説明

燃料電池車両及びそのガスセンサ点検方法

【課題】点検用ガス導入管を備えつつ、ガスセンサの交換等の作業性を向上させる燃料電池車両及びそのガスセンサ点検方法を提供する。
【解決手段】水素及び空気が供給されることで発電する燃料電池スタック11と、内部に水素を収容する水素タンク12と、水素タンク12の上部を囲むように形成される水素滞留部102bと、水素滞留部102bに取り付けられると共に、ガス検出部22aが下方に開口し、水素滞留部102bに滞留する水素を検出する水素センサ22と、水素センサ22の点検時に、点検用ガスを水素センサ22に導き、一端32a側から点検用ガスをガス検出部22aに吹き付ける点検用ガス導入管32と、を備える燃料電池車両1であって、点検用ガス導入管32は、水素タンク12に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両及びそのガスセンサ点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両は、固体高分子型の燃料電池スタック及び水素タンクを、例えばフロアパネル下に備えると共に、水素漏れを検出する水素センサを備える。水素センサは、水素タンクや燃料電池の上方のフロアパネルの下面に取り付けられる。このような水素センサは定期的に動作点検する必要あるので、点検用ガス(校正用ガス)を水素センサの検出部に導き、この検出部に吹き付ける点検用ガス導入管が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−329786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような水素センサを交換する場合、その下方の水素タンクや燃料電池スタックを取り外し、さらに、点検用ガス導入管を取り外す必要があるので、時間を要していた。
【0005】
そこで、本発明は、点検用ガス導入管を備えつつ、ガスセンサの交換等の作業性を向上させる燃料電池車両及びそのガスセンサ点検方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電する燃料電池と、内部に燃料ガスを収容する燃料ガス収容体と、前記燃料ガス収容体の上部を囲むように形成される燃料ガス滞留部と、前記燃料ガス滞留部に取り付けられると共に、ガス検出部が下方に開口し、当該燃料ガス滞留部に滞留する燃料ガスを検出するガスセンサと、前記ガスセンサの点検時に、点検用ガスを当該ガスセンサに導き、一端側から当該点検用ガスを前記ガス検出部に吹き付ける点検用ガス導入管と、を備える燃料電池車両であって、前記点検用ガス導入管は、前記燃料ガス収容体に固定されていることを特徴とする燃料電池車両である。
【0007】
このような燃料電池車両によれば、ガスセンサを点検する場合、点検用ガスが点検用ガス管によって導かれ、その一端側からガスセンサのガス検出部に吹き付けられるので、点検用ガスを無駄なく適切にガス検出部に吹き付けることができ、ガスセンサを適切に点検できる。
また、仮に、燃料ガス収容体から燃料ガスが漏洩しても、漏洩した燃料ガスは燃料ガス滞留部に滞留しやすくなり、ガスセンサよって、燃料ガス漏れを早期に検出できる。
さらに、ガスセンサを交換するべく、ガスセンサを取り外す必要がある場合、その下方に配置された燃料ガス収容体を取り外すことになるが、燃料ガス収容体を取り外すとこれに固定された点検用ガス管も取り外されることになる。これにより、燃料ガス収容体を取り外した後、点検用ガス管を取り外す必要はなく、作業性が向上し、また、燃料ガス収容体及び点検用ガス管を取り外した後において、ガスセンサを目視等によって点検することもできる。
【0008】
また、通常時、前記点検用ガス導入管の他端側は、内部の換気を必要とする要換気デバイスに接続されると共に、前記燃料ガス収容体の取り外し時に、前記点検用ガス導入管と前記要換気デバイスとの接続を解除させる解除機構を備えることを特徴とする燃料電池車両である。
【0009】
ここで、通常時とは、要換気デバイスの作動中を意味する。すなわち、要換気デバイスと燃料電池とは一般に連動するので、通常時とは、燃料電池の発電中、つまり、燃料電池車両の起動中を意味する。
このような燃料電池車両によれば、通常時、点検用ガス導入管の他端側は、要換気デバイスに接続されているので、要換気デバイスは、点検用ガス管を介して、換気される。
