説明

画像処理装置および画像処理方法、画像形成装置

【課題】 画像が周期性を持つ場合でも、スクリーン処理によるモアレの発生を抑えて高画質の画像再現を可能にする。
【解決手段】 モアレ判定部5は、後段色変換部4から出力される、出力色空間であるYMCKの画像信号から、画像信号中のパターン周期及び方向を検出する。そして、その画像信号中のパターン周期及び方向と、スクリーン処理部7で通常使用するスクリーンのスクリーン線数及びスクリーン角度とを比較して、モアレの出現の有無を判定し、その結果をTAG信号として後段色補正部6及びスクリーン処理部7に伝える。スクリーン処理部7はTAG信号に従って、モアレが出現する部分及び色について、使用するスクリーンを切り替える。また、後段色補正部6はTAG信号に従ってパラメータを変更し、スクリーンの切り替えによる影響を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像に対してスクリーン処理を行う画像処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にカラー画像を画像形成装置で形成する場合には、色材の濃度を変更できないため、カラー画像の色材に対応する色成分毎にスクリーン処理を行い、階調値を例えば2値の擬似中間調画像に変換して画像を形成する。スクリーン処理には、点(画素の集まり)の大きさを変化させて階調を表現するAMスクリーンと、点(画素)の密度を変化させて階調を表現するFMスクリーンとがある。AMスクリーンの代表的なものにはディザマトリクスを用いる方法などがあり、またFMスクリーンの代表的なものには誤差拡散法などがある。画像形成方法として電子写真方式を用いる場合、それぞれの画素ごとの再現が困難であるためAMスクリーンが用いられることが多い。
【0003】
AMスクリーンを用いる場合、一定の密度(スクリーン線数)で点を配置するため、スクリーン処理後の画像は周期性を有することになる。カラー画像の場合、それぞれの色成分毎にスクリーン処理を施すが、色成分毎にスクリーン処理を施した結果を重ねてカラー画像を形成すると、それぞれの色成分に適用したスクリーンの周期性によってモアレ(干渉縞)が生じることがある。そのため、それぞれの色成分において用いるスクリーン角度(点を配置する方向)を調整し、モアレの発生を抑えている。
【0004】
さらに、このようなAMスクリーンを用いる場合、もとのカラー画像中のパターンが周期性を持っていると、そのパターン周期とスクリーンの周期が干渉し、モアレとなって現れる場合がある。このモアレはたいていの場合において、出力者の意図しないディフェクトとなるため、このような原因によって生じるモアレについても、出現させ得ないように何らかの処理を加えることが必要となる。
【0005】
このような課題に対し、例えば上述の周期性を持たない誤差拡散スクリーンを画像全面に使用し、原稿との干渉をなくすことが行われる。しかし、上述のように画像形成方式として電子写真方式を用いる場合には、誤差拡散スクリーンではそれぞれのドットの形成が困難であるため、粒状性が悪化してしまう。別の方法として、画像に平滑化フィルタを施し、周期性を弱める処理が用いられている。しかし、平滑化フィルタによって画像の鮮鋭度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
このような問題に対して、特許文献1では、原稿画像の周期性を有する角度をRGB色空間にて検出し、その周期性の角度に応じて、各色成分のスクリーンを原稿画像と最も離れた角度に入れ替えるという手法が提案されている。ただし、この手法は原稿画像とスクリーン以外に考慮しなければならない周期干渉が無く、各色成分のスクリーン角度を自由に配置できるシステムであることが前提となる。そのため、昨今の画像形成装置のように例えばデジタルのレジ補正やAC−BCR(帯電器)等、周期成分を持つ要素が他に存在する場合、これらとの干渉も考慮しなければならないため、スクリーンの配置も制限されることになる。このような場合、特許文献1に記載されている手法を用いると、かえって画質ディフェクトを生み出す結果となる。また、デフォルトのスクリーン配置は、出力画像を良好に再現するねらいに沿って設定されており、特許文献1のように全体のスクリーンを入れ替えると、それらのねらいを崩す結果となりかねない。さらに、そもそもRGB色空間と画像形成装置で用いるYMCK色空間との空間周波数上の特徴量が異なるため、特許文献1に記載されているように画像の周期性の角度の検知をRGB色空間で行っても、YMCKのそれぞれに対応するスクリーン角度を正確に検知することができないという問題がある。
【0007】
