説明

画像形成装置

【課題】 レジストローラとクリーニングローラとを共通のモータで駆動する画像形成装置において、両ローラを同時に駆動する動作と、クリーニングローラのみを駆動する動作とを、クラッチやソレノイドを用いなくても適宜実行可能とすること。
【解決手段】 モータ84の正転時には、減速ギヤ86,87,88を介して振り子ギヤ89に反時計方向の駆動力が伝達される。振り子ギヤ89は右方向に揺動してリングギヤ81aと噛み合い、レジストローラと一体のレジストローラギヤ16a,17aを回転させる。モータ84の逆転時には振り子ギヤ89がリングギヤ81aから離れ、レジストローラは回転しない。また、クリーニングローラを回転させるクリーナ駆動ギヤ94には、上記正転時には振り子ギヤ92を含む減速ギヤ86〜アイドルギヤ93を介して、上記逆転時には減速ギヤ86〜アイドルギヤ96を介して、それぞれ駆動力が伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動される無端ベルトを用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関し、詳しくは、上記無端ベルトを清掃するクリーニングローラと、使用者によって被記録媒体が挿入されたときにその被記録媒体を画像形成手段に向けて送り出すレジストローラと、を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転駆動される無端ベルトを用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置が種々提案されている。また、この種の画像形成装置では、一定方向に回転駆動されることによって上記無端ベルトを清掃するクリーニングローラを設けることや、使用者によって被記録媒体が挿入されたとき媒体搬送方向に回転駆動され、その被記録媒体を上記画像形成手段に向けて送り出すレジストローラを設けることも提案されている。上記クリーニングローラを設けた場合、画像形成により汚損が生じた上記無端ベルトを清掃することができる。また、上記レジストローラを設けた場合、使用者がいわゆる手差しで被記録媒体を装置に挿入して画像を形成することができる。
【0003】
また、このようにレジストローラとクリーニングローラとを備えた画像形成装置では、レジストローラとクリーニングローラとを同一のモータで駆動し、レジストローラ側の駆動力伝達経路には駆動力の伝達/非伝達が切り換え可能なクラッチを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−10838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、レジストローラへの駆動力の伝達/非伝達をソレノイドを用いた一般的なクラッチによって切り換える場合、次のような課題が生じる。すなわち、この場合、例えばパッチパターンを形成して色合せを行ういわゆるオートレジ動作時などに、レジストローラを停止したままクリーニングローラを駆動するためには、クラッチのソレノイドに長時間通電し続ける必要がある。このため、上記クラッチには長時間の通電に耐え得る大きなソレノイドを使う必要が生じ、画像形成装置の製造コストが上昇してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、レジストローラとクリーニングローラとを共通のモータで駆動する画像形成装置において、そのレジストローラとクリーニングローラとを同時に駆動する動作と、クリーニングローラのみを駆動する動作とを、クラッチやソレノイドを用いなくても適宜実行可能とすることを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達するためになされた本発明の画像形成装置は、回転駆動される無端ベルトを用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、一定方向に回転駆動されることによって上記無端ベルトを清掃するクリーニングローラと、使用者によって被記録媒体が挿入されたとき媒体搬送方向に回転駆動され、その被記録媒体を上記画像形成手段に向けて送り出すレジストローラと、モータが第1の方向に回転したときにその駆動力を上記クリーニングローラに伝達して上記クリーニングローラを上記一定方向に回転駆動し、上記モータが上記第1の方向とは逆の第2の方向に回転したときにはその駆動力を上記クリーニングローラまで伝達しない第1の歯車機構と、上記モータが上記第2の方向に回転したときにその駆動力を上記クリーニングローラに伝達して上記クリーニングローラを上記一定方向に回転駆動し、上記モータが上記第1の方向に回転したときにはその駆動力を上記クリーニングローラまで伝達しない第2の歯車機構と、上記モータが上記第1の方向に回転したときにその駆動力を伝達して上記レジストローラを上記媒体搬送方向に回転駆動し、上記モータが上記第2の方向に回転したときにはその駆動力を上記レジストローラまで伝達しない第3の歯車機構と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明では、モータが第1の方向に回転したとき、第1の歯車機構はそのモータの駆動力を上記クリーニングローラに伝達して上記クリーニングローラを上記一定方向に回転駆動する。