説明

画像形成装置

【課題】像担持体の周面に帯電装置、像露光部、現像装置を複数組配設し、像担持体上に重ねトナー像を形成する画像形成装置において、高画質を維持しながら装置全体の小型化を図る。
【解決手段】感光体1周面に、帯電装置2と、像露光部3と、現像装置4とを複数組配設し、感光体に帯電、露光、現像を複数回繰り返して重ねトナー像を形成する画像形成装置において、現像装置3は、表面に発生する進行波電界によりトナーを現像領域まで搬送するトナー搬送部材30と、トナー搬送部材にトナーを供給するトナー供給手段と、現像領域を通過したトナーをトナー搬送部材上から回収する回収手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルカラー画像を形成する画像形成装置として以下の3つの方式が知られている。
(A)カラー画像を形成する色と同数の感光体と、各感光体の周囲に配置される帯電装置、像露光部、現像装置を備え、感光体上にそれぞれ形成した単色のトナー像を転写体に重ね合わせてカラー画像とする装置。この装置は1パスでカラー画像を転写体上に形成できるので、高速化に有利であるが、複数の感光体や転写体の搬送を要するため装置の容積が大型化してしまうという欠点がある。
(B)1つの感光体の周囲に、帯電装置、像露光部、各色の現像装置を備え、感光体を複数回回転して各色の帯電、露光、現像を繰り返してカラー画像を形成する装置。この装置は感光体、帯電装置、像露光部が一つだけであるので容積は小型化されるものの、速度が遅く、形成される画像のサイズが感光体の表面積以下に限定されるという制約がある。
(C)1つの感光体の周囲に帯電装置、像露光部、現像装置を複数組備え、感光体一回転以内に各色の帯電、露光、現像を順次行って感光体上にカラー画像を形成する装置。この装置は上記二つの方式の長所である高速化、及び、画像サイズに制約が無く小型化ができるという点を併せもっている。
【0003】
また、画像形成装置に採用される現像装置としては、回転駆動される現像ローラ表面に現像剤を担持して感光体との対向位置まで搬送して現像をおこなうものが広く知られている。ここで、(C)の方式を用いて一つの感光体に順次現像を行い感光体上にカラー画像を形成する画像形成装置では、高画質画像を得るために、先に現像されたトナー像を乱さないように非接触現像をおこなう必要がある。非接触現像をおこなうものとしては、上記回転駆動される現像ローラにDCにACを重畳した電圧を印加して、現像ローラから潜像担持体に非接触でトナーを転移させる所謂ジャンピング現像と称する方式が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
一方、近年、回転駆動される現像ローラを用いない現像装置も提案されている。これは、トナーを搬送するトナー搬送部材の機械的な駆動を無くして、トナーを静電的に搬送して現像をおこなう装置であり、特許文献3に記載のETH(Electrostatic Transport&Hopping)現象を利用したものである。ETH現象とは、粉体に作用する移相電界のエネルギーが機械的なエネルギーに変換されて、粉体自身が動的に変動する現象をいう。特許文献3の画像形成装置では、トナー搬送部材として複数の電極が所定ピッチで配設された静電搬送部材を用い、電極にn相の交流電圧が印加して発生させた進行波電界により、帯電したトナーの静電搬送部材面方向の移動(搬送)と、静電搬送部材面に垂直な方向の移動(ホッピング)とをおこなう。これにより、帯電したトナーを現像位置まで搬送するものである。現像位置においては、ホッピングしたトナーには、非画像部ではトナー搬送部材へ向かう力が、画像部では像担持体へ向かう力が作用し、静電潜像の現像が行われる。このようにETH現象を用いた現像方式をETH現像という。ここで、ETH現像はトナー搬送部材上でトナーをホッピングさせてその付着力を無くしながら現像位置に搬送することで、回転駆動されるトナー搬送部材を用いた構成では実現が望めなかったほどの非常に高効率な現像が実現可能となる。
【0005】
【特許文献1】特許公報3376199号
【特許文献2】特開平9−329947号公報
【特許文献3】特開2004−198675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記(C)の方式を用いた装置は高速化、小型化の画像形成を可能とする一方で、感光体の一周内に帯電装置、像露光部、現像装置を複数組配設するスペースが必要であり、必然的に感光体の径が大きくなってしまい、小型化が十分できない場合がある。また、帯電装置、像露光部、現像装置を複数組限られたスペース内に配置することにより各画像形成プロセス手段に互いに制約条件が生じてしまい、高画質化の阻害要因が発生する場合もある。
【0007】
また、現像装置として上記回転駆動される現像ローラを用いたものでは、感光体周面に対向して配置される現像ローラは、画像形成サイズが大きくなるに伴い機械精度確保のためにローラ径を大きくする必要がある。このため、必然的に感光体の径が大きくなり、画像形成装置も大きくなってしまう。
【0008】
また、回転駆動される現像ローラにDCにACを重畳した電圧を印加してジャンピング現像を行う現像装置にあっては、高電圧による帯電トナーの授受を行わなければならないため、高電圧電源が必要になり、装置の大型化、コストの増加を招いている。
【0009】
本発明は上記の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、像担持体の周面に帯電装置、像露光部、現像装置を複数組配設し、該像担持体上に重ねトナー像を形成する画像形成装置において、高画質を維持しながら装置全体の小型化を図ることのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面移動する像担持体周面に、帯電装置と、像露光部と、現像装置とを複数組配設し、該像担持体に帯電、露光、現像を複数回繰り返して該像担持体上に重ねトナー像を形成する画像形成装置において、上記現像装置は、表面に発生する進行波電界によりトナーを上記像担持体と対向する現像領域まで搬送するトナー搬送部材と、該トナー搬送部材にトナーを供給するトナー供給手段と、該現像領域を通過したトナーを該トナー搬送部材上から回収する回収手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、無端移動しながら上記像担持体上のトナー像を転写される転写体と、該転写体上のトナー像を加熱する加熱手段と、該加熱手段よりも下流で該転写体に対向する加圧部材とを有し、該転写体上に転写されたトナー像を該加熱手段にて軟化させ、該軟化したトナー像を該転写体と該加圧部材との間を通過する記録媒体上に転写同時定着する転写定着装置を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記像担持体と上記転写体との間に中間転写体を設け、該像担持体上のトナー像を該中間転写体を介して該転写体に転写することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