説明

画像形成装置

【課題】弱帯電トナーや反転トナーによる感光体上のトナーかぶりを減少させ、転写効率が高まった近年の画像形成装置においても、また光沢紙を使用した場合においても、転写材上の白地かぶりを改善させること。
【解決手段】像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像をトナーにて現像する現像手段と、前記現像手段にて現像されたトナー像を転写材に転写する転写手段と、前記現像手段よりも前記像担持体の回転方向下流側で、前記転写手段よりも前記像担持体の回転方向上流側に、前記像担持体と対向して設けられ、前記トナーの帯電極性と同極性の電圧が印加されることで前記像担持体上の前記トナーと逆極性のトナーを電気的に引きつける導電部材と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子写真方式、静電記録方式の複写機、プリンタなどとされる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置の例として、例えば、特許文献1に開示されているような画像形成装置が提案されている。
【0003】
しかし、このような画像形成装置には、「かぶり」という課題がある。これは、本来白地でありトナーが付着しないはずの感光体の非露光部にトナーがわずかではあるが付着して転写材上まで達してしまい、転写材の白地部がトナーでうっすらと汚れてしまう現象である。
【0004】
感光体上のトナーかぶりは感光体とトナーの接触の際、感光体表面にトナー粒子が鏡映力で付着してしまうことにある。このため感光体の白地部電位は、現像バイアスの直流成分実効値に対しトナーが感光体表面から引き剥がされる側(先の従来技術ではマイナス側)になるように差分をもって設定される。この差分を「かぶり保証電位」「Vback」などと呼ぶ。
【0005】
しかし、このようにかぶり保証電位を設定した上でも、なお感光体上にトナーがかぶってしまうことがある。この原因は、主としてトナーの帯電量にある。
【0006】
1個1個のトナー粒子の帯電量にはばらつきがある。中には帯電量の絶対値が0μC/gに近いようなもの(以下弱帯電トナーと呼ぶ)や、逆にプラス側に帯電しているもの(以下反転トナーと呼ぶ)も若干量ではあるが存在する。弱帯電トナーはファンデルワールス力により、反転トナーはかぶり保証電位による電界によって感光体表面に付着する。
【0007】
感光体上に付着したトナーは、電気的に転写材や中間転写体に転写されるため、従来であればかぶりトナーである弱帯電トナーや反転トナーは転写されず、実用上問題とならなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−345209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年転写技術の向上により転写効率が高まったことにより、このようなかぶりトナーが転写材上に転写される場合があり、実用上において問題となりはじめている。
【0010】
また、転写材として近年需要の高まっている、銀塩写真のような光沢感をもった光沢紙においては、おそらくトナーとのファンデルワールス力が高いと思われるため、弱帯電トナーや、場合によっては反転トナーであっても転写されてしまう。
【0011】
即ち、近年においては、従来よりも感光体上のかぶりトナー量を減少させることが要求されている。
【0012】
よって本発明の目的は、弱帯電トナーや反転トナーによる感光体上のトナーかぶりを減少させ、転写効率が高まった近年の画像形成装置においても、また光沢紙を使用した場合においても、転写材上の白地かぶりを改善させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するための本発明の代表的な構成は、像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像をトナーにて現像する現像手段と、前記現像手段にて現像されたトナー像を転写材に転写する転写手段と、前記現像手段よりも前記像担持体回転方向下流側で、前記転写手段よりも前記像担持体回転方向上流側に、前記像担持体と対向して設けられ、前記トナーの帯電極性と同極性の電圧が印加されることで前記像担持体上の前記トナーと逆極性のトナーを電気的に引きつける導電部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上述の構成により、弱帯電トナーや反転トナーによる感光体上のトナーかぶりを減少させ、転写材上の白地かぶりを改善させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下第1実施形態となる画像形成装置について詳しく説明する。
