説明

画像合成装置、画像再生装置、および撮像装置

【課題】撮影画像中の特定の被写体について焦点の合った画像信号を適切に得ることができる画像合成装置を提供する。
【解決手段】光束を受光して得られた複数の受光信号を入力する入力手段101と、前記複数の受光信号の一部を、第1の選択形態により選択して得られる第1画像信号と、前記第1の選択形態とは異なる第2の選択形態により選択して得られる第2画像信号と、を生成するとともに、前記第1画像信号のコントラストに関する評価値と、前記第2画像信号のコントラストに関する評価値とに基づいて、前記評価値が最大となる画像信号を生成する画像生成手段104と、を備えることを特徴とする画像合成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像合成装置、画像再生装置、および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮像素子の撮像面に結像した被写体像を撮像信号として出力する撮像装置が知られている。このような撮像装置において、1回の撮影で得られた撮像信号に基づいて、光学系の任意の像面に焦点の合った画像を合成する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−4471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、特定の被写体について焦点の合った画像を取得するための像面をいかにして決定するかについては何ら提案されていなかった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、撮影画像中の特定の被写体について焦点の合った画像を適切に得ることができる画像合成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明に係る画像合成装置は、光束を受光して得られた複数の受光信号を入力する入力手段(101)と、前記複数の受光信号の一部を、第1の選択形態により選択して得られる第1画像信号と、前記第1の選択形態とは異なる第2の選択形態により選択して得られる第2画像信号と、を生成するとともに、前記第1画像信号のコントラストに関する評価値と、前記第2画像信号のコントラストに関する評価値とに基づいて、前記評価値が最大となる画像信号を生成する画像生成手段(104)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
[2]上記画像合成装置に係る発明において、前記画像生成手段(104)は、少なくとも3つの画像信号の評価値を求めることにより、前記評価値が最大となる画像信号に対応する前記受光信号の選択形態を決定するように構成することができる。
【0009】
[3]上記画像合成装置に係る発明において、前記画像生成手段(104)は、前記受光信号に基づく画像のうちの所定の部分領域に対応する受光信号に基づいて、前記第1画像信号および前記第2画像信号を生成するように構成することができる。
【0010】
[4]上記画像合成装置に係る発明において、前記受光信号に基づく画像内の前記部分領域の位置を選択するための領域選択手段(104)をさらに備え、前記画像生成手段(104)は、前記領域選択手段による選択結果に応じて、前記所定の部分領域を決定するように構成することができる。
【0011】
[5]上記画像合成装置に係る発明において、前記領域選択手段(104)は、前記受光信号に基づく画像のシーンを認識する認識手段(104)を備え、前記画像生成手段(104)は、前記認識手段により認識されたシーンに応じて、前記所定の部分領域を決定するように構成することができる。
【0012】
[6]本発明に係る画像再生装置は、上記画像合成装置と、前記画像信号に基づく画像を表示する表示部(102)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
[7]本発明に係る撮像装置は、複数のマイクロレンズ(212a)を二次元状に配列したマイクロレンズアレイ(212)、および前記複数のマイクロレンズに対して設けられた複数の光電変換素子(213a)を有し、前記マイクロレンズアレイを介して光学系からの光束を受光して得られた前記受光信号を、前記入力手段(101)に入力する撮像素子(211)と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮影画像中の特定の被写体について焦点の合った画像を適切に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態に係るパソコン100の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るカメラ200の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、表示部102のディスプレイに表示される画像の一例である。