また、このとき、第2の歯車機構は上記駆動力を上記クリーニングローラまで伝達せず、第3の歯車機構は上記駆動力を伝達して上記レジストローラを上記媒体搬送方向に回転駆動する。このため、モータを第1の方向に回転させれば、レジストローラとクリーニングローラとを同時に駆動することができる。
【0008】
一方、上記モータが上記第1の方向とは逆の第2の方向に回転したとき、上記第1の歯車機構はその駆動力を上記クリーニングローラまで伝達せず、第2の歯車機構は上記駆動力を上記クリーニングローラに伝達してそのクリーニングローラを上記一定方向に回転駆動する。また、このとき、第3の歯車機構はその駆動力を上記レジストローラまで伝達しない。このため、モータを第2の方向に回転させれば、レジストローラを駆動することなくクリーニングローラのみを駆動することができる。
【0009】
このように、本発明では、モータを第1の方向に回転させればレジストローラとクリーニングローラとを同時に駆動でき、モータを第2の方向に回転させればクリーニングローラのみを駆動できる。従って、クラッチ機構やソレノイドを用いなくても、オートレジ動作時などにクリーニングモータを上記一定方向に駆動しながらレジストローラを停止状態に保持することができる。従って、長時間の通電に耐え得る大きなソレノイドを使う必要性が低下し、画像形成装置自体の製造コストを良好に低減することができる。
【0010】
なお、本発明は以下の構成になんら限定されるものではないが、上記第3の歯車機構は、ソレノイドのON/OFFに応じて駆動力の非伝達/伝達を切り換えるクラッチ機構を介して上記駆動力を上記レジストローラに伝達してもよい。この場合、モータが第1の方向に回転しているときにも上記ソレノイド及び上記クラッチ機構によりレジストローラの駆動を適宜停止させることができるので、レジストローラの一層細かい制御が可能となる。また、そのような制御を行う場合も、前述のようにモータが第2の方向に回転しているときは上記ソレノイド及び上記クラッチ機構を用いることなくレジストローラを停止状態に保持できるので、ソレノイドは小さくてもよい。
【0011】
また、上記第1〜第3の歯車機構のいずれかにおける上記駆動力の伝達/非伝達が、上記モータの回転方向に応じて揺動する振り子歯車によって切り換えられてもよい。振り子歯車では、モータの回転方向によって揺動位置が変化し、これによって上記駆動力の伝達/非伝達を切り換えることができる。従って、このような振り子歯車を利用した場合、装置の構成を一層簡略化することができる。
【0012】
そして、この場合、上記第1の歯車機構及び上記第2の歯車機構は、上記振り子歯車を含む共通の歯車列を有し、その振り子歯車は、上記モータが上記第1の方向に回転したときは上記第1の歯車機構に属しかつ上記第2の歯車機構に属しない歯車と噛み合い、上記モータが上記第2の方向に回転したときは上記第2の歯車機構に属しかつ上記第1の歯車機構に属しない歯車と噛み合ってもよい。この場合、振り子歯車は、モータが上記第1の方向に回転したときには上記第2の歯車機構に駆動力を伝達することなく上記第1の歯車機構に駆動力を伝達し、モータが上記第2の方向に回転したときには上記第1の歯車機構に駆動力を伝達することなく上記第2の歯車機構に駆動力を伝達する。従って、この場合、第1の歯車機構と第2の歯車機構とが共通の振り子歯車を利用するので、構成を一層簡略化することができる。
【0013】
また、被記録媒体を積載して支持する支持板と、該支持板に支持された被記録媒体を上記レジストローラに向けて送り出す供給ローラと、上記被記録媒体の減少に応じて上記支持板を上記供給ローラに向けて移動させる支持板移動手段と、上記クリーニングローラと連動して回転駆動され、上記支持板移動手段に駆動力を付与する移動手段駆動歯車と、を更に備えてもよい。
【0014】
