説明

画像形成装置、画像形成方法、およびプログラム

【課題】高精度の補正が求められる重要色の抽出を、より正確、かつ、より簡易的に実施可能な手段を提供すること。
【解決手段】入力された印刷ジョブを解析し、該印刷ジョブのうちの複数のページで使用される色を抽出する抽出手段と、前記抽出手段で抽出された抽出色のパッチ画像を形成する形成手段と、前記形成手段で形成されたパッチ画像を測定し、前記抽出色における基準値からの色の変動量を判定する判定手段と、前記入力された印刷ジョブを印刷する際に、前記判定手段で判定された色の変動量を用いて前記抽出色を補正する補正手段とを有することを特徴とする画像形成装置とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを受け取って印刷処理を行う画像形成装置および画像形成方法に関する。特に印刷された画像の色を安定させるキャリブレーション制御を備えた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフセット印刷等で使用する版を不要としたダイレクトイメージングプリンタの需要が高くなってきている。ダイレクトイメージングプリンタは、印刷時間の短縮や大量部数の印刷に対する要望や、印刷不良が発生した紙の廃却という環境問題等から広く用いられている。その中でも、価格面で有利であり写真印刷に適したインクジェット方式プリンタや、生産性が高くオフセット印刷の仕上がりに近い電子写真方式プリンタがより広く用いられる。そのような状況において、従来のオフセット印刷や写真の代替としてダイレクトイメージングプリンタに要求される機能の中で最も重要なものの1つに、用紙に形成された画像の色の安定性が挙げられる。
【0003】
色の安定性を確保するため、従来から色安定化制御に関する技術(キャリブレーション処理)が提案されている。電子写真方式の画像処理装置における色安定化制御の一例として、プリンタ部でパッチパターンが形成された出力用紙の画像を読み取り、その読み取り結果に基づき画像制御を行う画像形成装置が提案されている。この画像形成装置において、パッチパターンの読み取り装置の例としては、プリンタ部に接続されるリーダー部または、外部の色度計・濃度計、あるいはプリンタ部に内蔵される定着後分光センサ等が挙げられる。また、画像形成装置は、パッチパターンとして、CMYK単色の階調パッチ、あるいは、CMYK混色のパッチを形成する。画像形成装置は、これらのパッチの読み取り結果に基づき、1次元の階調補正LUT、あるいは、N次元の色補正LUTを生成する。
【0004】
しかし、このキャリブレーション手法は、予め定義された補正対象色を包括的に補正する、全体最適化のための手法である。そのため、ジョブ中に使用される色の中でも特に高精度での補正が求められる、ある特定の色のみを重点的に補正することはできない。
【0005】
そこで、特定の色のみを重点的に補正する手段として特許文献1が挙げられる。特許文献1では、まず、印刷ジョブを解析し、ジョブで使用される特色を全てリストアップする。そして、それらの特色の近傍色をデバイスプロファイルから抽出し、抽出した色からなるチャートを出力する。このチャートの読み取り値を基に、デバイスプロファイルを補正する。
【0006】
また、別の補正の手段として、特許文献2が挙げられる。特許文献2では、ユーザが重点的に補正したい色を指定することを可能としている。そして、ジョブの印刷時にPDLジョブを解析した結果、指定された色がジョブに使用されると判断された場合に、画像形成装置が指定色のみを対象としたキャリブレーションを実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−174240号公報
【特許文献2】特開2010−213012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
印刷ジョブを構成する複数のページにわたって頻繁に使用される色は、特に高い精度での補正が求められる。このような要求の具体例として、取扱説明書等のページ端に章の区切りを明確にするために印刷される「タブマーク」や、カタログ等のページ隅に印刷される「企業ロゴ」などといった、ジョブの大半あるいは全てのページに登場するオブジェクトが挙げられる。
【0009】
しかし、特許文献1の手法では、ジョブ中に使用される特色を全てリストアップしており、複数ページにおける使用頻度は考慮していないため、高精度の補正が求められる色のみを抽出しているとは言い難い。さらに、抽出対象は特色のみであり、CMYKプロセスカラーの重要色は抽出できない。
【0010】
