説明

画像処理装置、画像処理方法

【課題】 表示画面内で映像酔いを引き起こす可能性のある部分領域に対して、映像酔い防止を目的とする補正処理を行うための技術を提供すること。
【解決手段】 表示画面におけるユーザの注視領域を特定する(S101)。注視領域に対して比較的大きく且つ画素値の分散値が閾値以上となる候補オブジェクトを特定する(S102〜105)。候補オブジェクトのうち、フレーム画像間の動きの周期が規定範囲内且つ動きの量が閾値以上となる補正対象オブジェクトを特定する(S106,S107)。補正対象オブジェクトが注視領域内に位置する更新対象フレーム画像上で補正対象オブジェクトを再配置させて表示画面に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、特に大型の表示面を備えた表示装置における画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイに代表される薄型、大画面ディスプレイが普及している。しかし、臨場感の高い美しい映像が視聴できる一方で、映像酔いや光感受性発作など、生体への悪影響が懸念されている。例えば、一般人により家庭用ビデオカメラで撮影された映像には手ブレによる画像揺れが存在していることが多い。このような手ブレや回転、急速なズーミングの反復などによって映像酔いが誘発されやすいと考えられている。また、大画面のディスプレイで視聴する場合のように、視聴する映像が大きいほど映像酔いが誘発されやすいと考えられている。再生/表示装置側で映像酔いまたは光感受性発作を防止するための方法として、例えば下記の方法が考案されている。
【0003】
(1) コンテンツ画面に揺れがあることを検出した場合には、画面を縮小して表示する方法が考案されている(特許文献1)。
【0004】
(2) 表示画面とユーザとの間の距離を検出し、検出した距離が近い場合には画面を縮小して表示する方法が考案されている(特許文献2)。
【0005】
(3) 表示領域の大きさおよび視距離、輝度特性を元に、光感受性発作を引き起こす可能性のある危険区間を検出する方法が考案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−299241号公報
【特許文献2】特開2006−235307号公報
【特許文献3】特開2007−194741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来例においては、大型の表示面を備えたディスプレイで映像酔いを防げない場合があった。例えば、壁面ディスプレイのような大画面表示の環境で、画面に近付いて一部領域のみを注視しているような場合には、映像酔い防止補正が行なえなかった。コンテンツ画面全体は揺れてなくても、注視している部分が揺れている場合は映像酔いを引起す可能性があり、従来の技術ではこれを補正できなかった。
【0008】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、表示画面内で映像酔いを引き起こす可能性のある部分領域に対して、映像酔い防止を目的とする補正処理を行うための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の画像処理装置は以下の構成を備える。即ち、1以上のオブジェクトが配されたフレーム画像から成る動画像を表示する画像処理装置であって、前記動画像を表示する為の表示画面におけるユーザの注視領域を特定する手段と、前記動画像中に登場する各オブジェクトのうち、前記注視領域の面積に対する割合が閾値以上となる面積を有し且つ画素値の分散値が閾値以上となるオブジェクトを、候補オブジェクトとして特定する手段と、前記候補オブジェクトのうち、フレーム画像間の動きの周期が規定範囲内且つ該動きの量が閾値以上となる候補オブジェクトを、補正対象オブジェクトとして特定する特定手段と、前記表示画面に表示した場合に前記補正対象オブジェクトが前記注視領域内に位置するフレーム画像を更新対象フレーム画像とし、該更新対象フレーム画像上で前記補正対象オブジェクトを再配置させて該更新対象フレーム画像を更新し、該更新した更新対象フレーム画像を前記表示画面に表示させる表示制御手段とを備え、前記表示制御手段は、それぞれの更新対象フレーム画像間の前記補正対象オブジェクトの動きの周期が閾値以下となるように、若しくは該動きの量が閾値よりも小さくなるように、前記それぞれの更新対象フレーム画像上における前記補正対象オブジェクトの配置位置を決定し、該決定した配置位置に前記補正対象オブジェクトを再配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示画面内で映像酔いを引き起こす可能性のある部分領域に対して、映像酔い防止を目的とする補正処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像処理装置1の機能構成例を示すブロック図。
