説明

燃料電池搭載車両

【課題】燃料電池搭載車両において、車両の床下に配置される燃料電池の下側に設けられるアンダーカバーを備える構成において、降雪時の走行時等にアンダーカバーの上側に雪が溜まった場合でも、燃料電池の暖気時間が長くなることを防止し、燃料電池の運転温度が過度に低下するのを防止することである。
【解決手段】燃料電池搭載車両は、車両の床下に配置される燃料電池スタック12の下側に設けられるアンダーカバー20と、燃料電池スタック12を冷却するための伝熱媒体である、冷却水を循環して流す冷媒経路24とを備える。冷媒経路24は、アンダーカバー20に接触するように設けられる配管であって、冷媒経路24を循環する冷却水が流れることを可能とするアンダーカバー温調用配管44を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の床下に配置される燃料電池の下側に設けられるアンダーカバーを備える燃料電池搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環境に与える影響が少ないことから、車両に燃料電池を搭載した燃料電池搭載車両が考えられ、一部で実用化されている。燃料電池は、例えば燃料電池スタックのアノード側に水素ガス等の燃料ガスを供給し、カソード側に酸素を含む酸化ガス、例えば空気を供給し、電解質膜を通しての反応によって必要な電力を取り出す。
【0003】
また、従来から、燃料電池搭載車両において、車両の床下、すなわちフロアパネルの下側に燃料電池スタックを配置し、燃料電池スタックの下側にアンダーカバーを設けることが考えられている。アンダーカバーを設けることにより、燃料電池スタックに路面側から石等の異物が直接衝突することを防止できる可能性がある。また、従来から、アンダーカバーを樹脂製とすることが考えられている。
【0004】
また、特許文献1には、システムサブフレームに締結され、車体メンバーを介して車両下方から車両へ固定された燃料電池システムが記載されている。システムサブフレームの下部には、アンダーカバーが取り付けられて、アンダーカバーの上側に燃料電池システムが配置されている。
【0005】
また、特許文献2には、燃料電池スタックの発熱によって加熱された冷却液の熱を利用して車室内を暖房する熱交換部を備える燃料電池車用床暖房装置において、燃料電池スタックは、車室内の床面より下方に配置されるとともに、熱交換部は床面を形成する床部に配置されて、車室内の空気と熱交換を行う燃料電池車用床暖房装置が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−55405号公報
【特許文献2】特開2005−280639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から考えられている、車両の床下に燃料電池スタックを配置し、燃料電池スタックの下側にアンダーカバーを設ける燃料電池搭載車両の場合、降雪時の走行時等に雪が車両の前方等からアンダーカバーの上側に載って、アンダーカバーの上側に雪が溜まる可能性がある。このようにアンダーカバー上側に雪が溜まると、雪の近くに位置する燃料電池スタックが冷却され、燃料電池搭載車両の停止後、再始動させようとした場合でも、燃料電池スタックの暖機運転時に燃料電池スタックの温度上昇に時間がかかってしまう。また、アンダーカバー上側に雪が溜まると、保温運転時に燃料電池スタックの温度を維持使用としても、運転温度が所望の温度よりも低下する可能性がある。
【0008】
これに対して、特許文献1には、単にアンダーカバーの上側に燃料電池スタックを配置した構造が記載されているだけで、降雪時の走行時等にアンダーカバー上側に雪が溜まった場合でも、燃料電池の暖気時間が長くなることや、燃料電池の運転温度が過度に低下するのを防止することは考慮されていない。
【0009】
また、特許文献2に記載された燃料電池車用床暖房装置を搭載した燃料電池車の場合には、伝熱媒体経路を循環する伝熱媒体が流れるアンダーカバー温調用配管を、燃料電池の下側に設けたアンダーカバーに接触するように設けることは開示されていない。特許文献2に記載された床暖房装置が備える配熱パイプは、車両の車室内に設けられた床部で、断熱材の上面に配置している。また、車両の下側にアンダーカバーを設けた場合に、アンダーカバーの上側に雪が溜まった場合でも、燃料電池の暖気時間が長くなることや、燃料電池の運転温度が過度に低下するのを防止することは考慮されていない。