【0016】
〔画像形成装置の概略構成及び動作〕
まず画像形成装置全体の概略構成及びその動作について簡単に説明する。図1は第1実施形態の画像形成装置の概略構成図である。
【0017】
図1において、一次帯電器21によって帯電された像担持体としての感光体ドラム28表面を露光手段からのレーザー22によって露光することで、感光体ドラム28上に静電潜像が形成される。
【0018】
この潜像を、現像手段としての現像器1によって現像(顕像化)しトナー像を得る。このトナー像は、転写帯電器23によって記録紙等の転写材27の表面に静電的に転写される。トナー像を転写した転写材27は定着器25による加熱をうけ、トナー像は転写材27に定着し、永久画像を得る。また転写後に感光体ドラム28上に残った残トナーは、クリーナー26により除去される。
【0019】
感光体ドラム28について説明する。本実施形態の感光体ドラム28は負帯電極性のOPC感光体であり、接地されたアルミニウム製のドラム基体上に主として樹脂からなる機能層を順次に設けたものである。機能樹脂層の膜圧は26μmである。この表面を一次帯電器21によって−600Vに一様に帯電し、この部分の電位を白地部電位またはVdと呼ぶ。ここに画像情報に基づいてレーザー22による露光を行うと、その部分(画像部)の電位が−200Vとなる。この部分の電位を画像部電位またはVlと呼ぶ。
【0020】
現像器1について説明すると、本実施形態の画像形成装置は、磁性現像剤として磁性トナーを用いた磁性1成分現像方式を用いている。磁性トナーはポリエステルを主体とした樹脂に磁性体かつ着色料であるマグネタイトなどを混錬重合したものを粉砕し分級することで体積平均粒径8μm程度の粉体としたものである。
【0021】
本実施形態の現像器1は、現像剤担持体として、固定配置されたマグネット5を非磁性金属素感に内包した現像スリーブ3を用いる。現像器1に収容される磁性トナーはブレード4において層厚規制される際に現像スリーブ3表面と摩擦することで主としてマイナスの電荷を帯びる。現像スリーブ3は感光体ドラム28に対し非接触に設けられ、現像スリーブ3に担持された磁性トナーは磁気ブラシの状態で感光体ドラム28に近接する。
【0022】
現像スリーブ3には不図示の現像バイアス電源から直流成分に交流成分を重畳した現像バイアスを印加する。現像バイアスの直流成分は−450Vである。また現像バイアスの交流成分は矩形波であり、周波数は3kHz、ピークトゥピーク電圧は1.5kVである。
【0023】
磁性トナーは現像スリーブ3と感光体ドラム28の間を現像バイアス交流成分による交互電界によって往復運動しながら、現像スリーブ3から感光体ドラム28へと向かい(この方向を現像方向とする)、画像部に付着する。また白地部電位と現像バイアスの直流成分との間にはかぶり保証電位が150V設けられていて、トナーの往復の間に鏡映力にて感光体ドラム28に付着したトナーに現像方向とは逆向きの電気力(極性)を与え、白地部へのトナー付着を抑制する。
【0024】
感光体ドラム28上に形成されたトナー像は転写手段としての転写帯電器23に印加された転写バイアスによって転写材27に転写される。転写材としては、酸性または中性の上質紙、中性紙、更紙、再生紙等一般的なものや、それらを基材として塗工層を接着したコート紙などが用いられる。
【0025】
〔コート紙について〕
ここでコート紙について詳しく説明する。前述のように、近年銀塩写真のような光沢感をもった転写材の需要が増えており、通常の紙の表面をコートすることで光沢感を出すコート紙が使用されることが多い。
【0026】
コート紙の基材としては、酸性または中性の上質紙、中性紙、更紙、再生紙等一般的なものを用いる。
【0027】
塗工する塗工層については、一般的な顔料、を用いることができる。例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等の鉱物質顔料や、ポリスチレン樹脂微粒子、尿素ホルムアルデヒド樹脂微粒子、微小中空粒子やその他有機系顔料などがある。これらを単独でもしくは複数組み合わせて用いることができる。
