説明

燃焼炉

【課題】有機物を主体とする固形の被燃焼物を完全燃焼させることができる燃焼炉を提供すること。
【解決手段】燃焼炉1は、連続供給器2と、下部予熱部3と、1次燃焼を行う1次燃焼部4と、2次燃焼を行う2次燃焼部5と、排気筒6を備える。1次燃焼部4は、円筒環状の1次空気室46と円筒状の1次燃焼室47を有し、1次空気室46と1次燃焼室47を隔てる第1内筒42の下部に、周方向に複数個形成された傾斜貫通穴42aを有する。2次燃焼部5は、円筒環状の2次空気室56と円筒状の2次燃焼室57を有し、2次空気室56と2次燃焼室57を隔てる第2内筒52の下部に、周方向に複数個形成された傾斜貫通穴52aを備える。1次及び2次空気室46,56を下方に流れた旋回状の1次及び2次燃焼空気を、傾斜貫通穴42a,52aで1次及び2次燃焼室47,57内に傾斜方向に導き、2次燃焼室47,57内に上昇旋回流を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木質チップ及び木質ペレットのような有機性可燃物の破砕片及び固化成形物の燃焼に好適な燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃プラスチック等の固形物を燃焼する燃焼炉として、外筒の内側に内筒を配置して形成した燃焼部を上下方向に2段備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。この燃焼炉は、下段の内筒の内側に1次燃焼室を形成すると共に、上段の内筒の内側に2次燃焼室を形成している。上下両段の外筒と内筒の間には空気通路を形成しており、上段の空気通路と下段の空気通路を互いに連通させている。また、下段の内筒と上段の内筒との間に離隔を設け、上下段の空気通路と、1次燃焼室の上部と、2次燃焼室の上部とを全周にわたって連通させている。更に、2次燃焼室の上部を、上段の空気通路と全周にわたって連通させている。上段の外筒には燃焼空気の流入口が設けられており、送風機からの燃焼空気を、流入口を通して空気通路に供給するようになっている。
【0003】
この燃焼炉を運転する際、下段の外筒と内筒に夫々対向して設けられた投入口を開き、1次燃焼室内に被燃焼物を投入し、1次燃焼室の底に設けられた受け網の上に被燃焼物を配置する。続いて、下段の外筒及び内筒を貫通して設置された着火装置で被燃焼物に着火すると共に、送風機を起動して、上段の空気通路に燃焼空気を供給する。上段の空気通路に供給された燃焼空気の一部で下向きの旋回流を形成して下段の空気通路に流入させ、下段の空気通路の底面に達して上向きの旋回流を形成し、下段の内筒の上端から1次燃焼室内に燃焼空気を流入させるようにしている。1次燃焼室内では、外周側に下向きの旋回流を形成し、底面上に配置された被燃焼物と混合して被燃焼物の燃焼を促進する。被燃焼物が燃焼するに伴い、1次燃焼室内の内周部側を上向きの燃焼ガスの旋回流を形成し、下段の内筒の上端から上段の内筒の下端に流して2次燃焼室内に流入させる。2次燃焼室内では、上段及び下段の空気通路から内筒の下端に流入する燃焼空気と、上段の空気通路から内筒の上端に流入する燃焼空気により、燃焼ガスに含まれる未燃焼成分の燃焼を促進させる。燃焼が進んだ燃焼ガスは、2次燃焼室の上方の排気塔から燃焼炉の外部に排出するようにしている。
【0004】
このように、1次燃焼室内に、外周側の下降旋回流と内周側の上昇旋回流を生成すると共に、2次燃焼室内に、上部外周側の下降旋回流と下部内外周側及び内周側の上昇旋回流を形成することにより、大量の燃焼空気を供給し、約1800℃の燃焼温度を生成して、固形物である被燃焼物を完全燃焼させるようにしている。
【特許文献1】特許第3081612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の燃焼炉は、外筒及び内筒を貫通して着火装置や温度計測装置等の部品が配置されているので、空気通路の空気流に乱れが生じ、安定した旋回流を形成し難い。したがって、下段の空気通路に形成すべき外周側の下降旋回流及び外周側の上昇旋回流や、下段の空気通路に形成すべき上昇旋回流を適切に形成し難い。その結果、1次燃焼室及び2次燃焼室に適切な旋回流を形成できず、燃焼空気の供給量が不十分となり、不完全燃焼が生じる不都合がある。そのため、現実には、1800℃の高温の燃焼温度を得るのは不可能である。
【0006】
また、空気通路や燃焼室に適切な旋回流を形成し難いので燃焼空気の滞留部分が生じ、滞留部分に燃焼室からの熱が蓄積し、外筒や内筒の一部が異常過熱して損傷に至る恐れがある。
【0007】
更に、下部の空気通路に下降旋回流と上昇旋回流を形成し、1次燃焼室内に下降旋回流と上昇旋回流とを形成するので、燃焼空気や燃焼ガスの圧力損失が大きく、送風機の負荷が大きいという問題がある。また、適切な流量の燃焼空気を供給しようとすると、空気通路及び燃焼室内の圧力の大幅な増大を招き、構造の耐圧化が必要となり、製造コストが嵩むという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、燃焼空気や燃焼ガスの流れを適切に形成できて圧力損失が小さく、大幅な耐圧化をすることなく、固形の被燃焼物を完全燃焼させて高い燃焼温度が得られる燃焼炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の燃焼炉は、
円筒状の燃焼室と、
上記燃焼室の周りを取り囲むと共に、上記燃焼室に供給すべき燃焼空気が上部に接線方向に供給される円筒環状の空気室と、
上記燃焼室と空気室を隔てる壁の下部に周方向に複数個配置され、上記空気室内の燃焼空気を燃焼室に供給する空気供給部とを有する燃焼部を上下方向に複数段備え、
上下方向に隣り合う燃焼室が互いに連通されていると共に、最下段の燃焼室の下部に固形の被燃焼物を連続供給する連続供給器が接続されている一方、最上段の燃焼室の上部に燃焼ガスを排出する排気部が接続されていることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、各段の燃焼部において、空気室の上部に接線方向に供給された燃焼空気が、旋回流となって空気室内を下方に流れ、空気供給部によって空気室の下部から燃焼室に供給される。空気室の燃焼空気の旋回流が燃焼室に供給されることにより、燃焼室内に旋回流が形成される。最下段の燃焼室では、連続供給器によって下部に供給された固形の被燃焼物が、旋回流によって十分な流量の燃焼空気が供給され、燃焼が促進される。被燃焼物の未燃焼成分を含む燃焼ガスは、旋回流によって最下段の燃焼室から上段の燃焼室に流入する。上段の燃焼室では、下部に空気供給部によって供給される燃焼空気により、旋回流が形成され、燃焼ガスの未燃焼成分の燃焼が促進される。こうして被燃焼物の燃焼成分が複数段の燃焼室により完全燃焼した後、燃焼ガスが最上段の排気部から排出される。
【0011】
所定段の燃焼部に、例えば着火装置や温度計測装置等の部品を設置する場合、これらの部品が空気室を横切るように配置されることにより、空気室に形成する旋回流に乱れが生じる。ここで、上記空気供給部は、空気室と燃焼室を隔てる壁の下部に周方向に複数個配置されているので、空気室内の旋回流に乱れが生じても、空気供給部によって周方向において均一に燃焼空気を燃焼室内に供給して、燃焼室内に安定して旋回流を形成することができる。このように、空気供給部による整流作用により、着火装置等の部品の影響を受けることなく、燃焼室内に旋回流を適切に安定して形成することができる。これにより、燃焼室内に燃焼に必要な量の燃焼空気を安定して効率よく送ることができる。このような燃焼空気の効率的な供給を複数段の燃焼室で行うことにより、固形の被燃焼物を完全燃焼させて、燃焼温度を十分に上昇させることができる。また、空気供給部による整流作用により、空気室や燃焼室内に燃焼空気や燃焼ガスの滞留部分が生じる不都合を防止して、燃焼炉の損傷を防止することができる。