また、比重の小さい燃料ガスを検出するガスセンサは、通常、高い位置に設けられ、そのガス検出部に点検用ガスを吹き付ける点検用ガス導入管の一端側も高い位置に設けられるので、燃料電池車両が水溜り等を走行したとしても、水分が点検用ガス管を介して要換気デバイス内に浸入しにくくなり、要換気デバイスを好適に保護できる。
【0010】
そして、ガスセンサを取り外すべく、燃料ガス収容体を取り外す場合、解除機構により、点検用ガス導入管と要換気デバイスとの接続を解除できる。これにより、要換気デバイスは取り外さずに、燃料ガス収容体及びこれに固定された点検用ガス管のみを取り外すことができ、作業効率が高まる。
【0011】
また、前記燃料ガス収容体は、前記燃料電池に供給される燃料ガスが貯蔵された燃料ガスタンクであって、車体に組み付けられた場合に前記ガスセンサと所定の位置関係になると共に、前記燃料ガスタンクが固定されたサブフレームと、前記サブフレームに対しての前記点検用ガス管を所定位置に決める位置決め機構と、を備えることを特徴とする燃料電池車両である。
【0012】
ここで、燃料ガスタンクの外表面は、通常、曲面であるので、点検用ガス管を燃料ガスタンクに高精度で固定することは難しく、点検用ガス管の一端側からの点検用ガスが、ガスセンサのガス検出部からずれやすい。
そこで、このような燃料電池車両によれば、サブフレームに対しての点検用ガス管の位置は、位置決め機構によって、所定位置に決められる。また、サブフレームは、車体に組み付けられた場合、ガスセンサと所定の位置関係になる。したがって、これを考慮して、位置決め機構を設定しておけば、この位置決め機構により、点検用ガス管をサブフレームに取り付けた後、この点検用ガスが取り付けられたサブフレームを車体に組み付けることにより、点検用ガス管とガスセンサとが所定の位置関係となる。よって、点検用ガス管からの点検用ガスが、ガスセンサのガス検出部に適切に吹き付けることができ、ガスセンサを好適に点検できる。
【0013】
また、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電する燃料電池と、内部に燃料ガスを収容する燃料ガス収容体と、前記燃料ガス収容体の上部を囲むように形成される燃料ガス滞留部と、前記燃料ガス滞留部に取り付けられると共に、ガス検出部が下方に開口し、当該燃料ガス滞留部に滞留する燃料ガスを検出するガスセンサと、前記ガスセンサの点検時に、点検用ガスを当該ガスセンサに導き、一端側から当該点検用ガスを前記ガス検出部に吹き付ける点検用ガス導入管と、を備え、前記点検用ガス導入管は、前記燃料ガス収容体に固定されている燃料電池車両のガスセンサ点検方法であって、前記燃料ガス収容体の取り外しに伴って、前記点検用ガス導入管を取り外すことを特徴とする燃料電池車両のガスセンサ点検方法である。
【0014】
このような燃料電池車両のガスセンサ点検方法によれば、ガスセンサを点検する場合、点検用ガスが点検用ガス管によって導かれ、その一端側からガスセンサのガス検出部に吹き付けられるので、点検用ガスを無駄なく適切にガス検出部に吹き付けることができ、ガスセンサを適切に点検できる。
また、ガスセンサを交換するべく、ガスセンサを取り外す必要がある場合、その下方に配置された燃料ガス収容体を取り外すことになるが、燃料ガス収容体の取り外しに伴って、これに固定された点検用ガス管も取り外すので、作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、点検用ガス導入管を備えつつ、ガスセンサの交換等の作業性を向上させる燃料電池車両及びそのガスセンサ点検方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
≪第1実施形態≫
まず、本発明の第1実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
【0017】
第1実施形態に係る燃料電池車両1は、燃料電池スタック11と、水素タンク12と、加湿器13と、バッテリ14と、水素センサ21、22と、水素センサ21、22の点検用の点検用ガス導入管31、32を備えている。