この場合、支持板移動手段によって、被記録媒体の減少に応じて支持板を供給ローラに向けて移動させることができ、その支持板に支持された被記録媒体を供給ローラによってレジストローラに向けて円滑に送り出すことができる。また、この支持板移動手段には、上記クリーニングローラと連動して回転駆動される移動手段駆動歯車によって駆動力が付与される。このため、上記クリーニングローラの駆動中は支持板移動手段による支持板の移動が可能となる。従って、装置起動時のウオーミングアップ中などに上記モータの駆動力を利用して支持板を移動させることもできるので、簡単な構成により一層円滑に被記録媒体を送り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された画像形成装置1の概略構成を示す側断面図である。なお、以下の説明においては、図1における右側を前方とする。
【0016】
(画像形成装置の全体構成)
この画像形成装置1は、直接転写タンデム方式のカラープリンタであって、図1に示すように、略箱型の筐体2を備えている。筐体2の前面には、前面カバー3が設けられている。また、筐体2の上面には、画像形成後の被記録媒体としての用紙4が積載される排紙トレイ5Aが形成されている。更に、その排紙トレイ5Aが一体に設けられて画像形成装置1を上方から覆うトップカバー5は、画像形成装置1の後方上端を中心にして開閉可能に設けられている。このトップカバー5を開放することにより、後述のベルトユニット20を筐体2の内部から上方へ引き出すことが可能となる。
【0017】
筐体2の下部には、画像を形成するための用紙4が収容される給紙トレイ7が前方へ引き出し可能に装着されている。給紙トレイ7内には、用紙4を積載して支持し、その用紙4の前端側を持ち上げるように傾動可能な支持板の一例としての圧板9が設けられている。また、給紙トレイ7の前端上方位置には、用紙4を搬送する供給ローラの一例としての給紙ローラ11が設けられ、その給紙ローラ11による搬送方向下流側には、給紙ローラ11にて搬送される用紙4を1枚毎に分離する分離ローラ12と分離パッド13とが設けられている。
【0018】
給紙トレイ7の最上位の用紙4は、分離ローラ12によって1枚毎に分離された後、更に、紙粉取りローラ14と対向ローラ15とに挟まれて搬送され、一対のレジストローラ16,17の間へ送られる。レジストローラ16,17では、その用紙4を所定のタイミングで、後方のベルトユニット20上へ送り出す。また、前面カバー3の一部は手差しトレイ18として開放可能に構成されており、この手差しトレイ18を介してレジストローラ16,17の間へ用紙4を使用者が直接挿入することも可能である。このように手差しトレイ18を介して挿入された用紙4も同様にベルトユニット20上へ送り出される。
【0019】
ベルトユニット20は、筐体2に対して着脱可能とされており、前後に離間して配置されたベルト駆動ローラ21,テンションローラ22の間に水平に架設される無端ベルトの一例としての搬送ベルト23を備えている。搬送ベルト23は、ポリカーボネート等の樹脂材からなる無端状のベルトであり、後側のベルト駆動ローラ21が回転駆動されることにより図1の反時計方向に循環移動して、その上面に載せた用紙4を後方へ搬送する。
【0020】
(画像形成部の構成)
搬送ベルト23の内側には、後述する画像形成ユニット30が有する各感光体ドラム31と対向配置される4つの転写ローラ24が前後方向に一定間隔で並んで設けられ、各感光体ドラム31と対応する転写ローラ24との間に搬送ベルト23を挟んだ状態となっている。後述のトナー像の転写時には、この転写ローラ24と感光体ドラム31との間に転写バイアスが印加され、所定量の転写電流が通電される。また、ベルトユニット20の下側には、搬送ベルト23に付着したトナーや紙粉等をクリーニングローラ41を介して除去する周知のベルトクリーナ40が設けられている。なお、クリーニングローラ41は、接触する搬送ベルト23の移動方向に逆らった一定方向(図1における反時計方向)に、後述の機構によって回転駆動される。
【0021】
画像形成ユニット30は、LEDユニット50と対をなしてブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各色に対応して4機ずつ設けられていると共に、それら画像形成ユニット30,LEDユニット50は、用紙の搬送方向に沿って直列に設けられている。なお、各色に対応する画像形成ユニット30,LEDユニット50,並びにベルトユニット20が画像形成手段の一例に相当する。
【0022】
各画像形成ユニット30は、像担持体としての感光体ドラム31、スコロトロン型帯電器32、及び現像装置としての現像カートリッジ34等を備えて構成されている。感光体ドラム31は、接地された金属製のドラム本体を備え、その表層をポリカーボネートなどからなる正帯電性の感光層で被覆することにより構成されている。スコロトロン型帯電器32は、感光体ドラム31の後側斜め上方において、感光体ドラム31と接触しないように所定間隔を隔てて、感光体ドラム31と対向配置されている。このスコロトロン型帯電器32は、タングステン等の帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させることにより、感光体ドラム31の表面を一様に正極性に帯電させる。
