説明

画像形成装置及び画像形成装置の起動方法

【課題】装置に電源が投入された後、定着ユニットの過熱を開始するまでの時間を早め、もって画像形成装置の起動時間を短縮すること。
【解決手段】用紙上に転写した顕色剤画像を加熱及び加圧して定着させる画像形成装置1であって、用紙上に転写された顕色剤画像を定着させる定着ユニット25と、画像形成装置1に含まれる各部の制御及び起動時診断を実行するエンジン制御部112とを有し、エンジン制御部112は、画像形成装置1に含まれる各部のうち定着ユニット25の動作に係る部位の診断をその他の部位の診断より優先的に実行し、定着ユニット25の動作に係る部位の診断が終了した場合に定着ユニット25を起動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成装置の制御方法に関し、特に画像形成装置の立ち上げ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化が推進される傾向にあり、電子化された情報の出力に用いられるプリンタやファクシミリ、書類の電子化に用いるスキャナ等の画像形成装置は欠かせない機器となっている。このような画像形成装置は、撮像機能、画像形成機能及び通信機能等を備えることにより、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ、複写機として利用可能な複合機として構成されることが多い。この様な画像形成装置においては、ユーザが装置の電源供給を開始してから装置が使用可能な状態になるまで、即ち起動時間の短縮化が望まれている。画像形成装置の起動処理においては、装置各部のチェックや使用可能な状態への準備等様々な処理が実行されるが、最も長い時間を要する処理の1つが定着ユニットの起動処理である。これは、通常のユニットの起動処理は主に電気的な信号の確認によって完了することに対し、定着ユニットの起動については、定着ローラの加熱に長い時間を要すること等による。この様な課題に対して、定着ローラの薄型化による加熱時間の短縮や、定着ローラを加熱するヒータの性能向上等の対策が実施されている。
【0003】
他方、上述したように複数の機能を実現するためのオプション機器が接続される画像形成装置の起動に際しては、オプション機器の接続状態を予め装置本体の不揮発性記憶媒体に格納しておくことにより、装置起動に要する時間を短縮する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載されている技術は、オプション機器の起動時間短縮に係る技術であり、本件が要旨とする定着ユニットの起動時間とはその性質を異にする。
【特許文献1】特開2006−23611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した、定着ユニットの起動時間短縮のために実施されている定着ローラの薄型化は、定着ローラの磨耗に対する耐久性を低減させ、結果的に定着ローラの寿命短縮に繋がる。また、ヒータの性能向上にも限界があると共に、性能向上に伴って消費電力の増大に繋がるため、省電力化の面からは好ましくない。
【0005】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたもので、装置に電源が投入された後、定着ユニットの加熱を開始するまでの時間を早め、もって画像形成装置の起動時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、用紙上に転写した顕色剤画像を加熱及び加圧して定着させる画像形成装置であって、用紙上に転写された顕色剤画像を定着させる定着部と、前記画像形成装置に含まれる各部の制御及び起動時診断を実行する制御部とを有し、前記制御部は、前記画像形成装置に含まれる各部のうち前記定着部の動作に係る部位の診断をその他の部位の診断よりも優先的に実行し、前記定着部の動作に係る部位の診断が終了した場合に前記定着部を起動することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記定着部の動作に係る部位の診断においては、前記定着部による定着処理が正常に実行可能か否かを確認することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置において、前記用紙を収容する給紙トレイを更に有し、前記定着部の動作に係る部位の診断とは、前記定着部の接続有無確認及び前記給紙トレイ内の前記用紙残量確認のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3いずれか1項に記載の画像形成装置において、前記優先的に実行される診断において診断する部位に、前記その他の部位を追加可能であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成装置において、前記制御部による診断結果を診断部位毎に記憶する記憶部を更に有し、前記制御部は、前記記憶部に記憶されている診断結果に基づいて前記その他の部位の診断を前記優先的に実行される診断において実行するか否か判断することