説明

物品の取付構造

【課題】製造作業性の向上を図ることのできる物品の取付構造を提供する。
【解決手段】略板状の取付基部11と、取付基部11から延出するシール部12とを備えるウエザストリップ6は、取付基部11にクリップ21が取付けられ、該クリップ21を介して被取付部8に取付けられている。クリップ21は、被取付部8に形成された取付孔9に嵌め込まれて係合可能な係合部31と、取付基部11に係止される係止部41とを備えている。係止部41は、細長形状の係止片部42と、係止片部42の長手方向中間部位と係合部31とを連結する連結部43とを備えている。また、略筒状をなし先端が尖った挿入ピン51を具備する挿入手段を用いて、挿入ピン51の先端部を取付基部11に突き通し、挿入ピン51の内周側を通して係止片部42を挿入ピン51の先端部11から送り出すことにより、クリップ21が取付基部11に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部を有する物品の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車ボディの開口部周縁や当該開口部を開閉する開閉部材(ドア等)の周縁部にはウエザストリップが取付けられる。例えば、エンジンフード(ボンネット)の前縁部と、これに対向するエンジンルームの前縁部との間をシールするウエザストリップは、例えば、エンジンルームの前縁部に位置するラジエータグリル等に設けられた被取付部に取付けられる板状の取付基部と、取付基部から延出し、エンジンフードの閉鎖時において、エンジンフードの前縁部に圧接されるシール部とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、上記のようなウエザストリップは、両面接着テープやクリップ(留め具)を用いて被取付部に取付けられている。しかしながら、ウエザストリップの取付けに両面接着テープを用いる場合には、取付けに際し、ウエザストリップが位置ずれしてしまうおそれがあるため、作業性の低下を招くおそれがある。また、両面接着テープは比較的高価であり、コストの増大が懸念される。
【0004】
また、ウエザストリップの取付けに用いられるクリップとしては、被取付部に形成された取付孔に嵌め込まれて係合される係合部と、ウエザストリップの取付基部に係止される係止部とを備え、係止部が、略棒状の係止片部と、係止片部の長手方向略中央部と係合部とを連結する連結部とを具備して略T字状をなしているものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−301547号公報
【特許文献2】実開昭59−20016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載のクリップを取付基部に取付けるためには、きりやドリル等の孔開け治具を用いて、取付基部に係止片部及び連結部を挿通させるための挿通孔を形成する必要があった。従って、挿通孔の形成に際し、形成に伴って発生する形成屑を吸引装置等で除去する作業を必要とする上、挿通孔を形成する工程とは別に、係止片部を挿通孔にねじ込んで係止部を取付基部に係止させる工程を必要としていた。このため、工数の増加を招き、製造作業性の向上を図る上で種々の支障があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、製造作業性の向上を図ることのできる物品の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.略板状の取付基部を有する物品を、留め具を用いて、被取付部に取付ける物品の取付構造であって、
前記留め具は、前記被取付部に形成された取付孔に嵌め込まれて係合可能な係合部と、前記取付基部に係止される係止部とを備え、
前記係合部は、棒状の軸部と、前記軸部の一端部から鍔状に広がる傘部と、前記軸部の外周部から外方かつ前記傘部側に向けて延びる支持部とを備え、
前記係止部は、細長形状の係止片部と、前記係止片部から当該係止片部の長手方向に対して交差する方向に延びて前記傘部と連結される連結部とを備え、
略筒状をなし先端が尖った挿入ピンを具備する挿入手段を用いて、前記挿入ピンの先端部を前記取付基部に突き通し、前記挿入ピンの内周側を通して前記係止片部を前記挿入ピンの先端部から送り出すことにより、前記留め具が前記取付基部に取付けられ、
