説明

画像形成装置

【課題】原稿載置トレイ上に載置された原稿の落下を防止することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】原稿載置トレイ111を備えた自動原稿給送装置103が開閉自在に取り付けられた複合機100において、上記原稿載置トレイ111に載置された原稿を支持して、原稿の落下を防止するストッパー501と、それを駆動するステッピングモータ702と、自動原稿給送装置103の複合機100に対する角度を検知する角度検知センサ607と、上記角度検知センサ607が検知した角度に連動して、上記ストッパー501を上記原稿載置トレイ111の上面と重なる位置である支持位置と、その上面と重ならない位置である退避位置との間で往復移動させる往復移動手段701とを備えることを特徴とする複合機100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、詳しくは、原稿載置トレイ上に載置された原稿の落下を防止することが可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置は、提供可能な機能を複数備えるようになっており、多機能化を迎えている。その機能は、コピー機能に加えて、ファクシミリ送信機能、スキャン機能、プリント機能、ステープル機能、パンチ機能等であり、種類も様々である。さらに、上記機能の多様化とともに、機能提供に供される原稿を自動的に順次給送可能な自動原稿給送装置(ADF)も搭載されるようになってきている。
【0003】
上記画像形成装置に原稿の画像を読み取らせる場合、まず、ユーザは、画像形成装置の上面に備えられている原稿台に原稿を載置させる。原稿台の近傍には、載置された原稿を圧着する原稿圧着板が開閉自在となるよう備えられているため、ユーザは、原稿を一枚毎に原稿台と原稿圧着板との間に挟んで、その画像を画像形成装置の画像読取部に読み取らせることとなる。また、自動原稿給送装置が画像形成装置に搭載されている場合、ユーザは、自動原稿給送装置の上面に備えられた原稿載置トレイ上に原稿を載置して、その画像を読み取らせる。なお、自動原稿給送装置は、通常、画像形成装置の原稿台に開閉自在に備えられており、その自動原稿給送装置の下面には原稿圧着板が取り付けられている。そのため、上記原稿台を使用する場合は、ユーザが自動原稿給送装置を開閉して、原稿台に原稿を載置することとなる。
【0004】
ここで、原稿を原稿圧着板と原稿台との間で挟んでその画像を読み取らせた後に、自動原稿給送装置(原稿圧着板)を開くと、原稿がその原稿圧着板に密着して舞い上がり、落下するという問題がある。また、例えば、ユーザが従前の原稿を原稿台から取り除くために、自動原稿給送装置の原稿載置トレイ上に原稿を載置させたまま、自動原稿給送装置を開く場合がある。そのような場合でも、原稿が原稿載置トレイから落下するという問題がある。
【0005】
上記問題を解決するために、特開平10−20416号公報(特許文献1)には、画像読取装置本体の上面に原稿載置板が設けられており、この原稿載置板を開閉自在に覆う原稿圧着板が上記画像読取装置本体の上面にヒンジ機構により傾動可能に取り付けられている画像読取装置における原稿落下防止装置であって、上記原稿圧着板の開閉に連動して上記画像読取装置本体の上面から出没する原稿落下防止部材を設けたことを特徴とする画像読取装置における原稿落下防止装置が開示されている。上記構成により、原稿圧着板を開けたときに、原稿が装置後方に落下するのを簡単な構成で防止することができ、また、大判原稿を読み取る際にも支障になることはないとしている。
【0006】
また、特開2006−117382号公報(特許文献2)には、上面に原稿を載置する原稿載置トレイと、当該原稿載置トレイに載置された原稿を搬送する原稿搬送機構と、を備え、設置対象の装置本体上部に対し、上記原稿の搬送方向と直交する方向における一端部が当該搬送方向に沿う第1回動軸に軸支され、当該第1回動軸を中心に他端部側が開閉可能に設けられる自動原稿搬送装置において、上記原稿載置トレイは、当該原稿載置トレイに載置された原稿に対し上記搬送方向と直交する方向における両端にそれぞれ当接してガイドする1対のガイド壁を有し、当該1対のガイド壁は、上記第1回動軸寄りの一方のガイド壁の高さ寸法が、他方のガイド壁の高さ寸法よりも大きいことを特徴とする自動原稿搬送装置が開示されている。上記構成により、一方のガイド壁の高さ寸法を他方のガイド壁の高さ寸法と同じ高さにした場合に比べて自動原稿搬送装置を開いたときに原稿が原稿載置トレイから落下することを抑制できるとしている。
【特許文献1】特開平10−20416号公報
【特許文献2】特開2006−117382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、原稿圧着板と原稿台との間に挟まっていた原稿の落下を防止するための技術であり、自動原稿給送装置の原稿載置トレイ上に載置させた原稿の落下を防止することができないという問題がある。また、自動原稿給送装置の普及に伴い、原稿圧着板と原稿台との間に挟まった原稿の落下よりも、原稿載置トレイ上に載置された原稿の落下の方が問題となってきているという実態がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、ガイド壁が原稿を支持することによって、原稿の落下を防止する技術であるが、その原理から、自動原稿給送装置が開かれた角度によっては、原稿を十分に支持することが出来ず、原稿の落下を完全に防止することが出来ないという問題がある。例えば、自動原稿給送装置が原稿台に対して90度程度開かれると、原稿がその重力によって原稿載置トレイの上面へ傾倒することとなり、その傾倒箇所には支持体がないため、そのまま落下することとなる。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、原稿載置トレイ上に載置された原稿の落下を防止することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、原稿載置トレイを備えた自動原稿給送装置が開閉自在に取り付けられた画像形成装置において、上記原稿載置トレイに載置された原稿を支持して、原稿の落下を防止する原稿落下防止手段と、自動原稿給送装置の画像形成装置に対する角度を検知する角度検知手段と、上記角度検知手段が検知した角度に連動して、上記原稿落下防止手段を上記原稿載置トレイの上面と重なる位置である支持位置と、その上面と重ならない位置である退避位置との間で往復移動させる往復移動手段とを備える。
