説明

生分解性重合体又は重合体ブレンドで被覆又は含浸された繊維シート

【課題】生分解性を有する液体侵入抵抗性繊維シートの提供。
【解決手段】繊維シートを生分解性組成物により被覆又は含浸して液体進入抵抗性を付与する。繊維シートには薄葉紙、紙又は板紙が包含され、生分解生組成物には少なくとも1種類の酪酸ポリヒドロキシおよびマイクロ波適用可能にするように十分な無機充填剤、0℃よりも低いガラス転移温度を持つ軟質生分解性重合体、少なくとも10℃のガラス転移温度を持つ剛性生分解性重合体が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の背景)(1.本発明の分野)
本発明は概して生分解性重合体又は重合体ブレンド及びそれから製造されるシートに関する。さらに詳しくは、本発明は、シートをより一層高い液体抵抗性にする生分解性重合体又はブレンドによって被覆又は含浸される、繊維シートに関する。得られるシートは、使い捨てラップ、袋物(バッグ)、パウチ又は他の包装材料のような多くの適用に適切である。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術)
豊かになると、物を購入する能力がより一層高まり、及び物が蓄積されてくる。これまで世界の歴史において、このように多くの人々がこのように多大な購買力を持ったことはなかった。本、道具、玩具及び食物のような比較的安価な物品を購入できることは、現実的に社会のあらゆる階層の人々によって、その範囲のより一層貧しい極にあると考えられる人々によってでさえ、享受される贅沢である。購入する物の大部分は予め包装されているので、日常的に固形廃棄物として環境中に廃棄される使い捨て包装材料の量は甚だ増大してきた。したがって、社会がより一層豊かになるにつれて、より一層多くの使い捨てごみが生じる。
【0003】
若干の包装材料は、ボックス、カートン、パウチ、袋物及び卸売及び小売店から購入する品目を包装するのに用いるラップのように、単一使用が意図されているに過ぎない。コンピュータ及び“ペーパレス”の取引の到来でも、包装廃棄物の増大傾向を止められなかった。実際、“電子商取引”の始まりは、多くの通信販売の流行を生じさせ、従って個々に包装されて出荷される品目のまったく新しい市場を創出した。
【0004】
さらに、現代の、急速な生活様式は、人々が自分たちの食事を用意し、及び家族又は集団として座っていた伝統的な食事の日常性を大きく崩壊させた。代わりに、人々は移動しながら素早く食物を食べ、従って一度使用され、次いで廃棄される、増え続ける量の即席食物(ファースト-フード)の包装材料が作り出される。大量の使い捨て包装材料が生じることを考慮して、若干の国々、特に欧州の国々は、即席食物から生じる廃棄物の再利用か、又は“生分解性”又は“堆肥化可能な”包装材料の使用のいずれかを命じている。環境活動家等は、一般に、固形廃棄物を生じさせる国々に対して、より一層環境に優しい代替物を見出すよう圧力を加えている。したがって、生分解性でない(nonbiodegradable)包装材料に対する生分解性代替物を開発するための必要性が絶えず存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−13391号公報
【特許文献2】特開平6−255039号公報
【特許文献3】特開平4−336246号公報
【特許文献4】国際公開第02/16468号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
天然のセルロース-系繊維から作製される紙、板紙及び他の繊維シートは、生分解性である。しかし、繊維シートは多孔質な傾向がある。結果として、それらは、水、油又は他の液体に対する良好な障壁(遮断層)を提供しない。繊維シートがそれらを液体に曝す用途に用いられるとき、それらは一般に、パラフィン蝋(ワックス)又はプラスチックのような、耐液体性物質を用いて処置されなければならない。しかしながら、そうすることで、繊維シートはもはや生分解性ではなくなるが、プラスチックか、又はパラフィン蝋のように耐分解性になる。
【0007】
上述の点から、耐液体性であり、及び生分解性である繊維シートを提供することは、この技術における向上である。加えて、又は代わりに、耐液体性であるだけでなく、蝋又はプラスチックを用いて処置する通常の繊維シートに比べてまだ良好な通気性及び水蒸気透過性を持つ、優れた繊維シートを提供することは、この包装技術における更なる向上である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生分解性重合体又は重合体ブレンドによって被覆又は含浸させた繊維シートを包含し、液体に対し、より一層高い抵抗性があるシート(概して、“処置シート”又は“処置繊維シート”である)をもたらす。処置シートは、ラップ、袋物、パウチ、カートン、ジャグ、カップ、板、ボウル、トレイ、プラッタ、蓋、ストロ、及び同様のもののような包装材料が含まれる、広範な様々の製品を製造するのに用いることができる。
国際出願日には以下の請求の範囲の記載を含む。
[請求項1]
製品であって、
繊維シートを備え、
少なくとも1部分の繊維シートが、繊維シートをより一層高い液体抵抗性にする生分解性組成物によって被覆又は含浸されており、
生分解性組成物が、
約0℃よりも低いガラス転移温度を持つ少なくとも1種の軟質熱可塑性生分解性重合体、及び
少なくとも約10℃のガラス転移温度を持つ少なくとも1種の剛性熱可塑性生分解性重合体を含む、製品。
[請求項2]
剛性熱可塑性生分解性重合体に、テレフタル酸基の1部分を少なくとも1種の脂肪族二塩基酸で置換した修飾されたポリエチレンテレフタレートが包含される、請求項1記載の製品。
[請求項3]
剛性熱可塑性生分解性重合体に、少なくとも1種のポリエステルアミド、少なくとも約10℃のガラス転移温度を持つポリヒドロキシ酪酸、グリコリド、ラクチド及びε−カプロラクトンから形成される単位を含む三元共重合体、又は少なくとも1種の二塩基酸、少なくとも1種のジオール、及び少なくとも1種のアミノ酸から形成されるポリエステルアミドが包含される、請求項1記載の製品。
[請求項4]
剛性熱可塑性生分解性重合体に、少なくとも1種のポリ乳酸又はポリ乳酸誘導体が包含される、請求項1記載の製品。
[請求項5]
軟質熱可塑性生分解性重合体に、少なくとも1種のラクチド又は少なくとも4個の炭素原子を持つヒドロキシ酸から形成される単位を含む少なくとも1種の脂肪族ポリエステル、コハク酸及び脂肪族ジオール、及び少なくとも1種の脂肪族ジオールから形成される単位を含むポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸−ヒドロキシ吉草酸の共重合体、ポリブチレンコハク酸、ポリブチレンコハク酸アジピン酸、ポリエチレンコハク酸、又は熱可塑性澱粉が包含される、請求項1記載の製品。
[請求項6]
軟質熱可塑性生分解性重合体に、脂肪族ジオール、脂肪族二塩基酸及び芳香族二塩基酸から形成される単位を含む少なくとも1種の脂肪族−芳香族コポリエステル、又はアジピン酸、ジアルキルテレフタレート、及び少なくとも1種の脂肪族ジオールから形成される単位を含む脂肪族−芳香族コポリエステルが包含される、請求項1記載の製品。
[請求項7]
剛性熱可塑性生分解性重合体を生分解性組成物の重量で約20%から約99%までの範囲において含む、請求項1記載の製品。
[請求項8]
剛性熱可塑性生分解性重合体を生分解性組成物の重量で少なくとも約40%の濃度において含む、請求項1記載の製品。
[請求項9]
剛性熱可塑性生分解性重合体を、生分解性組成物の重量で少なくとも50%であるが、これが含まれない濃度において含む、請求項1記載の製品。
[請求項10]
剛性熱可塑性生分解性重合体が少なくとも約15℃のガラス転移温度を持つ、請求項1記載の製品。
[請求項11]
剛性熱可塑性生分解性重合体が少なくとも約25℃のガラス転移温度を持つ、請求項1記載の製品。
[請求項12]
剛性熱可塑性生分解性重合体が少なくとも約35℃のガラス転移温度を持つ、請求項1記載の製品。
[請求項13]
軟質熱可塑性生分解性重合体を生分解性組成物の重量で約70%までの濃度において含む、請求項1記載の製品。
[請求項14]
剛性熱可塑性生分解性重合体を生分解性組成物の重量で50%までであるが、これが含まれない濃度において含む、請求項1記載の製品。
[請求項15]
剛性熱可塑性生分解性重合体を生分解性組成物の重量で約45%までの濃度において含む、請求項1記載の製品。
[請求項16]
軟質熱可塑性生分解性重合体が約−4℃よりも低いガラス転移温度を持つ、請求項1記載の製品。
[請求項17]
軟質熱可塑性生分解性重合体が約−10℃よりも低いガラス転移温度を持つ、請求項1記載の製品。
[請求項18]
軟質熱可塑性生分解性重合体が約−20℃よりも低いガラス転移温度を持つ、請求項1記載の製品。
[請求項19]
軟質熱可塑性生分解性重合体が約−30℃よりも低いガラス転移温度を持つ、請求項1記載の製品。
[請求項20]
生分解性組成物に更に少なくとも1種の粒状充填材が含まれる、請求項1記載の製品。
[請求項21]
粒状充填材が製品をマイクロ波適用可能にするように一定量で含まれる、請求項20記載の製品。
[請求項22]
粒状充填材が生分解性組成物の重量で少なくとも約10%の量において含まれる、請求項20記載の製品。
[請求項23]
粒状充填材が生分解性組成物の重量で少なくとも約20%の量において含まれる、請求項20記載の製品。
[請求項24]
粒状充填材が生分解性組成物の重量で少なくとも約30%の量において含まれる、請求項20記載の製品。
[請求項25]
粒状充填材に、少なくとも1種のシリカ、炭酸カルシウム、クレイ、タルク、マイカ、アルミナ、又はセラミックが包含される、請求項20記載の製品。
[請求項26]
生分解性組成物が、繊維シートの少なくとも1方の側に積層された薄膜又はシートからなる、請求項1記載の製品。
[請求項27]
繊維シートに、薄葉紙、紙又は板紙が包含される、請求項1記載の製品。
[請求項28]
繊維シートが、生分解性組成物での被覆又は含浸に先立ち8−60lb/3000ft(およそ13.02−およそ97.65g/m)の紙からなる、請求項1記載の製品。
[請求項29]
繊維シートが、生分解性組成物での被覆又は含浸に先立ち12−15lb/3000ft(およそ19.53−およそ24.41g/m)の薄葉紙からなる、請求項1記載の製品。
[請求項30]
製品であって、
繊維シートを備え、
少なくとも1部分の繊維シートが、繊維シートをより一層高い液体抵抗性にする生分解性組成物によって被覆又は含浸されており、
生分解性組成物が少なくとも1種の種類のポリヒドロキシ酪酸を含む、製品。
[請求項31]
繊維シートに、薄葉紙、紙又は板紙が包含される、請求項30記載の製品。
[請求項32]
繊維シートが12−15lb/3000ft(およそ19.53−およそ24.41g/m)の薄葉紙からなる、請求項30記載の製品。
[請求項33]
生分解性組成物が重量で少なくとも約30%の無機充填材を含有する、請求項30記載の製品。
[請求項34]
無機充填材に、少なくとも1種のシリカ、砂、砕石、ボーキサイト、花崗岩、石灰石、砂岩、ガラスビーズ、エーロゲル、キセロゲル、マイカ、クレイ、アルミナ、カオリン、微小球、中空ガラス球体、多孔質セラミック球体、石膏、不溶性塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、タルク、セラミック、ジルコニウム化合物、ゾノトラ石(結晶性ケイ酸カルシウムゲル)、軽量膨張クレイ、パーライト、蛭石、軽石、ゼオライト、鉱物、又は他の地質学的物質が包含される、請求項33記載の製品。
[請求項35]
製品であって、
繊維シートを備え、
少なくとも1部分の繊維シートが、繊維シートをより一層高い液体抵抗性にする生分解性組成物によって被覆又は含浸されており、
生分解性組成物が、
少なくとも生分解性重合体;及び
生分解性組成物の重量で少なくとも約30%の濃度において含有される少なくとも1種の無機充填材を含む、製品。
[請求項36]
生分解性組成物が約0℃よりも低いガラス転移温度を持つ少なくとも1種の軟質生分解性重合体を含む、請求項35記載の製品。
[請求項37]
生分解性組成物に更に少なくとも約10℃のガラス転移温度を持つ少なくとも1種の剛性生分解性重合体が含まれる、請求項36記載の製品。
[請求項38]
生分解性組成物にシリカが無機充填材として含まれる、請求項36記載の製品。
[請求項39]
製品がマイクロ波適用可能である、請求項38記載の製品。
[請求項40]
繊維シートが12−15lb/3000ft(およそ19.53−およそ24.41g/m)の薄葉紙からなる、請求項35記載の製品。
[請求項41]
繊維シートをより一層高い液体抵抗性にする方法であって、
繊維シートを提供する工程、及び
繊維シートをより一層高い液体抵抗性にするために、繊維シートを生分解性組成物によって被覆又は含浸する工程を含み、熱可塑性生分解性組成物が、
約0℃よりも低いガラス転移温度を持つ少なくとも1種の軟質熱可塑性生分解性重合体、及び
少なくとも約10℃のガラス転移温度を持つ少なくとも1種の剛性熱可塑性生分解性重合体を含む、方法。
[請求項42]
方法が、
初期流動性の組成物を含む熱可塑性溶融体が形成されるように熱可塑性生分解性組成物を加熱する工程、
繊維シートが被覆又は含浸されるように熱可塑性溶融体を少なくとも1方の側の繊維シートに適用する工程、及び
熱可塑性溶融体を硬化させる工程
を含む、請求項41記載の方法。
[請求項43]
ドクタブレードを用いるか、又は噴霧によって、熱可塑性溶融体を少なくとも1方の側の繊維シートに適用する、請求項42記載の方法。
[請求項44]
熱可塑性溶融体が少なくとも約40g/10分のメルトフローインデックスを持つ、請求項43記載の方法。
[請求項45]
熱可塑性溶融体が少なくとも約70g/10分のメルトフローインデックスを持つ、請求項43記載の方法。
[請求項46]
熱可塑性溶融体が少なくとも約100g/10分のメルトフローインデックスを持つ、請求項43記載の方法。
[請求項47]
方法が、
初期流動性の組成物を含む熱可塑性溶融体が形成されるように熱可塑性生分解性組成物を加熱する工程、
熱可塑性溶融体からシート又は薄膜を形成する工程、及び
シート又は薄膜を少なくとも1方の側の繊維シートに積層する工程
を含む、請求項41記載の方法。
[請求項48]
シート又は薄膜を少なくとも1種の流延、押出又はブロー成形によって形成する、請求項47記載の方法。
[請求項49]
シート又は薄膜を同時−押出によって繊維シートに対して積層する、請求項48記載の方法。
[請求項50]
繊維シートに、薄葉紙、紙又は板紙が包含される、請求項41記載の方法。
[請求項51]
繊維シートが12−15lb/3000ft(およそ19.53−およそ24.41g/m)の薄葉紙からなる、請求項50記載の方法。
【0009】
生分解性重合体を用いて処置し得る典型的な繊維シートには、これらのものに制限されないが、薄葉紙(tissue papers)、紙シート、フェルト、板紙、織物及び不織物が包含される。本発明の1種の局面では、比較的高い剛性を持つ少なくとも1種の熱可塑性生分解性重合体及び比較的高い柔軟性を持つ少なくとも1種の熱可塑性生分解性重合体を含む生分解性重合体ブレンドを用いて、繊維シートを被覆又は含浸させる。このようにして、本発明は、繊維シートの処置に用いるのに特に都合がよい(well-suited)、驚くべき相乗効果を所有するか、又は実証するブレンドを提供する。
【0010】
例えば、比較的剛性のBIOMAX(バイオマックス)重合体で、DuPont(デュポン社)による販売の修飾テレフタル酸ポリエチレン(modified polyethylene terephthalate)[PET(ペット)]、及び比較的軟質か、又は可とう性の重合体ECOFLEX(エコフレックス)で、BASF(バスフ社)による販売の脂肪族-芳香族共重合体、及び/又はEASTAR BIO(イースター・バイオ)で、Eastman Chemical(イーストマン・ケミカル社)による販売の脂肪族-芳香族共重合体を含有するブレンドは、単独で採用されるいずれかの生物高分子(バイオポリマ)よりも優れる強度及び伸び特性を持つことが示された。他の剛性生物高分子には、BAK(バク)、Bayer(バイエル社)による販売のポリエステルアミド、及びポリ乳酸(PLA) が包含される。
【0011】
BIOMAXは、比較的高いガラス転移温度を持ち、及び室温で高結晶性であるとして特徴付けられる。BIOMAXは薄膜(フィルム)又はシートに形成されるとき、極めて剛性か、又は脆い傾向がある。それは又乏しい伸び又は弾性を有する。一方、ECOFLEX及びEASTAR BIOは、比較的低いガラス転移温度を持ち、及び室温で比較的無定形又は非晶質であるとして特徴付けられ、そのすべてが高い柔軟性、弾性及び高い伸びに寄与する。それでも、種々のブレンドのBIOMAX及びECOFLEX及び/又はEASTAR BIOは、実際、それだけで、ECOFLEXよりも高い伸びを、並びに、それらだけで、いずれかのBIOMAX又はECOFLEXと比較して、より一層高い破壊応力(break stress)を見せる。
【0012】