また、燃料電池車両1は、ダッシュボードパネル101、フロアパネル102及びトランクフロアパネル103を備えている。そして、このダッシュボードパネル101等によって、燃料電池車両1内は、車室121及びトランクルーム122を含む上部空間と、モータ室131、センタートンネル132及びタンク室133を含む下部空間と、に仕切られている。
【0018】
さらに、燃料電池車両1は、燃料電池スタック11等が固定されると共に、サイドフレーム等の車体に組み付けられる井桁状のサブフレーム61、62、63を備えている。
なお、サブフレーム61、62、63は、サイドフレーム等から構成される車体に組み付けられた際、車体と所定の位置関係となるように設計されている。
【0019】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック11は、複数の固体高分子型の単セルが燃料電池車両1の前後方向で積層されることで構成された積層体であり、略直方体を呈している。また、燃料電池スタック11は、サブフレーム61上に固定されると共に、フロアパネル102下のセンタートンネル132(センターコンソール)内に配置されている。そして、燃料電池スタック11は、水素(燃料ガス)及び空気(酸化剤ガス)が供給された状態で、その出力端子に接続されたVCU15(Voltage Control Unit)が適宜に制御され、電流が取り出されると発電するようになっている。つまり、燃料電池スタック11(燃料ガス収容体)は、その内部に水素を収容した状態となる。
【0020】
また、燃料電池スタック11の上方のフロアパネル102は、燃料電池スタック11の外形に対応すると共に、燃料電池スタック11の上部を囲むように隆起して形成されており、燃料電池スタック11から漏洩した水素を滞留させる水素滞留部102a(燃料ガス滞留部)として機能している。
【0021】
さらに、燃料電池スタック11は水素センサ21の下方に配置されており、燃料電池スタック11を取り外さないと、水素センサ21が取り外せないようになっている。すなわち、燃料電池スタック11は、水素センサ21のみの取り外しの障害(邪魔)となる障害体となっている。
【0022】
さらにまた、燃料電池スタック11は精密に設計及び組み立てられているものの、燃料電池スタック11から微量の水素及び空気が漏洩する虞を有している。
【0023】
<水素タンク>
水素タンク12(燃料ガスタンク)は、燃料電池スタック11に供給される水素が高圧で貯蔵されたタンクであり、略円柱体を呈しており、その内部に水素を収容している。水素タンク12は、図1及び図4に示すように、その両端に配置された台座12a、12aを介してサブフレーム63上に固定されると共に、フロアパネル102下のタンク室133内に配置されている。なお、水素タンク12内の水素は、遮断弁、減圧弁及び配管(いずれも図示しない)を介して、燃料電池スタック11に供給されるようになっている。
【0024】
また、水素タンク12の上方のフロアパネル102は、水素タンク12の外形に対応すると共に、水素タンク12の上部を囲むように形成されており、水素タンク12から漏洩した水素を滞留させる水素滞留部102b(燃料ガス滞留部)として機能している。
【0025】
さらに、水素タンク12は水素センサ22の下方に配置されており、水素タンク12を取り外さないと、水素センサ22が取り外せないようになっている。すなわち、水素タンク12は、水素センサ22のみの取り外しの障害(邪魔)となる障害体となっている。
【0026】
さらにまた、水素タンク12は、精密に設計され、高い耐久性を有しているものの、その口金部に取り付けられた遮断弁等から、微量の水素が漏洩する虞を有している。
【0027】
<加湿器>
加湿器13は、モータ室131内のコンプレッサから配管(いずれも図示しない)を介して燃料電池スタック11のカソードに向かう空気を、当該カソードから排出された多湿のカソードオフガスで加湿するものであり、水分交換させるための中空糸膜を内蔵している。そして、加湿器13は、図1及び図2に示すように、燃料電池スタック11の後面、及び、サブフレーム61上に固定されると共に、フロアパネル102下に配置されている。
【0028】
<バッテリ>
バッテリ14は、燃料電池スタック11の余剰電力や走行モータ(図示しない)からの回生電力を充電したり、加速時等において燃料電池スタック11をアシストするべく、充電された電力を放電するものであり、リチウムイオン型の単電池(二次電池)が複数直列で接続されてなる組電池を内部に備えている。そして、バッテリ14は、図1及び図4に示すように、燃料電池スタック11の後方において、サブフレーム62上に固定されると共に、フロアパネル102下に配置されている。
