説明

画像形成装置

【課題】より高速なプロセス線速に対応できるとともに、高速なウォームアップを実現でき、しかも消費電力を少なく保ちながら、加熱手段から発生した熱が画像形成手段に伝播しにくく、画像形成手段でトナーが溶融して固着するといった不具合が発生することを防止する。
【解決手段】エンドレスベルト状の像担持体35が走行可能に支持されている。その像担持体の走行方向に沿って、像担持体が担持するトナー像を形成する画像形成手段100と、像担持体が担持するトナー像を加熱溶融する加熱手段40と、その加熱手段で加熱溶融したトナー像を記録媒体Pに圧接して転写定着する加圧手段42とが順に備えられている。そのような画像形成装置において、加熱手段40が、画像形成手段100の上方で、像担持体35に接触または近接して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリまたはそれらの複合機など、電子写真プロセスを用いて、用紙、OHPフィルム等の記録媒体にトナー像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真式画像形成装置の定着装置にあっては、感光体表面にトナー像を形成し、このトナー像を記録媒体上に転写した後、定着装置にてトナー像を記録媒体に定着させる方式のものが一般的に使用されている。また、近年、感光体上のトナー像を中間転写ベルト上に一次転写した後、記録媒体上に二次転写し、その二次転写後のトナー像を加熱して記録媒体上に転写定着する方式のものも実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている画像形成装置では、図8に示すように、表面にトナー像が現像された感光体1を備え、駆動ローラを兼用した転写ローラ2により感光体1上に現像された各色トナー像が順次中間転写ベルト3上に転写される。中間転写ベルト3は、転写ローラ2、ベルトテンションローラを兼ねる従動ローラ4、およびサーマルヒータ5との間に巻きかけられており、サーマルヒータ5の対向位置には中間転写ベルト3を介して加圧ローラ6が離接可能に配置されている。
【0004】
加圧ローラ6は、中間転写ベルト3上に各色トナー像が転写されている間は中間転写ベルト3から離れており、中間転写ベルト3上へのトナー像の転写工程が完了した後、中間転写ベルト3に圧接するようになっている。そして、サーマルヒータ5と加圧ローラ6の圧接部(定着ニップ部)に記録紙7を搬送し、サーマルヒータ5の熱と加圧ローラ6による圧力とにより、多色トナー像が記録紙7上に転写定着される。
【0005】
しかしながら、このような構成の画像形成装置において、十分な定着強度を得ようとした場合、トナーと記録紙7の界面温度を十分上昇させる必要がある。特にカラー画像のように多色トナーにより多層に形成されたトナー像の場合、トナーと記録紙界面まで十分熱を伝達させるために定着ニップ部で長い加熱時間が必要となり、定着速度の高速化には限界がある。
【0006】
また、カラー画像のように層厚の異なるトナー像が混在した多層のトナー像の定着強度を満足させるように加熱した場合、単層のトナーからなる画像部分が加熱過多となり、いわゆる高温オフセットが発生する。逆に、定着条件を単層のトナー画像に合わせた場合には、多層のトナーからなる画像部分が熱不足となり、定着不良となる。さらに、トナーの定着性能はサーマルヒータ5の温度だけでなく加圧ローラ6の温度にも依存するため、ウォームアップ直後や連続通紙時等使用条件が変わると定着性能がばらつきやすい。また、記録紙7の種類(普通紙、封筒、はがき、OHP、ラベル紙等)や厚さ(坪量)によっても定着性能がばらついてしまう。
【0007】
上記のような問題に対して、特許文献2に開示されている画像形成装置によれば、図9に示すように、画像形成手段としての4組の可視像形成ユニット10A、10B、10C、10Dおよび転写定着ユニット11を備え、転写定着ユニット11は、像担持ベルトとしての中間転写ベルト12、加熱手段としての加熱ローラ13、定着ローラ14、加圧ローラ15、テンションローラ16、クリーニングローラ17を備えている。
【0008】
