説明

特定物質検知装置及び方法

【課題】簡便な構造と処理により、広く設置可能な大きさと価格をもち、エチルアルコール等の物質の特定を即時になし得ることを可能とする。
【解決手段】撮像制御部40は、被写体からの特定物質の吸収波長を含む吸収波長帯域λ1,λ2の赤外光を波長可変フィルタ14により選択的に透過させて赤外線カメラ12に結像して測定した信号データL1,L2をメモリ24に記憶し、また、被写体からの特定物質の吸収波長ではない波長を含む参照波長帯域(λ3)の赤外光を同様に測定して信号データL3をメモリ24に記憶する。計算部42はメモリ24に記憶された測定データ(L1,L2,L3)のベクトルと、メモリに予め記憶された基準データ(R1,R2,R3)のベクトルのなす角θとして特定物質の確率度を算出する。判定部44は特定物質の確率度が所定の閾値以下の場合に特定物質の検出を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質から発する赤外線のスペクトルに基づいて、物質を特定する特定物質検知装置に関し、特に、飲酒により血液中に溶け込んでいるエチルアルコールを人体から放射する赤外線に基づいて、検知して酒気帯び運転などを判定する特定物質検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物質のスペクトル特性に基づいて物質を特定する装置として、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)が知られている。FT−IRは、フーリエ変換を利用して赤外光の各波長における強度分布を調べる装置であり、測定すべき全波長帯域についてスペクトルを連続的に測定し、参照スペクトルデータと照合して物質を特定するものである。
【0003】
またスペクトルを基に物質を検知する装置としては、炎検知器が挙げられる。炎検知器では炎に伴って発生する二酸化炭素の共鳴スペクトルに相当する特徴波長と、その近傍の参照波長の輝度を、赤外線検出器により測定し炎を検知する。
【特許文献1】特開2001−249047号公報
【特許文献2】特開2006−331050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のFT−IRにあっては、装置が大型となること、被検体のスペクトル測定に時間が掛かること、参照スペクトルとの照合に複雑な計算が必要なこと等により、警報装置としての利便性、設置容易性および即時性がなく、警報装置として広く使用することは困難であった。
【0005】
また炎検知器にあっては、二酸化炭素と類似した物質との識別が難しく、警報の確実性を欠いていた。
【0006】
本発明は、簡便な構造と処理により、広く設置可能な大きさと価格をもち、物質の特定を即時になし得る特定物質検知装置及び方法を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、運転者の放射する赤外線から血中のエチルアルコールを検知して酒気帯び防止などに利用可能で且つ高度なエチルアルコール識別性を持つ特定物質検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は特定物質検知装置であって、
赤外線波長帯域に感度を有する受光素子と、
被検体を前記受光素子に結像させる光学系と、
被写体からの特定物質の吸収波長を含むm個の吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を選択的に透過させる吸収波長フィルタリング手段と、
被写体からの特定物質の吸収波長ではない波長を含むn個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を選択的に透過させる参照波長フィルタリング手段と、
m個の吸収波長フィルタリング手段を透過して結像された被写体の測定データ(L1,L2・・・Lm)、及びn個の参照波長フィルタリング手段を透過して結像された被写体の測定データ(Lm+1,Lm+2・・・Lm+n)を、メモリに格納する信号処理部と、
メモリに記憶された特定物質のm個の吸収帯域フィルタリング手段およびn個の参照帯域フィルタリング手段による測定データ(L1,L2,・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)と、メモリに予め記憶された基準データ(R1,R2,・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)に基づいて、被検体に存在する特定物質の確率度を算出する計算部と、
特定物質の確率度が所定の閾値以下の場合に特定物質の検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、吸収波長フィルタリング手段は、被写体からの特定物質の吸収波長を含む吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を選択的に透過させるm個の狭帯域フィルタであり、