【0029】
また、バッテリ14は、前記組電池を水、埃等から保護するため、その外側に組み電池を収容する筐体を備えている。この筐体には、バッテリ14内を換気するための換気用配管14aが取り付けられている。すなわち、バッテリ14は内部の換気を必要とする要換気デバイスである。そして、換気用配管14aは、ブラケット14bを介してサブフレーム62に固定されている。
【0030】
<VCU>
VCU15は、図示しないECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)からの指令に従って、燃料電池スタック11の発電電力(出力電流、出力電圧)、及び、バッテリ14の充放電を制御する機器であり、DC/DCチョッパ、DC/DCコンバータ等の電子回路を内部に備えている。そして、VCU15は、図1及び図2に示すように、車幅方向で燃料電池スタック11の隣であって、例えば、助手席下方のフロアパネル102下において、サブフレーム61上に固定されている。
【0031】
また、VCU15は、前記した電子回路を水、埃等から保護するため、その外側に電子回路を収容する筐体を備えている。そして、この筐体には、VCU15内を換気するための換気用配管15aが取り付けられている。すなわち、VCU15は内部の換気を必要とする要換気デバイスである。なお、換気用配管15aは、ブラケット15bを介して燃料電池スタック11に固定されている。
【0032】
<水素センサ、点検用ガス導入管>
水素センサ21、22は、漏洩した水素の濃度を検出するセンサであり、検出した濃度に対応した信号を、ECU(図示しない)に出力するようになっている。このような水素センサ21、22の水素検出方式は、例えばガス接触燃焼式や半導体方式である。
点検用ガス導入管31、32は、水素センサ21、22の定期点検時に、点検用ガスを水素センサ21に導くためのパイプである。点検用ガスとは、水素センサ21を校正(キャリブレーション)するため、水素濃度が所定に調整された校正用ガスである。
【0033】
<水素センサ21、点検用ガス導入管31>
まず、図2、図3を参照して、水素センサ21、点検用ガス導入管31周りの構成及びその作用効果を説明する。
【0034】
水素センサ21は、主に燃料電池スタック11から漏洩し、水素滞留部102aに滞留する水素を検出するセンサであり、燃料電池スタック11の上方で水素滞留部102aを形成するフロアパネル102の下面に、ボルト等によって着脱自在に取り付けられている。そして、水素センサ21のガス検出部21aは、略円筒形を呈すると共に下方に開口し、水素滞留部102aに滞留する水素が、ガス検出部21a内に取り込まれるようになっている。なお、ガス検出部21a及び後記するガス検出部22a内には、水素を検出するガス検出素子(図示しない)がそれぞれ配置されている。
【0035】
点検用ガス導入管31は、水素センサ21の定期点検時に、点検用ガスを水素センサ21に導き、その一端31a側から、点検用ガスを水素センサ21のガス検出部21aに吹き付ける配管である。点検用ガス導入管31の一端31a側には、下方に開口するガス検出部21aに対応して、点検用ガスを吹出す吹出孔31bが形成されており、点検用ガスがガス検出部21aに向けて吹き付けられるようになっている。
また、点検用ガス導入管31は、ブラケット41を介してサブフレーム61に取り付けられると共に、ブラケット42、43を介して燃料電池スタック11に取り付けられている。
【0036】
点検用ガス導入管31の他端31cは、通常時、ゴムホース51を介して、換気用配管15aに接続されている。なお、通常時とは、水素センサ21の点検時以外を意味し、燃料電池スタック11及びVCU15の作動時や、燃料電池車両1の走行時・停止時を含む。また、点検用ガス導入管31の他端31cは、燃料電池車両1の下側に引き出されており、水素センサ21の点検時において、例えば燃料電池車両1のアンダーカバー(図示しない)を取り外した際、他端31cが車両下方に臨むようになっている。
ゴムホース51と、点検用ガス導入管31又は換気用配管15aとの接続部には、ホースバンド52、52が取り付けられており、振動等によるゴムホース51の脱落が防止されている。
