生体分子部分を含むカルバメート、チオカルバメートまたはカルバミド
本発明は、(a)少なくとも2つの重合可能な部分、(b)少なくとも2つのアミン基がカルバメート基、チオカルバメート基またはカルバミド基を形成している少なくとも2つのアミン基を含む、アミノ酸の少なくとも1つのアミノ酸残基、および(c)そのジアミノ酸残基のカルボン酸部分に直接またはスペーサーを介して結合した生体分子部分、または、そのような部分が結合可能なカルボン酸、を含む化合物に関する。本発明は、さらに、そのような化合物から得られるポリマーに関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、1種以上のカルバメート基、チオカルバメート基および/またはカルバミド基と、生体分子部分とを含む重合性化合物に関する。本発明は、さらに、そのような化合物の製造方法、前記化合物を1種以上の他の化合物と調合する方法、その化合物の重合方法、並びに、その化合物を含む物品およびそのような物品の製造方法に関する。
【0002】
最近、組織、特に軟骨、骨または血管系の修復または再生などの医療分野の用途において、合成ポリマーの使用に大きな関心が持たれている。しかしながら、合成ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やポリアクリル系ポリマーは、一般に、細胞の接着を選択的に促進することも、他の生体特有の機能を促進することもできない。
【0003】
さらに、ペプチド、タンパク質および糖重合体など、生体分子の中には、熱、プロテアーゼ、溶剤、材料加工条件および/またはインプラントの体内への埋め込み方法により容易に変性するものがある。合成ポリマーおよびそのような生体分子からなる組成物を、その生体分子の活性な形態を維持しながら提供することが課題の1つである。
【0004】
生物学的に活性な分子をポリマーに結合させることには大きな価値があるであろう。Van Hestら、Advances in Polymer Science、2006、202、p.19−52に示されているように、ラジカル重合が、タンパク質−ポリマーハイブリッド材料の製造によく使用される方法である。このラジカル重合は、また、縮重合より低温で実施することができ、それにより、高価でかつ製造には合成集約的なタンパク質または生体分子の変性リスクが低減される。例えば、ラジカル光重合が、ヒドロゲルの製造にしばしば使用される。
【0005】
そのようなタンパク質ポリマーハイブリッドをラジカル重合により製造するには、Hubbelら、J.Biomed.Mater.Res.、1998、39、p.266に示されているように、通常、タンパク質またはペプチドに1つの重合可能な基を付与する。この刊行物に記載されている手法では、単官能性ペプチドがダングリング鎖末端として機能するので、網状欠陥を有するポリマーが生成され得る。その結果、ペプチドが網目に効果的に取り込まれず、かつ、得られた生体材料の機械的特性が悪影響を受ける程度に、得られたポリマーが可塑性されるというリスクを生ずる。この悪影響は、ヒドロゲルにおいて特に顕著である。
【0006】
Junmin Zhuら、Macromolecules、第39巻、第4号(2006)、p.1305−1307には、細胞接着性ペプチドリガンドを有するポリエチレングリコールジアクリレートマクロマーの合成について記載されている。マクロマーは、ジアミノプロピオン酸のカルボン酸に結合したヘキサペプチドをアクリロイル−PEG−無水スクシンアミド(Acr−PEG−NHS)と反応させる(これにより、アミド結合が形成される)ことによって調製される。特に、ジアミノプロピオン酸を、酵素または加水分解による攻撃を受けやすいポリマー中で使用した場合には、この天然には存在しないアミノ酸は望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
【0007】
Zhuの合成アプローチでは、架橋性ペプチドのプレポリマーを作るために、重合可能な構成要素をペプチドに結合させている。しかしながら、本発明者らは、プレポリマーに、ペプチドまたは活性化ペプチドと反応可能な1種以上の反応基を導入し得る経路を提案する。これにより、ポリマー鎖に沿ったペプチドの密度をより良く制御することが可能になり、さらに、プレポリマーを重合し、その後に生体分子、特にペプチドを導入可能な網目を形成することができる。このことは、ポリマーの加工条件が厳しく、例えばセンサーの製造において、加工の最後にペプチドを結合させることが好ましいような場合に、特に有利である。
【0008】
本発明の目的は、特に、医療用途、センサー、診断用途および/または薬剤搬送用途に使用するための、既知のポリマーまたは物品それぞれに代替可能な新規なポリマーまたは物品を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、生体内における生体適合性に優れ(免疫応答を殆ど、または全く引き起こさない)、かつ/または、特に生体内において生分解し得る、ポリマーまたは物品を提供することにある。特に、本発明の目的は、生体内の条件下での生分解速度が良好に制御されるポリマーを提供することにある。
【0010】
本発明のさらなる目的は、1種以上の官能性ペプチドなどの、1種以上の生物学的に活性な分子を、1より大きい重合性官能価を有するポリマーに効率良く導入する方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらなる目的は、良好な分解特性を有する、特に、分解時の酸性度の低いポリマーを提供することにある。
【0012】
本発明のさらなる目的は、弾性などの機械的特性の良好な新規のポリマーを提供することにある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、細胞組織または体液と選択的に相互作用し、特定の生物学的応答を加速、抑制、または均衡させるポリマーまたは物品を提供することにある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、検出目的用および/または標的薬剤搬送用に適したポリマーマトリックスを提供することにある。
【0015】
さらなる目的は、ポリマーまたは物品を製造するために使用することができる新規な化合物を提供することにある。
【0016】
さらなる目的は、生体内で使用することができ、(自己)細胞または特定の生化学成分と相互作用し得る生体分子部分を含むか、またはそのような生体分子部分に共有結合可能な官能基を含む、新規な化合物、ポリマーまたは物品を提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、インプラント物品のコーティングに使用可能なポリマーをベースにしたコーティングを含む物品を提供することにある。
【0018】
本発明により解決し得る1つ以上の他の目的は、以下の記載から明らかになるであろう。
【0019】
(a)少なくとも2つの重合可能な部分、(b)少なくとも2つのアミン基がカルバメート基、チオカルバメート基またはカルバミド基を形成している少なくとも2つのアミン基を含む、アミノ酸の少なくとも1つのアミノ酸残基、および(c)そのジアミノ酸残基のカルボン酸部分に直接またはスペーサーを介して結合した生体分子部分、を含む化合物を提供することにより、本発明の1つまたはそれ以上の目的が達成されることがわかった。
【0020】
本発明は、特に、式I
【化1】
(式中、
−Gは、少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基、または部分Xであり、
−各Xは独立して、重合性基を含む部分を表し、
−各Yは独立して、O、SまたはNRを表し、
−各Rは独立して、水素、または場合により1種以上のヘテロ原子を含有する置換および非置換の炭化水素から選択される基、好ましくは水素、またはC1〜C20の炭化水素、より好ましくは水素、またはC1〜C8のアルキル基を表し、
−Lは、場合により1種以上のヘテロ原子を含有する置換もしくは非置換の炭化水素を表し、
−nは、GがXを表す場合は値1を有する整数であり、Gが少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基を表す場合は、nは、少なくとも2、好ましくは2〜8であり、
−Zは、その化合物の残りの部分に直接またはスペーサーを介して結合した生体分子部分である)
で表される重合性化合物に関する。
【0021】
本発明において、用語「炭化水素」は、特に断らない限り、置換および非置換の炭化水素、1種以上のヘテロ原子(S、N、O、Pなど)を有する炭化水素、または、ヘテロ原子を含まない炭化水素を含むことを意味する。置換基は、具体的には、−OHおよびハロゲン原子(Br、Cl、F、I)から選択され得る。
【0022】
用語「アルキル」および「アルキレン」は、特に断らない限り、非置換および置換のアルキル、並びにアルキレンをそれぞれ含むことを意味する。置換基は、具体的には、−OHおよびハロゲン原子(Br、Cl、F、I)から選択され得る。
【0023】
原則として、本発明の重合性化合物中の重合性部分(「X」)は、ポリマーを形成し得る部分であればいかなる部分であってもよい。それは、特に、付加またはラジカル反応による重合が可能な部分から選択される。付加反応は制御が容易かつ良好であることがわかった。さらに、これは、離脱していく基から生成される生成物などの望ましくない副生物を生成せずに実施することができる。
【0024】
部分はラジカル重合されることが好ましい。これは、重合反応を熱的に開始させる代わりに、光開始剤の存在下、UV光、可視光、マイクロ波、近赤外線、ガンマ線などの電磁放射線、または電子線によって重合を開始することができるので有利であることがわかっている。これにより、化合物/ポリマーの(部分的な)熱的変性または分解のリスクを全く伴わないか、または少なくとも減じられたリスクの下に急速重合が可能となる。
【0025】
特に、熱の影響を受ける生物学的部分が存在しない場合、熱重合を採用し得る。例えば、生物学的に活性な部位が重合に必要な高温によって影響されないような、1種以上の短鎖のペプチドおよび/またはタンパク質が存在する場合、熱重合を採用し得る。
【0026】
重合性基Xの好ましい例としては、C=C結合(特に、ビニル基)またはC≡C基(特に、アセチレン基)などの不飽和の炭素−炭素結合を含む基、チオール基、エポキシド、オキセタン、水酸基、エーテル、チオエーテル、HS−、H2N−、−COOH、HS−(C=O)−またはこれらの組み合わせ、特に、チオールとC=C基の組み合わせが挙げられる。
【0027】
重合性部分Xは、特に、アクリレート、メタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート;ビニルエーテル;アルキルエーテル;イタコネート、不飽和ジエステルおよび不飽和二塩基酸またはその塩(フマレートなど);ビニルスルホン、ビニルホスフェート、アルケン、不飽和エステル、フマレート、マレエート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。そのような部分Xは、容易に入手可能な出発物質から出発して本発明のポリマーに導入することができ、かつ、良好な生体適合性を示すことから、生体内もしくは他の医学的用途に特に有用である。
【0028】
部分Xがヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートのとき、特に良好な結果が得られた。
【0029】
有利な実施形態においては、重合性部分Xは、式−R1R2C=CH2で表される。式中、
−R1は、場合により、エステル部分、エーテル部分、チオエステル部分、チオエーテル部分、カルバメート部分、チオカルバメート部分、アミド部分、および1種以上のヘテロ原子、特に、S、O、PおよびNから選択される1種以上のヘテロ原子を含む他の部分からなる群から選択される1種以上の部分を含有する、置換および非置換の脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素基からなる群から選択される。R1は、線状であっても分岐状であってもよい。特に、R1は、2〜20個の炭素原子を含んでいてもよく、さらに特に、置換もしくは非置換のC1〜C20のアルキレン基であってよく、さらに特に、置換もしくは非置換のC2〜C14のアルキレン基であってよい;そして
−R2は、水素、並びに、場合により、1種以上のヘテロ原子、特に、P、S、O、およびNから選択される1種以上のヘテロ原子を含有する置換および非置換のアルキル基からなる群から選択される。R2は、線状であっても分岐状であってもよい。特に、R2は、水素、または置換もしくは非置換のC1〜C6のアルキル基であってよく、特に、置換もしくは非置換のC1〜C3のアルキル基であってよい。
【0030】
アミノ酸残基(「L」)は、置換もしくは非置換の炭化水素であり、これはN、S、Pおよび/またはOなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。置換炭化水素の場合、置換基は水酸基であってもよい。
【0031】
アミノ酸残基は、D−異性体に基づくものであってもL−異性体に基づくものであってもよい。Lは、好ましくはC1〜C20の炭化水素であり、より好ましくは、線状または分岐状のC1〜C20のアルキレン基であり、より一層好ましくは、C1〜C12のアルキレン基であり、特に好ましくは、C3〜C8のアルキレン基である。ここで、アルキレン基は非置換であっても置換であってもよく、特に、水酸基を有するもの、および/または、場合により1種以上のヘテロ原子を含有するものであってよい。親水性が望ましいという観点では、炭素の数は、8以下のように、比較的少ないことが好ましい。
【0032】
アミノ酸残基は、リシン、オルニチン、ヒドロキシリシン、N−アルファ−メチルリシンまたはジアミノブタン酸の残基から選択されることが特に好ましい。
【0033】
特に、本発明の化合物/ポリマー/物品を医療用途で使用することを意図する場合、さらに特に、生体内で使用することを意図する場合、アミノ酸残基は、天然アミノ酸、通常、L−異性体、に基づくものであることが好ましい。このことは、化合物/ポリマー/物品が生分解性である場合、特に望ましい。このような観点において、好ましいアミノ酸残基は、L−リシン、L−ヒドロキシリシンまたはN−アルファ−メチル−リシンの残基である。L−リシンを使用した場合に、特に好ましい結果が得られた。
【0034】
本発明の化合物/ポリマーが分解した(例えば体内で)場合、アミノ酸(残基「L」に対応)が分解生成物の1つであり得る。化合物/ポリマーが分解すると、酸(プロトン、H3O+)が放出される。生体内条件下では、これにより炎症もしくはそれに類似した反応が引き起こされるおそれがある。本発明者らは、アミノ酸が、本発明の生分解性インプラント物品の周辺組織の炎症の防止に寄与し得ると考えている。理論に捉われずに言うならば、アミノ酸は、酸を捕捉し、それによって組織の炎症防止に寄与するものと考えられる。この目的には、リシンが特に適していることがわかった。
【0035】
L−ヒドロキシリシンは、付着されるべきペプチドをそのC末端を介して付着させるという点で有用である。それは、また、L−リシンに基づく同等のポリマーより親水性が高いポリマーを提供するためにも使用される。
【0036】
本発明の化合物/ポリマーが分解する際に生成されるアミノ酸は、傷の治癒に寄与し(L−アルギニン、L−グルタミン)、あるいは、例えばポリマーを含む神経ガイドの場合に神経系に影響を及ぼす(L−アスパラギン)など、生理学的機能を果たし得る。
【0037】
上述したように、Zは、化合物の残りの部分に直接またはスペーサーを介して結合している生体分子部分である。スペーサーは、生体分子部分の選択性表面またはバルクのパターニングを提供するためのものである。生体分子部分Zは、原則的には、アミノ酸残基のカルボン酸基に(直接、またはスペーサーを介して)結合する生物学的に活性な分子であればいかなる分子であってもよい。そのような分子は、天然分子であっても合成分子であってもよい。
【0038】
生体分子部分Zは、細胞シグナリング部分、化合物/ポリマー/物品に対する細胞接着性を改善し得る部分、細胞の増殖を制御(増殖の促進または抑制など)し得る部分、抗血栓性部分、傷の治癒を改善し得る部分、神経系に影響を及ぼし得る部分、特定の組織または細胞タイプに選択的親和性を有する部分、エピトープおよび抗菌部分から選択されることが好ましい。この部分は、化合物/ポリマー/物品の残りの部分に結合しているとき、および/または、化合物から離脱するときに活性を示す。結合時に活性的であることが好ましい。
【0039】
生物分子部分Zは、アミノ酸、環状ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、グリコペプチドなどのペプチド、および糖タンパク質などのタンパク質;モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドなどのヌクレオチド、並びに炭水化物から選択されることが好ましい。
【0040】
例えば、アミノ酸は、傷の治癒を促進するために(L−アルギン、L−グルタミン)、あるいは、神経系の機能を調節するために(L−アスパラギン)、結合させることができる。
【0041】
好ましい一実施形態では、生活性部分はペプチド残基、より好ましくはオリゴペプチド残基である。この分野では特定の機能を有するペプチドが知られており、知られている機能に基づいて選択することができる。例えば、ペプチドは、増殖因子や他のホルモン的に活性なペプチドから選択することができる。特に、Zは、当業者に知られているアミノ酸から構成されている下記の配列を含むペプチド残基から選択することができる。
【0042】
【表1】
【0043】
一実施形態において、Zはアンジオテンシンである。アンジオテンシンは、血管収縮、血圧上昇および/または副腎皮質からのアルドステロンの分泌作用を有する。
【0044】
環状ペプチドの好ましい例は、抗菌剤のグラミシジンSである。
【0045】
適切なペプチドの他の例としては、特に、血管内皮増殖因子(VEGF)、形質転換増殖因子B(TGF−B)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、骨形成タンパク質(OP)、単球走化性タンパク質(MCP1)、腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。
【0046】
特に本発明の化合物の一部を構成し得るタンパク質の例としては、増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、細胞外基質タンパク質、グリコサミノグリカン、アンジオポイエチン、エフリンおよび抗体が挙げられる。
【0047】
好ましい炭水化物は、抗血栓剤のヘパリンである。
【0048】
ヌクレオチドは、特に、遺伝子治療用オリゴヌクレオチドや、細胞タンパク質またはウィルスタンパク質に結合可能なオリゴヌクレオチドなどの治療用オリゴヌクレオチド、好ましくは高い選択性および/または親和性を有するものから選択される。
【0049】
好ましいオリゴヌクレオチドとしては、アプタマーが挙げられる。DNAベースのアプタマーおよびRMAベースのアプタマーの例はともに、Nimjeeら、Annu.Rev.Med.2005、56、p.555−583に記載されている。ウィルスTATタンパク質または細胞タンパク質サイクリンT1に結合してHIV複製を阻止するRNAリガンドTAR(Trans activation response(トランス活性化応答))は、アプタマーの一例である。さらに、好ましいヌクレオチドとしては、VA−RNAおよび、細胞の増殖を調節する転写因子E2Fが挙げられる。
【0050】
上述したように、生体分子部分はスペーサーを介して結合していてもよい。スペーサーは、原則的には、本発明の化合物/ポリマーのアミノ酸残基のカルボン酸と、共有結合で結合する生体分子の両者に結合し得るものであれば、いかなるものも使用可能である。適切なスペーサーとしては、PEGなどのポリアルキレングリコール、オリゴマーエステル、または、シグナリング機能を有さないペプチドセグメント、例えば、グリシンなどの1個のアミノ酸をベースとするオリゴペプチドまたはポリペプチドが挙げられる。
【0051】
本発明の化合物/ポリマー中に存在する部分Gは、−Y−(C=O)−NR−結合を介して部分Lと結合し得る、少なくともnの官能価を有する任意の分子の残基であってもよい。そのような残基は、特に、次の官能基:−OH、−NH2、−RNH、−SH(ここで、Rは先に定義した通りである)の1種以上を含む多官能価のポリマーおよびオリゴマーからなる群から選択される。
【0052】
特に、それぞれ多官能性分子であるGは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);ポリ(酸無水物);ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(オルトエステル);ポリ(ジオキサノン);ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL);ポリ(ウレタン);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリアルキレングリコール、好ましくはPEG;ポリアルキレンオキサイド、好ましくはポリ(エチレンオキサイド)およびポリ(プロピレンオキサイド)から選択されるもの;ポロキサマー;メロキサポール;ポロキサミン;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキル化セルロース;および、ポリペプチド、ポリサッカリド、炭水化物(ポリサッカロース、ヒアルロン酸、デキストランおよびこれらの類似の誘導体、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、アルギン酸塩、並びに、ゼラチン、コラーゲン、アルブミンまたはオボアルブミンなどのタンパク質など)などの天然ポリマー;並びに、これらの任意の部分のコオリゴマー、コポリマー、および混合物から選択される。
【0053】
部分Gは、生安定性/生分解性に基づいて選択してもよい。化合物/ポリマー/物品に高い生安定性を付与するためには、ポリエーテル、ポリチオエーテル、芳香族ポリエステル、芳香族チオエステルが一般に特に適している。生分解性を付与するオリゴマーおよびポリマーの好ましい例としては、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリチオエステル、脂肪族ポリアミドおよび脂肪族ポリペプチドが挙げられる。
【0054】
Gは、ポリエステル、ポリチオエステル、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリチオエーテル、ポリエーテル、ポリ酸無水物またはポリジオキサノンから選択することが好ましい。なかでもポリアルキレングリコールは、良好な結果が得られ、特に、PEGは、より良好な結果が得られた。
【0055】
疎水性ポリマーには、Gは、ポリブチレンオキサイドまたはポリ(−メチル−1,4−ブタンジオール)コ(テトラメチレングリコール)(PTGL)などの疎水性ポリエーテルから適切に選択することができる。
【0056】
本発明の化合物またはポリマーが、タンパク質を含有する体液、例えば血液、血漿、血清または細胞外マトリックスと接触し得るような用途では、PEGなどのポリアルキレングリコールが有利である。特に、それは、汚染され難い(非特異的タンパク質の吸収が少ない)傾向を示し、かつ/または、生物学的組織の接着に有利な影響を及ぼす。タンパク質などの汚染によってZ基が遮蔽されるのを避けるには、低汚染性であることが望ましい。
【0057】
部分Gの数平均分子量(Mn)は、通常、少なくとも200g/mol、特に、少なくとも500g/molである。機械的特性を向上させるためには、Mnは少なくとも2000g/molである。部分Gの数平均分子量は、通常、100000g/mol以下である。数平均分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)により測定されるものである。
【0058】
本発明は、さらに、本発明の化合物を製造する方法であって、まず式III
【化2】
(式中、Rは水素または保護基である)で示される化合物を、式X−Y−Hおよび(もしGがXと異なるならば)式G−Y−Hの化合物と反応させて、水素または保護基を選択的に除去し、生体分子部分を直接またはスペーサーを介して、Lに結合したカルボン酸部分に共有結合させることを含む方法に関する。
【0059】
本発明の方法の利点は、望ましくない副生物(離脱する基から生成される分子)を生成せずに実施可能なことである。
【0060】
適切でかつ好ましい反応条件は、イソシアネートを、アミン、アルコールまたはチオールと反応させる条件としてこの分野で知られている条件をベースにすることができる。所望するならば、この分野で知られた方法で保護基を除去してもよい。例えば、光開裂性基であれば、光を照射することによって除去することができる。アルキル基は、塩基に接触させることにより(例えばメチル基)、あるいは、酸加水分解、例えばトリフルオロ酢酸中での酸加水分解により(例えばt−ブチル基)、化学的に除去することができる(例えばメチル基)。
【0061】
本発明は、また、重合性化合物を含むポリマー、および、重合性化合物を含む物品、特に医療用物品に関する。
【0062】
本発明は、また、最適な生物学的効果が得られるように、重合性化合物とラジカルまたは付加重合性の化合物とを一定の割合で含むポリマーに関する。ラジカルまたは付加重合性の化合物は、上記の重合性部分Xから選択することができる。
【0063】
本発明のポリマーは、さらに、式II
【化3】
(式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アリール基、または金属塩から選択される)で示される化合物を含むことが好ましい。
【0064】
ここでは、用語「ポリマー」は、低相対分子量の分子から実際または概念的に誘導される複数の繰り返し単位を実質的に含む構造を意味する。そのようなポリマーとしては、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、架橋ネットワーク、分岐ポリマーおよび線状ポリマーが挙げられる。オリゴマーはポリマーの一種、すなわち、低相対分子量の分子から実際または概念的に誘導される繰り返し単位が比較的少ないポリマーであると考えられる。
【0065】
ここでは、用語「プレポリマー」は、1つ以上の重合性官能基、例えばビニル基を含むポリマーを意味する。
【0066】
ポリマーは、分子量が200Da以上、400Da以上、800Da以上、1000Da以上、2000Da以上、4000Da以上、8000Da以上、10000Da以上、100000Da以上、または1000000Da以上であってもよい。比較的低分子量の、例えば、8000Da以下、特に、4000Da以下、さらに特に、1000Da以下であるポリマーは、オリゴマーと称し得る。
【0067】
本発明のポリマーまたは物品は、特に、次の特性:低もしくは非アレルギー性であること、生体適合性の高いこと、良好な弾性、破断伸びおよび/または高靭性を有すること、汚染されにくいこと、好ましい細胞接着性を示すこと、細胞のコロニー形成を可能にすること、生分解性または生安定性であること、分解時の酸度が低いこと、生物学的活性部分と効率的に結合すること、および、細胞毒性が低いこと、のなかの1つ以上の特性を示すことがわかった。
【0068】
さらに特に、例えば、タンパク質を含む体液と接触した際に、非特異的タンパク質の吸収による汚染がないかまたは少なく、かつ/あるいは、生体内および/または生体外での、細胞の接着および/または細胞のコロニー形成を可能にするポリマーを提供可能であることがわかった。
【0069】
さらに、本発明のポリマーは、熱、プロテアーゼ、溶剤、材料加工条件および/またはポリマーの体内への導入方法(例えば、インプラントとして)による変性の結果引き起こされる活性の喪失などの有害な影響に対して、生体分子部分を少なくともある程度保護し得ると考えられる。
【0070】
本発明の物品は、チューブ、ミクロスフェア、ナノスフェア、多孔質モノリスワックス、織もしくは不織繊維材料、フィラメント、フィルム、発泡体、インプラント、ゲル、ヒドロゲル、スポンジ、コーティングおよび人工生体組織であってよい。
【0071】
本発明の重合性化合物またはポリマーは、特に、医療機器、さらに特に、人工器官もしくは他の組織代替物、薬剤搬送デバイス、ミクロスフェア、埋め込み機器、または体外医療機器を提供するために使用することができる。ポリマーは、特に、管状組織を工学的に扱うための生安定性または生分解性のポリマーデバイスを作製するのに適している。これらの組織としては、腸、血管、気管、尿管および神経ガイドが挙げられる。
