説明

環状化合物及びその製造方法

【課題】高感度及び高解像度のフォトレジスト材料を提供する。
【解決手段】種々のクロルメチルエーテル化合物を、置換基前駆体化合物に1〜3種の塩基性有機化合物を縮合剤として添加する、下記式で代表される化合物の組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の電気・電子分野や光学分野等で用いられるフォトレジスト基材、特に超微細加工用フォトレジスト基材に関する。
【背景技術】
【0002】
極端紫外光(Extream Ultra Violet Light:以下、EUVLと表記する場合がある)又は電子線によるリソグラフィーは、半導体等の製造において、高生産性、高解像度の微細加工方法として有用であり、それに用いる高感度、高解像度のフォトレジストが求められている。フォトレジストは、所望する微細パターンの生産性、解像度等の観点から、その感度を向上させることが欠かせない。
【0003】
EUVLによる超微細加工の際に用いられるフォトレジストとしては、例えば、他のレジスト化合物と比較して光酸発生剤の濃度が高い化学増幅ポジ型フォトレジストを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、実施例のフォトレジストは、ラインエッジラフネスの観点から、電子線を用いた場合で例示された100nmまでの加工が限界であると考えられる。これは基材として用いる高分子化合物の集合体又は各々の高分子化合物分子が示す立体的形状が大きく、該作製ライン幅及びその表面粗さに影響を及ぼすことがその主原因と推定される。
【0004】
本発明者は既に高感度、高解像度のフォトレジスト材料としてカリックスレゾルシナレン化合物を提案している(特許文献2及び3参照)。また、特許文献4には、カリックスレゾルシナレン化合物が開示されている。
【特許文献1】特開2002−055457号公報
【特許文献2】特開2004−191913号公報
【特許文献3】特開2005−075767号公報
【特許文献4】米国特許6093517号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、EUVLによる超微細加工技術として、さらなる高感度、高解像度が求められている。上記特許文献1〜4に開示されたフォトレジスト材料では、この要求レベルである高感度、高解像度を十分発揮できていない。
本発明は、高感度及び高解像度のフォトレジスト材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下のフォトレジスト組成物等が提供される。
1.下記式(2)で表される化合物及び下記式(3)で表される置換基前駆体化合物に1〜3種の塩基性有機化合物を縮合剤として添加する式(1)で表される化合物の組成物の製造方法。
【化4】

(式中、Rは、それぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせて構成される基である。
は、それぞれ水酸基又はORで表される置換基であり、8個のRのうち、m個のRはORで表される置換基であり(mは3〜5の整数)、8−m個のRは水酸基である。
は、それぞれ水素原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族基又は酸素原子を含む基である。
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、シリル基、又はこれらの基と二価の基とが結合した基であり、
前記二価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合、炭酸エステル結合、エーテル結合、又はこれらの基から選択される1以上と、これらの結合から選択される1以上が結合した基である。
Xは、ハロゲン原子又は水酸基である。)
2.前記1〜3種の塩基性有機化合物の少なくとも1種類が有機アミン化合物である1に記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
3.前記有機アミン化合物が、窒素原子含有複素環構造を含む有機アミン化合物である2に記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
4.前記有機アミン化合物が、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンである2又は3に記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
5.Rが水素原子であり、Rが下記式(I)〜(IV)で表される酸解離性溶解抑止基のいずれかである1〜4のいずれかに記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
【化5】

(上記式(I)〜(IV)において、
αは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
βは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシル基である。
γは、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシル基、又は芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造のうち1以上の構造と、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が置換したアルコキシル基である。
δは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。)
6.Rが、下記式(4)〜(35)で表される酸解離性溶解抑止基のいずれかである1〜5のいずれかに記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
【化6】


(式中、rはそれぞれ上記式(4)〜(32)で表される置換基のいずれかである。)
7.1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造された式(1)で表される化合物を含む薄膜。
8.1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造された式(1)で表される化合物からなるフォトレジスト基材を含有するフォトレジスト組成物。
9.8に記載のフォトレジスト組成物を用いた微細加工方法。
10.9に記載の微細加工方法により作製した半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高感度及び高解像度のフォトレジスト材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の式(1)で表される化合物の組成物は、下記式(2)で表される化合物及び下記式(3)で表される置換基前駆体化合物に1〜3種の塩基性有機化合物を縮合剤として添加することにより得られる。
【化7】

(式中、Rは、それぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせて構成される基である。
は、それぞれ水酸基又はORで表される置換基であり、8個のRのうち、m個のRはORで表される置換基であり(mは3〜5の整数)、8−m個のRは水酸基である。
は、それぞれ水素原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族基又は酸素原子を含む基である。
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、シリル基、又はこれらの基と二価の基とが結合した基であり、
前記二価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合(−CO−)、炭酸エステル結合(−CO−)、エーテル結合(−O−)、又はこれらの基から選択される1以上と、これらの結合から選択される1以上が結合した基である。
Xは、ハロゲン原子又は水酸基である。)
【0009】
式(2)で表される化合物において、Rは好ましくは水素原子である。
式(2)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【化8】

