説明

生殖器における腫瘍の標的指向化学療法

本発明は、人および動物の生殖器の癌腫を治療するための化学療法薬としての使用に適した、ジアルキルトリアゼンを有するエストロゲンおよび抗エストロゲンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍に対する化学療法剤、その調製方法、および疾病、特に癌の治療のための使用に適した、エストロゲンおよび抗エストロゲンに基づく新しい化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
正常細胞、癌細胞、そして生殖器の転移細胞はエストロゲンレセプター(=細胞質蛋白)を有するが、これについては"The nuclear receptor ligand-binding domain: structures and function" Curr. Opin. Cell Biol. 10, 384-391 (1998) を参照。性ホルモンの水酸基はエストロゲンレセプターに結合する能力を有しており、それ故に天然および合成の女性ホルモン(エストロゲン)とそのアンタゴニスト(抗エストロゲン)は生殖器の組織(乳房、子宮、卵巣、前立腺)への親和性を有する。
【発明の開示】
【0003】
エストロゲンレセプターは生殖器の癌細胞内に、例えば乳房腫瘍やその転移組織に、特に多く集積している(E. v. Angerer, The estrogen receptor as a target for rational drug design, pages 5, 49 and 137, Springer-Verlag, Heidelberg 1995)。これまでにエストロゲンに基づく分子が薬効基を腫瘍に運んで腫瘍を破壊すると期待して、例えば天然の女性ホルモンであるエストラジオール又はその合成ホルモンであるジエチルスチルブエストロールを薬効基や官能性を喪失させた窒素と連結させて、薬物を効かせるための標的としてエストロゲンレセプターを使用することが試みられてきた(G. Leclercq, Breast Cancer - Experimental and Clinical Aspects, 287-293, Pergamon, Oxford 1980; H. Hamacher, Potentielle Antineoplastika III, Arch. Pharm. 311, 184-195, Verlag Chemie, Weinheim 1978)。しかし、そのような試みはすべて失敗に終わっている。
【0004】
人間の生殖器の腫瘍に対する薬物開発のためには、人の腫瘍に非常によく似た動物モデルが必要であり、そのおかげで重要な試験結果を得ることができる。公知の “ハギンス腫瘍" (C. Huggins et al., Rapid induction of mammary carcinoma in the rat and the influence of hormones, J. Exper. Med. 109, 25 (1959)) は容易に発生させることができ、また例えば内分泌操作や通常の化学療法(例えば、エンドキサン(登録商標) = シクロフォスフォアミド1水和物)によって容易に破壊させることができる。
【0005】
これとは対照的に、雌ウィスターラットにベンジジンにより発生する腫瘍は、誘導により長い時間が必要とされ、(ヒト乳房腫瘍のように)約50%までしかホルモンに依存しない。その腫瘍は(ヒト乳房腫瘍のように)化学療法や他の治療術によって効果的な影響を受けることはない。このために、我々はベンジジンによって誘導される乳房腫瘍を用いてウィスターラットに望ましい適当な動物モデルを見いだした。
【0006】
驚くべきことに、ジアルキルトリアゼニル基を有するエストロゲンおよび抗エストロゲンは乳房腫瘍をもつラットに投与した後に腫瘍の縮退を引き起こすことを見いだした。選択的に乳房腫瘍組織を指向した治療ではその治療術から知られた副作用、例えば骨髄や腸上皮の損傷が無い。ジアルキルフェニルトリアゼンは一般的な非特異性の細胞分裂停止剤として知られている(Proc. Soc. Exper. Biol. Med. 90, 484 (1955) を参照)、アルキル化剤(エンドキサン)と同様に、ジアルキルフェニルトリアゼンはすべての体細胞の増殖に無差別に作用する。
【0007】
さらに、4-(3,3-ジメチル-1-トリアゼニル)-3-メトキシ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-オンはフッ素化合物(トリアゼニルをフッ素で置き換えた)の調製の中間体として知られている(J. Org. Chem. 46 (12), 2520-2528 (1981)を参照)。
【0008】
このように発明の対象はエストロゲンおよび抗エストロゲンであり、その中でそれぞれの分子は、4-(3,3-ジメチル-1-トリアゼニル)-3-メトキシ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-オンを除いて、少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置き換えられたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の思想においては“エストロゲン”および“抗エストロゲン”の用語には天然および合成の両方のエストロゲンおよび抗エストロゲン活性化合物を含む。エストロゲンおよび抗エストロゲン活性化合物としては、それぞれジアルキルトリアゼニル基置換体が本発明の化合物であり、基本的にはすべての化合物は“レセプター占有率”に相応するものであり、レセプター占有率は、以下に述べる“エストロゲンレセプターへの6,7-ジトリチウム-エストラジオールに対する拮抗的阻害の実験”の中で10mg/lのテスト物質を用いて得られるものであり、最大0.9であり、好ましくは最大0.7、特に好ましくは最大0.3である。
【0010】
本発明の概念においては“コア部を置き換えた”との用語は、エストロゲンおよび抗エストロゲンを基礎とする化合物の一またはそれ以上の芳香環に関するものである。
【0011】
特定の理論に結びつけることなく、本発明の成功は次のような言葉で説明されてもよい。すなわち、トリアゼニル基は水酸基のように明らかにエストロゲンレセプターに結合することができる。薬効基を標的すなわち腫瘍組織に導くために、エストロゲンおよび抗エストロゲン分子部分はキャリアーとして用いられ、ホルモンのような特異性を本発明化合物に付与している。癌細胞においては、薬効基が癌細胞の退縮を引き起こす。
【0012】
本発明の化合物には一定の官能基の導入によって望ましい特性をもたらすことができる。例えば、化合物の水への溶解度を親水性官能基の導入によって広い範囲で所望するようにコントロールすることができる。親水性官能基を有する本発明化合物のアルカリ又はアンモニウム塩は水によく溶ける。
【0013】
本発明による親水性官能基を有する化合物の一つの利点は、エストロゲンレセプターとの比較において、治療に要された量のうち、過剰分は癌細胞に集積されて、体内からはその過剰分は速やかに排出されうることである。そのために毒性となる副作用は最小限に抑えられる。
【0014】
本発明の化合物はホルモン様の特異性のために相対的に少量で必要量を満たす。
【0015】
本発明のキャリアとしては、例えば、ステロイド、スチルベン、ヘキセストロール、フェニル-1,2-ビス(2,6-ジクロロ-フェニル)-1,2-ビス(エチレンアミノエタン)、トリフェニルエチレン、フェニルベンゾフラン、フェニルベンゾチオフェンの群からのエストロゲンおよび抗エストロゲン誘導体、特に3位をベンゾイル基、4,5-ビス-フェニル-イミダゾール、2,3-ジアリルピペラジンおよび4,5-フェニル-2-イミダゾリンに置き換えられたものを使用することができる。いくつかの具体的なキャリアのタイプとしては以下のものが挙げられる。
【0016】
本発明の化合物は例えば次式のステロイドトリアゼンを含む。
【0017】
【化1】

【0018】
ここで、
R1 は水素, N=N-NR7AR7B, O(CR8R9)nCO2H, CO2H 又は SO3H,
R2 は OH, OCH3, N=N-NR7AR7B 又は O(CR8R9)nCO2H,
R3 は水素, N=N-NR7AR7B, O(CR8R9)nCO2H, CO2H 又は SO3H,
R4 およびR6 は互いに独立にH, O(CR8R9)nCO2H, (CR8R9)nCO2H 又は C6H4OCH2CO2H および
R4 はさらに (CH2)10CON(C1-C4-alkyl)2,
R5 は 水素 又はOH,
R7A および R7B は互いに独立にアルキル,
R8 および R9 は互いに独立にH, メチル 又はエチル,
X は CO, CHOH 又はC(OH)-C≡CH および
n は条件に応じて1から10までの整数、残基R1 から R3のいづれか一つのみがN=N-NR7AR7B
および、その塩、溶媒和物およびこれら塩の溶媒和物である。
【0019】
ステロイドトリアゼン(I)は、例えば次式のアミノ誘導体のジアゾ化により得ることができ、
【0020】
【化2】