以上のことから、特許文献1に記載されている手法では画像中の周期性とスクリーンの周期との間で発生するモアレを十分に回避することができなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2001−45306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、画像が周期性を持つ場合でも、スクリーン処理によるモアレの発生を抑えて高画質の画像再現を可能にした画像処理装置及び画像処理方法を提供するとともに、そのような画像処理装置でスクリーン処理された画像を形成する画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像処理装置及び画像処理方法では、入力された画像信号中のパターン周期あるいはさらにその方向を、YMCK色空間などの出力色空間において検出する。そして、検出したパターン周期、方向と、例えば通常用いるスクリーンの周期(スクリーン線数)及び方向(スクリーン角度)により、例えば干渉レベルを求めてモアレの出現の有無を判定し、必要に応じてスクリーンの切り替えを行って、画像信号に対してスクリーン処理を行う。例えばモアレが出現すると判定された場合には、モアレの発生を抑えられる誤差拡散スクリーンに切り替えて、スクリーン処理を行うことができる。なお、画像信号中のパターン周期や方向を検出できない場合には、強制的にモアレが発生しないものとして処理すればよい。
【0011】
また、スクリーンの切り替えは、モアレが出現すると判定された部分(モアレ出現部分)について行うように構成することができる。あるいは、モアレの出現を色成分ごとに判定し、モアレが出現すると判定された色成分について、スクリーンを切り替えるように構成することができる。
【0012】
さらに、スクリーン処理におけるスクリーンの切り替えにより生じる階調特性や鮮鋭性等の差異を吸収するように、スクリーンを切り替える場合には画像信号に対して補正処理を施すとよい。この補正処理の際のパラメータを、モアレの出現の有無の判定結果に従って設定することができる。
【0013】
このようなモアレに対するスクリーンの切り替えのための処理や補正処理などを行うか否かを、ユーザの指示に従うように構成することができる。このとき、もともと誤差拡散スクリーンを使用する原稿モードなど、スクリーンの切り替えが発生しない原稿モードの場合には、モアレが発生しないものとして処理を行うことができる。その場合、その旨をユーザに通知するとよい。
【0014】
さらに本発明の画像形成装置では、上述のような本発明の画像処理装置によってスクリーン処理を行った画像を画像形成手段で形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、入力された画像信号中のパターン周期や方向を、出力色空間で検出するので、モアレの出現の有無を正確に判定することが可能である。また、スクリーンの切り替えを、モアレ出現部分あるいはモアレが出現する色成分についてのみ行うので、もともとのスクリーン構成による画質を損なうことなく、自動的にモアレを除去することができるという効果がある。例えば全てのスクリーンを誤差拡散スクリーンに切り替える場合に比べて、画像全体の粒状感を損なうことなく、モアレを除去することができる。また、例えば従来のようにモアレの低減のために平滑化フィルタを用いる必要もなく、結果として画像全体の鮮鋭度を向上させる効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の実施の一形態を含む複写装置の一例を示すブロック図、図2は、モアレ判定部の一例を示すブロック図である。図中、1は画像入力部、2は前段色補正部、3は前段色変換部、4は後段色変換部、5はモアレ判定部、6は後段色補正部、7はスクリーン処理部、8は画像形成部、9はユーザ指示部、11はFFT部、12はモアレ出現判定部である。
【0017】
画像入力部1は、原稿上の画像を読み取って、この例ではRGB色空間の画像信号を出力する。前段色補正部2は、画像入力部1の読取特性に応じた色補正を行う。前段色変換部3は、RGB色空間の画像信号を、装置に依存しないL* * * 色空間の画像信号に変換する。後段色変換部4は、L* * * 色空間の画像信号を出力色空間であるYMCK色空間の画像信号に変換する。このとき、画像形成部8の出力特性に応じた色補正処理を含む各種の色補正処理なども行う。後段色変換部4から出力されるYMCK色空間の画像信号は、後段色補正部6とともにモアレ判定部5にも入力される。
【0018】
モアレ判定部5及びスクリーン処理部7,さらには後段色補正部6が本発明の画像処理装置に対応する構成である。モアレ判定部5は、YMCK色空間の画像信号から、スクリーン処理部7で通常用いるスクリーンで処理した場合にモアレが出現するか否かを判定し、モアレが出現する場合には、そのモアレ出現部分について、あるいはモアレが出現する色成分について、スクリーンの切り替えをスクリーン処理部7に指示する。それとともに、スクリーンの切り替えによって生じる階調特性や鮮鋭性等の差異を吸収するように、後段色補正部6に対して補正処理の際のパラメータを設定する。
