説明

画像読取装置及び原稿搬送方法

【課題】原稿読取を中止した場合に、搬送中の原稿を排出させる排出処理や、給紙トレイに残された原稿の空送処理にかかる時間を短縮する。
【解決手段】両面読取中にストップキー212が操作され、読取中止が指示された場合に、搬送制御部32が、片面パスを選択するためのパス指定信号を出力し、搬送経路が両面パスから片面パスへ切り替えられる。このため、読取中止時に搬送中であった原稿を排出トレイへ排出させる排出処理や、給紙トレイ上に残っている原稿を排出トレイへ排出させる空送処理が、両面パスより短い片面パスを用いて行われ、排出処理や空送処理にかかる時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び原稿搬送方法に係り、更に詳しくは、2以上の原稿の連続読取中に読み取りを中止することができる画像読取装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
2以上の原稿を自動搬送し、これらの原稿を順次に読み取ることができる画像読取装置が広く普及している。また、自動搬送によって原稿の両面読取を行うことができる画像読取装置も広く普及している。両面読取が可能な画像読取装置には、2つのイメージセンサを用いて原稿の両面読取を行う1パス2スキャナ方式や、自動搬送中に原稿の表裏を反転させて1つのイメージセンサを用いて原稿の両面読取を行う2パス1スキャナ方式が知られている。
【0003】
2パス1スキャナ方式の両面読取には、原稿の搬送中に搬送方向を切り替えるスイッチバックを行うことにより、イメージセンサに対し原稿を同一方向に2回通過させるスイッチバック方式と、Uターン路を用いて搬送路を交差させ、イメージセンサに対し原稿を逆方向に2回通過させるUターン方式が考えられる。Uターン方式を採用した場合、搬送方向の切り替えを行う必要がないことから、搬送制御が簡単になり、また、読取時間を短縮することができる(例えば、特許文献1)。
【0004】
この様な自動搬送を行う画像読取装置では、通常、2以上の原稿の連続読取中に当該読取処理を中止させることができる。例えば、スタートキーの操作後、画像読取装置の設定ミスや原稿の取り違えに気づいたような場合に、ユーザがストップキーを操作することによって、実行中の原稿読取を中止することができる。このような中止指示が入力された場合、原稿読取を行うことなく、搬送中の原稿を排紙トレイへ排出する排出処理が行われる。このような排出処理を行うことによって、読取処理を中止した場合であっても、ユーザが搬送路から原稿を取り出す必要がない。
【0005】
また、中止指示が入力された場合に、給紙トレイ上に残っている原稿を順に排紙トレイへ排出する空送処理が行われる画像処理装置もある。このような空送処理を行うことにより、読取処理を中止した場合であっても、全ての原稿を読取前と同じ順序で排紙トレイに排出した状態にすることができる。このため、読取中止後に、ユーザ自身が、原稿の順序を確認しながら、給紙トレイ及び排紙トレイ上の原稿を重ね合わせる必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−10861
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2パス1スキャナ方式の画像読取装置では、両面読取時に原稿のスイッチバックやUターンが行われるため、片面読取時に比べて、原稿の搬送長が長くなり、原稿間隔も長くなる。このため、両面読取を中止した場合、その後の排出処理や空送処理の時間が、片面読取を中止した場合に比べて、長くなってしまうという問題があった。
【0008】
例えば、Uターン方式の画像読取装置の場合、通常、搬送経路を片面パス及び両面パスに分岐させ、Uターン路を用いて、両面パスのみを交差させるように構成される。このため、両面パスは片面パスよりも長く、更に、両面読取時には、原稿同士が衝突しないように片面読取時よりも原稿間隔を長くする必要がある。このため、両面読取を中止した場合の排出処理や空送処理の時間が、片面処理を中止した場合に比べて、長くなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、原稿読取を中止した場合に、搬送中の原稿を排出させる排出処理にかかる時間を短縮することができる画像読取装置を提供することを目的とする。