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、請求項6に記載の画像形成装置において、前記制御部による起動時診断対象となっている部位が交換された場合、前記記憶部に記憶された診断結果のうち当該交換された部位に係る情報をリセットすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の画像形成装置において、前記記憶部は、前記診断結果として総診断回数と当該診断における不具合検知回数とを記憶し、前記制御部は、前記総診断回数に対する前記不具合検知回数の割合が所定の閾値以上である場合、当該診断部位を前記優先的に実行される診断において診断することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像形成装置において、前記制御部は、前記優先的に実行される診断において診断すべき部位の前記総診断回数に対する前記不具合検知回数の割合が所定の閾値未満である場合、前記その他の部位として診断することを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の画像形成装置において、前記制御部は、前記総診断回数が所定の閾値未満である場合、当該診断部位を前記優先的に実行される診断において診断することを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、用紙上に転写した顕色剤画像を加熱及び加圧して定着させる画像形成装置の起動方法であって、前記画像形成装置の電源投入時において前記画像形成装置に含まれる各部のうち前記定着動作に係る部位の診断をその他の部位の診断より優先的に実行し、前記定着動作に係る部位の診断が終了した場合に前記定着動作を実行する部位を起動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、装置に電源が投入された後、定着ユニットの加熱を開始するまでの時間を早め、もって画像形成装置の起動時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明は、画像形成装置の起動処理において、定着ユニットの加熱開始前に完了させる必要がある処理を優先的に実行して加熱を開始するタイミングを早め、それと平行して他の処理を行うものである。
【実施例1】
【0018】
初めに本実施例に係る画像形成装置の全体構成について説明する。図1は、本実施例に係る画像形成装置1の全体を示す断面図である。本実施形態に係る画像形成装置1は、プリントエンジン100、給紙テーブル200、スキャナユニット300及びADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)400を有する。プリントエンジン100には、中央に、中間転写ユニットがあり、中間転写ユニットは無端ベルトである中間転写ベルト10を有する。
【0019】
中間転写ベルト10は、3つの支持ローラ14〜16に掛け廻されており、時計廻りに回動駆動される。第2の支持ローラ15の左に、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニングユニット17が設けられている。第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15との間の中間転写ベルト10のベルト面に対向して作像装置20が設けられている。作像装置20は、中間転写ベルト10の移動方向に沿って、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の作像ユニット18を備える。作像ユニット18は、各色の感光ドラム40や図示しないトナー(顕色剤)ボトル、帯電ユニット、現像ユニット及び感光体クリーニングユニットを有する。感光体クリーニングユニットは、感光ドラム40から剥離されたトナーを一時的に溜めておく感光体廃トナーボトルを有する。作像装置20の上方には、各色感光体ユニットの各感光体ドラムに画像形成のためのレーザ光を照射する書き込みユニット21が設けられている。
【0020】
中間転写ベルト10の下方には、2次転写ユニット22が設けられている。2次転写ユニット22は、2つのローラ23間に無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡し、中間転写ベルト10を押し上げて第3の支持ローラ16に押当てるように配置されている。この2次転写ベルト24は、中間転写ベルト10上の画像を用紙上に転写する。2次転写ユニット22の横には、用紙上の転写画像を定着する定着ユニット25が設けられており、トナー像(顕色剤画像)が転写された用紙がそこに送り込まれる。定着ユニット25は、無端ベルトである定着ベルト26に定着ローラ27を押し当てたものである。この他、定着ローラ27のためのヒータ(加熱部)等も含まれる。2次転写ユニット22および定着ユニット25の下方にはシート反転ユニット28が設けられている。シート反転ユニット28は、表面に画像を形成した直後の用紙の裏面にも画像を記録するために、表裏を反転して送り出す。