参照波長フィルタリング手段は、被写体からの特定物質の吸収波長ではない波長を含むn個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を選択的に透過させるn個の狭帯域フィルタである。
【0010】
また、特定物質はエチルアルコールであり、
吸収波長フィルタリング手段は、被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を選択的に透過させるm個の狭帯域フィルタであり、
参照波長フィルタリング手段は、被写体からのエチルアルコールの吸収波長ではない波長を含むn個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を選択的に透過させるn個の狭帯域フィルタであり、
計算部は、メモリに記憶されたエチルアルコールのn個の吸収帯域フィルタおよびm個の参照帯域フィルタによる測定データ(L1,L2・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)と、メモリに予め記憶された基準データ(R1,R2・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)に基づいて被検体に存在するエチルアルコールの確率度を算出し、
判定部は、前記エチルアルコールの確率度が所定の閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定する。
【0011】
特定物質をエチルアルコールとした場合、
計算部は、メモリに記憶されたn個の吸収帯域フィルタおよびm個の参照帯域フィルタによる測定データ(L1,L2・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)により形成される(m+n)次ベクトルLと、メモリに予め記憶されたエチルアルコールのn個の吸収帯域フィルタおよびm個の参照帯域フィルタによる基準データ(R1,R2・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)により形成される(m+n)次ベクトルRが、(m+n)次元空間上でなす交差角θをエチルアルコールの確率度として計算し、
判定部は、交差角θが所定値以下であるとき、被検体をエチルアルコールと判定する。
【0012】
例えば計算部は、(m+n)次ベクトルLの成分を(L1,L2・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)とし、(m+n)次ベクトルRの成分を(R1,R2・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)としたとき、ベクトルLとベクトルRのなす交差角θを次式により算出する。
【0013】
θ=cos-1[(L1R1+L2R2・・・LmRm+Lm+1Rm+1+・・・+Lm+nRm+n)/|L|*|R|]
吸収波長フィルタリング手段及び参照波長フィルタリング手段として、干渉フィルタ、回折格子または波長可変フィルタを用いても良い。
【0014】
本発明は特定物質検知方法を提供する。本発明の特定物質検知方法は、
被写体からの特定物質の吸収波長を含むm個の吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を吸収波長フィルタリング手段により選択的に透過させて光学系により受光素子に結像して測定し、測定した信号データ(L1,L+2・・・Lm)をメモリに記憶し、
被写体からの特定物質の吸収波長ではない波長を含むn個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を参照波長フィルタリング手段により選択的に透過させて光学系により受光素子に結像して測定し、測定した信号データ(Lm+1,Lm+2・・・Lm+n)をメモリに記憶し、
メモリに記憶された特定物質のn個の吸収帯域フィルタリング手段およびm個の参照帯域フィルタリング手段による測定データ(L1,L2,・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)と、メモリに予め記憶された基準データ(R1,R2,・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)に基づいて被検体に存在する特定物質の確率度を算出し、
特定物質の確率度が所定の閾値以下の場合に特定物質の検出を判定する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定物質としてエチルアルコールを検知する場合、運転者の体温による人体からの赤外線放射光、特に、皮膚が露出している顔からの赤外線放射光からエチルアルコールのn個の吸収帯域およびm個の参照帯域の測定データと、エチルアルコールについて予め求められているn個の吸収帯域およびm個の参照帯域の基準データに基づいて、運転者の血中アルコール濃度に対応したエチルアルコールである確率度を算出し、確率度が所定の閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、運転者の酒気帯び状態を正確に判定して適切な措置をとることができる。