【0012】
また、各段の燃焼部において、空気室には下降旋回流のみが形成され、燃焼室には上昇旋回流のみが形成されるので、燃焼空気や燃焼ガスの流れの経路が従来よりも短く、圧力損失が小さい。したがって、空気室に供給する送風機の負荷を小さくすることができる。また、空気室及び燃焼室内の圧力を大幅に上昇することなく適切な流量の燃焼空気を供給できるので、従来のような構造の耐圧化が不要となり、製造コストの増大を防止することができる。
【0013】
また、燃焼室の外周側に空気室を配置しているので、空気室を流れる燃焼空気によって燃焼室の断熱を行うことができる。
【0014】
また、最下段の燃焼室に、連続供給器によって被燃焼物を連続的に供給するので、固形の被燃焼物を安定して燃焼させて燃焼ガスを安定して生成することができる。特に、被燃焼物が、着火が比較的困難な植物性のものである場合、従来のようにバッチ式の供給を行うよりも、燃焼効率を大幅に向上することができる。
【0015】
本発明において、上下方向とは、円筒状の燃焼室の中心軸が延在する方向をいい、便宜上、連続供給器が設けられた側を下側と定義し、排気部が設けられた側を上側と定義している。したがって、上下方向は、重力が作用する方向とは関連性が無く、燃焼室及び空気室は、中心軸を鉛直方向に向けて配置されてもよく、中心軸を鉛直方向に対して傾斜して配置されてもよく、或いは、中心軸を水平方向に向けて配置されてもよい。
【0016】
一実施形態の燃焼炉は、上記空気供給部は、上記燃焼室と空気室を隔てる壁に形成された貫通穴である。
【0017】
上記実施形態によれば、簡易な構成により、空気室から燃焼室に燃焼空気を整流して供給し、燃焼室内に旋回流を形成することができる。なお、上記空気供給部は、周方向に並ぶ複数の貫通穴の列を、上下方向に複数列配置して形成してもよい。特に、最下段の燃焼部の空気供給部を、複数の貫通穴の列を上下方向に複数列配置して形成することにより、被燃焼物や灰による貫通穴の閉塞の影響を低減できる。
【0018】
一実施形態の燃焼炉は、上記貫通穴の形状が、円形状、スリット形状又は楕円形状である。
【0019】
上記実施形態によれば、燃焼室に供給すべき燃焼空気の流量に応じて貫通穴を適切な形状に設定することにより、燃焼室内に旋回流を効果的に形成できる。また、最下段に蓄積すべき被燃焼物の量や燃焼に伴って生じる灰の量に応じて貫通穴を適切な形状に設定することにより、被燃焼物又は灰による閉塞の影響を低減できる。特に、最下段の燃焼部の貫通穴の形状をスリット形状にすることにより、被燃焼物や灰により貫通穴が完全に塞がれる不都合を効果的に防止できる。
【0020】
一実施形態の燃焼炉は、上記貫通穴は、上記燃焼室の径方向に対して傾斜した方向に貫通している。
【0021】
上記実施形態によれば、空気室から燃焼室に、傾斜室の径方向に対して傾斜した方向に燃焼空気を供給することができるので、燃焼室内に旋回流を効果的に形成することができる。なお、上記貫通穴は、燃焼室と空気室を隔てる壁の接線に対して傾斜して形成されてもよく、或いは、燃焼室の中心軸と直角をなす平面に対して傾斜して形成されてもよく、また、燃焼室と空気室を隔てる壁の接線と、燃焼室の中心軸と直角をなす平面との両方に対して傾斜して形成されていてもよい。
【0022】
一実施形態の燃焼炉は、上記貫通穴の貫通方向は、上記燃焼室と空気室を隔てる壁の接線に対して30〜45°の角度で傾斜している。
【0023】
上記実施形態によれば、空気室から燃焼室に燃焼空気を効果的に整流して供給し、燃焼室内に旋回流を効果的に形成することができる。
【0024】
一実施形態の燃焼炉は、上記貫通穴の貫通方向は、上記燃焼室の中心軸と直角をなす平面に対して上方に1〜5°の角度で傾斜している。
【0025】
上記実施形態によれば、空気室から燃焼室に燃焼空気を効果的に整流して供給し、燃焼室内に上向きの旋回流を効果的に形成することができる。
【0026】
一実施形態の燃焼炉は、上記各段の燃焼部の空気室に燃焼空気を供給する送風機を備える。
【0027】
上記実施形態によれば、各段の燃焼部の空気室を通して燃焼室に十分な量の新鮮な燃焼空気を供給でき、燃焼効率を向上できる。なお、各段の空気室に1つの送風機で燃焼空気を供給してもよく、或いは、各段の空気室に複数の送風機で燃焼空気を夫々供給してもよい。この場合、複数の送風機の吹き出し量を夫々制御することにより、各段の燃焼部における燃焼状態をきめ細かく制御することができ、被燃焼物の燃焼効率の向上と完全燃焼を行うことができる。
【0028】
一実施形態の燃焼炉は、上記排気部から、燃焼ガスを利用する熱機器に向けて燃焼ガスを誘引する誘引送風機を備える。
【0029】
上記実施形態によれば、誘引送風機によって排気部から熱機器に向けて燃焼ガスを誘引することにより、空気室及び燃焼室への燃焼空気の供給負荷を削減できる。また、燃焼炉内の圧力損失が比較的大きくても、燃焼ガスを排気部から誘引することにより、燃焼炉内の平均圧力を低減して耐圧対策を軽減し、製造コストの増大を防止することができる。更に、燃焼炉内の平均圧力を低減することにより、燃焼室から連続供給器内に熱が逆流して連続供給器内の被燃焼物が燃焼する不都合を防止できる。なお、誘引機は、燃焼炉の排気部に直接接続してもよく、或いは、排気部に接続された熱機器や防塵装置を介して接続してもよい。ここで、熱機器とは、燃焼炉の燃焼ガスの熱エネルギーを利用して動作するものであり、例えば温水器、温風器及び蒸気ボイラ等の熱交換器やタービン等が含まれる。
【0030】
一実施形態の燃焼炉は、上記連続供給器は、スクリューコンベヤを含んで形成されている。
【0031】
上記実施形態によれば、連続供給器にスクリューコンベヤを用いることにより、固形の被燃焼物の連続的な供給が可能となる。また、スクリューコンベヤの逆流防止作用により、被燃焼物の供給先である燃焼室内の圧力が上昇しても、被燃焼物の逆流を防止できる。
【0032】
一実施形態の燃焼炉は、上記各段の空気室へ供給する燃焼空気の供給量と上記連続供給器による被燃焼物の供給量とを所定の空燃比になるように制御する空燃比制御部を備える。
【0033】
上記実施形態によれば、空燃比制御部により、上記各段の空気室へ供給する燃焼空気の供給量と、上記連続供給器による被燃焼物の供給量とが適切に制御されて、被燃焼物を効率的に燃焼させることができる。例えば、上記空燃比制御部は、被燃焼物の種類及び温度に基づいて、上記空気室に燃焼空気を供給する例えば送風機の回転数と、上記連続供給器に含まれる例えばスクリューコンベヤのスクリュー回転数とを制御するように構成することができる。ここで、空燃比とは、燃焼炉に供給される被燃焼物の質量に対する燃焼空気の質量の比をいう。
【0034】
一実施形態の燃焼炉は、上記被燃焼物は、木質ペレット、RPFその他の有機性可燃物の固化成形物、又は、木屑、プラスチック屑、ゴム屑その他の有機性可燃物の破砕片である。
【0035】
上記実施形態によれば、従来よりも高い燃焼効率を有する燃焼炉により、被燃焼物としての木質ペレット、RPFその他の有機性可燃物の固化成形物、又は、木屑、プラスチック屑、ゴム屑その他の有機性可燃物の破砕片を高い効率で燃焼させることができる。また、被燃焼物として有機性可燃物を用いることができるので、化石燃料を用いる燃焼炉と比較して二酸化炭素排出量を削減でき、しかも、燃料費を削減できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の燃焼炉によれば、各段の燃焼部において、空気室内を旋回して下方に流れる燃焼空気を、周方向に配置された複数の空気供給部により燃焼室へ供給することにより、着火装置等の部品による空気流の乱れの影響を受けることなく、燃焼室内に適切な上昇旋回流を形成でき、十分な量の燃焼空気を供給して固形の被燃焼物を完全燃焼させることができる。したがって、化石燃料を用いた燃焼炉と比較して遜色の無い性能を有し、しかも、二酸化炭素の排出による環境への影響が少なく、ランニングコストの安価な燃焼炉が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の第1実施形態としての燃焼炉を示す断面図である。この燃焼炉1は、固形の被燃焼物であって有機性可燃物の破砕片である木屑チップを燃焼し、ボイラ等の熱機器の熱源として使用されるものである。この燃焼炉1は、被燃焼物を連続的に供給する連続供給器2と、補助燃焼空気の旋回流を形成する下部予熱部3と、被燃焼物の1次燃焼を行う1次燃焼部4と、被燃焼物の2次燃焼を行う2次燃焼部5と、燃焼ガスを排気する排気部としての排気筒6とで大略構成されている。