【0021】
画像形成装置1の操作部(図1において不図示)において、スタートスイッチが押されると、ADF400の原稿給紙台30上に原稿があるときは、それをコンタクトガラス32上に搬送する。ADF400に原稿が無いときにはコンタクトガラス32上の手置きの原稿を読むために、スキャナユニット300のスキャナを駆動し、第1キャリッジ33および第2キャリッジ34を、読み取り走査駆動する。そして、第1キャリッジ33上の光源からコンタクトガラスに光を発射するとともに原稿面からの反射光を第1キャリッジ33上の第1ミラーで反射して第2キャリッジ34に向け、第2キャリッジ34上のミラーで反射して結像レンズ35を通して読み取りセンサであるCCD(Charge Coupled Devices)36に結像する。CCD36で得た画像信号に基づいてK,Y,M,C各色記録データが生成される。
【0022】
また、スタートスイッチが押されたときに、中間転写ベルト10の回動駆動が開始されるとともに、作像装置20に含まれる各ユニットの作像準備が開始される。そして各色作像の作像シーケンスが開始されると、各色用の感光体ドラムに各色記録データに基づいて変調された露光レーザが投射され、各色作像プロセスにより各色トナー像が中間転写ベルト10上に一枚の画像として、重ね転写される。中間転写ベルト10に形成されたトナー画像の先端が2次転写ユニット22と重なる時と同時に、画像形成用の用紙の先端が2次転写ユニット22に進入するように、タイミングを合わせて用紙が2次転写ユニット22に送り込まれる。これにより中間転写ベルト10上のトナー像が用紙に転写する。トナー像が移った用紙は定着ユニット25に送り込まれ、定着ユニット25による加熱、加圧処理によりトナー像が用紙に定着される。ここでは中間転写ベルト及び2次転写ベルトの2つの転写ベルトを有する機構を説明したが、一つのベルトで行う事ができる転写機構もある。
【0023】
画像形成用の用紙は、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つを選択回転駆動し、給紙ユニット43に多段に備えられた給紙トレイ44の1つからシートを繰り出し、分離ローラ45で1枚だけ分離して、搬送コロユニット46に入れ、搬送ローラ47で搬送してプリントエンジン100内の搬送コロユニット48に導き、搬送コロユニット48のレジストローラ49に突き当てて止めてから、前述のタイミングで2次転写ユニット22に送り出される。手差しトレイ51上に用紙を差し込んで給紙することもできる。ユーザが手差しトレイ51上に用紙を差し込んでいる場合は、プリントエンジン100が給紙ローラ50を回転駆動して手差しトレイ51上のシートの一枚を分離して手差し給紙路53に引き込み、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
【0024】
定着ユニット25で定着処理を受けて排出される用紙は、切換爪55で排出ローラ56に案内され、排紙トレイ57上にスタックされる。他の態様として、切換爪55でシート反転ユニット28に案内され、そこで表裏反転されて再び転写位置へと導かれ、裏面に画像形成された後に排出ローラ56に搬送される。一方、画像転写後の中間転写ベルト10上に残留する残留トナーは、中間転写体クリーニングユニット17で除去され、中間転写ベルト10は再度の画像形成に備える。レジストローラ49は一般的には接地されて使用されることが多いが、用紙の紙粉除去のためにバイアス電圧を印加することも可能である。その際は、例えば導電性ゴムローラを用いバイアスを印加する。この導電性ゴムローラは、直径18mmで、表面を1mm厚みの導電性NBRゴムにより実現可能である。電気抵抗はゴム材の体積抵抗で109Ωcm程度である。
【0025】
次に、図2を参照して、本実施例に係る画像形成装置1の制御系について説明する。図2は、本実施例に係る画像形成装置1に係る全体構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施例に係る画像形成装置1は、図1において説明したものの他、コントローラ101、ホストI/F102及びディスプレイパネル103を有する。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。ホストI/F104は、画像形成装置1がLAN等の回線を介してホスト装置等の他の機器と通信する際のインターフェースである。ホスト装置が送信した印刷ジョブは、ホストI/F104を介してコントローラ101に入力され、コントローラ101の制御に従って印刷処理が実行される。ディスプレイパネル105は、画像形成装置1の状態を視覚的に表示する出力インターフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが画像形成装置1を直接操作する際の入力インターフェースでもある。
【0026】
