説明

画像処理装置および方法

【課題】観察者の視野角を考慮して画像を表示する。
【解決手段】画像処理装置は、観察者が原画像に含まれる対象領域を観察する際の観察者の視野角に関連する視野角関連情報を取得する視野角関連情報取得部と、視野角関連情報に応じて、原画像内の対象領域の色を補正する色補正部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同じ色を有し、異なる面積を有する2つの領域が観察される場合には、観察者は、該2つの領域の色を異なる色と認識する。具体的には、観察者は、面積の大きな領域の色が面積の小さな領域の色よりも明るく鮮やかである、と認識する。この現象は、面積効果と呼ばれている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−339602号公報
【特許文献2】特開2006−330094号公報
【非特許文献1】橋本美菜, 面積効果によるマッチング色の変化, 高知工科大学 情報システム工学科 平成16年度学士学位論文, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
観察者が画像表示装置によって表示面に表示された画像を観察する場合にも、面積効果が発生する。すなわち、観察者が表示面から第1の距離だけ離れた位置で画像内の領域を観察する場合と、観察者が表示面から第1の距離よりも大きな第2の距離だけ離れた位置で該画像内の該領域を観察する場合とでは、観察者によって認識される該画像内の該領域の色は、異なっている。これは、観察者と表示面との間の距離に応じて、観察者によって観察される画像内の領域の面積が異なっているためである。換言すれば、観察者と表示面との間の距離に応じて、観察者が画像内の領域を観察する際の観察者の視野角が異なっているためである。
【0005】
しかしながら、従来の画像表示装置では、観察者の視野角については、考慮されていなかった。
【0006】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、観察者の視野角を考慮して画像を表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 画像処理装置であって、
観察者が原画像に含まれる対象領域を観察する際の前記観察者の視野角に関連する視野角関連情報を取得する視野角関連情報取得部と、
前記視野角関連情報に応じて、前記原画像内の前記対象領域の色を補正する色補正部と、
を備える、画像処理装置。
【0009】
この画像処理装置では、視野角関連情報に応じて原画像内の対象領域の色が補正されるため、観察者の視野角を考慮して画像を表示することができる。
【0010】
[適用例2] 適用例1記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、実際の視野角で前記観察者によって認識される前記対象領域の色が、所定の視野角で前記観察者によって認識される前記対象領域の色と同じになるように、前記対象領域の色を補正する、画像処理装置。
【0011】
こうすれば、観察者は、実際の視野角に関わらず、所定の視野角で認識される色で、対象領域の色を認識することができる。
【0012】
[適用例3] 適用例1ないし2のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、前記対象領域の彩度を補正する、画像処理装置。
【0013】
[適用例4] 適用例1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、前記対象領域の輝度を補正する、画像処理装置。
【0014】
[適用例5] 適用例1ないし4のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記視野角関連情報は、
前記観察者と、前記補正済みの画像が表示される表示面と、の間の距離を示す情報を含む、画像処理装置。
【0015】
このように、視野角関連情報が観察者と表示面との間の距離を示す情報を含んでいれば、対象領域の色を適切に補正することができる。
【0016】
[適用例6] 適用例5記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、
複数種の色補正テーブルを備え、