【0023】
現像カートリッジ34は、略箱形をなし、その内部には、上部にトナー収容室35が設けられ、その下側に供給ローラ36、現像ローラ37、及び層厚規制ブレード38が設けられている。各現像カートリッジ34のトナー収容室35には、現像剤として、ブラック、シアン、マゼンタ、またはイエローの各色の正帯電性非磁性1成分トナーがそれぞれ収容されている。
【0024】
トナー収容室35から放出されたトナーは、供給ローラ36の回転により現像ローラ37に供給され、供給ローラ36と現像ローラ37との間で正に摩擦帯電される。更に、現像ローラ37上に供給されたトナーは、現像ローラ37の回転に伴って、層厚規制ブレード38と現像ローラ37との間に進入し、ここで更に十分に摩擦帯電されて、一定厚さの薄層として現像ローラ37上に担持される。
【0025】
感光体ドラム31の表面は、その回転時、先ずスコロトロン型帯電器32により一様に正帯電される。その後、LEDユニット50の下端に用紙幅方向(図1の表裏面方向)に一列に配設されたLED(図示省略)により露光されて、用紙4に形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。
【0026】
次いで、現像ローラ37の回転により、現像ローラ37上に担持され正帯電されているトナーが、感光体ドラム31に対向して接触するときに、感光体ドラム31の表面上に形成されている静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム31の静電潜像は、可視像化され、感光体ドラム31の表面には、露光部分にのみトナーが付着したトナー像が担持される。
【0027】
その後、各感光体ドラム31の表面上に担持されたトナー像は、搬送ベルト23によって搬送される用紙4が感光体ドラム31と転写ローラ24との間を通る際に、上記転写電流によって、用紙4に順次転写される。こうして各色のトナー像が重ねて転写された用紙4は、次いで定着器60に搬送される。
【0028】
定着器60は、筐体2内における搬送ベルト23の後方に配置されている。この定着器60は、ハロゲンランプ等の熱源を備えて回転駆動される加熱ローラ61と、加熱ローラ61の下方において、加熱ローラ61を押圧するように対向配置され従動回転される加圧ローラ62とを備えている。この定着器60では、各色のトナー像が転写された用紙4を、加熱ローラ61と加圧ローラ62とによって狭持搬送しながら加熱することにより、トナー像を用紙4に定着させる。そして、トナー像が定着された用紙4は、定着器60の斜め後上方に配置された搬送ローラ63により更に搬送され、筐体2の上部に設けられた排紙ローラ64により、前述の排紙トレイ5A上に排出される。
【0029】
(ローラ駆動系の構成)
次に、上記各種ローラの駆動系の構成について説明する。図2は、上記各種ローラの駆動系の構成を右後側から表す斜視図であり、図3,図4は、その駆動系の構成を表す左側面図である。
【0030】
図2に示すように給紙ローラ11と分離ローラ12とは、共にホルダ65によって回転可能に支持されている。また、このホルダ65内には、給紙ローラ11と一体に回転する給紙ローラギヤ,分離ローラ12と一体に回転する分離ローラギヤ,及び給紙ローラギヤと分離ローラギヤとを連結するアイドルギヤ(いずれも図示省略)が収納されている。このため、上記分離ローラギヤ,アイドルギヤ,給紙ローラギヤが順次噛み合うことにより、給紙ローラ11と分離ローラ12とが同一方向に連動して回転する。なお、このように給紙ローラ11及び分離ローラ12を回転させる駆動力は、分離ローラ12及び上記分離ローラギヤと一体に回転する分離ローラシャフト12bを介して伝達される。
【0031】
また、ホルダ65は、次に説明するリフトアーム71の揺動に応じて、分離ローラシャフト12bを中心に揺動可能に設けられている。リフトアーム71は、その略中央の支点71aにて揺動可能に支持されている。リフトアーム71の右端には、係合孔71bが形成され、ホルダ65の給紙ローラ11側端部に設けられた突部65aと係合している。また、リフトアーム71の左端71c近傍は、引張コイルバネ72によって上方に付勢されており、この付勢力と給紙ローラ11の自重とによって、リフトアーム71は支点71aを中心として図2における反時計方向に(すなわち右端が下方に回動するように)付勢されている。
【0032】
