説明

画像形成装置

【課題】不必要な除電による新たな画像不良を発生させることなくトナー層の電荷ムラにより生じる画像不良を抑制することが可能な画像形成装置を得る。
【解決手段】転写ニップの転写体移動方向下流側近傍に電圧印加部材8と、
電圧印加部材8に電圧を印加する電源部81と、を有し、
電源部81は、トナーと同極性で、かつ、転写体上のトナー層電位の情報に比例した電圧を出力することを特徴とする画像形成装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関し、特に用紙あるいは中間転写ベルトの転写体にトナー像を転写する転写装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体にトナー画像を形成し、形成したトナー画像を用紙に転写させる。あるいはフルカラー出力が可能なカラー画像形成装置では、複数の感光体に異なる色のトナー画像をそれぞれ形成し、形成したトナー画像を中間転写体上で順次重ね合わせる。そして重ね合わせたトナー画像を二次転写部で一括して用紙に転写させる。
【0003】
このような画像形成においては、感光体に用紙あるいは中間転写体(以下、これらを転写体という)を接触させてトナー画像を転写させる。転写させたあとに感光体から転写体を分離させる際に、感光体と転写体上のトナー層の間で意図しない放電現象が発生する場合がある。このような異常な放電が発生した場合には、その異常な放電により一部のトナーの電荷が変化するために、転写体との静電吸着力が低下することになる。この影響により周辺トナーと反発することによるトナー画像の散りが生じたり、下流側の別の感光体に逆転移したりする。そしてこれらの現象は画像不良となる。
【0004】
図9は、タンデム型のカラー画像形成装置における異常な放電による画像不良を説明する模式図である。同図はカラー画像形成装置のベルト状の中間転写ベルト6周辺を表したものであり、複数のドラム状の感光体1に各々異なる色のトナー画像を形成し、形成したトナー画像を中間転写ベルト6上で順次重ね合わせる。
【0005】
重ね合わせトナー層においては、単層のトナー層にくらべてトナーの総電荷量及びトナー層の厚みが増加するのでトナー層電位の絶対値は上昇する。2番目の感光体1(M)の重ね合わせトナー層においては、トナー層電位の上昇によりトナー層と感光体1の間で剥離放電現象が発生し易くなる。同図に示すように剥離放電edが発生するとその放電現象に伴いトナー層のトナーの一部において電荷量が変化し、その変化レベルによっては元々は負帯電のトナーであったものが正帯電の電荷を帯びたトナーとなる。正帯電のトナーは更に下流の感光体1(C)において、転写ニップNにおける転写電界により感光体1(C)に逆転移してしまうので、その分は周囲に比較してトナー量が少なくなり、画像不良が発生することになる。
【0006】
異常な放電を抑制する手段として特許文献1では、感光体に交流バイアス電圧を印加させたクリーニング除電器を設け、当該クリーニング除電器で発生した電荷の一部がトナー像転写後の受動体(転写体)の表面に向けて放出されるような構成とした画像形成装置が開示されている。また特許文献2では、転写位置下流において中間転写体の表面あるいは裏面を除電する除電手段を有した画像形成装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−154548号公報
【特許文献2】特開2005−115197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、特許文献2に開示されている画像形成装置では、いずれも転写体に対して除電極が積極的に自己放電することにより、転写体上に形成したトナー層の電荷を一定の範囲に収めようとするものである。
【0008】
またこれらにおいてはいずれもトナー層の電位を考慮していない、前述に示した異常な放電による画像不良はトナー層電位の絶対値が高い場合に発生し易い。前述の特許文献に開示されている画像形成装置においてはトナー層電位を考慮せずに一律に除電を行うものでありそのために、画像不良が発生しないようなトナー層電位の絶対値が低い場合においても必要のない除電を行っていることになる。
【0009】
更にトナー層電位の絶対値が低い場合に除電を行った場合には過剰な除電となり易く、過剰な除電となった場合には帯電ムラに起因した画像不良が発生することになる。このように一律に除電を行った場合には、不要な除電による新たな画像不良あるいは除電極の耐久や、消費エネルギーの面で問題が生じることとなる。
【0010】
本願発明は、上記問題に鑑み不必要な除電による新たな画像不良を発生させることなくトナー層の電荷ムラにより生じた画像不良を抑制することが可能な画像形成装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0012】