【0039】
上記連続供給器2は、図示しないホッパから木屑チップ8を概ね水平方向に搬送する第1スクリューコンベヤ21と、この第1スクリューコンベヤ21の終端に連なり、1次燃焼部4の燃焼室内に木屑チップ8を概ね鉛直方向に供給する第2スクリューコンベヤ22とを有する。
【0040】
第1スクリューコンベヤ21及び第2スクリューコンベヤ22は、筒状のケーシング21a,22a内に、ケーシング21a,22aと同軸に配置されて回転駆動される回転軸21b,22bと、この回転軸21b,22bの周りに固定されたスクリュー羽根21c,22cとが収容されて形成されている。第1スクリューコンベヤ21の途中には、図示しない給気管によって燃焼空気が供給されるようになっている。
【0041】
下部予熱部3は、内部に下部予熱室を形成する概ね円筒形状のケーシング31と、ケーシング31の外周面に設けられて接線方向に補助燃焼空気を導入する補助空気導入口31aを有する。ケーシング31の中央に、第2スクリューコンベヤ22が同軸に貫通して配置されている。ケーシング31の上端面には円形の開口が設けられており、この開口を覆うように、中央部が開口した円錐台形状の保持部33が設置されている。保持部の開口33aから第2スクリューコンベヤ22の上端部が突出しており、第2スクリューコンベヤ22によって導かれた被燃焼物8が上端の被燃焼物供給口23から排出されるようになっている。第2スクリューコンベヤ22の先端には、回転軸22bの先端部が被燃焼物供給口23から突出し、この回転軸22bの先端に攪拌棒24が直角に固定されている。第2スクリューコンベヤ22の動作に伴い、攪拌棒24が旋回駆動されて、被燃焼物供給口23から排出される被燃焼物を1次燃焼室47内に拡散させるようにしている。保持部の開口33aには、第2スクリューコンベヤ22の外周面を取り囲んで下方に延びる筒部33bが連なっている。第2スクリューコンベヤ22の外周面と、筒部33bの内周面との間に、補助燃焼空気の吹出し通路34が形成されている。吹出し通路34の上端は、保持部の開口33aに沿って形成される環状の吹出口34aになっている。
【0042】
下部予熱部3は、補助燃焼空気が空気導入口31aからケーシング31の円筒面の接線方向に導入されることにより、ケーシング31内に補助燃焼空気の旋回流を形成するように形成されている。このケーシング31内の燃焼空気を、吹出し通路34を通して1次燃焼室47内に旋回状に吹き出すようになっている。
【0043】
1次燃焼部4は、下部予熱部3のケーシング31と略同一の径を有する第1外筒41と、この第1外筒41の内側に配置された第1内筒42を有する。第1外筒41の上部には、接線方向に1次燃焼空気を導入する1次空気導入口41aが設けられている。第1外筒41の下端に形成されたフランジ43が、下部予熱部3の上端部に固定されている。一方、第1外筒41の上端には、環状の第1仕切板44が固定されている。第1内筒42の下端は、下部予熱部3のケーシング31の上端面に固定されている。一方、第1内筒42の上端は、第1仕切板44の下側面に固定されている。第1内筒42の下部には、後に詳述する空気供給部としての複数の傾斜貫通穴42a,42a,・・・が、周方向に等間隔をおいて形成されている。
【0044】
第1内筒42の外周面と、第1外筒41の内周面との間に、円筒環状の1次空気室46が形成されている。この1次空気室46に、1次空気導入口41aから接線方向に1次燃焼空気が導入されることにより、上部から下部に向かう1次燃焼空気の旋回流が形成されるようになっている。なお、第1内筒42の外周面に、板材を螺旋状に巻き回して形成された螺旋突起を固定して、1次燃焼空気の旋回流の形成を促進するようにしてもよい。
【0045】
第1内筒42の内側には、円筒状の1次燃焼室47が形成されている。1次燃焼室47の底に、上記保持部33が臨んでいると共に、被燃焼物を供給する被燃焼物供給口23と、補助燃焼空気を吹き出す吹出口34aとが開口している。
【0046】
図2Aは、1次燃焼部4の下部を、第1外筒41及び第1内筒42の中心軸の直角方向に切断した様子を示す断面図である。図2Aに示すように、1次燃焼室47と1次空気室46とを隔てる第1内筒42に、空気供給部としての円形の傾斜貫通穴42aが、周方向に等間隔をおいて複数個形成されている。図2Bは、図2A中の円Aで囲まれた部分を取り出して示した部分拡大図である。図2Bに示すように、傾斜貫通穴42aは、第1内筒42の接線に対して所定の傾斜角度θ1をなして形成されている。この傾斜角度θ1は、好ましくは、30〜45°に設定されている。この傾斜貫通穴42aは、更に、水平方向に対して傾斜している。図2Cは、図1中の円Bで囲まれた部分を取り出して示した部分拡大図である。図2Cに示すように、傾斜貫通穴42aは、水平面(すなわち、第1内筒42の中心軸と直角をなす平面)に対して上向きに所定の傾斜角度θ2をなして形成されている。この傾斜角度θ2は、好ましくは、1〜5°に設定されている。これらの複数の傾斜貫通穴42aにより、1次空気室46内を矢印F11で示すように旋回して流れる1次燃焼空気を、矢印F1,F1,・・・で示すように、1次燃焼室47の径方向に対して傾斜した方向に吹き出して、1次燃焼室47内に供給するようにしている。傾斜貫通穴42aの個数は、被燃焼物の種類や燃焼温度に応じて適宜設定される。
【0047】
本実施形態では、空気供給部としての傾斜貫通穴42aを、第1内筒42の接線方向に対して傾斜させると共に、水平方向に対して傾斜させたが、第1内筒42の接線方向に対してのみ傾斜させてもよく、或いは、水平方向に対してのみ傾斜させてもよい。また、傾斜貫通穴42aによって空気供給部を構成したが、1次空気室46の空気を1次燃焼室47の径方向に対して傾斜する方向に1次燃焼室47内に供給するのであれば、ノズル等の部品で空気供給部を構成してもよい。
【0048】
1次燃焼部4には、燃焼炉の起動時に燃料に着火する着火部7が設けられている。着火部7は、第1外筒41及び第1内筒42を貫通して固定された角筒状のケーシング71と、ケーシング71内に配置された燃料噴射ノズル72と、ケーシング71内に配置されたスパークプラグ73とを有する。燃料噴射ノズル72は、着火燃料としての灯油が2〜3kg/cmの圧力で供給され、先端に設けられた噴口から噴射するようになっている。スパークプラグ73は、数千〜1万ボルトの電圧が印加され、先端の電極とケーシング71との間に電気放電によって火花を生成して、噴霧状の灯油に着火するようになっている。なお、スパークプラグ73は、ケーシング71を接地電極としないで、中心電極と接地電極との2つの電極を有するものを用いてもよい。ケーシング71の第1外筒41よりも外側の部分には、着火時の燃焼空気を供給する給気管74が接続されている。着火部7は、第1内筒42の中心に向かうにつれて下方に傾斜して固定されており、燃料噴射ノズル72の噴口とスパークプラグ73の電極とが、保持部33上の燃料に向かうように配置されている。
【0049】