【0016】
また、化粧品に含まれるメントールは、エチルアルコールと同じ特定の吸収波長をもつことで外乱要因となるが、エチルアルコールの全ての吸収波長で重なることはなく、その結果、メントールの測定データとエチルアルコールの基準測定データから計算されるエチルアルコールである確率度は閾値を越える大きな値となり、化粧品などによるエチルアルコールの誤検出を確実に防止することができる。
【0017】
また、特定物質検知装置は、赤外線受光素子、結像光学系、波長可変フィルタ、メモリ及び計算機能を備えたプロセッサといった簡単な装置構成で実現することができ、警報装置としての利便性、設置容易性および即時性があり、例えば車両に搭載して酒気帯び運転防止装置として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明による特定物質検知装置の実施形態を示した説明図であり、特定物質として飲酒によって運転者の放射する赤外線から血中のエチルアルコールを検知して酒気帯び運転を防止する場合を例にとっている。
【0019】
図1において、特定物質検知装置10は、コンピュータのハードウェア環境を代表して示すCPU11を有し、CPU11に対しては運転者の酒気帯びによる血中のエチルアルコールを検出するため、赤外線カメラ12、波長可変フィルタ14、カメラ制御部16、フィルタ駆動部18及び赤外線光源20が設けられている。
【0020】
赤外線カメラ12は例えば車両のダッシュボードやメータパネルなどに内蔵されており、波長可変フィルタ14を介して、被写体となる運転者の顔から放射または反射される赤外線放射光による画像を撮像する。
【0021】
図2は本実施形態で使用する波長可変フィルタを用いた赤外線カメラを示した説明図である。図2において、赤外線カメラ12の対物レンズ50と結像レンズ52の間には波長可変フィルタ14が設けられ、波長可変フィルタ14の透過波長はフィルタ駆動部18により制御される。赤外線カメラ12内には撮像素子54が配置され、結像レンズ50により結像された波長可変フィルタ14を透過した波長帯域の赤外線画像を撮像する。
【0022】
波長可変フィルタ14はファブリペロー型干渉フィルタとして知られており、例えば200〜300オングストローム程度の厚みを有するAuなどの反射膜となる透過性の金属膜を対向する面に蒸着した一対のガラス基板を有し、一対のガラス基板を間に圧電素子を介して対向配置し、その間に微小間隔を設定している。ガラス基板の間の圧電素子は、フィルタ駆動部18による直流電圧の印加を受けて、基板間隔を変化させることができる。
【0023】
波長可変フィルタ14は、一方のガラス基板側からの入射光に対し、透過性を持つ金属膜の間で多重反射によって生ずる干渉作用に起因して複数の透過スペクトルが分布して光を透過する。このような波長可変フィルタ14としては、例えば特開平8−285688号のものが使用できる。
【0024】
図3は図2の波長可変フィルタの代わりに回転円板を用いたフィルタ切替えの赤外線カメラを示した説明図である。赤外線カメラ12には光学系と赤外線波長帯域に感度を持つ撮像素子(たとえばCCD)が設けられている。赤外線カメラ12の前には図1の波長可変フィルタ14に代えてフィルタ切替ユニット56が配置され、回転円盤の例えば3箇所に帯域の異なるフィルタとして、本実施形態にあってはλ1フィルタ58−1、λ2フィルタ58−2及びλ3フィルタ58−3を装着し、これらのフィルタをモータを備えた駆動部により順次切り替えながら、運転者の顏の赤外線放射光による画像を撮像する。
【0025】
再び図1を参照するに、CPU11に対しては、個人認証メモリ22とワーク用のメモリ24が設けられる。個人認証メモリ22には、運転者を識別するための基準画像が予め登録されている。
【0026】
また、CPU11に対しては、エンジンECU26、音声警報部28、外部通報部30、ディスプレイ34を備えたナビゲーションシステム32が設けられている。
【0027】
更に、CPU11には、プログラムの実行により実現される機能として、エチルアルコール検知部36と酒気帯び運転防止処理部38が設けられている。エチルアルコール検知部36には、信号処理部として機能する撮像制御部40、エチルアルコールの確率度を計算する計算部42、及びエチルアルコールの検知を判定する判定部44が設けられ、運転者から放射される赤外線の被写体画像に基づいて、運転者の血液中に溶け込んでいるエチルアルコールを測定する。
【0028】
酒気帯び運転防止処理部38はエンジン始動操作時にエチルアルコール検知部36の検知結果から酒気帯び状態を判定した場合はエンジンの始動を停止し、エンジン始動後に酒気帯び状態を判定した場合は車両を速度制御して停車状態に案内する。
【0029】
次に本実施形態におけるエチルアルコール検知部36を詳細に説明する。エチルアルコール検知部36は、運転者の酒気帯び状態を顔面などの皮膚直下の毛細血管に表れる含有エチルアルコールを検出する。毛細血管中の含有エチルアルコールの検出は、運転者の体温による人体からの赤外線放射光におけるエチルアルコールによる特定波長の吸収スペクトルによる減衰を検知することを基本としている。