(1)トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を転写ニップで転写体に転写する転写部と、
を有する画像形成装置であって、
前記転写ニップの転写体移動方向下流側に設けられた電圧印加部材と、
前記電圧印加部材に電圧を印加する電源部と、を有し、
前記電源部は、トナーと同極性で、かつ、転写体上のトナー層電位の情報に比例した電圧を出力することを特徴とする画像形成装置。
【0013】
(2)トナー層電位の絶対値の情報が所定値よりも小さい場合には、前記電源部の出力をoffすることを特徴とする(1)に記載の画像形成装置。
【0014】
(3)トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を転写ニップで転写体に転写する転写部と、
を有する画像形成装置であって、
前記転写ニップの転写体移動方向下流側に電圧印加部材と、
前記電圧印加部材に電圧を印加する電源部と、を有し、
転写体上のトナー層電位の情報に基づいて前記電源部のon/off制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【0015】
(4)前記電源部は交流電圧を出力可能なことを特徴とする(3)に記載の画像形成装置。
【0016】
(5)それぞれ異なる色のトナー像を形成する複数の像担持体を有し、
前記転写体は複数の前記像担持体のトナー像を重ねて重ね合わせトナー像を形成する中間転写ベルトであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、不必要な除電による新たな画像不良を発生させることなくトナー層の電荷ムラにより生じる画像不良を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の要部を示す図である。画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成手段10Y,10M,10C,10Kと、中間転写ベルト6と給紙装置20及び定着装置30等から構成されている。
【0020】
画像形成装置100の上部には、スキャナー110が設置されている。原稿台上に載置された原稿はスキャナー110の原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれる。ラインイメージセンサにより光電変換されたアナログ信号は、制御手段において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光部3Y,3M,3C,3Kに入力される。
【0021】
50は制御部でありCPUとメモリを備えており、メモリに記憶しているプログラムをCPUが実行することにより各種制御を実行する。
【0022】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成手段10Y、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成手段10M、シアン(C)色の画像を形成する画像形成手段10C、及びブラック(K)色の画像を形成する画像形成手段10Kは、それぞれ像担持体としてのドラム状の感光体1の周囲に配置された帯電極2、露光部3、現像装置4及びクリーニング部5を有する(M、C、Kについては参照符号を省略)。
【0023】
現像装置4はそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の異なる色の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。2成分現像剤として、フェライトをコアとしてその周りに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、ポリエステルを主材料として顔料あるいはカーボンブラック等の着色剤、荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等を加えたトナーとからなる。キャリアは粒径10〜50μm、飽和磁化10〜80emu/g、トナーは粒径4〜10μm、トナーの帯電特性は負帯電特性であり平均電荷量としては−20〜−60μC/gである。2成分現像剤としてはこれらのキャリアとトナーとを、トナー濃度4〜10質量%になるよう混合したものを用いている。
【0024】
感光体1に対向して配置されている現像装置4の現像ローラ40は、回転可能な外周面(現像スリーブと称す)とその内面に固定された磁界発生手段(マグネットロール)とから構成されている。現像スリーブの表面には、穂切り部により層厚を一定に規制した現像剤層が保持され、現像剤層は回転にともなって感光体1との対向面に搬送され(不図示の)電源により形成された感光体1との現像電界により現像される。
【0025】