【0028】
塗工層においての接着剤としては、塗工用の一般的なもので基材や顔料等の添加物との接着力が強い水溶性接着剤、またはエマルジョン、ラテックス等を単独で使用できる。例えば、ポリビニールアルコール、変性ポリビニールアルコール等の水溶性樹脂やアクリル系エマルジョン、酢ビ系エマルジョン、塩化ビニリデンエマルジョン、ポリエステル系エマルジョン等を使用する。
【0029】
また、塗工層としては塗料に用いられている一般的な材料を使用してもよい。例えば、具体的には、樹脂組成物、白色顔料および有機溶剤を主成分とする液状塗料が上げられる。該着色ベ−ス塗料においては着色顔料を用いてもよく白色顔料については上記顔料が主体であるとする。
【0030】
樹脂組成物としては、通常の熱硬化性樹脂組成物が好ましい。例えば、水酸基、カルボキシル基などから選ばれた1種もしくは2種以上の官能基を有するアクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などがある。これらから選ばれた1種もしくは2種以上の基体樹脂と、紙の紙力を向上させるためにこれらの官能基と反応するメラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物などから選ばれた1種もしくは2種以上の架橋剤からなる混合物を用いることができる。
【0031】
塗工量としては10g/m前後であり、この量で表面の光沢を十分出すことができ、また画像形成装置内の搬送性に対し適度なコシを保つことができる。
【0032】
本実施形態のコート紙における表面の光沢度は、JISP−8142−1993の75度鏡面光沢の規格に準拠した測定装置で測定した光沢が約40%である。
【0033】
ここで本実施形態の特徴部分について詳しく説明する。
【0034】
従来の技術で説明したように、かぶり保証電位を設定した上でも、なお感光体ドラム28上には極々わずかではあるがトナーがかぶってしまう。その原因は、主としてトナーの帯電量にある。図2は第1実施形態におけるトナーの帯電量分布を示す図である。横軸はトナー粒子一つ一つの帯電量(μC/g)、縦軸は頻度である。
【0035】
本実施形態のような1成分系の現像方式においては、トナーの表面積に対し摩擦の相手となるもの(本実施形態では現像スリーブ3表面)の面積が限られているため、トナー同士の摩擦による帯電が避けられない。このため、図2のようにマイナス側にピークを持つものの裾をひいた形状の分布となる。即ち、トナーの中に少なからずトナー帯電量が0に近いもの(弱帯電トナー)やプラス側に帯電しているもの(反転トナー)が存在するということになる。
【0036】
弱帯電トナーはファンデルワールス力により、また反転トナーはかぶり保証電位による電界によって、感光体ドラム28表面に付着する。
【0037】
感光体上に付着したかぶりトナーは、電気的に転写材27に転写される。ここで、一般に用いられる上質紙、中性紙等であれば、弱帯電トナーや反転トナーはほとんど転写されず、実用上問題とならなかった。
【0038】
しかし先にあげたコート紙においては、表面の平滑度が高くトナーとの接触性が良いため、弱帯電トナーをおそらくはファンデルワールス力によって転写してしまう。また反転トナーであっても、転写バイアスによる電界に対しファンデルワールス力が勝つような場合には、コート紙上に転写されてしまう。そして結果としてコート紙上の白地部分にトナーが付着し、かぶりとして認識されてしまう。
【0039】
そこで本実施形態においては、以下のような構成をとることによって、弱帯電トナーや反転トナーを転写工程の前にあらかじめ取り除き、コート紙の白地かぶりを抑制する。
【0040】
〔かぶりとりローラ31の構成〕
図1に示すように、感光体ドラム28に対向する、現像スリーブ3と転写帯電器23との間には、芯金の周囲に弾性層を設けさらに表層に離型性を有する表面層が被覆されたかぶりとりローラ31(導電部材)が設けられている。かぶりとりローラ31は感光体ドラム28に接触し、感光体ドラム28の移動に従って回動するように設けられている。
【0041】
かぶりとりローラ31について図3を用いて詳しく説明する。図3はかぶりとりローラ31の構成を示す断面図である。
【0042】
図3に示すように、ステンレスの丸棒からなる芯金31aの周囲には、弾性部材からなる弾性層31bが被覆されている。この弾性層31bは、感光体ドラム28とかぶりとりローラ31との間に接触ニップを形成するためのものである。