【0019】
ここで、モアレ判定部におけるモアレの出現判定を、出力色空間であるYMCK色空間において行っている。これは、画像形成部8ではYMCK毎に画像が形成されているので、空間周波数上の特徴量を正確に検出するためには、同様にYMCK色空間上で検出を行う必要があることによるものである。例えば、RGB空間上でこの処理も実施しても正確な検出は難しい。図3は、RGB色空間とYMCK色空間における画像信号の比較例の説明図である。図3は、C、M、Y、R、G、Bのそれぞれの色のハーフトーンを、ある画像入力装置にて読み取った画像信号について、RGB色空間の画像信号とYMCK色空間の画像信号を比較したものである。図3(A)からわかるように、YMCK色空間の値は、各色の特徴量差がよく表れている。しかし、図3(B)に示すようにRGB色空間の値は特徴量差が小さい。このYMCK色空間の値は、図1に示した構成においても各処理部を経て得られているように、画像入力装置の特性や、入力後の処理パラメータによって決定されるため、必ずしもこの例のような値が得られるわけではない。しかし、概ね各色のバランスは大きく崩れないと考えられる。この事からもYMCK色空間の画像信号を対象とすれば、正確な検出を行うことができると言える。
【0020】
このモアレ判定部5は、例えば図2に示すように、FFT部11及びモアレ出現判定部12を含んで構成することができる。FFT部11は、後段色変換部4から出力されるYMCK色空間の画像信号を内部のRAMに記憶させた後、FFT処理によりパワースペクトルを算出する。そしてそのパワースペクトルから、画像信号中のパターン周期や方向を検出し、モアレ出現判定部12に出力する。なお、内部のRAMは、画像信号の周期構造を検出できる必要充分な容量を有しているものとする。
【0021】
モアレ出現判定部12は、あらかじめ設定されているスクリーン処理部7で通常用いるスクリーンのスクリーン線数及びスクリーン角度を取得し、そのスクリーン線数及びスクリーン角度と、FFT部11で検出した画像信号のパターン周期や方向を比較し、モアレが出現するか否かを判定し、その判定結果を、TAG信号として出力する。このTAG信号として、例えばモアレが出現すると判定された部分についてはTAG:1を、モアレが出現しないと判定された部分についてはTAG:0を、それぞれの色成分ごとに出力することができる。このTAG信号は後段色補正部6及びスクリーン処理部7に入力される。なお、もともとスクリーン処理部7で画像全面に誤差拡散スクリーンなどのFMスクリーンを使用する原稿モードである場合には、モアレは出現しないものと判定する。
【0022】
後段色補正部6は、モアレ判定部5のモアレ出現判定部12から出力されるTAG信号を受け取り、TAG信号に従ってYMCK色空間の画像信号に対して色補正処理を行う。特に、スクリーン処理部7において用いるスクリーンを切り替えた場合、通常のスクリーンで処理した場合と比べて階調特性や鮮鋭性等の差異が生じる場合がある。この差異を吸収するように色補正のためのパラメータをTAG信号によって切り替えて、色補正処理を行う。例えば、TAG:1の部分についてはモアレ出現部用パラメータを、TAG:0の部分には非モアレ出現部用パラメータを適用する。これにより、モアレ出現部と非モアレ出現部とで異なるスクリーンを用いたことによって生じる差異を吸収することができる。なお、上述のようなスクリーンの切り替えに伴う補正パラメータの切り替えは、ユーザ指示部9からの指示によりモアレの除去が指示されている場合に行う。
【0023】
スクリーン処理部7は、後段色補正部6から出力されるYMCK色空間の画像信号に対してスクリーン処理を行う。モアレ判定部5のモアレ出現判定部12から出力されるTAG信号を受け取り、TAG信号に従って、モアレが出現する部分、色成分については、通常用いるスクリーンから別のスクリーン、例えば誤差拡散スクリーンなどに切り替えてスクリーン処理を行う。例えば、TAG:0の場合には通常用いることとして設定されているAMスクリーンを用いて処理を行い、TAG:1の場合には誤差拡散スクリーンを用いて処理を行うことができる。誤差拡散スクリーンは、周期成分を持たないため、モアレ出現の要因である周期成分を除去することができる。なお、上述のようなモアレの出現判定に従ったスクリーンの切り替えは、ユーザ指示部9からの指示によりモアレの除去が指示されている場合に行う。
【0024】
