説明

画像形成装置

【課題】周囲温度や経時変化に起因してレーザの発光特性が変化しても制御量誤差を許容範囲内に収める画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、光量制御部601の目標光量を所定割合だけ減少させた光量によって第1のパッチが形成され、シェーディング制御部609により目標光を所定割合だけ減少させた光量によって第2のパッチが形成される。さらに、第1のパッチの検出値と、第2のパッチの検出値との誤差αがゼロとなるように、走査位置ごとの補正データに対して共通に使用される修正係数Rが決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、回転多面鏡によって偏向されたレーザ光により感光体上を走査することで感光体上に静電潜像を形成し、静電潜像をトナーによって現像することによって画像を形成する。画像の濃度はレーザ光の光量を変動させることによって変動する。回転多面鏡から感光体までの光路上にはレンズやミラーが配置されている。回転多面鏡によって偏向されたレーザ光の走査方向において、回転多面鏡によって偏向されたレーザ光は、回転多面鏡の回転角度によってレンズやミラーの異なる位置に入射する。レーザ光を通過させるレンズの透過率やレーザ光を反射させるミラーの反射率は走査方向にムラを持つ。そのため、レーザ光の走査方向において感光体上でのレーザ光の照射位置(走査位置)ごとにレーザ光の光量(強度)が不均一となり、レーザ光の走査方向において画像に濃度ムラが発生するといった課題がある。
【0003】
特開2005−178041号公報によれば、デジタル・アナログ変換器を用いずに走査位置に応じてシェーディング制御を行う画像形成装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−178041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2005−178041号公報の発明では、画像形成装置の周囲温度や経時変化に起因するレーザ光の発光特性の変化を考慮していない。そのため、光量の制御量が初期調整状態の制御量からずれてしまい、制御量誤差が発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、周囲温度や経時変化に起因してレーザの発光特性が変化しても制御量誤差を許容範囲内に収める画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、たとえば、
光源と、
前記光源の光量が目標光量となるように光量制御を実行する光量制御手段と、
前記光源が出力する光束を偏向させ、該偏向された光束により走査対象物の表面を走査する偏向手段と、
前記走査対象物の表面上の走査位置ごとに前記光源の駆動電流を制御することで前記光源の光量を制御するシェーディング制御手段と、
前記光量制御手段により前記目標光量を所定割合だけ減少させた光量によって形成された第1のパッチの検出値と、前記シェーディング制御手段により前記目標光量を前記所定割合だけ減少させた光量によって形成された第2のパッチの検出値とに対応した修正量で前記駆動電流を修正する修正手段と
を有することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動光量制御手段により目標光量を所定割合だけ減少させて第1のパッチが形成され、シェーディング制御手段により目標光量を所定割合だけ減少させて第2のパッチが形成される。この第1のパッチの検出値と、第2のパッチの検出値とから、周囲温度や経時変化に起因したレーザの発光特性がどの程度変化しているかがわかる。つまり、第1のパッチの検出値と、第2のパッチの検出値とから対応する修正量が求まる。そこで、第1のパッチの検出値と、第2のパッチの検出値とに対応した修正量で光源に供給される電流を修正すれば、周囲温度や経時変化に起因したレーザの発光特性の影響を緩和できる。つまり、シェーディング制御に関する制御量誤差が許容範囲内に収まるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置の一例を示す図
【図2】制御部の一例を示す図
【図3】濃度センサの配置位置を示す図
【図4】レーザ露光部の一例を示す図
【図5】シェーディング制御の一例を示す図
【図6】レーザドライバの一例を示す図
【図7】パッチの一例を示す図
【図8】シェーディング制御量の調整方法を示すフローチャート
【図9】光量濃度特性の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例の一つを以下に示す。本実施例は、感光ドラム(感光体)上の各領域に形成される画像の濃度ムラが抑制されるように、レーザ光の光量をレーザ光の走査位置に応じて制御する、所謂シェーディング制御する画像形成装置である。とりわけ、画像形成装置は、パターン画像の検出結果より得られた濃度情報または電位情報に応じてシェーディング制御量の調整を行う。
