説明

生物分解性ポリエステルおよび生物活性ポリペプチドのイオン分子結合体

【課題】生物活性ポリペプチドの持続放出が可能なポリエステルの提供。
【解決手段】1つまたはそれ以上の遊離COOH基を含み、そして1より大きいカルボキシル対ヒドロキシル比を有するポリエステルであって、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、ε−カプロン酸、シュウ酸アルキレン、シュウ酸シクロアルキレン、コハク酸アルキレン、β−ヒドロキシブチレート、置換または非置換炭酸トリメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、グリコール酸、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド、およびそれらのいかなるものでもよい光学活性異性体、ラセミ化合物またはコポリマーからなる群より選択されるメンバーを含む、但し、酒石酸がポリエステルのメンバーである、前記ポリエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物活性ポリペプチドの持続放出に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤組成物の調節in vivo放出のため、多くの薬剤搬送系が開発され、試験され、そして利用されてきている。例えば、ポリ(DL−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)などのポリエステルおよび多様な他のコポリマーが、プロゲステロンなどの生物学的に活性がある分子を放出するのに用いられてきており;これらは微小カプセル、フィルム、またはロッドの形状であった(Pitt CG, Marks TA,およびSchindler, A. 1980)。ポリマー/療法剤組成物の移植に際し、例えば、皮下または筋内で、療法剤は、特定の期間にわたり、放出される。こうした生体適合生物分解性ポリマー系は、捕捉療法剤が、ポリマーマトリックスから拡散することを可能にするよう設計される。療法剤の放出に際し、ポリマーはin vivoで分解し、移植物の外科的除去を不要にする。ポリマー分解に寄与する要因は、よく理解されていないが、こうしたポリエステル分解は、ポリマー構成要素の非酵素的自己触媒的加水分解に対する、エステル結合の影響の受けやすさにより、制御されている可能性があると考えられている。
【0003】
いくつかのEPO公開公報および米国特許は、ポリマーマトリックス設計、並びに、in vivoの療法剤の放出速度および度合いの制御におけるその役割の論点に言及している。
【0004】
例えば、Deluca(EPO公開公報0 467 389 A2/Univ of Kentucky)は、疎水性生物分解性ポリマーおよびタンパク質またはポリペプチドの間の物理的相互作用を記載する。形成される組成物は、療法剤および疎水性ポリマーの混合物で形成され、これは、被験者への導入後、マトリックスからの拡散性放出を持続した。
【0005】
Hutchinson(米国特許4,767,678/ICI)は、ポリマー装置中の均一な分散により、療法剤の放出を調節した。本処方は、二つの相:第一は、処方の表面からの薬剤の拡散依存浸出(leaching);そして第二は、ポリマーの分解により誘導される水性チャンネルによる放出の重なりにより、調節連続放出を提供すると言及される。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
一般的に、本発明は、少なくとも1つの有効イオノゲン性アミンを含む生物活性ポリペプチドにイオン結合している遊離COOH基を含むポリエステルを含む持続放出薬剤組成物であって、該組成物に存在する該ポリペプチドの少なくとも50重量%が該ポリエステルにイオン結合している、前記組成物を特徴とする。
好ましい態様において、ポリエステルを修飾し、カルボキシル対ヒドロキシル末端基比を1より大きく、そして無限に達するよう増加させ、すなわちヒドロキシル基はすべて、カルボキシル基で置換してもよい。適切なポリエステルの例は、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、ε−カプロン酸、置換または非置換炭酸トリメチレン(TMC)、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、グリコール酸、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド、シュウ酸アルキレン、シュウ酸シクロアルキレン、コハク酸アルキレン、(β−ヒドロキシブチレート)、およびそれらのいかなるものでもよい光学活性異性体、ラセミ化合物またはコポリマーなどの化合物から生じるものであり、ここで置換TMCは(C1−C4)アルキル、好ましくはメチルで置換されている。伝統的なポリエステルに関連する他のヘテロ鎖ポリマーもまた、用いてもよい(例えばポリオルトエステル類、ポリオルトカーボネート類、およびポリアセタール類)。
【0007】
好ましくは、ポリエステルは、リンゴ酸、クエン酸または酒石酸との反応により、ポリカルボキシルにされる。
好ましい態様において、ポリエステルは、グルタル酸無水物で、部分的に酸チップ化(acid−tipped)される。さらに他の好ましい態様において、ポリエステルは、グルタル酸無水物で、完全に酸チップ化される。好ましくは、ポリエステルは、平均10および300の間の、そしてより好ましくは20ないし50の間の重合度を有する。
【0008】
本発明のイオン分子結合体は、好ましくは、少なくとも1つの有効イオノゲン性アミン基を有する、一塩基性および多塩基性生物活性ポリペプチドと結合しているポリカルボキシル酸チップ化ポリエステルで作成される。あるいは、あらかじめ適切な塩基、例えばNaOHで処理されているという条件で、本発明のイオン分子結合体を形成するのに、いかなるポリエステルを用いてもよい。さらに、いかなる酸安定性ペプチド、例えば、成長ホルモン放出ペプチド(GHRP)、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ソマトスタチン、ボンベシン、ガストリン放出ペプチド(GRP)、カルシトニン、ブラジキニン、ガラニン、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、アミリン、タキキニン類、セクレチン、副甲状腺ホルモン(PTH)、エンケファリン、エンドセリン、カルシトニン遺伝子放出ペプチド(CGRP)、ニューロメジン類、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)、グルカゴン、ニューロテンシン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ペプチドYY(PYY)、グルカゴン放出ペプチド(GLP)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、モチリン、サブスタンスP、ニューロペプチドY(NPY)、TSH、並びにそれらの類似体および断片を用いてもよい。こうしたイオン分子結合体は、これらの結合体の両構成要素の化学的構造、分子量、およびpKaにより、あらかじめ決定される速度で、in vivoで生物活性構成要素を放出することが可能である。薬剤を放出する機構は、部分的に、疎水性ポリエステルの加水分解を通じ、不溶性結合体型を水可溶性構成要素に変換することを伴う。したがって、生物活性ポリペプチドの放出は、独立に、(a)生物活性ポリペプチドおよびポリエステルの間のpKa相違の減少、(b)カルボニル求核性に反映される、ポリエステル鎖の化学的反応性、(c)ガラス転移温度および最小結晶化可能性に関連するため、ポリエステル密度の減少、および(d)マトリックス疎水性の増加、と共に増加する。
【0009】
好ましい態様において、ポリエステルは、イオン分子結合体の総重量の1ないし50重量パーセントを構成し、そしてより好ましくは、組成物に存在するポリペプチドの85%以上、より好ましくは95%以上、そしてさらにより好ましくは99%以上がポリエステルにイオン結合しており;イオン分子結合体のポリエステル構成要素は、クロロホルム中で、約0.05ないし約0.7 dl/gの粘性を有し;そしてポリエステルは、約1200−40,000の平均分子量を有する。
【0010】
本発明のポリマー性イオン分子結合体は、多相エマルジョンまたは非水性二相系を伴う処理を利用する必要なしに、容易に注射可能微小球体または微小粒子、および移植可能フィルムまたはロッドに作成することが可能である。好ましくは、微小粒子は、(a)組成物を、非プロトン性、水混和性有機溶媒に溶解し;(b)水中で該有機溶媒を混合し;そして(c)水から微小粒子を単離することにより、製造される。好ましい態様において、有機溶媒は、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、およびジメトキシエチレングリコールの群より選択される。