前記取付基部から突出する前記係合部を前記取付孔に嵌め込むことで、前記傘部と前記支持部の先端部との間に前記取付孔の周縁部が挟持され、前記取付基部が前記被取付部に固定されることを特徴とする物品の取付構造。
【0009】
手段1によれば、取付基部に留め具が取付けられ、該留め具を介して物品が被取付部に取付けられている。本手段の留め具は、取付基部に突き刺された挿入ピンの内周側を通して、係止片部を挿入ピンの先端部から送り出すことで物品に取付けられる。従って、留め具を物品に取付けるために、取付基部の肉を切り取ったり削ったりして開口部(孔)を形成するといった作業を省略することができる。このため、前記開口部の形成に伴う形成屑の発生を回避することができ、形成屑を除去するための手間や装置(吸引装置等)を省略することができる。結果として、製造作業性の向上や品質の向上等を図ることができる。また、いわば一工程で留め具を物品に取付けることができるため、取付基部に予め開口部を形成する工程と、開口部に留め具を挿通させる工程とを必要としていた従来技術に比べ、作業効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、上記のような留め具を用いて物品を被取付部に取付けることで、被取付部に対して物品が位置ずれしてしまうといった事態を防止することができるとともに、物品の取付けに両面接着テープを用いる場合に比べ、コストの削減を図ることができる。
【0011】
手段2.前記取付基部は、当該取付基部を構成する素材よりも硬質な素材よりなり、当該取付基部の成形時にインサート成形される埋設部を備え、
前記留め具は、前記連結部が前記取付基部を貫通した状態で前記取付基部に取付けられていること特徴とする手段1に記載の物品の取付構造。
【0012】
従来、取付基部の剛性を高めるべく、取付基部に対して埋設部が埋設される場合であって、取付基部が型成形により構成される場合には、埋設部に対し、取付基部の表面から突出する係合部を一体的に設け、当該係合部を被取付部に形成された取付孔に嵌め込むことで、物品を被取付部に取付けていた。しかしながら、この場合、成形に際し、取付基部を構成する材料によって上記係合部が被覆されないようにする必要があり、金型構造の複雑化や製造作業性の低下等を招くおそれがある。
【0013】
これに対し、本手段2によれば、取付基部(物品)を成形した後に、留め具を取付基部に取付けることで、取付基部に対し、取付基部(物品)を被取付部に取付けるための係合部が設けられることとなる。従って、挿入ピンを取付基部に貫通させることができれば、上記のように、留め具を比較的容易に取付基部へ取付けることができ、また、埋設部を包含する取付基部の成形が容易なものとなるため、全体として、製造作業性の向上を図ることができる。尚、留め具により被取付部に取付けられる物品(取付基部)としては型成形体に限定されるものではなく、例えば、埋設部を具備する取付基部が押出成形により構成される物品であってもよい。
【0014】
手段3.前記取付基部は、当該取付基部を構成する素材よりも硬質な素材よりなり、当該取付基部の成形時にインサート成形される埋設部を備え、
前記埋設部は開口孔を有し、
前記挿入ピンの先端部を前記取付基部の前記開口孔に対応する部位に突き通し、前記挿入ピンの内周側を通して前記係止片部を前記挿入ピンの先端部から送り出すことにより、前記留め具が前記取付基部に取付けられることを特徴とする手段1又は2に記載の物品の取付構造。
【0015】
手段3によれば、埋設部の剛性が高く、埋設部に挿入ピンを貫通させることが困難となる場合であっても、留め具を取付基部に取付けることができる。すなわち、挿入ピンを貫通させる(突き通す)ために、剛性の低い埋設部しか取付基部に埋設することができないといった事態を回避することができる。
【0016】
尚、埋設部の剛性が高い場合には、取付基部が変形し難くなるため、埋設部を包含する取付基部に開口部を形成したとしても、開口部が小さければ、上記特許文献2のようなクリップを取付基部に取付けることが困難(事実上不可能)となるおそれがある。また、開口部を大きく形成した場合には、開口部の周縁部と係止片部との接触面積が小さくなったり、開口部の周縁部と連結部とが離間したりして、取付状態が不安定になってしまうおそれがある。これに対し、上記手段1に記載の留め具に関しては、挿入ピンを取付基部に貫通させることができれば、留め具を比較的容易に取付基部に取付けることができるため、上記のような不具合を招くことなく、的確に留め具を取付基部に取付けることができる。
【0017】