繊維シートを処置するのに用いることができる他の重合体ブレンドには、制限されないが、ECOFLEX、PLA及び熱可塑性澱粉(TPS)のブレンド及びBAK(Bayerコーポレイションにより製造されるポリエステルアミド)及びTPSのブレンドが包含される。いずれの場合でも、比較的低いガラス転移温度を持つ生物高分子を、比較的高いガラス転移温度を持つ生物高分子とブレンドすることは、それだけで、各重合体の望ましい特徴を見せる重合体ブレンドを生じさせる。若干の場合、ブレンドは、より一層良好な特性を見せる一方で、各生物高分子の否定的な特性をそれだけで縮小させるか、又は最小にする。
【0013】
概して、比較的“剛性”か、又はあまり柔軟性でないとして特徴付けられ得る生分解性重合体には、少なくとも約10℃のガラス転移温度を持つ重合体が包含される。逆に、比較的“軟質”であるとして特徴付けられ得る生分解性重合体には、約0℃よりも低いガラス転移温度を持つ重合体が包含される。“剛性”の生分解性重合体は、好ましくは少なくとも約15℃、より一層好ましくは少なくとも約25℃、及び最も好ましくは少なくとも約35℃のガラス転移温度を持つ。“軟質”の生分解性重合体は、好ましくは約-4℃よりも低い、より一層好ましくは約-10℃よりも低い、特により一層好ましくは約-20℃よりも低い、及び最も好ましくは約-30℃よりも低いガラス転移温度を持つ。加えて、“剛性”重合体は、より一層高い結晶性である傾向があると共に、“軟質”重合体は、概してより一層低い結晶性であり、及び特に室温で、より一層高い無定形である。
【0014】
軟質及び剛性の生分解性重合体のブレンドを用いて、繊維シートを被覆又は含浸させるとき、比較的剛性の生分解性重合体は、繊維シート及び任意の充填材を除く生分解性重合体のブレンドの重量で約20%から約99%までの範囲の濃度を持つことができる。剛性生分解性重合体は、好ましくは、重合体ブレンドの重量で少なくとも約30%、より一層好ましくは重合体ブレンドの重量で少なくとも約40%、より一層特に好ましくは重合体ブレンドの重量で約50%であるが、これが含まれないで、これよりも多く、及び最も好ましくは重合体ブレンドの重量で約55%よりも多い濃度を持つ。
【0015】
軟質及び剛性の生分解性重合体のブレンドを用いて、繊維シートを被覆又は含浸させるとき、比較的軟質の生分解性重合体は、生分解性重合体のブレンドの重量で約1%から約80%までの範囲の濃度を持つことができる。軟質生分解性重合体は、好ましくは重合体ブレンドの重量で約70%までの、より一層好ましくは重合体ブレンドの重量で約60%までの、より一層特に好ましくは50%であるが、これが含まれないで、これよりも少なく、及び最も好ましくは重合体ブレンドの重量で約45%までの濃度を持つ。
【0016】
本発明の範囲内で繊維シートを処置するのに用いる生分解性重合体には、次のものに制限されないが、合成ポリエステル、発酵により作製される半-合成ポリエステル(例えば、PHB及びPHBV)、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、及びポリエステルウレタンが包含される。さらに、本発明の範囲内には、随意に、様々な天然の重合体及び澱粉、セルロース、他の多糖類及び蛋白質が含まれるか、又はこれらから導かれる重合体のような、それらの誘導体が包含される。さらに、無機充填材[例えば、シリカ(二酸化ケイ素)又は炭酸カルシウム]とブレンドされる単一の生分解性重合体を用いて繊維シートを処置し、より一層耐熱性である処置シートをもたらすことができる。
【0017】
本発明の範囲内には、無機及び有機充填材を組み込むことが含まれ、これにより、自己-付着性(粘着性、self-adheesion)が減少し、費用が低下し、及び繊維シート並びに得られるシートの処置に用いる生分解性重合体の弾性率(ヤング率)が増加する。無機充填材の例には、炭酸カルシウム、二酸化チタン、シリカ、酸化アルミニウム、タルク(滑石)、マイカ(雲母)、及び同様のものが包含される。有機充填材の例には、木粉、粉砕種子(ground seed)、セルロース粒子、重合体粒子、非ゼラチン化(ungelatinized)澱粉顆粒、及び同様のものが包含される。加えて、可塑剤を用いて望ましい軟化及び伸び特性を与えることができる。
【0018】
肉類、他の傷み易い食物品目、及び特に即席食物品目(例えば、サンドイッチ、バーガ及びデザート品)を封入するのに用いるラップのように、“ラップ”として用いるのが意図される繊維シートの場合、一旦折られ、包まれるか、又はそれ以外で望ましい方向性に操作され、そのようなラップが、多数のプラスチックシート及び薄膜(例えば、ポリエチレン)を用いて起こるような、自発的に開くか、又は包みが解けることがないよう、それらの方向性を実質的に維持する傾向があるように、良好な“永久折れ目性(dead-fold)”の特性を持つラップを提供するのが望ましいことがある。永久折れ目性は、シート又は薄膜が折り目(crease)、しわ又は他の曲がりを保持する能力の尺度である。それは、自らまとわりつく性質(self cling)、溶封、又は望ましい方向性を維持するための接着剤(adhesive)の使用と無関係に測定される。
【0019】
繊維シート自身が永久折り目性の特性を与えるか、又は本質的に所有するかもしれないが、比較的高いヤング率、好ましくは少なくとも約100MPa、より一層好ましくは少なくとも約150MPa、及び最も好ましくは少なくとも約200MPaを持つように、繊維シートを処置するのに用いる重合体及び重合体ブレンドを設計することができる。概して、剛性の生物高分子の濃度を高めることは、ヤング率及び得られる永久折れ目性の特性を増加させる傾向がある。しかし、ヤング率が、おおまかに永久折れ目性に対し関連するたけであり、及び重合体又は重合体ブレンドから形成されるシート又は薄膜の永久折れ目性の特性を規定し、又は予測するのに、あらゆる場合に役立つものでないことを理解すべきである。
【0020】
繊維シートを被覆又は含浸させるのに用いる重合体又は重合体ブレンド内に粒状充填材を含有させることは、得られるシートの永久折れ目性を増加させる別の手段である。永久折れ目性を増加させるのに用いるとき、粒状充填材は、典型的に、重合体又は重合体ブレンドの重量で少なくとも約5%、好ましくは少なくとも重量で約10%、より一層好ましくは少なくとも重量で約15%、より一層特に好ましくは少なくとも重量で約20%、及び最も好ましくは繊維シートを処置するのに用いる重合体又は重合体ブレンドの重量で少なくとも約30%の量で含有される。
【0021】
永久折れ目性を増加させる更に別の手段は、本発明に従う処置シートの表面積、又は“嵩手触り(bulk hand feel)”を増加させることである。これは、例えば、処置シートの概して平滑な、平坦な性質を崩壊させることによって、例えば、型押、クリンプ加工、キルチング、又はそれ以外の、単に完全に平滑な、平坦なシートであるよりはむしろ、規則的に間隔を空けて離れて(spaced-apart)か又は無作為の丘及び谷を持つように、シートを組織化すること(texturing)によって達成することができる。処置シートは、例えば、シートを1対の刻み付きか、又は型押-タイプのローラーを介して通すことによって組織化することができる。かかる組織化は、処置シートが、折れを受け、及び維持する能力を高め、従ってシートの永久折れ目性の特性が改善される。
【0022】
処置シートの表面積は又、繊維シートを被覆又は含浸させるのに用いる重合体又は重合体ブレンド内に粒状充填材を組み込むことによって増加させることができ、処置シート表面内の表面不規則性を形成させる。これは、例えば、その少なくとも1部分で、処置シートの1方又は双方の側の重合体又は重合体ブレンドの厚さに等しいか、又はそれよりも大きい粒度の直径(particle size diameter)を持つ充填材粒子を組み込むことによって達成することができる。
【0023】
食物を包むのに用いるとき、又は良好な永久折れ目性の特性が望まれるときには、本発明に従う処置シートは、少なくとも約50%の永久折れ目性(即ち、標準永久折れ目性試験を用いて折り目を付けられるとき、シート及び薄膜がそれらの元の折り目の少なくとも約50%を維持する)を持つように設計することができる。好ましくは、処置シートは、少なくとも約60%、より一層好ましくは少なくとも約70%、より一層特に好ましくは少なくとも約80%、及び最も特に好ましくは少なくとも約90%の永久折れ目性を持つ。本発明に従う処置繊維シートは、100%に近いか、又はそれに等しい永久折れ目性(即ち、折られるとき、折れを覆すのに十分な外力の適用が存在しないと、かかるシートが折れたままである)を持つことができる。比較のため、ポリエチレン[例えば、サンドイッチ又は厨芥袋(garbage bags)の作製用のもの]から作製されるシート及び薄膜は、典型的に0%の永久折れ目性を持つ。
【0024】
若干の場合、本発明に従う処置シートにとって、“呼吸(breath)”するのが望ましいことがある。上述のように、粒状充填材は、有機及び無機の双方で、弾性率及び/又は永久折れ目性を増加させるのに用いることができる。かかる充填材は又、繊維シートを被覆又は含浸するのに用いるシート又は薄膜が加工の間に伸びる時には、“空隙化(キャビテーション)”を有利に作り出す。空隙化は熱可塑性重合体画分(フラクション)が一軸又は二軸の方向のいずれかにおいて引っ張られるのときに発生し、及び充填材粒子は伸張の間に寸法を増加させる薄膜又はシートにおいて不連続性を作り出す。本質において、伸ばされた重合体の1部分は充填材粒子から引き離され、充填材粒子の近辺に小さな空洞(キャビティ)をもたらす。これは、それから、シート及び薄膜の著しく高い通気性及び蒸気透過性を招く。空隙化を作り出す無機充填材粒子の能力は、粒度の直径が重合体又は重合体ブレンドの厚さに近づくか、又はそれを超えるときに増加する。
【0025】
繊維シートを処置するために生分解性重合体を利用する別の利点は、生物高分子が概して、紙を処置するのに用いる従来のプラスチック又は蝋よりも、印刷を、著しく容易に受け入れ、及び保持することである。多くのプラスチック及び蝋は、極めて疎水性であり、及びインクが付着できることを化学的に受け入れる表面を提供するために、表面酸化されなければならない。一方で、生分解性重合体は典型的に、エステル、アミド及び/又はウレタン基のような酸素-含有部分の十分な画分を含んでおり、それにインクがより一層容易に付着することができる。
【0026】
本発明に従う処置シートは所望のように単一又は複数層を含むことができる。繊維シートは、1方又は双方の側、又はそれらの任意の部分上で含浸させるか、又は被覆することができる。複数の繊維シートは、1種又はそれよりも多い種類の層の生分解性重合体と、及び随意に1種又はそれよりも多い種類の補助シート(例えば、金属箔)と一緒に接合又は挟む(サンドイッチする)ことができる。繊維シートは、インフレート法(film blowing)、同時-押出、流延(注型、casting)、及びこの技術で既知の被覆技術によって被覆又は含浸させることができる。1具体例において、熱可塑性生分解性組成物を、溶融状態にまで加熱し、及び次いでドクタブレードを用いて繊維シート上に拡げる。別の具体例では、熱可塑性生分解性組成物を繊維シート上に噴霧する。繊維シートを処置するのに用いる熱可塑性生分解性重合体は処置シートを生じさせ、これは2種の端部を互いに接合し、大形袋(サック)、ポケット、パウチ、及び同様のものを形成するように溶封することができる。それらは既存のシート又は基材上に積層することができる。
【0027】
ポリエチレン又は他の非-生分解性(non-biodegradable)重合体に比較される生分解性重合体及び重合体ブレンドを用いる利点にもかかわらず、生分解性重合体は、ポリエチレンのような非-生分解性重合体と比較して、より一層著しく低いメルトフローインデックス(MFI)を持つ傾向があり、それは、生分解性重合体を繊維シートの上での拡散又は噴霧を難しくさせる。したがって、1種又はそれよりも多い種類の水、溶媒、又は可塑剤を組み込み、及び/又は生分解性重合体又は重合体ブレンドの温度を、その軟化温度又は範囲よりも十分に高いが、それを燃やすか、又はそれ以外で害を与えることがないように高め、そのMFIを増加させて被覆又は含浸処理を促進することが有利である場合がある。
【0028】
1種の好適例において、4-5lb/1000ft2(12-15lb/3000ft2)[約6.51-約8.14g/m2(約19.53-約24.41g/m2)、以下、1lb=453.592kg、1ft=0.3048m、1ft2=0.0929m2として換算]の薄葉紙を、生分解性重合体ブレンドによって処置し、それを液体による侵入に対してより一層抵抗性にする。勿論、本発明の範囲内には、任意の重量の紙又は薄葉紙、例えば、8lb/3000 ft2(約13.02g/m2)から60lb/3000ft2(約97.65g/m2)までの重量に及ぶ薄葉紙を利用することが確実に含まれる。繊維シートを生分解性重合体又は重合体ブレンドを用いて被覆又は含浸させる利益の1種は、シート又は薄膜を単にそれ自体で重合体ブレンドから作製するのに比べて、繊維シートの芯(コア)が得られる製品の熱安定性を高めることである。これは、ラップの場合に有益であり、その理由は、熱安定性が、それらのマイクロ波処理される能力を、その中に包まれる食物上での分解又は溶融を伴うことなく高めるからである。
【0029】
繊維シートを被覆又は含浸させるために用いる生分解性重合体又は重合体ブレンド内の無機充填材の量を増加させることは、又、得られるラップのマイクロ波適用可能性(microwaveability)を高める。マイクロ波適用可能(microwaveable)な生分解性重合体のラップを提供することは、ポリエチレンを用いて作製されるラップに対し、それらは生分解性でもマイクロ波処理に安全でもないものであるので、1種の改良である。
【0030】
本発明のこれらの及び他の利点及び特長は、次の記載及び添付の請求の範囲からより一層十分に明らかになるか、又は以下に説明するように本発明の実践によって学ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の上記に列記する、及び他の利点、及び目的が得られるように、添付図面に例証するその特定の具体例を参照して、上記簡潔に説明した本発明のより一層詳しい説明を与える。これらの図面が本発明の典型的な具体例しか描き出しておらず、及び従ってその範囲を制限すると考えるべきでないことを理解した上で、本発明を、追加の特異性及び添付図面の使用による詳細と共に記載し、及び説明する。
【0032】
【図1】種々のニート及びブレンドした重合体薄膜についての破断点伸びパーセント対適用歪速度のプロットである。
【図2】500mm/分の固定歪速度での種々のニート重合体及びブレンドした重合体薄膜の伸び割合対薄膜内のECOFLEX濃度のプロットである。
【図3】1000mm/分の固定歪速度での種々のニート重合体及びブレンドした重合体薄膜の伸び割合対薄膜内のECOFLEX濃度のプロットである。
【図4】種々のニート及びブレンドした重合体薄膜についての破壊応力対適用歪速度のプロットである。
【図5】500mm/分の固定歪速度での種々のニート重合体及びブレンドした重合体薄膜の破壊応力対薄膜内のECOFLEX濃度のプロットである。
【図6】1000mm/分の固定歪速度での種々のニート重合体及びブレンドした重合体薄膜の破壊応力対薄膜内のECOFLEX濃度のプロットである。
【図7】種々のニート重合体及びブレンドした重合体薄膜の水蒸気透過性係数(WVPC)の、薄膜内のECOFLEX濃度の関数としてのプロット、及び7.79×10-3g・cm/m2/d/mmHgのニートECOFLEX薄膜についての最も低い測定WVPCに基づく推定傾向線である。
【図8】種々のニート重合体及びブレンドした重合体薄膜の水蒸気透過性係数(WVPC)の、薄膜内のECOFLEX濃度の関数としてのプロット、及び42×10-3g・cm/m2/d/mmHgのニートECOFLEX薄膜についての最も高い測定WVPCに基づく推定傾向線である。
【図9】種々のニート重合体及びブレンドした重合体薄膜のモジュラス対薄膜内のECOFLEX濃度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(I.序論)
本発明は創意に富む生分解性重合体又は重合体ブレンドを用いて被覆又は含浸される繊維シートに関する。本発明に従う処置繊維シートは、通常のプラスチックが、環境中に廃棄されるときに、それらの分解されないという性質をこうむり、特別な処置の不存在下には容易に印刷できず、及び一般的に乏しい永久折れ目性の特性しか持たないのに対して、いろいろな意味において優れている。これら処置シートは、改善された強度、柔軟性、伸び、温度安定性、マイクロ波適用可能性、加工性、及び永久折れ目性を持つように設計することができる。
【0034】
本発明の1種の局面では、繊維シートを処置するのに用いる生分解性重合体ブレンドには、比較的高い剛性を持つ少なくとも1種の生物高分子及び比較的高い柔軟性を持つ少なくとも1種の生物高分子が含まれる。互いにブレンドするとき、各重合体から有益な特性を導き出す一方、別々に用いるときの各重合体の否定的な特性を相殺又は除去することが可能である。
【0035】
