説明

画像データ生成装置及び画像データ生成方法

【課題】画像データを生成するにあたり、簡易な構成で、濃度を落とすことなく文字部分の潰れを解消して、文字の再現性の向上を図る。
【解決手段】印刷装置において記録媒体上に記録される画像を表す画像データを生成する画像データ生成装置であって、入力された画像データを二値化する二値化処理部111b又は112aと、二値化された画像データ中の画素を注目画素として順次選択し、前記注目画素E1を含む参照領域A1に含まれる複数の画素のうち黒画素の画素数を計数して画素密度を算出する画素密度算出部114と、画素密度に基づいて、画素密度と間引率の対応関係を示すテーブルデータD1を参照し、各画素に対する間引率を算出する間引率算出部115と、間引率に応じたパターンに従って、各画素の濃度を低減させる間引処理を実行する間引処理部116とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔版印刷で用いられるマスタ製版や、インクジェットプリンタ、レーザープリンタその他の印刷装置において、記録媒体上に記録される画像を表す画像データを生成する画像データ生成装置及び画像データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷装置の一つとして孔版印刷装置が用いられている。この孔版印刷装置では、画像データに対して所定の画像処理及び画素値変換処理を施した後に二値化を行うことにより、二値化データを取得する。そして、取得した二値化データに基づいてサーマルヘッドを局所的に発熱させながら感熱孔版原紙に接触させて穿孔してマスタを作成する。さらに、作成したマスタの穿孔部を介してインクを印刷媒体に転移させて印刷物を得る。
【0003】
このような孔版印刷機では、画像データにベタ部分があると、マスタから印刷媒体に転移されるインク量が多くなる。この印刷媒体に次の印刷媒体が排紙後重ねられると、その印刷媒体の裏面に前の印刷媒体上のインクが転移してしまうことがある。他の印刷媒体からインクが裏面に転移すると、そのインクが印刷媒体の表面から透けて見えてしまう、いわゆる「裏写り」が生じ、印刷品質が劣化するという問題点があった。
【0004】
このような問題を解決すべく、例えば、特許文献1及び2に開示された技術がある。この特許文献1及び2に開示された技術では、画像データのベタ部分を認識し、ベタ部分のインク量を間引き処理するようにしている。これにより、「裏写り」の発生を軽減させることができる。
【0005】
ところが、特許文献1及び2に開示された技術では、間引き処理を行うのが画像データのベタ部分であるため、ドットゲインの大きい印刷媒体を用いて細字を印刷したときに発生する「文字潰れ」、つまり、文字の細線が滲んで細線の間が潰れてしまう現象を、抑制することができない。
【0006】
特に、上質紙に比べてドットゲインの影響を受けやすい、繊維の配列や大きさが均等でなくインクの浸透率にバラツキが多い更紙やケナフ紙などを用いる場合は、「文字潰れ」の発生傾向が顕著となる。また、特に、10ポイント以下の文字サイズで、画数が多い漢字などの場合には、細字部分の文字潰れが多発して、文字の再現性が低下するという問題があった。
【0007】
また、従来から、画像のベタ部分のインク量を間引くのではなく、画像データを作成する際の読み取り濃度を薄くする方法や、印刷時の印圧を低減する方法も提案されている。さらに、インクジェットプリンタなどの技術分野では、画像データ中の輪郭部分を抽出し、その部分のインク液滴を小さい液滴に置き換えたり、液滴数を間引いたりする技術も提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−22582号公報
【特許文献2】特開平5−22583号公報
【特許文献3】特開2002−292848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した読み取り濃度を薄くする方法では、単一の閾値を用いて一律に濃度を薄くした場合には、細字部分にカスレが生じてしまう。また、誤差拡散処理などによって濃度を薄くしても、細字部分にボケが生じる程度の不都合は避けられない。そのため、読み取り濃度を薄くする方法には、細字の再現性が向上しないという問題がある。
【0010】
また、マスタの印刷媒体に対する印圧を低くして印刷濃度を下げる方法を採用した場合には、細字の再現性は向上するものの、ベタ部分が埋まらなくなりカスレが生じてしまう。
【0011】
また、上述した特許文献3に開示された技術では、原稿上の特定の方向に延在する輪郭線を特徴量として抽出するなど、画像中の特徴部分を抽出して輪郭部分を検出し、間引き処理を施している。ところが、例えばスキャナで原稿から読み取った画像データの場合には、画像データ中の輪郭線が一直線上に延在すること自体が稀である。それは、スキャナで画像データを読み取った原稿の印刷時に、適切な間引き処理を施した画像データを用いていない限り、原稿の輪郭線がきれいな一直線状になっていることが少ないからである。そのため、特許文献3の技術を細線の間引き処理に適用したとしても、効果的な結果を期待することは難しい。
【0012】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、孔版印刷などの印刷装置において記録媒体上に記録される画像を表す画像データを生成するにあたり、滲みが生じやすい印刷媒体であってもベタ部分の濃度を落とすことなく、文字の細線部分などについては間引処理を確実に行い文字部分の潰れを解消して、文字の再現性の向上を図ることができる画像データ生成装置及び画像データ生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、
印刷装置において記録媒体上に記録される画像を表す画像データを生成するのに当たり、
入力された画像データを二値化し、
