説明

画像形成装置

【課題】単色低濃度中間調画像の画像形成でも、二段の静電ファーブラシクリーニングを効率的に実行して、中間転写ベルトに連れ回るトナーを少なくできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】制御部110は、受信したジョブの画像データから中間調画像を抽出して各色の中間調画像の合計階調を求め、合計階調が単色換算で128/255未満となる面積比率を求める。この面積比率が80%以上の場合は、二次転写部T2に印加する電圧を低下させて反転極性トナーの発生を抑制する。しかし、この面積比率が80%未満の場合は、ファーブラシ51a、51bに印加する電圧の絶対値を大きくして静電ファーブラシクリーニング性能を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルトに付着した転写残トナーを静電的にクリーニングする画像形成装置、詳しくは中間調画像の画像形成における静電クリーニング性能の低下を抑制する転写電圧制御に関する。
【背景技術】
【0002】
各色の中間調(ハーフトーン)画像のトナー像を中間転写体へ重ねて転写してフルカラーのトナー像を形成し、転写部で中間転写体から記録材へ転写する画像形成装置が広く用いられている(特許文献1)。転写部の下流側の中間転写体に二段の静電部材を配置して、転写残トナーを中間転写体から二段階に静電的に除去する画像形成装置も実用化されている(特許文献2、3)。
【0003】
特許文献1には、中間転写ベルトに沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部を配置したタンデム型の画像形成装置が示される。ここでは、転写部の下流側で、二段のファーブラシを中間転写ベルトに当接させて、転写残トナーを静電的に回収している。
【0004】
特許文献2には、感光ドラムに二段の帯電ローラを接触させて転写残トナーを静電的に回収する画像形成装置が示される。ここでは、転写部の下流側で感光ドラムに接触する第1帯電ローラに、トナーの帯電極性と同極性の電圧を印加して、感光ドラムに付着した転写残トナーを分散しつつ帯電極性を揃えている。そして、第1帯電ローラの下流側で感光ドラムに接触する第2帯電ローラに、トナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加して、感光ドラムから第2帯電ローラへ効率的に転写残トナーを回収している。
【0005】
特許文献3には、中間転写ベルトから静電的に転写残トナーを回収する静電ファーブラシクリーニング装置の下流側にウエブクリーニング装置を配置した画像形成装置が示される。ウエブクリーニング装置は、ウエブ状の繊維材料を接触させて中間転写ベルトから転写残トナーを拭き取って除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−207403号公報
【特許文献2】特開平07−306617号公報
【特許文献3】特開平10−149033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される静電ファーブラシクリーニング装置でも、特許文献2と同様に、上流側のファーブラシにはトナーの帯電極性と同極性の電圧が印加され、下流側のファーブラシにはトナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加される。上流側のファーブラシは、中間転写ベルト上の通常極性に帯電したトナーを分散させつつ、逆極性に帯電したトナーを静電的に回収する。また、下流側のファーブラシは、上流側のファーブラシを通過した通常極性のトナーに加えて、上流側のファーブラシに接触して通常極性に帯電したトナーも静電的に回収する。
【0008】
しかし、中間転写ベルトを二段の静電ファーブラシクリーニング装置でクリーニングする場合、低濃度の中間調(ハーフトーン)画像の比率が高い画像形成を行うと、クリーニング効率が顕著に低下することが判明した。画像1枚当たりのトナー載り量が多い二次色、三次色のフルカラー画像よりも、むしろ、はるかにトナー載り量が少ない単色低濃度の中間調画像のほうが、静電ファーブラシクリーニング装置をすり抜けるトナーが増えることが判明した。
【0009】
その結果、中間転写ベルトに付着して連れ回る転写残トナーが増えて、画像の白地部に不必要なトナーが転写される「かぶり画像不良」が発生し易くなった。また、静電ファーブラシクリーニング装置の下流側にウエブクリーニング装置を配置している場合、ウエブクリーニング装置のウエブが汚れ易くなり、時間当たりのウエブ消費量が増えて、クリーニングコストの上昇を引き起す結果となった。
【0010】
本発明は、単色低濃度中間調画像の面積比率が高い画像形成でも、二段の静電クリーニングを効率的に実行して、中間転写体に連れ回るトナーを少なくできる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置は、中間転写体と、各色の中間調画像のトナー像を前記中間転写体へ重ねて転写可能なトナー像形成手段と、記録材を挟持する転写部に電圧を印加して前記中間転写体から記録材へトナー像を転写させる転写手段と、前記転写部の下流側で前記中間転写体に接触する第1静電部材に、トナーの帯電極性と同極性の電圧を印加して、前記中間転写体上の転写残トナーを分散しつつ、通過する転写残トナーの帯電極性を揃えることが可能な第1静電処理手段と、前記第1静電部材の下流側で前記中間転写体に接触する第2静電部材に、トナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加して、前記中間転写体上の転写残トナーを回収する第2静電処理手段とを備えたものである。そして、各色合計のトナー載り量が所定水準未満となる画像形成では、各色合計のトナー載り量が所定水準以上となる画像形成よりも前記転写部に印加する電圧の絶対値を下げるように前記転写手段を制御する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像形成装置では、転写されるトナーの面積密度が小さい中間調画像の場合には、転写部へ印加する電圧を低下させて転写電流を少なくする。このため、転写の際にトナーに過剰な電荷が注入されて発生する反転極性トナーの発生が抑制されて、反転極性トナーが記録材から中間転写体へ引き戻されて発生する反転極性トナーが少なくなる。反転極性トナーが少なくなると、第1静電部材による捕捉や正規極性への帯電を免れて中間転写体を連れ回る転写残トナーが少なくなる。