【0010】
式(3)で表される置換基前駆体化合物において、Rは、好ましくは下記式(I)〜(IV)で表される酸解離性溶解抑止基のいずれかであり、より好ましくは下記式(4)〜(35)で表される酸解離性溶解抑止基のいずれかである。
【化9】

(上記式(I)〜(IV)において、
αは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
βは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシル基である。好ましくは三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基に含まれる三級炭素が、酸素原子に結合する。
γは、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシル基、又は芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造のうち1以上の構造と、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が置換したアルコキシル基である。芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシル基は、好ましくは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基に含まれる三級炭素が、酸素原子に結合する。
δは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。)
【0011】
【化10】


(式中、rはそれぞれ上記式(4)〜(32)で表される置換基のいずれかである。)
【0012】
式(3)で表される置換基前駆体化合物としては、例えば2−アダマンチルクロロメチルエーテル、ベンジルクロロメチルエーテル、クロロメチルシクロヘキシルエーテル;及びブロモ酢酸tert−ブチル、クロロ酢酸tert−ブチル、ブロモ酢酸2−メチル−2−アダマンチル、クロロ酢酸2−メチル−2−アダマンチル、ブロモ酢酸2−エチル−2−アダマンチル、クロロ酢酸2−エチル−2−アダマンチル、ブロモ酢酸1−エチルシクロヘキシル、クロロ酢酸1−エチルシクロヘキシルを含む上記式(4)〜(35)で表される酸解離性溶解抑止基に臭素又は塩素が結合した化合物が挙げられる。
【0013】
縮合剤である1〜3種類の塩基性有機化合物は、好ましくは少なくとも1種類が有機アミン化合物である。
上記有機アミン化合物としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、カテコールアミン、フェネチルアミン、アマンタジン、N−ジシクロヘキシルメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン等であるが、好ましくは、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0014】
上記有機アミン化合物は、好ましくは窒素原子含有複素環構造を含む。
窒素原子含有複素環構造を含む有機アミン化合物としては、例えばピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、アマンタジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン及び7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセンが挙げられ、好ましくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンであり、より好ましくは1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0015】
特に、塩基性有機化合物として1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンを用いると、本発明の式(1)で表される化合物の混合物を高収率で製造できる。
【0016】
本発明の製造方法において、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される置換基前駆体化合物の仕込み比としては、好ましくは式(2)で表される化合物中の水酸基の物質量(モル数)に対して0.5当量〜2当量、即ち、式(2)で表される化合物の物質量に対して4当量〜16当量である。
【0017】
本発明の製造方法において、塩基性有機化合物の添加量は、好ましくは式(2)で表される化合物中の水酸基の物質量に対して0.5当量〜3当量、即ち、式(2)で表される化合物の物質量に対して4当量〜24当量である。
【0018】
式(2)で表される化合物及び式(3)で表される置換基前駆体化合物に1〜3種の塩基性有機化合物を縮合剤として添加した後の反応温度としては、好ましくは−80℃〜100℃である。反応温度が−80℃未満の場合、反応速度が低く効率的に製造できないおそれがある。一方、反応温度が100℃超の場合、副生成物が生じるおそれがある。
【0019】
用いる反応溶媒は、特に限定されず、用いる出発化合物、縮合剤等の溶解度、生成物の収率、反応速度等の観点から、好ましくはアミド系溶媒である。具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が例示できる。
【0020】
本発明の製造方法では、式(1)で表される化合物の混合物からなる組成物が得られ、以下の化合物1〜3の混合物が得られる。
化合物1:8つのRのうち、水酸基が4つであり、ORが4つである式(1)で表される化合物
化合物2:8つのRのうち、水酸基が3つであり、ORが5つである式(1)で表される化合物
化合物3:8つのRのうち、水酸基が5つであり、ORが3つである式(1)で表される化合物
【化11】