【0021】
ここで残基R1 からR3 の一つはNH2 でありさらに残りのR1 から R6 および X は式Iの説明に記載したものを意味するが、あるいはその塩および次式のジアゾニウム塩生成物の反応により得ることができ、
【0022】
【化3】

【0023】
ここで、
Rは式IIであって、残基R1 から R3 の一つは (N2)+であり、その他の可変部は式IIの説明に記載したものを意味し、さらにYは酸アニオンであり、ジアルキルアミンを有し、必要により得られた塩から酸を放出することにより得ることができる。
【0024】
出発原料として例えば2-アミノ-3-カルボキシメトキシ-エストラジオールを使用することにより、その反応は次の図式1により説明できる。
【0025】
【化4】

【0026】
出発原料として使用されるアミノステロイドは公知、あるいは公知の調製法に類似した方法により調製できる。
【0027】
アミノステロイドIIの例としては例えば以下のものが含まれる、
1-アミノ-3-オキシアセチック-エストラジオール, 2-アミノ-3-オキシアセチック-エストラジオール, 4-アミノ-3-オキシアセチック-エストラジオール, 1-アミノ-3-オキシアセチック-エストロン, 2-アミノ-3-オキシアセチック-エストロン, 4-アミノ-3-オキシアセチック-エストロン, 1-アミノ-3-メトキシ-エストラジオール, 2-アミノ-3-メトキシ-エストラジオール, 4-アミノ-3-メトキシ-エストラジオール, 1-アミノ-3-メトキシ-エストロン, 2-アミノ-3-メトキシ-エストロン, 4-アミノ-3-メトキシ-エストロン, 1-アミノ-3-オキシアセチック-エストリオール, 2-アミノ-3-オキシアセチック-エストリオール, 4-アミノ-3-オキシアセチック-エストリオール, 1-アミノ-3-オキシアセチック-エチニル-エストラジオール, 2-アミノ-3-オキシアセチック-エチニル-エストラジオール, 4-アミノ-3-オキシアセチック-エチニル-エストラジオール, 2-アミノ-4-スルフォニック-エストラジオール, 4-アミノ-2-スルフォニック-エストラジオール, 2-アミノ-4-スルフォニック-エストロン および 4-アミノ-2-スルフォニック-エストロンである。
【0028】
エストロンの水酸基をトリアゼニル基(実施例11参照)に置き換えることによって、有効な癌化学療法薬が得られ、それはラットの乳癌に対して低用量で非常に良好な効果を示すものである。それゆえに、驚くべきことに、トリアゼニル基はエストロゲンレセプターにおける接着基として重要な水酸基に置き換わることができると結論づけられる。水酸基の(又はエステルの)最大結合特性がエストロゲンレセプターにおける抗腫瘍効果に利用される場合には、本発明においてはトリアゼニル基は2位又は4位が好ましい。
【0029】
既に上述の通り、水溶解性の目的のために本発明の化合物に親水性基を付加することが望ましいと言える。スルホン基やカルボン酸基およびそれらの基を有するC1-C6残基が親水性基として好ましい。たとえ付加的に置換される位置が複数になるという問題があるにしても、例えばコア部のスルホン化またはフェノールのヒドロキシル基のエステル化によって特に容易に芳香環に置換することができる。
【0030】
どの位置に置換されるのかとの情報に関しては、エストロン、エストラジオール又はエチニルエストラジオールは、たとえ2,4,7,11の位置に大きな置換基が存在しても、エストロゲンレセプターへは強い親和性を維持することは一定の指標になりうる(P. W. Jungblut et al., Hormon-Rezeptoren, Kolloquium der Gesellschaft fur physiologische Chemie vom 05.-08.04.1967 in Mosbach/Baden; M. Gorlich, Arch. Geschwulstforschung 37/2, 161-170 (1971))。
【0031】
【化5】

【0032】
このためにこれらの位置は置換についても好ましい。
【0033】
例えば、3位の位置に、カルボキシアルコキシ基、例えばカルボキシメトキシ基を可溶化基[塩としての(プロドラッグ)]として配置することができる。2位又は4位のいずれかにトリアゼニルが配置されれば、他方の位置(4位又は2位)に可溶化基、例えばカルボキシアルコキシ基又はスルホン酸基の塩を付加することができる。
【0034】
7位と11位はさらなる置換に使用することができ、例えば追加的な可溶化基(例えばカルボキシアルコキシ基)を付加することができ、このように必要に応じて置換基を導入することにより望ましい選択性を獲得する可能性がある。
【0035】
フェノールの水酸基をエステル化した化合物はプロドラッグとしての機能を果たす。すなわち、エストロゲンレセプターへの接着は3位のカルボキシメトキシ基により維持されると期待され、例としてメストラノールが挙げられる(E. Mutschler, Arzneimittelwirkungen, Lehrbuch der Pharmakologie およびToxikologie, page 368, Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft, Stuttgart 1997を参照)。化学療法剤の調製であるから、この場合には、薬物がエストロゲンレセプターに結合することが唯一重要であり、キャリアがエストロゲンであるか又は抗エストロゲンであるかどうかは重要ではない。
【0036】
エストロゲンのステロイドは乳癌に対してどの程度高い特異性とどれ程度高い効果を有するかの模範となり、エストロゲンレセプターに至適に結合し、ジアルキルトリアゼニル基の導入によりエストロゲンから合成することができる。さらにエストロゲンレセプターに結合するために、エストロゲンレセプターを含む生殖器(子宮、卵巣、前立腺)のすべての癌に対してこれら薬物が効果的であると推察されるに違いない。
【0037】
スチルベン:スチルベン、ジエチルスチルベストロールおよびヘキサストロールに由来する癌化学療法剤
さらに本発明の化合物としては次式のシス−およびトランス−スチルベンおよびヘキサストロールがある。
【0038】
【化6】

【0039】
ここで、
R は 水素、メチルまたはエチル、
R1 は水素、塩素、メチル、エチル、CH2CO2H, CH(CH3)CO2H, OCH2CO2H, OCH(CH3)CO2H
またはSO3H,
R2 は OH, OCH3, OCH2CO2H, OCH(CH3)CO2H または N=N-NR7AR7B,
R3 は好ましくは6位に、水素、塩素、またはN=N-NR7AR7B,
R4 は水素、メチル、エチル、CH2CO2H または CH(CH3)CO2H および
R7A と R7B は条件に応じて互いに独立にアルキルであり、R2 または R3 のいずれかはN=N-NR7AR7Bであり、
および、破線部結合は当該化合物がエタン並びにエチレン誘導体とその塩、溶媒和物およびこれら塩の溶媒和物の両方を含むことを示す。
【0040】
これら化合VIは例えば次式のアミノ誘導体のジアゾ化により得ることができ、
【0041】
【化7】

【0042】
ここで、
R3 は水素またはNH2 および
R4 は条件に応じて、水素、メチル、エチル、CH2CO2H または CH(CH3)CO2H
R2 または R3 のいずれかはNH2、 そして、
R, R1, R2, R7A, R7B および破線部結合は式VIの説明に記載したものを意味し、
あるいは、その塩および
次式のジアゾニウム塩生成物の反応により得ることができ、
【0043】
【化8】