【0013】
したがって、単色で低濃度の中間調画像の面積比率が高い画像形成でも、二段の静電クリーニングを効率的に実行して、中間転写ベルトに連れ回るトナーを少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置の全体構成の説明図である。
【図2】中間転写ベルトのクリーニング構成の説明図である。
【図3】第2クリーニング装置の動作の説明図である。
【図4】画像形成装置の二次転写電圧の制御系のブロック図である。
【図5】実施例1のクリーニング制御のフローチャートである。
【図6】通常の画像形成におけるクリーニング制御のタイムチャートである。
【図7】中間調画像が80%以上の場合のクリーニング制御のタイムチャートである。
【図8】中間調画像が80%未満の場合のクリーニング制御のタイムチャートである。
【図9】実施例1における転写残トナー削減効果の説明図である。
【図10】実施例2における中間転写ベルトのクリーニング構成の説明図である。
【図11】実施例2のクリーニング制御のフローチャートである。
【図12】中間調画像が80%以上の場合のクリーニング制御のタイムチャートである。
【図13】実施例2における転写残トナー削減効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、転写部における反転極性トナーの発生量を制御して静電クリーニング性能を維持する限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0016】
従って、中間転写体を静電クリーニングする画像形成装置であれば、像担持体の帯電方式、静電像の形成方式、現像剤及び現像方式、一次転写方式、タンデム型/1ドラム型の区別無く実施できる。
【0017】
本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途の画像形成装置で実施できる。
【0018】
なお、特許文献1、2、3に示される画像形成装置、クリーニング装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0019】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の全体構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置1は、中間転写ベルト16に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部10a、10b、10c、10dを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0020】
画像形成部10aでは、感光ドラム11aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト16に転写される。画像形成部10bでは、感光ドラム11bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト16に転写される。画像形成部10c、10dでは、それぞれ感光ドラム11c、11dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト16に転写される。中間転写ベルト16に転写された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ二次転写される。
【0021】
給送ユニット30に収納された記録材Pは、リフタ板31により所定の給送位置に保持され、エア搬送方式を採用した給送分離ユニット32により一枚ずつ給送される。記録材Pは、給送搬送ユニット33により搬送され、レジストユニット34によりレジスト調整された後、中間転写ベルト16上のトナー画像と同期されて、二次転写部T2へと搬送される。
【0022】
中間転写ベルト16と記録材Pとを重ね合わせて二次転写部T2により挟持搬送する過程で、二次転写外ローラ35に正極性の電圧が印加されることにより、中間転写ベルト16から記録材Pへトナー像が二次転写される。トナー像が二次転写された記録材Pは、定着前搬送ユニット36によって定着ユニット37へと搬送され、定着ユニット37で加熱加圧を受けてトナー像が記録材Pへ定着される。
【0023】
片面プリント工程の場合、記録材Pは、排出ユニット38によって搬送されて排出トレイ39へ排出される。一方、両面プリント工程の場合、記録材Pは、反転ユニット40へ搬送され、表裏を反転された後、両面搬送ユニット41を経て再び給送搬送ユニット33、レジストユニット34へ搬送される。そして、裏面の画像を転写、定着された後に排出トレイ39へ排出される。
【0024】
トナー像形成手段の一例である画像形成部10a、10b、10c、10dは、現像装置13a、13b、13c、13dで用いるトナーの色が異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部10aについて説明し、画像形成部10b、10c、10dについては、画像形成部10aの構成部材に付した符号末尾のaをb、c、dに読み替えて説明されるものとする。
【0025】
画像形成部10aは、感光ドラム11aの周囲に、コロナ帯電器22a、露光装置12a、現像装置13a、一次転写ローラ15a、ドラムクリーニング装置14aを配置している。
【0026】
像担持体の一例である感光ドラム11aは、アルミニウムシリンダの外周面に負極性の帯電極性を持たせた感光層が形成され、所定のプロセススピードで矢印R1方向に回転する。コロナ帯電器22aは、感光ドラム11aの表面を一様な負極性の暗部電位VDに帯電させる。露光装置12aは、レーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム11aの表面に画像の静電像を書き込む。現像装置13aは、トナーとキャリアを含む現像剤を用いて静電像を現像して感光ドラム11aの表面にトナー像を形成する。