【0010】
本発明の目的は、燃料電池搭載車両において、車両の床下に配置される燃料電池の下側に設けられるアンダーカバーを備える構成において、降雪時の走行時等にアンダーカバーの上側に雪が溜まった場合でも、燃料電池の暖気時間が長くなることを防止し、燃料電池の運転温度が過度に低下するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る燃料電池搭載車両は、車両の床下に配置される燃料電池の下側に設けられるアンダーカバーと、燃料電池を冷却するための伝熱媒体が循環して流れる伝熱媒体経路と、を備え、伝熱媒体経路は、アンダーカバーに接触するように設けられる配管であって、伝熱媒体経路を循環する伝熱媒体が流れることを可能とするアンダーカバー温調用配管を有することを特徴とする燃料電池搭載車両である。好ましくは、アンダーカバー温調用配管は、アンダーカバーに直接接触するように設ける。
【0012】
また、本発明に係る燃料電池搭載車両において、好ましくは、アンダーカバーは、樹脂よりも熱伝導率の高い材料により造っている。
【0013】
また、本発明に係る燃料電池搭載車両において、好ましくは、アンダーカバーは、金属製である。
【0014】
また、本発明に係る燃料電池搭載車両において、好ましくは、伝熱媒体経路は、燃料電池と熱交換器との間で伝熱媒体を循環させる本経路と、本経路に設けられた伝熱媒体ポンプと、本経路から分岐される分岐経路と、を備え、アンダーカバー温調用配管は、分岐経路の少なくとも一部により構成する。
【0015】
また、本発明に係る燃料電池搭載車両において、好ましくは、分岐経路は、分岐経路内の伝熱媒体の流れを遮断または接続する開閉弁を備え、さらに、開閉弁の開閉を制御する開閉弁制御手段を備える。
【0016】
また、本発明に係る燃料電池搭載車両において、好ましくは、分岐経路を構成する配管と、本経路を構成する配管とを、着脱可能に接続している。
【0017】
また、本発明に係る燃料電池搭載車両において、好ましくは、車両にアンダーカバーを固定した状態で、分岐経路を構成する配管と、本経路を構成する配管とを分離可能としている。
【0018】
また、本発明に係る燃料電池搭載車両において、好ましくは、燃料電池の運転を制御する制御部を含む燃料電池制御装置と、DC/DCコンバータとを備え、アンダーカバー温調用配管を流れる伝熱媒体は、燃料電池だけでなく燃料電池制御装置とDC/DCコンバータとの少なくとも一方を冷却する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る燃料電池搭載車両によれば、燃料電池の運転時の発熱により、燃料電池と熱交換する伝熱媒体が温度上昇する。そして、伝熱媒体がアンダーカバー温調用配管を流れることにより、アンダーカバー温調用配管に接触するアンダーカバーが温度上昇する。このため、降雪時の走行時等にアンダーカバーの上側に雪が載って、溜まった場合でも、この雪を早期に溶かすことができる。したがって、燃料電池を暖気運転したり、保温運転する場合に、アンダーカバー上の雪により燃料電池の温度上昇が過度に妨げられたり、燃料電池が過度に温度低下するのを防止できる。この結果、アンダーカバーの上側に雪が溜まった場合でも、燃料電池の暖気時間が長くなることを防止するとともに、燃料電池の運転温度が過度に低下するのを防止することができる。
【0020】
また、アンダーカバーは、樹脂よりも熱伝導率の高い材料により造っている構成によれば、アンダーカバーの上側に雪が溜まった場合でも、アンダーカバー温調用配管内を流れる伝熱媒体により、より早期に雪を溶かすことができる。
【0021】
また、伝熱媒体経路は、燃料電池と熱交換器との間で伝熱媒体を循環させる本経路と、本経路に設けられた伝熱媒体ポンプと、本経路から分岐される分岐経路と、を備え、アンダーカバー温調用配管は、分岐経路の少なくとも一部により構成する構成において、分岐経路は、分岐経路内の伝熱媒体の流れを遮断または接続する開閉弁を備え、さらに、開閉弁の開閉を制御する開閉弁制御手段を備える構成によれば、アンダーカバーの温度を検出する温度検出手段を備え、温度検出手段の検出信号が表すアンダーカバーの温度が予め設定した所定温度以下の場合に、開閉弁を開弁することにより、アンダーカバー温調用配管に無駄に伝熱媒体が流れるのを抑制できる。
【0022】