【0044】
ここで、
R5 は式VIIであって、残基R2 と R3 の両方のうちの一方は (N2)+ であり、その他の可変部はそれぞれ式VIIの説明に記載したものを意味し、さらにYは酸アニオンであり、ジアルキルアミンを有し、必要により得られた塩から酸を放出することにより得ることができる。
【0045】
出発原料として例えば3,3'-ジアミノ-ジエチルスチルベストロール(H. Hamacher, Potentielle Antineoplastika III, Arch. Pharm. 311, 184-195, Weinheim 1978) を使用することによって、反応は次の図式2により説明できる。
【0046】
【化9】

【0047】
1または2の次式のアルキル化剤に相当するものと3,3'-ジ-(ジアルキルトリアゼニル)- ジエチルスチルベストロールの引き続く反応により、
【0048】
【化10】

【0049】
ここで、
R6 は C1-C3-アルキル, CH2CO2CH3 または CH(CH3)CO2CH3 であり、 および
Y は アルキル化剤の開裂基であり、
その対応するアルキル化生成物を得ることができ、次の図式3を参照する。
【0050】
【化11】

【0051】
上記図式3におけるR6が例えばCH2CO2CH3である場合には、二ナトリウム塩は塩基性の加水分解、例えばNaOHを用いて、ビス−エステルから得ることができる(図式4)。
【0052】
【化12】

【0053】
本発明の化合物としては、例えば次式のトリフェニルエチレン誘導体がある。
【0054】
【化13】

【0055】
ここで、
R は水素、塩素、クロロメチルまたはエチル、
R1 は OCH2CO2H または OCH(CH3)CO2H、
R2 と R4 は互いに独立に水素、SO3H または N=N-NR7AR7B
R3 とR5 は互いに独立に水素、OH、 OCH3、OCH2CO2H、 OCH(CH3)CO2H または
N=N-NR7AR7B であり、そして
R7A と R7B は条件に応じて互いに独立にアルキルであり、残基R2 から R5 の一つのみがN=N-NR7AR7Bであり、
および、その塩、溶媒和物およびこれら塩の溶媒和物である。
【0056】
本発明の化合物XVIは、例えば次式のアミノ誘導体のジアゾ化によって得ることができ、
【0057】
【化14】

【0058】
ここで、
R2 と R4 は 互いに独立に水素、NH2 、またはSO3H,
R3 と R5 は 互いに独立に水素、NH2、 OH、 OCH3、 OCH2CO2H または OCH(CH3)CO2Hであり、そして
R と R1 は、条件に応じて、式XVIの説明に記載したものを意味し、残基R2 から R5 の一つのみが NH2であり、
またはその塩、および次式のジアゾニウム塩生成物の反応によって得ることができ、
【0059】
【化15】

【0060】
ここで、
R6 は式XVIaであって、残基R2 から R5 の一つが (N2)+ であり、その他の可変部は式XVIaの説明に記載したものを意味し、さらにY-は酸アニオンであり、ジアルキルアミンを有し、必要により得られた塩から酸を放出することによって得ることができる。
【0061】
出発原料として例えばアミノ化合物XVIIIを使用することによって、反応は次の図式5により説明できる。
【0062】
【化16】

【0063】
メチルエステルXIXの塩基性の加水分解により、ナトリウム塩XXが図式6により得ることができる。
【0064】
【化17】

【0065】
上記に示した模範的な方法では、癌化学療法剤はトリアゼニル基の導入によりどのようなエストロゲン様化合物からも調製することができる。例えば、
【0066】
【化18】

