説明

画像形成装置

【課題】転写部のニップ部において用紙が滑ることなく、画像形成(定着)中に定着装置の揺動を行う。
【解決手段】トナー像を形成する画像形成部と、画像形成部で形成されたトナー像を、用紙をニップしながら該用紙に転写する転写部と、転写部から搬送される用紙を加熱部材と加圧部材によりニップしながら用紙にトナー像を定着させる定着部と、を備える。さらに、定着部において用紙がニップされている時、その定着部を、用紙の搬送方向と直交する方向に揺動させる揺動部と、所定の画像形成条件に基づいて、揺動部による定着部の揺動速度を決定する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置を備える画像形成装置に関し、特に定着装置を揺動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、画像形成装置は、まず感光体を帯電させると共に原稿画像データに合わせ電荷を消去して静電潜像を形成し、この感光体上の静電潜像にトナーを付着させる。次に、感光体に付着したトナーを転写部において用紙に転写して、トナー像を形成する。この形成されたトナー像を用紙(記録紙)に定着させるために定着装置が用いられる。
【0003】
また、カラー画像を形成する場合であれば、例えば原稿画像データの原稿色に合わせ各色の感光体、例えばY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),Bk(ブラック)の感光体にトナーを付着させる。次に、各色の感光体に付着したトナーを、中間転写ベルトに一次転写した後、転写部(2次転写部)において用紙上に二次転写して、トナー像を形成する。この形成されたトナー像を用紙に定着させるために定着装置が用いられる。
【0004】
定着装置として、例えばハロゲンヒータ等の加熱手段を内蔵した加圧ローラと加熱ローラとに張架されて循環駆動される無端状の耐熱ベルト(定着ベルト)と、耐熱ベルトを介して加圧ローラを加圧する外部加圧ローラを有するベルト定着方式がある。ベルト定着方式では、耐熱ベルトと外部加圧ローラとによって形成されたニップ部で、トナー像が転写された用紙を挟持して搬送しながら、加熱及び加圧するようにしている。このようなベルト定着方式の定着装置は、耐熱ベルトの熱容量が小さいので、ウオーミングアップタイムを短縮し、省エネルギーに繋がるという利点を有している。
【0005】
ところで、定着装置に用いられる耐熱ベルトは、多数の用紙を挟持して搬送するに伴い、その表面の状態(形状)が変化することが知られている。特に、用紙が耐熱ベルトを通過すると、用紙の搬送方向に沿う縁に存在するバリや用紙の厚みによって、耐熱ベルトの表面にいわゆる紙エッジキズが発生する。このため、この紙エッジキズが発生している部分より画像形成範囲の大きな用紙に対して画像形成を行う際に、搬送方向と平行な紙エッジキズが用紙上のトナー像を乱してしまい、定着後の画像にムラが発生する。
【0006】
これを回避するために、定着装置の耐熱ベルトを、用紙などの転写材の搬送方向と交差する用紙幅方向に積極的に移動(以下、「揺動」ともいう)させて、転写材の搬送方向に沿う縁部と耐熱ベルトが接する箇所を一定にさせないようにする技術が提案されている。この耐熱ベルトの揺動は、転写材の所定枚数ごと、又は、耐熱ベルトの所定回転数ごとに行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−259788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されるような定着装置の耐熱ベルトを、用紙の搬送方向と交差する用紙幅方向に積極的に移動させる方法としては、常時揺動と紙間揺動の2つの方法が考えられる。常時揺動は、トナー像を用紙に定着しているとき、同時に定着装置の耐熱ベルトを用紙の搬送方向と交差する方向に移動させる方法である。しかし、常時揺動の場合、耐熱ベルトの移動に伴い、転写部において転写中の用紙が搬送方向と交差する用紙幅方向に引っ張られる。それにより、転写部のニップ部において用紙が搬送方向と交差する用紙幅方向に滑り、各色のトナー像がずれて転写される転写ずれが発生したり、定着後の画像の形状がその対角線の長さ方向で変形する画像ひずみが生じたりすることがある。なお、このような現象の発生は、転写部のニップ部と定着装置のニップ部との間の距離が、搬送方向における用紙の長さより短いことが前提である。
【0009】
一方、紙間揺動は、搬送される用紙と用紙の間で、定着装置の耐熱ベルトを用紙の搬送方向と交差する方向に移動させる方法である。紙間揺動の場合、十分な揺動効果を得るために、大きな紙間距離が必要となるので、画像形成装置としての生産性が落ちてしまう。
【0010】