また、原稿読取を中止した場合に、給紙トレイに残された原稿の空送処理にかかる時間を短縮することができる画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明による画像読取装置は、原稿の読取方法として両面読取及び片面読取のいずれかを指定する読取指定手段と、給紙トレイから原稿を繰り込む原稿繰込手段と、両面読取用の第1搬送路及び片面読取用の第2搬送路の分岐点において、指定された上記読取方法に基づいて、原稿の搬送経路を切り替える経路切替手段と、両面読取の中止指示を入力するための中止入力手段とを備え、上記経路切替手段は、上記中止指示に基づいて、第2搬送路を選択し、第1搬送路は、第2搬送路よりも長く、上記中止指示の入力時に上記給紙トレイ上に残っている原稿が、上記中止指示の入力後に繰り込まれ、第2搬送路を介して排出されるように構成される。
【0011】
この様な構成によれば、原稿の両面読取中に中止指示が入力された場合に、原稿の搬送経路が、経路切替手段によって第1搬送路から第2搬送路へ切り替えられる。このため、中止指示の入力後に給紙トレイに残っている原稿を排紙トレイへ搬送する空送処理が、第1搬送路よりも短い第2搬送路を介して行われ、上記空送処理に必要な時間を短縮することができる。
【0012】
なお、両面読取の中止指示は、画像読取装置に対する外部入力であればよく、例えば、ユーザによる操作入力であってもよいし、ユーザ端末からの信号入力であってもよい。また、両面読取の中止指示は、両面読取専用の中止指示には限定されず、両面読取中に入力された中止指示であってもよい。
【0013】
第2の本発明による画像読取装置は、上記構成に加えて、第1搬送路が、上記分岐点から読取位置へ原稿を搬送する導入路と、上記導入路から進入して上記読取位置を通過した原稿をUターンさせ、再び上記読取位置に進入させるUターン路とを有し、第2搬送路が、上記読取位置を通過することなく、上記Uターン路上の合流点において第1搬送路と合流し、上記原稿繰込手段が、上記中止指示の入力時に給紙トレイ上に2以上の原稿が残っている場合に、上記中止指示の入力前の両面読取よりも狭い原稿間隔で原稿を繰り込むように構成される。
【0014】
この様な構成によれば、中止指示の入力後に給紙トレイに残っている原稿を排紙トレイへ搬送する空送処理が、中止前に使用していた第1搬送路ではなく、読取位置において交差しない第2搬送路を介して行われる。このため、第1搬送経路よりも狭い原稿間隔で原稿を繰り込むことができ、上記空送処理に必要な時間を短縮することができる。特に、給紙トレイに残っている原稿数が多くなるほど、大きな効果が得られる。
【0015】
第3の本発明による画像読取装置は、上記構成に加えて、上記給紙トレイから上記分岐点へ原稿を搬送する給紙路を備え、上記中止指示の入力時に上記給紙路を搬送中の原稿が、第2搬送路を介して排出されるように構成される。
【0016】
この様な構成によれば、中止指示の入力時に分岐点よりも上流の給紙路を搬送中の原稿を第2搬送路へ搬送することができる。このため、当該原稿をより早く排出させることができる。また、その後の空送処理も早く開始することができる。
【0017】
第4の本発明による画像読取装置は、上記構成に加えて、上記原稿繰込手段は、上記中止指示の入力後に最初に繰り込まれた原稿の前端が、上記中止指示の入力前に最後に繰り込まれた原稿の後端が上記合流点を通過した後に上記合流点に到達するように、上記中止指示の入力後に原稿繰込を一旦中止し、その後に再開するように構成される。
【0018】
この様な構成によれば、中止指示の入力前後にそれぞれ繰り込まれた原稿が、第1搬送路及び第2搬送路の合流点において接触するのを防止することができる。両面読取の中止指示が入力された場合に、経路切替手段が、直ちに第1搬送路から第2搬送路へ切り替え、原稿繰込手段が次の原稿繰込を開始すると、第1搬送路及び第2搬送路の合流点付近で原稿が接触する可能性がある。このため、中止指示の入力後に原稿繰込を一旦中止し、その後に再開させることにより、原稿同士の接触を防止することができる。
【0019】
