説明

画像形成装置

【課題】印刷済の機密書類のうち、必要な部分にのみマスク印刷を施すことで、省資源、コスト削減を達成しつつ、機密性を確実に保持し、使用者にとり利便性の高い画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、シートSへの画像形成を行う画像形成部5と、印刷済シートSを収容し、画像形成部5に供給するためのシート供給部3と、印刷内容を隠蔽するマスク印刷を行うため、シート供給部3に収容される印刷済シートSの様式の様式画像データFDを装置に入力するための入力部と、マスク印刷を行う1又は複数のマスク領域Mを設定するための設定入力部と、を備え、設定入力部は、入力部から入力された様式画像データFD基づくマスク領域Mの配置設定を受け付け、画像形成部5は、設定入力部に入力されたマスク領域Mの配置設定に基づき、印刷済シートSにマスク印刷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複合機、複写機、ファクシミリ装置等の画像形成装置におけるマスク印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
各種画像形成装置は、コピー用紙等のシートに画像形成を行うものであるが、近年の自然環境保護、省資源化、コスト削減等の観点から、シートの両面に印刷を施すことが行われている。このようなシートの両面に対し画像形成を行うため、両面印刷ユニットが備えられることがある。又、両面印刷ユニットを備えない場合、片面印刷済シートが、いわゆる裏紙として、再度、用紙カセット等に補給され、再利用される。
【0003】
しかし、片面印刷済シートを裏紙として使用する場合、印刷済面の印刷内容に、機密性を保持すべき内容(例えば、個人情報等)が含まれると、そのまま裏紙として使用することはできない。この問題に対処するため、印刷済面にマスク印刷を施す画像形成装置が特許文献1に記載されている。具体的に、特許文献1には、画像形成部と、用紙の表裏を反転する用紙反転部と、用紙が片面使用済みの裏紙であるか否かを判定する裏紙判定部とを有し、用紙が裏紙と判定された場合、用紙の未使用面に所望の画像を印刷し、使用済面にその内容を隠蔽するマスク印刷を行う画像形成装置が記載されている。(特許文献1:請求項1、図4等参照)
【特許文献1】特開2005−231107
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1記載の画像形成装置をみると、使用済面へのマスク印刷は、シートの全面にわたって施されるが、例えば、企業や官公庁での機密情報が記載される機密書類(例えば、個人情報が記載される台帳や、金銭の収入・支出等が記載される帳簿や、決裁用書類等)では、その様式が定められているものがある。
【0005】
そして、常に、これらの書類の全面に機密を保持すべき文字、数字、図形等の情報が記載されるものではなく、必要な部分にのみマスク印刷を施せば、機密を保持できる場合がある。ところが、特許文献1記載の発明は、常に印刷済面の全面にマスク印刷を施すので、トナー、インク等の使用量が多くなり、省資源、ランニングコストの点で問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、印刷済の機密書類のうち、必要な部分にのみマスク印刷を施すことで、省資源、コスト削減を達成しつつ、機密性を確実に保持し、マスク印刷を施す領域設定も簡易な、使用者にとって利便性の高い画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、シートへの画像形成を行う画像形成部と、印刷済シートを複数収容し、前記画像形成部に供給するためのシート供給部と、印刷内容を隠蔽するマスク印刷を行うため、前記シート供給部に収容される印刷済シートの様式の様式画像データを装置に入力するための入力部と、マスク印刷を行う1又は複数のマスク領域を設定するための設定入力部と、を備え、前記設定入力部は、前記入力部から入力された前記様式画像データ基づく前記マスク領域の配置設定を受け付け、前記画像形成部は、前記設定入力部に入力された前記マスク領域の配置設定に基づき、印刷済シートにマスク印刷を行うこととした。
【0008】
この構成によれば、シート全体に対してではなく、印刷済シートのうち、使用者が設定するマスク領域についてのみマスク印刷が施されるので、機密が漏洩することなく、トナー等の使用量を削減による省資源、低ランニングコストを達成することができ、又、使用者がマスク印刷を施す領域を自ら設定できるので、確実に機密性が保持され、使用者の利便性が非常に高い画像形成装置を提供することができる。又、マスク印刷済のシートを裏紙として利用すれば、更に、省資源、低ランニングコストを達成できる。
【0009】
一方、この構成によれば、本発明は、書類を廃棄する場合の前処理に利用でき、両面印刷済又は片面印刷済のシートに対し、マスク印刷を施せば、例えば、シュレッダー等を使用することなく、従来よりも低コストで、作業を要せず機密書類の破棄が行える。例えば、シュレッダーによる書類の破砕作業では、絶えず作業を行う人員が必要となり、紙詰まりや、破砕後の書類の容積も大きく増え、書類の廃棄作業が煩雑であるが、本構成によれば、マスク印刷済のシートをそのまま廃棄すればよく、使用者の利便性が向上する。
【0010】
又、請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記シート供給部から供給されるシートに対し、両面印刷を行うための両面印刷部を有し、前記入力部は、画像形成を行う印刷画像データの入力を受け付け、前記画像形成部は、両面印刷時、印刷済面にはマスク印刷を行い、未印刷面に前記印刷画像データに基づき画像形成を行うこととした。
【0011】
この構成によれば、両面印刷部を有するので、例えば、片面印刷済のシートに対し、マスク印刷を施すと同時に、他面に所望する画像の形成を行うことができる。又、両面印刷済のシートの廃棄の前処理のため同時にシートの両面にマスク印刷を施すことができる。
【0012】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記様式画像データに対してなされた前記マスク領域の配置設定をマスク領域設定データとして記憶するための記憶部を有し、前記設定入力部は、複数ある前記マスク領域設定データの選択を受け付け、前記画像形成部は、選択された前記マスク領域設定データに基づき、印刷済シートにマスク印刷を行うこととした。
【0013】
この構成によれば、記憶部が、マスク領域の配置設定をマスク領域設定データとして記憶するので、以後、同一の様式の印刷物に対しマスク処理を施す場合、再度マスク領域の配置設定を行う必要を無くすことができる。
【0014】