また、1次燃焼部4の下部には、図示しないメンテナンス開口が設けられている。このメンテナンス開口は、第1外筒41と第1内筒42とに径方向の同一位置に対向して設けられた矩形の貫通穴で形成されている。このメンテナンス開口は、第1外筒41の貫通穴に嵌る外蓋と、第1内筒42の貫通穴に嵌る内蓋とを有する2重構造の閉鎖蓋で閉じるようになっており、閉塞蓋の外蓋と内蓋との間には、1次燃焼空気の旋回流が流通可能な空気通路が設けられている。燃焼炉1の運転後にメンテナンス開口を開いて、燃料に含まれていた金属屑や燃焼後に残留した灰を除去するようになっている。
【0050】
2次燃焼部5は、第2外筒51と、この第2外筒51の内側に配置された第2内筒52を有する。第2外筒51の上部には、接線方向に2次燃焼空気を導入する2次空気導入口51aが設けられている。第2外筒51の下端には鍔状のフランジ51bが設けられており、フランジ51bが第1仕切板44に固定されている。第2外筒51の上端には、環状の第2仕切板54が固定されている。第2内筒52の下端は、上記第1仕切板44の中央に形成された円形の開口の縁部に固定されている。一方、第2内筒52の上端は、第2仕切板54の下側面に固定されている。
【0051】
第2内筒52の外周面と、第2外筒51の内周面との間に、円筒環状の2次空気室56が形成されている。この2次空気室56に、2次空気導入口51aから接線方向に2次燃焼空気が導入されることにより、上部から下部に向かう2次燃焼空気の旋回流が形成されるようになっている。なお、第2内筒52の外周面に、板材を螺旋状に巻き回して形成された螺旋突起を固定して、2次燃焼空気の旋回流の形成を促進するようにしてもよい。
【0052】
第2内筒52の内側には、円筒状の2次燃焼室57が形成されている。2次燃焼室57の下端は、1次燃焼室47の上端に連なっている。2次燃焼室57の上端は、第2内筒52の径よりも小さい径の排気筒6の内部に連なっている。
【0053】
第2内筒52の下部には、第1内筒42と同様に、空気供給部としての円形の傾斜貫通穴52aが複数個形成されている。第2内筒52の傾斜貫通穴52aは、第1内筒42の傾斜貫通穴42aと同様に、周方向に等間隔をおいて形成されており、第2内筒52の接線方向に対して所定の傾斜角度θ1をなして形成されていると共に、水平方向に対して上向きに所定の傾斜角度θ2をなして形成されている。上記傾斜角度θ1及びθ2は、第1内筒42の傾斜貫通穴42aと同様の角度に設定されている。これらの複数の傾斜貫通穴52a,52a,・・・により、2次空気室56内を旋回して流れる2次燃焼空気を、2次燃焼室57の径方向に対して傾斜した方向に吹き出して、2次燃焼室57内に供給するようにしている。なお、空気供給部としての第2内筒52の傾斜貫通穴52aは、第2内筒52の接線方向に対してのみ傾斜させてもよく、また、空気供給部をノズル等の部品で構成してもよい。
【0054】
2次燃焼部5の第2外筒51は、1次燃焼部4の第1外筒41よりも軸線方向寸法及び直径のいずれも小さく形成されている。また、2次燃焼部5の第2内筒52は、1次燃焼部4の第1内筒42よりも軸線方向寸法及び直径のいずれも小さく形成されている。
【0055】
排気筒6は、2次燃焼部5の第2内筒52よりも小径の筒状であり、下端が第2仕切板54の中央に形成された開口の縁に固定されている。
【0056】
本実施形態の燃焼炉1は、以下のように動作する。まず、連続供給器2を起動して、図示しないホッパから所定量の木屑チップ8を排出し、この木屑チップ8を第1スクリューコンベヤ21と第2スクリューコンベヤ22を通して1次燃焼室47内に搬送する。1次燃焼室47内に搬送された木屑チップ8は、被燃焼物供給口23から排出され、第2スクリューコンベヤ22の回転軸22bを駆動するモータMで旋回駆動される攪拌棒24により、1次燃焼室47内に拡散される。これにより、木屑チップ8が保持部33上に均一に堆積される。1次燃焼室47内に所定量の木屑チップ8を供給すると、着火部7を動作させ、燃料噴射ノズル72から木屑チップ8に向けて灯油を噴射すると共にスパークプラグ73に電圧を印加し、灯油に点火して木屑チップ8に着火させる。また、図示しない送風機を起動して、下部予熱部3の補助空気導入口31aと、1次燃焼部4の1次空気導入口41aと、2次燃焼部5の2次空気導入口51aに燃焼空気を供給する。また、上記送風機から第1スクリューコンベヤ21の給気管に燃焼空気を供給する。
【0057】
下部予熱部3では、補助空気導入口31aからケーシング31の外周面の接線方向に補助燃焼空気を導入し(矢印F0)、ケーシング31内に補助燃焼空気の旋回流を生成する。この補助燃焼空気の旋回流を、第2スクリューコンベヤ22の先端部の外周面と保持部33の筒部33bの内周面との間の吹出し通路34に導く(矢印F01)。吹出し通路34を通った補助燃焼空気の旋回流は、吹出口34aから1次燃焼室47内に吹き出される。
【0058】
図3Aは、1次燃焼部4の1次空気室46における1次燃焼空気の流れを示した模式図である。図3Aに示すように、1次空気導入口41aから第1外筒41の接線方向に1次燃焼空気を導入することにより(矢印F10)、1次空気室46内に、上部から下部に向かう1次燃焼空気の旋回流(矢印F11)が生成される。1次空気室46内を通る1次燃焼空気は、第1内筒42を介して1次燃焼室47の熱を受けて予熱される。1次燃焼空気を1次空気室46内に旋回状に流すことにより、1次空気室46内の滞在時間を確保して十分に予熱することができる。
【0059】
図3Bは、1次燃焼室47における燃焼ガスの流れを示した模式図である。図3Bに示すように、予熱されて1次空気室46の下部に達した1次燃焼空気は、複数の傾斜貫通穴42aを通して、矢印F1,F1,・・・で示すように、1次燃焼室47の径方向に対して傾斜した方向に吹き出されて、1次燃焼室47内に供給される。1次燃焼室47内に1次燃焼室47の径方向と傾斜する方向に吹き出された第1燃焼空気により、木屑チップ8が燃焼すると共に、1次燃焼室47内に燃焼ガスの上昇旋回流(矢印F12)が形成される。また、1次燃焼室47内に、複数の傾斜貫通穴42aによる整流作用により、均一に第1燃焼空気が供給される。これらにより、1次燃焼室47内に十分な流量の燃焼空気が供給され、その結果、1次燃焼室47の下部で木屑チップ8の熱分解反応が均一に進み、燃焼が安定かつ効率的に促進される。
【0060】
更に、1次燃焼室47には、複数の傾斜貫通穴42aからの第1燃焼空気に加えて、底部の吹出口34aから補助燃焼空気が旋回状に供給されるので、木屑チップ8の燃焼が更に促進され、1次燃焼室47内の燃焼ガスの上昇旋回流が更に促進される。更に、1次燃焼室47には、第1及び第2スクリューコンベヤ21,22を介して底部の供給口23から燃焼空気が供給されるので、1次燃焼室47の燃焼空気量を更に増大することができる。また、給気管に補助燃焼空気を導入することにより、燃焼に伴って1次燃焼室47内の圧力が上昇しても、スクリューコンベヤ21,22への燃焼ガスの流入や、木屑チップ8の逆流等の不都合を防止できる。
【0061】
このように、1次燃焼室47において、下部の傾斜貫通穴42aから傾斜方向に供給される1次燃焼空気と、底部の吹出口34aから旋回状に供給される補助燃焼空気と、底部の被燃焼物供給口23から供給される燃焼空気により、1次燃焼室47内に安定した上昇旋回流を形成し、燃焼空気の十分な流量が確保され、木屑チップ8を高度に燃焼することができる。たとえば、木屑チップ8を燃焼する場合、600〜800℃の燃焼温度を安定して保持することができる。1次燃焼室47内に形成される上昇旋回流には、木屑チップ8の燃焼成分に限られず、木屑チップ8の未燃焼成分や、木屑チップ8の微粒子も含まれる。
【0062】
1次燃焼室56内で形成された燃焼ガスの上昇旋回流は、2次燃焼部5の2次燃焼室57に流入する。
【0063】