【図2】テレビ装置に適用した場合の画像処理装置1の機能構成例を示すブロック図。
【図3】表示画面の一例を示す図。
【図4】表示画面の一例を示す図。
【図5】表示画面の一例を示す図。
【図6】表示画面の一例を示す図。
【図7】(処理1)のフローチャート。
【図8】(処理2)のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照し、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態は、本発明を具体的に実施した場合の一例を示すもので、特許請求の範囲に記載の構成の具体的な実施例の1つである。
【0013】
[第1の実施形態]
本実施形態では、表示画面において、ユーザが注視した場合に映像酔いを引き起こす可能性のある候補領域を抽出し、ユーザの視聴する表示領域内にこの候補領域が含まれている場合には、この候補領域に対して映像酔い防止補正を行う。映像酔い防止補正としては様々なものが考えられるが、本実施形態では、画像オブジェクトの動きを鈍らせる処理を行う。
【0014】
<映像酔い防止補正の動作例>
先ず、図3〜6を用いて、ユーザが注視している領域に対する映像酔い防止補正処理について説明する。図3〜6は何れも表示画面(フレーム画像50)の一例を示している。本実施形態では、ユーザが注視している領域内に含まれているオブジェクトのうち、この領域内で比較的大きな割合を占め且つ周期的な動きを有するオブジェクトの動きを鈍らせることで、上記映像酔い防止補正処理を実現させる。
【0015】
図3はフレーム画像50の一例を示している。このフレーム画像50は、複数フレームの画像から成る動画像におけるあるフレームの画像であり、人物オブジェクト51、家オブジェクト52、煙突オブジェクト53を含み、人物オブジェクト51及び煙突オブジェクト53は周期的に揺れている。即ち、人物オブジェクト51及び煙突オブジェクト53は、複数フレームに渡って表示位置姿勢が変わっている。
【0016】
図4は、ユーザが図3のフレーム画像50に近づいたことでこのユーザが注視可能な領域54を示している。ユーザはフレーム画像50に近寄りすぎたため、フレーム画像50全体を見ることはできず、このフレーム画像50の部分領域(領域54)しか見えない。この場合、ユーザが観察可能な領域54内には、周期的に動いているオブジェクトが映っていないため、このユーザは領域54を観察しても映像酔いを起こさない。然るに、本実施形態ではこのようなケースでは映像酔い防止補正処理は行わない。
【0017】
図5は、ユーザが図3のフレーム画像50に近づいたことでこのユーザが注視可能な領域54を示している。ユーザはフレーム画像50に近寄りすぎたため、フレーム画像50全体を見ることはできず、このフレーム画像50の部分領域(領域54)しか見えない。この場合、ユーザが観察可能な領域54内には、周期的に動いている煙突オブジェクト53が映っている。しかし、領域54の面積に対し、煙突オブジェクト53の面積は比較的小さいため、ユーザはこの領域54を観察しても、映像酔いを起こさない。然るに、本実施形態ではこのようなケースでは映像酔い防止補正処理は行わない。
【0018】
図6は、ユーザが図3のフレーム画像50に近づいたことでこのユーザが注視可能な領域54を示している。ユーザはフレーム画像50に近寄りすぎたため、フレーム画像50全体を見ることはできず、このフレーム画像50の部分領域(領域54)しか見えない。この場合、ユーザが観察可能な領域54内には、周期的に動いている人物オブジェクト51が映っている。人物オブジェクト51の面積は、領域54の面積に対して比較的大きいため、ユーザがこの領域54を観察すると、映像酔いを起こしてしまう可能性がある。本実施形態ではこのようなケースでは、人物オブジェクト51に対して映像酔い防止補正処理を行う。図6では、この映像酔い防止補正処理が施された人物オブジェクト51が映っており、周期的な動きは鈍くなっている。
【0019】
このように、本実施形態では、表示画面においてユーザが観察している領域内で比較的大きな面積を有し且つ周期的な動きをしているオブジェクトについては、その動きを鈍らせる補正処理を行う。
【0020】
<本実施形態に係る画像処理装置>
本実施形態に係る画像処理装置1の機能構成例について、図1のブロック部を用いて説明する。視聴領域検出部2は、表示部7の表示画面においてユーザが観察している領域(注視領域)を検出する。もちろん、ユーザが表示部7の表示画面から十分に離れた位置から表示部7の表示画面を観察している場合には、ユーザは表示部7の表示画面全体を観察していることになる。また、ユーザの視野角以上に近付いて見ている場合は、視野角の範囲がユーザによって観察されていることになる。