【0011】
自動原稿給送装置が開閉自在に取り付けられる方法は、例えば、自動原稿給送装置と画像形成装置の上面との間にヒンジ部材を設けて、開閉自在とする方法が挙げられる。ヒンジ部材は、軸方式でも折畳方式でも球方式でも構わず、1箇所以上設けられていればよい。
【0012】
原稿落下防止手段が原稿を支持する方法は、例えば、原稿が傾倒落下する方向に予め板や壁等に相当する部材を設けて原稿を支持する方法、原稿がずれ落ちない程度の接触圧を部材等によって原稿に印加させて原稿を支持する方法等が挙げられる。
【0013】
原稿落下防止手段は、原稿を支持することが可能な手段であればよく、例えば、棒状、板状、扇状、翼状、円板状、多角形状等の形状を有した成形体、金属体、弾性体が挙げられる。
【0014】
自動原稿給送装置の画像形成装置に対する角度は、例えば、自動原稿給送装置と、自動原稿給送装置が閉じられた際に密着する原稿台との間の角度や、自動原稿給送装置と、画像形成装置が設置された場所の水平面との間の角度等が挙げられる。
【0015】
角度検知手段が検知する角度は、数値単位の角度であっても、自動原稿給送装置と画像形成装置との配置から決定される所定の角度であっても構わない。
【0016】
上記角度検知手段が検知した角度に連動して、原稿落下防止手段を往復移動させる場合、所定の角度を成した際に、原稿落下防止手段を往復移動させても構わないし、その角度に比例して、原稿落下防止手段を往復移動させても構わない。また、原稿落下防止手段を所定の支持位置に一気に移動させても構わないし、段階的または連続的に移動させても構わない。
【0017】
原稿載置トレイの上面とは、原稿載置トレイから所定の高さを有する面に相当し、原稿が画像形成装置に対して90度を成した際に、その原稿が傾倒しても上記原稿落下防止手段が支持可能な高さを有する上面を意味する。原稿落下防止手段が原稿を支持可能であれば、どのような高さでも構わない。
【0018】
原稿載置トレイの上面と重なる位置である支持位置は、当該原稿載置トレイの面積全部または一部と重なる位置であればよく、例えば、原稿載置トレイの四隅の位置、中央の位置、2等分する位置、対角線上の位置等が挙げられる。
【0019】
原稿載置トレイの上面と重ならない位置である退避位置は、上記支持位置以外の位置であればよく、例えば、自動原稿給送装置のプラテンカバー内、原稿の搬送口上部近傍、原稿載置トレイの備えられた自動原稿給送装置の側面等が挙げられる。
【0020】
原稿落下防止手段を支持位置と退避位置との間で往復移動させる場合、原稿落下防止手段を厳密に支持位置と退避位置との間で往復移動させる必要はなく、支持位置まで移動させた際に、原稿落下防止手段の一部が退避位置に重なっていても、またその逆であっても構わない。また、支持位置と退避位置との間であれば、どのような距離で原稿落下防止手段を往復移動させても構わない。
【0021】
原稿落下防止手段を移動させる形態は、例えば、平行移動、略平行移動、回動移動、傾斜移動等させても構わない。また、原稿落下防止手段を往復移動させる往復移動手段は、例えば、ステッピングモータ等の周知の駆動技術を採用しても、電力不要である重り等を利用しても構わない。
【0022】
さらに、上記往復移動手段は、上記角度検知手段が所定の角度を検知した際に、上記原稿落下防止手段を退避位置から支持位置まで移動させ、上記角度検知手段が所定の角度未満を検知した際に、上記原稿落下防止手段を支持位置から退避位置まで移動させるよう構成することができる。
【0023】
所定の角度は、原稿落下防止手段が原稿を支持することが可能である角度であれば、どのような角度であっても構わないが、例えば、自動原稿給送装置が画像形成装置に対して60度から100度までの角度範囲を採用することが好ましい。さらに好ましくは70度から90度までの角度範囲であり、特に、80度前後の角度が好ましい。
【0024】
角度検知手段が所定の角度未満を検知する場合、厳密な数値をもって所定の角度未満であることを検知する必要はない。また、例えば、角度検知手段が、所定の角度以上で信号を受信し、所定の角度未満で信号を受信しない構成としても構わないし、角度計等の実測値をもって所定の角度以上か否かを判別するよう構成しても構わない。
【発明の効果】
【0025】
本発明の画像形成装置によれば、角度検知手段が検知した角度に連動して、原稿落下防止手段を支持位置と退避位置との間で往復移動させるよう構成している。
【0026】
これにより、ユーザが自動原稿給送装置を開いた角度に対応して、原稿落下防止手段が支持位置へ移動するため、原稿が落下する角度前で、原稿落下防止手段を支持位置へ移動させるよう構成すれば、適切なタイミングで原稿の落下を防止することが可能となる。また、ユーザが、載置された原稿を忘れて自動原稿給送装置を開いたとしても、原稿落下防止手段が原稿を支持するため、原稿の落下を最小限に抑えることが可能となる。さらに、原稿の落下を防止する場合、原稿落下防止手段が、原稿載置トレイの上面に移動することとなるため、自動原稿給送装置を原稿台に対して90度程度開いても、原稿の落下を十分防止することが可能となる。
【0027】
また、角度検知手段が所定の角度を検知した際に、原稿落下防止手段を退避位置から支持位置まで移動させ、角度検知手段が所定の角度未満を検知した際に、原稿落下防止手段を支持位置から退避位置まで移動させるよう構成することができる。
【0028】
これにより、ユーザが何度も自動原稿給送装置を開閉させたとしても、適切なタイミングで原稿落下防止手段が支持位置と退避位置との間を往復移動するため、原稿落下防止手段が無駄な移動をすることなく原稿の落下を防止し、さらに、ユーザによる原稿載置トレイ上への原稿載置作業を妨害することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、添付図面を参照して、本発明の画像形成装置の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0030】