【図4】図4は、撮像素子211の撮像面の部分拡大図である。
【図5】図5は、撮像素子211の構成を説明するための図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る画像合成システムの動作例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、マイクロレンズ212aを介して、光電変換素子アレイ213を構成する複数の光電変換素子213aのうち、特定の光電変換素子cに入射する光束の一例を示す図である。
【図8】図8は、被写体の存在位置に対応する像面が、特定の面(Z=0)であるときの画像合成方法の一例を説明するための図である。
【図9】図9は、被写体の存在位置に対応する像面が、特定の面(Z=h)であるときの画像合成方法の一例を説明するための図である。
【図10】図10は、被写体の存在位置に対応する像面が、特定の面(Z=h)であるときの画像合成方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の画像合成システムは、図1に示すパーソナルコンピュータ(パソコン)100と図2示すカメラ200とから構成される。また、本実施形態の画像合成システムは、カメラ200により撮影された撮影画像の画像データをパソコン100に取り込み、パソコン100において、取り込まれた撮影画像の画像データに基づいて、画像合成処理を行うシステムである。
【0017】
図1は、本実施形態に係るパソコン100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、パソコン100は、入力部101と、表示部102と、操作部103と、制御部104とを備えている。
【0018】
入力部101は、カメラ200で撮影された撮影画像の画像データを取得して、パソコン100に取り込み、取り込んだ撮影画像の画像データを、制御部104に送信する。ここで、入力部101としては、例えば、USBケーブルを介して外部機器を接続するためのUSBインターフェースを用いることができる。この場合、入力部101に、SDカードなどのメモリカードにデータを入出力するためのメモリカードリーダーを接続し、カメラ200で撮影された撮影画像の画像データを保存したメモリカードを、接続したメモリカードリーダーに挿入することで、入力部101は、カメラ200で撮影された撮影画像の画像データを取得することができる。なお、入力部101は、上述のUSBインターフェースに限定されず、例えば、メモリカードを直接挿入可能なインターフェースであってもよいし、有線または無線の通信回線(不図示)を介して、カメラ200から撮影画像の画像データを受信可能なインターフェースであってもよいし、あるいは所定のケーブルを介してカメラ200と直接接続することが可能なインターフェースであってもよい。
【0019】
表示部102は、カメラ200で撮影された撮影画像の画像データに基づく画像を、表示部102が備えるディスプレイに表示する。なお、図3に、表示部102により表示される画像の一例を示す。
【0020】
操作部103は、使用者が焦点を合わせたい被写体を選択する操作などの各種操作を行うために、使用者によって用いられるキーボード、マウス、およびタッチパネルなどの各種操作装置で構成される。例えば、操作部103を介して、使用者により、表示部102のディスプレイ上に表示される撮影画像中の被写体のうち、焦点を合わせたい被写体が選択された場合、選択された被写体に対応する撮影画像中の領域の情報が制御部104に送信され、後述する被写体領域として設定される。
【0021】
制御部104は、メモリ、CPUその他の周辺部品から構成され、カメラ200で撮影された撮影画像の画像データを入力部101から取得し、取得した画像データに基づき、コントラストに関する焦点評価値の算出および評価を行う。さらに、制御部104は、焦点評価値の評価の結果に基づき、焦点評価値が最大となる像面位置に対応する画像の合成を行い、合成画像を得る。
【0022】
また、制御部104は、操作部103を介して、使用者により、表示部102のディスプレイに表示された撮影画像中の被写体のうち焦点を合わせたい被写体が選択された場合には、撮影者により選択された被写体に対応する撮影画像中の領域を、被写体領域として設定する。例えば、図3に示す例において、使用者により焦点を合わせたい被写体として、表示部102のディスプレイに表示された街灯(ランプ)が選択された場合、制御部104は、図3に示すように、撮影画像中の街灯(ランプ)に対応する領域を、被写体領域として設定する。
