送ることができる一方、キャニスタでは処理できない液体燃料をキャニスタ側へ流れ込むことを阻止することができ、燃料タンクTの外部へ燃料が漏れることを効果的に防止することができる。
【0054】
ところで、この実施形態においては、第1開口24の周囲が、上部周壁27の突出部並びにへこみ部31,33の壁で囲まれて、その内側(上部空間Rの下方部分に相当)が、液体燃料を貯留するチャンバーをなしている。このチャンバーを設けたことにより、例えば、第2開口55aを囲むへこみ部3の壁を乗り越えて、液体燃料がチャンバー内に入り込んでしまっても、或いは、第1開口24から液体燃料がチャンバー内に入り込んでしまっても、これらの液体燃料をチャンバー内で一時的に貯留し、フロート弁40が下降して第1開口24が開いたときに、同第1開口24、下方空間R1、連通孔37aを通って、燃料タンクT内に戻すことができる。
【0055】
また、この実施形態においては、蓋体50は、ハウジング本体20の上部周壁27を囲む周壁51を有しており、この周壁51にエバポライン用接続管55及びキャニスタ用接続管57が連結され、各接続管55,57の開口55a,57aに対応して、ハウジング本体20に設けられたへこみ部31,33により、第2開口55a及び第3開口57aが、蓋体50及びハウジング本体20の壁に囲まれて、該壁を乗り越えた上方空間R2でのみ互いに連通するように構成されている。
【0056】
これによれば、蓋体50の異なる箇所に設けたエバポライン用接続管55及びキャニスタ用接続管57に対応して、ハウジング本体20の上部周壁27の異なる箇所に第2開口55a及び第3開口57aが設けられているので、これらの2つの開口55a,55bを隔てた位置に確実に設けることができる。
【0057】
また、蓋体50側にエバポライン用接続管55及びキャニスタ用接続管57を設けたことにより、ハウジング本体20と蓋体50との溶着による接合される部分(接合フランジ25及び接合部59)を、燃料遮断弁10の下方側に設定することがき、ハウジング本体20と蓋体50とを溶着するときに生じるバリ等が、ハウジング本体20や蓋体50内に入り込みにくくなる。
【0058】
更に、蓋体50側にエバポライン用接続管55及びキャニスタ用接続管57を設けたことにより、ハウジング本体20の形状に余裕を持たせることができる。例えば、チャンバーを形成する壁又はリブを高く突設したり、幅広に形成したりできるので、チャンバーの容積を増大することができる。
【0059】
図5〜7には、本発明の燃料遮断弁の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0060】
この実施形態における燃料遮断弁10aは、ハウジング本体20aと、その上部に被せられる蓋体50aとを有しており、これらが略角形状をなしている点で、概ね円形状をなした前記実施形態と異なっている。
【0061】
すなわち、ハウジング本体20aには、略長方形状の仕切壁23が形成されており、下方空間R1と上方空間R2とが画成されている。この仕切壁23の外周縁からは、四角枠状の第1リブ22(本発明のリブをなす)が、蓋体50aの天井壁51aよりも低い高さで立設されており、仕切壁23中央の第1開口24を囲むようになっている。
【0062】
また、ハウジング本体20aの周壁21の周方向所定箇所であって、長方形状の仕切壁23の長手方向一端側には、箱状の管接続部32が設けられており、この管接続部32にキャニスタ用接続管32aが連結されている。このキャニスタ用接続管32aの内部通路は、箱状の管接続部32内部を通って上方へと伸び、仕切壁23上面に第3開口32bとして開口している。第3開口32bの周縁には、枠状の第3リブ32c(本発明のリブをなす)が蓋体50aの天井壁51aよりも低い高さで突設されている。
【0063】
更に、ハウジング本体20aの周壁21の周方向の所定箇所であって、長方形状の仕切壁23の長手方向他端側には、エバポライン用接続管34が連結されている。このエバポライン用接続管34の内部通路は、仕切壁23上面に第2開口34aとして開口しており、その上部開口周縁には、枠状の第2リブ34b(本発明のリブをなす)が蓋体50aの天井壁51aよりも低い高さで突設されている。