【0072】
本発明のポリマーは、また、医療用のコーティング、フィルム、シーラントおよび接着剤の製造に使用される。ポリマーには、また、積層製造プロセスなどの3次元モデリングプロセス(迅速生産としても知られている)により、3次元形状を付与することができる。
【0073】
本発明は、さらに、式Iで示される化合物を重合させることにより、本発明のポリマーを製造する方法に関する。
【0074】
本発明は、さらに、式II
【化4】
(式中、Rは水素または保護基から選択される)で示される化合物を重合させることによりポリマーを製造する方法であって、水素または保護基を選択的に除去し、その後、生体分子部分を直接またはスペーサーを介して、Lに結合したカルボン酸部分に共有結合させる方法に関する。
【0075】
生体分子部分は、この分野で知られている方法、特に、アミド化またはエステル化反応を用いて、カルボン酸に共有結合させることができる。
【0076】
本発明のポリマーは、本発明の化合物の重合性部分を重合させることによって得ることができる。これは、特定の重合性部分に対して、この分野で知られている方法、例えば逐次重合またはラジカル重合の基づいて行うことができる。重合は、低温熱開始剤または光開始剤により開始させることができる。好ましくは、光開始剤により重合を開始させる。
【0077】
単一の光開始剤または2種またはそれ以上の光開始剤を用いることができる。硬化速度を速めるために、光開始剤の組み合わせを使用することが、特に、着色剤が存在する場合に、有利である。
【0078】
適切な光開始剤は当業者に良く知られており、ラジカル光開始剤が挙げられる。ラジカル光開始剤は、一般に、開始ラジカルを生成させるプロセスにより2つのクラスに分けられる。
【0079】
照射により単分子の結合が開裂する化合物はタイプI光開始剤と呼ばれる。励起状態の光開始剤が、第2の分子(共開始剤、COI)と相互作用して、2分子反応でラジカルを発生させるならば、その開始系はタイプII光開始剤と呼ばれる。適切なアルファ開裂の均一ラジカル光開始剤(タイプI)の例としては、ベンゾイン誘導体、メチロールベンゾインおよび4−ベンゾイル−1,3−ジオキソラン誘導体、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイド(その下にあるビスアシルホスフィンオキサイドも)、アシルホシフィンスルフィド、ハロゲン化アセトホスフィン誘導体などがある。
【0080】
光重合開始剤の他の例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4、4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーのケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、カンホルキノン、エオシンなどがある。これらの光重合開始剤の混合物も使用し得る。
【0081】
商業的に入手可能な光重合開始剤の製品の例としは、イルガキュア(IRGACURE)184、369、651、500、907、CGI1700、1750、1850、819、2959、CG24−61、ダロキュア(Darocur)1116、1173(Ciba Specialty Chemicals Co.,LTD.製)、ルシリン(Lucirin)LR8728(BASF製)、ウベクリル(Ubecryl)P36(UCB製)などが挙げられる。
【0082】
タイプII光開始剤の他の例としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、メチル4−ジメチルアミノベンゾエート、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、イソアミル4−ジメチルアミノベンゾエートなどがある。光増感剤の商業的に入手可能な製品としては、例えば、エベクリル(Ebecryl)P102、103、104および105(UCB製)が挙げられる。混合物の使用も可能である。
【0083】
ポリマーに生体分子部分を結合させる場合、重合後にそのような部分を共有結合させてもよい。
【0084】
上述したように、本発明は、また、本発明のポリマーを含む物品に関する。物品またはその大部分は、本発明のポリマー、またはそのようなポリマーを含む組成物、例えば、生物活性剤、特に、物品から放出され得る薬剤を加えた組成物から作られる。
【0085】
物品の表面の少なくとも一部は、そのポリマーを含むことが好ましい。
【0086】
所望するならば、物品の異なる場所に、例えば、表面の異なる部分に、異なる部分Zを導入することができる。こうして、異なる所望の効果を、物品の異なる場所(例えば、体内において)で発現させることができる。例えば、これにより、物品が神経ガイドの場合の神経細胞のような、特定の細胞の成長方向を制御することが可能になる。所望するならば、物品の一部分に生体分子部分を導入し、他の部分に保護基を導入し、それによって、物品の標的部分のみに特定の効果を与えることができる。
【0087】
特に、物品の表面でこのようであることが望まれる。したがって、好ましい実施態様では、物品表面の少なくとも第1の選択領域が、生体分子部分を部分Zまたは部分Zの一部として含有する第1のポリマーまたはポリマーの第1の部分を含み、少なくとも第2の領域が、前記生体分子部分とは異なる部分、例えば、水素、保護基または異なる生体分子部分を含有する本発明の第2のポリマーまたは同ポリマーの第2の部分を含む。
【0088】
そのような物品は、特に、
−本発明の化合物またはポリマーを使用して物品を成形し(ここで、Rは保護基(好ましくは、光開裂性基)、または水素である)、
−生体分子を結合させる領域の保護(光開裂性)基を選択的に除去し、生体分子部分を直接またはスペーサーを介してカルボン酸部分に結合させる
ことにより製造することができる。
【0089】
生体分子部分が意図した目的に合わない場合、あるいは、生体分子部分に悪影響を及ぼすおそれのある処理を化合物/ポリマー/物品に対しさらに行う必要がある場合、Rは、特に、水素または保護基とすることができる。後者の場合、所望するならば、生体分子部分をそのような処理の後に化合物/ポリマー/物品に結合させることができる。特に、保護基は、カルボン酸が化合物/ポリマー自身の他の反応性部分または他の分子と反応することから保護するために使用することができる。保護基は、また、生体分子部分を特定のパターンで結合させるため、あるいは、そのような結合を促進するために使用することができる。適切な保護基としては、アルキル基、特にメチル基、エチル基およびC3〜C8非置換アルキル基などの非置換アルキル基が挙げられる。メチル基およびC3〜C8アルキル基、特にt−ブチル基は、好ましいアルキル基である。
【0090】
Rが保護基の場合、光開裂性基から選択すれば、それらは電磁放射線を使用することによって容易に除去することができるので有利である。そのような基は、また、特定のパターンで、例えば、本発明の物品の表面に、その表面の特定の部分に選択的に照射することによって、容易に除去することができる。光開裂性の基の好ましい例としては、Protective groups in Organic synthesis、Theodora Greene、第3版、ウィリー(Wiley)ISBN 0 471−16019(1999)に記載されているものが挙げられる。
【0091】
酸処理、例えばトリフルオロ酢酸溶液に接触させることによって除去し得る保護基を選択することも可能である。酸により除去可能な保護基の例としては、t−ブチル基がある。
【0092】
保護基は光開裂性基であることが好ましい。
【0093】
選択的除去は、ポリマーの表面に電磁放射線を選択的に照射することによって行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】上の行:A)開裂性基を有するゲルの共焦点顕微鏡写真、B)ゲル上50μm四方の照射、開裂性基は蛍光性である、下の行 A)共焦点顕微鏡で観察されたブランコゲル(Blanco gel)、B)ゲル上50μm四方を照射後、蛍光は観察されない、を示す。
【図2】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図3】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図4】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図5】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図6】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図7】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図8】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの酵素による分解を示す。
【図9】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの酵素による分解を示す。
【図10】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの酵素による分解を示す。
【図11】引張試験のグラフ表示を示す。
【図12】PEG600−DAおよびPTGL1000−(T−H)2からの抽出可能物を示す。
【図13】PEG600−DAおよびPTGL1000−(T−H)2からの抽出可能物を示す。
【図14】写真を示す。
【図15】写真を示す。
【0095】
以下、本発明を次の実施例により説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
[実施例]
[材料]
dl−ラクチドおよびグリコリドは、PURACから購入した。L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステルは、Simochem(アイントホーフェン(Eindhoven)、オランダ(The Netherlands))から購入した。L−リシン−ジイソシアネートメチルエステルはKyowa Hakko Europe GmbHから提供された。カプロラクトンは、ソルベイカプロラクトン(Solvaycaprolactone)から提供された。Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−OtBuおよびGly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2は、Chiralix(ナイメーヘン(Nijmegen)、オランダ)から購入した。PmcおよびtBuは、それぞれ、保護基、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニルおよび第3ブチルの略である。他の薬品は全て、アルドリッチ(Aldrich)から購入した。他に明記しない限り、薬品はそのまま使用した。
【0097】
[装置]
NMR Advance 300MHz スペクトロメータ(Bruker))、Agilent 1100 MSD single quat LCMS、Perkin Elmer SpectrumおよびFTIRスペクトロメータを使用し、化学構造および純度を分析した。Acros silica gel(0.035〜0.070mm、細孔径約6nm)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィ(SGCC)を実施した。
【0098】
Merck Precoated silica gel 60F−254 plate上でTLCを実施した。化合物をUVまたはニンヒドリンで可視化した。
【0099】
層流キャビネット(Clean Air DLF/RS6)、インキュベータ(NAPCO model 6300)、Optimas画像解析ソフトウェア(BioScan Optimas)搭載のコンピュータに連結されたモノクロCCDカメラ(ADIMEX Image Systems、MX5)を備えたオリンパス(Olympus)CK2マイクロスコープを使用した。
【0100】
[実施例1:材料の調製]
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1000ジオール(1)の合成]
dl−ラクチド(24.76g、17.2mmol)、グリコリド(19.94g、17.2mmol)およびジエチレングリコール(5.306g、50mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(13.9mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して1を得た。
【0101】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.25−5.18(m、5.3H、CH(lac));4.83−4.74(m、10.6H、CH2(gly));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);2.79(broad、2H、−OH);1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0102】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1000−(t−Bu−LDI−HEA)2(2)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(2.54g、10mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.012g、0.028mmol)、イルガノックス(Irganox)1035(0.012g)のTHF(17.4グラム)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、1.16g、10mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、1(5グラム、5mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の2を得た。
【0103】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.25−5.18(m、H、CH(lac));4.83−4.74(m、2H、CH2(gly));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、4H、Lys);1.8−1.3(8H、Lys、12H、t−ブチルエステル、m、4H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0104】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1000ジアクリレート(3)の合成]
1(50グラム、50mmol)およびトリエチレンアミン(10.63g、0.105mol)を100mLのテロラヒドロフラン(THF)に溶解した。この溶液に、THF(15mL)に溶解したアクリロイルクロライド(9.5g、0.105mol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。THFを蒸発させた。全てを250mLのクロロホルムに溶解し、H2O、1N−NaHCO3、塩水で、連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の3が得られた。
【0105】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.25−5.18(m、9.1H、CH(lac));4.83−4.74(m、15.9H、CH2(gly));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);1.58(m、30H、CH3(lac))
【0106】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1000ジオール(4)の合成]
dl−ラクチド(37.41g、25.95mmol)、ε−カプロラクトン(29.63g、25.9mmol)およびジエチレングリコール(7.959g、75mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(21mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して4を得た。
【0107】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.25−5.18(m、5H、CH(lac));4.40−4.4(m、10H、CH2(cap));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.4(broad、2H、−OH);2.4(m、CH2(cap)1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap))
【0108】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1000−(t−Bu−LDI−HEA)2(5)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(tert.−ブチル−LDI)(5.08g、20mol))、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.023g、0.056mmol)、イルガノックス1035(0.023g)のトルエン(17.4グラム)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(2.23g、20mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、4(10グラム、5mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の5を得た。
【0109】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.25−5.18(m、H、CH(lac));4.40(m、10H、CH2(cap));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、4H、Lys);2.4(m、CH2(cap) 1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap));1.8−1.3(8H、Lys、12H、t−ブチルエステル、m、4H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0110】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1500トリオール(6)の合成]
エチルアセテート(25mL)中でトリメチロールプロパン(10グラム)を再結晶させて試料を乾燥させた。dl−ラクチド(25.22g、17.5mmol)、グリコリド(20.31g、17.5mmol)およびトリメチルプロパン(4.47g、33.3mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(14mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して6を得た。
【0111】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.4−5.0(m、8.2、CH(lac));4.82−4.70(m、16.9H、CH2(gly));4.5−4.0(m、9.0H、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH)およびCH3CH2C(CH2O−)3);3.0(broad、3H、−OH);1.57(m、31.6H、CH3(lac)およびCH3CH2C(CH2O−)3);0.90(t、3H、CH3CH2C(CH2O−)3)
【0112】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1500トリアクリレート(7)の合成]
6(10グラム、6.6mmol)およびトリエチルアミン(0.71グラム、7mmol)をTHF(100mL)に溶解した。THF(25mL)に溶解したアクリロイルクロライド(0.67g、7mmol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。溶媒THFを蒸発させた。残渣を250mLのクロロホルムに溶解し、H2O、0.1NのNaHCO3、塩水で、連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の7が得られた。
【0113】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.4−5.0(m、8.2、CH(lac));4.82−4.70(m、16.9H、CH2(gly));4.5−4.0(m、9.0H、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH)およびCH3CH2C(CH2O−)3);3.0(broad、3H、−OH);1.57(m、31.6H、CH3(lac)およびCH3CH2C(CH2O−)3);0.90(t、3H、CH3CH2C(CH2O−)3)
【0114】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1500−(t−Bu−LDI−HEA)3(8)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(2.54g、10mol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.037g、0.084mmol)、イルガノックス1035(0.012g)のテトラヒドロフラン(17.4グラム)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(1.16g、10mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。72時間後、6(10グラム、5mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の8を得た。
【0115】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.4−5.0(m、8.2、CH(lac));4.82−4.70(m、16.9H、CH2(gly));4.5−4.0(m、9.0H、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH)およびCH3CH2C(CH2O−)3);4、3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、6H、Lys);1.8−1.3(12H、Lys、18H、t−ブチルエステル、m、6H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0116】
[PEG600−(t−Bu−LDI−HEA)2(9)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(10.2g、40mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(50mg)およびイルガノックス1035(50mg)の溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(4.8g、40mmol)を、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、Mn=600のポリエチレングリコール(12グラム、20mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の9を得た。
【0117】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO)、4.3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA)および(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、3.6(s、CH2、PEG600および(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、4H、Lys)、1.8−1.3(8H、Lys、12H、t−ブチルエステル、m、4H、CH2(Lys))
【0118】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1000−(m−LDI−HEA)2(10)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートメチルエステル(Me−LDI)(10.6g、50mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.020g、0.050mmol)、イルガノックス1035(0.060g)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、6.0g、50mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、1(25グラム、25mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の10を得た。
【0119】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.25−5.18(m、H、CH(lac));4.83−4.74(m、2H、CH2(gly));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−および3H、メチルエステル);3.2(m、4H、Lys);1.8−1.3(8H、Lys、m、4H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0120】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1545ジオール(11)の合成]
dl−ラクチド(51.9g、36.1mmol)、ε−カプロラクトン(41.2g、36.1mmol)およびジエチレングリコール(6.846g、64mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(29mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して11を得た。
【0121】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.25−5.18(m、5H、CH(lac));4.40−4.4(m、10H、CH2(cap));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.4(broad、2H、−OH);2.4(m、CH2(cap)1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap))
【0122】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1545ジアクリレート(12)の合成]
11(100グラム、64.7mmol)およびトリエチレンアミン(14.36グラム、0.142mol)を100mLのテトラヒドロフランに溶解した。この溶液に、THF(50mL)に溶解したアクリロイルクロライド(12.8g、0.141mol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。THFを蒸発させた。全てを250mLのクロロホルムに溶解し、H2O、1N−NaHCO3、塩水で、連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の12が得られた。