二値化された画像データ中の画素を注目画素として順次選択し、前記注目画素を含む所定範囲の参照領域に含まれる複数の画素のうち黒画素の画素数を計数して、該黒画素の画素数から、前記注目画素に対応する前記参照領域の画素密度を算出し、
所定の閾値よりも高い画素密度の範囲では、画素密度が増加するほど間引率が低減し、かつ、前記所定の閾値以下の画素密度の範囲よりも間引率が低くなるように、前記参照領域の画素密度と間引率の対応関係を定義した定義データを参照して、算出された画素密度に基づき各画素に対する間引率を算出し、
前記間引率に応じたパターンに従って、各画素の濃度を低減させる間引処理を実行する、
ことを特徴とする。
【0014】
上記発明では、注目画素に対応する参照領域の画素密度に基づいて各画素(各注目画素)の間引率を算出する。このため、注目画素とその周辺における画素密度の関係から、例えば、その注目画素がベタ部分であるのか細字部分であるのか、を判断したうえで、間引の程度を決定することができる。具体的には、所定の閾値よりも画素密度が高くなるベタ部分などの箇所では、画素密度が増加するほど間引率を下げることによって、濃度が高くなるほど間引かれ難くしている。しかも、所定の閾値よりも画素密度が高くなるベタ部分などの箇所では、画素密度が所定の閾値以下となる細字部分などの箇所よりも、間引率を低くしている。これにより、ベタ部分の濃度を低下させることなく、細字部分であっても確実に間引くことができ、文字部分の潰れを解消しつつ文字等の再現性を向上させることができる。
【0015】
特に、参照領域は注目画素を含む所定範囲の画素を含んでおり、その参照領域に含まれる黒画素の数に基づいて参照領域の画素密度が算出される。このため、参照領域の画素密度に基づいて間引率を決定することによって、注目画素とその周辺画素の分布の変化に応じて間引率を変化させることができる。
【0016】
例えば、参照領域が余白部分からベタ部分に差し掛かる箇所など、画素密度が低い箇所では、その画素密度に応じたある程度の間引率で間引を行い、参照領域がベタ部分の輪郭からベタ部分内に移行し、画素密度が高くなるにつれて間引率を段階的に下げていく、というように間引率を変化させることができる。この結果、ベタ部分の輪郭などでも急激な濃度変化を生じることがなく、滑らかに間引くことができる。
【0017】
さらに、上記発明では、画像データを二値化した後に間引率の解析を行うことから、演算処理の対象となるデータ量を軽減することができ、演算処理の負担軽減及び高速化が図れるとともに、演算処理装置やメモリ装置の小型化及び低廉化も可能となる。
【0018】
また、上記発明において、前記注目画素に対応する前記参照領域の画素密度の算出を画素密度算出部において行う構成とする場合、前記画素密度算出部が、前記画像データの内容に基づいて前記参照領域の面積又は形状を変更する機能を有することを特徴とする。
【0019】
上記発明では、画像データの内容に基づいて参照領域の面積や形状を変更する。画像データの内容としては、例えば、画像データに含まれる文字のサイズや書体、文字飾りの種類などがある。これらに応じて参照領域の面積や形状を変更することで、注目画素とその周辺における画素密度の関係をより正確に判断することができ、間引処理の精度を向上させることができる。
【0020】
なお、この参照領域としては、一般的に5×5の画素数及び形状で十分であるが、例えば、10ポイントのボールドゴシック書体の場合、白画素部分が少なく潰れやすい傾向があることから、7×7の参照領域として画素密度を求めれば、白画素部分の参照領域に対する割合を小さく評価することができ、その部分の画素密度が高くなり、ベタ部分と同様に間引率を下げるなどの対応を取ることができる。
【0021】
上記発明において、前記定義データでは、前記所定の閾値以下の画素密度における間引率が100%未満の特定上限値に定義されていることを特徴とする。
【0022】
上記発明では、例えば、細字部分などの画素密度が低い箇所では、その間引率に100%未満の上限を設けることによって、文字のカスレを生じさせることなく適度に間引くことができ、文字部分の潰れを解消して、文字等の再現性をより向上させることができる。
【0023】
上記発明において、前記特定上限値が50%であり、前記間引処理部は、前記特定上限値の間引率に応じた前記パターンを、1画素置きの市松模様状とすることを特徴とする。
【0024】
上記発明では、参照領域が、間引率が最大となる画素密度のような箇所に位置する場合であっても、特定上限値を50%とし、1画素置きの市松模様状に間引くことによって、細字のカスレが目視できない程度に適度に間引くことができる。
【0025】
上記発明において、前記二値化処理部で二値化された画像データを記憶する二値化データ記憶部と、前記記録媒体の種別を取得し、取得した種別が予め設定された特定の種別である場合に、前記二値化データ記憶部に記憶された画像データを読み出し、読み出された画像データの間引率の算出を前記間引率算出部に実行させる画像選択部とをさらに備えることを特徴とする。
【0026】
上記発明では、更紙やケナフ紙などのインク滲みしやすい記録媒体向けの画像データを生成するときにのみ上記間引処理を行うことができ、記録媒体の特性に合致した画像データを生成することができる。特に、例えば普通紙向けの画像データを生成する際に二値化した画像データを二値化データ記憶部に記憶しておき、この二値化された画像データを、印刷処理の対象となる記録媒体の種別に応じて、読み出して間引処理の演算に用いることができる。二値化データのデータ量は、通常の多値データよりも小さいため、記憶領域を低減することができ、メモリ装置の小型化及び低廉化を図ることができる。
【0027】