の画像形成装置において、上記トナー搬送部材が長円形状または楕円形状であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3または4の画像形成装置において、上記トナー供給手段はトナーとキャリアからなる現像剤を攪拌して摩擦帯電する現像剤攪拌部材と、該摩擦帯電した現像剤を担持して搬送する供給ローラと、該供給ローラ上の現像剤を薄層化する規制部材とを有することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4または5の画像形成装置において、上記回収手段は上記トナー搬送部材に対向して設けられたブラシローラと、該ブラシローラに当接するフリッカーと、該ブラシローラにバイアス印加するバイアス印加手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の画像形成装置において、上記回収手段を上記トナー供給手段の上方に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の画像形成装置において、上記トナー搬送部材と上記トナー供給手段と上記回収手段とをケース内に配置して一体的に構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7または8の画像形成装置において、上記現像装置と下流側に隣接する帯電装置との間の少なくとも1箇所に除電装置を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、進行波電界によりトナーを搬送するトナー搬送部材をもちいた現像装置を採用しており、トナー搬送部材を回転させる必要がないため、その形状はローラ形状等に限られず自由度が大きいものとなる。すなわち、トナー搬送部材の像担持体と対向する部分を小さい形状とし、現像装置の配設に必要な像担持体の周面スペースを小さくすることできる。よって、像担持体の周面に、帯電装置、像露光部、現像装置を複数組配設する装置でも、装置全体が大型化してしまうことを抑制できる。さらに、トナー搬送部材の周長を長くする必要がある場合でも、トナー搬送部材の像担持体と対向する部分を小さい形状としたままで対応することが可能であり、装置全体が大型化してしまうことを回避できる。よって、小径の像担持体周面に多数の画像形成プロセス手段を配置でき、画像形成装置の小型化ができる。また、トナー搬送部材の形状の自由度が大きいものとなるため、トナー供給手段と回収手段の配置自由度が大きくなる。これにより、供給トナーの特性を安定化可能な供給手段と回収効率の良い回収手段の構成も可能となり、画質品質の向上が図れる。さらには、各画像形成プロセス手段の配置自由度も大きくなり、互いに制約条件が生じて画質が低下してしまうことを、回避しやすい。
さらに、この現像装置では、進行波電界によりトナー搬送部材上でトナーをホッピングさせてその付着力を無くしながら現像しているので、回転駆動される現像ローラを用いた構成では実現が望めなかったほどの非常に高効率な非接触現像が実現可能となる。よって、回転駆動される現像ローラを用いたジャンピング現像のような高圧電源が不要となる。
このように、現像装置の配設に必要な像担持体の周面のスペースを小さくするとともにスペースの形状に自由度を持たせ、かつ、非接触現像をおこなうための高圧電源を不要とすることで装置の小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、像担持体の周面に帯電装置、像露光部、現像装置を複数組配設し、該像担持体上に重ねトナー像を形成する画像形成装置において、高画質を維持しながら装置全体の小型化を図ることができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る画像形成装置の構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置全体の概略構成図である。画像形成装置の本体中央部には、像担持体としての感光体ドラム1を備えている。感光体ドラム1の周辺には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(Bk)の各色のトナー像を形成するための帯電装置と現像装置とが、上方から反時計回りに4組が配置されている。また、装置の右方には感光体ドラム1にレーザー光を照射する露光装置5が設けられており、各帯電装置と各現像装置の間の露光部に各色の静電潜像形成用のレーザー光を照射している。すなわち、イエロー(Y)用の帯電装置2Y、露光部3Y、現像装置4Y、マゼンタ(M)用の帯電装置2M、露光部3M、現像装置4M、シアン(C)用の帯電装置2C、露光部3C、現像装置4C、黒(Bk)用の帯電装置2Bk、露光部3Bk、現像装置4Bkが順に配置されている。また、これらの下流の感光体ドラム1の周辺には、転写ベルト装置9と、クリーニング装置14とが設けられている。
【0014】
なお、帯電装置2Y、M、C、Bk、露光部3Y、M、C、Bk、現像装置4Y,M,C,Bkに関しては、構成・動作が同じ部分は、添字のY,M,C,Bkを省略して説明をおこなう。
【0015】
帯電装置2はスコロトロン帯電器で、感光体ドラム1の有機感光体層に対して、所定の電位に保持されたグリッドと放電ワイヤによるコロナ放電とによって帯電作用を行い、感光体ドラム1表面に一様な電位を与える。
【0016】
露光装置5は、レーザー光を感光体ドラム1に対して4箇所放射状に入光する、一体化されたユニット構成からなる。露光装置5は、一様に帯電された感光体1上の露光部4に各色の画像データに基づきレーザー光を照射して、各色の静電潜像を形成する。なお、露光装置は、色毎にユニット化された4体から構成されても、各LEDアレイから構成されても良い。
【0017】
現像装置4は、回転駆動されること無く、静電的にトナーを担持して搬送するトナー搬送部材30を用いたものである。詳しくは後述する。
【0018】
転写ベルト装置9は、転写ベルト13と、これを張架する駆動ローラ10、従動ローラ11と、転写ローラ12とを備えている。転写ベルト13が感光体ドラム1周面に接する領域の転写ベルト13内側には転写ローラ12が配設され、感光体ドラム1のトナー像を転写ベルト13の担持する記録用紙上へ転写する転写域を形成する。転写ベルト13は無端状のベルトである。このベルトは、シリコンゴム或いはウレタンゴムからなる体積抵抗値108〜1012[Ω・cm]、厚さ0.5〜2.0[mm]の半導電性基体と、トナーフィルミング防止のため厚さ5〜50[μm]のフッ素コーティングの半導電性表層の2層構成のゴムベルトである。また、上記ゴム状の基体の代わりに、厚さ0.1〜0.5[mm]の半導電性のポリエステルやポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等を使用することもできる。また、転写ベルト13にはベルト表面を清掃するベルトクリーニング装置(図示なし)が設けられている。
【0019】