<画像形成装置>
図1は、複合機の筐体部内部の全体構成を示す正面視での概念図である。上記複合機として具現化された画像形成装置は、具体的には、デジタル複写機、プリンタの他に、プリンタ、コピー、スキャナ、ファックス等を備えた複合機などが該当し、コピーサービス、スキャナサービス、ファクシミリサービス、プリンタサービス等を備えた画像形成装置として機能する。上記図1乃至4を用いて、複合機がコピーサービスをユーザに提供する処理手順を説明する。
【0031】
まず、ユーザが複合機100を利用する場合、筐体部101上面に備えられた原稿台102近傍にヒンジ部材(図示せず)を介して開閉自在に取り付けられた自動原稿給送装置103を開いてから、原稿台102に原稿Pを載置する。自動原稿給送装置103の下面には、原稿台102に対向する位置に原稿を圧着するための原稿圧着板(図示せず)が備えられている。そのため、原稿Pを原稿台102に載置させてから自動原稿給送装置103を閉じると、その原稿Pを丁度原稿台102と原稿圧着板との間で挟む状態となり、読み取り可能となる。
【0032】
例えば、ユーザが原稿台102近傍に備えられた操作部104のスタートキーを押下すると、画像読取部105において、光源106から照射された光が、上記原稿台102に置かれた原稿に反射され、その反射光は、ミラー107、108、109によって撮像素子110に導かれる。導かれた光は上記撮像素子110により光電変換されて、基本的な補正処理、画質処理、圧縮処理等が施され、画像データが生成される。
【0033】
一方、自動原稿給送装置103の原稿載置トレイ111に原稿Pを載置する場合、ユーザは自動原稿給送装置103を一度開けてから従前の原稿の存在を確認し、自動原稿給送装置103を閉じて、その上面に設けられた原稿載置トレイ111に原稿Pを載置する。もちろん、この確認作業はなくても構わない。
【0034】
上記自動原稿給送装置103は、図2に示すように、プラテンカバー201の外部上面に備えられた原稿載置トレイ111と、その原稿載置トレイ111上に置かれた原稿Pの両端を規制する規制板202と、原稿載置トレイ111からプラテンカバー201内部の用紙搬送路203へ通じる搬送口204と、プラテンカバー201の内部に形成された用紙搬送路203と、プラテンカバー201の内部に備えられたピックアップローラ205と、第一の搬送ローラ206A、第二の搬送ローラ206B、第三の搬送ローラ206C等で構成される。
【0035】
原稿載置トレイ111上に複数の原稿Pが載置されると、規制板202によって整えられた複数の原稿Pの端部Q(ここでは、原稿が進行する方向を示す進行方向(F方向とする)の前端)が搬送口204に挿入されることとなるが、その搬送口204近傍には、ピックアップローラ205が上下昇降可能に配置されており、その昇降移動によって、ピックアップローラ205面が、搬送口204に挿入された複数の原稿Pのうち、最上層に位置する原稿のF方向前端Qに丁度接することとなる。
【0036】
ピックアップローラ205面が最上層の原稿のF方向前端Qに接した状態で、例えば、ユーザが操作部104のスタートキーを押下すると、当該自動原稿給送装置103が、ピックアップローラ205を回転させて、F方向前端Qから原稿全体を用紙搬送路203へ引き込むこととなる。なお、最上層の原稿一枚が引き込まれると、ピックアップローラ205が下方へ降下し、次の上層に位置する原稿のF方向前端に接することとなり、次の原稿もピックアップローラ205によって用紙搬送路203へ引き込むこととなる。
【0037】
引き込まれた原稿が第一の搬送ローラ206Aと、第二の搬送ローラ206Bとによって読取位置Xまで搬送される。読取位置Xを通過する時に原稿は、自動原稿給送装置200の下方に設けられた画像読取部105にて読み取られ、画像データが生成される。さらに、読み取られた原稿は、第三の搬送ローラ206Cにより排紙台207に排紙する。なお、第一の搬送ローラ206A、第二の搬送ローラ206B、第三の搬送ローラ206Cは、それぞれ搬送される原稿の搬送速度等を制御する。
【0038】
なお、原稿台102または自動原稿給送装置103によって生成された画像データ以外にも、複合機100の通信部に接続されたケーブル112を介して他機から当該複合機100に受信される場合もある。
【0039】
生成された画像データをトナー像として転写する駆動部が画像形成部113である。上記画像形成部113には感光体ドラム114が備えられている。上記感光体ドラム114は、一定速度で所定の方向に回転し、その周囲には、回転方向の上流側から順に、帯電器115、露光ユニット116、現像器117、転写器118、クリーニングユニット119などが配置されている。
【0040】
上記帯電器115は、上記感光体ドラム114表面を一様に帯電させる。上記露光ユニット116は、帯電された上記感光体ドラム114表面に、上記画像データに基づいてレーザーを照射し、静電潜像を形成する。上記現像器117は、搬送された静電潜像に、トナーを付着させてトナー像を形成する。形成されたトナー像は、上記転写器118により、記録媒体(例えば、シート)に転写される。上記クリーニングユニット119は、上記感光体ドラム114の表面に残された余分なトナーを取り除く。これらの一連のプロセスは、上記感光体ドラム114が回転することにより実行される。
【0041】
上記シートは、上記複合機100に備えられた複数の給紙カセット120から搬送される。搬送される時は、上記シートはピックアップローラ121により何れか1つの上記給紙カセット120から搬送路へ引き出される。上記各給紙カセット120には、それぞれ異なる紙種のシートが収容されており、上記画像形成に関する設定に基づいてシートが給紙される。
【0042】
搬送路に引き出された上記シートは、搬送ローラ122やレジストローラ123により感光体ドラム114と転写器118の間に送り込まれる。送り込まれると、上記シートは上記転写器118により上記トナー像が転写され、定着装置124に搬送される。