【0011】
好ましい態様において、ポリエステル/ポリペプチドイオン分子結合体は、少なくとも20日の期間、そしてより好ましくは95日までの期間だが、7日より少なくない期間に渡り、療法的に有効な用量の生物活性ポリペプチドを、in vivoで放出することが可能である。さらに他の好ましい態様において、療法的イオン分子結合体の放出は、本質的に一相性(monophasic)である。
【0012】
本発明の持続放出組成物は、好ましくは、(a)遊離COOH基を有するポリエステルおよび少なくとも1つの有効イオノゲン性アミンを有する生物活性ポリペプチドを提供し、そして(b)ポリペプチドにポリエステルをイオン結合させ、イオン分子結合体を形成する、ここで組成物中に存在するポリペプチドの少なくとも重量85%が、ポリエステルにイオン結合している、ことにより、作成される。ポリエステルは、開始するための、十分な遊離COOH基を有するものであってもよいし、または最初に、利用可能であるこうした基が望ましいペプチド装填レベルには不十分な数である場合、ポリエステルを(1)エステル化または官能基交換を通じ、例えばリンゴ酸、クエン酸または酒石酸と反応させ、あるいは(2)グルタル酸無水物で酸チップ化してもよいし、あるいは(3)ポリエステルを塩基、例えばNaOHで処理し、酸性基を暴露してもよい。最後に、ポリエステル/ポリペプチドイオン分子結合体を、in vivoでポリペプチドを放出することが可能な、移植可能フィルム、またはロッド、あるいは注射可能微小球体または微小粒子に変換してもよい。
【0013】
好ましくは、ポリエステルは、1つまたはそれ以上のヒドロキシ酸、例えばグリコール酸および乳酸の直接縮合を、あらかじめ決定された濃度のポリカルボキシルヒドロキシ酸、例えばリンゴ酸、クエン酸または酒石酸の存在下で、触媒または自己触媒することにより、合成される。こうして合成されたポリエステルは、好ましくは部分的にまたは完全に酸チップ化されている、酸チップ化ヒドロキシル末端基を持つ。
【0014】
ポリエステルはまた、ラクトン類の開環重合を触媒することにより、あるいは、鎖イニシエーター、例えばヒドロキシポリカルボキシル酸の存在下での、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、炭酸トリメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オン、または1,4−ジオキセパン−2−オンなどの環状モノマーの重合により、合成してもよい。
【0015】
合成の別の方法は、ヒドロキシ酸を、環状二量体と反応させ、その後、ポリカルボキシル酸の存在下で、開鎖系を縮合させることを伴う。
さらに別の合成法は、有機ポリカルボキシル酸をあらかじめ形成されたポリエステルと反応させることを伴う。
【0016】
前述の好ましい態様において、酸チップ化ポリエステルは、1より大きく、そして無限に達する(すなわち、すべてのヒドロキシル基が除去された)カルボキシル対ヒドロキシル末端基比を有し、重合の平均的度合いは、10および300の間であり、そして特に好ましい態様では20および50の間である。
【0017】
あるいは、ポリエステルは、塩基、例えばNaOHとの処理により、生物活性ポリペプチドとイオン分子結合体を形成することが可能になる。
好ましくは、ポリエステル/ポリペプチドイオン分子結合体は、適切な液体媒体中の、例えば遊離型のポリエステル、および例えば遊離型のポリペプチドの間の、直接相互作用により、合成される。他の好ましい態様において、結合体形成に適した溶媒は、2つの系が混和可能であるような比率の、非プロトン性溶媒(例えば、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、またはエチレングリコールジメチルエーテル)およびペプチドに適した溶媒(例えば水)の混合物であろう。好ましくは、ポリペプチドは、3.5に等しいかまたはそれより大きいpKaを有するモノカルボキシル酸の塩である。好ましくは、ポリペプチドは、少なくとも1つの有効イオノゲン性アミン基を有する。
【0018】
好ましい態様において、ポリペプチドは、ポリエステル/ポリペプチドイオン分子結合体の重量1ないし50%であり、そして好ましくは10ないし20%である。好ましい態様において、ポリエステルの利用可能なカルボキシル基は、アルカリ金属イオンまたは有機塩基で部分的に中和されている。さらに他の好ましい態様において、アルカリ処理は、ポリエステルの鎖解離および低分子量結合部位の形成を提供する。
【0019】
別の側面において、本発明は、1つまたはそれ以上の遊離COOH基を含み、そして1より大きいカルボキシル対ヒドロキシル比を有するポリエステル(ポリエステルAと称される)であって、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、リンゴ酸、クエン酸、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、ε−カプロン酸、シュウ酸アルキレン、シュウ酸シクロアルキレン、コハク酸アルキレン、β−ヒドロキシブチレート、置換または非置換炭酸トリメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、グリコール酸、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド、およびそれらのいかなるものでもよい光学活性異性体、ラセミ化合物またはコポリマーからなる群より選択されるメンバーを含む、但し、クエン酸、ε−カプロラクトンおよびグリコリドがポリエステルのメンバーである、前記ポリエステルに関する。前述のポリエステルの好ましい態様(ポリエステルBと称される)は、ポリエステルが、クエン酸、ε−カプロラクトンおよびグリコリドを含むものである。すぐ前のポリエステルの好ましい態様(ポリエステルCと称される)は、ポリエステル中のε−カプロラクトン対グリコリド比が、90 ε−カプロラクトン:10 グリコリドないし99 ε−カプロラクトン:1 グリコリドであるものである。すぐ前のポリエステルの好ましいポリエステル(ポリエステルDと称される)は、ポリエステル中のε−カプロラクトン対グリコリド比が、97 ε−カプロラクトン:3 グリコリドであるものである。
【0020】
さらに別の側面において、本発明は、少なくとも1つの有効イオノゲン性アミンを含む、1つまたはそれ以上の生物活性ポリペプチドにイオン結合しているポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルCまたはポリエステルDを含む組成物であって、該組成物に存在する該ポリペプチドの少なくとも50重量%が該ポリエステルにイオン結合している前記組成物に関する。
【0021】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、生物活性ポリペプチドが、LHRH、ソマトスタチン、ボンベシン/GRP、カルシトニン、ブラジキニン、ガラニン、MSH、GRF、アミリン、タキキニン類、セクレチン、PTH、CGRP、ニューロメジン類、PTHrP、グルカゴン、ニューロテンシン、ACTH、GHRP、GLP、VIP、PACAP、エンケファリン、PYY、モチリン、サブスタンスP、NPY、TSH、およびそれらの類似体または断片からなる群より選択されるものである。
【0022】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、生物活性ポリペプチドが、LHRH、ソマトスタチンおよびそれらの類似体または断片からなる群より選択されるものである。
【0023】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、LHRH類似体が、式pGlu−His−Trp−Ser−Tyr−D−Trp−Leu−Arg−Pro−Gly−NH2のものであり、そしてソマトスタチン類似体が、式H2N−β−D−Nal−Cys−Tyr−Trp−Lys−Val−Cys−Thr−NH2のものであり、ここでソマトスタチン類似体の2つのCys残基が互いに結合しているものである。
【0024】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、該組成物がロッドの形状であるものである。
すぐ前の組成物の好ましい態様は、該ロッドがポリエステル被覆を有するものである。
【0025】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、ロッドを被覆するポリエステルが、吸収可能ポリエステルであるものである。