【0023】
次に、パソコン100において合成画像の合成に用いられる撮影画像を撮影するカメラ200について説明する。図2は、カメラ200の構成を示すブロック図である。図2に示すように、カメラ200は、カメラボディ210とレンズ鏡筒220とを備えている。
【0024】
レンズ鏡筒220には、レンズ221,222,223、および絞り224を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0025】
フォーカスレンズ222は、レンズ鏡筒220の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、カメラボディ210側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。ちなみに、このフォーカスレンズ222の移動は、レンズ制御部227からの指令に基づいて制御され、レンズ駆動モータ226によりその位置が調節される。
【0026】
絞り224は、上記撮影光学系を通過して、カメラボディ210に備えられた撮像素子211に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り224による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、レンズ制御部227を介して、カメラ制御部215から絞り駆動部225へ送信されることにより行われる。
【0027】
一方、カメラボディ210には、被写体からの光束を受光する撮像素子211が、光軸L1上であって、撮影光学系の予定焦点面に設けられている。撮像素子211は二次元CCDイメージセンサ、MOSセンサまたはCIDなどのデバイスから構成され、受光した光信号を受光信号に変換する。ここで、図4は、撮像素子211の撮像面の部分拡大図である。図4に示すように、撮像素子211は、複数のマイクロレンズ212aを二次元状に稠密に配列したマイクロレンズアレイ212を備えている。また、撮像素子211は、各マイクロレンズ212aに対して、複数の光電変換素子213aから構成される各光電変換素子アレイ213を有している。なお、図4において、光電変換素子アレイ213を構成する光電変換素子213aの数(画素密度)は、縦方向および横方向ともに5個となっているが、これらの数は、特に限定されるものではない。
【0028】
さらに、図5は、撮像素子211の構成を説明するための図であり、図4と同様に、撮像素子211の撮像面を拡大した斜視図である。図5に示すように、光電変換素子アレイ213は、マイクロレンズアレイ212の後方に配置されおり、マイクロレンズアレイ212と光電変換素子アレイ213との間には、マイクロレンズ212aの焦点距離に対応する間隔が設けられている。そして、被写体からの光束(光軸L1)は、まずマイクロレンズ212aへと入射され、マイクロレンズ212aを通過して光電変換素子213aで受光される。各光電変換素子213aは受光した光の強度に応じた受光信号を出力し、出力された受光信号は、カメラ制御部215に送信される。
【0029】
カメラ操作部214は、例えば、シャッターレリーズボタン、カメラ1の各種動作モードを設定するためのモード設定スイッチなどを備えており、カメラ操作部214により、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換が行えるようになっている。
【0030】
カメラ制御部215は、撮像素子211から得た受光信号について、A/D変換などの各種処理を施し、画像データとしてメモリ216に記憶させる他、撮像素子211から得た受光信号に基づいて、フォーカスレンズ212の駆動量を算出し、算出したフォーカスレンズ212の駆動量をレンズ制御部227に送信することにより、フォーカスレンズ212の駆動制御を行うなどカメラ1全体の動作の制御を行う。
【0031】
次に、本実施形態に係る画像合成システムの動作例を説明する。図6は、本実施形態に係る画像合成システムの動作例を示すフローチャートである。なお、以下においては、カメラ200で撮影された撮影画像の画像データが、パソコン100に取り込まれているものとして説明する。また、以下に説明する処理は、画像合成システムを構成するパソコン100により行われる。
【0032】
まず、ステップS101では、カメラ200で撮影された撮影画像が表示部102のディスプレイ上に表示される。例えば、操作部103を介して、使用者により、パソコン100に取り込まれた複数の撮影画像のうち、いずれかの撮影画像が選択された場合、選択された撮影画像が表示部102のディスプレイ上に表示される。なお、ここで用いられる画像データは、上述したように、図5に示すカメラ200の撮像素子211のマイクロレンズ212aを通過した光束を、各光電変換素子213aで受光することにより得られた受光信号に基づくものである。