一対のレジストローラ16,17には、それらと一体に回転するレジストローラギヤ16a,17aが設けられ、このレジストローラギヤ16a,17aが噛み合うことによってレジストローラ16,17はニップ部が同一方向で同速度となるように回転する。また、上側のレジストローラギヤ17aは、アイドルギヤ19a(図3参照)を介して、クラッチ機構の一例としてのクラッチギヤ81のキャリア81cの外周と噛み合っている。このクラッチギヤ81のリングギヤ81aは、内周面にも図示省略した内歯が形成され、サンギヤ81bと一体に回転する太陽歯車(図示省略)と上記内歯との間には複数の遊星歯車(図示省略)が設けられている。更に、その遊星歯車を支持するキャリア81c(図2,図3参照)の外周にも歯が形成されている。
【0033】
このため、サンギヤ81bに第1フック82を係合させてその回転を阻止すると、後述のようにリングギヤ81aに伝達された駆動力がキャリア81cに伝達され、更にその駆動力がアイドルギヤ19aを介してレジストローラ16,17に伝達される。一方、第1フック82をサンギヤ81bから外してサンギヤ81bが自由回転するようにすると、リングギヤ81aを回転させてもサンギヤ81bが空転し、キャリア81cは回転しない。
【0034】
図3に示すように、第1フック82の下方には、その第1フック82を軸82aを中心にして揺動させるソレノイド83が設けられている。このソレノイド83は、非通電時には第1フック82を上方へ揺動させてサンギヤ81bと係合させ、通電時には第1フック82を下方へ揺動させてサンギヤ81bとの係合を解除する。
【0035】
また、クラッチギヤ81のリングギヤ81aには、モータ84の回転軸に固定された駆動ギヤ84aが図3,図4における反時計方向(第1の方向の一例:以下、正転方向という)に回転するとき、次のように駆動力が伝達される。すなわち、図2,図3に示すように、駆動ギヤ84aの回転は、大径部と小径部とからなる減速ギヤ86,87,88を順次経由して振り子ギヤ89に伝達される。この振り子ギヤ89は、減速ギヤ88との噛み合いを保ちつつその減速ギヤ88の回転軸を中心に揺動可能に設けられた周知の振り子歯車で、駆動ギヤ84aが正転しているときは図3における右方向に揺動してリングギヤ81aと噛み合う。
【0036】
このため、モータ84の正転時には、第3の歯車機構の一例としての減速ギヤ86〜振り子ギヤ89を介してリングギヤ81aを図3における時計方向に回転させることができる。そして、このときソレノイド83が非通電であれば、第1フック82がサンギヤ81bに噛み合っているのでレジストローラ16,17を回転させることができる。また、ソレノイド83に通電すればサンギヤ81bが空転してレジストローラ16,17を停止させることができる。更に、リングギヤ81aは、対向ローラ15と一体に回転する対向ローラギヤ15aとも噛み合っており、モータ84の正転時には対向ローラ15も用紙搬送方向に回転駆動される。なお、図3,図4には、駆動力の伝達経路を実線で示したので参照されたい。
【0037】
一方、モータ84の回転軸に固定された駆動ギヤ84aが図3,図4における時計方向(第2の方向の一例:以下、逆転方向という)に回転するときは、図4に示すように振り子ギヤ89は図4における左方向に揺動してリングギヤ81aから離れる。このため、レジストローラ16,17には駆動力が伝達されず、ソレノイド83の状態に関わらずそれらを停止状態に維持することができる。
【0038】
また、図2,図3に示すように、駆動ギヤ84aと噛み合う減速ギヤ86は、アイドルギヤ91を介して振り子ギヤ92と噛み合っている。この振り子ギヤ92は、アイドルギヤ91との噛み合いを保ちつつそのアイドルギヤ91の回転軸を中心に揺動可能に設けられた周知の振り子歯車で、駆動ギヤ84aが正転しているときは図3に示すように下方に揺動して後述のアイドルギヤ95から離れ、アイドルギヤ93と噛み合う。このアイドルギヤ93は、図示省略した複数のアイドルギヤを介してクリーニングローラ41を駆動するクリーナ駆動ギヤ94と噛み合っている。このため、モータ84の正転時には、第1の歯車機構としての減速ギヤ86〜アイドルギヤ93を介して、クリーナ駆動ギヤ94を図3における時計方向に回転させ、クリーニングローラ41を上記一定方向に回転させることができる。
【0039】
一方、駆動ギヤ84aが逆転しているときは、振り子ギヤ92は図4に示すように上方に揺動してアイドルギヤ93から離れ、アイドルギヤ95と噛み合う。アイドルギヤ95は、アイドルギヤ96を介して前述のクリーナ駆動ギヤ94と噛み合っている。このため、モータ84の逆転時にも、第2の歯車機構としての減速ギヤ86〜アイドルギヤ96を介して、クリーナ駆動ギヤ94を図3における時計方向に回転させ、クリーニングローラ41を上記一定方向に回転させることができる。
【0040】
(圧板上昇機構の構成)