尚、埋設部のうち少なくとも挿入ピンが突き刺される側の面が取付基部の構成材料により覆われて表面に露出しないといった構成を採用する場合には、取付基部の表面のうち開口孔に対応する位置において目印が形成されていることとしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は自動車の斜視図である。図2は自動車のエンジンフードの前縁部と、これに対向するエンジンルームの前縁部との間をシールするウエザストリップの断面図である。
【0019】
図1に示すように、自動車1の前部にはエンジンルーム(図示略)を開閉するエンジンフード2が設けられ、エンジンルームの前側にはラジエータグリル3、バンパ4、ヘッドランプ5などが設けられている。そして、エンジンルームの前縁部の被取付部となるラジエータグリル3の上端部に沿ってフードシールウエザストリップ(以下、単にウエザストリップ6と称する)が取付けられている。
【0020】
図2に示すように、ウエザストリップ6は、ラジエータグリル3の上端部に設けられた被取付部8に取付けられる略平板状の取付基部11と、取付基部11の前端部から後方に向けて上方傾斜して延びるリップ状のシール部12とを備えてる。そして、エンジンフード2の閉時において、シール部12がエンジンフード2の前縁部に弾性的に圧接することで、エンジンフード2の前縁部と、これに対向するエンジンルームの前縁部との間がシールされるようになっている。また、第1実施形態では、シール部12がスポンジEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム)により構成され、取付基部11がソリッドEPDMにより構成されている。
【0021】
第1実施形態では、取付基部11に対して、ウエザストリップ6の長手方向に沿って所定間隔毎に留め具としてのクリップ21が取付けられている。そして、クリップ21を被取付部8に形成された取付孔9に嵌め込むことで、ウエザストリップ6が被取付部8(エンジンルームの前縁部)に取付けられている。
【0022】
ここで、クリップ21の構成について説明すると、クリップ21は、ポリオキシメチレンやポリアミド等の合成樹脂材料よりなり、図3等に示すように、取付孔9に嵌め込まれて係合される係合部31と、取付基部11に係止される係止部41とを備えている。
【0023】
係合部31は、棒状の軸部32と、軸部32の一端部から鍔状に広がる傘部33と、軸部32の外周部から外方かつ傘部33側に向けて延びる一対の支持片部34とを備えている。支持片部34は軸部32との境界部付近を中心に傾動するようにして弾性変形可能に設けられている。また、図2に示すように、各支持片部34の先端部には、突起35が形成されることで外面側に段差部36が形成されている。加えて、各支持片部34の内側面と傘部33とを連結する補助板部37が設けられている。
【0024】
図3等に示すように、係止部41は、軸部32の延在方向に対して直交する方向に延びる円柱状の係止片部42と、軸部32の延在方向に対して平行する方向に延び、係止片部42の長手方向中央部と傘部33の中央部とを連結する円柱状の連結部43とを備え、全体として略T字状をなしている。
【0025】
クリップ21の取付基部11への取付状態においては、係止片部42が取付基部11の上面側(被取付部8と対向する面とは反対側の面)に位置し、係止片部42と傘部33との間に取付基部11が挟持される格好となる。第1実施形態では、係止片部42から傘部33までの距離が、取付基部11の肉厚よりも小さく設定されており、クリップ21の取付基部11への取付状態(係止部41の係止状態)においては、係止片部42や傘部33が取付基部11に若干くい込んでいる。また、連結部43は可撓性を有しており、軸部32の延在方向に対して係止部41を約90度程度(軸部32の延在方向とほぼ平行するまで)傾けることができ、さらに、その状態から自らの弾性力によりほぼ元の状態に復帰可能となっている。
【0026】
尚、ウエザストリップ6に対してクリップ21を取付けるに際しては、例えば、図7に示すように、内周側に係止片部42を挿通させる略筒状の挿入ピン51と、挿入ピン51の内周側を挿入ピン51の長手方向に沿ってスライド可能な押出棒55(押出手段)とを備える挿入手段が用いられる。挿入ピン51には長手方向に沿って連結部43を挿通可能なスリット53が形成されているとともに、スリット53の幅は、連結部43の直径よりも大きく、かつ、係止片部42の直径よりも小さくなっている。これにより、挿入ピン51の内周側に係止片部42をセットした状態で、クリップ21を挿入ピン51の長手方向に沿ってスライドさせることができるとともに、スリット53から係止片部42が抜け出してしまうといった事態を防止することができる。