本発明の別の局面では、繊維シートを被覆するのに用いる1種又はそれよりも多い種類の生分解性重合体を、十分な量の無機充填材とブレンドし、得られる処置シートの熱安定性を著しく増加させる。繊維シート自体は、生分解性重合体を用いて形成されるシート及び薄膜に比べて著しく高い熱安定性を持つ傾向がある。無機充填材を生分解性重合体又は重合体ブレンドに添加することは(例えば、繊維シートを被覆又は含浸させるのに用いる生分解性重合体組成物の重量で少なくとも約30%の濃度において)、本発明に従う処置シートの熱安定性更に増加させる。食物を保護するのに用いるラップの場合、かかるラップはより一層良好に、熱い食物に耐えることができ、及びマイクロ波処理される。
【0036】
本発明に従う処置シートは、ラップ、袋物、パウチ、覆い、ラミネート被膜(積層コーティング)、カートン、ジャグ、カップ、板、ボウル、トレイ、プラッタ、蓋、ストロ、及び同様のもののような包装材料として用いるのに適切である。
【0037】
本発明に従い繊維シートを処置するのに用い得る生分解性重合体には、これらに制限されないが、合成ポリエステル、自然に導かれるポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、及びポリエステルウレタンが包含されるが、又、澱粉、セルロース、他の多糖類、及び蛋白質の重合体及び誘導体のような、様々な天然重合体及びそれらの誘導体が包含される。粒状充填材は、有機及び無機の双方とも、繊維シートを処置するのに用いる重合体中に組み込み、永久折れ目性の特性を改善し、嵩手触りを高め、空隙化を作り出し、費用を低減し、及び/又は処置シートの自己-付着性を減少させることができる。可塑剤を添加して、望ましい軟化及び伸びの特性を与えることができる。処置繊維シートは、随意に、型押、クリンプ加工、キルチング又はそれ以外で組織化をし、嵩手触り及び永久折れ目性を改善することができる。本発明に従う生物高分子及び生物高分子ブレンドは、従来のプラスチック又は蝋付け紙に比べて、より一層容易に印刷を受け入れ、及び保持するが、その理由は、それらが、典型的に、エステル、アミド、又はウレタン基のような、酸素-含有部分を含み、それにインクが容易に付着できるからである。
【0038】
用語“シート”及び“薄膜”は、熱可塑性物質及び包装技術において用いられるようなそれらの通例の意味を持つものとして理解すべきである。いずれにせよ、“シート”を構成するものと“薄膜”を構成するものとの間の区別が、製品の厚さによって大部分が定まるので、区別は幾分か恣意的である(即ち、若干の物品はシート及び薄膜の双方を構成することができる)。本発明に従う生分解性組成物を広範な様々の製品で、ラップ、包装又はそれ以外で包装食物又は他の固形基材を含み、広範な様々の厚さ(共に測定され及び計算される)を持つシート及び薄膜を含むものの製造に用いることができるので、すべての場合において、おそらく間違いなく“シート”を構成し得るもの対おそらく間違いなく“薄膜”を構成し得る物品の間を正確に識別することが、本開示の意図ではない。したがって、本開示が“シート及び薄膜”及び“シート又は薄膜”に言及するとき、その意図は、“シート”、“薄膜”又は双方をおそらく間違いなく構成し得る製品の全分野を示すことである。
【0039】
用語“重合体ブレンド”及び“生分解性重合体組成物”には、2種又はそれよりも多い種類の無充填の重合体及び/又は1種又はそれよりも多い種類の固形充填材をそれに添加された1種又はそれよりも多い種類の重合体が包含される。
【0040】
用語“マイクロ波適用可能”は、生分解性重合体組成物について、及びマイクロ波処理オーブン(電子レンジ)中に食物と共に配置され、及び食物上の処置シートから組成物が溶融又はそれ以外で移ることなく食物を加熱するようにマイクロ波処理することができる処置シートについて言及する。
(II.処置シート)
【0041】
本発明に従う処置シートには、繊維シートを、水、油又は溶媒のような液体に対してより一層抵抗性にするように、生分解性重合体ブレンドを用いて被覆又は含浸された任意の繊維シートが包含される。繊維シート及び本発明の範囲内の処置シートを製造するのに用い得る生分解性重合体ブレンドの特定の例を、次により一層詳細に議論する。
【0042】
(A. 繊維シート)
本発明の範囲内には、この技術で既知の種々の繊維シートを被覆又は含浸させることが含まれる。例には、広範な様々の薄葉紙、普通の紙、板紙、フェルト、織物及び不織物が包含される。1具体例では、繊維シートは12-15lb/3000ft2の薄葉紙からなる。12-15lb/3000ft2の薄葉紙を被覆又は含浸させることで、食物ラップとして用いるのに特に適切な処置シートがもたらされる。本発明の範囲内には、広範な可能な重量、例えば、8lb/3000ft2から60lb/3000ft2までを持つ薄葉紙及び紙を処置することが含まれることが理解される。
(B.生分解性重合体)
【0043】
本発明の範囲内で用い、繊維シートを被覆又は含浸させ得る生分解性重合体には、生きた有機体、光、空気、水及び前記のものの組合せの作用により分解されるものが包含される。かかる重合体には、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート及び同様のもののような、ある範囲の合成重合体が包含される。自然に導かれる半-合成ポリエステル(例えば、発酵から)も又用いることができる。生分解反応は典型的に、酵素によって触媒され(enzyme-catalyzed)、及び一般に、水分の存在下に起こる。蛋白質、セルロース及び澱粉のような、加水分解性連鎖を含む天然高分子は、一般に、微生物の加水分解性酵素によって生分解を受け易い。しかし、わずかではあるが、人造重合体も又、生分解性である。重合体の親水性/疎水性の特質は、それらの生分解可能性に著しく影響を及ぼし、より一層極性の重合体ほど、原則としてより一層容易に生分解可能であることを伴う。重合体の生分解可能性に影響を及ぼす他の特徴には、結晶化度、鎖の撓み性(chain flexibility)及び鎖長が包含される。
【0044】
生分解可能である他に、重合体又は重合体ブレンドに関し、剛性、柔軟性、耐水性、耐油性、耐溶媒性、強度、伸び、温度安定性、透湿性(moisture vapor transmission)、透気性、及び/又は永久折れ目性のような、一定の物理的特性を見せることは、重要であることが多い。特定の処置繊維シートの意図する適用は、特性が、特定の重合体、重合体ブレンド、又はそれらから製造される処置シートについて望ましい性能基準を見せるのに必要であることを決定付けることが多い。包装材料としての使用のために適切な処置シートを形成するのに用いるとき、望ましい性能基準には、伸び、永久折れ目性、強度、印刷適性、液体に対する不浸透性、通気性、温度安定性、及び同様のものが包含され得る。
【0045】
生分解性重合体の限られた数のために、所定の適用についての望ましい性能基準のすべてにか、又はほとんどでさえ、適合する1種の単一の重合体又は共重合体を特定するのは困難であることが多いか、又は不可能でさえある。これは特に、包装材料の領域で当てはまる。高いガラス転移温度(Tg)を持つ重合体は、もし不可能でない場合、薄膜までに大規模にブロー又は注型することが困難であることが多い。他方、極めて低いガラス転移温度を持つ重合体は、典型的に、比較的低い軟化点及び/又は融点を持ち、それは、それら重合体を、ブロッキング、又は粘着性(self adhesion)の傾向を伴わないでシート及び薄膜までに大量生産させるのを困難にする。さらに、かかるシート及び薄膜は、適切な強度、水蒸気遮断特性、高温安定性、及び/又はラップ又はラミネート被膜の製造におけるような、一定の適用のために適切であるべきモジュラス(弾性率)に欠けることがある。
【0046】
本発明の1種の局面では、繊維シートを被覆又は含浸させるのに適切な組成物が、1種又はそれ以上の種類の“剛性”の、又は高いガラス転移温度の重合体を、1種又はそれよりも多い種類の“軟質”の、又は低いガラス転移温度の重合体とブレンドすることにより得られることを見出した。本発明の別の局面では、重合体又は重合体ブレンドを、粒状充填材によって充填することができ、及び/又はそれらから作製される処置シート又は薄膜を表面組織化して、改善された永久折れ目性の特性を持つシートをもたらすことができる。
【0047】
剛性の、及び軟質の重合体のブレンドを使用することから導かれ得るという利点にかかわらず、特に、繊維シートを被覆するのに用いる薄膜又はシートを押出又はブロー成形(blowing)するとき、ドクタブレード又は吹付塗(spray coating)を用いる塗布のように、押出又はインフレートフィルム(blown film)又はシートの形成を求めない被覆方法が存在することが理解される。かかる場合、重合体ブレンドを用いることは必要でないことがある。しかし、水、溶媒、又は可塑剤をMFIの増加のために用い、被覆又は含浸処理を促進するのが望ましいことがある。得られる処置シートの熱安定性を高めるためには、十分な量の無機充填材(例えば、シリカ又は石灰石)を組み込むことが望ましいかもしれない。食物ラップの場合、熱安定性を高めることは処置シートのマイクロ波適用可能性を増加させる。
(1.剛性重合体)
【0048】
“剛性”及び“軟質”の重合体のような用語の使用は幾分恣意的であっても、かかる分類は、望ましい性能基準を持つ重合体ブレンドが得られるように互いにブレンドされる重合体を定めるときに有用である。概して、比較的“剛性”、又はあまり柔軟性でないとして特徴付けられ得るそれらの重合体には、典型的には、少なくとも約10℃のガラス転移温度を持つ重合体が包含される。剛性重合体は好ましくは、少なくとも約15℃の、より一層好ましくは少なくとも約25℃の、及び最も好ましくは少なくとも約35℃のガラス転移温度を持つ。上述の温度は、“ガラス転移温度”が必ずしも思慮深い温度ではなく、重合体が、ガラス状の、及びより一層脆いものから、より一層柔らかく、及び柔軟性の物質にまで変化する温度範囲内であることが多いという事実を考慮しようとする。
【0049】
ガラス転移温度は、重合体の融点から区別されるべきであり、そこでは、又はそれを超えては、熱可塑性重合体が著しい破裂を伴わずに可塑性及び変形可能になる。重合体のガラス転移温度(Tg)とその融点(Tm)の間に正の相関があることが多いが、これはすべての重合体に関して厳密なものではない。若干の場合には、TgとTmの間の相違が大きくなることがある。他の場合には、それは比較的小さいかもしれない。しかし、より一層剛性の重合体の融点が、典型的には、より一層軟質の重合体の融点よりも大きくなる場合が一般的である。
【0050】
好ましい“剛性”重合体には、制限されないが、修飾されたポリエチレンテレフタレート(Du Pontにより製造されるもののようなもの)、ポリエステルアミド(Bayerにより製造されるもののようなもの)、ポリ乳酸-系重合体[Cargill-Dow Polymers(カーギル-ダウ・ポリマー社)及びDianippon(Dainippon, 大日本インキ株式会社)により製造されるもののようなもの]、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びポリカプロラクトンに基づく三元共重合体[Mitsui Chemicals(三井化学株式会社)により製造されるもののようなもの]、ポリアルキレン炭酸(polyalkylene carbonate)[PAC polymer(PAC・ポリマー社)により製造されるもののようなもの]、及びポリヒドロキ酪酸シ(polyhydroxybutyrate)(PHB)が包含される。
【0051】
目下の好適な剛性生物高分子には、DuPontにより製造され、及び商品名BIOMAXの下で販売される修飾されたポリエチレンテレフタレート(PET)重合体のある範囲が包含される。DuPont の種々の修飾PET重合体は、Tietz(ティーツェ)へのU.S. Patent(米国特許)第5,053,482号、Gallagher(ギャラガー)等へのU.S. Patent第5,097,004号、TietzへのU.S. Patent第5,097,005号、Gallagher等へのU.S. Patent第5,171,308号、Gallagher等へのU.S. Patent第5,219,646号、及びRomesser(ロメッサー)等へのU.S. Patent第5,295,985号により一層詳細に記述されている。“剛性”重合体を開示するために、上述の特許を参考として本明細書において開示する。
【0052】
概して、DuPontの修飾PET重合体は、テレフタル酸塩の成分及び脂肪性の成分の、エチレングリコール、ジエチレングリコール、酸化トリエチレン、ポリエチレングリコール、低級アルカンジオール、分枝したもの及び分枝してないものの双方、及び上記のものの誘導体のような2種又はそれよりも多い種類の異なるジオールから導かれる2種又はそれよりも多い種類の異なる脂肪性単位の統計的分布を含む脂肪性成分との交互単位を含むとして特徴付けることができる。脂肪性単位の1部分は又、アジピン酸のような、脂肪族二塩基酸から導くことができる。加えて、繰り返しのテレフタル酸塩の単位内のフェニレン基の画分は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩基を用いてスルホン化及び中和することができる。修飾PET重合体の脂肪性部分並びに統計的に十分な量のスルホン化テレフタル酸塩単位の双方は、BIOMAX重合体の生分解性に著しく寄与する。
【0053】
若干のBIOMAX等級の重合体は200-208℃の融点及び40-60℃のガラス転移温度を持つ。BIOMAX 6926はかかる等級の1種のものである。それは、より一層軟質の重合体とブレンドするとき、シート及び薄膜に容易に形成され得る混合物をもたらす、比較的強く、及び剛性の重合体である。加えてか、又はその代わりに、1種又はそれよりも多い種類の粒状充填材を含有させ、本明細書において更に十分に説明する望ましい特性を与えることができる。
【0054】
概して、修飾されたポリエチレンテレフタレートは、“剛性”の生分解性重合体として用いるのに適切な特性を持つと期待され、本質的には、次の一般式:
-[-C(O)-R-C(O)-OGO-]a-[-C(O)-Q-O-]b-
を持つ反復構造単位からなり、
式中、Rの約40モル%までは、1種の化学結合、及び1種又はそれよりも多い種類の二価の、非-芳香族性の、C1-C10のヒドロカルビレン遊離基からなる群より選ばれ、及び残余のRは少なくとも約85%のモル%のp-フェニレン遊離基であり、
式中、Gには、
-(CH2)2-0-(CH2)2-及び-(CH2)2-0-(CH2)2-O-(CH2)2-:
からなる群より選ばれる、0から約30モル%までのポリエチレンエーテル遊離基が包含され、及び残余のGは、少なくとも約250(数平均)の分子量のポリアルキレンエーテル遊離基、及び-(CH2)2-、-(CH2)3-、及び-(CH2)4-遊離基からなる群より選ばれ、
式中、Qは、式:
HO[-C(O)-Q-O-]xH
のヒドロキシ酸から導かれ、
式中、xは整数であり、及びかかるヒドロキシ酸はそれらの分解温度よりも低い少なくとも5℃の融点を持ち、及びQは、1種の化学結合及びヒドロカルビレン遊離基-(CH2)n-、-C(R')H-、及び-C(R')HCH2-からなる群より選ばれ、ここで、nは1から5までの整数であり、ここで、R'は-CH3及び-CH2CH3からなる群より選ばれ、及び式中、“a”及び“b”は重合体のモル分率であり、及びモル分率“a”は0.6から1まででよく、及びこれに対して、モル分率“b”は0から0.4まででよく、及び式中、約0.1から約15モル%まで、好ましくは約0.1から約2.5モル%までの重合体は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホ基、特に約1.5から約2モル%までのかかる基を含む。
【0055】
本発明に従う重合体ブレンドを製造する際に用い得る別の剛性生物高分子には、ポリ乳酸(PLA)が包含される。ポリ乳酸は典型的に、約59℃のガラス転移温度及び約178℃の融点を持つ。PLAは低い伸びを持ち、及び極めて硬質である。それは、射出成形、押出、注型、熱成形することができるか、又は紡糸した(spun)か、又は溶融ブローした(melt-blown)繊維として用いて不織物商品を生産することができる、強熱可塑性(strong thermoplastic)材料である。
【0056】
PLAに基づくか、又はそれを含有する重合体は、1970年に医学上の縫合線として最初に商用用途を見つけられた。乳酸の高重合体(Mn=50,000-110,000)は、通常土壌細菌によって破壊され得る有用な生成物に加工することができる強熱可塑性樹脂である。PLAの潜在的な用途には、包装用の紙塗被(食物及び飲料カートン)、即席食物用のプラスチックフォーム、マイクロ波適用可能な容器、及び使い捨ておむつ又は庭塵(yard waste)袋物のような他の消費者製品が包含される。PLAは単独重合体であることができ、又はそれは、グリコリド、ラクトン又は他の単量体と共重合されてよい。PLA-系重合体の1種の特に魅力的な特長は、それらが更新可能な農産物から得られることである。
【0057】
乳酸が商業規模の単一工程において高重合体に直接重合し難いので、ほとんどの会社は2段-工程の処理を採用する。乳酸は、まず、水の除去によって、3000より少ない分子量を伴う線状鎖にオリゴマ形成される。オリゴマは次いで、ラクチドにまで解重合され、それは、2種の縮合乳酸分子からなる環状二量体である。この6員環を精製し、及び開環重合にかけて、50,000-110,000の分子量を有するポリ乳酸を生成する。