【0021】
尚、上述の式(1)で表される化合物の混合物は、化合物1〜3に限定されず、8つのRのうち、水酸基が2つであり、ORが6つである式(1)で表される化合物等を微量に含んでもよい。
【0022】
本発明の製造方法により得られる式(1)で表される化合物の混合物からなる組成物は、好ましくは、製造された上記化合物1の含有量が、化合物1〜3の合計量に対して60モル%以上であり、好ましくは70モル%以上である。化合物1の含有割合が高いほど好ましい。
【0023】
本発明の製造方法により得られる式(1)で表される化合物(以下、単に本発明の環状化合物という場合がある)は、フォトレジスト基材として好適に用いることができる。
【0024】
本発明のフォトレジスト組成物はフォトレジスト基材として本発明の環状化合物を含む。本発明の環状化合物の含有量は、溶剤を除く全組成物中で好ましくは50〜99.9重量%であり、より好ましくは75〜95重量%である。
本発明の環状化合物をフォトレジスト基材として用いる場合において、本発明の環状化合物は、1種類の化合物でもよく、2種以上の混合物でもよい。
【0025】
本発明のフォトレジスト組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル(PE)等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0026】
組成物中の溶剤以外の成分、即ちフォトレジスト固形分の量は所望のフォトレジスト層の膜厚を形成するために適する量とするのが好ましい。具体的にはフォトレジスト組成物の全重量の0.1〜50重量%が一般的であるが、用いる基材や溶剤の種類、あるいは、所望のフォトレジスト層の膜厚等に合わせて規定できる。溶剤は全組成物中好ましくは50〜99.9重量%配合する。
【0027】
本発明のフォトレジスト組成物は、基材の分子が、EUV及び/又は電子線に対して活性なクロモフォアを含み単独でフォトレジストとしての能力を示す場合には特に添加剤は必要としないが、フォトレジストとしての性能(感度)を増強する必要がある場合は、必要に応じて、クロモフォアとして光酸発生剤(PAG)等を含むことが一般的である。
【0028】
光酸発生剤としては、特に限定されず、化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
このような酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類等のジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤等多種のものが知られている。
【0029】
オニウム塩系酸発生剤としては、下記式(a−0)で表される酸発生剤が例示できる。
【化12】

[式中、R51は、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、又は直鎖、分岐鎖又は環状のフッ素化アルキル基を表し;R52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖又は分岐鎖状のハロゲン化アルキル基、又は直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基であり;R53は置換基を有していてもよいアリール基であり;u’’は1〜3の整数である。]
【0030】
式(a−0)において、R51は、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、又は直鎖、分岐鎖又は環状のフッ素化アルキル基を表す。
前記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、炭素数4〜12であることが好ましく、炭素数5〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また、フッ化アルキル基のフッ素化率(アルキル基中全水素原子の個数に対する置換したフッ素原子の個数の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。
51は、直鎖状のアルキル基又はフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
【0031】
52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、直鎖、又は分岐鎖状のハロゲン化アルキル基、又は直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基である。
52において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
52において、アルキル基は、直鎖又は分岐鎖状であり、その炭素数は好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、最も好ましくは1〜3である。
52において、ハロゲン化アルキル基は、アルキル基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。ここでのアルキル基は、前記R52における「アルキル基」と同様のものが挙げられる。置換するハロゲン原子としては上記「ハロゲン原子」について説明したものと同様のものが挙げられる。ハロゲン化アルキル基において、水素原子の全個数の50〜100%がハロゲン原子で置換されていることが望ましく、全て置換されていることがより好ましい。
52において、アルコキシ基としては、直鎖状又は分岐鎖状であり、その炭素数は好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、最も好ましくは1〜3である。
52は、これらの中でも水素原子が好ましい。
【0032】
53は置換基を有していてもよいアリール基であり、置換基を除いた基本環(母体環)の構造としては、ナフチル基、フェニル基、アントラセニル基等が挙げられ、本発明の効果やArFエキシマレーザー等の露光光の吸収の観点から、フェニル基が望ましい。
置換基としては、水酸基、低級アルキル基(直鎖又は分岐鎖状であり、その好ましい炭素数は5以下であり、特にメチル基が好ましい)等を挙げることができる。
53のアリール基としては、置換基を有しないものがより好ましい。
【0033】
u’’は1〜3の整数であり、2又は3であることが好ましく、特に3であることが望ましい。
【0034】
式(a−0)で表される酸発生剤の好ましいものとしては、以下の化学式で表されるものを挙げることができる。
【化13】

【0035】
式(a−0)で表される酸発生剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。
式(a−0)で表される酸発生剤の他のオニウム塩系酸発生剤としては、例えば下記式(a−1)又は(a−2)で表される化合物が挙げられる。
【化14】