中間転写ベルト12は、加熱ローラ13とテンションローラ16間に張り渡され、この中間転写ベルト12の回転方向における加熱ローラ13の下流側には、一対のローラとしての定着ローラ14と加圧ローラ15が中間転写ベルト12を挟んで対向して圧接されている。さらに、中間転写ベルト12の回転方向における定着ローラ14と加圧ローラ15との配設位置の下流側には、クリーニングローラ17がテンションローラ16に対して中間転写ベルト12を挟んで対向配置されている。クリーニングローラ17は、テンションローラ16に対して所定の圧力で押圧されている。
【0009】
【特許文献1】特開平8−44220号公報
【特許文献2】特許第3539538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のような構成によれば、加熱ローラ13に中間転写ベルト12を巻き付けてトナー像を加熱する部分の長さを長く確保でき、トナー像の層厚に関係なく均一に短時間でトナー像を溶融することができるという利点がある。しかしながら、熱源を有する加熱ローラ13によりトナーを溶融する方式であるため、熱容量の大きな金属製のローラを加熱するために余分な熱量が必要であり、そのためにウォームアップに要する時間が長くなり、また加熱手段によって消費される必要電力が増大するという問題があった。
【0011】
そこで、この発明の第1の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、少なくとも像担持体と画像形成手段と加熱手段と加圧手段とを備えた画像形成装置にあって、より高速なプロセス線速に対応できるとともに、高速なウォームアップを実現でき、しかも消費電力を少なく保ちながら、加熱手段から発生した熱が画像形成手段に伝播しにくく、画像形成手段でトナーが溶融して固着するといった不具合が発生することを防止することにある。
【0012】
この発明の第2の目的は、加熱手段の熱を効果的に利用しながら、トナーの定着性を向上させることにある。
【0013】
この発明の第3の目的は、像担持体に残存する熱が画像形成手段に伝播されにくくし、画像形成手段の感光体の感光特性に影響を与える不具合の発生を防止することにある。
【0014】
この発明の第4の目的は、付着したオフセットトナーや紙粉などを除去できるようにして、ノイズの少ない高画質な定着画像を得ることにある。
【0015】
この発明の第5の目的は、加熱手段からの熱が画像形成手段に伝播されにくくし、画像形成手段の感光体の感光特性に与える影響を軽減することにある。
【0016】
この発明の第6の目的は、トナー像を形成した像担持体をより効果的に加熱して、ウォームアップに要する時間をさらに短縮することにある。
【0017】
この発明の第7の目的は、トナー像を転写定着する前の記録媒体に所定の熱量を与えて、加熱手段の上方への発熱を効果的に利用しながら、トナーの定着性を向上させることにある。
【0018】
この発明の第8の目的は、画像形成装置全体としての高さを低くし、装置の小型化の実現を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このため、請求項1に記載の発明は、上述した第1の目的を達成すべく、
エンドレスベルト状の中間転写ベルト等の像担持体が走行可能に支持されて、その像担持体の走行方向に沿って、
前記像担持体が担持するトナー像を形成する画像形成手段と、前記像担持体が担持するトナー像を加熱溶融する加熱手段と、その加熱手段で加熱溶融したトナー像を記録媒体に圧接して転写定着する加圧手段とが順に備えられている複写機、プリンタ、ファクシミリまたはそれらの複合機などの画像形成装置において、
前記加熱手段が、前記画像形成手段の上方で、前記像担持体に接触または近接して配置されていることを特徴とする。
【0020】
請求項2に記載の発明は、上述した第2の目的を達成すべく、請求項1に記載の画像形成装置において、前記加熱手段の上方に、記録媒体を順次前記加圧手段位置に向けて供給する記録媒体供給部が設置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明は、上述した第3の目的を達成すべく、請求項1または2に記載の画像形成装置において、前記像担持体を冷却するヒートシンク等の冷却手段が、前記像担持体の走行方向に沿って、前記加圧手段位置の下流側であって、前記画像形成手段位置の上流側に設置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明は、上述した第4の目的を達成すべく、請求項1ないし3のいずれか1に記載の画像形成装置において、転写定着後の前記像担持体上の残存トナーを除去するクリーニングローラ等の清掃手段が、前記像担持体の走行方向に沿って、前記加圧手段位置の下流側であって、前記画像形成手段位置の上流側に設置されていることを特徴とする。