【0027】
一次転写ローラ15aは、中間転写ベルト16の内側面を押圧して、感光ドラム11aと中間転写ベルト16との間に一次転写部を形成する。一次転写ローラ15aに正極性の直流電圧を印加することにより、感光ドラム11aに担持された負極性のトナー像が中間転写ベルト16へ一次転写される。ドラムクリーニング装置14aは、記録材Pへの転写を免れて感光ドラム11aに残った転写残トナーを回収する。
【0028】
中間転写体の一例である中間転写ベルト16は、樹脂製の無端状ベルトを基材とし、その表面を弾性のゴム層で覆ったいわゆる弾性ベルトである。基材の材質には、ポリイミド、PET、PVDF等の樹脂材料が用いられ、弾性層の材質には、シリコンゴム、ウレタンゴム等が用いられる。弾性層は、二次転写部T2において安定した転写ニップを形成して、種々の記録材Pに対して高品位なトナー像の転写を可能にする。
【0029】
中間転写ベルト16は、テンションローラ17、駆動ローラ18、及び二次転写内ローラ19に張架され、テンションローラ17によって所定の張力が与えられる。駆動ローラ18は、不図示の駆動モータによって回転駆動されて中間転写ベルト16を矢印R2方向に回転させる。また、中間転写ベルト16の近傍には、ベルト位置検知用のパッチを読み取るためのトナーパッチ読取センサ20が配設されている。
【0030】
<弾性中間転写ベルト>
近年、静電プロセスを用いる画像形成装置では、多種多様な紙への高画質な画像を求めるニーズから中間転写ベルトが用いられ、トナーの粒子径の縮小や粒子形状の非球形化が進められている。そして、中間転写ベルトとしては、ポリイミド等に代表される樹脂ベルトが高画質、高寿命、高安定的な特性から広く用いられ、中間転写ベルトクリーニング装置としては、クリーニング能力が高いクリーニングブレード方式が広く用いられている。
【0031】
しかし、樹脂ベルトでは、トナーの変化に伴って転写の際に生じる中抜け現象が問題となる。中抜け現象とは、トナー像が転写される際に局所的に大きな圧力が作用してトナー粒子が凝集して中間転写ベルトに付着する現象であって、文字画像やライン画像の中心部で顕著に現れる。樹脂ベルトの場合、転写時のトナー像に作用する圧力が局所的に集中し易いために中抜け現象が発生し易い。
【0032】
そこで、中抜け現象を解消するために、樹脂中間転写ベルトに代わって、表層にゴム弾性層を配置した弾性中間転写ベルトが採用されている。弾性中間転写ベルトは、表層がゴム弾性を呈して柔らかく、トナー像の全体に圧力を分散させて局所的な圧力集中を発生させないから、中抜け現象を効果的に阻止できる。弾性中間転写ベルトは、二次転写部において記録材表面との密着性が良いため、樹脂ベルトよりも転写効率が向上し、厚紙に対する転写性や表面の凹凸が大きい記録材への転写性にも優れている。
【0033】
しかし、弾性中間転写ベルトでは、クリーニングブレード方式のベルトクリーニング装置を採用できない問題がある。弾性中間転写ベルトは、押圧された表層が窪むため、クリーニングブレードのエッジが表層に喰い込んで接触抵抗が大きくなり、クリーニングブレードのエッジの挙動が不安定になって、クリーニング不良が発生し易くなる。クリーニングブレードのめくれ、びびり振動、鳴き等が発生し易くなり、感光ドラム表層の傷発生やトナー融着等も発生し易くなる。
【0034】
このため、弾性中間転写ベルトでは、ベルトクリーニング装置として、接触負荷の少ない静電ファーブラシクリーニング装置やウエブクリーニング装置を採用することが一般的になっている。
【0035】
静電ファーブラシクリーニング装置は、導電性の繊維を芯金に巻き付けたファーブラシを、二次転写部の下流側で弾性中間転写ベルトに当接させる。そして、トナーの帯電極性と逆極性の直流電圧をファーブラシに印加することによって、転写残トナーを静電的にファーブラシに吸着させて中間転写体から除去する。
【0036】
しかし、静電ファーブラシクリーニング方式は、機械的にトナーを除去するクリーニングブレード方式に比べて、クリーニング可能なトナー量及びトナーの帯電極性に制約がある。静電ファーブラシクリーニング方式では、静電的にトナーをファーブラシに吸着させた後、電圧を印加した金属円筒部材等でトナーをファーブラシから更に転移させないと、ファーブラシ本来の効果が得られない。ファーブラシのトナー吸着量が増えてくると、クリーニング性能が低下するため、一般的なクリーニング可能量としては、クリーニングブレード方式よりも劣る。
【0037】
そこで、中間転写ベルトに付着した付着物をクリーニングウエブで拭き取るように除去するウエブクリーニング装置を、ファーブラシクリーニング装置の下流側に配置している。クリーニングウエブを中間転写ベルトに当接させて、ファーブラシだけでは回収しきれないトナーや外添剤等の物質を除去して、トータルのクリーニング性能を改善している。
【0038】
<ベルトクリーニング装置>
図2は中間転写ベルトのクリーニング構成の説明図である。図3は第2クリーニング装置の動作の説明図である。
【0039】
図2に示すように、画像形成装置1では、二段の静電ファーブラシを用いた第1クリーニング装置50と、クリーニングウエブを用いた第2クリーニング装置60を備えている。二次転写後に中間転写ベルト16上に残留したトナー、外添剤等は、静電クリーニング方式の第1クリーニング装置50とクリーニングウエブ方式の第2クリーニング装置60によって除去される。
【0040】
二次転写手段の一例である二次転写外ローラ35は、二次転写内ローラ19によって内側面を支持された中間転写ベルト16に当接して転写部の一例である二次転写部T2を形成する。電源56は、記録材を挟持する二次転写部T2に電圧を印加して中間転写ベルト16から記録材Pへトナー像を転写させる。制御部110は、電流測定部57で検出される転写電流が所定値になるように二次転写部T2に印加する電圧を可変する定電流制御を実行する。
【0041】
第1クリーニング装置50は、上流側の第1静電処理手段と下流側の第2静電処理手段を用いて中間転写ベルト16を静電的にクリーニングする。第1静電処理手段50aは、ファーブラシ51a、対向ローラ21a、バイアスローラ52a、及びクリーニングブレード53aを備えている。第2静電処理手段50bは、ファーブラシ51b、対向ローラ21b、バイアスローラ52b、及びクリーニングブレード53bを備えている。