【0027】
また、挿入ピン51の先端部は針のように尖っており、ウエザストリップ6の取付基部11に対して予め開口部等を形成しておかなくても、当該先端部を取付基部11に押付けることで、比較的スムースに当該先端部を突き通すことができる。
【0028】
取付手順としては、先ず、図4に示すように、係止片部42を挿入ピン51の内周側にセットし、取付基部11の下面(被取付部8と対向する面)に対してほぼ垂直に挿入ピン51を突き刺す。
【0029】
そして、図5に示すように、挿入ピン51の先端部を取付基部11に突き通し、挿入ピン51の先端部(挿入ピン51の先端部に形成される開口部)を取付基部11の上面側に位置させた後、押出棒55を挿入ピン51の先端側にスライドさせる。これにより、係止片部42が押出棒55によって押され、挿入ピン51の先端部から押し出される。この途中、傘部33が取付基部11に接触するが、連結部43や傘部33が追従的に撓むため、押出棒55をさらに奥まで押し込むことができ、係止片部42全体を挿入ピン51の先端から取付基部11の上面側へと押し出すことができるようになっている。
【0030】
そして、図6に示すように、挿入ピン51の先端から係止片部42を押し出した後、取付基部11から挿入ピン51を引き抜くと、係止片部42が取付基部11の上面側に残ることとなり、当該係止片部42が取付基部11の上面に係止されることとなる。
【0031】
また、ウエザストリップ6の被取付部8への取付状態においては、傘部33と支持片部34の先端部(段差部36)との間に取付孔9周縁の被取付部8が挟持される。また、ウエザストリップ6の取付状態においては、突起35が取付孔9の内周側に位置して段差部36が取付孔9の周縁部に係合するため、取付孔9に嵌め込まれたクリップ21、ひいてはウエザストリップ6の位置ずれを防止することができる。尚、傘部33の存在により、取付孔9の周縁部をシールすることができるとともに、クリップ21が取付基部11に埋没しすぎてしまい、係合部31を取付孔9に嵌め込みにくくなってしまうといった事態を防止することができるようになっている。
【0032】
以上詳述したように、第1実施形態では、取付基部11にクリップ21が取付けられ、該クリップ21を介してウエザストリップ6が被取付部8(エンジンルームの前縁部)に取付けられている。第1実施形態のクリップ21は、取付基部11に突き刺された挿入ピン51の内周側を通して、係止片部42を挿入ピン51の先端部から押し出すことでウエザストリップ6に取付けられる。従って、クリップ21をウエザストリップ6に取付けるために、取付基部11の肉を切り取ったり削ったりして開口部(孔)を形成するといった作業を省略することができる。このため、前記開口部の形成に伴う形成屑の発生を回避することができ、形成屑を除去するための手間や装置(吸引装置等)を省略することができる。結果として、製造作業性の向上や品質の向上等を図ることができる。また、いわば一工程でクリップ21をウエザストリップ6に取付けることができるため、取付基部11に予め開口部を形成する工程と、開口部にクリップを挿通させる工程とを必要としていた従来技術に比べ、作業効率の向上を図ることができる。
【0033】
また、上記のような留め具を用いてウエザストリップ6を被取付部8に取付けることで、被取付部8に対してウエザストリップ6が位置ずれしてしまうといった事態を防止することができるとともに、ウエザストリップ6の取付けに両面接着テープを用いる場合に比べ、コストの削減を図ることができる。
【0034】
加えて、第1実施形態では、係止片部42から傘部33までの距離が、取付基部11の肉厚よりも小さく設定されているため、取付基部11に対するクリップ21のがたつきを防止することができ、ウエザストリップ6の取付状態の安定化を図ることができる。
【0035】
さらに、連結部43が可撓性を有することにより、係止部41の取付基部11への挿通に際し連結部43を追従的に形状変化させることができる。このため、取付基部11に対し係止片部42を無理なく確実に取付けることができる。
【0036】