【0011】
[画像形成装置全体の構成]
図1を用いて本実施例における電子写真方式の画像形成装置について簡単に説明する。画像形成装置1は、スキャナ部100、レーザ露光部101、感光ドラム102、作像部103、定着部104、給紙/搬送部105及びこれらを制御するプリンタ制御部107を備えている。スキャナ部100は、原稿台に置かれた原稿に対して、照明を当てて原稿画像を光学的に読み取り、その像を電気信号に変換して画像データを作成する。レーザ露光部101は、画像データに応じて変調したレーザ光(光束)を出射する。作像部103は、帯電器108、現像器109、転写器110を備える。作像部103は、感光ドラム102を回転駆動する。帯電器108は、回転駆動された感光ドラム102(走査対象物)の表面を帯電する。レーザ露光部101は、画像データに基づくレーザ光によって帯電器108によって帯電された感光ドラム上を露光する。レーザ光によって露光されることで感光ドラム102上に静電潜像が形成される。現像器109は、感光ドラム102上に形成された静電潜像をトナーによって現像する。転写器110は、感光ドラム102上に形成されたトナー像を、シートを搬送するシート搬送ベルト106(シート搬送体)によって搬送されるシート上に、転写する。定着部104は、シート上のトナー像を熱と圧力によって溶解させてシートに定着させる。プリンタ制御部107は、画像形成装置1を統括的に制御する。
【0012】
なお、本実施例では、感光ドラム102上に形成されたトナー像を、シート搬送ベルト106によって搬送されるシート上に直接転写する例を示す。しかしながら、実施の形態はこれに限定されるものでなく、感光体上に形成されたトナー像を中間転写ベルトなどの中間転写体上に転写し、中間転写体上に転写されたトナー像をシートに転写する構成を備える画像形成装置でもよい。
【0013】
なお、本実施例の画像形成装置1では、後述するトナーパターンは、シート搬送ベルト106上に形成される。また、中間転写体を備える画像形成装置では、中間転写体上に後述するトナーパターンが形成される。さらに、本実施例の画像形成装置、中間転写体を備える画像形成装置において、後述するトナーパターンはシートなどの記録媒体上に形成されてもよい。
【0014】
図2に、プリンタ制御部107に接続される濃度センサ201とレーザドライバ203Y、203M、203C、203Kについて示す。
【0015】
プリンタ制御部107はCPU204を備え、CPU204は、シート搬送ベルト106上に形成されたトナーパターンを検出するように配置された濃度センサ201の出力結果に基づいて、レーザドライバ203Y、203M、203C、203Kを制御する。レーザドライバ203Y、203M、203C、203Kはそれぞれ対応する光源であるレーザ205Y、205M、205C、205KをCPU204からの指示に基づいて駆動する。なお、YMCKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを示している。なお、各色に共通する事項を説明するときにはYMCKを参照符号から省略する。CPU204は、検出された濃度情報に基づいて、レーザを駆動する際の基準となる基準電圧や、走査位置ごとにレーザ光量を補正するためのデューティを各レーザドライバに対応させて設定する。CPU204は、各レーザに対して自動光量制御(APC)を実行するが、その際の目標値をAPC光量と呼ぶ。デューティはこのAPC光量に乗算される係数である。メモリ206は、トナーパターンを形成するためのデータを記憶している。CPU204は、トナーパターンを形成する際に、メモリ206からパッチを形成するためのデータを読み出して、レーザドライバ203に出力する。
【0016】
図3に、シート搬送ベルト106に対する濃度センサ201の配置位置を示す。図3が示すように、濃度センサ201は、シート搬送ベルト106に形成されたそれぞれ濃度の異なるトナーパターンを検出し、その濃度に対応した出力信号をCPU204に出力する。濃度センサ201は、発光素子と受光素子とを備え、発光素子から出力された光のうちトナーパターンからの反射光を受光素子で受光し、受光量に応じた出力信号を出力する。
【0017】
なお、図2に示した電位センサ202は、帯電された感光ドラム102の電位及び感光ドラム102上に形成された静電潜像の電位を検出する。CPU204は、電位センサ202により検出した電位に応じて帯電電圧やレーザ光量を調整する。これにより、感光ドラム102の感光特性が経時的に変化しても画像濃度を一定に保つことができる。
【0018】
[レーザ露光部101の詳細]
