説明

画像処理装置、画像処理方法、及び、画像処理プログラム

【課題】印刷物の退色度合いをモニタでシミュレーションできる画像処理装置を提供する。
【解決手段】シミュレーションする条件を設定する設定手段と、シミュレーションする対象となる画像データを色材情報を示すデータに変換する第1の変換手段と、変換された色材情報を示すデータを、目標となる色度情報を示すデータに変換する第2の変換手段と、変換された色材情報を示すデータを、退色する度合いを色度情報で示すデータに変換する第3の変換手段と、第2の変換手段によって変換されたデータと、第3の変換手段によって変換されたデータとを用いて、設定手段によって設定された条件に応じて、退色した色をシミュレーションするシミュレーション手段と、シミュレーションされた退色した色と目標となる色とを並列に表示する表示手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷処理を行う画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷物は、光やガスなどによって色が退色してしまうという問題が存在する。インクジェットプリンタにおいては、耐光性に優れた印刷物を提供するために、印刷物にラミネートすることで、印刷表面を光から保護するという試みがなされている(特許文献1)。特許文献1の発明によると、紫外線吸収剤と、光安定化剤と、蛍光増白剤とが含有されている転写層を印字面にラミネートする。これにより転写層を透過する光の中で、染料劣化の原因となる300〜380nmの波長領域の光が、紫外線吸収剤と蛍光増白剤とによって効果的に吸収され、カットされるので、印刷された画像の耐光性を著しく向上させることができる。
【0003】
また、印刷物にラミネートするのではなく、インク自体の耐光性を向上するという試みもなされている。例えば、特許文献2には、金属化合物で改質された有機顔料を使用するインクが提案されている。その提案によって、有機顔料の長所である高彩度および高着色性を維持し、ヘッドノズルの目詰まり特性・保存安定性を損うことなく、欠点である耐光性を改善することができると記載されている。
【0004】
特に、A0やB0サイズの印刷が可能な大判プリンタにおいては、屋外に展示するポスター等としての用途があるため、耐光性に優れた印刷物に対する需要が多い。
【特許文献1】特開2004−180278号公報
【特許文献2】特開平11−172170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷物自身の耐光性を向上させるための技術は、従来から様々な試みがなされている。しかしながら、印刷物そのものの耐光性を向上させても、印刷物は少なからず退色してしまう。
【0006】
そして、印刷物をどのように保存するか、どこに掲示するか、また、保存期間、掲示期間によって、退色の度合いは異なる。特に、紫外線の影響を強く受ける屋外にポスター等を掲示した場合には、屋内に掲示するよりも退色がより進み、掲示する期間が長い程、退色の度合いも大きくなる。
【0007】
また、印刷物を作成する際に、ユーザはその印刷物の色がどれくらいの期間でどの程度色が褪せてしまうかが分からないので、屋外に掲示するポスター等をどれくらいの期間で張り替えるべきかが分からないという問題があった。
【0008】
また、展覧会などで展示する印刷物に関して、展示する期間が長い場合に、展示期間の後半では色が退色してしまうという問題があった。更に、退色の進みが速いために、短い期間で印刷物を新しいものに更新していくのは印刷コストの増大につながるという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、印刷物の退色度合いをモニタでシミュレーションできる画像処理装置を提供することを第1の目的とする。
【0010】
また、退色による色変化を予測し、退色方向とは逆方向に色補正を行うことで、退色による影響を目立たなくさせる画像処理装置を提供することを第2の目的とする。
【0011】