クリーニング装置14は、クリーニングブレード15とファーブラシ16とを備えている。クリーニングブレード15のみの構成でも良い。
【0020】
記録用紙の搬送方向に関して転写ベルト装置9の下流には、定着装置18が配設されている。定着装置18は、無端状の定着ベルト19とそれを支持する2本のローラとテンションローラ20と定着ベルト19に圧接している加圧ローラから構成されている。
【0021】
また、画像形成装置本体の下部には、転写材である記録用紙が収納された給紙カセット21と給紙カセット21から記録用紙を送り出す給紙ローラ22とフィードローラ23が配設されている。転写ベルト13までの記録用紙搬送経路には搬送ローラ対24、レジストローラ対25が設けられている。定着装置18後の記録用紙搬送経路には本体上に設けられた記録用紙スタック部に排出する排紙ローラ27、また両面印刷する経路には反転ローラ28、さらにレジストローラ25までの反転経路には搬送ローラ対が3組設けられている。また、本体左側には手差し給紙部があり、記録用紙を給紙、搬送するピックアップローラ29とフィードローラとが配設されている。
【0022】
次に、上記構成の画像形成装置の動作を説明する。
原稿画像は本装置とは別体の画像読み取り装置(図示なし)の撮像素子により読み取られた画像或いはコンピュータで編集された画像を、Y,M,C及びBkの各色別の画像信号として一旦メモリに記憶し格納される。画像記録のスタートにより感光体駆動モータ(図示なし)の始動により感光体ドラム1を反時計方向へと回転し、同時にY用帯電装置2Yの帯電作用により電位の付与が開始される。感光体ドラム1は電位を付与されたあと、露光装置5より照射されるレーザー光により第1の色信号即ちイエロー(Y)の画像信号に対応する電気信号に基づく露光3Cが開始されドラムの回転走査によってその表面の感光層に原稿画像のイエロー(Y)の画像に対応する静電潜像を形成する。Y用の潜像は現像装置4Yのトナー搬送部材30にて、感光体ドラム1との対向部に搬送されてきたトナーにより反転非接触現像され、感光体ドラム1上にイエロー(Y)のトナー像が形成される。
【0023】
次いで、感光体ドラム1は上記イエロー(Y)のトナー像の上に、M用帯電装置2Mの帯電作用により電位を付与され、露光装置5より照射されるレーザー光により第2の色信号即ちマゼンタ(M)の画像信号に対応する電気信号による露光3Mが行われ、原稿画像のマゼンタ(M)の画像に対応する静電潜像を形成する。M用の潜像は現像装置4Mのトナー搬送部材30にて、感光体ドラム1との対向部に搬送されてきたトナーにより反転非接触現像され、上記のイエロー(Y)のトナー像の上にマゼンタ(M)のトナー像が順次重ね合わせて形成していく。 同様のプロセスによりC用帯電装置2C、露光装置5による露光3C及び現像装置4Cによって更に第3の色信号に対応するシアン(C)のトナー像が、また帯電装置2Bk、露光装置5による露光3Bk及び現像装置4Bkによって第4の色信号に対応する黒色(Bk)のトナー像が順次重ね合わせて形成され、感光体ドラム1の一回転以内にその周面上にカラーのトナー像が形成される。
【0024】
一方では給紙カセット21から給紙ローラ22、フィードローラ23の作動により記録用紙が搬出されてレジストローラ25に搬送され、感光体ドラム1上のカラートナー像の搬送に同期して転写ベルト13の転写域に給紙される。給紙された記録用紙は転写域において転写ローラ12によるトナーと反対極性のバイアス電圧の印加により順次カラートナー像は記録用紙上に転写される。
【0025】
転写後は感光体ドラム1上の転写残トナーをクリーニング装置14によってクリーニングする。クリーニングは、まずファーブラシ16で残トナーを感光体ドラム1から剥ぎ取り、その下流でクリーニングブレード15によって完全に掻き取る。クリーニングされたトナーはクリーニングスクリュ17によって不図示の廃トナーボトルへ送られる。
【0026】
また、カラートナー像の転写を受けた記録用紙は転写ベルト13に静電的に貼り付いて駆動ローラ10部まで搬送されると、記録用紙先端は転写ベルト13と曲率分離して定着装置18に搬送され、定着ベルト19と加圧ローラの間に挟着搬送して加熱され、トナーを溶着して定着がなされたのち排紙ローラ28を介して装置スタック部26に排出される。
【0027】
両面印刷する場合は、記録用紙は反転ローラ28側に搬送され、反転ローラ28の逆回転により、再度、レジストローラ25に送られる。そして感光体ドラム1上に形成されたカラートナー像とタイミングを合わせて、転写ベルト13のニップ部へ送られ、記録用紙裏面に転写され、再度定着装置18を通過して、スタック部26に排出される。
【0028】
本実施形態の現像装置4について詳しく説明する。この現像装置4は、ETH現象を用いたETH現像方式の現像装置であり、回転駆動されること無く、トナーを静電的に担持して搬送するトナー搬送部材30を備えている。ETH現象とは、静電気力による粉体の水平方向の移動(搬送)と垂直方向の移動(ホッピング)を含む現象であり、静電搬送部材の表面を、移相電界によって粉体が進行方向の成分を持って飛び跳ねる現象である。なお、本明細書において、ETH現象における搬送部材上の粉体の振る舞いを区別して表現する場合、基板水平方向への移動については、「搬送」、「搬送速度」、「搬送方向」、「搬送距離」という表現を使用し、基板垂直方向への飛翔(移動)については、「ホッピング」、「ホッピング速度」、「ホッピング方向」、「ホッピング高さ(距離)」という表現を使用し、搬送部材上での「搬送及びホッピング」は「移送」と総称する。なお、搬送装置、搬送基板という用語に含まれる「搬送」は「移送」と同義である。
【0029】
図3は、トナー搬送部材30と感光体ドラム1との対向部周辺の模式図である。トナー搬送部材30は、粉体であるトナーTを搬送、ホッピング、回収するための電界を発生するための複数の電極102を有している。このトナー搬送部材30の各電極102に対しては駆動回路106から所要の電界を発生させるためのn相(ここでは3相とする。)の異なる駆動波形Va1〜Vc1及びVa2〜Vc2が印加される。
【0030】
ここでは、トナー搬送部材30は、駆動波形Va1〜Vc1及びVa2〜Vc2を与える電極102の範囲及び感光体ドラム1との関係において、トナーTを感光体ドラム1近傍まで移送する搬送領域と、感光体ドラム1の潜像にトナーTを付着させてトナー像を形成するための現像領域と、トナーTをトナー搬送部材30側に回収するための現像領域通過後の領域(これを、以下「回収領域」という。)に分けられる。
【0031】
搬送領域では、トナー搬送部材30上のトナーTを感光体ドラム1の近傍まで移送する。現像領域では、感光体ドラム1上の潜像の画像部に対してはトナーTが感光体ドラム1側に向かい、非画像部に対してはトナーTが感光体ドラム1と反対側(トナー搬送部材30側)に向かう方向の電界を形成して、トナーTを潜像に付着させて現像を行う。回収領域では、トナーTが潜像の画像部及び非画像部のいずれに対しても感光体ドラム1と反対側(トナー搬送部材30側)に向かう方向の電界を形成する。これにより、現像領域では感光体ドラム1上の潜像にトナーが付着して可視像化され、現像に寄与しなかったトナーは感光体ドラム1の回転方向(移動方向)下流側の回収領域でトナー搬送部材30側に回収されるので、飛散トナーの発生が防止される。なお、回収領域は現像領域よりも感光体ドラム1の移動方向下流側とすることで、確実に浮遊トナーの回収を行うことができる。