図4を用いてレーザ露光部101について説明する。レーザ205から発したレーザ光はコリメ−タレンズ401及び絞り402により平行光となり、所定のビーム径でポリゴンミラー403に入射する。ポリゴンミラー403は、光源が出力するレーザ光が感光ドラム102上を走査するようにレーザ光を偏向する。図4において、ポリゴンミラー403は、矢印の方向に等角速度で回転しており、この回転に伴って、ポリゴンミラー403の反射面にレーザ光が入射することでレーザ光は感光ドラム102上を所定の方向(走査方向)に走査する走査光に変換される。ポリゴンミラー403によって偏向されたレーザ光はfθレンズ404を通過して、感光ドラム102上を露光する。fθレンズ404は、ポリゴンミラー403によって偏向されたレーザ光を、感光ドラム102上を矢印方向に等速に走査させる機能を有する。なお、ビームディテクトセンサ405は、ポリゴンミラー403からの反射光を、ミラー406を介して検出するセンサである。ビームディテクトセンサ405の検出信号(BD信号)は、ポリゴンミラー403の回転とデータの書き込みの同期をとるための同期信号としてCPU204に用いられる。BDは、ビームディテクトの略称である。
【0019】
ところで、光学系の透過率や反射率にはレーザ光の走査方向においてむらがあるため、仮に一定の光量のレーザ光をレーザから出射させたとしても、感光ドラム102上での露光光量が走査位置ごとに変動してしまう。走査位置毎の露光光量の変動によって、走査位置毎に目標とする光量のレーザ光で感光ドラム102が露光されないという課題が生じる。このため、CPU204は、走査位置に応じて光量制御(シェーディング制御)を行っている。ビームディテクトセンサ405がレーザ光を検出してから次にもう一度レーザ光を検出するまでの時間を1つの走査周期とする。感光ドラム102上におけるレーザ光の走査位置(露光位置)は、ビームディテクトセンサ405がレーザ光を検出したタイミングを基準としてカウントするカウンタによって特定される。カウンタはCPU204に内蔵されている。
【0020】
図5に、シェーディング制御の一例を示す。IAPCは、後述するAPCによって決定した光量(以下、APC光量と称す)である。Ciは、画像領域における各走査位置ごとに決定された補正データである。この本実施例の画像形成装置では、感光ドラム102上の主走査方向における画像領域は10個のサブ領域に分割されている。図5に示すように、10個の分割領域それぞれに対して補正データが設定されている。
【0021】
[レーザドライバ203の詳細]
図6を用いてレーザドライバ203が実行するシェーディング制御について説明する。まず、画像データ生成部620および画像PWM信号生成部621について説明する。画像データ生成部620は、ホストコンピュータやスキャナ部100から入力された多値データを2値データへ変換したり、さらに色処理などを実行したりして2値の画像データを生成し、生成した画像データを画像PWM信号生成部621に出力する。画像PWM信号生成部621は、2値の画像データをPWM信号に変換し、電流SW622に出力する。画像PWM信号生成部621が出力するPWM信号は、光源であるレーザの点灯/消灯を制御する一種の制御信号である。つまり、PWM信号は、HighレベルまたはLowレベルの論理信号であり、電流SW622のオンとオフとを切り換える信号である。例えば、PWM信号がHighレベルの場合、電流SW622がONになり、電流源602からレーザ205に電流が供給される。一方、PWM信号がLowレベルの場合、電源SWはOFFになり、電流源602からレーザ205への電流の供給が遮断される。
【0022】
光量制御部601は、光源から出射されるレーザ光の光量が目標光量となるように光量制御を実行する光量制御手段として機能する。なお、この光量制御は、いわゆるAPC(Automatic Power Control/Automatic Light Amount Control)であってもよい。レーザを駆動する電流源602は、減算回路から出力された電圧に対応した駆動電流をレーザ205に供給する電流源である。フォトダイオード607は、レーザ205から出力される光を受光する受光素子である。本実施例では、フォトダイオード607は、レーザ205とともに同一パッケージ内に設けられているものとする。電流電圧変換回路603は、受光素子から出力される電流を電圧に変換する変換回路である。比較器604は、変換回路から出力された電圧と、目標光量に対応した基準電圧とを比較する比較回路である。S/H回路605は、比較回路から出力される比較結果をサンプルしてホールドするサンプルホールド回路である。減算回路606は、演算回路の一種であり、サンプルホールド回路から出力される電圧と、シェーディング制御部609から出力される電圧との差の電圧を出力する減算回路である。APCシーケンスコントローラ608は、ビームディテクトセンサ405が出力するBD信号を基準としてAPCの実行タイミングを管理している。
【0023】