【0023】
請求項5に記載の発明は、上述した第5の目的を達成すべく、請求項1ないし4のいずれか1に記載の画像形成装置において、前記加熱手段と前記画像形成手段との間に、ポリスチレンフォーム等の断熱手段が設置されていることを特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の発明は、上述した第6の目的を達成すべく、請求項1ないし5のいずれか1に記載の定着装置において、前記像担持体を挟んで、前記像担持体の作像面側に前記加熱手段が配置され、反対の被作像面側に別の加熱手段が配置されていることを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載の発明は、上述した第7の目的を達成すべく、請求項1ないし6のいずれか1に記載の画像形成装置において、記録媒体を順次前記加圧手段位置に向けて供給する記録媒体供給部と、前記加熱手段との間に、伝熱手段が設置されていることを特徴とする。
【0026】
請求項8に記載の発明は、上述した第8の目的を達成すべく、請求項1ないし7のいずれか1に記載の画像形成装置において、前記画像形成装置本体の上部に、記録媒体を順次前記加圧手段位置に向けて供給する記録媒体供給部が設置され、その記録媒体供給部上に重ねて、転写定着後の記録媒体を排出する記録媒体排紙部が設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、エンドレスベルト状の像担持体が走行可能に支持されており、その像担持体の走行方向に沿って、像担持体が担持するトナー像を形成する画像形成手段と、像担持体が担持するトナー像を加熱溶融する加熱手段と、その加熱手段で加熱溶融したトナー像を記録媒体に圧接して転写定着する加圧手段とが順に備えられているので、従来のようなトナーの加熱溶融と記録媒体への定着を同時に行う構成の画像形成装置に比べ、より高速のプロセス線速に対応できる。また、熱容量の小さな像担持体上でトナーを加熱する方式としたことにより、従来のような定着ローラの内部に加熱手段を内包した構成の画像形成装置と比較して、高速なウォームアップを実現でき、消費電力を少なくすることができる。
【0028】
さらに、この請求項1に記載の発明によれば、独立に設けた加熱手段が、画像形成手段の上方で、像担持体に接触または近接して配置されているので、加熱手段から発生した熱が画像形成手段に伝播しにくく、画像形成手段でトナーが溶融して固着するといった不具合が発生することを防止することができる。
【0029】
請求項2に記載の発明によれば、加熱手段の上方に、記録媒体を順次加圧手段位置に向けて供給する記録媒体供給部が設置されているので、トナー像を転写定着する前の記録媒体に所定の熱量を与えておくことが可能であり、加熱手段の上方への発熱を効果的に利用しながら、トナーの定着性を向上させることができる。また、記録媒体供給部の最下層に位置する記録媒体から順次搬送することによって、印刷前の記録媒体の含水分量を安定に低下させることが可能であり、定着時の高温による記録媒体中の水分蒸発がもたらす結露現象や、記録媒体搬送時の搬送力偏差によって記録媒体に生ずるしわなどの、印刷品質の不良の発生を防止することができる。
【0030】
請求項3に記載の発明によれば、像担持体を冷却する冷却手段が、像担持体の走行方向に沿って、加圧手段位置の下流側であって、画像形成手段位置の上流側に設置されているので、記録媒体に転写定着されたトナー像の表面が、像担持体の表面にならって平滑化され、高光沢の定着画像を得ることができる。また、像担持体は、画像形成手段位置に戻るまでに十分冷却されるため、加熱手段によって熱せられて像担持体に残存する熱が画像形成手段に伝播されにくくし、画像形成手段の感光体の感光特性に影響を与える不具合の発生を防止することができる。