又、請求項4に係る発明は、請求項3記載の発明において、前記シート供給部から供給されるシートの読み取りを行う読取部と、前記読取部で読み取られたシートの画像データの判定を行う判定部を有し、前記記憶部は、前記マスク領域設定データに関連づけて前記様式画像データを記憶し、前記判定部は、前記読取部で読み取られた画像データと、前記記憶部の前記様式画像データが一致するかの対比を行い、前記画像形成部は、前記読取部で読み取られた画像データと、前記記憶部の前記様式画像データが一致する場合、対応する前記マスク領域設定データに基づきマスク印刷を行うこととした。
【0015】
この構成によれば、シート供給部から供給されるシートの読み取りを行う読取部を有するとともに、記憶部の様式画像データと読み取った画像データの対比を行うので、同一様式の印刷物に対し、自動的にマスク印刷を施すことができる。
【0016】
又、請求項5に係る発明は、請求項4記載の発明において、画像データに対し、画像処理を行うための画像処理部を有し、前記判定部による判定の結果、前記読取部で読み取られた画像データを回転すれば、前記記憶部の前記様式画像データと一致する場合、前記画像処理部は、前記マスク領域設定データに対し、回転処理を施し、前記画像形成部は、回転処理後の前記マスク領域設定データに基づき、マスク印刷を行うこととした。
【0017】
この構成によれば、画像処理部により、マスク領域設定データの回転処理を施すので、シート供給部でのシートの載置方向を問わず、マスク印刷を施すことができる。
【0018】
又、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の発明において、前記入力部は、原稿としてのシートの画像を読み取って画像データを生成する画像読取装置であることとした。
【0019】
この構成によれば、シートの様式が印刷された原稿を読み取るので、読み取った様式画像データに基づきマスク領域の設定を行うことができる。
【0020】
又、請求項7に係る発明は、請求項1乃至6の発明において、前記入力部は、外部からの画像データの送信を受けるインターフェイス部であって、前記様式画像データ及び/又は前記印刷画像データは、前記インターフェイス部と接続されるユーザ端末から送信されることとした。
【0021】
この構成によれば、外部のユーザ端末からの入力部への様式画像データ、印刷画像データの入力を受け付けるので、使用者は、様式画像データ、前記印刷画像データを自己の端末から画像形成装置に送信でき、その様式画像データに基づき、マスク領域の設定を容易に行うことができ、印刷画像データに基づき、未印刷面に画像形成を行って片面印刷済みシートを裏紙として利用できる。
【0022】
又、請求項8に係る発明は、請求項1乃至7の発明において、前記設定入力部は、装置の動作を指示入力するための操作パネルであり、前記操作パネルには、タッチパネル式の液晶表示部が設けられ、前記液晶表示部には、前記様式画像データが表示され、タッチパネルから前記マスク領域の配置が設定されることとした。
【0023】
この構成によれば、様式画像データが液晶表示部に表示され、使用者は視認しつつマスク領域の設定を行うことができるので、使用者は、マスク領域の設定を簡易に行うことができる。
【0024】
又、請求項9に係る発明は、請求項1乃至8の発明において、前記設定入力部は、装置の動作を指示入力するための操作パネルであり、前記操作パネルには、数値入力部が設けられ、前記数値入力部から、前記マスク領域の位置を示す数値を入力することにより前記マスク領域の配置が設定されることとした。
【0025】
この構成によれば、使用者はテンキーなどの数値入力部からマスク領域の設定を行うことができるので、使用者は、マスク領域の配置設定を簡易に行うことができる。
【0026】
又、請求項10に係る発明は、請求項7乃至9の発明において、前記インターフェイス部は、前記ユーザ端末で設定された前記マスク領域設定データを受け付けることとした。
【0027】
この構成によれば、インターフェイス部が、マスク領域の配置設定に関するデータを受け付けるので、使用者は、ユーザ端末でマスク領域の配置設定を行うことができ、そのマスク領域設定データに基づきマスク印刷を行うことができる。
【0028】
又、請求項11に係る発明は、請求項1乃至10の発明において、前記設定入力部は、前記シート供給部から供給されるシートに対し、シート中の画像形成領域全体にマスク印刷を施す全域マスク印刷を行う旨の指示入力を受け付け、前記画像形成部は、全域マスク印刷の指示入力があった場合、そのシートに全域マスク印刷を行うこととした。
【0029】
この構成によれば、シートの全域に対しマスク印刷を施すこともできるので、あまり使用しない様式の書類についてもマスク領域の設定をせずに、マスク印刷を行うことができる。即ち、シートの全域に対しマスク印刷を施すか、一部の領域に対しマスク印刷を施すか使用者は選択することができ、使用者の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0030】
上述したように、本発明によれば、マスク印刷におけるトナー、インクの使用量を削減することで、省資源、低ランニングコストを達成し、かつ、使用者の利便性の高い画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜11に基づき説明する。尚、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0032】
まず、図1及び2を用いて、本発明の実施形態における電子写真方式の複合機1(画像形成装置に相当)の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る複合機1の概略構成の一例を示す模型的正面断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る操作パネル8の一例を示す平面図である。
【0033】
図1に示すように、複合機1は、上面に原稿カバー1aが取り付けられ、装置本体側に、画像読取、画像形成を行うための構成として、画像読取部2(入力部、画像読取装置に相当)、シート供給部3、シート搬送路4、画像形成部5、定着部6、再合流搬送路7、操作パネル8(設定入力部に相当)、読取センサ9(読取部に相当)等を有し、これらの構成を以下、説明する。
【0034】
まず、原稿カバー1aは、画像読取部2の上方に設けられ、画像読取部2の上面に載置された原稿を押さえるためのものである。そして、原稿カバー1aは、図1の紙面奥方に支点(不図示)を有し、上下方向に開閉することができる。
【0035】
原稿カバー1aの下方に配される画像読取部2は、原稿としてのシートSの画像の読み取りを行って、原稿画像を電気信号に変換し、画像データを生成する。そして、画像読取部2は、上面にコンタクトガラス21が配される。又。画像読取部2の内部には、露光ランプ、ミラー、レンズ、イメージセンサ等の光学系部材が設けられる(不図示)。そして、コンタクトガラス21に載置された原稿を光学系部材により、原稿に対して放たれる光の反射光を各画素について電気信号に変換し、原稿の画像データが得られる。