例えば、APCシーケンスコントローラ608は、画像を形成しない非画像領域をレーザ光が走査するタイミングにおいてAPCを実行するよう制御する。レーザ光の走査領域は、レーザ光によって画像が形成される画像領域と、レーザ光によって画像が形成されない非画像領域とに分かれている。これに対応して、1走査周期は、画像を形成する画像形成期間と、画像を形成しない非画像形成期間とに分かれている。画像形成期間は、2つの非画像形成期間に挟まれている。このように、空間的な領域と時間的な期間とは一対一で対応しているため、BD信号を基準としてカウンタがカウントを実行すれば、絶対的な走査位置を取得できる。
【0024】
CPU204は、レーザドライバ203を制御して、1走査周期中の非画像形成期間にレーザ205からレーザ光を出射させる。即ち、電流源602からレーザ205に駆動電流が供給されるべく、CPU204は、電流SW622をONに制御するように画像PWM信号生成部にHighレベルの信号を出力させる。フォトダイオード607は、非画像形成期間にレーザ205から出射されたレーザ光を受光し、受光光量に応じた電流を発生する。ここで発生した電流は電流電圧変換回路603で電圧値に変換される。電流電圧変換回路603は例えば抵抗により実現できる。比較器604は、受光光量に対応した電圧値Vpdと、あらかじめCPU204により設定された基準電圧Vrefとを比較する。S/H回路605は、電流源602がレーザ205に電流を供給するために減算回路606を介して電流源602に指示電圧を出力する回路である。比較器604が基準電圧Vrefと電圧値Vpdとを比較した結果、比較結果が基準電圧Vrefに対して電圧値Vpdが低いことを示せば、S/H回路605は、指示電圧を1段階だけ増加させる。一方、基準電圧Vrefに対して電圧値Vpdが高ければ、S/H回路605は、指示電圧を1段階だけ減少させる。このようなフィードバック動作を繰り返すことによって、受光量に対応した電圧値Vpdが目標とする基準電圧Vrefと一致するように、電流源602がレーザ205に供給するレーザ駆動電流が制御される。
【0025】
電流SW622は、画像領域を走査中にレーザ205の点灯/消灯を制御する。具体的には、レーザ205からのレーザ光が感光ドラム102の画像領域を走査している間に、電流SW622は、電流源602がレーザ205に供給する電流をON/OFFする。これにより、画像領域を走査中にレーザ205が点灯したり、消灯したりする。上述したように、画像データ生成部620は、画像データを生成し、画像PWM信号生成部621へ出力する。画像PWM信号生成部621は、入力された画像データに応じて、画素内での点灯時間(デューティ)を決定する画像PWM信号を生成し、電流SW622に出力する。電流SW622は、入力された画像PWM信号によってONとOFFとを切り替える。つまり、電流SW622は、入力された画像PWM信号に応じて電流源602からレーザ205に供給する電流を通過させたり、遮断したりする。なお、レーザ205の点灯時間は画素の濃度に対応している。
【0026】
APCによって決定されるレーザ205の光量は基準電圧Vrefに対して一対一の関係となる。また、基準電圧Vrefに対して光量はリニアに変化する。
【0027】
シェーディング制御部609は、PWM信号生成部611とLPF610を備え、感光ドラム102の表面上の走査位置ごとにレーザ205を駆動する電流を制御することでレーザ205から出射されるレーザ光の光量を制御する。PWMはパルス幅変調の略称であり、LPFはローパスフィルタの略称である。図6におけるPWM信号生成部611は、CPU204によりレーザ光の走査位置に応じて設定されたデューティ(パルス幅)でPWM信号を生成して出力するパルス信号生成部として機能する。具体的に、PWM信号生成部611は、BD信号が検出されてからの時間(カウンタのカウント値)に対応したパルス幅のPWM信号(シェーディング補正用)を生成する。カウント値は、レーザ光が主走査方向におけるどの位置を走査しているかを示している。つまり、カウント値は主走査位置を示している。そこで、CPU204は、主走査位置とパルス幅との関係を定義したテーブルから、現在の主走査位置に対応したパルス幅を読み出し、PWM信号生成部611に設定する。なお、このパルス幅は、主走査位置ごとの光量補正量(シェーディング量)に対応している。
【0028】
PWM信号生成部611から出力されたPWM信号はLPF610を通過することによって平滑化される。LPF610は、パルス信号を低域濾波して生成した電圧を減算回路に印加するローパスフィルタである。図6において、LPF610は、PWM信号を平滑化してシェーディング制御電圧を生成し、減算回路606に出力する。
【0029】