すぐ前の組成物の好ましい態様は、吸収可能ポリエステルが、1つまたはそれ以上の遊離COOH基を含み、そして1より大きいカルボキシル対ヒドロキシル比を有し、前記ポリエステルが、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、ε−カプロン酸、シュウ酸アルキレン、シュウ酸シクロアルキレン、コハク酸アルキレン、β−ヒドロキシブチレート、置換または非置換炭酸トリメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、グリコール酸、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド、およびそれらのいかなるものでもよい光学活性異性体、ラセミ化合物またはコポリマーからなる群より選択されるメンバーを含むものである。
【0026】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、ロッドを被覆する吸収可能ポリエステルが、組成物に含まれるポリエステルと同一であるものである。
さらに別の側面において、本発明は、1つまたはそれ以上の遊離COOH基を含み、そして1より大きいカルボキシル対ヒドロキシル比を有するポリエステル(ポリエステルEと称される)であって、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、ε−カプロン酸、シュウ酸アルキレン、シュウ酸シクロアルキレン、コハク酸アルキレン、β−ヒドロキシブチレート、置換または非置換炭酸トリメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、グリコール酸、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド、およびそれらのいかなるものでもよい光学活性異性体、ラセミ化合物またはコポリマーからなる群より選択されるメンバーを含む、但し、酒石酸がポリエステルのメンバーである、前記ポリエステルに関する。前述のポリエステルの好ましい態様(ポリエステルFと称される)は、ポリエステルがL−乳酸またはD−乳酸を含む;あるいはポリエステルがL−乳酸またはD−乳酸およびグリコール酸を含むものである。ポリエステルEの別の好ましい態様(ポリエステルGと称される)は、ポリエステルが酒石酸、ε−カプロラクトンおよび炭酸トリメチレンを含むものである。すぐ前のポリエステルの好ましい態様(ポリエステルHと称される)は、ポリエステル中のε−カプロラクトン対炭酸トリメチレン比が、90 ε−カプロラクトン:10 炭酸トリメチレンないし99 ε−カプロラクトン:1 炭酸トリメチレンであるものである。すぐ前のポリエステルの好ましい態様(ポリエステルIと称される)は、ポリエステル中のε−カプロラクトン対炭酸トリメチレン比が、98 ε−カプロラクトン:2 炭酸トリメチレンであるものである。
【0027】
さらに別の側面において、本発明は、少なくとも1つの有効イオノゲン性アミンを含む、1つまたはそれ以上の生物活性ポリペプチドにイオン結合しているポリエステルE、ポリエステルF、ポリエステルG、ポリエステルHまたはポリエステルIを含む組成物であって、該組成物に存在する該ポリペプチドの少なくとも50重量%が該ポリエステルにイオン結合している前記組成物に関する。
【0028】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、生物活性ポリペプチドが、LHRH、ソマトスタチン、ボンベシン/GRP、カルシトニン、ブラジキニン、ガラニン、MSH、GRF、アミリン、タキキニン類、セクレチン、PTH、CGRP、ニューロメジン類、PTHrP、グルカゴン、ニューロテンシン、ACTH、GHRP、GLP、VIP、PACAP、エンケファリン、PYY、モチリン、サブスタンスP、NPY、TSH、およびそれらの類似体または断片からなる群より選択されるものである。
【0029】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、生物活性ポリペプチドが、LHRH、ソマトスタチンおよびそれらの類似体または断片からなる群より選択されるものである。
【0030】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、LHRH類似体が、式pGlu−His−Trp−Ser−Tyr−D−Trp−Leu−Arg−Pro−Gly−NH2のものであり、そしてソマトスタチン類似体が、式H2N−β−D−Nal−Cys−Tyr−Trp−Lys−Val−Cys−Thr−NH2のものであり、ここでソマトスタチン類似体の2つのCys残基が互いに結合しているものである。
【0031】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、該組成物がロッドの形状であるものである。
すぐ前の組成物の好ましい態様は、該ロッドがポリエステル被覆を有するものである。
【0032】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、吸収可能ポリエステルが、1つまたはそれ以上の遊離COOH基を含み、そして1より大きいカルボキシル対ヒドロキシル比を有し、前記ポリエステルが、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、ε−カプロン酸、シュウ酸アルキレン、シュウ酸シクロアルキレン、コハク酸アルキレン、β−ヒドロキシブチレート、置換または非置換炭酸トリメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、グリコール酸、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド、およびそれらのいかなるものでもよい光学活性異性体、ラセミ化合物またはコポリマーからなる群より選択されるメンバーを含むものである。
【0033】
すぐ前の組成物の好ましい態様は、ロッドを被覆する吸収可能ポリエステルが、組成物に含まれるポリエステルと同一であるものである。
本明細書において、「ポリペプチド」は、タンパク質、ペプチド、オリゴペプチドまたは合成オリゴペプチドを指す。
【0034】
本明細書において、「ポリカルボキシル」は、1つ以上のカルボキシル基を有する化合物、例えばリンゴ酸、クエン酸および酒石酸を指す。
本明細書において、「重合の平均的度合い」は、反復モノマー配列の数を指す。
【0035】
本明細書において、「有効イオノゲン性アミン」は、一般的な条件下で、イオンを形成することが可能な少なくとも1つのアミン基を含むポリペプチドを指す。
【0036】
本明細書において、「酸チップ化」は、酸性末端を有する化合物を指す。
本明細書において、「部分的に酸チップ化されている」は、そのヒドロキシル末端基の1−99%が酸チップ化されている化合物を指す。
【0037】
本明細書において、「完全に酸チップ化されている」は、そのヒドロキシル末端基の99.9%以上が酸チップ化されている化合物を指す。
本明細書において、「ヒドロキシ酸」は、ヒドロキシルおよびカルボキシル基を含む、いかなる化合物も指す。
【0038】
本明細書において、「モノカルボキシルヒドロキシ酸」は、1つのカルボキシル基および1つまたはそれ以上のヒドロキシル基を含む、有機酸を指す。
本明細書において、「ポリカルボキシルヒドロキシ酸」は、1つ以上のカルボキシル基を持つヒドロキシ酸を指す。
【0039】
本明細書において、「有機伴出剤(entrainer)」は、水と共蒸留する有機液体を指す。
本明細書において、「生物活性」は、生物学的事象を引き出すまたは該事象に影響を与える分子を指す。
【0040】
本明細書において、「非環状化(acyclize)」は、開環により起こる化学反応を指す。
本明細書において、「重縮合」は、2つまたはそれ以上の分子の縮合による、ポリエステルの形成を指す。
【0041】
本明細書において、「吸収可能」ポリエステルは、生物学的環境において、鎖解離を経験し、水可溶性副産物になる、水不溶性ポリエステルを指す。
本発明は、生体適合生物分解性ポリエステルが、均一なイオン種としてのオリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質に化学的に結合する、新規薬剤組成物を提供する。異なる分子量のポリエステルを、療法剤に化学的に結合させることにより、in vivoで生物学的に活性があるポリペプチドの調節一相放出のための要求と一致するよう、より正確に組成物の化学的特性を適応させることが可能である。さらに、本発明の組成物は、療法的に活性があるポリペプチドをより多く装填するための機能的特性を持つよう、容易に最適化される。