コントローラ101は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)並びに磁気ディスクや光学ディスク等の不揮発性記憶媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリ(以下、メモリ)にロードされ、CPU(Central Processing Unit)の制御に従って構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ101が構成される。コントローラ101は、夫々の機能別に主制御部111、エンジン制御部112及び入力制御部113を有する。
【0027】
主制御部111は、コントローラ101に含まれる各制御部全体を制御する役割を担い、他の制御部が受信若しくは生成した信号に基づいてコントローラ101の各部に命令を与える。エンジン制御部112は、プリントエンジン100、給紙テーブル200等の画像形成手段及びスキャナユニット300、ADF400等の画像撮像手段を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担い、主制御部111の命令に従って給紙テーブル200に含まれる給紙ローラ42や搬送ローラ47を駆動し、プリントエンジン100に用紙を搬送すると共に、プリントエンジン100を駆動して用紙に対して画像形成を実行する。また、エンジン制御部112は、主制御部111の命令に従ってADF400に含まれる原稿給紙台30及び搬送ローラを駆動し、コンタクトガラス32上に読み取り原稿を搬送すると共に、第1キャリッジ33、第2キャリッジ34を駆動してCCD36により読み取り原稿の光学情報を電気信号に変換する。
【0028】
更に、エンジン制御部112は、画像処理装置1に電源が投入されてコントローラ101が構成されると、主制御部111の制御によらず、独自にプリントエンジン100やスキャナユニット300及びADF400等の起動処理を実行する。入力制御部113は、ホストI/F102を介して入力される印刷ジョブやディスプレイパネル103からユーザによって入力する操作情報を主制御部111に入力すると共に、主制御部の命令に従ってディスプレイパネル103に情報表示を行い若しくはホストI/F102を介してホスト装置に情報を送信する。
【0029】
次に、本実施例に係る画像形成装置1の通常動作について説明する。画像形成装置1がプリンタとして動作する場合は、まず、入力制御部113がホストI/F102に接続されたUSB(Universal Serial Bus)やLAN(Local Area Network)を介して受信した印刷ジョブを主制御部111に入力する。主制御部111は受信した印刷ジョブをエンジン制御部112に入力する。エンジン制御部112はプリントエンジン100及び給紙テーブル200を制御し、給紙テーブル200から印刷用紙を引き出し、プリントエンジン100に搬送すると共に、印刷ジョブに含まれる画像情報から印刷情報を生成してプリントエンジン100に入力する。プリントエンジン100は、給紙テーブル200から搬送される用紙に対して、エンジン制御部112から入力される印刷情報に従って画像形成を実行する。また、プリントエンジン100は、画像形成の終了した用紙を排紙トレイ57に排出する。
【0030】
画像形成装置1がスキャナとして動作する場合は、ユーザによるディスプレイパネル103の操作に応じて入力制御部113が主制御部111に操作信号を送信する。主制御部111は、入力制御部113から受信した操作信号をエンジン制御部112に入力する。エンジン制御部112は、スキャナユニット300及びADF400を制御し、ADF400にセットされた撮像対象原稿をスキャナユニット300に搬送すると共に、スキャナユニット300に含まれるCCD等の撮像素子が原稿を光学的に走査し、光学情報から画像情報を生成する。エンジン制御部112は、スキャナユニット300が生成した画像情報を受信する。エンジン制御部112は、スキャナユニット300から受信した画像情報に基づいて印刷情報を生成し、その印刷情報に基づいてプリンタ動作の場合と同様にプリントエンジン100及び給紙テーブル200を駆動する。
【0031】
この様な画像形成装置1において、本件の要旨は、装置起動時に要する時間が最短となるように、並行処理等を利用して処理の順番を最適化することにある。以下、図3を参照して、本実施例に係る画像形成装置1の起動時の処理、即ち電源が投入されてから動作可能状態となるまでの処理を説明する。図3は、本実施形態に係る画像形成装置1において、電源が投入されてから装置が使用可能となるまでに実行される処理を縦方向に時系列に示している。図3に示すように、電源が投入され画像処理装置1の起動処理が開始されると、CPUがリセットされ(S301)、タスクが起動してコントローラ101が構成される(S302)。コントローラ101に含まれるエンジン制御部112は、電源が投入されて起動した後、図3に示すように、プリントエンジン100において定着ユニット25の起動に関連する処理(以降、定着ユニット起動関連処理とする)、その他の部位の起動に関連する処理及びスキャナユニット300等のオプション機器の起動に関する処理を並列して行う。即ち、エンジン制御部112が画像形成装置1の起動時診断を実行する診断部として機能する。
【0032】