【0033】
続いて、ステップS102では、制御部104により、操作部103を介して、焦点を合わせたい被写体が選択されたか否かの判断が行われる。使用者により被写体が選択された場合はステップS103に進み、選択された被写体に対応する撮影画像中の領域が、被写体領域として設定される。このように被写体領域を設定することで、撮影画像中の全体の領域ではなく、使用者に選択された被写体に対応する被写体領域、すなわち、撮影画像中の一部の領域に対応する画像データに基づいて、後述する画像合成処理が行われることになる。例えば、図3に示す例において、使用者により、焦点を合わせたい被写体として撮影画像中の街灯(ランプ)が選択された場合、ステップS103に進み、図3に示すように、撮影画像中の街灯(ランプ)に対応する領域が、被写体領域として設定される。一方、使用者により被写体が選択されていない場合は、ステップS101に戻り、使用者により被写体が選択されるまで、待機する。
【0034】
ステップS104では、制御部104により、撮影画像の画像データに基づいて、画像合成範囲(合成画像信号を合成可能な範囲。詳細は後述する。)内の複数の像面位置に対応する像面の異なる複数の画像信号が、それぞれ合成画像信号として合成される。
【0035】
ここで、本実施形態で合成される複数の合成画像信号は、後述するステップS105における焦点評価値の算出、および、ステップS106の焦点評価値におけるピークの検出に用いられる。本実施形態においては、画像合成範囲内において合成される合成画像信号の数は、特に限定されないが、焦点評価値のピークを検出できる数であればよく、通常、3点以上である。
【0036】
また、本実施形態において、合成画像信号は、撮影画像中の全ての領域ではなく、撮影画像中の全ての領域のうちステップS103で設定された被写体領域、すなわち、撮影画像中の一部の領域に対応する画像データに基づいて合成される。例えば、図3に示す例において、ステップS103で、図3に示す街灯(ランプ)に対応する撮影画像中の領域が被写体領域として設定された場合、ステップS104では、撮影画像中の全ての領域に対応する画像データではなく、画像データのうち、図3に示す被写体領域に対応するデータに基づいて、合成画像信号が合成される。
【0037】
さらに、本実施形態においては、それぞれ異なる複数の像面位置に対応する(像面位置に焦点の合った)複数の合成画像信号が、撮影画像の画像データに基づいて合成されるが、合成画像信号が合成される像面の範囲は、以下に説明する画像合成範囲となる。図7は、合成画像信号を合成可能な範囲である画像合成範囲について説明するための図であり、光電変換素子アレイ213を構成する複数の光電変換素子213aのうちの特定の光電変換素子cに対してマイクロレンズ212aを介して入射する光束を示す図である。なお、図7においては、光電変換素子アレイ213を構成する各光電変換素子213aをa,b,c,d,eで示した。本実施形態に係る撮像装置によって得られる像の分解能は、画素の単位であるマイクロレンズ1つ分に相当する。そのため、分解能を保ったまま像を合成できる像面の範囲は、図7に示すように、光電変換素子213aのマイクロレンズ212aによる逆投影像の大きさが、マイクロレンズ212aの有効径Dとほぼ同じになるマイクロレンズ212aからの距離Lとすることができる。すなわち、マイクロレンズ212aの有効径D(配列ピッチP>D)と同じ大きさの範囲からの光がマイクロレンズ212aを通過して1つの光電変換素子cに入射すれば、画素の単位であるマイクロレンズの大きさに相当する分解能を得ることができる。よって、この距離Lを画像合成範囲となり、この画像合成範囲内の像面位置であれば、異なる複数の像面位置について、合成画像信号を合成することが可能となる。そのため、ステップS104においては、制御部104により、上述した画像合成範囲内において、複数の像面位置に対応する像面の異なる複数の合成画像信号が、以下に説明する画像合成方法に従って合成される。
【0038】
図8〜図10は、本実施形態における画像合成方法の一例を説明するための図である。図8に示す場面例では、マイクロレンズアレイ212からの像面の高さ(マイクロレンズアレイ212から距離)をZとした場合に、像面の高さZ=0である位置に画像合成の対象となる被写体が存在する場合である。図8においては、撮像素子211の各光電変換素子アレイ213について、各光電変換素子アレイ213を構成する光電変換素子213aのうち、5つの光電変換素子213aに入射する各光線(マイクロレンズアレイ212を構成するマイクロレンズ212aの中心を通る主光線のみ)を示した。また、図8中においては、各光電変換素子213aを識別するために、それぞれの光電変換素子213aを、a〜e、a〜e、a〜e、a〜e、a〜eで示すとともに、像面の高さZ=0における各座標X、X、X、X、Xのうち、Xからの射出光束(光線r、r、r、r、r)を実線で示し、それ以外のX、X、X、Xからの射出光束を点線で示した(以下、図9、図10においても同様。)。