前記色補正部は、前記対象領域のサイズに応じて、前記複数種の色補正テーブルのうちの少なくとも1種類の色補正テーブルを参照して、前記対象領域の色を補正する、画像処理装置。
【0017】
こうすれば、対象領域のサイズに応じた色補正テーブルが参照されるため、対象領域のサイズに応じて、対象領域の色を適切に補正することができる。
【0018】
[適用例7] 適用例1ないし6のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、前記原画像に含まれる複数の領域のうち、前記視野角関連情報に応じて設定される所定サイズ以上のサイズを有する領域を、前記対象領域として選択する、画像処理装置。
【0019】
観察者は、比較的小さなサイズを有する領域に関しては、視野角の変化に応じた色の変化をあまり認識しない。したがって、上記のようにすれば、色の補正を効率良く実行することができる。
【0020】
[適用例8] 画像表示装置であって、
適用例1ないし7のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記補正済みの画像を表示面に表示するための表示部と、
を備える、画像表示装置。
【0021】
なお、この発明は、画像処理装置および方法、画像表示装置および方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の種々の態様で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.視野角と色との関係:
B.プロジェクタの構成:
C.画像処理:
【0023】
A.視野角と色との関係:
実施例の具体的な説明に先行して、観察者の視野角と、観察者によって認識される色と、の関係について説明する。
【0024】
図1は、観察者の視野角を示す説明図である。図1(A)〜(C)では、観察者が対象物を観察する際の3種類の視野角が示されている。
【0025】
図1(A),(C)では、観察者は、第1の対象物を観察する。図1(B)では、観察者は、第2の対象物を観察する。第2の対象物の面積S2は、第1の対象物S1の面積よりも小さい。また、図1(A),(B)では、観察者は、対象物から距離D1だけ離れた位置で、対象物を観察する。図1(C)では、観察者は、対象物から距離D2だけ離れた位置で、対象物を観察する。第2の観察距離D2は、第1の観察距離D1よりも大きい。
【0026】
図1(A)では、観察者は、第1の視野角θ1で第1の対象物を観察する。図1(B)では、観察者は、第2の視野角θ2で第2の対象物を観察する。第2の視野角θ2は、第1の視野角θ1よりも小さい。これは、図1(A),(B)では、観察距離D1は同じであるが、第2の対象物の面積S2が、第1の対象物の面積S1よりも小さいためである。
【0027】
また、図1(C)では、観察者は、第3の視野角θ3で第1の対象物を観察している。第3の視野角θ3は、第1の視野角θ1よりも小さい。これは、図1(A),(C)では、対象物の面積S1は同じであるが、第2の観察距離D2が第1の観察距離D1よりも大きいためである。
【0028】
第1の対象物と第2の対象物とは、同じ色(例えば赤色)を有する。図1(A)の場合と図1(B)の場合とでは、観察者は、図1(A)の場合に、対象物の色がより明るく鮮やかである、と認識する。これは、第1の視野角θ1が、第2の視野角θ2よりも大きいためである。また、図1(A)の場合と図1(C)の場合とでは、観察者は、図1(A)の場合に、対象物の色がより明るく鮮やかである、と感じる。これは、第1の視野角θ1が、第3の視野角θ3よりも大きいためである。
【0029】
このように、観察者は、対象物の色が同じであるにも関わらず、視野角θ1〜θ3に応じて、対象物の色を異なる色と認識する。
【0030】
図2は、視野角と、観察者によって認識される色と、の関係を示す説明図である。具体的には、図2(A)は、視野角と、観察者によって認識される輝度と、の関係を示しており、図2(B)は、視野角と、観察者によって認識される彩度と、の関係を示している。
【0031】
図2(A)に示すように、視野角が比較的大きい場合には、観察者は、対象物の輝度が比較的高い、と認識する。より具体的には、視野角が0°〜20°の範囲では、観察者は、視野角が大きい程、輝度が大きい、と認識する。ただし、視野角が20°〜30°の範囲では、観察者は、視野角が大きい程、輝度が小さい、と認識する。
【0032】