【0043】
上記トナー像が転写されたシートが上記定着装置124に備えられた加熱ローラと加圧ローラの間を通過すると、上記トナー像に熱と圧力が印加されて、可視像がシートに定着される。上記加熱ローラの熱量は紙種に応じて最適に設定され、上記定着が適切に行われる。上記可視像がシートに定着されて画像形成が終了し、当該シートは搬送ローラにより、排紙口125へ導かれる。導かれたシートは、筐体部101の外部にある排紙トレイ126に積載され、収容される。
【0044】
上記手順により、複合機100はコピーサービスをユーザに提供する。また、複合機100が他のサービスを提供する場合も、自動原稿給送装置103と画像読取部105と画像形成部113とが駆動して提供する。
【0045】
図3は、複合機100に備えられた操作部104の外観の一例を示す図である。ユーザは、上記操作部104を用いて、上述のような機能提供についての設定条件等を入力したり、設定条件を確認したりする。設定条件の入力や各サービスの実行開始が行なわれる際に、上記操作部104に備えられたタッチパネル301、タッチペン302、操作キー303が用いられる。
【0046】
上記タッチパネル301には、設定条件を入力する機能と、入力された設定条件を表示する機能とが兼ね備えられている。すなわち、タッチパネル301上に表示された画面内の選択項目等を押下することによって、選択項目等に関連付けられた設定条件の入力が行なわれる。また、入力された設定条件の項目の背景色は、その入力に連動して白色から灰色へ変更されるため、背景色に基づいて、入力された設定条件が確認される。
【0047】
タッチパネル301の近傍には、タッチペン302が備えられており、ユーザがそのタッチペン302の先をタッチパネル301に接触させると、タッチパネル301下方に設けられたセンサが接触先を検知する。そのため、タッチペン302の接触により、表示された項目の選択が可能である。
【0048】
さらに、タッチパネル301近傍には、所定数の操作キー303が設けられ、例えば、テンキー304、スタートキー305、クリアキー306、ストップキー307、リセットキー308、電源キー309が備えられている。なお、上記テンキー304は、部数や倍率を設定する際に具体的な数字の入力に用いられる。
【0049】
次に、図4を用いて、複合機100の制御系ハードウェアの構成を説明する。図4は、複合機100における制御系ハードウェアの概略構成図である。ただし、本発明に直接には関係しない各部の詳細は省略している。
【0050】
複合機100の制御回路は、CPU(Central Processing Unit)401、ROM(Read Only Memory)402、RAM(Random Access Memory)403、HDD(Hard Disk Drive)404、インターフェイス405、各駆動部に対応するドライバ406を内部バス407によって接続している。上記CPU401は、例えば、RAM403を作業領域として利用し、上記ROM402、HDD404等に記憶されているプログラムを実行し、当該実行結果に基づいて上記ドライバ406と図示しない操作部104からのデータ、指示を授受し、上記図1乃至図3に示した各駆動部等の動作を制御する。また、上記駆動部以外についても、上記CPU401がプログラムを実行することで当該各手段を実現する。上記ROM402、HDD404等には、以下に説明する各手段を実現するプログラムやデータが記憶されている。
【0051】
<本発明の実施形態>
次に図5乃至図10を参照しながら、本発明の複合機100が、原稿載置トレイ111上に載置された原稿Pの落下を防止する手順について説明する。
【0052】
図5は、本発明の原稿落下防止手段(後述する)が複合機100に備えられた際の全体外観図である。なお、図5A1は、自動原稿給送装置103が閉じられた状態の時の複合機100が、図5A2は、自動原稿給送装置103が原稿台102に対して所定の角度で開かれた状態の時の複合機100が示されている。
【0053】
図5A1に示すように、自動原稿給送装置103が閉じた状態である場合、当該自動原稿給送装置103の上面に備えられた原稿載置トレイ111の上面は、何も部材等が配置されておらず、開放された状態となっている。そのため、ユーザは、自由に原稿P(原稿束)を載置したり取り除いたりすることが可能となる。
【0054】
原稿載置トレイ111は水平に対して所定の角度α傾斜しており、ユーザが原稿Pをその原稿載置トレイ111上に載置させると、当該原稿の一端Qが原稿載置トレイ111の下方(F方向前方)に設けられた搬送口204に挿入され、搬送口204の上部に設けられたピックアップローラ205と当接可能な状態となる(上述)。
【0055】
ここで、さらに、ピックアップローラ205の回転駆動等を阻害しない位置で、ピックアップローラ205の上部に、原稿載置トレイ111の幅方向(F方向と直交する方向)の寸法とほぼ同じ寸法の長さYを有する板501(以下、ストッパーという)が備えられている。このストッパー501は、例えば、所定数の原稿Pがストッパー501上に載せられた場合であっても容易に撓まない所定の強度を有する。また、上記ストッパー501は、原稿載置トレイ111のF方向右上部近傍に備えられた回転軸502を軸として略平行に回動自在に取り付けられている。この回転軸502は、両端が図示しないプラテンカバー内部の軸受にて受けられ、その両端の一端が図示しない軸材と連結され、その軸材は、ステッピングモータ(後述する)によって正逆回転自在となるよう設けられる。そのため、ステッピングモータが所定の回転数だけ軸材を回転させると、軸材と連結された回転軸502が回動し、ストッパー501全体が原稿載置トレイ111の上面にて回動移動、出没自在となる。
【0056】