また、アイドルギヤ93には、用紙4の減少に応じて圧板9を上昇させる支持板移動手段の一例としての圧板上昇機構100に駆動力を付与する移動手段駆動歯車の一例としてのリングギヤ101aが噛み合っている。このリングギヤ101aは、クラッチギヤ81と同様に構成されたクラッチギヤ101の一部を構成するもので、アイドルギヤ93を介してクリーナ駆動ギヤ94と噛み合うことにより、モータ84の正転時にも逆転時にも図3,図4における時計方向に回転駆動される。
【0041】
次に、この圧板上昇機構100の構成について、図5〜図8を用いて説明する。先ず、図5は、圧板上昇機構100及びその近傍の構成を、後述の第2ベベルギヤ111の軸方向中心を通る断面にて右側から描いた図である。図5に示すように、リフトアーム71の左端71cには、その左端71cの上下動に応じて軸102aを中心に揺動する第2フック102が設けられている。すなわち、第2フック102は、上記左端71cの上面に当接する当接部102bを備え、その当接部102bが引張コイルバネ103の付勢力によって左端71cの上面に常時当接されることにより、左端71cの上下動に応じて揺動する。また、この第2フック102は、リフトアーム71の左端71cが下方にあるときにはスイッチングギヤ104の突部104dに係合し、左端71cが上昇したときはその突部104dに係合しない(図6参照)爪部102cを有している。
【0042】
スイッチングギヤ104は、図5に示すように、最外周に一部歯が無い欠け歯部を有する外周ギヤ104aを有すると共に、右側面近傍にストッパ部104bを有し、更にその右側面にカム部104cを有している。ストッパ部104bは、滑らかな円柱状の外周面に突部104dを有している。また、カム部104cは、滑らかな円柱状の外周面に凹部104eを有している。また、このように構成されたスイッチングギヤ104は、外周ギヤ104aがクラッチギヤ101のリングギヤ101aの外周に噛合可能に構成されると共に、回転軸からずれた位置で、引張コイルバネ106に常時付勢されている。
【0043】
クラッチギヤ101のサンギヤ101bの前方には、第3フック107が配置されている。第3フック107は、3つのアームを有し、前側アーム107aは、その先端がスイッチングギヤ104のカム部104cのカム面に対面しており、上側アーム107cは、その先端がサンギヤ101bの外周に対面している。後側アーム107bは、引張コイルバネ108により常時下方に引かれているので、第3フック107は、常時図5における時計方向に付勢されている。
【0044】
このような構成により、圧板上昇機構100では、用紙4の減少に応じて次のように圧板9を上昇させることができる。すなわち、用紙4が十分にあるときは、給紙ローラ11も高い位置に配設されるのでリフトアーム71の左端71cが下がっており、これにより第2フック102の爪部102cは図5に示すようにスイッチングギヤ104の突部104dに係合する。この状態では、第3フック107の前側アーム107aは、カム部104cの凹部104eから外れているので、上側アーム107cは、クラッチギヤ101のサンギヤ101bから外れている。このため、サンギヤ101bは自由回転できるので、アイドルギヤ93からリングギヤ101aに伝達された駆動力はキャリア101cから動力として出力されず、サンギヤ101bが空回りすることになる。
【0045】
用紙4が消費されて給紙ローラ11が下がっていくと、前述の引張コイルバネ72等の作用によってリフトアーム71の右端が下がり、左端71cが上がっていく。これにより、図6に示すように、爪部102cと突部104dの係合が外れる。この係合が外れると、引張コイルバネ106の付勢力により外周ギヤ104aがリングギヤ101aと噛み合い、スイッチングギヤ104が図6における時計方向に回転する。
【0046】
すると、図7に示すように、第3フック107の前側アーム107aは、その先端がカム部104cの凹部104eに入り込み、第3フック107が図7における時計方向に揺動して上側アーム107cがサンギヤ101bに係合する。すると、アイドルギヤ93からリングギヤ101aに伝達された駆動力はキャリア101cから反時計方向の回転として出力される。
【0047】
キャリア101cから出力された駆動力は、ウォームギヤ109、第1ベベルギヤ110、第2ベベルギヤ111の順に伝達され、更に、ウォームギヤ109の右側(図5〜図7の手前側)に配設されたアイドルギヤ113、減速ギヤ115の順に伝達される。図8の左側面図に示すように、減速ギヤ115の小径部は扇形のリフトギヤ116と噛み合っており、そのリフトギヤ116は軸118を中心にしてリフト板119と一体に揺動する。このリフト板119の先端は圧板9の下面に当接しており、キャリア101cから出力された上記駆動力により圧板9を上方に揺動させることができる。
【0048】
