説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルトの移動方向最上流側の画像形成ユニットに設けた帯電装置への劣化した潤滑材の付着に起因した異常画像発生を抑制するとともに、中間転写ベルト移動方向最下流側に設けた像担持体を長寿化できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】タンデム中間転写方式のプリンタ100において、中間転写ベルト8の移動方向の最上流に設けたプロセスカートリッジ6Yは、非接触ローラ帯電方式の帯電装置2Yを設け、潤滑剤塗布機構を設けていない。一方、中間転写ベルト8の移動方向の最下流に設けたプロセスカートリッジ6Kには、潤滑剤塗布機構50を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像形成ユニットを有したタンデム式で、中間転写ベルトを有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している複写機、プリンター等に用いられている電子写真方式の画像形成ユニットには、次のように多数の部品を備えている。像担持体である感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置を構成するクリーニングブレード、及び感光体の長寿命化とクリーニング性能確保のための潤滑材塗布手段である。ここで、潤滑材塗布手段は、潤滑材である固形潤滑剤、潤滑剤塗布ブラシ、潤滑材を均一に塗布するための塗布ブレード等から構成されている。そして、各色にそれぞれ対応した複数の画像形成ユニットと、中間転写ベルトとを備えるタンデム式のカラー画像形成装置が普及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、カラー画像形成装置の普及にともない、画像形成ユニットの低コスト化、小型化の要求が以前に増して高まっている。低コスト化、小型化のためには、画像形成ユニットを感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置のみから構成し、潤滑材塗布手段を省略したシンプルな構成とすることが有効である。
【0004】
また、一般に画像形成装置が使用されるオフィス等においては、カラー画像の出力に比べ、モノクロ画像の出力枚数が多い。つまり、一般にオフィス等で使用される画像形成装置では、黒用の画像形成ユニットの利用頻度が高い。このため、カラー対応の画像形成装置では、カラー画像形成ユニット(Y、C、M)に比べて、相対的に黒用画像形成ユニット(K)は早く寿命に達してしまうという課題がある。このような課題が生じるのは、黒用画像形成ユニットの感光体(Bk)の走行距離がカラー画像形成ユニットの感光体(Y、C、M)に比べて長くなるため、黒用画像形成ユニットの感光体の磨耗が、カラー画像形成ユニットの感光体に比べ速くなるためである。
【0005】
このような黒用画像形成ユニットの感光体の磨耗が速く進み、寿命が相対的にカラー画像形成ユニットに比べて短くなるという課題に対して、従来から様々な提案がされてきた。例えば、特許文献1には、次のような複数の感光体を備えたタンデム式のカラー対応の画像形成装置が記載されている。直接転写方式の画像形成装置で、転写搬送ベルト移動方向最下流側に設けた黒用画像形成ユニットの帯電装置(帯電器)を非接触式(コロトロン)とし、カラー画像形成ユニットの帯電装置を接触式の帯電ローラ(帯電ロール)としたものである。このように各画像形成ユニットを構成することで、従来、帯電手段を全色接触式の帯電ローラとしていた構成に比べ、接触する帯電ローラと感光体との摺擦による感光体磨耗を防ぎ、黒用感光体の寿命を長くさせることができるというものである。
【0006】
また、感光体上に潤滑剤を塗布することで感光体の寿命を長寿命化できるので、黒用画像形成ユニットに潤滑材塗布手段を設けることも、黒用画像形成ユニットの長寿命化に有効である。すなわち、黒用感光体上に潤滑剤を塗布することによって黒用感光体の磨耗を低減することができる。その結果、黒用画像形成ユニットを長寿命化できる。
【0007】
近年、タンデム式のカラー画像形成装置では、中間転写ベルトを用いる中間転写方式が一般的になっている。また、黒用画像形成ユニットは、ファーストプリントを早くする等の理由により、中間転写ベルトの移動方向最下流側に設けられることが多い。そして、黒用感光体上に塗布された潤滑材は帯電装置の影響を受けて劣化する。劣化した潤滑剤は1次転写部にて、その一部が感光体から中間転写ベルト上へ転移する。その後、中間転写ベルト上に転移した潤滑剤の一部は、中間転写ベルトの移動方向最上流側にある画像形成ユニットの感光体上に、1次転写部で転移することとなる。
【0008】
そして、中間転写ベルトの移動方向最上流側の画像形成ユニットの帯電装置が、特許文献1に記載の構成のように接触式の帯電ローラであった場合には、感光体を介して潤滑剤が帯電ローラに付着し易くなり、帯電ローラ汚れの原因となる。このように帯電ローラに劣化した潤滑剤が付着して汚れてしまうと、カラーの画像形成時に、移動方向最上流側の画像形成ユニットの感光体を好適に一様帯電できなくなり、異常画像発生に対して非常に不利になってしまう。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、次のような画像形成装置を提供することである。利用頻度の高い画像形成ユニットの像担持体を長寿化できるとともに、中間転写ベルトの移動方向最上流側の画像形成ユニットに設けた帯電装置への劣化した潤滑材の付着に起因した異常画像発生を抑制できるカラー画像形成装置である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、像担持体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置を有し、各色にそれぞれ対応した複数の画像形成ユニットと、中間転写ベルトとを備えるタンデム式のカラー画像形成装置において、前記中間転写ベルトの移動方向最上流側に設けられた画像形成ユニットは、非接触式の帯電装置を有し、潤滑剤を像担持体上に塗布するための潤滑剤塗布手段を有しておらず、前記中間転写ベルトの移動方向最下流側に設けられた画像形成ユニットは、潤滑剤を像担持体上に塗布するための潤滑剤塗布手段を有していることを特徴とするものである。
本発明は、中間転写ベルトの移動方向最下流側の画像形成ユニットには、潤滑剤を像担持体上に塗布するための潤滑剤塗布手段を有しているので、この画像形成ユニットの像担持体の寿命を長寿命化できる。したがって、利用頻度の高い、例えば黒用の画像形成ユニットを中間転写ベルトの移動方向最下流側に設け、その像担持体の寿命を長寿命化できる。