また、特許文献2の手法は、PDLジョブの解析による色の抽出はしておらず、印刷オペレータが手動で補正対象となる重要色の情報を入力する。そのため、データの作成者が重要色のCMYK、RGB値、あるいは、予め定義された特色の名称等の詳細情報を把握していなくてはならない。また、POD市場のように、データの作成者と印刷オペレータが異なる場合においては、上記の重要色の詳細情報が適切に伝達されている必要がある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、高精度の補正が求められる重要色の抽出を、より正確、かつ、より簡易的に実施できる手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、以下の構成を有する。すなわち、入力された印刷ジョブを解析し、該印刷ジョブのうちの複数のページで使用される色を抽出する抽出手段と、前記抽出手段で抽出された抽出色のパッチ画像を形成する形成手段と、前記形成手段で形成されたパッチ画像を測定し、前記抽出色における基準値からの色の変動量を判定する判定手段と、
前記入力された印刷ジョブを印刷する際に、前記判定手段で判定された色の変動量を用いて前記抽出色を補正する補正手段とを有することを特徴とする画像形成装置とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高精度の補正が求められる重要色の抽出を、ジョブごとに、より正確に、かつ、より簡易的に実施できる手法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置の全体のブロック図。
【図2】画像形成装置における静電潜像作成に関する各ブロックの構成を説明する図。
【図3】画像形成部の断面図。
【図4】第一実施形態に係る処理対象の成果物の一例を示す図。
【図5】第一実施形態に係るメインフローチャート を示す図。
【図6】第一実施形態に係る色抽出リスト(CMYK) を示す図。
【図7】第一実施形態に係る色抽出リスト(特色) を示す図。
【図8】第一実施形態に係るパッチパターンの一例を示す図。
【図9】第一実施形態に係る色変動程度判定手段のフローチャートを示す図。
【図10】第二実施形態に係る処理対象の成果物の一例 を示す図。
【図11】第二実施形態に係るページ内色探索範囲の一例を示す図。
【図12】第三実施形態に係るパッチパターンの出力方法の一例を示す図。
【図13】第四実施形態に係る処理対象の成果物の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第一実施形態>
[システム構成]
図1は、第一実施形態の電子写真方式の画像形成装置100の全体を示すブロック図である。画像形成装置100は画像形成部203と画像処理部202とにより構成され、画像処理部202でビットマップ画像情報を生成し、生成されたビットマップ画像情報に基づき画像形成部203が記録媒体上への画像形成を行う。画像形成装置の例として、MFP(MultiFunction Peripheral)が挙げられる。
【0016】
コントローラユニット201は、画像入力装置であるスキャナ(不図示)や画像出力装置である画像処理部202と接続する。また一方では、コントローラユニット201は、LAN、公衆回線などのネットワーク(不図示)と接続することで、画像情報やデバイス情報の入出力を行うためのコントローラである。
【0017】
システムバス101は、PCIバスまたはIEEE1394などの高速バスで構成される。図1には、本実施形態に関わるデバイスのみを図示する。システムバス101には、ここではMFPに必要なネットワーク接続I/F、スキャナI/Fが接続されることは言うまでもない。
【0018】
CPU102は、デジタル複合機全体を制御するコントローラとして機能する。RAM104は、CPU102が動作するためのシステムワークメモリであり、画像データを一時記憶するための画像メモリとしても利用される。ROM103は、ブートROMとして利用され、デジタル複合機のブートプログラムが格納されている。
【0019】
外部メモリI/F105はHDDなどの外部メモリI/Fであり、外部記憶部106に格納されているデータを読み書きすることが可能である。外部記憶部106は、HDDやDDR3メモリやNAND Flashメモリなどの外部メモリである。外部記憶部106は、システムソフトウェア、画像データ、アドレス帳などの個人データの他に本実施形態に必要なパッチパターンを格納する記憶部である。
【0020】
デバイスI/F107は、画像処理部202や画像形成部203と通信し、プリント実行コマンドを発行や画像データを転送したり、エンジンステータスを読み込んだりすることが可能である。操作部I/F108は、操作部109とコントローラユニット201とを接続する。操作部109は、スイッチやLEDのみから構成されているものからタッチパネル式のLCD表示部を有しているものまで様々である。操作部109で入力した情報が、操作部I/F108を介して、CPU102に伝えられ、所望の処理を行い、それに伴い操作部109に具備された表示部(不図示)に表示を行う。
【0021】
[処理の流れ]
次に、カラー画像形成装置における画像処理部202の処理について、図2を用いて説明する。図2は、画像形成装置における、静電潜像作成に関係する各ブロックの構成を説明する図である。
【0022】