また、図2(B)に示すように、視野角が比較的大きい場合には、観察者は、対象物の彩度が比較的高い、と認識する。より具体的には、視野角が0°〜20°の範囲では、観察者は、視野角が大きい程、彩度が大きい、と認識する。ただし、視野角が20°〜30°の範囲では、観察者は、視野角が大きい程、彩度が小さい、と認識する。
【0033】
なお、図2(A),(B)から分かるように、視野角の変化に応じた輝度の変化および彩度の変化は、視野角が0°〜20°の範囲では、比較的大きく、視野角が20°〜30°の範囲では、比較的小さい。このため、視野角が0°〜20°の範囲では、観察者は、輝度の変化および彩度の変化とを比較的認識し易いが、視野角が20°〜30°の範囲では、観察者は、輝度の変化および彩度の変化とを比較的認識し難い。図2(A),(B)から分かるように、視野角が20°〜30°の範囲では、観察者は、輝度の変化よりも、彩度の変化を、認識し易い。
【0034】
図2(A),(B)に示す傾向は、色相に関わらず、発生する。なお、観察者は、視野角の変化に応じた色相の変化を、殆ど認識しない。
【0035】
本実施例では、上記のような、視野角と、観察者によって認識される色と、の関係を考慮して、画像が表示される。具体的には、観察者の視野角に関わらず、換言すれば、観察者と画像の表示面との間の距離に関わらず、観察者が画像内の領域の色をほぼ同じと認識するように、工夫されている。
【0036】
B.プロジェクタの構成:
図3は、実施例におけるプロジェクタPJの概略構成を示す説明図である。このプロジェクタPJは、リア投写型のプロジェクタである。リア投写型のプロジェクタPJでは、スクリーンSCの背面側に画像を表す光が投写され、観察者は、スクリーンSCの表面側から画像を観察する。
【0037】
プロジェクタPJは、照明光学系110と、3つの液晶ライトバルブ120R,G,Bと、投写光学系130と、プロジェクタPJの全体を制御する制御回路200と、を備えている。なお、図1では、光学系の図示は、かなり簡略化されている。
【0038】
照明光学系110は、光源ランプ112を含んでいる。照明光学系110は、光源ランプ112から射出された光を3つの色光(赤色光,緑色光,青色光)に分離して、3つの色光を射出する。
【0039】
3つの液晶ライトバルブ120R,G,Bは、それぞれ、照明光学系110から射出された3つの色光を変調する。これにより、各液晶ライトバルブ120R,G,Bの射出面には、各色の画像を表す光(画像光)が形成される。
【0040】
投写光学系130は、3つの液晶ライトバルブ120R,G,Bに形成された3つの色の画像光をスクリーンSC上に投写して、スクリーンSC上にカラー画像を表示する。
【0041】
制御回路200は、CPUとメモリとを備えており、メモリには、画像処理部210として機能するコンピュータプログラムが格納されている。なお、画像処理部210の機能は、CPUがメモリ内のコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0042】
画像処理部210は、種々の画像処理を実行可能である。例えば、画像処理部210は、原画像を表す原画像データに対して画像処理を施し、処理済み画像を表す処理済み画像データを生成する。画像処理部210は、処理済み画像データを、液晶ライトバルブ120R,G,Bに供給する。
【0043】
画像処理部210は、視野角関連情報取得部220と、色補正部230と、を備えている。
【0044】
視野角関連情報取得部220は、観察者が原画像に含まれる対象領域を観察する際の観察者の視野角に関連する情報を取得する。本実施例では、視野角関連情報取得部220は、視野角関連情報として、観察者とスクリーンSCとの間の距離を取得する。
【0045】
色補正部230は、取得済みの視野角関連情報に応じて、原画像に含まれる対象領域に対して色補正処理を施す。色補正部230は、予め準備された複数種の色補正テーブルを備えており、該複数種の色補正テーブルを利用して色補正処理を実行する。この色補正処理によって、観察者は、視野角に依存せずに、換言すれば、観察者とスクリーンSCとの間の距離に依存せずに、スクリーンSC上に表示された対象領域の色を認識することができる。
【0046】
図4は、4種類の色補正テーブルT1〜T4を示す説明図である。図4(A)〜(D)に示す色補正テーブルT1〜T4は、それぞれ、視野角4°,10°,20°,30°用のテーブルである。
【0047】