また、分岐経路を構成する配管と、本経路を構成する配管とを、着脱可能に接続している構成において、車両にアンダーカバーを固定した状態で、分岐経路を構成する配管と、本経路を構成する配管とを分離可能としている構成によれば、車両からアンダーカバーを取り外す作業の前に、本経路を構成する配管に対し、分岐経路を構成する配管を取り外すことができ、その後の車両からアンダーカバーを取り外す作業を容易に行える。
【0023】
また、燃料電池の運転を制御する制御部を含む燃料電池制御装置と、DC/DCコンバータとを備え、アンダーカバー温調用配管を流れる伝熱媒体は、燃料電池だけでなく燃料電池制御装置とDC/DCコンバータとの少なくとも一方を冷却する構成によれば、アンダーカバー温調用配管を流れる伝熱媒体が、燃料電池と、燃料電池制御装置及びDC/DCコンバータの少なくとも一方とを通過することにより、アンダーカバーがより温度上昇しやすくなり、アンダーカバーの上側に雪が溜まった場合でも、この雪をより有効に溶かすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図4は、本発明に係る第1の実施の形態を示している。図1は、本実施の形態の燃料電池搭載車両の略図である。図2は、本実施の形態の燃料電池搭載車両が搭載するアンダーカバー上の燃料電池スタックと、冷却用の配管の一部とを示す平面図である。図3は、図2を下方から上方に見た図である。図4は、本実施の形態の燃料電池搭載車両が備える燃料電池冷却システムの構成図である。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態の燃料電池搭載車両10は、燃料電池である燃料電池スタック12を電源として、走行用モータ14を駆動し、走行用モータ14を駆動源として燃料電池搭載車両10を走行可能としている。走行用モータ14は、燃料電池搭載車両10の前部に配置し、走行用モータ14の動力を、図示しない動力伝達装置を介して車輪である前輪16に伝達可能としている。なお、走行用モータ14を、燃料電池搭載車両10の後部、または前部及び後部に配置し、走行用モータ14により、後輪17、または前輪16及び後輪17を駆動することもできる。
【0026】
燃料電池スタック12は、車体を構成するフロアパネル18の前後方向中間部の下側、すなわち、車両の床下に配置した状態で、車両に搭載している。燃料電池スタック12は、例えば、複数の燃料電池セルを積層するとともに、燃料電池スタック12の積層方向両端部に、集電板と、エンドプレートとを設けている。そして、複数の燃料電池セルと集電板とをタイロッド、ナット等で締め付けている。なお、集電板とエンドプレートとの間に絶縁板を設けることもできる。
【0027】
各燃料電池セルの詳細図は省略するが、例えば、電解質膜をアノード側電極とカソード側電極とにより狭持して成る膜−アセンブリと、その両側のセパレータとを備えたものとする。また、アノード側電極には燃料ガスであり、水素含有ガスである水素ガスを供給可能とし、カソード側電極には酸化ガスである空気を供給可能としている。そして、アノードで触媒反応により発生した水素イオンを、電解質膜を介してカソードまで移動させ、カソードで酸素と電気化学反応を起こさせることにより水を生成する。また、アノードからカソードへ外部回路を通じて電子を移動させることにより起電力を発生する。すなわち、燃料電池スタック12は、酸化ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電し、必要な電力を取り出す。
【0028】
また、フロアパネル18の下側にアンダーカバー20を、車体に支持した状態で設けている。アンダーカバー20は、路面側から石等の異物が跳ね上げられ、燃料電池スタック12に衝突するのを防止する機能を有する。アンダーカバー20は、車体に対し、図示しないボルト等の締結部材により結合固定している。
【0029】
図2、図3に示すように、アンダーカバー20は、アルミニウム等の金属等の、樹脂よりも熱伝導率の高い材料により、平板状に造っている。なお、アンダーカバー20は、アルミニウム以外に、例えば、鉄、ステンレス合金等の別の金属により造ることもできる。また、アンダーカバー20の形状は、平板状に限定するものではなく、凹凸や段部を有する形状に形成する等、種々の形状とすることができる。
【0030】