画像形成部8は、例えば電子写真方式の画像形成エンジンであり、スクリーン処理部7でスクリーン処理が施された各色成分の画像信号を受け取って画像を形成する。このとき、スクリーン処理部7でモアレが出現しないようにスクリーン処理を施しているので、この画像形成部8で形成した画像にもモアレは出現しない。また、モアレが出現する部分あるいはモアレが出現する色成分のみについてスクリーンを切り替えているだけであるので、画像全体として異なるスクリーンを用いたことによる影響を受けることはなく、大きく粒状性が損なわれることもない。逆にモアレが出現しないことによる画質の向上を図ることができる。
【0025】
ユーザ指示部9は、ユーザが本装置に対して指示を与え、また本装置からのメッセージなどを提示することができる。ユーザからの指示の一つとして、モアレの除去を行うか否かを指示することができる。この指示は、スクリーン処理部7及び後段色補正部6に伝えられる。あるいは、モアレ判定部5に指示を伝えて、モアレ判定部5からの指示の内容に応じてスクリーン処理部7及び後段色補正部6の切り替えを行ってもよい。なお、スクリーン処理部7でもともと画像全面に誤差拡散スクリーンを使用する原稿モードである場合には、モアレの除去を行わない旨を表示するなどにより、ユーザに通知する。
【0026】
次に、本発明の実施の一形態を含む複写装置の一例における動作の一例について説明する。ユーザはユーザ指示部9に対して各種の設定を行う。このとき、モアレの除去を指示することができる。図4は、ユーザ指示部によるモアレ除去設定画面の一例の説明図である。図中、21は「する」ボタン、22は「しない」ボタン、23はメッセージである。例えば図4に示すようなモアレ除去設定画面をユーザ指示部9に表示し、ユーザが「する」ボタン21あるいは「しない」ボタン22を操作することによって、モアレ除去を行うか否かを指示することができる。「する」ボタン21が操作された場合には、必要に応じてモアレを除去するためのスクリーンの切り替えや階調補正のためのパラメータの切り替えなどを行う。「しない」ボタン22が操作された場合には、モアレが発生すると判定される場合でも、スクリーンの切り替え及びスクリーン切り替えに伴う階調補正用のパラメータの切り替えは行わない。
【0027】
なお、もともと画像全面に誤差拡散スクリーンが適用される原稿モード、例えば、地図モードや文字モードなどがユーザによって選択されている場合は、モアレが出現しないため、本発明のモアレ除去処理を実施する必要が無い。このような場合には、メッセージ23として示しているように、「この処理は、xxモードには実施されません」などといったメッセージを「する」ボタン21の近辺に表示することによりユーザに通知する。ここで、「xxモード」には、画像全面に誤差拡散スクリーンが適用される原稿モード名が入る。
【0028】
ユーザ指示部9から動作開始が指示されると、画像入力部1が原稿上の画像を読み取る。画像入力部1で読み取られた画像信号は、前段色補正部2、前段色変換部3、後段色変換4を経て、YMCKの画像信号へと変換される。変換されたYMCKの画像信号は、モアレ判定部5に入力されるとともに、後段色補正部6にも入力される。
【0029】
図5は、本発明の実施の一形態におけるモアレ判定部5の動作の一例を示すフローチャートである。なお、以下のモアレ判定処理は、モアレ判定部5に入力される色成分毎に実施される。
【0030】
後段色変換部4から出力されたYMCKの画像信号は、FFT部11内にあるRAMに入力される。S31において、FFT部11はFFT処理によってパワースペクトルを算出し、そのパワースペクトルからパターン周期やパターンの方向を検出する。S32において、画像信号のパターン周期や方向を正常に検出できたか否かを判定し、正常に検出できた場合には、S33において、検出した画像信号のパターン周期や方向をモアレ出現判定部12に出力する。なお、正常に検出できなかった場合には、S37において、未検出である旨をモアレ出現判定部12に出力する。
【0031】
モアレ出現判定部12では、FFT部11から画像信号のパターン周期や方向が渡された場合には、S34において、スクリーン処理部7で通常用いるスクリーンに対応してあらかじめ設定されているのスクリーン線数及びスクリーン角度を取り出し、FFT部11から渡された画像信号のパターン周期や方向との干渉によりモアレが出現するか否かをS35で判定する。
【0032】
図6は、モアレの出現判定の一例の概念図である。FFT部11で例えば2次元FFT処理を行うことによって、ある周波数及び方向のパターンは周波数平面uvにおける点に変換される。AMスクリーンの場合には画素のかたまりが所定の間隔で所定の方向に配列される。従って、周波数及び方向を有しており、用いるスクリーンのスクリーン線数及びスクリーン角度から、周波数平面における点が求められる。このとき、スクリーン線数は原点からの距離となり、スクリーン角度はu軸あるいはv軸からの角度となって現れる。
【0033】
