説明

画像パターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】ポジ型感光性樹脂を用いて、厚さの異なる画像を形成する方法を提供する。
【解決手段】基板と該基板上に形成されたポジ型感光性樹脂層とからなる感光性積層体に、第一の領域には、実質的に光の照射を行なうことなく、第二の領域には、当該領域の感光性樹脂層の表面側の一部の厚み部分までが変性するようなエネルギー量の光を照射し、そして第三の領域には、当該領域の感光性樹脂層の全てが変性するようなエネルギー量の光を照射する工程、及び、この光処理を行なったポジ型感光性樹脂層に現像液を接触させることにより、該感光性樹脂層の変性部分を溶解除去する工程からなる、基板上に、少なくとも、相対的に厚い樹脂層からなる凸部樹脂領域、相対的に薄い樹脂層からなる凸部樹脂領域、そして基板露出領域から構成される画像パターンを形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂を用いる画像パターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に微細な画像パターンを形成する方法として、感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィーが一般的に用いられている。このように形成される画像パターンは、プリント配線板、ディスプレイ部材(例、カラーフィルタ、柱材、リブ材、スペーサ、隔壁)、画像製品(例、印刷板、ホログラム、マイクロマシン、印刷校正用プルーフ)の製造に利用される。
【0003】
感光性樹脂(フォトレジスト)は一般に、ネガ型感光性樹脂とポジ型感光性樹脂の二つに大別される。ネガ型感光性樹脂は、光の照射を受けた部分が硬化あるいは架橋して、その後の現像処理に際して不溶性となる性質を持ち、一方、ポジ型感光性樹脂では、光の照射を受けた部分が変性し、その後の現像処理に際して可溶性となる性質を持つ。一般にネガ型感光性樹脂は高感度であるが、解像力が低い傾向があり、ポジ型感光性樹脂は解像力が高く高解像度の画像パターンの形成に適しているが、感度が低いことが問題であるとされている。
【0004】
上記のように、ネガ型感光性樹脂とポジ型感光性樹脂とはそれぞれ別の特徴があるところから、使用目的に沿って、画像パターンの形成に利用されている。
【0005】
ポジ型感光性樹脂については、多数の書籍や特許文献に記載されている。例えば、特許文献1には、アルカリ可溶性樹脂、1,2−ナフトキノンアジド基を含む化合物、そして特定の構造からなる吸光剤を含むポジ型の感光性樹脂組成物が記載されている。また、特許文献2にも、アルカリ可溶性樹脂(例、ノボラック樹脂)とキノンジアジドとを含むポジ型感光性樹脂組成物が記載されている。
【0006】
ポジ型感光性樹脂を用いた画像パターンの形成は、例えば、次のようにして行なう。
【0007】
まず、基板上にポジ型感光性樹脂層を付設した感光性積層体を用意し、この感光性積層体に、その感光性樹脂層側から、所定の画像パターンに対応するパターンの光を照射する。光の照射を受けた領域では、感光性樹脂の変性(可溶化)が起こるため、その光照射処理後に、感光性樹脂層を現像液と接触させると、変性部分の樹脂層が溶解除去し、所定の画像パターンの樹脂層が形成される。
【0008】
上記のように、感光性樹脂は、従来では、樹脂残存部と樹脂除去部とから形成される画像パターン(二値画像パターン)の形成に利用されてきた。
【0009】
一方、前述のように、感光性樹脂とフォトリソグラフィーとを組み合せて用いてプリント配線板を製造する技術は以前から利用されてきている。近年では、配線技術の高度化に応じて立体型プリント配線板(数枚のスルーホールやバイヤホールなどのホール部を有するプリント配線板を重ね合わせた配線構造体)の使用が一般的になり、このため、ホール部を有するプリント配線板を高い信頼性をもって製造する技術の開発が進められている。すなわち、ホール部を持つプリント配線板は、ホール部が形成された金属被覆基板(通常は、銅張積層板が用いられる)の金属層の表面に感光性樹脂層を付設し、この感光性樹脂層に対して、ホール部領域と配線領域とに樹脂層を残すようなパターン状の光照射処理と現像処理を施し、ついで、露出領域の金属層をエッチング処理して除去し、その後、ホール部領域と配線領域に残存している樹脂層を溶解除去する方法により製造されている。
【0010】
ところが、最近では、プリント配線板の配線領域の高密度化に対応するために、感光性樹脂層の薄膜化が進んでいるが、このような薄膜の感光性樹脂層を用いてプリント配線板を製造する際に、ホール部領域に残存されるべき樹脂層が、現像処理時に破れやすいという問題が発生している。
【0011】
また、液晶表示装置においては、液晶の配向性を制御するための相対的に厚さの薄いリブ(配向制御用突起)や液晶セルギャップを保持するための相対的に厚さの厚いスペーサを、基板(カラーフィルタ)の表面に感光性樹脂とフォトリソグラフィーとを組み合せて用いて形成する技術が開発されている。
特許文献3には、感光性樹脂を用いてリブを形成し、ついで、別の感光性樹脂を用いてスペーサを形成する方法により、リブとスペーサとを有する液晶表示装置用カラーフィルタを製造した例が記載されている。製造工程の簡略化や材料コストの低減などの観点から、リブとスペーサとをそれぞれ同じ感光性樹脂を用いて形成することができれば好ましい。
【特許文献1】特開平5−45870号公報
【特許文献2】特開平8−76373号公報
【特許文献3】特開2002−169163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ホール部を備えた金属被覆基板に対して薄膜のポジ型感光性樹脂を用いて所望の高精細の画像パターンのプリント配線板を製造する際に問題となりやすいホール部領域の樹脂被覆部の破れの発生の抑制を可能とする画像パターンの形成方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ポジ型感光性樹脂を用いて、液晶表示装置用基板のリブとスペーサのような相対的に厚さの異なる画像パターンを形成するための方法を提供することも、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板と該基板上に形成されたポジ型感光性樹脂層とからなる感光性積層体に、そのポジ型感光性樹脂層の側から、予め決められた、少なくとも、該樹脂層と実質的に同一の厚さを持つ樹脂層からなる第一の凸部領域、第一の凸部領域の樹脂層よりも薄い厚さの樹脂層からなる第二の凸部領域、そして第三の基板露出領域から構成される画像パターンに対応して、第一の領域には、実質的に光の照射を行なうことなく、第二の領域には、当該領域の感光性樹脂層の表面側の一部の厚み部分までが変性するようなエネルギー量の光を照射し、そして第三の領域には、当該領域の感光性樹脂層の全てが変性するようなエネルギー量の光を照射する工程(光照射工程)、及び、この光処理を行なったポジ型感光性樹脂層に現像液を接触させることにより、該感光性樹脂層の変性部分を溶解除去する工程(現像工程)からなる、基板上に、少なくとも、相対的に厚い樹脂層からなる凸部樹脂領域、相対的に薄い樹脂層からなる凸部樹脂領域、そして基板露出領域から構成される画像パターンを形成する方法にある。