【0032】
さらに、トナー搬送部材30の構成、動作について詳しく説明する。図4は、トナー搬送部材30の平面説明図、図5は図4のA−A線に沿う断面説明図、図6は図4のB−B線に沿う断面説明図、図7は図4のC−C線に沿う断面説明図、図8は図4のD−D線に沿う断面説明図である。図4において、トナー搬送部材30は、ベース基板(支持基板)101上に3本の電極(搬送電極)102a、102b、102c(これらを「電極102」とも総称する。)を1セットとして、所定の間隔で、図中矢印で示すトナー移送方向に沿ってトナー移送方向と略直交する方向に繰り返し形成配置する。この上に、電極102の表面を覆う保護膜となり搬送面を形成する、無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層103を積層したものからなる。なお、表面保護層103が搬送面を形成しているが、表面保護層103上に更に粉体(トナー)との適合性に優れた表面層を別途成膜することもできる。
【0033】
これらの電極102a、102b、102cの両側には、電極102a、102b、102cとそれぞれ両端部で相互接続した共通電極105a、105b、105c(これらを「共通電極105」とも総称する。)をトナー移送方向に沿って、すなわち、個々の電極と略直交する方向に設けている。この場合、共通電極105の幅(この幅は、トナー移送方向と直交する方向の幅)は電極102の幅(この幅は、トナー移送方向に沿う方向の幅)よりも広くしている。なお、図4では、共通電極105を、搬送領域では共通電極105a1、105b1、105c1、現像領域では共通電極105a2、105b2、105c2、回収領域では共通電極105a3、105b3、105c3として区別して表記している。
【0034】
ここでは、支持基板101上に共通電極105a、105b、105cのパターンを形成した後、層間絶縁膜107(表面保護層103と同じ材料でも異なる材料のいずれでも良い。)を形成する。この層間絶縁膜107にコンタクトホール108を形成した後、電極102a、102b、102cを形成することによって電極102a、102b、102cと共通電極105a、105b、105cとをそれぞれ相互接続している。なお、電極102aと共通電極105aを一体形成したパターン上に層間絶縁膜を形成し、この層間絶縁膜上に電極102bと共通電極105bを一体形成したパターンを形成し、更に層間絶縁膜を形成して、この層間絶縁膜上に電極102cと共通電極105cを一体形成したパターンを形成することもできる。すなわち、電極を三層構造とすることもできる。また、一体形成に相互接続とコンタクトホールによる相互接続とを混在させることもできる。
【0035】
さらに、これらの共通電極105a、105b、105cには図示しないが駆動回路31からの駆動信号(駆動波形)Va、Vb、Vcを入力するための駆動信号印加用入力端子を設けている。この駆動信号入力用端子は、支持基板101に裏面側に設けてスルーホールを介して共通電極105に接続してもよいし、あるいは後述する層間絶縁膜107上に設けてもよい。
【0036】
ここで、支持基板101としては、ガラス基板、樹脂基板或いはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、或いは、SUSなどの導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。
【0037】
電極102は、支持基板101上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10[μm]厚、好ましくは0.5〜2.0[μm]で成膜し、これを、フォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成している。これらの複数の電極102の粉体進行方向における幅Lは移動させる粉体の平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、電極102、12の粉体進行方向の間隔Rも移動させる粉体の平均粒径の1倍以上20倍以下としている。
【0038】
表面保護層103としては、例えばSiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜10[μm]、好ましくは厚さ0.5〜3[μm]で成膜して形成している。また、無機ナイトライド化合物、例えばSiN、Bn、Wなどを用いることができる。特に、表面水酸基が増えると帯電トナーの帯電量が搬送途中で下がる傾向にあるので、表面水酸基(SiOH、シラトール基)が少ない無機ナイトライド化合物が好ましい。
【0039】
次に、上記構成のトナー搬送基板30におけるトナーの静電搬送の原理について説明する。トナー搬送部材30の複数の電極102に対してn相の駆動波形を印加することにより、複数の電極102によって移相電界(進行波電界)が発生し、トナー搬送部材30上の帯電したトナーは反発力及び/又は吸引力を受けて移送方向にホッピングと搬送を含んで移動する。
【0040】
例えば、トナー搬送部材30の複数の電極102に対して、図9に示すようにグランドG(0V)と正の電圧+との間で変化する3相のパルス状駆動波形(駆動信号)A(A相)、B(B相)、C(C相)のタイミングをずらして印加する。このとき、図10に示すように、トナー搬送部材30上に負帯電トナーTがあり、トナー搬送部材30の連続した複数の電極102に同図に(1)で示すようにそれぞれ「G」、「G」、「+」、「G」、「G」が印加されたとすると、負帯電トナーTは「+」の電極102上に位置する。次のタイミングで複数の電極102には(2)に示すようにそれぞれ「+」、「G」、「G」、「+」、「G」が印加され、負帯電トナーTには同図で左側の「G」の電極102との間で反発力が、右側の「+」の電極102との間で吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは「+」の電極102側に移動する。さらに、次のタイミングで複数の電極102には(3)に示すようにそれぞれ「G」、「+」、「G」、「G」、「+」が印加され、負帯電トナーTには同様に反発力と吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは更に「+」の電極102側に移動する。
【0041】
このように複数の電極102に電圧の変化する複相の駆動波形を印加することで、トナー搬送部材30上には進行波電界が発生し、この進行波電界の進行方向に負帯電トナーTは搬送及びホッピングを行いながら移動する。なお、正帯電トナーの場合には駆動波形の変化パターンを逆にすることで同様に同方向に移動する。
【0042】