また、アンダーカバー20の上側の前後方向後端部(図3、図4の右端部)に、燃料電池スタック12の下部を接触させて配置している。すなわち、燃料電池スタック12の下側にアンダーカバー20を固定して設けている。なお、本明細書全体において、前後方向は、燃料電池搭載車両10の前後方向を言う。
【0031】
燃料電池スタック12には、冷却用の配管を接続している。すなわち、図4に示すように、燃料電池スタック12を含んで構成する燃料電池冷却システム22は、燃料電池スタック12を冷却するための伝熱媒体であり、冷媒である冷却水を、循環して流す伝熱媒体経路である、冷媒経路24と、冷媒経路24に設けられ、冷却水を冷却する熱交換器である、ラジエータ26とを備える。また、冷媒経路24は、燃料電池スタック12から送り出された冷却水を、ラジエータ26に通過させるため、燃料電池スタック12とラジエータ26との間で冷却水を循環させる本経路28と、本経路28から分岐する分岐経路30とを備える。分岐経路30は、ラジエータ26から本経路28に送り出された冷却水を、燃料電池スタック12を介さずにラジエータ26に還流させるバイパス経路としての機能を有する。すなわち、分岐経路30は、冷却水の流れに関して、燃料電池スタック12と並列に、本経路に接続している。冷却水は、例えば、エチレングリコール系の不凍液である、LLCの着色しないものである。
【0032】
また、本経路28に、冷媒経路24に冷却水を循環させるために設けられた冷却水ポンプ32と、分岐経路30に設けられた開閉弁34とを備える。開閉弁34は、電磁弁であり、分岐経路30内の冷却水の流れを遮断または接続する。開閉弁34の開閉状態は、燃料電池搭載車両10に搭載された制御部(ECU)36により制御される。制御部36は、CPU、メモリ等を有するマイクロコンピュータであり、燃料電池スタック12の運転を制御する。例えば、制御部36は、図示しない起動スイッチから出力される運転開始信号または運転停止信号等に対応して、燃料電池スタック12に供給する酸化ガス及び燃料ガスの供給量を制御する。また、制御部36は、開閉弁制御手段38を有し、開閉弁34と接続して、開閉弁制御手段38が出力する制御信号を、開閉弁34に出力し、開閉弁制御手段38は、開閉弁34の開閉状態を制御する。
【0033】
図2、図3は、上記の図4に示す本経路28を構成する冷媒供給用配管40及び冷媒排出用配管42と、アンダーカバー温調用配管44とを示している。アンダーカバー温調用配管44は、上記の図4に示す分岐経路30の少なくとも一部、例えば全部により構成している。図2、図3に戻り、冷媒供給用配管40及び冷媒排出用配管42は、燃料電池スタック12に接続し、冷媒供給用配管40を通じて燃料電池スタック12に送られた冷却水が、燃料電池スタック12の内部に設けた図示しない内部冷媒経路を流れた後、冷媒排出用配管42を通じて燃料電池スタック12からラジエータ26(図4)に向け送り出されるようにしている。アンダーカバー20上で、冷媒供給用配管40及び冷媒排出用配管42は、燃料電池搭載車両10の幅方向(図2の上下方向、図3の表裏方向)に関して同位置に位置し、冷媒排出用配管42の下側に冷媒供給用配管40が上下方向の空間を介して配置されている。図2は、冷媒排出用配管42の裏側に冷媒供給用配管40(図3)が隠れるように配置された図を示している。
【0034】
また、アンダーカバー温調用配管44の上流端は、冷媒供給用配管40の冷却水流れ方向中間部に接続され、アンダーカバー温調用配管44の下流端は、冷媒排出用配管42の冷却水流れ方向中間部に接続されている。図2に示すように、アンダーカバー温調用配管44の上流端寄り部分に、上記の図4に示した開閉弁34を設けている。また、アンダーカバー温調用配管44の冷却水の流れ方向に関して中間部は、アンダーカバー20の上面の、燃料電池スタック12よりも前側に外れた部分に直接接触した状態で、例えばロウ付け、接着等により固定している。アンダーカバー温調用配管44は、開閉弁34が開弁された状態で、冷媒経路24を循環する冷却水が流れることを可能としている。
【0035】
なお、アンダーカバー20の上側にアンダーカバー温調用配管44を、図示しない締め付け部材と、ボルト及びナット等の締結部材とを用いて締め付けるとともに、アンダーカバー20に接触した状態で固定することもできる。なお、図2に示すように、アンダーカバー温調用配管44の一部は、U字形を複数連続させ、全体として略波形に、いわゆるサーペンタイン状に形成している。このため、アンダーカバー20の表面積を過度に大きくすることなく、アンダーカバー20とアンダーカバー温調用配管44との熱交換面積を大きくすることができる。このようなアンダーカバー温調用配管44は、アルミニウム、鉄、鋼、ステンレス合金等の金属製としている。また、好ましくは、アンダーカバー温調用配管44は、アルミニウム等の、鉄よりも、熱伝導率の高い材料により造る。このように構成するため、アンダーカバー温調用配管44とアンダーカバー20とは、一体型となる。