[式中、R”〜R”,R”,R”は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリール基又はアルキル基を表し;R”は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を表し;R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R”及びR”のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
【0036】
式(a−1)中、R”〜R”はそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基又はアルキル基を表す。R”〜R”のうち、少なくとも1つは置換又は無置換のアリール基を表す。R”〜R”のうち、2以上が置換又は無置換のアリール基であることが好ましく、R”〜R”の全てが置換又は無置換のアリール基であることが最も好ましい。
【0037】
”〜R”のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部又は全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0038】
前記アリール基の置換基であるアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n‐ブチル基、tert‐ブチル基が最も好ましい。
前記アリール基の置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記アリール基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0039】
”〜R”のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デカニル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
これらの中で、R”〜R”は全てフェニル基であることが最も好ましい。
【0040】
”は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を表す。
前記直鎖又は分岐のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、前記R”で示したような環式基であって、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また。該フッ化アルキル基のフッ素化率(アルキル基中のフッ素原子の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。
”としては、直鎖又は環状のアルキル基、又はフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
【0041】
式(a−2)中、R”及びR”はそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基又はアルキル基を表す。R”及びR”のうち、少なくとも1つは置換又は無置換のアリール基を表す。R”及びR”の全てが置換又は無置換のアリール基であることが好ましい。
”〜R”の置換又は無置換のアリール基としては、R”〜R”の置換又は無置換のアリール基と同様のものが挙げられる。
”〜R”のアルキル基としては、R”〜R”のアルキル基と同様のものが挙げられる。
これらの中で、R”〜R”は全てフェニル基であることが最も好ましい。
式(a−2)中のR”としては上記式(a−1)のR”と同様のものが挙げられる。
【0042】
式(a−1)、(a−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル(1−(4−メトキシ)ナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。また、これらのオニウム塩のアニオン部がメタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネートに置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0043】
また、前記式(a−1)又は(a−2)において、アニオン部を下記式(a−3)又は(a−4)で表されるアニオン部に置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は(a−1)又は(a−2)と同様)。
【化15】

[式中、X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基を表し;Y”,Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0044】
X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは炭素数3〜5、最も好ましくは炭素数3である。
Y”,Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。
【0045】
X”のアルキレン基の炭素数又はY”,Z”のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶剤への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
【0046】
また、X”のアルキレン基又はY”,Z”のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、即ちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0047】
本発明において、光酸発生剤として以下の式(40)〜(45)で示される化合物も使用できる。
【化16】

【0048】
式(40)中、Qはアルキレン基、アリーレン基又はアルコキシレン基であり、R15はアルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基又はハロゲン置換アリール基である。
【0049】
前記式(40)で示される化合物は、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(n−オクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(1−ナフタレンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−ナフタレンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エンー2,3−ジカルボキシイミド及びN−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミドからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0050】
【化17】

式(41)中、R16は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、任意に置換された直鎖、分枝又は環状アルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたヘテロアリール基又は任意に置換されたアラルキル基である。
【0051】
前記式(41)で示される化合物は、ジフェニルジスルフォン、ジ(4−メチルフェニル)ジスルフォン、ジナフチルジスルフォン、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフォン、ジ(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフォン、ジ(3−ヒドロキシナフチル)ジスルフォン、ジ(4−フルオロフェニル)ジスルフォン、ジ(2−フルオロフェニル)ジスルフォン及びジ(4−トルフルオロメチルフェニル)ジスルフォンからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0052】
【化18】

式(42)中、R17は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、任意に置換された直鎖、分枝又は環状アルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたヘテロアリール基又は任意に置換されたアラルキル基である。
【0053】
前記式(42)で示される化合物は、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−4−メチルフェニルアセトニトリル及びα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−ブロモフェニルアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0054】
【化19】

式(43)中、R18は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、1以上の塩素原子及び1以上の臭素原子を有するハロゲン化アルキル基である。ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は1〜5が好ましい。
【0055】
【化20】

【0056】
式(44)及び(45)中、R19及びR20はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1〜3のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素原子数1〜3のアルコキシ基、又はフェニル基、トルイル基、ナフチル基等のアリール基であり、好ましくは、炭素原子数6〜10のアリール基である。
19及びL20はそれぞれ独立に1,2−ナフトキノンジアジド基を有する有機基である。1,2−ナフトキノンジアジド基を有する有機基としては、具体的には、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−6−スルホニル基等の1,2−キノンジアジドスルホニル基を好ましいものとして挙げることができる。特に、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基及び1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基が好ましい。
pは1〜3の整数、qは0〜4の整数、かつ1≦p+q≦5である。
19は単結合、炭素原子数1〜4のポリメチレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、下記式(44a)で表わされる基、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合又はエーテル結合を有する基である。
【0057】
19はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基であり、X20は、それぞれ独立に下記式(45a)で示される基である。
【化21】