例えば図6において×印で示した点が、スクリーン処理部7で通常用いるスクリーンのスクリーン線数及びスクリーン角度から求められる周波数平面上の点であるとすると、この点及びその近傍の点となるようなパターンが存在する場合、そのパターンとスクリーンとの間でモアレが発生する。従って、FFT部11で求めた画像信号をFFT処理を行うことによって得られる周波数平面上の点が、この×印の点及びその近傍に存在する場合にモアレが発生すると判断し、それ以外の場合にはモアレは発生しないものと判断すればよい。
【0034】
このような判定は、FFT部11から出力される画像信号中のパターン周期及び方向と、スクリーン処理部7で通常用いるスクリーンのスクリーン線数及びスクリーン角度とを比較すればよい。モアレ出現判定部12は、S35でモアレが出現すると判断した場合には、S36において、モアレ出現部分であるとして例えばTAG:1を出力する。また、S35でモアレが出現しないと判断した場合には、S38において、非モアレ出現部分であるとして例えばTAG:0を出力する。
【0035】
なお、S37でFFT部11から画像信号のパターン周期や方向が未検出であった旨が出力された場合には、モアレ出現判定部12はS38において強制的に非モアレ出現部分であるとして例えばTAG:0を出力する。これは、パターン周期や方向が正常に検出されない場合には、
1.画像が周期構造を持っていない、
2.検出できない程、高周期である、
3.検知できない程薄い、もしくは濃い(埋まっている)
のいずれかと考えられる。このような場合には、いずれにしてもモアレは出現しないと判断できるため、ここでは非モアレ出現部分としている。
【0036】
モアレ判定部5から出力されたTAG信号は、後段色補正部6及びスクリーン処理部7にそれぞれ入力される。後段色補正部6では、ユーザ指示部9からモアレの除去が指示され、スクリーン処理部7でもともと誤差拡散スクリーンを用いる原稿モードでない場合に、TAG信号に従って補正用のパラメータの切り替えを行う。補正用のパラメータの切り替えは、TAG:1の部分についてはモアレ出現部用の補正パラメータを、TAG:0の部分には非モアレ出現部用の補正パラメータを適用すればよい。そして、後段色変換部4から出力されたYMCKの画像信号に対して、設定されたパラメータに従った色補正処理を行う。これによって、次のスクリーン処理部7においてモアレ出現部分と非モアレ出現部分で異なるスクリーンを用いるために生じる差分をここで吸収する。
【0037】
スクリーン処理部7では、ユーザ指示部9からモアレの除去が指示され、もともと誤差拡散スクリーンを用いる原稿モードでない場合に、TAG信号に従ってスクリーンの切り替えを行う。スクリーンの切り替えは、TAG:1の部分については誤差拡散スクリーンに切り替え、TAG:0の部分についてはもともと用いるはずのスクリーンをそのまま用いることとする。そして、後段色補正部6から出力されたYMCKの画像信号に対してスクリーン処理を行う。誤差拡散スクリーンは、周期成分を持たないため、モアレの出現が判定された場合に誤差拡散スクリーンを用いることによって、モアレ出現の要因である周期成分をなくすことができる。
【0038】
スクリーン処理された画像信号は画像形成部8に送られ、画像が形成される。このとき、ユーザがモアレの除去を指示し、通常用いるスクリーンではモアレの発生が検出された部分については、誤差拡散スクリーンにより周期性が無くなっているため、画像形成部8で形成した画像にはモアレが出現せず、良好な画像が形成されることになる。
【0039】
また、上述のモアレ判定部5におけるモアレの出現判定及びその結果を用いた後段色補正部6におけるパラメータの切り替えとスクリーン処理部7におけるスクリーンの切り替えは、それぞれの色成分毎に行う。これによって、スクリーンの切り替えはモアレが出現すると判定された色成分について行うのみとなるので、全ての色成分について誤差拡散スクリーンを用いた場合のような粒状性の低下を招くことはない。
【0040】
以上のように、本発明を適用することにより、画像信号とスクリーンとの干渉により出現するモアレを画像全体の粒状感を損なうことなく、自動的に除去することができる。
【0041】
なお、上述の実施の形態では、本発明を複写装置に適用し、コピーを行う場合について説明した。しかし本発明はこれに限られるものではなく、例えば複写装置のプリンタ機能や、プリンタ装置へも適用することができる。例えばディジタルプリンタにより特定のパターンを描画した画像を形成する場合や、特定のパターンが写っている写真、あるいは印刷原稿のスキャン画像を形成する場合などについても、画像信号が出力色空間に変換される場合であれば、本発明を適用してスクリーンとの干渉によるモアレの出現を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の一形態を含む複写装置の一例を示すブロック図である。