【0031】
請求項4に記載の発明によれば、転写定着後の像担持体上の残存トナーを除去する清掃手段が、像担持体の走行方向に沿って、加圧手段位置の下流側であって、画像形成手段位置の上流側に設置されているので、記録媒体のジャム等により未定着のトナーが像担持体表面にオフセットした場合でも、付着したオフセットトナーや紙粉などを清掃することが可能となり、ノイズの少ない高画質な定着画像を得ることができる。
【0032】
請求項5に記載の発明によれば、加熱手段と画像形成手段との間に、断熱手段が設置されているので、断熱手段で遮って加熱手段からの熱が画像形成手段に伝播されにくくし、画像形成手段の感光体の感光特性に与える影響を軽減することができる。
【0033】
請求項6に記載の発明によれば、像担持体を挟んで、像担持体の作像面側に加熱手段が配置され、反対の被作像面側に別の加熱手段が配置されているので、トナー像を形成した像担持体をより効果的に加熱して、ウォームアップに要する時間をさらに短縮することができる。
【0034】
請求項7に記載の発明によれば、記録媒体を順次加圧手段位置に向けて供給する記録媒体供給部と、加熱手段との間に、伝熱手段が設置されているので、トナー像を転写定着する前の記録媒体に所定の熱量を与えておくことが可能であり、加熱手段の上方への発熱を効果的に利用しながら、トナーの定着性を向上させることができる。また、このとき記録媒体供給部の最下層に位置する記録媒体から順次搬送すると、印刷前の記録媒体の含水分量を安定に低下させることが可能であり、定着時の高温による記録媒体中の水分蒸発がもたらす結露現象や、記録媒体搬送時の搬送力偏差によって記録媒体に発生するしわといった、印刷品質の不良を防止することができる。
【0035】
請求項8に記載の発明によれば、画像形成装置本体の上部に、記録媒体を順次加圧手段位置に向けて供給する記録媒体供給部が設置され、その記録媒体供給部上に、転写定着後の記録媒体を排出する記録媒体排紙部が設置されているので、一連の印刷プロセスによって記録媒体供給部の記録媒体が減った分だけ記録媒体排出部には印刷物が排出されるため、全体としての記録媒体の高さは常に一定であり、供給部と排出部に記録媒体を積載するトレイをそれぞれ独立に配置する従来技術と比較して、画像形性装置全体としての高さを低くし、装置の小型化を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1には、この発明に係る電子写真方式の複写機やプリンタなどの画像形成装置の全体概念構成を示す。本例に係る画像形成装置は、画像形成装置本体600に、画像を形成する画像形成手段100、転写定着手段200、記録媒体を画像形成手段100に供給する記録媒体供給部300、画像形成手段100を通過した後の記録媒体をスタックする記録媒体排出部400、書き込みユニット500などを設けて構成されている。
【0037】
画像形成手段100には、ブラックB、シアンC、マゼンタM、イエロYの4つの作像ステーションが設けられている。各作像ステーションは、異なる色のトナーを収納するだけでそれぞれ同一の構成を有している。すなわち、ブラックBの作像ステーションで説明すると、この例ではドラム状の感光体30が備えられ、その感光体30まわりに、帯電装置31、現像装置32、クリーニング装置33などが配置されている。
【0038】
そして、感光体30の図中時計まわりの回転とともに、帯電装置31によって表面を所定の電位に帯電させる。その後、書き込みユニット500から、図示しない読み取り装置にて読み取った画像情報に応じて光変調したレーザ光Lが照射され、帯電させた感光体30の表面をこのレーザ光Lで露光することによって感光体30の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置32位置を通るときトナーが付着されてトナー像として顕像化され、転写定着手段200における転写装置34により、像担持体としてのエンドレスベルト状の中間転写ベルト35上に転写される。トナー像転写後の感光体30の表面は、クリーニング装置33によってトナーを除去することにより清掃される。
【0039】