また、中間転写ベルトの移動方向最上流側の画像形成ユニットには、潤滑剤塗布手段を有していないので、この画像形成ユニットの帯電装置に付着する可能性のある潤滑剤を中間転写ベルトを介して転移する潤滑剤のみできる。さらに、中間転写ベルトの移動方向最上流側の画像形成ユニットの帯電装置として像担持体と接触しない非接触方式を用いることで、中間転写ベルトから転移してきた劣化した潤滑剤の帯電装置への付着を抑制できる。したがって、劣化した潤滑剤の帯電装置への付着に起因した異常画像発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、利用頻度の高い画像形成ユニットを中間転写ベルトの移動方向最下流側に設け、その像担持体の寿命を長寿命化できる。また、劣化した潤滑剤の帯電装置への付着に起因した異常画像発生を抑制できる。
よって、次のような画像形成装置を提供できる。利用頻度の高い画像形成ユニットの像担持体を長寿化できるとともに、中間転写ベルトの移動方向最上流側の画像形成ユニットに設けた帯電装置への劣化した潤滑材の付着に起因した異常画像発生を抑制できるカラー画像形成装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係るプリンタの全体概要図。
【図2】画像形成部における潤滑剤の転移の流れ説明図。
【図3】黒用画像形成ユニットの説明図。
【図4】カラー用画像形成ユニットの説明図。
【図5】中間転写ベルトの摩擦係数の変化を中間転写ベルトの駆動トルクを検出することで検知する場合の説明図。
【図6】中間転写ベルトの摩擦係数の変化をベルトクリーニングブレードの弾性変形量を検出することで検知する場合の説明図。
【図7】潤滑剤塗布量の調整を塗布ブラシの回転数の調整により行う場合の説明図。
【図8】潤滑剤塗布量の調整を塗布ブラシの棒状の固形潤滑剤への当接圧の調整により行う場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態として、いわゆるタンデム型中間転写方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタ100という)について、図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタ100の全体概要図、図2は、画像形成部における潤滑剤の転移の流れ説明図、図3は、黒用画像形成ユニットの説明図、図4は、カラー用画像形成ユニットの説明図である。図5は、中間転写ベルトの摩擦係数の変化を中間転写ベルトの駆動トルクを検出することで検知する場合の説明図、図6は、中間転写ベルトの摩擦係数の変化をベルトクリーニングブレードの弾性変形量を検出することで検知する場合の説明図である。図7は、潤滑剤塗布量の調整を塗布ブラシの回転数の調整により行う場合の説明図、図8は、潤滑剤塗布量の調整を塗布ブラシの棒状の固形潤滑剤への当接圧の調整により行う場合の説明図である。まず、本プリンタ100の基本的な構成について説明する。
【0014】
図1に示すように本プリンタ100の画像形成部には、中間転写ベルト8の移動方向に対して、最上流側から、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の順で、トナー画像を生成するための4つの画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Y,M,C,Kを備えている。4つのプロセスカートリッジ6Y,C,M,Kは、ドラム状の潜像担持体である感光体1Y,C,M,Kをそれぞれ有している。感光体1Y,C,M,Kの回りにはそれぞれ帯電装置2Y,C,M,K、現像装置5Y,C,M,K、感光体のクリーニング装置であるドラムクリーニング装置4Y,C,M,K、除電装置(不図示)等を有している。なお、最下流に設ける黒(K)を除く、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)の各色の配置順序は上記の限りではないが、一例として示している。また、ドラムクリーニング装置4Y,C,M,Kは、主にドラムクリーニングブレード4Ya,Ca,Ma,Kaにより構成されている。
【0015】
詳しくは後述するが、黒用画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Kには、感光体1Kの磨耗量を減らし、長寿命化を図るための潤滑剤塗布手段である潤滑剤塗布機構50を設けている。一方、カラー用画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Y,C,Mには潤滑材塗布機構を設けていない。また、プロセスカートリッジ6Y,C,Mは、互いに異なる色のトナー(Y,C,M)を用いるが、それ以外は基本的にな同様な構成となっている。そして、プロセスカートリッジ6Kは、黒色のトナー(K)を用いるとともに、潤滑剤塗布機構50を設けている点を除けば、プロセスカートリッジ6Y,C,Mと同様の構成になっている。
【0016】
また、プロセスカートリッジ6Y,C,M,Kの上方には、無端状の中間転写ベルト8を備えた転写ユニット7が設けられている。この転写ユニット7は、中間転写ベルト8の他、そのループ内側に配設された4つの1次転写ローラ(不図示)、クリーニング対向ローラでもある駆動ローラ16、2次転写対向ローラ17と、ループ外側に配設された2次転写ローラ18、ベルトクリーニング装置80等を備えている。ここで、中間転写ベルト8は、図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動される駆動ローラでもある2次転写対向ローラ17の回転により、図中反時計回り方向に無端移動される。
【0017】
ベルトループ内側に配設された4つの1次転写ローラは、感光体1Y,C,M,Kとの間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8の表面と、感光体1Y,C,M,Kとが当接するY,C,M,K用の1次転写ニップが形成されている。なお、1次転写ローラには、それぞれ図示しない電源によってトナーとは逆極性の1次転写バイアスが印加される。
【0018】
また、ベルトループ内側に配設された2次転写対向ローラ17は、ベルトループ外側に配設された2次転写ローラ18との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8の表面と、2次転写ローラ18とが当接する2次転写ニップが形成されている。なお、2次転写ローラ18には、図示しない電源によってトナーとは逆極性の2次転写バイアスが印加される。また、2次転写ローラと数本の支持ローラと駆動ローラにより紙搬送ベルトを架け渡し、2次転写ローラ18と、2次転写対向ローラ17との間に、中間転写ベルト8及び紙搬送ベルトを挟み込んだ構成としてもよい。