【0021】
コンテンツ入力部3は、1以上のオブジェクトを含むフレーム画像から成る動画像を入力し、各フレーム画像を、危険領域抽出部4及び映像酔い補正部6に送出する。
【0022】
危険領域抽出部4は、コンテンツ入力部3から入力されたフレーム画像から、映像酔いを引き起こす可能性のある領域を候補領域として抽出する。候補領域の抽出処理の詳細は後述する。
【0023】
領域一致判定部5は、注視領域内に候補領域が含まれているか否かを判断する。映像酔い補正部6は、注視領域内に候補領域が含まれている場合には、この候補領域に対して映像酔い防止補正処理を施す。本実施形態では、時間軸方向のフィルタを使用して、候補領域内の動きを鈍らせる処理を行う。そして映像酔い補正部6は、映像酔い防止補正処理を施したフレーム画像を、後段の表示部7に送出する。もちろん、映像酔い補正部6は、注視領域内に候補領域が含まれていない限りは、コンテンツ入力部3から入力されたフレーム画像をそのまま後段の表示部7に送出する。表示部7は、映像酔い補正部6から受けたフレーム画像を表示する。
【0024】
次に、テレビ装置に適用した場合の画像処理装置1の機能構成例について、図2のブロック図を用いて説明する。カメラ21は動画像を撮像可能な複数のカメラ装置から成り、画像処理装置1の上方に設置されている。何れのカメラ装置も、表示パネル31の表示画面を観察するユーザを観察するために設置されており、それぞれのカメラ装置が撮像した各フレームの撮像画像は後段の画像認識部22に送出される。
【0025】
画像認識部22は、それぞれのカメラ装置から送出された撮像画像に対して画像認識を行うことで、表示パネル31を観察しているユーザを認識する。この画像認識では、例えば、撮像画像内の物体の輪郭や特徴点を検出し、予め作成しているデータベースとマッチングすることでこの物体が人体であるか否かを判定する。また、同様にマッチングを行うことで、この人物の位置や顔の向きを判定する。なお、画像認識部22が行うこのような一連の認識技術については様々な方法が考えられ、何れを用いても良い。
【0026】
視聴領域算出部23は、ユーザの位置及び顔の向きから、このユーザの視野を計算する。そして視聴領域算出部23は、この計算した視野から、表示パネル31においてこのユーザが観察している領域を注視領域として求める。
【0027】
チューナ24は、外部の不図示のアンテナから供給される放送波を受信して復調し、TSデータを取り出す。デコーダ25は、このTSデータから、圧縮ビデオ、圧縮音声、制御のデータを分離する。そしてデコーダ25は、圧縮ビデオ、圧縮音声のデコードを行うことで、動画像のデータ及び音声のデータを得る。この動画像は、1以上のオブジェクトを含むフレーム画像から成るものである。
【0028】
ビデオI/F(インタフェース)26は、外部からのコンテンツを入力する。例えば、HDMIやDVI等の各種標準規格のインタフェースで構成され、各種の映像コンテンツを入力する。この映像コンテンツは、1以上のオブジェクトを含むフレーム画像から成る動画像を含むものである。
【0029】
セレクタ27は、デコーダ25、ビデオI/F26の何れかを選択し、選択した方から出力されたデータを、後段の危険領域抽出部4及び高画質化処理部28に送出する。危険領域抽出部4の動作については上記の通りであり、セレクタ27から入力されたフレーム画像から、映像酔いを引き起こす可能性のある領域を候補領域として抽出する。
【0030】
高画質化処理部28は、セレクタ27から受けたフレーム画像に対し、拡大縮小処理や色補正処理等の画像処理を施す。OSD合成部29は、高画質化処理部28により画像処理が施されたフレーム画像に対し、チャンネル番号や音量設定など各種の操作情報を重ね合わせる。なお、高画質化処理部28及びOSD合成部29は、画像処理装置1がテレビ装置であるが故に備わっているものであり、本実施形態の目的を達成するために必須ではない。即ち、セレクタ27から直接、映像酔い補正部6に対してフレーム画像を入力しても良い。
【0031】
表示パネル制御部30は、表示パネル31に表示画面を表示するための駆動信号を生成する。そして表示パネル制御部30は、表示パネル31の駆動タイミングに合わせた同期信号を生成し、同期信号に合わせてフレーム画像を出力する。また、表示パネル制御部30は、信号電圧レベルの変換や補助信号の作成も行う。表示パネル31は、液晶やプラズマ、プロジェクション、CRT、有機EL、SED等の任意の表示方式で表示を行う表示装置である。
【0032】