更に、退色による色変化を予測し、退色方向とは逆方向に色補正することで、色が退色して目標の色を再現できる時期をユーザが設定できるような画像処理装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像処理装置は、画像データの印刷物の退色をシミュレーションする画像処理装置であって、ユーザによる入力に基づいて、シミュレーションする条件を設定する設定手段と、シミュレーションする対象となる画像データを色材情報を示すデータに変換する第1の変換手段と、第1の変換手段によって変換された色材情報を示すデータを、目標となる色度情報を示すデータに変換する第2の変換手段と、第1の変換手段によって変換された色材情報を示すデータを、退色する度合いを色度情報で示すデータに変換する第3の変換手段と、第2の変換手段によって変換されたデータと、第3の変換手段によって変換されたデータとを用いて、設定手段によって設定された条件に応じて、退色した色をシミュレーションするシミュレーション手段と、シミュレーション手段によってシミュレーションされた退色した色と、目標となる色とを並列に表示する表示手段とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷物の退色度合いをモニタでシミュレーションすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明に係る実施形態に用いられる退色シミュレーションが可能な画像処理システムのブロック構成を示す図である。図1に示すように、ホストPC101にカラーマネージメントされたモニタ102が接続されている。ユーザは、モニタ102を見ながら、本実施形態における画像データの退色シミュレーションを行うことができる。更に、ホストPC101には、画像データを印刷するためのプリンタ103が接続されている。退色シミュレーションは、接続されているプリンタ103の色再現および退色特性をもとに実施される。
【0016】
図5は、本実施形態において用いられるインクジェットプリンタにおいて画像を記録する際の概念を示す図である。画像を記録するヘッド501には、インクを吐出するための複数のノズルが一列、又は、複数列に配列されており、その列は、インク色数分存在する。例えば、シアンのインクを吐出するノズル列と、マゼンタのインクを吐出するノズル列等のように、配列されている。ヘッド501が用紙502上を左右に(即ち、主走査方向)移動しながら画像の記録を行う。ヘッド501が主走査方向に走査する毎に、用紙502が副走査方向に送られる。以上を繰り返すことによって、用紙502上に画像を形成することができる。また、本実施形態において用いられるプリンタは、インクジェットプリンタに限定されるものではなく、トナーで記録する電子写真方式のプリンタや、銀塩方式の写真プリンタ、また、昇華型プリンタや印刷機であっても良い。
【0017】
また、本実施形態において、ホストPC101は、一般的に広く用いられる情報処理装置が用いられる。図6は、ホストPC101に適用される情報処理装置の構成を示す図である。CPU601は、ROM603に記憶された、あるいはハードディスク(HD)611からRAM602にロードされたOSや一般アプリケーション、本発明にかかるプログラムを実行する。RAM602は、CPU601の主メモリ、ワークエリア等として機能する。キーボードコントローラ(KBC)605は、キーボード610や不図示のポインティングデバイスからのキー入力を制御する。CRTコントローラ(CRTC)606は、モニタ102の表示を制御する。ディスクコントローラ(DKC)607は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、電子原稿ファイル等を記憶するハードディスク(HD)611等とのアクセスを制御する。プリンタコントローラ(PRTC)608は、接続されたプリンタ103との間の信号の交換を制御する。ネットワークコントローラ(NC)609はネットワークに接続されて、ネットワークに接続された他の機器との通信制御処理を実行する。また、CPU601は、システムバス604を介して、以上の各部を制御する。
【0018】
図2は、本発明に係る第1の実施形態における退色シミュレーションの機能ブロック構成を示す図である。
【0019】
まず、ユーザは、モニタ102上において、ユーザインタフェース201を介して、退色シミュレーションを行う際の必要な項目を設定する。本実施形態においては、以下に述べる退色度合いが変化する項目がユーザにより設定内容として設定される。
【0020】
ユーザは、まず、シミュレーションの対象とする画像データを選択する。次に、ユーザは、メディアの選択を行う。メディアの選択においては、例えば、ユーザは、用いられる用紙として、光沢紙やコート紙や普通紙を選択することができる。用紙は、光沢紙やコート紙や普通紙等、様々な種類があるが、それぞれの用紙によって色再現範囲が異なっており、また、退色の仕方も異なっている。例えば、光沢紙の場合には、イエローとシアンが退色し易く、マゼンタがかった色に変色する傾向がある。一方、コート紙の場合には、シアンが退色し易いので、赤味を帯びた色に変色する傾向がある。このように、用紙によって特性が異なっているので、印刷に用いられる用紙を選択して特定しておく必要がある。