【0019】
ベルトループ内側に配設されたクリーニング対向ローラでもある駆動ローラ16は、ベルトクリーニング装置80のベルトクリーニングブレード81との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。このように中間転写ベルト8を挟み込んで、駆動ローラ16とベルトクリーニングブレード81とで、ベルトクリーニングニップを形成している。
【0020】
プロセスカートリッジ6Y,M,C,Kの下方には、感光体1Y,M,C,Kの表面に対してレーザー光Lを照射して静電潜像を書き込むための光書込ユニット9が配設されており、パソコン等からの画像情報に基づき、感光体1Y,C,M,K上に静電潜像を形成する。
【0021】
転写ユニット7の上方には、プロセスカートリッジ6Y,C,M,Kの現像装置5Y,C,M,Kに、補給装置(不図示)を介して補給される、それぞれ対応する色のトナーを収納したトナーボトル10Y,M,C,Kが設けられている。また、光書込ユニット9の下方には、記録紙Pを収容する給紙カセット21や、給紙カセット21から記録紙Pを給紙路に給紙する給紙ローラ22などを有する給紙部20を備えている。そして、給紙部20から送られてきた記録紙を受け入れて2次転写ニップに向けて所定のタイミングで送り出すレジストローラ対23を、上述した2次転写ニップの図中下方に備えている。また、2次転写ニップから送り出される記録紙Pを受け入れてその記録紙Pに対してトナー画像の定着処理を施す定着装置40を、2次転写ニップの図中上方に備えている。そして、定着装置40の記録紙搬送方向下流側には、排紙ローラ24及び排紙された記録紙Pを収納する排紙収納部70が設けられている。
【0022】
次に、本発明の特徴である、画像形成部に備える中間転写ユニット7及びプロセスカートリッジ6Y,C,M,Kにおける、潤滑剤塗布に係る構成について説明する。図2に示すように、黒用画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Kには、感光体1Kの磨耗量を減らし、長寿命化を図るために潤滑剤塗布機構50を設けている。一方、カラー用画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Y,C,Mには潤滑材塗布機構を設けていない。
【0023】
ここで、中間転写ベルト移動方向の最下流に配置されるプロセスカートリッジ6Kで感光体1K上に塗布された潤滑材は、図2図中の矢印Fで示すように、中間転写ベルト8を経て、中間転写ベルト移動方向最上流側のイエローに対応するプロセスカートリッジ6Yの感光体1Y上に転移する。転移した潤滑材は、プロセスカートリッジ6Yの帯電装置2Yによって低分子化して劣化する結果、帯電装置2Yの帯電部材である帯電ローラ3Yに付着した場合には異常画像の原因となる。特に、接触帯電方式の1つである接触ローラ帯電方式を用いた場合には、劣化した潤滑材が帯電部材である帯電ローラ表面に付着し易いため、局所的に抵抗値が変動することによる黒スジ、白スジなどの異常画像として顕在化する課題がある。そこで、本実施形態では、このような異常画像を発生させないために、中間転写ベルト移動方向の最上流に配置されるプロセスカートリッジ6Yでは、非接触帯電方式の1つである非接触ローラ帯電方式を用いることとしている。帯電装置2Yの帯電方式を非接触ローラ帯電方式とすることにより、接触ローラ帯電方式を用いた場合に比べて、非接触帯電ローラである帯電ローラ3Yに潤滑材が付着しにくくなり上述した異常画像の発生を抑制する上で有利になる。
【0024】
このように、最上流に設けたプロセスカートリッジ6Yには、潤滑材塗布機構を有していないので、帯電装置2Yの帯電ローラ3Yに付着する可能性のある潤滑剤を中間転写ベルト8を介して転移する潤滑剤のみできる。さらに、中間転写ベルト8の移動方向最上流側のプロセスカートリッジ6Yの帯電装置2Yの帯電方式として感光体1Yと接触しない非接触ローラ帯電方式を用いることで、中間転写ベルト8から転移してきた劣化した潤滑剤の帯電ローラ3Yへの付着を抑制できる。したがって、劣化した潤滑剤の帯電ローラ3Yへの付着に起因した異常画像発生を抑制できる。また、中間転写ベルト8の移動方向最下流側のプロセスカートリッジ6Kには、潤滑剤を感光体1K上に塗布するための潤滑剤塗布機構50を有しているので、感光体1Kの寿命を長寿命化できる。よって、中間転写ベルト8の移動方向最上流側のプロセスカートリッジ6Yに設けた帯電装置2Yの帯電ローラ3Yへの劣化した潤滑材の付着に起因した異常画像発生を抑制するとともに、利用頻度の高い黒用画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Kの感光体1Kを長寿化できるプリンタ100を提供できる。
【0025】
上述したように、最上流のプロセスカートリッジ6Yに転移する潤滑剤は、最下流の潤滑剤塗布機構50を持つプロセスカートリッジ6Kにより塗布された潤滑剤が中間転写ベルト8を経由して到達する。このプロセスカートリッジ6Kで塗布された潤滑剤は、出力される画像パターンによって、その転移する量が異なる。トナー付着量の多い画像パターンが連続する場合には、トナーと共に潤滑剤が転写紙に転移していくため、中間転写ベルト上に残留、転移する潤滑剤の量が減る。一方、トナー付着量の少ない画像パターンが連続する場合には、トナーと共に転写紙に転移する潤滑剤量が少ないため、中間転写ベルト8上に残留、転移する潤滑剤量が増える。この場合、中間転写ベルト8を経由して、最上流のプロセスカートリッジ6Yに達する潤滑剤量が多くなり、非接触ローラ帯電方式の帯電装置2Yの帯電ローラ汚れが発生し易くなる。
【0026】
ここで、最上流のプロセスカートリッジ6Yに設けた非接触ローラ帯電方式の帯電装置2Yの帯電ローラ汚れが発生し易くなるのは、非接触ローラ帯電方式に用いる非接触帯電ローラと感光体との空隙は100μm以下であるため、中間転写ベルトから感光体に転移した潤滑材量が多い場合には非接触帯電ローラに付着し易いためである。そして、特に画像形成ユニットの長寿命化が要求されている場合に、非接触帯電ローラに付着した劣化した潤滑剤の蓄積によって異常画像発生の原因となることがあり、非接触ローラ帯電方式を用いても異常画像発生を十分に防げず、長寿命化を達成できないことがある。すなわち、最上流のプロセスカートリッジ6Yの実質的な寿命を長寿命化することができない場合がある。したがって、最上流のプロセスカートリッジ6Yの帯電装置2Yを非接触帯電ローラとして、劣化した潤滑剤を付着し難くするとともに、中間転写ベルト8から最上流のプロセスカートリッジ6Yの感光体1Yに転移する潤滑剤量を低減して、帯電ローラ3Yに付着する可能性のある潤滑剤の到達量を極力低減する必要がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、中間転写ベルト8上の潤滑剤存在量に応じて、最下流に設けられたプロセスカートリッジ6Kの潤滑剤塗布機構50による潤滑剤塗布量を調整することとした。特に、中間転写ベルト8上の潤滑剤存在量が多い場合には、プロセスカートリッジ6Kにおける潤滑剤塗布機構50による潤滑剤塗布量を減らすように調整する。このように最上流のプロセスカートリッジ6Yの感光体1Yに転移する潤滑剤量を低減できる構成を設けることて、そもそも最上流のプロセスカートリッジ6Yの帯電ローラ3Yに付着する可能性のある潤滑剤の到達量を適切な量まで減らすことで、帯電ローラ汚れをより効果的に抑制できる。