減算回路606は、APCシーケンスコントローラ608によって設定される基準電圧値を、LPF610から出力された信号に基づいて補正し、補正した電圧値を電流源602に出力する。電流源602は、入力された電圧値に応じた駆動電流をレーザ205に出力する。具体的に、減算回路606は、APCによって決定したS/H回路605の出力電圧からシェーディング制御電圧xを減算して生成した電圧を電流源602に出力する。PWM信号のデューティを上げることでシェーディング制御電圧xが大きくなる。シェーディング制御電圧xが大きくなることによって減算回路606から電流源602に出力される電圧値が小さくなるため、レーザ205に供給される駆動電流の値が小さくなり、結果的にレーザ205から出力されるレーザ光の光量が減少する。一方、PWM信号のデューティを下げることでシェーディング制御電圧xが小さくなる。シェーディング制御電圧xが小さくなることによって減算回路606から電流源602に出力される電圧値が大きくなるため、レーザ205に供給される駆動電流の値が大きくなり、結果的にレーザ205から出力されるレーザ光の光量が増加する。
【0030】
APCは、上述したようにレーザ光が非画像領域を走査しているとき実行される。シェーディング制御部609は、APCを実行している間は、シェーディング制御電圧xをゼロにする。また、APC非実行時(画像形成時)において、S/H回路605は、APCにより決定された電圧を保持している。よって、画像領域中のレーザ光量はシェーディング制御電圧でのみ制御される。
【0031】
このように、PWM信号生成部611から出力するPWM信号のデューティを変えることで、レーザ光の光量をレーザ光の走査位置に応じた光量に制御することができる。しかし、シェーディング制御量(レーザ駆動電流の修正量)に対する光量の変化量は、レーザ特性によって経時的に変化するため、シェーディング制御量の調整が必要となる。
【0032】
[シェーディング制御量の調整方法]
本実施例においては、シート搬送ベルト106上に形成したトナーパターンを濃度センサ201で読み取り、読み取った結果をもとにシェーディング制御量を決定する。
【0033】
図7にシート搬送ベルト106上に形成するトナーパターンの一例を示す。本実施例においては、APC光量を基準として5段階の光量を設定し、それぞれ濃度が異なる5つのトナーパターンP1〜P5を形成する。トナーパターンP1〜P5を第1のトナーパターン群(第1のパッチ群)と呼ぶ。トナーパターンP1〜P5を形成する際にはシェーディング制御を実行しない。つまり、トナーパターンP1〜P5を形成する際にPWM信号生成部611が出力するパルス信号のデューティは0%に維持されている。
【0034】
また、シェーディングデータ(PWM信号のデューティ)に基づいて光量を設定してトナーパターンP6を形成する。この例では、トナーパターンP6が、シェーディングデータを80%(補正データを20%)に設定して形成されている。図7において、トナーパターンP6は1個であるが、複数個でもよいため、トナーパターンP6を第2のトナーパターン群(第2のパッチ群)と呼ぶことにする。本実施例では、CPU204は、第1のトナーパターン群の濃度検出結果と第2のトナーパターン群の濃度検出結果とに対応した修正量でシェーディング制御量を調整する。
【0035】
ここでAPCでは、レーザ光の光量は基準電圧に対応した光量に制御されるため、第1のトナーパターン群は、基準電圧に対応した光量に対応した濃度で形成される。これにより、光量と濃度との関係(光量濃度特性)が得られることになる。この光量濃度特性と、あらかじめ決められたシェーディングデータによって形成された第2のトナーパターン群の濃度とを比較することで、このシェーディングデータに対応した光量を導出できる。ここで導出されたシェーディングデータと光量の関係から補正データを修正できる。レーザ特性が経時的に変化したとしてもシェーディングデータおよび補正データを適正な値に維持できるようになる。
【0036】
図8を用いて具体的な動作を説明する。CPU204は、画像形成装置1の電源が投入された直後の初期調整期間や、複数のプリントジョブの間にシェーディング制御量を調整する。
【0037】
S801で、CPU204は、シェーディング制御量の調整の開始条件が満たされたかどうかを判定する。開始条件は、たとえば、画像形成装置1の電源が投入されたこと、プリントジョブが終了したことなどである。開始条件が満たされると、S802に進む。
【0038】
S802で、CPU204は、第1のトナーパターン群を生成するよう、レーザ露光部101、感光ドラム102および作像部103を制御する。第1のトナーパターン群は、APC光量に対して60%、70%、80%、90%、100%の各光量でレーザ205を発光させて形成したトナーパターンP1〜P5である。これにより図7に示したトナーパターンP1〜P5がシート搬送ベルト106に形成される。なお、PWM信号生成部611に設定されるデューティは100%である。このように、第1のトナーパターンを生成するときは、光量制御部601は、目標光量を最大値(100%)から所定割合だけ減少させるように光源を制御し、PWM信号生成部611が出力するパルス信号のデューティは0%に維持されている。つまり、第1のトナーパターンは、目標光量を設定する基準電圧Vrefを変更することで形成される。レーザ205の発光量は、APCの目標光量を変更するかシェーディング光量Is(補正データCi)を変更することで、調整できる。第1のトナーパターンは、そのうちの目標光量を変更することで形成できるのである。