各テーブルT1〜T4は、3次元ルックアップテーブルである。各テーブルT1〜T4には、複数組の入力値に対応して複数組の出力値が登録されている。具体的には、第1のテーブルT1(図4(A))には、複数組の入力値(H,L,S)に対応して複数組の出力値(H4,L4,S4)が登録されている。同様に、第2,第3,第4のテーブルT2,T3,T4(図4(B),(C),(D))には、それぞれ、複数組の入力値(H,L,S)に対応して、複数組の出力値(H10,L10,S10),(H20,L20,S20),(H30,L30,S30)が登録されている。なお、H,L,Sは、それぞれ、色相(Hue),輝度(Lightness),彩度(Saturation)の値を示す。
【0048】
色補正部230は、4つのテーブルT1〜T4のうちの1つのテーブルを参照することによって、入力値に対応する出力値を得ることができる。
【0049】
図4に示す4つのテーブルT1〜T4は、図2(A),(B)に示す傾向を考慮して作成されている。すなわち、4つのテーブルT1〜T4は、観察者が、視野角に関わらず、画像内の対象領域の色をほぼ同じと認識するように、作成されている。
【0050】
具体的には、本実施例では、視野角10°用の第2のテーブルT2が基準テーブルとして利用される。第2のテーブルT2は、視野角10°で観察者によって認識される対象領域の色が、目標の色に等しくなるように、設定される。なお、目標の色は、例えば、メーカによって定められる。そして、第1のテーブルT1は、視野角4°で観察者によって認識される対象領域の色が、視野角10°で観察者によって認識される対象領域の色と同じになるように、設定される。同様に、第3のテーブルT3は、視野角20°で認識される対象領域の色が、視野角10°で認識される色と同じになるように、設定される。第4のテーブルT4は、視野角30°で認識される対象領域の色が、視野角10°で認識される色と同じになるように、設定される。
【0051】
すなわち、図2(A),(B)から分かるように、視野角4°用の第1のテーブルT1は、出力輝度値L4および出力彩度値S4が入力輝度値Lおよび入力彩度値Sよりも大きくなるように、設定されている。また、視野角20°用の第3のテーブルT3と視野角30°用の第4のテーブルT4とは、それぞれ、出力輝度値L20,L30および出力彩度値S20,S30が入力輝度値Lおよび入力彩度値Sよりも大きくなるように、設定されている。前述のように、観察者は視野角の変化に応じた色相の変化を殆ど認識しないため、各テーブルT1〜T4に登録された各出力色相値H4,H10,H20,H30は互いに同じ値である。
【0052】
なお、本実施例では、基準テーブルである第2のテーブルT2に登録された入力値(H,L,S)と出力値(H10,L10,S10)とは、異なる値であるが、これに代えて、入力値(H,L,S)と出力値(H10,L10,S10)とは、同じ値であってもよい。また、本実施例では、出力色相値H4,H10,H20,H30は、入力色相値Hと同じ値であるが、異なる値であってもよい。
【0053】
なお、本実施例における照明光学系110と3つの液晶ライトバルブ120R,G,Bと投写光学系130とが本発明における表示部に相当し、スクリーンSCが本発明における表示面に相当する。
【0054】
C.画像処理:
図5は、画像処理部210の一連の処理の手順を示すフローチャートである。なお、図5の処理は、画像処理部210によって提供されるメニュー画面を介して、観察者(ユーザ)が色補正処理の実行を指示した際に実行される。
【0055】
ステップS110では、視野角関連情報取得部220は、視野角関連情報を取得する。前述のように、本実施例では、視野角関連情報として、観察者とスクリーンSCとの間の距離を示す情報(距離情報)が取得される。具体的には、視野角関連情報取得部220は、画像処理部210によって準備されるインタフェース画面を介して観察者(ユーザ)によって入力された距離情報を取得する。
【0056】
ステップS120では、色補正部230は、原画像内において、色補正処理の対象領域を特定する。具体的には、まず、原画像が複数の色領域に区分される。各色領域は、ほぼ同じ色を有する領域であり、連続する複数の画素を含んでいる。色領域の区分は、原画像を構成する各画素の色に基づいて、換言すれば、原画像データ(RGBデータ)を構成する各画素データの値(R,G,B)に基づいて、実行される。そして、区分された複数の色領域のうち、所定のサイズ(画素数)以上の領域が色補正処理の対象領域として特定される。