リングギヤ101aが更に回転すると、スイッチングギヤ104の回転により前側アーム107aの先端が凹部104eから外れ、キャリア101cの回転は停止する。更に、リングギヤ101aが外周ギヤ104aの欠け歯部と対向すると、引張コイルバネ106の付勢力によってスイッチングギヤ104は図5の位置に戻る。通常、この時点では圧板9が十分に上昇し、リフトアーム71の左端71cも図5に示すように下がっているので、爪部102cと突部104dとが係合する。
【0049】
(本実施の形態の効果及び他の実施の形態)
このように、本実施の形態の画像形成装置1では、モータ84を正転させれば、レジストローラ16,17を駆動すると共に、クリーニングローラ41を上記一定方向に回転させ、かつ、圧板上昇機構100にも駆動力を伝達することができる。また、モータ84を逆転させれば、レジストローラ16,17を駆動することなく、クリーニングローラ41を上記一定方向に回転させ、圧板上昇機構100にも駆動力を伝達することができる。このため、レジストローラ16,17の駆動停止をソレノイド83への通電のみによって実行する場合に比べて、そのソレノイド83として長時間の通電に耐えうる大きなものを使用する必要性が低下し、画像形成装置1の製造コストを良好に低減することができる。しかも、モータ84の逆転時にも圧板上昇機構100に駆動力が伝達されるため、装置起動時のウオーミングアップ中などにも圧板9を上昇させて円滑な給紙を行うことができる。
【0050】
また、本実施の形態では、モータ84が正転しているときもソレノイド83に通電すればレジストローラ16,17を適宜停止させることができるので、レジストローラ16,17の一層細かい制御が可能となる。例えば、画像形成装置1は、手差しトレイ18から用紙4が挿入されたことを監視するセンサ(図示省略)を備えている。そこで、用紙4の挿入がセンサによって検知されたときにモータ84の正転を開始し、レジストローラ16,17により用紙4の先端を挟んだ後でソレノイド83に通電を行ってレジストローラ16,17を停止させ、モータ84の回転速度が所定値まで上昇した後にソレノイド83への通電を停止して用紙4の搬送を再開するといった制御も可能となる。また、給紙トレイ7から用紙4を供給する場合において、用紙4の先端をレジストローラ16,17のニップに突き当てて斜行を補正するために、レジストローラ16,17を一時的に停止させるといった制御も当然実施可能である。このような制御がなされる場合でも、本実施の形態では、モータ84が逆転している間はレジストローラ16,17を停止させるためにソレノイド83へ通電する必要がなく、小さなソレノイド83を使用することが可能となる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、モータの回転方向に応じて駆動力の伝達/非伝達が切り換えられる第1〜第3の歯車機構では、ワンウェイクラッチ等を利用して駆動力の伝達/非伝達を切り換えてもよい。但し、上記実施の形態のように、振り子ギヤ89,92を利用して駆動力の伝達/非伝達を切り換え、更に、第1の歯車機構と第2の歯車機構とが共通の歯車列(減速ギヤ86〜振り子ギヤ92)を有している場合、構成を一層簡略化することができる。
【0052】
また、レジストローラ16,17の動作に対して上記のような細かい制御を実行しない場合は、クラッチギヤ81やソレノイド83は省略してもよい。この場合も、前述のように、レジストローラ16,17もクリーニングローラ41も圧板上昇機構100も全て駆動する動作と、レジストローラ16,17は停止させつつクリーニングローラ41と圧板上昇機構100とを駆動する動作とが、選択的に実行できる。この場合も、いわゆるオートレジ動作中はモータ48を逆転させることにより、レジストローラ16,17を停止したままクリーニングローラ41を駆動することができ、例えば手差しトレイ18に誤って用紙4が挿入されても、レジストローラ16,17が用紙4を吸い込むのを防止することができる。
【0053】
このようなことを防止する方法としては、モータ84が正転している間、ソレノイド83に通電し続けることでも可能であるが、本実施の形態では、レジストローラ16,17を停止させるためにソレノイド83に通電し続ける必要がなく、小さなソレノイド83を使用することが可能となる。
【0054】
更に、本発明における無端ベルトは、上記実施の形態で挙げた搬送ベルト23のようないわゆる転写ベルト(用紙搬送ベルト)に限定されるものではく、中間転写ベルトや感光体ベルトなどであってもよい。更に、本発明の画像形成装置は電子写真方式で画像を形成するものに限定されるものではない。例えばインクジェット方式で画像を形成する画像形成装置であっても、被記録媒体を搬送しながらプラテンとしても機能する無端ベルトを備えたインクジェットプリンタ等には同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明が適用された画像形成装置の概略構成を表す側断面図である。