2次燃焼部5では、2次空気導入口51aから第2外筒51の接線方向に2次燃焼空気を導入することにより(図1の矢印F20)、1次空気室46と同様に、2次空気室56内に、上部から下部に向かう2次燃焼空気の旋回流を生成する。2次空気室56内を通る2次燃焼空気は、第2内筒52を介して2次燃焼室57の熱を受けて予熱される。1次燃焼部4と同様に、2次燃焼空気を2次空気室56内に旋回状に流すことにより、2次空気室56内の滞在時間を確保して十分に予熱することができる。
【0064】
予熱されて2次空気室56の下部に達した2次燃焼空気は、複数の傾斜貫通穴52aを通して、矢印F1,F1,・・・で示すように、2次燃焼室57の径方向に対して傾斜した方向に吹き出されて、2次燃焼室57内に供給される。2次燃焼室57内に2次燃焼室57の径方向と傾斜する方向に吹き出された第2燃焼空気により、1次燃焼室56からの燃焼ガスに含まれる未燃焼成分が燃焼すると共に、2次燃焼室57内に燃焼ガスの上昇旋回流が形成される。また、2次燃焼室57内に、複数の傾斜貫通穴52aによる整流作用により、均一に第2燃焼空気が供給される。これらにより、2次燃焼室57内に十分な流量の燃焼空気が供給され、その結果、高温の燃焼温度が保持されて、燃焼ガスの未燃焼成分が効果的に燃焼する。このようにして、1次及び2次燃焼部4,5での燃焼を経ることにより、木屑チップ8を完全燃焼させることができる。
【0065】
2次燃焼室57で可燃成分の殆どが燃焼した燃焼ガスは、排気筒6を通って外部に排出される。
【0066】
本実施形態の燃焼炉によれば、1次燃焼部4において、1次空気室46に第1燃焼空気の下降旋回流を形成し、1次空気室46の下部から1次燃焼室47に、空気供給部としての傾斜貫通穴42aによって径と傾斜する方向に第1燃焼空気を送るので、1次空気室46を横切る着火部7のケーシング71やメンテナンス開口の閉鎖蓋により第1燃焼空気の流れが乱れても、1次燃焼室47に、安定して均一に傾斜方向に第1燃焼空気を送ることができる。したがって、1次燃焼室47に、安定して上昇旋回流を形成して、十分な流量の第1燃焼空気を供給することができ、木屑チップ8の燃焼を促進することができる。更に、2次燃焼部において、2次空気室56に第2燃焼空気の下降旋回流を形成し、2次空気室56の下部から2次燃焼室57に、空気供給部としての傾斜貫通穴52aによって径と傾斜する方向に第2燃焼空気を送るので、2次空気室56を横切る部品により第2燃焼空気の流れが乱れても、2次燃焼室57に、安定して均一に傾斜方向に第2燃焼空気を送ることができる。したがって、2次燃焼室57に、安定して上昇旋回流を形成して、十分な流量の第2燃焼空気を供給することができ、木屑チップ8の完全燃焼を行うことができる。
【0067】
また、空気供給部としての傾斜貫通穴42a,52aにより、空気室46,56から燃焼室47,57に周方向に均一に燃焼空気を送ることができるので、空気室46,56及び燃焼室47,57内に燃焼空気や燃焼ガスの滞留部分が生じる不都合を防止できる。したがって、燃焼空気や燃焼ガスの滞留に起因して熱が蓄積され、燃焼炉が損傷する不都合を防止できる。
【0068】
また、各段の燃焼部4,5において、空気室46,56には下降旋回流のみが形成され、燃焼室47,57には上昇旋回流のみが形成されるので、流れの経路が従来よりも短く、圧力損失が小さい。したがって、空気室46,56に供給する送風機の負荷を小さくすることができる。また、空気室46,56及び燃焼室47,57内の圧力を大幅に上昇することなく適切な流量の燃焼空気を供給することができるので、従来のような構造の耐圧化が不要となり、製造コストの増大を防止することができる。
【0069】
また、各段の燃焼部4,5において、空気室46,56に下降旋回流を生成して十分な流量の燃焼空気の予熱を行い、空気供給部としての傾斜貫通穴42a,52aにより、燃焼室47,57に周方向に均一に燃焼空気を送って上昇旋回流を生成し、燃焼に必要な燃焼空気を安定して供給することにより、比較的燃焼し難い固形燃料を完全燃焼させることができる。特に、木屑チップ8のような植物性の固形燃料に含まれるリグニン等の高分子成分についても、効果的に熱分解及び酸化することができる。その結果、灰や煤煙の発生量を大幅に削減することができる。
【0070】
また、各燃焼部4,5において、燃焼空気や燃焼ガスを旋回状に流すことにより、寸法を増大することなく燃焼空気や燃焼ガスの滞留時間を延長できるので、燃焼炉の大型化をすることなく、燃焼空気の予熱効率や燃料の燃焼効率を向上することができる。すなわち、小型でありながら、固形燃料を完全燃焼させることができ、しかも、煤煙排出量の少ない燃焼炉を実現することができる。
【0071】
本実施形態において、被燃焼物として木質チップ8を用いたが、木質チップ8以外に、木屑、プラスチック屑、ゴム屑又はRPF等の固形物を燃料として用いることができる。このように、化石燃料に代えて、従来は廃棄物として扱われていた種々の固形物を被燃焼物として用いて、資源の有効利用と燃料コストの削減を図ることができる。特に、有機物を主体とするバイオマス燃料を用いることにより、二酸化炭素の排出による環境への影響を抑制することができる。
【0072】
本実施形態の空気供給部は、第1及び第2内筒42,52の接線方向及び水平方向に対して傾斜させた円形の傾斜貫通穴であったが、貫通方向を接線方向及び水平方向のいずれにも傾斜させずに、径方向を向いた円形の貫通穴で空気供給部を形成してもよい。第1及び第2内筒42,52の周方向に複数個の空気供給部を形成すれば、第1及び第2空気室46,47の燃焼空気を均一に第1及び第2燃焼室47,57に供給し、第1及び第2燃焼室47,57に旋回流を形成することができる。また、空気供給部をノズル等の部品で構成した場合、燃焼空気を第1及び第2燃焼室47,57の径方向に供給してもよい。
【0073】
また、空気供給部としての貫通穴は、円形以外の他の形状であってもよい。例えば、図4Aの斜視図に示すように、第1内筒42の下部に、空気供給部として、中心軸と平行に上下に延びるスリット形状の貫通穴142aを形成してもよい。この空気供給部によれば、スリット形状の貫通穴142aを互いに平行に周方向に複数個配列することにより、被燃焼物としての木屑チップ8の供給量が比較的多い場合においても、貫通穴142aが完全に閉塞する不都合を防止できる。また、灰による貫通穴142aの閉塞を防止できる。また、貫通穴142aに閉塞部が生じても、燃焼空気の流量の大幅な減少を防止できる。
【0074】
更に、空気供給部は、図4Bの部分展開図に示すように、第1内筒42の中心軸に対して傾斜したスリット形状の貫通穴142bでもよい。更に、図4Cの部分展開図に示すように、第1内筒42の周方向に並ぶ複数の空気供給部としての円形の貫通穴142c,142c,・・・の列を、上下方向に複数列配置してもよい。更に、図4Dの部分展開図に示すように、第1内筒42の周方向に並ぶ複数の空気供給部としての横スリット形状の貫通穴142d,142d,・・・の列を、上下方向に複数列配置してもよい。或いは、図4Eの部分展開図に示すように、空気供給部は、楕円の長径方向の両端を尖らせたようなアーモンド形状の貫通穴142eでもよい。このアーモンド形状の貫通穴142eは、図4Eのように長径を上下方向に向けて形成する以外に、長径を上下方向に対して傾斜させてもよく、或いは、長径を水平方向に向けて形成してもよい。更に、複数のアーモンド形状の貫通穴142eの周方向列を、上下に複数列形成してもよい。
【0075】
また、上記貫通穴142a,142b,142c,142d,142eは、貫通方向を、第1内筒42の接線に対して傾斜させてもよく、或いは、第1内筒42の中心軸と直角をなす平面に対して傾斜させてもよく、また、第1内筒42の接線と、第1内筒42の中心軸と直角をなす平面との両方に対して傾斜させてもよい。
【0076】
また、第2内筒52に、空気供給部として、上記貫通穴142a,142b,142c,142d,142eと同様の貫通穴を形成してもよい。
【0077】
また、空気供給部の形状及び個数を、1次及び2次燃焼部4,5の間で異ならせてもよい。
【0078】