【0037】
これにより、通常時において、VCU15内は、換気用配管15a、ゴムホース51、点検用ガス導入管31、吹出孔31bを介して、センタートンネル132内と連通し、吹出孔31bが換気口として機能するようになっている。したがって、VCU15の作動により、膨張/収縮するVCU15内の空気は、換気用配管15a、点検用ガス導入管31等を介して、換気されるようになっている。また、換気口として機能する吹出孔31bは、VCU15よりも上方に配置されているので、例えば燃料電池車両1が水溜りを走行しても、VCU15内に水が浸入しないようになっている。
【0038】
<点検用ガス導入管31の取り付け手順>
ここで、点検用ガス導入管31の取り付け手順を説明する。
前提として、車体に組み付ける前のサブフレーム61上の所定位置には、燃料電池スタック11及び加湿器13が固定されている。サブフレーム61は、車体に組み付けられた場合、車体及びこれに固定された水素センサ21と所定の位置関係となるように構成されている。よって、サブフレーム61に固定されたブラケット41も、サブフレーム61が車体に組み付けられた場合、水素センサ21と所定の位置関係となるように構成されている。
【0039】
また、点検用ガス導入管31のブラケット41への取り付け位置は、設計図等に基づいて、吹出孔31bからの点検用ガスがガス検出部21aに向かうように設計されている。なお、点検用ガス導入管31の前記取り付け位置は、例えば位置決めピンによってマーキングされており、この取り付け位置とブラケット41とが、サブフレーム61に対しての点検用ガス導入管31を所定位置に決める位置決め機構を構成している。
【0040】
まず、点検用ガス導入管31を、サブフレーム61に固定されたブラケット41に、位置合わせしながら取り付けた後、燃料電池スタック11に固定されたブラケット42、43に取り付ける。その後、燃料電池スタック11、加湿器13及び点検用ガス導入管31が取り付けられたサブフレーム61を油圧ジャッキ等で上昇させた後、車体に組み付ける。そうすると、吹出孔31bが、ガス検出部21aの開口に対向するように配置される。
【0041】
このように燃料電池スタック11に固定されたブラケット42、43に対して位置決めするのではなく、サブフレーム61に固定されたブラケット41に対して位置決めするので、点検用ガス導入管31を精密に取り付けることができる。これにより、水素センサ21の点検時において、吹出孔31bからの点検用ガスを好適に水素センサ21のガス検出部21aに吹き付けることができると共に、点検用ガスを無駄に吹き付ける必要もない。
【0042】
<水素センサ21の点検時>
次に、水素センサ21の点検時を説明する。
燃料電池車両1のアンダーカバーを取り外した後、ゴムホース51の点検用ガス導入管31側を取り外す。そして、点検用ガス導入管31の他端31cに点検用ガスを導入する。そうすると、点検用ガスは、点検用ガス導入管31によって水素センサ21に導かれた後、その一端31a側の吹出孔31bから、水素センサ21のガス検出部21aに無駄なく適切に吹き付けられる。これにより、水素センサ21を好適に点検できる。
【0043】
<水素センサ21の取り外し時>
次に、前記した点検により、水素センサ21が故障等している虞があると判断され、精密に検査等する際における、水素センサ21の取り外し方法、及び、水素センサの点検方法を説明する。
ジャッキアップされた燃料電池車両1のアンダーカバーを取り外した後、サブフレーム61を油圧ジャッキ等で支持しながら、サブフレーム61と車体との締結を解除する。そして、前記油圧ジャッキ等によってサブフレーム61を下降させる(図3参照)。
【0044】
そうすると、サブフレーム61上に固定された燃料電池スタック11、VCU15、及び、点検用ガス導入管31も、サブフレーム61と一体に下降し、水素センサ21が下方に臨んだ状態となる。これにより、水素センサ21をフロアパネル102から容易に取り外すことができる。
【0045】
すなわち、点検用ガス導入管31がフロアパネル102側に取り付けられた構成である場合、サブフレーム61及びこれに固定された燃料電池スタック11等を取り外した後、点検用ガス導入管31を取り外す必要があり、手間が掛かってしまうが、第1実施形態に係る燃料電池車両1によれば、点検用ガス導入管31がサブフレーム61側に取り付けられた構成であるので、サブフレーム61及びこれに固定された燃料電池スタック11等を取り外すことに伴って、点検用ガス導入管31を取り外すことができ、取り外し工程が簡略される。よって、水素センサ21を速やかに取り外すことができ、作業性が向上する。