【0030】
図4は本実施形態で検知するエチルアルコールの波長スペクトル分布を示した説明図である。エチルアルコールC25OHは、その分子構造に由来する吸収スペクトルを2.77μm、3.37μm及び9.5μmなどの特定波長に持っている。例えば波長2.77μmの吸収スペクトルは、エチルアルコール中の−CH3の結合伸縮に伴い、エチルアルコール分子が吸光する波長帯である。
【0031】
このようなエチルアルコールの波長スペクトル分布に対し本実施形態にあっては、まず酒気帯び状態と判定される血中アルコール濃度の被験者に対し、例えば0.5メートルといった近い距離に赤外線カメラ12を設置し、エチルアルコールの吸収波長帯域と吸収波長を含まない波長の参照波長帯域につき基準データを測定してメモリ24に予め記憶する。
【0032】
即ち、撮像制御部40によって波長可変フィルタ14を切替制御し、被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含むm個の吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を選択的に透過させ、赤外線カメラ12の撮像素子54に結像させ、画素値の総和または平均値として吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)毎の吸収基準データ(R1,R2・・・Rm)を求めてメモリ24に記憶する。
【0033】
また、撮像制御部40によって波長可変フィルタ14を切替制御し、被写体からのエチルアルコールの吸収波長ではない波長を含むn個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を選択的に透過させ、赤外線カメラ12の撮像素子54に結像させ、画素値の総和または平均値として参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)(λ1,λ2・・・λm)毎の参照基準データ(Rm+1,Rm+2・・・Rm+n)を求めてメモリ24に記憶する。
【0034】
このように基準データがメモリ24に準備できたならば、任意の被験者につき任意の測定距離において、エチルアルコール検知のために測定処理を行う。この測定処理は基準データの測定処理と同じであり、吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)毎の測定データは吸収測定データ(L1,L2・・・Lm)としてメモリ24に記憶し、参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)毎の測定データは吸収測定データ(Lm+1,Lm+2・・・Lm+n)としてメモリ24に記憶する。
【0035】
図5は基準データと測定データに対応したエチルアルコールの波長スペクトル分布を示す。基準データ60は被検体に近い例えば0.5メートルで測定していることから受光信号レベルは充分に高くなっている。これに対し測定データ62は被検体に対し4メートルの距離から測定しており、受光信号レベルが低くなっている。
【0036】
次に計算部42が、メモリ24に記憶された測定データ(L1,L2,・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)と、メモリ24に予め記憶された基準データ(R1,R2,・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)に基づいて、被検体に存在する特定物質であるエチルアルコールの確率度を算出する。
【0037】
本実施形態で計算部42は、メモリ24に記憶された測定データ(L1,L2・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)により形成される(m+n)次ベクトルLと、メモリ24に予め記憶された基準データ(R1,R2・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)により形成される(m+n)次ベクトルRが、(m+n)次元空間上でなす交差角θを次式によりエチルアルコールの確率度として計算する。
【0038】
θ=cos-1[(L1R1+L2R2・・・LmRm+Lm+1Rm+1+・・・+Lm+nRm+n)/|L|*|R|]
(1)
ここで、|L|、|R|はベクトルの絶対値である。
【0039】
判定部44は、前記(1)式で算出された交差角θが所定値以下であるとき、被検体をエチルアルコールと判定する。
【0040】
本実施形態によるエチルアルコール検知を具体的に説明すると次のようになる。ここで、説明を単純化するため、吸収波長としてλ1=2.77(μm)、 λ2=3.37(μm)を設定し(m=2)、参照波長としてλ3=3.0(μm)を設定する(n=1)。
【0041】
図6はλ1=2.77(μm)、 λ2=3.37(μm)、λ3=3.0(μm)とした場合に、図5の波長スペクトル分布から求められた基準データR1,R2,R3、及び測定データL1,L2,L3、更に計算パラメータとして(R*L),R2,L2の一覧を示している。