式(45a)中、Z22はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、R22はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシ基であり、rは0〜3の整数である。
【0058】
その他の酸発生剤として、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルアゾメチルスルホニル)デカン等のビススルホニルジアゾメタン類、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−(ビストリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−(ビストリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等のハロゲン含有トリアジン誘導体等が挙げられる。
【0059】
これらの光酸発生剤の中で、特に好ましくは活性光線又は放射線の作用により有機スルホン酸を発生する化合物が好ましい。
【0060】
PAGの配合量は、溶剤を除く全組成物中0〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
【0061】
本発明においては、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(クエンチャー)をフォトレジスト組成物に配合してもよい。この様な酸拡散制御剤を使用することにより、フォトレジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が向上するとともに、電子線照射前の引き置き時間、電子線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0062】
このような酸拡散制御剤としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デカニルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミン;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の環状アミン等の窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の電子線放射分解性塩基性化合物が挙げられる。酸拡散制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0063】
クエンチャーの配合量は、溶剤を除く全組成物中0〜40重量%、好ましくは0.01〜15重量%である。
本発明においては、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解制御剤、増感剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、顔料等を適宜、添加含有させることができる。
【0064】
溶解制御剤は、環状化合物のアルカリ現像液に対する溶解性が高すぎる場合に、その溶解性を低下させて現像時の溶解速度を適度にする作用を有する成分である。
【0065】
溶解制御剤としては、例えば、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、アセナフテン等の芳香族炭化水素類;アセトフェノン、ベンゾフェノン、フェニルナフチルケトン等のケトン類;メチルフェニルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン等のスルホン類等を挙げることができる。さらに、例えば、酸解離性官能基が導入されたビスフェノール類、t−ブチルカルボニル基が導入されたトリス(ヒドロキシフェニル)メタン等をも挙げることができる。これらの溶解制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。溶解制御剤の配合量は、使用する環状化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜50重量%が好ましく、0〜40重量%がより好ましく、0〜30重量%がさらに好ましい。
【0066】
増感剤は、照射された放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、レジストの見掛けの感度を向上させる成分である。このような増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ビアセチル類、ピレン類、フェノチアジン類、フルオレン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。増感剤の配合量は、固形成分全重量の0〜50重量%が好ましく、0〜20重量%がより好ましく、0〜10重量%がさらに好ましい。
【0067】
界面活性剤は、本発明のフォトレジスト組成物の塗布性やストリエーション、レジストとしての現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系あるいは両性のいずれでも使用することができる。これらのうち、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤は、フォトレジスト組成物に用いる溶剤との親和性がよく、より効果がある。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類等の他、以下商品名で、エフトップ(ジェムコ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業社製)、フロラード(住友スリーエム社製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子社製)、ペポール(東邦化学工業社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社油脂化学工業社製)等の各シリーズ製品を挙げることができるが、特に限定はされない。界面活性剤の配合量は、固形成分全重量の0〜2重量%が好ましく、0〜1重量%がより好ましく、0〜0.1重量%がさらに好ましい。
【0068】
また、染料あるいは顔料を配合することにより、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できる。さらに、接着助剤を配合することにより、基板との接着性を改善することができる。
【0069】
酸拡散制御剤を配合した場合の感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸又はその誘導体を含有させることができる。尚、これらの化合物は、酸拡散制御剤と併用することもできるし、単独で用いてもよい。有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が好適である。リンのオキソ酸又はその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸又はそれらのエステル等の誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸又はそれらのエステル等の誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸及びそれらのエステル等の誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
【0070】
レジストパターンを形成するには、まず、シリコンウェハー、ガリウムヒ素ウェハー、アルミニウムで被覆されたウェハー等の基板上に本発明のフォトレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。
【0071】
必要に応じて、基板上に表面処理剤を予め塗布してもよい。表面処理剤としては、例えばヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤(重合性基を有する加水分解重合性シランカップリング剤等)、アンカーコート剤又は下地剤(ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等)、これらの下地剤と無機微粒子とを混合したコーティング剤が挙げられる。
【0072】
必要に応じて、大気中に浮遊するアミン等が侵入するのを防ぐために、レジスト膜に保護膜を形成してもよい。保護膜を形成することにより、放射線によりレジスト膜中に発生した酸が、大気中に不純物として浮遊しているアミン等の酸と反応する化合物と反応して失活し、レジスト像が劣化し感度が低下することを防止できる。保護膜用の材料としては水溶性かつ酸性のポリマーが好ましい。例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸等が挙げられる。