【0064】
一方、蓋体50aは四角枠状をなしており、その下端周縁が前記ハウジング本体20aの第1リブ22の上端に溶着されて、ハウジング本体20に組付けられるようになっている。また、この燃料逆止弁10aは、ハウジング本体20aの第1リブ22の外周から突設した板状の取付フランジ22a,22aを介して、燃料タンクT内に取付けられるようになっている。
【0065】
この実施形態では、第1開口24が四角枠状の第1リブ22で囲まれると共に、第2開口34a及び第3開口32bも、上方に突設する第2リブ34b及び第3リブ32cでそれぞれ囲まれた構造をなしている。
【0066】
このため、エバポライン用接続管34を通して、第2開口34aから流入した空気や燃料蒸気は、上方空間R2を通って第3開口32bからキャニスタ用接続管32aへと流動してキャニスタへと流出することができる。
【0067】
これに対して、エバポライン用接続管34に他のバルブ等から漏れ出した液体燃料が流れ込んでしまった場合には、第2開口34aを囲む第2リブ34bにより、上方空間R2に流れ込むことが抑制される。また、エバポライン用接続管34に流れ込んだ液体燃料が、仮に第2リブ34bを越えてその内側に流れ込んだとしても、第3開口32bの周囲には、第3リブ32cが配置されているので、第3開口32bに流れ込むことが防止される。
【符号の説明】
【0068】
10,10a 燃料遮断弁
20,20a ハウジング本体
21 周壁
23 仕切壁
24 第1開口
27 上部周壁
29 下部周壁
30 蓋体
31 へこみ部
33 へこみ部
40 フロート弁
50,50a 蓋体
51 周壁
55 エバポライン用接続管
55a、34a 第2開口
57 キャニスタ用接続管
57a、32b 第3開口
R1 下方空間
R2 上方空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切壁を介して下方空間と上方空間とに分けられ、該仕切り壁に第1開口が設けられたハウジング本体と、
前記下方空間に昇降可能に配置され、前記第1開口に接離するフロート弁と、
前記ハウジング本体の上部に被せられ、前記上方空間を封止する蓋体と、
前記ハウジング本体又は前記蓋体に連結され、前記上方空間に連通するエバポライン用接続管と、
前記ハウジング本体又は前記蓋体に連結され、前記上方空間に連通するキャニスタ用接続管とを備え、
前記エバポライン用接続管の連結部に形成された第2開口と、前記キャニスタ用接続管の連結部に形成された第3開口とは、前記ハウジング本体及び/又は前記蓋体に形成された壁によって周囲を囲まれ、該壁を乗り越えた上方空間でのみ互いに連通していることを特徴とする燃料タンク用フロート弁装置。
【請求項2】
前記ハウジング本体には、前記第1開口を囲むリブ又は壁が設けられており、該リブ又は壁で囲まれた空間がチャンバーをなしている請求項1記載の燃料遮断弁。
【請求項3】
前記蓋体は、前記ハウジング本体の上部周壁を囲む周壁を有しており、この蓋体の周壁の異なる箇所に、前記エバポライン用接続管及び前記キャニスタ用接続管が連結され、前記ハウジング本体の上部周壁には、前記エバポライン用接続管が連結された第2開口と、前記キャニスタ用接続管が連結された第3開口とに位置する部分にそれぞれへこみ部が設けられており、このへこみ部によって、前記第2開口及び前記第3開口は、前記蓋体及び前記ハウジング本体の壁に囲まれて、該壁を乗り越えた上方空間でのみ互いに連通している請求項1又は2記載の燃料遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−927(P2011−927A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144142(P2009−144142)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】