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、以下の好ましい態様の詳細な説明から、そして請求項から、明らかになるであろう。
好ましい態様の説明
合成
本発明の生物分解性または吸収可能ポリエステルは、あらかじめ決定された組成および分子量を持つ、構成要素モノマー、コモノマーまたはコマー(comer)の適切な選択により、望ましい化学反応性を持ち、調節された鎖加水分解可能性を提供し、そして生理学的pHで正味陽性電荷を有するオリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に対する最大結合能を示すよう、適応している。
【0043】
本分野の一般の当業者の能力内の三工程合成設計を使用し、本発明の組成物を調製する。工程は:(1)ポリカルボキシル酸チップ化ポリエステルの合成;(2)ポリカルボキシル酸チップ化ポリエステル(または塩基で処理したポリエステル)および生物学的に活性があるポリペプチドのイオン性相互作用による、ポリエステル/ポリペプチドイオン結合体の合成;並びに(3)少なくとも7日間、療法剤をin vivoで放出することが可能な移植物、ロッド、微小球体または微小粒子へのイオン結合体の変換、を含む。
【0044】
(1)ポリカルボキシル酸チップ化ポリエステルの合成
本発明のポリカルボキシル酸チップ化ポリエステル鎖は、2−ヒドロキシ酸およびポリカルボキシル有機酸の直接縮合、非環状化産物の段階成長重合、ラクトンまたはラクトン混合物の開環重合、またはポリカルボキシル有機酸と、あらかじめ形成された高分子量ポリエステルとの官能基交換などの方法により、合成される(図1を参照されたい)。これらの上述の方法による、ポリカルボキシル酸チップ化ポリエステルの合成の説明が以下に記載される。
【0045】
無機、または有機金属触媒の存在下または非存在下での、光学活性および/または不活性型の2−ヒドロキシ酸およびあらかじめ決定された量のポリカルボキシル有機酸の直接縮合、例えば、グリコール酸、DL−乳酸、およびDL−リンゴ酸の縮合は、一般的に、モノカルボキシルヒドロキシ酸あるいは2つまたはそれ以上のモノカルボキシルヒドロキシ酸の混合物を、ポリカルボキシルヒドロキシ酸のフラクションの存在下で、乾燥窒素および大規模攪拌を提供するため装備されたガラス反応装置中で加熱することにより、達成される(IA型ポリエステルと称される、表1を参照されたい)。典型的には、重縮合は、150−170℃で4ないし72時間行われる。反応混合物の攪拌は、磁気スターラーまたはポリエステルマスを通じた窒素ガスバブリングにより、提供してもよい。重合は、望ましい平均分子量(溶液粘性に基づき決定される)および/または酸価(末端基滴定により決定される)が達成されるまで、続ける。末端基滴定によるポリエステル解析は、以下のように行う。ポリエステル試料(300 mg−500 mg)は正確に重量測定し、そして最小量(10−30 ml)のアセトンに溶解する。溶解後、ベンジルアルコール(Mallinckrodt、解析試薬)で溶液を100 mlに希釈し、そしてベンジルアルコール溶液中の水酸化カリウムを用い、薄いピンクの終点(フェノールフタレン)まで滴定する(規準化対HCl標準)。試料に用いた塩基溶液体積(ΔVs)を、溶媒ブランクに用いた塩基体積(ΔVo)に比較し、ポリエステルに関する酸価を決定する。
【0046】
酸価=試料重量(mg)
[ΔVs(ml)−ΔVo(ml)] x 塩基数
重合完了時、ポリエステルを単離し、そして適切な有機溶液から、水または希水性水酸化ナトリウム溶液で抽出し、水可溶性または可溶性化可能低分子量鎖を除去する。
【0047】
GPCによるポリエステル解析は、以下のように行う。ポリエステルの平均分子量(MW)は、Watersモデル6000溶媒搬送ポンプおよびDynamax(Rainin)モデルUV−D検出装置を用いたGPCにより、決定した。実行は、Jordi Gel DVB 1000Å、50 cm x 10 mmカラム(Jordi Associates)を用い、流速1.2 ml/分、25℃で、テトラヒドロフラン(Burdick & Jackson、UV等級)中で行った。ピーク検出は、220 nmおよび1.0 AUFSで行った。カラムは、Mw=4000、9,200および25,000の細バンドポリスチレン参照標準(Polysciences Inc.)を用い、較正した。
【0048】
直接縮合法の修飾は、有機伴出剤および縮合触媒としての陽イオン交換樹脂の使用を伴う(IB型ポリエステルと称される、表1を参照されたい)。本方法は、触媒および伴出剤を除去するのに、それぞれろ過および蒸発工程を必要とする。これらの方法により作成されるポリエステルの典型例および付属する解析データを表1に記載する。
【0049】
表1.直接縮合法により作成されるポリエステル
【0050】
【表1】

【0051】
非環状化産物の段階成長重合は、ヒドロキシ酸を環状二量体と反応させ、そして続いて、生じた開環系を、あらかじめ決定された量のポリカルボキシル酸の存在下で、そして適切な縮合触媒、例えばグリコール酸、L−ラクチドおよびDL−リンゴ酸の存在下または非存在下で縮合させ、モノカルボキシルヒドロキシ酸、第二のヒドロキシ酸の環状二量体、およびヒドロキシポリカルボキシル酸の混合物を使用する以外、上述の縮合法と本質的に同一である。本方法により作成されるポリエステルの例および付属する解析データを表2に要約する。環状二量体が水であらかじめ処理されている場合、系は、単純な段階成長重合として処理される。
【0052】
表2.非環状化産物の段階成長重合
【0053】
【表2】

【0054】
鎖イニシエーターとしてのあらかじめ決定された濃度のヒドロキシ−ポリカルボキシル酸および触媒量の有機金属触媒、例えばL−ラクチド、グリコリドおよびDL−リンゴ酸の混合物の存在下で、オクチル酸第一スズの存在下で、ラクトンまたはラクトン混合物の開環重合は、乾燥環状モノマーまたは環状モノマーの混合物、ヒドロキシ−ポリカルボキシル酸および微量のオクチル酸第一スズ(トルエン中の0.33 M溶液として使用)を使用し、これを乾燥酸素不含大気下で、磁気または機械的攪拌を備えたガラス反応装置に移す。重合反応は、適切な加熱計画にしたがい、窒素下で、(溶液粘性に基づき測定されるように)望ましい分子量が達成されるまで、続ける。重合計画終了時、温度を下げ、そして未反応モノマーを減圧下で蒸留する。ポリエステルマスをその後、冷却し、そして低温度抽出により、適切な有機溶液から水可溶性低分子量フラクションを除去する。その後、溶液を乾燥させ、そして溶媒を除去する。その後、固有の粘性に基づき分子量を決定し、そして末端基滴定により、酸価を決定する。本方法により調製されるポリエステルの例および付属する解析データを表3に示す。
【0055】
表3.開環重合により作成されるポリエステル
【0056】
III型ポリエステル
【表3】

【0057】
ポリカルボキシルまたはヒドロキシ−ポリ塩基性有機酸と全体のCOOH/OH比が実質的にゼロであるあらかじめ形成された高分子量ポリエステルの、好ましくは有機金属触媒の存在下での官能基交換、例えば5,000より大きい分子量およびCOOH/OHが1以下の85/15 ラクチド/グリコリドコポリマーを、DL−リンゴ酸と、オクチル酸第一スズの存在下で融解反応させ、COOH/OHが1以上の低分子量ポリエステルを生じる反応は、高分子量ポリエステルを、あらかじめ決定された量のポリカルボキシルまたはヒドロキシ−ポリカルボキシル酸と、微量の有機金属触媒、例えばオクチル酸第一スズの存在下で加熱することを伴う。反応物は、徹底的な攪拌と共に、乾燥窒素下で、(残渣未反応ポリカルボキシル酸の枯渇により測定されるように)官能基交換が完了するまで150℃以上に加熱する。事実上、これは(28℃でのキャピラリー粘性測定を用いた溶液粘性に基づき)生じた低分子量ポリエステルの分子量および未反応ポリカルボキシル酸の存在をモニターすることにより、決定する。これは、ポリエステル試料の水性抽出および高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた抽出物解析により達成される。残渣モノマー、二量体およびポリカルボキシル酸レベルは、Watersモデル6000溶媒搬送ポンプおよびDynamax(Rainin)モデルUV−D検出装置(205 nm、1.0 AUFS)を用いたHPLCにより決定した。実行は、0.025 N Na2PO4緩衝液、pH=3.5(アイソクラチック流速=1.0 ml/分)を用い、Nucleosil C18、5μm、25 cm x 4.6 mmカラムを用い、行った。
【0058】
上述のように、開環重合のため、望ましいポリエステルを単離し、そして精製する。本方法により作成されるポリエステルの例および付属する解析データを表4に示す。