【0036】
また、アンダーカバー温調用配管44の上流端と下流端とにそれぞれゴムホースを設けることにより、アンダーカバー温調用配管44の上流端と冷媒供給用配管40との接続部、及び、アンダーカバー温調用配管44の下流端と冷媒排出用配管42との接続部に、それぞれゴムホースを設けている。そして、分岐経路30を構成するアンダーカバー温調用配管44と、本経路28を構成する冷媒供給用配管40及び冷媒排出用配管42とを、着脱可能に接続している。すなわち、これらの配管44,40,42同士の接続部が、溶接等により着脱不能に接続されることがなく、アンダーカバー温調用配管44に設けたゴムホースを、冷媒供給用配管40及び冷媒排出用配管42の接続口から引き抜くことにより、互いに接続した配管44,40,42同士を容易に分離できるようにしている。また、そして、このようにゴムホースを設けることにより、分岐経路30を構成する配管44と、本経路28を構成する配管40,42との分離作業が、車両にアンダーカバー20を固定した状態で行えるようにしている。なお、ゴムホースは、本経路28を構成する配管40,42の接続口側に設けて、ゴムホースに分岐経路30を構成する配管44を着脱可能に接続することもできる。なお、ゴムホース以外の適宜の手段、例えば、人の力により変形させることが可能な材料製の接続用管の使用により、分岐経路30を構成する配管44と、本経路28を構成する配管40,42とを、着脱可能に接続することもできる。
【0037】
また、アンダーカバー20に、アンダーカバー20の温度を検出する温度検出手段である、アンダーカバー側温度センサ(図示せず)を設け、アンダーカバー側温度センサからの検出信号を制御部36(図4)に入力可能としている。アンダーカバー側温度センサは、例えばサーミスタ等により構成する。開閉弁制御手段38は、アンダーカバー側温度センサからの検出信号が表す検出温度が予め設定した所定温度以下の場合に開閉弁34を開弁するように、開閉弁34の開閉状態を制御する。
【0038】
図4に示すように、燃料電池冷却システム22は、冷却水ポンプ32を駆動させることにより、冷却水が図4の矢印方向に流れて、ラジエータ26に通過する。ラジエータ26を通過した冷却水は、ラジエータ26を厚さ方向に通過する空気との間で熱交換を行って温度低下する、すなわち冷却される。このため、燃料電池スタック12が運転時の発熱により温度上昇するのにもかかわらず、ラジエータ26を通過した冷却水が燃料電池スタック12の内部を流れることで、燃料電池スタック12の温度が過度に上昇することが防止される。
【0039】
一方、分岐経路30に燃料電池スタック12通過後の冷却水が流れることにより、分岐経路30を構成するアンダーカバー温調用配管44(図2、図3)内を流れる冷却水は、徐々に温度上昇する。すなわち、燃料電池スタック12の運転時の発熱により、燃料電池スタック12と熱交換する冷却水が温度上昇する。そして、アンダーカバー温調用配管44内を流れる冷却水と、アンダーカバー温調用配管44と接触するアンダーカバー20とが熱交換を行って、アンダーカバー20が温度上昇する。すなわち、冷却水がアンダーカバー温調用配管44を流れることにより、アンダーカバー20が温度上昇する。このため、降雪時の車両の走行時等にアンダーカバー20の上側に雪が載って、溜まった場合でも、この雪を早期に溶かすことができる。すなわち、アンダーカバー20上に溜まった雪を、燃料電池スタック12の排熱で早期に溶かすことができる。したがって、燃料電池スタック12を暖気運転したり、保温運転する場合に、アンダーカバー20上の雪により燃料電池スタック12の温度上昇が過度に妨げられたり、燃料電池スタック12が過度に温度低下するのを防止できる。この結果、アンダーカバー20の上側に雪が溜まった場合でも、燃料電池スタック12の暖気時間が過度に長くなるのを防止するとともに、燃料電池スタック12の運転温度が過度に低下するのを防止することができる。
【0040】