本発明は、上記の状況を考慮してなされたものであり、画像形成(定着)中に定着装置を揺動させた際、転写部のニップ部において用紙が滑らない画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、トナー像を形成する画像形成部と、画像形成部で形成されたトナー像を、用紙をニップしながら該用紙に転写する転写部と、転写部から搬送される用紙を加熱部材と加圧部材によりニップしながら用紙にトナー像を定着させる定着部と、を備える。さらに、定着部において用紙がニップされている時、その定着部を、用紙の搬送方向と直交する方向に揺動させる揺動部と、所定の画像形成条件に基づいて、揺動部による定着部の揺動速度を決定する制御部と、を備える。
【0012】
本発明の画像形成装置によれば、画像形成環境や用紙に関する情報等、所定の画像形成条件に応じて、定着部の揺動速度が決定される。すなわち、転写部での用紙の滑りやすさを画像形成条件に応じて振り分け、その転写部での用紙の滑りやすさに応じて、制御部が、転写部で用紙の滑りが発生しない適切な揺動速度を決定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、転写部のニップ部において用紙が滑ることなく、画像形成(定着)中に定着装置の揺動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態例における画像形成装置の全体構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態例における2次転写部の要部の構成図である。
【図3】本発明の一実施の形態例における定着装置の要部の構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態例における揺動機構の概略を示す構成図である。
【図5】本発明の一実施の形態例における2次転写部のニップ部、定着装置のニップ部、及び用紙の関係を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態例における画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施の形態例における揺動速度決定処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施の形態例における揺動速度を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための一実施の形態例(以下、「本例」ともいう)について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
[画像形成装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施の形態例における画像形成装置の全体構成図を示す。
画像形成装置1は、電子写真方式により用紙に画像を形成するものであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナーを重ね合わせるタンデム形式のカラー画像形成装置である。この画像形成装置1は、原稿搬送部10と、用紙収納部20と、画像読取部30と、画像形成部40と、中間転写ベルト50と、2次転写部70と、定着装置80と、を有する。
【0017】
原稿搬送部10は、原稿をセットする原稿給紙台11と、複数のローラ12とを有している。原稿搬送部10の原稿給紙台11にセットされた原稿Gは、複数のローラ12によって、画像読取部30の読取位置に1枚ずつ搬送される。画像読取部30は、原稿搬送部10により搬送された原稿G又は原稿台13に載置された原稿の画像を読み取って、画像データを生成する。
【0018】
用紙収納部20は、画像形成装置1本体の下部に配置されており、用紙Sのサイズに応じて複数設けられている。この用紙Sは、給紙部21により給紙されて搬送部23に送られ、搬送部23によって転写位置である2次転写部70に搬送される。また、用紙収納部20の近傍には、手差部22が設けられている。この手差部22からは、OHPシート等の特殊紙が転写位置へ送られる。
【0019】
画像読取部30と用紙収納部20の間には、画像形成部40と中間転写ベルト50が配置されている。画像形成部40は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成するために、4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kを有する。
【0020】