【0042】
第1静電部材の一例であるファーブラシ51aは、二次転写部T2の下流側で中間転写体の一例である中間転写ベルト16に接触する。第1静電処理手段50aは、ファーブラシ51aにトナーの帯電極性と同極性の電圧を印加して、中間転写体上の転写残トナーを分散しつつ、通過する転写残トナーの帯電極性を揃えることが可能である。第2静電部材の一例であるファーブラシ51bは、ファーブラシ51aの下流側で中間転写ベルト16に接触する。第2静電処理手段50bは、ファーブラシ51bにトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加して、中間転写ベルト16上の転写残トナーを回収する。
【0043】
対向ローラ21a、21bは、中間転写ベルト16の内面側に当接して配置され、接地電位に接続されている。対向ローラ21a、21bと対向する中間転写ベルト16の外面側に、ファーブラシ51a、51bが配置されている。ファーブラシ51a、51bは、金属軸表面に導電性繊維を植設して形成され、導電性繊維の先端が所定の侵入深さで中間転写ベルト16の表面に接触している。ファーブラシ51a、51bは、中間転写ベルト16の進行方向に対してカウンタ方向に回転駆動されるため、中間転写ベルト16を押し戻すように回転して表面を摺擦する。
【0044】
上流側のファーブラシ51aの導電性繊維に金属円柱部材の一例である金属製のバイアスローラ52aが接触して、ファーブラシ51aに対して順方向に回転駆動されている。電源の一例であるバイアス印加電源55aは、バイアスローラ52aに負極性のクリーニングバイアスを印加して、正極性に帯電した転写残トナーを中間転写ベルト16からファーブラシ51aを経由してバイアスローラ52aへ静電的に順次移動させる。バイアスローラ52aの表面に移転したトナーは、クリーニングブレード53aによって掻き落とされる。
【0045】
下流側のファーブラシ51bの導電性繊維に金属円柱部材の一例である金属製のバイアスローラ52bが接触して、ファーブラシ51bに対して順方向に回転駆動されている。電源の一例であるバイアス印加電源55bは、バイアスローラ52bに正極性のクリーニングバイアスを印加して、負極性に帯電した転写残トナーを中間転写ベルト16からファーブラシ51bを経由してバイアスローラ52bへ静電的に順次移動させる。バイアスローラ52bの表面に付着したトナーは、クリーニングブレード53bによって掻き落とされる。
【0046】
バイアスローラ52a、52bには、互いに逆極性の直流電圧が印加される。このため、転写残トナーは、その帯電極性に関わらず、ファーブラシ51a、51bのいずれかに静電吸着されて中間転写ベルト16からクリーニングされる。
【0047】
図3に示すように、ウエブクリーニング手段の一例である第2クリーニング装置60は、中間転写ベルト16にウエブ状の繊維材料を接触させて、中間転写ベルト16からトナーを拭き取る。
【0048】
第2クリーニング装置60は、不織布のクリーニングウエブ61が、取り付けローラ62からウエブローラ63に掛け回され、巻き取りローラ64へと架張されている。クリーニングウエブ61は、駆動ローラ18によって内側面を支持された中間転写ベルト16の外側面に当接して、中間転写ベルト16の表面を摺擦することによって転写残トナーをクリーニングする。巻き取りローラ64は、駆動モータ68により回転駆動され、クリーニングウエブ61が巻き取られることにより、中間転写ベルト16との当接部に新しいクリーニングウエブ61が順次供給される。
【0049】
クリーニングウエブ61の素材としては、ポリエステル、アクリル、ビニロン、水溶性ビニロン、レーヨン、ナイロン、ポリプロピレン、コットン等から選ばれる1種類或は2種類以上を使用できる。但し、上記材料に限定されるものではない。
【0050】
第2クリーニング装置60は、回動中心軸65を中心に回動して中間転写ベルト16から接離可能に支持されている。第2クリーニング装置60は、モータアクチュエータ66に駆動されて、回動中心軸65を中心にして回動可能に構成されている。モータアクチュエータ66によって第2クリーニング装置60全体が回動されることにより、クリーニングウエブ61は、中間転写ベルト16に対して図2に示す当接状態と図3に示す離間状態とを設定される。これは、記録材Pのジャム発生時に、中間転写ベルト16に載って未転写で高濃度のトナーが供給された場合に、クリーニングウエブ61へ多量のトナーが取り込まれないようにするためである。
【0051】
なお、モータアクチュエータ66は、ソレノイド、カム等に置き換えてもよく、中間転写ベルト16に対して離接する構成は、回動ではなく平行移動により離接する構成としてもよい。
【0052】
ところで、現像剤の劣化状態や、設置環境の温度湿度に応じて現像剤の帯電性能が低下すると、中間転写ベルト上の転写残トナーに反転極性トナーが増えてくる。現像剤の帯電性能が低下した状態で、単色で低濃度の中間調画像が画像形成されると、中間転写ベルト上の転写残トナーに反転極性トナーがさらに増えてくる。
【0053】
そして、中間転写ベルト上の反転極性トナーが限界量を越えると、二段の静電ファーブラシクリーニング装置をすり抜けて、中間転写ベルトに連れ回って、次回のフルカラー画像に混合して色ムラを引き起こしてしまう。
【0054】
中間転写ベルト16から記録材Pへトナー像を二次転写する場合、各色のトナー像が十分にトナーを載せた状態を想定して転写電流が設定されている。二次転写部では、複数色のトナー像がそれぞれ十分にトナーを載せた状態で、記録材に転写効率高く転写できるように、二次転写電流が多めに設定されている。
【0055】
しかし、フルカラー画像の中には、単色で低濃度の中間調画像も存在する。この場合、中〜高濃度階調の複数色のトナー像に合わせて設定した転写電流は、二次転写部で実際に転写されるトナー量に比べて相当過剰になり、トナーへ電荷注入が過剰に行われてしまう。単色の中間調画像の露光を行う画像信号が存在する画像形成の場合、十分なトナー量を想定して設定された転写電流に見合っただけのトナー量が転写されない。
【0056】
