説明

特に電子部品及び導体通路を貼り付け用の熱活性化可能な接着テープ

【課題】 熱活性化可能であり、加熱状態で架橋し、加熱状態で低い粘性を有し、ポリイミドへの接着性が良好であり、未架橋状態では有機溶剤に溶解しそして室温で高いE−モジュールを有する接着テープの提供。
【解決手段】 この課題は、少なくとも
a)酸又は酸無水物変性されたビニル芳香族化合物ブロックコポリマー
b)エポキシ含有化合物及び
c)金属キレート
よりなる接着剤を用いて特に電子部品及び導体通路を接合するための熱活性化可能な接着テープによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit Boards;FPC基板)の貼り付け用の、高温での流動性が低い熱活性化可能な接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、フレキシブルプリント基板は携帯電話、ラジオ、コンピュータ、プリンター及びその他多くの製品の如き多くの電子機器において使用されている。これらは銅の層及び高融点の耐久性熱可塑性樹脂、大抵はポリイミド、稀にポリエステルの層で構成されている。これらのFPC基板を製造するためには、しばしば特に厳しい要求が求められている接着テープがしばしば使用される。その要求の一つは、FPC基板を製造するために銅製フォイルにポリイミドフィルムを貼り付けることであり、もう一つは個々のFPC基板も互いに貼り付けることであり、この場合にはポリイミドをポリイミドに貼り付けることも生じる。これらの他にFPC基板は他の基体にも貼り付けられる。
【0003】
この接着に使用される接着テープには非常に厳しい要求が前提とされる。非常に高い接着効率を達成しなければならないので、高温で加工される熱活性化可能な接着テープが一般に使用される。この接着テープは,200℃近辺の温度でしばしば発生する揮発性成分を、FPC基板の貼り付けのときの高い熱負荷の間に放出してはならない。高い凝集性を達成するためには、接着テープはこの熱負荷の間に架橋するべきである。貼り付け工程の間の高い圧力は、接着テープが高温で僅かの流動性しか有していないことを必要とする。これは未架橋の接着テープの高い粘度によって又は非常に迅速な架橋によって達成される。さらに、接着テープはハンダ槽で耐えなければならない。換言すれば、該接着テープは288℃の温度負荷に短時間の間耐えなければならない。
【0004】
純粋な熱可塑性樹脂は非常に容易に溶融し、貼り付けるべき基体を良好に濡らしそして数秒間に非常に速やかな接合をもたらすにも関わらず、前述の理由から該純粋の熱可塑性樹脂を使用することは合理的ではない。もう一方において、これらは高温のもとでは、加圧下での貼り付けのときに接合ラインから溢れ出す傾向がある程、柔らかい。従ってハンダ槽耐久性もない。
【0005】
一般に架橋可能な接着テープには、特定の硬化剤でポリマー架橋反応するエポキシド樹脂又はフェノール樹脂が使用される。この特別な場合にはフェノール樹脂は架橋の際に分解生成物を発生させ、それが放出されそして硬化の間に又は最も遅くともハンダ槽中で気泡を生じるので、該フェノール樹脂は使用することができない。
【0006】
エポキシ樹脂は主として構造物の接合に使用されそして相応する架橋剤を用いての硬化の後に、確かに高い接着強度を達成するが殆ど柔軟性のない非常に脆弱な接着剤を生じる。
【0007】
柔軟性を高めることは、FPC基板で使用するのには不可欠である。一方においては理想的にロールに巻かれた接着テープによって接合を行うべきであり、もう一方においては曲げることもできなければならない柔軟な導体通路が適しており、折りたたみ可能なスクリーンがFPC基板を介して別の回路に連結されているラップトップの導体通路の例から容易にわかる。
【0008】
エポキシ樹脂接着剤の柔軟化には2つの方法が可能である。一つはエラストマー鎖で柔軟化されたエポキシ樹脂を存在させるものであるが、非常に短いエラストマー鎖によって制限された柔軟性しかもたらされない。別の可能な方法は、接着剤に添加されるエラストマーの添加による柔軟化を達成するものである。この変法は、エラストマーが化学的に架橋されず、それによって高温でも依然として高い粘度を持つエラストマーしか使用することができないという欠点を有している。
【0009】
接着テープは大抵、溶液から製造されるので、高温で流動性でないように十分に長鎖であるが、もう一方では溶液状態にすることができる程度の未だ短鎖であるエラストマーを見出すことがしばしば困難である。
【0010】
ホットメルト法による製造は、架橋性の系の場合には、製造工程の間に時期尚早な架橋を避けなければならないので非常に困難である。
【0011】