全体制御部32は、CPU、周辺回路、メモリ等から構成され、映像酔い防止補正のための制御を含め、画像処理装置1全体の動作制御を行う。また、図2では省略しているが、画像処理装置1は、音声を再生するための音声処理部、アンプ、スピーカ、電源等を含む。
【0033】
<映像酔い防止補正処理について>
映像酔い防止補正処理は、以下の2つの処理から成る。
【0034】
(処理1) セレクタ27から送出されるフレーム画像内に、映像酔いを生じさせる可能性のあるオブジェクトが含まれているか否かを判断し、含まれている場合には、このオブジェクトを、映像酔い防止補正処理の候補とする処理
(処理2) ユーザの注視領域内に、(処理1)で映像酔い防止補正処理の候補とされたオブジェクトが含まれている場合には、このオブジェクトに対して映像酔い防止補正処理を施す処理
先ず、(処理1)について、同処理のフローチャートを示す図7を用いて説明する。ステップS101では画像認識部22は、カメラ21から得られたフレーム画像群からユーザの位置及び顔の向きを認識する。そして視聴領域算出部23は、画像認識部22が認識した位置及び顔の向きからユーザの視野を計算し、計算した視野から、表示パネル31においてこのユーザが観察している領域を注視領域(視聴領域)として求める。そして視聴領域算出部23は、この注視領域の面積(サイズ)を求める。
【0035】
ステップS102では、危険領域抽出部4は、セレクタ27から入力されたフレーム画像から、オブジェクト(画像オブジェクト)を検出する。ステップS103では、危険領域抽出部4は、注視領域の面積に対する、検出されたオブジェクトの面積の割合が規定値以上であるか否かを判断する。この判断の結果、規定値以上であれば処理はステップS104に進み、規定値よりも小さい場合には、処理はステップS102に戻り、次のオブジェクト検出を行う。
【0036】
ステップS104では危険領域抽出部4は、ステップS102で検出したオブジェクト(注視領域の面積に対して規定値以上の割合の面積を有するオブジェクト)を構成する各画素の画素値の分散値を求める。そしてステップS105では危険領域抽出部4は、この求めた分散値が規定値以上であるか否かを判断する。即ち、ステップS104及びステップS105では、オブジェクトのテクスチャの起伏が規定値以上であるか否かを判断している。
【0037】
ステップS105における判断の結果、規定値以上であれば処理はステップS106に進み、規定値よりも小さい場合には処理はステップS102に戻り、次のオブジェクト検出を行う。
【0038】
ステップS106では危険領域抽出部4は、ステップS102で検出したオブジェクト(注視領域の面積に対して規定値以上の割合の面積を有するオブジェクト)の広域動きベクトル(GMV:Global Motion Vector)を求める。高域動きベクトルの求め方については周知のため、その説明を省略する。
【0039】
ステップS107では危険領域抽出部4は、フレーム画像間のGMVの動き(オブジェクトの動き)の周期が規定範囲内であり且つこの動きの量(大きさ)が閾値以上であるか否かを判断する。即ち、ステップS102で検出したオブジェクトが、映像酔いを生じさせる可能性があるか否かを判断する。
【0040】
ステップS107における判断の結果、GMVの動きの周期が規定範囲内であり且つこの動きの量が閾値以上である場合には処理はステップS108に進み、そうでない場合には処理はステップS102に戻り、次のオブジェクト検出を行う。
【0041】
ステップS108では、ステップS102で検出したオブジェクト(注視領域の面積に対して規定値以上の割合の面積を有するオブジェクト)を、補正候補とする。例えば、オブジェクトの動きの周期が0.5〜2Hzで、注視領域の面積に対して3%以上の大きさでこのオブジェクトが揺れている場合、このオブジェクトは映像酔いを生じさせる可能性のあるオブジェクトと判断し、補正候補とする。
【0042】
即ち、視野に占める割合が大きいオブジェクトほど、映像酔いを誘発する可能性が高いと判定する。また、起伏の少ない、のっぺりとしたテクスチャを有するオブジェクトは映像酔いを誘発する可能性が低いと判定する。また、オブジェクト上に静止したテクスチャがある場合は、映像酔いを誘発する可能性が低いと判定する。例えば、鳥カゴの中の鳥が動いている画像の場合、鳥カゴが静止しているので、映像酔いの可能性が低いと判定する。
【0043】
そして、セレクタ27から受けたフレーム画像から全てのオブジェクトを検出した場合には本処理を終了する(実際には図8のステップS152に進む)。一方、未だ検出していないオブジェクトが残っている場合には、処理はステップS109を介してステップS102に戻り、次のオブジェクト検出を行う。
【0044】