表1は同一の転写電流設定でトナー載り量M/Sが1.63[mg/cm]と0.45[mg/cm]のトナー像を二次転写した際の各部におけるトナー帯電量Q/M[μC/g]の測定結果である。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示すように、トナー載り量が1.63と0.45の場合、現像スリーブSlv、感光ドラムDrで採取したトナーのトナー帯電量Q/M[μC/g]は等しいが、二次転写後のトナー帯電量Q/M[μC/g]は大きく異なっている。トナー載り量が0.45の場合、トナー載り量が1.63を想定した二次転写電流では過剰となり、二次転写部T2をトナーが通過すると、トナー帯電量Q/Mが逆極性のプラス側に高くなる。
【0059】
このため、中間転写体上のトナー密度に比較した二次転写電流の過剰が発生する。通常設定の二次転写電流のままでは、単色の中間調画像に対しては二次転写電流が過剰となって、二次転写部T2でいわゆる強抜けが発生し、中間転写ベルト16上に反転極性トナーが多くなる。二次転写時に大量の反転極性トナーが発生して、記録材Pから中間転写ベルト16に引き戻されて連れ回ってしまう。
【0060】
ここで、ファーブラシ51a、51bに極性の異なる直流電圧を印加しているため、中間転写ベルト16上の転写残トナーがプラス/マイナスどちらであっても、転写残トナーを吸着して除去できるはずである。
【0061】
しかし、反転極性トナーは、同極性のプラス電圧が印加されるファーブラシ51bでは捕捉されないので、上流側のファーブラシ51aで回収されるか、正規極性に帯電されるかしないと、中間転写ベルト16に連れ回ってしまう。二次転写部T2で反転極性トナーが重なり状態で発生すると、ファーブラシ51aの先端の電圧が低下して反転極性トナーを引き付ける余地がなくなり、下流側のファーブラシ51bへ漏れ出してしまう。上流側のファーブラシ51aで十分にクリーニングできずに、反転極性トナーのすり抜けが起ってしまう。
【0062】
すると、下流側のファーブラシ51bは反転極性トナーを回収できないため、反転極性トナーはファーブラシ51bを素通りして中間転写ベルト16に連れ回る。分散不十分なためにファーブラシ51aを通過した反転極性トナーは、プラス電圧が印加された下流側のファーブラシ51bを100%通過してしまう。
【0063】
その結果、第2クリーニング装置60のクリーニングウエブ61に転写残トナーが大量に流れ込んで滞留し、クリーニングウエブ61がトナーで目詰まり状態となって、ついには下流へトナーを吐き出すようになる。クリーニングウエブ61がトナー保持能力の限界を超えると、転写残トナーがクリーニングウエブ61をすり抜けて、感光ドラム11aの一次転写部へ到達する。転写残トナーが感光ドラム11aから中間転写ベルト16へ一次転写されるイエロートナー像に一気に混ざり込んで、中間転写ベルト16上のトナー像に色ムラが生じて出力画像の品質が大幅に低下する。
【0064】
そこで、ファーブラシ51aに印加するマイナス電圧の絶対値を大きくして、反転極性トナーに対するクリーニング性能を高めることが提案された。しかし、印加する電圧の絶対値を大きくすると、ファーブラシ51aに常時流れる電流が大きくなって、ファーブラシの抵抗上昇速度が早まり、早期にファーブラシ51aのクリーニング性が低下してしまう。ファーブラシ51aが短寿命化すると、想定寿命に達する以前に、クリーニング不良が頻発し始める懸念がある。このため、ファーブラシ51aに印加する高圧を高くする時間はできるだけ少なくして、抵抗上昇を妨げ、長寿命化を実現することが望ましい。
【0065】
そこで、以下の実施例では、各色の画像形成部で露光を行う画像信号から記録材上のトナー密度のパラメータを演算し、トナー密度の低い画像形成では二次転写電流を通常よりも少なく設定している。二次転写部T2で強抜け転写不良が発生することを回避して、中間転写ベルト16上の反転極性トナーを減らしている。
【0066】
<実施例1>
図4は画像形成装置の二次転写電圧の制御系のブロック図である。図5は実施例1のクリーニング制御のフローチャートである。図6は通常の画像形成におけるクリーニング制御のタイムチャートである。図7は中間調画像が80%以上の場合のクリーニング制御のタイムチャートである。図8は中間調画像が80%未満の場合のクリーニング制御のタイムチャートである。図9は実施例1における転写残トナー削減効果の説明図である。
【0067】
図1に示すように、トナー像形成手段の一例である画像形成部10a、10b、10c、10dは、各色の中間調画像のトナー像を中間転写ベルト16へ重ねて転写可能である。
【0068】
図2に示すように、制御手段の一例である制御部110は、各色合計のトナー載り量が所定水準未満となる画像形成では、各色合計のトナー載り量が所定水準以上となる画像形成よりも二次転写部T2に印加する電圧の絶対値を下げる。制御部110は、単色で所定階調未満の画像形成では、複数色を重ねる画像形成よりも二次転写部T2に印加する電圧を下げる。制御部110は、各色合計のトナー載り量が所定水準未満となる面積が所定比率未満の画像形成では、当該面積が所定比率以上の画像形成よりもファーブラシ51a及びファーブラシ51bに印加する電圧の絶対値を大きくする。
【0069】
図4に示すように、制御部110は、中間調画像のトナー載り量M/Sが所定水準未満の場合には、中間調画像のトナー載り量が所定水準以上の場合よりも二次転写部T2に印加する電圧を下げる。具体的には、それぞれ網点化されたハーフトーン画像で構成される複数色の画像信号の合計階調が所定水準未満の場合には、前記合計階調が所定水準以上の場合よりも二次転写部T2に印加する電圧を下げる。
【0070】
制御部110は、各色の合計階調が所定水準未満の画像領域が画像全体に占める比率が所定水準未満の場合には、ファーブラシ51a及びファーブラシ51bに印加する電圧の絶対値を大きくする。具体的には、画像形成ジョブとして送信されてくる画像データに基づいて、画像形成部10a、10b、10c、10dに供給する各色の露光用の画像データを形成する。そして、画像データから中間調画像を抽出して、各色の重なりの合計階調を求める。そして、各色の合計階調が後述する中間調レベル未満となる画像領域が画像全体に占める面積比率を求める。
【0071】
実施例1では、クリーニング制御を切り替えるための面積比率の閾値を、作像領域面積全体の80%としている。制御部110は、所定階調(128/255)以下の中間調画像が画像全体に占める面積比率が80%を、クリーニング制御の閾値に定めている。