換言すると、二値化された画像データは、一般的な普通紙向けの画像データそのものであることから、記録媒体が普通紙などの間引処理が不要な種別であるときには、その二値化された画像データを一般的な印刷処理やマスタ製版処理に利用した後、二値化データ記憶部に保存しておき、記録媒体が更紙やケナフ紙などの間引処理が必要な種別であるときに、保存しておいた画像データを読み出して、改めて間引処理を行うことができる。この結果、メモリ装置の小型化及び低廉化のみならず、二値化された画像データの再利用ができることにより、一般的な印刷処理やマスタ製版処理で二値化された画像データを必要とするときに、その都度、データ容量の大きい多値データを二値化するための演算処理をする必要がなく、演算処理の負担軽減及び高速化が図れる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、孔版印刷などの印刷装置において記録媒体上に記録される画像を表す画像データを生成するにあたり、簡易な構成で、画像の間引処理を実行する箇所を適切に選択することにより、滲みが生じやすい印刷媒体であってもベタ部分の濃度を落とすことなく、文字の細線部分などについては間引処理を確実に行い文字部分の潰れを解消して、文字の再現性の向上を図ることができる。また、更紙やケナフ紙などの記録媒体に対するインク滲みを低減することができ、環境負荷の低い用紙の利用機会を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る孔版印刷装置の内部構成を示す概略断面図である。
【図2】図1の演算処理部の画像データ生成処理に関するモジュールを示すブロック図である。
【図3】図2の画素密度算出部による画素密度の算出の概要を示す説明図である。
【図4】(a)は、図2の間引率算出部による間引率の算出に用いる画素密度と間引率の対応関係を示すグラフ、(b)は図2の間引処理部が間引処理の際に用いる閾値マトリクスの構成例を示す説明図である。
【図5】(a)〜(d)は、図4の間引率に応じた閾値マトリクスの構成を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る画像データ生成方法の概要を示すフローチャートである。
【図7】(a)は、図2の間引処理部で実行された間引き処理有のデジタルデータを示す説明図であり、(b)は、(a)のデジタルデータによって印刷された画像画面を示す上面図である。
【図8】(a)は、従来例に係る間引き処理無のデジタルデータを示す説明図であり、(b)は、(a)のデジタルデータによって印刷された画像画面を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(孔版印刷装置の全体構成)
以下、本発明に係る画像データ生成装置を、孔版印刷装置における製版用の画像データの生成に適用した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る孔版印刷装置1の内部構成を示す概略構成図である。
【0031】
本実施形態の孔版印刷装置1は、図1に示すように、原稿の画像を読み取って画像データを出力する画像読取部10と、画像読取部10で読み取られた画像データに基づいて感熱孔版原紙33に製版処理を施し、マスタを製版する第1及び第2の製版部30,35と、第1及び第2の製版部30,35において製版された感熱孔版原紙33を用いて印刷用紙P1に印刷を施す第1及び第2の印刷部40,50と、第1の印刷部40に印刷用紙P1を給紙する給紙部20、第1の印刷部40において片面印刷された片面印刷済印刷用紙P2を一旦ストックし、その後、所定のタイミングで第2の印刷部50に給紙する中間ストック部46と、第2の印刷部50によって両面印刷された両面印刷済印刷用紙P3が排出される排紙部70とを備えている。
【0032】
画像読取部10は、原稿の画像情報を光電的に読み取るラインイメージセンサを有し、ラインイメージセンサで原稿を走査することによって原稿を読み取り、画像データを出力するスキャナ装置である。
【0033】
第1の製版部30は、複数個の発熱体が一列に配列されてなるサーマルヘッドユニット31を有し、孔版原紙ロールから繰り出された感熱孔版原紙33に対し、サーマルヘッドユニット31を用いて製版処理を行うものである。なお、第1の製版部30は、後述する演算処理部100から出力された処理済画像データに基づいて製版処理を行う。
【0034】
第2の製版部35も、第1の製版部30と同様に、サーマルヘッドユニット36を有し、孔版原紙ロールから繰り出された感熱孔版原紙33に対し、サーマルヘッドユニット36を用いて製版処理を行うものである。なお、第2の製版部35も、後述する演算処理部100から出力された処理済画像データに基づいて製版処理を行う。
【0035】
第1の印刷部40は、多孔金属板、メッシュ構造体などのインク通過性の円筒状の第1の印刷ドラム41と、印刷用紙P1を所定のプレス圧で第1の印刷ドラム41に圧接させる第1のプレスローラ42と、第1の印刷ドラム41から片面印刷済印刷用紙P2を剥ぎ取る第1の剥取爪43とを備えている。第1の印刷ドラム41の外周には第1の製版部30において感熱孔版原紙33に穿孔されたマスタが巻き付けられて装着されるようになっている。また、第1のプレスローラ42は、第1の印刷ドラム41の円筒の中心軸が延びる方向(図1の紙面奥行き方向)に沿って延設されている。
【0036】
第2の印刷部50は、第1の印刷部40と同様に、円筒状の第2の印刷ドラム51と、片面印刷済印刷用紙P2を所定のプレス圧で第2の印刷ドラム51に圧接させる第2のプレスローラ52と、第2の印刷ドラム51から両面印刷済印刷用紙P3を剥ぎ取る第2の剥取爪53とを備えている。第2の印刷ドラム51の外周には第2の製版部35において穿孔されたマスタが巻き付けられて装着されるようになっている。また、第2のプレスローラ52は、第2の印刷ドラム51の円筒の中心軸が延びる方向(図1の紙面奥行き方向)に沿って延設されている。
【0037】
給紙部20は、印刷用紙P1が載置される給紙台21と、給紙台21より印刷用紙P1を一枚ずつ取り出して2次給紙ローラ23に向けて送り出す1次給紙ローラ22と、1次給紙ローラ22の搬送方向下流側に配置され、1次給紙ローラ22により搬送された印刷用紙P1の先端を一旦停止させ、所定のタイミングで印刷用紙P1を第1の印刷ドラム41と第1のプレスローラ42との間に送り出す2次給紙ローラ23とを備えている。