また、例えば、取付基部11に開口部を形成した上で、クリップをかかる開口部に挿通させる従来の技術においては、先ず連結部から側方に突出する係止片部の一端を挿通孔に挿通させ、その後、係止部を押し込みつつ係止片部と連結部との境界部を中心に回動させるようにして係止片部の他端を挿通孔にねじ込むといった作業を行っていた。これに対し、第1実施形態では、挿入ピン51を突き刺して、押出棒55をスライドさせるといったいわば一工程の動作だけで済むため、挿入手段の構成や挿通工程の簡素化等を図ることができる。さらに、従来のように、係止部によって取付基部11の肉を押し広げつつ挿入するといった場合に比べ、第1実施形態では、係止部41にそれ程の剛性を必要としない(つまり、係止部41を細くできる)ため、可撓性を確保できる上、使用材料を削減することができる。
【0037】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。図8はフロントドアが開放状態にある自動車の斜視図である。図9はドアウエザストリップを示す正面図である。図10はドアウエザストリップを示す図9のJ−J線断面図である。
【0038】
図8に示すように、車両としての自動車101には、車両本体としての自動車ボディ102に対して前部が軸支されるとともに後側が開放される自動車ドア(図ではフロントドア:以下、単に「ドア103」という)が設けられている。ドア103には、その外周に沿ってドアウエザストリップ105が取着されている。また、自動車ボディ102には、ドア103に対応するドア開口部107の周縁部において、オープニングトリム108が取着されている。
【0039】
図9に示すように、ドアウエザストリップ105は、ドア103の上縁部に対応する上辺部111と、ドア103の前縁部に対応する前縦辺部112と、ドア103の後縁部に対応する後縦辺部113と、ドア103の下縁部に対応する下辺部114とを備え、ドア103の外周形状に対応して略環状をなしている。また、ドアウエザストリップ105は、その長手方向に沿った大部分が、所定の押出成形機により長尺状に形成される押出成形部によって構成され、コーナー部位等(図9で散点模様を付した部分)が、隣接する押出成形部の端部同士を連結するようにして所定の金型装置によって形成される型成形部によって構成されている。さらに、第2実施形態では、ドアウエザストリップ105は、基本的にはスポンジEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)により構成されている。
【0040】
図10に示すように、ドアウエザストリップ105(上辺部111の押出成形部)は、メインシール部材121と、サブシール部材131と、両シール部材121、131を連結する連結部141とを備えている。メインシール部材121は、ドア103の外周に沿って設けられた第1取付部151に取付けられる略平板状の第1取付基部122と、第1取付基部122から膨出する中空状のシール部123とを備えている。サブシール部材131は、第1取付部151よりも車外側に位置する第2取付部152に取付けられる略平板状の第2取付基部132と、第2取付基部132から突出するシールリップ133とを備えている。
【0041】
そして、ドア103が閉鎖された状態においては、シール部123及びシールリップ133が自動車ボディ102のドア開口部107の周縁部に圧接する。これにより、ドア103と自動車ボディ102との間がシールされるようになっている。尚、メインシール部材121とサブシール部材131とが、連結部141を介して一体化されていることから、それぞれ別体で成形される場合に比べて、製造に要する工数を低減できる。また、取付時においても、それぞれ別々に独立して取付ける場合に比べて、煩わしさが少なく、作業性の向上が図られる。
【0042】
また、第1取付基部122の略中央部分、及び、第2取付基部132の大部分は、ソリッドEPDMよりなる第1硬質部SL1、第2硬質部SL2により構成されている。一方、第1取付基部122のうち第1硬質部SL1の両側部、シール部123、シールリップ133、第2取付基部132の表層部分、及び連結部141に関しては、上記の通りスポンジEPDMにより構成されている。
【0043】
次に、上辺部111と後縦辺部113との境界部を構成し、型成形体よりなるコーナー部位171の構成について図面を参照しつつ説明する。図11は、コーナー部位171を示す部分斜視図である。図12は、コーナー部位171を示す図11のK−K線断面図である。尚、コーナー部位171においても、押出成形部と同様に、メインシール部材121とサブシール部材131とを備えている。