【0014】
上記画像パターン形成方法の好ましい態様は、次の通りである。
(1)光照射をレーザ光を用いて行なう。
(2)光照射工程前の感光性積層体のポジ型感光性樹脂層の表面に透明フィルムが付設されており、光照射工程の後で現像処理の前に該透明フィルムを除去する工程を行なう。
(3)第二の凸部領域に照射する光のエネルギー量と第三の基板露出領域に照射する光のエネルギー量との比を、1:1.1〜1:25の範囲に調節する。
【0015】
本発明はまた、ホール部を備えた金属被覆樹脂板と該金属被覆樹脂板上に形成されたポジ型感光性樹脂層とからなる感光性積層体に、そのポジ型感光性樹脂層の側から、ホール部被覆領域、配線領域、そして金属被覆層露出領域から構成される画像パターンに対応して、ホール部被覆領域には、実質的に光の照射を行なうことなく、配線領域には、当該領域の感光性樹脂層の表面側の一部の厚み部分までが変性するようなエネルギー量の光を照射し、そして金属被覆層露出領域には、当該領域の感光性樹脂層の全てが変性するようなエネルギー量の光を照射する工程(光照射工程);この光処理を行なったポジ型感光性樹脂層に現像液を接触させることにより、該感光性樹脂層の変性部分を溶解除去することにより、基板上に、少なくとも、相対的に厚い樹脂層からなるホール部被覆領域、相対的に薄い樹脂層からなる配線領域、そして金属被覆層露出領域から構成される画像パターンを形成する工程(現像工程);表面に該画像パターンが形成された金属被覆樹脂板をエッチング処理にかけることにより、金属被覆層の露出部分を除去する工程(エッチング工程);そして金属被覆樹脂板上の感光性樹脂層を溶解除去する工程(樹脂層除去)からなるプリント配線板の製造方法にもある。
【0016】
上記プリント配線板の製造方法の好ましい態様は、次の通りである。
(1)光照射をレーザ光を用いて行なう。
(2)光照射工程前の感光性積層体のポジ型感光性樹脂層の表面に透明フィルムが付設されており、光照射工程の後で現像処理の前に該透明フィルムを除去する工程を行なう。
(3)第二の凸部領域に照射する光のエネルギー量と第三の基板露出領域に照射する光のエネルギー量との比を、1:1.1〜1:25の範囲に調節する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の画像パターン形成方法によれば、相対的に厚さの異なるポジ型感光性樹脂の画像(レリーフ)を基板の上に形成することができる。また、本発明の配線パターン形成方法によれば、配線パターン形成領域には相対的に厚さの薄い、高解像のポジ型感光性樹脂層を形成させ、スルーホール又はビアホールには相対的に厚さの厚い、高強度のポジ型感光性樹脂層(テント膜)を形成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[ポジ型感光性樹脂]
本発明において用いるポジ型感光性樹脂は、光の照射を受けることによって現像液に可溶となるように変性するものであればよい。具体例としては、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジドとを含む組成物、あるいは酸と反応して可溶化する化合物と光を受けて酸を生じる化合物とを含む組成物が挙げられる。好ましいのは、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジドとを含む組成物である。
【0019】
アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジドとを含む組成物は、キノンジアジドをアルカリ可溶性樹脂の不溶化剤として含むポジ型感光性樹脂組成物である。キノンジアジドが光を受けると分解して、組成物全体がアルカリ可溶性となる。
【0020】
アルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂、アセトン−ピロガロール樹脂、ポリヒドロキシスチレン及びその誘導体を挙げることができる。これらの中でもノボラック樹脂が好ましい。ノボラック樹脂の質量平均分子量は、2000〜30000の範囲にあることが好ましい。ノボラック樹脂については、特開平5−45870号公報に記載がある。
【0021】
キノンジアジドには、ポリヒドロキシ化合物と1,2−ナフトキノンジアジドのスルホン酸塩とのエステル化物を用いることができる。1,2−ナフトキノンジアジドのスルホン酸塩は、スルホン酸塩を5位及び/又は4位に有していることが好ましい。ポリヒドロキシ化合物については、特開平5−45870号公報に記載がある。
【0022】
アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジドとの使用比率は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対し、キノンジアジドが5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部である。
【0023】
酸と反応して可溶化する化合物の例は、アセタール化合物、主鎖にアセタール基又はケタール基を有するポリマー、エノールエーテル化合物、主鎖にオルトエステル基を有するポリマー、カルボン酸のtert−ブチルエステル基又はフェノールのtert−ブチルエステル基を有するポリマーを含む。
アセタール化合物を含むポジ型感光性樹脂組成物については、特開昭48−89003号公報に記載されている。主鎖にアセタール基又はケタール基を有するポリマーを含むポジ型感光性樹脂組成物については、特開昭53−133429号公報に記載されている。エノールエーテル化合物を含むポジ型感光性樹脂組成物については、特開昭55−12995号公報、主鎖にオルトエステル基を有するポリマーを含むポジ型感光性樹脂組成物については、特開昭56−17345号公報に記載されている。カルボン酸のtert−ブチルエステル基又はフェノールのtert−ブチルエステル基を有するポリマーを含むポジ型感光性樹脂組成物については、特開平3−31845号公報に記載がある。
【0024】