【図2】モアレ判定部の一例を示すブロック図である。
【図3】RGB色空間とYMCK色空間における画像信号の比較例の説明図である。
【図4】ユーザ指示部によるモアレ除去設定画面の一例の説明図である。
【図5】本発明の実施の一形態におけるモアレ判定部5の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】モアレの出現判定の一例の概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1…画像入力部、2…前段色補正部、3…前段色変換部、4…後段色変換部、5…モアレ判定部、6…後段色補正部、7…スクリーン処理部、8…画像形成部、9…ユーザ指示部、11…FFT部、12…モアレ出現判定部、21…「する」ボタン、22…「しない」ボタン、23…メッセージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像信号中のパターン周期を出力色空間において検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果とスクリーンの周期に基づき出力時のモアレの出現の有無を判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に従って必要に応じてスクリーンの切り替えを行って前記画像信号に対してスクリーン処理を行うスクリーン処理手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記検出手段は、YMCK色空間において前記画像信号中のパターン周期及び方向を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記検出手段で検出した前記画像信号中のパターン周期及び方向と、前記スクリーン処理手段で通常用いるスクリーンとの干渉レベルを求めることによりモアレの出現の有無を判定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記検出手段で前記画像信号中のパターン周期及び方向を検出できない場合は、強制的にモアレが発生しないものと判定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、判定結果によりモアレ出現部分と非モアレ出現部分を示す信号を出力し、前記スクリーン処理手段は、前記モアレ出現部分においてスクリーンを切り替えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定手段は、モアレの出現を色成分ごとに判定し、前記スクリーン処理手段は、モアレが出現すると判定された色成分についてスクリーンを切り替えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記スクリーン処理手段は、前記判定手段によるモアレの発生の検出に従って、誤差拡散スクリーンに切り替えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
さらに、前記スクリーン処理手段におけるスクリーンの切り替えにより生じる階調特性や鮮鋭性等の差異を吸収するように前記画像信号に対して補正処理を行う補正手段を有し、前記判定手段は、判定結果に従って前記補正手段における補正処理のパラメータの切り替えを指示し、前記スクリーン処理手段は、前記補正手段によって補正された画像信号に対してスクリーン処理を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
さらに、ユーザがモアレの除去を指示するための指示手段を有し、前記スクリーン処理手段は、前記指示手段によってモアレの除去が指示されている場合に、前記判定手段による判定結果に従ったスクリーンの切り替えを行うことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
さらに、ユーザがモアレの除去を指示するための指示手段を有し、前記指示手段によってモアレの除去が指示されている場合に、前記補正手段は前記パラメータの切り替えを行い、また前記スクリーン処理手段は前記判定手段による判定結果に従ったスクリーンの切り替えを行うことを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記スクリーン処理手段がもともと画像全面に誤差拡散スクリーンを使用する原稿モードの場合に、前記指示手段による指示によらずモアレが発生しないものとすることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記指示手段は、前記スクリーン処理手段がもともと画像全面に誤差拡散スクリーンを使用する原稿モードの場合に、モアレの除去を行わない旨をユーザに通知することを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