【0059】
表4.官能基交換により作成されるポリエステル
【0060】
IV型ポリエステル
【表4】

【0061】
本発明に用いられるポリエステル合成に適した他のモノマーの中には:L−乳酸、DL−乳酸、ε−カプロラクトン、p−ジオキサン、ε−カプロン酸、炭酸トリメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、およびメソ−ラクチドがある。有用なポリカルボキシル鎖イニシエーターおよび/または鎖修飾剤の例には、リンゴ酸、クエン酸および酒石酸が含まれる。
【0062】
(2)ポリカルボキシル酸チップ化ポリエステルおよび生物学的活性ポリペプチドのイオン性相互作用による、ポリエステル/ポリペプチドイオン結合体の合成
上述のポリカルボキシル酸チップ化生物分解性ポリエステルを用い、モノまたはポリカルボキシル酸オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質と、利用可能な有効イオノゲン性アミン基とのイオン分子結合体を作成する(図2を参照されたい)。さらに、いかなるポリエステルも、塩基、例えば0.1 N NaOHと処理すると、ポリペプチドとのイオン分子結合体を形成することが可能になる。こうした処理は、陽イオン性ポリペプチドとの多部位イオン性相互作用のため、ポリエステルの酸性基を暴露する。
【0063】
したがって、これらの結合体の形成は、塩基性薬剤に対する結合速度能を最大にするため、ポリエステルを無機塩基であらかじめ処理し、または処理せず、適切な溶媒中の構成要素の直接分子相互作用により達成される。上述のように、イオン結合体構成要素のイオン性相互作用は、pKa値の相違の範囲内で増加する。
【0064】
ポリエステルを、濃度範囲2%ないし20% W/Vで、適切な非プロトン性溶媒に溶解する。こうした溶媒は、ポリエステルを溶解するが、また水と部分的に混和性であるべきである。本目的に使用するのに適した溶媒には、テトラヒドロフラン、アセトン、およびエチレングリコールジメチルエーテルが含まれる。本溶液に、塩基、例えば水酸化または炭酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムの水性溶液を添加し、ポリエステルの結合能を最大にする。一般的に、添加する塩基の量は、用いようとする塩基性ペプチドの対陰イオンレベルにより示される酸の量に相当する。
【0065】
ポリエステル−塩基の組み合わせを簡単に混合した後、ペプチドまたはペプチド塩の水性溶液を、ペプチド/ポリエステル装填レベル2%ないし50% W/W(ペプチド/ポリエステル)で添加する。本混合物を、一定期間(3時間まで)攪拌し、そしてその後、溶媒を除去し、そして産物を真空下で乾燥させる。その後、生じた成分を、投薬処方のため、さらに処理してもよい。生じた薬剤組成物は、完全にイオン分子結合体からなる化学的に均一な組成物であるよう設計し、そして生物分解性マトリックス中に活性薬剤の顕微鏡的または巨視的分散ドメインを本質的に持たない。調製イオン分子結合体の例および付属する解析データを表5に示す。
【0066】
表5.イオン分子結合体−ペプチド結合1
【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
(3)一相プロフィールで、少なくとも20日間、in vivoで療法剤を放出可能な移植物、ロッド、微小球体または微小粒子へのイオン結合体の変換
本発明のイオン結合体は:(A)本質的に一相プロフィールにしたがい放出し、そして1ないし12週間の期間に渡り、薬理学的活性を維持することが可能な、重量1ないし50%のポリペプチドを含む、無菌注射可能微小球体(加工助剤として0.1ないし10%の固体多価アルコールを含むまたは含まない);(B)薬理学的不活性加工助剤を含むまたは含まないキャスティング、加圧成形または押出成形により作成され、そして(A)に記載されるものと類似の放出プロフィールを提供することが可能な無菌移植可能フィルムおよび;(C)押出成形または加圧成形により作成され、そして(A)に記載されるものと類似の放出プロフィールを提供することが可能な無菌注射可能ロッドに変換してもよい。さらに、ロッドをポリエステルで被覆し、療法剤の放出速度を調節するさらなる層を提供してもよい。好ましくは、ロッドを吸収可能ポリエステルで被覆し;より好ましくは、吸収可能ポリエステルは、本明細書に定義される通りであり、そして最も好ましくは、被覆吸収可能ポリエステルは、ロッドに含まれるポリエステルと同一である。
【0070】
in vitro放出アッセイ:
各50 mgの乾燥しすり砕いたイオン結合体成分試料を直径25 mmのシンチレーションバイアルに入れた。修飾PBS緩衝液(PBS緩衝液:2.87 gのNa2HPO4、0.654 gのNaH2PO4、5.9 gのNaCl、0.5 gのNaN3、Q.S.、脱イオン水で1.0リットルにする;pH=7.27)5 mlアリコットを各バイアルに添加し、そしてバイアルをLab−Line Orbit Environ−Shakerに入れ、そして120 R.P.M.および37℃で回転させた。バイアルを定期的に取り去り、そしてデカントし、そして新鮮なPBS溶液を補充した。放出ペプチドの量は、デカントしたPBS溶液から、HPLCにより測定した。
【0071】
イオン結合体からのペプチド抽出:
50 mgのイオン分子結合体試料を、20 mlの塩化メチレンと混合した。混合物を続いて、50 ml、20 mlおよび20 ml部分の2 N 酢酸で抽出した。酢酸抽出物を合わせ、そして高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により、ペプチド含量に関し、解析した。続いてHPLCによりペプチド解析を行う。HPLC解析は、WatersモデルM−45溶媒搬送ポンプおよびEM Science MACS 700検出装置を用い、波長220 nmおよび1.0 AUFSで行った。ペプチドは、Lichrospher(EM分離)C18、100Å、5μm、25 cm x 4.6 mmカラムおよびアイソクラチック溶出緩衝液として30%アセトニトリル/0.1% TFAを用いてクロマトグラフした。
【0072】
以下は、49:49:2 L−乳酸/グリコール酸/リンゴ酸\D−Trp6[LHRH](実施例8)、49:49:2 L−乳酸/グリコール酸/リンゴ酸\ソマトスタチン−腫瘍阻害類似体(実施例9)、および73.5:24.5:2 ポリL−ラクチド/グリコール酸/リンゴ酸:D−Trp6[LHRH](実施例10)イオン分子結合体に関する、28日間に渡る放出ペプチド量を示すin vitroアッセイの詳細(表6)である。
【0073】
表6.in vitroアッセイデータ
【0074】
【表7】

【0075】
イオン結合体中のペプチドの定量化
結合体産物中のイオン結合ペプチドを、試料10 mgをアセトンおよび0.1 M水性トリフルオロ酢酸の9:1混合物5.7 mlに溶解することにより、測定した。溶液を約25℃で約15−24時間回転させ、そしてその後、0.5 μmのテフロン(登録商標)フィルターカートリッジを通じ、ろ過した。その後、ろ液を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により、ペプチド含量に関し解析した。HPLCによるペプチド解析は、Milliporeモデル717 Wisp自動試料採取装置、モデル510ポンプおよび220 nmに設定したモデル486UV検出装置を用いて行った。ペプチドは、アイソクラチック溶出系として0.14%過塩素酸ナトリウム緩衝液中の35%アセトニトリルを用い、流速1.0 ml/分で、Lichrospher(EM分離)25 cm x 4.6 mm C18、5μm、100Åカラム上でクロマトグラフした。ペプチドは、注入ペプチド標準の面積と、試料クロマトグラフ中の正しいピークの面積を比較することにより、定量化した。
【0076】
使用
本明細書に記載される酸保持ポリエステル/ポリペプチドイオン結合体のいずれを、レシピエントに単独で投与し、または薬学的に許容しうる媒体と組み合わせて投与してもよい。皮下、筋内、非経口、座薬または鼻腔投与することが好都合である可能性があるが、療法調製は、治療しようとする異常にしたがい、投与される。本発明の処方中の組成物濃度は、投与しようとする投薬量、および投与経路を含む、いくつかの問題点に応じ、異なる可能性があるであろう。
【0077】
さらなる労力なしに、当業者は、先行する説明を用い、本発明を完全な度合いで利用することが可能であると考えられる。以下の態様は、したがって、単なる例示と解釈され、そしていかなる方式でも残りの開示を限定すると解釈してはならない。
【実施例】
【0078】