ポジ型感光性樹脂(もしくは組成物)には、発色剤(焼き出し剤)、染料、密着促進剤、可塑剤及び界面活性剤を添加してもよい。
【0025】
[発色剤]
発色剤(焼き出し剤)は、露光後のポジ型感光性樹脂層に可視像を与える。
発色剤の例は、アミノトリアリールメタン化合物、アミノキサンチン化合物、アミノチオキサンテン化合物、アミノ−9,10−ジヒドロアクリジン化合物、アミノフェノキサジン化合物、アミノフェノチアジン化合物、アミノジヒドロフェナジン化合物、アミノフェニルメタン化合物、ジフェニルアミン化合物、アミノヒドロケイ皮酸エステル、ヒドラジン化合物、アミノ−2,3−ジヒドロアントラキノン化合物、フェネチルアニリン化合物、アシル置換かつアミノ置換ロイコ色素、酸化しうる水素をもっていないが、発色化合物に酸化しうるロイコ化合物、ロイコインジゴイド色素、発色形に酸化しうる有機アミンを含む。トリアリールメタン化合物(例、ロイコクリスタルバイオレット)が特に好ましい。
【0026】
アミノトリアリールメタン化合物の例は、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン(ロイコクリスタルバイオレット)、トリス(4−ジエチルアミノフェニル)メタン、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン、トリス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ジブチルアミノフェニル)−[4−(2−シアノエチル)メチルアミノフェニル]メタン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−2−キノリルメタン、トリス(4−ジプロピルアミノフェニル)メタンを含む。
アミノキサンチン化合物の例は、3,6−ビス(ジメチルアミノ)−9−フェニルキサンチン、3−アミノ−6−ジメチルアミノ−2−メチル−9−(2−クロロフェニル)キサンチンを含む。
【0027】
アミノチオキサンテン化合物の例は、3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(2−エトキシカルボニルフェニル)チオキサンテン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)チオキサンテンを含む。
アミノ−9,10−ジヒドロアクリジン化合物の例は、3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9,10−ジヒドロ−9−フェニルアクリジン、3,6−ビス(ベンジルアミノ)−9,10−ジヒドロ−9−メチルアクリジンを含む。
アミノフェノキサジン化合物の例は、3,7−ビス(ジエチルアミノ)フェノキサジンを含む。
アミノフェノチアジン化合物の例は、3,7−ビス(エチルアミノ)フェノチアゾンを含む。
アミノジヒドロフェナジン化合物の例は、3,7−ビス(ジエチルアミノ)−5−ヘキシル−5,10−ジヒドロフェナジンを含む。
アミノフェニルメタン化合物の例は、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)アニリノメタンを含む。
ジフェニルアミン化合物の例は、4−アミノ−4’−ジメチルアミノジフェニルアミンを含む。
【0028】
アミノヒドロケイ皮酸エステルの例は、4−アミノ−α、β−ジシアノヒドロケイ皮酸メチルを含む。
ヒドラジン化合物の例は、1−(2−ナフチル)−2−フェニルヒドラジンを含む。
アミノ−2,3−ジヒドロアントラキノン化合物の例は、1,4−ビス(エチルアミノ)−2,3−ジヒドロアントラキノンを含む。
フェネチルアニリン化合物の例は、N,N−ジエチル−4−フェネチルアニリンを含む。
アシル置換かつアミノ置換ロイコ色素の例は、10−アセチル−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンを含む。
酸化しうる水素をもっていないが、発色化合物に酸化しうるロイコ化合物の例は、トリス(4−ジエチルアミノ−2−トリル)エトキシカルボニルメタンを含む。
発色形に酸化しうる有機アミンは、米国特許第3042515号、同第3042517号の各明細書に記載がある。
【0029】
ロイコ体である発色剤を発色させるために、発色剤と有機ハロゲン化合物とを組み合わせて用いてもよい。
有機ハロゲン化合物の例は、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アルコール、ハロゲン化ケトン、ハロゲン化エーテル、ハロゲン化エステル、ハロゲン化アミド、ハロゲン化スルホン、ハロゲン化ホスフェート、ハロゲン化複素環化合物を含む。同一炭素原子に二個以上のハロゲン原子が結合することが好ましく、三個以上のハロゲン原子が結合することがさらに好ましい。
【0030】
ハロゲン化炭化水素の例は、四臭化炭素、ヨードホルム、臭化エチレン、臭化メチレン、臭化アミル、臭化イソアミル、ヨウ化アミル、臭化イソブチレン、ヨウ化ブチル、臭化ジフェニルメチル、ヘキサクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、1,1,2,2−テトラブロモエタン、1,2−ジブロモ−1,1,2−トリクロロエタン、1,2,3−トリブロモプロパン、1−ブロモ−4−クロロブタン、1,2,3,4−テトラブロモブタン、テトラクロロシクロプロペン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、ジブロモシクロヘキサン、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(4−クロロフェニル)エタン)、ハロゲン化アルコール(例、2,2,2−トリクロロエタノール、トリブロモエタノール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,1,1−トリクロロ−2−プロパノール、ジ(ヨードヘキサメチレン)アミノイソプロパノール、トリブロモ−t−ブチルアルコール、2,2,3−トリクロロブタン−1,4−ジオールを含む。
【0031】
ハロゲン化ケトンの例は、1,1−ジクロロアセトン、1,3−ジクロロアセトン、ヘキサクロロアセトン、ヘキサブロモアセトン、1,1,3,3−テトラクロロアセトン、1,1,1−トリクロロアセトン、3,4−ジブロモ−2−ブタノン、1,4−ジクロロ−2−ブタノン、ジブロモシクロヘキサノンを含む。
ハロゲン化エーテルの例は、2−ブロモエチルメチルエーテル、2−ブロモエチルエチルエーテル、ジ(2−ブロモエチル)エーテル、1,2−ジクロロエチルエチルエーテルを含む。