画像生成部204は、ネットワーク等を介して接続されたコンピュータ装置(不図示)等から受信する印刷データより、印刷処理が可能なラスターイメージデータを生成し、RGBデータおよび各画素のデータ属性を示す属性データとして画素毎に出力する。なお、画像生成部204は、コンピュータ装置等から受信した画像データではなく、カラー画像形成装置内部に読取手段を構成し、読取手段からの画像データを扱う構成としても良い。ここでいう読取手段とは、少なくともCCD(Charge Coupled Device)あるいはCIS(Contact Image Sensor)を含むものである。読み取った画像データに対して、所定の画像処理を行う処理部をあわせてもたせるように構成しても良い。また、カラー画像装置内部に構成せず、インタフェース(不図示)を介して、前記読取手段からデータを受け取るように構成しても良い。
【0023】
色変換部205は、前記RGBデータを画像形成部203のトナー色に合わせてCMYKデータに変換し、CMKYデータと属性データを記憶部206へ格納する。記憶部206は、画像処理部202に構成した第1の記憶部であり、印刷処理を行うラスターイメージデータを一旦格納する。なお、記憶部206は、1ページ分のイメージデータを格納するページメモリで構成しても良いし、複数ライン分のデータを記憶するバンドメモリとして構成しても良い。
【0024】
ハーフトーン処理部207C、207M、207Y、207Kは、記憶部206から出力される属性データおよび各色のデータにγ補正とハーフトーン処理を行う。γ補正は理想的な階調特性に合わせるために濃度補正を行う処理を指す。各ハーフトーン処理部の具体的な構成としては、スクリーン処理によるもの、あるいは誤差拡散処理によるものがある。
【0025】
スクリーン処理は、所定の複数のディザマトリクスおよび入力される画像データ用いて、N値化するものである。また、誤差拡散処理は、入力画像データを所定の閾値と比較することにより、N値化を行い、その際の入力画像データと閾値との差分を以降にN値化処理する周囲画素に対して拡散させる処理である。
【0026】
画像形成装置内部に構成した第2の記憶部208は、ハーフトーン処理部207C、207M、207Y、207Kそれぞれにより処理されたN値化データを記憶する。
【0027】
パッチパターン生成部209C、209M、209Y、209Kはそれぞれ、各色に対するパッチパターン生成部であり、濃度補正が必要なパッチパターンを生成して後述の転送用バッファに転送する。なお、パッチパターンは、コントローラユニット201が最適なパッチパターンを選択し、予め外部記憶部106に格納されているスクリーンパターンを読み込んだものから生成される。もしくは、パッチパターンは内部ロジックで生成されるものとする。
【0028】
タイミング調整部210C、210M、210Y、210Kはそれぞれ、記憶部208からのN値化データとパッチパターン生成部209のデータ出力タイミングとを画像形成部203の動作と同期をとるために構成したタイミング調整部である。
【0029】
転送用バッファ211C、211M、211Y、211Kはそれぞれ、タイミング調整部210の出力データを一時的に保持する転送バッファである。
【0030】
パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)212は、各転送用バッファが出力する色の画像データに対し、スキャナ部214C、214M、214Y、214Kそれぞれの露光時間へ変換される。そして、変換後の画像データは、画像形成部203の各スキャナ部214により各色の画像215C〜Kとして出力される。
【0031】
パッチパターン216C、216M、216Y、216Kはそれぞれ、濃度補正に使用されるパッチパターンである。外部記憶部106上に階調数やハーフトーン処理部207C、207M、207Y、207Kによるハーフトーン処理に応じたパターン種類が用意されている。これらは、デバイスI/F107を介して画像処理部202のパッチパターン生成部209C、209M、209Y、209Kにそれぞれ読みこまれる。
【0032】
なお、本説明においては、外部記憶部106、第1の記憶部206、第2の記憶部208、転送用バッファ211を別構成として説明したが、画像形成装置内部もしくは外部に共通の記憶部を構成するようにしても良い。
【0033】
画像形成部203は、画像処理部202が処理した露光時間に応じて露光光を駆動し、静電潜像を形成して、この静電潜像を現像して単色トナー像を形成する。この単色トナー像を重ね合わせて多色トナー像を形成し、この多色トナー像を紙等のメディア(記憶媒体)11へ転写して、そのメディア11上の多色トナー像を定着させる。
【0034】
[画像形成部の構成]
次に図3を用いて、電子写真方式の画像形成装置100における、画像形成部203の動作を説明する。画像形成部203は、画像処理部202が変換した露光時間に基づいて点灯させる露光光により静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して単色トナー像を形成する。そして、この単色トナー像を重ね合わせて多色トナー像を形成し、この多色トナー像をメディア11へ転写し、そのメディア11上の多色トナー像を定着させるものである。本実施形態に係る画像形成部203は、給紙部21、感光ドラム22Y〜K、注入帯電手段23Y〜K、トナーカートリッジ25Y〜K、現像手段26Y〜K、中間転写体27、転写ローラ28、クリーニング手段29、定着部30、濃度センサ41及び分光センサ42によって構成されている。