【0058】
乳酸は非対称性の炭素原子を持つので、それはいくつかの異性体の形態で存在する。商業上最も普通に販売される乳酸は、L-(+)-乳酸及びD-(-)-乳酸の等量部分(equal parts)を含み、及び従って光学的に不活性であり、旋光性を有さない。ラセミ混合物はDL-乳酸と称される。
【0059】
創意に富む重合体ブレンド内で用い得る別の剛性重合体は、CPLAとして既知のものであり、これはPLAの誘導体で、及びDianippon Ink(Dainippon, 大日本インキ株式会社)により販売される。2種のクラスのCPLAが販売され、及び“CPLA hard(ハード)”及び“CPLA soft(ソフト)”と称され、それらは双方共に、その用語が本明細書において規定されるように、“剛性重合体”からなる。CPLA hardは60℃のガラス転移温度を持ち、一方CPLA softは51℃のガラス転移温度を持つ。
【0060】
Bayer株式会社は名称BAKの下で販売するポリエステルアミドを製造する。Bayerにより製造されるポリエステルアミドは、Timmermann(ティンマーマン)等へのU.S. Patent第5,644,020号においてより一層十分に記述されている。生分解性重合体で、少なくともその若干のものが“剛性”重合体を構成するものを開示するために、上記特許を本明細書において参考として組み込む。BAKの1種の形態は、アジピン酸、1,4-ブタンジオール、及び6-アミノカプロン酸から調製される。BAK 1095は、22,700のMn及び69,700のMWを持つポリエステルアミドで、及びそれは芳香族性成分を含むが、これは125℃の融点を持つ。BAK 2195は175℃の融点を持つ。BAK 1095及びBAK 2195のガラス転移温度は測定し難いが、その理由は、優れた特性がBAKを軟質重合体とブレンドすることにより得られ得るという意味において、BAKが剛性重合体のように振る舞うと思われるからであり、本発明者は、本質的には、BAK重合体のガラス転移温度が少なくとも約10℃であると考える。本明細書及び請求の範囲の意味及び範囲の理解のために、BAKのようなポリエステルアミド、並びにBAKのように振る舞い、及び“剛性”重合体として用いることができる他のものが、少なくとも10℃のガラス(転移)温度を持つものとする。
【0061】
Mitsui Chemicals, Inc.は、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド及びポリカプロラクトンを、互いに縮合し、それから導かれる単位を含む三元共重合体を製造する。このように、この重合体は脂肪族重合体であり、及びPLA/PGA/PCLの三元共重合体として特徴付けることができる。この重合体の3種の等級は、入手可能な、H100J、S100及びT100である。H100J等級のPLA/PGA/PCLの三元共重合体は、74℃のガラス転移温度及び173℃の融点を持つとして分析された。
【0062】
PAC Polymers Inc.は、10-28℃のガラス転移温度範囲を持つ炭酸ポリエチレン(PEC)を製造する。PECは本発明のための“剛性”の重合体である。
【0063】
ポリヒドロキシ酪酸(PHBs)は、剛性の重合体か、又はそれらの分子量、それらが連鎖延長剤及び/又は枝分れ薬剤を用いて修飾されているかどうか、それらが別の重合体と共重合されているかどうかに依存して、及び全体的な熱可塑性組成物内の他の成分に依存して、軟質の重合体のいずれかとして役割を果すことができる。この意味で、PHBsは生物高分子間で独特であり、及びラップ、ラミネート被膜、包装材料、及び同様のものの作製において使用するためには特別に興味深いものであり得る。
【0064】
以下により一層十分に議論するように、特定の重合体又は重合体ブレンドから作製されるシート及び薄膜の永久折れ目性の特性を増加させるために、天然のか、又は乾燥したゼラチン化澱粉を、粒状充填材として用いることができる。しかし、澱粉が熱可塑性にはなるが、それらの結晶化度の実質的な部分が保持される範囲まで、かかる澱粉は“軟質”の重合体よりはむしろ、“剛性”のものとして役割を果すことができる。
(2.軟質重合体)
【0065】
生物高分子で、概して、“軟質”、又はあまり硬質でないものとして特徴付けられ得るものには、典型的に、約0℃より低いガラス転移温度を持つ重合体が包含される。本発明の範囲内の軟質生物高分子は、典型的に、約0℃よりも低い、好ましくは約-4℃よりも低い、より一層好ましくは約-10℃よりも低い、より一層特に好ましくは約-20℃よりも低い、及び最も好ましくは約-30℃よりも低いガラス転移温度を持つ。上記温度は、“軟質”重合体の“ガラス転移温度”が必ずしも思慮深い温度ではないけれども、ある範囲の温度を含むことが多いという事実を考慮しようとする。
【0066】
本発明の範囲内の好ましい“軟質”の生物高分子には、制限されないが、脂肪族-芳香族のコポリエステル(共重合ポリエステル)(BASF及びEastman Chemicalにより製造されるもののようなもの)、少なくとも5個の炭素原子を持つ繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステル、例えば、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシ吉草酸の共重合体及びポリカプロラクトン[Daicel Chemical(ダイセル・ケミカル社)、Monsanto(モンサント社)、Solvay(ソルベー社)、及びUnion Carbide(ユニオン・カーバイド社)により製造されるもののようなもの]、及びコハク酸塩-系脂肪族重合体、例えば、ポリブチレンコハク酸(PBS) 、ポリブチレンコハク酸アジピン酸(PBSA)、及びポリエチレンコハク酸(PES)[Showa High Polymer(昭和高分子株式会社)により製造されるもののようなもの]が包含される。
【0067】
U.S. Patent第5,817,721号、第5,863,991号、第5,880,220号、第5,889,135号、第5,936,045号、第6,018,004号、第6,046,248号、第6,111,058号、第6,114,042号、第6,201,034号、第6,258,924号、第6,297,347号、第6,303,677号、第6,353,084号は、すべてがWarzelhan(ウォーツェルハン)等へのもので、及び BASFに譲渡されたものであるが、本発明の範囲内のある範囲の脂肪族-芳香族コポリエステルを開示し、Yamamoto(ヤマモト)等へのU.S. Patent第6,103,058号及びKowitz(コウィッツ)等へのU.S. Patent第6,120,895号のようである。同様に、U.S. Patent第5,292,783号、第5,446,079号、第5,559,171号、第5,580,911号、第5,599,858号及び第5,900,322号は、すべてがBuchanan(ブキャナン)等へのもので、及びEastman Chemicalに譲渡されたもので、並びにU.S. Patent第6,020,393号及び第6,922,829号は、Khemani(ケーマイ)へのもので、又Eastman Chemicalに譲渡されたものであり、本発明の範囲内の脂肪族-芳香族コポリエステルを開示する。“軟質”重合体を開示するために、上記特許を本明細書において参考として組み込む。
【0068】
重合体ブレンドの製造において用い得る好ましい“軟質”重合体には、BASFにより製造され、及び商品名ECOFLEXの下で販売される脂肪族-芳香族コポリエステルが包含される。BASFにより製造される脂肪族-芳香族コポリエステルには、1,4-ブタンジオール、アジピン酸、及びテレフタル酸ジメチル(DMT)から導かれるランダムコポリエステル(statistical copolyester)が包含される。若干の場合、ジイソシアネートを鎖長延長剤(chain lengthener)として用いる。枝分れ薬剤(Branching agents)を又、線状よりもむしろ、分枝した共重合体をもたらすために用いることができる。
【0069】
ジオール及び二塩基酸のような、脂肪性の単量体を、ジオール及び二塩基酸(例えば、テレフタル酸又はDMTのようなジエステル誘導体)のような芳香族性の単量体と共重合させることは、脂肪族ポリエステルの性能特性を改良するための1種の手段である。しかしながら、脂肪族-芳香族コポリエステルの完全な生分解性に関して、その産業内で問題が生じたのであるが、その理由は、PETのような芳香族性のコポリエステルが微細生物の攻撃に対し抵抗性であることが既知だからである。それでもなお、研究者は脂肪族-芳香族コポリエステルが実際には生分解性であり、及びこれらのコポリエステルの生分解可能性が芳香族性の配列(aromatic sequence)の長さと関連していることを発見した。比較的長い芳香族性の配列を有するブロックコポリエステルは、より一層多く中断された芳香族性の配列を持つランダムコポリエステルと比べ、微生物によってあまり急速に分解されない。薄膜厚は又、1種の因子であり、より一層厚い薄膜は、それらの減少した表面対容量比のために、より一層薄い薄膜よりも、他のすべての条件が等しいとして、より一層緩徐にしか分解されない。目下、BASFにより名称ECOFLEX S BX 7000の下で販売される重合体は、-33℃のガラス転移温度及び105-115℃の融解範囲を持つ。
【0070】
別の“軟質”の脂肪族-芳香族コポリエステルは、Eastman Chemical Companyにより製造され、及び商品名EASTAR BIOの下で販売されている。Eastmanにより製造される脂肪族-芳香族コポリエステルは、1,4-ブタンジオール、アジピン酸、及びテレフタル酸ジメチル(DMT)から導かれるランダム共重合体である。1種の特定の等級のEASTAR BIOは、EASTAR BIO 14766として知られ、-33℃のガラス転移温度及び112℃の融点を持つ。それは、19MPaの機械方向(縦方向)における破断(切断)点引張強さ、600%の破断点伸び、及び97MPa(タンジェント)の引張弾性率を持つ。それは282gのElmendorf(エルメンドルフ)引裂強さを持つ。
【0071】
ポリカプロラクトン(PCL)は、比較的低い融点及び極めて低いガラス転移温度を持つ生分解性脂肪族ポリエステルである。それは、それがε-カプロラクトンを重合することで形成されるのでそう命名される。PCLのガラス転移温度は-60℃であり、及びその融点は60℃に過ぎない。このため、PCL及び低融点を有する他の類似の脂肪族ポリエステルは、インフレート法及び吹込成形(blow molding)のような従来の技術によって処理するのが困難である。PCLから作製される薄膜は、押し出したままで粘着性であり、及び130℃にわたって低溶融強度を持つ。さらに、この重合体の緩徐な結晶化は、それらの特性を経時的に変化させる。PCLと他の重合体とのブレンドはPCLの加工性を改善する。1種の通常のPCLはTONE(トーン)であり、Union Carbideにより製造される。PCLの他の製造者には、Daicel Chemical, Ltd.及びSolvayが包含される。PCLの使用は確かに本発明の範囲内であるが、脂肪族-芳香族ポリエステルが全体的により一層良好な性能を与えるので、目下、これよりもあまり好ましくない軟質生物高分子である。
【0072】
ε-カプロラクトンはその反応性によって特徴付けられる1種の7員環化合物である。開裂は通常、カルボニル基にて起こる。ε-カプロラクトンは典型的に、シクロヘキサノンから過酸化処理によって作製される。PCLはε-カプロラクトンを重合することによって作製されるポリエステルである。高分子量のPCLは、アルキルアルミニウム、Ia、IIa、IIb又はIIIa族のアルキル金属のような有機金属組成物、グリニャール試薬、II族のジアルキル金属、カルシウム又は他の金属アミド又はアルキルアミド、アルカリ土類ヘキサモニエート(hexamoniates)の反応生成物、アルカリ酸化物及びアセトニトリル、アルミニウムトリアルコキシド、アルカリ土類アルミニウム又は水素化ホウ素、アルカリ金属又は水素化アルカリ土類、又はアルカリ金属単独のような、広範な様々の触媒の影響下に調製することができる。PCLは典型的に、脂肪族ジオール(HO-R-OH)を用いた開始(誘導)によって調製され、これが末端基(terminal end group)を形成する。
【0073】
創意に富む重合体ブレンドを製造する際に用い得る別の“軟質”脂肪族ポリエステルはポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシ吉草酸の共重合体(PHBV)であり、これは微細生物-誘導発酵処理を用いて製造される。1種のかかるPHBVコポリエステルは、Monsanto Companyによって製造され、約0℃のガラス転移温度及び約170℃の融点を持つ。できるだけ、PHBVコポリエステルは、約-5℃よりも低いガラス転移温度を持つように調剤され、及び/又は修飾されるべきである
【0074】
PHBVを製造するのに用いる発酵処理では、単一の細菌種がコーン及びポテトの供給原料をポリヒドロキシ酪酸成分及びヒドロキシ吉草酸成分の共重合体に転化する。供給原料を操作することにより、2種の重合体セグメントの割合を変えて、異なる等級の材料を作製することができる。すべての等級は、防湿性でありながら、まだ十分に生分解性である。PHBVの世界的生産者は、Monsantoで、そのBIOPOL(バイオポール)生産物を有し、及びMETABOLIX(メタボリックス社)で、その種々の等級のポリヒドロキシ-アルカノアート(PHAs)を有する。ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)は又、“軟質”重合体の1例である。
【0075】
前述のように、ポリヒドロキシ酪酸(PHBs)は、剛性の重合体か、又はそれらの分子量、それらが連鎖延長剤及び/又は枝分れ薬剤を用いて修飾されているかどうか、それらが別の重合体と共重合されているかどうかに依存して、及び全体的な熱可塑性組成物内の他の成分に依存して、軟質の重合体のいずれかとして役割を果すことができる。この意味で、PHBsは生物高分子間で独特であり、及びラップ、ラミネート被膜、包装材料、及び同様のものの作製において使用するためには特別に興味深いものであり得る。
【0076】
“軟質”の脂肪族ポリエステルの別のクラスは、ポリブチレンコハク酸(PBS)、ポリブチレンコハク酸アジピン酸(PBSA)、及びポリエチレンコハク酸(PES)のようなコハク酸塩単位の繰り返しに基づく。これらのコハク酸塩-系脂肪族ポリエステルの各々は、Showa High Polymer Ltd.により製造され、及び商品名BIONELLE(BIONOLLE,ビオノーレ)の下で販売される。PBS(Bionolle 1001)は、-30℃のガラス転移温度及び114℃の融点を持つ。PBSA(Bionolle 3001)は、-35℃のガラス転移温度及び95℃の融点を持つ。PES(Bionolle 6000)は、-4℃のガラス転移温度及び102℃の融点を持つ。
【0077】
BIONOLLEについての標的用途には、薄膜、シート、フィラメント、発泡成形(foam-molded)生産物及び発泡膨張(foam-expanded)生産物が包含される。BIONOLLEは、堆肥中、湿潤土中、活性化スラッジを伴う水中、及び海水中で生分解可能である。PBSAは堆肥環境において迅速に分解し、それはセルロースに類似しているが、PBSはあまり迅速には分解せず、及び生分解の点において新聞紙に類似する。
【0078】
BIONOLLEは、高分子量及び有用な物理特性を有する琥珀酸脂肪族ポリエステルを調製する特許化した2段-工程の処理に従って製造される。第1工程では、低分子量ヒドロキシ-末端脂肪族ポリエステルプレポリマを、グリコール及び脂肪族ジカルボン酸から作製する。この重合は、チタン酸テトライソプロピル、テトライソプロポキシチタン、ジブトキシジアセトアセトキシチタン又はチタン酸テトラブチルのようなチタン触媒によって触媒される。第2工程では、高分子量ポリエステルを、ジイソシアン酸ヘキサメチレン(HMDI)のようなジイソシアネートをポリエステルプレポリマと反応させることによって作製する。
【0079】
Showaは、PBSを、プレポリマを形成するための縮合反応において1,4-ブタンジオールを琥珀酸と先ず反応させ、及び次いでプレポリマを連鎖延長剤としてのHMDIと反応させることによって製造する。
【0080】
PBSA共重合体は、1,4-ブタンジオール、琥珀酸及びアジピン酸を先ず縮合してプレポリマを形成し、及び次いでプレポリマを連鎖延長剤としてのHMDIと反応させることによって製造される。
【0081】
PES単独重合体は、エチレングリコール及び琥珀酸を反応させること、及び連鎖延長剤としてのHMDI又はジイソシアン酸ジフェニルメタンを用いることによって調製される。
【0082】
琥珀酸塩-系脂肪族ポリエステルは又、Mitsui Toatsu(三井東圧化学、三井化学株式会社)、Nippon Shokubai(日本触媒株式会社)、Cheil Synthetics(ジェイル・シンセティックス社)、Eastman Chemical、及びSunkyon Industries(サンキョン・インダストリーズ)によって製造される。