【0036】
前記シート供給部3は、複数枚のコピー用紙、厚紙、OHPシートS等の各種、各サイズのシートSを、画像形成部5に向けシート搬送路4を介し供給する。シート供給部3には、カセット31が設けられ、カセット31は、最上位に位置するシートSが供給ローラ32に当接するように、シートSを収容する。
【0037】
又、図1に示すように、複合機1の右側面に、カセット31とは別にシートSを供給するための手差しトレイ33が設けられる。そして、手差しトレイ33のシート搬送方向下流側にも、手差しトレイ33に載置されたシートSの最上位のシートSと接するように、供給ローラ32が設けられる。これらの供給ローラ32は、モータ、ギア等から構成される駆動装置(不図示)と接続され、カセット31や手差しトレイ33からシートSの供給を行う際に、回転し、画像形成部5にシートSを送り込む。又、本発明に関しては、これらのカセット31や手差しトレイ33に、マスク印刷を施す片面又は両面印刷済のシートSが、所定の方向、所定の向きで複数載置される。
【0038】
前記シート搬送路4は、シート供給部3から供給されたシートSの搬送路である。シート搬送路4には、モータ、ギア等からなる駆動装置(不図示)に接続される搬送ローラ対41と、シートSの搬送を案内するためのガイド42、シートSの搬送方向を切り替える切替ガイド43等が設けられる。そして、又、シート排出口44の手前に、スイッチバックローラ対45が設けられる。スイッチバックローラ対45は、両面印刷の際、シートSのスイッチバック動作のため、正逆回転自在である。又、シート搬送路4には、適切なタイミングでシートSを画像形成部5に進入させるためのレジストローラ対46が、搬送ローラ対41の1つとして設けられる。
【0039】
前記画像形成部5は、シート搬送路4により搬送されるシートSに対し電子写真方式により画像形成を行う。具体的に、画像形成部5には、感光体ドラム51、帯電装置52、露光装置53、現像装置54、転写ローラ55、クリーニング装置56等が設けられる。
【0040】
図1に示すように、感光体ドラム51は、画像形成部5のほぼ中心に位置し、周面に形成される感光層には、トナー像が形成される。そして、感光体ドラム51は、モータ、ギア等からなる駆動装置(不図示)に接続され回転駆動する。帯電装置52は、感光体ドラム51の上方に配され、回転する感光体ドラム51の周面を当接位置で一様に帯電させる。尚、帯電ローラの他、コロナ放電式やブラシ方式の帯電装置を用いても構わない。
【0041】
露光装置53は、帯電後の感光体ドラム51の周面を、形成すべき画像の画像データに基づき、光を照射して感光体ドラム51の周面に静電潜像を形成する。尚、露光装置53は、半導体レーザを光源としポリゴンミラーで走査するレーザユニットでもよいし、光源としてアレイ状に配されたLEDであってもよい。そして、現像装置54は、トナーを所定の電位に帯電させ、露光装置53により形成された静電潜像にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。
【0042】
転写ローラ55は感光体ドラム51の下方で接し、感光体ドラム51と転写ローラ55の間にニップが形成される。このニップにシートSが進入した際に、転写ローラ55に、所定のバイアス電圧(電流)が印加され、シートSにトナー像が転写される。そして、クリーニング装置56は、トナー転写後の感光体ドラム51の周面部分で残留するトナーやその他塵芥を除去、清掃する。
【0043】
前記定着部6は、主として、発熱源を内蔵する加熱ローラ61と、加熱ローラ61に圧接されニップを形成する加圧ローラ62から構成される。そして、このニップにトナー像が転写されたシートSが進入する。この進入の際に、トナーは、加熱、加圧され、トナー像がシートSに定着する。トナー像定着後のシートSは、排出トレイ47に向けて搬送される。排出トレイ47は、複合機1から排出されたシートSを受け止める。
【0044】
前記再合流搬送路7は、定着部6とシート排出口44の間に設けられる分岐点71と、レジストローラ対46よりもシート搬送方向上流側に設けられる再合流点72とを結ぶ。
【0045】
具体的には、片面のみの画像形成の場合、定着部6を通過したシートSは、排出トレイ47に向けて搬送される(スイッチバックローラ対45は、矢印A方向に回転)。一方、両面印刷の場合、スイッチバックローラ対45は、片面印刷済のシートSを一旦排出トレイ47に向けて搬送するが、シートSが完全に排出される前に、シートSの搬送方向を反転させる(矢印B方向に回転)。この反転と、分岐点71に設けられる切替ガイド43により、シートSは、再合流搬送路7に向けて搬送される。その後、再合流搬送路7に進入した片面印刷済のシートSは、複数の搬送ローラ対73により、再合流点72まで搬送される。このようなスイッチバックローラ対45等の動作により、シートSは、表裏が逆転され、再度、画像形成部5に送り込まれる。即ち、スイッチバックローラ対45と、再合流搬送路7等が両面印刷部として機能し、両面印刷機能が実現される。
【0046】
この両面印刷機能により、片面印刷済のシートSの印刷済面にマスク印刷を施し、未印刷面に任意の画像形成を同時に行うことができ、又、両面印刷済のシートSの廃棄の前処理として、シートSの両面にマスク印刷を同時に施すことができる。
【0047】
前記操作パネル8は、本実施形態では、複合機1の正面上方に配される(図1において破線で示す)。そして、図2に示すように、操作パネル8には、使用者が、複合機1の各種設定、入力を行い、又、複合機1の状態表示等のため、スイッチ、ボタンやタッチパネル式の液晶表示部81が設けられる。又、操作パネル8には、数字入力を行うためのテンキー部82(数値入力部に相当)が設けられる。又、複合機1の機能を選択するための機能選択キー群83や、複合機1の動作開始を指示入力するためのスタートキー84等の各種キーも設けられる。
【0048】
次に、複合機1内に設けられる読取センサ9ついて説明する。本実施形態では、読取センサ9は、例えば、CIS方式のライン型のイメージセンサであって、手差しトレイ33とカセット31からのシートSの合流点91のシート搬送方向下流側、かつ、レジストローラ対46よりもシート搬送方向上流側に設けられる。この読取センサ9は、シート供給部3から供給されるマスク印刷を施す印刷済のシートSの様式の確認のため、シートSを読み取る(詳細は後述)。
【0049】
次に、図3に基づき、本発明の実施形態に係る複合機1のハードウェア構成を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る複合機1の一例を示すブロック図である。
【0050】