【0038】
排紙部70は、両面印刷済印刷用紙P3を排紙台71まで搬送する排紙送りベルト部72と、排紙送りベルト部72により搬送された両面印刷済印刷用紙P3が積載される排紙台71とを備えている。
【0039】
また、第1の印刷部40と中間ストック部46との間には、湾曲搬送部44が設置されている。湾曲搬送部44は、図1に示すように、搬送経路に沿った湾曲表面を有するガイド板を備えている。ガイド板の湾曲表面には、第1の印刷部40から送り出された印刷用紙P1を吸引する吸引口が設けられた搬送ベルトが設置されている。そして、この搬送ベルトを循環移動させるプーリー45が設けられている。湾曲搬送部44は、搬送ベルトの吸引口によって片面印刷済印刷用紙P2を吸引するとともに、プーリー45を回転させることによって搬送ベルトにより片面印刷済印刷用紙P2をガイド板の湾曲表面に沿って搬送するものである。
【0040】
また、中間ストック部46と第2の印刷部50との間には、中間ストック部46から搬出された片面印刷済印刷用紙P2をピックアップするピックアップローラ47と、ピックアップローラ47によってピックアップされた片面印刷済印刷用紙P2を順次所定のタイミングで第2の印刷ドラム51と第2のプレスローラ52との間に送り出すタイミングローラ48とが設けられている。
【0041】
(画像データ生成装置)
そして、本実施形態の孔版印刷装置1は、製版処理や、画像処理、印字制御及び各駆動手段の制御を全般的に行う演算処理部100を備えている。本実施形態において、この演算処理部100は、画像読取部10から出力された画像データに対し、所定の濃度変換処理を施して第1及び第2の製版部30,35にそれぞれ出力する画像データ生成装置としての機能を有している。図2は、本実施形態に係る演算処理部100の画像データ生成処理に関するモジュールを示すブロック図である。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0042】
図2に示すように、演算処理部100は、画像データ生成処理に関するモジュールとして、ジョブデータ受信部101と、操作信号取得部102と、記憶部103と、画像形成制御部110とを備えている。
【0043】
ジョブデータ受信部101は、画像読取部10や外部通信インターフェース104を通じて、一連の印刷処理単位であるジョブデータを受信するインターフェースであり、受信したジョブデータに含まれるデータを画像形成制御部110に受け渡すモジュールである。外部通信インターフェース104を通じての通信としては、例えば、10BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANの他、赤外線通信等の近距離通信も含まれる。
【0044】
操作信号取得部102は、操作パネル100aやネットワーク用の外部通信インターフェース104が接続され、操作パネル100aやネットワークの外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等の情報端末)でのユーザー操作を取得して解析した後、演算処理部100内の各モジュールへ入力する外部インターフェースである。なお、ここでのユーザー操作としては、ユーザーが設定した画像モードなどが含まれ、この画像モードには、画像生成処理における写真処理又は文字処理を選択する画像モード切替信号や、製版されたマスタが用いられる印刷処理の対象となる記録媒体の種別(普通紙又は更紙など)の設定情報が含まれる。
【0045】
記憶部103(請求項中の二値化データ記憶部に相当)は、各種のデータや、プログラムを記憶保持するメモリ装置であり、特に、本実施形態においては、二値化された画像データ、画素密度と間引率の対応関係を示す定義データであるテーブルデータD1(図4(a)参照)、画素密度閾値データ、及び閾値マトリクスデータM1(図4(b)参照)等を記録保持している。これらの記憶データは、後述する画像形成制御部110における各処理において読み出され、参照される。
【0046】
画像形成制御部110は、画像処理に特化したデジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷に必要な画像データの変換等を行い、画像形成処理を実行するモジュールである。特に、本実施形態において、画像形成制御部110には、サーマルヘッドユニット31,36の駆動を制御し、製版処理全体を制御する製版制御機構として、写真処理部111と、文字処理部112と、画像選択部113と、画素密度算出部114と、間引率算出部115と、間引処理部116と、画像出力部117とを備えている。
【0047】
写真処理部111は、画像データ内の写真画像に対して写真処理を行うモジュールであり、ガンマ変換処理部111aと、二値化処理部111bとを有している。
【0048】
ガンマ変換処理部111aは、画像データ中の各画素の濃度を、ガンマ変換により中間調に適した濃度に変換するモジュールである。
【0049】
二値化処理部111bは、ガンマ変換された画像データに含まれる写真画像の画素値を二値化するモジュールであり、多値データである各画素の値すなわち原稿の濃度もしくは反射率を、二値化処理部111bの誤差拡散処理部111cにより所定の閾値と比較し、閾値に対する大小によりハーフトーン二値化する。サーマルヘッドの通電をON/OFFするこの二値化されたデータは、画像選択部113に入力される。画像選択部113に入力された二値化データに従いサーマルヘッドの通電をON/OFFしマスターに穿孔を形成する(すなわち、画像をマスターに形成する)。
【0050】
文字処理部112は、画像データ内の文字画像に対して文字処理を行うモジュールであり、二値化処理部112aを有している。
【0051】