【0039】
S803で、CPU204は、濃度センサ201を使用して、シート搬送ベルト106上に形成された第1のトナーパターン群の濃度を検出する。このように、濃度センサ201は、第1のトナーパターン群および後述する第2のトナーパターン群に含まれる各トナーパターンの濃度を検出する。
【0040】
S804で、CPU204は、第2のトナーパターン群を形成するよう、レーザ露光部101、感光ドラム102および作像部103を制御する。たとえば、CPU204は、第2のトナーパターン群を形成する際にシェーディング制御を行うためのPWM信号のデューティが20%となるようにPWM信号生成部611が出力するパルス信号のデューティを設定する。これによりデューティが20%のPWM信号によって光量が補正されたレーザ光によってトナーパターンP6がシート搬送ベルト106に形成される。このように、第2のトナーパターンを生成するときは、光量制御部601は、目標光量を最大値(100%)に維持し、シェーディング制御部609は、所定割合(例:20%)だけ光源のデューティを減少させる。つまり、第2のトナーパターンは、シェーディング制御量であるデューティを変更することで形成される。
【0041】
S805で、CPU204は、濃度センサ201を使用して、シート搬送ベルト106上に形成された第2のトナーパターン群の濃度を検出する。
【0042】
S806で、CPU204は、第1のトナーパターン群を形成するために使用した光量と、それに対応する濃度とから光量濃度特性(参照プロファイル)を作成する。このように、CPU204は、トナーパターン群を形成する際に使用された光量とトナーパターン群から得られた検出値との対応関係から光量対検出値特性を作成する。
【0043】
S807で、CPU204は、第2のトナーパターン群であるトナーパターンP6の濃度と光量濃度特性とを比較し、シェーディング制御量Isの修正係数Rを決定する。CPU204は、作成手段が作成した光量対検出値特性から第2のトナーパターン群の検出値に対応する光量を求め、第1のトナーパターン群を形成したときの光量に対する第2のトナーパターン群の検出値に対応する光量の誤差がゼロとなるように修正係数を演算する演算手段として機能する。修正係数Rの詳細な決定方法については図9を用いて後述する。
【0044】
S808で、CPU204は、修正係数Rをレーザドライバ203に設定する。修正係数Rは、各走査位置に対して共通に使用される乗算係数である。目標光量を所定割合だけ減少させた光量によって形成された第1のトナーパターン群の検出値と、目標光量を所定割合だけ減少させた光量によって形成された第2のトナーパターン群の検出値は、周囲温度や経時変化に起因したレーザの発光特性がどの程度変化しているかを示している。つまり、第1のトナーパターン群の検出値と、第2のトナーパターン群の検出値とから対応する修正量が求まる。上述した修正係数Rは、目標光量を所定割合だけ減少させた光量によって形成された第1のトナーパターン群の検出値と、目標光量を所定割合だけ減少させた光量によって形成された第2のトナーパターン群の検出値とに対応した値となる。よって、CPU204は、第1のトナーパターン群の検出値と第2のトナーパターン群の検出値とに対応した修正量で駆動電流を修正する。
【0045】
図9は光量濃度特性の一例を示す図である。濃度の変化は、レーザ光量以外にも現像特性や転写特性の変化が反映される。つまり、濃度の変化を補正するためのAPC光量の調整量と、シェーディング制御量とが一対一で対応していれば、APC光量を一定に保持したままシェーディング制御量を調整することで、濃度を調整できるようになる。
【0046】
そこで、本実施例では、まず、CPU204が、それぞれ異なる複数のレーザ光量に対する濃度検出結果を線形近似することで、光量濃度特性(参照プロファイル)を作成する。複数のレーザ光量の一つはAPC光量の80%に相当する光量(APC光量の80%)である。なお、シェーディング制御量と光量との対応関係(図9の右側に示したレーザ特性)は事前にCPU204が内蔵しているROMに記憶されているものとする。
【0047】
CPU204は、作成した参照プロファイルと、補正データXiを20%(シェーディングデータを80%)として発光させて形成したトナーパターンP5の濃度との比較計算により、補正データXiの修正係数Rを決定する。補正データを20%にすると、デューティが80%になるため、シェーディングデータは、APC光量の80%となる。よって、APC光量の80%の光量で作成したトナーパターンP3の濃度と、補正データを20%に設定して作成したトナーパターンP6の濃度とは本来一致するはずである。しかし、上述した理由から両者が一致せず、両者の間には誤差αが発生する。
【0048】
以下に、比較計算方法の一例を示す。ここでは、CPU204が、トナーパターンP6(シェーディングデータ=80%、補正データ=20%)の濃度D6と、トナーパターンP3(APC光量の80%)の濃度D3を比較し、これらの差分から修正係数Rを算出する。修正係数Rの算出は、次の式(1)〜(3)を用いて実行できる。