【0039】
図8に示すように、像面の高さZ=0における座標Xからの射出光束(光線r、r、r、r、r)は、各光電変換素子a、b、c、d、e、にそれぞれ入射する。そのため、像面の高さZ=0における座標Xにおける画素値L(Z=0、X)は、これら光電変換素子a、b、c、d、eにおける出力を合成することにより求めることができる(下記式(1)参照)。
L(Z=0、X)=Out(a)+Out(b)+Out(c)+Out(d)+Out(e) …(1)
【0040】
また、同様に、座標Xに隣接する座標Xにおける画素値L(Z=0、X)は、下記式(2)に従って求めることができる。
L(Z=0、X)=Out(a)+Out(b)+Out(c)+Out(d)+Out(e) …(2)
【0041】
したがって、座標Xにおける画素値L(Z=0、X)は、下記式(3)に従って、それぞれ求めることができる。
L(Z=0、X)=Out(a)+Out(b)+Out(c)+Out(d)+Out(e) …(3)
【0042】
なお、上記式(3)は、使用者による指定絞り値が開放(開口サイズ最大)であったときに採用される式である。そのため、仮に、使用者による指定絞り値が最大(開口サイズ最小)であったときには、光線r、r、r、r、rからなる光束を、光線rのみからなる光束に制限すればよいので、上記式(3)に代えて下記式(4)を採用すればよい(後述する図9、図10に示す場合においても同様。)。
L(Z=0、X)=Out(c) …(4)
【0043】
また、絞り値が中間値(開口サイズ中間)であったときには、光線r、r、r、r、rからなる光束を、光線r、r、rのみからなる光束に制限すればよいので、上記式(3)に代えて下記式(5)を採用すればよい(後述する図9、図10に示す場合においても同様。)。
L(Z=0、X)=Out(b)+Out(c)+Out(d) …(5)
【0044】
なお、上記説明においては、或る1方向に並ぶ5つの光電変換素子a、b、c、d、eのみに着目し、それら5つの光電変換素子の出力値の和をとったが、実際は、2方向に並ぶ25個の光電変換素子の出力値の和をとる必要がある(後述する図9、図10に示す場合においても同様。)。
【0045】
次いで、図9に示すように、像面の高さZ=hである位置に画像合成の対象となる被写体が存在する場合について説明する。図9に示すように、像面の高さZ=hにおける座標Xからの射出光束(光線r、r、r、r、r)は、図8の場合と異なり、各光電変換素子a、b、c、d、eにそれぞれ入射する。そのため、像面の高さZ=hにおける座標Xにおける画素値L(Z=h、X)は、これら光電変換素子a、b、c、d、eにおける出力を合成することにより求めることができる(下記式(6)参照)。
L(Z=h、X)=Out(a)+Out(b)+Out(c)+Out(d)+Out(e) …(6)
【0046】
さらに、図10に示すように、像面の高さZ=hである位置に合成対象となる被写体が存在する場合について説明する。図10に示すように、像面の高さZ=hにおける座標Xからの射出光束(光線r、r、r、r、r)は、図8、図9の場合と異なり、複数の光電変換素子にまたがって入射することとなる。具体的には、図10に示すように、光線rは光電変換素子a、bに、光線rは光電変換素子b、cに、光線rは光電変換素子c、dに、光線rは光電変換素子d、eに、それぞれまたがって入射する。なお、光線rは、図10に示すように光電変換素子cにのみ入射する。そのため、光線rに着目すると、光線rの光量は、光電変換素子aの出力値Out(a)と、光電変換素子bの出力値Out(b)との重み付け和によって求めることができる(下記式(7)参照)。ここで、下記式(7)において、w11、w12は、重み係数であり、マイクロレンズアレイ212からの像面の高さZに応じて決まる係数である。
Out(a)×w11+Out(b)×w12 …(7)
【0047】
そして、光線r、光線r、光線rの光量も、同様に重み付け和によって求めることができるため、像面の高さZ=hにおける座標Xにおける画素値L(Z=h、X)は、下記式(8)に従って求めることができる。なお、下記式(8)において、W21、W22、W41、W42、W51、W52は、重み係数であり、マイクロレンズアレイ212からの像面の高さZに応じて決まる係数である。
L(Z=h、X)=〔Out(a)×w11+Out(b)×w12〕+〔Out(b)×W21+Out(c)×w22〕+Out(c)+〔Out(c)×W41+Out(d)×W42〕+〔Out(d)×W51+Out(e)×W52〕 …(8)