二値化処理部112aは、単一の閾値を用いて画像データに含まれる文字部分の画素値を、サーマルヘッドの各発熱素子に対する通電のON/OFFとして二値化するモジュールである。この二値化処理部112aは、多値データである各画素と単一の閾値との比較により、閾値以上であれば通電ONとし、閾値未満であれば通電OFFとして二値化する。この二値化されたデータは、画像選択部113に入力される。画像選択部113に入力された二値化データに従いサーマルヘッドの通電をON/OFFしマスターに穿孔を形成する(すなわち、時間長さで無く画像の濃さをサーマルヘッドの通電ON/OFFに変えて、サーマルヘッドの発熱ON/OFF、ひいてはマスターの穿孔の有無にすることで、画像をマスターに形成する)。
【0052】
画像選択部113は、操作パネル100aでユーザーが設定した画像モードに従い、文字処理もしくは写真処理された画像データを選択し、画素密度算出部114へ入力するモジュールである。また、画像選択部113は、製版されたマスタを用いた印刷処理の対象となる記録媒体の種別を取得し、取得した種別が予め設定された特定の種別である場合に、記憶部103に記憶された画像データを読み出し、読み出された画像データの間引率の算出を間引率算出部115に実行させる機能を備えている。なお、記録媒体の種別は、操作パネル100aでユーザーが設定した画像モードから取得する。また、本実施形態では、この写真処理及び文字処理を並行して行った後、画像選択部113で画像を選択するようにしたが、例えば、写真処理部111及び文字処理部112の上流側に画像選択部113を配置し、二値化処理の前に、写真と文字との選択を行い、画像データの入力先を適宜切り替えるようにしてもよい。
【0053】
画素密度算出部114は、図3に示すように、注目画素E1を含む所定範囲(参照領域A1)に含まれる画素数を計数し、所定範囲あたりの画素数を、当該注目画素E1に対応する参照領域A1の画素密度として算出するモジュールである。具体的には、二値化された画像データ内の各画素を、注目画素E1として順次選択する。そして、各注目画素E1と、これを中心とする周辺の24個(5×5−1=24個)の画素とを合わせた、参照領域A1内の25画素のうち、黒画素の数をカウントする。このカウントされた画素数(図3の例では、20個)を、参照領域A1内の総画素数(5×5=25個)で除することにより、注目画素E1に対応する画素密度(図3の例では、20/25=0.80)として算出する。この画素密度算出部114で算出された画素密度は、間引率算出部115に入力される。
【0054】
なお、画素密度算出部114は、画像データに含まれる文字のサイズや書体、文字飾りの種類などに応じて、参照領域A1の面積又は形状を変更する機能を有する。詳述すると、画素密度算出部114は、参照領域A1のデフォルトの面積及び形状として、正方形状の画素数5×5の領域とするが、文字のサイズや書体、文字飾りの種類など、ジョブデータに含まれる画像データに関する情報を抽出し、参照領域A1の面積又は形状を変更する。なお、ここでの画像データに関する情報は、ジョブデータに含まれる処理文字サイズ選択信号から取得される。
【0055】
このような参照領域A1の面積又は形状を変更する機能により、例えば、白画素部分が少なく潰れやすい傾向がある、10ポイントのボールドゴシック書体の場合などには、参照領域A1を7×7に変更し、画素密度を求める。これにより、白画素部分の参照領域A1に対する割合を小さく評価し、その部分の画素密度を高くし、ベタ部分と同様に間引率を下げるようにしている。
【0056】
前記間引率算出部115は、画素密度算出部114により計数された画素密度に基づいて、記憶部103のテーブルデータD1を参照し、対応する注目画素E1に対する間引率を算出するモジュールである。このテーブルデータD1は、本実施形態では、図4(a)に示すようなグラフで画素密度と間引率の対応関係を表すことができるデータであり、そのグラフの形状で、画素密度に対する間引率を自由に設定することができる。
【0057】
本実施形態でのテーブルデータD1における画素密度と間引率の関係は、所定の閾値(画素密度閾値T1)以上の画素密度における間引率が、100%未満の特定上限値(図4(a)の例では50%)となるように設定されているとともに、画素密度閾値T1(図4(a)の例では0.36=画素密度36%)よりも高い画素密度の範囲では、画素密度の増加に比例して間引率が低減するように間引率が設定されている。具体的に、ここでのテーブルデータD1は、画素密度が0〜36%のとき、ほぼ一律に間引率を50%とし、画素密度が36%より高い領域については、画素密度が100%に近づくにつれて間引率が0%に近づくように低下させている。これにより、画素密度が高いベタ部分などについては間引率が下げられ、画素密度が低い余白部分などは、間引率が上げられる。
【0058】
そして、この間引率算出部115は、画素毎に算出された各画素の間引率を、座標情報と関連付けた配列データとして間引処理部116に入力する。間引処理部116は、間引率に応じたパターンに従って、各画素の濃度を低減させる間引処理を実行するモジュールである。間引処理の際に間引処理部116は、記憶部103に記憶された閾値マトリクスデータM1を用いる。
【0059】
閾値マトリクスデータM1は、図4(b)に示すような4×4の16画素を単位パターンとし、これを繰り返すことにより全画素について間引率の閾値を定義するフィルタである。閾値マトリクスデータM1には、間引の対象となる画素が偏らないように、値の高い閾値と低い閾値とがベイヤー配列状に配置されている。
【0060】
間引処理部116は、ジョブデータに含まれる画像データから4×4の16画素を重複しないように順次選択する。そして、各4×4の16画素について、閾値マトリクスデータM1を適用して間引き処理を行う。具体的に、選択した16画素の間引率算出部115が算出した各間引率と、閾値マトリクスデータM1の対応する画素箇所にそれぞれ定義された閾値とを比較する。比較の結果、図5に示すように、各画素について間引率が閾値を上回る場合は、その画素を白画素に置換して間引き、間引率が閾値以下である場合は、その画素については間引きを行わない。なお、図5では、間引かれる画素を白で、間引かれない画素をハッチングで示している。