また、本実施形態の燃焼炉1は1次燃焼部4と2次燃焼部5の2段の燃焼部を設けたが、被燃焼物の種類に応じて、燃焼炉の燃焼部は3段以上であってもよい。
【0079】
図5は、本発明の第2実施形態の温水ボイラ100を示す図である。本実施形態の温水ボイラ100は、上記実施形態の燃焼炉1を熱源に用いて構成している。本実施形態において、既に述べた実施形態と同一の部分には同一の参照番号を引用して詳細な説明を省略する。この温水ボイラ100は、ホッパ102と、燃焼炉1と、ボイラ本体103と、サイクロン集塵装置104と、誘引送風機F2と、バグフィルタ集塵装置105を順次接続して構成している。
【0080】
ホッパ102は被燃焼物を貯蔵するものであり、下端に、ホッパ102内の被燃焼物を第1スクリューコンベヤ21に供給する供給バルブVが設けられている。ホッパ102内に投入する被燃焼物としては、木屑チップのほか、プラスチック屑及びゴム屑等の有機性可燃物の破砕片や、或いは、木質ペレット及びRPF等の有機性可燃物の固化成形物を選択することができる。供給バルブVはロータリーバルブで形成されており、インバータ回路を有するバルブ制御部121によって、内部に収容された回転羽根の回転数を制御するように構成されている。供給バルブVの下流側に、第1スクリューコンベヤ21と第2スクリューコンベヤ22が順次接続されている。第1スクリューコンベヤ21は、回転軸21bを駆動するモータM1を有し、インバータ回路を有する第1コンベヤ制御部122により、モータM1の回転数を制御して被燃焼物の搬送速度を制御するように構成されている。第2スクリューコンベヤ22は、回転軸22bを駆動するモータM2を有し、インバータ回路を有する第2コンベヤ制御部123により、モータM2の回転数を制御して被燃焼物の搬送速度を制御するように構成されている。
【0081】
燃焼炉1には、補助空気導入口31aと、1次空気導入口41aと、2次空気導入口51aとに接続された送風管を介して、燃焼空気を供給するシロッコ型送風機F1が接続されている。送風機F1は、インバータ回路を有するファン制御部124により、羽根を回転駆動するモータの回転数を制御して風量を制御するように構成されている。燃焼炉1の排気筒6には、燃焼ガスをボイラ本体103に導くガス導管161が接続されている。排気筒6とガス導管161の外周面には、断熱と放射熱の有効利用を図るためのジャケット162が設けられている。
【0082】
ボイラ本体103は、円筒状のケーシング130と、ケーシング130の上部に鉛直方向に延在して燃焼ガス及び水の経路を一方の側と他方の側とに区画する上部隔壁131と、ケーシング130内の上部と下部に設けられて互いの間に水缶部を形成する管板132,132と、上下の管板132,132の間に掛け渡された複数の煙管133,133,・・・と、水缶部内に設けられた複数のバッフルプレート134,134,・・・を備える。ケーシング130の上部には、上部隔壁131の一方の側、かつ、上部管板132の上側に、ガス導管161が連通されて燃焼ガスが供給されるようになっている。一方、ケーシング130の上部の上部隔壁131の他方の側、かつ、上部管板132の上側に、排気管138が連通されて、上記排気管138を通して、被加熱媒体としての水と熱交換を行った後の燃焼ガスを排気するようになっている。水缶部の上部隔壁131で区画された他方の側の上部には、燃焼ガスと熱交換を行う被加熱媒体としての水を水缶部内に供給する給水口135が設けられている。水缶部の上部隔壁131で区画された一方の側の上部には、ボイラ本体103で熱交換された温水を排気筒ジャケット162の一端に導く導管136が接続されている。ジャケット162の他端には、ボイラ本体103及びジャケット162で燃焼ガスと熱交換した後の温水を排出する排水口163が設けられている。排水口163には、温水の温度を検出する温度センサ164が設けられている。
【0083】
ボイラ本体103において、給水口135から供給された被加熱媒体としての水は、水缶部内の複数のバッフルプレート134,134,・・・で形成された蛇行水路を流れる際、複数の煙管133,133,・・・内を通る燃焼ガスと熱交換を行って温度が上昇する。詳しくは、給水口135から矢印W1で示すようにケーシング130内に流入した水は、上部隔壁131の他方の側を下方に蛇行しながら流れ、下部管板132に達して流れが上方に転じ、上部隔壁131の一方の側を上方に蛇行しながら流れてケーシング130から導管136に流出する。ガス導管161からケーシング130内に流入した燃焼ガスは、上部隔壁131の一方の側の煙管133,133を下方に流れ、下部管板132の下方に形成された連絡路を通り、上部隔壁131の他方の側の煙管133,133を上方に流れてケーシング130から排気管138に流出する。ケーシング130から流出した水は、導管136を通ってジャケット162に導かれ、排気筒6とガス導管161を流れる燃焼ガスと熱交換し、更に温度が上昇して温水となり、矢印W2で示すように排水口163から排出されるようになっている。
【0084】
サイクロン集塵装置104は、上部の円筒部の側面にボイラ本体103の排気管138が接続されており、熱交換後の燃焼ガスが導かれる。小径側を下方に向けて配置された円錐形状のサイクロン本体104a内に、燃焼ガスの旋回流を形成することにより、燃焼ガスに含まれる塵を遠心分離し、サイクロン本体104aの下端から矢印D1で示すように排出するようになっている。塵が分離された燃焼ガスは、下端がサイクロン本体104aの内側に位置すると共に上端が外部に突出した排気筒104bから排出されるようになっている。排気筒104bから排出された燃焼ガスは、接続管142を介してバグフィルタ集塵装置105に導かれ、バグフィルタ集塵装置105内の濾過部材で微粒子を捕獲し、清浄化した燃焼ガスを矢印D2で示すように大気に放出するようになっている。サイクロン集塵装置104とバグフィルタ集塵装置105の間の接続管142に、誘引送風機F2が介設されている。
【0085】
誘引送風機F2は遠心型送風機で形成されており、インバータ回路を有する誘引制御部151により、羽根を回転駆動するモータの回転数を制御して送風量を制御して、排気筒104bから燃焼ガスを誘引する量を制御するように構成されている。
【0086】
この温水ボイラ100は、バルブ制御部121と、第1コンベヤ制御部122と、第2コンベヤ制御部123と、ファン制御部124と、誘引制御部151とに接続された空燃比制御部としての制御盤110を備える。この制御盤110は、温水の温度を検出する温度センサ164に接続されていると共に、被燃焼物の種類と温水の目標温度が入力される操作盤111に接続されている。操作盤111には、温水ボイラ100の起動スイッチ及び停止スイッチが設けられている。
【0087】
上記構成の温水ボイラ100は、以下のように動作する。まず、ホッパに、燃料として使用する被燃焼物として、木屑チップ、プラスチック屑及びゴム屑等の有機性可燃物の破砕片か、或いは、木質ペレット及びRPF等の有機性可燃物の固化成形物を投入し、投入した被燃焼物の種類を操作盤111に入力する。また、生成すべき温水の目標温度を操作盤111に入力する。この後、操作盤111の起動スイッチを押下する。起動スイッチの押下により、制御盤110が起動プログラムを実行し、起動運転を行う。すなわち、起動時から所定期間において、バルブ制御部121、第1コンベヤ制御部122及び第2コンベヤ制御部123に低回転数を指令する信号Cv,Cm1,Cm2を出力し、供給バルブVの供給速度と、第1スクリューコンベヤ21及び第2スクリューコンベヤ22の搬送速度を低速度に制御する。また、ファン制御部124及び誘引制御部151に低回転数を指令する信号Cf1,Cf2を出力し、送風機F1の送風量を低流量に制御すると共に、誘引送風機F2の送風量を低流量に制御する。また、燃焼炉1の着火部7を動作させ、1次燃焼室47内の被燃焼物を着火する。このように、起動時に、予め定められた比較的少ない燃料と燃焼空気量を供給することにより、着火が比較的困難な被燃焼物を用いた場合でも、確実に燃焼物を着火させて燃焼炉1を起動することができる。所定期間の起動運転を行い、被燃焼物の燃焼が安定して燃焼温度が上昇すると、制御盤110が通常プログラムを実行して通常運転を行う。