ハロゲン化エステルの例は、酢酸ブロモエチル、トリクロロ酢酸エチル、トリクロロ酢酸トリクロロエチル、2,3−ジブロモプロピルアクリレートのホモポリマー及び共重合体、ジブロモプロピオン酸トリクロロエチル、α,β−ジクロロアクリル酸エチルを含む。
【0032】
ハロゲン化アミドの例は、クロロアセトアミド、ブロモアセトアミド、ジクロロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、トリブロモアセトアミド、トリクロロエチルトリクロロアセトアミド、2−ブロモイソプロピオンアミド、2,2,2−トリクロロプロピオンアミド、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミドを含む。
ハロゲン化スルホンの例は、トリブロモメチルフェニルスルホン、4−ニトロフェニルトリブロモメチルスルホン、4−クロロフェニルトリブロモメチルスルホンを含む。
ハロゲン化ホスフェートの例は、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェートを含む。
ハロゲン化複素環化合物の例は、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−フェニルトリアゾールを含む。
【0033】
有機ハロゲン化合物は、トリブロモメチルフェニルスルホンおよび2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−フェニルトリアゾールが特に好ましい。
二種類以上の有機ハロゲン化合物を併用してもよい。
【0034】
発色剤の添加量は、全固形成分に対して0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がさらに好ましく、0.1〜5質量%が最も好ましい。
有機ハロゲン化合物の量は、全固形成分に対し0.001〜5質量%が好ましく、0.005〜1質量%がさらに好ましい。
【0035】
[染料]
染料はポジ型感光性樹脂を特定の波長の光から遮断して、取り扱い性を改善し、保存安定性を付与する機能を有する。
染料の例は、ブリリアントグリーン(例えばその硫酸塩)、エオシン、エチルバイオレット、エリスロシンB、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、フェノールフタレイン、1,3−ジフェニルトリアジン、アリザリンレッドS、チモールフタレイン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニル−イエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、オレンジIV、ジフェニルチロカルバゾン、2,7−ジクロロフルオレセイン、パラメチルレッド、コンゴーレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチル−レッド、ナイルブルーA、フェナセタリン、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、オイルブルー#603(オリエント化学工業(株)製)、ローダミンB、ローダミン6G、ビクトリアピュアブルーBOHを含む。カチオン染料が好ましい。
【0036】
カチオン染料は、対アニオンを有することができる。対アニオンは、有機酸または無機酸の残基が好ましい。酸の例は、臭素酸、ヨウ素酸、硫酸、リン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸を含む。マラカイトグリーンシュウ酸塩およびマラカイトグリーン硫酸塩が特に好ましい。
染料の添加量は、全固形成分に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がさらに好ましく、0.1〜2質量%が最も好ましい。
【0037】
[密着促進剤]
密着促進剤は、ポジ型感光樹脂層と基板との密着性を向上させる。
密着促進剤は、特開平5−11439号、同5−341532号、同6−43638号、同8−76373号の各公報に記載がある。
【0038】
密着促進剤の例は、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、3−モルホリノメチル−1−フェニルトリアゾール−2−チオン、3−モルホリノメチル−5−フェニル−オキサジアゾール−2−チオン、5−アミノ−3−モルホリノメチルチアジアゾール−2−チオン、2−メルカプト−5−メチルチオチアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾールおよびアミノ基を有するベンゾトリアゾールを含む。シランカップリング剤を密着促進剤として用いることもできる。
密着促進剤の添加量は、全固形成分に対して0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がさらに好ましく、0.1質量%〜5質量%が最も好ましい。
【0039】
[可塑剤]
可塑剤は、ポジ型感光性樹脂層の物性(可撓性)を制御するために添加する。
可塑剤の例は、フタル酸エステル(例、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジフェニルフタレート、ジアリルフタレート、オクチルカプリールフタレート)、他の脂肪族二塩基酸エステル(例、ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレート、4,5−ジエポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル)、グリコールエステル(例、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、ジメチルグリコールフタレート、トリエチレングリコールジカプレート)、グリコール酸エステル(例、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート)、リン酸エステル(例、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート)、アミド(例、4−トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−ブチルアセトアミド)、脂肪族一塩基酸エステル(例、グリセリントリアセテート、ラウリン酸ブチル)、脂肪族三塩基酸エステル(例、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル)、グリコール(例、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)を含む。