転写定着手段200の中間転写ベルト35は、定着ローラ36と、テンションローラ37、38、39に張架されており、図示しない駆動モータによって図中の矢印方向に走行可能に支持されるようになっており、各色の可視像を表面に順次重ねて転写することで、その上にフルカラー画像が形成されて担持される。
【0040】
像担持体である中間転写ベルト35の走行方向に沿って、上述した画像形成手段100とともに、板状の加熱手段40と、加圧手段42とが備えられている。板状の加熱手段40は、画像形成手段100の上方で、中間転写ベルト35外面の作像面に対向して近接して設けられている。そして、形成されたフルカラー画像は、中間転写ベルト35の駆動にともなって加熱手段40で加熱されて溶融され、さらに中間転写ベルト35を挟んで定着ローラ36に対向配置された加圧ローラ41から受ける圧力の作用によって、記録媒体供給部300から供給される記録媒体Pの表面にトナー像が圧接されて転写定着される。定着ローラ36と加圧ローラ41の一対のローラからなる加圧手段42を通った記録媒体Pは、排出ローラ対43によって搬送され、矢印Aで示すように記録媒体排出部400へと排出されて、そこにスタックされる。
【0041】
中間転写ベルト35は、金属ニッケル製の無端状ベルト基材の外周面に離型層としてシリコーンゴムを被覆した構成である。なお、中間転写ベルト35の構成は、これに限定されるものではなく、例えばポリイミド製ベルト基材に離型層としてシリコーンゴム層を被覆した構成のものなども使用可能である。また、中間転写ベルト35には、図示しない温度センサが配設されており、中間転写ベルト35の表面温度を検知し、加熱手段40への通電のON−OFFを制御することで、中間転写ベルト35の表面温度を所定の温度に維持するようになっている。
【0042】
加熱手段40としては、中間転写ベルト35の駆動方向における長さが220mmのアルミニウム板の裏に、シリコンラバーヒータをつけたものを用い、中間転写ベルト35表面との間隔を5mmに保って配置されている。加熱温度は、直下の中間転写ベルト35の表面がガラス転位温度以上、(この例では170℃)となるように設定、制御されている。加熱手段40としては、この他に、ハロゲンランプやセラミックヒータなども用いることもできる。
【0043】
また、例えばこの例において、中間転写ベルト35の外周面側に配置している加熱手段40を、中間転写ベルト35の内周面側の被作像面に高摺動性の部材とともに接触させて配置することも可能である。このように配置することで、加熱手段40のトナーへの伝熱効率が向上するが、経時における中間転写ベルト35の磨耗などの不具合が起こり得るため、加熱手段40の形状や配置については、トナーのガラス転位温度や記録媒体のプロセス線速、中間転写ベルトの熱取得度や耐磨耗性といった材料特性に応じて決定し、必要熱量を過不足なく供給できる位置、長さに設定されることが望ましい。
【0044】
定着ローラ36は、中間転写ベルト35の内周面側に配設されており、アルミニウム製芯金上にシリコーンゴムからなる耐熱弾性層が設けられた構成となっている。また、加圧ローラ41は、アルミニウム製芯金表面にフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)からなる離型層が設けられた構成となっている。なお、定着ローラ36、加圧ローラ41の芯金材料としては、アルミニウムに限定されるものではなく、例えば炭素鋼など高剛性の材料を適宜使用することができる。さらに、テンションローラ37、38、39は、アルミニウム製芯金上にシリコーンゴムからなる被覆層が設けられた構成であり、中間転写ベルト35がたるまないように所定の張力が付与されている。
【0045】
そして、定着ローラ36と加圧ローラ41からなる一対のローラによって構成された加圧手段42は、加圧ローラ41を付勢するための図示しない加圧装置により所定の加圧力(この例では180N)で押圧され、定着ニップ部Nを形成している。このようにして、加熱手段40による加熱部Hと、定着ニップ部Nとが独立となるような構成とすることで、加熱部Hの幅(加熱幅)WHが、定着ニップ部Nの幅(定着ニップ幅)WNよりも長くなるように設定することが可能となる。
【0046】