【0088】
通常運転では、温度センサ164の検出値に基づいたフィードバック制御が行われる。すなわち、制御盤110は、温度センサ164からの信号S1を受け、温水の温度が目標温度よりも低いことを検知すると、バルブ制御部121、第1コンベヤ制御部122及び第2コンベヤ制御部123に、温水温度と目標温度との差分に対応する信号Cv,Cm1,Cm2を出力する。これにより、供給バルブVの供給速度と、第1スクリューコンベヤ21及び第2スクリューコンベヤ22の搬送速度を増大させて、1次燃焼室47への被燃焼物の供給量を増大させる。これと共に、制御盤110が、ファン制御部124及び誘引制御部151に、温水温度と目標温度との差分に対応する信号Cf1,Cf2を出力する。これにより、送風機F1の送風量と誘引送風機F2の送風量とを増大させて、下部予熱部3と、1次燃焼部4と、2次燃焼部5に供給する燃焼空気の流量を増大させる。こうして被燃焼物の燃焼量を増大して燃焼ガス温度を上昇させて、この燃焼ガス温度により加熱される温水の温度を目標温度に近づける。
【0089】
一方、制御盤110が、温度センサ164からの信号S1を受け、温水の温度が目標温度よりも低いことを検知すると、バルブ制御部121、第1コンベヤ制御部122及び第2コンベヤ制御部123に、温水温度と目標温度との差分に対応する信号Cv,Cm1,Cm2を出力する。これにより、供給バルブVの供給速度と、第1スクリューコンベヤ21及び第2スクリューコンベヤ22の搬送速度を減少させて、1次燃焼室47への被燃焼物の供給量を減少させる。これと共に、制御盤110は、ファン制御部124及び誘引制御部151に、温水温度と目標温度との差分に対応する信号Cf1,Cf2を出力する。これにより、送風機F1の送風量と誘引送風機F2の送風量とを減少させて、下部予熱部3と、1次燃焼部4と、2次燃焼部5に供給する燃焼空気の流量を減少させる。こうして被燃焼物の燃焼量を減少して燃焼ガス温度を下降させて、この燃焼ガス温度により加熱される温水の温度を目標温度に近づける。
【0090】
操作盤111の停止スイッチが押下されると、制御盤110は、停止プログラムを実行して停止前運転を行う。すなわち、フィードバック制御を停止して、バルブ制御部121、第1コンベヤ制御部122及び第2コンベヤ制御部123に低回転数を指令する信号Cv,Cm1,Cm2を出力し、供給バルブVの供給速度と、第1スクリューコンベヤ21及び第2スクリューコンベヤ22の搬送速度を低速度に制御する。また、ファン制御部124及び誘引制御部151に低回転数を指令する信号Cf1,Cf2を出力し、送風機F1の送風量を低流量に制御すると共に、誘引送風機F2の送風量を低流量に制御する。停止前運転を所定期間行った後、被燃焼物と燃焼空気の供給を停止する。これにより、被燃焼物の燃焼を確実に停止させることができる。
【0091】
上記制御盤110は、通常運転時に、操作盤111に入力された被燃焼物の種類と温水の温度に対応して、燃焼炉1への燃焼空気の供給量と被燃焼物の供給量とを所定の空燃比になるように制御する。例えば、操作盤111に入力された被燃焼物の種類が木屑チップ又は木質ペレットであり、温水の温度が100〜200℃である場合(燃焼ガスの温度は800〜900℃)、バルブ制御部121、第1コンベヤ制御部122及び第2コンベヤ制御部123に出力する信号Cv,Cm1,Cm2と、ファン制御部124及び誘引制御部151に出力する信号Cf1,Cf2を制御して、1次燃焼室47への被燃焼物の供給量と、下部予熱部3、1次燃焼部4及び2次燃焼部5に供給する燃焼空気の流量とが1.8から2.2の空燃比となるように制御する。ここで、空燃比とは、燃焼炉に供給される被燃焼物の質量に対する燃焼空気の質量の比である。このような空燃比に制御することにより、木屑チップ又は木質ペレットの被燃焼物を効率的に燃焼させて、目標温度の温水を効率的に得ることができる。
【0092】
一方、被燃焼物の種類がプラスチック屑、ゴム屑及びRPFのいずれかであり、温水の温度が100〜200℃(燃焼ガスの温度は800〜900℃)である場合、制御盤110は、1次燃焼室47への被燃焼物の供給量と、下部予熱部3、1次燃焼部4及び2次燃焼部5に供給する燃焼空気の流量とが1.5から2.2の空燃比となるように制御する。これにより、プラスチック屑、ゴム屑及びRPFの被燃焼物を効率的に燃焼させて、目標温度の温水を効率的に得ることができる。
【0093】
なお、制御盤110により空燃比制御を行う場合、温水の温度に代えて、燃焼炉1の燃焼温度に対応して空燃比を設定してもよい。
【0094】
本実施形態の温水ボイラ100は、第1実施形態の燃焼炉1を用いることにより、固形の被燃焼物を高い効率で安定して燃焼し、所定温度の温水を効率良く安定して生成することができる。また、上記温水ボイラ100は、木屑チップ等の固形の被燃焼物を燃焼炉1によって高い効率で燃焼することができるので、化石燃料による燃焼炉を用いたボイラと比較して、ランニングコストを大幅に削減でき、しかも、二酸化炭素の排出による環境への影響を抑えることができる。
【0095】
また、本実施形態の温水ボイラ100の燃焼炉1は、固形の被燃焼物を完全燃焼させることができるので、燃焼ガスに含まれる煤の量が従来よりも少ない。したがって、ボイラ本体103の煙管133等に残留する煤の量を少なくできるので、煤の除去を行うためのメンテナンス頻度を従来よりも削減でき、ランニングコストの削減を図ることができる。また、煤の残留によるボイラ本体103の劣化を防止することができる。また、燃焼炉1の燃焼ガスに含まれる煤の量が少ないので、使用するサイクロン集塵装置104やバグフィルタ集塵装置105は小容量のものでよく、温水ボイラ100のコスト削減と小型化を図ることができる。
【0096】
また、本実施形態の温水ボイラ100の燃焼炉1は、誘引送風機F2によって排気筒6から燃焼ガスを誘引することにより、1次及び2次燃焼室47,57内の圧力上昇を防止して、1次及び2次空気室46,56及び1次及び2次燃焼室47,57への燃焼空気の供給負荷を削減できる。また、1次及び2次空気室46,56及び1次及び2次燃焼室47,57における燃焼空気及び燃焼ガスの圧力損失が比較的大きくても、誘引送風機F2で燃焼ガスを誘引することにより、1次及び2次空気室46,56及び1次及び2次燃焼室47,57内の平均圧力を低減することができる。したがって、燃焼炉1に施すべき耐圧対策を軽減し、製造コストの増大を防止することができる。更に、1次及び2次空気室46,56及び1次及び2次燃焼室47,57内の平均圧力を低減することにより、1次燃焼室47から第2スクリューコンベヤ22内に熱が逆流して第2スクリューコンベヤ22内の被燃焼物が燃焼する不都合を防止できる。なお、誘引送風機F2は、燃焼炉1の排気部に直接接続してもよい。
【0097】
表1は、本実施形態の温水ボイラ100を、固形の被燃焼物として木屑とRPFとを用いて夫々運転を行い、各被燃焼物を用いた場合の燃焼ガスに含まれる成分を計量した結果をまとめたものである。成分の計量は、サイクロン集塵装置104の排出部における燃焼ガスを対象として行った。計量対象は、ダスト濃度、全硫黄酸化物の量及び全窒素酸化物濃度である。
【表1】

【0098】
表1から明らかなように、木屑及びRPFのいずれの被燃焼物を用いた場合においても、ダスト濃度、全硫黄酸化物の量及び全窒素酸化物濃度のいずれも、大気汚染防止法施行規則(昭和46年厚生省通商産業省令第1号)に定める排出基準値を下回っている。したがって、固形の被燃焼物を燃料とする燃焼炉1を用いた温水ボイラ100は、公害物質の排出が抑制されており、排気は十分に清浄であるといえる。