【0123】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.25−5.18(m、5H、CH(lac));4.40−4.4(m、10H、CH2(cap));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.4(broad、2H、−OH);2.4(m、CH2(cap)1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap))
【0124】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1000−(m−LDI−HEA)2(13)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートメチルエステル(10.6g、50mol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.021g、0.050mmol)、イルガノックス1035(0.060g)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、THF25mLに溶解したヒドロキシエチルアクリレート(6.0g、50mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、50mLのテトラヒドロフランに溶解させた4(25グラム、25mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の13を得た。
【0125】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.25−5.18(m、H、CH(lac));4.40(m、10H、CH2(cap));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.3−4.1(m、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、4H、Lysおよび3H、メチルエステル);2.4(m、CH2(cap)1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap));1.8−1.3(8H、Lys、m、4H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0126】
[t−Bu−LDI−(HEA)2(14)の合成]
【化5】
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(10g、39mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.086g)、イルガノックス1035(89mg)のトルエン(50mL)溶液に、トルエン(15mL)に溶解したヒドロキシエチルアクリレート(HEA、9.13g、78mmol)を、乾燥雰囲気下、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、無色の油の14を得た。
【0127】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.4(2H、NHCO)、4.9(2H、NHCO);4.4(m、CH2、HEA);4.3(m、CH(Lys)、);3.1(m、4H、Lys);1.8−1.3(6H、CH2、Lysおよび12H、t−ブチルエステル)
【0128】
[LDI−(HEA)2(15)の合成]
【化6】
14(18.3グラム、37.6mmol)、トリフルオロ酢酸(TFA、36グラム)およびジクロロメタン(10g)を35℃で18時間攪拌した。1H−NMRに基づき(1.39ppmにおけるtert−ブチルエステルの消失)、脱保護反応を完了させた。反応混合物を250mLのジクロロメタンおよび200mLの水に溶解させた。攪拌しながら、1N−NaHCO3水溶液により混合物をpH=2にした。200mLの水でCH2Cl2層を6回洗浄した。各抽出時、1N−NaHCO3水溶液を用いてpHを2にした。有機相を真空下で濃縮し、無色の油の15を得た。F−NMR(内部標準4,4’−ジフルオロベンゾフェノン)で確認したところ、TFAは完全に除去されていた。
【0129】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.4(2H、NHCO)、4.9(2H、NHCO);4.4(m、CH2、HEA、およびm、CH(Lys)、);3.1(m、4H、Lys);1.8−1.3(6H、CH2、Lys)
【0130】
[LDI−(HEA)2−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−OtBu(16)の合成]
【化7】
15(0.379g、0.88mmol)のジクロロメタン(22mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.125g、0.97mmol)を0℃で加えた。1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(0.131g、0.97mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドハイドロクロライド(0.186g、0.97mmol)およびArg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−OtBu(0.702g、0.97mmol)を連続して加え、反応混合物を0℃で1時間、および室温で17時間攪拌した。混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣を105mLのEtOAc中に移し、HCl水溶液(pH=2.5、3×100mL)、NaHCO3の飽和水溶液(2×100mL)および塩水(100mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、蒸発乾固させた。15に対して85%の収率で、白色固体の不純物を含む形態の16を得た。この固体を、シリカカラムクロマトグラフィにより、溶出液にEtOAc/MeOH(95/5、v/v)を用いて精製し、白色粉末の純粋な16を、15に対して53%の収率で得た。
【0131】
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)7.8−7.25(3H、m、arom.Pmc)、6.32(3H、m、アクリロイル+NH)、6.08(3H、m、アクリロイル+NH)、5.74(2H、d、アクリロイル)、4.61(1H、m、Cα−ArgまたはCα−AspまたはCα−Lys)、4.49(1H、m、Cα−ArgまたはCα−AspまたはCα−Lys)、4.23(9H、2×CH2CH2HEA、Cα−ArgまたはCα−AspまたはCα−Lys)、3.92(2H、s、CH2−Gly)、3.33(2H、m、CH2−Nε−LysまたはCH2−C(NH2)=NH)、3.07(2H、m、CH2−Nε−LysまたはCH2−C(NH2)=NH)、2.90−1.50(25H、m、CH2−Asp、CH2−CH2−Arg、CH2−CH2−CH2−Lys、3×CH3Pmc、CH2CH2Pmc)、1.35(18H、s、6×CH3tBu)、1.20(6H、s、C(CH3)2Pmc)。HPLC−MS:[M+H]+=1138(計算値)
【0132】
[LDI−(HEA)2−Arg−Gly−Asp(17)の合成]
【化8】
16(3.45g、3.03mmol)を窒素雰囲気下でシュレンク(Schlenck)反応器に仕込み、減圧にし、窒素で5回フラッシュした。その後、トリフルオロ酢酸(95mL)を窒素雰囲気下で加えた。30分後、反応混合物から一定分量採り出し、HPLCにより脱保護が完了していることを分析した。減圧下でTFAを除去し、生成物を沈殿させ、無水ジエチルエーテルで十分に洗浄した。生成物を空気中で乾燥させ、白色固体の純粋な17を2.25g得た(16に対して98%の収率)。
【0133】
1H−NMR(300MHz、MeOD):δ(ppm)6.43(2H、d、アクリロイル)、6.23(1H、d、アクリロイル)、6.17(1H、d、アクリロイル)、5.91(2H、d、アクリロイル)、4.8(2H、m、Cα−Arg/Cα−Asp)、4.5−4.2(9H、2×CH2CH2HEA、Cα−Lys)、3.93(2H、s、CH2−Gly)、3.23(2H、m、CH2−Nε−Lys)、3.11(2H、m、CH2−C(NH2)=NH)、2.90(2H、d、CH2−Asp)、2.05−1.15(10H、CH2−CH2−Arg、CH2−CH2−CH2−Lys)。HPLC−MS:[M+H]+=759(計算値)
【0134】
[H−Arg(Pmc)−OtBu−HEA−6−アミノ−ヘキサノエート(18)の合成]
【化9】
22mLのジクロロメタンに571mg(2.09mmol)のHEA−6−アミノ−ヘキサノエートを溶解した溶液に、0℃でN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド.HCl(441mg、2.30mmol)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(313mg、2.30mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(384μl、2.30mmol)、Arg−(Pmc)−OtBu(1.093g、2.20mmol)をこの順に加えた。反応混合物を、室温で終夜攪拌した後、100mLのEtOAcで希釈し、HCl水溶液(0.5M、3×25mL)および塩水(2×25mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより、EtOAc/n−ヘプタン(33%→0%n−ヘプタン)を溶出液に用いて精製した。これにより、白色固体の(18)を得た(0.437g、0.58mmol)。
【0135】
1H−NMR(CDCl3、300MHz)δ6.48(dd、J=17.2および1.4Hz、1H)、6.27(d、J=8.1Hz、1H)、6.12(dd、J=17.1および10.6Hz、1H)、6.13−6.09(m、1H)、5.85(dd、J=10.4および1.4Hz、1H)、4.95(t、J=5.2Hz、1H)、4.48−4.37(m、1H)、4.35−4.25(m、4H)、3.32−3.11(bs、2H)、3.14(q、J=6.62Hz、2H)、2.62(t、J=6.9Hz、2H)、2.58(s、3H)、2.57(s、3H)、2.28−2.15(m、2H)、2.10(s、3H)、1.78(t、J=6.9Hz、2H)、1.68−1.48(m、12H)、1.46(s、9H)、1.29(s、6H)
【0136】
[H−Arg(Pmc)−OtBu−LDI−(HEA)2(19)の合成]
【化10】
30mLのジクロロメタンに1.24g(2.88mmol)のLDI−(HEA)2を溶解した溶液に、0℃でN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド.HCl(608mg、3.17mmol)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(439mg、3.17mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(532μl、3.17mmol)、Arg−(Pmc)−OtBu(1.53g、3.02mmol)をこの順に加えた。反応混合物を、室温で終夜攪拌した後、100mLのEtOAcで希釈し、HCl水溶液(0.5M、3×30mL)および塩水(2×30mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより、EtOAc/n−ヘプタン(33%→0%n−ヘプタン)を溶出液に用いて精製した。これにより、白色固体の(19)を得た(2.0g、2.21mmol)。
【0137】
1HNMR(CDCl3、300MHz)δ7.08(d、J=7.3Hz、1H)、6.42(d、J=17.2Hz、2H)、6.13(dd、J=10.3および17.2Hz、2H)、6.05−5.96(m、1H)、5.85(d、J=10.6Hz、2H)、5.81−5.76(m、1H)、5.13(t、J=5.3Hz、1H)、4.47−4.44(m、1H)、4.37−4.24(m、8H)、4.23−4.13(m、1H)、3.26−3.11(m、4H)、2.62(t、J=6.9Hz、2H)、2.57(s、3H)、2.55(s、3H)、2.10(2、3H)、1.79(t、J=6.8Hz、2H)、1.87−1.35(m、12H)、1.44(s、9H)、1.30(s、6H)
【0138】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1550ジオール(20)の合成]
dl−ラクチド(51.6g、0.358mol)、グリコリド(41.5g、0.358mmol)およびジエチレングリコール(6.85g、6.45mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(29mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して20を得た。
【0139】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.25−5.18(m、5.3H、CH(lac));4.83−4.74(m、10.6H、CH2(gly));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);2.79(broad、2H、−OH);1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0140】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1550ジアクリレート(21)の合成]
20(100グラム、65mmol)およびトリエチレンアミン(14.36g、0.141mol)を100mLのテロラヒドロフランに溶解した。この溶液に、THF(50mL)に溶解したアクリロイルクロライド(12.8g、0.141mol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。THFを蒸発させた。全てを2500mLのエチルアセテート中でクエンチした。トリエチルアミン.HCl塩は良好に沈澱した。これをろ過により分離した。エチルアセテート層を、150mLの塩水で2回、150mLのNaHCO3、および、150mLの水で2回、連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の21が得られた。
【0141】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.25−5.18(m、9.1H、CH(lac));4.83−4.74(m、15.9H、CH2(gly));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);1.58(m、30H、CH3(lac))
【0142】
[p−(グリコリド−コ−カプロラクトン)1000−(m−LDI−HEA)2(22)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートメチルエステル(10.6g、50mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.020g、0.049mmol)、イルガノックス1035(0.060g)のTHF(50mL)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、6g、50mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、THF(50mL)に溶解したp−(グリコリド−コ−カプロラクトン)1000−ジオール(25グラム、25mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいた反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の22を得た。
【0143】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.6(2H、NHCO)、5.4(2H、NHCO);4.7(m、2H、CH2(gly));4.6(m、10H、CH2(cap));4.30(m、H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−および3H、メチルエステル));3.1(m、4H、Lys);2.4(m、CH2(cap));1.8−1.3((CH2(cap));m、8H、CH2(Lys))
【0144】
[p−(グリコリド−コ−カプロラクトン)1550−ジオール(23)の合成]
カプロラクトン(46.2g、0.41mol)、グリコリド(46.9g、0.41mol)およびジエチレングリコール(6.846g、64.5mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(32.8mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して23を得た。
【0145】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=4.7(m、2H、CH2(gly));4.6(m、10H、CH2(cap));4.30(m、H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.1CH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);2.4(m、CH2(cap));1.8−1.3((CH2(cap))
【0146】
[p−(グリコリド−コ−カプロラクトン)1550−ジアクリレート(24)の合成]
24(100グラム、65mmol)およびトリエチレンアミン(14.36g、0.141mol)を100mLのテロラヒドロフランに溶解した。この溶液に、THF(50mL)に溶解したアクリロイルクロライド(12.8g、0.141mol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。THFを蒸発させた。全てを2500mLのエチルアセテート中でクエンチした。トリエチルアミン.HCl塩をデカンテーションにより除去した。エチルアセテート層を250mLの塩水、250mLのNaHCO3、および250mLの水で連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の24が得られた。
【0147】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−5.8(6H、CH、アクリレート)、4.7(m、2H、CH2(gly));4.6(m、10H、CH2(cap));4.30(m、H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.1(CH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);2.4(m、CH2(cap));1.8−1.3((CH2(cap))
【0148】
[(MeO−PEG750)2−m−Lys(25)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートメチルエステル(1.5g)、イルガノックス1035(2mg)およびスズ(II)エチルヘキサノエートを乾燥トルエン(5mL)に溶解した。この混合物に、IRでλ=2243cm−1の吸収が消失するまで、10mLのトルエンに溶解したMeO−PEG750−OH(10.9g)を滴下添加した。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せずに、25を得た(10.81g)。
【0149】
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ;1.0−1.8(m、6H、CH2(Lys))、3.1−3.2(m、2H、CH2(Lys))、3.4(s、6H、OMe(Peg))、3.5−3.8(m、126H、CH2(Peg)、OMe(Lys)、4.2(m、4H、(2×)CH2−OMe(Peg))、4.3(m、1H、αH)4.9(m、1H、NH)、5.4(d、1HNH)
【0150】
13CNMR(75.5MHz、CDCl3)δ;22.0、28.9、31.3、39.9、51.5、51.7、53.3、58.4、60.9、63.1、63.6、68.8、69.0、69.6、69.8、71.3、72.1、155.2、155.8、171.9
【0151】
[(MeO−PEG750)2−Lys(26)の合成]
25(9.81g)を10mLのジオキサンに溶解した。この溶液に、7.1mLの1M−NaOHを加えた。40℃で、30分間の攪拌後、TLC(5%MeOH/DCM)基準で反応は完了した。攪拌後、減圧下で溶媒を蒸発させ、残渣を水に溶解し、1N−HClにより酸性にして、DCMで抽出した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィ(5%MeOH/DCM)の後、白色ゲルの26を90%の収率(8.5g)で得た。
【0152】
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ;1.0−1.5(m、6H、CH2(Lys))、2.8(m、2H、CH2(Lys))、3.0(s、6H、OMe(Peg))、3.3−3.6(m、118H、CH2(Peg)、OMe(Lys)、4.0(m、5H、(2×)CH2−OMe(Peg)およびαH(Lys))、5.6(bs、1H、NH)、5.8(d、1H、NH)
【0153】
13CNMR(75.5MHz、CDC13)δ;22.0、28.9、31.2、39.9、53.0、53.6、58.4、60.7、63.0、63.4、68.9、71.9、155.2、155.7、172.6
【0154】
[Boc−グリシン−o−ニトロベンジル(27)の合成]
Boc−グリシン(2g、11.4mmol)を30mLのDCMに溶解した。DMAP(1.39g)およびO−ニトロベンジルアルコール(1.74g、11.4mol)を加え、最後にDCC(2.35g、11.4mmol)を加えた。反応混合物を室温で終夜攪拌した。沈殿物をろ過により除去した後、減圧下で溶媒を蒸発させ、EtOAcに再度溶解した。有機層を1N−KHSO4、H2O、1N−NaHCO3および塩水で連続して洗浄した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィ(1:1EtOAc/ヘキサン)の後、黄色の固体の27を98%の収率(3.55g)で得た。
【0155】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.2(s、9H、Boc)、1.3(d、3H、CH3)、4.0(d、2H、CH2(Gly))、5.0(bs、1H、NH)、5.5(q、1H、CH(ベンジル))、7.2−7.3(m、1H、arom−H)、7.3−7.4(m、2H、arom−H)、8.1(m、1H、arom−H)
【0156】
[HCl.NH2−グリシン−o−ニトロベンジル(28)の合成]
27をEtOAcに溶解し、過剰のHCl/EtOAcを加えた。室温で、2時間の攪拌後、TLC基準で反応は完了した。沈殿物28をろ過し、エーテルで洗浄した。その後、ろ過物をtert−ブタノールで共蒸発させて残留HCl塩を除去した。
【0157】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.2(s、9H、Boc)、1.3(d、3H、CH3)、3.9(d、2H、CH2(Gly))、5.1(bs、1H、NH)、6.4(q、1H、CH(ベンジル)、7.2−7.3(m、1H、arom−H)、7.3−7.4(m、2H、arom−H)、8.1(m、1H、arom−H)
【0158】
[(MeO−PEG750)2−Lys−Gly−o−ニトロベンジル(29)の合成]
26(400mg、≒0.24mmol)をDMF(2mL)に溶解した。この混合物28(230mg)に、3mLのDMFに溶解したDIPEA(160μL)を加え、次いで、DCCを加えた。反応混合物を室温で終夜攪拌した。その後、10mLのDCMを加え、有機層を1N−KHSO4、H2O、1N−NaHCO3および塩水で連続して洗浄した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィ(5%MeOH/DCM)により29を得た。
【0159】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.0−2.0(m、9H、CH3およびCH2(Lys))、3.1(m、2H、CH2(Lys))、3.4(s、6H、OMe(PEG))、3.3−3.9(m、120H、CH2(Peg)、OMe(Lys)、4.0−4.4(m、7H、(2×)CH2−OMe(Peg)、αH(Lys)およびCH2(Gly))、5.1(bs、1H、NH)、5.7(bs、1H、NH)、6.2(m、1H、CH)、7.0(bs、1H、NH)、7.4−7.5(m、1H、arom−H)、7.5−7.7(m、2H、arom−H)、8.0−8.1(m、1H、arom−H)
【0160】
[(MeO−PEG750)2−Lys−Gly(30)の合成]
反応管内で29(20mg、0.01mmol)をMeOH(2mL)に溶解した。攪拌しながら、混合物にUV光線(254nm)を照射した。TLC(2:1のEtOAc/ヘキサン)で反応を追跡したところ、20分後に反応は完了した。真空下で溶媒を蒸発させ、残渣を水に溶解し、EtOAcで洗浄した。その後、水層を1N−HClで酸性にし、DCMで抽出した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、ろ過して、蒸発乾固させた。白色ゲルの化合物30を定量的収率で得た(18mg、0.01mmol)。
【0161】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.0−2.0(m、6H、CH2(Lys))、3.1(m、2H、CH2(Lys))、3.4(s、6H、OMe(Peg))、3.3−3.9(m、120H、CH2(Peg)、4.0−4.4(m、7H、(2×)CH2−OMe(Peg)、αH(Lys)およびCH2(Gly))、5.5(bs、1H、NH)、5.7(bs、1H、NH)、7.1(bs、1H、NH)
【0162】
13CNMR(75.5MHz、CDCl3)δ;21.8、28.7、31.5、39.8、40.4、53.2、54.0、58.2、60.7、62.9、63.4、68.6、69.5、71.1、155.2、155.7、170.1、171.6
【0163】
[(MeO−PEG750)2−Lys−Gly−Fmoc−Lys(NH3Cl)−OMe(31)の合成]
化合物30(50mg、0.028)およびFmoc−Lys(NH3Cl)−OMe(43mg、0.11)をH2O(3mL)に溶解した。この混合物にDIPEA(4.8μl、)およびEDC(21mg、0.11)を加えた。2時間後、この混合物に10mLのH2Oを加え、DCMで抽出した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、ろ過して、蒸発乾固させた。白色ゲルの化合物31を90%の収率で得た(54mg、0.025mmol)。
【0164】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.0−2.0(m、12HCH2(Lys))、3.1(m、2H、CH2(Lys))、3.4(s、6H、OMe(Peg))、3.3−3.9(m、126H、CH2(Peg)、OMe(Lys))、4.0−4.4(m、11H、(2×)CH2−OMe(Peg)、(2×)αH(Lys)およびCH2(Gly)、CH(Fmoc)およびCH2(Fmoc))、bs(1H、NH)、6.0(bs、2H、(2×)NH)、7.1−8.4(m、11H、(3×)NH、arom−H(Fmoc))
【0165】
[UVマスキング基を有するPEG600(LDI−HEA)2(32)の合成]
ゲル(硬化PEG600(LDI−HEA)2)を乾燥させ、秤量して(84.1mg、0.079mmol)、2mLのH2Oとともにシリンジに注入した。シリンジをアルミニウム箔で覆って反応混合物を暗く保持した。28(66mg、4当量)、DIPEA(54μl、4当量)およびEDC(59mg、4当量)を加えた。室温で一夜、振盪後、過剰の試薬を水で洗い流した。ゲルを乾燥させたところ、92.3mgの小さな破片状のゲルが得られた(92%)。