これを、図11を参照して具体的に説明すると、同図(a)に示すように、搬送基板1の電極A〜Fがいずれも0V(G)で搬送基板1上に負帯電トナーTが載っている状態から、同図(b)に示すように電極A、Dに「+」が印加されると、負帯電トナーTは電極A及び電極Dに吸引されて電極A、D上に移る。次のタイミングで、同図(c)に示すように、電極A、Dがいずれも「0」になり、電極B、Eに「+」が印加されると、電極A、D上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極B、Eの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極B及び電極Eに移送される。さらに、次のタイミングで、同図(d)に示すように、電極B、Eがいずれも「0」になり、電極C、Fに「+」が印加されると、電極B、E上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極C、Fの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極C及び電極Fに移送される。このように進行波電界によって負帯電トナーは順次図において右方向に移送されることになる。
【0043】
図2は、上記トナー搬送部材30を用いた現像装置4の概略構成図である。なお、図2の現像装置は、図1に画像形成装置おけるマゼンタ(M)用の現像装置を示している。この現像装置4は、感光体ドラム1に非接触で対向して配置される上記構成のトナー搬送部材30と、トナー搬送部材30にトナーを供給する供給手段と、現像領域通過後のトナー搬送部材30よりトナーを回収する回収手段とを備えている。
【0044】
ここで、図2に示すように、トナー搬送部材30は、長円、あるいは楕円形状とする。本実施形態の画像形成装置のように、感光体ドラム1の周面に複数の現像装置4を配置する場合は、このような形状にすることにより、感光体ドラム1表面に占める領域が小さくなり省スペースで配置できるようになる。また長円の長さを配置する位置によって変えることによって、供給手段や回収手段も感光体ドラム1回りのスペースを有効に利用しつつ、構成の自由度が広がり、高性能な構成が可能となる。
【0045】
供給手段は、現像剤を収容する現像剤収容部37と、現像剤収容部37内の現像剤を攪拌搬送する2本のスクリュウ33、34と、2成分現像剤を担持して、担持した2成分現像剤よりトナーをトナー搬送部材30に供給する供給ローラ31と、供給ローラ31上の現像剤層厚を規制するドクタブレード32とを備えている。現像剤は非磁性トナーと磁性キャリアのからなる2成分現像剤である。供給ローラ31は回転可能な非磁性のスリーブにマグネットが固定された磁界発生手段を内包したものであり、スリーブ表面がトナー搬送部材30に非接触に対向して配置される。2本のスクリュウ33、34は、供給ローラ31より斜め下方向、または、水平の位置に、2本並列して配置され、供給ローラ31と平行な互いに反対の方向に現像剤を攪拌しながら搬送する。現像剤収容部37には、2本のスクリュの2室に分ける仕切り板36が設けられている。この仕切り板36の奥と手前は、現像剤が仕切られた2室が連通するように切り欠かれている。
【0046】
回収手段は、ブラシローラ38とフリッカー39とを備えている。ブラシローラ38は細い繊維を植えたものであり、トナー搬送部材30のトナーの搬送方向の現像領域下流に設けられ、バイアス電圧を印加されて、トナー搬送部材30から現像に寄与しなかったトナーを静電的に吸着して分離するものである。ブラシローラ38の繊維の電気抵抗値(体積抵抗率)は102〜1010[Ω・cm]の範囲、好ましくは102〜104[Ω・cm]のが良い。ブラシの密度は、3万[本/インチ]〜15万[本/インチ]の範囲、好ましくは10万[本/インチ]〜13万[本/インチ]が良い。本実施例ではブラシの材質は、東レ製SA7(炭素含有アクリル繊維)(300D/48F)を使用している。この他のブラシ材質としては、帝人製B−TCF(導電性ポリエステル繊維)、導電性PET、導電性ナイロン繊維などがある。ブラシローラ38に印加するバイアス電圧はトナー搬送部材30に印加したバイアス電圧と逆極性のものを印加する。本実施例の場合、ブラシローラ38には0V〜+700Vの範囲で、好ましくは+300V〜+500Vの範囲でバイアス電圧を印加している。フリッカー39は現像装置4を覆った一体化されたケース35から内側に突起したバーで構成され、ブラシローラ38に食い込むように配置されている。
【0047】
回収手段と供給手段の位置関係は、図2に示すように、回収手段が供給手段の上方になるよう配置する。これは、回収手段で回収したトナーがフリッカー39で機械的に掻き取られ、重力によって供給手段の現像味収容部37内に戻される。他の色の現像装置も回収手段と供給手段の位置関係は、同様のものとする。
【0048】
このように構成された現像装置4では、現像剤収容部37に収容された二成分現像剤をスクリュ33、34が互いに反対の方向に攪拌しながら搬送する。現像剤収容部37の手前側と奥側の連通部では、現像剤が一方の室から他方の室へ移動することで、現像剤が常に2室を循環する。また、スクリュウ33により攪拌搬送されている現像剤は、供給ローラ31のマグネットの磁力によって表面に磁気ブラシ状で保持されて供給スリーブ31の回転方向に汲み上げられる。汲み上げられた磁気ブラシ上の現像剤はドクタブレード32によって適正な量に穂切りされてトナー搬送部材30と対向しているトナー供給部へと送られる。ドクタブレード32で穂切りされて残った現像剤は、スクリュ33に戻され、再度攪拌搬送されながら供給スリーブ31に供給されることが繰り返される。
【0049】
一方、供給ローラ31にはDCにACが重畳されたバイアスが印加されており、トナー供給部に送られた供給ローラ31上の現像剤からトナー搬送部材30にトナーが供給される。トナー搬送部材30は、上述のように静電的に感光体ドラム1との対向部まで供給されたトナーを搬送し、感光体ドラム1上に形成された静電潜像の現像を行う。
【0050】
トナー搬送部材30上の現像に寄与しなかったトナーは、トナー搬送方向に関して現像領域下流に設けられたバイアス電圧を印加されたブラシローラ38に静電的に吸着され、トナー搬送部材30から分離するものである。そして、フリッカー39によって、ブラシローラ38に静電的に吸着したトナーを機械的に剥ぎ取る。
【0051】
ところで、カラー画像を形成する場合に、直径わずか約30[μm]の1200[dpi]の孤立1ドットを再現性よく、地汚れなしに現像するかということが重要である。また、トナーが装置内や装置外に飛散することを防止することが重要になる。しかしながら、回転駆動される現像ローラを用いる現像装置では、現像ローラと現像装置側板との間にトナーが侵入して、トナーが擦れてトナー固着等が発生し、画像に悪影響を及ぼすという問題がある。また、現像装置周りのシール材が経時劣化することで、トナーが飛散し、画像の地汚れなどを生じることがある。また、摩擦帯電やコロナ放電帯電によってトナーを帯電させるものでは、飽和帯電したトナーと不飽和帯電のトナーとが混在し、大きな帯電分布を有することになる。このようなトナーを強制的に回転する現像ローラに担持させると、現像ローラの現像速度(線速100cm/sec程度)の速さでは、一旦現像ローラに担持させた現像剤のうちの電荷が小さなトナーは離脱して、トナーが飛散し、形成画像の地汚れが生じ易くなる。本実施形態では、上述のように現像ローラが回転駆動されることない構成であるので、これらの不具合が解消される。よって、再現性が良く、トナー飛散が少なく地汚れのない画像が得られるというメリットがある。