【0067】
矢印は好ましいトリアゼニル−(Tr)と可溶化基(sb)の位置を示す。
【0068】
そして、さらに本発明の対象はエストロゲンおよび抗エストロゲンの調製方法であり、4-(3,3-ジメチル-1-トリアゼニル)-3-メトキシ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-オンを除外して、その方法では各分子が少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置換され、その結果、少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル置換基が、エストロゲンまたは抗エストロゲン活性化合物の一またはそれ以上の芳香環に導入される。
【0069】
本発明の範囲では生理的に許容される塩が塩として好ましい。
【0070】
生理的に許容される塩、好ましくは化合物I, II, VI, VII, XVI および XVIaの生理的に許容される塩は、通常は塩基の塩であり、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類の塩(例えばカルシウムやマグネシウム塩)およびアンモニウム塩などであるが、それらはアンモニアや1から16炭素原子の有機アミン、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、 エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス-ヒドロキシエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N-メチルモルフォリン、ジヒドロアビエチルアミン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびメチルピペラジンから得られる。
【0071】
本発明の範囲ではそのような化合物の形態は溶媒和化合物と称され、固相または液相で配位により溶媒分子と複合体を形成する。水和物は溶媒和化合物の特別な形態であり、水との配位が起こっている。アルキルそれ自体とdialkylamine およびcarboxyalkoxyにおける
"alkyl" および"alk" は、一般的には1から6個、1から4個または1から3の炭素原子を有する直鎖状または分岐したアルキル残基を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、第三級ブチル、n-ペンチル、およびn-ヘキシルが挙げられる。
【0072】
ジアゾ化は公知であり、例えば、Organikum, 10. Ed., VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften, Berlin 1971, 580-600 を参照できる。
【0073】
本発明の範囲における酸アニオンは特に、鉱酸、カルボン酸、スルホン酸であり、例えば、その塩酸塩、 臭化水素酸塩、 硫酸塩、燐酸塩、 メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、タウロスルホン酸塩、ベンゾスルフォン酸塩、ナフタリンジスルフォン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩および安息香酸塩である。
【0074】
本発明の範囲におけるアルキル化剤の開裂基は、例えば塩化物、臭化物、硫酸塩からなる。
【0075】
さらに本発明は、疾患の治療のために少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置換したエストロゲンおよび抗エストロゲンを対象とする。
【0076】
さらに本発明は、人間および動物の生殖器の腫瘍に対しての、少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置換したエストロゲンおよび抗エストロゲンの使用を対象とする。
【0077】
さらに本発明は、少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置換したエストロゲンおよび抗エストロゲンの群から少なくとも一つの化合物を十分量に投与することにより、人間および動物の生殖器の腫瘍を治療する方法を対象とする。
【0078】
さらに本発明は、人間および動物の生殖器の腫瘍に対しての医薬品の調製のための、少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置換したエストロゲンおよび抗エストロゲンの使用を対象とする。
【0079】
さらに本発明は、少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置換したエストロゲンおよび抗エストロゲンの群から少なくとも一つの化合物を含有した、必要により一つまたはそれ以上の薬理学的に許容される補助剤または基剤を混合した、医薬品並びに上述の目的のためのその使用を対象とする。
【0080】
本発明の化合物は、全身的におよび/または局所的に有効となりうる。この目的のために、適切な投与経路、例えば、経口、非経口、経肺、経鼻、経舌下、経舌、経頬側、経直腸、経皮、経結膜、経耳または埋込により投与することができる。
【0081】
これら投与経路に応じて薬物を適した剤形に処方することができる。
【0082】
経口投与に適した処方剤形が知られており、それは薬物を速やかにかつ/あるいは改良された剤形で送達し、例えば、錠剤(非被膜錠並びに被膜錠があり、例えば錠剤または胃液に溶解しない被膜を用いた被膜錠)、カプセル剤、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、散剤、乳剤、懸濁剤、液剤、およびエアロゾルが挙げられる。
【0083】
非経口投与は吸収段階を回避することによって(静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内、腰椎内経路によって)、あるいは吸収段階を含むことによって(筋肉内、皮下、皮内、経皮、腹腔内経路によって)行われる。非経口投与に適した剤形は、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥物および無菌粉末の注射および点滴製剤が挙げられる。
【0084】
他の投与経路に適したものは、例えば、吸入薬処方(例えば、粉末吸入器やネブライザー)、鼻滴剤/鼻液剤、スプレー剤、舌、舌下または頬側投与用に処方された錠剤またはカプセル剤、坐剤、点耳および点眼剤、膣カプセル、水溶性懸濁剤(ローション、混合攪拌液)、油性懸濁剤、軟膏剤、クリーム剤、乳剤、ペースト剤、分散粉末剤、または埋込剤が挙げられる。
【0085】
薬物は公知の手法により上述の処方剤形に加工される。これは不活性な、毒性のない、薬剤学的に適した補助剤を使用することによって為される。含有するものは、例えば、基剤(例えば、微結晶性セルロース)、溶剤(例えば、液状ポリエチレングリコール)、乳化剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、分散剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、合成および天然の生体高分子(例えば、アルブミン)、安定化剤(例えば、アスコルビン酸のような抗酸化剤)、着色剤(例えば、酸化鉄のような無機色素)、あるいは香料および/または着臭剤である。
【0086】
通常、有効な結果を得るためには、非経口処方の場合には約1 − 20 mg/kg体重の投与量が推奨されるが、好ましくは約2.5 − 10 mg/kg体重の投与量が推奨される。経口処方の場合には、約1 − 70 mg/kg体重、好ましくは約1 − 30 mg/kg体重の投与量が推奨される。
【0087】
言うまでもなく、必要に応じて、体重、投与経路、薬物に対する個人差、剤形、および投与時間または投与間隔、投与する部位によって上述の量から増減することができる。このように、ある場合には上述の最低量よりも少ない投与量で十分であろうし、一方で上述の最大量超えなければならない場合もあろう。より多くの量を投与する場合には、それらをいくつかの個別用量に日を分けて分割することが望ましいといえる。
【0088】
試験腫瘍の産生
20匹の雌ウィスターラットをベンジジンで処理する。最初のベンジジンの投与量は150 mg/kgであり、その後投与量は毎週100 mg/kgに減量する。そして、75 mg/kgの投与を14日以内の間隔で継続する。結果として合計の投与量が1.225 g/kgとなる。
【0089】
合計で29の乳癌が産生される。ベンジジン処理したウィスターラットの平均余命は325日である。
【0090】
最初の腫瘍(約0.5 g)が産生した後、ベンジジン処理を中止する。その後、乳癌腫は比較的速やかに成長する。その腫瘍サイズは視覚的に測定されるが、熟練した実験者は0.1 gまで精密に測定できる。0.5 gを超える腫瘍が試験に使用される。
【0091】
エストロゲンレセプターに結合する6,7-ジトリチウム-エストラジオールに対する本発明の化合物による拮抗阻害の実験
本試験では比放射能0.5 Ci/mmolの 6,7-ジトリチウム-エストラジオールが用いられる。
【0092】
ラットの子宮癌および乳癌から厚さ0.7 mm 面積0.5 cm2 の組織サンプルを組織カッターにより準備する。その癌は最低重量1.5 gの組織サンプルになる。
【0093】
組織サンプルの処理
子宮癌および乳癌からの組織サンプルを本発明の化合物 5, 10, 15, 20, 35および 50 mg/lの濃度に調製した生理塩水で処理する。
【0094】
その後すべての組織サンプルを洗浄し、10-9 mol/lすなわち生理的濃度の6,7-ジトリチウム-エストラジオールを含む生理塩水で1時間再びインキュベートする。
【0095】
対照
上述のとおり準備されるが、非処理である組織サンプルを生理塩水で1時間インキュベートする。
【0096】
インキュベーションの後、すべてのサンプルを洗浄し、4 % ホルマリンに浸ける。その後、乾燥させ、秤量し、燃焼させる。燃焼灰をシンチレーション液に分散し、その活性を液体シンチレーションカウンターで測定する。一定時間の乾燥灰mg当たりの閃光数値より取り込まれた6,7-ジトリチウム-エストラジオールの量を測定し、本発明の化合物により置き換えられたエストロゲンレセプターの数を間接的に測定する。本発明により処理されたラットから得られた閃光数値と非処理のラットから得られた閃光数値の比率は、この発明の目的から、“レセプター占有率”(エストラジオールによる占有率を意味する)と称する。このように、その比率が低いほど、本発明化合物がより強くエストロゲンレセプターを占有すると言え、本試験に用いられたエストラジオールは(本発明の化合物によって)占有されていないレセプターしか占有することができない。
【0097】
被験組織の性質により、組織サンプル当たりのエストロゲンレセプターの数は一定の幅で変動する。このように、例えば(腫瘍組織の異なる濃度のために)隣接する乳癌の組織サンプルのエストロゲンレセプターの数は相違しうる。それ故に、同時に3サンプルの試験をおこない、平均値を算出することが推奨される。
【0098】
本試験により選択された本発明の化合物の処理量が相対的に高い場合には、本発明の化合物により占有されうるレセプターがすでに最初の処理量で占有されてしまい、増量をしても大した効果を示さない。
【0099】
乳癌細胞に対する本発明化合物の細胞傷害効果の定性的な実験
このチミジン試験を用いて腫瘍成長を容易に調べられる。それ以上チミジンが細胞に取り込まれなくなれば、腫瘍成長は停止する。
【0100】
非処置のラットおよび本発明の化合物により処理されたラットはトリチウムで標識されたチミジンの食餌が与えられる。
【0101】
オートラジオグラフには非処理の対照群の腫瘍組織に多くの標識された細胞が示される。トリチウムで標識された細胞はオートラジオグラフでは多くの黒点(写真乾板上の強い銀沈殿)により識別される。これらの点は腫瘍細胞の強い成長およびそこに結合したヌクレオシドチミジンの取り込みを示す信号である。
【0102】
本発明の化合物で処理されたラットの場合には、小さな腫瘍はゆっくりと消失する一方、大きな腫瘍は壊死が起こる。
【0103】
本発明の化合物を1日あたり20 mg/kgで20日間処理したラットの乳癌では、トリチウムで標識したチミジンの食餌後、オートラジオグラフにチミジンの取り込みは示されず、少なくとも腫瘍細胞の成長は停止した。
【0104】
次の実施例における百分率は、特に示さない限り、重量百分率であり、割合は重量割合である。溶媒率、希釈率および液/液溶液の濃度はそれぞれの場合における体積をいう。
【実施例】
【0105】
出発物質(Aと称する)の調製の例示と調製例
すべての調製は薄相クロマトグラフ(silica 60 F 254, Merck, Darmstadt)により純度を調べた。NMRスペクトルを自製したすべての出発物質およびすべての本発明化合物について記録した。それらは想定された構造に一致した。
【0106】
I.ステロイド: 実施した反応の反応スキームは以下の通り:
【0107】
【化19】

【0108】
【化20】

【0109】
出発物質として使用されるニトロ化エストロン、エストラジオールおよびそこから調製されたアミノ化合物は公知であるか、または公知方法に類似して調製することができる( St. Kraychy, Am. Soc. 81, 1702 (1959) を参照) 。
【0110】
実施例A1:2- および 4-ニトロエストロンの調製
【0111】
【化21】

【0112】
35℃から40℃の純粋な酢酸1000 mlに溶解した40 gのエストロン溶液に、ゆっくりと攪拌しながら、16.48 mlの濃硝酸を滴下しながら添加する。24時間攪拌する。4-ニトレストロンが淡黄色結晶として沈殿し、吸引により抽出し、エタノールから再結晶される。
【0113】
収量:9 gの4-ニトロエストロン 融点 270℃
ろ過物を4000 mlの水に混ぜ、沈殿した未精製の生成物を吸引抽出し、乾燥させる(収量45 g )。精製は酸化アルミニウム(Fa. Woelm)のカラムクロマト、AKT. St. I acidicにより行う。未精製生成物を加温下300 ml のベンゼンに溶解し(最大15 g )、準備したカラム(高さ120 cm、直径4.5 cm)にゆっくりとピペットにより滴下する。その後、DCコントロール下でベンゼンにより溶出する。
【0114】
その溶液を濃縮し、残存する2-ニトロエストロンを単離する。
【0115】
収量(3回のカラムから):25gの2-ニトロエストロン;融点 180℃