【0042】
図7は基準データ(R1,R2,R3)=(44,7,100)の基準ベクトルRと、測定データ(L1,L2,L3)=(27,3,60)の測定ベクトルLを波長λ1,λ2、λ3の受光測定値をXYZ軸上にとった3次元空間に示している。
【0043】
この3次元空間に示した基準ベクトルRと測定ベクトルLのなす角である交差角θは、次式から導かれる。
θ=cos-1[(L1R1+L2R2+L3R3)/|L|*|R|]
=cos-1[7209/(√11985*√4338)]
=cos-1[0.9998]
=0.020 (rad)
ここで、ベクトルの絶対値|L|、|R|は
|L|=√(L12+L22+L32)
|R|=√(R12+R22+R32)
から導かれる。
【0044】
この交差角θが基準ベクトルRとしたエタノールに、測定サンプルである測定ベクトルLのエタノールが合致する確率を表しており、交差角θが0に近いほど合致度が高くなる。
【0045】
次に判定精度を高めるため、吸収波長数をm=5とした波長λ1〜λ5、及び参照波長数をn=4とした波長λ6〜λ9による9次元ベクトルについて考える。
【0046】
図8は波長λ1〜λ9について、図5の波長スペクトル分布から求められた基準データR1〜R9、及び測定データL1〜L9、更に計算パラメータとして(R*L),R2,L2の一覧を示している。
【0047】
即ち、m=5となる吸収波長は、
λ1=2.77,λ2=3.37,λ3=7.1,λ4=8.0, λ5=9.5(μm)
とし、n=4となる参照波長は
λ6=3.0,λ7=3.28,λ8=4.5,λ9=6.0(μm)
としている
図8の一覧から基準データ(R〜R9)の基準ベクトルRと、測定データ(L1〜L9)の測定ベクトルLとが9次元空間でなす交差角θは次式から導かれる。
cosθ=[(L11+L22+・・・+Lkk+・・・Lm+nm+n)/|L|*|R|]
=26130/(√42857*√15951)
=0.9994
θ=cos-10.9994 = 0.035 (rad)
このような算出された確率度としてのベクトル交差角θは充分に小さく零に近い値であることから、測定サンプルがほぼエチルアルコールと識別できることが、確率度から判断できる。
【0048】
次に測定サンプルとしてメントールをとり、その波長スペクトル分布の測定データを図9に示す。メントールはエチルアルコールと一部の分子構造を同じくするため、吸収波長においてエチルアルコールと同様の吸収を示す。しかし参照波長においても吸収が現れる点で相違している。
【0049】
図10は、図9のメントールの波長スペクトル分布について、波長λ1〜λ9の基準データR1〜R5、及び測定データL6〜L9、更に計算パラメータとして(R*L),R2,L2の一覧を示している。
【0050】
図10の一覧から測定サンプルのエチルアルコール確率度を計算する。即ち、基準データ(R〜R9)の基準ベクトルRと、測定データ(L1〜L9)の測定ベクトルLとが9次元空間でなす交差角θは次式から導かれる。
cosθ=[(L11+L22+・・・+Lkk+・・・Lm+nRm+n)/|L|*|R|]
=23650/(√42857*√15815)
=0.9084
θ=cos-10.9084=0.431 (rad)
この場合の交差角θは、測定サンプルをエチルアルコールとした場合の値よりも十分に大きく、被検サンプルはエチルアルコールとは異なることが、確率度から判断できる。
【0051】
図11は図1のエチルアルコール検知部36による検知処理を示したフローチャートであり、このフローチャートに従ったプログラムが図1のCPU11で実行される。まずステップS1で、吸収波長数mに対応して定めた吸収波長(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を波長可変フィルタ14の切替制御により選択的に透過させ、赤外線カメラ12のCCD撮像素子54に結像させ、吸収測定データ(L1,L2・・・Lm)を求めてメモリ24に記憶する。
【0052】
続いてステップS2で、n個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を波長可変フィルタ14の切替制御により選択的に透過させ、赤外線カメラ12のCCD撮像素子54に結像させ、参照測定データ(Lm+1,Lm+2・・・Lm+n)を求めてメモリ24に記憶する。
【0053】
続いてステップS3で、前記(1)式によりエチルアルコールの確率度となる(m+n)次空間での基準ベクトルRと測定ベクトルLとの交差角θを計算し、ステップS4交差角θが所定の閾値以下であれば、ステップS5でエチルアルコール検知により酒気帯び状態と判定する。交差角θが閾値を越えていれば、エチルアルコールは検知されないことからステップS6で正常状態と判定する。
【0054】
図12は図1の酒気帯び運転防止部38による処理を示したフローチャートであり、このフローチャートに従ったプログラムが図1のCPU11で実行される。
【0055】