【0028】
その結果、他のカラー画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6C,Mに悪影響を及ぼすことなく、最上流のプロセスカートリッジ6Yの長寿命化を可能にできる。合わせて、プロセスカートリッジ6Kの感光体1Kに潤滑剤を塗布することで、最下流のプロセスカートリッジ6Kを長寿命化することができるプリンタ100を提供できる。以下に、中間転写ベルト8上の潤滑剤存在量に応じて、最下流に設けられたプロセスカートリッジ6Kの潤滑剤塗布機構50による潤滑剤塗布量を調整して、中間転写ベルト8から最上流のプロセスカートリッジ6Yに転移する潤滑剤量を低減する構成について説明する。
【0029】
図3で示すように、最下流の黒用画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Kは、ドラムクリーニングブレード4Ka、帯電装置2KのAC重畳した非接触帯電ローラである帯電ローラ3K、感光体1K、棒状の固形潤滑剤51、塗布ブラシ52、塗布ブレード53、及び現像装置5Kにより主に構成されている。ここで、帯電装置2Kの帯電ローラ3Kを非接触帯電ローラとしていることで、帯電ローラ汚れを抑制できるとともに、感光体削れ量を低減することができ、プロセスカートリッジ6Kのさらなる長寿命化が可能となるプリンタ100を提供できる。一方、図4に示すように、最上流の画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Yは、ドラムクリーニングブレード4Ya、帯電装置2YのAC重畳した非接触帯電ローラである帯電ローラ3Y、感光体1Y、及び現像装置5Kから主に構成されている。つまり、プロセスカートリッジ6Yは、棒状の固形潤滑剤51、塗布ブラシ52、及び塗布ブレード53から構成される潤滑剤塗布機構50を備えていない。また、上述したように、他のカラー用の画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6C,Mは、プロセスカートリッジ6Yと基本的には同様な構成であるが、必ずしも帯電ローラ3C,Mに非接触帯電ローラを用いなくても良い。しかし、帯電ローラ汚れや感光体削れ量低減の観点から非接触帯電ローラを用いることが有利である。
【0030】
図3に示す黒用画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Kは、プロセスカートリッジ6Kに設けられた潤滑剤塗布機構50により、感光体1K表面に潤滑材が塗布され、感光体磨耗量を低減し、長寿命化を図っている。そして、図2における矢印Fは、プロセスカートリッジ6Kの潤滑剤塗布機構50で塗布された潤滑材が中間転写ベルト8を経て、最上流のプロセスカートリッジ6Yに転移するまでの流れを示している。中間転写ベルト移動方向の最下流に配置されるプロセスカートリッジ6Kで感光体1K上に塗布された潤滑材の一部は、中間転写ベルト8を経て、中間転写ベルト移動方向最上流側のプロセスカートリッジ6Yの感光体1Y上に転移する。転移した潤滑材は、プロセスカートリッジ6YのAC重畳した帯電装置2Yによって低分子化して劣化する。ここで、最下流のプロセスカートリッジ6Yの帯電装置2Yには非接触帯電ローラである帯電ローラ3Yを用いているため、劣化した潤滑材が帯電ローラ3Yに付着し難くく、異常画像として顕在化しない。
【0031】
そして、上述したようにプロセスカートリッジ6Yにおける帯電装置2Yの帯電ローラ3Yを非接触帯電ローラとするのに加え、中間転写ベルト8から転移する潤滑剤をより少なくするために、中間転写ベルト8上の潤滑剤存在量が多い場合には、プロセスカートリッジ6Kの潤滑剤塗布機構50による潤滑剤塗布量を減らすように調整することで、プロセスカートリッジ6Yの帯電ローラ汚れをより発生させ難くくできる。次に、中間転写ベルト8上の潤滑剤存在量が多くなったことを検知し、その結果に基づいてプロセスカートリッジ6Kの潤滑剤塗布機構50による潤滑剤塗布量を調整する具体的な方法について説明する。なお、本実施形態の転写ユニット7では、中間転写ベルト8へ直接、潤滑剤を塗布する機構は設けていない。したがって、プロセスカートリッジ6Yに転移する際の中間転写ベルト8上の潤滑剤存在量は、プロセスカートリッジ6Kから中間転写ベルト8に転移した後、2次転写の際にトナーと共に転写紙に転移したり、ベルトクリーニングの際にトナーとともにクリーニングされたたりせず、中間転写ベルト8上に残留、転移した潤滑剤量(以下、潤滑剤転移量という)である。
【0032】
中間転写ベルト8上の潤滑剤存在量に応じて、つまり中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量の増減に応じて、中間転写ベルト8上の摩擦係数は変化し、中間転写ベルト8と接触している部材との摩擦係数が増減することが分っている。この中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量の増減による摩擦係数の変化を検知し、その検知結果に応じて、特に摩擦係数が低く検知されて、中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量が多いと検知した場合、最上流の画像形成ユニットに転移する潤滑剤量を減らすために、次のような方法で調整を行う。
【0033】
(潤滑剤転移量の増減の検知)
まず、中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量の増減を検知について説明する。例えば、中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量が少ない場合、中間転写ベルト8とベルトクリーニングブレード81との摩擦係数が大きくなり、中間転写ベルト8の駆動トルクが高くなる。そして、逆に中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量が多い場合、中間転写ベルト8とベルトクリーニングブレード81との摩擦係数が小さくなり、中間転写ベルト8の駆動トルクが小さくなる。そこで、図5に示すように、駆動ローラ16の駆動トルクを検出するトルク検出手段91を設けて、中間転写ベルト8の駆動トルク変動、つまり摩擦力変動を検知することで、中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量の増減を検知する方法をとることができる。