【0083】
最後に、修飾澱粉又は水でガラス化され及び次いで乾燥された澱粉のような、澱粉は、高ガラス転移温度(即ち、70〜85℃)を持ち、及び室温で極めて結晶性であることで知られているが、その結晶化度が大幅に低減されたか、又は完全に破壊された澱粉の一定の形態は、非常に低いガラス転移温度を持ち、及び実際、本発明の範囲内の“軟質”生分解性重合体を構成する。より一層十分に以下に議論するように、天然のか、又は乾燥させたゼラチン化した澱粉を、特定の重合体又は重合体ブレンドから作製するシート又は薄膜の永久折れ目性の特性を高めるために、粒状充填材として用いることができる。さらに、澱粉が熱可塑性になるが、それらの結晶化度の実質的な部分が保持される範囲まで、かかる澱粉は“軟質”のものよりはむしろ、“剛性”の重合体として役割を果すことができる。それでも、“軟質”の重合体として振る舞うことができる熱可塑性澱粉重合体のある範囲が存在する。
【0084】
例えば、TomkaへのU.S.Patent第5,362,777号は画期的な特許であり、及び熱可塑性的に加工可能な(thermoplastically processable)澱粉(TPS)として知られるものを製造する最初の試みであった。TPSは、天然のか、又は修飾された澱粉を、適切な高沸点可塑剤(グリセリン及びソルビトールのようなもの)の存在下に、澱粉が、結晶化度を殆どか、又は全く持たず、低いガラス転移温度を持ち、及び極めて少ない[5%より少ない、好ましくはベント後、及び状態調節(コンディショニング)に先立って溶融状態の間に約1重量%より少ない]水しか持たないような方法で混合及び加熱することによって形成される熱可塑性澱粉重合体として特徴付けられる。本明細書において開示する剛性重合体のような、適切な疎水性重合体、例えば、BAKのようなポリエステルアミドとブレンドするとき、TPSは、-60℃ほど低い、及び典型的には約-20℃より低いガラス転移温度を持つことができる。
【0085】
本発明の範囲内には、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール及び同様のもののような可塑剤を含有する澱粉に基づく熱可塑性重合体が包含されることがあるが、好ましくは、食物生産物に接触する包装材料の製造のときに、食物中に潜在的に拡散し得るような、可塑剤を用いないで作製される熱可塑性の澱粉重合体を利用する。食物ラップの作製の際に用いる好適な熱可塑性澱粉重合体は、自然な含水量の天然澱粉顆粒を有利に利用して、最初に顆粒状構造を破壊し、及び天然澱粉を溶融することができる。しかる後、溶融澱粉を、1種又はそれよりも多い種類の合成生物高分子と一緒にブレンドし、及び混合物をベントすることによって乾燥させて、最終的な重合体ブレンドをもたらすことができる。高沸点の液状可塑剤を用いて作製される熱可塑性澱粉重合体を使用し、食物に接触することが意図される食物ラップ又は他のシート又は薄膜を作製するのが望まれる場合、好ましくは、かかる熱可塑性澱粉重合体の量は、重合体混合物の、任意の固形充填材を除く重量によって、10%未満までに制限される。
(C.他の成分)
【0086】
望ましい特性を与えるために、生分解性重合体ブレンド内に含まれ得る多くの任意成分がある。これらには、制限されないが、可塑剤、潤滑剤、充填材、天然重合体及び生分解性でない重合体が包含される。
(1.可塑剤及び潤滑剤)
【0087】
押出及び/又はインフレート法、塗布又は噴霧のような、加工性、又は最終的な機械的特性、比較的剛性な特定の重合体ブレンドを改良するために、可塑剤及び潤滑剤を随意に添加することができる。より一層剛性の重合体ブレンドは、高温安定性、強度、より一層低い伸び、より一層高い永久折れ目性、加工中及びその後の“ブロッキング”に対する耐性のような、他の性能基準によって決定付けられ得る。かかる場合、可塑剤は、重合体ブレンドが一定の加工性及び/又は性能基準を満たすようにすることができる。
【0088】
生分解性重合体又は重合体ブレンドが繊維シート上に拡げられるか、又は噴霧される場合、溶融重合体又は重合体ブレンドのメルトフローインデックス(MFI)を高めるために、可塑剤を用いるのが有利であり得る。溶融重合体又は重合体ブレンドのMFIを増加させることは高速被覆を促進する。概して、一定の生分解性重合体がそれらの軟化点を超えて加熱されるとき、それらは約2-10g/10分の間のMFIを持つ。MFIを好ましくは少なくとも約40g/10分にまで、より一層好ましくは少なくとも約70g/10分にまで、及び最も好ましくは少なくとも約100g/10分にまで増加させることは、溶融生分解性重合体ブレンドの塗布又は噴霧を大いに促進する。
【0089】
本発明の範囲内の適切な可塑剤は、特に、ラップ及び食物に接触する他の包装材料を製造する際に用いることが意図される重合体ブレンドに組み込まれるとき、少なくともより一層少量で、摂取しても安全であるのが好ましい。
【0090】
本発明に従って用い得る模範的な可塑剤には、制限されないが、ダイズ油、ヒマシ油、TWEEN20、TWEEN40、TWEEN60、TWEEN80、TWEEN85、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、PEG、PEGの誘導体、N,N-エチレンビス-ステアルアミド、N,N-エチレンビスオレアミド、ポリ(1,6-アジピン酸ヘキサメチレン)のような重合体可塑剤、及び他の適合性低分子量重合体が包含される。
【0091】
潤滑剤の例には、脂肪酸の塩が包含され、その例はステアリン酸マグネシウムである。
【0092】
水又は揮発性溶媒のような、被覆処理中又はその後除去し得る揮発性可塑剤を用い、高速被覆を促進することができる。用い得る揮発性溶媒で、好ましくは、かかる溶媒の回収及び再利用によるものの例としては、制限されないが、クロロホルム、塩化メチレン、他の塩素化炭化水素、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、他のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、他のケトン、及び同様のものが包含される。
【0093】
例えば、200ppmの水を含むことは、溶融生分解性重合体組成物のMFIを4g/10分から約40 g/10 分にまで増加させることが見出された。本明細書に記載の多くの生分解性重合体は、それらが室温で水に曝されるとき、溶解又は分解されないという意味で“疎水性”であるが、それらは、溶融状態にまで加熱される間、かかる重合体の水に対する親和性を著しく高める極性部分を含んでいる。したがって、室温にまで冷却されるときにそれ以外で疎水性である生分解性重合体の溶融体内に、若干の量の水をブレンドすることは可能である。
(2.固形充填材)
【0094】
随意に、以下のものに制限されないが、ヤング率、 永久折れ目性特性、剛さ(rigidity)、通気性、熱安定性、マイクロ波適用可能性、及び絶縁能力の増加を含む多くの理由のために、及び費用及び重合体ブレンドの“ブロック”又は加工の間の自己-付着(self-adhere)に対する傾向を減少させるために、粒状充填材を添加することができる。他の充填材で、高いアスペクト比を持つ繊維のようなものは、強度、破壊エネルギー及び本発明に従うシート及び薄膜の永久折れ目性の特性を高めることができる。概して、本発明の範囲内の充填材は、通常、3種のクラス又は範疇:(1)無機粒状充填材、(2)繊維及び(3)有機充填材の内に入る。
(a.無機粒状充填材)
【0095】
用語“粒子”又は“粒状充填材”は、任意の様々な異なる形状及びアスペクト比を持つ充填材粒子を包含すると広範に解釈されるべきである。概して、“粒子”は約10:1より小さいアスペクト比(即ち、長さ対厚さの比率)を持つ固体のものである。約10:1よりも大きなアスペクト比を持つ固体は、“繊維”として、以下に定義及び議論する用語のように、より一層良く理解されるかもしれない。
【0096】
事実上、任意の既知の充填材を、不活性又は反応性にかかわらず、生分解性重合体ブレンド中に組み込むことができる。概して、無機充填材の添加は、得られる重合体ブレンドの費用を低減する傾向にある。比較的小量の無機充填材を用いる場合、最終組成物の特性に対する効果は最小化されるが、比較的大量の無機充填材の添加は、それらの効果を高める。無機充填材の添加が引張強度又は柔軟性のような重要な物理的パラメータを損ねる傾向にあるような場合には、得られる組成物の費用を低減する一方で、意図する使用によって求められる適切な機械的特性が保持されるように、限られた量の充填材を添加すべきである。しかし、無機充填材の添加が、剛性、圧縮強さ、及び永久折れ目性、耐熱性、マイクロ波適用可能性、絶縁能力、及び/又は通気性のような、所定の適用の1種又はそれよりも多い種類の望ましい物理的特性を改良するような場合には、この望ましい特性をもたらす一方で、又大いに低減された費用が提供されるように、添加する充填材の量を増加させるのが望ましい。
【0097】
当業者が、微細構造の工学的取り組み(microstructural engineering approach)を使用して、望ましい特性を持つ最終物質を設計する一方で、無機充填材を添加することによる費用-低減特性を活用するために、重合体ブレンド内に含まれ得る種々の無機充填材の種類及び量を選定できることは、理解される。
【0098】
概して、無機充填剤の量を最大化する一方、可能な限り大量の充填材を添加することによる有害な機械的影響を最小化させるためには、充填材粒子を、粒子の比表面積を減少させる様式で選定するのが有利であり得る。比表面積は、合計粒子表面積対合計粒子容積の比率として規定される。比表面積を減少させるための1種の手段は、より一層均一な表面幾何学性(surface geometry)を持つ粒子を選定することである。より一層ぎざぎざの及び不規則な粒子表面幾何学性は、その粒子の容量に対する表面積の比をより一層高める。比表面積を減少させる別の手段は粒度を増加させることである。無機充填材の比表面積を減少させる利点の観点から、好ましくは、約0.1m2/gから約400m2/gまでの範囲において、より一層好ましくは約0.15m2/gから約50m2/gまでの範囲において、及び最も好ましくは約0.2m2/gから約2m2/gまでの範囲において比表面積を持つ無機充填材粒子を含む。
【0099】
粒子充填(パッキング)の概念は、本発明にかかる重合体ブレンドの流動学及び最終強度特性を改良する際の低減された比表面積に関連する。粒子充填技術は、粒子間の“無駄な(wasted)”隙間空間の減少を可能にする一方、適切な粒子潤滑(particle lubrication)及び、従って溶融重合体ブレンド内での、混合物流動学(mixture rheology)を維持し、又、本発明にかかる最終的な硬化重合体ブレンドにおける結合剤としての熱可塑性の相のより一層効果的な使用を可能にする。端的に表現すれば、粒子充填は、より一層大きな粒子間の空間がより一層小さな粒子の選定される群によって実質的に占有されるように、1種又はそれよりも多い種類の範囲の粒度を選定する処理である。
【0100】
無機充填材粒子の充填密度を最適化するために、約0.01μmほど小さいものから約2mmほどの大きなものまでに及ぶ寸法を持つ異なる寸法の粒子を用いることができる。もちろん、任意の所定の重合体ブレンドから製造されるべき望ましい物品の厚さ及び他の物理的パラメータは、粒度の上限を決定することが多い。概して、任意の所定の組の粒子が、第1の群の粒子の平均粒度(すなわち、幅及び/又は長さ)よりも少なくとも約2倍大きいか、又は小さい平均粒度を持つ別の組の粒子と混合されるときには、粒子充填は高まる。2種の粒子システム(two-particle system)についての粒子充填密度は、所定の組の粒子の寸法比が、別の組の粒子の寸法の約3-10倍からのものであるときに最大化される。同様に、3種又はそれよりも多い種類の異なる組の粒子を用いて、粒子充填密度を更に高めることができる。
【0101】
“最適な”充填密度の程度は、制限されないが、熱可塑性の相及び固形充填材の相の双方の内の種々の成分の種類及び濃度、採用される造形法(shaping method)、及び所定の重合体ブレンドから製造されるべき最終物品の望ましい機械的な、及び他の性能特性を含む多くの因子に依存する。当業者は、日常的な試験によって充填密度を至適にする粒子充填の最適レベルを定めることができる。粒子充填技術のより一層詳細な議論はAndersen(アンデルセン)等へのU.S. Patent第5,527,387号に見出すことができる。粒子充填密度を最大にし、及び最適にする際に有用であり得る粒子充填技術を開示するため、上記特許を参考として本明細書に組み込む。
【0102】
粒子充填技術を利用する流動学及び結合効率の改良特性を活用することが望ましい場合には、好ましくは、約0.55から約0.95までの範囲において、より一層好ましくは約0.6から約0.9までの範囲において、及び最も好ましくは約0.7から約0.85までの範囲において、自然な粒子充填密度を持つ無機充填材粒子を含む。
【0103】
生分解性重合体ブレンド内に含み得る有用な無機充填材の例には、砂、砂利、砕石(crushed rock)、ボーキサイト、花崗岩(御影石)、石灰石、砂岩、ガラスビーズ、エーロゲル、キセロゲル、マイカ(雲母)、クレイ(粘土)、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ、カオリン(陶土)、微小球(microspheres)、中空ガラス球体(hollow glass spheres)、多孔質セラミック球体(porous ceramic spheres)、二水石膏、不溶性塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、(炭酸マグネシウム)、二酸化チタン、タルク、セラミック材料、ポゾラン材料(pozzolanic materials)、塩、ジルコニウム化合物、ゾノトラ石(xonotlite)(結晶性ケイ酸カルシウムゲル)、軽量膨張クレイ(lightweight expanded clay)、パーライト(真珠岩)、蛭石、水和又は非水和水硬セメント粒子、軽石、ゼオライト(沸石)、剥離岩(exfoliated rock)、鉱石、鉱物(ミネラル)、及び他の地質学的物質のような異種の物質が包含される。金属及び金属合金(例えば、ステンレス鋼、鉄、及び銅)、ボール又は中空球体材料(ガラス、重合体、及び金属のようなもの)、填材(filing)、ペレット、フレーク及び粉末(マイクロシリカのようなもの)のような物質を含む、広範な様々の他の無機充填材を重合体ブレンドに添加することができる。
【0104】
無機充填材の粒度又はその粒度範囲は、重合体ブレンドから製造されるべき薄膜、シート又は他の物品の壁厚に依存する。概して、壁厚が厚いほど、許容可能な粒度はより一層大きい。殆どの場合、費用及び無機充填材の比表面積を低減させるために、所定の適用にとっての粒度の許容可能な範囲内で粒度を最大化するのが好ましい。十分な量の柔軟性、引張強さ、及び曲げ耐久性及び比較的低い永久折れ目性及び通気性(例えば、プラスチック袋物)を持つことを意図される薄膜について、無機充填材の粒度の直径は、好ましくは、薄膜の壁厚の約20%より小さい。例えば、40μmの厚さを持つ薄膜又はシート用には、無機充填材粒子にとって、約8μm又はそれよりも小さい粒度の直径を持つのが好ましい場合がある。
【0105】
他方、少なくとも1部分の充填材粒子についての若干の場合には、重合体シート又は薄膜の厚さに等しいか、又はそれよりも大きい直径のように、より一層大きい粒度の直径を持つのが望ましいことがある。充填材粒子で、その直径が重合体シート又は薄膜の厚さに等しいか、又はそれを超えるものの利用は、シート又は薄膜の表面を崩壊させ、及び表面積を増加させ、それは、シート又は薄膜の嵩手触り(bulk-hand-feel)及び/又は永久折れ目性の特性を有利に高めることができる。シート又は薄膜が一軸又は二軸延伸される場合、より一層大きな(例えば、薄膜の壁厚の20%よりも大きい)充填材粒子の使用は、高い空隙化(a high degree of cavitation)を持つシート及び薄膜をもたらす限定的な不連続性を作り出す。空隙化は、紙の感触及び感覚により一層酷似する感触及び感覚を持つシートを招く。加えて、それは、シート及び薄膜の通気性及び水蒸気透過性を著しく増加させる。
【0106】
重合体ブレンドに添加される粒状充填材の量は、他の添加される成分の量及び性質、並びに比表面積、充填密度、及び/又は充填粒子それら自体の寸法分布を含む、種々の因子に依存する。したがって、重合体ブレンド内の粒状充填材の濃度は、重合体ブレンドの容量によって約0%ほどの低いものから容量で約90%ほど高いものまでの広い範囲において包含される。用いることができる種々の無機充填材の密度における多様性から、容量%よりもむしろ重量%に関して無機充填材の濃度を表現する方が、若干の場合においてはより一層正しいことがある。この観点から、無機充填材成分は、重合体ブレンドの重量によって0%ほどの低いものから重量で95%ほどの高いものまでの広い範囲において、好ましくは、重量で約5%から約90%までの範囲において含むことができる。