6は、中間転写ベルトであり、複数のローラにより、回転可能に支持されている。中間転写ベルト6は、体積抵抗率106〜1012Ω・cmの無端ベルトであり、例えば変性ポリイミド、熱硬化ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンアロイ等のエンジニアリングプラスチックに導電材料を分散した、厚さ0.04〜0.10mmの半導電性シームレスベルトである。
【0026】
画像形成手段10Y,10M,10C,10Kより感光体1上に形成された各色のトナー像は、回転する中間転写ベルト6上に一次転写ローラ7により逐次転写されて(一次転写)、重ね合わせトナー像(以下、カラー画像ともいう)が形成される。一方、転写後の感光体1(Y、M、C、K)はそれぞれのクリーニング部5によりにより残留トナーが除去される。
【0027】
なお、本実施形態においては中間転写ベルト6が「転写体」、複数の一次転写ローラ7及び中間転写ベルトが「転写部」として機能する。そして像担持体としての感光体1に担持したトナー像は、各々の一次転写ローラ7と感光体1間の転写ニップNで転写体に転写する。
【0028】
給紙装置20の用紙収納部(トレイ)21内に収容された用紙Pは、第1給紙部22により給紙され、給紙ローラ23,24,25A,25B、レジストローラ(第2給紙部)26等を経て、二次転写ローラ9に搬送され、用紙P上にカラー画像が転写される(二次転写)。
【0029】
なお、画像形成装置100の下部に鉛直方向に縦列配置された3段の用紙収納部21は、ほぼ同一の構成をなすから、同符号を付した。また、3段の給紙手段22も、ほぼ同一の構成をなすから、同符号を付してある。用紙収納部21、給紙手段22を含めて給紙装置20と称す。
【0030】
カラー画像が転写された用紙Pは、定着装置30において用紙Pが挟持され、熱と圧力とを加えることにより用紙P上のカラートナー画像(あるいはトナー画像)が定着されて用紙P上に固定され、搬送ローラ対37に挟持されて搬送され、排紙搬送路に設けられた排紙ローラ27から排出され、機外の排紙トレイ40上に載置される。
【0031】
一方、二次転写ローラ9により用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した中間転写ベルト6は、クリーニング部61により残留トナーが除去される。
【0032】
用紙Pの両面に複写する場合には、用紙Pの第1面に形成した画像を定着処理した後、用紙Pを分岐板29により排紙搬送路から分岐させ、両面搬送路28に導入して表裏反転してから再び給紙ローラ25Bから搬送する。用紙Pは画像形成手段10Y,10M,10C,10Kによって第2面に各色の画像が両面に形成され、定着装置30により加熱定着処理され、排紙ローラ27によって装置外に排出される。
【0033】
[電圧印加部材]
電圧印加部材について図2、図3に基づいて説明する。図2は、一次転写ローラ7周辺の拡大図であり、図3は図2のX方向から見た電圧印加部材8の拡大図である。感光体1と一次転写ローラ間で形成される転写ニップNの中間転写ベルト移動方向下流側の近傍に電圧印加部材8を設けている。電圧印加部材8はその先端が、転写ニップNの下流側からY方向で数mm〜十数mm、X方向で数mmとなるように配置している。ここでY方向は転写体移動方向であり、X方向はY方向に直交する方向でかつトナー層面側である。
【0034】
図3は、図2のX方向から見た電圧印加部材8の拡大図である。同図に示すように電圧印加部材8は先端を丸めた突起部を長手方向(ローラの軸方向)に等間隔で配置させたものである。例えば0.1mm厚のSUS板をエッチング処理することにより、突起部を1〜5mmの一定ピッチで用紙の通紙幅方向全域に渡って配置させている。
【0035】
電源部81は、電圧印加部材8に電圧を印加する。電源部81はトナーの帯電特性と同じ極性の電圧を印加する。そしてその電圧はトナー層電位の情報に基づいて可変制御する。
【0036】
[トナー層電位情報]
図2において、11は非接触の表面電位計であり、領域a1において感光体1に対向する位置に配置させており、感光体1上に形成したトナー層の表面電位を測定する。そして領域a1において表面電位計11での測定値に基づいて領域a2における中間転写ベルト6に形成したトナー層の電位を推定する。なお表面電位計11は感光体1の軸方向に複数、例えば3個配置させており軸方向のトナー層電位のプロフィールを測定することにより、軸方向のトナー層電位の最大値の情報を得ることが可能である。
【0037】