入力された画像信号のパターン周期を出力色空間において検出手段で検出し、検出結果とスクリーンの周期に基づき出力時のモアレの出現の有無を判定手段で判定し、判定結果に従って必要に応じてスクリーンの切り替えを行って前記画像信号に対してスクリーン処理手段でスクリーン処理を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
前記画像信号の周期の検出は、YMCK色空間において行い、前記画像信号中のパターン周期と方向を検出することを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項15】
前記モアレの出現の有無の判定は、検出した前記画像信号中のパターン周期及び方向と、スクリーン処理の際に通常用いるスクリーンとの干渉レベルを求めることにより行うことを特徴とする請求項14に記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記画像信号の周期の検出処理により前記画像信号中のパターン周期と方向を検出できなかった場合には、強制的にモアレが発生しないものと判定することを特徴とする請求項15に記載の画像処理方法。
【請求項17】
前記モアレの出現の有無の判定結果に従ってモアレ出現部分と非モアレ出現部分を示す信号を出力し、前記スクリーン処理は、前記モアレ出現部分においてスクリーンを切り替えて行うことを特徴とする請求項13ないし請求項16のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項18】
前記モアレの出現の有無の判定は、モアレの出現を色成分ごとに判定し、前記スクリーン処理は、モアレが出現すると判定された色成分についてスクリーンを切り替えて行うことを特徴とする請求項13ないし請求項17のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項19】
前記スクリーン処理は、モアレの発生が検出されたときには誤差拡散スクリーンに切り替えて行うことを特徴とする請求項13ないし請求項18のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項20】
さらに、前記モアレの出現の有無の判定結果に従って、スクリーン処理におけるスクリーンの切り替えにより生じる階調特性や鮮鋭性等の差異を吸収するようにパラメータを設定して、前記画像信号に対して補正処理を補正手段で行い、補正された画像信号に対してスクリーン処理を行うことを特徴とする請求項13ないし請求項19のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項21】
ユーザがモアレの除去を指示手段で指示した場合に、前記モアレの出現の有無の判定結果に従ったスクリーンの切り替えを行ってスクリーン処理を行うことを特徴とする請求項13ないし請求項19のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項22】
ユーザがモアレの除去を指示手段で指示した場合に、前記補正処理のためのパラメータの切り替えを行い、また前記モアレの出現の有無の判定結果に従ったスクリーンの切り替えを行って、前記補正処理及びスクリーン処理を行うことを特徴とする請求項20に記載の画像処理方法。
【請求項23】
前記スクリーン処理としてもともと画像全面に誤差拡散スクリーンを使用する原稿モードの場合に、前記ユーザが行った指示によらず、モアレが発生しないものとすることを特徴とする請求項21または請求項22に記載の画像処理方法。
【請求項24】
前記スクリーン処理としてもともと画像全面に誤差拡散スクリーンを使用する原稿モードの場合に、モアレの除去を行わない旨をユーザに通知することを特徴とする請求項21ないし請求項23のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項25】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の画像処理装置と、前記画像処理装置によりスクリーン処理が施された画像信号に基づいて画像を形成する画像形成手段を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−254095(P2006−254095A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67811(P2005−67811)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】