【0043】
この弾性層31bの材料としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のゴム材料、またこれらを弾性スポンジ体(発泡構造体)としたものなどが用いられる。また、適度な導電性を付与するために、カーボン粒子、金属酸化物などの導電粒子を分散させる。
【0044】
弾性層31bの周囲にはウレタンゴム、NBR系ゴムなどからなる接着層31cが被覆される。
【0045】
接着層31cの周囲には離型性を有する表面層31dが被覆される。表面層31dは表面離型性や物質移行性を改良するために形成され、フッ素樹脂やポリアミド樹脂などのコーティング被膜が用いられる。また、適宜抵抗調整のために酸化スズ、カーボンなどを分散してもよい。また、表面層31dの表面は、十点平均粗さRzで0.1μm〜4μm程度であれば、十分な離型性を確保することができる。
【0046】
かぶりとりローラ31の長手方向(軸方向)の長さは、弾性層31b、接着層31c、表面層31dの長さが320mmであって、芯金31aは340mmである。芯金31aは両端部で片側10mmずつ露出していて、導電性の軸受(不図示)に支持されている。さらにこの導電性の軸受を金属製のばねで支持し、かぶりとりローラ31を両端それぞれから4.9N、合計9.8Nの力で感光体ドラム28に押圧する。かぶりとりローラ31は感光体ドラム28表面の移動に伴って回転する。
【0047】
このように、感光体ドラム28上に弾性部材を接触させると、狭い点状の領域において感光体ドラム28上に付着している弱帯電トナーを、弾性部材であるかぶりとりローラが包み込み、広い面積でファンデルワールス力を作用させることが出来る。この作用によって弱帯電トナーは感光体ドラム28上から除去され、かぶりとりローラ31に吸着される。
【0048】
ここでかぶりとりローラ31の電気抵抗に関して述べる。かぶりとりローラ31の抵抗は、軸方向の単位長さあたりの値を規定すれば、図1の断面方向の電気的特性を規定することが出来る。軸方向の単位長さあたりの電気抵抗Rrは、感光体ドラム28と同じ外径の金属筒にかぶりとりローラ31を実際の押圧力にて押し付け、金属筒を感光体ドラム28と同じ回転速度で回転させながら、電源装置を接続する。そして、所定の電圧を印加しながら電流値を計測し、それらの値から求めた実抵抗値を軸方向の長さで割って求めた。このようにして求めた本実施形態のRrは3×10(Ω/m)であった。
【0049】
またかぶりとりローラ31にはばねと導電性の軸受を介して、かぶりとりバイアス電源33から−750Vの直流バイアス電圧が印加される。この電気力によって、感光体ドラム28上の反転トナーはかぶりとりローラ31に引き付けられる。ここで、感光体ドラム28上に形成されたトナー像であるが、このトナー像中のトナー粒子の帯電極性はマイナスであるため、トナー像は感光体ドラム28側に押し付けられながら感光体ドラム28とかぶりとりローラ31の間を通過する。即ち形成されたトナー像は、かぶりとりローラ31によって乱されることなく転写領域へと搬送される。
【0050】
またかぶりとりローラ31には導電性のブラシを植毛した回転ブラシ32が当接していて、かぶりとりローラ31上に付着したトナーを掻き落とすように構成されている。
【0051】
このように、本実施形態によれば、感光体表面の現像領域と転写領域の間に、表層が弾性体からなる導電部材を接触して設けることで、ファンデルワールス力によって弱帯電トナーを感光体表面から取り除くことが出来る。また、前記導電部材は、前記バイアス電源によって直流バイアス電圧を印加されることによって、正規の極性に帯電されたトナー像を乱すことなく、反転トナーだけを電気的に前記導電部材に引きつけて感光体上から取り除くことができる。
【0052】
実際に、かぶりとりローラ31の装着有無によって、転写材およびコート紙上のかぶりがどのように変化するか実験を行った。
【0053】
転写材上のかぶりは以下のようにして測定する。まず、画像形成前の転写材の平均反射率Dr(%)を、リフレクトメータ(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER ODEL TC−6DS」)によって測定する。一方、本実施形態の画像形成装置によって転写材上に全面白地画像を形成し、この画像の反射率Ds(%)を測定する。このDr(%)―Ds(%)をかぶり量(%)とする。