【0049】
G = (D3 − D5) / 20% ・・・(1)
α(%) = (D3 − D6) / G ・・・(2)
R = Y / X
= 20% / (20% − 誤差α) ・・・(3)
ここで、Gは、トナーパターンP3とトナーパターンP5についての濃度傾きである。濃度傾きは、複数のレーザ光量に対する濃度検出結果を線形近似に相当する。よって、濃度傾きGは、トナーパターンP3とトナーパターンP5との間の濃度差を、トナーパターンP3とトナーパターンP5との間の光量差(%)と除算することで得られる。αは、トナーパターンP3に対するトナーパターンP6の誤差であり、トナーパターンP3とトナーパターンP6との間の濃度差を濃度傾きGで除算することで得られる。Rは、修正係数である。Rは、シェーディングデータ(デューティ)と光量との関係、レーザ特性、トナーパターンP3の濃度およびトナーパターンP6の濃度から決定される値である。Yは、100%デューティに対するトナーパターンP6のシェーディングデータ(80%デューティ)の差分である。Xは、100%デューティに対するトナーパターンP3の光量の差分である。修正係数Rは、誤差αがなくなるように補正データを修正する係数であるため、(3)式が成立する。たとえば、誤差α=10%であれば、修正係数R=2となる。
【0050】
このように、第1のトナーパターンは、目標光量(例:APC光量の100%)を所定割合(例:20%)だけ減少させた光量(例:APC光量の80%)によって形成さる。また、第2のトナーパターン群は、所定割合(例:20%)だけシェーディング制御部609により減少させた光量によって形成される。CPU204は、第1のトナーパターン群の検出値と第2のトナーパターン群の検出値との差分(誤差α)がゼロとなるように、走査位置ごとの制御量に対してシェーディング制御部609が共通に使用する修正係数Rを決定する。つまり、CPU204は、修正係数決定手段として機能する。
【0051】
CPU204は、修正係数Rを乗算係数として各走査位置の補正データCiに乗算することで、修正された補正データDuty_iを得ることができる。ここでは、CPU204が修正係数RをPWM信号生成部611に設定することで、PWM信号生成部611は、修正係数Rを各走査位置の補正データCiに乗算し、対応するPWM信号を生成する。
【0052】
このように修正係数Rは、画像領域上の走査位置によらず、一定の値となる。これを、式(4)で示す。
【0053】
Duty_i = (1−Ci)×R ・・・(4)
ここで、Duty_iは領域iの修正係数Rにより修正された補正データであり、Ciは領域iの修正前の補正データである。
【0054】
このように修正係数Rを使用すれば、シェーディングデータを80%(補正データを20%)に設定したときに、APC光量に対して80%の光量のレーザ光が出力されるようになる。以上で述べたフローでは、Y、M、C、Kのうちの1色に対する動作フローであるが、他の3色についても順次調整を行えばよい。
【0055】
また、本実施例においては、APC光量に対して5段階で調整した光量で5つのトナーパターン形成を行ったが、段階数や光量レベルは他の値であってもよい。また、トナーパターンの濃度検出方法としては、シート搬送ベルト106の周面に対向して配置した濃度センサ201を使用する検出方法を説明した。しかし、図4に示した、感光ドラム102の周面に対向して配置した電位センサ202によって潜像パターンの電位を検出する方法を採用してもよい。潜像パターンの電位は、ほぼトナー濃度に対応しているからである。電位センサ202の出力により調整を行う場合も、濃度を電位に置換して、式(1)〜式(4)の計算をそのまま行えばよい。このように、電位センサ202は、第1の潜像パターン群および第2の潜像パターン群である潜像の電位を検出する電位検出手段として機能する。
【0056】
本発明によれば、トナーパターンをシート搬送ベルト、中間転写体、感光体などの像担持体に形成し、その濃度または電位とシェーディング制御量との関係からシェーディングデータ(補正データ)の修正係数を算出できる。よって、複数のD/Aコンバータを必須とせずにシェーディング制御を行うことができるコスト的に有利な画像形成装置を実現できる。また、本発明によれば、レーザドライバ203の内部にレーザ205の発光閾値検出機能や光量傾き特性の検出機能を設ける必要がない。そのため、より安価な構成で高精度なシェーディング制御が可能となる。また、CPU204や濃度センサ201、電位センサ202は、画像形成装置1が従来から備えている濃度制御用のものと共用できる。よって、追加の部品が必須ではないため、コストの面で有利である。このように、周囲環境温度の変化やレーザの耐久劣化によってレーザの駆動電流に対する光量出力特性が変化したとしても、修正係数により光量出力特性を補正することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源の光量が目標光量となるように光量制御を実行する光量制御手段と、