図12において、運転者がイグニッションキーをセットしてエンジン始動操作を行ったときに起動すると、まずステップS11で運転者認証処理を実行する。運転者認証処理は、赤外線カメラ12により運転者画像を撮像して読み取り、個人認証メモリ22に予め登録している登録画像と照合する。撮影画像と登録画像の照合一致により、認証に成功すると次のステップS12に進む。
【0056】
個人認証メモリ22に予め登録している登録画像以外の運転者による撮影画像であった場合には、認証不成功となり、処理を終了することでエンジンは始動せず、車両を運転することができない。なお本実施形態にあっては運転者認証処理を設けた場合を例に取っているが、個人認証メモリ22に基準画像の登録をしていなければ、ステップS11の認証処理はスキップすることになる。
【0057】
ステップS11の運転者認証処理が認証成功もしくは登録画像がないことによりスキップしてステップS12に進むと、CPU11に設けたエチルアルコール検知部36により、赤外線カメラ12により運転者画像を取得して図11のフローチャートに示したエチルアルコール検知処理を実行する。
【0058】
続いてステップS13で、ステップS12のエチルアルコール検知処理の処理結果から酒気帯び状態を判定した場合には、ステップS14に進み、運転者に警告を発信する。例えば音声警報部28を使用して「酒気帯び運転が検知されました。始動できません」の音声メッセージを出力する。同時に、例えばナビゲージョンシステム32のディスプレイ34を利用して、運転者に酒気帯び運転の検知とエンジンが始動できない旨のメッセージ表示を行う。そしてステップS15でエンジン始動を禁止して処理を終了する。
【0059】
このため、運転者が酒気帯び状態で車両のエンジンを始動して運転しようとしても、酒気帯び状態が検知されて、エンジンを始動することができず、酒気帯び運転を確実に防止できる。
【0060】
一方、酒気帯び状態にある運転者が例えば酒を飲んでいない同乗者に依頼して車両のエンジンを始動させるような場合がある。このような運転者以外によるエンジンの始動は、ステップS11の運転者認証処理において運転者の基準画像の登録を行っていないような場合に可能である。
【0061】
このように酒気帯び状態の運転者に代わって同乗者が成り済まし運転者となって車両のエンジンを始動した場合には、ステップS12のアルコール検知処理を行ってもステップS13で酒気帯び状態は判別されず、ステップS16に進んでエンジンが正常に始動する。
【0062】
このように酒気帯び状態にある運転者に成り済まして同乗者がエンジンを始動することで、結果的にステップS12〜ステップS15の処理をすり抜けて酒気帯び運転が行われてしまう場合が想定される。
【0063】
しかしながら、成り済ましによりエンジンを始動した後の酒気帯び運転については、ステップS17で走行中にあっても一定時間ごとの検査タイミングへの到達を判別するとステップS18に進み、ステップS12と同様に運転者画像を赤外線カメラ12で撮像してエチルアルコール検知処理が実行される。
【0064】
このエチルアルコール検知処理により、ステップS19で酒気帯び状態が判定されると、ステップS20で運転者に警告を発信する。具体的には、音声警報部28を使用して例えば「酒気帯びが検知されました。速度制御を開始します」との音声メッセージを出力する。同時に、ナビゲーションシステム32のディスプレイ34などを利用して運転者に警告表示を行う。
【0065】
続いてステップS21に進み、酒気帯び状態の検出に基づき酒気帯び運転を強制的に止めさせるため、そのときの走行速度から徐々に速度を低下させて、最終的に停止速度に移行させる速度制御を行う。このステップS21における速度制御に伴い、ステップS12で速度制御に伴うガイダンスを音声警報部28から行う。
【0066】
このガイダンスは、例えば「停止します。安全な位置に車を移動して下さい」との音声メッセージを出力する。同時に、同じ音声メッセージの内容をディスプレイ34に表示する。
【0067】
このステップS21の速度制御は、車両の速度は周囲の安全を確認して例えば路肩などに止めるに十分な時間、例えば2〜3分程度の時間に亘り、そのときの走行速度から停止速度に徐々に減速し、ステップS23で、車両停止となった段階でエンジンを強制的に停止する。
【0068】
そしてステップS24で、警察や適宜の管理機関に対し、酒気帯び運転に対する対処要請を外部通報部30を使用して行う。ここで警察に対する通報としては、酒気帯び運転の通報ではなく、酒気帯び状態にあることから車両を運転せずに路肩に停止していることを知らせる交通情報としての情報通告が主なものとなる。
【0069】
同様な通報は、道路の管理機関である例えば国もしくは地方公共団体の道路管理事務所に対しても、酒気帯び運転を行わないために車両を路肩に停車している旨を通知する。このような警察機関もしくは道路管理事務所などの管理機関に対する酒気帯び運転を回避するための車両停止に関する交通情報が通報されることで、適切な道路交通に対する対処が可能となる。
【0070】
なお、上記の実施形態は特定物質としてエチルアルコールの検知を例にとるものであったが、本発明は、適宜の特定物質の検知につきそのまま適用することができる。
【0071】