【0099】
第2実施形態の温水ボイラ100において、下部予熱部3のケーシング31内と、1次燃焼部4の1次空気室46と、2次燃焼部5の2次空気室56に1つの送風機F1で燃焼空気を供給したが、送風管の各導入口31a,41a,51aの近傍に流量制御バルブを夫々設け、各バルブの開度を、制御盤110によって夫々制御するように構成してもよい。これにより、ケーシング31内、1次空気室46及び2次空気室56への燃焼空気の供給量を、被燃焼物の種類や温度に基づいて適切な配分比率に制御することができ、1次及び2次燃焼室47,57の燃焼過程をきめ細かく調整し、燃焼効率の向上と完全燃焼を行うことができる。また、ケーシング31内、1次空気室46及び2次空気室56に複数の送風機で燃焼空気を夫々供給し、各送風機の吹き出し量を、被燃焼物の種類や温度に基づいて制御盤110によって夫々調整してもよい。
【0100】
また、温度センサ164は、温水の排水口163以外に、各燃焼部4,5の外筒41,51や内筒42,52に配置してもよい。各燃焼部4,5の外筒41,51や内筒42,52に配置した温度センサにより、燃焼温度を検出し、この検出温度に基づいて、制御盤110によって被燃焼物の供給量と燃焼空気の供給量を制御してもよい。
【0101】
第2実施形態のボイラは、燃焼ガスの流れの方向が1箇所で反転される2パス型のボイラ本体を用いたが、燃焼ガスが単一方向に流れる1パス型のボイラ本体や、燃焼ガスの流れの方向が複数個所で反転される多パス型のボイラ本体を用いてもよい。また、煙管ボイラ以外に、水管ボイラを用いてもよい。
【0102】
また、第2実施形態では、第1実施形態の燃焼炉1をボイラに適用した例を示したが、本発明の燃焼炉は、ボイラ以外に、温風装置や冷凍機等の熱源として広く用いることができる。いずれの用途においても、小型かつ高性能で、環境への影響が少なく、しかも、ランニングコストの安価な熱機器を実現することができる。
【0103】
上記各実施形態において、上下方向は重力が作用する方向と一致しており、燃焼炉1の内筒42,52及び外筒41,51の中心軸は鉛直方向を向いているが、燃焼炉1は、内筒42,52及び外筒41,51の中心軸を鉛直方向に対して傾斜して使用することも可能であり、また、内筒42,52及び外筒41,51の中心軸を略水平に向けて使用することも可能である。
【0104】
また、上記各実施形態において、燃焼炉1の1次燃焼室47には、補助燃焼空気を供給しなくてもよい。また、燃焼炉1の1次燃焼室47には、第1スクリューコンベヤ21を介して燃焼空気を供給しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第1実施形態の燃焼炉を示す断面図である。
【図2A】1次燃焼部の下部を中心軸の直角方向に切断した様子を示す断面図である。
【図2B】図2A中の円Aで囲まれた部分を取り出して示した部分拡大図である。
【図2C】図1中の円Bで囲まれた部分を取り出して示した部分拡大図である。
【図3A】1次燃焼部の1次空気室における1次燃焼空気の流れを示した模式図である。
【図3B】1次燃焼部の1次燃焼室における燃焼ガスの流れを示した模式図である。
【図4A】スリット形状の貫通穴を形成した第1内筒を示す斜視図である。
【図4B】第1内筒の傾斜したスリット形状の貫通穴を示す部分展開図である。
【図4C】円形の貫通穴の周方向列を上下に複数列形成した様子を示す部分展開図である。
【図4D】横スリット形状の貫通穴の周方向列を上下に複数列形成した様子を示す部分展開図である。
【図4E】アーモンド形状の貫通穴を示す部分展開図である。
【図5】第2実施形態の温水ボイラを示す図である。
【符号の説明】
【0106】
1 燃焼炉
2 連続供給器
3 下部予熱部
4 1次燃焼部
5 2次燃焼部
6 排気筒
7 着火部
8 木屑チップ
21 第1スクリューコンベヤ
22 第2スクリューコンベヤ
41 第1外筒
41a 1次空気導入口
42 第1内筒
42a 傾斜貫通穴
46 1次空気室
47 1次燃焼室
51 第2外筒
51a 2次空気導入口
52 第2内筒
52a 傾斜貫通穴
56 2次空気室
57 2次燃焼室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の燃焼室と、
上記燃焼室の周りを取り囲むと共に、上記燃焼室に供給すべき燃焼空気が上部に接線方向に供給される円筒環状の空気室と、
上記燃焼室と空気室を隔てる壁の下部に周方向に複数個配置され、上記空気室内の燃焼空気を燃焼室に供給する空気供給部とを有する燃焼部を上下方向に複数段備え、
上下方向に隣り合う燃焼室が互いに連通されていると共に、最下段の燃焼室の下部に固形の被燃焼物を連続供給する連続供給器が接続されている一方、最上段の燃焼室の上部に燃焼ガスを排出する排気部が接続されていることを特徴とする燃焼炉。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記空気供給部は、上記燃焼室と空気室を隔てる壁に形成された貫通穴であることを特徴とする燃焼炉。
【請求項3】
請求項2に記載の燃焼炉において、
上記貫通穴の形状が、円形状、スリット形状又は楕円形状であることを特徴とする燃焼炉。
【請求項4】
請求項2に記載の燃焼炉において、
上記貫通穴は、上記燃焼室の径方向に対して傾斜した方向に貫通していることを特徴とする燃焼炉。
【請求項5】
請求項4に記載の燃焼炉において、
上記貫通穴の貫通方向は、上記燃焼室と空気室を隔てる壁の接線に対して30〜45°の角度で傾斜していることを特徴とする燃焼炉。
【請求項6】
請求項4に記載の燃焼炉において、
上記貫通穴の貫通方向は、上記燃焼室の中心軸と直角をなす平面に対して上方に1〜5°の角度で傾斜していることを特徴とする燃焼炉。
【請求項7】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記各段の燃焼部の空気室に燃焼空気を供給する送風機を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項8】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記排気部から、燃焼ガスを利用する熱機器に向けて燃焼ガスを誘引する誘引送風機を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項9】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記連続供給器は、スクリューコンベヤを含んで形成されていることを特徴とする燃焼炉。
【請求項10】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記各段の空気室へ供給する燃焼空気の供給量と上記連続供給器による被燃焼物の供給量とを所定の空燃比になるように制御する空燃比制御部を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項11】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記被燃焼物は、木質ペレット、RPFその他の有機性可燃物の固化成形物、又は、木屑、プラスチック屑、ゴム屑その他の有機性可燃物の破砕片であることを特徴とする燃焼炉。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−162414(P2009−162414A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341409(P2007−341409)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【Fターム(参考)】