【0046】
<水素センサ22、点検用ガス導入管32>
次に、図4、図5を参照して、水素センサ22、点検用ガス導入管32周りの構成を説明する。
水素センサ22は、主に水素タンク12から漏洩し、水素滞留部102bに滞留する水素を検出するセンサであり、水素タンク12の上方で水素滞留部102bを形成するフロアパネル102の下面に、ボルト等によって着脱自在に取り付けられている。そして、水素センサ22のガス検出部22aは、略円筒形を呈すると共に下方に開口し、水素滞留部102bに滞留する水素が、ガス検出部22a内に取り込まれるようになっている。
【0047】
点検用ガス導入管32は、水素センサ22の定期点検時に、点検用ガスを水素センサ22に導き、その一端32a側から、点検用ガスを水素センサ22のガス検出部22aに吹き付ける配管である。点検用ガス導入管32の一端32a側には、下方に開口するガス検出部22aに対応して、点検用ガスを吹出す吹出孔32bが形成されており、点検用ガスがガス検出部22aに向けて吹き付けられるようになっている。
また、点検用ガス導入管32は、ブラケット45を介してサブフレーム63に取り付けられると共に、エポキシ樹脂系等の接着剤によって水素タンク12に固定されている。
【0048】
点検用ガス導入管32の他端32cは、通常時、ゴムホース53を介して、換気用配管14aに接続されている。また、点検用ガス導入管32の他端32cは、燃料電池車両1の下側に引き出されており、水素センサ22の点検時において、例えば燃料電池車両1のアンダーカバー(図示しない)を取り外した際、他端32cが車両下方に臨むようになっている。
ゴムホース53と、点検用ガス導入管32又は換気用配管14aとの接続部には、ホースバンド54、54が取り付けられており、振動等によるゴムホース53の脱落が防止されている。
【0049】
これにより、通常時において、バッテリ14内は、換気用配管14a、ゴムホース53、点検用ガス導入管32、吹出孔32bを介して、タンク室133内と連通し、吹出孔32bが換気口として機能するようになっている。したがって、バッテリ14の作動により、膨張/収縮するバッテリ14内の空気は、換気用配管14a、点検用ガス導入管32等を介して、換気されるようになっている。また、換気口として機能する吹出孔32bは、バッテリ14よりも上方に配置されているので、例えば燃料電池車両1が水溜りを走行しても、バッテリ14内に水が浸入しないようになっている。
【0050】
<点検用ガス導入管32の取り付け手順>
ここで、点検用ガス導入管32の取り付け手順を説明する。
前提として、車体に組み付ける前のサブフレーム63上の所定位置には、水素タンク12が固定されている。サブフレーム63は、車体に組み付けられた場合、車体及びこれに固定された水素センサ22と所定の位置関係となるように構成されている。よって、サブフレーム63に固定されたブラケット45も、サブフレーム63が車体に組み付けられた場合、水素センサ22と所定の位置関係となるように構成されている。
【0051】
また、点検用ガス導入管32のブラケット45への取り付け位置は、設計図等に基づいて、吹出孔32bからの点検用ガスがガス検出部22aに向かうように設計されている。なお、点検用ガス導入管32の前記取り付け位置は、例えば位置決めピンによってマーキングされており、この取り付け位置とブラケット45とが、サブフレーム63に対しての点検用ガス導入管32を所定位置に決める位置決め機構を構成している。
【0052】
まず、点検用ガス導入管32を、サブフレーム63に固定されたブラケット45に、位置合わせしながら取り付けた後、水素タンク12に接着剤等で固定する。その後、水素タンク12及び点検用ガス導入管32が取り付けられたサブフレーム63を油圧ジャッキ等で上昇させた後、車体に組み付ける。そうすると、吹出孔32bが、ガス検出部22aの開口に対向するように配置される。
【0053】