【0072】
そして、所定階調以下の中間調画像がそれ以上に含まれる画像形成では、二次転写部T2に印加する電圧を低下させて、反転極性トナーの発生阻止を優先させる。しかし、所定階調以下の中間調画像が80%未満であれば、二次転写部T2に印加する電圧は通常設定として、ファーブラシ51a、51bに印加する電圧の絶対値を大きくして、クリーニング性能を高める。一方、所定階調以下の中間調画像が存在しない場合は、極性反転トナーの発生の抑制もクリーニング性能を高めることも行わず、通常設定の制御を適用する。
【0073】
図4を参照して図5に示すように、制御部110は、外部から画像形成データを受信すると、画像形成部10a、10b、10c、10dを起動して、画像形成の準備を開始する(S10)。制御部110は、各色の画像信号を検知して、所定階調以下の中間調画像が画像全体に占める比率を計算する(S11)。
【0074】
制御部110は、画像信号が単色で後述する中間調レベル(中間調画像が所定濃度)の画像が有るか否かを判断する(S13)。制御部110は、中間調レベルの画像が無い場合(S13のN)、通常のクリーニング制御を実行する。
【0075】
図6に示すように、通常の画像形成時は、二次転写部T2へ印加される定電流Cとファーブラシ51a、51bへ印加される定電圧A、Bが通常設定で制御される。中間転写ベルト16への各色トナー像の転写が終了し、記録材Pが二次転写部T2へ到達した後に、定電流Cが印加される。続いて、上流側のファーブラシ51aに定電圧Aを印加し、さらに下流側のファーブラシ51bに定電圧Bを印加する。そして、記録材Pが二次転写部T2を通過した後に、同様の順序で定電流C、定電圧A、Bをオフしている。
【0076】
制御部110は、中間調レベルの画像が有る場合(S13のY)、中間調レベルの領域が画像面積の80%以上か否かを判断する(S14)。制御部110は、中間調レベルの領域が画像面積の80%以上の場合(S14のY)、二次転写部T2に印加する定電流を低下させてクリーニング性能を高める(S15)。
【0077】
図7に示すように、低濃度の中間調画像が画像全体の大部分を占める場合、定電流Cと定電圧A、Bの制御タイミングは図6の通常の画像形成時と同一である。しかし、定電流Cを通常の画像形成時よりも低く設定して、二次転写時にトナー帯電量Q/Mが逆極性側に変わるのを防ぎ、二次転写部T2での強抜け転写不良を抑制している。これにより、中間転写ベルト16上の反転極性トナーを減らして、転写残トナーがファーブラシ51a、51bをすり抜けにくくしている。
【0078】
制御部110は、中間調レベルの領域が画像面積の80%未満の場合(S14のN)、ファーブラシ51a、51bに印加する定電圧を高めてクリーニング性能を高める(S16)。
【0079】
図8に示すように、低濃度の中間調画像が画像全体に占める割合がそれほど多くない場合、定電流Cと定電圧A、Bの制御タイミングは図6の通常の画像形成時と同一である。しかし、定電流Cは通常の画像形成時と等しく設定して、その代わりにファーブラシ51a、51bに印加する電圧の絶対値を大きく設定する。
【0080】
すなわち、各色で形成される画像に低濃度階調の中間調画像がごく少ない場合、定電流Cを低下させると、画像の濃度階調が高い部分では、逆にいわゆる弱抜け転写不良が深刻になる。転写すべきトナー量に比較して転写電流が不足する結果、中間転写ベルト16に正規極性のトナーが大量に残って記録材に転写された画像の画像濃度薄が発生する。
【0081】
そこで、二次転写部T2へ印加される定電流Cは通常の画像形成時と等しくして、画像の濃度階調が高い部分の転写効率を優先している。その代わり、低濃度の中間調画像の部分では、いわゆる強抜け転写不良が発生して中間転写ベルト16上の反転極性トナーが増えるため、ファーブラシ51a、51bのクリーニング性能を高めて対処している。ファーブラシ51a、51bに印加する定電圧を高めることは、ファーブラシ51a、51bの寿命にとってマイナスであるが、中間転写ベルト16上の反転極性トナーを確実にクリーニングすることを優先する。これにより、中間転写ベルト16上のトナー像に転写残トナーが混入して画像品質が低下する事態が回避される。
【0082】
言い換えれば、複数色のトナー像が記録材Pに二次転写される場合、転写されるトナー量が多いため、転写時にトナーに流れる電流が不足がちになり、反転極性トナーは発生しにくい。このため、記録材Pから中間転写ベルト16へ引き戻される反転極性トナーがそもそも少なく、上流側のファーブラシ51aを通過する反転極性トナーはほとんど発生しない。
【0083】
このとき、二次転写時にトナーに流れる電流が不足して発生する正規極性の転写残トナー(いわゆる弱抜けトナー)は多くなる。しかし、上流側のファーブラシ51aを通過する際に正規極性の転写残トナーは中間転写ベルト16の表面に掻き散らされるため、下流側のファーブラシ51bで確実に回収できる。このため、複数色のトナー像が記録材Pに二次転写される場合、単色のハーフトーンのトナー像の場合よりも二次転写部へ流れる電流を多くすることで、反転極性トナーを増やすことなく、正規極性の転写残トナーを減らすことができる。
【0084】
次の画像形成がある場合(S19のY)、次の画像の画像信号を検知し(S11)、次の画像形成がない場合(S19のN)、画像形成を終了する(S19)。
【0085】
表2は実施例1における定電流C及び定電圧A、Bの設定値である。これまで述べた実施例1の制御方法の具体的な設定値例を示す。ここでは、使用環境が25℃/50%RHでの事例を提示しているが、使用環境によって設定値は自由に変更できる。
【0086】
【表2】

【0087】
次に、実施例1で用いている画像の中間調レベルついて説明する。中間調レベルは、最上流の画像形成部10aで形成されるイエロー画像に画像不良が発生する最下流の画像形成部10dのブラック画像の濃度階調で定義した。
【0088】
【表3】

【0089】
表3に示すように、ブラック画像の画像信号を0〜255の範囲で可変させた。そして、二次転写部T2に通常設定の定電流を設定し、ファーブラシ51a、51bに通常設定の定電圧を印加した状態で、イエロー画像の画像不良の有無を確認した。
【0090】