第1の画像形成ユニット40Yは、イエローのトナー像を形成する。第2の画像形成ユニット40Mは、マゼンタのトナー像を形成する。第3の画像形成ユニット40Cは、シアンのトナー像を形成する。第4の画像形成ユニット40Kは、ブラックのトナー像を形成する。これら4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kは、それぞれ同一の構成を有しているため、ここでは第1の画像形成ユニット40Yについて説明する。
【0021】
第1の画像形成ユニット40Yは、像担持体であるドラム状の感光体41と、感光体41の周囲に配置された帯電部42と、露光部43と、現像部44と、クリーニング部45を有している。感光体41は、不図示の駆動モータによって回転する。帯電部42は、感光体41に電荷を与え感光体41の表面を一様に帯電する。露光部43は、原稿Gから読み取られた画像データに基づいて、感光体41の表面に対して露光操作を行い、感光体41上に静電潜像を形成する。
【0022】
第1の画像形成ユニット40Yの現像部44は、感光体41上に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させる。これにより、感光体41の表面には、イエローのトナー像が形成される。感光体41上に付着したトナーは、転写材の一例を示す中間転写ベルト50に転写される。クリーニング部45は、感光体41の表面に残留しているトナーを除去する。なお、第2の画像形成ユニット40Mの現像部44は、感光体41上に形成された静電潜像にマゼンタのトナーを付着させ、第3の画像形成ユニット40Cの現像部44は、感光体41上に形成された静電潜像にシアンのトナーを付着させる。また、第4の画像形成ユニット40Kの現像部44は、感光体41上に形成された静電潜像にブラックのトナーを付着させる。
【0023】
中間転写ベルト50は、無端状に形成されており、不図示の駆動モータで感光体41の回転方向とは逆方向に回転する。中間転写ベルト50における各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kの感光体41と対向する位置には、転写部51が設けられている。この転写部51は、中間転写ベルト50にトナーと反対の極性を印加させることで、感光体41上に形成されたトナー像を中間転写ベルト50に転写させる。
【0024】
そして、中間転写ベルト50を回転させることで、中間転写ベルト50の表面には、4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kで形成されたトナー像が順次転写される。これにより、中間転写ベルト50上には、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー像が重なり合いカラー画像が形成される。
【0025】
中間転写ベルト50の近傍で、かつ搬送部23の下流には、2次転写部70(転写部の一例)が配置されている。2次転写部70は、ローラを用いて、搬送部23によって送られてきた用紙Sを中間転写ベルト50側に押圧し、中間転写ベルト50に形成されているカラー画像を用紙S上に転写する。
【0026】
図2は、2次転写部70の要部の構成図を示している。
2次転写部70では、2次転写ローラ71が中間転写ベルト50を介して対向ローラ72とニップ部N1を形成する。中間転写ベルト50は、対向ローラ72及び複数の搬送ローラ73等に張架されて循環駆動される。また2次転写部70は、ニップ部N1において用紙Sに2次転写ニップ荷重(転写ニップ荷重の一例)を掛けるための機構として、例えば2次転写ローラ71を回転可能に支持する支持部材74と、支持部材74に設けられた支軸76を支点にして回動するアーム部材75を有する。さらに、支持部材74及びアーム部材75の各々に固定された弾性体77(例えばバネ)、支持部材74が支軸76を支点にして回動する際に該支持部材74の動きを規制するガイドピン78、支軸79aを支点にして回転するカム79を有する。
【0027】
これらの部材を有する2次転写部70において、カム79が回転してアーム部材75に当接すると、アーム部材75が支軸76を支点として支持部材74側(矢印方向)に回動して弾性体77を押す。それにより、弾性体77のバネの巻回軸方向に弾性力が発生し、その弾性力によって支持部材74が押される。そして、支持部材74が弾性体77から押されガイドピン78に案内されて移動することにより、支持部材74に固定されている2次転写ローラ71が用紙Sを中間転写ベルト50側に押圧する。
【0028】
用紙Sを中間転写ベルト50側に押圧する際の2次転写ニップ荷重は、アーム部材75に当接するカム79の停止位置を変えることにより変化する。すなわち、ユーザが用紙Sの坪量を設定した際に、その設定値に応じてアーム部材75に当接するカム79の停止位置が変わり、2次転写ニップ荷重が変更される。ここで、用紙Sの坪量の設定は、ユーザが後述する操作表示部等を操作して、用紙収納部20に例えばA4サイズの厚紙をセットしたという情報を入力したり、用紙Sの坪量の値を直接入力したりすることにより行われる。なお、画像形成装置1にセットされた用紙Sの坪量を計測する手段を設け、計測結果をもとに用紙Sの坪量が自動的に設定されるようにしてもよい。