【0057】
図6は、図5のステップS120の処理内容を示す説明図である。図6(A)は、原画像データによって表される原画像を示している。図6(A)では、原画像に含まれる比較的大きなサイズを有する3つの色領域Wa,Wb,Wcが例示されている。
【0058】
図6(B)は、色領域と画素数との関係を示している。図中、横軸は、3つの色領域Wa,Wb,Wcを示しており、縦軸は、画素数Nを示している。縦軸には、値Na,Nb,Nc,Ndが示されている。第1の色領域Waの画素数Nは、値Naより小さい。第2の色領域Wbの画素数Nは、値Naよりも大きく値Nbよりも小さい。第3の色領域Wcの画素数Nは、値Nbよりも大きく値Ncよりも小さい。
【0059】
ステップS120では、上記のように、3つの色領域Wa,Wb,Wcの画素数Nが算出される。そして、3つの色領域Wa,Wb,Wcのうち、画素数Nが値Na以上である2つの色領域Wb,Wcが、色補正処理の対象領域として特定される。
【0060】
ところで、値Na,Nb,Nc,Ndは、それぞれ、視野角4°,10°,20°,30°に対応する値である。例えば、画素数Na個の領域は、観察距離Dにおいて、観察者によって視野角4°で観察される領域である。また、画素数Nc個の領域は、該観察距離Dにおいて、観察者によって視野角20°で観察される領域である。
【0061】
上記の説明から分かるように、値Na,Nb,Nc,Ndは、観察距離Dに応じて決定される値である。具体的には、図1(A)〜(C)から分かるように、視野角は、実際には、スクリーンSC上における対象領域の面積と、観察者とスクリーンSCとの間の観察距離Dと、に基づいて、定まる。なお、対象領域の面積は、対象領域の画素数と、スクリーンSCにおける1画素あたりの面積と、の積で表される。リアプロジェクタPJでは、スクリーンSCにおける1画素あたりの面積は一定であり、既知である。したがって、ステップS110で得られる観察距離Dを用いれば、視野角4°,10°,20°,30°に対応する画素数の値Na,Nb,Nc,Ndを求めることができる。
【0062】
なお、本実施例では、複数組の観察距離Dと4つの値Na,Nb,Nc,Ndとの関係が、予め図示しないテーブルに格納されている。視野角関連情報取得部220は、ステップS110において、観察距離Dを取得した際に、該テーブルを参照して、観察距離Dに対応する4つの値Na,Nb,Nc,Ndを取得する。
【0063】
ステップS130(図5)では、色補正部230は、原画像データ(RGBデータ)に対して色補正処理を実行して、補正済み画像データ(RGBデータ)を生成する。
【0064】
ステップS140(図5)では、画像処理部210は、補正済み画像データを液晶ライトバルブR,G,Bに供給する。このとき、スクリーンSC上には、補正済み画像データによって表される補正済み画像が表示される。
【0065】
なお、ステップS120〜S140の処理は、順次与えられる原画像毎に実行される。
【0066】
図7は、図5のステップS130の色補正処理の具体的な内容を示すフローチャートである。
【0067】
ステップS202では、RGB色空間からHLS色空間への変換処理が実行される。この処理によって、原画像データ(RGBデータ)から第1の中間画像データ(HLSデータ)が生成される。なお、HLS色空間は、色相(Hue),輝度(Lightness),彩度(Saturation)の3つの成分からなる色空間であり、HSL色空間,HSI色空間とも呼ばれている。
【0068】
ステップS204では、第1の中間画像データ(HLSデータ)の画素が順次選択される。
【0069】
ステップS206では、ステップS204で選択された画素が、ステップS120で特定された対象領域内の画素であるか否かが判断される。選択された画素が対象領域内の画素である場合には、ステップS208に進み、選択された画素が対象領域内の画素でない場合には、ステップS210に進む。
【0070】
ステップS208では、選択された画素に対して、色補正処理が実行される。色補正処理では、該選択された画素を含む対象領域の画素数Nに応じて、1つまたは2つの色補正テーブルが参照される。そして、入力値(H,L,S)に対する補正済みの値が決定される。
【0071】