【0166】
[LDI−(HEA)2−Gly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2(33)の合成]
【化11】
100mLのCH2Cl2に溶解した2.40g(5.5mmol)のLDI−(HEA)2の冷却溶液(0℃)に、0.96g(5.0mmol、0.9当量)のN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドハイドロクロライド、0.68g(5.0mmol;0.9当量)の1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾーレおよび0.87mL(0.64g、5.0mmol、0.9当量)のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DiPEA)を加えた。次いで、4.62g(5.0mmol、0.9当量)のGly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2を加え、反応混合物を室温で攪拌した。18時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、その残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより、EtOAc/MeOH 95/5(v/v)を溶出液に用いて精製して、白色固体の純粋な33を得た(2.8g、収率42%)。生成物をHPLCおよび1H−NMRにより分析した。
【0167】
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ(ppm)8.26(1H、t、J=5.1Hz、NH)、8.21−8.12(3H、m、3×NH)、7.97(1H、d、J=7.8Hz、NH)、7.92(1H、d、J=8.0Hz、NH)、7.49(1H、d、J=7.8Hz、NH)、7.24(1H、t、J=5.5Hz、NH)、6.92(1H、bs、NH)、6.52(1H、bs、NH)、6.37(2H、m、アクリロイル)、6.20(2H、m、アクリロイル)、5.98(2H、m、アクリロイル)、4.73(1H、q、Cα−Asp)、4.33−4.24(6H、m、2×O−CH2−CH2−O+Cα−Ser+Cα−Arg)、4.23−4.16(4H、m、2×O−CH2−CH2−O)、3.94(1H、q、Cα−Lys)、3.80−3.71(6H、m、2×Cα−Gly+Cβ−Ser)、3.05(2H、q、Cε−Lys)、2.96(2H、q、Cδ−Arg)、2.70−2.56(4H、m、CH2CH2Pmc)、2.49(s、6H、2×CH3Pmc)、2.06(3H、s、CH3Pmc)、1.80(2H、t、Cβ−Asp)、1.73−1.43(10H、m、CH2−CH2−Arg、CH2−CH2−CH2−Lys)、1.42(6H、s、C(CH3)2Pmc)、1.39(9H、s、tBu)、1.28(9H、s、tBu)、1.13(9H、s、tBu)
【0168】
[LDI−(HEA)2−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser(34)の合成]
【化12】
窒素雰囲気下、室温で、LDI−(HEA)2−Gly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2(33)(0.76g、0.57mmol)を密封シュレンク反応器に仕込んだ。反応器を100mbarに減圧した。トリフルオロ酢酸(TFA、5.55mL)、次いで0.45mLの1,3−ジメトキシベンゼン(捕捉剤として作用)をシリンジにより加え、反応混合物を室温で攪拌した。溶液は無色からピンク色に変わった。2時間後、反応混合物から一定分量採り出し、HPLCで分析したところ、脱保護反応が完了していないことがわかった。続いて、追加のTFAを8.8mL加え、100mbarの減圧下で反応混合物をさらに2時間攪拌し、減圧下でTFAを除去した。得られた残渣を2.2mLのMeOHに溶解した溶液に200mLのn−ヘプタンを加え、得られた白色沈殿物をろ過により分離し、白色固体の純粋な34を得た(0.50g、0.56mmol、33に対して99%の収率)。生成物の同一性を1H−NMRおよびHPLC−MS(計算値では[M+H]+=902)により確認した。
【0169】
脱保護反応を監視するHPLC法:Inertsil ODS−3(長さ150mm、内径4.6mm)カラムを使用し、40℃で、HP1090液体クロマトグラフによるHPLC分析を実施した。UVVIS204リニアスペクトロメータを使用して220nmのUV検出を行った。勾配プログラムは:0〜20分が5%〜98%バッファーBの直線勾配;20.1〜25.0分が98%のバッファーB;25.1〜30分が5%のバッファーBであった。バッファーA:0.5mL/Lのメタンスルホン酸(MSA)のH2O水溶液;バッファーB:0.5mL/LのMSAのアセトニトリル溶液。流量は、0〜25.1分が1mL/min、25.2〜29.8分が2mL/min、および29.8〜30分が1mL/minとした。注入容量は20μLとした。HPLC−MSは、HPLC分析と同じカラムおよび同じ流量条件を用いて、Agilent 1100シリーズシステムで行った。保持時間:LDI−(HEA)2−Gly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2:23.98分;LDI−(HEA)2−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser:9.11分。
【0170】
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ(ppm)12.5(2H、bs、2×COOH)、8.30−8.17(2H、m、2×NH)、8.13(1H、t、NH)、8.00−7.91(2H、m、2×NH)、7.49−7.38(2H、m、2×NH)、7.23(1H、t、NH)、6.95(3H、bs、3×NH)、6.38(2H、d、アクリロイル)、6.19(2H、m、アクリロイル)、5.98(2H、d、アクリロイル)、5.01−4.95(1H、m、NH)、4.67(1H、q、Cα−Asp)、4.36−4.23(6H、m、2×O−CH2−CH2−O+Cα−Ser+Cα−Arg)、4.23−4.14(4H、m、2×O−CH2−CH2−O)、3.92(1H、q、Cα−Lys)、3.82−3.57(6H、m、2×Cα−Gly+Cβ−Ser)、3.10(2H、q、Cε−Lys)、2.94(2H、q、Cδ−Arg)、1.80−1.69(2H、m、Cβ−Asp)、1.69−1.44(10H、m、CH2−CH2−Arg、CH2−CH2−CH2−Lys)。HPLC−MS:[M+H]+=902(計算値)
【0171】
[実施例2]
[UVマスキング基を有するPEG600(LDI−HEA)2(32)のフォトリソグラフィパターニング]
ゲル32を2枚のガラスカバースリップの間に置き、水で覆った。共焦点顕微鏡の405nmレーザーを使用し、100%のレーザー強度で50μm四方を20回照射した。その後、ゲルをフラスコ中で、MtOHかまたはEtOHと共に24時間振盪してニトロソベンズアセトン(nitrosobenzeacetone)を除去した。
【0172】
図1は、
上の行:A)開裂性基を有するゲルの共焦点顕微鏡写真、B)ゲル上50μm四方の照射、開裂性基は蛍光性である。
下の行 A)共焦点顕微鏡で観察されたブランコゲル(Blanco gel)、B)ゲル上50μm四方を照射後、蛍光は観察されない。
を示す。
【0173】
[実施例3]
[分解実験(シリーズI)]
下表に示したオリゴマーのTHF中における透明な75重量%調合物
【0174】
【表2】
【0175】
[コーティングの調製]
100μm厚さの湿潤コーティングが形成されるように設計されたコーティング用ドクターブレードを使用して、スズフロートガラスプレート上に調合物を塗布した。D−バルブからのUV(1J/cm2)を使用し、速度20m/s、22℃で、この湿潤被膜を硬化させた。真空乾燥器(200mbar)内で、60℃で4時間、コーティングを乾燥させた。得られた硬化乾燥コーティングの膜厚は50〜60μmである。このコーティングをそのまま使用した。
【0176】
[RVSスチール製篩における重量減少試験用試料の調製]
硬化膜(約200mg)をメッシュサイズ350〜370μmの篩に入れた。これらのコーティングのゲル部分を、クロロホルムで洗浄することによって決定した。続いて、このコーティングを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS:0.2gのKCl、0.2gのKH2PO4、8gのNaClおよび1.15gのNaHPO4を1リットルの水に溶解、pH7.4)中、37℃で分解させた。2〜3日毎に緩衝液を新しい緩衝液に取り替えた。新しい緩衝液を加える前に、15mLの水で篩を2回洗浄し、60℃で終夜乾燥させ、秤量した。図2〜4に示すように、分解に続いて重量減少を測定した。
【0177】
[実施例4]
[分解実験(シリーズII)]
下表に示したオリゴマーのTHF中における透明な90重量%調合物
【0178】
【表3】
【0179】
[コーティングの調製]
200μm厚さの湿潤コーティングが形成されるように設計されたコーティング用ドクターブレードを使用して、スズフロートガラスプレート上に調合物を塗布した。D−バルブからのUV(2J/cm2)を使用し、速度20m/s、22℃で、この湿潤被膜を硬化させた。真空乾燥器(200mbar)内で、60℃で4時間、コーティングを乾燥させた。得られた硬化乾燥コーティングの膜厚は150μmである。このコーティングをそのまま使用した。
【0180】
[RVSスチール製篩中で行う重量減少実験用試料の調製]
硬化フィルム(約200mg)を、メッシュサイズ350〜370μmの篩に入れた。これらのコーティングのゲル部分をクロロホルムで洗浄することによって決定した。続いて、このコーティングを、リン酸緩衝生理食塩水または酵素リン酸緩衝液(PBS:0.2gのKCl、0.2gのKH2PO4、8gのNaClおよび1.15gのNaHPO4を1リットルの水に溶解、pH7.4、酵素PBS:28.6mgのコレステロールエステラーゼを1000mLのPBS緩衝液に溶解)中、37℃で分解させた。
【0181】
2〜3日毎に緩衝液を新しい緩衝液に取り替えた。新しい緩衝液を加える前に、15mLの水で篩を3回洗浄し、60℃で終夜乾燥させ、秤量した。図5〜10に示すように、分解に続いて重量減少を監視した。
【0182】
[実施例5]
[コーティングの引張特性の動的機械測定]
材料をガラスプレート上に膜として配置した。測定用試料をその膜から打ち抜いた。その厚みを、目盛付きのハイデンハイン(Heidenhain)製厚さ測定器により測定した。動的機械測定は、ASTM D5026に準拠して、RSA−III(Reometrics Solid Analyzer III)と称するレオメトリックス(Rheometrics)社の装置を使用し、5℃/minの加熱速度で−130〜250℃の温度範囲にわたって周波数1Hzで行った。測定では、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)およびタンジェントデルタ(tanδ)を温度の関数として求めた。
【0183】
ASTM D5026との相異点:
・±2℃の温度変動を容認(標準では±1℃)
・±2%の荷重変動を容認(ノルム標準では±1%)
・±2%の周波数変動の容認(標準では±1%)
・加熱速度5℃/min(標準では1〜2℃/min)
【0184】
[引張試験条件:]
【0185】
【表4】
【0186】
[機械的特性(シリーズII)]
下表に示したオリゴマーの透明な調合物を調製した。
【0187】
【表5】
【0188】
[コーティングの調製]
200μm厚さのコーティングが形成されるように設計されたコーティング用ドクターブレードを使用して、スズフロートガラスプレート上に調合物を塗布した。D−バルブからのUV(1J/cm2)を使用し、速度20m/s、22℃で、この被膜を硬化させた。得られた硬化コーティングの膜厚は180〜200μmである。このコーティングをそのまま使用した。
【0189】
[DMAの結果]
【0190】
【表6】
【0191】
図11は引張試験のグラフ表示を示す。
【0192】
[実施例6]
下に示すように、H−Arg(PMC)−OtBu−ヘキサノエート−HEA(18、モノアクリレート、MA)およびH−Arg(PMC)−OtBu−ヘキサノエート−LDI−HEA2(19、ジアクリレート、DA)を、PTGL1000−(TDI−HEA)2およびPEG600−ジアクリレートに配合した。
【0193】
【表7】
【0194】
[コーティングの調製]
100μm厚さの湿潤コーティングが形成されるように設計されたコーティング用ドクターブレードを使用して、スズフロートガラスプレート上に調合物を塗布した。D−バルブからのUVを使用し、速度17.5m/s、22℃で、この湿潤被膜を硬化させた。アクリレートの異なる転化率を得るために、異なる強度を使用した。調合物1〜4は、0.04J/cm2、0.20J/cm2および2.0J/cm2の強度で硬化させた。調合物5〜8は、0.09J/cm2、0.44J/cm2および2.0J/cm2の強度で硬化させた。このコーティングをそのまま使用した。コーティング1〜8をアセトニトリルと共にバイアルに入れた。1時間後、HPLCにより、抽出可能物を測定した。結果を図12および13に示す。
【0195】
[実施例7]
下表に示したオリゴマーのMeOH中における透明な50重量%調合物
【0196】
【表8】
【0197】
ガラスカバースリップ上のPTGL1000−(TDI−HEA)2対照およびPTGL1000−(TDI−HEA)2/RGD−LDI−(HEA)2のコーティングは、殺菌条件(70%EtOHを使用)に耐えられないため、細胞培養実験に使用することができなかった。プラスチックカバースリップ上のポリマーのコーティングは非常に良好であった。スピンコーティング(10秒、28rpm)により、Thermanox(登録商標)PETカバースリップ(直径13mm)上に調合物を塗布した。D−バルブからのUV(2J/cm2)を使用し、速度20m/s、22℃で、これらのカバースリップを硬化させた。これらのカバースリップおよびコーティングをそのまま使用した。
【0198】
全ての実験は、ヒトの包皮の繊維芽細胞を使用して実施した。24ウエル培養プレートはコーニング/コスター(Corning/Coster.)より購入した(cat# 3524)。thermanoxプラスチックカバースリップは、NUNCから購入した(cat# 174950)。対照として、室温で1時間インキュベートしたゼラチン、1%(w/v)水、±200μl/2cm2(メルク、cat# 104070)を使用した。環状RGD:シクロ(−Arg−Gly−Asp−D−Phe−Val)はBachemから購入し(cat# H−2574)、殺菌水に溶解した(10mg/)。血清フリーの培養液は、M199 Cambrex/BioWhittaker、cat# BE12−117F、100IU/ペニシリン、100μg/ストレプトマイシン(Invitrogen/Gibco、cat# 15140−122)を含有している。
【0199】
プラスチックカバースリップは、ガラスカバースリップと対照的に培養液中で浮き上がる傾向がある。したがって、カバースリップをウエルの底にパラフィンで「接着」しなければならなかった:溶融パラフィンを1滴(または2滴)、カバースリップに半分とウエルの底に半分塗布した(これは木製の棒を使用して行った)。パラフィンを室温、30分間で固化させた。その後、0.5mLの70%(v/v)エタノールをウエルに加え、室温で30分間インキュベートした。その後、この時点では殺菌されたカバースリップを1mLのM199培養液(+ペニシリン/ストレプトマイシン)で5回洗浄した(1回につき、室温で1時間放置した)。これで、コーティングを備えたカバースリップは使用できる状態になった。
【0200】
ここで、コーティングしていないカバースリップをゼラチンまたはビトロネクチンと共にインキュベートし(1時間、室温)、その後、もう1度洗浄した。
【0201】
細胞を37℃、5%CO2/95%空気、加湿環境下で培養した。細胞を約10000個/ウエルという「高密度」で植え付けた(0.5ml/ウエル)。繊維芽細胞は、M199のみ、またはペニシリン/ストレプトマイシンのみを含有するM199(血清フリー培養液)に植え付けた(後者の場合、植え付け前に血清フリー培養液で1度洗浄した)。細胞付着時に環状RGDが存在するように、細胞の半分に環状RGDを加えた(最終濃度50μg/ml)。約16時間(1晩)後、写真を撮った。
【0202】
c−RGDの影響を調べるために、細胞を植え付ける前に細胞にこのペプチドを加えた(50μg/ml)(したがって、細胞付着時に環状RGDが存在した)。細胞を37℃、5%CO2/95%空気、加湿環境下で培養した。
【0203】
血清フリー条件下での実験は、繊維芽細胞を使用してのみ行った。PTGL1000−(TDI−HEA)2/RGD−LDI−(HEA)2コーティングは、対照のポリマーと比べると、かなり良好な細胞付着性を示し、これにより、ポリマーのRGD部分は細胞と相互作用し、付着性を向上させることができることが示唆された。PTGL1000−(TDI−HEA)2/RGD−LDI−(HEA)2コーティング上で増殖した細胞の形態は、PTGL1000−(TDI−HEA)2コーティング上で増殖した細胞の形態より良好であった。図14はこのことを示す写真である。
【0204】
[実施例8]
THF中のオリゴマーの透明な50重量%調合物を下表に示す。
【0205】
【表9】
【0206】
スピンコーティング(5秒、3000rpm)により、Thermanox(登録商標)PETカバースリップ(直径13mm、Thermanox Plastic Nunc、cat# 174950)上に、PEG600−(m−LDI−HEA)2およびPEG600−(m−LDI−HEA)2/GRGDS−LDI−(HEMA)2調合物を塗布した。D−バルブからのUV(5J/cm2)を使用し、窒素雰囲気下、速度18m/s、22℃で、これらのカバースリップを硬化させた。これらのカバースリップおよびコーティングをそのまま使用した。
【0207】
全ての実験は、ヒトの包皮の繊維芽細胞を使用して実施した。24ウエル培養プレートはコーニング/コスターより購入した(cat# 3524)。Thermanoxプラスチックカバースリップは、(NUNC、cat# 174950)から購入した。対照として、室温で1時間インキュベートしたゼラチン、1%(w/v)水、±200μl/2 cm2(メルク、cat# 104070)を使用した。環状RGD:シクロ(−Arg−Gly−Asp−D−Phe−Val)(Bachem、cat# H−2574)を殺菌水(10mg/ml)に溶解し、そのまま使用した。血清フリーの培養液は、M199 Cambrex/BioWhittaker、cat# BE12−117F、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen/Gibco、cat# 15140−122)を含有している。血清を含有する培養液は、199(Cambrex/BioWhittaker、cat# BE12−117F)、10%のヒト血清、10%の新生小牛血清(NBCS)、150μg/mlのECFG(Endothelial Cell Growth Factor(内皮細胞増殖因子))、2mMのL−グルタミン、5U/mlのヘパリン、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含有している。固定剤として、水に溶解した2%ホルムアルデヒド+0.2%のグルタルアルデヒドを使用した。
【0208】
カバースリップをウエルの底にパラフィンで「接着」した。パラフィンを溶融し、3〜4滴を、カバースリップに半分とウエルの底に半分塗布した(これは木製の棒を使用して行った)。パラフィンを室温、30分間で固化させた。その後、0.5mLの70%(v/v)エタノールをウエルに加え、室温で30分間インキュベートした。その後、この時点では殺菌されたカバースリップを1mlのM199培養液(+ペニシリン/ストレプトマイシン)で3回洗浄した(1回につき、室温で1時間放置した)。
【0209】
このコーティングしたカバースリップを1時間インキュベートする間、コーティングしていないカバースリップをゼラチンまたはビトロネクチンと共にインキュベートし(1時間、室温)、その後、全てのカバースリップをもう1度洗浄した。これで、カバースリップは使用できる状態になった。
【0210】
細胞を37℃、5%CO2/95%空気、加湿環境下で培養した。細胞を約30000個/ウエルという「高密度」で植え付けた(0.5ml/ウエル)。繊維芽細胞は、M199のみ、またはペニシリン/ストレプトマイシンのみを含有するM199(血清フリー培養液)に植え付けた(後者の場合、植え付け前に血清フリー培養液で1度洗浄した)。細胞付着時に環状RGDが存在するように、細胞の半分に環状RGDを加えた(最終濃度50μg/ml)。約16時間(1晩)後、写真を撮った。
【0211】
PEG600−(m−LDI−HEA)2/GRGDS−(LDI−HEA)2コーティングは、対照のポリマーPEG600−(m−LDI−HEA)2と比べると、血清フリーおよび血清含有条件下でかなり良好な細胞付着性を示し、これにより、ポリマーのGRGDS部分は細胞と相互作用し、付着性を向上させることができることが示唆された。図15はこのことを示す写真である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、1種以上のカルバメート基、チオカルバメート基および/またはカルバミド基と、生体分子部分とを含む重合性化合物に関する。本発明は、さらに、そのような化合物の製造方法、前記化合物を1種以上の他の化合物と調合する方法、その化合物の重合方法、並びに、その化合物を含む物品およびそのような物品の製造方法に関する。
【0002】
最近、組織、特に軟骨、骨または血管系の修復または再生などの医療分野の用途において、合成ポリマーの使用に大きな関心が持たれている。しかしながら、合成ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やポリアクリル系ポリマーは、一般に、細胞の接着を選択的に促進することも、他の生体特有の機能を促進することもできない。
【0003】
さらに、ペプチド、タンパク質および糖重合体など、生体分子の中には、熱、プロテアーゼ、溶剤、材料加工条件および/またはインプラントの体内への埋め込み方法により容易に変性するものがある。合成ポリマーおよびそのような生体分子からなる組成物を、その生体分子の活性な形態を維持しながら提供することが課題の1つである。
【0004】
生物学的に活性な分子をポリマーに結合させることには大きな価値があるであろう。Van Hestら、Advances in Polymer Science、2006、202、p.19−52に示されているように、ラジカル重合が、タンパク質−ポリマーハイブリッド材料の製造によく使用される方法である。このラジカル重合は、また、縮重合より低温で実施することができ、それにより、高価でかつ製造には合成集約的なタンパク質または生体分子の変性リスクが低減される。例えば、ラジカル光重合が、ヒドロゲルの製造にしばしば使用される。
【0005】
そのようなタンパク質ポリマーハイブリッドをラジカル重合により製造するには、Hubbelら、J.Biomed.Mater.Res.、1998、39、p.266に示されているように、通常、タンパク質またはペプチドに1つの重合可能な基を付与する。この刊行物に記載されている手法では、単官能性ペプチドがダングリング鎖末端として機能するので、網状欠陥を有するポリマーが生成され得る。その結果、ペプチドが網目に効果的に取り込まれず、かつ、得られた生体材料の機械的特性が悪影響を受ける程度に、得られたポリマーが可塑性されるというリスクを生ずる。この悪影響は、ヒドロゲルにおいて特に顕著である。
【0006】
Junmin Zhuら、Macromolecules、第39巻、第4号(2006)、p.1305−1307には、細胞接着性ペプチドリガンドを有するポリエチレングリコールジアクリレートマクロマーの合成について記載されている。マクロマーは、ジアミノプロピオン酸のカルボン酸に結合したヘキサペプチドをアクリロイル−PEG−無水スクシンアミド(Acr−PEG−NHS)と反応させる(これにより、アミド結合が形成される)ことによって調製される。特に、ジアミノプロピオン酸を、酵素または加水分解による攻撃を受けやすいポリマー中で使用した場合には、この天然には存在しないアミノ酸は望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
【0007】
Zhuの合成アプローチでは、架橋性ペプチドのプレポリマーを作るために、重合可能な構成要素をペプチドに結合させている。しかしながら、本発明者らは、プレポリマーに、ペプチドまたは活性化ペプチドと反応可能な1種以上の反応基を導入し得る経路を提案する。これにより、ポリマー鎖に沿ったペプチドの密度をより良く制御することが可能になり、さらに、プレポリマーを重合し、その後に生体分子、特にペプチドを導入可能な網目を形成することができる。このことは、ポリマーの加工条件が厳しく、例えばセンサーの製造において、加工の最後にペプチドを結合させることが好ましいような場合に、特に有利である。
【0008】
本発明の目的は、特に、医療用途、センサー、診断用途および/または薬剤搬送用途に使用するための、既知のポリマーまたは物品それぞれに代替可能な新規なポリマーまたは物品を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、生体内における生体適合性に優れ(免疫応答を殆ど、または全く引き起こさない)、かつ/または、特に生体内において生分解し得る、ポリマーまたは物品を提供することにある。特に、本発明の目的は、生体内の条件下での生分解速度が良好に制御されるポリマーを提供することにある。
【0010】
本発明のさらなる目的は、1種以上の官能性ペプチドなどの、1種以上の生物学的に活性な分子を、1より大きい重合性官能価を有するポリマーに効率良く導入する方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらなる目的は、良好な分解特性を有する、特に、分解時の酸性度の低いポリマーを提供することにある。
【0012】
本発明のさらなる目的は、弾性などの機械的特性の良好な新規のポリマーを提供することにある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、細胞組織または体液と選択的に相互作用し、特定の生物学的応答を加速、抑制、または均衡させるポリマーまたは物品を提供することにある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、検出目的用および/または標的薬剤搬送用に適したポリマーマトリックスを提供することにある。
【0015】
さらなる目的は、ポリマーまたは物品を製造するために使用することができる新規な化合物を提供することにある。
【0016】
さらなる目的は、生体内で使用することができ、(自己)細胞または特定の生化学成分と相互作用し得る生体分子部分を含むか、またはそのような生体分子部分に共有結合可能な官能基を含む、新規な化合物、ポリマーまたは物品を提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、インプラント物品のコーティングに使用可能なポリマーをベースにしたコーティングを含む物品を提供することにある。
【0018】
本発明により解決し得る1つ以上の他の目的は、以下の記載から明らかになるであろう。
【0019】
(a)少なくとも2つの重合可能な部分、(b)少なくとも2つのアミン基がカルバメート基、チオカルバメート基またはカルバミド基を形成している少なくとも2つのアミン基を含む、アミノ酸の少なくとも1つのアミノ酸残基、および(c)そのジアミノ酸残基のカルボン酸部分に直接またはスペーサーを介して結合した生体分子部分、を含む化合物を提供することにより、本発明の1つまたはそれ以上の目的が達成されることがわかった。
【0020】
本発明は、特に、式I
【化1】
(式中、
−Gは、少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基、または部分Xであり、
−各Xは独立して、重合性基を含む部分を表し、