エンジン制御部112は、起動後後、先ずエンジン保存SP(Spec)データ取得処理を行う(S303)。ここでは、エンジン制御部112は、装置が有するROMやEEPROMから各部を制御する際のパラメータを取得する。また、エンジン制御部112は、定着ユニット25が正常に動作するためのエラー確認を実行する(S304)。ここで確認される事項は、実際に画像形成装置1が画像定着を実行できる状態となっているか否か、即ち、画像定着を実行した場合にエラーが発生しないか否かである。具体的には、定着ユニット25がセットされているか否か、画像形成装置1のカバーが開いていないか否か及び給紙トレイ44の残紙確認等を実行する(以降、ここで確認されるセンサを定着ユニット動作関連センサとする)。尚、画像形成装置1のカバーとは、例えば、作像ユニット18に含まれるトナーボトルの交換等の際に開くカバーである。その後、エンジン制御部112は、定着ユニット25の定着ローラ27に含まれるヒータがON/OFF状態になることを確認するリレー確認を実行する(S305)。
【0033】
SPデータ取得及びリレー確認が終了すると、エンジン制御部112は定着ユニット25の起動処理を開始する。具体的には、エンジン制御部112は、定着SPデータ利用可能準備を実行し(S306)、S303において取得したSPデータのうち定着ユニット25の動作に関するパラメータを、夫々の制御モジュールに適用する。定着SPデータ利用可能準備の完了後、エンジン制御部112は、定着ユニット25を動作させるモジュールを構成するための定着ソフトをスタートさせる(S308)。また、エンジン制御部112は、SPデータ利用可能準備を実行し(S307)、S303において取得したSPデータのうち、定着ユニット25の動作に関係しないパラメータを、夫々の制御モジュールに適用する。定着ユニット25を制御するためのモジュールがスタートした後、エンジン制御部112は、定着ローラ27のヒータをONし、加熱を開始する(S309)。
【0034】
エンジン制御部112は、S303〜S309の定着ユニット25の起動処理と並行して若しくはS303〜S306の処理の後発処理として、他の起動処理を実行する。具体的には、プリントエンジン100に含まれる各ユニットのうち定着動作に関連しないユニットの起動及びオプション機器として接続された周辺機器の起動である。定着動作に関連しないユニットの起動においては、エンジン制御部112は、先ずユニット接続確認を実行する(S310)。ここで接続が確認されるユニットは、図1において説明したプリントエンジン100に含まれる定着ユニット25以外のユニットであり、作像装置20、書き込みユニット21及び2次転写ユニット22等である。その後、S310において接続が確認されたユニットのエラー有無を確認する(S311)と共に、感光ドラム40や図示しないトナーボトル等のPCU(Photo conductor Cleaning Unit)に備えられるRFIDへのポーリングを実行し(S312)、夫々のユニットが正常であることを確認する。その結果、セットされているトナーボトルの色が間違っている場合や、交換時期が近い事などがディスプレイパネル103に表示される。また、主制御部111が起動し、エンジン制御部112との間の通信が確立すると、エンジン制御部112は主制御部111から受信する信号に従って作像系リカバリ処理を実行する(S313)。周辺機器の起動においては、スキャナユニット300及びADF400等の接続されている周辺機器を初期化し(S314)、起動する(S315)。
【0035】
図4は、本実施例に係る画像形成装置1における定着ユニット起動関連処理を示すフローチャートである。電源が投入され、コントローラ101が構成されると(S401)、エンジン制御部112は、プリントエンジン100に含まれる夫々のユニットのセンサ出力を取得する(S402)。そして、エンジン制御部112は、S402で取得したセンサ出力のうち、定着ユニット動作関連センサのエラー有無を確認する(S403)。定着ユニット動作関連センサにエラーがなければ、エンジン制御部112は定着ローラを加熱するヒータのリレー確認を実行する(S404)。リレーに異常がなければ(S405)、エンジン制御部112は、定着ソフトをスタートさせ(S406)、定着ローラの加熱を開始し(S408)、処理を終了する。他方、S403やS405でエラーが確認されれば、警告画面を表示し(S407)、処理を終了する。
【0036】
図3に示すように、本実施例に係る画像処理装置1の起動処理においては、コントローラ101内部の処理、定着ユニット25に関連する起動処理を優先的に実行し、定着ユニット25に関連しない起動処理及び周辺機器の起動処理を並行若しくは後発的(劣後的)に実行している。従って、コントローラ101を構成する制御プログラムは並列処理によって複数の処理を同時に実行することとなる。この時、夫々の処理においては、主にセンサ類のチェックが実行されるため、通信待機時間が生じる。この通信待機時間においてはCPUの処理は必要とされないので、並行して複数の処理を実行しても、1つ1つの処理に要する時間が増大するようなデメリットがない。また、定着ユニット25に関連する起動処理の優先度を他の処理よりも高く設定することにより、並列処理によるデメリットを回避することができる。この様に、本実施例においては、定着ユニット25の起動に必要となる情報を優先的にチェックし、定着ユニット25に含まれる定着ローラ27の加熱開始タイミングを早めている。それと並行して定着ユニット25に関連しないユニットや周辺機器の起動を実行し、画像処理装置1の起動処理が完了し、使用可能となるまでの時間の短縮を実現している。