FPC基板の製造及び加工の分野での多くの用途では、接着テープから、該接着テープをいつもは保護する剥離性媒体を剥がしそして貼り付けるべき基体の上に位置合わせされる。この場合、この行程の前にしばしば既に打ち抜き加工されている接着テープを剥離媒体の引き剥がしの間に及び位置合わせの間に変形しないことを保証しなければならない。剥離媒体を剥がし除去するためにある程度の力を使用しなければならないので、その力で捻じれたり又はその他の変形をしたりしないように接着テープのE−モジュールは十分に高くなければならない。できるだけ薄い製品を使用するべきであるので、接着テープ中に支持体を組み入れることは困難である。すなわち、その代わりに一般に接着テープは一つだけの接着剤層で構成されている。この接着剤は延伸されるべきでないので、十分に高いE−モジュールを有していなければならない。
【0012】
酸無水物で変性されたブロックコポリマー及びエポキシ樹脂をベースとする接着剤は米国特許第5,369,167 A号明細書から公知である。この配合物の製造方法は説明されている。さらにエポキシ樹脂の架橋のために硬化剤が使用される。接着テープは説明されていない。
【0013】
同様な接着剤が特開昭57−149,369 A1号明細書にも記載されている。このエポキシ樹脂でも硬化剤が必要とされる。接着テープは開示されていない。
【0014】
無水マレイン酸変性されたブロックコポリマーをキレートで架橋させることがヨーロッパ特許出願公開第1,311,559 A2号明細書から公知である。この場合にはブロックコポリマー混合物の凝集性を向上させることが説明されている。高温のもとでのキレート架橋にも係わらずエポキシ樹脂と架橋を行う熱活性化接着テープを製造する可能性については説明されていない。
【0015】
さらに、例えば酸変性アクリレート接着剤を用いるキレート架橋反応が例えば米国特許第4,005,247 A号明細書又は米国特許第3,769,254 A号明細書から公知である。
【0016】
ドイツ特許出願公開第102004031188 A1号明細書から、少なくともとも酸又は酸無水物変性されたビニル芳香族化合物ブロックコポリマー及びエポキシ樹脂よりなる接着剤を有する、電子部品及び柔軟な導体部品を貼り付けるための接着テープが公知である。金属キレートは記載されていない。
【0017】
ドイツ特許出願公開第102004007258 A1号明細書からは、
− 酸又は酸無水物変性されたビニル芳香族化合物ブロックコポリマー、
− 一般式
(RO)M(XRY)
[式中、Mは第2、3、4又は5主族の金属又は遷移金属であり、
はアルキル又はアリール基であり、
nは0又はそれより大きい整数であり、
X及びYはそれぞれ二重結合によってRに結合していてもよい酸素又は窒素原子であり、
はX及びYが結合している分岐していてもよい又は鎖中に酸素原子又は他のヘテロ原子を含有していてもよいアルキレン基であり、
mは整数であるが、少なくとも1である。]
で表される金属キレート、
− 並びに粘着樹脂
よりなる混合物を含有するストリップ状接着シート用接着剤が開示されており、該ストリップ状接着シートは接着ライン方向に強く延伸することによって剥離することができるものである。
【0018】
エポキシ含有化合物を添加することは記載されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、熱活性化可能であり、加熱状態で架橋し、加熱状態で低い粘性を有し、ポリイミドへの接着性が良好であり、未架橋状態では有機溶剤に溶解しそして室温で高いE−モジュールを有する接着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この課題は驚くべきことに、請求項1に記載するような方法によって解決される。従属形式の請求項の対象はこの発明の対象並びに使用可能性の別の有利な実施形態である。
【0021】
従って、本発明の対象は、少なくとも
a)酸又は酸無水物変性されたビニル芳香族化合物ブロックコポリマー
b)エポキシ含有化合物及び
c)金属キレート
よりなる接着剤を用いて特に電子部品及び導体通路を接合するための熱活性化可能な接着テープにある。
【0022】
本発明において“接着テープ”という一般的表現は、二次元に広がるフィルム又はフィルム片、長く伸びそして幅が制限されているテープ、テープ切片等、また、打ち抜き物等の平らなあらゆる構造物を包含する。
【0023】
(感圧)接着剤としては、ビニル芳香族化合物,特にスチレンから主として形成されるポリマーブロック(A−ブロック)及び1,3−ジエン、特にブタジエン及びイソプレンを重合することによって主として形成されるポリマーブロック(B−ブロック)を含有するブロックコポリマーをベースとするものが使用される。本発明によればホモポリマーブロック並びにコポリマーブロックも利用することができる。得られるブロックコポリマーは部分的に、選択的に又は完全に水素化されていてもよい同じ又は異なるB−ブロックを含有していてもよい。ブロックコポリマーは線状のA−B−A構造を有していてもよい。同様に放射状構造並びに星型及び線状多重ブロックコポリマーも使用することができる。他の成分としてはA−B二成分ブロックコポリマーが存在していてもよい。ビニル芳香族化合物及びイソブチレンのブロックコポリマーも同様に本発明に従って使用することができる。上述のポリマーの全てが単独でも又は相互の混合物の状態でも使用することができる。