この結果、従来のようなトナーの加熱溶融と記録媒体Pへの定着を同時に行う構成の画像形成装置に比べ、より高速のプロセス線速に対応できる。また、熱容量の小さな中間転写ベルト35上でトナーを加熱する方式としたことにより、従来のような定着ローラの内部に加熱手段を内包した構成の画像形成装置と比較して、瞬間的なウォームアップを実現している。さらには、独立に設けた加熱手段40を画像形成手段100よりも上方に配置したことにより、加熱手段40から発生した熱は、上方に向かい、画像形成手段100には伝播しにくく、画像形成手段100でトナーが溶融して固着するといった不具合が発生することを防止することが可能となる。
【0047】
ところで、図示するように、加熱手段40の上方には、記録媒体Pを順次加圧手段42位置に向けて供給する記録媒体供給部300が設置されている。よって、トナー像を転写定着する前の記録媒体Pに所定の熱量を与えておくことが可能であり、加熱手段40の上方への発熱を効果的に利用しながら、トナーの定着性を向上させることができる。また、記録媒体供給部300の最下層に位置する記録媒体Pから順次搬送することによって、印刷前の記録媒体Pの含水分量を安定に低下させることが可能であり、定着時の高温による記録媒体P中の水分蒸発がもたらす結露現象や、記録媒体Pの搬送時の搬送力偏差によって記録媒体Pに生ずるしわといった、印刷品質の不良の発生を防止することができる。
【0048】
図2には、この発明に係る画像形成装置の他例を示す。この図2に示す例においては、図1の対応部分に使用した符号をそのまま使用し、詳しい説明を省略する。
この例では、中間転写ベルト35の走行方向に沿って、加圧手段42位置の下流側であって、画像形成手段100位置の上流側に、中間転写ベルト35を冷却する冷却手段としてヒートシンク45が設置されている。ヒートシンク45の材料は、銅やアルミニウム等の金属が望ましいが、それに限らず熱伝導率の高い材料を選定することが可能である。また、ヒートシンク45は、空気流の中に位置しており、その空気流によって空冷される。空気流は、図示しない送風器によって作られる。
【0049】
トナーは、ヒートシンク45により軟化点以下に冷却されることで凝集固化し、記録媒体Pとの間に強い接着力が生じる。そのため、曲率半径の小さな支持ロール37が配置された位置において、記録媒体Pがそれ自体の剛性によって中間転写ベルト35からトナーとともに分離され、カラー画像が形成される。記録媒体Pに転写定着されたトナー像の表面は、中間転写ベルト35の表面にならい平滑化されるため、高光沢の定着画像が得られる。また、中間転写ベルト35は、画像形成手段100位置に戻るまでに十分冷却されるため、感光体30の感光特性に影響を与える不具合が発生しにくい。
【0050】
なお、冷却手段としてはヒートシンク45以外にも、冷却ファンを設置し、冷却ファンの付近に外気を取り入れるためのダクトを配設して、中間転写ベルト35を直接空冷する方式や、ラジエータを配設して中間転写ベルト35を水冷する方式など、設置スペースや、冷却効率などを考慮して適宜選定することができる。
【0051】
図3には、この発明に係る画像形成装置のさらに他例を示す。この図3に示す例においても、図1の対応部分に使用した符号をそのまま使用し、詳しい説明を省略する。
この例では、中間転写ベルト35の走行方向に沿って、加圧手段42位置の下流側であって、さらに図2に示す冷却手段としてのヒートシンク45の下流側であり、画像形成手段100位置の上流側に、図1に示すテンションローラ38に代えて、中間転写ベルト35の残存トナーを除去する清掃手段としてのクリーニングローラ46が設置されている。
【0052】
このクリーニングローラ46により、記録媒体Pのジャム等により未定着のトナーが中間転写ベルト35表面にオフセットした場合でも、付着したオフセットトナーや紙粉などを除去して清掃することが可能となり、ノイズの少ない高画質な定着画像を得ることができる。クリーニングローラ46は、アルミニウム製芯金上にフェルト材を螺旋状に巻き付けた構成である。芯金材料としては、アルミニウムに限定されるものではなく、例えば炭素鋼など高剛性の材料を適宜使用することができる。
【0053】
図4には、この発明に係る画像形成装置のまたさらに他例を示す。この図4に示す例においても、図1の対応部分に使用した符号をそのまま使用し、詳しい説明を省略する。