【0029】
本実施の形態例において、一例として坪量136g/m未満の用紙では2次転写ニップ荷重は6kg、坪量136g/m以上の厚紙では2次転写ニップ荷重は3kgである。なお、坪量とは、紙や板紙の基準となる重さを、単位面積である1mあたりの重量で表したものであり、単位はg/m(gsm:gram per square meter)で表される。この坪量は、用紙の厚みに関係してくる。
【0030】
また、2次転写部70に厚紙を通すときには、2次転写ニップ荷重を小さくすることにより、厚紙が2次転写部70に進入した際の中間転写ベルト50に掛かる衝撃を逃がすようにしている。通常、対向ローラ72(中間転写ベルト50)の回転速度と用紙Sの搬送速度は同じである。しかし、中間転写ベルト50に掛かる衝撃が大きいと中間転写ベルト50の挙動が乱れ、転写部51の中間転写ベルト50及び2次転写部70の用紙Sに対する転写処理の際の転写ムラや、感光体41上の露光ムラ等が生じ、結果として各種画像不良が発生する場合がある。これに対し、中間転写ベルト50に掛かる衝撃が小さければ転写ムラや露光ムラ等を低減できる。なお、上述した2次転写部70の構成は一例であって、この例に限られない。
【0031】
図1の説明に戻り、2次転写部70における用紙Sの排出側には、用紙Sに転写されたトナー像を該用紙Sに定着させる定着装置80(定着部の一例)が設けられている。
【0032】
図3に、この定着装置80の要部の構成図を示す。
定着装置80は、加熱部材と加圧部材から構成される。加熱部材は、加熱ローラ82と、加圧ローラ83と、その2つのローラに張架されて循環駆動される無端状の耐熱ベルト81とからなる。加圧部材は、耐熱ベルト81を介して加圧ローラ83を押圧する外部加圧ローラ84からなる。加熱ローラ82は、耐熱ベルト81を加熱する加熱手段としてのハロゲンランプ82Aを内蔵している。さらに外部加圧ローラ84も用紙Sを加熱する加熱手段としてのハロゲンランプ84Aを内蔵している。
【0033】
耐熱ベルト81には、例えば、基体として厚さ70μmのPI(ポリイミド)が用いられる。この基体の外周面を弾性層として厚さ200μmの耐熱性のシリコンゴム(硬度JIS−A30°)で被覆し、さらに厚さ30μmのPFA(パーフルオロアルコキシ)チューブの樹脂層で被覆している。定着装置の詳細な構成については、一例として本出願人の出願に係る特開2008−310224号公報に記載されている。
【0034】
このように構成された定着装置80は、耐熱ベルト81と外部加圧ローラ84との間に形成されたニップ部N2で、搬送ガイド85上を搬送される用紙(記録材)S上のトナー像を加熱及び加圧して定着させる。そして、定着装置80は、定着処理後に搬送ローラ86によって用紙Sを外部へ排出する。なお、定着装置80の構成は一例であって、この例に限られない。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態例に係る画像形成装置1は、上述した定着装置80を、搬送される用紙Sと直交する方向に移動(揺動)させるための揺動機構90(揺動部の一例)を有している。搬送される用紙Sと直交する用紙幅方向とは、搬送される用紙Sの平面と平行かつ用紙Sの搬送方向と垂直な方向である。揺動機構90の詳細については後述する。
【0036】
定着装置80の下流側には、切換ゲート24が配置されている。切換ゲート24は、定着装置80を通過した用紙Sの搬送路を切り替える。すなわち、切換ゲート24は、片面画像形成におけるフェースアップ排紙を行う場合には、用紙Sを直進させ、一対の排紙ローラ25へ排紙する。また、切換ゲート24は、片面画像形成におけるフェースダウン排紙及び両面画像形成を行う場合に、用紙Sの搬送路を切り替えて、用紙Sを下方に案内する。
【0037】
そして、フェースダウン排紙を行う場合は、切換ゲート24によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって進行方向を反対にして上方に搬送する。これにより、表裏反転された用紙Sが一対の排紙ローラ25によって排紙される。一方、両面画像形成を行う場合は、切換ゲート24によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって用紙Sの表裏を反転し、表裏が反転した用紙Sが再給紙路27により再び転写位置へ送られる。
【0038】
この一対の排紙ローラ25の下流側に、用紙Sを折ったり、用紙Sに対してステープル処理等を行ったりする後処理装置を配置してもよい。
【0039】
[揺動機構]