また、上記の実施形態にあっては、波長可変フィルタによるフィルタ切替えやフィルタ切替ユニットによる機械的なフィルタ切替えを例に取るものであったが、これ以外に回折格子などを用いた分光器により、目的とするスペクトル帯域の画像もしくは受光量を測定するようにしてもよい。
【0072】
また上記の実施形態にあっては、赤外線カメラ12で運転者の赤外線画像を取得する際に、カメラ制御部16により赤外線光源20を点灯して赤外光を被写体としての運転者に照射し、エチルアルコール吸収波長による赤外線反射光の変化量を大きくして、SN比を高めるようにしているが、赤外線を外部から照射しなくても十分にエチルアルコール吸収波長によるSN比が得られるような場合には、赤外線光源20を点灯する必要はない。
【0073】
また、上記の実施形態にあっては、赤外線波長帯域に感度を有する受光素子として赤外線カメラの撮像素子を例にとっているが、赤外線検出素子を用いても良い。赤外線検出素子としては、焦電素子、サーもパイル、サーミスタ、ボロメータなどの非冷却型素子や、MCT、Insbなどの冷却型素子を用いることができる。
【0074】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明による特定物質検知装置の実施形態を示したブロック図
【図2】本実施形態で使用する波長可変フィルタを用いた赤外線カメラを示した説明図
【図3】本実施形態で使用するフィルタ切替えの赤外線カメラを示した説明図
【図4】エチルアルコールの波長スペクトル分布を示した説明図
【図5】エチルアルコールのスペクトル測定データと基準データを示した説明図
【図6】エチルアルコールにつき吸収波長と参照波長の3要素の基準データ、測定データ及び計算パラメータの一覧を示した説明図
【図7】図6に基づく測定ベクトルと基準ベクトルを3次元ベクトル空間に示した説明図
【図8】エチルアルコールにつき吸収波長と参照波長の9要素の基準データ、測定データ及び計算パラメータの一覧を示した説明図
【図9】メントールの波長スペクトル分布を示した説明図
【図10】メントールにつき吸収波長と参照波長の9要素の基準データ、測定データ及び計算パラメータの一覧を示した説明図
【図11】本実施形態におけるエチルアルコール検知処理を示したフローチャート
【図12】本実施形態における酒気帯び運転防止処理を示したフローチャート
【符号の説明】
【0076】
10:特定物質検知装置
11:CPU
12:赤外線カメラ
14:波長可変フィルタ
16:カメラ制御部
18:フィルタ駆動部
20:赤外線光源
22:個人認証メモリ
24:メモリ
26:エンジンECU
28:音声警報部
30:外部通報部
32:ナビゲーションシステム
34:ディスプレイ
36:エチルアルコール検知部
38:酒気帯び処理部
40:撮像制御部
42:計算部
44:判定部
46−1:吸収波長測定データ
46−2:参照波長測定データ
48−1:吸収波長基準データ
48−2:参照波長基準データ
50:対物レンズ
52:結像レンズ
54:撮像素子
56:フィルタ切替ユニット
58−1:λ1フィルタ
58−2:λ2フィルタ
58−3:λ3フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線波長帯域に感度を有する受光素子と、
被検体を前記受光素子に結像させる光学系と、
前記被写体からの特定物質の吸収波長を含むm個の吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を選択的に透過させる吸収波長フィルタリング手段と、
前記被写体からの特定物質の吸収波長ではない波長を含むn個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を選択的に透過させる参照波長フィルタリング手段と、
前記m個の吸収波長フィルタリング手段を透過して結像された被写体の測定データ(L1,L2・・・Lm)、及び前記n個の参照波長フィルタリング手段を透過して結像された被写体の測定データ(Lm+1,Lm+2・・・Lm+n)を、メモリに格納する信号処理部と、
前記メモリに記憶された特定物質のm個の吸収帯域フィルタリング手段およびn個の参照帯域フィルタリング手段による測定データ(L1,L2,・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)と、前記メモリに予め記憶された基準データ(R1,R2,・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)に基づいて、被検体に存在する特定物質の確率度を算出する計算部と、
前記特定物質の確率度が所定の閾値以下の場合に特定物質の検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする特定物質検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の特定物質検知装置に於いて、
前記吸収波長フィルタリング手段は、前記被写体からの特定物質の吸収波長を含む吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を選択的に透過させるm個の狭帯域フィルタであり、