【0037】
尚、上記の説明においては、図3に示すように、タスクが起動してコントローラ101が構成された後、エンジン制御部112は定着ユニット25に関連する部位の起動とその他の部位の起動とを並行してスタートする例を説明したが、この他、例えば、定着ユニット25に関連する部位のチェックが完了してからその他の部位のチェックを開始しても良いし、定着ローラ27の加熱がスタートしてから他の処理を開始しても良い。これらの態様は、コントローラ101を構成するCPUの並列処理能力によって適宜選択されることが好ましい。
【0038】
また、上記の説明においては、定着ユニット25の起動前に行う処理として、定着ユニット動作関連センサの確認及び定着ローラ27を加熱するヒータのリレー処理を実行する例を説明した。ここで、定着ユニット動作関連センサの確認例として、定着ユニット25がセットされているか否か、画像形成装置1のカバーが開いていないか否か及び給紙トレイ44の残紙確認等を実行する例を説明した。しかしながら、定着ユニット動作関連センサとして選択されるセンサは、画像形成装置1の機種や使用環境によっても異なる。従って、本実施例において記載した処理以外の他の処理が含まれても良いし、本実施例において選択されている処理が省略されても良い。
【0039】
また、上記の説明においては、定着ユニット動作関連センサに含めるか否かの選択基準として、実際に画像形成装置1が画像定着を実行できる状態となっているか否か、即ち、画像定着を実行した場合にエラーが発生しないか否かを例として説明したが、この他、例えば定着ユニット25の加熱開始に際して確認されるべき事項の確認とすることもできる。このような確認事項の一環として、定着ローラ27のヒータをON/OFFするリレー確認を実行し、ヒータをOFFにできること、即ち、定着ローラ27が過熱(オーバーヒート)状態とならないことを確認しているが、その他の部位においても画像形成装置1の故障等に繋がる要因の有無を確認するようにしても良い。
【実施例2】
【0040】
実施例1においては、定着ユニット25の動作に関連する部位のチェックを優先的に行うことにより、定着ユニット25に含まれる定着ローラ27の加熱開始タイミングを早め、他の部位の起動はそれと並行して実行し、定着ローラ27の温度が動作可能温度になるまでの間に完了する例を説明した。しかしながら、定着ローラ27の加熱を開始した後であっても、その他の部位にエラーが確認されれば、装置の起動処理は停止することとなる。従って、定着ユニット25の動作に関連しない部位にエラーがある場合、装置に電源を投入してからエラーが判明するまでの期間が長くなることになると共に、定着ローラ27に対して実行された加熱処理が無意味なものとなってしまう。本実施例においては、定着ユニット25の動作に関連しない部位におけるエラー発生の可能性を考慮し、起動時診断の診断結果履歴に基づいてその他の部位の優先チェック実行有無を判断する例を説明する。尚、実施例1と同様の符号を付す構成については実施例1と同一又は相当部を示し、説明を省略する。
【0041】
本実施例に係る画像形成装置1は、図1及び図2に示す構成と概ね同様である。ここで、本実施例に係るエンジン制御部112は、毎回の起動時に実行するチェックの結果を格納するテーブルを有する。図5に、本実施例に係るエンジン制御部112が有する、チェック結果テーブルを示す。図5に示すように、チェック結果テーブルは、チェック対象である夫々のセンサ名、優先チェック要否のフラグ、エラー回数/総チェック(起動)回数、閾値及び夫々のセンサを一意に識別するIDを有する。図5に示すように、チェック結果テーブルは、チェック対象のセンサ毎にセンサ名、エラーを検知した回数及びチェックを行った回数(立ち上げ処理を行った回数)を記憶している。また、夫々のセンサ毎に総チェック回数に対するエラー許容回数の閾値(エラー回数/総回数)が設定されており、実際のチェック結果がこの閾値以上であるか未満であるかによって、優先チェック(図3のS304におけるチェック)の要否が決定される。
【0042】
また、チェック結果テーブルには定着ユニット25の動作に関するセンサのデータも含まれ、それらのセンサに対しては閾値に関わらず優先チェックを実行するため、閾値はNull値となっている。また、総回数に対するエラー回数の閾値はユーザが自由に設定することが可能であり、夫々のセンサ毎に異なる閾値を設定することも可能である。優先チェック要否の項目が“Yes”となっているセンサについては、図3のS304において、即ち定着ユニット25の起動前において優先的にチェックを実行する。他方、優先チェック要否の項目が“No”となっているセンサについては、図3のS310、S311及びS312において、即ち定着ユニット25の起動とは関係なく劣後的にチェックを実行する。即ち、設定された閾値を基準として、エラー発生頻度が高いと判断された部位については、チェックを後回しにすることなく、定着ローラ27の加熱開始前にチェックを実行する。他方、エラー発生頻度が低いと判断された部位については、チェックを後回しにし、定着ローラ27の加熱開始後若しくは定着ローラ27の加熱開始前のチェックと並行して実行する。尚、チェック結果テーブルはコントローラ101内部に含まれる記憶媒体に記憶される。