【0035】
感光ドラム(感光体)22Y〜Kは、アルミシリンダの外周に有機光導伝層を塗布して構成し、駆動モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転するもので、駆動モータは感光ドラム22Y〜Kを画像形成動作に応じて反時計周り方向に回転させる。
【0036】
一時帯電手段として、ステーションごとにイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の感光体を帯電させるための4個の注入帯電手段23Y〜Kを備える。更に、各注入帯電器にはそれぞれスリーブ23YS、23MS、23CS、23KSが備えられている。
【0037】
各感光ドラムへの露光光はそれぞれスキャナ部24Y、24M、24C、24Kから送られ、各色に対応する各感光ドラムの表面を選択的に露光することにより、静電潜像が形成されるように構成されている。
【0038】
現像手段として、前記静電潜像を可視化するために、ステーション毎にY、M、C、Kの現像を行う4個の現像手段26Y、26M、26C、26Kを備える構成で、各現像器にはそれぞれ、スリーブ26YS、26MS、26CS、26KSが設けられている。各々の現像器は脱着可能に取り付けられている。
【0039】
中間転写体27は、感光ドラム22Y〜Kに接触しており、画像形成時に時計周り方向に回転し、感光ドラム22Y〜Kの回転に伴って回転し、単色トナー像が転写される。その後、中間転写体27に転写ローラ28が接触してメディア11を狭持搬送し、メディア11に中間転写体27上の多色トナー像が転写する。
【0040】
転写ローラ28は、メディア11上に多色トナー像を転写している間、28aの位置でメディア11に当接し、印刷処理後は28bの位置に離間する。定着部30は、メディア11を搬送させながら、転写された多色トナー像を溶融定着させるものであり、図3に示すようにメディア11を加熱する定着ローラ31とメディア11を定着ローラ31に圧接させるための加圧ローラ32を備えている。定着ローラ31と加圧ローラ32は中空状に形成され、内部にそれぞれヒータ33、34が内蔵されている。すなわち、多色トナー像を保持したメディア11は定着ローラ31と加圧ローラ32により搬送されるとともに、熱および圧力を加えられ、トナーが表面に定着される。
【0041】
トナー像定着後のメディア11は、その後、排出ローラ(不図示)によって排紙トレイ(不図示)に排出して画像形成動作を終了する。クリーニング手段29は、中間転写体27上に残ったトナーをクリーニングするものであり、中間転写体27上に形成された4色の多色トナー像をメディア11に転写した後の廃トナーは、クリーニング手段29に設けられるクリーナ容器に蓄えられる。
【0042】
濃度センサ41は、図3の画像形成装置において中間転写体27へ向けて配置されており、中間転写体27の表面上に形成されたトナーパッチの濃度を測定する。濃度センサ41は中間転写体27上に載っているトナーの色を見分けることはできない。そのため、単色トナーの階調パッチを中間転写体27上に形成する。その後、この濃度データは、画像処理部202の濃度‐階調特性を補正するキャリブレーションテーブルや、画像形成部203の各プロセス条件へフィードバックされる。
【0043】
分光センサ42は、図3の画像形成部203においてメディア搬送路の定着部30より下流にメディア11の画像形成面へ向けて配置されている。つまり、この分光センサは画像形成装置内部の用紙を定着してから排紙をするまでの搬送路上に配置されている。そして、メディア11上に形成された定着後の混色パッチを検知し、測定することで、分光値を得る。ここで、分光値とはパッチを測定することで得られる分光反射率から求められる値である。例えば、パッチの濃度値、反射率、輝度値、またL*a*b*値やXYZ等の値である。画像形成装置100内部に配置することにより、定着後の画像を排紙部36に排紙する前に、自動的に検知することが可能となる。定着後の混色パッチ画像を読み取ることで、カラーマッチングの精度を向上させることが可能になり、単色のパッチのみでは合わせきれない多次色の変動を補正することができる。
【0044】
混色のパッチをメディア11の片面のみに印刷して排紙する場合には、定着部30により定着した後に、定着部30のすぐ後に具備されるフラッパ37が動作することにより、定着部30から出て来たメディア11を反転ローラ35の方向に搬送させる。そして、両面搬送路上にある分光センサ42にて、混色パッチの分光値の測色を行う。その後、メディア11の先端が反転ローラ35に突入した後に、反転ローラ35を逆方向に回転させる。その後、両面フラッパ38を排紙部36の方向に動作させることにより、そのまま排紙部36にメディア11が排紙される。一方、メディア11の両面に混色パッチを印刷して排紙する場合には、反転ローラ35を逆方向に回転させるまでは、片面のみ印刷の場合と同様で、両面フラッパ38が両面搬送路39の方向に動作し、メディア11を両面搬送路39に搬送する。