具体的には、選択された画素を含む対象領域の画素数Nが4つの値Na,Nb,Nc,Ndのいずれかと等しい場合には、1つの色補正テーブルが選択される。例えば、選択された画素を含む対象領域の画素数Nが値Naである場合には、視野角4°用の第1のテーブルT1が選択される。このとき、色補正部230は、第1のテーブルT1を参照して、入力値(H,L,S)に対応する出力値(H4,L4,S4)を、補正済みの値として決定する。
【0072】
一方、選択された画素を含む対象領域の画素数Nが4つの値Na,Nb,Nc,Ndと等しくない場合には、2つのテーブルが選択されて、補間処理が実行される。例えば、選択された画素を含む対象領域(例えば色領域Wc)の画素数Nが値Nbよりも大きく値Ncよりも小さい場合には、視野角10°用の第2のテーブルT2と、視野角20°用の第3のテーブルT3と、が選択される。このとき、色補正部230は、第2のテーブルT2を参照して、入力値(H,L,S)に対応する第1の出力値(H10,L10,S10)を取得すると共に、第3のテーブルT3を参照して、入力値(H,L,S)に対応する第2の出力値(H20,L20,S20)を取得する。そして、色補正部230は、2つの出力値(H10,L10,S10),(H20,L20,S20)を用いて補間処理を実行し、補正済みの値を求める。
【0073】
ステップS208の処理を実行することによって、選択された画素の色、具体的には、選択された画素の輝度および彩度が変更される。
【0074】
ステップS210では、第1の中間画像データ(HLSデータ)内に未選択の画素が存在するか否かが判断される。未選択の画素が存在する場合には、ステップS204に戻り、ステップS204〜S210の処理が繰り返し実行される。一方、未選択の画素が存在しない場合には、ステップS212に進む。
【0075】
ステップS204〜S210の処理によって、第1の中間画像データ(HLSデータ)から第2の中間画像データ(HLSデータ)が生成される。
【0076】
ステップS212では、HLS色空間からRGB色空間への変換処理が実行される。この処理によって、第2の中間画像データ(HLSデータ)から補正済み画像データ(RGBデータ)が生成される。
【0077】
上記のように、図7の処理(すなわち図5のステップS130の処理)を実行することによって、原画像データ(RGBデータ)に対して色補正処理が施された補正済み画像データ(RGBデータ)が得られる。
【0078】
なお、本実施例では、画素数Na未満の色領域内の画素に対してはステップS208の色補正処理は施されない。これは、比較的小さなサイズを有する色領域については、観察者は、視野角の変化に応じた色(輝度・彩度)の変化をあまり認識しないためである。
【0079】
以上説明したように、本実施例では、原画像に含まれる対象領域を観察する際の観察者の視野角に関連する距離情報が取得され、該距離情報に応じて、原画像内の対象領域の色が補正される。このため、観察者の視野角を考慮して、スクリーンSC上に補正済み画像を表示することが可能となる。
【0080】
特に、本実施例では、観察者によって実際の視野角で認識される対象領域の色が、観察者によって視野角10°で認識される対象領域の色と同じになるように、色補正処理が実行されている。このため、観察者は、実際の視野角に関わらず、換言すれば、観察者とスクリーンSCとの間の実際の距離に関わらず、視野角10°で認識される色で、対象領域の色を認識することができる。
【0081】
また、本実施例では、4種類の色補正テーブルT1〜T4が利用されており、対象領域のサイズに応じた1つまたは2つの色補正テーブルが参照されるため、対象領域のサイズに応じて、対象領域の色を適切に補正することができる。
【0082】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0083】
(1)上記実施例では、ステップS110において、観察者によって距離情報が入力されているが、これに代えて、プロジェクタPJが距離センサを備え、距離センサが観察者とスクリーンSCとの間の距離を検出してもよい。
【0084】
(2)上記実施例では、視野角関連情報として、観察者とスクリーンSCとの間の距離を示す情報が利用されているが、これに代えて、観察者がスクリーンSCの全体を見るときの観察者の視野角(全視野角)を示す情報が利用されてもよい。この場合にも、画像の全画素数が既知であるため、全視野角に応じて、視野角4°,10°,20°,30°に対応する画素数Na,Nb,Nc,Ndを求めることができる。
【0085】
すなわち、一般には、観察者が原画像に含まれる対象領域を観察する際の観察者の視野角に関連する視野角関連情報が取得されればよい。