【0021】
次に、ユーザは、掲示方法の選択を行う。掲示方法の選択においては、例えば、ユーザは、屋内又は屋外かを、また、ガラスの額入りであるか又は額無しであるかを選択することができる。蛍光灯の当たる屋内に掲示した場合と、太陽光の当たる屋外に掲示した場合とで退色の仕方が異なるので、ユーザによる掲示方法の選択が行われる。また、ガラスの額に入れられているか、又は、額に入れられていないかによっても退色の仕方は異なる。 次に、ユーザは、掲示期間を指定する。これは、掲示する期間に応じて、退色度合いが異なるからである。
【0022】
以上のように、モニタ102に表示されたユーザインタフェース201を介して、ユーザ設定項目が設定される。すると、ホストPC101は、ルックアップテーブル(以下、LUTともいう)が格納されたデータベース204から適宜、必要なLUTを取り出し、退色シミュレーションにおける色変換処理に用いる。
【0023】
次に、図2を参照しながら、本実施形態における退色シミュレーションの処理について説明する。本実施形態においては、ユーザによって選択された画像データ205が、以下に述べるように色処理されて、モニタ102に退色シミュレーション結果として表示される。
【0024】
まず、ホストPC101は、ユーザによって選択された画像データ205をYMCK等の色材情報に変換する。画像データ205は、例えば、ラスタライズされたビットマップデータである。また、sRGBデータであっても良いし、AdobeRGBデータであっても良い。その場合に、ホストPC101は、データベース204から変換用のLUT206を取り出して参照することによって、画像データを色材情報に変換する(第1の変換手段の一例))。
【0025】
次に、ホストPC101は、色材情報を所定の条件下において退色する「L*a*b*」等の色度情報に変換すると共に、デバイスに依存しない「L*a*b*」等の色度情報に変換する。その場合に、ホストPC101は、データベース204から変換用のLUT207を取り出して参照することによって、色材情報を所定の条件下において退色する色度情報に変換する(第3の変換手段の一例)。また、ホストPC101は、データベース204から変換用のLUT209を取り出して参照することによって、色材情報をデバイスに依存しない色度情報に変換する(第2の変換手段の一例)。LUT209により変換された色度情報は、退色前の色を示している。
【0026】
ここで、所定の条件下において退色する色度情報とは、屋内又は屋外に掲示し、若しくは、ガラスの額に入れられているか否かによって、例えば10年後にどのような色が再現されるかという加速試験を行った色度情報をいう。本実施形態においては、10年後のデータに限らず、1年後や100年後のデータが用いられても良い。LUT207によって変換された色度情報は、例えば、1年間での色度の退色量を示している。
【0027】
次に、ホストPC101は、LUT207及び209によって変換された色度情報と、ユーザによって選択された掲示期間とから退色予測処理208を行う。
【0028】
退色予測処理208において、LUT207により変換された所定の条件下における退色情報と、LUT209により変換された退色しない場合の色度情報とから、ユーザにより指定された掲示期間終了時の色再現の予測を行う。色再現の予測は、LUT207に定められている所定期間(先述の1年等)と、ユーザにより指定された掲示期間との時間の比に応じて、線形補間処理による予測色再現(L*a*b*)の算出によって行われる。例えば、ユーザにより指定された掲示期間が6ヶ月で、LUT207に定められた所定期間が1年である場合には、1年間の退色量の半分とする。
【0029】
次に、ホストPC101は、退色予測処理208によって退色予測された色度情報とLUT209により変換された退色しない場合の色度情報とを、モニタで表示可能なデータであるRGB情報に変換する。その場合に、ホストPC101は、データベース204から変換用のLUT210を取り出して参照することによって、色度情報をRGB情報に変換する。
【0030】