まず、図3に示すように、本実施形態の複写機本体内に、複合機1全体の動作の制御のため、制御部10が設けられ、CPU11(判定部に相当)、記憶部12、計時部13、画像処理部14(判定部に相当)等から構成される。前記CPU11は、中央演算処理装置として機能し、記憶部12に記憶され、又は入力されるプログラム、データに基づき、各種演算を行い、複合機1の各部を制御する。
【0051】
記憶部12は、例えば、RAM、HDD、フラッシュROM等のメモリで構成される。RAMは、揮発性のメモリであり制御用プログラムや制御用データを一時的に展開する場合や、画像データを一時的に保存しておく場合などに用いられる。HDDは、大容量の不揮発性の記憶装置であって、制御用プログラムや、画像データの保存や、使用者による複合機1の設定情報を保存する場合などに使用される。フラッシュROMは、複合機1本体等の制御用プログラムや制御用データ等を記憶し、CPU11は、制御のためフラッシュROMからデータを読み出す。又、本発明を実施するため、詳細は後述するが、マスク印刷を施す領域の配置設定に関するマスク領域設定データや、書類の様式の画像データである様式画像データFDを例えば、HDDやフラッシュROMに記憶することができる。そして、制御部10は、画像形成部5を制御して、マスク領域設定データや設定入力部に入力されたマスク領域Mの配置設定に基づき、印刷済シートにマスク印刷を行うのである。
【0052】
画像処理部14は、適切な画像形成のため、画像データに対し各種処理を施す部分である。例えば、γ補正処理、シェーディング補正、拡大縮小処理、濃度調整処理、濃度変更処理等の公知の各種画像処理を行うことができる。又、画像処理部14は、マスク印刷を施す領域を回転させる回転処理を行うことが可能である(詳細は後述)。尚、計時部13は、両面印刷等でのシート搬送・合流等で制御に必要となる各種時間をカウントする。
【0053】
そして、この制御部10は、複合機1を構成する画像読取部2、シート供給部3、シート搬送路4、画像形成部5、定着部6、再合流搬送路7、操作パネル8等と接続され、記憶部12に記憶されたプログラム等に基づき、各部の動作が的確に行われるように制御する。又、搬送中のシートSを読み取るための読取センサ9も制御部10と接続され、読取センサ9が読み取った画像は、制御部10の記憶部12や画像処理部14で利用される。
【0054】
又、制御部10に、各種コネクタ等で構成されるI/F部15(入力部、設定入力部、インターフェイス部に相当)が備えられる。このI/F部15には、図2に示すように、直接又はネットワーク等を介して、ユーザ端末16(例えば、パーソナルコンピュータ)が接続される。そして、ユーザ端末16に、複合機1のドライバソフトウェアをインストールすることで、複合機1とユーザ端末16が通信可能とされ、例えば、ユーザ端末16から画像データを送信し、画像形成を行うことができる(プリンタ機能)。又、画像読取部2で読み取った画像データをユーザ端末16に送信することができる(スキャナ機能)。又、通信回線(不図示)を利用してFAX送信を行うデータをユーザ端末16から複合機1に送信し、或いは、受信したFAXデータをユーザ端末16に転送することができる(FAX機能)。
【0055】
次に、本発明は、印刷済のシートSに対しマスク印刷を施すマスク領域Mを、所望の位置、大きさ、範囲で複数設定できる点に特徴がある。そこで、本発明の有用性及び基本的概要について、図4乃至6に基づき説明する。図4は、本発明の実施形態に係るマスク印刷を施す個人情報書類の一例を示す図面である。図5は、本発明の実施形態に係るマスク印刷を施す社内書類の一例を示す図面である。図6は、本発明の実施形態に係るマスク印刷を施す財務書類の一例を示す図面である。
【0056】
これら、図4〜図6に示す書類には、個人情報や金額等が記載され、いずれも、外部に流出することを防止すべき書類である。即ち、機密を保持すべき機密書類である。具体的には、図4は、顧客台帳の様式の一例を示し、氏名、住所、電話番号等の個人情報が記載される。これらの個人情報の所有者は、保護を厳格に行わなければならない。図5は、稟議書の様式の一例を示し、第三者に流出すれば、企業等の動向が外部に把握される可能性がある。図6は、資金の収入・支出を示す財務書類の類型の1つを示し、企業や官公庁における詳細な資金の流れの第三者への流出は、経営、業務の安全上等の観点から好ましいものではない。尚、これら図4乃至6に挙げた例は一例に過ぎず、企業等において機密を保持すべき書類に枚挙に暇がない。
【0057】
これら機密書類は、片面のみ印刷されていても、機密保持の観点から、裏紙としては、そのままでは利用できず、従来、シュレッダー処理等なされ破棄されていた。しかし、一方では、近年の地球環境保護に基づく紙資源の有効活用やコスト削減の観点から、シートSの両面に印刷を施すことが一般に行われている。そこで、本発明は、従来よりもコスト削減、使用者の利便性を大きく高め、機密書類を裏紙として利用できるようにする。
【0058】
図4乃至6に示すように、企業内や官公庁内、又はその部署内等においては、機密書類の様式が定められているものがある。そこで、本実施形態の複合機1は、図4(a)、図5(a)、図6(a)に示すような書類の様式の画像データ(様式画像データFD)を記憶部12に取り込む(例えばRAMやHDD等1)。この様式画像データFDの取り込みは、上述の画像読取部2により行っても良いし、I/F部15により、ユーザ端末16からのデータ送信という形態で行われても良い。即ち、画像読取部2やI/F部15が、印刷内容を隠蔽するマスク印刷を行うため、複合機1にシート供給部3に収容される印刷済シートSの様式画像データFDを入力するための入力部となる。
【0059】
そして、様式画像データFDのうち、隠蔽すべき部分は常に全面にわたるものではなく、むしろ一部に限られるのが通常である。例えば、図4(b)、図5(b)、図6(b)中の2点鎖線で示すように、個人情報、企業動向、開発動向、金額等、機密保持を行う上で、マスク印刷により隠蔽すべき領域(マスク領域M)は限られる。そして、本実施形態の複合機1では、様式画像データFDのうちマスク印刷を行う領域の設定を行うことができる。例えば、この設定は、操作パネル8の液晶表示部81から行うことができ、又、液晶表示部81の無いような機種では、I/F部15を介して接続されるユーザ端末16から行うことができる。即ち、操作パネル8やI/F部15は、マスク印刷を行う1又は複数のマスク領域Mを設定する設定入力部となる。
【0060】
次に、図7に基づき、マスク印刷でのパターンについて説明する。図7は、本実施形態における複合機1のマスク印刷のパターン例を示すものであり、(a)はマスク印刷前の状態、(b)は、塗り潰しを行うベタ印刷、(c)は網掛けパターン、(d)は、ランダムな文字列パターンを示す。
【0061】