【0086】
ただし、観察者が全視野角を見積もって入力するのは、観察者が距離情報を見積もって入力するよりも困難である。したがって、上記実施例にように、観察者が距離情報を入力すれば、対象領域の色をより適切に補正することができるという利点がある。
【0087】
(3)上記実施例では、原画像に含まれる複数の色領域のうち、視野角4°に対応する画素数Na個未満の色領域は、色補正処理の対象領域として選択されていないが、これに代えて、選択されてもよい。こうすれば、原画像に含まれるすべての色領域の色を補正することができる。なお、この場合には、例えば、画素数Na個未満の色領域の色は、視野角4°用の第1の色補正テーブルT1を用いて、補正されればよい。
【0088】
一般には、原画像に含まれる少なくとも一部の対象領域の色が補正されればよい。
【0089】
ただし、上記実施例のように、複数の色領域のうちの比較的大きなサイズを有する色領域が対象領域として選択されれば、色補正処理を効率良く実行することができるという利点がある。
【0090】
(4)上記実施例では、対象領域の輝度と彩度とが補正されているが、これに代えて、彩度のみが補正されるようにしてもよいし、輝度のみが補正されるようにしてもよい。ただし、観察者が認識する視野角の変化に応じた色の変化を考慮すると、少なくとも対象領域の彩度を補正することが好ましい。
【0091】
(5)上記実施例では、プロジェクタは、液晶ライトバルブを備えているが、これに代えて、DMD(ディジタル・マイクロミラー・デバイス)(TI社の商標)などのマイクロミラー型光変調装置を備えていてもよい。あるいは、プロジェクタは、高輝度ブラウン管や、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル、発光ダイオード型ディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイパネルなどを備えていてもよい。このように、表示部としては、非自発光型のデバイスや、自発光型のデバイスを用いることができる。
【0092】
(6)上記実施例では、リア投写型のプロジェクタに本発明が適用されているが、これに代えて、直視型の画像表示装置に本発明が適用されてもよい。あるいは、フロント投写型のプロジェクタに本発明が適用されてもよい。フロント投写型のプロジェクタでは、スクリーンSCの表面側に画像を表す光が投写され、観察者は、スクリーンSCの表面側から画像を観察する。
【0093】
フロント投写型のプロジェクタが利用される場合にも、ステップS110において、視野角関連情報として、観察者と表示面(スクリーン)との間の距離情報が取得されればよい。
【0094】
ところで、リア投写型のプロジェクタや直視型の画像表示装置では、通常、画像のサイズは表示面(スクリーン)のサイズと一致しており、表示面における1画素あたりの面積は一定である。しかしながら、フロント投写型のプロジェクタでは、通常、画像のサイズは表示面(スクリーン)のサイズよりも小さく、画像のサイズは変更され得る。例えば、画像のサイズは、プロジェクタと表示面(スクリーン)との間の距離に応じて、変更され得る。また、画像のサイズは、投写レンズ(ズームレンズ)の倍率によって、変更され得る。このため、フロント投写型のプロジェクタが利用される場合には、表示面(スクリーン)における1画素あたりの面積は変更され得る。
【0095】
したがって、フロント投写型のプロジェクタに本発明が適用される場合には、プロジェクタは、視野角関連情報として、さらに、プロジェクタと表示面(スクリーン)との間の距離情報と、投写レンズの倍率と、を取得することが好ましい。なお、プロジェクタと表示面(スクリーン)との間の距離は、例えば、インタフェース画面を介して観察者(ユーザ)によって入力されてもよいし、距離センサによって計測されてもよい。また、投写レンズの倍率は、例えば、投写レンズのズーム位置を検出するためのセンサによって検出されてもよいし、インタフェース画面を介して観察者(ユーザ)によって入力されてもよい。こうすれば、プロジェクタは、プロジェクタと表示面との間の距離情報と、投写レンズの倍率情報と、に応じて、表示面(スクリーン)における1画素あたりの面積を決定することができる。
【0096】
一般には、本発明は、画像処理装置と、補正済みの画像を表示面に表示するための表示部と、を備える画像表示装置に適用可能である。
【0097】