【0073】
高精度の微細パターンを得るため、また露光中のアウトガスを低減するため、放射線照射前(露光前)に加熱するのが好ましい。その加熱温度は、フォトレジスト組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜150℃である。
【0074】
次いで、KrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、フォトレジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。本発明においては、高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後(露光後)に加熱するのが好ましい。露光後加熱温度(PEB)は、フォトレジスト組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜150℃である。
【0075】
次いで、露光されたレジスト膜をアルカリ現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成できる。前記アルカリ現像液としては、例えば、モノ−、ジ−あるいはトリアルキルアミン類、モノ−、ジ−あるいはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物の1種以上を溶解した、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%のアルカリ性水溶液を使用する。アルカリ現像液には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や前記界面活性剤を適量添加することもできる。これらのうちイソプロピルアルコールを10〜30重量%添加することが特に好ましい。尚、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を用いた場合は、一般に、現像後水で洗浄する。
【0076】
酸解離性溶解抑止基を有する環状化合物をフォトレジスト基材として用いる場合は、KrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光することにより、酸解離性溶解抑止基が脱離ないし構造が変化することにより、アルカリ現像液に溶解するようになる。一方、パターンの露光されていない部分はアルカリ現像液に溶解しないことが好ましい。
【0077】
アルカリ現像液に対する非溶解性については、形成するパターンのサイズ、使用するアルカリ現像液の種類等の現像条件により、好ましい非溶解性が異なるため一概に規定することはできないが、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をアルカリ現像液として用いる場合、フォトレジスト基材からなる薄膜の現像液溶解速度で表される非溶解性としては、1ナノメートル/秒未満が好ましく、0.5ナノメートル/秒未満が特に好ましい。
【0078】
尚、場合によっては上記アルカリ現像後、ポストベーク処理を行ってもよいし、基板とのレジスト膜の間には有機系又は無機系の反射防止膜を設けてもよい。
【0079】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングは、プラズマガスを使用するドライエッチング、アルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等を用いるウェットエッチング等公知の方法で行うことができる。レジストパターンを形成した後、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっき等のめっき処理を行うこともできる。
【0080】
エッチング後の残留レジストパターンは、有機溶剤やアルカリ現像液より強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。上記有機溶剤としては、PGMEA、PGME、EL、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、強アルカリ水溶液としては、例えば、1〜20重量%の水酸化ナトリウム水溶液、及び1〜20重量%の水酸化カリウム水溶液が挙げられる。剥離方法としては、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。またレジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0081】
本発明のフォトレジスト組成物を用いてレジストパターンを形成した後、金属を真空蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶離する方法、即ちリフトオフ法により配線基板を形成することもできる。
【0082】
本発明のフォトレジスト組成物を用いて微細加工方法により、半導体装置を作製できる。この半導体装置は、テレビ受像機、携帯電話、コンピュータ等の電気製品(電子機器)、ディスプレイ、コンピュータ制御する自動車等の様々な装置に備えることができる。
【0083】
本発明の化合物は公知の成形方法によって各種成形品(シリコンウェハ等の基板に形成した薄膜、フィルム、薄板、ファイバー等)を製造することができる。
【0084】
成形方法としては、射出成型法、射出圧縮成型法、押出成型法、ブロー成型法、加圧成型法、トランスファー成型法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、蒸着法、熱CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法等が挙げられ、これら成形方法を所望の製品の形態、性能に応じて適宜選択できる。
【0085】
また、本発明の化合物を用いて上記の方法により薄膜を得て、得られた薄膜を熱、紫外線、深紫外線、真空紫外線、極端紫外線、電子線、プラズマ、X線等により硬化(環化付加反応)させてもよい。
【0086】
スピンコーティング法等により本発明の化合物を薄膜に形成する場合、本発明の化合物を有機溶媒に溶解させて塗料として用いることができる。
【0087】
有機溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アニソール、アセトフェノン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。
【0088】
塗料中における本発明の化合物の濃度は、塗料の粘度や薄膜形成方法等を考慮して適宜調製すればよい。
薄膜の厚さは特に限定されないが、一般に10nm〜10μm程度のものが好適に使用される。薄膜の膜厚は、エリプソメータ、反射光学式膜厚計等による光学的膜厚測定、触針式膜厚測定器やAFM等による機械的膜厚測定が可能である。
【0089】
本発明の薄膜は、フォトレジスト薄膜としての用途の他、光学レンズ、光ファイバー、光導波路、フォトニック結晶等の種々の光情報処理装置向け光学薄膜、半導体用層間絶縁膜、半導体用保護膜等のULSI装置向け薄膜、液晶ディスプレー、液晶プロジェクター、プラズマディスプレー、ELディスプレー、LEDディスプレー等の画像表示装置向け薄膜、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等に使用される薄膜として有用である。さらにこれら薄膜は、CPU、DRAM、フラッシュメモリ等の半導体装置、情報処理用小型電子回路装置、高周波通信用電子回路装置等の電子回路装置、画像表示装置、光情報処理用装置、光通信用装置等の部材、表面保護膜、耐熱膜において利用することもできる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例を基に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
【0091】
製造例1
容量1リットルのフラスコに、レゾルシノール(50g、454ミリモル)の2−プロパノール溶液(200ミリリットル)を仕込み、窒素気流下ベンズアルデヒド(46ミリリットル、454ミリモル)を加えた後、氷浴で十分に冷却しながら濃硫酸(6.3ミリリットル)の2−プロパノール溶液(20ミリリットル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、氷浴をはずし室温(22℃)まで昇温し、さらに65℃まで徐々に昇温し、2時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液を水480ミリリットルに加え10分撹拌した。析出した白色固体を濾別し、さらに濾液が中性になるまで水洗を繰り返した。得られた白色粉末を減圧乾燥した後、N,N’−ジメチルホルムアミド(1000ミリリットル)で再結晶を行った結果、環状化合物Aを得た(44.0g、48.9%)。
【化22】