本実施形態の複合機1では、マスク印刷のパターンを複数選択することが可能である。例えば、図7(a)のように印刷されたシートSに対して、図7(b)に示すような、ベタ塗り(例えば、ブラック)のマスク印刷を施せば、確実に記載内容の隠蔽をすることができる。通常、ベタ塗りによるマスク印刷が望ましい。そして、図7(c)の網掛けパターンでは、隠蔽力を高め、記載内容を認識不能とするため、マスク領域Mにおけるトナーの占有率は50%以上とすることが望ましい。この網掛けパターンによれば、ベタ塗りよりも、マスク印刷でのトナーの使用量を削減することができる。又、図7(d)のランダムな文字列によるマスク印刷でも、トナーの使用量を削減することができる。尚、記載内容を認識不能として隠蔽力を高めるため、数字の印刷されたマスク領域Mでは数字を、漢字等の文字が印刷された領域では漢字、平仮名等の文字を印刷するように、操作パネル8等で設定できるようにしてもよい。
【0062】
そして、これらのマスク印刷でのパターン選択は、使用者が、操作パネル8やユーザ端末16から設定すればよい。例えば、機密性保持が非常に高く求められる書類では、ベタ塗りのマスク印刷を行い、シートSの印刷から年数がたち、機密保持の重要性が若干低下したような書類では網掛けパターンによるマスク印刷を選択する等、機密保持の重要度とトナーの使用量を考慮して、パターンを選択することができる。
【0063】
次に、図8に基づき、本発明の実施形態に係るマスク印刷の具体的な設定・入力等の操作を、図9に基づき、マスク印刷の結果について説明する。図8(a)は、液晶表示部81でのマスク領域Mの配置設定画面の一例を示し、(b)は、マスク印刷を行うシートSの選択を行う際の表示の一例を示す。図9は、本発明の実施形態に係るマスク印刷の印刷結果の一例を示す図である。尚、図6に示した例を利用して、以下では説明を行う。
【0064】
又、図8は、操作パネル8の液晶表示部81での表示を想定したものであるが、ユーザ端末16のディスプレイ上に同様の表示を行って、ユーザ端末16上でマスク印刷の設定入力を使用者が行い、その設定データをI/F部15が受け付けるようにしてもよい。
【0065】
まず、図8(a)に基づき、具体的なマスク領域Mの設定について説明する。
【0066】
画像読取部2により読み取られた様式画像データFDや、ユーザ端末16から送信される様式画像データFDは、マスク領域Mの配置設定の際、液晶表示部81に表示される。又、ユーザ端末16で配置設定を行う場合は、ユーザ端末16のディスプレイ上に様式画像データFDを表示することができる。尚、このマスク領域Mの配置設定のため、例えば、操作パネル8からマスク領域Mの配置設定モードへのモード切替を指示する。
【0067】
具体的には、書類の様式が印刷された原稿を画像読取部2が読み取りを行うか、書類の様式の画像データがユーザ端末16から送信されると、液晶表示部81に書類の様式画像データFDが表示される。一方、ユーザ端末16のディスプレイに関しては、画像読取部2が読み取った様式画像データFDは、I/F部15を介し、ユーザ端末16に送信されるようにし、又は、ユーザ端末16のメモリ等から様式画像データFDを読み出し、ディスプレイ上に様式画像データFDが表示される。
【0068】
そして、液晶表示部81やユーザ端末16のディスプレイには、様式画像データFDが表示されるとともに、選択ボタン86a、領域指定ボタン86b、拡大ボタン86c、縮小ボタン86d、設定ボタン86e、OKボタン86f、キャンセルボタン86g等が配される。液晶表示部81はタッチパネル式のものであるから、これらのボタンを押下することにより、各ボタンの選択を行える。一方、ユーザ端末16では、マウスやキーボード等の入力装置を利用すればよい。尚、これらのボタンは一例に過ぎず適宜ボタンの追加等を行うことができる。
【0069】
選択ボタン86aは、複数の様式画像データFDから設定を行う様式画像データFDを選択する場合等に押下され、マスク領域Mの配置設定を行う様式画像データFDを選択する。領域指定ボタン86bは、マスク領域Mの配置設定を行う際に押下されるボタンであり、例えば、液晶表示部81で言えば、タッチパネル上で指でなぞられた領域をマスク領域Mと設定できる。尚、操作パネル8には、テンキー部82が設けられており、数値入力により範囲、位置、大きさ等を指定しても良い。一方、ユーザ端末16では、例えば、マウスによるドラッグ等によりマスク領域Mの設定を行うことができる。即ち、操作パネル8(液晶表示部81やテンキー部82)やI/F部15は、画像読取部2やI/F部15から入力された様式画像データFDに基づくマスク領域Mの配置設定を受け付ける。
【0070】
拡大ボタン86c、縮小ボタン86dは、液晶表示部81やディスプレイに表示される様式画像データFDの拡大表示、縮小表示を行うためのものであり、マスク領域Mの配置設定を容易化するためのものである。尚、一般に、画像形成装置における液晶表示部81の大きさは限られ、常に様式画像データFDの全域を表示できるとは限らないので、上下方向と左右方向のスクロールバー87が設けられる。
【0071】
設定ボタン86eは、シートサイズの設定やシート選択画面88での登録名等、各種設定を行う際に押下される。そして、マスク領域Mの配置設定等、全ての設定が終われば、OKボタン86fを押下すると、マスク領域Mに関する設定が完了する。尚、ユーザ端末16でマスク領域設定を行った場合は、ユーザ端末16からマスク領域設定データが複合機1に送信され、I/F部15がこれを受け付け、記憶部12に記憶してもよい。尚、キャンセルボタン86gは、マスク領域Mの配置設定を中断する場合に押下される。
【0072】
そして、記憶部12(例えば、HDD、フラッシュROM等)には、マスク領域設定データや、マスク領域設定データに関連づけて様式画像データFDをOKボタン86fが押下されることで記憶することができる。尚、設定を行ったマスク領域設定データ等の記憶を行うか否かの確認ウィンドウ(不図示)を表示させても良い。
【0073】
このようなマスク領域Mの設定を行い、シート供給部3に同一様式のシートSを、所定の方向に載置してマスク印刷を行った結果が図9である。図9に示すように、本発明では、例えば金額が記載されているので、使用者が隠蔽すべきとして、マスク印刷を設定したマスク領域Mにのみマスク印刷が施される。従来のマスク印刷のように、印刷済面の全域にマスク印刷を施す場合に比べて格段にトナーやインクの使用量を削減できる。具体的には、図9に示す場合であると、全面ベタ塗りの場合に比べ、40〜60%程度は、トナー等の使用量が削減されている。
【0074】
そして、後日、既にマスク領域設定データの設定を行った様式に対し、マスク印刷を行う場合、記憶部12に記憶されたマスク領域設定データ等を呼び出すことができる。これにより、以後、同一様式の書類に対しマスク印刷を施す際、再度、マスク領域Mの配置設定を行う必要をなくすことができる。
【0075】