【0052】
次に、本実施形態の変形例に係る画像形成装置について説明する。図12は、変形例に係る画像形成装置の概略構成図である。この画像形成装置は、図1の画像形成装置と同様に、本体の中央部に感光体ドラム1を備えている。感光体ドラム1の周辺には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(Bk)の各色のトナー像を形成するための帯電装置と現像装置とが、下方から時計回りに4組が配置されている。また、装置の右方には感光体ドラム1にレーザー光を照射する露光装置5が設けられており、各帯電装置と各現像装置の間の露光部に各色の静電潜像形成用のレーザー光を照射している。このように、図2の画像形成装置では、図1の画像形成装置と感光体ドラム1の回転方向が逆方向であり、周面に配置されるトナー像形成手段の位置が異なる。しかし、感光体ドラム1上に順次トナー像を重ね現像し、転写後の残トナーをクリーニング装置14でクリーニングする構成と動作は図1の説明と同じである。図12の画像形成装置は、図1の装置とはトナー像の転写・定着装置の構成と動作が異なるものであり、トナー像を転写定着装置60により記録用紙に転写同時定着するものである。以下これについて説明する。
【0053】
Bk用の現像装置4Bkの後には転写定着装置60が設けられている。転写定着装置60は、無端状の転写定着ベルト40を有している。転写定着ベルト40は、転写ローラ41と転写定着ローラ42とに張架されており、駆動ローラである転写ローラ42に回転により回転駆動される。転写ローラ41は感光体ドラム1上からトナー像を転写定着ベルト40上に転写する転写ニップを形成する機能を有している。また、転写定着ローラ42は、転写定着ベルト40に当接して定着ニップを形成する加圧部材としての加圧ローラ43に対向する対向ローラとしての機能を有している。また、転写ニップの下流で定着ニップの上流には、感光体ドラム1上より転写定着ベルト40上に転写されたトナー像を加熱して軟化させる加熱手段として、転写定着ベルト40に対向する電磁誘導コイル44を備えている。また、定着ニップの下流で転写ニップの上流には、転写定着ベルト40に当接して転写定着ベルト40を冷却する冷却ローラ45を備えている。
【0054】
転写定着ベルト40は、50〜100[μm]程度のポリイミド等の基材層に、銅やアルミなどの金属層を設け、その上にシリコンゴム等の弾性層を設け、さらに表層にPFAコート等の離型層をコーティングにより形成したものである。加圧ローラ43は、芯金とゴム等の弾性層を有している。冷却ローラ45は金属ローラやヒートパイプで構成されている。
【0055】
このような構成の転写定着装置60の動作について説明する。駆動手段(不図示)により転写定着ローラ42が回転し、これに伴い転写定着ベルト40が回転する。転写ニップでは転写ローラ41にバイアスが印加され、感光体ドラム1上のトナー像が転写定着ベルト40上に静電転写される。転写定着ベルト40上に転写されたトナー像は、転写定着ベルト40の回転による定着ニップまでの搬送中、電磁誘導コイル44により加熱されて軟化する。電磁誘導コイル44に交流を通電することで、対向して設けられた転写定着ベルト40の金属層を貫通する磁束が生じ、金属層には過電流が起きて発熱し、この熱によりトナー像は軟化させる。軟化したトナー像はレジストローラ25から送られてきた記録用紙が、転写定着ベルト40と加圧ローラ43とにより形成される定着ニップを通過するときに、記録用紙上に転写同時定着される。定着ニップ下流側では、冷却ローラ45によって加熱された転写定着ベルト40を冷却し、感光体ドラム1の温度上昇を防止する。これによって、トナーを現像する現像装置4や感光体ドラム1への熱による不具合を防止する。
【0056】
このように、上記転写定着装置60では記録用紙への転写と定着を同時に行うので、装置をさらに小型化できる。また、記録用紙へのトナーの転写と定着を1工程で行うので、記録用紙の搬送ジャムが軽減される。また、上記構成ではトナーの加熱時間を長くできるため、低温、省エネ、立ち上がり時間が短くなるというメリットがある。さらに、記録用紙へのトナー転写定着時のニップ幅が小さくでき、紙の厚さに関係なく消費電力が変わらないため、厚紙を半速モードで定着する必要もなくなる。
【0057】
次に、本実施形態の他の変形例に係る画像形成装置について説明する。図13は、他の変形例に係る画像形成装置の概略構成図である。この画像形成装置は、図1の画像形成装置と同様に、本体の中央部に感光体ドラム1を備えている。感光体ドラム1の周辺には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(Bk)の各色のトナー像を形成するための帯電装置と現像装置とが、図1と同様に上方から反時計回りに4組が配置されている。また、装置の右方には感光体ドラム1にレーザー光を照射する露光装置5が設けられており、各帯電装置と各現像装置の間の露光部に各色の静電潜像形成用のレーザー光を照射している。感光体ドラム1上に順次トナー像を重ね現像することと、転写後の残トナーをクリーニングするための構成と動作は、図1の説明と同じである。図13の画像形成装置は、感光体ドラム1上トナー像の転写・定着装置の構成と動作が異なるものであり、感光体ドラム1から中間転写装置61を介して転写定着装置60にトナー像を転写し、転写定着装置60で記録用紙にトナー像を転写同時定着するものである。
【0058】
この変形例に係る画像形成装置は、感光体ドラム1上トナー像を1次転写される中間転写ベルト46を有する中間転写装置61と、中間転写装置61を介して転写定着装置60にトナー像を2次転写し、転写定着装置60で記録用紙にトナー像を転写同時定着するものである。中間転写装置62は、ローラ47、48、49に張架される無端状の中間転写ベルト46を有しており。駆動ローラであるローラ47の回転により回転駆動される。ローラ49は、感光体ドラム1上からトナー像を中間転写ベルト46上に1次転写する1次転写ニップを形成する転写ローラ49である。また、ローラ47は、中間転写ベルト46から転写定着装置60の転写定着ローラ51にトナー像を2次転写する2次転写ニップを形成する転写ローラ47としての機能を有している。また、上記2次転写ニップの下流で上記1次転写ニップの上流には、中間転写ベルト46に当接して中間転写ベルト46を冷却する冷却ローラ(不図示)を備えている。また、トナー像を転写定着ローラ51に転写した後の中間転写ベルト46の残トナーを清掃するベルトクリーニング手段(不図示)を備えている。
【0059】