−各Yは独立して、O、SまたはNRを表し、
−各Rは独立して、水素、または場合により1種以上のヘテロ原子を含有する置換および非置換の炭化水素から選択される基、好ましくは水素、またはC1〜C20の炭化水素、より好ましくは水素、またはC1〜C8のアルキル基を表し、
−Lは、場合により1種以上のヘテロ原子を含有する置換もしくは非置換の炭化水素を表し、
−nは、GがXを表す場合は値1を有する整数であり、Gが少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基を表す場合は、nは、少なくとも2、好ましくは2〜8であり、
−Zは、その化合物の残りの部分に直接またはスペーサーを介して結合した生体分子部分である)
で表される重合性化合物に関する。
【0021】
本発明において、用語「炭化水素」は、特に断らない限り、置換および非置換の炭化水素、1種以上のヘテロ原子(S、N、O、Pなど)を有する炭化水素、または、ヘテロ原子を含まない炭化水素を含むことを意味する。置換基は、具体的には、−OHおよびハロゲン原子(Br、Cl、F、I)から選択され得る。
【0022】
用語「アルキル」および「アルキレン」は、特に断らない限り、非置換および置換のアルキル、並びにアルキレンをそれぞれ含むことを意味する。置換基は、具体的には、−OHおよびハロゲン原子(Br、Cl、F、I)から選択され得る。
【0023】
原則として、本発明の重合性化合物中の重合性部分(「X」)は、ポリマーを形成し得る部分であればいかなる部分であってもよい。それは、特に、付加またはラジカル反応による重合が可能な部分から選択される。付加反応は制御が容易かつ良好であることがわかった。さらに、これは、離脱していく基から生成される生成物などの望ましくない副生物を生成せずに実施することができる。
【0024】
部分はラジカル重合されることが好ましい。これは、重合反応を熱的に開始させる代わりに、光開始剤の存在下、UV光、可視光、マイクロ波、近赤外線、ガンマ線などの電磁放射線、または電子線によって重合を開始することができるので有利であることがわかっている。これにより、化合物/ポリマーの(部分的な)熱的変性または分解のリスクを全く伴わないか、または少なくとも減じられたリスクの下に急速重合が可能となる。
【0025】
特に、熱の影響を受ける生物学的部分が存在しない場合、熱重合を採用し得る。例えば、生物学的に活性な部位が重合に必要な高温によって影響されないような、1種以上の短鎖のペプチドおよび/またはタンパク質が存在する場合、熱重合を採用し得る。
【0026】
重合性基Xの好ましい例としては、C=C結合(特に、ビニル基)またはC≡C基(特に、アセチレン基)などの不飽和の炭素−炭素結合を含む基、チオール基、エポキシド、オキセタン、水酸基、エーテル、チオエーテル、HS−、H2N−、−COOH、HS−(C=O)−またはこれらの組み合わせ、特に、チオールとC=C基の組み合わせが挙げられる。
【0027】
重合性部分Xは、特に、アクリレート、メタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート;ビニルエーテル;アルキルエーテル;イタコネート、不飽和ジエステルおよび不飽和二塩基酸またはその塩(フマレートなど);ビニルスルホン、ビニルホスフェート、アルケン、不飽和エステル、フマレート、マレエート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。そのような部分Xは、容易に入手可能な出発物質から出発して本発明のポリマーに導入することができ、かつ、良好な生体適合性を示すことから、生体内もしくは他の医学的用途に特に有用である。
【0028】
部分Xがヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートのとき、特に良好な結果が得られた。
【0029】
有利な実施形態においては、重合性部分Xは、式−R1R2C=CH2で表される。式中、
−R1は、場合により、エステル部分、エーテル部分、チオエステル部分、チオエーテル部分、カルバメート部分、チオカルバメート部分、アミド部分、および1種以上のヘテロ原子、特に、S、O、PおよびNから選択される1種以上のヘテロ原子を含む他の部分からなる群から選択される1種以上の部分を含有する、置換および非置換の脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素基からなる群から選択される。R1は、線状であっても分岐状であってもよい。特に、R1は、2〜20個の炭素原子を含んでいてもよく、さらに特に、置換もしくは非置換のC1〜C20のアルキレン基であってよく、さらに特に、置換もしくは非置換のC2〜C14のアルキレン基であってよい;そして
−R2は、水素、並びに、場合により、1種以上のヘテロ原子、特に、P、S、O、およびNから選択される1種以上のヘテロ原子を含有する置換および非置換のアルキル基からなる群から選択される。R2は、線状であっても分岐状であってもよい。特に、R2は、水素、または置換もしくは非置換のC1〜C6のアルキル基であってよく、特に、置換もしくは非置換のC1〜C3のアルキル基であってよい。
【0030】
アミノ酸残基(「L」)は、置換もしくは非置換の炭化水素であり、これはN、S、Pおよび/またはOなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。置換炭化水素の場合、置換基は水酸基であってもよい。
【0031】
アミノ酸残基は、D−異性体に基づくものであってもL−異性体に基づくものであってもよい。Lは、好ましくはC1〜C20の炭化水素であり、より好ましくは、線状または分岐状のC1〜C20のアルキレン基であり、より一層好ましくは、C1〜C12のアルキレン基であり、特に好ましくは、C3〜C8のアルキレン基である。ここで、アルキレン基は非置換であっても置換であってもよく、特に、水酸基を有するもの、および/または、場合により1種以上のヘテロ原子を含有するものであってよい。親水性が望ましいという観点では、炭素の数は、8以下のように、比較的少ないことが好ましい。
【0032】
アミノ酸残基は、リシン、オルニチン、ヒドロキシリシン、N−アルファ−メチルリシンまたはジアミノブタン酸の残基から選択されることが特に好ましい。
【0033】
特に、本発明の化合物/ポリマー/物品を医療用途で使用することを意図する場合、さらに特に、生体内で使用することを意図する場合、アミノ酸残基は、天然アミノ酸、通常、L−異性体、に基づくものであることが好ましい。このことは、化合物/ポリマー/物品が生分解性である場合、特に望ましい。このような観点において、好ましいアミノ酸残基は、L−リシン、L−ヒドロキシリシンまたはN−アルファ−メチル−リシンの残基である。L−リシンを使用した場合に、特に好ましい結果が得られた。
【0034】
本発明の化合物/ポリマーが分解した(例えば体内で)場合、アミノ酸(残基「L」に対応)が分解生成物の1つであり得る。化合物/ポリマーが分解すると、酸(プロトン、H3O+)が放出される。生体内条件下では、これにより炎症もしくはそれに類似した反応が引き起こされるおそれがある。本発明者らは、アミノ酸が、本発明の生分解性インプラント物品の周辺組織の炎症の防止に寄与し得ると考えている。理論に捉われずに言うならば、アミノ酸は、酸を捕捉し、それによって組織の炎症防止に寄与するものと考えられる。この目的には、リシンが特に適していることがわかった。
【0035】
L−ヒドロキシリシンは、付着されるべきペプチドをそのC末端を介して付着させるという点で有用である。それは、また、L−リシンに基づく同等のポリマーより親水性が高いポリマーを提供するためにも使用される。
【0036】
本発明の化合物/ポリマーが分解する際に生成されるアミノ酸は、傷の治癒に寄与し(L−アルギニン、L−グルタミン)、あるいは、例えばポリマーを含む神経ガイドの場合に神経系に影響を及ぼす(L−アスパラギン)など、生理学的機能を果たし得る。
【0037】
上述したように、Zは、化合物の残りの部分に直接またはスペーサーを介して結合している生体分子部分である。スペーサーは、生体分子部分の選択性表面またはバルクのパターニングを提供するためのものである。生体分子部分Zは、原則的には、アミノ酸残基のカルボン酸基に(直接、またはスペーサーを介して)結合する生物学的に活性な分子であればいかなる分子であってもよい。そのような分子は、天然分子であっても合成分子であってもよい。
【0038】
生体分子部分Zは、細胞シグナリング部分、化合物/ポリマー/物品に対する細胞接着性を改善し得る部分、細胞の増殖を制御(増殖の促進または抑制など)し得る部分、抗血栓性部分、傷の治癒を改善し得る部分、神経系に影響を及ぼし得る部分、特定の組織または細胞タイプに選択的親和性を有する部分、エピトープおよび抗菌部分から選択されることが好ましい。この部分は、化合物/ポリマー/物品の残りの部分に結合しているとき、および/または、化合物から離脱するときに活性を示す。結合時に活性的であることが好ましい。
【0039】
生物分子部分Zは、アミノ酸、環状ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、グリコペプチドなどのペプチド、および糖タンパク質などのタンパク質;モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドなどのヌクレオチド、並びに炭水化物から選択されることが好ましい。
【0040】
例えば、アミノ酸は、傷の治癒を促進するために(L−アルギン、L−グルタミン)、あるいは、神経系の機能を調節するために(L−アスパラギン)、結合させることができる。
【0041】
好ましい一実施形態では、生活性部分はペプチド残基、より好ましくはオリゴペプチド残基である。この分野では特定の機能を有するペプチドが知られており、知られている機能に基づいて選択することができる。例えば、ペプチドは、増殖因子や他のホルモン的に活性なペプチドから選択することができる。特に、Zは、当業者に知られているアミノ酸から構成されている下記の配列を含むペプチド残基から選択することができる。
【0042】
【表1】
【0043】
一実施形態において、Zはアンジオテンシンである。アンジオテンシンは、血管収縮、血圧上昇および/または副腎皮質からのアルドステロンの分泌作用を有する。
【0044】
環状ペプチドの好ましい例は、抗菌剤のグラミシジンSである。
【0045】
適切なペプチドの他の例としては、特に、血管内皮増殖因子(VEGF)、形質転換増殖因子B(TGF−B)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、骨形成タンパク質(OP)、単球走化性タンパク質(MCP1)、腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。
【0046】
特に本発明の化合物の一部を構成し得るタンパク質の例としては、増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、細胞外基質タンパク質、グリコサミノグリカン、アンジオポイエチン、エフリンおよび抗体が挙げられる。
【0047】
好ましい炭水化物は、抗血栓剤のヘパリンである。
【0048】
ヌクレオチドは、特に、遺伝子治療用オリゴヌクレオチドや、細胞タンパク質またはウィルスタンパク質に結合可能なオリゴヌクレオチドなどの治療用オリゴヌクレオチド、好ましくは高い選択性および/または親和性を有するものから選択される。
【0049】
好ましいオリゴヌクレオチドとしては、アプタマーが挙げられる。DNAベースのアプタマーおよびRMAベースのアプタマーの例はともに、Nimjeeら、Annu.Rev.Med.2005、56、p.555−583に記載されている。ウィルスTATタンパク質または細胞タンパク質サイクリンT1に結合してHIV複製を阻止するRNAリガンドTAR(Trans activation response(トランス活性化応答))は、アプタマーの一例である。さらに、好ましいヌクレオチドとしては、VA−RNAおよび、細胞の増殖を調節する転写因子E2Fが挙げられる。
【0050】
上述したように、生体分子部分はスペーサーを介して結合していてもよい。スペーサーは、原則的には、本発明の化合物/ポリマーのアミノ酸残基のカルボン酸と、共有結合で結合する生体分子の両者に結合し得るものであれば、いかなるものも使用可能である。適切なスペーサーとしては、PEGなどのポリアルキレングリコール、オリゴマーエステル、または、シグナリング機能を有さないペプチドセグメント、例えば、グリシンなどの1個のアミノ酸をベースとするオリゴペプチドまたはポリペプチドが挙げられる。
【0051】
本発明の化合物/ポリマー中に存在する部分Gは、−Y−(C=O)−NR−結合を介して部分Lと結合し得る、少なくともnの官能価を有する任意の分子の残基であってもよい。そのような残基は、特に、次の官能基:−OH、−NH2、−RNH、−SH(ここで、Rは先に定義した通りである)の1種以上を含む多官能価のポリマーおよびオリゴマーからなる群から選択される。
【0052】
特に、それぞれ多官能性分子であるGは、ポリ(乳酸)(PLA);ポリグリコリド(PGA);ポリ(酸無水物);ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(オルトエステル);ポリ(ジオキサノン);ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL);ポリ(ウレタン);ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリアルキレングリコール、好ましくはPEG;ポリアルキレンオキサイド、好ましくはポリ(エチレンオキサイド)およびポリ(プロピレンオキサイド)から選択されるもの;ポロキサマー;メロキサポール;ポロキサミン;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリカーボネート;ポリアミノカーボネート;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキル化セルロース;および、ポリペプチド、ポリサッカリド、炭水化物(ポリサッカロース、ヒアルロン酸、デキストランおよびこれらの類似の誘導体、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、アルギン酸塩、並びに、ゼラチン、コラーゲン、アルブミンまたはオボアルブミンなどのタンパク質など)などの天然ポリマー;並びに、これらの任意の部分のコオリゴマー、コポリマー、および混合物から選択される。
【0053】
部分Gは、生安定性/生分解性に基づいて選択してもよい。化合物/ポリマー/物品に高い生安定性を付与するためには、ポリエーテル、ポリチオエーテル、芳香族ポリエステル、芳香族チオエステルが一般に特に適している。生分解性を付与するオリゴマーおよびポリマーの好ましい例としては、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリチオエステル、脂肪族ポリアミドおよび脂肪族ポリペプチドが挙げられる。
【0054】
Gは、ポリエステル、ポリチオエステル、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリチオエーテル、ポリエーテル、ポリ酸無水物またはポリジオキサノンから選択することが好ましい。なかでもポリアルキレングリコールは、良好な結果が得られ、特に、PEGは、より良好な結果が得られた。
【0055】
疎水性ポリマーには、Gは、ポリブチレンオキサイドまたはポリ(−メチル−1,4−ブタンジオール)コ(テトラメチレングリコール)(PTGL)などの疎水性ポリエーテルから適切に選択することができる。
【0056】
本発明の化合物またはポリマーが、タンパク質を含有する体液、例えば血液、血漿、血清または細胞外マトリックスと接触し得るような用途では、PEGなどのポリアルキレングリコールが有利である。特に、それは、汚染され難い(非特異的タンパク質の吸収が少ない)傾向を示し、かつ/または、生物学的組織の接着に有利な影響を及ぼす。タンパク質などの汚染によってZ基が遮蔽されるのを避けるには、低汚染性であることが望ましい。
【0057】
部分Gの数平均分子量(Mn)は、通常、少なくとも200g/mol、特に、少なくとも500g/molである。機械的特性を向上させるためには、Mnは少なくとも2000g/molである。部分Gの数平均分子量は、通常、100000g/mol以下である。数平均分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)により測定されるものである。
【0058】
本発明は、さらに、本発明の化合物を製造する方法であって、まず式III
【化2】
(式中、Rは水素または保護基である)で示される化合物を、式X−Y−Hおよび(もしGがXと異なるならば)式G−Y−Hの化合物と反応させて、水素または保護基を選択的に除去し、生体分子部分を直接またはスペーサーを介して、Lに結合したカルボン酸部分に共有結合させることを含む方法に関する。
【0059】
本発明の方法の利点は、望ましくない副生物(離脱する基から生成される分子)を生成せずに実施可能なことである。
【0060】
適切でかつ好ましい反応条件は、イソシアネートを、アミン、アルコールまたはチオールと反応させる条件としてこの分野で知られている条件をベースにすることができる。所望するならば、この分野で知られた方法で保護基を除去してもよい。例えば、光開裂性基であれば、光を照射することによって除去することができる。アルキル基は、塩基に接触させることにより(例えばメチル基)、あるいは、酸加水分解、例えばトリフルオロ酢酸中での酸加水分解により(例えばt−ブチル基)、化学的に除去することができる(例えばメチル基)。
【0061】
本発明は、また、重合性化合物を含むポリマー、および、重合性化合物を含む物品、特に医療用物品に関する。
【0062】
本発明は、また、最適な生物学的効果が得られるように、重合性化合物とラジカルまたは付加重合性の化合物とを一定の割合で含むポリマーに関する。ラジカルまたは付加重合性の化合物は、上記の重合性部分Xから選択することができる。
【0063】
本発明のポリマーは、さらに、式II
【化3】
(式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アリール基、または金属塩から選択される)で示される化合物を含むことが好ましい。
【0064】
ここでは、用語「ポリマー」は、低相対分子量の分子から実際または概念的に誘導される複数の繰り返し単位を実質的に含む構造を意味する。そのようなポリマーとしては、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、架橋ネットワーク、分岐ポリマーおよび線状ポリマーが挙げられる。オリゴマーはポリマーの一種、すなわち、低相対分子量の分子から実際または概念的に誘導される繰り返し単位が比較的少ないポリマーであると考えられる。
【0065】
ここでは、用語「プレポリマー」は、1つ以上の重合性官能基、例えばビニル基を含むポリマーを意味する。
【0066】
ポリマーは、分子量が200Da以上、400Da以上、800Da以上、1000Da以上、2000Da以上、4000Da以上、8000Da以上、10000Da以上、100000Da以上、または1000000Da以上であってもよい。比較的低分子量の、例えば、8000Da以下、特に、4000Da以下、さらに特に、1000Da以下であるポリマーは、オリゴマーと称し得る。
【0067】
本発明のポリマーまたは物品は、特に、次の特性:低もしくは非アレルギー性であること、生体適合性の高いこと、良好な弾性、破断伸びおよび/または高靭性を有すること、汚染されにくいこと、好ましい細胞接着性を示すこと、細胞のコロニー形成を可能にすること、生分解性または生安定性であること、分解時の酸度が低いこと、生物学的活性部分と効率的に結合すること、および、細胞毒性が低いこと、のなかの1つ以上の特性を示すことがわかった。
【0068】
さらに特に、例えば、タンパク質を含む体液と接触した際に、非特異的タンパク質の吸収による汚染がないかまたは少なく、かつ/あるいは、生体内および/または生体外での、細胞の接着および/または細胞のコロニー形成を可能にするポリマーを提供可能であることがわかった。
【0069】
さらに、本発明のポリマーは、熱、プロテアーゼ、溶剤、材料加工条件および/またはポリマーの体内への導入方法(例えば、インプラントとして)による変性の結果引き起こされる活性の喪失などの有害な影響に対して、生体分子部分を少なくともある程度保護し得ると考えられる。
【0070】
本発明の物品は、チューブ、ミクロスフェア、ナノスフェア、多孔質モノリスワックス、織もしくは不織繊維材料、フィラメント、フィルム、発泡体、インプラント、ゲル、ヒドロゲル、スポンジ、コーティングおよび人工生体組織であってよい。
【0071】
本発明の重合性化合物またはポリマーは、特に、医療機器、さらに特に、人工器官もしくは他の組織代替物、薬剤搬送デバイス、ミクロスフェア、埋め込み機器、または体外医療機器を提供するために使用することができる。ポリマーは、特に、管状組織を工学的に扱うための生安定性または生分解性のポリマーデバイスを作製するのに適している。これらの組織としては、腸、血管、気管、尿管および神経ガイドが挙げられる。
【0072】
本発明のポリマーは、また、医療用のコーティング、フィルム、シーラントおよび接着剤の製造に使用される。ポリマーには、また、積層製造プロセスなどの3次元モデリングプロセス(迅速生産としても知られている)により、3次元形状を付与することができる。
【0073】
本発明は、さらに、式Iで示される化合物を重合させることにより、本発明のポリマーを製造する方法に関する。
【0074】
本発明は、さらに、式II
【化4】
(式中、Rは水素または保護基から選択される)で示される化合物を重合させることによりポリマーを製造する方法であって、水素または保護基を選択的に除去し、その後、生体分子部分を直接またはスペーサーを介して、Lに結合したカルボン酸部分に共有結合させる方法に関する。
【0075】
生体分子部分は、この分野で知られている方法、特に、アミド化またはエステル化反応を用いて、カルボン酸に共有結合させることができる。
【0076】
本発明のポリマーは、本発明の化合物の重合性部分を重合させることによって得ることができる。これは、特定の重合性部分に対して、この分野で知られている方法、例えば逐次重合またはラジカル重合の基づいて行うことができる。重合は、低温熱開始剤または光開始剤により開始させることができる。好ましくは、光開始剤により重合を開始させる。
【0077】
単一の光開始剤または2種またはそれ以上の光開始剤を用いることができる。硬化速度を速めるために、光開始剤の組み合わせを使用することが、特に、着色剤が存在する場合に、有利である。
【0078】
適切な光開始剤は当業者に良く知られており、ラジカル光開始剤が挙げられる。ラジカル光開始剤は、一般に、開始ラジカルを生成させるプロセスにより2つのクラスに分けられる。
【0079】
照射により単分子の結合が開裂する化合物はタイプI光開始剤と呼ばれる。励起状態の光開始剤が、第2の分子(共開始剤、COI)と相互作用して、2分子反応でラジカルを発生させるならば、その開始系はタイプII光開始剤と呼ばれる。適切なアルファ開裂の均一ラジカル光開始剤(タイプI)の例としては、ベンゾイン誘導体、メチロールベンゾインおよび4−ベンゾイル−1,3−ジオキソラン誘導体、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイド(その下にあるビスアシルホスフィンオキサイドも)、アシルホシフィンスルフィド、ハロゲン化アセトホスフィン誘導体などがある。
【0080】
光重合開始剤の他の例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4、4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーのケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、カンホルキノン、エオシンなどがある。これらの光重合開始剤の混合物も使用し得る。
【0081】
商業的に入手可能な光重合開始剤の製品の例としは、イルガキュア(IRGACURE)184、369、651、500、907、CGI1700、1750、1850、819、2959、CG24−61、ダロキュア(Darocur)1116、1173(Ciba Specialty Chemicals Co.,LTD.製)、ルシリン(Lucirin)LR8728(BASF製)、ウベクリル(Ubecryl)P36(UCB製)などが挙げられる。
【0082】
タイプII光開始剤の他の例としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、メチル4−ジメチルアミノベンゾエート、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、イソアミル4−ジメチルアミノベンゾエートなどがある。光増感剤の商業的に入手可能な製品としては、例えば、エベクリル(Ebecryl)P102、103、104および105(UCB製)が挙げられる。混合物の使用も可能である。
【0083】
ポリマーに生体分子部分を結合させる場合、重合後にそのような部分を共有結合させてもよい。
【0084】
上述したように、本発明は、また、本発明のポリマーを含む物品に関する。物品またはその大部分は、本発明のポリマー、またはそのようなポリマーを含む組成物、例えば、生物活性剤、特に、物品から放出され得る薬剤を加えた組成物から作られる。
【0085】
物品の表面の少なくとも一部は、そのポリマーを含むことが好ましい。
【0086】
所望するならば、物品の異なる場所に、例えば、表面の異なる部分に、異なる部分Zを導入することができる。こうして、異なる所望の効果を、物品の異なる場所(例えば、体内において)で発現させることができる。例えば、これにより、物品が神経ガイドの場合の神経細胞のような、特定の細胞の成長方向を制御することが可能になる。所望するならば、物品の一部分に生体分子部分を導入し、他の部分に保護基を導入し、それによって、物品の標的部分のみに特定の効果を与えることができる。
【0087】
特に、物品の表面でこのようであることが望まれる。したがって、好ましい実施態様では、物品表面の少なくとも第1の選択領域が、生体分子部分を部分Zまたは部分Zの一部として含有する第1のポリマーまたはポリマーの第1の部分を含み、少なくとも第2の領域が、前記生体分子部分とは異なる部分、例えば、水素、保護基または異なる生体分子部分を含有する本発明の第2のポリマーまたは同ポリマーの第2の部分を含む。
【0088】
そのような物品は、特に、
−本発明の化合物またはポリマーを使用して物品を成形し(ここで、Rは保護基(好ましくは、光開裂性基)、または水素である)、
−生体分子を結合させる領域の保護(光開裂性)基を選択的に除去し、生体分子部分を直接またはスペーサーを介してカルボン酸部分に結合させる
ことにより製造することができる。
【0089】
生体分子部分が意図した目的に合わない場合、あるいは、生体分子部分に悪影響を及ぼすおそれのある処理を化合物/ポリマー/物品に対しさらに行う必要がある場合、Rは、特に、水素または保護基とすることができる。後者の場合、所望するならば、生体分子部分をそのような処理の後に化合物/ポリマー/物品に結合させることができる。特に、保護基は、カルボン酸が化合物/ポリマー自身の他の反応性部分または他の分子と反応することから保護するために使用することができる。保護基は、また、生体分子部分を特定のパターンで結合させるため、あるいは、そのような結合を促進するために使用することができる。適切な保護基としては、アルキル基、特にメチル基、エチル基およびC3〜C8非置換アルキル基などの非置換アルキル基が挙げられる。メチル基およびC3〜C8アルキル基、特にt−ブチル基は、好ましいアルキル基である。
【0090】
Rが保護基の場合、光開裂性基から選択すれば、それらは電磁放射線を使用することによって容易に除去することができるので有利である。そのような基は、また、特定のパターンで、例えば、本発明の物品の表面に、その表面の特定の部分に選択的に照射することによって、容易に除去することができる。光開裂性の基の好ましい例としては、Protective groups in Organic synthesis、Theodora Greene、第3版、ウィリー(Wiley)ISBN 0 471−16019(1999)に記載されているものが挙げられる。
【0091】
酸処理、例えばトリフルオロ酢酸溶液に接触させることによって除去し得る保護基を選択することも可能である。酸により除去可能な保護基の例としては、t−ブチル基がある。
【0092】