例えば、図8(b)に示すように、本実施形態の複合機1では、例えば、使用するシートSを選択するためのシート選択画面88において、先に記憶されたマスク領域設定データを選択可能である。例えば、液晶表示部81やユーザ端末16のディスプレイには、通常のシート選択に加え、書類の内容に合わせて「個人情報」、「財務書類」、「社内書類」のようなタイトルが付けられた、以前に記憶されたマスク領域設定データを選択するためのシート選択ボタン89が表示される。言い換えると、マスク領域設定データを記憶させると、シートSの選択画面にシート選択ボタン89が設定される。即ち、操作パネル8では、複数あるマスク領域設定データの選択を受け付ける。
【0076】
そして、シート選択ボタン89を選択した場合、使用者は、マスク印刷を行う印刷済のシートSを所定の方向で、カセット31又は手差しトレイ33に載置する。そして、使用者が操作パネル8のスタートキー84を押下すると、印刷済のシートSが画像形成部5に向けて送り出され、設定したマスク領域Mにマスク印刷が施されることになる。即ち、画像形成部5は、選択されたマスク領域設定データに基づき、印刷済シートSにマスク印刷を行う。
【0077】
ここで、あまり使用頻度の高くない様式や、書類の様式自体がない場合など、マスク領域Mの設定を行うまでもない場合がある。又、シートSの全域にマスク印刷を施すべき機密書類も存在しうる。そのような場合、マスク印刷を施したいシートSの印刷面の全体にマスク印刷を行うため、例えば、シート選択ボタン89の1つに「全域マスク」のようなシート選択ボタン89aを設定しておく。これにより、全域マスク印刷の指示・入力を行え、使用者の利便性が高い。即ち、液晶表示部81、I/F部15は、シート供給部3から供給されるシートS中の画像形成領域全体にマスク印刷を施す全域マスク印刷を行う旨の指示入力を受け付ける。そして、画像形成部5は、全域マスク印刷の指示入力があった場合、そのシートSに全域マスク印刷を行うのである。
【0078】
次に、図10に基づき、読取センサ9の利用について説明する。図10(a)は、本発明の実施形態に係る読取センサ9のシート読み取りの模式図であり、(b)は、マスク領域設定データの回転を示す模式図である。
【0079】
本実施形態の複合機1では、手差しトレイ33から供給されるシートSと、シート供給部3又は再合流搬送路7から供給されるシートSの合流点91と、レジストローラ対46の間に読取センサ9が設けられる(図1参照)。図10(a)に示すように、読取センサ9は、シート搬送路4に対向して設けられ、搬送されるシートSを読み取る。そして、記憶部12に記憶されるマスク領域設定データの設定を行った様式画像データFDと、搬送されるシートSの画像データの対比、比較が行われ、様式が一致するか否か、CPU11や画像処理部14により判定、確認がなされる。この判定、確認は、読取センサ9が読み取った画像データと様式画像データFDの各画素を比較することにより行われる。
【0080】
この判定、確認作業により、様式が一致すれば、その様式に対応するマスク領域設定データを記憶部12から自動的に呼び出すことで、マスク印刷の自動化を図ることができる。従って、例えば、印刷済のシートSをカセット31等に補給し、操作パネル8やユーザ端末16でマスク印刷を行うモードに設定し、スタートキー84を押下すれば、記憶された様式画像データFDに対応したマスク印刷がなされるのであり、使用者の各種設定の手間を省くことができる。即ち、画像形成部5は、読取センサ9で読み取られた画像データと、記憶する様式画像データFDが一致する場合、対応するマスク領域設定データに基づきマスク印刷を行う。
【0081】
ここで、カセット31や手差しトレイ33等にシートSの向きが異なって補給された場合、警告メッセージの表示や、動作の停止等の発生がなしにマスク印刷が行われれば、使用者の利便性は大きく向上する。このシートSの向きが異なるか否かは、読取センサ9の読み取り結果と、記憶された様式画像データFDの対比により確認することができる。
【0082】
このようなシートSの載置方向が異なる場合、図10(b)に示すように、例えば、マスク領域設定データの配置を画像処理部14等が90度又は180度回転させる処理を行うことで対応することができる。即ち、画像処理部14等による判定、確認の結果、読取センサ9で読み取られた画像データを回転すれば、記憶部12に記憶される様式画像データFDと一致する場合、画像処理部14は、マスク領域設定データに対し、回転処理を施し、画像形成部5は、回転処理後のマスク領域設定データに基づき、マスク印刷を行う。
【0083】
具体的には、図10(b)で示すように、シートSの搬送方向において、シートが逆向きに搬送された場合、マスク領域Mは、シートSの中心点に対し対称な位置となるので、もとの様式画像データとマスク領域設定データを180度回転させる。従って、マスク領域Mの配置も180度回転される。一方、シートSの縦・横の方向が異なる場合(例えば、A4縦とA4横)も、もとの様式画像データとマスク領域設定データを90度回転させる。従って、マスク領域Mの配置も90度回転される。
【0084】
尚、シートSの搬送方向での中心軸がシート搬送路4の中心と一致して搬送される場合など、印刷済面の様式の判定では、搬送されるシートSの全域の画像データが必ず必要な訳ではない。そこで、本実施形態では、読取センサ9の読み取り長さを、主走査方向でのシート搬送路4の最大幅に対し任意に短くして、読取センサ9のコストダウンを図るこができる。(例えば半分程度、一例を図10(a)に破線で図示)。
【0085】
更に、搬送されるシートSと記憶される様式画像データFDとの一致判定を容易にするため、様式を特定するための目印がシートSの印刷済面に配されても良い。例えば、図4〜6に示すように、シートSの右上端部分に「様式001」のように各様式にナンバーを割り当ててもよい。又、搬送されるシートSを読み取った画像データと様式画像データFDに対し、画像処理部14等がOCR(Optical Character Reader)プログラムを動作させ、様式ごとにナンバーや書類の標題等を認識し、様式が一致するか確認しても良い。
【0086】
次に、図11に基づき、マスク印刷を行う場合の制御の一例について説明する。図11は、本発明の実施形態に係るマスク印刷の制御の一例を示すフローチャートである。尚、ここでは、片面印刷済のシートSに対し、印刷済面にはマスク印刷を行い、未印刷面に対し別途画像形成を行う場合について説明する。即ち、裏紙としての使用である。
【0087】
まず、スタートの段階で、使用者は、マスク印刷を行う場合、印刷済のシートSをシート供給部3に載置しておく必要がある。本実施形態の複合機1では、マスク印刷を行う場合、操作パネル8等により、例えば、マスク印刷モードに複合機1のモードを切り替える旨の選択入力を行い、そのモード選択は制御部10に伝達される(ステップ♯1)。この時、必要に応じて、シート選択画面89から、マスク領域設定データの選択入力を行っておくが、必須ではない。そして、スタートキー84の押下等により、マスク印刷が開始され(ステップ♯2)、片面印刷済のシートSの搬送が開始される。(ステップ♯3)。