【0045】
なお、ここで示した画像形成部の構成の配置、及びその動作の流れは一例であり、他の構成を有してもよい。
【0046】
[処理の流れ]
本実施形態では、図4に示される、ページの端にタブマーク401が印刷されるジョブを、処理の対象例として説明する。このタブマークは、取扱説明書等の成果物において、章ごとのまとまりを視覚的に認識しやすくするために、ページの端に印刷されるものである。また、このタブマークは、複数のページにわたって印刷されているものである。本実施形態においては、このタブマークに対して全て同じ色(C、M、Y、K)=(40%、40%、50%、10%)での出力が指示されているものとして説明する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る処理のフローチャートである。まず、S501にて、コントローラユニット201が印刷ジョブを解析し、複数ページにわたっての使用頻度が高い重要色を抽出する。ここで抽出される重要色(抽出色)が以降の処理において監視対象となる色である。
【0048】
次に、S502にて、画像形成装置100が、S501で抽出された重要色のパッチパターンを形成する。
【0049】
そして、S503にて、コントローラユニット201が、抽出された重要色のパッチパターンを測定器で測定した値を基に抽出された重要色の変動の程度を判定する。
【0050】
ここで、S501での、重要色の抽出処理について、詳細を説明する。コントローラユニット201は、印刷ジョブのPDL(Page Description Language)を解析することで、各ページ使用される色を探索し、そのリストを作成する。例えば、CMYK色空間の色であれば、コントローラユニット201は、図6に例示されるようなリストを作成する。この場合、(C、M、Y、K)=(0%、0%、0%、100%)といった、一般的に使用されると想定される色は探索対象から除外しても良い。なお、CMYK色空間の色だけでなく、特色を抽出対象とすることももちろん可能である。特色の場合は、コントローラユニット201は、図7に例示されるリストを作成する。
【0051】
そして、コントローラユニット201は、リスト内の色の使用頻度条件に該当する重要色を抽出する。この使用頻度条件とは、例えば、「全ページにて使用」である。図6に例示されるリストにおいては、図4の成果物のタブマークにて使用される(C、M、Y、K)=(40%、40%、50%、10%)の色がこの条件に該当し、重要色として抽出される。なお、使用頻度条件は「全ページにて使用」に限らず、所定の割合以上、あるいは、所定の数以上のページで使用されていることを条件と指定も良い。例えば、「全ページのうちの80%のページにて使用」、あるいは、「20ページ以上で使用」などでもよく、ユーザが指定可能である。
【0052】
また、リストを作成する際において、図6では、ある着目ページにおいて所定の色が使われているか否かによって使用頻度を決定している。ここで、より詳細に、その所定の色の使用量(使用領域の範囲)が着目ページにおいて所定値以下である場合には、当該着目ページではその所定の色を使用していないものとみなすようにしても構わない。ここでの使用量に対する所定値の例として、印刷されるロゴマークのサイズなどを考慮して決定しても構わない。
【0053】
次に、S502での、抽出色のパッチパターンの形成処理について詳細を説明する。まずコントローラユニット201が、S503でパッチを測定する測定器の情報を取得する。測定器としては、デバイスI/F107と接続される、スキャナユニット(不図示)や、画像形成装置100内部の分光センサ42などが想定される。これらの測定器のうち、どの測定器を使用するかは、画像形成装置100のデバイス構成に応じて一意に定義されていてもよし、ユーザに選択させても良い。なお、本実施形態では、測定器として分光センサ42が使用されるものとして説明する。
【0054】
そして、コントローラユニット201は、パッチを測定する測定器の読み取り能力に応じて、図8に例示されるパッチパターンを形成する。この読み取り能力とは、最低限必要なパッチ間隔や、最小パッチサイズ、あるいは、主走査方向におけるパッチ位置などが挙げられる。例えば、分光センサ42の場合、限られた数のセンサが、画像形成装置100内の主走査方向の限られた箇所に位置している場合がある。この場合、コントローラユニット201は、分光センサの数と、主走査方向における取り付け箇所、そして、分光センサが読み取り可能な最小パッチサイズ、最小パッチ間隔等を考慮し、パッチパターンを形成する。本実施形態では、タブマークに使用される(C、M、Y、K)=(40%、40%、50%、10%)のパッチ801が使用される。