上記所定の回転数は、後述する往復移動手段によって制御されるが、その制御方法は、例えば、ストッパー501を原稿載置トレイ111の上面の所定の支持位置まで回動させる場合、ステッピングモータが回転しなければならない距離をパルス信号の数を示す所定のパルス数を予め換算しておいて、そのパルス数にてステッピングモータの正回転を制御する方法が挙げられる。また、ストッパー501をプラテンカバー201内に収納する場合は、ステッピングモータが上記所定のパルス数だけ逆回転すれば足りる。なお、上記所定の回転数は、取り付けられる原稿載置トレイ111、規制板202、ストッパー501のそれぞれの寸法等によって、適宜変更される。また、回転速度も、製造過程、複合機が設置される箇所、複合機のサイズ等によって、適宜変更可能である。
【0057】
ストッパー501の幅と厚みは、容易に回動移動可能となるよう所定の幅と厚みとを有しており、さらに、ストッパー全体501の寸法は、ピックアップローラ205等の部材を覆うプラテンカバー201の内部に適切に収納可能となるよう調整されている。従って、自動原稿給送装置103が閉じられた状態の上面では、ストッパー501が視認し難く、デザイン的に優れ、そのストッパー501がユーザの原稿載置作業を阻害することはない。なお、ストッパー501が収納されている位置は、原稿載置トレイ111の上面と重ならない位置A(以下、退避位置)に相当する。
【0058】
また、ストッパー501が取り付けられている高さは、そのストッパー501を略平行に回動させて原稿載置トレイ111の上面に重なる位置(以下、支持位置)に移動させたとしても、原稿載置トレイ111とその両端に設けられた規制板202とに接触せずに、さらに、その原稿載置トレイ111に所定数の原稿Pを載置させていたとしても、その原稿Pにも接触しない程度の高さを有している。また、その高さは、自動原稿給送装置103を原稿台102に対して90度開いて原稿Pを傾倒させたとしても、ストッパー501が十分にその原稿Pを支持することが可能となる高さとなっている。そのため、上記高さは、取り付けられている原稿載置トレイ111の寸法や規制板202の寸法、ストッパー501の寸法等によって適宜設計変更される。
【0059】
図5A2に示すように、自動原稿給送装置103が原稿台102に対して所定の角度で開かれると、複合機100の筐体部101上面に備えられたヒンジ部材の近傍の、原稿台102内のコンタクトガラスと重ならない位置Rから、自動原稿給送装置103の開閉状態を検知する開閉検知手段が突出する。
【0060】
上記開閉検知手段は、自動原稿給送装置103の下面と当接して衝撃を受けても損傷しない程度の所定の強度を有する円柱部材503を含み、原稿台102の所定の位置Rには、その円柱部材503と嵌合すると所定のクリアランスが形成され、円柱部材503が円滑に昇降自在となる程度の第一の凹部504が設けられている。自動原稿給送装置103が閉じられると、その下面と当接する円柱部材503が下降し、自動原稿給送装置103の閉状態が検知される。さらに、開閉検知手段は、円柱部材503の昇降に対応して、自動原稿給送装置103の原稿台102に対する所定の角度を検知可能な角度検知手段が設けられている(後述する)。
【0061】
なお、自動原稿給送装置103が所定の角度で開状態となると、プラテンカバー201内部に収納されたストッパー501が回転軸502を軸として回動し、原稿載置トレイ111の上面の所定の支持位置まで突出する(後述する)。
【0062】
図6には、原稿台102に備えられた円柱部材(開閉検知手段の一部)と角度検知手段との関係を示す側面視での端面図である。なお、本発明の作用を示すため、実寸法とは聊か異なり、構成する部材も若干誇張するよう示しているが、現実に設計する際には、問題はない。
【0063】
図6B1には、自動原稿給送装置103が閉じた状態を示した。開閉検知手段を構成する円柱部材503の上面部分503aは、自動原稿給送装置103の下面部分103aと当接して下方へ押下され、原稿台102に設けられた第一の凹部504に収納されている。円柱部材503の上面部分503aは、自動原稿給送装置103の下面部分103aと当接する箇所が損傷しないために、所定の滑り性(摺動性)を有するよう表面加工等が施されているか、その滑り性を有する材料選択等が行なわれて形成されている。
【0064】
円柱部材503の下端には、所定のばね定数を有する第一のばね601の一端601aが連結され、そのばねの他端601bは、第一の凹部504の最下面504aと連結されている。その最下面504aには、第一のばね601の一部と接触(脱離)によりON(OFF)信号を発信する開閉検知センサ602が取り付けられている。円柱部材503が第一の凹部504に収納されると、第一のばね601が自動原稿給送装置103の力(例えば、自動原稿給送装置103を閉じた際に生じる自動原稿給送装置103自身の重力G)により収縮された状態となり、ばねの一部が開閉検知センサ602と接触するため、自動原稿給送装置103の閉状態を検知することが可能となる。なお、本発明の作用には、開閉検知センサ602は直接関連していないため、省略することも可能である。また、第一のばね601のばね定数は、自動原稿給送装置103の力が印加されない場合、その復元力により円柱部材503を押し上げることが可能な程度のばね定数である。
【0065】
上記円柱部材503の昇降方向Aと直交する方向Bで、原稿台102表面Sから所定の深さTの第一の凹部504の側面に、直方体を有する直方体を有する第二の凹部603が設けられており、その第二の凹部603に嵌合すると所定のクリアランスを形成し、第一の凹部504の側面から出没自在となるラッチ604(例えば、ドアの掛け金、ラッチボルトに相当する)が設けられている。
【0066】
ラッチ604の形状は、正面視では第二の凹部603に収納する程度の寸法の長方形を有し、一側面視では、斜面が所定のなだらかな曲面605を有する略直角三角形を有している。上記曲面605の上には、所定の滑り性を付与されており、円柱部材503が所定の距離まで上昇移動して、その下端が曲面605上に係止し、ラッチ604を第一の凹部504の側面から出没させても、そのラッチ604が円滑に第二の凹部603をB方向にて滑走可能となるよう構成されている。さらに、その滑り性によって、ラッチ604の曲面605が、円柱部材503の下端との当接によって損傷することを防止している。
【0067】