【0024】
この場合、使用されるブロックコポリマーの少なくとも一部は酸又は酸無水物で変性されていなければならず、その変性は原則として不飽和のモノ及びポリカルボン酸又は酸無水物、例えばフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸又は無水シトラコン酸、特に無水マレイン酸をラジカル的にグラフト共重合することによって行われる。酸或いは酸無水物の割合はブロックコポリマー全体を基準として0.5〜4重量%であるのが有利である。
【0025】
かゝるブロックコポリマーは例えばShell 社のKratonTM FG 1901 及びKratonTMFG 1924 或いはアサヒ(Asahi)社のTuftecTMM 1913 及びTuftecTMM 1943の名称で市販されている。
【0026】
エポキシ樹脂としては一般に分子当たり1つより多いエポキシ基を持つモノマー或いはオリゴマー化合物を意味する。これらはグリシジドエステル又はエピクロロヒドリンとビスフェノールA又はブスフェノールF又はこれら両者の混合物との反応生成物もある。同様にフェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物にエピクロロヒドリンが反応して得られるエポキシドノボラック樹脂も使用することができる。エポキシ樹脂の希釈剤として使用される、複数のエポキシ基を持つモノマー化合物も使用することができる。同様に弾性変性されたエポキシ樹脂も使用することできるし又はエポキシ変性されたエラストマー、例えばエポキシ変性されたスチレンブロックコポリマー、例えばダイセル株式会社のEpofriendも使用できる。
【0027】
エポキシ樹脂の例にはCiba Geigy社のAralditeTM 6010、CY-281TM、ECNTM 1273、ECNTM 1280、MY 720及び RD-2;Dow Chemicals社のDERTM 331、732、736及びDENTM 432;Shell Chemicals社のEponTM 812、825、826、828、830等; 同じShell Chemicals社のHPTTM 1071、1079;Bakelite AG社のBakeliteTM EPR 161、166、172、191、194等がある。
【0028】
市販の脂肪族エポキシ樹脂には例えばUnion Carbide Corp.社のERL-4206、4221、4201、4289又は0400のようなビニルシクロヘキサンジオキサイドがある。
【0029】
弾性化エラストマーはHycarの名称でNoveon社から入手される。
【0030】
エポキシ希釈剤、すなわち複数のエポキシ基を持つモノマー化合物には例えばBakelite AG 社のBakeliteTM EPD KR、EPD Z8、EPD HD、EPD WF等又はUCCP社のPolypoxTM R 9、R12、R 15、R 19、R 20等がある。
【0031】
上述のとおり架橋剤の添加は必要ないにもかかわらず、他の硬化剤を添加してもよい。ここにおいて、硬化剤としては酸基又は酸無水物基を持つ物質だけを使用するべきである。何故ならば、エポキシ架橋反応に原則的に使用されるアミン類及びグアニジン類は酸無水物と反応して、反応性基の数を減少させてしまうからである。
【0032】
酸又は酸無水物で変性された上記のビニル芳香族化合物ブロックコポリマーの他に別の酸又は酸無水物も、より高い架橋度及びそれ故のさらに改善された凝集性を達成するために添加してもよい。この場合には、米国特許第3,970,608 A号明細書に記載されている様なモノマーの酸無水物及び酸、酸又は酸無水物で変性されたポリマー並びにコポリマー、例えばISP社からGantrezTMの名称で市販されるポリビニルメチルエーテル無水マレイン酸コポリマーが使用することができる。
【0033】
金属キレートの金属は第2、3、4及び5主族の金属及び遷移金属であってもよい。特に例えばアルミニウム、錫、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、マンガン、鉄、コバルト及びセリウムが適しており、中でもアルミニウム及びチタンが特に適している。
【0034】
キレート架橋反応のためには種々の金属キレートが使用でき、それらは以下の式で表すことができる:
(RO)M(XRY)
[式中、Mは上記の如き金属であり、
はアルキル又はアリール基、例えばメチル、エチル、ブチル、イソプロピル又はベンジル基であり、
nは0又はそれより大きい整数であり、