モニタ102の画面203に退色予測された画像データ(掲示終了時の色が再現されている)が表示される。即ち、退色予測処理208からLUT210を介しての出力が、画面203に表示される。また、画面202に退色しない場合の画像データ(掲示開始時の色が再現されている)が表示される。即ち、LUT209からLUT210を介しての出力が、画面202に表示される。
【0031】
以上のように、ユーザによって指定された印刷物の保存方法、掲示方法、保存期間、掲示期間に従って、画面202及び203に退色シミュレーション結果が表示される。その場合に、印刷する画像の掲示開始時と終了時の色再現とが並列表示されるので、ユーザは、印刷物の色がどの程度退色するかをモニタ上で確認することができる。
【0032】
図3は、本発明に係る第2の実施形態における退色シミュレーションの機能ブロック構成を示す図である。
【0033】
まず、ユーザは、モニタ102上において、ユーザインタフェース301を介して、退色シミュレーションを行う際の必要な項目を設定する。本実施形態においては、以下に述べる退色度合いが変化する項目がユーザによって設定される。
【0034】
ユーザは、まず、印刷する画像データを選択する。次に、ユーザは、メディアの選択を行う。メディアの選択においては、例えば、ユーザは、用いられる用紙として、光沢紙やコート紙や普通紙を選択することができる。用紙は、光沢紙やコート紙や普通紙等、様々な種類があるが、それぞれの用紙によって色再現範囲が異なっており、また、退色の仕方も異なっている。例えば、光沢紙の場合には、イエローとシアンが退色し易く、マゼンタがかった色に変色する傾向がある。一方、コート紙の場合には、シアンが退色し易いので、赤味を帯びた色に変色する傾向がある。このように、用紙によって特性が異なっているので、印刷に用いられる用紙を選択して特定しておく必要がある。
【0035】
次に、ユーザは、掲示方法の選択を行う。掲示方法の選択においては、例えば、ユーザは、屋内又は屋外かを、また、ガラスの額入りであるか又は額無しであるかを選択することができる。蛍光灯の当たる屋内に掲示した場合と、太陽光の当たる屋外に掲示した場合とで退色の仕方が異なるので、ユーザによる掲示方法の選択が行われる。また、ガラスの額に入れられているか、又は、額に入れられていないかによっても退色の仕方は異なる。 次に、ユーザは、掲示期間を指定する。これは、掲示する期間に応じて、退色度合いが異なるからである。
【0036】
本実施形態においては更に、退色補正強度を指定する。ここで、退色補正強度とは、LUT209により変換された退色しない場合の色度情報に対して、退色する方向とは逆方向の色味になるように色補正処理を施す際の程度をいう。従って、退色補正強度を弱く設定すると退色補正が弱く施されるので、目標色再現より、退色方向とは逆方向に少しだけ色味が補正されて出力される。ここで、目標色とは、LUT209により変換された退色しない場合の色度情報をいう。そのため、掲示期間の初期においては目標色再現に近い色味となるが、退色が進んだ掲示期間の後半においては退色の度合いが大きくなる。一方、退色補正強度を強く設定すると退色補正が強く施されるので、掲示期間の初期においては退色補正が強めに施されて目標色再現から離れた色味になっているが、退色が進んだ掲示期間の後半においては目標色再現に近い色味となる。
【0037】
以上のように、モニタ102に表示されたユーザインタフェース301を介して、ユーザ設定項目が設定される。すると、ホストPC101は、LUTが格納されたデータベース305から適宜、必要なLUTを取り出し、退色シミュレーションにおける色変換処理に用いる。
【0038】
次に、図3を参照しながら、本実施形態における退色シミュレーションの処理について説明する。本実施形態においては、ユーザによって選択された画像データ205が、以下に述べるように色処理されて、モニタ102に退色シミュレーション結果として表示される。
【0039】
まず、ホストPC101は、ユーザによって選択された画像データ205をYMCK等の色材情報に変換する。その場合に、ホストPC101は、データベース204から変換用のLUT206を取り出して参照することによって、画像データを色材情報に変換する。
【0040】
次に、ホストPC101は、色材情報を所定の条件下において退色する「L*a*b*」等の色度情報に変換すると共に、デバイスに依存しない「L*a*b*」等の色度情報に変換する。その場合に、ホストPC101は、データベース204から変換用のLUT207を取り出して参照することによって、色材情報を所定の条件下において退色する色度情報に変換する。また、ホストPC101は、データベース204から変換用のLUT209を取り出して参照することによって、色材情報をデバイスに依存しない色度情報に変換する。