また、ラッチ604の略直角三角形の下端の尖部604aは、所定の曲率半径した曲面を有し、さらに所定の滑り性が付与されており、円柱部材503が昇降移動しても、その円柱部材503の側面503bが、ラッチ604の尖部604aとの当接によって損傷することはない。
【0068】
円柱部材503と当接しないラッチ604の側面604bには、所定のばね定数を有する第二のばね606の一端が連結されており、その第二のばね606の他端は、第二の凹部の最下面603a(図6B1では、最底面)と連結され、その最下面603aには、上記と同様、第二のばね606の一部の接触(脱離)によりON(OFF)信号を発信する角度検知センサ607が取り付けられている。第二のばね606のばね定数は、円柱部材503の昇降により、ラッチ604が容易に第二の凹部603を滑走可能となる程度のばね定数である。
【0069】
例えば、自動原稿給送装置103が閉じた状態では、円柱部材503が第一の凹部504に収納され、その円柱部材503の側面503aでラッチ604が支持され、第二の凹部603に収納され、さらに第二のばね606がラッチ604の受ける支持力によって収縮され、第二のばね606の一部が角度検知センサ607と接触する。
【0070】
図6B2に示すように、自動原稿給送装置103が聊か開かれた状態となると、その自動原稿給送装置103の下面部材103aにより円柱部材503の上面部材503aに押下されていた力が若干開放されるため、円柱部材503に連結された第一のばね601が復元力を発揮し、円柱部材503を上方へ上昇させる。円柱部材503が上昇すると、その側面503bに接触しているラッチ604の尖部604aが円柱部材の側面503bを滑走することとなるが、円柱部材503の高さ寸法が十分あるため、ラッチの尖部604aが円柱部材の側面503bに支持され、ラッチ604は第二の凹部603に収納された状態のままとなり、角度検知センサ607は第二のばね606と接触したままである。なお、第一のばね601が復元力を発揮した際に、そのばねの一部と開閉検知センサ602とが脱離される。
【0071】
図6B3に示すように、さらに、自動原稿給送装置103が開かれて、原稿台102に対して所定の角度βまで開かれた状態となると、円柱部材503が所定の距離Xまで上昇して、今まで円柱部材の側面503bに当接していたラッチの尖部604aが円柱部材503の下端まで到達し、当該側面503bによって支持されていたラッチの尖部604aが開放されるため、ラッチ604に連結された第二のばね606の復元力によってそのラッチ604が第二の凹部603から突出し、円柱部材503の下端がラッチの曲面506上に係止することとなる。すると、第二のばね606の収縮によって接触されていたその一部が角度検知センサ607から脱離される。上記構成により、角度検知センサ607は所定の角度βを検知可能となる。
【0072】
図6B4に示すように、さらに自動原稿給送装置103が開かれて、原稿台102に対して90度程度の角度を有するまで自動原稿給送装置103が開かれると、円柱部材503がさらに上昇することとなるが、その上昇距離も円柱部材503に連結された第一のばね601の自然長程度までが限界で、それ以上上昇しない。そのため、円柱部材503は所定の範囲内で昇降することとなり、第一の凹部504から飛び出ることはない。また、上昇した円柱部材503の下端が係止しているラッチ604(曲面605)も円柱部材503が所定の範囲内で昇降する限り、第二のばね606が復元力を発揮しても所定の位置までで留まることとなる。なお、円柱部材503が第一の凹部504から飛び出ないよう、レールを設ける等の周知の技術を採用しても構わない。ラッチ604も同様である。
【0073】
このように、上記構成から、角度検知センサ607が、自動原稿給送装置103の原稿台102に対する所定の角度βを検知することが可能である。なお、上記所定の角度βを調整する場合は、ラッチ604の取り付け位置(例えば、原稿台102表面Sからの所定の深さT等)、円柱部材503の寸法(例えば、最初のラッチの尖部604aの接触位置から下端まで所定の距離X等)、ラッチ604の寸法等、第一の凹部の取り付け位置R等を変更すれば簡単に調整可能となる。
【0074】
なお、上記第一の凹部504と、円柱部材503と、第一のばね601と、開閉検知センサ602とが開閉検知手段を構成し、第二の凹部603と、ラッチ604と、第二のばね606と、角度検知センサ607とが角度検知手段を構成する。上述してきたように、角度検知手段は開閉検知手段の一部と関連するよう構成されている。
【0075】
なお、上記図6B1から図6B4までは、自動原稿給送装置103が閉じられた状態から開かれた状態へ移行する順番に対応して、開閉検知手段と角度検知手段との関係を示したが、開かれた状態から閉じられた状態へ移行する順番は、図6B4から図6B1までの順番を逆とすればよい。
【0076】
次に図7乃至図10を参照しながら、本発明の実施形態である複合機100が、原稿載置トレイ111上に載置された原稿Pの落下を防止する手順について説明する。図7は、本発明の実施形態の複合機100の機能ブロック図である。
【0077】
図8C1には、自動原稿給送装置103が閉じられた状態におけるF方向下流の側面図を、図8C2には、その状態の自動原稿給送装置における平面図を示した。
【0078】
自動原稿給送装置103が閉じられた状態では、開閉検知手段の円柱部材503が自動原稿給送装置103の下面部分103aに押下されて第一の凹部504に収納された状態となり、開閉検知センサ602はON信号を発信することとなる。
【0079】
さらに、ラッチ604も円柱部材の側面に接して第二の凹部603に収納された状態となるため、角度検知センサ607もON信号を往復移動手段701に発信する。往復移動手段701は、その信号により自動原稿給送装置103は所定の角度βまで開かれていないものと判断する。その場合、往復移動手段701は、自動原稿給送装置103の内部に設けられたステッピングモータ702の軸材を回転しないため、軸材と連結された回転軸502は回転せず、回転軸502に連結されたストッパー501もプラテンカバー201内(退避位置A)に収納されたままとなる。ここで、上記ストッパー501とステッピングモータ702とは、原稿落下防止手段を構成する。