保護基は光開裂性基であることが好ましい。
【0093】
選択的除去は、ポリマーの表面に電磁放射線を選択的に照射することによって行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】上の行:A)開裂性基を有するゲルの共焦点顕微鏡写真、B)ゲル上50μm四方の照射、開裂性基は蛍光性である、下の行 A)共焦点顕微鏡で観察されたブランコゲル(Blanco gel)、B)ゲル上50μm四方を照射後、蛍光は観察されない、を示す。
【図2】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図3】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図4】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図5】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図6】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図7】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの分解を示す。
【図8】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの酵素による分解を示す。
【図9】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの酵素による分解を示す。
【図10】リン酸緩衝生理食塩水中、37℃におけるコーティングの酵素による分解を示す。
【図11】引張試験のグラフ表示を示す。
【図12】PEG600−DAおよびPTGL1000−(T−H)2からの抽出可能物を示す。
【図13】PEG600−DAおよびPTGL1000−(T−H)2からの抽出可能物を示す。
【図14】写真を示す。
【図15】写真を示す。
【0095】
以下、本発明を次の実施例により説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
[実施例]
[材料]
dl−ラクチドおよびグリコリドは、PURACから購入した。L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステルは、Simochem(アイントホーフェン(Eindhoven)、オランダ(The Netherlands))から購入した。L−リシン−ジイソシアネートメチルエステルはKyowa Hakko Europe GmbHから提供された。カプロラクトンは、ソルベイカプロラクトン(Solvaycaprolactone)から提供された。Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−OtBuおよびGly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2は、Chiralix(ナイメーヘン(Nijmegen)、オランダ)から購入した。PmcおよびtBuは、それぞれ、保護基、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニルおよび第3ブチルの略である。他の薬品は全て、アルドリッチ(Aldrich)から購入した。他に明記しない限り、薬品はそのまま使用した。
【0097】
[装置]
NMR Advance 300MHz スペクトロメータ(Bruker))、Agilent 1100 MSD single quat LCMS、Perkin Elmer SpectrumおよびFTIRスペクトロメータを使用し、化学構造および純度を分析した。Acros silica gel(0.035〜0.070mm、細孔径約6nm)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィ(SGCC)を実施した。
【0098】
Merck Precoated silica gel 60F−254 plate上でTLCを実施した。化合物をUVまたはニンヒドリンで可視化した。
【0099】
層流キャビネット(Clean Air DLF/RS6)、インキュベータ(NAPCO model 6300)、Optimas画像解析ソフトウェア(BioScan Optimas)搭載のコンピュータに連結されたモノクロCCDカメラ(ADIMEX Image Systems、MX5)を備えたオリンパス(Olympus)CK2マイクロスコープを使用した。
【0100】
[実施例1:材料の調製]
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1000ジオール(1)の合成]
dl−ラクチド(24.76g、17.2mmol)、グリコリド(19.94g、17.2mmol)およびジエチレングリコール(5.306g、50mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(13.9mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して1を得た。
【0101】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.25−5.18(m、5.3H、CH(lac));4.83−4.74(m、10.6H、CH2(gly));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);2.79(broad、2H、−OH);1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0102】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1000−(t−Bu−LDI−HEA)2(2)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(2.54g、10mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.012g、0.028mmol)、イルガノックス(Irganox)1035(0.012g)のTHF(17.4グラム)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、1.16g、10mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、1(5グラム、5mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の2を得た。
【0103】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.25−5.18(m、H、CH(lac));4.83−4.74(m、2H、CH2(gly));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、4H、Lys);1.8−1.3(8H、Lys、12H、t−ブチルエステル、m、4H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0104】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1000ジアクリレート(3)の合成]
1(50グラム、50mmol)およびトリエチレンアミン(10.63g、0.105mol)を100mLのテロラヒドロフラン(THF)に溶解した。この溶液に、THF(15mL)に溶解したアクリロイルクロライド(9.5g、0.105mol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。THFを蒸発させた。全てを250mLのクロロホルムに溶解し、H2O、1N−NaHCO3、塩水で、連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の3が得られた。
【0105】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.25−5.18(m、9.1H、CH(lac));4.83−4.74(m、15.9H、CH2(gly));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);1.58(m、30H、CH3(lac))
【0106】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1000ジオール(4)の合成]
dl−ラクチド(37.41g、25.95mmol)、ε−カプロラクトン(29.63g、25.9mmol)およびジエチレングリコール(7.959g、75mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(21mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して4を得た。
【0107】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.25−5.18(m、5H、CH(lac));4.40−4.4(m、10H、CH2(cap));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.4(broad、2H、−OH);2.4(m、CH2(cap)1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap))
【0108】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1000−(t−Bu−LDI−HEA)2(5)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(tert.−ブチル−LDI)(5.08g、20mol))、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.023g、0.056mmol)、イルガノックス1035(0.023g)のトルエン(17.4グラム)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(2.23g、20mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、4(10グラム、5mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の5を得た。
【0109】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.25−5.18(m、H、CH(lac));4.40(m、10H、CH2(cap));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、4H、Lys);2.4(m、CH2(cap) 1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap));1.8−1.3(8H、Lys、12H、t−ブチルエステル、m、4H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0110】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1500トリオール(6)の合成]
エチルアセテート(25mL)中でトリメチロールプロパン(10グラム)を再結晶させて試料を乾燥させた。dl−ラクチド(25.22g、17.5mmol)、グリコリド(20.31g、17.5mmol)およびトリメチルプロパン(4.47g、33.3mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(14mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して6を得た。
【0111】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.4−5.0(m、8.2、CH(lac));4.82−4.70(m、16.9H、CH2(gly));4.5−4.0(m、9.0H、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH)およびCH3CH2C(CH2O−)3);3.0(broad、3H、−OH);1.57(m、31.6H、CH3(lac)およびCH3CH2C(CH2O−)3);0.90(t、3H、CH3CH2C(CH2O−)3)
【0112】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1500トリアクリレート(7)の合成]
6(10グラム、6.6mmol)およびトリエチルアミン(0.71グラム、7mmol)をTHF(100mL)に溶解した。THF(25mL)に溶解したアクリロイルクロライド(0.67g、7mmol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。溶媒THFを蒸発させた。残渣を250mLのクロロホルムに溶解し、H2O、0.1NのNaHCO3、塩水で、連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の7が得られた。
【0113】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.4−5.0(m、8.2、CH(lac));4.82−4.70(m、16.9H、CH2(gly));4.5−4.0(m、9.0H、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH)およびCH3CH2C(CH2O−)3);3.0(broad、3H、−OH);1.57(m、31.6H、CH3(lac)およびCH3CH2C(CH2O−)3);0.90(t、3H、CH3CH2C(CH2O−)3)
【0114】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1500−(t−Bu−LDI−HEA)3(8)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(2.54g、10mol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.037g、0.084mmol)、イルガノックス1035(0.012g)のテトラヒドロフラン(17.4グラム)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(1.16g、10mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。72時間後、6(10グラム、5mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の8を得た。
【0115】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.4−5.0(m、8.2、CH(lac));4.82−4.70(m、16.9H、CH2(gly));4.5−4.0(m、9.0H、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH)およびCH3CH2C(CH2O−)3);4、3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、6H、Lys);1.8−1.3(12H、Lys、18H、t−ブチルエステル、m、6H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0116】
[PEG600−(t−Bu−LDI−HEA)2(9)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(10.2g、40mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(50mg)およびイルガノックス1035(50mg)の溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(4.8g、40mmol)を、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、Mn=600のポリエチレングリコール(12グラム、20mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の9を得た。
【0117】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO)、4.3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA)および(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、3.6(s、CH2、PEG600および(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、4H、Lys)、1.8−1.3(8H、Lys、12H、t−ブチルエステル、m、4H、CH2(Lys))
【0118】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1000−(m−LDI−HEA)2(10)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートメチルエステル(Me−LDI)(10.6g、50mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.020g、0.050mmol)、イルガノックス1035(0.060g)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、6.0g、50mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、1(25グラム、25mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の10を得た。
【0119】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.25−5.18(m、H、CH(lac));4.83−4.74(m、2H、CH2(gly));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.3−4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−および3H、メチルエステル);3.2(m、4H、Lys);1.8−1.3(8H、Lys、m、4H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0120】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1545ジオール(11)の合成]
dl−ラクチド(51.9g、36.1mmol)、ε−カプロラクトン(41.2g、36.1mmol)およびジエチレングリコール(6.846g、64mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(29mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して11を得た。
【0121】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.25−5.18(m、5H、CH(lac));4.40−4.4(m、10H、CH2(cap));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.4(broad、2H、−OH);2.4(m、CH2(cap)1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap))
【0122】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1545ジアクリレート(12)の合成]
11(100グラム、64.7mmol)およびトリエチレンアミン(14.36グラム、0.142mol)を100mLのテトラヒドロフランに溶解した。この溶液に、THF(50mL)に溶解したアクリロイルクロライド(12.8g、0.141mol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。THFを蒸発させた。全てを250mLのクロロホルムに溶解し、H2O、1N−NaHCO3、塩水で、連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の12が得られた。
【0123】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.25−5.18(m、5H、CH(lac));4.40−4.4(m、10H、CH2(cap));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.4(broad、2H、−OH);2.4(m、CH2(cap)1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap))
【0124】
[p−(ラクチド−コ−カプロラクトン)1000−(m−LDI−HEA)2(13)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートメチルエステル(10.6g、50mol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.021g、0.050mmol)、イルガノックス1035(0.060g)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、THF25mLに溶解したヒドロキシエチルアクリレート(6.0g、50mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、50mLのテトラヒドロフランに溶解させた4(25グラム、25mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の13を得た。
【0125】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.5(2H、NHCO)、5.3(2H、NHCO);5.25−5.18(m、H、CH(lac));4.40(m、10H、CH2(cap));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.3−4.1(m、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);3.1(m、4H、Lysおよび3H、メチルエステル);2.4(m、CH2(cap)1.58(m、CH3(lac)およびCH2(cap));1.8−1.3(8H、Lys、m、4H、CH2(Lys))1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0126】
[t−Bu−LDI−(HEA)2(14)の合成]
【化5】
L−リシン−ジイソシアネートtert−ブチルエステル(10g、39mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.086g)、イルガノックス1035(89mg)のトルエン(50mL)溶液に、トルエン(15mL)に溶解したヒドロキシエチルアクリレート(HEA、9.13g、78mmol)を、乾燥雰囲気下、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、無色の油の14を得た。
【0127】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.4(2H、NHCO)、4.9(2H、NHCO);4.4(m、CH2、HEA);4.3(m、CH(Lys)、);3.1(m、4H、Lys);1.8−1.3(6H、CH2、Lysおよび12H、t−ブチルエステル)
【0128】
[LDI−(HEA)2(15)の合成]
【化6】
14(18.3グラム、37.6mmol)、トリフルオロ酢酸(TFA、36グラム)およびジクロロメタン(10g)を35℃で18時間攪拌した。1H−NMRに基づき(1.39ppmにおけるtert−ブチルエステルの消失)、脱保護反応を完了させた。反応混合物を250mLのジクロロメタンおよび200mLの水に溶解させた。攪拌しながら、1N−NaHCO3水溶液により混合物をpH=2にした。200mLの水でCH2Cl2層を6回洗浄した。各抽出時、1N−NaHCO3水溶液を用いてpHを2にした。有機相を真空下で濃縮し、無色の油の15を得た。F−NMR(内部標準4,4’−ジフルオロベンゾフェノン)で確認したところ、TFAは完全に除去されていた。
【0129】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.4(2H、NHCO)、4.9(2H、NHCO);4.4(m、CH2、HEA、およびm、CH(Lys)、);3.1(m、4H、Lys);1.8−1.3(6H、CH2、Lys)
【0130】
[LDI−(HEA)2−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−OtBu(16)の合成]
【化7】
15(0.379g、0.88mmol)のジクロロメタン(22mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.125g、0.97mmol)を0℃で加えた。1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(0.131g、0.97mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドハイドロクロライド(0.186g、0.97mmol)およびArg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−OtBu(0.702g、0.97mmol)を連続して加え、反応混合物を0℃で1時間、および室温で17時間攪拌した。混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣を105mLのEtOAc中に移し、HCl水溶液(pH=2.5、3×100mL)、NaHCO3の飽和水溶液(2×100mL)および塩水(100mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、蒸発乾固させた。15に対して85%の収率で、白色固体の不純物を含む形態の16を得た。この固体を、シリカカラムクロマトグラフィにより、溶出液にEtOAc/MeOH(95/5、v/v)を用いて精製し、白色粉末の純粋な16を、15に対して53%の収率で得た。
【0131】
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)7.8−7.25(3H、m、arom.Pmc)、6.32(3H、m、アクリロイル+NH)、6.08(3H、m、アクリロイル+NH)、5.74(2H、d、アクリロイル)、4.61(1H、m、Cα−ArgまたはCα−AspまたはCα−Lys)、4.49(1H、m、Cα−ArgまたはCα−AspまたはCα−Lys)、4.23(9H、2×CH2CH2HEA、Cα−ArgまたはCα−AspまたはCα−Lys)、3.92(2H、s、CH2−Gly)、3.33(2H、m、CH2−Nε−LysまたはCH2−C(NH2)=NH)、3.07(2H、m、CH2−Nε−LysまたはCH2−C(NH2)=NH)、2.90−1.50(25H、m、CH2−Asp、CH2−CH2−Arg、CH2−CH2−CH2−Lys、3×CH3Pmc、CH2CH2Pmc)、1.35(18H、s、6×CH3tBu)、1.20(6H、s、C(CH3)2Pmc)。HPLC−MS:[M+H]+=1138(計算値)
【0132】
[LDI−(HEA)2−Arg−Gly−Asp(17)の合成]
【化8】