【0054】
測定結果を図4に示す。図4はかぶりとりローラを用いた場合の、上質紙及びコート紙における測定結果を示す図表である。
【0055】
図4に示すように、コート紙のような、表面の平滑度が高くトナーとの接触性が良い転写材を用いても、白地かぶりの改善を達成することが出来た。
【0056】
以上、第1実施形態を説明したが、更に詳しい条件について説明する。
【0057】
好ましくは、かぶりとりローラ31の電気抵抗Rrは、
1×10(Ω/m)≦Rr≦1×1012(Ω/m) … (式1)
の関係を満たすとよい。
【0058】
Rrが1×10(Ω/m)を下回ると、電荷が移動しやすい状態であるから、かぶりとりローラ31へのバイアス印加により感光体ドラム28表面やトナー像に対して電荷が注入されてしまう場合がある。感光体ドラム28表面に電荷が注入されれば静電潜像を乱し、トナー像を電気的に保持する上で好ましくない。またトナー像のトナーに電荷が注入されると、帯電量が過剰なトナー粒子ができてしまい、次工程の転写の際に転写抜けなどを起こしてトナー像を乱してしまう恐れがある。
【0059】
またRrが1×1012(Ω/m)を上回ると、かぶりとりローラ31の電気抵抗が感光体ドラム28の電気抵抗に接近し、かぶりとりローラ31と感光体ドラム28との表面電位差が小さくなり、本実施形態の効果を確実に得ることができなくなる恐れがある。
【0060】
また好ましくは、前記バイアス電源によって前記導電部材に印加される直流バイアス電圧Vrは、VrがVdをはさんでVlと逆側になるように設定され、
前記導電部材と前記感光体の画像部との間で放電が開始されるVrをVrbとして、
(前記トナーの帯電極性がマイナスの場合)
Vd−50(V)≧Vr≧Vrb+50(V) … (式2)
(前記トナーの帯電極性がプラスの場合)
Vd+50(V)≦Vr≦Vrb−50(V) … (式3)
の関係を満たすとよい。
【0061】
VrとVdの差(式2、式3の左辺)に関しては、以下のような実験を行って条件を決定した。
【0062】
図5はVd=−600VでVrの値を変えたときのコート紙上のかぶりの測定結果を示す図表である。
【0063】
図5に示すように、VrとVdの差を50V以上とすれば、白地部にのっている反転トナーに対して十分な電気力を与え、本実施形態の効果を確実に得ることができることがわかる。
【0064】
またVrの絶対値の最大値(式2、式3の右辺)に関しては、以下のような実験を行って条件を決定した。
【0065】
Vrと感光体ドラム28表面電位の差分を大きくしていくと、放電現象が生じて感光体ドラム28やトナー像を再帯電してしまう現象が起こる。本発明者らは所定の表面電位に帯電された感光体ドラム28にかぶりとりローラ31を当接しバイアスを印加することで、感光体ドラム28の表面電位がどのように変化するか実験を行った。
【0066】
図6はかぶりとりローラ31による感光体ドラム28の表面電位の変化の様子を示したグラフである。Vr(V)はかぶりとりローラ31に印加されるバイアスである。V(V)、V(V)はそれぞれ、かぶりとりローラ31の上流、下流の感光体ドラム28の表面電位を測定したものである。測定は、表面電位計(米国TREK社製 Model 344)にて測定した。グラフの横軸には、バイアスVr(V)とかぶりとりローラ31の上流の表面電位V(V)との差分(Vr−V)を、縦軸には、かぶりとりローラ31の下流の電位V(V)と上流の表面電位V(V)との差分(V−V)をプロットしている。
【0067】
感光体ドラムA、B、Cはそれぞれ機能樹脂層の膜厚が16μm、21μm、26μmのものである。これらのグラフの示す現象は、たとえば感光体ドラムAの場合、(Vr−V)が約―550Vまでは放電現象がおきず、(Vr−V)が−550Vを超えると放電現象が起きて感光体ドラム表面の電位が変化するということである。
【0068】
グラフは放電開始の部分で厳密に折れ曲がっているわけではないので、図6中で右上がりの傾き1の直線の部分が横軸と交わった点の(Vr−V)の値を放電開始電圧Vbと呼ぶことにする。感光体ドラムA、B、Cの放電開始電圧Vbの値はそれぞれ−550V、−640V、−700Vであった。
【0069】
なおV(V)の値は−200V、−400V、−600Vと変えて実験しているが、いずれの場合も図6のグラフの線は同一となった。