【0034】
また、中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量が少ない場合と、多い場合との中間転写ベルト8とベルトクリーニングブレード81との摩擦係数の増減は、ベルトクリーニングブレード81の弾性変形量の違いにも現れる。そこで、図6に示すように、ベルトクリーニングブレード81に歪センサー等の変形量検出手段92を取り付け、この弾性変形量の変動を計測して摩擦力変動を検知することで、中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量の増減を検知する方法もとることができる。そして、検知した潤滑剤転移量の増減に応じて、プロセスカートリッジ6Kから中間転写ベルト8上へ転移する潤滑剤量を調整する。特に潤滑剤存在量が多く、中間転写ベルト8と接触部材との摩擦係数が下がったと検知した場合には、プロセスカートリッジ6Kから中間転写ベルト8上へ転移する潤滑剤量を減らすようにする。
【0035】
上記いずれかの検知方法で中間転写ベルト8のベルトクリーニングブレード81と中間転写ベルト8との摩擦係数変動を検知することで、中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量の増減を検知できる。したがって、複雑な機器を用いることなく容易に、かつ低コストで中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量の増減に応じて、最下流に設けられたプロセスカートリッジ6Kの潤滑剤塗布機構50による潤滑剤塗布量を調整できるプリンタ100を提供できる。すなわち、中間転写ベルト8上の潤滑剤存在量に応じて、最下流に設けられたプロセスカートリッジ6Kの潤滑剤塗布機構50による潤滑剤塗布量を調整することができるプリンタ100を提供できる。次に具体的な潤滑剤塗布量の調整方法について説明する。
【0036】
(潤滑剤塗布量の調整方法)
上記いずれかの検知方法によって、中間転写ベルト8上への潤滑剤転移量が多いと検知された場合、その後の画像形成過程において、一時的、あるいは潤滑剤転移量が十分に減るまでの間(以下、所定期間という)、プロセスカートリッジ6Kにおける潤滑剤塗布量を減らす動作を行い、中間転写ベルト8上の潤滑剤転移量を減らす。通常、プロセスカートリッジ6Kにおける潤滑剤塗布方法は、図3に示すような構成となっている。具体的にはドラムクリーニングブレード4Kaの感光体1Kの回転方向下流側に、塗布ブラシ52、棒状の固形潤滑剤51、及び塗布ブレード53から主に構成される潤滑剤塗布機構50を設けている。また、感光体1Kへの潤滑剤の塗布量の調整は、塗布ブラシ52の回転数や、棒状の固形潤滑剤51に対する塗布ブラシ52の食込み量を変化させることで行える。
【0037】
そこで、本実施形態では、次のいずれかの方法をとることとした。1つ目の方法は、図7に示すように、塗布ブラシ52の回転数を可変とする回転数可変機構54を設け、所定期間、塗布ブラシ52の回転数を下げて感光体1Kへの潤滑剤の塗布量を減らし、中間転写ベルト8の潤滑剤転移量を減らすことができる。回転数可変機構54としては、例えば、塗布ブラシ52が単独で回転駆動されている場合には、駆動モータの回転数を制御することで簡単に変更することができる。このように回転数可変機構54を設けることで、容易にかつ低コストで感光体1Kへの潤滑剤塗布量の調整が可能なプリンタ100を提供できる。2つ目の方法は、図8に示すように、棒状の固形潤滑剤51に対する塗布ブラシ52の食込み量を可変とする食込量可変機構55を設け、棒状の固形潤滑剤51に対する塗布ブラシ52の食込み量を減らすことで中間転写ベルト8への潤滑剤転移量を減らすことができる。食込量可変機構55としては、例えば、棒状の固形潤滑剤51を塗布ブラシ52に向け押圧している手段の支持側の端部をカム等で押圧方向に前後移動させる簡単な構成で実現できる。このように食込量可変機構55を設けることで、例え、塗布ブラシ52の回転駆動が単独ではなく、他の回転体の回転駆動に連動している場合であっても、容易にかつ低コストで感光体1Kへの潤滑剤塗布量の調整が可能なプリンタ100を提供できる。次に、潤滑剤塗布機構50による潤滑剤の塗布方法について説明する。
【0038】
(潤滑剤の塗布方法)
プロセスカートリッジ6Kの潤滑剤塗布機構50では、図3に示すように、感光体回転方向下流側に感光体1Kに沿って塗布ブラシ52、塗布ブレード53の順で、上流側のドラムクリーニングブレード4Kaと、下流側の帯電ローラ3Kの間に配置されている。そして、感光体1Kの塗布ブラシ52を介して対向する位置には、棒状の固形潤滑剤51を設けており、塗布ブラシ52が所定の食込み量で棒状の固形潤滑剤51から粉末状の潤滑剤を削り取るように設定されている。ここで、上述した潤滑剤塗布量の調整を食込量可変機構55で行う場合には、検知した潤滑剤転移量の増減に応じて、棒状の固形潤滑剤51が食込量可変機構55により、図8図中、感光体1Kと塗布ブラシ52の回転中心を通過する直線に略平行に移動されることになる。
【0039】
この潤滑剤塗布機構50では、塗布ブラシ52により棒状の固形潤滑剤51から削り取った粉末状の潤滑剤を塗布ブラシ52により感光体1Kの表面に塗布する。そして、塗布ブラシ52の下流側に配置した塗布ブレード53で、感光体1Kの表面に塗布された潤滑剤を均してその厚さを均一にする。ここで、本実施形態では、塗布ブレード53を感光体1Kに対してカウンター方式の当接方法を示しているが、トレーリング方式の当接方法でも構わない。また、塗布ブレード53先端を鈍角形状とすることも塗布性能向上に有効となる。次に、本実施形態で用いる潤滑剤について説明する。
【0040】
(潤滑剤)
本実施形態に用いる潤滑剤は、疎水性有機化合物(A)と、無機微粒子(B)と、無機潤滑剤(C)とを含んでいる。疎水性有機化合物(A)の例としては、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、脂環式不飽和炭化水素や芳香族炭化水素に分類される炭化水素類の他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルキルエーテル(PFA)、パーフルオロエチレン−パーフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂やフッ素系ワックス類、ポリメチルシリコーン、ポリメチルフェニルシリコーン等のシリコーン樹脂やシリコーン系ワックス類等が挙げられる。