この例では、加熱手段40と画像形成手段100との間に、エンドレスベルト状の中間転写ベルト35内に位置して、断熱手段としての板状ポリスチレンフォーム47が設置されている。よって、加熱手段40からの熱が画像形成手段100に伝播されにくく、画像形成手段100の感光体30の感光特性に与える影響を軽減することができる。
【0054】
なお、断熱手段としては、板状ポリスチレンフォームに限定されるものではなく、熱伝導性の低い素材を適宜使用することができる。
【0055】
図5には、この発明に係る画像形成装置のまたさらに他例を示す。この図5に示す例においても、図1の対応部分に使用した符号をそのまま使用し、詳しい説明を省略する。
この例では、中間転写ベルト35を挟んで、中間転写ベルト35外面の作像面側に加熱手段40が配置され、反対の中間転写ベルト35内面の被作像面側に第二の加熱手段48が配置されるようにする。第二の加熱手段48としては、例えば、アルミニウム板の裏にシリコンラバーヒータをつけたものを使用する。これにより、トナー像を形成した中間転写ベルト35をより効果的に加熱することができるため、ウォームアップに要する時間をさらに短縮することができる。
【0056】
加熱手段40と同様、中間転写ベルト35上に配設した図示しない温度センサによって中間転写ベルト35の表面温度を検知し、表面温度を所定の温度に維持する構成としている。この例においては、第二の加熱手段48にアルミニウム板の裏に、シリコンラバーヒータをつけたものを用いているが、この他に、ハロゲンランプやセラミックヒータなどの発熱体を用いることも可能であり、トナーのガラス転位温度や記録媒体Pのプロセス線速、中間転写ベルト35の熱取得度や、加熱手段40の発熱量等に応じて、定着必要熱量を過不足なく供給できる構成に設定することが望ましい。
【0057】
図6には、この発明に係る画像形成装置のまたさらに他例を示す。この図6に示す例においても、図1の対応部分に使用した符号をそのまま使用し、詳しい説明を省略する。
この例では、記録媒体Pを順次加圧手段42位置に向けて供給する記録媒体供給部300と、加熱手段40との間に、伝熱手段50が設置されている。伝熱手段50としては、例えば銅板表面に植毛されたシールを貼付けたものを使用する。
【0058】
これにより、トナー像を転写定着する前の記録媒体Pに所定の熱量を与えておくことが可能であり、加熱手段40の上方への発熱を効果的に利用しながら、トナーの定着性を向上させることができる。また、このとき記録媒体供給部300の最下層で伝熱部材50に接触する記録媒体Pから順次搬送すると、ほぼ一定温度に調温された記録媒体Pを画像形成装置本体600の内部に供給することができる。このため、記録媒体を加熱しないで供給する従来の構成と比較して、印刷前の記録媒体Pの含水分量を安定に低下させることが可能であり、定着時の高温による記録媒体P中の水分蒸発がもたらす結露現象や、記録媒体Pの搬送時の搬送力偏差によって記録媒体Pに生ずるしわといった、印刷品質の不良の発生を防止する効果がある。
【0059】
図7には、この発明に係る画像形成装置のまたさらに他例を示す。この図7に示す例においても、図1の対応部分に使用した符号をそのまま使用し、詳しい説明を省略する。
この例では、画像形成装置本体600の上部に、記録媒体Pを順次加圧手段42位置に向けて供給する記録媒体供給部300が設置され、その記録媒体供給部300上に重ねて、転写定着後の記録媒体Pを排出する記録媒体排紙部400が設置されている。
【0060】
これにより、印字後の画像面を下向きに排出させる構成が実現される。複数枚に渡るデータを記録媒体Pに印字する場合、作像面が上向きに排出されるような構成では、印字後の印刷物が最終ページから順に並んでしまうため、それを防止するため、複数枚のプリントデータをすべて読み込んだ後にソフト的にデータをソートして排出する方式が考えられるが、最終ページまでデータを読み込むための待ち時間が発生することになる。したがって、この例のように、印字後の作像面を下向きに排出させる構成とすることで、印刷が終了するまでにかかる待ち時間を短縮することが可能となる。
【0061】