なお、アンダーカバー20の1個所または複数個所に上下方向に貫通する孔部を設けることもできる。この孔部を設けた構成によれば、アンダーカバー20上で雪が溶けることにより発生する水を、孔部を通じてアンダーカバー20外に容易に排出できるとともに、アンダーカバー20の軽量化を図れる。
【0041】
また、アンダーカバー20は、樹脂よりも熱伝導率の高い材料により造っているため、アンダーカバー20の上側に雪が溜まった場合でも、アンダーカバー温調用配管44内を流れる冷却水により、より早期に雪を溶かすことができる。
【0042】
また、冷媒経路24は、本経路28と、冷却水ポンプ32と、本経路28から分岐される分岐経路30と、を備え、アンダーカバー温調用配管44は、分岐経路30の少なくとも一部により構成し、分岐経路30は開閉弁34を備え、さらに、開閉弁34の開閉を制御する開閉弁制御手段38を備えるので、本実施の形態のように、アンダーカバー20の温度を検出するアンダーカバー側温度センサを備え、アンダーカバー側温度センサの検出信号が表すアンダーカバー20の温度が、予め設定した所定温度以下の場合に、開閉弁34を開弁する構成を備えることにより、アンダーカバー温調用配管44に無駄に冷却水が流れるのを抑制できる。例えば、開閉弁制御手段38は、アンダーカバー20の温度が所定温度を上回っていると判定された場合には、開閉弁34を閉弁するように開閉弁34を制御するため、アンダーカバー温調用配管44に冷却水が流れることが阻止される。この場合でも、所定温度を適切に設定することにより、アンダーカバー20上に雪が溜まった場合でも、雪をアンダーカバー20の表面温度で溶かすことができる。
【0043】
また、分岐経路30を構成する配管44と、本経路28を構成する配管40,42とを、着脱可能に接続している構成において、車両にアンダーカバー20を固定した状態で、分岐経路30を構成する配管44と、本経路28を構成する配管40,42とを分離可能としているので、車両からアンダーカバー20を取り外す作業の前に、本経路28を構成する配管40,42に対し、分岐経路30を構成する配管44を取り外すことができ、その後の車両からアンダーカバー20を取り外す作業を容易に行える。この場合には、配管40,42,44の接続部の位置も、アンダーカバー20とアンダーカバー温調用配管44との固定部の位置、及び、ゴムホース等の接続部を構成する部材の変形可能量との関係で、配管40,42,44同士の分離が可能となるように適切に設定する。
【0044】
なお、図示は省略するが、アンダーカバー温調用配管44にドレンプラグを設け、車両からアンダーカバー20を取り外す前に、アンダーカバー温調用配管44内から冷却水を抜き取ることを可能とすることもできる。このようにすれば、車両からアンダーカバー20や、アンダーカバー温調用配管44を取り外す作業を、より容易に行える。
【0045】
また、本実施の形態の構成を用いて、燃料電池スタック12の温度が予め設定した所定温度以上となった場合等の、燃料電池スタック12を温度低下させる必要がある場合に、アンダーカバー温調用配管44に冷却水を流し、温度低下したアンダーカバー20により燃料電池スタック12を早期に温度低下させることもできる。この場合、開閉弁制御手段38は、燃料電池スタック12の検出温度が予め設定した第2の所定温度以上である場合に、開閉弁34が開弁するように開閉弁34の開閉を制御する構成とする。また、燃料電池スタック12の検出温度を求めるために、燃料電池スタック12に燃料電池側温度センサを設け、燃料電池側温度センサの検出温度を制御部36に入力する。このような構成によれば、アンダーカバー20とアンダーカバー温調用配管44とにより、ラジエータ26等の燃料電池スタック冷却装置の冷却機能を補助することができ、燃料電池スタック冷却装置の小型化に寄与できる。また、燃料電池スタック12の冷却性能を向上することができる。
【0046】
なお、このような燃料電池スタック12の冷却性能を向上させることを考慮しない場合には、燃料電池スタック12とアンダーカバー20とを接触しないように構成することもできる。
【0047】
[第2の発明の実施の形態]