前記参照波長フィルタリング手段は、前記被写体からの特定物質の吸収波長ではない波長を含むn個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を選択的に透過させるn個の狭帯域フィルタであることを特徴とする特定物質検知装置。
【請求項3】
請求項1記載の特定物質検知装置に於いて、
前記特定物質はエチルアルコールであり、
前記吸収波長フィルタリング手段は、前記被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を選択的に透過させるm個の狭帯域フィルタであり、
前記参照波長フィルタリング手段は、前記被写体からのエチルアルコールの吸収波長ではない波長を含むn個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を選択的に透過させるn個の狭帯域フィルタであり、
前記計算部は、前記メモリに記憶されたエチルアルコールのn個の吸収帯域フィルタおよびm個の参照帯域フィルタによる測定データ(L1,L2・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)と、前記メモリに予め記憶された基準データ(R1,R2・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)に基づいて被検体に存在するエチルアルコールの確率度を算出し、
前記判定部は、前記エチルアルコールの確率度が所定の閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定することを特徴とする特定物質検知装置。
【請求項4】
請求項3記載の特定物質検知装置に於いて、
前記計算部は、前記メモリに記憶されたn個の吸収帯域フィルタおよびm個の参照帯域フィルタによる測定データ(L1,L2・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)により形成される(m+n)次ベクトルLと、前記メモリに予め記憶されたエチルアルコールのn個の吸収帯域フィルタおよびm個の参照帯域フィルタによる基準データ(R1,R2・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)により形成される(m+n)次ベクトルRが、(m+n)次元空間上でなす交差角θをエチルアルコールの確率度として計算し、
前記判定部は、前記交差角θが所定値以下であるとき、被検体をエチルアルコールと判定することを特徴とする特定物質検知装置。
【請求項5】
請求項4記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記計算部は、(m+n)次ベクトルLの成分を(L1,L2・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)とし、(m+n)次ベクトルRの成分を(R1,R2・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)としたとき、ベンクトルLとベクトルRのなす交差角θを次式により算出することを特徴とする特定物質検知装置。
θ=cos-1[(L1R1+L2R2・・・LmRm+Lm+1Rm+1+・・・+Lm+nRm+n)/|L|*|R|]
【請求項6】
請求項1記載の特定物質検知装置に於いて、前記吸収波長フィルタリング手段及び参照波長フィルタリング手段として、干渉フィルタ、回折格子または波長可変フィルタを用いたことを特徴とする特定物質検知装置。
【請求項7】
被写体からの特定物質の吸収波長を含むm個の吸収波長帯域(λ1,λ2・・・λm)の赤外光を吸収波長フィルタリング手段により選択的に透過させて光学系により受光素子に結像して測定し、測定した信号データ(L1,L2・・・Lm)をメモリに記憶し、
前記被写体からの特定物質の吸収波長ではない波長を含むn個の参照波長帯域(λm+1,λm+2・・・λm+n)の赤外光を参照波長フィルタリング手段により選択的に透過させて前記光学系により前記受光素子に結像して測定し、測定した信号データ(Lm+1,Lm+2・・・Lm+n)をメモリに記憶し、
前記メモリに記憶された特定物質のn個の吸収帯域フィルタリング手段およびm個の参照帯域フィルタリング手段による測定データ(L1,L2,・・・Lm,Lm+1・・・Lm+n)と、前記メモリに予め記憶された基準データ(R1,R2,・・・Rm,Rm+1・・・Rm+n)に基づいて被検体に存在する特定物質の確率度を算出し、
前記特定物質の確率度が所定の閾値以下の場合に特定物質の検出を判定する、
ことを特徴とする特定物質検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−43885(P2010−43885A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206674(P2008−206674)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】