【0070】
このようにVrと感光体ドラム28の表面電位の差が大きくなり、放電現象が起きてしまうと、感光体ドラム28表面の静電潜像が乱れてしまう。また放電によりトナーの帯電量が変化してしまい、次工程の転写の際に転写抜けなどを起こしてトナー像を乱してしまう恐れがある。
【0071】
このような放電現象を引き起こさないためには、Vrから最も電位差の広い画像部電位Vlに対するVrとの差分が放電開始電圧Vbを超えないことが必要である。このときのVrの値をVrb(=Vl+Vb)とする。本実施形態では実際のVrの設定値は、外乱要因などを見込んでVrbに対し50Vの余裕をもって設定することとした。
【0072】
本実施形態で用いた感光体ドラム28は図6の感光体ドラムCであり、Vdは−600V、Vlは−200Vであって、放電開始電圧Vbは−700Vであるから、Vrは−650Vから−850Vの間で設定することができる。
【0073】
以上のような条件を適用することにより、感光体ドラム28の表面電位やトナー像の帯電量を乱すことなく、本実施形態の効果を確実に得ることができる。
【0074】
以上、本実施形態の画像形成装置について説明してきたが、ここで本実施形態の効果について説明する。
【0075】
本実施形態においては、現像手段よりも像担持体回転方向下流側で、転写手段よりも像担持体回転方向上流側に、像担持体と対向して設けられる導電部材を有する。導電部材は、トナーの帯電極性と同極性の電圧が印加されることで像担持体上のトナーと逆極性のトナーを電気的に引きつける。
【0076】
このような構成であれば、導電部材の弾性部材を感光体ドラムに当接させてしまえばよく、構成が簡易である。即ち、特許文献1に示すように、非磁性のスリーブの内部に磁束密度40〜100mTの磁石が固定されて構成される剛体と思われるキャリア補足手段を、0.005mmないしは0.05mmまで近接させて配置するような、複雑な構成をとらない。
【0077】
また、現像と転写の間で異物を取り除く、あるいは電界をかける構成のものは、その部材が感光体ドラムと非接触方式のものである。すると、感光体ドラムとの間に電界をかけたとしてもファンデルワールス力で感光体ドラムに付着している弱帯電トナーは除去することができない。また反転トナーには、たしかにその方向に電界はかかるものの、前述のように電界を強めるために感光体ドラムと部材とのギャップを狭くすることは精度的に困難である。
【0078】
この点においても本実施形態は、弾性部材を接触させるため同様にファンデルワールス力をもって弱帯電トナーを除去できる。また適切な抵抗値を持った弾性部材を接触させてバイアスを印加しているため、簡易な構成で効率よく反転トナーに強い電界をかけてこれを除去することができる。
【0079】
〔第2実施形態〕
以下に本発明による第2実施形態となる画像形成装置について詳しく説明する。図7は第2実施形態の画像形成装置の概略構成図である。
【0080】
図7に示したように、本実施形態の画像形成装置は、第1実施形態で説明したトナー像作像工程を行うステーションを複数設けている。即ち、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4ステーション(それぞれY、M、C、Kステーションと呼ぶ)の各色に対応するステーションを設けている。そして、中間転写ベルト24上で4色のトナー像を重ねてから転写材27に一括転写してフルカラー画像を得る画像形成装置である。いわゆるタンデム方式といわれるフルカラー画像形成装置である。なお以下の説明で、符号の数字を単に示したものは、図7における各ステーションに共通な部分である。
【0081】
本実施形態の感光体ドラム28(Y、M、C、K)は、第1実施形態で説明した感光体ドラム28を用いており、能樹脂層の膜厚が16μmである。膜厚が第1実施形態に対して薄い分感光体ドラム28の静電容量が大きくなるため、コントラスト電位差(=Vlと現像バイアスの直流成分との差分)は小さくても十分なトナー量が得られる。本実施形態ではVdは−400V、Vlは−150Vであって、現像バイアスの直流成分は−280Vである。
【0082】
本実施形態では現像方式として2成分現像方式を用い、マイナス帯電極性の非磁性トナーと磁性キャリアを混合して現像剤とする。現像バイアスの交流成分は矩形波であり、周波数は8kHz、ピークトゥピーク電圧は1.8kVである。
【0083】