可塑剤の添加量は、全成固形分に対して0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜40質量%がさらに好ましく、1〜30質量%が最も好ましい。
【0040】
[界面活性剤]
感光性シートを製造する時に発生する面状ムラを改善させるために、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤やノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびフッ素含有界面活性剤を含む。フッ素原子を40質量%以上含み炭素原子数3〜20で非結合末端から数えて少なくとも3個の炭素原子に結合していた水素原子がフッ素置換されているフルオロ脂肪族基を有する(メタ)アクリル酸エステルを重合させて得られるポリマーも、フッ素含有高分子界面活性剤として、好ましく用いられる。
界面活性剤の添加量は、全固形成分に対して0.001〜10質量%が好ましい。
【0041】
[その他の成分]
ポジ型感光性樹脂は、必要に応じてその他の助剤(例、顔料、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱架橋剤、表面張力調整剤、連鎖移動剤)を添加できる。
【0042】
感光性樹脂組成物の任意成分については、例えば、J.コーサー著「ライトセンシテイブシステムズ」第5章に記載がある。
ポジ型感光性樹脂に、有機硫黄化合物、過酸化物、レドックス化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、光還元性色素、あるいは有機ハロゲン化合物を添加することもできる。
有機硫黄化合物の例は、ジブチルジサルファイド、ジベンジルジサルファイド、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、チオフェノール、エチルトリクロロメタンスルフェネートおよび2−メルカプトベンズイミダゾールを含む。
過酸化物の例は、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイルおよびメチルエチルケトンパーオキサイドを含む。
レドックス化合物は、過酸化物と還元剤の組み合わせからなり、組み合わせの例は、第一鉄イオンと過硫酸イオン、第二鉄イオンと過酸化物を含む。
アゾ化合物およびジアゾ化合物の例は、ジアゾニウム化合物(例、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4−アミノジフェニルアミン)を含む。
光還元性色素の例は、ローズベンガル、エリスロシン、エオシン、アクリフラビン、リポフラビン、チオニンを含む。
【0043】
ポジ型感光性樹脂は、溶剤に溶解して使用する。溶剤は、ポジ型感光性樹脂の成分や組成によって異なるが、一般にメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、4−エトキシ−2−ブタノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコールエーテル類、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の脂肪酸エステル類、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の高極性溶剤である。これら溶剤は単独で、もしくは複数の溶剤を混合して使用することもできる。
【0044】
[画像パターンの形成方法]
本発明の画像パターン形成方法は、基板と該基板上に形成されたポジ型感光性樹脂層とからなる感光性積層体に、そのポジ型感光性樹脂層の側から、予め決められた、少なくとも、該樹脂層と実質的に同一の厚さを持つ樹脂層からなる第一の凸部領域、第一の凸部領域の樹脂層よりも薄い厚さの樹脂層からなる第二の凸部領域、そして第三の基板露出領域から構成される画像パターンに対応して、第一の領域には、実質的に光の照射を行なうことなく、第二の領域には、当該領域の感光性樹脂層の表面側の一部の厚み部分までが変性するようなエネルギー量の光を照射し、そして第三の領域には、当該領域の感光性樹脂層の全てが変性するようなエネルギー量の光を照射する工程(光照射工程)、及び、この光処理を行なったポジ型感光性樹脂層に現像液を接触させることにより、該感光性樹脂層の変性部分を溶解除去する工程(現像工程)からなる。
【0045】
感光性積層体は、基板の上にポジ型感光性樹脂の溶液を塗布乾燥することにより製造することができる。また、ポジ型感光性樹脂の溶液を支持体の上に塗布乾燥して、ポジ型感光性(転写)シートを作成し、このポジ型感光性シートを、そのポジ型感光性樹脂層が基板側となる位置関係にて積層することによっても製造することができる。
ポジ型感光性樹脂層の層厚は、用途により異なるが、一般に1μm〜1mmの範囲にある。液晶表示装置用基板のリブとスペーサとを形成する場合の層厚は、2〜50μmの範囲、より好ましくは2〜20μmの範囲、特に好ましくは2〜10μmの範囲である。プリント配線板を形成する場合の層厚は、10〜200μmの範囲、より好ましくは10〜100μmの範囲、特に好ましくは10〜50μmの範囲である。
【0046】
基板は、公知のプリント配線板形成用基板(例、銅張積層板)、液晶表示装置用基板(例、カラーフィルタ)、ガラス板(例、ソーダガラス板)、合成樹脂製のフィルム、紙あるいは金属板が用いられる。基板の表面は、用途に応じて、平滑性の高い表面から凸凹のある表面まである。
【0047】
ポジ型感光性シートの支持体は、ポジ型感光性樹脂層を剥離可能であることが好ましい。支持体は、光の透過性が良好であることが好ましい。また、支持体の表面は、平滑性であることが好ましい。支持体は、ポリマーフイルムからなることが好ましい。ポリマーの例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース系ポリマー(例、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート)、ポリ(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロファン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレンを含む。また、これらの共重合体(例、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)を用いてもよい。二種類以上のポリマーを併用してもよい。ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体が透明フィルムである場合は、ポジ型感光性樹脂層の上に透明フィルムを有するまま光照射工程を実施して、光照射工程と現像工程との間で、透明フィルムを除去する工程を実施してもよい。