【0055】
なお、抽出された重要色が複数存在し、それら重要色のパッチが1ページ分のパッチを形成可能な領域に収まらない場合は、パッチパターンを複数ページ上に形成してもよい。
【0056】
次に、S503にて、コントローラユニット201が、抽出色の変動の程度を判定、補正する処理について図9を用いて詳細を説明する。なお、以下で示すフローチャートは画像形成装置100のRAM104にロードされたプログラムをCPU102が実行することによって実行される。
【0057】
まず、S901にて、コントローラユニット201は、抽出された重要色の基準値となるターゲット値を取得する。抽出された重要色がCMYK空間色であれば、コントローラユニット201は、デバイス依存の出力プロファイルのCMYK→L*a*b変換テーブルから、ターゲットL*a*b値を取得する。このとき、抽出された重要色が特色であれば、コントローラユニット201は、特色に対して定義されてあるL*a*b値を参照する。ここで用いられる変換テーブルは、例えば記憶部である外部記憶部106に予め保持されているものとする。
【0058】
次に、S902にて、コントローラユニット201は、所定のタイミングで、S502で形成されたパッチパターンの出力を画像処理部202、画像形成部203に指示する。ここで、ジョブ中にパッチパターンの出力をする場合は、パッチパターンを印刷ジョブとは別の排紙先に排紙することで、ジョブの出力とパッチパターンが混在することを防ぐこともできる。
【0059】
上記の所定のタイミングとは、ジョブの印刷直前や、所定のページ枚数間隔での実行が想定されるが、その限りでない。例えば、生産性よりも画像品質を重視するのであれば、毎ページごとに本処理を行うように所定のタイミングを制御しても構わない。
【0060】
また、コントローラユニット201は、抽出された重要色が使用されるページ範囲に応じて、パッチパターンの出力指示のタイミングを制御しても良い。
【0061】
S501にてコントローラユニット201が色を抽出する条件が「20ページ以上で使用」であった場合を例に説明する。例えば100ページの印刷ジョブにおいて、ある1つの色が重要色として抽出され、かつ、その抽出された重要色が1〜60ページの範囲内でしか使用されない場合、61ページ目以降に色の変動を監視しても無意味である。このような場合は、コントローラユニット201は、パッチパターンの出力指示を、抽出色が使用される1〜60ページが出力されている間に限定することもできる。よって、印刷ジョブにおいて、各ページの重要色の使用に関する分布に基づいて、監視する範囲を限定するようにしても構わない。
【0062】
そして、S903にて、コントローラユニット201は、測色器にパッチパターンを読み取らせ、その測色結果を取得する。本実施形態では、画像形成装置100内部の分光センサを使用するため、測色にユーザの手を煩わせることはない。もし、読み取り装置がスキャナユニットの場合は、コントローラユニット201は、操作部109に具備された表示部(不図示)を通じて、ユーザに出力されたパッチパターンをスキャンユニットで測色するように促す。
【0063】
S904では、コントローラユニット201は、S901で取得したターゲット値とS903で取得した測色値とを比較し、その差分を算出する。本実施形態においては、差分値として、色差を表現する一般的な指標であるΔEを使用するが、その限りではなく、その他の指標を用いてもよい。
【0064】
S905にて、コントローラユニット201は、S904で算出された差分(変動量)と、予め定義された閾値を比較する。
【0065】
比較した結果、差分が閾値未満の場合は(S905にてNO)、コントローラユニット201は、そのまま、ジョブの印刷を続行し(S906)、S902へと戻る。
【0066】
差分が閾値以上の場合は(S905にてYES)、コントローラユニット201は、S907にて抽出色が変動していると判定する。
【0067】
色が変動していると判定された後、コントローラユニット201は、S908にて、抽出色限定のキャリブレーションを実施する。コントローラユニット201は、S904で算出した差分(変動量)を吸収するべく、N次元の色補正LUTを補正する。補正の具体的な方法については、ここでは重要でないため、従来技術を用いるものとして、省略する。
【0068】
なお、S905で差分が閾値以上でないと、S908へ進みキャリブレーションを実施しないが、S905での差分の判定せずにS904後に常にキャリブレーションを実施してもよい。また、S905にて実施されたキャリブレーション結果は、上記の所定のタイミングで印刷していたページの出力から反映される。具体的には、所定のページが「ジョブの印刷直前」の場合、S901〜S908はジョブが印刷される前に実行される。そして、S908にてキャリブレーションが実施された後、その結果が反映されたジョブが1ページ目から出力される。また、所定のページが「ジョブ5ページ目」の場合、S901〜S908はジョブの4ページ目までが印刷された後に実行される。そして、S908にてキャリブレーションが実施された後、その結果が反映されたジョブの5ページ目以降が出力される。