前記光源が出力する光束を偏向させ、該偏向された光束により走査対象物の表面を走査する偏向手段と、
前記走査対象物の表面上の走査位置ごとに前記光源の駆動電流を制御することで前記光源の光量を制御するシェーディング制御手段と、
前記光量制御手段により前記目標光量を所定割合だけ減少させた光量によって形成された第1のパッチの検出値と、前記シェーディング制御手段により前記目標光量を前記所定割合だけ減少させた光量によって形成された第2のパッチの検出値とに対応した修正量で前記駆動電流を修正する修正手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1のパッチを形成するときは、
前記光量制御手段は、前記目標光量を前記所定割合だけ減少させるように前記光源を制御し、
前記シェーディング制御手段は、前記光源のデューティを100%に維持し、
前記第2のパッチを形成するときは、
前記光量制御手段は、前記目標光量を維持し、
前記シェーディング制御手段は、前記光源のデューティを前記所定割合だけ減少させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記光量制御手段により前記目標光量を所定割合だけ減少させた光量によって形成された第1のパッチの検出値と、前記シェーディング制御手段により前記目標光量を前記所定割合だけ減少させた光量によって形成された第2のパッチの検出値との差分がゼロとなるように、前記シェーディング制御手段における前記走査位置ごとの制御量に対して共通に使用される修正係数を決定する修正係数決定手段をさらに有し、
前記修正手段は、前記修正係数を前記走査位置ごとの制御量に乗算することで、前記修正量で前記駆動電流を修正するように構成されており、
前記シェーディング制御手段は、前記修正量で修正された前記走査位置ごとの制御量を使用して前記光源の駆動電流を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1のパッチは、それぞれ異なる光量により形成された複数のパッチからなるパッチ群の1つであり、
前記修正係数決定手段は、
前記パッチ群を形成する際に使用された複数の光量と前記パッチ群から得られた複数の検出値との対応関係から光量対検出値特性を作成する作成手段と、
前記作成手段が作成した前記光量対検出値特性から前記第2のパッチの検出値に対応する光量を求め、前記第1のパッチを形成したときの光量に対する前記第2のパッチの検出値に対応する光量の誤差がゼロとなるように前記修正係数を演算する演算手段と
をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記光量制御手段は、
前記光源から出力される光を受光する受光素子と、
前記受光素子から出力される電流を電圧に変換する変換回路と、
前記変換回路から出力された電圧と、目標光量に対応した基準電圧とを比較する比較回路と、
前記比較回路から出力される比較結果をサンプルしてホールドするサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路から出力される電圧と、前記シェーディング制御手段から出力される電圧との差の電圧を出力する減算回路と、
前記減算回路から出力された電圧に対応した駆動電流を前記光源に供給する電流源と、を有し、
前記シェーディング制御手段は、
前記修正係数で修正したデューティのパルス信号を生成するパルス信号生成部と、
前記パルス信号を低域濾波して生成した電圧を前記減算回路に印加するローパスフィルタと、を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1のパッチおよび前記第2のパッチであるトナーパターンの濃度を検出する濃度検出手段をさらに有し、
前記修正手段は、前記濃度検出手段によって検出された前記第1のパッチの検出値と前記第2のパッチの検出値とに対応した修正量で前記駆動電流を修正することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1のパッチおよび前記第2のパッチである潜像の電位を検出する電位検出手段をさらに有し、
前記修正手段は、前記電位検出手段によって検出された前記第1のパッチの検出値と前記第2のパッチの検出値とに対応した修正量で前記駆動電流を修正することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−109328(P2013−109328A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222543(P2012−222543)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】