図4は、領域a1と領域a2におけるトナー層電位の相関関係を調べる予備実験を説明する模式図である。予備実験においては、同図に示すように電圧印加部材8に換えて第2の表面電位計11bを中間転写ベルト6に対向する位置に配置させている。このような構成の画像形成装置において領域a1と領域a2それぞれにおけるトナー層電位の対応関係(対応テーブル)を予備実験において調べておき、対応関係は制御部50のメモリに記憶しておく。このことにより表面電位計11の測定値により領域a2における中間転写ベルト6上の「トナー層電位の情報」を推定することが可能となる。なお予備実験の結果によりトナー色、画像形成装置本体に備えた相対湿度を検知する機内湿度センサの出力値、によって異なる複数の対応テーブルを準備しておいてもよい。
【0038】
また本実施形態においては表面電位計11の測定値によりトナー層電位の情報を取得する例について説明したがこれに限られず、以下の何れかによりトナー層電位情報を取得するようにしてもよい。(1)トナーを現像する際に現像装置4の現像ローラ40に接続した定電圧電源から感光体1に流れる電流をモニタすることにより、感光体1に現像したトナー電荷量を推定することができる。モニタした電流値による換算値を軸方向(の平均)トナー層電位の情報として用いる。(2)感光体1に対向した位置に光学濃度センサを設け、光学濃度センサの出力により感光体1上に形成(担持)したトナー像の単位面積あたりのトナー付着量を推定する。トナー付着量とトナー層電位との関係をあらかじめ調べておくことにより光学濃度センサの出力からの換算値をトナー層電位の情報として用いる。(3)一次転写ローラ7に転写電流を供給する定電流電源71の転写時における電圧値をモニタすることにより、そのモニタ値からの換算値をトナー層電位の情報として用いる。具体的には転写電流と転写時における電圧との関係からトナー付着量を推定し、推定したトナー付着量からトナー層電位を更に推定する。
【0039】
[制御フロー]
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の制御フローを示す図である。本制御フローは制御部50により実行する処理である。まずステップS11では、トナー層電位情報を取得する。トナー層電位情報Vtの取得は前述のとおり表面電位計11の測定値に基づきあらかじめ制御部50のメモリに記憶されている対応テーブルを参照することにより行う。
【0040】
ステップS12では、トナー層電位情報Vtの絶対値が所定値V1よりも大きいか否かを判断する。この所定値V1は、例えば−180Vであり、この絶対値が所定値V1以下では、トナー層と感光体1間での放電による画像不良がほとんど発生しない。
【0041】
トナー層電位情報Vtの絶対値が所定値V1よりも大きい場合(ステップS12:Yes)には、次のステップS13ではトナー層電位情報Vtに比例した電圧を電源部81から電圧印加部材8に出力(Vout)する。ここでVout=a×Vt+bの関係が成り立ち、a、bは定数でありaは例えば1.0であり、bは−50Vに設定している。例えばVtが−200Vの場合にはVoutは−250Vとなる。
【0042】
一方、トナー層電位情報Vtの絶対値が所定値V1以下の場合(ステップS12:No)には、電源部81の出力はoff(接地)して終了する(END)。
【0043】
なお本実施形態においては、一次転写ローラで形成する転写ニップの近傍に放電防止部材8を配置させた例について説明したがこれに限られない。二次転写ローラ9の下流側近傍に設けてもよい。この場合、中間転写ベルト6が「像担持体」、二次転写ローラ9が「転写部」、用紙が「転写体」としてそれぞれ機能することになる。
【0044】
更に転写搬送ベルト上に静電吸着させた用紙に複数の感光体からのトナー像を複数の転写ニップで順次重ねることにより用紙上にカラートナー像を形成する画像形成装置において、それぞれの転写ニップの下流側近傍に放電防止部材を配置させた構成としてもよい。この場合、転写搬送ベルトが「転写部」、用紙が「転写体」として機能することになる。
【0045】
このように転写ニップNの転写体移動方向下流側近傍に電圧印加部材8を設けることにより、転写体移動方向下流側近傍においては、(1)感光体及び感光体からトナー像を転写された転写体上のトナー層との間で生じる放電よりも(2)感光体及び電圧印加部材8との間で生じる放電の方が発生し易くなる。つまり電圧印加部材を避雷針として機能させることにより(2)の放電をより積極的に起こさせることにより(1)の放電を減少させることが可能となり、ひいては(1)の放電に起因したトナー層の電荷ムラよる画像不良を抑制することが可能となる。
【0046】
このように、転写ニップの転写体移動方向下流側近傍の電圧印加部材にトナーと同極性で、かつ、転写体上のトナー層電位の情報に比例した電圧を出力することにより、不必要な除電による新たな画像不良を発生させることなくトナー層の電荷ムラに起因した画像不良を抑制することが可能となる。
[他の実施形態]
図6、図7に基づき他の実施形態について説明する。図6は、他の実施形態に係る画像形成装置における一次転写ローラ7周辺の拡大図である。同図においては、コロトロン電極の電圧印加部材8bを用い、電源部はDCの定電圧電源ではなく交流電圧の出力を行うAC電源部81bとしている。これ以外のその他の構成に関しては、図1、図2に示す構成と共通する。