【0048】
光照射工程にて、第二の凸部領域に照射する光のエネルギー量は、ポジ型感光性樹脂層を厚さ方向に全体的に変性させるのに必要なエネルギー量の1.05倍以上(特に、1.1〜5倍の範囲)に調節することが好ましい。第三の基板露出領域に照射する光のエネルギー量は、ポジ型感光性樹脂層を厚さ方向に全体的に変性させるのに必要なエネルギー量の0.95倍以下(特に、0.05〜0.90倍の範囲)に調整することが好ましい。第二の凸部領域に照射する光のエネルギー量と第三の基板露出領域に照射する光のエネルギー量との比は、1:1.1〜1:25の範囲に調節することがより好ましい。
【0049】
ポジ型感光性樹脂層に照射する光のエネルギー量を調節する方法としては、光の照射時間を変える方法と照射する光の単位面積当たりのエネルギー量を変える方法とが一般に利用できる。後者の単位面積当たりのエネルギー量を変える方法が好ましい。なお、両者の方法を併用してもよい。
【0050】
光の照射時間を変えて光のエネルギー量を調節する方法としては、第二の凸部領域に対応する光透過領域を有する露光用フォトマスクと第三の基板露出領域に対応する光透過領域を有する露光用フォトマスクの二つの露光用フォトマスクを用意して、第二の凸部領域は相対的に短い時間で、第三の基板露出領域は相対的に長い時間でポジ型感光性樹脂層の全面に光照射する方法や、走査型レーザ露光装置を用いて、第二の凸部領域では相対的に速い走査速度で光を照射し、第三の基板露出領域では相対的に遅い走査速度で光を照射する方法がある。後者の走査型レーザ露光装置を用いる方法が好ましい。
【0051】
光の単位面積あたりのエネルギー量を変える方法としては、第二の凸部領域に対応する相対的に光透過率が低い光透過領域と第三の基板露出領域に対応する相対的に光透過率が高い光透過領域とを有する露光用フォトマスクを用いてポジ型感光性樹脂層の全面に光照射する方法、あるいは照射光エネルギー量の調節可能な走査型レーザ露光装置を用いる方法がある。後者の照射光エネルギー量の調節可能な走査型レーザ露光装置を用いる方法が好ましい。
照射光エネルギー量の調節可能な走査型レーザ露光装置は、特開2004−1244号公報、特開2001−305663号公報及び特開2001−500628号公報に記載がある。
【0052】
光照射工程にてポジ型感光性樹脂層に照射する光の波長は、300〜1500nmが好ましく、320〜800nm(紫外から可視領域)がさらに好ましく、330nm〜650nmが最も好ましい。光源の例は、(超)高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、ハロゲンランプ、蛍光管、LED、半導体レーザを含む。電子線あるいはX線を用いてもよい。
光照射は、レーザ光の走査で行うことが好ましい。レーザの波長は200〜1500nmが好ましく、300〜800nmがより好ましく、370〜650nmがさらに好ましく、400〜450nmが最も好ましい。
第二の凸部領域と第三の基板露出領域とに照射する二つの光は、それぞれ同一の波長であってもよいし、異なる波長であってもよい。
【0053】
現像工程にて用いる現像液は、ポジ型感光性樹脂の成分や組成によって異なるが、一般に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液である。更に、上記アルカリ類の水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0054】
図1に、本発明の画像パターン形成方法を利用して形成された画像パターンの概略断面図を示す。
図1において、基板11には、ポジ型感光性樹脂層がほとんどそのまま残存して形成された相対的に厚みの厚い樹脂層からなる第一の凸部樹脂領域12、ポジ型感光性樹脂層の一部が残存して形成された相対的に厚みの薄い樹脂層からなる第二の凸部樹脂領域13、そして基板表面が露出した基板表面露出領域14から構成される画像パターンが形成されている。
【0055】
[ホールを有するプリント配線板の製造方法]
本発明のホールを有するプリント配線板の製造方法は、ホール部を備えた金属被覆樹脂板と該金属被覆樹脂板上に形成されたポジ型感光性樹脂層とからなる感光性積層体に、そのポジ型感光性樹脂層の側から、ホール部被覆領域、配線領域、そして金属被覆層露出領域から構成される画像パターンに対応して、ホール部被覆領域には、実質的に光の照射を行なうことなく、配線領域には、当該領域の感光性樹脂層の表面側の一部の厚み部分までが変性するようなエネルギー量の光を照射し、そして金属被覆層露出領域には、当該領域の感光性樹脂層の全てが変性するようなエネルギー量の光を照射する工程(光照射工程);この光処理を行なったポジ型感光性樹脂層に現像液を接触させることにより、該感光性樹脂層の変性部分を溶解除去することにより、基板上に、少なくとも、相対的に厚い樹脂層からなるホール部被覆領域、相対的に薄い樹脂層からなる配線領域、そして金属被覆層露出領域から構成される画像パターンを形成する工程(現像工程);表面に該画像パターンが形成された金属被覆樹脂板をエッチング処理にかけることにより、金属被覆層の露出部分を除去する工程(エッチング工程);そして金属被覆樹脂板上の感光性樹脂層を溶解除去する工程(樹脂層除去)からなる。
【0056】
ホール部被覆領域、配線領域及び金属被覆層露出領域は、それぞれ前記画像パターン方法における第一の凸部領域、第二の凸部領域及び第三の基板露出領域に相当する。配線領域及び金属被覆層露出領域に照射する光のエネルギー量及び照射方法は、前記画像パターン方法にて説明した通りである。
なお、ホール部被覆領域は、ホール部を被覆するポジ型感光性樹脂(テント膜)が基板に付着するために必要な領域(ランドと呼ばれる)も含む。
【0057】
以下、スルーホールを有するプリント配線板の製造方法を、添付図面の図2を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0058】
まず、図2(A)に示すように、スルーホール22を有し、表面が金属層23で覆われた金属被覆樹脂板21を用意する。金属被覆樹脂板21としては、銅張積層基板及び絶縁基材(例、ガラス−エポキシ)に銅めっき層を形成した基板、又はこれらの基板に層間絶縁膜を積層し、銅めっき層を形成した基板(積層基板)を用いることができる。
【0059】