図8は第2実施形態のトナーの帯電量分布を示す図である。第1実施形態の1成分系の帯電量分布(図2)に比較して、摩擦帯電部材であるキャリアの表面積が大きいため、トナーの帯電量分布はシャープであり、弱帯電トナーや反転トナーの割合も少ない。しかし逆に、本実施形態ではトナーが非磁性であるため、トナーを直接磁気で拘束することができない。このため本実施形態においても、感光体ドラム28上の白地かぶりに対し、相当の対策をとる必要がある。
【0084】
また中間転写ベルト24としては、ポリイミド樹脂の基層にクロロプレンゴムの弾性層を設け、更に表層にフッ素ゴム塗料をコートしたものを用いた。このような、非常に転写効率の良好な材料は、従来転写できなかった白地部の弱帯電トナーや反転トナーをも転写してしまう。このため、転写直前の感光体ドラム28上の白地かぶりに対して要求が厳しくなっている。
【0085】
そこで本実施形態の画像形成装置においても、第1実施形態と同様に、かぶりとりローラ31(Y、M、C、K)を各感光体ドラム28上に接触させて設け、弱帯電トナーや反転トナーを転写前にあらかじめ感光体ドラム28上から除去する。これにより、白地かぶりの少ない高品位な成果物を得ることができる。
【0086】
図9は第2実施形態において、Vrの値を変えたときのコート紙上のかぶりの測定結果を示す図表である。
【0087】
図9に示す結果より、本実施形態においてもVrとVdの差を50V以上としておけば、本発明の効果を確実に得ることができることがわかる。また感光体ドラムの放電開始電圧Vbの値は−550Vであるので、Vlが−150VのときVrb=−700Vである。即ちこの条件ではVrは−450Vから−650Vの範囲で選択すればよい。
【0088】
尚、上記では説明を簡単にするために各ステーションの諸電位設定を共通としたが、もちろん実際はこれに限定されるものではなく、各ステーションごとに最適の設定値を適用すればよい。しかしVrの設定可能範囲には幅があるので、例えばかぶりとりバイアス電源33を全ステーション共通、即ちVrを全ステーション共通とすることも可能であると思われる。
【0089】
ところで本実施形態のようなタンデム方式の画像形成装置では、各ステーションの配置構成に制約が大きく、第1実施形態のような回転ブラシ32などをそれぞれ配置することが困難である場合がある。
【0090】
そこで、本実施形態では、かぶりとりローラ31からのトナー除去を、現像スリーブ3上の磁気ブラシによって行うこととした。
【0091】
この本実施形態の特徴的な部分を、図10を用いて説明する。図10は図7に示す第2実施形態の画像形成装置で、各ステーションの共通部分を取り出して示した図である。
【0092】
本実施形態ではかぶりとりローラ31から弱帯電トナーや反転トナーを除去する手段として、現像スリーブ3上の、S1磁極付近で磁気ブラシとして穂立ちしている2成分現像剤を、かぶりとりローラ31に接触するように設けている。具体的には現像スリーブ3とかぶりとりローラ31間の最近接距離は2.5mmであり、穂長約4〜5mmの磁気ブラシと接触する。
【0093】
このS1磁極の磁気ブラシが長い理由は、現像スリーブ3の回転方向下流にある磁極が同極のS3極であって、その間で磁気搬送力のない領域を作ることで現像剤を滞留させ、現像スリーブ3表面から2成分現像剤を剥離する構成となっているからである。もちろんかぶりとりローラ31に対向する極の下流の極が異極であれば、ブレード4において層厚規制された後はこのような穂長の長い磁気ブラシとはならない。このため、現像スリーブ3とかぶりとりローラ31間の最近接距離もその穂長に応じて接近させればよい。要は磁気ブラシとかぶりとりローラ31が確実に接触し、かつかぶりとりローラ31が現像剤の搬送を妨げないことが重要である。
【0094】
本実施形態に戻ると、かぶりとりローラ31に付着した弱帯電トナーは、S1磁極近傍の磁気ブラシと当接する。このことで、磁気ブラシによる機械的なかきとり力により、かぶりとりローラ31表面から弱帯電トナーが除去される。
【0095】
また、弱帯電トナーは、磁性キャリアと接触して摩擦帯電を受けることでにマイナス側に帯電し、磁性キャリア表面に電気的に吸着されたり、現像スリーブ3とかぶりとりローラ31間の電界による力を受けたりして、かぶりとりローラ31から除去される。
【0096】
反転トナーは若干ながらも電荷を持っているため、弱帯電トナーよりも強い電気力でかぶりとりローラに付着している。