【0061】
特に、本実施形態において閾値マトリクスデータM1は、テーブルデータD1の特定上限値(50%)のときの間引パターンが、図5(a)に示すような1画素置きの市松模様状となるように構成されている。すなわち、閾値マトリクスデータM1内の各閾値のうち、50%以上の閾値が、x軸方向及びy軸方向において交互に一画素置きとなるように配置されている。これにより、間引率が最大となる場合であっても、画素が偏ることなく満遍なく間引かれることとなる。
【0062】
また、上述したようにテーブルデータD1における画素密度と間引率の関係が、画素密度閾値T1よりも高い画素密度の範囲では、画素密度の増加に比例して間引率が低減するように間引率が設定されている。このため、画素密度が画素密度閾値T1(36%)以上になるにつれて、間引率は、20%(画素密度50%のとき)まで急激に下がり、以後、画素密度が50%よりも高くなるにつれて、低下する度合いを徐々に減らしながら、20%から0%まで低下して行く。それに伴い、閾値マトリクスデータM1による間引パターンが変化していく。例えば、間引率が35%になると図5(b)に示すパターンに間引きパターンが変わり、間引率が25%になると図5(c)に示すパターンに間引きパターンが変わる。さらに、間引率が10%に下がると、間引きパターンが図5(d)に示すパターンに変化する。そして、画素密度が100%に近づくにつれて間引率が0%に近づき、画素密度が100%近辺では間引率0%となって間引かれなくなる。
【0063】
画像出力部117は、画像データに基づいて、サーマルヘッドユニット31,36や各駆動機構を制御し、製版機構全体を制御するモジュールである。本実施形態における画像出力部117は、ジョブデータ受信部101で受信されたジョブデータに含まれる画像データを直接製版するモードと、間引処理部116によって間引き処理された画像データにより製版するモードとを有しており、これらのモードは、ユーザーの選択、又は製版されたマスタによる印刷処理の対象となる記録媒体の種別に応じて自動的に選択され、各モードにおける画像データに基づいて製版を行う。
【0064】
(画像データ生成方法)
以上の構成を有する画像データ生成装置を動作させることによって、本発明の画像データ生成方法を実施することができる。図6は、本実施形態に係る画像データ生成方法の概要を示すフローチャート図である。
【0065】
先ず、製版処理が実行されると、ジョブデータ受信部101がジョブデータを受信し、受信したジョブデータに含まれる画像データを画像形成制御部110に入力する(ステップS101)。画像形成制御部110では、画像データ内の写真画像に対する写真処理と、文字画像に対する文字処理とを並行して行う。具体的に、写真処理では、ガンマ変換処理部111aでのガンマ変換により中間調に適した濃度に変換され(ステップS102)、二値化処理部111bによる二値化処理(ステップS103)の後、誤差拡散処理部111cによって誤差拡散のハーフトーン処理が行われる(ステップS104)。一方、文字処理では、単一閾値による二値化を行う(ステップS105)。
【0066】
次いで、画像選択部113において、操作パネル100aでユーザーが設定した画像モードに従い、文字処理もしくは写真処理された画像データを選択し、画素密度算出部114へ入力する(ステップS106)。また、このステップS106において画像選択部113は、製版されたマスタを用いた印刷処理の対象となる記録媒体の種別を取得し、取得した種別が予め設定された特定の種別である場合に、記憶部103に記憶された画像データを読み出し、読み出された画像データを間引率算出部115に入力する。なお、ここでの記録媒体の種別は、操作パネル100aでユーザーが設定した画像モードから取得する。
【0067】
画素密度算出部114では、入力された画像データから注目画素E1を含む所定範囲の参照領域A1に含まれる複数の画素のうち黒画素の数を計数し、当該注目画素E1の画素密度を算出する(ステップS107)。具体的に、画素密度算出部114は、各二値化処理部111b又は112aが二値化した画像データ内の画素を注目画素E1として順次選択し、当該注目画素E1を中心とする参照領域A1内の画素のうち、サーマルヘッドの発熱素子に対する通電がONとなっている黒画素の数をカウントする。このカウントされた画素数を、参照領域A1内の総画素数(5×5=25)で除することにより、単位面積あたりの画素数を画素密度として算出する。
【0068】
なお、ステップS107において、画素密度算出部114は、画像データに含まれる文字のサイズや書体、文字飾りの種類などに応じて、参照領域A1の面積又は形状を変更する。詳述すると、画素密度算出部114は、参照領域A1のデフォルトの面積及び形状として、正方形状の画素数5×5の領域とするが、文字のサイズや書体、文字飾りの種類など、ジョブデータに含まれる画像データの内容に関する情報を抽出し、参照領域A1の面積又は形状を変更する。
【0069】
このように画素密度算出部114で算出された画素密度は、各画素の座標情報と関連付けられた配列データの形式で、間引率算出部115に入力される。なお、本実施形態では、ループ処理により、各画素について上記ステップS107の処理を実行し、全ての画素について画素密度の算出が終了した後、次のステップS108へ移行する。
【0070】
ステップS108では、各画素の画素密度に基づき、記憶部103に記憶されたテーブルデータD1を参照し、各画素に対する間引率を算出する。このテーブルデータD1は、本実施形態では、画素密度が高いベタ部分などについては間引率を下げてほぼ0とし、画素密度が低くなるにつれて間引率が高くなるようになっている。但し、画素密度が低い余白部分など、画素密度が0〜36%の部分では、一律に間引率を50%としている。
【0071】