【0048】
このように、画像合成の対象となる被写体が存在する像面位置Zに応じて、被写体からの光束の入射する光電変換素子213a、および画像合成に必要な重み付け係数の値が決まってくることとなる。なお、各像面位置Zに対応する、被写体からの光束の入射する光電変換素子112a、および画像合成に必要な重み付け係数の値は、たとえば、制御部104の備えるメモリなどに予め記憶させておき、これを利用するような構成とすればよい。
【0049】
以上のように、制御部104は、複数の光電変換素子112aから得られた受光信号に基づく画像データを用いて、所定の像面位置Zに対応する合成画像信号を合成することができる。そのため、ステップS104においては、制御部104により、上述した画像合成方法に従い、画像合成範囲内の複数の像面に位置対応する像面の異なる複数の合成画像信号の合成が行われる。
【0050】
次に、ステップS105では、制御部104により、ステップS104で合成された複数の合成画像信号のそれぞれについて、合成画像信号のコントラストに関する焦点評価値が算出される。焦点評価値は、例えば、合成した合成画像信号の空間周波数から高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、抽出された高周波成分の絶対値を積算することで求められる。また、焦点評価値は、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出し、抽出された高周波成分の絶対値のそれぞれを積算することで求めてもよい。
【0051】
ステップS106では、制御部104により、画像合成範囲内において焦点評価値のピークの検出が行われ、画像合成範囲内において焦点評価値のピークが検出されたか否か判断される。具体的には、ステップS106において、制御部104は、ステップS105で算出した少なくても3つの焦点評価値に基づいて、3点内挿法により、焦点評価値のピークの検出を行う。そして、画像合成範囲内において焦点評価値のピークを検出できた場合は、画像合成範囲内に被写体に対応する像面位置が存在すると判断し、ステップS107に進み、一方、焦点評価値のピークを検出できない場合は、画像合成範囲内に被写体に対応する像面位置が存在しないと判断し、ステップS110に進む。
【0052】
ステップS107では、制御部104により、焦点評価値のピークに基づいて、焦点評価値が最大となる像面位置の検出が行われる。具体的には、まず、制御部104により、撮影画像の画像データに基づき、複数の合成画像信号(被写体領域に対応する合成画像信号)が合成される。ここで、ステップS107では、焦点評価値が最大となる像面位置を得るため、通常、ステップS104で合成した合成画像信号よりも多くの像面位置に対応する合成画像信号が合成される。そして、合成された合成画像信号の焦点評価値に基づいて、焦点評価値が最大となる像面位置の検出が行われる。また、ステップS107では、使用者により選択された被写体に焦点の合った画像を得るため、使用者により選択された被写体に対応する被写体領域について、焦点評価値が最大となる像面位置の検出が行われる。
【0053】
そして、ステップS108では、ステップS107で検出された焦点評価値が最大となる像面位置に対応する画像が合成画像として合成され、続くステップS109では、ステップS108で合成された合成画像が、表示部102のディスプレイに表示される。これにより、使用者は、選択した被写体について焦点の合った画像を得ることができる。
【0054】
一方、ステップS106で焦点評価値のピークを検出できない場合はステップS110に進む。ステップS110では、制御部104により、焦点評価値のピークの探索を終了するか否か判断される。例えば、画像合成範囲の全ての範囲において焦点評価値のピークを検出できない場合は、焦点評価値のピークの探索を終了すると判断し(ステップS110=YES)、ステップS112に進み、焦点評価値のピークの検出を終了し、使用者が選択した被写体に焦点を合わせることができない旨のエラーを、表示部102のディスプレイに表示する。これに対して、画像合成範囲の全ての範囲において焦点評価値のピークの検出が行われていない場合は、焦点評価値のピークの探索を続行すると判断し(ステップS110=NO)、ステップS111に進む。例えば、画像合成範囲のうちの一部の範囲において焦点評価値のピークを検出できなかった場合であり、かつ、画像合成範囲において焦点検出のピークの検出が行われていない範囲がある場合には、画像合成範囲のうち焦点評価値のピークの検出が行なわれていない残りの範囲について、焦点評価値のピークの検出を行うため、焦点評価値のピークの探索を続行すると判断し(ステップS110=NO)、ステップS111に進む。