【0097】
ここで、現像スリーブ3に交流成分電圧(ピークトゥピーク電圧は1.8kV、即ち片側900V)が印加されていることに留意すると、現像スリーブ3とかぶりとりローラ31にはその直流成分よりも大きい電位差がかかるタイミングがある。例えば、最大600V−280V+900V=1220Vの電位差がかかるタイミングがある。しかもこのタイミングでプラス帯電している反転トナーには、かぶりとりローラ31から現像スリーブ3へと向かう方向に電気力がかかる。この強い電気力によってかぶりとりローラ31表面に拘束された反転トナーをいったん離脱させることができる。そして一度かぶりとりローラ31表面から離脱した反転トナーは、容易に磁気ブラシにて回収することができるのである。
【0098】
このように本実施形態のような構成をとれば、別途かぶりとりローラ31を清掃するための機構を設ける必要がなくなり、本発明の目的をより簡素な形で達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】第1実施形態の画像形成装置の概略構成図。
【図2】第1実施形態のトナーの帯電量分布を示す図。
【図3】第1実施形態のかぶりとりローラ31の構成を示す断面図。
【図4】第1実施形態のかぶりとりローラを用いた場合の、上質紙及びコート紙における測定結果を示す図表。
【図5】第1実施形態で、Vd=−600VでVrの値を変えたときのコート紙上のかぶりの測定結果を示す図表。
【図6】第1実施形態で、かぶりとりローラ31による感光体ドラム28の表面電位の変化の様子を示したグラフ。
【図7】第2実施形態の画像形成装置の概略構成図。
【図8】第2実施形態のトナーの帯電量分布を示す図。
【図9】第2実施形態で、Vrの値を変えたときのコート紙上のかぶりの測定結果を示す図表。
【図10】第2実施形態の画像形成装置で、各ステーションの共通部分を取り出して示した図。
【符号の説明】
【0100】
1…現像器
3…現像スリーブ
4…ブレード
5…マグネット
21…一次帯電器
22…レーザー
23…転写帯電器
25…定着器
26…クリーナー
27…転写材
28…感光体ドラム
31…かぶりとりローラ
31a…芯金
31b…弾性層
31c…接着層
31d…表面層
33…バイアス電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像をトナーにて現像する現像手段と、前記現像手段にて現像されたトナー像を転写材に転写する転写手段と、前記現像手段よりも前記像担持体の回転方向下流側で、前記転写手段よりも前記像担持体の回転方向上流側に、前記像担持体と対向して設けられ、前記トナーの帯電極性と同極性の電圧が印加されることで前記像担持体上の前記トナーと逆極性のトナーを電気的に引きつける導電部材と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記導電部材の軸方向の単位長さあたりの電気抵抗をRrとすると、
1×10(Ω/m)≦Rr≦1×1012(Ω/m)
の式の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体の白地部電位をVd、前記像担持体の画像部電位をVlとし、
前記導電部材に印加される直流バイアス電圧Vrは、VdがVlとVrの間になるように設定され、
前記導電部材と前記像担持体の画像部との間で放電が開始されるVrをVrbとすると、
(前記トナーの帯電極性がマイナスの場合)
Vd−50(V)≧Vr≧Vrb+50(V)、
(前記トナーの帯電極性がプラスの場合)
Vd+50(V)≦Vr≦Vrb−50(V)の式の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像手段は固定の磁石を内包した現像剤担持体を備えており、前記磁石の磁極によって前記現像手段に収容された磁性現像剤が磁気ブラシをなし、その磁気ブラシが前記導電部材と接触していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−164616(P2010−164616A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4568(P2009−4568)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】