【0041】
次に、ホストPC101は、LUT207及び209によって変換された色度情報と、ユーザによって選択された掲示期間とから退色予測処理208を行う。退色予測処理については、第1の実施形態における説明と同じである。
【0042】
本実施形態においては、ホストPC101は、退色予測処理208において得られた色度情報と、LUT209により変換された退色しない色度情報とから、色補正処理306を行う。
【0043】
退色補正処理とは、例えば、「L*a*b*」空間において、退色する方向とは逆方向に「L*a*b*」を補正することをいう。その場合の補正の程度(補正量)は、ユーザによって指定された退色補正強度に従って決定される。
【0044】
ユーザによって補正強度を強く設定された場合には、退色補正量が大きくなるように目標色(即ち、LUT209により変換された退色しない場合の色度情報)に対して色補正処理を施す。既に述べたように、その場合には、掲示終了時点で目標色再現に近くなる。一方、ユーザによって補正強度を弱く設定された場合には、退色補正量が小さくなるように目標色に対して色補正処理を施す。その場合には、掲示開始時点で目標色再現に近くなる。
【0045】
次に、ホストPC101は、退色予測処理208により退色予測された色度情報と、LUT209により変換された退色しない場合の色度情報と、色補正処理306を施した色度情報とをモニタで表示可能なデータであるRGB情報に変換する。その場合に、ホストPC101は、データベース305から変換用のLUT210を取り出して参照することによって、色度情報をRGB情報に変換する。
【0046】
モニタ102の画面304に退色予測された画像データ(掲示終了時の色が再現されている)が表示される。即ち、退色予測処理208からLUT210を介しての出力が、画面304に表示される。また、画面303に退色しない場合の画像データ(掲示開始時の色が再現されている)が表示される。即ち、LUT209からLUT210を介しての出力が、画面303に表示される。更に、モニタ102の画面302に、退色補正された画像データ(掲示開始時の色が再現されている)が表示される。即ち、色補正処理306からLUT210を介しての出力が、画面302に表示される。
【0047】
本実施形態においては、ユーザが、モニタ102上において、目標色再現に対して掲示開始時及び終了時の色の再現を確認することができる。その場合に、退色の程度が大きい場合には、掲示期間を短くした結果を確認したり、退色補正強度を変更することによって、掲示開始時と終了時の色再現をモニタ102上で確認することができる。
【0048】
シミュレーション結果に基づいて、印刷を実行する際には、設定された退色補正強度に基づいた色度情報がプリンタの色材情報に変換される。その場合に、ホストPC101は、データベース305から変換用のLUT307を取り出して参照することによって、色度情報を色材情報に変換する。ここで、印刷されるのは、画面302で表示されている画像である。
【0049】
以上のように、ユーザによって指定された印刷物の保存及び掲示方法、保存及び掲示期間、退色補正強度に従って、画面302、303、304に退色シミュレーション結果が表示される。その場合に、目標色再現に対して印刷する画像の掲示開始時と終了時の色再現とが並列表示されるので、ユーザは、印刷物の色がどの程度退色するかをモニタ上で確認することができる。加えて、ユーザは、印刷物がどの程度の期間、掲示可能かを判断することができる。
【0050】
また、ユーザにより指定された退色補正強度に従って、退色する方向とは逆方向に色補正を行って出力することにより、退色による影響を目立たなくすることができる。その結果、印刷物の掲示期間を長く設定することができ、短期間で印刷物を印刷する場合に比べて、コストを低減することができる。
【0051】
図4は、本発明に係る第3の実施形態における退色シミュレーションの機能ブロック構成を示す図である。
【0052】
まず、ユーザは、モニタ102上において、ユーザインタフェース401を介して、退色シミュレーションを行う際の必要な項目を設定する。本実施形態においては、以下に述べる退色度合いが変化する項目がユーザによって設定される。
【0053】