【0107】
製造される物品の求められる性能基準のために、熱可塑性の相の特性が優勢であることが望ましいような場合には、無機充填材は、好ましくは重合体ブレンドの容量で約5%から約50%までの範囲の量において含まれる。一方、高度に無機的に充填されるシステムを作り出すのが望ましい場合、好ましくは、無機充填材は、容量で約50%から約90%までの範囲の量で含まれる。
【0108】
これらの競合する目的の点から、無機充填材の実際の好適な量は広く変動し得る。しかし、一般的には、得られる重合体ブレンドの費用を認められ得るほどに減少させるため、及び/又は高められた永久折れ目性、耐熱性、絶縁能力、及び/又はマイクロ波適用可能性を与えるため、無機充填材成分を、典型的には、全体的な組成物の重量で、少なくとも約10%の量で、好ましくは少なくとも約15重量%、より一層好ましくは少なくとも約20重量%、より一層特に好ましくは少なくとも約30重量%、及び最も好ましくは全体的な組成物の重量で少なくとも約35%の量で含める。
(b.別個の繊維)
【0109】
処置される繊維シートに加えて、重合体ブレンドの物理的特性を改良するために、別個の繊維を随意に用いることができる。前述の充填材のように、繊維は、典型的に、熱可塑性の相から分離され、及び区別される固相を構成する。しかしながら、繊維の形状のため、即ち、少なくとも約10:1よりも大きなアスペクト比を持つことによって、それらは、粒状充填材よりも良好に強度及び靭性を与えることが可能である。本明細書及び添付する請求の範囲において用いるように、用語“繊維”及び“繊維状材料”には、無機繊維及び有機性繊維の双方が包含される。繊維を成形可能な混合物に添加し、柔軟性、延性、曲げ性、凝集力、伸び能力、撓み能力、靱性、永久折れ目性、及び破壊エネルギー、並びに得られるシート及び物品の曲げ及び引張強度を高めることができる。
【0110】
重合体ブレンド中に組み込まれ得る繊維には、木、植物の葉、及び植物の茎から抽出されるセルロース系繊維のような、自然に生じる有機繊維が包含される。加えて、ガラス、黒鉛、シリカ、セラミック、岩綿(ロックウール)、又は金属物質から作製される無機繊維も用いることができる。好ましい繊維には、綿(コットン)、木質繊維[硬材又は軟材の繊維の双方で、その例には、サザンハードウッド(南欧産のニガヨモギの1種)及びサザンパイン(松の1種)が包含される]、亜麻、アバカ(マニラアサ)、サイザル麻、カラムシ(ラミー)、麻、及びバガスが包含され、その理由は、それらが普通の条件下に容易に分解されるからである。再生紙の繊維でさえ、多くの場合、用いることができ、及び極めて安価であり、及び豊富である。
【0111】
本発明にかかるシート及び他の物品を作製する際に用いる繊維は、好ましくは、幅に対する長さの高い比(又は“アスペクト比”)を持ち、この理由は、より一層長く、より一層細い繊維は、より一層太い繊維よりも、マトリクスに嵩及び塊を実質的に殆ど加えることなく、重合体ブレンドにより一層高い強度を与えることができるからである。繊維は、少なくとも約10:1のアスペクト比、好ましくは約25:1よりも大きな、より一層好ましくは約50:1よりも大きな、及び最も好ましくは約100:1よりも大きなアスペクト比を持つ。
【0112】
重合体ブレンドに添加される繊維の量は、完成品の望ましい特性と共に、引張強度、靱性、柔軟性、及び任意の混合のデザインにおいて添加すべき繊維の量を定めるための本質的な基準である費用に依存して変動する。したがって、本発明にかかる重合体ブレンド内の繊維の濃度は、重合体ブレンドの重量によって0%から約90%までの広範な範囲において含まれ得る。仮にも含まれる場合、繊維は、好ましくは、重合体ブレンドの重量によって約1%から約80%までの範囲の量、より一層好ましくは約3から約50%までの範囲で、及び最も好ましくは重合体ブレンドの重量で約5%から約30%までの範囲の量で含まれる。
(c.有機充填材)
【0113】
重合体ブレンドは又、広範な有機充填材を含むことができる。重合体ブレンド及び添加する有機充填材の融点に依存して、有機充填材は別個の粒子として残り、及び熱可塑性の相から分離した固相を構成してよく、又はそれは部分的にか、又は全体的に溶融し、及び熱可塑性の相と部分的にか、又は全体的に関連してもよい。
【0114】
有機充填材には、例えば、シーゲル(seagel)、コルク、種子、ゼラチン、木粉、鋸くず、粉砕(ミルド)重合体物質、寒天-系物質、天然澱粉顆粒、プレゼラチン化澱粉及び乾燥化澱粉、膨張性粒子、及び同様のもののような、広範な様々の天然由来有機充填材が包含され得る。有機充填材には又、1種又はそれよりも多い種類の合成重合体も包含され得、これは実際上数限りなく存在する。有機充填材の多様性のある性質のために、一般的には、随意の有機充填材成分について好ましい濃度範囲はない。
【0115】
有機充填材は、部分的にか、又は全体的に無機充填材の代わりをすることができる。若干の場合に、有機充填材は、永久折れ目性、嵩手触り、通気性及び水蒸気透過性を高めるためのように、無機充填材と同じ特性を与えるよう選定することができる。仮にも含まれるとき、有機充填材成分は、典型的には、全体的な組成物の重量によって少なくとも約5%の量、好ましくは少なくとも約10重量%で、より一層好ましくは少なくとも約20重量%、より一層特に好ましくは少なくとも30重量%、及び最も好ましくは全体的な組成の重量によって少なくとも約35%の量で含められる。
(3.天然重合体)
【0116】
熱可塑性澱粉又は澱粉粒子に加え、重合体ブレンド内で用い得る他の天然重合体は、セルロース、他の多糖類、多糖類ガム及び蛋白質からなるか、又はそれらの誘導体である。
【0117】
澱粉及び澱粉誘導体の例には、制限されないが、修飾澱粉、カチオン性澱粉及びアニオン性澱粉、及び酢酸澱粉、ヒドロキシエチルエーテル澱粉、アルキル澱粉、デキストリン、アミン澱粉、リン酸澱粉、及びジアルデヒド澱粉のような澱粉エステルが包含される。
【0118】
セルロースの誘導体の例には、制限されないが、セルロースエステル(例えば、ギ酸セルロース、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、吉草酸セルロース、混合エステル及びこれらの混合物)及びセルロースエーテル(例えば、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチル-セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピル-セルロース、及びこれらの混合物)が包含される。
【0119】
本発明にかかる重合体ブレンド中に組み込むことができる他の多糖類-系重合体には、アルギン酸、アルギン酸塩、フィココロイド、寒天、アラビアゴム、グアールガム、アカシアガム、カラゲーニンガム、ファーセララン(furcellaran)ガム、ガッチガム(ghatti gum)、オオバコガム、マルメロガム、タマリンドガム、イナゴマメガム、カラヤガム、キサンタンガム、及びトラガカントガム、及びこれらの混合物又は誘導体が包含される。
【0120】
適切な蛋白質-系重合体には、例えば、Zein(R)(商標、ゼイン、コーン由来プロラミン)、コラーゲン(動物性結合組織及び骨から抽出されるもの)及びゼラチン及び膠のようなその誘導体、カゼイン(牛乳中の本質的な蛋白質)、ニマワリの蛋白質、卵蛋白質、ダイズ蛋白質、寒天(野菜ゼラチン)、グルテン、及びこれらの混合物又は誘導体が包含される。
(4.非生分解性重合体)
【0121】
好ましくは、重合体ブレンドは生分解性重合体を含むが、本発明の範囲内には、もちろん、生分解性でない1種又はそれよりも多い種類の重合体が包含される。非生分解性重合体が一般的に優勢な連続相よりもむしろ分散相を構成する場合、非生分解性重合体を含む重合体ブレンドは、それでもなお、少なくとも部分的には、生分解性である。分解するとき、重合体ブレンドは、後に非生分解性残渣を残すが、それでもなお、専ら非生分解性重合体から作製されるシート及び薄膜によって残される廃棄物よりも優れている。
【0122】
シート及び薄膜を形成するのに適切な普通の非生分解性重合体の例には、制限されないが、ポリエチレン、ポリプロプレン、ポリブチレン、PET、PETG、PETE、ポリ塩化ビニル、PVDC、ポリスチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリカーボネート、多硫化物、ポリスルホン、上記の1種又はそれよりも多い種類を含む共重合体、及び同様のものが包含される。
(D.重合体ブレンド)
(1.生分解性重合体の濃度範囲)
【0123】
繊維シートの処置に用いる重合体ブレンド内の種々の成分の濃度は、処置シートの望ましい物理的及び機械的特性、処置シートから製造されるべき物品の性能基準、ブレンド及び処置シートを望ましい製品にまで製造及び転換するのに用いる加工機材、及びブレンド内の特定の成分を含む、多くの因子に依存する。当業者は、本明細書に開示する特定の例及び他の技術に照らして、日常的な試験によって種々の成分の濃度を選定及び最適化することが可能である。
【0124】
本発明の範囲内の広範な様々の重合体ブレンド、並びにブレンド内に設計され得る広範な様々の異なる特性の観点から、硬質及び軟質重合体を、多種多様な濃度範囲内で含むことができる。重合体ブレンド又は組成物が剛性及び軟質生分解性重合体のブレンドを含む場合、創意に富むブレンド内の1種又はそれよりも多い種類の剛性生分解性重合体は、生分解性重合体の、繊維シート及び任意の充填材を除く重量によって、約20%から約99%までの範囲の濃度、好ましくは重合体ブレンドの重量で少なくとも約30%の濃度で、より一層好ましくは重合体ブレンドの重量で少なくとも約40%で、より一層特に好ましくは重合体ブレンドの重量によって50%よりも多いが、これが含まれないで、及び最も好ましくは重合体ブレンドの重量で少なくとも約55%で持ってよい。
【0125】
同様に、剛性及び軟質重合体のブレンドを採用するとき、軟質重合体は、生分解性重合体ブレンドの、繊維シート及び任意の充填材を除く重量によって、約1%から約80%までのの範囲の濃度を、好ましくは重合体ブレンドの重量で約70%までの濃度で、より一層好ましくは重合体ブレンドの重量で約60%までの、より一層特に好ましくは重合体ブレンドの重量で50%より少ないが、これが含まれないで、及び最も好ましくは重合体ブレンドの重量で約45%までを持ってよい。
【0126】
上記濃度は、添加され得る任意の成分を除く硬質及び軟質重合体のブレンドに関し、上記に記載し及び規定するように測定される。
(2.重合体ブレンドの特性及び処置シート)
【0127】
重合体ブレンドは、本明細書に記載するように様々な望ましい特性を持つように設計することができる。最終的な処置繊維シートの特性は、重合体ブレンドの混合のデザイン、加工条件、形成後の加工(post-formation processing)、生産物の寸法、特に、厚さ、及び同様のものを含む多くの因子に依存する。肉、他の傷み易い食品、及び特に即席食品(例えば、サンドイッチ、バーガ及びデザート品)を封入するのに用いるラップのように、“ラップ”として用いるのが意図される処置シートの場合、概して、一旦折られ、包まれるか、又はそれ以外で望ましい方向性に操作されて、かかるラップが、多数のプラスチックのシート及び薄膜(例えば、ポリエチレン)で起こるような、自発的に開くか、又は包みが解けることがないよう、それらの方向性を維持する傾向があるように、良好な“永久折れ目性”の特性を持つシートを提供するのが望ましい。
【0128】
処置シートの永久折れ目性の特性を改良するために、生分解性重合体を選定して、それが、比較的高いヤング率、好ましくは少なくとも約100MPa、より一層好ましくは少なくとも約150MPa、及び最も好ましくは少なくとも約200MPaを持つブレンドをもたらすことができる。概して、剛性生分解性重合体の濃度を増加させることは、ヤング率を増加させる傾向にある。ヤング率は又、粒状又は繊維状充填材のような、1種又はそれよりも多い種類の充填材と共に重合体ブレンドを負荷することによって、上述のように高めることができる。
【0129】
永久折れ目性を改良するために、ヤング率を高めることに加えて、又はこれに代えて、処置シートを随意に処理し、シートの“嵩手触り”を増加させることができ、これは、シートの概して平面的な性質を崩壊させることによって行われる。これは、例えば、単に平滑な、平坦なシートよりもむしろ、規則的に間隔を空けて離れるか又は無作為の丘及び谷を持つように、シートを、型押、クリンプ加工、キルチング又はそれ以外の方法で組織化することによって行うことができる。これは、例えば、シートを、1対の刻み付きか、又は型押-種類のローラを介して通すことによって行うことができる。かかる組織化は、シートが、折れ、しわ、折り目又は他の曲げを維持し、従ってシートの永久折れ目性の特性を改善する。
【0130】
本発明に従う処置シートの表面積を、それらの嵩手触り及び/又は永久折れ目性を増すように増加させる別の手段は、少なくとも1部分の粒子が重合体被膜の厚さに等しいか、又はそれを超える粒度の直径を持つ粒状充填材を含ませることである。こうすれば、処置シートは、100%に接近するか、又は等しい永久折れ目性を持ち、これが現在市場にある事実上すべての従来の紙又はプラスチックラップ及びシートの永久折れ目性の特性を超えるようにして、製造することができる。100%の永久折れ目性を持つ従来のシート又はラップの例は、アルミニウム又は他の金属の箔である。
【0131】
食物ラップを製造するときに望ましいことがある他の特性は、耐熱性、マイクロ波適用可能性、及び絶縁能力である。繊維シートを被覆又は含浸させるのに用いる重合体ブレンド又は組成物内の無機充填材の量を増加させることは、処置繊維シートの耐熱性、マイクロ波適用可能性、及び絶縁能力を高める傾向がある。例えば、軟質の生分解性重合体を粉砕又は沈降シリカのような無機充填材とブレンドすることができ、重量で少なくとも約30%の無機充填材を含む生分解性重合体組成物がもたらされることを見出した。重量で少なくとも約30%の無機充填材を軟質生分解性重合体に添加することは、マイクロ波オーブン中に配置するときに破壊されない処置繊維シートをもたらす。
【0132】
充填材の使用は又、特定の加工技術と相俟って、“空隙化”を作り出すのに用いることができる。空隙化は、熱可塑性重合体の画分が一軸又は二軸方向のいずれかに引かれ、及び充填材粒子が伸張の間に寸法を増加させる薄膜又はシートにおいて不連続性を作り出すときに発生する。伸張の間、伸びた重合体の1部分は、充填材粒子から引き離され、充填材粒子の近くに極めて小さい空洞を招く。これは、同様に、シート及び薄膜の著しく高められた通気性及び蒸気透過性を招く。それは又、従来のプラスチックシート及び薄膜とは対照的に、紙の感触及び感覚に著しく酷似する感触及び感覚を持つ薄膜又はシートを招く。その結果は、紙生産物(即ち、ラップ、薄葉紙、印刷物質、等)を用いて現在実行されるか、又は満足される適用のために用いることができる、シート、薄膜又はラップである。
【0133】
本発明に従う処置シートは任意の望ましい厚さを持つことができる。食品又は他の固形基材を包むか、封入するか、又はそれ以外の方法で覆うのに適切な処置シートは、典型的に、約0.0003″と約0.01″の間(約7.5-250μm)の測定厚さ、及び約0.00015″と約0.005″の間(約4-125μm)の計算厚さを持つ。
【0134】
測定厚さは、典型的に計算厚さよりも10-100%の間大きく、そのとき、シート及び薄膜は、比較的高濃度の粒状充填材粒子を持つ組成物から作製され、その粒子は、処置シートの表面から突き出ることがある。この現象は特に、重合体マトリクスの厚さよりも大きな粒度の直径を持つ十分な量の充填材粒子が用いられるときに顕著である。
【0135】
ラップとして用いるのに適切な処置シートは、好ましくは約0.0004″から約0.005″まで(約10から約125μmまで)の範囲、より一層好ましくは約0.0005″から約0.003″まで(約12から約75μmまで)の範囲、及び最も好ましくは約0.001″から約0.002″まで(約25から約50μmまで)の範囲の測定厚さを持つ。一方では、ラップとして用いるのに適切な処置シートは、好ましくは約0.0002″から約0.003″まで(約5から約75μmまで)の範囲、より一層好ましくは約0.0003″から約0.002″まで(約7.5から約50μmまで)の範囲、及び最も好ましくは約0.0005″から約0.0015″まで(約12から約40μmまで)の範囲の計算厚さを持つ。
【0136】
計算厚さと測定厚さの間の違いは、充填材含量の増加と共に及び又粒度の増加と共に増加する傾向がある。逆に、計算厚さと測定厚さの間の違いは、充填材含量の減少と共に及び又粒度の減少と共に減少する傾向がある。充填材を含まないか、又はより一層小量の充填材で、重合体マトリクスの厚さよりも十分に小さい粒度の直径を持つものしか含まない処置シートは、計算厚さと類似するか、又は等しい測定厚さを持つ。
【0137】