16(3.45g、3.03mmol)を窒素雰囲気下でシュレンク(Schlenck)反応器に仕込み、減圧にし、窒素で5回フラッシュした。その後、トリフルオロ酢酸(95mL)を窒素雰囲気下で加えた。30分後、反応混合物から一定分量採り出し、HPLCにより脱保護が完了していることを分析した。減圧下でTFAを除去し、生成物を沈殿させ、無水ジエチルエーテルで十分に洗浄した。生成物を空気中で乾燥させ、白色固体の純粋な17を2.25g得た(16に対して98%の収率)。
【0133】
1H−NMR(300MHz、MeOD):δ(ppm)6.43(2H、d、アクリロイル)、6.23(1H、d、アクリロイル)、6.17(1H、d、アクリロイル)、5.91(2H、d、アクリロイル)、4.8(2H、m、Cα−Arg/Cα−Asp)、4.5−4.2(9H、2×CH2CH2HEA、Cα−Lys)、3.93(2H、s、CH2−Gly)、3.23(2H、m、CH2−Nε−Lys)、3.11(2H、m、CH2−C(NH2)=NH)、2.90(2H、d、CH2−Asp)、2.05−1.15(10H、CH2−CH2−Arg、CH2−CH2−CH2−Lys)。HPLC−MS:[M+H]+=759(計算値)
【0134】
[H−Arg(Pmc)−OtBu−HEA−6−アミノ−ヘキサノエート(18)の合成]
【化9】
22mLのジクロロメタンに571mg(2.09mmol)のHEA−6−アミノ−ヘキサノエートを溶解した溶液に、0℃でN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド.HCl(441mg、2.30mmol)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(313mg、2.30mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(384μl、2.30mmol)、Arg−(Pmc)−OtBu(1.093g、2.20mmol)をこの順に加えた。反応混合物を、室温で終夜攪拌した後、100mLのEtOAcで希釈し、HCl水溶液(0.5M、3×25mL)および塩水(2×25mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより、EtOAc/n−ヘプタン(33%→0%n−ヘプタン)を溶出液に用いて精製した。これにより、白色固体の(18)を得た(0.437g、0.58mmol)。
【0135】
1H−NMR(CDCl3、300MHz)δ6.48(dd、J=17.2および1.4Hz、1H)、6.27(d、J=8.1Hz、1H)、6.12(dd、J=17.1および10.6Hz、1H)、6.13−6.09(m、1H)、5.85(dd、J=10.4および1.4Hz、1H)、4.95(t、J=5.2Hz、1H)、4.48−4.37(m、1H)、4.35−4.25(m、4H)、3.32−3.11(bs、2H)、3.14(q、J=6.62Hz、2H)、2.62(t、J=6.9Hz、2H)、2.58(s、3H)、2.57(s、3H)、2.28−2.15(m、2H)、2.10(s、3H)、1.78(t、J=6.9Hz、2H)、1.68−1.48(m、12H)、1.46(s、9H)、1.29(s、6H)
【0136】
[H−Arg(Pmc)−OtBu−LDI−(HEA)2(19)の合成]
【化10】
30mLのジクロロメタンに1.24g(2.88mmol)のLDI−(HEA)2を溶解した溶液に、0℃でN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド.HCl(608mg、3.17mmol)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(439mg、3.17mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(532μl、3.17mmol)、Arg−(Pmc)−OtBu(1.53g、3.02mmol)をこの順に加えた。反応混合物を、室温で終夜攪拌した後、100mLのEtOAcで希釈し、HCl水溶液(0.5M、3×30mL)および塩水(2×30mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより、EtOAc/n−ヘプタン(33%→0%n−ヘプタン)を溶出液に用いて精製した。これにより、白色固体の(19)を得た(2.0g、2.21mmol)。
【0137】
1HNMR(CDCl3、300MHz)δ7.08(d、J=7.3Hz、1H)、6.42(d、J=17.2Hz、2H)、6.13(dd、J=10.3および17.2Hz、2H)、6.05−5.96(m、1H)、5.85(d、J=10.6Hz、2H)、5.81−5.76(m、1H)、5.13(t、J=5.3Hz、1H)、4.47−4.44(m、1H)、4.37−4.24(m、8H)、4.23−4.13(m、1H)、3.26−3.11(m、4H)、2.62(t、J=6.9Hz、2H)、2.57(s、3H)、2.55(s、3H)、2.10(2、3H)、1.79(t、J=6.8Hz、2H)、1.87−1.35(m、12H)、1.44(s、9H)、1.30(s、6H)
【0138】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1550ジオール(20)の合成]
dl−ラクチド(51.6g、0.358mol)、グリコリド(41.5g、0.358mmol)およびジエチレングリコール(6.85g、6.45mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(29mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して20を得た。
【0139】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=5.25−5.18(m、5.3H、CH(lac));4.83−4.74(m、10.6H、CH2(gly));4.30(m、6.7H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);2.79(broad、2H、−OH);1.58(m、19.1H、CH3(lac))
【0140】
[p−(ラクチド−コ−グリコリド)1550ジアクリレート(21)の合成]
20(100グラム、65mmol)およびトリエチレンアミン(14.36g、0.141mol)を100mLのテロラヒドロフランに溶解した。この溶液に、THF(50mL)に溶解したアクリロイルクロライド(12.8g、0.141mol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。THFを蒸発させた。全てを2500mLのエチルアセテート中でクエンチした。トリエチルアミン.HCl塩は良好に沈澱した。これをろ過により分離した。エチルアセテート層を、150mLの塩水で2回、150mLのNaHCO3、および、150mLの水で2回、連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の21が得られた。
【0141】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.25−5.18(m、9.1H、CH(lac));4.83−4.74(m、15.9H、CH2(gly));4.30(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);1.58(m、30H、CH3(lac))
【0142】
[p−(グリコリド−コ−カプロラクトン)1000−(m−LDI−HEA)2(22)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートメチルエステル(10.6g、50mmol)、スズ−(II)−エチルヘキサノエート(0.020g、0.049mmol)、イルガノックス1035(0.060g)のTHF(50mL)溶液に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、6g、50mmol)を、乾燥空気中、所定の温度(<20℃)で滴下添加した。HEAの存在に対するGPCにより反応を監視した。18時間後、THF(50mL)に溶解したp−(グリコリド−コ−カプロラクトン)1000−ジオール(25グラム、25mmol)を室温で加えた。温度を、v=2260cm−1におけるNCO基のIR伸縮振動が消滅する60℃まで徐々に上昇させた。IRの測定に基づいた反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せず、僅かに黄色に着色した油の22を得た。
【0143】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−6.0(6H、CH、アクリレート)、5.6(2H、NHCO)、5.4(2H、NHCO);4.7(m、2H、CH2(gly));4.6(m、10H、CH2(cap));4.30(m、H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.1(m、CH2、CH(Lys)、およびCH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−および3H、メチルエステル));3.1(m、4H、Lys);2.4(m、CH2(cap));1.8−1.3((CH2(cap));m、8H、CH2(Lys))
【0144】
[p−(グリコリド−コ−カプロラクトン)1550−ジオール(23)の合成]
カプロラクトン(46.2g、0.41mol)、グリコリド(46.9g、0.41mol)およびジエチレングリコール(6.846g、64.5mmol)を150℃で溶融した。スズ(II)−エチルヘキサノエート(32.8mg)を触媒として加えた。18時間反応させたところで、反応混合物を室温まで冷却して23を得た。
【0145】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=4.7(m、2H、CH2(gly));4.6(m、10H、CH2(cap));4.30(m、H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.1CH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);2.4(m、CH2(cap));1.8−1.3((CH2(cap))
【0146】
[p−(グリコリド−コ−カプロラクトン)1550−ジアクリレート(24)の合成]
24(100グラム、65mmol)およびトリエチレンアミン(14.36g、0.141mol)を100mLのテロラヒドロフランに溶解した。この溶液に、THF(50mL)に溶解したアクリロイルクロライド(12.8g、0.141mol)を、所定の温度(<5℃)で滴下添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。THFを蒸発させた。全てを2500mLのエチルアセテート中でクエンチした。トリエチルアミン.HCl塩をデカンテーションにより除去した。エチルアセテート層を250mLの塩水、250mLのNaHCO3、および250mLの水で連続して洗浄した。得られた溶液をNaSO4で乾燥させ、蒸発乾固させた。僅かに黄色に着色した油の24が得られた。
【0147】
1H−NMR(300MHz、CDCl3、22℃、TMS):δ(ppm)=6.5−5.8(6H、CH、アクリレート)、4.7(m、2H、CH2(gly));4.6(m、10H、CH2(cap));4.30(m、H、−(C=O)OCH2CH2O−、−O(C=O)CH2OH、−O(C=O)CH(CH3)OH);4.1(CH2、HEA);3.70(m、4H、−(C=O)OCH2CH2O−);2.4(m、CH2(cap));1.8−1.3((CH2(cap))
【0148】
[(MeO−PEG750)2−m−Lys(25)の合成]
L−リシン−ジイソシアネートメチルエステル(1.5g)、イルガノックス1035(2mg)およびスズ(II)エチルヘキサノエートを乾燥トルエン(5mL)に溶解した。この混合物に、IRでλ=2243cm−1の吸収が消失するまで、10mLのトルエンに溶解したMeO−PEG750−OH(10.9g)を滴下添加した。IRの測定に基づいて反応が完了した時点で、溶媒を蒸発させた。それ以上精製せずに、25を得た(10.81g)。
【0149】
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ;1.0−1.8(m、6H、CH2(Lys))、3.1−3.2(m、2H、CH2(Lys))、3.4(s、6H、OMe(Peg))、3.5−3.8(m、126H、CH2(Peg)、OMe(Lys)、4.2(m、4H、(2×)CH2−OMe(Peg))、4.3(m、1H、αH)4.9(m、1H、NH)、5.4(d、1HNH)
【0150】
13CNMR(75.5MHz、CDCl3)δ;22.0、28.9、31.3、39.9、51.5、51.7、53.3、58.4、60.9、63.1、63.6、68.8、69.0、69.6、69.8、71.3、72.1、155.2、155.8、171.9
【0151】
[(MeO−PEG750)2−Lys(26)の合成]
25(9.81g)を10mLのジオキサンに溶解した。この溶液に、7.1mLの1M−NaOHを加えた。40℃で、30分間の攪拌後、TLC(5%MeOH/DCM)基準で反応は完了した。攪拌後、減圧下で溶媒を蒸発させ、残渣を水に溶解し、1N−HClにより酸性にして、DCMで抽出した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィ(5%MeOH/DCM)の後、白色ゲルの26を90%の収率(8.5g)で得た。
【0152】
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ;1.0−1.5(m、6H、CH2(Lys))、2.8(m、2H、CH2(Lys))、3.0(s、6H、OMe(Peg))、3.3−3.6(m、118H、CH2(Peg)、OMe(Lys)、4.0(m、5H、(2×)CH2−OMe(Peg)およびαH(Lys))、5.6(bs、1H、NH)、5.8(d、1H、NH)
【0153】
13CNMR(75.5MHz、CDC13)δ;22.0、28.9、31.2、39.9、53.0、53.6、58.4、60.7、63.0、63.4、68.9、71.9、155.2、155.7、172.6
【0154】
[Boc−グリシン−o−ニトロベンジル(27)の合成]
Boc−グリシン(2g、11.4mmol)を30mLのDCMに溶解した。DMAP(1.39g)およびO−ニトロベンジルアルコール(1.74g、11.4mol)を加え、最後にDCC(2.35g、11.4mmol)を加えた。反応混合物を室温で終夜攪拌した。沈殿物をろ過により除去した後、減圧下で溶媒を蒸発させ、EtOAcに再度溶解した。有機層を1N−KHSO4、H2O、1N−NaHCO3および塩水で連続して洗浄した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィ(1:1EtOAc/ヘキサン)の後、黄色の固体の27を98%の収率(3.55g)で得た。
【0155】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.2(s、9H、Boc)、1.3(d、3H、CH3)、4.0(d、2H、CH2(Gly))、5.0(bs、1H、NH)、5.5(q、1H、CH(ベンジル))、7.2−7.3(m、1H、arom−H)、7.3−7.4(m、2H、arom−H)、8.1(m、1H、arom−H)
【0156】
[HCl.NH2−グリシン−o−ニトロベンジル(28)の合成]
27をEtOAcに溶解し、過剰のHCl/EtOAcを加えた。室温で、2時間の攪拌後、TLC基準で反応は完了した。沈殿物28をろ過し、エーテルで洗浄した。その後、ろ過物をtert−ブタノールで共蒸発させて残留HCl塩を除去した。
【0157】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.2(s、9H、Boc)、1.3(d、3H、CH3)、3.9(d、2H、CH2(Gly))、5.1(bs、1H、NH)、6.4(q、1H、CH(ベンジル)、7.2−7.3(m、1H、arom−H)、7.3−7.4(m、2H、arom−H)、8.1(m、1H、arom−H)
【0158】
[(MeO−PEG750)2−Lys−Gly−o−ニトロベンジル(29)の合成]
26(400mg、≒0.24mmol)をDMF(2mL)に溶解した。この混合物28(230mg)に、3mLのDMFに溶解したDIPEA(160μL)を加え、次いで、DCCを加えた。反応混合物を室温で終夜攪拌した。その後、10mLのDCMを加え、有機層を1N−KHSO4、H2O、1N−NaHCO3および塩水で連続して洗浄した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィ(5%MeOH/DCM)により29を得た。
【0159】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.0−2.0(m、9H、CH3およびCH2(Lys))、3.1(m、2H、CH2(Lys))、3.4(s、6H、OMe(PEG))、3.3−3.9(m、120H、CH2(Peg)、OMe(Lys)、4.0−4.4(m、7H、(2×)CH2−OMe(Peg)、αH(Lys)およびCH2(Gly))、5.1(bs、1H、NH)、5.7(bs、1H、NH)、6.2(m、1H、CH)、7.0(bs、1H、NH)、7.4−7.5(m、1H、arom−H)、7.5−7.7(m、2H、arom−H)、8.0−8.1(m、1H、arom−H)
【0160】
[(MeO−PEG750)2−Lys−Gly(30)の合成]
反応管内で29(20mg、0.01mmol)をMeOH(2mL)に溶解した。攪拌しながら、混合物にUV光線(254nm)を照射した。TLC(2:1のEtOAc/ヘキサン)で反応を追跡したところ、20分後に反応は完了した。真空下で溶媒を蒸発させ、残渣を水に溶解し、EtOAcで洗浄した。その後、水層を1N−HClで酸性にし、DCMで抽出した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、ろ過して、蒸発乾固させた。白色ゲルの化合物30を定量的収率で得た(18mg、0.01mmol)。
【0161】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.0−2.0(m、6H、CH2(Lys))、3.1(m、2H、CH2(Lys))、3.4(s、6H、OMe(Peg))、3.3−3.9(m、120H、CH2(Peg)、4.0−4.4(m、7H、(2×)CH2−OMe(Peg)、αH(Lys)およびCH2(Gly))、5.5(bs、1H、NH)、5.7(bs、1H、NH)、7.1(bs、1H、NH)
【0162】
13CNMR(75.5MHz、CDCl3)δ;21.8、28.7、31.5、39.8、40.4、53.2、54.0、58.2、60.7、62.9、63.4、68.6、69.5、71.1、155.2、155.7、170.1、171.6
【0163】
[(MeO−PEG750)2−Lys−Gly−Fmoc−Lys(NH3Cl)−OMe(31)の合成]
化合物30(50mg、0.028)およびFmoc−Lys(NH3Cl)−OMe(43mg、0.11)をH2O(3mL)に溶解した。この混合物にDIPEA(4.8μl、)およびEDC(21mg、0.11)を加えた。2時間後、この混合物に10mLのH2Oを加え、DCMで抽出した。得られた溶液を乾燥させ(MgSO4)、ろ過して、蒸発乾固させた。白色ゲルの化合物31を90%の収率で得た(54mg、0.025mmol)。
【0164】
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ;1.0−2.0(m、12HCH2(Lys))、3.1(m、2H、CH2(Lys))、3.4(s、6H、OMe(Peg))、3.3−3.9(m、126H、CH2(Peg)、OMe(Lys))、4.0−4.4(m、11H、(2×)CH2−OMe(Peg)、(2×)αH(Lys)およびCH2(Gly)、CH(Fmoc)およびCH2(Fmoc))、bs(1H、NH)、6.0(bs、2H、(2×)NH)、7.1−8.4(m、11H、(3×)NH、arom−H(Fmoc))
【0165】
[UVマスキング基を有するPEG600(LDI−HEA)2(32)の合成]
ゲル(硬化PEG600(LDI−HEA)2)を乾燥させ、秤量して(84.1mg、0.079mmol)、2mLのH2Oとともにシリンジに注入した。シリンジをアルミニウム箔で覆って反応混合物を暗く保持した。28(66mg、4当量)、DIPEA(54μl、4当量)およびEDC(59mg、4当量)を加えた。室温で一夜、振盪後、過剰の試薬を水で洗い流した。ゲルを乾燥させたところ、92.3mgの小さな破片状のゲルが得られた(92%)。
【0166】
[LDI−(HEA)2−Gly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2(33)の合成]
【化11】
100mLのCH2Cl2に溶解した2.40g(5.5mmol)のLDI−(HEA)2の冷却溶液(0℃)に、0.96g(5.0mmol、0.9当量)のN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドハイドロクロライド、0.68g(5.0mmol;0.9当量)の1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾーレおよび0.87mL(0.64g、5.0mmol、0.9当量)のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DiPEA)を加えた。次いで、4.62g(5.0mmol、0.9当量)のGly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2を加え、反応混合物を室温で攪拌した。18時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、その残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより、EtOAc/MeOH 95/5(v/v)を溶出液に用いて精製して、白色固体の純粋な33を得た(2.8g、収率42%)。生成物をHPLCおよび1H−NMRにより分析した。
【0167】
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ(ppm)8.26(1H、t、J=5.1Hz、NH)、8.21−8.12(3H、m、3×NH)、7.97(1H、d、J=7.8Hz、NH)、7.92(1H、d、J=8.0Hz、NH)、7.49(1H、d、J=7.8Hz、NH)、7.24(1H、t、J=5.5Hz、NH)、6.92(1H、bs、NH)、6.52(1H、bs、NH)、6.37(2H、m、アクリロイル)、6.20(2H、m、アクリロイル)、5.98(2H、m、アクリロイル)、4.73(1H、q、Cα−Asp)、4.33−4.24(6H、m、2×O−CH2−CH2−O+Cα−Ser+Cα−Arg)、4.23−4.16(4H、m、2×O−CH2−CH2−O)、3.94(1H、q、Cα−Lys)、3.80−3.71(6H、m、2×Cα−Gly+Cβ−Ser)、3.05(2H、q、Cε−Lys)、2.96(2H、q、Cδ−Arg)、2.70−2.56(4H、m、CH2CH2Pmc)、2.49(s、6H、2×CH3Pmc)、2.06(3H、s、CH3Pmc)、1.80(2H、t、Cβ−Asp)、1.73−1.43(10H、m、CH2−CH2−Arg、CH2−CH2−CH2−Lys)、1.42(6H、s、C(CH3)2Pmc)、1.39(9H、s、tBu)、1.28(9H、s、tBu)、1.13(9H、s、tBu)
【0168】
[LDI−(HEA)2−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser(34)の合成]
【化12】
窒素雰囲気下、室温で、LDI−(HEA)2−Gly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2(33)(0.76g、0.57mmol)を密封シュレンク反応器に仕込んだ。反応器を100mbarに減圧した。トリフルオロ酢酸(TFA、5.55mL)、次いで0.45mLの1,3−ジメトキシベンゼン(捕捉剤として作用)をシリンジにより加え、反応混合物を室温で攪拌した。溶液は無色からピンク色に変わった。2時間後、反応混合物から一定分量採り出し、HPLCで分析したところ、脱保護反応が完了していないことがわかった。続いて、追加のTFAを8.8mL加え、100mbarの減圧下で反応混合物をさらに2時間攪拌し、減圧下でTFAを除去した。得られた残渣を2.2mLのMeOHに溶解した溶液に200mLのn−ヘプタンを加え、得られた白色沈殿物をろ過により分離し、白色固体の純粋な34を得た(0.50g、0.56mmol、33に対して99%の収率)。生成物の同一性を1H−NMRおよびHPLC−MS(計算値では[M+H]+=902)により確認した。
【0169】
脱保護反応を監視するHPLC法:Inertsil ODS−3(長さ150mm、内径4.6mm)カラムを使用し、40℃で、HP1090液体クロマトグラフによるHPLC分析を実施した。UVVIS204リニアスペクトロメータを使用して220nmのUV検出を行った。勾配プログラムは:0〜20分が5%〜98%バッファーBの直線勾配;20.1〜25.0分が98%のバッファーB;25.1〜30分が5%のバッファーBであった。バッファーA:0.5mL/Lのメタンスルホン酸(MSA)のH2O水溶液;バッファーB:0.5mL/LのMSAのアセトニトリル溶液。流量は、0〜25.1分が1mL/min、25.2〜29.8分が2mL/min、および29.8〜30分が1mL/minとした。注入容量は20μLとした。HPLC−MSは、HPLC分析と同じカラムおよび同じ流量条件を用いて、Agilent 1100シリーズシステムで行った。保持時間:LDI−(HEA)2−Gly−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Ser−(OtBu)2:23.98分;LDI−(HEA)2−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser:9.11分。
【0170】
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ(ppm)12.5(2H、bs、2×COOH)、8.30−8.17(2H、m、2×NH)、8.13(1H、t、NH)、8.00−7.91(2H、m、2×NH)、7.49−7.38(2H、m、2×NH)、7.23(1H、t、NH)、6.95(3H、bs、3×NH)、6.38(2H、d、アクリロイル)、6.19(2H、m、アクリロイル)、5.98(2H、d、アクリロイル)、5.01−4.95(1H、m、NH)、4.67(1H、q、Cα−Asp)、4.36−4.23(6H、m、2×O−CH2−CH2−O+Cα−Ser+Cα−Arg)、4.23−4.14(4H、m、2×O−CH2−CH2−O)、3.92(1H、q、Cα−Lys)、3.82−3.57(6H、m、2×Cα−Gly+Cβ−Ser)、3.10(2H、q、Cε−Lys)、2.94(2H、q、Cδ−Arg)、1.80−1.69(2H、m、Cβ−Asp)、1.69−1.44(10H、m、CH2−CH2−Arg、CH2−CH2−CH2−Lys)。HPLC−MS:[M+H]+=902(計算値)
【0171】
[実施例2]
[UVマスキング基を有するPEG600(LDI−HEA)2(32)のフォトリソグラフィパターニング]
ゲル32を2枚のガラスカバースリップの間に置き、水で覆った。共焦点顕微鏡の405nmレーザーを使用し、100%のレーザー強度で50μm四方を20回照射した。その後、ゲルをフラスコ中で、MtOHかまたはEtOHと共に24時間振盪してニトロソベンズアセトン(nitrosobenzeacetone)を除去した。
【0172】
図1は、
上の行:A)開裂性基を有するゲルの共焦点顕微鏡写真、B)ゲル上50μm四方の照射、開裂性基は蛍光性である。