ここで、定着装置80を揺動するための揺動機構90について説明する。
図4は、揺動機構90の概略を示す構成図であり、2次転写部70側から水平方向に見た状態を模式的に表している。揺動機構90は、定着装置80をコロ92A,92Bを介して支持する支持ユニット91と、支軸93aに取り付けられ該支軸93aの回転に従って回転するカム93を備える。
【0040】
支軸93aは、定着装置80と支持ユニット91との間に設けられ、支持ユニット91の主面(上面)に平行であって図1に示した画像形成装置1の左右方向に延在する。カム93は、この延在する支軸93a上の少なくとも2箇所に設けられることが望ましい。定着装置80の下部には、カム93を挟むようにして該カム93と摺接する2つの摺接部94A,94Bが設けられている。この例では、カム93の従節をコロ92A,92Bとしたが、コロの代わりに摺動部材(スライダー)を用いてもよい。
【0041】
支持ユニット91に設けられたカム93の位置によって支軸93aと摺接部94Aとの距離、支軸93aと摺接部94Bとの距離が変化し、支軸93aに対する定着装置80の位置が変化する。すなわち、定着装置80のユニット全体が、カム93の回転駆動に応じて、支持ユニット91に対して搬送される用紙Sの搬送方向と直交する方向(矢印方向)に揺動する。本実施の形態例の定着装置80では、任意の基準位置から例えば図4左方向に6mm、同右方向に6mm移動可能としている。
【0042】
この揺動機構90による定着装置80の揺動動作は、印刷ジョブの実行中に行う。
【0043】
本発明は、発明が解決しようとする課題の欄に記載したように、定着装置80(耐熱ベルト81)を揺動させたときに2次転写部70のニップ部N1において用紙が滑ることのないようにするためのものである。したがって、図5に示すように、2次転写部70のニップ部N1の中心(2次転写ローラ71の略軸中心)と定着装置80のニップ部N2の中心(外部加圧ローラ84の略軸中心)との距離L1が、搬送方向に沿う用紙Sの長さL2より短いことを想定している。
【0044】
そして、定着装置80の揺動の速度(以下、「揺動速度」という)は、画像形成条件、例えば2次転写部70の2次転写ニップ荷重、用紙Sの坪量、用紙Sの表面性(表面の性質)及び画像形成装置1内部の湿度のうちの少なくとも一つの条件に基づいて決定される。この揺動速度の決定処理の詳細は後述する。なお、2次転写部70のニップ部N1の中心と定着装置80のニップ部N2の中心との距離L1が、搬送方向に沿う用紙Sの長さL2より長い場合には、揺動速度は所定の一定値とする。
【0045】
[制御系の構成]
次に、揺動機構90の揺動動作を制御する、本例の画像形成装置1の制御系について説明する。図6は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図を示している。
【0046】
画像形成装置1は、CPU(中央演算処理装置)等が適用される本体制御部101と、本体制御部101が実行するプログラムや設定データ等を記憶するためのROM(Read Only Memory)102と、本体制御部101の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)103を有する。さらに、大容量記憶装置としてのHDD(ハードディスクドライブ)104と、操作表示部105を有する。なお、ROM102としては、一般に電気的に消去可能なプログラマブルROMが用いられる。
【0047】
本体制御部101は、各部の動作を制御する制御部であり、ROM102、RAM103、HDD104及び操作表示部105にそれぞれシステムバス107を介して接続され、画像形成装置1全体を制御する。また、本体制御部101は、画像読取部30、画像処理部106、画像形成部40、給紙部21にシステムバス107を介して接続されている。
【0048】
HDD104は、画像読取部30により読み取って得られた原稿画像の画像データや、出力済みの画像データ等を記憶する装置である。操作表示部105は、液晶表示装置(LCD)等のディスプレイとタッチパネルから構成される。この操作表示部105は、ユーザに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する表示部として機能する。さらに、操作表示部105は、ユーザのタッチ操作による各種の指示(ジョブ情報)、文字、数字などのデータの入力を受け付けて、本体制御部101にこれらのデータを送信する入力部として機能する。
【0049】
画像読取部30は、原稿画像を光学的に読み取って画像データに変換する。例えば、カラー原稿を読み取る場合は、一画素当たりRGB各10ビットの輝度情報をもつ画像データを生成する。
【0050】