生分解性ブレンドの別の重要な特性は、かかるブレンドを繊維シートに被覆するか、又は含浸するのに用いるとき、処置シートが更なる加工を伴わずに、容易に印刷可能であることである。したがって、ラップの製造において創意に富む重合体ブレンドを利用することの別の利点は、かかるブレンドが一般に、従来のプラスチック又は蝋紙よりもより一層ずっと容易に印刷を受け入れ、及びそれを保持できることである。多くのプラスチック及び蝋は、高度に疎水性であって、及びインク付着が可能な化学的に受容性の表面を提供するために、表面酸化されなければならない。一方、生分解性重合体は、典型的に、インクが容易に付着できるエステル又はアミド基のような、酸素-含有部分を含む。
(3.永久折れ目性の測定)
【0138】
用語“永久折れ目性”は、折り目、しわ、折れ又は他の曲げを維持するシートの傾向を言及する。シートの永久折れ目性特性は、この技術で既知の標準的な試験を用いて的確に測定することができる。この試験は、種々のシートの永久折れ目性の特性を比較し、及び対比する能力を提供する。次の機材は標準的な永久折れ目性試験の実行に有用である:(1)1″直径の半円に沿って分けられる半円形の分度器;(2)0.75″±0.005″で1.25″±0.05″毎の、及び50g±0.05gの重さがあるようなかかる厚さの平滑な表面の(smooth-faced)金属製ブロックからなる錘;(3)試験標本の切断のための1″×4″の型板(template);(4)1秒までの時間を計ることができる計時装置又はストップウォッチ;(5)実用的なナイフ又は他の切削工具;及び(6)湿度室。
【0139】
第1工程は適切に寸法調整した試料の調製である。交差機械方向(cross-machine direction)と比較して機械方向において、シートが異なる特性を持つ場合には、双方向において永久折れ目性の特性を測定し、及び平均するのが有用であり得る。標準的試料の標本は試験すべきシートの1″×4″の細条(ストリップ)である。
【0140】
第2工程は試験条件の均一性を確かにするための状態調節工程である。標本は、23℃(23C)及び50%の相対湿度の湿度室においてそれらを最低限24時間の間配置することによって状態調節する。
【0141】
第3工程は各々の状態調節された試験細条の実際の永久折れ目性試験である。標本を湿度室から取り出し、及びその重量を記録する。軽い印(light mark)を試験細条の1端部から1″に付ける。次いで、試験細条を平坦な表面上に配置し、及びそれをその印あたりで曲げるが、細条に折り目は付けない。次に、錘を曲り上に、正面から(squarely)及び徐々に、3分の2(又は0.5″)の錘を標本に重ねながら配置し、結果として折り目を形成し、及び3分の1又は(0.25″の)錘を折り目に重ねる。細条に平行な錘の縁部は、細条の各側面を越えて、一様に(約0.125″)突出すべきである。錘は10秒間標本上に載せられる。次いで、それを取り除く。正確に30秒後、折り目によって形成される角度を測定する。
【0142】
上述の処理を細条の他の側を用いて繰り返し、及び追加の細条のできるだけの数を用いることは、所定のシート又は薄膜の永久折れ目性の特性の統計的に正確な測定を与える。次いで、平均角度Aを次の式中に入力し、所定の試料についての永久折れ目性パーセントCを定める:
C=100*(180-A)/180
【0143】
角度Aが0°[即ち、折り目が跳ね返り(spring back)を観察されないように維持される場合]なら、試料は100%の永久折れ目性を持つ(C=100*(180-0)/180=100%)。それとは反対に、角度Aが180°(即ち、試料が本質的に平坦になるように、試料がいつでも跳ね返る場合)なら、試料は0%の永久折れ目性を持つ(C=100*(180-180)/180=0%)。その中ほどでは、直角を形成するように半分ほど跳ね返る試料は、50%の永久折れ目性を持つ(C=100*(180-90)/180=50%)。
【0144】
食物を包むのに用いるとき、又は良好な永久折れ目性が望ましいときには、本発明に従う処置シートを、少なくとも約50%の永久折れ目性を持つように製造することができる。好ましくは、処置シートは、少なくとも約60%、より一層好ましくは少なくとも約70%、より一層特に好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも約90%の永久折れ目性を持つ。本発明に従う処置シートは、100%に近づくか、又はそれに等しい永久折れ目性を持つように開発された。比較としては、ポリエチレンから作製されるシート及び薄膜(例えば、サンドイッチ又は厨芥袋の作製に用いるもの)は、典型的に0%の永久折れ目性を持つ。即席食物産業で普通に用いられる標準的な紙ラップは、典型的に約40-80%の間の永久折れ目性を持つ。このように、本発明にかかる処置シートは、標準的な紙ラップの永久折れ目性に適合するか、又はそれを越え、及び従来のプラスチック薄膜及びシートよりも何倍も大きく、桁違いに大きなことが多い、永久折れ目性の特性を持つように製造することができる。
(III.重合体ブレンド及び繊維シートの製造方法)
【0145】
重合体を形成するための熱可塑性組成物を製造する技術で既知の任意の製造機器、及び繊維シートを重合体ブレンドで被覆又は含浸させるための任意の被覆機器を採用することは、本発明の範囲内である。本発明に従って重合体ブレンドを形成するのに用いることができる適切な混合機器の例には、Buss Company(バス社)によって販売される、混練ブロックを持ち、かみ合いスクリュー(meshing screw)を有する二軸混練機(twin-shafted kneader)、BRABENDER(ブラベンダー)混合機、 THEYSOHN(ゼイソーン) TSK 045配合機で、これは、同じ方向で回転するシャフトを有する二軸押出機であり、及びこれは多加熱及び加工帯域(zone)を持つものであり、加熱可能なオーガー式(auger)スクリューを持つBUSS KO(バス・コ)Kneader(混練機)、BAKER-PERKINS(ベーカー-パーキンス)MPC/V-30の二重及び単一オーガー式押出機、単一又はツインのオーガー式OMC押出機、Model(モデル)EPV 60/36D押出機、BATTAGGION(バットアギオン)ME100の直流緩混合機(direct-current slow mixer)、HAAKE(ホーク)Reomex(ローメックス)押出機、COLLIN Blown Film Extruder(コリン・インフレートフィルム押出機)、BATTENFELD-GLOUCESTER(バッテンフェルト-グロスター)Blown Film Extruder、及びBLACK-CLAWSON(ブラック-クラウソン)Cast Film Extruder(キャスト・フィルム・押出機)が包含される。
【0146】
上述の混合機の多くは又、押出機であり、それは、それらが、重合体ブレンドから薄膜又はシートに押出されるのを適切にし、それは次いで、繊維シートと一緒に積層することができる。代わりに、重合体ブレンドは、樹脂の製造業者が製造の間に主要なポリ成分中にこれらのブレンドの種々の微量成分(minor component)を注入できる場合、トランスファ-ライン-注入(transfer-line-injection)の技術を用いて作製することができる。当業者は、製造すべき望ましい物品に従って、適切な製造機器を選定し、及び最適化することができる。一旦、熱可塑性の溶融体が上述の任意の混合機、又は熱可塑性樹脂の技術で既知の任意の他の適切な混合及び溶融機器を用いて形成された場合、熱可塑性樹脂の成形又は加工の技術で既知の、事実上任意の成形、押出、造形又は被覆機器を用いて、重合体ブレンドで被覆又は含浸される繊維シートからなる最終製品を生産し、そのシートを液体による侵入に対してより一層抵抗性にすることができる。
【0147】
重合体ブレンドからシート及び薄膜を製造するための好適例において、次いでそれを繊維シートと一緒に積層することができ、ブレンドを調製するための配合二軸スクリュー押出機、及び薄膜及びシートを作製するためのインフレートフィルム又はキャストフィルムのラインを用い、シート及び薄膜を製造することができる。インフレートフィルム及びシートは、それらがどのように処理されるか(即ち、それらが管として押出され、及び次いで、管の範囲内で空気を吹込み、それを気球のように膨らませることによってすべての方向で膨張させる)に起因して、全く同じではないにしても、同様な強度、及び二軸方向における他の性能特性を持つ傾向がある。キャストフィルム又はシートは、一方で、二軸延伸にかけられないならば、機械方向において実質的により一層強く(例えば、実質的により一層強い引張強さを持ち)、及び交差機械方向において実質的により一層高い引裂抵抗性である。熱可塑性物質を押出されるとき、重合体分子は、機械方向において方向付けられる傾向がある。機械方向の方向性は、押出シート又は薄膜が、機械方向におけるシート又は薄膜の厚さを減少させるようにニップを介して通過する場合に更に高められる。
【0148】
本発明に従う処置シートは、所望のように、片側又は両側上で被覆又は含浸させることができる。それらは、1種又はそれよりも多い種類のシート又は薄膜を用いて、繊維シートを積層すること、重合体ブレンドのシート又は薄膜を繊維シートと共に同時-押出すること、浸漬、塗布(例えば、ドクタブレードを用いて)、噴霧、及び同様のものによって形成することができる。処置シートの1部分が熱可塑性であるので、シートは、大形袋、ポケット、パウチ、及び同様のものを形成するために、2種の端部を一緒に接合する溶封によって後処置することができる。それらは、既存のシート又は基材上に積層することができる。
【0149】
繊維シートの表面を被覆するのに用いるシート及び薄膜の一軸又は二軸延伸は、空隙化を作り出すのに用いることができる。空隙化の創出のためには、粒状充填材が含有され、それは、シート又は薄膜が延伸される一方、まだ熱可塑性の状態であるときに、不連続性をもたらす。空隙化はシート及び薄膜の通気性及び蒸気透過性を増加させる。それは又、従来の熱可塑性シート及び薄膜と比較して、紙の感触及び感覚に更に一層酷似した感触及び感覚を持つシート又は薄膜を招く。
【0150】
生分解性重合体組成物の繊維シート上での塗布又は噴霧のような、一定の被覆又は含浸技術を採用するとき、溶融重合体組成物のMFIを増加させることは有利であり得る。これは、溶融した重合体組成物をより一層流れ易くし、繊維シートが被覆又は含浸されるようにする。好ましくは、溶融重合体組成物は、少なくとも約40g/10分、より一層好ましくは少なくとも約70g/10分、及び最も好ましくは少なくとも約100g/10分のMFIを持つ。
【0151】
上述のように、MFIは、生分解性重合体又は重合体ブレンドに依存して、望ましいレベルにまで、それをより一層高い温度にまで加熱することによって高めることができる。しかし、若干の場合、重合体を、許容可能なレベルにまでMFIを論理的に低下させ得る温度にまで加熱することは、代わりに、重合体組成物を焼き、燃焼させるか、又はそれ以外の方法で損なうかもしれない。かかる場合に、重合体組成物に可塑剤を添加するのが望ましいことがある。可塑剤は、上述のように、揮発性又は不-揮発性可塑剤でよい。
【0152】
1具体例に従い、溶融重合体組成物のMFIを増加させるために、水を添加する。200ppmの水を重合体組成物に添加することは、4g/10分から40g/10分にまでMFIを増加させることが見出された。これに基づき、当業者は、水の濃度を望ましいように調節して、予め定めるレベルにまでMFIを上げるか、又は下げることができる。
【0153】
吹付塗法の場合には、アルコール、ケトン、又は塩素化炭化水素のような、1種又はそれよりも多い種類の揮発溶媒を用いて、溶融重合体組成物のMFIを高めることができる。被覆処理の間又はその後で、揮発溶媒を蒸発によって追い出すときに、溶媒を、経済的及び環境上の双方の理由のために、有利に回収し、及び再使用する。
【実施例】
【0154】
(IV.例)
次の例は、生分解性重合体ブレンド、並びにそれから処置繊維シートを形成するための組成物及び処理条件をより一層詳しく教示するために提示する。例には、創意に富む生分解性重合体ブレンドの種々の混合デザイン、そのうえ、それらのブレンドを製造し、及び次いで、それらから重合体シート及び薄膜を形成するための種々の処理が包含される。
(例1-3)
【0155】
生分解性重合体薄膜を、次の混合デザインを持ち、全体の重合体ブレンドの重量%に関して表す濃度を有する、生分解性重合体ブレンドから製造する:
【0156】
【表1】

【0157】
上記重合体ブレンドを、Gemini Plastics(ジェミニ・プラスチック社)、Maywood(メイウッド)所在、California(カリフォルニア州)で、DuPont供給のBIOMAX 6926(新しいロット及び古いロットの双方)、DuPontによって供給されるBIOMAX 6926系樹脂におけるシリカマスターバッチ、及びBASFから得られるECOFLEX-Fを用いてブレンドし、及び薄膜にブロー成形した。薄膜は、Maddock(マドック)のせん断混合先端(shear mixing tip)を含む2インチ(約5.08cm)の遮断混合スクリュー(barrier mixing screw)、及び0.032-0.035″のダイギャップを有する4インチ(約10.16cm)直径の環状ダイを装備するGemini film blowing extruder(ジェミニ・フィルム・ブローイング・押出機)(L/D 24/1)を用いてブローした。
【0158】
典型的な量のシリカ粘着防止剤を用いても(即ち、0.16%)、薄膜の著しいブロッキングが、例3の混合デザインを用いて作製された薄膜について観察された(即ち、20%ECOFLEX);しかし、例1及び2の、5及び10%のECOFLEXブレンドのブロッキングは観察されなかった。比較のため、ニート(ストレート)のECOFLEX及びBIOMAXの薄膜を製造した。ニートECOFLEX薄膜を、BASF ECOFLEX-F樹脂及び同じ樹脂中の30%タルクのマスターバッチを用いて製造した。ニートBIOMAX薄膜(新しいもの及び古いもの)には、0.16%のSi02を含ませた一方で、ニートECOFLEX薄膜には、4.5%のタルクを含ませた。BIOMAX/ECOFLEXブレンド薄膜及び対照BIOMAX及びニートECOFLEX-F薄膜の機械的特性を、周囲条件下で測定した。生じたデータを図1-8で描写される図表(チャート)1-8にそれぞれ図形として示す。
【0159】
図表1は、図1において描写されるが、試験した種々の薄膜についての歪速度対破断点伸び割合(パーセント)のプロットである。500mm/分の歪速度で、新しい及び古い双方のBIOMAX薄膜は低い伸び表示した。ニートECOFLEX薄膜及びBIOMAX-ECOFLEXブレンドから作製したすべての薄膜は、調査した歪速度のすべてで、ニートBIOMAX薄膜よりも十分により一層良好な伸びを持った。一方で、例3の20%ECOFLEXブレンドは、より一層低い歪速度で、これらの薄膜が極めて低い伸びを持つことを示すほぼ80%のBIOMAXを含むとしても、ニートECOFLEX薄膜と比べて等しいか、又はより一層良好な伸び見せた。
【0160】
図表2は、図2で描写され、500mm/分の固定歪速度で測定したBIOMAX/ECOFLEXブレンドにおける伸びパーセント対ECOFLEXのパーセントのプロットである。図表2によって表されるように、ECOFLEXの濃度が増加するに従い、伸びのパーセントにおいてほぼ直線状の改善があった。さらに、例3の20%ECOFLEXブレンドは、ニートECOFLEX薄膜と同様に良好な伸びを持った。
【0161】
図表3は、図3で描写され、1000mm/分の固定歪速度で測定したBIOMAX/ECOFLEXブレンドにおける伸びパーセント対ECOFLEXのパーセントを同様にプロットする。重ねて、BIOMAX/ECOFLEXブレンドの伸びにおける劇的な改善は、ECOFLEXの濃度がそれぞれ、10及び20%に達するときに見られたが、その傾向は、500mm/分の固定歪速度で測定される図表2におけるデータのように明らかではなかった。
【0162】
図表4は、図4で描写され、種々の薄膜の歪速度対対破壊応力のプロットである。重ねて、ニートECOFLEX及びBIOMAX/ECOFLEXブレンドのすべては、ニートBIOMAX薄膜よりも、調査した歪速度のすべてで著しく良好な破壊応力を持った。さらに、BIOMAX/ECOFLEXブレンドは、ニートECOFLEX薄膜よりも、すべての歪速度で十分に良好な破壊応力を持ち、従って、BIOMAX/ECOFLEXブレンドが、ニートBIOMAX又はECOFLEXのいずれかのものよりも引張強さにおいてすべてより一層強いことを示す。
【0163】
図表5は、図5で描写され、500mm/分の固定歪速度で測定した、例1-3のBIOMAX/ECOFLEXブレンドの破壊応力対ECOFLEXパーセントのプロットである。再度、破壊応力におけるほぼ直線状の増加がECOFLEX濃度の増加と同時に観察された。さらに、例3の20%ブレンドは、ニートECOFLEX薄膜のほぼ2倍の破壊応力、及びニートBIOMAX薄膜のほぼ3倍の破壊応力を持つという驚くべき、及び予測できない結果を見せた。
【0164】
図表6は、図6で描写され、1000mm/分の固定歪速度で測定した、例1-3のBIOMAX/ECOFLEXブレンドにおける破壊応力対ECOFLEXパーセントのプロットである。この歪速度で、例2の10%ECOFLEXブレンドは、72MPaの最高ピーク応力を有する、最も高い破壊応力を持った。
【0165】