【0055】
ステップS111では、画像合成範囲のうち既に合成された合成画像信号の像面位置とは異なる新たな像面位置についての合成画像信号の合成が行われる。そして、新たな像面位置に対応する合成画像信号について焦点評価値が算出され(ステップS105)、新たな像面位置に対応する合成画像信号の焦点評価値を用いて、焦点評価値のピークの検出が行われる(ステップS106)。このように、本実施形態では、焦点評価値のピークが検出されるまで、画像合成範囲内の異なる像面位置に対応する合成画像信号の合成(ステップS111)と、焦点評価値のピークの検出(ステップS106)とが、繰り返し行われる。そして、焦点評価値のピークが検出された場合(ステップS106=YES)は、焦点評価値のピークに基づいて、焦点評価値が最大となる像面位置が検出され(ステップS107)、焦点評価値が最大となる像面位置に対応する合成画像の合成および表示が行われる(ステップS108、S109)。一方、画像合成範囲の全ての範囲において焦点評価値のピークが検出されなかった場合(ステップS110=YES)は、その旨のエラーが表示部102のディスプレイに表示される(ステップS112)。
【0056】
以上のように、本実施形態では、カメラ200において撮影された撮影画像の画像データをパソコン100に取り込み、パソコン100において、取り込んだ撮影画像の画像データに基づいて、複数の像面位置に対応する像面の異なる複数の合成画像信号を合成し、合成した合成画像信号の焦点評価値に基づいて、画像合成範囲内において焦点評価値が最大となる像面位置の検出を行い、焦点評価値が最大となる像面位置に対応する合成画像を合成する。このように、本実施形態では、撮影画像の画像データに基づいて、複数の像面位置に対応する像面の異なる複数の合成画像信号を合成し、合成画像信号の焦点評価値に基づく焦点検出を行うことで、撮影画像中の被写体に焦点の合う像面位置を検出することができ、撮影画像中の被写体に焦点の合った画像を適切に合成することができる。
【0057】
特に、本実施形態では、使用者により選択された被写体に対応する撮影画像中の領域を、被写体領域として設定し、この被写体領域に対応する画像データに基づいて、合成画像信号を合成する。そして、この被写体領域において合成画像信号の焦点評価値が最大となる像面位置を検出し、被写体領域において焦点評価値が最大となる像面位置に対応する合成画像を合成する。これにより、本実施形態では、使用者により選択された特定の被写体について焦点の合った画像を得ることができる。さらに、撮影画像中の領域のうち被写体領域について合成画像信号を合成することで、撮影画像中の全ての領域について合成画像信号を合成する場合と比べて、処理負担を軽減し、使用者により選択された特定の被写体について焦点が合った画像を迅速に合成することができる。
【0058】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0059】
例えば、本実施形態では、操作部103を介して、使用者により選択された画像内の所定の領域を被写体領域として設定しているが、被写体領域を設定する方法は特に限定されず、例えば、制御部104が、撮影画像の画像データに基づいてシーンを認識し、認識したシーンに応じた画像内の所定の領域を被写体領域として設定してもよい。具体的には、制御部104が、撮影画像の画像データに基づいて、人物を撮像しているシーンと認識した場合、テンプレートマッチングなどにより、その人物の顔部分を認識し、認識した顔部分を被写体領域として設定することができる。また、操作部103を介して使用者がシーンを選択可能な場合は、使用者により選択されたシーンに応じて、被写体領域を設定してもよい。なお、シーンを認識する際に、撮影画像の画像データに基づいて、焦点深度の深いパンフォーカスの画像信号を合成し、このパンフォーカスの画像信号に基づいて、シーン認識を行ってもよい。これにより、シーンをより適切に認識することができる。
【0060】
また、本実施形態では、単一の画像データを用いて、図6に示す画像合成処理を行う例を示したが、カメラ1の動作はこれに限定されるものではなく、例えば、同じ構図を異なるフォーカスレンズ位置で連続して撮影して得られた複数の撮影画像の画像データが、互いに関連付けられた状態で、パソコン100に取り込まれている場合には、これら複数の画像データを用いて画像合成処理を行う構成としてもよい。この場合、あるフォーカスレンズ位置において得られた画像データに基づく画像合成範囲内において、焦点評価値のピークを検出することができない場合でも、焦点評価値のピークの探索を終了すると判断する(ステップS110=YES)ことなく、関連付けられた他の画像データ(異なるフォーカスレンズ位置で得られた別の画像データ)を用いて、焦点評価値のピークの検出を行う構成とすることができる。これにより、使用者は、撮影画像中の被写体に焦点の合った画像をより適切に得ることができる。