【0043】
次に、本実施例に係る画像形成装置1の起動関連処理について図6を参照して説明する。図6は、本実施例に係る画像形成装置1における定着ユニット起動関連処理を示すフローチャートである。電源が投入され、コントローラ101が構成されると(S601)、エンジン制御部112は、プリントエンジン100に含まれる夫々のユニットのセンサ出力を取得する(S602)。そして、エンジン制御部112は、チェック結果テーブルを参照し、夫々のセンサについての優先チェック要否を確認する。そして、S602で取得したセンサ出力のうち、優先チェックが必要なセンサのみエラー有無を確認する(S603)。定着ユニット動作関連センサにエラーがなければ、エンジン制御部112は、チェック結果テーブルの値をインクリメントした後(S604)、定着ローラを加熱するヒータのリレー確認を実行する(S605)。リレーに異常がなければ(S606)、エンジン制御部112は、定着ソフトをスタートさせ(S607)、定着ローラの加熱を開始し(S609)、処理を終了する。
【0044】
他方、S604やS606でエラーが確認されれば、警告画面を表示し(S608)、チェック結果テーブルの値をインクリメントした後(S604)、処理を終了する。尚、S604のインクリメント処理では、図5に示すチェック結果テーブルにおいて総チェック回数のみをインクリメントし、S610のインクリメント処理では、総チェック回数とエラー回数とをインクリメントする。また、エラー発生回数をインクリメントした結果、エラー発生割合が閾値を超えたセンサについては、優先チェック要否を“Yes”とする。また、S604においてチェック結果テーブルをインクリメントした結果、エラー発生割合が閾値未満となったセンサについては、優先チェック要否を“No”とする。即ち、図3に示すS310、S311、S312におけるチェックにおいてチェックするように設定する。
【0045】
この様に、本実施例に係る画像形成装置1の起動処理においては、定着ローラ27の加熱開始タイミングを早めるために、過去のチェック結果に基づいて各部のエラー発生の頻度を確認し、エラー発生の頻度が低い部位についてはチェックを後回しにしている。換言すると、エラー発生の頻度が高い部位については、定着ユニット25の起動前に実行される優先チェック項目に追加可能としている。これにより、定着ローラ27の加熱開始前に実行するべきチェック項目を削減し、定着ローラ27の加熱開始タイミングを早めている。また、エラー発生頻度が高い部位については、定着ユニット25の起動に先駆けてチェックを実行することにより、エラー発見のタイミングを早めている。これにより、定着ローラ27の加熱が開始した後にエラーが発生し、定着ローラ27に対して行った加熱処理が無駄な処理となることを防いでいる。
【0046】
尚、上記の説明においては、図5に示すチェック結果テーブルにおいて、定着ユニット25の動作に関するセンサの閾値はNullとし、無条件で優先チェックを実行する例を説明した。しかしながら、これらのセンサについても閾値を設定し、エラー発生の割合が低い場合にはチェックを後回しにするようにしても良い。これにより、定着ユニット25の起動に際して、チェックを省略することにより不具合が発生する可能性を低減すると共に、定着ローラ27の加熱開始タイミングを早めることが可能となる。
【0047】
尚、プリントエンジン100に含まれる各ユニットを交換した場合、その交換したユニットに該当するチェック結果テーブルのエラー回数/総回数項目はリセットされる。これにより、異なる部品のエラー履歴に基づいて優先チェック要否が判断されてしまうことを防ぐことができる。この結果、エラー発生割合は0%となり、閾値が設定されていない場合を除いて優先チェックは“No”となる。しかしながら、交換されたユニットの初期不良等も考えられる。この様な課題に対し、例えばチェック総回数に閾値を設け、チェック総回数がその閾値に達するまでは無条件で優先チェックを実行するようにしても良い。
【0048】
また、上記の説明においては、チェック結果テーブルに格納された起動時診断のエラー発生率に基づいて優先チェック要否を判断する例を説明したが、チェック結果テーブルに格納されているチェック結果の全てを参照するのではなく、例えば最新の100回のチェック結果等、所定の期間以内のチェック結果を参照するようにしても良い。また、エラー発生割合に限らず、チェック履歴として格納されたその他の情報に基づいて優先チェックの要否を判断するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例に係る画像形成装置を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る画像形成装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る画像形成措置の起動処理を時系列に示す図である。