また、一連の印刷プロセスによって記録媒体供給部300の記録媒体Pが減った分だけ記録媒体排出部400には印刷物が排出されるため、全体としての記録媒体Pの高さは常に一定であり、供給部と排出部に記録媒体を積載するトレイをそれぞれ独立に配置する従来技術と比較して、画像形成装置全体としての高さを低くし、装置の小型化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明に係る電子写真方式の画像形成装置の全体概念構成図である。
【図2】この発明に係る画像形成装置の他例の全体概念構成図である。
【図3】この発明に係る画像形成装置のさらに他例の全体概念構成図である。
【図4】この発明に係る画像形成装置のまたさらに他例の全体概念構成図である。
【図5】この発明に係る画像形成装置のまたさらに他例の全体概念構成図である。
【図6】この発明に係る画像形成装置のまたさらに他例の全体概念構成図である。
【図7】この発明に係る画像形成装置のまたさらに他例の全体概念構成図である。
【図8】従来の画像形成装置の全体概念構成図である。
【図9】従来の別の画像形成装置の全体概念構成図である。
【符号の説明】
【0063】
35 中間転写ベルト(像担持体)
40 加熱手段
42 加圧手段
45 ヒートシンク(冷却手段)
46 クリーニングローラ(清掃手段)
47 ポリスチレンフォーム(断熱手段)
48 第2の加熱手段(別の加熱手段)
50 伝熱手段
100 画像形成手段
300 記録媒体供給部
400 記録媒体排出部
600 画像形成装置本体
P 記録媒体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスベルト状の像担持体が走行可能に支持されて、その像担持体の走行方向に沿って、
前記像担持体が担持するトナー像を形成する画像形成手段と、前記像担持体が担持するトナー像を加熱溶融する加熱手段と、その加熱手段で加熱溶融したトナー像を記録媒体に圧接して転写定着する加圧手段とが順に備えられている画像形成装置において、
前記加熱手段が、前記画像形成手段の上方で、前記像担持体に接触または近接して配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記加熱手段の上方に、記録媒体を順次前記加圧手段位置に向けて供給する記録媒体供給部が設置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記像担持体を冷却する冷却手段が、前記像担持体の走行方向に沿って、前記加圧手段位置の下流側であって、前記画像形成手段位置の上流側に設置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載の画像形成装置において、
転写定着後の前記像担持体上の残存トナーを除去する清掃手段が、前記像担持体の走行方向に沿って、前記加圧手段位置の下流側であって、前記画像形成手段位置の上流側に設置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載の画像形成装置において、
前記加熱手段と前記画像形成手段との間に、断熱手段が設置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1に記載の定着装置において、
前記像担持体を挟んで、前記像担持体の作像面側に前記加熱手段が配置され、被作像面側に別の加熱手段が配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1に記載の画像形成装置において、
記録媒体を順次前記加圧手段位置に向けて供給する記録媒体供給部と、前記加熱手段との間に、伝熱手段が設置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1に記載の画像形成装置において、
前記画像形成装置本体の上部に、記録媒体を順次前記加圧手段位置に向けて供給する記録媒体供給部が設置され、その記録媒体供給部上に、転写定着後の記録媒体を排出する記録媒体排紙部が設置されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−145737(P2009−145737A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324610(P2007−324610)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】