次に、図2(B)に示すように、ポジ型感光性(転写)シート31(支持体32とポジ型感光性樹脂層33とからなる)を、そのポジ型感光性樹脂層33が金属被覆樹脂板21の表面に接する様にして加圧ローラ41を用いて圧着する(積層工程)。これにより、金属被覆樹脂板21、ポジ型感光性樹脂層33、そして支持体32がこの順で積層された感光性積層体が得られる。ポジ型感光性シートの積層は、室温(15〜30℃)あるいは加熱下(30〜180℃)で行うことができる。60〜140℃の加熱下で行うことが特に好ましい。加圧ローラ41のロール圧は1〜10kg/cm2の範囲にあることが好ましい。圧着速度は、1〜3m/分の速度とすることが好ましい。また金属被覆樹脂板21を予備加熱しておいてもよい。また、減圧下で積層してもよい。
なお、ポジ型感光性シートを用いる代わりに、ポジ型感光性樹脂の溶液を金属被覆樹脂板の表面に直接塗布し、乾燥して、感光性積層体を得ることもできる。
【0060】
次に、図2(C)に示すように、感光性積層体の支持体32の側から、ホール部被覆領域には、実質的に光の照射を行なうことなく、配線領域には、当該領域の感光性樹脂層の表面側の一部の厚み部分までが変性するようなエネルギー量の光を照射し、そして金属被覆層露出領域には、当該領域の感光性樹脂層の全てが変性するようなエネルギー量の光を照射する(光照射工程)。
なおこの際、必要に応じて(例えば、支持体の光透過性が不十分な場合)支持体を剥離してから光照射を行なってもよい。
【0061】
支持体を未だ剥離していない場合には、下記の現像工程の前に、図2(D)に示すように、積層体から支持体32を剥がす(支持体剥離工程)。
【0062】
次に、図2(E)に示すように、ポジ型感光性樹脂層33を適当な現像液にて接触させて、その感光性樹脂層の変性(可溶化)部分を、溶解除去する(現像工程)。これにより、基板上に、相対的に厚い樹脂層からなるホール部被覆領域34、相対的に薄い樹脂層からなる配線領域35、そして金属被覆層露出領域36から構成される画像パターンが形成される。
【0063】
次いで、図2(F)に示すように、金属被覆層露出領域36の金属層23をエッチング液で溶解除去する(エッチング工程)。スルーホール22の開口部はホール部被覆領域(テント膜)34で覆われているので、エッチング液がスルーホール内に入り込んでその内壁の金属層を腐食することなく、所定の形状で残ることになる。これより金属被覆樹脂板21に配線24が形成される。金属層23が銅で形成されている場合、エッチング液として、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液または過酸化水素系エッチング液を用いることができる。エッチングファクターの点から塩化第二鉄溶液が好ましい。
【0064】
次に、図2(G)に示すように、金属被覆樹脂板に存残している感光性樹脂層に光を照射して、その全体を可溶化させる(第二露光工程)。
そして、最後に図2(G)に示すように、可溶化した樹脂層を溶解除去する(樹脂層除去工程)。除去液には、工程(E)の現像工程で用いた現像液もしくはポジ型感光性樹脂の溶剤を用いることができる。
なお、第二露光工程を行わずに、溶剤を用いてポジ型感光性樹脂層を溶解除去してもよい。
【実施例】
【0065】
[実施例1]
20μm厚のポリエチレンテレフタレート製透明フィルム上に、下記のポジ型感光性樹脂層塗布液を塗布し、乾燥して、25μm厚のポジ型感光性樹脂層を形成した。
【0066】
────────────────────────────────────────
ポジ型感光性樹脂層塗布液
────────────────────────────────────────
m−クレゾールとp−クレゾールとをシュウ酸を触媒としてホルムアルデヒドで縮合して得られたノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=50/50、質量平均分子量:12000) 22.5質量部
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−スルホン酸エステル 7.5質量部
マラカイトグリーンシュウ酸塩 0.02質量部
3−モルホリノメチル−1−フェニルトリアゾール−2−チオン 0.01質量部
ロイコクリスタルバイオレット 0.2質量部
トリブロモメチルフェニルスルホン 0.1質量部
エチルセロソルブアセテート(ECA) 10.0質量部
メチルエチルケトン 30.0質量部
────────────────────────────────────────
【0067】
次に、ポジ型感光性樹脂層の上に、20μm厚のポリエチレンフィルムを積層して、ポジ型感光性シートを作成した。このポジ型感光性シートのポジ型感光性樹脂層に、エネルギー量の異なる波長405nmの光を照射して、感光性樹脂層の全体を変性(可溶化)させるのに必要な光のエネルギー量を求めたところ、その値は100mJ/cm2であった。
【0068】
ポジ型感光性転写シートのポリエチレンフィルムを剥がし取った後、表面を研磨、水洗、乾燥した直径3mmのスルーホールを有する銅張積層板の表面にポジ型感光性樹脂層が接するようにポジ型感光性シートを、ヒートロールラミネーターを用いて、ロール圧0.8kg/cm2、加熱温度130℃の条件で圧着して、銅張積層板、ポジ型感光性樹脂層、そしてポリエチレンテレフタレート製透明フィルムがこの順で積層された感光性積層体を作成した。この感光性積層体のポリエチレンテレフタレートフィルムの上から、照射光エネルギー量の調節可能な走査型レーザ露光装置(光源:波長405nmの青色レーザ光)を用いて、配線領域と銅層露出領域とに光を照射した(スルーホールとその近傍には光を照射しない)。光の照射条件は、配線領域の照射光エネルギー量を20mJ/cm2、銅層露出領域の照射光エネルギー量を100mJ/cm2とした。次いで、積層体からポリエチレンテレフタレート製透明フィルムを剥がし取った後、銅張積層板上のポジ型感光性樹脂層に、濃度1質量%のTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液をスプレーして、ポジ型感光性樹脂層の変性部分を溶解除去した。銅張積層板上には、スルーホールとその近傍に残存した25μm厚の樹脂層からなるホール部被覆領域、5μm厚の樹脂層からなる配線領域、そしてポジ型感光性樹脂層が完全に除去された銅層露出領域からなる画像パターンが形成された。配線領域の樹脂層には、剥がれなどの欠陥はなかった。
【0069】
上記の画像パターンが形成された銅張積層板に、塩化第二銅エッチェント(塩化第二銅含有エッチング溶液)をスプレーして、銅層露出領域の銅層を溶解除去した。次いで、画像パターン全体を400mJ/cm2のエネルギー量で全面露光して、ポジ型感光性樹脂を変性させた後、メチルピロリドンをスプレーして、画像パターンを溶解除去した。得られたプリント配線板のスルーホール内の銅層に変化はなかった。