【0041】
また、脂肪酸金属塩、安定した疎水性金属塩が取出される代表的な脂肪酸には、カプロン酸、カプリル酸、エナンチル酸、ペラルゴン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデコイン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノンデサイクリック酸、アラキジン酸、ベヘン酸、スチリンギン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リシノレイン酸、ペテロセリニン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、リカニン酸、バリナリン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、鯨油酸及びそれらの混合物がある。脂肪酸の代表的な安定した金属塩には、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレインサン銅、オレイン酸鉛、オレイン酸マンガン、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸コバルト、パルミチン酸鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、カプリル酸鉛、カプリン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸カドミウム及びそれらの混合物があるが、これに限るものではない。また、これらを混合して使用してもよい。
【0042】
無機潤滑剤(C)とは、その物質自身がへき開して潤滑する、または内部滑りを起こすものを指す。この例としては、マイカ、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、タルク、カオリン、モンモリロナイト、フッ化カルシウム、グラファイト、などがあるがこれに限るものではない。例えば窒化ホウ素は、原子がしっかりと組み合った六角網面が、広い間隔で重なり、層と層とをつなげるのは、弱いファンデルワールス力のみであるため、その層間は容易にへき開して潤滑する。
【0043】
それに対して無機微粒子(B)とは、物体と物体の間に挟まって、コロの役割はするものの、その物質自身での内部滑りや、へき開は起こさない粒子を指す。この例としては、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム等があるが、これらに限定される物ではない。また、これらを複数混合して使用しても良い。
【0044】
ここで、本実施形態で使用する固形潤滑剤51では、上述したように疎水性有機化合物(A)として脂肪酸金属塩であるステアリン酸鉛、無機微粒子(B)としてアルミナ、及び無機潤滑剤(C)として窒化ホウ素を用いている。このように固形潤滑剤51に、少なくともステアリン酸鉛を含むことで、クリーニング性向上や、寿命向上、転写性の向上を図ることができるプリンタ100を提供できる。これはラメラ結晶を持つステアリン酸鉛は、両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れて滑りやすく、潤滑性が優れているためである。また、少なくともステアリン酸鉛を含み、窒化ホウ素も含むことで、各帯電装置2で行う帯電工程での各感光体1の近傍で行われる放電の影響をうけた場合でも、窒化ホウ素の潤滑性の効果により、各クリーニングブレードと感光体や中間転写ベルトとの潤滑性が保たれ、トナーすり抜けを防止することが可能なプリンタ100を提供できる。
【0045】
さらに、疎水性有機化合物(A)として脂肪酸金属塩であるステアリン酸鉛に、無機微粒子(B)であるアルミナ及び無機潤滑剤(C)である窒化ホウ素の両方を添加することで、感光体及び中間転写ベルトのクリーニング性、及び帯電装置の部材汚染を大幅に改善しつつ、感光体及び中間転写ベルトのフィルミングを防止しできる。ここで、無機微粒子(B)であるアルミナとしては、粒径は3μmよりも小さいことが望まく、無機潤滑剤(C)である窒化ホウ素の配合比率は50%よりも少ないことが望ましい。次に、本実施形態で用いるドラムクリーニングブレード4Ya,Ca,Ma,Kaについて説明する。なお、各ドラムクリーニングブレード4aの構成は、同様であるので、以下の説明では、特に必要がない限り、符号Y,C,M,Kを省略し、図4を用いて説明する。
【0046】
(ドラムクリーニングブレード)
本実施形態では、ドラムクリーニングブレード4aとして以下の構成を採用している。潤滑剤を塗布しないカラー画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Y,M,Cにおいては、潤滑剤塗布を行う黒用画像形成ユニットであるプロセスカートリッジ6Kに比べて、感光体磨耗やトナーに添加された外添剤による感光体表面汚染が発生しやすくなる。感光体表面汚染に対しては、ドラムクリーニングブレード4aが感光体1と当接するエッジ層の強度が高いほど有効であり、エッジ層に用いるウレタンゴムの23[℃]における100%モジュラス値が6[MPa]〜12[MPa]であると好適である。また、このようなエッジ強度を有し、かつ、少なくとも2層以上の積層構造を有し、各感光体1と当接するエッジ層の強度が背面層の強度より大きく構成することにより、良好なクリーニング性能、及び感光体表面汚染に対して長期にわたって効果を発揮する。以下に、より詳細に説明する。
【0047】
ドラムクリーニングブレード4aは、互いに永久伸びの値が異なる材質からなるエッジ層及びバックアップ層の2つの層によって構成される積層構造をしている。そして、ドラムクリーニングブレード4aの一端はブレードホルダ(不図示)により保持されており、他端側のエッジ部を、図4図中の時計回りに回転する感光体1の表面に当接させて、感光体1の表面をクリーニングする構成である。ここで、エッジ部を備えるエッジ層はバックアップ層に比べて永久伸びの値が大きい材質によって形成されている。
【0048】
従来、粉砕トナーや円形度が低く、粒径が約6[μm]以上の重合トナーをクリーニングするために用いられるブレード部材では、単層のゴム材料を用い、その100%モジュラスの値は約5[MPa]以下で、永久伸びは約1.5[%]以下であることが一般的であった。一方、硬度が高く、100%モジュラスの値の大きいウレタンゴム材料をもちいることで、感光体等の像坦持体との当接領域における当接圧力を上げることができ、小粒径、球形の重合トナーをクリーニングすることができる。しかし、100%モジュラスの値が大きいウレタンゴム材料は、一般的に永久伸びが大きくなる傾向がある。そのため、従来から使用されてきた自由長を有し、単層のウレタンゴム材料を保持部材である金属製の支持板で支持するタイプのブレード部材に、100%モジュラスの値が大きい材料を用いた場合には、いわゆるヘタリが発生しやすく、初期のクリーニング性能が維持できず、長期に渡るクリーニング性能の維持が困難な場合があった。