ユーザは、まず、印刷する画像データを選択する。次に、ユーザは、メディアの選択を行う。メディアの選択においては、例えば、ユーザは、用いられる用紙として、光沢紙やコート紙や普通紙を選択することができる。用紙は、光沢紙やコート紙や普通紙等、様々な種類があるが、それぞれの用紙によって色再現範囲が異なっており、また、退色の仕方も異なっている。例えば、光沢紙の場合には、イエローとシアンが退色し易く、マゼンタがかった色に変色する傾向がある。一方、コート紙の場合には、シアンが退色し易いので、赤味を帯びた色に変色する傾向がある。このように、用紙によって特性が異なっているので、印刷に用いられる用紙を選択して特定しておく必要がある。
【0054】
次に、ユーザは、掲示方法の選択を行う。掲示方法の選択においては、例えば、ユーザは、屋内又は屋外かを、また、ガラスの額入りであるか又は額無しであるかを選択することができる。蛍光灯の当たる屋内に掲示した場合と、太陽光の当たる屋外に掲示した場合とで退色の仕方が異なるので、ユーザによる掲示方法の選択が行われる。また、ガラスの額に入れられているか、又は、額に入れられていないかによっても退色の仕方は異なる。 次に、ユーザは、掲示期間を指定する。これは、掲示する期間に応じて、退色度合いが異なるからである。
【0055】
本実施形態においては、更に、掲示期間中のどの時期に目標色を再現するようにするか、その時期を指定する。ユーザにより指定された時期に目標色再現になるように退色を考慮した色補正処理が施されて、プリンタ103に印刷される。
【0056】
例えば、宣伝用のポスタ等の場合に、掲示期間の初期にポスタを見る人(客等)が多く見込まれる場合には、掲示初期に目標色再現になるように設定する。その結果、掲示初期に目標色再現になるように色補正処理が施される。
【0057】
また、掲示時期の後半にポスターを見る人が多く見込まれる場合には、掲示期間の後半に目標色再現になるように設定する。その結果、掲示期間の後半に目標色を再現するように色補正処理が施される。
【0058】
以上のように、モニタ102に表示されたユーザインタフェース401を介して、ユーザ設定項目が設定される。すると、ホストPC101は、LUTが格納されたデータベース405から適宜、必要なLUTを取り出し、退色シミュレーションにおける色変換処理に用いる。
【0059】
次に、図4を参照しながら、本実施形態における退色シミュレーションの処理について説明する。本実施形態においては、ユーザによって選択された画像データ205が、以下に述べるように色処理されて、モニタ102に退色シミュレーション結果として表示される。
【0060】
まず、ホストPC101は、ユーザによって選択された画像データ205をYMCK等の色材情報に変換する。その場合に、ホストPC101は、データベース405から変換用のLUT206を取り出して参照することによって、画像データを色材情報に変換する。
【0061】
次に、ホストPC101は、色材情報を所定の条件下において退色する「L*a*b*」等の色度情報に変換すると共に、デバイスに依存しない「L*a*b*」等の色度情報に変換する。その場合に、ホストPC101は、データベース405から変換用のLUT207を取り出して参照することによって、色材情報を所定の条件下において退色する色度情報に変換する。また、ホストPC101は、データベース405から変換用のLUT209を取り出して参照することによって、色材情報をデバイスに依存しない色度情報に変換する。
【0062】
次に、ホストPC101は、LUT207及び209によって変換された色度情報と、ユーザによって選択された掲示期間とから退色予測処理208を行う。退色予測処理については、第1の実施形態における説明と同じである。
【0063】
更に、ホストPC101は、退色予測処理208において得られた色度情報と、退色しない色度情報とから、色補正処理306を行う。次に、退色予測処理208において得られた色度情報と、LUT209により変換された退色しない色度情報とから、色補正処理306を行う。退色補正処理については、第1の実施形態における説明と同じであるが、本実施形態においては、例えば、補正の程度(補正量)は、ユーザによって指定された印刷物が目標色になる時期に従って決定される。
【0064】
目標色になる時期が掲示開始時に設定された場合には、退色補正がかからないように処理する。一方、目標色再現を掲示終了時に設定された場合には、掲示終了時に目標色再現になるように退色補正量を調整して退色補正処理を施す。
【0065】
次に、ホストPC101は、退色予測処理208によって退色予測された色度情報と、LUT209により変換された退色しない場合の色度情報と、色補正処理306を施した色度情報とをモニタで表示可能なデータであるRGB情報に変換する。その場合に、ホストPC101は、データベース405から変換用のLUT210を取り出して参照することによって、色度情報をRGB情報に変換する。