実施例A2:2-ニトロ-3-メトキシエストロン
【0116】
【化22】

【0117】
実施例A1から16 g の2-ニトロエストロン、750 ml のエタノールおよび750 ml の10 %水酸化カリウム水溶液からなる溶液に、35℃にて6時間以内に窒素雰囲気下で480 mlのジメチル硫酸を滴下添加する。その溶液を塩基性に保ち、必要であれば45%水酸化カリウム水溶液を滴下添加する。その溶液を淡黄色で塩基性を維持するまで攪拌する。その後、約5℃に冷却し、沈殿生成物を吸引抽出し、希釈した水酸化カリウム水溶液および水で洗浄、乾燥し、エタノール/トルエン(1:1)で再結晶する。
【0118】
収量:15.7g ;融点 154℃

実施例A3:3-メトキシ-4-ニトロエストロン
【0119】
【化23】

【0120】
実施例A1の化合物から、実施例A2にしたがって標記の化合物を調製する。
【0121】
収量:2.1g; 融点259℃

実施例A4:2-アミノ-3-メトキシエストロン
【0122】
【化24】

【0123】
実施例A2から5 gの2-ニトロ-3-メトキシエストロン、4 g のチオ硫酸ナトリウム、800 mlのアセトンおよび160 mlの0.5 N水酸化ナトリウムからなる溶液を35分間環流下加熱し、160 mlの0.5 N水酸化ナトリウム中に3.2 gのチオ硫酸ナトリウムを含む溶液を加え、その溶液を50分間環流下加熱する。その後、400mlの水を加え、減圧下アセトンを除去する。得られた懸濁液を冷却し、結晶を吸引抽出、水で洗浄、乾燥し、メタノールで再結晶する。
【0124】
収量:4.2g; 融点 155℃

実施例A5:3-メトキシ-4-アミノエストロン
【0125】
【化25】

【0126】
実施例A3の化合物から、実施例A4にしたがって標記の化合物を調製する。
【0127】
収量:0.6g ; 融点 183℃

実施例A6:2-アミノ-3-メトキシエストロール
【0128】
【化26】

【0129】
実施例A4からの1 gの2-アミノ-3-メトキシエストロン、200 mlのメタノールおよび0.44 gのホウ化水素ナトリウムの混合物をDCコントロール化で40℃から50℃で反応が終了するまで攪拌する(14時間)。その後、4 mlの純酢酸を加え、メタノールを減圧除去する。残分を加温下、希塩酸に溶解し、水酸化ナトリウムにより標記化合物を沈殿させ、その懸濁液を冷却し、沈殿生成物を吸引抽出し、乾燥する。
【0130】
収量:0.6g;融点 160g

実施例A7:3-メトキシ-4-アミノエストロール
【0131】
【化27】

【0132】
実施例A5の化合物から実施例A6にしたがって標記の化合物を調製する。
【0133】
収量:0.4g 融点;176℃

実施例8:2-(1,1-ジメチルトリアゼニル)-3-メトキシエストロン
【0134】
【化28】

【0135】
0℃から4℃下にて、3 mlの水に溶解した0.55 gの亜硝酸ナトリウムを、2.3 gの実施例A4の2-アミノ-3-メトキシエストロン、160 mlの水及び1.2 mlの濃塩酸(37%)からなる溶液に滴下添加する。そして、得られたジアゾニウム塩を速やかに0℃から4℃下にて0.95 gの炭酸ナトリウム、1 mlの40%ジメチルアミン水溶液および40 mlの水からなる溶液に移す。1時間攪拌後、固体生成物を吸引抽出し、乾燥、少量のトルエンで再結晶する。
【0136】
収量:1.5g; 融点 168℃

実施例9: 3-メトキシ-4-(1,1-ジメチルトリアゼニル)エストロン
【0137】
【化29】

【0138】
実施例A5の化合物から実施例8にしたがって標記の化合物を調製する。
【0139】
収量:1.5g 融点;142℃

実施例10: 2-(1,1-ジメチルトリアゼニル)-3-メトキシエストロール
【0140】
【化30】

【0141】
実施例A6の化合物から実施例8にしたがって標記の化合物を調製する。
【0142】
収量:3g 融点;135℃

実施例11: 3-(1,1-ジメチルトリアゼニル)-エストロン
【0143】
【化31】

【0144】
2.7 gの3-アミノエストロン、40 mlの水および2 mlの濃塩酸(37%)からなる溶液に、0℃から4℃下で、0.7 gの亜硝酸ナトリウムと10 mlの水からなる溶液を滴下添加する。その後、得られたジアゾニウム塩溶液を1.2 gの炭酸ナトリウム、1.2 mlの40 % ジメチルアミン溶液および20 mlの水からなる溶液に移す。1時間攪拌後、標記化合部を吸引抽出し、乾燥し、少量のリグロインで再結晶する。
【0145】
収量:2g;融点 168℃

実施例12: 3-(1,1-ジメチルトリアゼニル)-エストロール
【0146】
【化32】

【0147】
200 mlのメタノールに実施例11の3-(1,1-ジメチルトリアゼニル)-エストロン1 g を含む溶液に、0.44 g のホウ化水素を添加する。その溶液を40℃から50℃、DCコントロール下にて完全に反応するまで攪拌する(14時間)。その後、4 mlの純酢酸を加え、減圧下メタノールを除去する。残分を水で分散し、標記の化合物を吸引抽出し、乾燥する。
【0148】
収量:1g;融点 138℃

II.スチルベン
実施例のスチルベンはウィティングオレフィン反応(G. Wittig, Angew. Chem. 68, 505) により調製された。
【0149】
ウィティングオレフィン反応を介したニトロスチルベンの合成では、パラ−置換型ベンズアルデヒドがオルソ−置換型ベンズアルデヒドに変換した場合には、ウィティングオレフィン反応によりシス−スチルベン画分が増加することを初めて見いだした。酢酸エチル基がアルデヒド基のオルソ位に配置された場合には、シス−スチルベンが100 %となる。
【0150】
明らかにそのシス画分はアルデヒドのベンゼンコアにおける置換基の型と大きさに関係する。
【0151】
出発原料として使用した化合物は公知であるか、あるいは公知の方法に類似して調製することができる。
【0152】
実施した反応の反応スキームは以下の通り:
【0153】
【化33】

【0154】
【化34】

【0155】
実施例A13:(4-ニトロベンジル)-トリフェニルフォスフォニウムクロライド
【0156】
【化35】

【0157】
263 g(1 mol)のトリフェニルホスフィン、172 g(1 mol)の4-ニトロベンジルクロライドおよびトルエンからなる溶液を沸点で15時間攪拌する。反応混合物を冷却し、その結晶を吸引抽出し、トルエンで洗浄する。
【0158】
収量:344 g ;融点 280℃

実施例A14: (2-フォルミルフェノキシ)-エチルアセテート
【0159】
【化36】

【0160】
50℃攪拌下、167 g(1 mol)のブロモエチルアセテートを、122 g(1 mol)の2-ヒドロキシベンゾアルデヒド、1 molのメチラートナトリウム(メチル酸溶液中で)および1.5 l のアセトニトリルからなる溶液に滴下添加し、その溶液を70℃にて7時間攪拌する。その後、その反応溶液を2 l の氷冷水に移す。分離した油を500 mlのジクロロメタンで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥し、ジクロロメタンを真空下除去する。残った油を結晶化させる。
【0161】
収量:180 g ;融点48℃