(7)上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】観察者の視野角を示す説明図である。
【図2】視野角と、観察者によって認識される色と、の関係を示す説明図である。
【図3】実施例におけるプロジェクタPJの概略構成を示す説明図である。
【図4】4種類の色補正テーブルを示す説明図である。
【図5】画像処理部210の一連の処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図5のステップS120の処理内容を示す説明図である。
【図7】図5のステップS130の色補正処理の具体的な内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
110…照明光学系
112…光源ランプ
120R,G,B…液晶ライトバルブ
130…投写光学系
200…制御回路
210…画像処理部
220…視野角関連情報取得部
230…色補正部
PJ…プロジェクタ
SC…スクリーン
T1〜T4…色補正テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
観察者が原画像に含まれる対象領域を観察する際の前記観察者の視野角に関連する視野角関連情報を取得する視野角関連情報取得部と、
前記視野角関連情報に応じて、前記原画像内の前記対象領域の色を補正する色補正部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、実際の視野角で前記観察者によって認識される前記対象領域の色が、所定の視野角で前記観察者によって認識される前記対象領域の色と同じになるように、前記対象領域の色を補正する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、前記対象領域の彩度を補正する、画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、前記対象領域の輝度を補正する、画像処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記視野角関連情報は、
前記観察者と、前記補正済みの画像が表示される表示面と、の間の距離を示す情報を含む、画像処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、
複数種の色補正テーブルを備え、
前記色補正部は、前記対象領域のサイズに応じて、前記複数種の色補正テーブルのうちの少なくとも1種類の色補正テーブルを参照して、前記対象領域の色を補正する、画像処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記色補正部は、前記原画像に含まれる複数の領域のうち、前記視野角関連情報に応じて設定される所定サイズ以上のサイズを有する領域を、前記対象領域として選択する、画像処理装置。
【請求項8】
画像表示装置であって、
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記補正済みの画像を表示面に表示するための表示部と、
を備える、画像表示装置。
【請求項9】
画像処理方法であって、
観察者が原画像に含まれる対象領域を観察する際の前記観察者の視野角に関連する視野角関連情報を取得する工程と、
前記視野角関連情報に応じて、前記原画像内の前記対象領域の色を補正する工程と、
を備える、画像処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、画像処理を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
観察者が原画像に含まれる対象領域を観察する際の前記観察者の視野角に関連する視野角関連情報を取得する機能と、
前記視野角関連情報に応じて、前記原画像内の前記対象領域の色を補正する機能と、
を前記コンピュータに実現させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−139617(P2009−139617A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315528(P2007−315528)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】