【0044】
図11、図12に示すように、コーナー部位171の第1取付基部122には、シール部123よりもドア103の外周側に位置し、第1取付基部122とシール部123との境界部に連結された取付基部としてのコーナー片175が設けられている。また、コーナー片175には、スポンジEPDMよりも硬質な樹脂材料(例えばポリエチレン等)よりなり、コーナー部位171の型成形時にインサート成形される埋設部176が埋設されている。埋設部176は、車内側の面の全域及び車外側の面の周縁部が、ドアウエザストリップ105の構成材料であるスポンジEPDMにより被覆(埋設)され、ドア103(第1取付部151よりもドア103の外周側に形成された被取付部155)に対向する面である車外側の面の一部が露出している。また、埋設部176には、埋設部176を車幅方向に貫通する開口孔178が形成されている。当該開口孔178の内周側は空間ではなく、ドアウエザストリップ105の構成材料であるスポンジEPDMにより埋められている。
【0045】
第2実施形態では、コーナー片175において、留め具としてのクリップ181が取付けられている。そして、クリップ181を被取付部155に形成された取付孔183に嵌め込むことで、コーナー片175(コーナー部位171)がドア103に固定されている。尚、クリップ181に関しては、上記第1実施形態のクリップ21とほぼ同様の構成を具備するため、詳細な説明を省略するとともに、以下の説明では、便宜上、上記第1実施形態と同じ部材名称及び部材番号を用いて説明する。但し、クリップ181の軸部32は上記第1実施形態のクリップ21よりも短く構成されている。
【0046】
また、クリップ181のドアウエザストリップ105への取付けには、上記第1実施形態のクリップ21と同様にして、挿入ピン51と、押出棒55とを備える挿入手段が用いられる。すなわち、取付手順としては、先ず、係止片部42を挿入ピン51の内周側にセットし、コーナー片175の車外側の面(図12では上側の面)から、開口孔178に対してほぼ垂直に挿入ピン51を突き刺す。そして、挿入ピン51の先端部をコーナー片175に突き通し、挿入ピン51の先端部をコーナー片175の車内側に位置させた後、押出棒55により係止片部42を挿入ピン51の先端部から押し出す。それから、コーナー片175から挿入ピン51を引き抜くことで、図12等に示すように、係止片部42がコーナー片175の車内側の面に係止される。
【0047】
以上詳述したように、第2実施形態では、コーナー部位171のコーナー片175にクリップ181が取付けられ、該クリップ181を介してコーナー部位171が第1取付部151(ドア103)に固定されている。このように、コーナー部位171の固定にクリップ181を用いることで、基本的に上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0048】
また、第2実施形態によれば、コーナー部位171を型成形した後に、クリップ181をコーナー片175に取付けることで、コーナー片175に対し、当該コーナー片175をドア103(被取付部155)に固定するための係合部31が設けられることとなる。従って、埋設部176を包含するコーナー片175(コーナー部位171)の型成形が容易なものとなり、また、上記のようにクリップ181を比較的容易にコーナー片175へ取付けることができるため、全体として、製造作業性の向上を図ることができる。
【0049】
加えて、第2実施形態では、埋設部176に開口孔178が形成されており、当該開口孔178に挿入ピン51を挿通させるようにして、挿入ピン51の先端部をコーナー片175に突き通し、挿入ピン51の先端部から係止片部42を押し出すことでクリップ181がコーナー片175に取付けられている。従って、埋設部176の剛性が高く、埋設部176に挿入ピン51を貫通させることが困難となる場合であっても、クリップ181をコーナー片175に取付けることができる。すなわち、挿入ピン51を貫通させるために、剛性の低い埋設部176しか埋設することができないといった事態を回避することができる。
【0050】