【0047】
図7は、他の実施形態に係る画像形成装置の制御フローを示す図である。当該制御フローにおいては、ステップS12においてトナー層電位情報Vtの絶対値が所定値V1よりも大きい場合(ステップS12:Yes)には、次のステップS15ではAC電源部81bから電圧印加部材8bに所定のAC電圧を出力して終了する(END)。その他の制御フローは図5と同一であり説明を省略する。なお本実施形態においてはAC電圧値としては、例えば7.5kVで周波数0.3〜2.0kHzの出力を行っている。またAC電圧にDC電圧を重畳させた電圧を出力するようにしてもよい。更にAC電圧をトナー層電位の絶対値の増加に伴い、段階的に増加させるようにしてもよい。
【0048】
このようにトナー層電位の情報に基づいて電圧印加部材8bに電圧を供給する電源部81bのon/off制御を行うようにすることにより不必要な除電による新たな画像不良を発生させることなくトナー層の電荷ムラに起因した画像不良を抑制することが可能となる。
【実施例】
【0049】
実施例1
次に、本願発明の実施例について説明する。実施例においては図1乃至図3に示した画像形成装置を用いた。詳細な条件は以下のとおりである。
【0050】
[実験条件1]
・電圧印加部材:SUSエッチング厚0.1mm、先端位置が転写ニップNから(図2)Y方向18mm、X方向4mm
・トナー:平均粒径6.5μm重合トナー、トナー電荷量−40〜−50μC/g
・中間転写ベルト:ポリイミド製半導体ベルト、厚80μm、周囲長さ861mm、幅362mm、表面抵抗率1.0×1010〜1.0×1011Ω/□
・中間転写ベルト移動速度:300mm/sec
・テスト環境:22℃50%RH
トナー層電位の測定は非接触の表面電位計11b(図4参照)により中間転写ベルト6上のトナー層の電位をあらかじめ測定した。またトナー層がない場合における中間転写ベルト6の表面電位はほぼ0Vであった。
【0051】
[実験結果1]
図8は、単位面積あたりのトナー付着量とトナー層電位の関係を示す図である。同図に示すようにトナー付着量とトナー層電位は比例関係がわかる。更に同図では、電圧印加部材8を使用しない場合における放電による画質不良の発生有無の評価結果を合わせて表示している。同図から放電による画質不良が発生する下限のトナー層電位は−180Vであることがわかる。このことから所定値V1(図5のステップS12)は−180Vに設定した。
【0052】
[実験結果2]
実験条件1の条件下にて、トナー層電位を−200Vの一定の条件下において電源部81からの電圧印加部材8への印加電圧を変化させて、用紙に形成した画像を評価した。結果は、表1に示すとおりである。
【0053】
【表1】

【0054】
表中における評価基準は以下のとおりである(表2乃至表4も同様)。
◎:放電による画質不良未発生、画質良好
○:放電による画質不良は軽微に発生するが、許容レベル
×:放電による画質不良が発生、NGレベル
表1に示す様に、電圧印加部材への印加する電源電圧の絶対値がトナー層電位よりも低い場合には効果がないことがわかる。また逆に印加電圧の絶対値が高すぎる場合には画質不良が発生していることがわかる。これは電圧印加部材によってトナーの散りが発生しているためである。このことからトナー層電位−200Vの条件下においては、−200V〜−400Vを電圧印加部材に印加するのがよく、更に好ましくは−230V〜−350Vを印加させるのがよいことがわかる。
【0055】
このことから、(図5のステップS13における)定数aが1.0の場合に定数bは0〜−200Vが好ましく、更に好ましくは−30〜−150Vであることがわかる。
【0056】
つまりトナー層電位の絶対値に対して0〜200Vを加算した電圧を印加するのが好ましいことがわかる。
【0057】
[実験結果3]
実験1、実験2の結果に基づいて、所定値V1を−180V、定数aを−1.0、定数bを−50Vとした。このような条件下において電圧印加部材8に中間転写ベルト6上のトナー層電位に比例した電圧を印加した場合に、用紙に形成した画像の評価を、比較例と対比して行った。結果は表2に示すとおりである。
【0058】
【表2】

【0059】
表2に示す様に、電圧印加部材8に電圧を印加しない(ゼロ出力)比較例と比べて、画像不良の発生しない領域を拡大することができた。またトナー層電位としては−400Vまでは許容レベル(○評価)の画質を維持することが可能となっている。
【0060】
実施例2
次に、本願発明の実施例2について説明する。実施例2においては図1及び図6に示した画像形成装置を用いた。実験条件は以下のとおりである実験条件1と異なる条件のみ記載する。
【0061】
[実験条件2]
・電圧印加部材:コロトロン電極、タングステンワイヤ直径60μm、ワイヤとサイドプレート及びバックプレート間最近接距離7.5mm、ワイヤ位置が転写ニップから(図2)Y方向18mm、X方向4mm