そして、間引率算出部115は、算出した間引率を、各画素の座標情報と関連付けた配列データとして間引処理部116に入力する。間引処理部116では、間引率算出部115で算出された間引率に応じたパターンに従って画素の間引処理を実行する(ステップS109)。具体的には、間引処理部116において、閾値マトリクスデータM1を用い、間引率算出部115が算出した各画素の間引率と各画素の座標に対応するマトリクス内の閾値とを比較し、その大小関係から、所定の間引率以下の画素については、白画素に置換する。
【0072】
その後、画像出力部117は、この間引処理された画像データに基づいてサーマルヘッドユニット31,36の駆動を制御し、間引処理部116によって間引き処理された画像データに対応させたマスタを生成し、画像を形成する(ステップS110)。
【0073】
(作用効果)
以上説明した本実施形態によれば、注目画素E1に対応する参照領域A1の画素密度に基づいて各画素(各注目画素)の間引率を算出するため、注目画素E1とその周辺における画素密度の関係から、例えば、その注目画素E1がベタ部分であるのか細字部分であるのか、を判断したうえで、間引の程度を決定することができる。これにより、ベタ部分の濃度を低下させることなく、細字部分を確実に間引くことができ、文字部分の潰れを解消しつつ文字等の再現性を向上させることができる。
【0074】
特に、本実施形態では、印刷処理の対象となる記録媒体の種別に応じて、間引処理を実行することから、更紙やケナフ紙などのインク滲みしやすい記録媒体向けの画像データを生成するときにのみ上記間引処理を行うことができ、記録媒体の特性に合致した画像データを生成することができる。詳述すると、従来では、図8(a)に示すような画像データ(デジタルデータ)を、更紙やケナフ紙などのインク滲みしやすい記録媒体に、6ポイント程度の文字サイズで印刷する場合、同図(b)に示すように、画数の多い文字の細字部分が滲んで、文字潰れが生じ、細字の再現性が低下する。これに対し、本実施形態によれば、図7(a)に示すような、上記間引処理により生成された画像データを更紙やケナフ紙などに、6ポイント程度の文字サイズで印刷する場合であっても、同図(b)に示すように、文字潰れが改善され、細字の再現性が向上する。
【0075】
また、参照領域A1が所定数の画素を含むため、参照領域A1の画素密度に基づいて間引率を決定することによって、例えば、参照領域A1が余白部分からベタ部分に差し掛かる箇所など、画素密度が低い箇所では、その画素密度に応じたある程度の間引率で間引を行い、参照領域A1がベタ部分の輪郭からベタ部分内に移行し、画素密度が高くなるにつれて間引率を段階的に下げていくなど、注目画素E1とその周辺画素の分布の変化に応じて間引率を変化させることができる。この結果、ベタ部分の輪郭などでも急激な濃度変化を生じることがなく、滑らかに間引くことができる。
【0076】
さらに、上記発明では、画像データを二値化した後に間引率の解析を行うことから、演算処理の対象となるデータ量を軽減することができ、演算処理の負担軽減及び高速化が図れるとともに、演算処理装置やメモリ装置の小型化及び低廉化も可能となる。
【0077】
なお、上記実施形態において、画素密度算出部114は、参照領域A1の面積又は形状を変更する機能を有するため、画像データに含まれる文字のサイズや書体、文字飾りの種類などに応じて参照領域A1の面積や形状を変更することができる。これにより、本実施形態によれば、注目画素E1とその周辺における画素密度の関係をより正確に判断することができ、間引処理の精度を向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態において、テーブルデータD1の画素密度と間引率との関係は、所定の閾値よりも高い画素密度の範囲では、画素密度に略反比例するように間引率が設定するとともに、前記所定の閾値における間引率が、100%未満の特定上限値となるように設定されている。このため、例えば、ベタ部分などの画素密度が高い箇所では、画素密度に略反比例するように間引率を設定することによって、濃度が高くなるほど間引かれ難くし、細字部分などの画素密度が低い箇所では、その間引率に100%未満の上限を設けることによって、文字のカスレを生じさせることなく適度に間引くことができ、文字部分の潰れを解消して、文字等の再現性をより向上させることができる。
【0079】
さらに、本実施形態において、テーブルデータD1では、特定上限値を50%とし、間引処理部116は、特定上限値における間引パターンを、1画素置きの市松模様状としている。これにより、参照領域A1が、間引率が最大となる画素密度のような箇所に位置する場合であっても、細字のカスレが目視できない程度に適度に間引くことができる。
【0080】
また、本実施形態では、例えば普通紙向けの画像データを生成する際に二値化した画像データを記憶部103に記憶しておき、この二値化された画像データを、印刷処理の対象となる記録媒体の種別に応じて、記憶部103から読み出して間引処理の演算に用いる。二値化データのデータ量は、通常の多値データよりも小さいため、記憶領域を低減することができ、メモリ装置の小型化及び低廉化を図ることができる。
【0081】
換言すると、二値化された画像データは、一般的な普通紙向けの画像データそのものであることから、記録媒体が普通紙などの間引処理が不要な種別であるときには、その二値化された画像データを一般的な印刷処理やマスタ製版処理に利用した後、間引処理を行うことなく、記憶部103に保存しておき、記録媒体が更紙やケナフ紙などの間引処理が必要な種別であるときに、保存しておいた画像データを読み出して、改めて間引処理を行う。この結果、メモリ装置の小型化及び低廉化のみならず、二値化された画像データの再利用により、再度、二値化のための演算処理をする必要がなく、演算処理の負担軽減及び高速化が図れる。
【0082】
これらの結果、本実施形態によれば、孔版印刷装置における製版用画像データの生成に際し、画像の間引処理を実行する箇所を適切に選択することにより、文字の細線部分については間引処理を確実に行い文字部分の潰れを解消するとともに、画像の低濃度領域部分については、間引処理をしないことで、文字の再現性の向上を図ることができる。また、更紙やケナフ紙などの記録媒体に対するインク滲みを低減することができ、環境負荷の低い用紙の利用機会を増大させることができる。