尚、埋設部176の剛性が高い場合には、コーナー片175が変形し難くなるため、埋設部176を包含するコーナー片175に開口部を形成したとしても、開口部が小さければ、連結部43があまり撓まないようなクリップをコーナー片175に取付けることが困難(事実上不可能)となるおそれがある。また、開口部を大きく形成した場合には、開口部の周縁部と係止片部42との接触面積が小さくなったり、開口部の周縁部と連結部43とが離間したりして、取付状態が不安定になってしまうおそれがある。これに対し、第2実施形態のクリップ181に関しては、挿入ピン51をコーナー片175に貫通させることができれば、当該クリップ181を比較的容易にコーナー片175に取付けることができるため、上記のような不具合を招くことなく、的確にクリップ181をコーナー片175に取付けることができる。
【0051】
尚、上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0052】
(a)上記第1実施形態では、ウエザストリップ6がラジエータグリル3の上端部に設けられた被取付部8に取付けられるようになっているが、自動車の前部の構成の違いにより、例えばヘッドランプ5に設けられた被取付部にウエザストリップ6が取付けられる構成であってもよい。また、ウエザストリップ6をエンジンフード2の前縁部に沿って設け、エンジンフード2の閉時において、シール部12がラジエータグリル3の上端部に弾性的に圧接することで、エンジンフード2の前縁部とエンジンルームの前縁部との間がシールされるよう構成してもよい。
【0053】
また、上記第2実施形態におけるドアウエザストリップ105の断面形状は特に限定されるものではなく、少なくともドア103の外周に沿って設けられた取付部(第1取付部151)に取付けられる取付基部(第1取付基部122)と、取付基部から自動車ボディ102側に突出するシール部(シール部123)とを備えていればよい。
【0054】
また、押出成形部においても、クリップ181を用いて取付基部(第1取付基部122)と被取付部(第1取付部151)とを固定してもよい。
【0055】
(b)上記第1実施形態では、シール部12がスポンジEPDMにより構成され、取付基部11がソリッドEPDMにより構成されているが、その他の素材を用いて構成してもよい。また、シール部12と取付基部11とを同じ材料(例えば、微発泡のスポンジEPDM)で構成してもよい。
【0056】
また、上記第2実施形態では、ドアウエザストリップ105をEPDMにより構成しているが、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の他の素材により構成してもよい。また、埋設部176を構成する素材に関しても特に限定されるものではなく、ドアウエザストリップ105を構成する素材よりも硬質の素材(ポリアミド樹脂等)であればよい。
【0057】
(c)上記第2実施形態では、埋設部176の車外側の面の一部が露出しているが、埋設部176の車外側の面を完全に埋設する(被覆して露出しないようにする)こととしてもよい。この場合、開口孔178の位置が把握できなくなるので、型成形時において、コーナー片175の表面に対し、開口孔178に対応する位置に目印(窪み等)を形成することとしてもよい。
【0058】
(d)上記第2実施形態では、埋設部176に開口孔178を形成しているが、埋設部176がそれほど硬くなく、埋設部176に挿入ピン51を貫通させ得る(突き通すことができる)場合には、開口孔178を省略することも可能である。
【0059】
(e)クリップ21(クリップ181)が取付けられる物品としては、フードシールウエザストリップ6やドアウエザストリップ105に限定されるものではなく、その他の自動車ボディに形成される開口部と、当該開口部を開閉する開閉部材との間をシールするウエザストリップに適用してもよいし、その他の板状の取付基部を具備する物品に適用してもよい。
【0060】
(f)上記実施形態におけるクリップ21(クリップ181)の形状は特に限定されるものではなく、取付孔9(取付孔183)に嵌め込まれて係合する係合部31と、取付基部11(コーナー片175)に係止される係止部41とを備え、挿入ピン51を有する挿入手段を用いて取付基部11(コーナー片175)に取付けられる構成であればよい。例えば、補助板部37が突起35の先端部と傘部33とを連結する構成にしたり、補助板部37を省略したりしてもよい。
【0061】
尚、上記実施形態では特に言及しなかったが、クリップ21(クリップ181)は、型成形により係合部31及び係止部41が同時形成されることとしてもよいし、係合部31及び係止部41を別々に形成しておき、後で両者を結合してもよい。
【0062】