画像処理部106は、画像読取部30によって生成された画像データや、図示しないインターフェースを介して外部の情報処理装置であるPC(パーソナルコンピュータ)120から受信した画像データを画像処理する。画像処理部106は、取得した画像データに対してアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、あるいは画像圧縮等の処理を行う。
【0051】
画像形成部40は、画像処理部106によって画像処理された画像データを受け取り、用紙S上に画像を形成する。
【0052】
本例の画像形成装置1は、さらに揺動駆動部108と湿度計109を有する。
揺動駆動部108は、揺動機構90の揺動速度の設定情報を本体制御部101から取得し、取得した揺動速度の設定値に基づいて駆動信号を生成して揺動機構90へ送信する。湿度計109は、画像形成装置1内部の湿度を測定し、測定データを本体制御部101へ出力する。
【0053】
なお、本例では、外部装置としてPC120を用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えばファクシミリ装置等その他各種の装置を用いることもできる。
【0054】
[揺動速度の決定処理]
次に、定着装置80(耐熱ベルト81)の揺動速度の決定処理について説明する。
上述したとおり、本体制御部101は、定着装置80の揺動速度について、画像形成条件、例えば2次転写部70の2次転写ニップ荷重、用紙Sの坪量、用紙Sの表面性(表面の性質)及び画像形成装置1内部の湿度のうちの少なくとも一つの条件に応じて決定する。つまり、画像形成環境や用紙に関する情報に基づいて、定着装置80の揺動速度を決定する。
【0055】
例えば、2次転写部70の2次転写ニップ荷重が大きいときは、用紙Sが中間転写ベルト50と2次転写ローラ71の間に挟まれ、2次転写部70において用紙Sがしっかりニップされる。この場合、中間転写ベルト50及び2次転写ローラ71と用紙Sの間に作用する摩擦力が大きい。そのため、定着装置80(耐熱ベルト81)を用紙Sの搬送方向と直交する方向に揺動させても、2次転写部70のニップ部N1において用紙Sが、該用紙Sの搬送方向と直交する方向に滑りにくい。それゆえ、本体制御部101は、2次転写部70の2次転写ニップ荷重が大きいときは、定着装置80の揺動速度を速くするよう制御する。逆に2次転写部70の2次転写ニップ荷重が小さいときは、2次転写部70のニップ部N1において用紙Sが滑りやすくなるので、本体制御部101は、定着装置80の揺動速度を遅くするように制御する。
【0056】
また、用紙Sの坪量が大きいときは、用紙Sの厚みが増して用紙Sの剛性が大きくなるので、用紙Sの一端に加えた力が用紙Sの他端に伝わりやすい。そのため、定着装置80(耐熱ベルト81)を揺動させたときに、2次転写部70において用紙Sが、該用紙Sの搬送方向と直交する方向に滑りやすくなる。ゆえに、本体制御部101は、設定された用紙Sの坪量が大きいときは、定着装置80の揺動速度を遅くし、逆に用紙Sの坪量が小さいときは、定着装置80の揺動速度を速くするように制御する。
【0057】
用紙Sの表面性とは、用紙Sにおける中間転写ベルト50及び2次転写ローラ71と接する側の表面の性質であり、表面処理の種類(用紙の種類)で性質が異なる。例えば、用紙Sがコート紙の場合、紙表面に添加物が付着している。この場合、コート紙と中間転写ベルト50及び2次転写ローラ71との摩擦係数は、コート紙以外の摩擦係数と比較して小さい。そのため、コート紙の場合、定着装置80を揺動したときに、2次転写部70において用紙Sが、該用紙Sの搬送方向と直交する方向に滑りやすい。したがって、本体制御部101は、用紙Sがコート紙であるときは、定着装置80の揺動速度を遅くし、逆に用紙Sがコート紙以外のときは、定着装置80の揺動速度を速くするように制御する。
【0058】
なお、用紙Sの種類の設定は、坪量の設定と同様に、ユーザが操作表示部105等を操作して設定したり、あるいは画像形成装置1が用紙の種類を判定する手段を有し、判定結果をもとに用紙Sの種類が自動的に設定されたりして行われる。この用紙の種類の設定情報は本体制御部101により取得され揺動速度に反映される。また、ここでは、用紙の種類としてコート紙を例に説明したが、コート紙に限られないことは勿論である。
【0059】
また、画像形成装置1内部の湿度が低いときは、用紙Sと中間転写ベルト50及び2次転写ローラ71との摩擦係数は、湿度が高いときの摩擦係数と比較して小さくなる。そのため、定着装置80を揺動したときに、2次転写部70において用紙Sが、該用紙Sの搬送方向と直交する方向に滑りやすくなる。そこで、本体制御部101は、湿度計109から得られた湿度が低いときは、定着装置80の揺動速度を遅くし、逆に湿度計109から得られた湿度が高いときは、定着装置80の揺動速度を速くするように制御している。
【0060】