【0069】
<第二実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、図10に示される、ページの上端にロゴ1001が印刷されるジョブを、処理の対象例として説明する。第一実施形態と重複する箇所については、説明を省略する。
【0070】
本実施形態では、図5にて示したS501での重要色の抽出処理において、コントローラユニット201は、ページ内の特定の箇所に探索箇所を限定する。そして、コントローラユニット201は、印刷ジョブに使用される色を探索する。図10に示すようなロゴなどは、一般的にページの上部あるいは下部に位置することが多い。本実施形態において、補正処理を行う監視対象の位置(抽出範囲)を予め限定する。したがって、本実施形態は、図11(a)に示すように、色探索範囲をページの上部と下部に限定する。
【0071】
コントローラユニット201は、色探索範囲1101内でのみ色の探索及び、重要色の抽出を行い、非探索範囲1102内の色は探索しない。また、色探索範囲の例はこの限りではなく、第一実施形態で処理対象としたタブマークを有する成果物にも対応できるように、図11(b)に示すように、色探索範囲をページの4辺の一定範囲としてもよい。
【0072】
また、色探索において、コントローラユニット201は、ページ内の探索範囲を限定するだけでなく、対象オブジェクトを限定してもよい。例えば、描画データに含まれるグラフィックスやテキストのみを対象とし、ラインや画像データは対象外としても良い。つまり、PDLデータに含まれるオブジェクトデータのうち、上述した属性を有するものを対象とすることで、重要色を抽出する際の負荷を低減することができる。
【0073】
また、可変データ部と固定データ部が存在するVDP(Variable Data Printing)においては、複数ページで使い回される固定データ部のみを色探索の対象にしてもよい。
【0074】
以降の処理は、第一実施形態にて述べたS502、S503と同様のため、ここでの説明は割愛する。
【0075】
以上のように、コントローラユニット201が重要色を抽出するために色を探索する際の条件を効率的に限定することにより、コントローラユニット201が重要色の抽出に要する時間を短縮することができ、処理の負荷を低減することができる。これにより、本発明により、生産性の劣化を軽減することができる。
【0076】
<第三実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第三実施形態について説明する。なお、第一、第二実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0077】
本実施形態では、図5に示したS502にて、画像形成装置100は、S501で抽出された抽出色のパッチを、図12のパッチ1201に示されるように、印刷ジョブの余白部に印刷する。
【0078】
POD市場においては、ジョブの印刷後に、印刷物に対してフィニッシング処理を要求するジョブがある。このフィニッシング処理の中の1つが断裁処理であり、用紙上に印刷されたトンボ1202の位置を目安に断裁することで成果物の体裁を整える。つまり、印刷の時点では余白部は存在し、その余白部に抽出された重要色のパッチ1201を印刷したとしても、フィニッシング処理にて余白部を断裁してしまえば成果物に悪影響はない。
【0079】
以上のように、印刷ジョブの余白部に、パッチを印刷し、ジョブの実行時に計測を行うことで、色の変動判定、補正のためだけに用紙を消耗することを避けることができる。また、印刷ジョブを中断し、色の変動判定チャートを出力する必要がないため、画像形成装置100の生産性を落とすことなく、重要色の色品質を保持することができる。また、印刷の後にパッチが形成された余白部は断裁されるため、成果物に対する影響を与えることなく、色の変動判定、補正を行うことができる。
【0080】
<第四実施形態>
以下、図面を参照して本発明の第四実施形態について説明する。なお、第一〜第三実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0081】
第一〜第三実施形態では、1部の出力中にパッチパターンの出力、及び、色の変動の程度判定、補正処理を実施しているが、その限りではなく、印刷ジョブを複数部数出力する場合にも上記の色の変動の判定、補正処理を所定のタイミングで実施しても良い。
【0082】
本実施形態では、2ページの印刷ジョブを100部印刷する場合を例に図13を用いて説明する。
【0083】
図13に示すようなジョブを1部のみ印刷する場合は、わずか2ページの出力中に色の変動が発生する可能性は低いため、色の変動の程度を判定する必要性はほとんどないと考えられる。しかし、このようなジョブを100部印刷する場合は、部間で色の変動が発生する可能性は大いにある。
【0084】
この部間の色の変動を抑えるために、コントローラユニット201は例えば、10部ごとに抽出色のパッチパターン1301の出力と色の変動の程度について判定処理を実施又は変動に対して補正処理を実施する。