【0066】
モニタ102の画面404に退色予測された画像データ(掲示終了時の色が再現されている)が表示される。即ち、即ち、退色予測処理208からLUT210を介しての出力が、画面304に表示される。また、画面403に退色しない場合の画像データ(掲示開始時の色が再現されている)が表示される。即ち、即ち、LUT209からLUT210を介しての出力が、画面303に表示される。更に、画面402に、退色補正された画像データ(掲示開始時の色が再現されている)が表示される。即ち、色補正処理306からLUT210を介しての出力が、画面302に表示される。
【0067】
本実施形態においては、ユーザが、モニタ102上において、目標色再現に対して掲示開始時及び終了時の色の再現を確認することができる。その場合に、退色の程度が大きい場合には、掲示期間を短くした結果を確認したり、目標色再現になる時期を変更することによって、掲示開始時と終了時の色再現をモニタ102上で確認することができる。
【0068】
シミュレーション結果に基づいて印刷を実行する際には、目標色再現になる時期に基づいた色度情報がプリンタの色材情報に変換される。その場合に、ホストPC101は、データベース405から変換用のLUT307を取り出して参照することによって、色度情報を色材情報に変換する。ここで、印刷されるのは、画面402で表示されている画像である。
【0069】
以上のように、ユーザによって退色した結果、目標色再現になる時期を指定し、退色する方向とは逆方向の色味になるように色補正をして印刷することができる。その結果、目標色再現を実現したい時期に合わせて印刷物を作成することができる。更に、ユーザは、印刷物の保存及び掲示方法、若しくは、保存及び掲示期間、また、目標色になる時期を指定することによって、目標色再現に対して印刷する画像の掲示開始時及び終了時の色再現とを同時に並行表示して確認することができる。
【0070】
本発明には、プログラム(画像処理プログラム)コードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。更に、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた場合についても、本発明は適用される。その場合に、書き込まれたプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る実施形態に用いられる退色シミュレーションが可能なプリント・システムのブロック構成を示す図である。
【図2】本発明に係る第1の実施形態における退色シミュレーションの機能ブロック構成を示す図である。
【図3】本発明に係る第2の実施形態における退色シミュレーションの機能ブロック構成を示す図である。
【図4】本発明に係る第3の実施形態における退色シミュレーションの機能ブロック構成を示す図である。
【図5】本実施形態において用いられるインクジェットプリンタにおいて画像を記録する際の概念を示す図である。
【図6】ホストPC101に適用される情報処理装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
201 ユーザインタフェース
202、203、302、303、304、402、403、404 画面
501 ヘッド
502 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データの印刷物の退色をシミュレーションする画像処理装置であって、
ユーザによる入力に基づいて、シミュレーションする条件を設定する設定手段と、
シミュレーションする対象となる画像データを色材情報を示すデータに変換する第1の変換手段と、
前記第1の変換手段によって変換された色材情報を示すデータを、目標となる色度情報を示すデータに変換する第2の変換手段と、
前記第1の変換手段によって変換された色材情報を示すデータを、退色する度合いを色度情報で示すデータに変換する第3の変換手段と、
前記第2の変換手段によって変換されたデータと、前記第3の変換手段によって変換されたデータとを用いて、前記設定手段によって設定された条件に応じて、退色した色をシミュレーションするシミュレーション手段と、