下の行 A)共焦点顕微鏡で観察されたブランコゲル(Blanco gel)、B)ゲル上50μm四方を照射後、蛍光は観察されない。
を示す。
【0173】
[実施例3]
[分解実験(シリーズI)]
下表に示したオリゴマーのTHF中における透明な75重量%調合物
【0174】
【表2】
【0175】
[コーティングの調製]
100μm厚さの湿潤コーティングが形成されるように設計されたコーティング用ドクターブレードを使用して、スズフロートガラスプレート上に調合物を塗布した。D−バルブからのUV(1J/cm2)を使用し、速度20m/s、22℃で、この湿潤被膜を硬化させた。真空乾燥器(200mbar)内で、60℃で4時間、コーティングを乾燥させた。得られた硬化乾燥コーティングの膜厚は50〜60μmである。このコーティングをそのまま使用した。
【0176】
[RVSスチール製篩における重量減少試験用試料の調製]
硬化膜(約200mg)をメッシュサイズ350〜370μmの篩に入れた。これらのコーティングのゲル部分を、クロロホルムで洗浄することによって決定した。続いて、このコーティングを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS:0.2gのKCl、0.2gのKH2PO4、8gのNaClおよび1.15gのNaHPO4を1リットルの水に溶解、pH7.4)中、37℃で分解させた。2〜3日毎に緩衝液を新しい緩衝液に取り替えた。新しい緩衝液を加える前に、15mLの水で篩を2回洗浄し、60℃で終夜乾燥させ、秤量した。図2〜4に示すように、分解に続いて重量減少を測定した。
【0177】
[実施例4]
[分解実験(シリーズII)]
下表に示したオリゴマーのTHF中における透明な90重量%調合物
【0178】
【表3】
【0179】
[コーティングの調製]
200μm厚さの湿潤コーティングが形成されるように設計されたコーティング用ドクターブレードを使用して、スズフロートガラスプレート上に調合物を塗布した。D−バルブからのUV(2J/cm2)を使用し、速度20m/s、22℃で、この湿潤被膜を硬化させた。真空乾燥器(200mbar)内で、60℃で4時間、コーティングを乾燥させた。得られた硬化乾燥コーティングの膜厚は150μmである。このコーティングをそのまま使用した。
【0180】
[RVSスチール製篩中で行う重量減少実験用試料の調製]
硬化フィルム(約200mg)を、メッシュサイズ350〜370μmの篩に入れた。これらのコーティングのゲル部分をクロロホルムで洗浄することによって決定した。続いて、このコーティングを、リン酸緩衝生理食塩水または酵素リン酸緩衝液(PBS:0.2gのKCl、0.2gのKH2PO4、8gのNaClおよび1.15gのNaHPO4を1リットルの水に溶解、pH7.4、酵素PBS:28.6mgのコレステロールエステラーゼを1000mLのPBS緩衝液に溶解)中、37℃で分解させた。
【0181】
2〜3日毎に緩衝液を新しい緩衝液に取り替えた。新しい緩衝液を加える前に、15mLの水で篩を3回洗浄し、60℃で終夜乾燥させ、秤量した。図5〜10に示すように、分解に続いて重量減少を監視した。
【0182】
[実施例5]
[コーティングの引張特性の動的機械測定]
材料をガラスプレート上に膜として配置した。測定用試料をその膜から打ち抜いた。その厚みを、目盛付きのハイデンハイン(Heidenhain)製厚さ測定器により測定した。動的機械測定は、ASTM D5026に準拠して、RSA−III(Reometrics Solid Analyzer III)と称するレオメトリックス(Rheometrics)社の装置を使用し、5℃/minの加熱速度で−130〜250℃の温度範囲にわたって周波数1Hzで行った。測定では、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)およびタンジェントデルタ(tanδ)を温度の関数として求めた。
【0183】
ASTM D5026との相異点:
・±2℃の温度変動を容認(標準では±1℃)
・±2%の荷重変動を容認(ノルム標準では±1%)
・±2%の周波数変動の容認(標準では±1%)
・加熱速度5℃/min(標準では1〜2℃/min)
【0184】
[引張試験条件:]
【0185】
【表4】
【0186】
[機械的特性(シリーズII)]
下表に示したオリゴマーの透明な調合物を調製した。
【0187】
【表5】
【0188】
[コーティングの調製]
200μm厚さのコーティングが形成されるように設計されたコーティング用ドクターブレードを使用して、スズフロートガラスプレート上に調合物を塗布した。D−バルブからのUV(1J/cm2)を使用し、速度20m/s、22℃で、この被膜を硬化させた。得られた硬化コーティングの膜厚は180〜200μmである。このコーティングをそのまま使用した。
【0189】
[DMAの結果]
【0190】
【表6】
【0191】
図11は引張試験のグラフ表示を示す。
【0192】
[実施例6]
下に示すように、H−Arg(PMC)−OtBu−ヘキサノエート−HEA(18、モノアクリレート、MA)およびH−Arg(PMC)−OtBu−ヘキサノエート−LDI−HEA2(19、ジアクリレート、DA)を、PTGL1000−(TDI−HEA)2およびPEG600−ジアクリレートに配合した。
【0193】
【表7】
【0194】
[コーティングの調製]
100μm厚さの湿潤コーティングが形成されるように設計されたコーティング用ドクターブレードを使用して、スズフロートガラスプレート上に調合物を塗布した。D−バルブからのUVを使用し、速度17.5m/s、22℃で、この湿潤被膜を硬化させた。アクリレートの異なる転化率を得るために、異なる強度を使用した。調合物1〜4は、0.04J/cm2、0.20J/cm2および2.0J/cm2の強度で硬化させた。調合物5〜8は、0.09J/cm2、0.44J/cm2および2.0J/cm2の強度で硬化させた。このコーティングをそのまま使用した。コーティング1〜8をアセトニトリルと共にバイアルに入れた。1時間後、HPLCにより、抽出可能物を測定した。結果を図12および13に示す。
【0195】
[実施例7]
下表に示したオリゴマーのMeOH中における透明な50重量%調合物
【0196】
【表8】
【0197】
ガラスカバースリップ上のPTGL1000−(TDI−HEA)2対照およびPTGL1000−(TDI−HEA)2/RGD−LDI−(HEA)2のコーティングは、殺菌条件(70%EtOHを使用)に耐えられないため、細胞培養実験に使用することができなかった。プラスチックカバースリップ上のポリマーのコーティングは非常に良好であった。スピンコーティング(10秒、28rpm)により、Thermanox(登録商標)PETカバースリップ(直径13mm)上に調合物を塗布した。D−バルブからのUV(2J/cm2)を使用し、速度20m/s、22℃で、これらのカバースリップを硬化させた。これらのカバースリップおよびコーティングをそのまま使用した。
【0198】
全ての実験は、ヒトの包皮の繊維芽細胞を使用して実施した。24ウエル培養プレートはコーニング/コスター(Corning/Coster.)より購入した(cat# 3524)。thermanoxプラスチックカバースリップは、NUNCから購入した(cat# 174950)。対照として、室温で1時間インキュベートしたゼラチン、1%(w/v)水、±200μl/2cm2(メルク、cat# 104070)を使用した。環状RGD:シクロ(−Arg−Gly−Asp−D−Phe−Val)はBachemから購入し(cat# H−2574)、殺菌水に溶解した(10mg/)。血清フリーの培養液は、M199 Cambrex/BioWhittaker、cat# BE12−117F、100IU/ペニシリン、100μg/ストレプトマイシン(Invitrogen/Gibco、cat# 15140−122)を含有している。
【0199】
プラスチックカバースリップは、ガラスカバースリップと対照的に培養液中で浮き上がる傾向がある。したがって、カバースリップをウエルの底にパラフィンで「接着」しなければならなかった:溶融パラフィンを1滴(または2滴)、カバースリップに半分とウエルの底に半分塗布した(これは木製の棒を使用して行った)。パラフィンを室温、30分間で固化させた。その後、0.5mLの70%(v/v)エタノールをウエルに加え、室温で30分間インキュベートした。その後、この時点では殺菌されたカバースリップを1mLのM199培養液(+ペニシリン/ストレプトマイシン)で5回洗浄した(1回につき、室温で1時間放置した)。これで、コーティングを備えたカバースリップは使用できる状態になった。
【0200】
ここで、コーティングしていないカバースリップをゼラチンまたはビトロネクチンと共にインキュベートし(1時間、室温)、その後、もう1度洗浄した。
【0201】
細胞を37℃、5%CO2/95%空気、加湿環境下で培養した。細胞を約10000個/ウエルという「高密度」で植え付けた(0.5ml/ウエル)。繊維芽細胞は、M199のみ、またはペニシリン/ストレプトマイシンのみを含有するM199(血清フリー培養液)に植え付けた(後者の場合、植え付け前に血清フリー培養液で1度洗浄した)。細胞付着時に環状RGDが存在するように、細胞の半分に環状RGDを加えた(最終濃度50μg/ml)。約16時間(1晩)後、写真を撮った。
【0202】
c−RGDの影響を調べるために、細胞を植え付ける前に細胞にこのペプチドを加えた(50μg/ml)(したがって、細胞付着時に環状RGDが存在した)。細胞を37℃、5%CO2/95%空気、加湿環境下で培養した。
【0203】
血清フリー条件下での実験は、繊維芽細胞を使用してのみ行った。PTGL1000−(TDI−HEA)2/RGD−LDI−(HEA)2コーティングは、対照のポリマーと比べると、かなり良好な細胞付着性を示し、これにより、ポリマーのRGD部分は細胞と相互作用し、付着性を向上させることができることが示唆された。PTGL1000−(TDI−HEA)2/RGD−LDI−(HEA)2コーティング上で増殖した細胞の形態は、PTGL1000−(TDI−HEA)2コーティング上で増殖した細胞の形態より良好であった。図14はこのことを示す写真である。
【0204】
[実施例8]
THF中のオリゴマーの透明な50重量%調合物を下表に示す。
【0205】
【表9】
【0206】
スピンコーティング(5秒、3000rpm)により、Thermanox(登録商標)PETカバースリップ(直径13mm、Thermanox Plastic Nunc、cat# 174950)上に、PEG600−(m−LDI−HEA)2およびPEG600−(m−LDI−HEA)2/GRGDS−LDI−(HEMA)2調合物を塗布した。D−バルブからのUV(5J/cm2)を使用し、窒素雰囲気下、速度18m/s、22℃で、これらのカバースリップを硬化させた。これらのカバースリップおよびコーティングをそのまま使用した。
【0207】
全ての実験は、ヒトの包皮の繊維芽細胞を使用して実施した。24ウエル培養プレートはコーニング/コスターより購入した(cat# 3524)。Thermanoxプラスチックカバースリップは、(NUNC、cat# 174950)から購入した。対照として、室温で1時間インキュベートしたゼラチン、1%(w/v)水、±200μl/2 cm2(メルク、cat# 104070)を使用した。環状RGD:シクロ(−Arg−Gly−Asp−D−Phe−Val)(Bachem、cat# H−2574)を殺菌水(10mg/ml)に溶解し、そのまま使用した。血清フリーの培養液は、M199 Cambrex/BioWhittaker、cat# BE12−117F、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen/Gibco、cat# 15140−122)を含有している。血清を含有する培養液は、199(Cambrex/BioWhittaker、cat# BE12−117F)、10%のヒト血清、10%の新生小牛血清(NBCS)、150μg/mlのECFG(Endothelial Cell Growth Factor(内皮細胞増殖因子))、2mMのL−グルタミン、5U/mlのヘパリン、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含有している。固定剤として、水に溶解した2%ホルムアルデヒド+0.2%のグルタルアルデヒドを使用した。
【0208】
カバースリップをウエルの底にパラフィンで「接着」した。パラフィンを溶融し、3〜4滴を、カバースリップに半分とウエルの底に半分塗布した(これは木製の棒を使用して行った)。パラフィンを室温、30分間で固化させた。その後、0.5mLの70%(v/v)エタノールをウエルに加え、室温で30分間インキュベートした。その後、この時点では殺菌されたカバースリップを1mlのM199培養液(+ペニシリン/ストレプトマイシン)で3回洗浄した(1回につき、室温で1時間放置した)。
【0209】
このコーティングしたカバースリップを1時間インキュベートする間、コーティングしていないカバースリップをゼラチンまたはビトロネクチンと共にインキュベートし(1時間、室温)、その後、全てのカバースリップをもう1度洗浄した。これで、カバースリップは使用できる状態になった。
【0210】
細胞を37℃、5%CO2/95%空気、加湿環境下で培養した。細胞を約30000個/ウエルという「高密度」で植え付けた(0.5ml/ウエル)。繊維芽細胞は、M199のみ、またはペニシリン/ストレプトマイシンのみを含有するM199(血清フリー培養液)に植え付けた(後者の場合、植え付け前に血清フリー培養液で1度洗浄した)。細胞付着時に環状RGDが存在するように、細胞の半分に環状RGDを加えた(最終濃度50μg/ml)。約16時間(1晩)後、写真を撮った。
【0211】
PEG600−(m−LDI−HEA)2/GRGDS−(LDI−HEA)2コーティングは、対照のポリマーPEG600−(m−LDI−HEA)2と比べると、血清フリーおよび血清含有条件下でかなり良好な細胞付着性を示し、これにより、ポリマーのGRGDS部分は細胞と相互作用し、付着性を向上させることができることが示唆された。図15はこのことを示す写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも2つの重合可能な部分、(b)少なくとも2つのアミン基がカルバメート基、チオカルバメート基またはカルバミド基を形成している少なくとも2つのアミン基を含む、アミノ酸の少なくとも1つのアミノ酸残基、および(c)そのジアミノ酸残基のカルボン酸部分に直接またはスペーサーを介して結合した生体分子部分、を含む化合物。
【請求項2】
式I
【化1】
(式中、
−Gは、少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基、または部分Xであり、
−各Xは独立して、重合性基を含む部分を表し、
−各Yは独立して、O、SまたはNRを表し、
−各Rは独立して、水素、または場合により1種以上のヘテロ原子を含有する置換および非置換の炭化水素から選択される基、好ましくは水素、またはC1〜C20の炭化水素、より好ましくは水素、またはC1〜C20のアルキル基を表し、
−Lは、場合により1種以上のヘテロ原子を含有する置換もしくは非置換の炭化水素を表し、
−nは、GがXを表す場合は値1を有する整数であり、Gが少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基を表す場合は、少なくとも2であり、
−Zは、前記化合物の残りの部分に直接またはスペーサーを介して結合した生体分子部分である)
で表される化合物。
【請求項3】
Gが、−OH、−NH2、−RNHまたは−SH多官能性の、好ましくはポリエステル、ポリチオエステル、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリチオエーテルおよびポリエーテルから選択される、より好ましくは、ポリアルキレングリコールからなる群から選択される、ポリマーまたはオリゴマーの残基である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
重合性部分Xが、付加またはラジカル反応により重合可能な部分からなる群から選択される請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、アクリレート、アルキルアクリレート、メタクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルエーテル、アルキルエーテル、フマレート、イタコネートおよびビニルスルホン、並びに、これらの組み合わせからなる群から選択される請求項2〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Zが、アミノ酸残基;ペプチド残基;炭水化物残基またはヌクレオチド残基からなる群から選択される請求項2〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Zが、細胞シグナリング部分、化合物に対する細胞接着性を促進する部分、細胞の増殖を制御する部分、抗血栓性部分、傷の治癒の促進体、神経系への刺激体または抗菌部分から選択される請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Lが、線状または分岐状のC3〜C8アルキル基を表す請求項2〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
式IのNR−L(C=O)−NR部分が、リシン部分、ジアミノプロピオン酸部分、ヒドロキシルリシン部分、N−アルファ−メチル化リシンまたはジアミノブタン酸部分を表す請求項2〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物を含むポリマー。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物とラジカルまたは付加重合性化合物とを一定の割合で含むポリマー。
【請求項12】
式II
【化2】
(式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アリール基、または金属塩から選択される)で示される化合物をさらに含む請求項10または11に記載のポリマー。
【請求項13】
請求項2〜9のいずれか一項に記載の化合物を製造する方法であって、まず式III
【化3】
(式中、Rは水素または保護基である)で示される化合物を、式X−Y−Hおよび(もしGがXと異なるならば)式G−Y−Hの化合物と反応させて、水素または保護基を選択的に除去し、生体分子部分を直接またはスペーサーを介して、Lに結合したカルボン酸部分に共有結合させることを含む方法。
【請求項14】
請求項10に記載のポリマーの製造方法であって、請求項2〜9のいずれか一項に記載の化合物を重合させることを含む方法。
【請求項15】
式II(式中、Rは水素または保護基から選択される)で示される化合物を重合させることにより請求項10に記載のポリマーを製造する方法であって、水素または保護基を選択的に除去し、その後、生体分子部分を直接またはスペーサーを介して、Lに結合したカルボン酸部分に共有結合させる方法。
【化4】
【請求項16】
請求項11に記載のポリマーの製造方法であって、請求項2〜9のいずれか一項に記載の化合物を、重合性化合物と共重合させることを含む方法。
【請求項17】
請求項10または12のいずれか一項に記載のポリマーを含む物品。
【請求項18】
請求項10または12のいずれか一項に記載のポリマーを含む物品であって、異なる生体分子部分が存在する物品。
【請求項19】
チューブ、ミクロスフェア、ナノスフェア、フィルム、発泡体、インプラント、ゲル、ヒドロゲル、スポンジ、コーティングおよび人工生体組織からなる群から選択される請求項17または18に記載の物品。
【請求項20】
物品が、口、腸、神経、血管、尿管、眼、筋肉、骨格、皮下および気管の用途から選択される用途での使用に適したものである請求項17〜19のいずれか一項に記載の物品。
【請求項21】
物品の表面の少なくとも1部が、請求項10〜12のいずれか一項に記載のポリマーを含む請求項17〜20のいずれか一項に記載の物品。
【請求項22】
表面の少なくとも第1の選択領域が請求項10〜12のいずれか一項に記載の第1のポリマーを含み、少なくとも第2の領域が、請求項10〜12のいずれか一項に記載の第2のポリマーを含む請求項21に記載の物品。
【請求項23】
第1および第2のポリマーが同一または異なる生体分子部分を含んでもよい請求項22に記載の物品。
【請求項24】
請求項17に記載の物品を製造する方法であって、
−式II(式中、Rは保護基または水素である)で示される化合物を使用して物品を成形することと、
−生体分子部分を結合させる領域の水素または保護基を選択的に除去することと、
−生体分子部分を直接またはスペーサーを介してカルボン酸部分に共有結合させることとを含む方法。
【請求項25】
保護基が光開裂性基であり、選択的除去が電磁放射線でポリマーの表面を選択的に照射することによって行われる請求項24に記載の方法。
【請求項1】
(a)少なくとも2つの重合可能な部分、(b)少なくとも2つのアミン基がカルバメート基、チオカルバメート基またはカルバミド基を形成している少なくとも2つのアミン基を含む、アミノ酸の少なくとも1つのアミノ酸残基、および(c)そのジアミノ酸残基のカルボン酸部分に直接またはスペーサーを介して結合した生体分子部分、を含む化合物。
【請求項2】
式I
【化1】
(式中、
−Gは、少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基、または部分Xであり、
−各Xは独立して、重合性基を含む部分を表し、
−各Yは独立して、O、SまたはNRを表し、
−各Rは独立して、水素、または場合により1種以上のヘテロ原子を含有する置換および非置換の炭化水素から選択される基、好ましくは水素、またはC1〜C20の炭化水素、より好ましくは水素、またはC1〜C20のアルキル基を表し、
−Lは、場合により1種以上のヘテロ原子を含有する置換もしくは非置換の炭化水素を表し、
−nは、GがXを表す場合は値1を有する整数であり、Gが少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基を表す場合は、少なくとも2であり、
−Zは、前記化合物の残りの部分に直接またはスペーサーを介して結合した生体分子部分である)
で表される化合物。
【請求項3】
Gが、−OH、−NH2、−RNHまたは−SH多官能性の、好ましくはポリエステル、ポリチオエステル、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリチオエーテルおよびポリエーテルから選択される、より好ましくは、ポリアルキレングリコールからなる群から選択される、ポリマーまたはオリゴマーの残基である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
重合性部分Xが、付加またはラジカル反応により重合可能な部分からなる群から選択される請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、アクリレート、アルキルアクリレート、メタクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルエーテル、アルキルエーテル、フマレート、イタコネートおよびビニルスルホン、並びに、これらの組み合わせからなる群から選択される請求項2〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Zが、アミノ酸残基;ペプチド残基;炭水化物残基またはヌクレオチド残基からなる群から選択される請求項2〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Zが、細胞シグナリング部分、化合物に対する細胞接着性を促進する部分、細胞の増殖を制御する部分、抗血栓性部分、傷の治癒の促進体、神経系への刺激体または抗菌部分から選択される請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Lが、線状または分岐状のC3〜C8アルキル基を表す請求項2〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
式IのNR−L(C=O)−NR部分が、リシン部分、ジアミノプロピオン酸部分、ヒドロキシルリシン部分、N−アルファ−メチル化リシンまたはジアミノブタン酸部分を表す請求項2〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物を含むポリマー。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物とラジカルまたは付加重合性化合物とを一定の割合で含むポリマー。
【請求項12】
式II
【化2】
(式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アリール基、または金属塩から選択される)で示される化合物をさらに含む請求項10または11に記載のポリマー。
【請求項13】
請求項2〜9のいずれか一項に記載の化合物を製造する方法であって、まず式III
【化3】
(式中、Rは水素または保護基である)で示される化合物を、式X−Y−Hおよび(もしGがXと異なるならば)式G−Y−Hの化合物と反応させて、水素または保護基を選択的に除去し、生体分子部分を直接またはスペーサーを介して、Lに結合したカルボン酸部分に共有結合させることを含む方法。
【請求項14】
請求項10に記載のポリマーの製造方法であって、請求項2〜9のいずれか一項に記載の化合物を重合させることを含む方法。
【請求項15】
式II(式中、Rは水素または保護基から選択される)で示される化合物を重合させることにより請求項10に記載のポリマーを製造する方法であって、水素または保護基を選択的に除去し、その後、生体分子部分を直接またはスペーサーを介して、Lに結合したカルボン酸部分に共有結合させる方法。
【化4】
【請求項16】
請求項11に記載のポリマーの製造方法であって、請求項2〜9のいずれか一項に記載の化合物を、重合性化合物と共重合させることを含む方法。
【請求項17】
請求項10または12のいずれか一項に記載のポリマーを含む物品。
【請求項18】
請求項10または12のいずれか一項に記載のポリマーを含む物品であって、異なる生体分子部分が存在する物品。
【請求項19】
チューブ、ミクロスフェア、ナノスフェア、フィルム、発泡体、インプラント、ゲル、ヒドロゲル、スポンジ、コーティングおよび人工生体組織からなる群から選択される請求項17または18に記載の物品。
【請求項20】
物品が、口、腸、神経、血管、尿管、眼、筋肉、骨格、皮下および気管の用途から選択される用途での使用に適したものである請求項17〜19のいずれか一項に記載の物品。
【請求項21】
物品の表面の少なくとも1部が、請求項10〜12のいずれか一項に記載のポリマーを含む請求項17〜20のいずれか一項に記載の物品。
【請求項22】
表面の少なくとも第1の選択領域が請求項10〜12のいずれか一項に記載の第1のポリマーを含み、少なくとも第2の領域が、請求項10〜12のいずれか一項に記載の第2のポリマーを含む請求項21に記載の物品。
【請求項23】
第1および第2のポリマーが同一または異なる生体分子部分を含んでもよい請求項22に記載の物品。
【請求項24】
請求項17に記載の物品を製造する方法であって、
−式II(式中、Rは保護基または水素である)で示される化合物を使用して物品を成形することと、
−生体分子部分を結合させる領域の水素または保護基を選択的に除去することと、
−生体分子部分を直接またはスペーサーを介してカルボン酸部分に共有結合させることとを含む方法。
【請求項25】
保護基が光開裂性基であり、選択的除去が電磁放射線でポリマーの表面を選択的に照射することによって行われる請求項24に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−508428(P2010−508428A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535620(P2009−535620)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009637
【国際公開番号】WO2008/055666
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009637
【国際公開番号】WO2008/055666
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】
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