図表7及び8は、図7及び8でそれぞれ描写され、薄膜内のECOFLEX濃度の関数としての種々の薄膜の水蒸気透過性係数(Water Vapor Permeability Coefficients, WVPC)をプロットする。図表7では、推定傾向線(estimated trend line)は7.79×10-3gcm/m2/d/mmHgのWVPCに基づき、これは、ニートECOFLEX薄膜についての最も低い測定WVPCである。図表8では、推定傾向線は、代わりに、42×10-3gcm/m2/d/mmHgのWVPCに基づき、これは、ニートECOFLEX薄膜についての最も高い測定WVPCである。図表7及び8でのデータは、例1及び2の5及び10%のECOFLEXブレンドの水蒸気遮断特性がニートBIOMAX薄膜のものと本質的に同じであったことを示す。すべての試料についてのWVPCデータは、Test Method(試験方法)ASTM F 1249-90において記述される標準的手法によって測定した。
【0166】
図表9は、図9で描写され、薄膜内のECOFLEX濃度の関数としての種々の薄膜のモジュラスのプロットである。驚くべきことに、BIOMAX及びECOFLEXを含有するブレンドのモジュラスは、ニートBIOMAX及びECOFLEXよりも十分に高い。本発明に従って製造する薄膜の使用の1種が、良好な永久折れ目性の特性を持つラップとしてのものであるため、及び永久折れ目性の程度が薄膜のモジュラスに関連すると考えられるので、BIOMAX及びECOFLEXのブレンドは、ニートBIOMAX及びECOFLEX薄膜で、最も高いモジュラスを見せる5%及び10%のブレンドを有するものの各々に対して優れた永久折れ目性の特性を持つと思われる。
【0167】
上述の薄膜は、薄葉紙、より一層詳しくは、12-15lb/3000ft2の薄葉紙のような、繊維シートの少なくとも1種の側に積層するのに用いて、処置シートをもたらす。処置シートは食物中で見出される水及び油による侵入に抵抗する食物包装ラップとして用いることができる。
(例4-5)
【0168】
薄膜を、次の混合デザインを持ち、全体の重合体ブレンドの重量%に関して表す濃度を有する生分解性重合体ブレンドから製造した:
【0169】
【表2】

【0170】
Maddockのせん断混合先端を含む2インチの遮断混合スクリュー、及び0.032-0.035″のダイギャップを有する4インチの直径の環状ダイが装備されるGemini film blowing extruder (L/D 24/1)を用いて、薄膜をブローした。例5の薄膜は、例4の薄膜よりも良好な永久折れ目性特性を持ち、それは、例5において用いるブレンド内でタルクのより一層高い濃度に原因しているかもしれない。
【0171】
上述の薄膜は、薄葉紙、更に詳しくは、12-15lb/3000ft2の薄葉紙のような、繊維シートの少なくとも1種の側を積層するのに用い、処置シートをもたらす。処置シートは、食物において見出される水及び油による侵入に抵抗する、食物包装ラップとして用いることができる。
(例6)
【0172】
薄膜を、次の混合デザインを持ち、全体の重合体ブレンドの重量%に関して表す濃度を有する生分解性重合体ブレンドから製造した:
【0173】
【表3】

【0174】
熱可塑性澱粉(Thermoplastic Starch)はBiotec Biologische Natuverpackungen Gmbh & Co.(バイオテク・バイオロギッシュ・ナチュフェルパックンゲン社), KG(“Biotec”)、Emmerich(エンメリヒ)所在、Germany(独国)から得た。ポリ乳酸はCargill-Dow Polymers LLC、Midland(ミッドランド)所在、Michigan(ミシガン州)、USA(米国)から得た。無機充填材は、OMYA、division Pluess-Staufer AG(プルエス-シュタウファAG部門)、Oftringen(オフトリンゲン)所在、Switzerland(スイス国)から得られる炭酸カルシウムであった。
【0175】
上述のブレンドを製造し、及びBiotecのために特別に製造され、及び組み立てられた有標押出ラインの熱可塑性澱粉の押出/インフレート法機器を用いて、薄膜にブローした。特に、押出/インフレート法機器は、Dr. Collin GmbH(ドクターコリン社)、Ebersberg(エーバースベルク)所在、Germanyによって製造された。Biotecによって用いられるものと同様の押出/インフレート法機器の詳細な記述は、Lorcks(ロックス)等へのU.S. Patent第5,525,281号に述べられている。Lorcks等へのU.S. Patent第6,136,097号は、薄膜及びシートを作製するために更に処理することができる中間熱可塑性澱粉-含有顆粒を製造する方法を開示する。開示のために、前記特許を参考として本明細書中に組み込む。
【0176】
薄膜は215.65MPaのモジュラスを持った。したがって、それは、無機充填材及びポリ乳酸の包含の結果としての優れた永久折れ目性の特性を持ち、それは、概して剛性であり、室温で結晶性の重合体である。上述したように、PLAは50-60℃の間のガラス転移温度を持つ。ECOFLEX及び熱可塑性澱粉(TPS)は双方とも、軟質の、低いガラス転移温度の重合体として役割を果した。TPSは、追加の重合体及び極めて少ない水と共にブレンドされるとき、-60℃に接近するガラス転移温度を持つ。ECOFLEX及びTPSは、こうして、ブレンドのブロー可能性(blowability)及び柔軟性に役立つ。TPSは又、天然重合体含量を高め、従って薄膜をより一層生分解性にする。
【0177】
上述の薄膜は、薄葉紙、より一層詳しくは、12-15lb/3000ft2の薄葉紙のような、繊維シートの少なくとも1種の側を積層するのに用いて、処置シートをもたらす。処置シートは、食物において見出される水及び油による侵入に抵抗する食物包装ラップとして用いることができる。
(例7)
【0178】
薄膜を、次の混合デザインを持ち、全体の重合体ブレンドの重量%に関して表す濃度を有する生分解性重合体ブレンドから製造した:
【0179】
【表4】

【0180】
熱可塑性澱粉はBiotecから得た。BAK 1095は、Bayer AG、Koln(ケルン)所在、Germanyから得、及び脂肪族-芳香族ポリエステルアミドであった。無機充填材はOMYA、division Pluess-Staufer AG、Oftringen所在、Switzerlandから得られる炭酸カルシウムであった。
【0181】
上述のブレンドを製造し、及び例6で記載する有標熱可塑性澱粉押出/インフレート法機器を用いて薄膜にブローした。薄膜は、無機充填材及びBAK 1095の包含の結果としての優れた永久折れ目性の特性を持ったが、それは、“薄膜等級”として分類されるけれども、幾らか剛性の、室温で結晶性の重合体である。上述のように、BAK 1095は、それが少なくとも10℃のガラス転移温度を持つように振る舞う。BAK 1095のガラス転移温度がPLAと比べて比較的低いので、大幅により一層多くのBAKを、得られる薄膜のインフレート法(film-blowing)特性及び柔軟性を破壊することなく含むことが可能であった。TPSは、軟質の、低いガラス転移温度の重合体として役割を果し、及び更にブレンドのブロー可能性及び柔軟性に役立つ。それは又、天然重合体含量を高め、従って薄膜をより一層高い生分解性にする。
【0182】
上述の薄膜は、薄葉紙、より一層詳しくは、12-15lb/3000ft2の薄葉紙のような繊維シートの少なくとも1種の側を積層するのに用い、処置シートをもたらす。処置シートは、食物において見出される水及び油による侵入に抵抗する食物包装ラップとして用いることができる。
(例8-12)
【0183】
薄膜を、次の混合デザインを持ち、全体の重合体ブレンドの重量%に関して表す濃度を有する生分解性重合体ブレンドから製造した:
【0184】
【表5】

【0185】
タルクは、Luzenac(ルゼナック社)、Englewood(エングルウッド)所在、Colorado(コロラド州)によって供給されたもので、3.8μmの粒度を持つ。二酸化チタンは、Kerr-McGee Chemical LLC(カール-マギー・ケミカル社)、Oklahoma City(オクラホマシティ)所在、Oklahoma(オクラホマ州)、等級TRONOX(トロノックス)470によって供給されたもので、 0.17μmの粒度を持つ。炭酸カルシウムは、Omnia(オムニア社)、Lucerne Valley(ルツェルンバレイ)所在、California、2μmの粒度によって供給された。上述のブレンドを、Werner Pfeiderer(ウェルナー・フェイダラー)ZSKの二軸-スクリュー押出機(twin-screw extruder)上で製造し、Maddock のせん断混合先端及び4インチ直径のダイを含む2インチの遮断混合スクリューが装備されるGemini film blowing extruder(L/D 24/1)を用いてシートにブローした。すべての薄膜は優れた永久折れ目性の特性を持った。例10-12の重合体ブレンドは又、一軸スクリュー押出機及び14インチの平らなキャストフィルム(cast-film)のダイ、及び、通常のニップロール(nip-rolls)及びかかるシステムに普通の薄膜巻取りアセンブリ(film take-up assembly)を用いてシートに押出した。これらの薄膜のすべては又、優れた永久折れ目性の特性を持った。
【0186】
上述の薄膜は、薄葉紙、より一層詳しくは、12-15lb/3000ft2の薄葉紙のような繊維シートの少なくとも1種の側を積層するのに用い、処置シートをもたらす。処置シートは食物において見出される水及び油による侵入に抵抗する食物包装ラップとして用いることができる。
(例13-61)
【0187】
ブローし及びキャストした薄膜及びシートを、次の混合デザインを持ち、全体の重合体ブレンドの重量%に関して表す濃度を有する生分解性重合体ブレンドから製造した:
【0188】
【表6】

【0189】
例13-59の組成物をすべて処理し、及びCOLLIN Blown Film Extruderを用いて薄膜にブローした。例30-34、36、38、41及び43の組成物の使用により作製した薄膜は、試験したとき、それぞれ、100%、92%、92%、91%、100%、100%、100%、100%及び100%の永久折れ目性を持つことが見出された。他の組成物から作製した薄膜は、永久折れ目性について試験しなかったが、それらは、従来の生物高分子に比べ比較的高い永久折れ目性(即ち、少なくとも約80%)を持つと期待される。例36、38、41及び43の組成物の使用により作製された薄膜についての水蒸気透過速度は、それぞれ、91.94、91.32、98.29及び80.31g/m2/日であった。
【0190】
例60の組成物を処理し、及びBATTENFELD-GLOUCESTER Blown Film Extruderを用いて薄膜にブローした。この組成物から作製された薄膜は、42.48g/m2/日の水蒸気透過速度を持つことが見出された。
【0191】
例61の組成物を処理し、及びBATTENFELD-GLOUCESTER Blown Film Extruder及びBLACK-CLAWSON Cast Film Extruderの双方を用いて種々の薄膜にブローした。BATTENFELD-GLOUCESTER Blown Film Extruder機器を用いて形成した薄膜は、試験したとき、100%の永久折り目性を持つことが見出された。2種の異なる厚さの薄膜を、BLACK-CLAWSON Cast Film Extruderを用いて形成し、1種ものは1.3mils(ミルズ)(0.0013″)の厚さを持ち、及び別のものは1.8mils(0.0018″)の厚さを持っていた。双方のものは独特の機械方向の方向性を持ち、その理由は、それらがブローされたというよりもむしろキャストされたフィルムだったからである。1.3milの薄膜は99%の永久折れ目性を持ち、及び1.8milの薄膜は100%の永久折れ目性を持った。
【0192】
上述の薄膜及びシートを、薄葉紙、より一層詳しくは、12-15lb/3000ft2の薄葉紙のような繊維シートの少なくとも1種の側を積層するのに用い、処置薄膜又はシートをもたらす。処置薄膜又はシートは、食物において見出される水及び油による侵入に抵抗する食物包装ラップとして用いることができる。
【0193】
(例62)
任意の上述の生分解性重合体ブレンドを用いて、繊維シートの少なくとも1種の側を被覆又は含浸させる。重合体ブレンドを、加熱し、混合するか、又はそれ以外で処理して熱可塑性の溶融体にし、及び次いでドクタブレードを用いて繊維シートの表面上に拡げる。繊維シートを動かす一方でドクタブレードを静止させる。代わりに、繊維シート上に、この技術において既知の吹付塗布(spray-coating)技術を用いて重合体ブレンドを噴霧する。
【0194】
(例63)
任意の上述の生分解性重合体ブレンドを、シリカを添加することか、又は若干のか、又はすべての炭酸カルシウムをシリカで置き換えることによって修飾する。修飾組成物を用い、繊維シートの少なくとも1種の側を被覆又は含浸させる。重合体ブレンドを、加熱するか、混合するか、又はそれ以外で処理して、熱可塑性溶融体にし、及び次いで繊維シートの表面上に、ドクタブレードを用いて拡げる。繊維シートを動かす一方でドクタブレードを静止させる。代わりに、繊維シート上に、この技術において既知の吹付塗布技術を用いて、重合体ブレンドを噴霧する。
【0195】
(例64)
任意の上述の組成物を、少なくとも1部分の粒状充填材を除去し、及び次いで修飾生分解性組成物を用いて繊維シートの1種の又は双方の側を被覆する。
【0196】
本発明は、その精神又は本質的特徴から逸脱しないで、他の特定の形態において具体化することができる。記載した具体例は、あらゆる点で、例示的なものに過ぎず、及び制限的でないと考えるべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の記載によってよりはむしろ、添付の請求の範囲によって示される。請求の範囲の意味及び等価の範囲内に入るすべての変形はそれらの範囲内に含まれるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品であって、
繊維シートを備え、
少なくとも1部分の繊維シートが、繊維シートをより一層高い液体抵抗性にする生分解性組成物によって被覆又は含浸されており、
生分解性組成物が少なくとも1種の種類の酪酸ポリヒドロキシを含む、製品。
【請求項2】
繊維シートに、薄葉紙、紙又は板紙が包含される、請求項1記載の製品。
【請求項3】
繊維シートが12−15lb/3000ft(およそ19.53−およそ24.41g/m)の薄葉紙からなる、請求項1記載の製品。
【請求項4】
生分解性組成物が重量で少なくとも約30%の無機充填材を含有する、請求項1記載の製品。
【請求項5】
無機充填材に、少なくとも1種のシリカ、砂、砕石、ボーキサイト、花崗岩、石灰石、砂岩、ガラスビーズ、エーロゲル、キセロゲル、マイカ、クレイ、アルミナ、カオリン、微小球、中空ガラス球体、多孔質セラミック球体、石膏、不溶性塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、タルク、セラミック、ジルコニウム化合物、ゾノトラ石(結晶性ケイ酸カルシウムゲル)、軽量膨張クレイ、パーライト、蛭石、軽石、ゼオライト、鉱物、又は他の地質学的物質が包含される、請求項4記載の製品。
【請求項6】
製品であって、
繊維シートを備え、
少なくとも1部分の繊維シートが、繊維シートをより一層高い液体抵抗性にする生分解性組成物によって被覆又は含浸されており、
生分解性組成物が、
少なくとも生分解性重合体、及び
生分解性組成物の重量で少なくとも約30%の濃度において含有される少なくとも1種の無機充填材を含む、製品。
【請求項7】
生分解性組成物が約0℃よりも低いガラス転移温度を持つ少なくとも1種の軟質生分解性重合体を含む、請求項6記載の製品。
【請求項8】
生分解性組成物に更に少なくとも約10℃のガラス転移温度を持つ少なくとも1種の剛性生分解性重合体が含まれる、請求項7記載の製品。
【請求項9】
生分解性組成物にシリカが無機充填材として含まれる、請求項7記載の製品。
【請求項10】
製品がマイクロ波適用可能である、請求項9記載の製品。
【請求項11】
繊維シートが12−15lb/3000ft(およそ19.53−およそ24.41g/m)の薄葉紙からなる、請求項6記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−234266(P2009−234266A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133402(P2009−133402)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【分割の表示】特願2006−508437(P2006−508437)の分割
【原出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【出願人】(508223837)ビオテック ビオローギッシュ ナチューフェアパックンゲン ゲーエムベーハー ウント コンパニ カーゲー (1)
【Fターム(参考)】