【0083】
なお、本実施形態では、本発明を孔版印刷装置における製版用の画像データの生成に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、この他、例えば、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ、感熱式記録装置や熱転写記録装置など、画像データに基づいて記録媒体に印刷を行う全ての装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 孔版印刷装置
10 画像読取部
20 給紙部
21 給紙台
22 1次給紙ローラ
23 2次給紙ローラ
30 第1の製版部
31 サーマルヘッドユニット
33 感熱孔版原紙
35 第2の製版部
36 サーマルヘッドユニット
40 第1の印刷部
41 第1の印刷ドラム
42 第1のプレスローラ
43 第1の剥取爪
44 湾曲搬送部
45 プーリー
46 中間ストック部
47 ピックアップローラ
48 タイミングローラ
50 画素密度
50 第2の印刷部
51 第2の印刷ドラム
52 第2のプレスローラ
53 第2の剥取爪
70 排紙部
71 排紙台
72 ベルト部
100 演算処理部
100a 操作パネル
101 ジョブデータ受信部
102 操作信号取得部
103 記憶部
104 外部通信インターフェース
110 画像形成制御部
111 写真処理部
111a ガンマ変換処理部
111b 二値化処理部
111c 誤差拡散処理部
112 文字処理部
112a 二値化処理部
113 画像選択部
114 画素密度算出部
115 間引率算出部
116 間引処理部
117 画像出力部
A1 参照領域
D1 テーブルデータ
E1 注目画素
M1 閾値マトリクスデータ
P1 印刷用紙
P2 片面印刷済印刷用紙
P3 両面印刷済印刷用紙
T1 画素密度閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置において記録媒体上に記録される画像を表す画像データを生成する画像データ生成装置であって、
入力された画像データを二値化する二値化処理部と、
二値化された画像データ中の画素を注目画素として順次選択し、前記注目画素を含む所定範囲の参照領域に含まれる複数の画素のうち黒画素の画素数を計数して、該黒画素の画素数から、前記注目画素に対応する前記参照領域の画素密度を算出する画素密度算出部と、
前記画素密度算出部により算出された画素密度に基づいて、前記参照領域の画素密度と間引率の対応関係を示す定義データを参照し、各画素に対する間引率を算出する間引率算出部と、
前記間引率に応じたパターンに従って、各画素の濃度を低減させる間引処理を実行する間引処理部とを備え、
前記定義データには、所定の閾値よりも高い画素密度の範囲では、画素密度が増加するほど間引率が低減し、かつ、前記所定の閾値以下の画素密度の範囲よりも間引率が低くなるように、前記画素密度と間引率の関係が定義されている、
ことを特徴とする画像データ生成装置。
【請求項2】
前記画素密度算出部は、前記画像データの内容に基づいて前記参照領域の面積又は形状を変更する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の画像データ生成装置。
【請求項3】
前記定義データでは、前記所定の閾値以下の画素密度における間引率が100%未満の特定上限値に定義されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像データ生成装置。
【請求項4】
前記特定上限値が50%であり、前記間引処理部は、前記特定上限値の間引率に応じた前記パターンを、1画素置きの市松模様状とすることを特徴とする請求項3に記載の画像データ生成装置。
【請求項5】
前記二値化処理部で二値化された画像データを記憶する二値化データ記憶部と、前記記録媒体の種別を取得し、取得した種別が予め設定された特定の種別である場合に、前記二値化データ記憶部に記憶された画像データを読み出し、読み出された画像データの間引率の算出を前記間引率算出部に実行させる画像選択部とをさらに備えることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の画像データ生成装置。
【請求項6】
印刷装置において記録媒体上に記録される画像を表す画像データを生成する画像データ生成方法であって、
入力された画像データを二値化する二値化処理ステップと、
二値化された画像データ中の画素を注目画素として順次選択し、前記注目画素を含む所定範囲の参照領域に含まれる複数の画素のうち黒画素の画素数を計数して、該黒画素の画素数から、前記注目画素に対応する前記参照領域の画素密度を算出する画素密度算出ステップと、
所定の閾値よりも高い画素密度の範囲では、画素密度が増加するほど間引率が低減し、かつ、前記所定の閾値以下の画素密度の範囲よりも間引率が低くなるように、前記参照領域の画素密度と間引率の対応関係を定義した定義データを参照して、前記画素密度算出ステップで算出した画素密度に基づき各画素に対する間引率を算出する間引率算出ステップと、
前記間引率算出ステップで算出した間引率に応じたパターンに従って、各画素の濃度を低減させる間引処理を実行する間引処理ステップと、
を含むことを特徴とする画像データ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−175445(P2012−175445A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36088(P2011−36088)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】