図5は、本発明に係る第2の実施の形態を示す、図2に対応する図である。図6は、第2の実施の形態を示す、図3に対応する図である。図5、図6に示す本実施の形態を、上記の図2、図3に示す第1の実施の形態と比較すれば明らかなように、本実施の形態では、アンダーカバー温調用配管44aの上流端と冷媒供給用配管40との接続部を、車両の前後方向(図5、図6の左右方向)に関して、アンダーカバー温調用配管44aの下流端と冷媒排出用配管42との接続部(図6のX位置)とほぼ一致する位置に設けている。その他の構成及び作用については、上記の第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する図示及び説明を省略する。
【0048】
[第3の発明の実施の形態]
図7は、本発明に係る第3の実施の形態を示す、図4に対応する図である。本実施の形態では、燃料電池冷却システム22aを構成する本経路28の一部から第2の分岐経路46を分岐させている。第2の分岐経路46は、冷却水の流れに関して、燃料電池スタック12及び分岐経路30と並列に、本経路28に接続している。第2の分岐経路46の途中に、燃料電池制御装置であるPCU(Power Control Unit)48と、DC/DCコンバータ50とを設け、第2の分岐経路46を流れる冷却水がPCU48とDC/DCコンバータ50とにそれぞれ設けた冷却水流路(図示せず)を流れるようにしている。PCU48は、上記の図4に示した第1の実施の形態を構成する制御部36(ECU)と、インバータ(図示せず)等の他の電気回路を含んで構成する。インバータは、燃料電池スタック12または燃料電池スタック12により電力が供給され、蓄電する二次電池(図示せず)と、走行用モータ14(図1参照)との間に設けて、燃料電池スタック12または二次電池から供給される直流電圧を交流電圧に変換して、走行用モータ14を駆動する。DC/DCコンバータ50は、燃料電池スタック12または二次電池から供給される直流電圧を昇圧して、インバータに供給可能とする。
【0049】
このような本実施の形態によれば、燃料電池スタック12冷却用の冷却系により、PCU48とDC/DCコンバータ50とを冷却することもでき、燃料電池搭載車両10の性能向上を図れる。しかも、アンダーカバー温調用配管44(図2、図3参照)を流れる冷却水を、より早期に有効に温度上昇させ、アンダーカバー温調用配管44に接触するアンダーカバー20(図2、図3参照)を、より早期に有効に温度上昇させることができる。すなわち、アンダーカバー温調用配管44を流れる冷却水が、燃料電池スタック12と、PCU48及びDC/DCコンバータ50を通過することにより、アンダーカバー20がより温度上昇しやすくなり、アンダーカバー20の上側に雪が溜まった場合でも、この雪をより有効に溶かすことができる。PCU48及びDC/DCコンバータ50の一方または両方は、アンダーカバー20の上側に、例えばアンダーカバー20の上面に接触した状態で設けることもできる。また、本実施の形態において、第2の分岐経路46の途中に、PCU48とDC/DCコンバータ50とのうち、一方のみを設けて、この一方のみを燃料電池スタック12の冷却系により冷却可能とすることもできる。その他の構成及び作用については、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する図示及び説明を省略する。
【0050】
[第4の発明の実施の形態]
図8は、本発明に係る第4の実施の形態において、図3からアンダーカバーのみを取り出して、図3の左右方向片側から他側に見た図に対応する図である。本実施の形態では、アンダーカバー20aの下面に、複数の板状の冷却フィン52を、それぞれ燃料電池搭載車両10(図1参照)の前後方向(図8の表裏方向)に伸びるように突出させて設けている。このような構成によれば、アンダーカバー20aが、燃料電池搭載車両10走行時の走行風により、空気と熱交換しやすくなり、アンダーカバー20aの温度が過度に上昇するのを有効に抑制できる。その他の構成及び作用については、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態と同様であるため、重複する図示及び説明を省略する。
【0051】
なお、上記の各実施の形態において、アンダーカバー温調用配管44,44aとアンダーカバー20,20aとを直接に接触させず、金属等の樹脂よりも熱伝導率が高い材料により造った部材を介して間接的に接触させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池搭載車両の略図である。
【図2】第1の実施の形態の燃料電池搭載車両が搭載するアンダーカバー上の燃料電池スタックと、冷却用の配管の一部とを示す平面図である。