前記シミュレーション手段によってシミュレーションされた退色した色と、目標となる色とを並列に表示する表示手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記設定手段による設定内容は、印刷する画像データと、印刷する用紙の種類と、印刷物の掲示方法と、印刷物の掲示期間とのうち、少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記シミュレーション手段によってシミュレーションされた結果を用いて、前記第2の変換手段によって変換されたデータが示す目標となる色に対して、退色と逆方向に色を補正する補正手段を、更に備えることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、更に、退色と逆方向に色補正する程度を示す補正強度を設定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記設定手段によって設定された補正強度を用いて、退色と逆方向に色を補正し、
前記表示手段は、前記補正手段によって補正された色を更に表示することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記設定手段は、更に、印刷物が、前記第2の変換手段によって変換されたデータが示す目標となる色になる時期を設定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記設定手段によって設定された時期を用いて、退色と逆方向に色を補正し、
前記表示手段は、前記補正手段によって補正された色を更に表示することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置と、前記画像データを印刷するプリンタとを備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項9】
前記プリンタがインクジェットプリンタであることを特徴とする請求項8に記載の画像処理システム。
【請求項10】
画像データの印刷物の退色をシミュレーションする画像処理装置において実行される画像処理方法であって、
前記画像処理装置の設定手段が、ユーザによる入力に基づいて、シミュレーションする条件を設定する設定工程と、
前記画像処理装置の第1の変換手段が、シミュレーションする対象となる画像データを色材情報を示すデータに変換する第1の変換工程と、
前記画像処理装置の第2の変換手段が、前記第1の変換工程において変換された色材情報を示すデータを、目標となる色度情報を示すデータに変換する第2の変換工程と、
前記画像処理装置の第3の変換手段が、前記第1の変換工程において変換された色材情報を示すデータを、退色する度合いを色度情報で示すデータに変換する第3の変換工程と、
前記画像処理装置のシミュレーション手段が、前記第2の変換工程において変換されたデータと、前記第3の変換工程において変換されたデータとを用いて、前記設定工程において設定された条件に応じて、退色した色をシミュレーションするシミュレーション工程と、
前記画像処理装置の表示手段が、前記シミュレーション工程においてシミュレーションされた退色した色と、目標となる色とを並列に表示する表示工程と
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
画像データの印刷物の退色をシミュレーションするための画像処理プログラムであって、
ユーザによる入力に基づいて、シミュレーションする条件を設定する設定手段と、
シミュレーションする対象となる画像データを色材情報を示すデータに変換する第1の変換手段と、
前記第1の変換手段によって変換された色材情報を示すデータを、目標となる色度情報を示すデータに変換する第2の変換手段と、
前記第1の変換手段によって変換された色材情報を示すデータを、退色する度合いを色度情報で示すデータに変換する第3の変換手段と、
前記第2の変換手段によって変換されたデータと、前記第3の変換手段によって変換されたデータとを用いて、前記設定手段によって設定された条件に応じて、退色した色をシミュレーションするシミュレーション手段と、
前記シミュレーション手段によってシミュレーションされた退色した色と、目標となる色とを並列に表示する表示手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−10838(P2010−10838A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165089(P2008−165089)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】