その結果、ブラック画像の反射濃度が1.0を下回った場合に、ブラックトナーの混入によるイエロー画像の画像不良が発生していることが分かった。反射濃度1.0を画像信号レベルに対応させると、128/255となり、この値以下の画像信号レベルを実施例1では中間調レベルとして定義した。
【0091】
なお、ブラック以外のマゼンタ、シアンについても単色の中間調画像が存在する場合に、画像の画像信号レベルが128/255以下であれば、同様に次回のイエロー画像に画像不良が発生する。
【0092】
また、複数色の組み合わせによる中間調画像が存在する場合でも、画像の合計の画像信号レベルが128/255以下であれば、同様に次回のイエロー画像に画像不良が発生する。
【0093】
いずれの場合においても、各色合計の画像信号レベルが128/255以下の場合には、中間転写ベルト16上のトナー密度が転写電流に比較して低すぎるため、反転極性トナーの発生が過剰になるからである。反転極性トナーが過剰になると、ファーブラシ51a、51bのクリーニング性能が低下して、中間転写ベルト16に連れ回るかぶりトナーが増えて最上流の画像形成部10aで混色を生じるからである。
【0094】
そこで、実施例1では、中間調画像のトータルの画像信号レベルが128/255以下の場合を中間調レベルとして定義し、クリーニング性能を高める制御を実施する。上述したように、画像信号レベルが128/255以下の中間調画像が画像の80%以上であれば、二次転写部T2に印加する定電流Cを下げて反転極性トナーの発生を抑制する。そして、画像信号レベルが128/255以下の中間調画像が画像の80%未満であれば、ファーブラシ51a、51bに印加する定電圧の絶対値を高めて静電クリーニングの能力を高めている。
【0095】
次に、実施例1のクリーニング制御の効果を確認した実験結果について説明する。実験の方法は、第1クリーニング装置50通過後の中間転写ベルト16に粘着テープを貼り付けて剥離することでトナーを回収し、トナーが付着した粘着テープの反射濃度を測定して中間転写ベルト16のトナーかぶり量を数値化した。
(1)画像形成装置1(実際の製品)を使用して、二次転写部T2に通常設定の定電流Cを印加した場合と、実施例1のクリーニング制御を行った場合とで中間転写ベルト16のトナーかぶり量を比較した。
(2)画像形成部10dの画像信号を可変させて中間転写ベルト16のトナーかぶり量を測定することにより、画像形成部10dの画像信号の階調と第1クリーニング装置50のクリーニング性能の関係を測定した。
(3)二次転写部T2に印加する定電流C、またはファーブラシ51a、51bに印加する定電圧A、Bを可変した状態で、画像形成部10dの画像信号の階調と第1クリーニング装置50のクリーニング性能の関係を測定した。
【0096】
図9の(a)に示すように、中間調レベルの画像信号が作像領域面積全体の80%以上存在する場合、通常の定電流Cが設定されると、実線で示すように画像信号が128/255以下になると急激に二次転写残トナー量が増加する。そこで、画像信号が128/255以下になった場合には、二次転写部T2に印加する定電流Cを可変することで、破線で示すように二次転写残トナー量の増加を抑制する。これは、二次転写部T2に流れる転写電流を減らすことで、二次転写後のトナー帯電量Q/Mが逆極性側に変わるのを防ぎ、強抜け転写不良を抑制して反転極性トナーの発生を抑制できたからである。
【0097】
図9の(b)に示すように、中間調レベルの画像信号が作像領域面積全体の80%未満存在する場合、通常の定電圧A、Bが設定されると、実線で示すように画像信号が128/255以下になると急激に二次転写残トナー量が増加する。そこで、画像信号が128/255以下になった場合には、ファーブラシ51a、51bに印加する定電圧A、Bの絶対値を大きくすることで、増加した反転極性トナーの量を画像不良が発生しないレベルまで除去可能になった。
【0098】
これらの結果より、実施例1のクリーニング制御を用いることで、転写残トナーの極性や中間転写ベルト16上の付着量をコントロールすることが可能になった。ファーブラシ51a、51bのトナーすり抜けを抑制して、最上流の画像形成部10aで形成されるイエロー画像の画像不良を防ぐ効果が得られた。
【0099】
<実施例2>
図10は実施例2における中間転写ベルトのクリーニング構成の説明図である。図11は実施例2のクリーニング制御のフローチャートである。図12は中間調画像が80%以上の場合のクリーニング制御のタイムチャートである。図13は実施例2における転写残トナー削減効果の説明図である。
【0100】
図10に示すように、実施例2では、図2のクリーニング構成から第2クリーニング装置60を外して、クリーニングウエブ61を無くしているが、それ以外は実施例1と同様である。
【0101】
クリーニングウエブ61が無い構成では、最上流の画像形成部10aへ転写残トナーがすり抜け易くなっているため、第1クリーニング装置50のクリーニング能力を上げる必要がある。そこで、実施例2では、最も多く反転極性トナーが発生して中間転写ベルト16に連れ回る「中間調レベルの画像信号が80%以上存在する場合」に、実施例1よりも第1クリーニング装置50のクリーニング能力を上げている。
【0102】
図4を参照して図11に示すように、S10からS16、S19、S20の制御は実施例1と同様である。制御部110は、中間調レベルの画像が有る場合(S13のY)、中間調レベルの領域が画像面積の80%以上か否かを判断する(S14)。制御部110は、中間調レベルの領域が画像面積の80%未満の場合(S14のN)、実施例1と同様に、ファーブラシ51a、51bに印加する定電圧を高めてクリーニング性能を高める(S16)。
【0103】
これに対して、中間調レベルの領域が画像面積の80%以上の場合(S14のY)、制御部110は、二次転写部T2に印加する定電流Cを低下させて反転極性トナーの発生を抑制する(S15)。加えて、ファーブラシ51a、51bに印加する定電圧を高めて中間転写ベルト16のクリーニング性能を高める(S17)。
【0104】