【0092】
製造例2
容量1リットルのフラスコに、レゾルシノール100g(0.91モル)及びp−トルエンスルホン酸一水和物86.2g(0.45モル)を仕込んで窒素置換を行い、次いで、エチレングリコール490ミリリットルを投入してメカニカルスターラーで撹拌し、均一溶液を得た。次に、室温下でベンズアルデヒド96.4g(0.91ミリモル)をシリンジで添加してから、120℃に加熱したオイルバス中で2時間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却し、反応液にイオン交換水を950ミリリットル加えて30分撹拌した後、粗生成物固体をろ別した。80℃で8時間真空乾燥した後、粗生成物固体をテトラヒドロフラン(1.5リットル)に投入し、65℃で1時間撹拌、加熱還流することにより洗浄した。洗浄した固体をろ別して、80℃にて8時間真空乾燥し、環状化合物Bを得た(175.3g、収率97%)。
【化23】

【0093】
実施例1
製造例1で調製した環状化合物A(3.00g、3.78ミリモル)のN−メチル−2−ピロリドン懸濁液(60ミリリットル)に窒素雰囲気下1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(6.33ミリリットル、42.3ミリモル)を加え、室温で10分激しく撹拌した。薄桃色透明の均一溶液となったことを確認した後、2−アダマンチルクロロメチルエーテル(6.99g、34.8ミリモル)を滴下し、室温で30時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(150ミリリットル)を加え、水(50ミリリットル)で3回洗浄後、有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた薄黄色固体をn−ヘキサン(20ミリリットル)で3回洗浄、濾過し、減圧下、溶媒を留去することにより、環状化合物Aの8つの水酸基のうち4つの水酸基に置換基が導入している(導入率50%)環状化合物Cを得た(3.90g、71.0%)。
環状化合物Cの構造はH−NMRにより確認した。得られたチャートを図1に示す。
【化24】

【0094】
実施例2
製造例1で調製した環状化合物A(3.00g、3.78ミリモル)のN−メチル−2−ピロリドン懸濁液(60ミリリットル)に窒素雰囲気下1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(6.33ミリリットル、42.3ミリモル)を加え、室温で10分激しく撹拌した。薄桃色透明の均一溶液となったことを確認した後、ベンジルクロロメチルエーテル(4.78ミリリットル、34.8ミリモル)を滴下し、室温で24時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(150ミリリットル)を加え、水(50ミリリットル)で3回洗浄後、有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた薄黄色固体をn−ヘキサン(20ミリリットル)で3回洗浄、濾過し、減圧下、溶媒を留去することにより、環状化合物Aの8つの水酸基のうち4つの水酸基に置換基が導入している環状化合物Dを得た(3.02g、62.7%)。
環状化合物Dの構造は、H−NMRにより確認した。得られたチャートを図2に示す。
【化25】

【0095】
実施例3
製造例1で調製した環状化合物A(500mg、0.631ミリモル)のN−メチル−2−ピロリドン懸濁液(15ミリリットル)に窒素雰囲気下1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(1.06ミリリットル、7.06ミリモル)を加え、室温で10分激しく撹拌した。薄桃色透明の均一溶液となったことを確認した後、クロロメチルシクロヘキシルエーテル(0.895ミリリットル、5.80ミリモル)を滴下し、室温で24時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(15ミリリットル)を加え、水(15ミリリットル)で3回洗浄後、有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた薄黄色固体をn−ヘキサン(5ミリリットル)で3回洗浄、濾過し、減圧下、溶媒を留去することにより、環状化合物Aの8つの水酸基のうち4つの水酸基に置換基が導入している環状化合物Eを得た。
環状化合物Eの構造は、H−NMRにより確認した。得られたチャートを図3に示す。
【化26】

【0096】
実施例4
製造例2で調製した環状化合物B(3.00g、3.78ミリモル)のN−メチル−2−ピロリドン懸濁液(60ミリリットル)に窒素雰囲気下1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(6.33ミリリットル、42.3ミリモル)を加え、室温で10分激しく撹拌した。薄桃色透明の均一溶液となったことを確認した後、2−アダマンチルクロロメチルエーテル(6.99g、34.8ミリモル)を滴下し、室温で30時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(150ミリリットル)を加え、水(50ミリリットル)で3回洗浄後、有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた薄黄色固体をn−ヘキサン(20ミリリットル)で3回洗浄、濾過し、減圧下、溶媒を留去することにより、環状化合物Bの8つの水酸基のうち4つの水酸基に置換基が導入している環状化合物Fを得た(3.70g、67.4%)。
環状化合物Fの構造はH−NMRにより確認した。得られたチャートを図4に示す。
【化27】