上記説明では、定着装置80の揺動速度について、上述した画像形成条件のうちの一つの条件に基づいて決定したが、これらの条件を2つ以上組み合わせてもよい。以下に、揺動速度決定処理の一例として、2次転写ニップ荷重、用紙Sの坪量及び用紙Sの表面性の3つの条件に基づいて揺動速度を決定する例を説明する。
【0061】
表1は、定着装置80の揺動速度(mm/s)と、2次転写ニップ荷重(kg)、用紙Sの坪量及び用紙Sの表面性の3つの画像形成条件との関係を示したテーブルを示す。この例では、揺動速度として、0.1mm/s、0.2mm/s、0.3mm/sの3つの値を用意してあり、条件の場合分けに応じていずれかに決定する。この表1に出したテーブルは、例えばROM102に保存されている。
【表1】

【0062】
図7は、本体制御部101が、表1に示した2次転写ニップ荷重、用紙Sの坪量及び用紙Sの表面性の3つの条件に基づいて、揺動速度を決定する場合のフローチャートである。
まず画像形成装置1が印刷ジョブを開始すると、本体制御部101は、ROM102に保存された用紙Sの坪量の設定情報から、2次転写部70の2次転写ニップ荷重が3kg又は6kgのいずれに設定されているかを判定する(ステップS1)。
【0063】
ステップS1の判定処理において2次転写ニップ荷重が3kgである場合、本体制御部101は、設定された用紙Sの坪量が210g/mm以上であるかを判定する(ステップS2)。
【0064】
ステップS2の判定処理において用紙Sの坪量が210g/mm以上である場合、本体制御部101は、揺動速度を0.1mm/sに決定し(ステップS3)、用紙Sの坪量が210g/mm未満である場合、揺動速度を0.2mm/sに決定する(ステップS4)。
【0065】
一方、ステップS1の判定処理において2次転写ニップ荷重が6kgである場合、本体制御部101は、用紙Sの種類(表面性)がコート紙であるかを判定する(ステップS5)。
【0066】
ステップS5の判定処理において用紙Sがコート紙である場合、本体制御部101は、揺動速度を0.2mm/sに決定し(ステップS6)、用紙Sがコート紙ではない場合、揺動速度を0.3mm/sに決定する(ステップS7)。
【0067】
本体制御部101は、ステップS3〜ステップS7にて揺動速度を決定したら揺動速度決定処理を終了し、決定した揺動速度の情報を揺動駆動部108に送る。揺動駆動部108は、取得した揺動速度の情報に基づいて駆動信号を発生し、この駆動信号を揺動機構90へ送ることにより、決定された揺動速度により定着装置80を揺動する。
【0068】
表1及び図7に示す例によれば、まず2次転写ニップ荷重の大小を判定して2次転写部70での用紙Sの滑りやすさを振り分け、その判定の結果に応じて用紙Sの坪量又は用紙Sの表面性を判定してさらに滑りやすさを振り分けている。すなわち、2次転写部70での用紙Sの滑りやすさを画像形成条件に応じて振り分け、振り分けた用紙Sの滑りやすさに応じて2次転写部70で用紙Sの滑りが発生しないような揺動速度を決定する。
【0069】
ただし、2次転写部70のニップ部N1の中心と定着装置80のニップ部N2の中心との距離L1(図5参照)が、搬送方向における用紙Sの長さL2より長く、2次転写部70と定着装置80に同時にニップされない小サイズの用紙の場合は、揺動速度を表1によらず予め設定された所定値とする。例えば、揺動速度を0.3mm/sとした場合、定着装置80の位置の変化量を最大にすることができる。
【0070】
なお、本例において、本体制御部101が、ステップS2にて用紙Sの坪量を判定した後に用紙の種類を判定する処理を行ってもよい。あるいはステップS5にて用紙の種類を判定した後に用紙の坪量を判定する処理を行ってもよい。さらには、それぞれの判定処理の後に湿度を判定する処理を行ってもよい。そして、各判定処理の結果に応じて、本体制御部101が揺動速度を決定する。このように複数の判定処理を直列的に行った場合、複雑な画像形成条件に対応してきめ細かく揺動速度を決定することができる。
【0071】
また、本例では、本体制御部101が表1のテーブルを参照して揺動速度を決定するようにしたが、印刷ジョブ開始(画像形成処理)の都度、上述した画像形成条件(2次転写ニップ荷重、用紙Sの坪量、用紙Sの表面性、湿度、等)に基づいて、本体制御部101が揺動速度を自動的に計算するようにしてもよい。
【0072】