図12に示すように、二次転写部T2における反転極性トナーの発生量を低減させると同時にファーブラシ51a、51bによる中間転写ベルト16のクリーニング性能を高めている。すなわち、単色の中間調画像が画像全体の大部分を占める場合、定電流Cを通常設定よりも低くして、二次転写時にトナー帯電量Q/Mが逆極性側に変わるのを防ぐ。これにより、二次転写部T2でのいわゆる強抜け転写不良が抑制されて、中間転写ベルト16上の反転極性トナーを減らすことができる。同時にファーブラシ51a、51bに印加する定電圧の絶対値を大きくして第1クリーニング装置50による反転極性トナーのクリーニング性能を向上させるため、転写残トナーがファーブラシ51a、51bをすり抜けにくくなる。
【0105】
表4は実施例2における定電流C及び定電圧A、Bの設定値である。これまで述べた実施例2の制御方法の具体的な設定値例を示す。ここでは、使用環境が25℃/50%RHでの事例を提示しているが、使用環境によって設定値は自由に変更できる。
【0106】
【表4】

【0107】
実施例2のクリーニング制御を用いて、実施例1と同様にその効果を確認する実験を行った。図13に示すように、中間調レベルの画像信号が作像領域面積全体の80%以上存在する場合に、二次転写部T2に印加する定電流Cとファーブラシ51a、51bに印加する定電圧A、Bを変更した。これにより、実施例1のクリーニング制御よりも中間転写ベルト16のかぶりトナーを少なくすることが可能になり、クリーニングウエブ61が無い構成であっても、十分に画像不良を防ぐ効果が得られた。
【0108】
図13に示すように、クリーニングウエブ61が無い実施例2の構成では、ファーブラシ51a、51bをすり抜ける転写残トナーがイエロー画像の画像不良とならない範囲は実施例1よりも狭くなるが、十分に画像不良を防ぐ効果が得られる。
【0109】
このように、各色の感光ドラムへ形成される画像信号に単色で中間調レベルの信号が存在する場合、二次転写部T2へ印加する電圧を下げることで、次回の画像形成工程に転写残トナーが移動する画像欠陥を防ぎ、高画質化を達成できる。
【0110】
多色形成の可能な画像形成装置1において、各色で形成される画像信号に単色で中間調レベルの信号が存在する場合、クリーニングバイアスや二次転写バイアスの設定を可変する。これにより、次回の画像形成工程に転写残トナーが移動するのを防ぎ、それによる画像不良を防ぐことが可能になる。
【0111】
<実施例3>
以上の実施例では、中間調画像のトータルの画像信号レベルを計算して、画像信号レベルが128/255以下の場合を、クリーニング制御が必要な中間調レベルであると定義した。しかし、グレースケール等のような単色の中間調画像の場合には、一律にトナー密度の少ない画像形成とみなして、フルカラー画像形成時よりも二次転写部T2に印加する電圧を低下させる制御としてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 画像形成装置
10a、10b、10c、10d 画像形成部
11a、11b、11c、11d 感光ドラム
12a、12b、12c、12d 露光装置
13a、13b、13c、13d 現像装置
14a、14b、14c、14d ドラムクリーニング装置
15a、15b、15c、15d 一次転写ローラ
16 中間転写ベルト、17 テンションローラ、18 駆動ローラ
19 二次転写内ローラ、35 二次転写外ローラ
50 第1クリーニング装置、51a、51b ファーブラシ
52a、52b バイアスローラ、53a、53b クリーニングブレード
55a、55b バイアス印加電源
60 第2クリーニング装置、61 クリーニングウエブ
62 取り付けローラ、63 ウエブローラ、64 巻き取りローラ
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体と、
各色の中間調画像のトナー像を前記中間転写体へ重ねて転写可能なトナー像形成手段と、
記録材を挟持する転写部に電圧を印加して前記中間転写体から記録材へトナー像を転写させる転写手段と、
前記転写部の下流側で前記中間転写体に接触する第1静電部材に、トナーの帯電極性と同極性の電圧を印加して、前記中間転写体上の転写残トナーを分散しつつ、通過する転写残トナーの帯電極性を揃えることが可能な第1静電処理手段と、
前記第1静電部材の下流側で前記中間転写体に接触する第2静電部材に、トナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加して、前記中間転写体上の転写残トナーを回収する第2静電処理手段と、を備えた画像形成装置において、
各色合計のトナー載り量が所定水準未満となる画像形成では、各色合計のトナー載り量が所定水準以上となる画像形成よりも前記転写部に印加する電圧の絶対値を下げるように前記転写手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、単色で所定階調未満の画像形成では、複数色を重ねる画像形成よりも前記転写部に印加する電圧を下げるように前記転写手段を制御することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、各色合計のトナー載り量が所定水準未満となる面積が所定比率未満の画像形成では、前記面積が所定比率以上の画像形成よりも前記第1静電部材及び前記第2静電部材に印加する電圧の絶対値を大きくすることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1静電処理手段の下流側で、前記中間転写体にウエブ状の繊維材料を接触させて、前記中間転写体からトナーを拭き取るウエブクリーニング手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1静電処理手段は、回転駆動されて前記中間転写体に当接するファーブラシと、回転駆動されて前記ファーブラシに当接する金属円柱部材と、前記ファーブラシに当接してトナーを掻き落とすクリーニングブレードと、前記金属円柱部材に電圧を印加する電源と、を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−248128(P2011−248128A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121827(P2010−121827)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】