【図2】その画像形成装置の各種ローラの駆動系の構成を右後側から表す斜視図である。
【図3】モータ正転時における上記駆動系の構成を表す左側面図である。
【図4】モータ逆転時における上記駆動系の構成を表す左側面図である。
【図5】上記画像形成装置の圧板上昇機構及びその近傍の構成を表す断面図である。
【図6】その圧板上昇機構及びその近傍の他の時点での構成を表す断面図である。
【図7】その圧板上昇機構及びその近傍の他の時点での構成を表す断面図である。
【図8】その圧板上昇機構のリフトギヤ及びリフト板の構成を表す左側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…画像形成装置 9…圧板
11…給紙ローラ 12…分離ローラ
16,17…レジストローラ 16a,17a…レジストローラギヤ
19a,91,93,95,96…アイドルギヤ 20…ベルトユニット
23…搬送ベルト 30…画像形成ユニット
34…現像カートリッジ 40…ベルトクリーナ
41…クリーニングローラ 50…LEDユニット
71…リフトアーム 81…クラッチギヤ
82…第1フック 83…ソレノイド
84…モータ 84a…駆動ギヤ
86,87,88,115…減速ギヤ 89,92…振り子ギヤ
94…クリーナ駆動ギヤ 100…圧板上昇機構
101…クラッチギヤ 116…リフトギヤ
119…リフト板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される無端ベルトを用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
一定方向に回転駆動されることによって上記無端ベルトを清掃するクリーニングローラと、
使用者によって被記録媒体が挿入されたとき媒体搬送方向に回転駆動され、その被記録媒体を上記画像形成手段に向けて送り出すレジストローラと、
モータが第1の方向に回転したときにその駆動力を上記クリーニングローラに伝達して上記クリーニングローラを上記一定方向に回転駆動し、上記モータが上記第1の方向とは逆の第2の方向に回転したときにはその駆動力を上記クリーニングローラまで伝達しない第1の歯車機構と、
上記モータが上記第2の方向に回転したときにその駆動力を上記クリーニングローラに伝達して上記クリーニングローラを上記一定方向に回転駆動し、上記モータが上記第1の方向に回転したときにはその駆動力を上記クリーニングローラまで伝達しない第2の歯車機構と、
上記モータが上記第1の方向に回転したときにその駆動力を伝達して上記レジストローラを上記媒体搬送方向に回転駆動し、上記モータが上記第2の方向に回転したときにはその駆動力を上記レジストローラまで伝達しない第3の歯車機構と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記第3の歯車機構は、ソレノイドのON/OFFに応じて駆動力の非伝達/伝達を切り換えるクラッチ機構を介して上記駆動力を上記レジストローラに伝達することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記第1〜第3の歯車機構のいずれかにおける上記駆動力の伝達/非伝達が、上記モータの回転方向に応じて揺動する振り子歯車によって切り換えられることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記第1の歯車機構及び上記第2の歯車機構は、上記振り子歯車を含む共通の歯車列を有し、
その振り子歯車は、上記モータが上記第1の方向に回転したときは上記第1の歯車機構に属しかつ上記第2の歯車機構に属しない歯車と噛み合い、上記モータが上記第2の方向に回転したときは上記第2の歯車機構に属しかつ上記第1の歯車機構に属しない歯車と噛み合うことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
被記録媒体を積載して支持する支持板と、
該支持板に支持された被記録媒体を上記レジストローラに向けて送り出す供給ローラと、
上記被記録媒体の減少に応じて上記支持板を上記供給ローラに向けて移動させる支持板移動手段と、
上記クリーニングローラと連動して回転駆動され、上記支持板移動手段に駆動力を付与する移動手段駆動歯車と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−198572(P2009−198572A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37391(P2008−37391)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】