X及びYはそれぞれ二重結合によってRに結合していてもよい酸素又は窒素原子であり、
はX及びYが結合している分岐していてもよい又は鎖中に酸素原子又は他のヘテロ原子を含有していてもよいアルキレン基であり、
mは整数であるが、少なくとも1である。]
特に有利なキレートリガンドには、以下の化合物の反応で生じるものがある:トリエタノールアミン、2,4−ペンタンジオン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオオール又は乳酸。特に有利な架橋剤はアルミニウム−及びチタニルアセチルアセトナートである。
【0035】
この場合、最適な架橋を達成するためには、酸基或いは酸無水物基とアセチルアセトナート基とのほぼ当量比を選択するべきである。架橋剤が僅かに過剰であると有効であることがわかっている。
【0036】
酸無水物基とアセチルアセトナート基との比は変更することができ、十分な架橋のためには両方の基が5倍モル過剰より更に多く存在するべきでない。
【0037】
エポキシ樹脂とエラストマーとの化学的架橋によって非常に大きい強度が接着フィルム内で達成される。ポリイミドに対する接着強度も明らかに高い。
【0038】
接着を向上させるために、ブロックコポリマーのエラストマーブロックとの相容性のある粘着樹脂を添加してもよい。
【0039】
本発明の感圧接着剤中の粘着剤としては、例えばコロホニウム又はコロホニウム誘導体をベースとする水素化されていない、部分的に又は完全に水素化された樹脂、水素化されたジシクロペンタジエンポリマー、C−、C/C−又はC−モノマー留分をベースとする水素化されていない、部分的に、選択的に又は完全に水素化された炭化水素樹脂、α−ピネン及び/又はβ−ピネン及び/又はδ−リモネンをベースとするポリテルペン樹脂、C−及びC−芳香族化合物の水素化重合体を使用することができる。上述の粘着樹脂は単独でも混合状態でも使用することができる。
【0040】
他の添加物としては典型的な以下のものが使用できる:
− 第一酸化防止剤、例えば立体障害フェノール;
− 第二酸化防止剤、例えばホスフィット又はチオエーテル;
− 加工安定剤、例えばC−ラジカル捕捉剤;
− 光保護剤、例えば紫外線吸収剤又は立体障害アミン;
− 加工助剤;
− 末端ブロック強化用樹脂;
− 充填剤、例えば二酸化珪素、ガラス(粉砕物又は球状物)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、金属粉末等;
− 着色顔料及び染料並びに蛍光増白剤;
− 場合によっては他のポリマー、特にエラストマー特性のもの。
【0041】
本発明の系の一つの長所は、ブロックコポリマーの末端ブロックのポリスチレンの軟化点からもたらされる非常に低い軟化点にある。エラストマーは架橋反応のときにポリマーネットワーク中に一緒に組み込まれそしてこの反応が、FPC基板の接合のために一般的に使用される200℃までの高温で比較的に迅速なので、接合ラインから接着剤が外に出ることがない。以下の促進剤の添加によって反応速度は更に早められる。促進剤を以下に例示する:
− 第三アミン、例えばベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール;
− 三ハロゲン化硼素−アミン複合体、
− 置換されたイミダゾール;
− トリフェニルホスフィン。
【0042】
理想的には酸変性或いは酸無水物変性されたエラストマー及びエポキシ樹脂は、エポキシ基と酸無水物基とのモル比が正に当量であるような量比で使用する。僅かしか変性されていないエラストマーを使用しそして低いエポキシ当量の低分子量エポキシ樹脂を使用する場合には、使用されるエポキシ樹脂は非常に僅かな量、すなわち変性されたスチレンブロックコポリマーを基準として10重量%以下になる。
【0043】
しかしながら酸無水物基とエポキシ基との比は広い範囲で変更することができ、この場合、十分な架橋のために両方の基は4倍モル以上に過剰に存在しないようにするべきである。
【0044】
接着テープを製造するためには、接着剤の成分は好ましくは適用な溶剤、例えばトルエン又はベンジンとアセトンとの70/90混合物に溶解しそして剥離層、例えば剥離紙又は剥離塗膜を設けた柔軟な基体に塗布乾燥させ、結果として接着剤を基体から容易に剥離することができる。
【0045】
適当な加工の後に、打ち抜き物、ロール状物又は他の成形体を室温で製造することができる。相応する成形体を次いで好ましくは高温で、接合用基体、例えばポリイミドに貼り付ける。
【0046】
接着剤をポリイミド支持体に直接的に塗布することも可能である。かかる接着フィルムはFPC基板の銅製導体路を貼り付けるために使用することができる。
【0047】