このように、その外周面が曲面で形成され、位置合わせしにくい水素タンク12に対して位置決めするのではなく、サブフレーム63に固定されたブラケット45に対して位置決めするので、点検用ガス導入管32を精密に取り付けることができる。これにより、水素センサ22の点検時において、吹出孔32bからの点検用ガスを好適に水素センサ22のガス検出部22aに吹き付けることができると共に、点検用ガスを無駄に吹き付ける必要もない。
【0054】
<水素センサ22の点検時>
次に、水素センサ22の点検時を説明する。
燃料電池車両1のアンダーカバーを取り外した後、ゴムホース53の点検用ガス導入管32側を取り外す。そして、点検用ガス導入管32の他端32cに点検用ガスを導入する。そうすると、点検用ガスは、点検用ガス導入管32によって水素センサ22に導かれた後、その一端32a側の吹出孔32bから、水素センサ22のガス検出部22aに無駄なく適切に吹き付けられる。これにより、水素センサ22を好適に点検できる。
【0055】
<水素センサ22の取り外し時>
次に、前記した点検により、水素センサ22が故障等している虞があると判断され、精密に検査等する際における、水素センサ22の取り外し方法、及び、水素センサ22の点検方法を説明する。
ジャッキアップされた燃料電池車両1のアンダーカバーを取り外した後、ゴムホース53の点検用ガス導入管32側を取り外し、点検用ガス導入管32とバッテリ14との接続を解除する。すなわち、ゴムホース53及びホースバンド54等が、水素タンク12の取り外し時に、点検用ガス導入管32とバッテリ14との接続を解除する解除機構として機能している。このように、点検用ガス導入管32とバッテリ14との接続を解除するので、水素タンク12の取り外し時にバッテリ14(サブフレーム62)を取り外す必要はない。
【0056】
そして、サブフレーム63を油圧ジャッキ等で支持しながら、サブフレーム63と車体との締結を解除する。そして、前記油圧ジャッキ等によってサブフレーム63を下降させる(図5参照)。
【0057】
そうすると、サブフレーム63上に固定された水素タンク12、及び、点検用ガス導入管32も、サブフレーム63と一体に下降し、水素センサ22が下方に臨んだ状態となる。
これにより、水素センサ22をフロアパネル102から容易に取り外すことができる。すなわち、点検用ガス導入管32がサブフレーム63側に取り付けられた構成であるので、サブフレーム63及びこれに固定された水素タンク12等を取り外すことに伴って、点検用ガス導入管32を取り外すことができ、取り外し工程が簡略され、作業性を向上できる。
【0058】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について、図6、図7を参照して説明する。なお、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
第2実施形態では、水素タンク12は、台座12a、12aを介して、サブフレーム63上に固定されると共に、その周面に沿って設けられた2本のタンクバンド71、71を介してサブフレーム63に固定されている。各タンクバンド71は、周方向において3分割されると共に、各分割片は、バンドの全体長を微調整可能とする連結治具72、72で連結されている。これにより、水素タンク12が、振動によって、さらにずれにくくなっている。
【0059】
また、第2実施形態では、点検用ガス導入管32は、水素タンク12に直接固定されておらず、タンクバンド71に固定されたブラケット73、73に固定されている。ただし、点検用ガス導入管32のゴムホース53側(他端32c側)は、第1実施形態と同様に、ブラケット45を介してサブフレーム63に取り付けられている。
【0060】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
【0061】
前記した実施形態では、燃料ガスが水素である場合を例示したが、燃料ガスは燃料電池において電極反応によりプロトン(水素イオン)を生成すると共に、窒素よりも比重の小さいガスであればよく、例えばメタンでもよい。
【0062】
前記した実施形態では、燃料電池スタック11、水素タンク12、バッテリ14が、別々のサブフレーム61、62、63に固定された構成を例示したが、1つのサブフレームに固定された構成、つまり、サブフレームを共有する構成でもよい。