【0088】
その後、読取センサ9が搬送されるシートSの読取を行い(ステップ♯4)、まず、画像処理部14は、シートSの読取面が印刷済面であるかを確認する(ステップ♯5)。そして、印刷済面である場合(ステップ♯5のYes)、制御部10は、操作パネル8やI/F部15から記憶部12に記憶され、例えばシート選択画面88に表示されるマスク領域設定データの選択入力がされていないかを確認する(ステップ♯6)。マスク領域設定データの選択入力がされていれば(ステップ♯6のNo)、選択入力に基づき、直ちにマスク印刷を施す(ステップ♯7)。
【0089】
一方、マスク領域設定データの選択入力がされていなければ(ステップ♯6のYes)、画像処理部14は、記憶部12の各様式画像データFDと読み取った画像データを比較し(ステップ♯8)、記憶部12に登録されている様式と一致するか判定・確認する(ステップ♯9)。様式が一致すれば(ステップ♯9のYes)、その様式画像データFDに対応するマスク領域設定データに基づき、マスク印刷が施される(ステップ♯10)。ここで、様式の一致は、図10で説明したように、シートSの載置方向が異なるため、様式画像データFDを回転させれば、読取センサ9の読取画像データと様式画像データFDが一致する場合も一致とされる。この場合は、マスク領域設定データの回転処理が画像処理部14で施された上で、マスク印刷がなされる。
【0090】
一方、様式が一致しなければ(ステップ♯9のNo)、印刷済面の全面にマスク印刷が施される(ステップ♯11)。このように、様式が一致しない場合に全面にマスク印刷が施されるので、様式ごとに、必ずマスク領域Mの設定を行う必要はなく、本発明は、使用者にマスク領域Mの設定を強要するものではない。
【0091】
又、最初に読取センサ9が読み取った面が未印刷面の場合(ステップ♯5のNo)、画像読取部2やユーザ端末16からのデータ(印刷画像データ)に基づき、通常の画像形成が行われる。(ステップ♯12)。そして、読取センサ9が読み取った面に対し、マスク印刷又は通常の画像形成がなされた後(ステップ♯7、♯10、♯11、♯12)、制御部10は、両面印刷(即ち、通常の画像形成とマスク印刷の両方)を行ったかどうかを確認する(ステップ♯13)。
【0092】
通常の画像形成やマスク印刷等の両面印刷が完了していれば(ステップ♯13のYes)、シートSは、排出トレイ47に排出され(ステップ♯14)、処理は完了する(エンド)。一方、両面印刷が完了していなければ、定着後、シートSは、表裏逆転されつつ再合流搬送路7進入し、レジストローラ対46手前まで再度搬送され(ステップ♯15)、ステップ♯4に戻る。
【0093】
尚、両面が印刷済面となっていて、廃棄前の前処理を行う場合にも、上記フローは適用することができ、マスク印刷だけが施されることになる。又、片面のみマスク印刷する場合は、単に、シート選択画面88で所望のマスク領域設定データを選択すればよい。
【0094】
このようにして、本発明の構成によれば、シートS全体に対してではなく、印刷済シートのうち、使用者が設定するマスク領域Mについてのみマスク印刷が施されるので、機密が漏洩することなく、トナー等の使用量を削減による省資源、低ランニングコストを達成することができ、又、使用者がマスク印刷を施す領域を自ら設定できるので、確実に機密性が保持され、使用者の利便性が非常に高い画像形成装置(複合機1)を提供することができる。又、マスク印刷済のシートSを裏紙として利用すれば、更に、省資源、低ランニングコストを達成できる。
【0095】
一方、本発明は、書類を廃棄する場合の前処理に利用でき、両面印刷済又は片面印刷済のシートSに対し、マスク印刷を施せば、例えば、シュレッダー等を使用することなく、従来よりも低コストで、作業を要せず機密書類の破棄が行える。例えば、シュレッダーによる書類の破砕作業では、絶えず作業を行う人員が必要となり、紙詰まりや、破砕後の書類の容積も大きく増え、書類の廃棄作業が煩雑であるが、本構成によれば、マスク印刷済のシートSをそのまま廃棄すればよく、使用者の利便性が向上する。
【0096】
又、両面印刷部(スイッチバックローラ対45、再合流搬送路7)を有するので、片面印刷済のシートSに対し、マスク印刷を施すと同時に、他面に所望する画像の形成を行うことができる。又、両面印刷済のシートSの廃棄の前処理として同時に、シートSの両面にマスク印刷を施すことができる。
【0097】
又、記憶部12が、マスク領域Mの配置設定をマスク領域設定データとして記憶するので、以後、同一の様式の印刷物に対しマスク処理を施す場合、再度マスク領域Mの配置設定を行う必要を無くすことができる。又、シート供給部3から供給されるシートSの読み取りを行う読取部(読取センサ9)を有し、記憶部12の様式画像データFDと読み取った画像データの対比を行うので、同一様式の印刷物に対し、自動的にマスク印刷を施すことができる。又、画像処理部14により、マスク領域設定データの回転処理を施すので、シート供給部3でのシートSの載置方向を問わず、マスク印刷を施すことができる。
【0098】
又、シートSの様式が印刷された原稿を読み取るので、読み取った様式画像データFDに基づきマスク領域Mの設定を容易に行うことができる。又、外部のユーザ端末16からの入力部(I/F部15)への様式画像データFDや印刷画像データの入力を受け付けるので、使用者は、様式画像データFD、印刷画像データを自己の端末から画像形成装置に送信でき、その様式画像データFDに基づき、マスク領域Mの設定を容易に行うことができ、印刷画像データに基づき、未印刷面に画像形成を行って片面印刷済みシートを裏紙として利用できる。
【0099】
又、様式画像データFDが液晶表示部81に表示され、使用者は視認しつつマスク領域Mの設定を行うことができるので、使用者は、マスク領域Mの設定を簡易に行うことができる。又、使用者は数値入力部(テンキー部82)からマスク領域Mの設定を行うことができるので、マスク領域Mの設定を簡易に行うことができる。又、インターフェイス部(I/F部15)が、マスク領域Mの配置設定に関するデータを受け付けるので、使用者は、ユーザ端末16でマスク領域Mの配置設定を行うことができ、そのマスク領域設定データに基づきマスク印刷を行うことができる。又、シートSの全域に対しマスク印刷を施すこともできるので、あまり使用しない様式の書類についてもマスク領域Mの設定をせずに、マスク印刷を行うことができる。即ち、シートSの全域に対しマスク印刷を施すか、一部の領域に対しマスク印刷を施すか使用者は選択することができ、使用者の自由度を高めることができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、マスク印刷を行う画像形成装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施形態に係る複合機の概略構成の一例を示す模型的断面図である。