実施例A15: (4-フォルミルフェノキシ)-エチルアセテート
【0162】
【化37】

【0163】
本化合物は、4-ヒドロキシベンズアルデヒドから実施例A14にしたがい調製する。
【0164】
収量:195g;融点43℃

実施例A16:{2-[(Z)-2-(4-ニトロフェニル)-エチニル]-フェノキシ}-エチルアセテート
【0165】
【化38】

【0166】
0℃から5℃下、218 g の実施例A13のフォスフォニウム塩および0.5 molのメチラートナトリウム溶液を104 g(0.5 mol)の実施例A14のアルデヒドと750 mlのエタノールからなる溶液に分割して(それぞれ脱色後に)同時に添加する。反応液の脱色後、不溶物から分離する。濾過物は溶媒を取り除き、残分を400 mlのフォスフォリック-トリス-(ジメチルアミド)で分散する。0℃下、その溶液からトリフェニルフォスフォイノキシドが沈殿し、それを吸引抽出する。
【0167】
2 mlの氷冷水をその濾過物に添加したのち、沈殿した油を3 l のベンゼンで抽出し、溶媒を除去し、残分を500 mlのイソプロパノールに攪拌し、冷却後、結晶生成物を吸引抽出する。
【0168】
収量:105 gの純粋なシス化合物 ;融点70℃

実施例A17: {2-[(E)- および {2-[(Z)-2-(4-ニトロフェニル)-エチニル]-フェノキシ}-エチルアセテート
【0169】
【化39】

【0170】
0℃から5℃下、218 gの実施例A13のフォスフォニウム塩および0.5 molのメチラートナトリウムの溶液を、104 g(0.5 mol)の実施例A15のアルデヒドおよび750 mlのエタノールからなる溶液に分割して(それぞれ脱色後に)同時に添加する。反応液の脱色後、沈殿した結晶を吸引抽出し、エタノールで再結晶する。純粋なトランス化合物が得られる。
【0171】
収量:51 g;融点118℃
シス画分を単離するには実施例A16に述べる通りに実施する。
【0172】
収量:48 g;融点59℃

実施例A18: ソディウム-2-[(E)- および-2-[(Z)-2-(4-ニトロフェニル)-エチニル]-ベンゾルスルフォネート
【0173】
【化40】

【0174】
500 mlのメタノールに83.2 g(0.4 mol)のソディウム-ベンズアルデヒド-2-スルフォネートを溶解した溶液に、0.4 molのメチラートナトリウム(メチル酸溶液中の)を添加する。得られた溶液に0℃攪拌下、173 gの実施例A13のフォスフォニウム塩および400 mlのメタノールを滴下添加する。反応溶液の脱色後、溶媒を真空下除去し、残分を300 mlの水で泥状化し、冷気下吸引抽出する。
【0175】
その固形生成物を1 l のジメチルエーテルで泥状化し、吸引抽出、空気乾燥し、その後1.3 lのニトロメタンで煮沸し、不溶物残分(トランス化合物)から吸引抽出する。シス化合物を冷却下、結晶化する。
【0176】
シス化合物収量:53 g ;融点 247℃(ニトロメタンからの抽出物)
トランス化合物収量:20 g ;融点 323℃

実施例A19: ソディウム-2-[(E)-2-(4-アミノフェニル)-エチニル]-ベンゾルスルフォネイト
【0177】
【化41】

【0178】
60 mlのエタノールに16 gの実施例A18のシス-ニトロ化合物からなる溶液に、80℃下 17.5 gのNa2S x 9H2O と20 mlの水からなる溶液を滴下添加し、1時間攪拌する。その後、溶媒を真空下除去し、残分をニトロメタンから再結晶する。
【0179】
収量:13 g ;融点 360℃以上

実施例A20: {2-[(Z)-2-(4-アミノフェニル)-エチニル]-フェノキシ}-エチルアセテート
【0180】
【化42】

【0181】
60 mlの水に16 gの塩化アンモニウムからなる溶液を最高30℃で攪拌下、65.4 g(0.2 mol)の実施例A16のニトロ化合物、800 ml のアセトンおよび200 g の亜鉛粉の混合液にゆっくりと滴下添加する。その後20時間攪拌する。その後、亜鉛を吸引抽出し、加熱下1 l のアセトンで洗浄する。そのアセトン溶液を煮詰める。その残分を800mlの水と25mlの濃塩酸に溶解し、ただちに酢酸エチルで2回抽出する。その後、すみやかに水酸化ナトリウムで弱塩基性に調整し、ただちに酢酸エチルで再度抽出する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を真空下除去する。
【0182】
収量:55g,茶色油 粗生成物はさらに処理される。
【0183】
実施例A21: {2-[(E)-4-(4-アミノフェニル)-エチニル]-フェノキシ}-エチルアセテート
【0184】
【化43】

【0185】
実施例A17のトランス-ニトロスチルベンから実施例A20にしたがい標記の化合物を調製する。
【0186】
収量:45 g,黄色結晶 ;融点118℃

実施例A22: {2-[(Z)-4-(4-アミノフェニル)-エチニル]-フェノキシ}-エチルアセテート
【0187】
【化44】

【0188】
実施例A17のシス-ニトロスチルベンから実施例A20にしたがい標記の化合物を調製する。
【0189】
収量:35 g,黄色油

実施例A23: [4-((Z)-2-{4-[(1E)-3,3-ジメチル-1-トリアゼニル]-フェニル}-エチニル)-フェノキシ]-エチルアセテート
【0190】
【化45】

【0191】
50℃に熱した80 mlの水、600 mlのエタノールおよび60 mlの濃塩酸の混合液に71 g の実施例A22のシス-アミノスチルベンをすみやかに移し、その混合物を強く攪拌し、0℃に急冷する。その後、すみやかに18 g の亜硝酸ナトリウムと70 ml の水からなる溶液を混合し、1時間0℃で攪拌する。そして、この溶液を80 g の40 % ジメチルアミン水溶液、120 gの炭酸ナトリウムおよび1 l の水からなる混合液に0℃下強く攪拌しながらすみやかに混合する。
【0192】
1時間室温で攪拌し、反応生成物を吸引抽出し、乾燥し、粗生成物としてさらに処理する。
【0193】
収量:63 g

実施例24: [4-((E)-2-{4-[(1E)-3,3-ジメチル-1-トリアゼニル]-フェニル}-エチニル)-フェノキシ]-エチルアセテート
【0194】
【化46】

【0195】
0.033 molの実施例A21のトランス-アミノスチルベンから実施例23にしたがい標記の化合物を調製する。
【0196】
収量:7 g,融点113℃

実施例25: [2-((E)-2-{4-[(1Z)-3,3-ジメチル-1-トリアゼニル]-フェニル}-エチニル)-フェノキシ]-エチルアセテート
【0197】
【化47】

【0198】
0.2 molの実施例A20のシスーアミノスチルベンから実施例23にしたがい標記の化合物を調製する。淡黄色の油を粗生成物としてさらに処理する。
【0199】
収量:55 g

実施例26: ソディウム-[2-((Z)-2-{4-[(1E)-3,3-ジメチル-1-トリアゼニル]-フェニル}-エチニル)-フェノキシ]-アセテート
【0200】
【化48】

【0201】
35.3 g の実施例25のトリアゼニルスチルベンエステルと850 ml のエタノールからなる沸騰した溶液に、50 g の10 % 炭酸ナトリウム溶液を混合し、環流下さらに20分加熱する。その後、300 mlの水と350 mlの飽和した塩化ナトリウム水溶液を添加する。標記の化合物が沈殿し、吸引抽出し、乾燥し、アセトニトリルで再結晶する。
【0202】
収量:33 g,ベージュ色;融点72℃