ところで、本実施の形態例でいう定着装置80の揺動速度とは、揺動動作(往復動作)中の最大速度のことである。すなわち、経過時間t(s)と揺動速度v(mm/s)との関係を示した図8のグラフにおける、揺動速度曲線の上下端部(極大点、極小点)での速度のことである。揺動速度v(mm/s)がプラスの場合は定着装置80の基準位置から左方向(図4参照)への移動、同マイナスの場合は同基準位置から右方向への移動を表している。図8の揺動速度曲線131(実線)は揺動速度0.1mm/s、揺動速度曲線132(破線)は揺動速度0.2mm/s、揺動速度曲線133(一点鎖線)は揺動速度0.3mm/sの場合の曲線を表している。例えば揺動速度曲線133では、揺動開始後0s〜15sの間に基準位置から左方向へ移動し、15sのとき基準位置から左に最大距離(6mm)となり、30sのとき基準位置に戻ってくる。続いて、30s〜45sの間に基準位置から右方向へ移動し、45sのとき基準位置から右に最大距離(6mm)となり、60sのとき基準位置に戻ってくる。
【0073】
以上説明した一実施の形態例によれば、用紙に関する情報等、画像形成条件の少なくとも一つの条件に応じて、2次転写部70での用紙Sの滑りやすさを振り分ける。そして、2次転写部70での用紙Sの滑りやすさに応じて、2次転写部70で用紙Sの滑りが発生しない適切な揺動速度を決定する。それにより、定着装置80を揺動した際に、2次転写部70での用紙Sの滑りを防止できる。したがって、定着装置80の耐熱ベルト81の表面に紙エッジキズが発生するのを防止しつつ、定着装置80を揺動する際に発生する転写ずれや画像ひずみを低減することができる。
【0074】
なお、本発明は上述した一実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【0075】
例えば、上述した一実施の形態例では、図4に示すように、揺動機構90により定着装置80のユニット全体を揺動させているが、搬送される用紙Sに対する耐熱ベルト81の位置を相対的に移動させればよい。したがって、定着装置80のユニット全体ではなく、定着装置80の少なくとも加熱ローラ82、加圧ローラ83及び耐熱ベルト81、並びに外部加圧ローラ84を、用紙Sの搬送方向と直交する方向に移動させればよい。
【0076】
また、本発明についてカラー画像を形成する画像形成装置1を例に挙げて説明したが、本発明は白黒画像を形成する画像形成装置にも対応可能である。また本発明は、例えば一対の加熱ローラ(加熱部材)と加圧ローラ(加圧部材)を用いて用紙をニップする、耐熱ベルトを用いないローラ形式の定着装置に適用しても同様の効果を得られる。
【0077】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【符号の説明】
【0078】
1…画像形成装置、 40…画像形成部、 50…中間転写ベルト、 70…2次転写部、 71…2次転写ローラ、 72…対向ローラ、 73…搬送ローラ、 80…定着装置、 81…耐熱ベルト、 82…加熱ローラ、 83…加圧ローラ、 84…外部加圧ローラ、 90…揺動機構、 91…支持ユニット、 92A,92B…コロ、 93…カム、 93a…支軸、 94A,94B…摺接部、 101…本体制御部、 108…揺動駆動部、 109…湿度計、 N1,N2…ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成されたトナー像を、用紙をニップしながら該用紙に転写する転写部と、
前記転写部から搬送される用紙を加熱部材と加圧部材によりニップしながら前記用紙にトナー像を定着させる定着部と、
前記定着部において前記用紙がニップされている時、前記定着部を、前記用紙の搬送方向と直交する用紙幅方向に揺動させる揺動部と、
所定の画像形成条件に基づいて、前記揺動部による前記定着部の揺動速度を決定する制御部と、を備える
画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成条件として、前記転写部の転写ニップ荷重を含む
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成条件として、前記用紙の坪量を含む
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成条件として、前記用紙の表面性を含む
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成条件として、画像形成装置内部の湿度を含む
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、用紙の搬送方向において、前記転写部のニップ部と前記定着部のニップ部との距離が、前記用紙の長さより短いときに、前記揺動速度を決定する制御を行う
請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−173581(P2012−173581A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36519(P2011−36519)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】