【0061】
さらに、上述した実施形態のステップS105〜ステップS111において、偽合焦を防止するための処理やフィルタ処理などの焦点評価値を用いた焦点検出処理において行われる公知の処理を、適宜行ってもよい。
【0062】
なお、本実施形態では、パソコン100において、撮影画像に基づいて、所定の被写体に焦点の合った画像を合成しているが、このような処理を行う装置はパソコン100に限られず、例えば、上述した方法により、所定の被写体に焦点の合った画像を合成可能なカメラ、またはプリンタ(画像出力装置)などであってもよい。
【0063】
また、本実施形態のカメラ200も特に限定されず、例えば、一眼レフデジタルカメラ、レンズ一体型のデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話用のカメラなどのその他の光学機器に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
100…パーソナルコンピュータ(パソコン)
101…入力部
102…表示部
103…操作部
104…制御部
200…カメラ
210…カメラボディ
211…撮像素子
212…マイクロレンズアレイ
212a…マイクロレンズ
213…光電変換素子アレイ
213a…光電変換素子
214…カメラ操作部
215…カメラ制御部
216…メモリ
220…鏡筒
222…フォーカスレンズ
224…絞り
225…絞り駆動部
226…レンズ駆動モータ
227…レンズ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を受光して得られた複数の受光信号を入力する入力手段と、
前記複数の受光信号の一部を、第1の選択形態により選択して得られる第1画像信号と、前記第1の選択形態とは異なる第2の選択形態により選択して得られる第2画像信号と、を生成するとともに、
前記第1画像信号のコントラストに関する評価値と、前記第2画像信号のコントラストに関する評価値とに基づいて、前記評価値が最大となる画像信号を生成する画像生成手段と、を備えることを特徴とする画像合成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像合成装置において、
前記画像生成手段は、少なくとも3つの画像信号の評価値を求めることにより、前記評価値が最大となる画像信号に対応する前記受光信号の選択形態を決定することを特徴とする画像合成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像合成装置において、
前記画像生成手段は、前記受光信号に基づく画像のうちの所定の部分領域に対応する受光信号に基づいて、前記第1画像信号および前記第2画像信号を生成することを特徴とする画像合成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像合成装置において、
前記受光信号に基づく画像内の前記部分領域の位置を選択するための領域選択手段をさらに備え、
前記画像生成手段は、前記領域選択手段による選択結果に応じて、前記所定の部分領域を決定することを特徴とする画像合成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像合成装置において、
前記領域選択手段は、前記受光信号に基づく画像のシーンを認識する認識手段を備え、
前記画像生成手段は、前記認識手段により認識されたシーンに応じて、前記所定の部分領域を決定することを特徴とする画像合成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の画像合成装置と、
前記画像信号に基づく画像を表示する表示部と、を備えることを特徴とする画像再生装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の画像合成装置と、
複数のマイクロレンズを二次元状に配列したマイクロレンズアレイ、および前記複数のマイクロレンズに対して設けられた複数の光電変換素子を有し、前記マイクロレンズアレイを介して光学系からの光束を受光して得られた前記受光信号を、前記入力手段に入力する撮像素子と、を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−113174(P2011−113174A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267292(P2009−267292)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】