【0049】
一方、本実施形態のドラムクリーニングブレード4aでは、小粒径、球形の重合トナーをクリーニングするために、被清掃体との当接領域における当接圧力を上げる目的で、被清掃体と当接する部分(エッジ層)に高硬度で、100%モジュラスの値が大きい材料を使用している。ここで、エッジ層は、23[℃]における100%モジュラス値が6[MPa]〜12[MPa]のゴム材料であることが望ましい。また、100%モジュラスの値の高い材料を使用した際に課題となるヘタリを防止するため、エッジ層の背面(感光体1とは反対側)にゴム材料の組成が異なるバックアップ層を設けている。このバックアップ層に用いる材料には、エッジ層に比べて低硬度で、100%モジュラスの値が小さく、永久伸びが小さい材料を使用する。このように構成したドラムクリーニングブレード4aを用いることで、被清掃体である感光体1との当接領域における当接圧力を上げることができ、小粒径、球形の重合トナーを良好にクリーニングすることができるプリンタ100を提供できる。
【0050】
また、上述した本実施形態では、各色に対応する画像形成ユニットで、その構成要素である感光体1、帯電装置2、ドラムクリーニングブレード4a、及び除電装置等(黒用にあっては、潤滑剤塗布機構50も含む)と、現像装置5とを1つのプロセスカートリッジとして構成している。しかし、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば、各色に対応する画像形成ユニットで、現像装置5を除く構成要素を1つのプロセスカートリッジとして構成し、現像装置5を別体として構成しても良い。
【0051】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
感光体1Y,C,M,Kなどの像担持体、帯電装置2Y,C,M,Kなどの帯電装置、現像装置5Y,C,M,Kなどの現像装置、ドラムクリーニング装置4Ya,Ca,Ma,Kaなどのクリーニング装置を有し、各色にそれぞれ対応したプロセスカートリッジ6Y,C,M,Kなどの複数の画像形成ユニットと、中間転写ベルト8などの中間転写ベルトとを備えるプリンタ100などのタンデム式のカラー画像形成装置において、前記中間転写ベルトの移動方向最上流側に設けられたプロセスカートリッジ6Yなどの画像形成ユニットは、非接触式の帯電装置2Yなどの帯電装置を有し、潤滑剤を像担持体上に塗布するための潤滑剤塗布手段を有しておらず、前記中間転写ベルトの移動方向最下流側に設けられたプロセスカートリッジ6Kなどの画像形成ユニットは、潤滑剤を感光体1Kなどの像担持体上に塗布するための潤滑剤塗布機構50などの潤滑剤塗布手段を有していることを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、プロセスカートリッジ6Kなどの利用頻度の高い画像形成ユニットの感光体1Kなどの像担持体を長寿化できるとともに、中間転写ベルト8などの中間転写ベルトの移動方向最上流側のプロセスカートリッジ6Yなどの画像形成ユニットに設けた帯電装置2Yなとの帯電装置の帯電ローラ3Yなどの帯電部材への劣化した潤滑材の付着に起因した異常画像発生を抑制するプリンタ100などの画像形成装置を提供できる。
(態様B)
(態様A)において、中間転写ベルト8などの前記中間転写ベルト上の潤滑剤存在量に応じて、前記最下流に設けられたプロセスカートリッジ6Kなどの画像形成ユニットの潤滑剤塗布機構50などの前記潤滑剤塗手段による潤滑剤塗布量を調整することを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、プロセスカートリッジ6C,Mなどの他の色の画像形成ユニットに悪影響を及ぼすことなく、プロセスカートリッジ6Yなどの最上流の画像形成ユニットの長寿命化を可能にできる。合わせて、プロセスカートリッジ6Kなどの最下流の画像形成ユニットの感光体1Kなどの感光体に潤滑剤を塗布することで、最下流の画像形成ユニットを長寿命化することができるプリンタ100などの画像形成装置を提供できる。
(態様C)
(態様B)において、前記潤滑剤存在量の検知は、中間転写ベルト8などの前記中間転写ベルトと、該中間転写ベルト用のベルトクリーニングブレード81などのクリーニングブレードとの摩擦力変動の検知を行うことを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、複雑な機器を用いることなく容易に、かつ低コストで中間転写ベルト8などの中間転写ベルト上の潤滑剤存在量に応じて、最下流に設けられたプロセスカートリッジ6Kなどの画像形成ユニットの潤滑剤塗布機構50などの潤滑剤塗布手段による潤滑剤塗布量を調整できるプリンタ100を提供できる。
を提供できる。
(態様D)
(態様B)又は(態様C)おいて、プロセスカートリッジ6Kなどの前記最下流に設けられた画像形成ユニットの潤滑剤塗布機構50などの前記潤滑剤塗布手段における潤滑剤塗布量の調整は、塗布ブラシ52などの塗布ブラシの回転数を変えることによって行うことを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、容易にかつ低コストで感光体1Kなどの像担持体への潤滑剤塗布量の調整が可能なプリンタ100を提供できる。
(態様E)
(態様B)又は(態様C)おいて、プロセスカートリッジ6Kなどの最下流に設けられた画像形成ユニットの潤滑剤塗布機構50などの前記潤滑剤塗布手段における潤滑剤塗布量の調整は、棒状の固形潤滑剤51などの潤滑剤に対する塗布ブレード53などの塗布ブラシの食込み量を変えることによって行うことを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、容易にかつ低コストで感光体1Kなどの像担持体への潤滑剤塗布量の調整が可能なプリンタ100を提供できる。
(態様F)
(態様A)乃至(態様E)のいずれかにおいて、プロセスカートリッジ6Kなどの前記最下流に設けられた画像形成ユニットは、帯電装置2Kなどの非接触帯電方式の帯電装置を有していることを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、帯電ローラ汚れを抑制できるとともに、感光体削れ量を低減することができ、プロセスカートリッジ6Kなどの最下流の黒用画像形成ユニットのさらなる長寿命化が可能となるプリンタ100などの画像形成装置を提供できる。