(g)上記実施形態では、クリップ21(クリップ181)がポリオキシメチレンやポリアミド等の合成樹脂材料により構成されているが、その他の素材を用いて形成してもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、TPO、TPV(動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー)により構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】自動車の斜視図である。
【図2】ウエザストリップの断面図である。
【図3】クリップを示す斜視図である。
【図4】クリップの取付工程を示す説明図である。
【図5】クリップの取付工程を示す説明図である。
【図6】クリップの取付工程を示す説明図である。
【図7】挿入手段の先端部を模式的に示す斜視図である。
【図8】フロントドアが開状態にある自動車の斜視図である。
【図9】ドアウエザストリップを示す正面図である。
【図10】ドアウエザストリップを示す図9のJ−J線断面図である。
【図11】コーナー部位を示す部分斜視図である。
【図12】コーナー部位を示す図11のK−K線断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1…自動車、2…エンジンフード、3…ラジエータグリル、4…バンパ、6…フードシールウエザストリップ、8…被取付部、9…取付孔、11…取付基部、12…シール部、21…クリップ、31…係合部、32…軸部、33…傘部、34…支持片部、41…係止部、42…係止片部、43…連結部、51…挿入ピン、53…スリット、55…押出棒、101…自動車、103…ドア、105…ドアウエザストリップ、121…メインシール部材、122…第1取付基部、123…シール部、131…サブシール部材、132…第2取付基部、133…シールリップ、141…連結部、151…第1取付部、152…第2取付部、171…コーナー部位、175…コーナー片、176…埋設部、178…開口孔、181…クリップ、183…取付孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略板状の取付基部を有する物品を、留め具を用いて、被取付部に取付ける物品の取付構造であって、
前記留め具は、前記被取付部に形成された取付孔に嵌め込まれて係合可能な係合部と、前記取付基部に係止される係止部とを備え、
前記係合部は、棒状の軸部と、前記軸部の一端部から鍔状に広がる傘部と、前記軸部の外周部から外方かつ前記傘部側に向けて延びる支持部とを備え、
前記係止部は、細長形状の係止片部と、前記係止片部から当該係止片部の長手方向に対して交差する方向に延びて前記傘部と連結される連結部とを備え、
略筒状をなし先端が尖った挿入ピンを具備する挿入手段を用いて、前記挿入ピンの先端部を前記取付基部に突き通し、前記挿入ピンの内周側を通して前記係止片部を前記挿入ピンの先端部から送り出すことにより、前記留め具が前記取付基部に取付けられ、
前記取付基部から突出する前記係合部を前記取付孔に嵌め込むことで、前記傘部と前記支持部の先端部との間に前記取付孔の周縁部が挟持され、前記取付基部が前記被取付部に固定されることを特徴とする物品の取付構造。
【請求項2】
前記取付基部は、当該取付基部を構成する素材よりも硬質な素材よりなり、当該取付基部の成形時にインサート成形される埋設部を備え、
前記留め具は、前記連結部が前記取付基部を貫通した状態で前記取付基部に取付けられていること特徴とする請求項1に記載の物品の取付構造。
【請求項3】
前記取付基部は、当該取付基部を構成する素材よりも硬質な素材よりなり、当該取付基部の成形時にインサート成形される埋設部を備え、
前記埋設部は開口孔を有し、
前記挿入ピンの先端部を前記取付基部の前記開口孔に対応する部位に突き通し、前記挿入ピンの内周側を通して前記係止片部を前記挿入ピンの先端部から送り出すことにより、前記留め具が前記取付基部に取付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の物品の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−236257(P2009−236257A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85214(P2008−85214)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】