【0070】
[実施例2]
ポジ型感光性樹脂層の厚さを4μmとする以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性シートを作成した。このポジ型感光性シートのポジ型感光性樹脂層の全体を変性(可溶化)させるのに必要な光のエネルギー量は20mJ/cm2であった。
このポジ型感光性シートを用い、以下の方法で液晶表示装置用カラーフィルタ上にスペーサ領域とリブ領域(配向制御用突起)を作成した。
カラーフィルタ(基材:0.7mm厚のガラス板)の表面に、ITO膜を電気抵抗値が20Ω/sq.となるようにスパッタ法により形成した。ポジ型感光性転写シートのポリエチレンフィルムを剥がし取った後、上記カラーフィルタのITO膜表面にポジ型感光性樹脂層が接するようにポジ型感光性シートを、ヒートロールラミネーターを用いて、ロール圧0.8kg/cm2、加熱温度130℃の条件で圧着して、カラーフィルタ、ポジ型感光性樹脂層、そしてポリエチレンテレフタレート製透明フィルムがこの順で積層された感光性積層体を作成した。
【0071】
次に、この感光性積層体のポリエチレンテレフタレートフィルムの上から、照射光エネルギー量の調節可能な走査型レーザ露光装置(光源:波長405nmの青色レーザ光)を用いて、照射光エネルギー量が100mJ/cm2の幅10μmの領域(基板露出領域)、照射光エネルギー量が15mJ/cm2の幅10μmの領域(リブ形成領域)、照射光エネルギー量が100mJ/cm2の幅10μmの領域(基板露出領域)、光を照射しない幅10μmの領域(スペーサ形成領域)からなるパータンで光を照射した。次いで、積層体からポリエチレンテレフタレート製透明フィルムを剥がし取った後、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂層を現像した。そして、最後にカラーフィルタを240℃の温度で50分間ベーキングした。カラーフィルタのITO膜の上に形成されたスペーサ領域の高さは3.7μm、リブ領域の高さは1.0μmであった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の画像パターン形成方法を利用して形成される画像パターンの概略断面図である。
【図2】本発明に従う、スルーホールを有するプリント配線板の製造工程を示す工程図である。
【符号の説明】
【0073】
11 基板
12 第一の凸部樹脂領域
13 第二の凸部樹脂領域
14 基板表面露出領域
21 金属被覆樹脂板
22 スルーホール
23 金属層
24 配線
31 ポジ型感光性(転写)シート
32 支持体
33 ポジ型感光性樹脂層
34 ホール部被覆領域
35 配線領域
36 金属被覆層露出領域
41 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板上に形成されたポジ型感光性樹脂層とからなる感光性積層体に、そのポジ型感光性樹脂層の側から、予め決められた、少なくとも、該樹脂層と実質的に同一の厚さを持つ樹脂層からなる第一の凸部領域、第一の凸部領域の樹脂層よりも薄い厚さの樹脂層からなる第二の凸部領域、そして第三の基板露出領域から構成される画像パターンに対応して、第一の領域には、実質的に光の照射を行なうことなく、第二の領域には、当該領域の感光性樹脂層の表面側の一部の厚み部分までが変性するようなエネルギー量の光を照射し、そして第三の領域には、当該領域の感光性樹脂層の全てが変性するようなエネルギー量の光を照射する工程、及び、この光処理を行なったポジ型感光性樹脂層に現像液を接触させることにより、該感光性樹脂層の変性部分を溶解除去する工程からなる、基板上に、少なくとも、相対的に厚い樹脂層からなる凸部樹脂領域、相対的に薄い樹脂層からなる凸部樹脂領域、そして基板露出領域から構成される画像パターンを形成する方法。
【請求項2】
光照射をレーザ光を用いて行なう請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光照射工程前の感光性積層体のポジ型感光性樹脂層の表面に透明フィルムが付設されており、光照射工程の後で現像処理の前に該透明フィルムを除去する工程を行なう請求項1もしくは2に記載の方法。
【請求項4】
第二の凸部領域に照射する光のエネルギー量と第三の基板露出領域に照射する光のエネルギー量との比を、1:1.1〜1:25の範囲に調節する請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の方法。
【請求項5】
ホール部を備えた金属被覆樹脂板と該金属被覆樹脂板上に形成されたポジ型感光性樹脂層とからなる感光性積層体に、そのポジ型感光性樹脂層の側から、ホール部被覆領域、配線領域、そして金属被覆層露出領域から構成される画像パターンに対応して、ホール部被覆領域には、実質的に光の照射を行なうことなく、配線領域には、当該領域の感光性樹脂層の表面側の一部の厚み部分までが変性するようなエネルギー量の光を照射し、そして金属被覆層露出領域には、当該領域の感光性樹脂層の全てが変性するようなエネルギー量の光を照射する工程;この光処理を行なったポジ型感光性樹脂層に現像液を接触させることにより、該感光性樹脂層の変性部分を溶解除去することにより、基板上に、少なくとも、相対的に厚い樹脂層からなるホール部被覆領域、相対的に薄い樹脂層からなる配線領域、そして金属被覆層露出領域から構成される画像パターンを形成する工程;表面に該画像パターンが形成された金属被覆樹脂板をエッチング処理にかけることにより、金属被覆層の露出部分を除去する工程;そして金属被覆樹脂板上の感光性樹脂層を溶解除去する工程からなるプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
光照射をレーザ光を用いて行なう請求項5に記載の方法。
【請求項7】
光照射工程前の感光性積層体のポジ型感光性樹脂層の表面に透明フィルムが付設されており、光照射工程の後で現像処理の前に該透明フィルムを除去する工程を行なう請求項5もしくは6に記載の方法。
【請求項8】
配線領域に照射する光のエネルギー量と基板露出領域に照射する光のエネルギー量との比を、1:1.1〜1:25の範囲に調節する請求項5乃至7に記載のうちのいずれかの項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−40955(P2006−40955A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214702(P2004−214702)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】