・AC電源部81b:DC電圧0V、AC周波数0.5kHz
[実験結果4]
実験条件2の条件下にて、異なるトナー層電位におけるAC電源部81bからの電圧印加部材8への印加電圧を変化させて、用紙に形成した画像を評価した。結果は、表3に示すとおりである。
【0062】
【表3】

【0063】
表3に示すように、AC電圧5.0kVp−p以下の出力では改善効果は得られていない。これは電圧印加部材8bからの自己放電がほとんど発生していないためあるいは中間転写ベルト6への放電電荷量が不十分なためと考えられる。またAC電圧9.0kVp−pでは逆にレベルが悪化している。これは過剰放電によるものと考えられる。以上のことから表3に示すトナー層電位−200〜−450Vの範囲で放電による画像不良が発生しないAC電圧の下限値は7.5kVp−pである。このことにより所定のAC電圧は7.5kVp−pに設定した。
【0064】
[実験結果5]
実験1、実験4の結果に基づいて、所定値V1を−180V、所定のAC電圧を7.5kVp−pとした。このような条件下において電圧印加部材8bに中間転写ベルト6上のトナー層電位に基づいてAC電源部81bのon/off制御を行った場合に用紙に形成した画像の評価を、比較例と対比して行った。結果は表4に示すとおりである。
【0065】
【表4】

【0066】
表4に示す様に、電圧印加部材8bに電圧を印加しない比較例と比べて、画像不良の発生しない領域を拡大することができた。またトナー層電位としては−400Vまでは画質を維持することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の要部を示す図である。
【図2】一次転写ローラ7周辺の拡大図である。
【図3】電圧印加部材8の拡大図である。
【図4】領域a1と領域a2におけるトナー層電位の関係を調べる予備実験を説明する模式図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成装置の制御フローを示す図である。
【図6】他の実施形態に係る画像形成装置における一次転写ローラ7周辺の拡大図である。
【図7】他の実施形態に係る画像形成装置の制御フローを示す図である。
【図8】単位面積あたりのトナー付着量とトナー層電位の関係を示す図である。
【図9】タンデム型のカラー画像形成装置における異常な放電による画像不良を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0068】
100 画像形成装置
10Y、10M、10C、10K 画像形成手段
1 感光体
11 表面電位計
2 帯電極
3Y、3M、3C、3K 露光部
4 現像装置
50 制御部
6 中間転写ベルト
7 一次転写ローラ
8、8b 電圧印加部材
71、81 電源部
81b AC電源部
9 二次転写ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を転写ニップで転写体に転写する転写部と、
を有する画像形成装置であって、
前記転写ニップの転写体移動方向下流側に設けられた電圧印加部材と、
前記電圧印加部材に電圧を印加する電源部と、を有し、
前記電源部は、トナーと同極性で、かつ、転写体上のトナー層電位の情報に比例した電圧を出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー層電位の絶対値の情報が所定値よりも小さい場合には、前記電源部の出力をoffすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を転写ニップで転写体に転写する転写部と、
を有する画像形成装置であって、
前記転写ニップの転写体移動方向下流側に電圧印加部材と、
前記電圧印加部材に電圧を印加する電源部と、を有し、
転写体上のトナー層電位の情報に基づいて前記電源部のon/off制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記電源部は交流電圧を出力可能なことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
それぞれ異なる色のトナー像を形成する複数の像担持体を有し、
前記転写体は複数の前記像担持体のトナー像を重ねて重ね合わせトナー像を形成する中間転写ベルトであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−48056(P2009−48056A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215690(P2007−215690)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】