【0080】
図9D1には、自動原稿給送装置103が原稿台102に対して所定の角度となる前の角度で開かれた状態における側面図を、図9D2には、その状態の自動原稿給送装置103における平面図を示した。
【0081】
自動原稿給送装置が図9の状態では、自動原稿給送装置103の下面部分103aにより円柱部材503の上面に押下されていた力が若干開放され、円柱部材503が上昇して、開閉検知センサ602から脱離し、開閉検知センサ602はON信号を停止する(OFF信号を発信してもよい)。一方、円柱部材503の高さ寸法が十分あるため、ラッチ604の尖部は未だに円柱部材503の側面に当接した状態となるため、角度検知センサ607はON信号を往復移動手段701に発信し続けることとなる。この場合、ストッパー501は未だにプラテンカバー201内(退避位置A)に収納されたままとなる。
【0082】
上記構成では、開閉検知センサ602のON信号が停止するタイミングと、角度検知センサ607のON信号が停止するタイミングとが別個独立しているため、ストッパー501を駆動させる前に、例えば、開閉検知手段を利用して、操作部104のタッチパネル301上に、自動原稿給送装置103が開かれた状態を知らせるメッセージ「自動原稿給送装置が開かれました」等を表示させることも可能となる。
【0083】
図10E1には、自動原稿給送装置103が原稿台102に対して所定の角度で開かれた状態における側面図を、図10E2には、その状態の自動原稿給送装置103における平面図を示した。
【0084】
自動原稿給送装置103が所定の角度βで開かれた状態では、さらに円柱部材503が上昇して、今まで円柱部材503の側面に当接していたラッチ604の尖部が円柱部材503の下端まで到達し、当該側面によって押下されていたラッチ604の尖部が開放されるため、ラッチ604が第二の凹部603から突出し、第二のばね606の一部が角度検知センサ607から脱離され、角度検知センサ607はON信号を停止する。すると、その信号の停止を検知した往復移動手段701が、ステッピングモータ702の軸材を所定のパルス数で回転駆動し、ストッパー501を原稿載置トレイ111の上面の所定の支持位置まで突出させる。
【0085】
所定の支持位置は、ストッパー501が原稿載置トレイ111のF方向前端に対して45度前後の角度を形成する位置であるため、原稿載置トレイ111の右側規制板202aで規制された原稿Pのほぼ対角線上にストッパー501が位置することとなり、そのストッパー501は、傾倒・落下する原稿Pを十分に支持することが可能となる。
【0086】
上記45度は、厳密に45度である必要はなく、その値に限定されるものではない。例えば、取り付けられている原稿載置トレイ111の寸法や規制板202aの寸法、ストッパー501の寸法等によって適宜設計変更され、その角度を30度から60度までの角度範囲となるようステッピングモータ702のパルス数は調整される。上記角度が45度前後であると、その角度まで回動移動したストッパー501が原稿載置トレイ111上の原稿Pの対角線上に位置することとなり、ほとんど全ての原稿Pを支持可能となるため、好ましい。
【0087】
上記図7から図9までは、ユーザが自動原稿給送装置103を閉じた状態から所定の角度βで開いた状態までの順序に対応して、ストッパー501が退避位置から支持位置まで回動移動して、原稿Pの落下を防止する。一方、ユーザが自動原稿給送装置103を所定の角度βで開いた状態から閉じた状態までの手順は、上記図9から図7までの順序を逆とすればよい。自動原稿給送装置103が閉じられて、上述した角度検知センサ607が接触信号を発信すると、往復移動手段701が、ステッピングモータ702の軸材を所定のパルス数で逆回転駆動し、ストッパー501を退避位置まで回動移動し、プラテンカバー201に適切に収納することとなる。
【0088】
このように、角度検知手段が検知した角度に連動して、原稿落下防止手段を支持位置と退避位置との間で往復移動させるよう構成している。
【0089】
これにより、ユーザが自動原稿給送装置を開いた角度に対応して、原稿落下防止手段が支持位置へ移動するため、原稿が落下する角度前で、原稿落下防止手段を支持位置へ移動させるよう構成すれば、適切なタイミングで原稿の落下を防止することが可能となる。また、ユーザが、載置された原稿を忘れて自動原稿給送装置を開いたとしても、原稿落下防止手段が原稿を支持するため、原稿の落下を最小限に抑えることが可能となる。さらに、原稿の落下を防止する場合、原稿落下防止手段が、原稿載置トレイの上面に移動することとなるため、自動原稿給送装置を原稿台に対して90度程度開いても、原稿の落下を十分防止することが可能となる。
【0090】
また、角度検知手段が所定の角度を検知した際に、原稿落下防止手段を退避位置から支持位置まで移動させ、角度検知手段が所定の角度未満を検知した際に、原稿落下防止手段を支持位置から退避位置まで移動させるよう構成することができる。
【0091】
これにより、ユーザが何度も自動原稿給送装置を開閉させたとしても、適切なタイミングで原稿落下防止手段が支持位置と退避位置との間を往復移動するため、原稿落下防止手段が無駄な移動をすることなく原稿の落下を防止し、さらに、ユーザによる原稿載置トレイ上への原稿載置作業を妨害することもない。
【0092】
なお、本発明の実施形態では、ストッパーの形状に所定の寸法を有する板を採用したが、棒状、楕円状等の他の形状を採用しても構わない。さらに、ストッパーをプラテンカバーに収納可能で、かつ原稿を十分支持可能な形状に加工してもよく、例えば、平面視でストッパーのF方向後方の端部に所定の寸法を有する翼部を供え、ストッパーが支持位置へ回動移動した際に、原稿載置トレイの上面に重なる面積を広めるよう構成しても構わない。上記構成により、様々なサイズを有する原稿の落下を確実に防止することが可能となる。なお、上述したストッパーの形状は、上記翼部に限られるものではない。
【0093】