実施例1−直接縮合法−Amerlyst 15により触媒作用を受けた50/50 ポリ(D,L-乳酸−コ−グリコール酸)[Poly(D,L-Lactic-co-glycolic)]の合成
D,L-乳酸(85%水性混合物;13.7グラム,0.13モル)を、マグネチックスターラー、ディーンスターク・トラップ及び水冷コンデンサを備えた丸底フラスコ中で、グリコール酸(10グラム,0.13モル)と混合した。トルエン(100ml)とAmberlyst 15ビーズ(100mg)とを添加し、次いでこの混合物を窒素下で72時間還流し、混合物から水を除去した。この混合物を冷却し、固化した塊からトルエンをデカンテーションし、生成物を塩化メチレン(250ml)に溶解した。この塩化メチレン溶液を活性炭(Draco,500mg)で処理し、濾過し、そしてロータリーエバポレーターで真空乾燥した。このポリエステルを高真空(1mmHg)及び40℃でさらに乾燥すると、白色粉末が得られた[CHCl3中のηinh(内部粘度)=0.3,酸価(acid#)=2439,Tg=12℃]。
【0079】
実施例2−直接縮合法−Amerlyst 15により触媒作用を受けた49/49/2 ポリ(L-乳酸−コ−グリコール酸/クエン酸)[Poly(L-Lactic-co-glycolic/citric)]の合成
上記と同様の系を使用して、L-乳酸(88%水性混合物;25.6グラム,0.25モル)を、丸底フラスコ中で、グリコール酸(19.2グラム,0.25モル)、クエン酸一水和物(2.33グラム,0.011モル)、Amberlyst 15ビーズ(500mg)及びトルエン(150ml)と混合した。この混合物を還流まで撹拌しながら51時間加熱し、ディーンスターク・トラップにより水を除去した。半分固体になった生成物からトルエンをデカンテーションした。このポリエステルをアセトン(300ml)に溶解し、濾過し、次いでロータリーエバポレーターで乾燥した。固体ポリエステルを塩化メチレンに再溶解し、水で2回洗浄(2×150ml)して可溶性オリゴマーを除去した。有機層をロータリーエバポレーターで濃縮し、生成物を真空下で完全に乾燥させると、白色固体(表1参照、IB型ポリエステル、ポリマー#4)が得られた。(CHCl3中のηinh=0.11,酸価=842,Tg=15℃)。
【0080】
実施例3−段階生長重合法−リンゴ酸により触媒作用を受けた73.5/24.5/2 ポリ(L-ラクチド−コ−グリコール酸/リンゴ酸)の合成
エア・インピンジャー付属物を備えた150ml容積の円柱アンプルを使用して、L-ラクチド(20グラム,0.139モル)を、グリコール酸(7.1グラム,0.093モル)と(d,l)-リンゴ酸(1.0グラム,0.0075モル)と混合した。この混合物の中にインピンジャー入口を通して窒素を吹き込む(100ml/分)ことによって撹拌し、100分間かけて25℃から155℃に加熱した。この反応混合物を155℃で70時間保持し、重合から発生する水を反応器出口ラインのコールド・トラップ中に取り出した。70時間後、反応物を100℃に冷却し、硬化させるために冷却したステンレス・スチール・レシーバーに注いだ。次いで固体ポリエステルを塩化メチレンに溶解し、水で2回洗浄(2×150ml)して可溶性オリゴマーを除去した。有機溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、生成物を真空下で完全に乾燥させると、白色固体が得られた(表II参照、II型ポリエステル、ポリマー#2)。(CHCl3中のηinh=0.13,酸価=1800,Tg=27℃)。
【0081】
実施例4−開環重合法−リンゴ酸により開始された75/25 ポリ(L-ラクチド−コ−グリコリド)の合成
マグネティック・スターラーを備えたガラスアンプルに、L-ラクチド(12.0グラム,0.0833モル)、グリコリド(3.21グラム,0.0277モル)、リンゴ酸(0.3042グラム,0.00227モル)、及びオクタン酸第一錫触媒(トルエン中0.33M、67μL、0.022ミリモル)を乾燥窒素条件下で添加した。この系をN2でパージし、数回真空にしてからアンプルを封止した。次いで反応体を140℃で融解し、この融解物を180゜、190゜、180゜、及び150゜でそれぞれ1、4.5、12、及び2時間加熱した。室温に冷却した後、このポリエステルを1mmHg未満の真空下、110℃で約1時間加熱してモノマーを除去し、室温に再冷却し、液体窒素でクエンチし、単離して、真空下で乾燥した。(CHCl3中のηinh=0.20,酸価=2560,Tg=39℃)。
【0082】
実施例5−開環重合法−クエン酸により開始された50/50 ポリ(D,L-ラクチド−コ−グリコリド)の合成
マグネティック・スターラーを含むガラスアンプル中、乾燥窒素雰囲気下で、D,L-ラクチド(10.0グラム,0.0694モル)を、グリコリド(8.06グラム,0.0694モル)、クエン酸(1.07グラム,0.00555モル)、及びオクタン酸第一錫触媒(トルエン中0.33M、84μL、0.0278ミリモル)と混合し、真空下で封止した。反応体を融解し、180゜、185゜、195゜、及び120゜でそれぞれ1、2、7、及び9時間加熱した。ポリエステルを室温に冷却し、液体窒素でクエンチし、単離して、乾燥した。(CHCl3中のηinh=0.26,酸価=970,Tg=23℃)。
【0083】
実施例6−開環重合法−1,6-ヘキサンジオールにより開始された50/50 ポリ(D,L-ラクチド−コ−グリコリド)の合成
上記と同様の系を使用して、D,L-ラクチド(10.0グラム,0.0694モル)、グリコリド(8.06グラム,0.0694モル)、1,6-ヘキサンジオール(0.656グラム,0.00555モル)、及びオクタン酸第一錫(トルエン中0.33M、84μL、0.0278ミリモル)を乾燥窒素条件下でガラスアンプルに添加し、これを続いて真空下で封止した。この成分を150゜、185゜、150゜、及び120゜でそれぞれ0.5、4、1、5及び3時間加熱した。得られたポリエステルを回収し、乾燥した。(表III参照、III型ポリエステル、ポリマー#5)(CHCl3中のηinh=0.39,酸価=10,138,Tg=30℃)。
【0084】
実施例7−官能基交換法−カルボン酸-保持50/50 ポリ(D,L-ラクチド−コ−グリコリド)の合成
50/50ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(Boehringer A001,8g)、クエン酸(0.8g,4.16ミリモル)、及びオクタン酸第一錫(2滴)を乾燥窒素条件下でガラスアンプルに添加し、これを封止した。この混合物を150゜で4時間加熱し、室温に冷却し、液体窒素でクエンチし、単離し、乾燥した(表IV参照、IV型ポリエステル、ポリマー#1)。(CHCl3中のηinh=0.26,酸価=670,Tg=23℃)。
【0085】
実施例8−49:49:2 L-乳酸/グリコール酸/リンゴ酸(表I参照、ポリマー#4)及びD-Trp6[LHRH]イオン分子結合体の合成
49:49:2 L-乳酸/グリコール酸/リンゴ酸(直接縮合により合成;Mw=9,500;酸価=1420)500mgをアセトン(Mallinckrodt Analytic Reagent)10mlに溶解した。0.1N水酸化ナトリウム溶液の一部(1.14ml)を添加し、この混合物を室温で15分間撹拌した。1.0ml水中のD-Trp6[LHRH] (BIM-21003ペプチドI;塩基含量87%,アセテート含量7%)100mgの溶液を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。次いで溶媒を最初にRotovapによりT<40℃で、次いでデシケーター中で、1mmHg真空下、室温で1時間除去した。乾燥した固体を粉砕し、脱イオン水100ml中で撹拌し、濾過により単離した。水性の濾液をHPLCにより試験すると、<1mgの可溶性ペプチドを含有していることが判明した。固体材料を真空下で数日間乾燥すると、白色粉末540mgが得られた。この粉末をin-vitroアッセイで使用した(表VI参照、実施例8)。
【0086】
実施例9−49:49:2 L-乳酸/グリコール酸/リンゴ酸(表I参照、ポリマー#4)及びソマトスタチン/腫瘍阻害性類似体イオン分子結合体の合成
49:49:2 L-乳酸/グリコール酸/リンゴ酸(直接縮合により合成;Mw=9,500;酸価=1420)100mgをアセトン(Mallinckrodt Analytic Reagent)2mlに溶解した。0.1N水酸化ナトリウム溶液の一部(0.32ml)を添加し、この混合物を室温で15分間撹拌した。1.2ml水中のソマトスタチン/腫瘍阻害性類似体(BIM-23014ペプチドII;塩基含量83%,アセテート含量9.8%)20mgの溶液を添加し、この混合物を室温で1時間撹拌した。次いで溶媒を最初にRotovapによりT<40℃で、次いでデシケーター中で、1mmHg真空下、室温で1時間除去した。乾燥した固体を粉砕し、脱イオン水20ml中で撹拌し、濾過により単離した。水性の濾液をHPLCにより試験すると、<0.05mgの可溶性ペプチドを含有していることが判明した。固体材料を真空下で数日間乾燥すると、白色粉末106mgが得られた。この粉末を砕き、in-vitro放出アッセイで使用した(表VI参照、実施例#9)。