【図4】本発明の実施例に係る画像形成装置の定着ユニット起動関連処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施例に係る画像形成装置のチェック結果を格納するテーブルを示す図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る画像形成装置の定着ユニット起動関連処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 画像処理装置
2 後処理装置
25 定着ユニット
27 定着ローラ
100 プリントエンジン
101 コントローラ
102 ホストI/F
103 ディスプレイパネル
111 主制御部
112 エンジン制御部
113 入力制御部
200 給紙テーブル
300 スキャナユニット
400 ADF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に転写した顕色剤画像を加熱及び加圧して定着させる画像形成装置であって、
用紙上に転写された顕色剤画像を定着させる定着部と、
前記画像形成装置に含まれる各部の制御及び起動時診断を実行する制御部とを有し、
前記制御部は、前記画像形成装置に含まれる各部のうち前記定着部の動作に係る部位の診断をその他の部位の診断よりも優先的に実行し、
前記定着部の動作に係る部位の診断が終了した場合に前記定着部を起動することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記定着部の動作に係る部位の診断においては、前記定着部による定着処理が正常に実行可能か否かを確認することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙を収容する給紙トレイを更に有し、
前記定着部の動作に係る部位の診断とは、前記定着部の接続有無確認及び前記給紙トレイ内の前記用紙残量確認のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記優先的に実行される診断において診断する部位に、前記その他の部位を追加可能であることを特徴とする、請求項1乃至3いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部による起動時診断結果を診断部位毎に記憶する記憶部を更に有し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている診断結果に基づいて前記その他の部位の診断を前記優先的に実行される診断において実行するか否か判断することを特徴とする、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部による起動時診断対象となっている部位が交換された場合、前記記憶部に記憶された診断結果のうち当該交換された部位に係る情報をリセットすることを特徴とする、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記憶部は、前記診断結果として総診断回数と当該診断における不具合検知回数とを記憶し、
前記制御部は、前記総診断回数に対する前記不具合検知回数の割合が所定の閾値以上である場合、当該診断部位を前記優先的に実行される診断において診断することを特徴とする、請求項5または6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記優先的に実行される診断において診断すべき部位の前記総診断回数に対する前記不具合検知回数の割合が所定の閾値未満である場合、前記その他の部位として診断することを特徴とする、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記総診断回数が所定の閾値未満である場合、当該診断部位を前記優先的に実行される診断において診断することを特徴とする、請求項7または8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
用紙上に転写した顕色剤画像を加熱及び加圧して定着させる画像形成装置の起動方法であって、
前記画像形成装置の電源投入時において前記画像形成装置に含まれる各部のうち前記定着動作に係る部位の診断をその他の部位の診断より優先的に実行し、
前記定着動作に係る部位の診断が終了した場合に前記定着動作を実行する部位を起動することを特徴とする、画像形成装置の起動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−233407(P2008−233407A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71308(P2007−71308)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】