【0097】
実施例5
製造例2で調製した環状化合物B(3.00g、3.78ミリモル)のN−メチル−2−ピロリドン懸濁液(60ミリリットル)に窒素雰囲気下1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(6.33ミリリットル、42.3ミリモル)を加え、室温で10分激しく撹拌した。薄桃色透明の均一溶液となったことを確認した後、ベンジルクロロメチルエーテル(4.78ミリリットル、34.8ミリモル)を滴下し、室温で24時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(150ミリリットル)を加え、水(50ミリリットル)で3回洗浄後、有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた薄黄色固体をn−ヘキサン(20ミリリットル)で3回洗浄、濾過し、減圧下、溶媒を留去することにより、環状化合物Bの8つの水酸基のうち4つの水酸基に置換基が導入している環状化合物Gを得た。
環状化合物Gの構造はH−NMRにより確認した、得られたチャートを図5に示す。
【化28】

【0098】
実施例6
製造例2で調製した環状化合物B(3.00g、3.78ミリモル)のN−メチル−2−ピロリドン懸濁液(60ミリリットル)に窒素雰囲気下1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(6.33ミリリットル、42.3ミリモル)を加え、室温で10分激しく撹拌した。薄桃色透明の均一溶液となったことを確認した後、クロロメチルシクロヘキシルエーテル(4.87ミリリットル、34.8ミリモル)を滴下し、室温で24時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(150ミリリットル)を加え、水(50ミリリットル)で3回洗浄後、有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた薄黄色固体をn−ヘキサン(20ミリリットル)で3回洗浄、濾過し、減圧下、溶媒を留去することにより、環状化合物Bの8つの水酸基のうち4つの水酸基に置換基が導入している環状化合物Hを得た。
環状化合物Hの構造はH−NMRにより確認した。得られたチャートを図6に示す。
【化29】

【0099】
比較例1
1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンの代わりに炭酸カリウムを用いた他は実施例1と同様にして環状化合物I(収率43%)を製造した。
得られた環状化合物Iは、置換基の導入率が12.5%(置換基の導入数が1個)〜〜87.5%(置換基の導入数が7個)である環状化合物の混合物であった(平均導入率50%)。
【化30】

【0100】
尚、「平均導入率」とは、置換数が異なる組成物全体としての導入率の相加平均であり、「導入率」とは一種類の置換数である組成物(置換位置は任意)の置換割合である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の環状化合物は、フォトレジスト基材又は組成物、特に極端紫外光用及び/又は電子線用フォトレジスト基材又は組成物に好適に使用できる。本発明の製造方法で得られる化合物及びフォトレジスト組成物は、半導体装置等の電気・電子分野や光学分野等において好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例1で製造した環状化合物CのH−NMRスペクトルである。
【図2】実施例2で製造した環状化合物DのH−NMRスペクトルである。
【図3】実施例3で製造した環状化合物EのH−NMRスペクトルである。
【図4】実施例4で製造した環状化合物FのH−NMRスペクトルである。
【図5】実施例5で製造した環状化合物GのH−NMRスペクトルである。
【図6】実施例6で製造した環状化合物HのH−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)で表される化合物及び下記式(3)で表される置換基前駆体化合物に1〜3種の塩基性有機化合物を縮合剤として添加する式(1)で表される化合物の組成物の製造方法。
【化1】

(式中、Rは、それぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせて構成される基である。
は、それぞれ水酸基又はORで表される置換基であり、8個のRのうち、m個のRはORで表される置換基であり(mは3〜5の整数)、8−m個のRは水酸基である。
は、それぞれ水素原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族基又は酸素原子を含む基である。
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、シリル基、又はこれらの基と二価の基とが結合した基であり、
前記二価の基は、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、エステル結合、炭酸エステル結合、エーテル結合、又はこれらの基から選択される1以上と、これらの結合から選択される1以上が結合した基である。
Xは、ハロゲン原子又は水酸基である。)
【請求項2】
前記1〜3種の塩基性有機化合物の少なくとも1種類が有機アミン化合物である請求項1に記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
【請求項3】
前記有機アミン化合物が、窒素原子含有複素環構造を含む有機アミン化合物である請求項2に記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
【請求項4】
前記有機アミン化合物が、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンである請求項2又は3に記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
【請求項5】
が水素原子であり、Rが下記式(I)〜(IV)で表される酸解離性溶解抑止基のいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
【化2】

(上記式(I)〜(IV)において、
αは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
βは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシル基である。
γは、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシル基、又は芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造のうち1以上の構造と、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が置換したアルコキシル基である。
δは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。)
【請求項6】
が、下記式(4)〜(35)で表される酸解離性溶解抑止基のいずれかである請求項1〜5のいずれかに記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
【化3】


(式中、rはそれぞれ上記式(4)〜(32)で表される置換基のいずれかである。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造された式(1)で表される化合物を含む薄膜。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造された式(1)で表される化合物からなるフォトレジスト基材を含有するフォトレジスト組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のフォトレジスト組成物を用いた微細加工方法。
【請求項10】
請求項9に記載の微細加工方法により作製した半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−138109(P2010−138109A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315974(P2008−315974)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】