【0087】
実施例10−73.5:24.5:2 ポリL-ラクチド/グリコール酸/リンゴ酸(表II、ポリマー#2参照)及びD-Trp6[LHRH]イオン分子結合体の合成
73.5:24.5:2 ポリL-ラクチド/グリコール酸/リンゴ酸(非環化生成物の段階生長により合成;酸価=1800)800mgをアセトン(16ml)に溶解した。0.1N水酸化ナトリウム溶液の一部(2.8ml)を添加し、この溶液を室温で20分間撹拌した。2ml水中のD-Trp6[LHRH](BIM-21003;塩基含量87%,アセテート含量7%)200mgの溶液を添加し、この混合物を室温で90分間撹拌した。溶媒を除去し、得られた固体を実施例8に記載の如く脱イオン水中で粉砕すると、1%未満の可溶性ペプチド塩が存在することが判明した。単離した固体を真空下で4日間乾燥すると、白色粉末839mgが得られた。この粉末を砕き、in-vitro放出アッセイで使用した(表VI参照、実施例#10)。
【0088】
実施例11−L-ラクチド/グリコリド/d,lリンゴ酸ポリエステル(65:33:2)のペプチド-ポリマーイオン結合体微粒子1.50の形成
実施例4の開環重合により結合体を合成し(MW=4700、多分散度=1.3、Jordi Gel 50×1cm混合線形床カラム上、THF溶離液、GPCにより測定、Wyatt Mini Dawn光散乱検出器dn/dc=0.05、滴定による酸価=1475、Tg=42℃)、これをアセトン40mlに溶かした。この酸基を0.5M水酸化ナトリウム溶液2.0mlで中和し、5分間撹拌した。Milli-Q水20ml中のBIM-23014(ペプチド含量83.7%;アセテート含量11.5%)0.5gの溶液を撹拌しながらゆっくりとポリマー溶液に添加した。沈澱形成を防ぐためにペプチド添加時にさらに40mlのアセトンも滴下添加した。透明な、無色溶液を1時間撹拌し、次いで真空下で蒸発乾涸させた。得られた白色固体をアセトン20mlとMiili-Q水2mlとの混合物中に再溶解させると、透明溶液が形成した。この溶液を0.2μテフロン(登録商標)フィルターを介して、4℃でMilli-Q水500mlの激しく撹拌しているリザーバに注入した。水と接触させると、ポリマー/ペプチド複合体相が即座に小さな粒子に分離した。4℃で30分間このスラリーを混合した後、残存するアセトンを減圧下で除去し、固体を遠心分離により単離し、Milli-Q水100ml中に再懸濁し、再び遠心分離した。単離した固体を凍結乾燥により乾燥させると、白色の易流動性粉末1530mgが得られた。粒径範囲=2〜100μm。イオン結合体のTgは53℃であった。全ての水性の上清中の全残存(未結合)ペプチドは、HPLC分析により63mgであることが判明した。全初期ペプチド含量は、窒素の元素分析により測定し、19.9重量%であった。アセトン/0.1M TFA抽出法を使用して、この結合体からの抽出可能なペプチドの割合は16.9重量%であった。かくして得られた結合体は84.8%イオン性(抽出可能)であった。
【0089】
ロッド送出系・タイプ1(CONC2及びCGC1)
実施例A-1:クエン酸で開始された97/3カプロラクトン/グリコリドコポリマー(CGC1)の製造
メカニカル・スターラーを備えた丸底フラスコを2回火炎乾燥し、乾燥窒素でパージした。このフラスコに、ε-カプロラクトン(1.455モル,166g)、グリコリド(0.08865モル,10.3g)、クエン酸(0.075モル,14.4g)及びオクタン酸第一錫(0.0003モル,トルエン中0.8M溶液の375μl)を充填した。以下のスキームを使用して重合を実施した:融解後連続して撹拌(70rpm)しながら、アルゴンパージ下で、充填物を室温から約150℃に約1時間と20分かけて加熱した。この充填物を約150℃で約11.5時間保持した。重合の終結時に、少量の未反応モノマーを真空下(約0.1mmHg)、約120℃で約15分間蒸留した。この材料をジャーに注ぎ、放冷した。
【0090】
ポリマーをGPC(Mn=3543,Mw=7708)、FTIR、DSC(Tm 52.0℃)及びカルボン酸含量に関する滴定(平均当量=623Da)により分析した。
ポリマー20グラムをアセトン50.0mL中に溶解し、この溶液を撹拌している氷水中で沈澱させた。固体生成物を濾過により単離した。
【0091】
精製したポリマーをGPC(Mn=4214,Mw=9688)、DSC(Tm 45.2℃)及び滴定(平均当量=780)により分析した。
実施例B1:イオン結合体(CONC1)の製造
1.5gの精製ポリマー(CGC1)をガラスバイアル中のアセトニトリル7.5mLに溶解した。別のバイアルで、250.0mgのLHRH-アセテートを1.5mlの蒸留水に溶解した。溶解したポリマーを0.45μmのAcrodiscシリンジフィルターを通して、(LHRHアセテートを中和するために)炭酸ナトリウム83.8mgを含有するバイアル内に濾過した。このLHRH溶液を濾過したポリマー溶液に滴下添加した。混合した溶液を、室温で約1.5時間、マグネチックスターラーで撹拌した。撹拌している液体窒素で冷却したイソプロピルアルコール(IPA)に、結合体を滴下添加して沈澱させた。沈殿物を遠心分離により集め、真空下で一晩乾燥させた。結合体収率は73.5%であった。結合体をDSC(Tm 50.9℃)とFTIRで分析した。この材料の元素分析から窒素1.81%でった。この元素分析に基づいて、LHRH含量は10.0%であることが判明した。
【0092】
実施例C−1:ロッド形送出系の製造
イオン結合体(CONC2 0.3987g)及びポリマー(CGC1 1.206g)を緩やかに粉砕しながら混合し、加熱ブロック中で約58℃で一緒に融解させた。融解した材料を混合し、次いで18Gキャピラリー管に引き出し、放冷した。これを押しだして、ロッドを正確な用量の薬剤を含む長さに切断し、滅菌10-ゲージスパイラル針(注射用)に設置した。実施例C−1の全ての段階を層流フードで実施した。このロッドのLHRH含量は2.5%であった。
【0093】
ロッド送出系・タイプ2(CONC2及びCGC1)
実施例A−2:クエン酸で開始した97/3カプロラクトン/グリコリドコポリマー(CGC1)の製造
実施例A−1で製造したのと同一ポリマー(CGC1)をこの実施例で使用した。
【0094】
実施例B−2:イオン結合体(CONC2)の製造
実施例B−1に記載の方法に従って、CONC2を製造した。元素分析により窒素割合は2.31%であった。これをベースとして、LHRH含量は12.76%であった。
【0095】
実施例C−2:ロッド形送出系の製造
CONC2(0.1854g)と精製CGC1(0.5565g)とを機械的に混合し、次いで約60℃に加熱した。混合し融解させた材料を18-ゲージのキャピラリー管に引き出し、プランジャーで押し出した。このロッドを正確な用量の薬剤を含む長さに切断し、滅菌18-ゲージスパイラル針(注射用)に設置した。実施例C−2の全ての段階を層流フード中で実施した。ロッドはLHRH含量3.2%であった。
【0096】
ロッド送出系・タイプ3
実施例A−3:酒石酸で開始した98/2カプロラクトン/トリメチレンカーボネート(TMC)コポリマー(CTT1)の製造
メカニカルスターラーを備えた丸底フラスコを3回火炎乾燥し、乾燥アルゴンでパージした。このフラスコに、ε-カプロラクトン(1.47モル,168g)、TMC(0.03モル,3.06g)、酒石酸(0.0142モル,2.134g)及びオクタン酸第一錫(0.0003モル,トルエン中0.8M溶液の375μl)を充填した。以下のスキームを使用して重合を実施した:融解した反応混合物を撹拌しながら(60rpm)、アルゴンパージ下で充填物を室温から約150℃に約1時間で加熱した。約150℃で約9時間、この温度を保持した。未反応モノマーを減圧(0.1mm)下で、約100℃で約1時間蒸留した。ポリマーをジャーに注ぎ、放冷した。
【0097】
ポリマーをGPC(Mn=13221,Mw=35602)により分析した。
実施例B−3:イオン性結合体(CONCTT1)の製造
実施例A−3からの精製ポリマー1.5gをガラスバイアル中のアセトニトリル7.5mL中に溶解した。別のバイアル中で、LHRH-アセテート250mgを蒸留水1.5ml中に溶解した。溶解させたポリマーを0.45μmのAcrodiscシリンジフィルターを通して、(LHRH-アセテートを中和するために)炭酸ナトリウム56.5mgを含有するバイアルに濾過した。LHRH溶液を濾過したポリマー溶液に滴下添加した。混合した溶液をマグネチックスターラーバーで、室温で約3時間撹拌した。撹拌している液体窒素で冷却したIPAに結合体を滴下添加することによって沈澱させた。沈澱を遠心分離により集め、真空下で一晩乾燥させた。