前記した実施形態では、内部の換気を必要とする要換気デバイスが、バッテリ14、VCU15である構成を例示したが、その他のデバイス、例えばECUを収容する制御ボックスでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池車両の側面図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料電池スタック周りの側面図である。
【図3】第1実施形態に係る燃料電池スタックを取り外した状況の側面図である。
【図4】第1実施形態に係る水素タンク周りの側面図である。
【図5】第1実施形態に係る水素タンクを取り外した状況の側面図である。
【図6】第2実施形態に係る水素タンク周りの側面図である。
【図7】第2実施形態に係る水素タンク周りの正面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 燃料電池車両
11 燃料電池スタック(燃料電池、燃料ガス収容体)
12 水素タンク(燃料ガスタンク、燃料ガス収容体)
14 バッテリ(要換気デバイス)
15 VCU(要換気デバイス)
21、22 水素センサ(ガスセンサ)
21a、22a ガス検出部
31、32 点検用ガス導入管
31a、32a 一端
31c、32c 他端
41、45 ブラケット(位置決め機構)
51、53 ゴムホース(解除機構)
52、54 ホースバンド(解除機構)
61、62、63 サブフレーム
102 フロアパネル
102a、102b 水素滞留部(燃料ガス滞留部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電する燃料電池と、
内部に燃料ガスを収容する燃料ガス収容体と、
前記燃料ガス収容体の上部を囲むように形成される燃料ガス滞留部と、
前記燃料ガス滞留部に取り付けられると共に、ガス検出部が下方に開口し、当該燃料ガス滞留部に滞留する燃料ガスを検出するガスセンサと、
前記ガスセンサの点検時に、点検用ガスを当該ガスセンサに導き、一端側から当該点検用ガスを前記ガス検出部に吹き付ける点検用ガス導入管と、
を備える燃料電池車両であって、
前記点検用ガス導入管は、前記燃料ガス収容体に固定されている
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
通常時、前記点検用ガス導入管の他端側は、内部の換気を必要とする要換気デバイスに接続されると共に、
前記燃料ガス収容体の取り外し時に、前記点検用ガス導入管と前記要換気デバイスとの接続を解除させる解除機構を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記燃料ガス収容体は、前記燃料電池に供給される燃料ガスが貯蔵された燃料ガスタンクであって、
車体に組み付けられた場合に前記ガスセンサと所定の位置関係になると共に、前記燃料ガスタンクが固定されたサブフレームと、
前記サブフレームに対しての前記点検用ガス管を所定位置に決める位置決め機構と、
を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池車両。
【請求項4】
燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電する燃料電池と、
内部に燃料ガスを収容する燃料ガス収容体と、
前記燃料ガス収容体の上部を囲むように形成される燃料ガス滞留部と、
前記燃料ガス滞留部に取り付けられると共に、ガス検出部が下方に開口し、当該燃料ガス滞留部に滞留する燃料ガスを検出するガスセンサと、
前記ガスセンサの点検時に、点検用ガスを当該ガスセンサに導き、一端側から当該点検用ガスを前記ガス検出部に吹き付ける点検用ガス導入管と、
を備え、前記点検用ガス導入管は、前記燃料ガス収容体に固定されている燃料電池車両のガスセンサ点検方法であって、
前記燃料ガス収容体の取り外しに伴って、前記点検用ガス導入管を取り外す
ことを特徴とする燃料電池車両のガスセンサ点検方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−40330(P2010−40330A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201932(P2008−201932)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】