実施例27: ソディウム-[4-((Z)-2-{4-[(1Z)-3,3-ジメチル-l-トリアゼニル]-フェニル}-エチニル)-フェノキシ]-アセテート
【0203】
【化49】

【0204】
35.3 g の実施例24のトランス-トリアゼニルスチルベンエステルと850 ml のエタノールからなる沸騰した溶液に、50 g の10 % 炭酸ナトリウム溶液を混合し、環流下さらに20分加熱する。その後、300 mlの水を添加し、沈殿したナトリウム塩を吸引抽出する。
【0205】
収量:30g

実施例28: [4-((Z)-2-{4-[(1Z)-3,3-ジメチル-1-トリアゼニル]-フェニル}-エチニル)-フェノキシ]-酢酸
【0206】
【化50】

【0207】
5 gの実施例27の化合物を250 ml のフォスフォリック-トリス-(ジメチルアミド)と250 mlの水の混合液に加温下、溶解する。その後、40℃まで冷却し、吸引抽出する。ろ過物を30℃に冷却し、60 mlの純酢酸と混合する。さらに冷却しながら、すみやかに50 mlの氷冷水と30 mlの純酢酸を添加する。10分後、標記の化合物を吸引抽出する。
【0208】
収量:3 g ;融点170℃

実施例29: トリエタノールアンモニウム-[4-((Z)-2-{4-[(1Z)-3,3-ジメチル-1-トリアゼニル]-フェニル}-エチニル)-フェノキシ]-アセテート
【0209】
【化51】

【0210】
実施例28の化合物はトリエタノール塩の結晶形で10%水溶液として生物学的試験に適合する。
【0211】
実施例30: ソディウム-2-((Z)-2-{4-[(1E)-3,3-ジメチル-1-トリアゼニル]-フェニル}-エチニル)-ベンゾルスルホネート-ジハイドレート
【0212】
【化52】

【0213】
15 g の実施例A19のシス-アミノスチルベン、10 mlの水および24 mlの濃塩酸からなる溶液に、0℃下3.5 gの亜硝酸ナトリウムおよび5 mlの水からなる溶液を滴下添加し、10分間攪拌し、その結果物であるジアゾニウム塩溶液を30 gの炭酸ナトリウム、60 mlの水および7 gの40 % ジメチルアミン水溶液からなる溶液にすみやかに滴下添加する。40分攪拌し、結晶の反応生成物を吸引抽出し、アセトニトリルで再結晶する。
【0214】
収量:17g

III.トリフェニルエチレン誘導体

反応スキーム
【0215】
【化53】

【0216】
実施例A31: 1-[ブロモ-(4-メチルフェニル)-メチル]-4-メチルベンゼン
【0217】
【化54】

【0218】
1.7 l のベンゼン中の100 g のビス-(4-メトキシフェニル)-カルビノールと46 g の塩化カルシウムの懸濁液に、臭化水素酸を飽和するまで導入する。その結果物の塩を吸引抽出し、濾過物を還元する。
【0219】
収量:98 g

実施例A32:[ビス(4-メトキシフェニル)-メチル]-トリフェニルフォスフォニウムブロマイド
【0220】
【化55】

【0221】
実施例A31の臭化物から実施例A13にしたがい標記の化合物を調製する。
【0222】
収量:99 g

実施例A33: 1-[2,2-ビス(4-メトキシフェニル)-ビニル]-4-ニトロベンゼン
【0223】
【化56】

【0224】
実施例A32のフォスフォニウム塩と4-ニトロベンズアルデヒドから実施例A17にしたがい標記の化合物を調製する。
【0225】
収量:14 g

実施例A34: 4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4-ニトロフェニル)-ビニル]-フェノール
【0226】
【化57】

【0227】
150 g の実施例A33の化合物と300 ml のピリジンの混合物に380 g の濃塩酸を滴下添加する。その後反応溶液を3時間150℃に加熱する。その後2 l の氷冷水に注ぎ、塩酸で明らかな酸性に調整し、標記の化合物を吸引抽出し、水で洗浄し、乾燥する。
【0228】
収量:110 g

実施例A35: {4-[1-[4-(2-エトキシ-2-オキソエトキシ)-フェニル]-2-(4-ニトロフェニル)-ビニル]-フェノキシ}-エチルアセテート
【0229】
【化58】

【0230】
実施例A34のフェノールから実施例A14にしたがい標記の化合物を調製する。
【0231】
収量:14 g

実施例A36: {4-[1-[4-(2-エトキシ-2-オキソエトキシ)-フェニル]-2-(4-アミノフェニル)-ビニル]-フェノキシ}-エチルアセテート
【0232】
【化59】

【0233】
実施例A35のニトロ化合物から実施例A20にしたがって標記の化合物を調製する。
【0234】
収量:13 g

実施例A37: ジソディウム-(4-{2-(4-アミノフェニル)-1-[4-(2-オキシド-2-オキソエトキシ)-フェニル]-ビニル}-フェノキシ)-アセテート
【0235】
【化60】

【0236】
13 g の実施例A35のエステル、20 ml の水および5.3 g の水酸化カリウムからなる混合液を環流下5時間加熱する。その後、生成したアルコールを除去し、結晶残分を50 ml の水で分散し、吸引抽出し、乾燥する。
【0237】
収量:10g

実施例38: ジソディウム-(4-{2-{4-[(1E)-3,3-ジメチル-1-トリアゼニル]-フェニル}-1-[4-(2-オキシド-2-オキソ-エトキシ)-フェニル]-ビニル}-フェノキシ)-アセテート
【0238】
【化61】

【0239】
10 g の実施例A37の2ナトリウム塩、2 g の水酸化ナトリウム、1.7 g の亜硝酸ナトリウムおよび50 ml の水の混合液に、0℃から5℃下、100 ml の水、130 ml のジメチルフォルムアミドおよび16 ml の濃塩酸からなる溶液を滴下添加する。その得られたジアゾニウム塩水溶液を、0℃から5℃下、23 g の炭酸ナトリウム、14 ml の40%ジメチルアミン水溶液および50 ml の水からなる溶液に添加する。そして、混合液を乾固するまで濃縮する。残分を必要な量の水に溶解し、100 ml の飽和した塩化ナトリウム水溶液に混合する。結晶沈殿する標記化合物を吸引抽出し、乾燥する。
【0240】
収量:5.7 g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストロゲンおよび抗エストロゲンであって、各分子が少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置き換えられた、4-(3,3-ジメチル-1-トリアゼニル)-3-メトキシ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-オンを除く、エストロゲンおよび抗エストロゲン。
【請求項2】
ステロイド、スチルベン、ヘキセストロール、フェニル-1,2-ビス(2,6-ジクロロ-フェニル)-1,2-ビス(エチレンアミノエタン)、トリフェニルエチレン、フェニルベンゾフラン、フェニルベンゾチオフェン4,5-ビス-フェニル-イミダゾール、2,3-ジアリルピペラジンおよび4,5-フェニル-2-イミダゾリンを含む群からの誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン。
【請求項3】
下式の請求項1または2記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン
【化1a】

ここで、
R1 は水素, N=N-NR7AR7B, O(CR8R9)nCO2H, CO2H 又は SO3H,
R2 は OH, OCH3, N=N-NR7AR7B 又は O(CR8R9)nCO2H,
R3 は水素, N=N-NR7AR7B, O(CR8R9)nCO2H, CO2H 又は SO3H,
R4 およびR6 は互いに独立に水素, O(CR8R9)nCO2H, (CR8R9)nCO2H 又は C6H4OCH2CO2H および
R4 はさらに (CH2)10CON(C1-C4-alkyl)2,
R5 は 水素 又はOH,
R7A および R7B は互いに独立にアルキル,
R8 および R9 は互いに独立に水素, メチル 又はエチル,
X は CO, CHOH 又はC(OH)-C≡CH および
n は条件に応じて1から10までの整数、残基R1 から R3のいづれか一つのみがN=N-NR7AR7B
および、その塩、溶媒和物およびこれら塩の溶媒和物。
【請求項4】
下式の請求項1または2記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン
【化1b】