【図2】実施形態に係る操作パネルの一例を示す平面図である。
【図3】実施形態に係る複合機の一例を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係るマスク印刷を施す個人情報書類の一例を示す図である。
【図5】実施形態に係るマスク印刷を施す社内書類の一例を示す図である。
【図6】実施形態に係るマスク印刷を施す財務書類の一例を示す図である。
【図7】実施形態における複合機のマスク印刷のパターン例を示すものであり、(a)はマスク印刷前の状態、(b)は、塗り潰しを行うベタ印刷、(c)は網掛けパターン、(d)は、ランダムな文字列パターンを示す。
【図8】(a)は、液晶表示部でのマスク領域Mの配置設定画面の一例を示し、(b)は、マスク印刷を行うシートの選択を行う際の表示の一例を示す。
【図9】実施形態に係るマスク印刷の印刷結果の一例を示す図である。
【図10】(a)は、実施形態に係る読取センサのシート読み取りの模式図であり、(b)は、マスク領域設定データの回転を示す模式図である。
【図11】実施形態に係るマスク印刷の制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
1 複合機(画像形成装置) 10 制御部
11 CPU(判定部) 12 記憶部
14 画像処理部(判定部)
15 I/F部(入力部、設定入力部、インターフェイス部)
16 ユーザ端末 2 画像読取部(入力部、画像読取装置)
3 シート供給部 31 カセット
33 手差しトレイ 45 スイッチバックローラ対(両面印刷部)
5 画像形成部 7 再合流搬送路(両面印刷部)
8 操作パネル(設定入力部) 81 液晶表示部
82 テンキー部(数値入力部) 9 読取センサ(読取部)
FD 様式画像データ M マスク領域
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートへの画像形成を行う画像形成部と、
印刷済シートを複数収容し、前記画像形成部に供給するためのシート供給部と、
印刷内容を隠蔽するマスク印刷を行うため、前記シート供給部に収容される印刷済シートの様式の様式画像データを装置に入力するための入力部と、
マスク印刷を行う1又は複数のマスク領域を設定するための設定入力部と、を備え
前記設定入力部は、前記入力部から入力された前記様式画像データ基づく前記マスク領域の配置設定を受け付け、
前記画像形成部は、前記設定入力部に入力された前記マスク領域の配置設定に基づき、印刷済シートにマスク印刷を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記シート供給部から供給されるシートに対し、両面印刷を行うための両面印刷部を有し、
前記入力部は、画像形成を行う印刷画像データの入力を受け付け、
前記画像形成部は、両面印刷時、印刷済面にはマスク印刷を行い、未印刷面には前記印刷画像データに基づき画像形成を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記様式画像データに対してなされた前記マスク領域の配置設定をマスク領域設定データとして記憶するための記憶部を有し、
前記設定入力部は、複数ある前記マスク領域設定データの選択を受け付け、
前記画像形成部は、選択された前記マスク領域設定データに基づき、印刷済シートにマスク印刷を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記シート供給部から供給されるシートの読み取りを行う読取部と、
前記読取部で読み取られたシートの画像データの判定を行う判定部を有し、
前記記憶部は、前記マスク領域設定データに関連づけて前記様式画像データを記憶し、
前記判定部は、前記読取部で読み取られた画像データと、前記記憶部の前記様式画像データが一致するかの対比を行い、
前記画像形成部は、前記読取部で読み取られた画像データと、前記記憶部の前記様式画像データが一致する場合、対応する前記マスク領域設定データに基づきマスク印刷を行うことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像データに対し、画像処理を行うための画像処理部を有し、
前記判定部による判定の結果、前記読取部で読み取られた画像データを回転すれば、前記記憶部の前記様式画像データと一致する場合、
前記画像処理部は、前記マスク領域設定データに対し、回転処理を施し、
前記画像形成部は、回転処理後の前記マスク領域設定データに基づき、マスク印刷を行うことを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記入力部は、原稿としてのシートの画像を読み取って画像データを生成する画像読取装置であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置
【請求項7】
前記入力部は、外部からの画像データの送信を受けるインターフェイス部であって、前記様式画像データ及び/又は前記印刷画像データは、前記インターフェイス部と接続されるユーザ端末から送信されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置
【請求項8】
前記設定入力部は、装置の動作を指示入力するための操作パネルであり、
前記操作パネルには、タッチパネル式の液晶表示部が設けられ、
前記液晶表示部には、前記様式画像データが表示され、タッチパネルから前記マスク領域の配置が設定されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記設定入力部は、装置の動作を指示入力するための操作パネルであり、
前記操作パネルには、数値入力部が設けられ、
前記数値入力部から、前記マスク領域の位置を示す数値を入力することにより前記マスク領域の配置が設定されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記インターフェイス部は、前記ユーザ端末で設定された前記マスク領域設定データを受け付けることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記設定入力部は、前記シート供給部から供給されるシートに対し、シート中の画像形成領域全体にマスク印刷を施す全域マスク印刷を行う旨の指示入力を受け付け、
前記画像形成部は、全域マスク印刷の指示入力があった場合、そのシートに全域マスク印刷を行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−116210(P2009−116210A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291540(P2007−291540)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】