次に、上記の(処理2)について、同処理のフローチャートを示す図8を用いて説明する。上記の通り、図8のフローチャートに従った処理は、1フレーム分のフレーム画像について図7のフローチャートに従った処理を行った後で、このフレーム画像について行うものである。
【0045】
ステップS152で領域一致判定部5は、セレクタ27から危険領域抽出部4を介して受けたフレーム画像内の、視聴領域算出部23が求めた注視領域内に、ステップS108で補正候補としたオブジェクトが含まれているか否かを判断する。この判断の結果、含まれている場合には処理はステップS153に進み、含まれていない場合には、処理はステップS154に進む。
【0046】
ステップS153では、映像酔い補正部6は、OSD合成部29からのフレーム画像内の注視領域内に含まれている補正候補のオブジェクトを補正対象オブジェクトとし、この補正対象オブジェクトに対して映像酔い防止補正処理を行う。この処理では先ず、フレーム画像からこの補正対象オブジェクトを切り出す。そして、フレーム画像間の補正対象オブジェクトの動きの周期が閾値以下となるように、若しくはこの動きの量が閾値よりも小さくなるように、それぞれのフレーム画像上におけるこの切り出した補正対象オブジェクトの配置位置を決定する。そして、決定した配置位置に、この切り出した補正候補オブジェクトを配置する。このように、特定域の周期の揺れを取り除くことにより、映像酔いを引き起こす可能性を減少させる。そして映像酔い補正部6は、このように、補正対象オブジェクトの配置位置を補正したフレーム画像を、後段の表示パネル制御部30に送出する。
【0047】
なお、映像酔い補正部6は、ステップS152からステップS154に処理が進んだ場合には、OSD合成部29からのフレーム画像をそのまま表示パネル制御部30に送出する。
【0048】
ステップS154では、表示パネル制御部30は、映像酔い補正部6から受けたフレーム画像を表示パネル31に表示するための動作制御を行う。なお、図7のフローチャートに従った処理及び図8のフローチャートに従った処理は、フレーム毎に行う。
【0049】
以上の説明により、本実施形態によれば、大画面の表示画面に近付いて画像の一部領域のみを見ているような場合にも映像酔い防止補正処理を行うことができるので、視聴の安全性を高めることができる。
【0050】
<変形例>
上記の実施形態では、補正候補のオブジェクトを特定するための処理をフレーム毎に行ったが、処理負荷を減らすために、シーンチェンジ毎に行うようにしてもよい。また、注視領域を検出するための技術として、上記の実施形態では、画像認識技術を用いた。しかし、ユーザの顔の向きや位置を検出するために他の技術を用いても良い。例えば、ユーザの顔の向きとして、ユーザの視線方向を検出するようにしてもよい。視線の検出方法は、公知の任意のアルゴリズムを使用することができる。また、ユーザの位置は別途設けた距離センサで検出するようにしてもよい。
【0051】
また、上記の実施形態では、映像酔い防止補正としてオブジェクトの動きを鈍らせる処理を行なったが、任意の映像酔い防止補正技術を用いてよい。例えば、オブジェクトのエッジを鈍らせる処理を行っても良い。
【0052】
[第2の実施形態]
動画像にはテレビ映像だけでなく、ビデオカメラなどで撮像した動画像を適用しても良い。また、テレビ映像の代わりに、MPEG−4のように、背景画像とオブジェクトとを独立して管理している動画像ファイルを用いても良い。この場合、背景画像上の、上記の配置位置決定処理(ステップS153)で決定した配置位置にオブジェクトを配置することで1枚のフレーム画像を生成し、生成したフレーム画像を表示する。
【0053】
なお、第1,2の実施形態は以下の処理の一例であり、以下の処理の範疇であれば、第1,2の実施形態以外の実施形態も考え得る。1以上のオブジェクトが配されたフレーム画像から成る動画像を表示する為の技術において、先ず、動画像を表示する為の表示画面におけるユーザの注視領域を特定する。そして、動画像中に登場する各オブジェクトのうち、注視領域の面積に対する割合が閾値以上となる面積を有し且つ画素値の分散値が閾値以上となるオブジェクトを、候補オブジェクトとして特定する。そして、特定したそれぞれの候補オブジェクトのうち、フレーム画像間の動きの周期が規定範囲内且つ動きの量が閾値以上となる候補オブジェクトを、補正対象オブジェクトとして特定する。
【0054】
そして、表示画面に表示した場合に補正対象オブジェクトが注視領域内に位置するようなフレーム画像を更新対象フレーム画像とし、更新対象フレーム画像上で補正対象オブジェクトを再配置させて更新対象フレーム画像を更新する。そしてこの更新した更新対象フレーム画像を表示画面に表示させる(表示制御)。
【0055】