また、本発明の実施形態では、ストッパーが回転軸を軸としてF方向前方から出没するよう構成したが、ストッパーの出没方向を、他の方向、例えばF方向右側または左側方向に変更しても構わない。上記構成により、原稿Pが落下・傾倒する際に支えられる箇所、すなわち原稿載置トレイの右側規制板の箇所からストッパーが突出することとなるため、原稿の落下を確実に防止することが可能となる。
【0094】
また、本発明の実施形態では、角度検知手段に一の角度検知センサを備えるよう構成したが、複数の角度検知センサを備えるよう構成しても構わない。さらに、複数の角度検知センサを備えて、段階的に角度を検知するよう構成して、例えば、原稿落下防止手段のストッパーを段階的に移動しても構わない。上記構成により、ストッパーが一気に退避位置から支持位置へ移動することを防止して、急な移動によりストッパーがユーザの手等に衝突することを防止することが可能となる。
【0095】
また、本発明の実施形態では、既存の設備を利用して本発明の作用効果を得るために、開閉検知手段と角度検知手段とを相互に関連付けるよう構成したが、両者どちらも別個に設けて構成したとしても、本発明の作用効果を奏することは言うまでもない。なお、既存の設備を利用すると、構成が非常に簡単となり、画像形成装置の生産性を高めることが出来るとともに、小型化することも可能となる。さらに、不要であれば、所定の部材を除いて、開閉検知手段を削除しても構わない。
【0096】
また、本発明の実施形態では、開閉検知センサ、角度検知センサともに、所定の接触に基づいてON信号を発信するよう構成したが、接触を検知可能であれば、その逆でも構わない。脱離の場合も同様である。なお、上述した接触を検知する技術は、例えば、光学センサ、重量センサ、磁気センサ、これらに関連する技術を採用しても構わないことは言うまでもない。
【0097】
また、本発明の実施形態では、角度検知手段の部材の配置構成により、自動原稿給送装置の原稿台に対する所定の角度を検知するよう構成したが、他の方法、例えば、その角度を実測可能な実測手段(例えば、角度計等)を採用しても問題はない。
【0098】
また、本発明の実施形態では、開閉検知手段にも角度検知手段にも所定のばね定数を有するばねを採用したが、例えば、ゴム等の弾性体であっても構わないし、所定の復元機能を有する技術を採用しても構わない。
【0099】
また、本発明の実施形態では、自動原稿給送装置を搭載した画像形成装置について採用したが、例えば、自動原稿給送装置を搭載した画像読取装置(スキャナー等)、原稿載置トレイに相当する原稿収納トレイを備えた蓋材を搭載した画像形成装置(画像読取装置)にも、採用出来る事は言うまでもない。
【0100】
また、本発明の実施形態では、コピーサービスに関して採用したが、例えば、ファクシミリサービス、スキャナサービス、プリンタサービス、ネットワークスキャンサービス、後処理サービス等にも採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本発明に係る画像形成装置は、複写機、プリンタ、複合機等に有用であり、原稿載置トレイ上に載置された原稿の落下を防止することが可能な画像形成装置として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態に係る複合機の内部の全体構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係る自動原稿給送装置とその載置台を示す概念図である。
【図3】本発明の実施形態に係るタッチパネル上に表示された画面の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る発明の制御系ハードウェアの構成を示す図である。
【図5】ストッパーが複合機に備えられた際の全体外観図である。
【図6】本発明の実施形態に係る開閉検知手段と角度検知手段との関係をしめす側面視での端面図である。
【図7】本発明の実施形態における複合機の機能ブロック図である。
【図8】本発明の実施形態に係る自動原稿給送装置が閉じられた状態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る自動原稿給送装置が所定の角度よりも前の角度で開かれた状態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る自動原稿給送装置が所定の角度で開かれた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
100 複合機
103 自動原稿給送装置
111 原稿載置トレイ
501 ストッパー
502 回転軸
503 円柱部材
504 第一の凹部
601 第一のばね
602 開閉検知センサ
603 第二の凹部
604 ラッチ
606 第二のばね
607 角度検知センサ
701 往復移動手段
702 ステッピングモータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿載置トレイを備えた自動原稿給送装置が開閉自在に取り付けられた画像形成装置において、
上記原稿載置トレイに載置された原稿を支持して、原稿の落下を防止する原稿落下防止手段と、
自動原稿給送装置の画像形成装置に対する角度を検知する角度検知手段と、
上記角度検知手段が検知した角度に連動して、上記原稿落下防止手段を上記原稿載置トレイの上面と重なる位置である支持位置と、その上面と重ならない位置である退避位置との間で往復移動させる往復移動手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
さらに、上記往復移動手段は、上記角度検知手段が所定の角度を検知した際に、上記原稿落下防止手段を退避位置から支持位置まで移動させ、
上記角度検知手段が所定の角度未満を検知した際に、上記原稿落下防止手段を支持位置から退避位置まで移動させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−267591(P2009−267591A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112414(P2008−112414)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】