ここで、
R は 水素、メチルまたはエチル、
R1 は水素、塩素、メチル、エチル、CH2CO2H, CH(CH3)CO2H, OCH2CO2H, OCH(CH3)CO2H またはSO3H,
R2 は OH, OCH3, OCH2CO2H, OCH(CH3)CO2H または N=N-NR7AR7B,
R3 は好ましくは6位に、水素、塩素、またはN=N-NR7AR7B,
R4 は水素、メチル、エチル、CH2CO2H または CH(CH3)CO2H および
R7A と R7B は条件に応じて互いに独立にアルキルであり、R2 または R3 のいずれかはN=N-NR7AR7Bであり、
および、破線部結合は当該化合物がエタン並びにエチレン誘導体の両方、およびその塩、溶媒和およびこれら塩の溶媒和物を含む。
【請求項5】
下式の請求項1または2記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン
【化1c】

ここで、
R は水素、塩素、クロロメチルまたはエチル、
R1 は OCH2CO2H または OCH(CH3)CO2H、
R2 と R4 は互いに独立に水素、SO3H または N=N-NR7AR7B
R3 とR5 は互いに独立に水素、OH、 OCH3、OCH2CO2H、 OCH(CH3)CO2H または
N=N-NR7AR7B であり、そして
R7A と R7B は条件に応じて互いに独立にアルキルであり、残基R2 から R5 の一つのみがN=N-NR7AR7Bであり、
および、その塩、溶媒和物およびこれら塩の溶媒和物。
【請求項6】
下式の誘導体であることを特徴とする、請求項1記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン
【化1d】

【請求項7】
請求項1乃至6に記載の化合物を調製するための方法であって、少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル置換基がエストロゲンまたは抗エストロゲン活性化合物の一またはそれ以上の芳香環に導入された化合物を調製するための方法。エストロゲンおよび抗エストロゲンであって、各分子が少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置換された、疾患の治療のための、エストロゲンおよび抗エストロゲン。
【請求項8】
人間および動物の生殖器の腫瘍を治療するための請求項7記載の化合物の使用。
【請求項9】
請求項7記載の化合物の少なくとも一つを十分量に投与することによって人間および動物の生殖器の腫瘍を治療するための方法。
【請求項10】
人間および動物の生殖器の腫瘍のための医薬の調製ための請求項7記載の化合物の使用。
【請求項11】
少なくとも一つの請求項7記載の化合物を含有し、必要により一つまたはそれ以上の薬理学的に許容される補助剤または基剤を混合した医薬。
【請求項12】
請求項8乃至10に記載の目的のための請求項11記載の医薬の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストロゲンおよび抗エストロゲンであって、各分子が少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置き換えられた、4-(3,3-ジメチル-1-トリアゼニル)-3-メトキシ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-オンを除く、エストロゲンおよび抗エストロゲン。
【請求項2】
ステロイド、スチルベン、ヘキセストロール、フェニル-1,2-ビス(2,6-ジクロロ-フェニル)-1,2-ビス(エチレンアミノエタン)、トリフェニルエチレン、フェニルベンゾフラン、フェニルベンゾチオフェン4,5-ビス-フェニル-イミダゾール、2,3-ジアリルピペラジンおよび4,5-フェニル-2-イミダゾリンを含む群からの誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン。
【請求項3】
下式の請求項1または2記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン
【化1a】

ここで、
R1 は水素, N=N-NR7AR7B, O(CR8R9)nCO2H, CO2H 又は SO3H,
R2 は OH, OCH3, N=N-NR7AR7B 又は O(CR8R9)nCO2H,
R3 は水素, N=N-NR7AR7B, O(CR8R9)nCO2H, CO2H 又は SO3H,
R4 およびR6 は互いに独立に水素, O(CR8R9)nCO2H, (CR8R9)nCO2H 又は C6H4OCH2CO2H および
R4 はさらに (CH2)10CON(C1-C4-alkyl)2,
R5 は 水素 又はOH,
R7A および R7B は互いに独立にアルキル,
R8 および R9 は互いに独立に水素, メチル 又はエチル,
X は CO, CHOH 又はC(OH)-C≡CH および
n は条件に応じて1から10までの整数、残基R1 から R3のいづれか一つのみがN=N-NR7AR7B
および、その塩、溶媒和物およびこれら塩の溶媒和物。
【請求項4】
下式の請求項1または2記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン
【化1b】

ここで、
R は 水素、メチルまたはエチル、
R1 は水素、塩素、メチル、エチル、CH2CO2H, CH(CH3)CO2H, OCH2CO2H, OCH(CH3)CO2H またはSO3H,
R2 は OH, OCH3, OCH2CO2H, OCH(CH3)CO2H または N=N-NR7AR7B,
R3 は好ましくは6位に、水素、塩素、またはN=N-NR7AR7B,
R4 は水素、メチル、エチル、CH2CO2H または CH(CH3)CO2H および
R7A と R7B は条件に応じて互いに独立にアルキルであり、R2 または R3 のいずれかはN=N-NR7AR7Bであり、
および、破線部結合は当該化合物がエタン並びにエチレン誘導体の両方、およびその塩、溶媒和およびこれら塩の溶媒和物を含む。
【請求項5】
下式の請求項1または2記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン
【化1c】

ここで、
R は水素、塩素、クロロメチルまたはエチル、
R1 は OCH2CO2H または OCH(CH3)CO2H、
R2 と R4 は互いに独立に水素、SO3H または N=N-NR7AR7B
R3 とR5 は互いに独立に水素、OH、 OCH3、OCH2CO2H、 OCH(CH3)CO2H または
N=N-NR7AR7B であり、そして
R7A と R7B は条件に応じて互いに独立にアルキルであり、残基R2 から R5 の一つのみがN=N-NR7AR7Bであり、
および、その塩、溶媒和物およびこれら塩の溶媒和物。
【請求項6】
下式の誘導体であることを特徴とする、請求項1記載のエストロゲンおよび抗エストロゲン
【化1d】

【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のエストロゲンおよび抗エストロゲンであって、各分子が少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基でコア部を置換された、疾患の治療のための、エストロゲンおよび抗エストロゲン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の化合物を調製するための方法であって、少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル置換基がエストロゲンまたは抗エストロゲン活性化合物の一またはそれ以上の芳香環に導入された化合物を調製するための方法。
【請求項9】
人間および動物の生殖器の腫瘍を治療するための請求項8記載の化合物の使用。
【請求項10】
請求項8記載の化合物の少なくとも一つを十分量に投与することによって人間および動物の生殖器の腫瘍を治療するための方法。
【請求項11】
人間および動物の生殖器の腫瘍のための医薬の調製ための請求項8記載の化合物の使用。
【請求項12】
少なくとも一つの請求項8記載の化合物を含有し、必要により一つまたはそれ以上の薬理学的に許容される補助剤または基剤を混合した医薬。
【請求項13】
請求項9乃至11のいずれかに記載の目的のための請求項12記載の医薬の使用。

【公表番号】特表2006−526002(P2006−526002A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508181(P2006−508181)
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005333
【国際公開番号】WO2004/106358
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505443757)トリエン ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】TriN GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauptgasse 38, 9050 Appenzell, Switzerland
【Fターム(参考)】