転写定着装置60は、回転駆動されながら中間転写ベルト46からトナー像を2次転写される転写体としての転写定着ローラ51と、転写定着ローラ51に当接して定着ニップを形成する加圧部材としての加圧ローラ52とを備えている。また、上記2次転写ニップの下流で上記定着ニップの上流には、感光体ドラム1上より転写定着ローラ51上に転写されたトナー像を加熱する加熱手段として、転写定着ローラ51に対向する電磁誘導コイル53を備えている。
【0060】
中間転写ベル46は、ポリイミド等よりなる。また、転写定着ローラ51はポリイミド等の基材層に、銅やアルミなどの金属層を設け、その上にシリコンゴム等の弾性層を設け、さらに表層にPFAコート等の離型層をコーティングにより形成したものである。加圧ローラは、芯金とゴム等の弾性層を有している。
【0061】
このような構成の中間転写装置61と転写定着装置60の転写・定着動作について説明する。駆動手段(不図示)により駆動ローラ47が回転し、これに伴い中間転写ベルト46が回転する。1次転写ニップでは転写ローラ49にバイアスが印加され、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト46に静電転写される。転写されたトナーは中間転写ベルトの回転により、転写定着ローラ51との間に形成される2次転写ニップに搬送され、転写定着ローラ51上へ静電転写される。このとき駆動ローラ47か転写定着ローラ51のどちらかにバイアスが印加される。転写定着ローラ51上のトナー像は、転写定着ローラ51の回転による定着ニップまでの搬送中、電磁誘導コイル54により加熱されて軟化する。電磁誘導コイル54に軟化させる方法は、図12の転写定着装置60と同様である。2次転写ニップ下流側では冷却ローラ(不図示)によって転写定着ローラ51から伝搬した熱による温度上昇した中間転写ベルト46を冷却し、感光体ドラム1の温度上昇を防止する。これによって、トナーを現像する現像装置4や感光体ドラム1への熱による不具合を防止する。
【0062】
このように、感光体ドラム1から中間転写装置61を介して転写定着装置60にトナー像を転写し、転写定着装置60で記録用紙にトナー像を転写同時定着するものでは、装置をさらに小型化できると共に、転写定着ローラ51の熱を中間転写ベルト46で冷却することができ、感光体ドラム1側への熱伝達を抑制できる。
【0063】
次に、本実施形態の他の変形例に係る画像形成装置について説明する。この画像形成装置では、2色目現像装置4Mの下流に除電チャージャを設けたものである。図14は図1の画像形成装置に、図15は図12の画像形成装置に除電チャージャ54を配設した概略構成図である。この除電チャージャ54は、感光体ドラム1上に現像されたトナーの電荷を除電して、感光体ドラム1上の表面電位を一旦均一にならすことである。図16は、感光体ドラム1に重ね現像したときの電位を示す説明図である。Vdは帯電された感光体ドラム電位、Vbはトナー搬送部材30に印加されるバイアス電圧、Vlは露光後の感光体ドラム電位を示す。トナーが現像されると、その部位はトナーの持つ電荷により電位があがる。色重ねによりトナーの付着量が増えると、その分の電荷によりさらに電位が上昇し、トナーが無い部分との電位差が次第に大きくなる。現像が後になる色ほど、トナー付着量に差がでるため、露光後の電位差も大きくなり、所望のトナー付着量が得られなくなり、画像劣化となる。そこで、図14、図15に示すように、除電チャージャ54を設け、電位差が大きくなる前に、感光体ドラム1表面を中間で一度除電してならすことによって、画像劣化を防止することができる。
【0064】
以上、本実施形態の画像形成装置によれば、進行波電界によりトナーを移動させて現像するトナー搬送部材30をもちいた現像装置4を採用しており、トナー搬送部材30を回転させる必要がないため自由度が大きいものとなる。すなわち、トナー搬送部材30の感光体ドラム1と対向する部分を小さい形状とし、現像装置4の配設に必要な感光体ドラム1の周面スペースを小さくすることできる。よって、感光体ドラム1の周面に、複数の帯電装置2、複数の露光部3、複数の現像装置4等の多数の画像形成プロセス手段を配設する装置でも、装置全体が大型化してしまうことを抑制できる。さらに、トナー搬送部材30の周長を長くする必要がある場合でも、トナー搬送部材30の感光体ドラム1と対向する部分を小さい形状としたままで対応することが可能であり、装置全体が大型化してしまうことを回避できる。よって、小径の感光体ドラム1周面に多数の画像形成プロセス手段を配置でき、画像形成装置の小型化ができる。また、トナー搬送部材30の形状の自由度が大きいものとなるため、各画像形成プロセス手段の配置自由度も大きくなり、互いに制約条件が生じて画質が低下してしまうことを、回避しやすい。
さらに、この現像装置4では、進行波電界によりトナー搬送部材30上でトナーをホッピングさせてその付着力を無くしながら現像しているので、回転駆動される現像ローラを用いた構成では実現が望めなかったほどの非常に高効率な非接触現像が実現可能となる。よって、回転駆動される現像ローラを用いたジャンピング現像のような高圧電源が不要となる。
このように、現像装置4の配設に必要な感光体ドラム1の周面のスペースを小さくするとともにスペースの形状に自由度を持たせ、かつ、非接触現像をおこなうための高圧電源を不要とすることで装置の小型化が可能となる。
また、無端移動しながら感光体ドラム1上のトナー像を転写される転写定着ベルト40と、転写定着ベルト40上のトナー像を加熱する電磁誘導コイル54と、転写定着ベルト40に対向する加圧ローラ43とを有し、転写定着ベルト40に転写されたトナー像を電磁誘導コイル54にて軟化させ、転写定着ベルト40と加圧ローラ43との間を通過する記録媒体上に軟化したトナー像を転写同時定着する転写定着装置60を備える。この転写定着装置60により、記録用紙への転写と定着を同時に行うので、装置をさらに小型化できる。また、記録用紙へのトナーの転写と定着を1工程で行うので、記録用紙の搬送ジャムが軽減される。さらに、上記電磁誘導コイル54により対向する転写定着ベルト40上のトナー像を加熱する構成では、通常の定着装置に比べトナーの加熱時間を長くできるため、低温、省エネ、立ち上がり時間が短くなる。また、記録用紙へのトナー転写定着時のニップ幅が小さくでき、紙の厚さに関係なく消費電力が変わらないため、厚紙を半速モードで定着する必要もなくなる。
また、感光体ドラム1と転写定着装置60との間に中間転写装置61を設け、感光体ドラム1上のトナー像を、中間転写装置61を介して転写定着装置60に転写する。これにより、転写定着装置60の熱が直接感光体ドラム1に伝達されるのを抑制できる。
また、現像装置4のトナー搬送部材30を、長円あるいは楕円形状にすることにより、感光体ドラム1周面のトナー搬送部材30の占有する領域を小さくすることができ、トナーの供給領域と回収領域の配置自由度が大きくなる。これにより、供給トナーの特性を安定化可能な供給手段と回収効率の良い回収手段の構成も可能となり、画質品質の向上が図れる。