【0098】
結合体の収率は81.1%であった。この材料の元素分析は2.04%窒素であった。これに基づいて、LHRH含量は11.3%であることが判明した。
実施例C−3:ロッド形送出系の製造
CTT1(0.8909g)を約55℃で融解させた。これに、CONCTT1 0.2250gを添加し、全体の系を約65℃に加熱した。次いで溶融した系を18ゲージのキャピラリー管に引き出し、プランジャーで押出した。このロッドを、正確な用量の薬剤を含む長さに切り出し、滅菌18ゲージ・スパイラル針(注射用)に設置した。実施例C−3の全ての段階を層流フードで実施した。このロッドはLHRH含量2.3%を有していた。
【0099】
ロッド送出系・タイプ4
実施例A−4:酒石酸で開始した94/6カプロラクトン/グリコリドコポリマー(CGT6)の製造
メカニカルスターラーを備えた丸底フラスコを3回火炎乾燥し、乾燥窒素でパージした。このフラスコに、ε-カプロラクトン(1.41モル,161g)、グリコリド(0.09モル,10.4g)、酒石酸(0.005モル,0.73g)及びオクタン酸第一錫(0.0003モル,トルエン中0.8M溶液の375μl)を充填した。以下のスキームを使用して重合を実施した:融解した反応混合物を撹拌しながら(60rpm)、アルゴンパージ下で充填物を室温から約150℃に約1時間で加熱した。約150℃で約1時間、この温度を保持した。次いで約4時間で温度を約180℃に上昇させた。この材料を約107℃に冷却し、減圧(1.5mmHg)下で約1.5時間設置した。この材料をジャーに注ぎ、放冷した。
【0100】
収集した後、ポリマーをDSC(Tm=54.5C)及びGPC(Mn=26254,Mw=68101)により分析した。
実施例B−4:イオン結合体(CONCTT2)の製造
LHRH-アセテートと実施例A4のコポリマーを使用した以外には、実施例B−1に記載の如くCONCTT2を製造した。
【0101】
実施例C−4:ロッド形送出系の製造
CGT6(1.4g)及びCONCTT2(0.4779g)を約57℃に加熱し、冷却し、切断し、次いで同じ温度に再加熱した。次いで溶融した系を18ゲージ・キャピラリー・管に引き出し、プランジャーで押し出した。ロッドを正確な用量の薬剤を含む長さに切り出し、滅菌18ゲージ・スパイラル針(注射用)に設置した。実施例C−4の全ての段階を層流フードで実施した。ロッドはLHRH含量2.8%であった。
【0102】
実施例D−4:不活性ポリマー前駆体を使用する系C−4ロッドのコーティング
CGT6(1.4g)を1.5mlジクロロメタンに溶解した。実施例C−4のロッドをこのポリマー溶液に浸し、直ちに取り出し、層流フード中、周囲条件下で乾燥した。
【0103】
上記記載から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、種々の利用及び条件に合わせるために本発明を様々に変更及び変形することができる。かくして、他の態様も本発明の請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、ポリカルボキシル酸チップ化ラクチド/グリコリド(リンゴ酸型)コポリマーの異性体を示す図解である。
【図2】図2は、ラクチド/グリコリド(リンゴ酸型)コポリマーおよびSomatuline(BIM−23014)の間の化学的相互作用を示す、イオン分子結合体の図解である。
【図3】図3は、28日間の期間に渡り、37℃で、イオン分子結合体からPBS緩衝液中に放出されたペプチドのパーセンテージを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたはそれ以上の遊離COOH基を含み、そして1より大きいカルボキシル対ヒドロキシル比を有するポリエステルであって、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、ε−ヒドロキシ カプロン酸、シュウ酸アルキレン、シュウ酸シクロアルキレン、コハク酸アルキレン、β−ヒドロキシブチレート、置換または非置換炭酸トリメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、グリコール酸、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド、およびそれらのいかなるものでもよい光学活性異性体、ラセミ化合物またはコポリマーからなる群より選択されるメンバーを含む、但し、酒石酸がポリエステルのメンバーである、前記ポリエステル。
【請求項2】
ポリエステルがL−乳酸またはD−乳酸を含む;あるいはポリエステルがL−乳酸またはD−乳酸およびグリコール酸を含む、請求項1記載のポリエステル。
【請求項3】
少なくとも1つの有効イオノゲン性アミンを含む、1つまたはそれ以上の生物活性ポリペプチドにイオン結合している請求項1記載のポリエステルを含む組成物であって、該組成物に存在する該ポリペプチドの少なくとも50重量%が該ポリエステルにイオン結合している、前記組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの有効イオノゲン性アミンを含む、1つまたはそれ以上の生物活性ポリペプチドにイオン結合している請求項2記載のポリエステルを含む組成物であって、該組成物に存在する該ポリペプチドの少なくとも50重量%が該ポリエステルにイオン結合している、前記組成物。
【請求項5】
生物活性ポリペプチドが、LHRH、ソマトスタチン、ボンベシン/GRP、カルシトニン、ブラジキニン、ガラニン、MSH、GRF、アミリン、タキキニン類、セクレチン、PTH、CGRP、ニューロメジン類、PTHrP、グルカゴン、ニューロテンシン、ACTH、GHRP、GLP、VIP、PACAP、エンケファリン、PYY、モチリン、サブスタンスP、NPY、TSH、およびそれらの類似体または断片からなる群より選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
生物活性ポリペプチドが、LHRH、ソマトスタチン、ボンベシン/GRP、カルシトニン、ブラジキニン、ガラニン、MSH、GRF、アミリン、タキキニン類、セクレチン、PTH、CGRP、ニューロメジン類、PTHrP、グルカゴン、ニューロテンシン、ACTH、GHRP、GLP、VIP、PACAP、エンケファリン、PYY、モチリン、サブスタンスP、NPY、TSH、およびそれらの類似体または断片からなる群より選択される、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
生物活性ポリペプチドが、LHRH、ソマトスタチンおよびそれらの類似体または断片からなる群より選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
生物活性ポリペプチドが、LHRH、ソマトスタチンおよびそれらの類似体または断片からなる群より選択される、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの有効イオノゲン性アミンを含む、1つまたはそれ以上の生物活性ポリペプチドにイオン結合している請求項1記載のポリエステルを含む組成物であって、
該ポリエステルが酒石酸、ε−カプロラクトンおよび炭酸トリメチレンを含み、
前記組成物に存在する前記ポリペプチドの少なくとも50重量%が該ポリエステルにイオン結合している、前記組成物。
【請求項10】
前記ポリエステル中のε−カプロラクトン対炭酸トリメチレン比が、90 ε−カプロラクトン:10 炭酸トリメチレンないし99 ε−カプロラクトン:1 炭酸トリメチレンである、請求項9記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−176787(P2006−176787A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−599(P2006−599)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【分割の表示】特願2002−253916(P2002−253916)の分割
【原出願日】平成12年1月26日(2000.1.26)
【出願人】(500511604)ソシエテ・ドゥ・コンセイユ・ドゥ・ルシェルシュ・エ・ダプリカーション・シャンティフィック・エス・ア・エス (22)
【出願人】(500354104)ポリ−メド・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】