【0085】
以上のように、印刷ジョブを複数部数出力する場合に、色の変動の判定、補正処理を所定のタイミングで実施する。ここでの所定のタイミングは、所定部数間隔で行う。なお、印刷物において、ページ数が所定の値以下であり、かつ、印刷部数が所定の部数以上である場合に、本実施形態に示す複数部数単位で行うようにしてもよい。また、複数部数の総ページ数に応じて、所定部数間隔を決定し、判定、補正処理を行うようにしても構わない。
【0086】
以上、本実施形態により、少数ページジョブを大量部数出力する際の色の変動も低減させることができる。
【0087】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された印刷ジョブを解析し、該印刷ジョブのうちの複数のページで使用される色を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された抽出色のパッチ画像を形成する形成手段と、
前記形成手段で形成されたパッチ画像を測定し、前記抽出色における基準値からの色の変動量を判定する判定手段と、
前記入力された印刷ジョブを印刷する際に、前記判定手段で判定された色の変動量を用いて前記抽出色を補正する補正手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、前記入力された印刷ジョブのうち、指定された範囲から色を抽出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、色の抽出対象となる、ページ内に含まれるオブジェクトの属性を限定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記入力された印刷ジョブが印刷処理される前に前記判定を実施することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記形成手段は、予め決定されたページ枚数の間隔で前記パッチ画像を形成することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記形成手段は、ページの余白部に前記パッチ画像を形成し、
前記判定手段は、前記入力された印刷ジョブの実行時に、前記余白部に形成されたパッチ画像を用いて前記抽出色の変動量を判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記形成手段は、前記抽出色が使用されるページの分布に応じて、前記パッチ画像の形成のタイミングを変動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記形成手段による前記パッチ画像を形成するタイミング、及び、前記判定手段による該抽出色の変動量を判定するタイミングは、前記入力された印刷ジョブのページ数に関する情報および部数の情報を用いて決定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記形成手段により形成されたパッチ画像の測定は、当該画像形成装置の用紙を定着してから排紙をするまでの搬送路上に配置されているセンサによって行われることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
抽出手段が、入力された印刷ジョブを解析し、該印刷ジョブのうちの複数のページで使用される色を抽出する抽出工程と、
形成手段が、前記抽出工程にて抽出された抽出色のパッチ画像を形成する形成工程と、
判定手段が、前記形成工程にて形成されたパッチ画像を測定し、前記抽出色における基準値からの色の変動量を判定する判定工程と、
補正手段が、前記入力された印刷ジョブを印刷する際に、前記判定工程にて判定された色の変動量を用いて前記抽出色を補正する補正工程と
を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
コンピュータを、
入力された印刷ジョブを解析し、該印刷ジョブのうちの複数のページで使用される重要色を抽出する抽出手段、
前記抽出手段で抽出された抽出色のパッチ画像を形成する形成手段、
前記形成手段で形成されたパッチ画像を測定し、前記抽出色における基準値からの色の変動量を判定する判定手段、
前記入力された印刷ジョブを印刷する際に、前記判定手段で判定された色の変動量を用いて前記抽出色を補正する補正手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−21467(P2013−21467A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152343(P2011−152343)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FLASH
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】