また、トナー供給手段として、通常の2成分現像装置と同じ構成のものを用いることで、通常の一成分系に比べ、トナーを安定して摩擦帯電できると共に、トナーへのストレス軽減が可能になる。よって、繰り返しトナーを環流して使用してもトナーの帯電量をばらつきが小さくなり、トナー搬送部材へ帯電特性の安定したトナーの安定供給が可能となり、画質劣化を抑制できる。
また、回収手段としてトナー搬送部材30に対向して設けられた回転するブラシローラ38と、ブラシローラ38に当接するフリッカー39とを備え、ブラシローラにはバイアス印加する。このような回収手段により、容易かつ確実にトナー搬送部材30からトナーが回収でき、回収したトナーをブラシから簡単に分離することができる。
また、回収手段をトナー供給手段の上方に設けることで、トナー搬送部材30から回収したトナーを重力でトナー供給手段に戻せるようにする。これにより、簡単な構成でトナーを環流して使用することができる。
また、トナー搬送部材30と、トナー供給手段と、回収手段とを一体のケース35内に構成することで、外部に飛散トナーが流出して、画像劣化や装置内外の汚染を抑えることができる。
また、帯電、露光、現像を繰り返して感光体ドラム1上にトナー像を重ねるとトナーが重なったところではトナーの持つ電荷分の表面電位が上昇するため、トナーが無いところとの電位差が生じ、現像が後になる色ほどその電位差が大きくなり、付着量に差がでて画像劣化になる。そこで、繰り返し色の異なるトナーを重ね現像する中間に除電装置を設ける。上記実施形態の画像形成装置では、2色目現像装置4Mの下流に除電チャージャ54を設けた。これにより、重ね現像の途中で除電を行い、重ねられた電荷を持つトナー層と無いところの表面電位を揃えた後、さらに重ね現像をすることによって画像劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置全体の概略構成図。
【図2】トナー搬送部材を用いた現像装置の概略構成図。
【図3】トナー搬送部材と感光体ドラムとの対向部周辺の模式図。
【図4】トナー搬送部材の平面説明図。
【図5】図4のA−A線に沿う断面説明図。
【図6】図4のB−B線に沿う断面説明図。
【図7】図4のC−C線に沿う断面説明図。
【図8】図4のD−D線に沿う断面説明図。
【図9】トナー搬送部材に印加するパルス状駆動波形の一例をしめす説明図。
【図10】トナー搬送部材上をトナーの様子の説明図。
【図11】トナー搬送部材上をトナーが移動する様子の説明図。
【図12】転写定着装置を採用した画像形成装置の概略構成図。
【図13】転写定着装置の変形例を採用した画像形成装置の概略構成図。
【図14】除電チャージャを設けた画像形成装置の概略構成図。
【図15】除電チャージャを設けた変形例の画像形成装置の概略構成図。
【図16】感光体ドラムに重ね現像したときの電位を示す説明図。
【符号の説明】
【0066】
1 感光体ドラム
2Y,M,C,Bk 帯電装置
3Y,M,C,Bk 露光部
4Y,M,C,Bk 現像装置
5 露光装置
9 転写ベルト装置
10 駆動ローラ
11 従動ローラ
12 転写ローラ
13 転写ベルト
14 クリーニング装置
18 定着装置
19 定着ベルト
21 給紙カセット
25 レジストローラ
30 トナー搬送部材
31 供給ローラ
32 ドクタブレード
33,34 スクリュウ
35 ケース
36 仕切り板
37 現像剤収容部
38 ブラシローラ
39 フリッカー
40 転写定着ベルト
41 転写ローラ
42 転写定着ローラ
43 加圧ローラ
44 電磁誘導コイル
45 冷却ローラ
46 中間転写ベルト
47 駆動ローラ
49 転写ローラ
51 転写定着ローラ
52 加圧ローラ
53 電磁誘導コイル
54 除電チャージャ
60 転写定着装置
61 中間転写装置
101 支持基板
102 電極
103 表面保護層
105 共通電極
106 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面移動する像担持体周面に、帯電装置と、像露光部と、現像装置とを複数組配設し、該像担持体に帯電、露光、現像を複数回繰り返して該像担持体上に重ねトナー像を形成する画像形成装置において、
上記現像装置は、表面に発生する進行波電界によりトナーを上記像担持体と対向する現像領域まで搬送するトナー搬送部材と、該トナー搬送部材にトナーを供給するトナー供給手段と、該現像領域を通過したトナーを該トナー搬送部材上から回収する回収手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、無端移動しながら上記像担持体上のトナー像を転写される転写体と、該転写体上のトナー像を加熱する加熱手段と、該加熱手段よりも下流で該転写体に対向する加圧部材とを有し、該転写体上に転写されたトナー像を該加熱手段にて軟化させ、該軟化したトナー像を該転写体と該加圧部材との間を通過する記録媒体上に転写同時定着する転写定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、上記像担持体と上記転写体との間に中間転写体を設け、該像担持体上のトナー像を該中間転写体を介して該転写体に転写することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1、2または3の画像形成装置において、上記トナー搬送部材が長円形状または楕円形状であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4の画像形成装置において、上記トナー供給手段はトナーとキャリアからなる現像剤を攪拌して摩擦帯電する現像剤攪拌部材と、該摩擦帯電した現像剤を担持して搬送する供給ローラと、該供給ローラ上の現像剤を薄層化する規制部材とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5の画像形成装置において、上記回収手段は上記トナー搬送部材に対向して設けられたブラシローラと、該ブラシローラに当接するフリッカーと、該ブラシローラにバイアス印加するバイアス印加手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、上記回収手段を上記トナー供給手段の上方に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7の画像形成装置において、上記トナー搬送部材と上記トナー供給手段と上記回収手段とをケース内に配置して一体的に構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8の画像形成装置において、上記現像装置と下流側に隣接する帯電装置との間の少なくとも1箇所に除電装置を設けたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−145758(P2008−145758A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333409(P2006−333409)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】