【図3】図2を下方から上方に見た図である。
【図4】第1の実施の形態の燃料電池搭載車両が備える燃料電池冷却システムの構成図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態を示す、図2に対応する図である。
【図6】第2の実施の形態を示す、図3に対応する図である。
【図7】本発明に係る第3の実施の形態を示す、図4に対応する図である。
【図8】本発明に係る第4の実施の形態において、図3からアンダーカバーのみを取り出して、図3の左右方向片側から他側に見た図に対応する図である。
【符号の説明】
【0053】
10 燃料電池搭載車両、12 燃料電池スタック、14 走行用モータ、16 前輪、17 後輪、18 フロアパネル、20,20a アンダーカバー、22,22a 燃料電池冷却システム、24 冷媒経路、26 ラジエータ、28 本経路、30 分岐経路、32 冷却水ポンプ、34 開閉弁、36 制御部(ECU)、38 開閉弁制御手段、40 冷媒供給用配管、42 冷媒排出用配管、44,44a アンダーカバー温調用配管、46 第2の分岐経路、48 PCU、50 DC/DCコンバータ、52 冷却フィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下に配置される燃料電池の下側に設けられるアンダーカバーと、
燃料電池を冷却するための伝熱媒体が循環して流れる伝熱媒体経路と、を備え、
伝熱媒体経路は、アンダーカバーに接触するように設けられる配管であって、伝熱媒体経路を循環する伝熱媒体が流れることを可能とするアンダーカバー温調用配管を有することを特徴とする燃料電池搭載車両。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池搭載車両において、
アンダーカバーは、樹脂よりも熱伝導率の高い材料により造っていることを特徴とする燃料電池搭載車両。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池搭載車両において、
アンダーカバーは、金属製であることを特徴とする燃料電池搭載車両。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の燃料電池搭載車両において、
伝熱媒体経路は、
燃料電池と熱交換器との間で伝熱媒体を循環させる本経路と、
本経路に設けられた伝熱媒体ポンプと、
本経路から分岐される分岐経路と、を備え、
アンダーカバー温調用配管は、分岐経路の少なくとも一部により構成することを特徴とする燃料電池搭載車両。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池搭載車両において、
分岐経路は、分岐経路内の伝熱媒体の流れを遮断または接続する開閉弁を備え、
さらに、開閉弁の開閉を制御する開閉弁制御手段を備えることを特徴とする燃料電池搭載車両。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の燃料電池搭載車両において、
分岐経路を構成する配管と、本経路を構成する配管とを、着脱可能に接続していることを特徴とする燃料電池搭載車両。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池搭載車両において、
車両にアンダーカバーを固定した状態で、分岐経路を構成する配管と、本経路を構成する配管とを分離可能としていることを特徴とする燃料電池搭載車両。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1に記載の燃料電池搭載車両において、
燃料電池の運転を制御する制御部を含む燃料電池制御装置と、DC/DCコンバータとを備え、
アンダーカバー温調用配管を流れる伝熱媒体は、燃料電池だけでなく燃料電池制御装置とDC/DCコンバータとの少なくとも一方を冷却することを特徴とする燃料電池搭載車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−173177(P2009−173177A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14357(P2008−14357)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】