なお、この表示制御における補正対象オブジェクトの再配置では次のような処理を行う。即ち、それぞれの更新対象フレーム画像間の補正対象オブジェクトの動きの周期が閾値以下となるように、若しくは動きの量が閾値よりも小さくなるように、それぞれの更新対象フレーム画像上における補正対象オブジェクトの配置位置を決定する。そして、この決定した配置位置に補正対象オブジェクトを再配置する。
【0056】
なお、図1,2に示した各部のうち、一部をコンピュータプログラムで実装しても良い。この場合、このコンピュータプログラムは、全体制御部32等のコントローラが実行することで、対応する機能部の機能を実現することになる。
【0057】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のオブジェクトが配されたフレーム画像から成る動画像を表示する画像処理装置であって、
前記動画像を表示する為の表示画面におけるユーザの注視領域を特定する手段と、
前記動画像中に登場する各オブジェクトのうち、前記注視領域の面積に対する割合が閾値以上となる面積を有し且つ画素値の分散値が閾値以上となるオブジェクトを、候補オブジェクトとして特定する手段と、
前記候補オブジェクトのうち、フレーム画像間の動きの周期が規定範囲内且つ該動きの量が閾値以上となる候補オブジェクトを、補正対象オブジェクトとして特定する特定手段と、
前記表示画面に表示した場合に前記補正対象オブジェクトが前記注視領域内に位置するフレーム画像を更新対象フレーム画像とし、該更新対象フレーム画像上で前記補正対象オブジェクトを再配置させて該更新対象フレーム画像を更新し、該更新した更新対象フレーム画像を前記表示画面に表示させる表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、
それぞれの更新対象フレーム画像間の前記補正対象オブジェクトの動きの周期が閾値以下となるように、若しくは該動きの量が閾値よりも小さくなるように、前記それぞれの更新対象フレーム画像上における前記補正対象オブジェクトの配置位置を決定し、該決定した配置位置に前記補正対象オブジェクトを再配置する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記特定手段は、前記候補オブジェクトの広域動きベクトル(Global Motion Vector)をフレーム画像ごとに求め、該フレーム画像ごとに求めた高域動きベクトルから、フレーム画像間の動きの周期が規定範囲内且つ該動きの量が閾値以上の前記候補オブジェクトを、補正対象オブジェクトとして特定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
1以上のオブジェクトが配されたフレーム画像から成る動画像を表示する画像処理装置が行う画像処理方法であって、
前記画像処理装置の注視領域を特定する手段が、前記動画像を表示する為の表示画面におけるユーザの注視領域を特定する工程と、
前記画像処理装置のオブジェクトを特定する手段が、前記動画像中に登場する各オブジェクトのうち、前記注視領域の面積に対する割合が閾値以上となる面積を有し且つ画素値の分散値が閾値以上となるオブジェクトを、候補オブジェクトとして特定する工程と、
前記画像処理装置の特定手段が、前記候補オブジェクトのうち、フレーム画像間の動きの周期が規定範囲内且つ該動きの量が閾値以上となる候補オブジェクトを、補正対象オブジェクトとして特定する特定工程と、
前記画像処理装置の表示制御手段が、前記表示画面に表示した場合に前記補正対象オブジェクトが前記注視領域内に位置するフレーム画像を更新対象フレーム画像とし、該更新対象フレーム画像上で前記補正対象オブジェクトを再配置させて該更新対象フレーム画像を更新し、該更新した更新対象フレーム画像を前記表示画面に表示させる表示制御工程とを備え、
前記表示制御工程では、
それぞれの更新対象フレーム画像間の前記補正対象オブジェクトの動きの周期が閾値以下となるように、若しくは該動きの量が閾値よりも小さくなるように、前記それぞれの更新対象フレーム画像上における前記補正対象オブジェクトの配置位置を決定し、該決定した配置位置に前記補正対象オブジェクトを再配置する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
コンピュータを請求項1又は2に記載の画像処理装置が有する各手段として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−63547(P2012−63547A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207152(P2010−207152)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】