(態様G)
(態様A)乃至(態様F)のいずれかにおいて、プロセスカートリッジ6Kなどの前記最下流の画像形成ユニットは、黒トナー用であることを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、利用頻度の高いプロセスカートリッジ6Kなどの黒用画像形成ユニットの感光体1Kなどの像担持体を長寿化できるプリンタ100などの画像形成装置を提供できる。
(態様H)
(態様A)乃至(態様G)のいずれかにおいて、棒状の固形潤滑剤51などの前記潤滑剤は少なくともステアリン酸亜鉛を含むことを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、クリーニング性向上や、寿命向上、転写性の向上を図ることができるプリンタ100などの画像形成装置を提供できる。
(態様I)
(態様A)乃至(態様H)のいずれかにおいて、棒状の固形潤滑剤51などの前記潤滑剤は少なくともステアリン酸亜鉛を含み、窒化ホウ素(BN)も含むことを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、各帯電装置2などの帯電装置で行う帯電工程での各感光体1などの感光体の近傍で行われる放電の影響をうけた場合でも、窒化ホウ素の潤滑性の効果により、各クリーニングブレードなどのクリーニングブレードと感光体や中間転写ベルト8などの中間転写ベルトとの潤滑性が保たれ、トナーすり抜けを防止することが可能なプリンタ100などの画像形成装置を提供できる。
(態様J)
(態様A)乃至(態様I)のいずれかにおいて、プロセスカートリッジ6Y,C,M,Kなどの各画像形成ユニットに有したドラムクリーニング装置4Y,C,M,Kなどの前記クリーニング装置は、ドラムクリーニングブレード4Ya,Ca,Ma,Kaなどのクリーニングブレードからなり、該クリーニングブレードが感光体1Y,C,M,Kなどの像担持体と当接するエッジ層の材料の、23[℃]における100%モジュラス値が6[MPa]〜12[MPa]であることを特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、被清掃体である感光体1Y,C,M,Kなどの感光体1との当接領域における当接圧力を上げることができ、小粒径、球形の重合トナーを良好にクリーニングすることができるプリンタ100などの画像形成装置を提供できる。
【符号の説明】
【0052】
1 感光体
2 帯電装置
3 帯電ローラ
4 ドラムクリーニング装置
4a ドラムクリーニングブレード
5 現像装置
6 プロセスカートリッジ
7 中間転写ユニット
8 中間転写ベルト
9 光書込ユニット
10 トナーボトル
16 駆動ローラ
17 2次転写対向ローラ
18 2次転写ローラ
20 給紙部
21 給紙カセット
22 給紙ローラ
23 レジストローラ対
24 排紙ローラ
40 定着装置
50 潤滑剤塗布機構
51 固形潤滑剤
52 塗布ブラシ
53 塗布ブレード
54 回転数可変機構
55 食込量可変機構
70 排紙収納部
80 ベルトクリーニング装置
81 ベルトクリーニングブレード
91 トルク検出手段
92 変形量検出手段
100 プリンタ
L レーザー光
P 記録紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特許第3587094号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置を有し、各色にそれぞれ対応した複数の画像形成ユニットと、中間転写ベルトとを備えるタンデム式のカラー画像形成装置において、
前記中間転写ベルトの移動方向最上流側に設けられた画像形成ユニットは、非接触式の帯電装置を有し、潤滑剤を像担持体上に塗布するための潤滑剤塗布手段を有しておらず、
前記中間転写ベルトの移動方向最下流側に設けられた画像形成ユニットは、潤滑剤を像担持体上に塗布するための潤滑剤塗布手段を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記中間転写ベルト上の潤滑剤存在量に応じて、前記最下流に設けられた画像形成ユニットの前記潤滑剤塗手段による潤滑剤塗布量を調整することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記潤滑剤存在量の検知は、前記中間転写ベルトと、該中間転写ベルト用のクリーニングブレードとの摩擦力変動の検知を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の画像形成装置おいて、
前記最下流に設けられた画像形成ユニットの前記潤滑剤塗布手段における潤滑剤塗布量の調整は、塗布ブラシの回転数を変えることによって行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の画像形成装置おいて、
最下流に設けられた画像形成ユニットの前記潤滑剤塗布手段における潤滑剤塗布量の調整は、棒状の固形潤滑剤に対する塗布ブラシの食込み量を変えることによって行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の画像形成装置において、
前記最下流に設けられた画像形成ユニットは、非接触帯電方式の帯電装置を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の画像形成装置において、
前記最下流の画像形成ユニットは、黒トナー用であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一に記載の画像形成装置において、
前記潤滑剤は少なくともステアリン酸亜鉛を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一に記載の画像形成装置において、
前記潤滑剤は少なくともステアリン酸亜鉛を含み、窒化ホウ素(BN)も含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の画像形成装置において、
各画像形成ユニットに有した前記クリーニング装置は、クリーニングブレードからなり、該クリーニングブレードが前記像担持体と当接するエッジ層の材料の、23[℃]における100%モジュラス値が6[MPa]〜12[MPa]であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−64899(P2013−64899A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203987(P2011−203987)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】