接着を一段階法として行うことは必要ない。勿論、熱い状態で積層することによって、二つの基体の一つの上に少なくとも接着テープを貼り付けることが可能である。第二の基体(第二のポリイミドフィルム又は銅製フィルム)との本来の加熱状態での接着過程では、樹脂が完全に又は部分的に硬化しそして接合線が高い接合強度を達成する。
【0048】
混入されたエポキシ樹脂は好ましくは積層温度では化学反応に入らないが、加熱状態での接着法で初めて酸基又は酸無水物基と反応する。
【0049】
本発明の接着剤は、エラストマーが実質的に樹脂と化学的に架橋するのが有利であるが、エポキシ樹脂のための硬化剤の添加は、エラストマー自体が硬化剤として働くので必ずしも必要ない。
【0050】
製造の際に乾燥する間に生じる金属キレートとの架橋反応によって、本発明の接着剤は明らかに鹸化され、あるいはE−モジュールが高まる。
【0051】
驚くべきことに、エラストマーの酸基あるいは酸無水物基と金属キレートとで室温でこの架橋反応があるにも関わらず、熱で活性化することによって、大抵は150℃以上の温度で変性エラストマーとエポキシ樹脂との間の架橋がもたらされ、それによって高い凝集性及び高い接合強度が達成される。金属キレートはこの第二の架橋段階を妨害しない。
【0052】
[実施例]
以下に幾つかの実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0053】
92.5gのKratonTM FG 1901(30重量%のブロックポリスチレン及び約2重量%の無水マレイン酸を含有する無水マレイン酸変性されたスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロックコポリマー)、7.5gのBakeliteTM EPR 191(エポキシ樹脂)及び2gのアルミニウム−アセチルアセトナートよりなる混合物をトルエンに溶解し、この溶液を1.5g/mのシリコ−ン加工剥離紙に塗布しそして110℃で15分乾燥する。接着層の厚さは25μmである。
【実施例2】
【0054】
87.4gのKratonTM FG 1901、2.6gのBakeliteTM EPR 161(エポキシ樹脂)、10gのRegaliteTM R 1100(Eastman社の約100℃の軟化点の水素化炭化水素樹脂)及び1.5gのアルミニウム−アセチルアセトナートよりなる混合物をトルエンに溶解し、この溶液を1.5g/mのシリコ−ン加工剥離紙に塗布しそして110℃で15分乾燥する。接着層の厚さは25μmである。
[比較例3]
【0055】
92.5gのKratonTM FG 1901(30重量%のブロックポリスチレン及び約2重量%の無水マレイン酸を含有する無水マレイン酸変性されたスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロックコポリマー)及び7.5gのBakeliteTM EPR 191(エポキシ樹脂)よりなる混合物をトルエンに溶解し、この溶液を1.5g/mのシリコ−ン加工剥離紙に塗布しそして110℃で15分乾燥する。接着層の厚さは25μmである。
【0056】
製造された接着テープでのFPC基板の貼り付け:
2つのFPC基板を実施例1及び2並びに比較例3に従って製造された接着テープで貼り付ける。この目的のために接着テープをポリイミドフィルム/銅製フォイルよりなるFPC基板のポリイミドフィルムの上に積層貼り付ける。次いで別のFPC基板の第二のポリイミドフィルムを該接着テープに貼り付けそしてその全複合体を加熱可能なブリクレ(Burkle)式プレス装置において180℃、1.3MPaの圧力で30分間プレス成形する。
【0057】
試験方法:
上述の実施例に従って製造した接着フィルムの性質を以下の試験法で試験した:
FPC基板を用いるT型剥離試験:
Zwick社の引張り試験機を用いて、上述の方法で製造された、FPC基板/接着テープ/FPC基板−複合体を180°の角度で50mm/分の速度で互い引き剥がしそしてそれに必要な力を(N/cm)を測定する。測定は20℃、50%の相対湿度で行った。各測定値は三度測定した。
【0058】
5%伸び率での力:
薄く、かつ、柔軟性のある材料の場合にE−モジュールを測定することはしばしば困難なので、代わりに5%の伸び率での力を測定した。この目的のために接着剤から1cm幅及び10cmの長さの接着剤ストリップを打ち抜き、これを引張り試験機で引張り試験した。このストリップを300mm/分の速度で引き延ばしそして5%の伸び率のときの力を測定した。この値はN/cmで表される。
【0059】
ハンダ槽安定性:
上記の方法に従って貼り付けたFPC基板複合体を288℃の熱いハンダ槽に10秒間置く。接合は、TPC基板のポリイミドフィルムを膨張させる気泡が生じない場合にハンダ槽耐久性があると評価した。この試験は、既に僅かな気泡の発生が有った場合に耐久性がないと評価した。
【0060】
温度安定性:
上記のT字型剥離試験と同様に、上に開示した方法に従って製造したFPC基板複合体の片側を固定し吊り下げ、もう一方の側に500gの重りを固定する。静的剪断試験を70℃で行った。静的剥離進行距離をmm/時で測定した。
【0061】
結果:
上述の実施例を接着技術的に評価するために最初にT字型剥離試験を実施した。
【0062】
結果を表1に示した:
【0063】
【表1】

【0064】
表1からわかるとおり、実施例1と比較例3では同様な高い接着力を達成できた。
【0065】
接着テープの温度安定性は、値が表2に示されている静的剥離試験で測定された。
【0066】
【表2】

【0067】
ここでも実施例1と比較例3とに大きな相違がないが、樹脂が混入された生成物だけが多少大きな剥離速度を示した。
【0068】
5%の伸び率のときの力は表3から知ることができる。
【0069】
【表3】

【0070】
キレートでの架橋によって、接着剤ストリップを引き延ばすために必要な力は明らかに増加する。
【0071】
ハンダ槽試験は3つの例全てで安定していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
a)酸又は酸無水物変性されたビニル芳香族化合物ブロックコポリマー
b)エポキシ含有化合物及び
c)金属キレート
よりなる接着剤を用いて特に電子部品及び導体通路を接合するための熱活性化可能な接着テープ。
【請求項2】
ビニル芳香族化合物ブロックコポリマーがスチレンブロックコポリマーである、請求項1に記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項3】
エポキシ含有化合物がエポキシ樹脂及び/又はエポキシ化ポリマーである、請求項1又は2に記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項4】
エポキシ基がエラストマーの酸或いは酸無水物基と150℃以上の温度で架橋する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項5】
金属キレートが一般式
(RO)M(XRY)
[式中、Mは第2、3、4又は5主族の金属又は遷移金属であり、
はアルキル又はアリール基、例えばメチル、エチル、ブチル、イソプロピル又はベンジルであり、
nは0又はそれより大きい整数であり、
X及びYはそれぞれ二重結合によってRに結合していてもよい酸素又は窒素原子であり、
はX及びYが結合している分岐していてもよい又は鎖中に酸素原子又は他のヘテロ原子を含有していてもよいアルキレン基であり、
mは整数であるが、少なくとも1である。]
で表される、請求項1〜3のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項6】
金属キレートがアルミニウム−又はチタニルアセチルアセトナートである、請求項1〜5のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項7】
接着テープが他の酸無水物、他のエラストマー、粘着樹脂、促進剤、染料、カーボンブラック及び/又は金属粉末を含有する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項8】
エポキシ樹脂の割合が酸或いは酸無水物変性されたエラストマーの割合を基準として最大10重量%、好ましくは5重量%である、請求項1〜7のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項9】
少なくとも、酸或いは酸無水物変性されたビニル芳香族化合物ブロックコポリマー及びエポキシ樹脂よりなる熱活性化可能な接着テープを使用する、合成樹脂部材を接合する方法。
【請求項10】
合成樹脂部材を貼り付けるための請求項1〜9のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープの使用方法。
【請求項11】
電子部品及び/又は柔軟なプリント回路(FPC基板)を貼り付けるための、請求項1〜9のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープの使用方法。
【請求項12】
ポリイミドに貼り付けるための、請求項1〜9のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープの使用方法。

【公表番号】特表2010−505978(P2010−505978A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530845(P2009−530845)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060096
【国際公開番号】WO2008/043660
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】