第5の本発明による原稿搬送方法は、原稿の読取方法として両面読取及び片面読取のいずれかを指定する読取指定ステップと、給紙トレイから原稿を繰り込む原稿繰込ステップと、両面読取の中止指示を入力するための中止入力ステップと、両面読取用の第1搬送路及び第1搬送路よりも短い片面読取用の第2搬送路の分岐点において、指定された上記読取方法に基づいて、原稿の搬送経路を切り替えるとともに、上記中止指示に基づいて、第2搬送路を選択する経路切替ステップとを備え、上記中止指示の入力時に上記給紙トレイ上に残っている原稿が、上記中止指示の入力後に繰り込まれ、第2搬送路を介して排出されるように構成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明による画像読取装置は、原稿の両面読取を中止した場合に、給紙トレイ上に残る原稿を排紙トレイへ搬送する空送処理が、搬送経路を片面読取用の第2搬送路へ切り替えた後に行われる。このため、空送処理では、中止前の両面読取よりも短い搬送路を用いることができ、空送処理にかかる時間を短縮することができる。
【0021】
また、本発明による画像読取装置は、原稿の両面読取を中止した場合に、搬送経路を片面読取用の第2搬送路へ切り替えるとともに、両面読取時よりも狭い原稿間隔で空送処理が行われる。このため、空送処理にかかる時間を短縮することができる。
【0022】
更に、本発明による画像読取装置は、原稿の両面読取を中止した場合に、搬送経路を片面読取用の第2搬送路へ切り替え、分岐点よりも上流を搬送中であった原稿が、第2搬送路へ案内される。このため、中止前の両面読取よりも短い搬送路を用いて排出処理が行われ、排出処理にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1による画像読取装置の一構成例を示した外観図であり、画像読取装置の一例として複合機100が示されている。
【図2】図1の複合機100の要部の一構成例を示した断面図であり、主としてADF装置10の内部構造が模式的に示されている。
【図3】順次方式の連続読取についての説明図であり、搬送路B1〜B5上における原稿A1,A2の搬送状態が時系列順に示されている。
【図4】バッチ方式の両面読取についての説明図であり、搬送路B1〜B5上における原稿A1〜A4の搬送状態が時系列順に示されている。
【図5】交互方式の両面読取についての説明図であり、搬送路B1〜B5上における原稿A1〜A4の搬送状態が時系列順に示されている。
【図6】交互方式の両面読取についての説明図であり、搬送路B1〜B5上における原稿A1〜A4の搬送状態が時系列順に示されている。
【図7】連続読取の各方式について読取順序の一例を示した説明図である。
【図8】図1の複合機100の要部について一構成例を示したブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態1による読取中止処理の一例を示したフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2による読取中止処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による画像読取装置の一構成例を示した外観図であり、画像読取装置の一例として複合機100が示されている。複合機(MFP:Multifunction Peripheral)100は、画像読取、印刷、ファクシミリ送受信などを行うMFP本体部20と、画像読取時に原稿の自動搬送を行うADF(Auto Document Feeder)装置10とによって構成される。
【0025】
MFP本体部20の操作パネル21には、ユーザが操作入力を行うためのスタートキー、テンキーなどの操作入力部21aと、ユーザに対し、動作状態を表示出力するための液晶表示部21bが設けられている。例えば、ユーザは、操作入力部21aへの操作入力を行うことにより、原稿の片面読取及び両面読取のいずれかを指定することができる。また、原稿の読取中に読取中止を指示することもできる。
【0026】
また、MFP本体部20の上面には、図示しないコンタクトガラスが形成され、このコンタクトガラス上にADF装置10が開閉可能に配置されている。つまり、この複合機100は、コンタクトガラス上に載置された原稿を読み取るフラットベッド方式、ADF装置10により自動搬送中の原稿を読み取るADF方式のいずれの方式でも原稿を読み取ることができる。
【0027】
ADF装置10は、給紙トレイ11及び排紙トレイ12を備え、その内部には搬送路が形成されている。給紙トレイ11内の原稿は、1枚ずつ分離して繰り込まれ、搬送路に沿って搬送され、排紙トレイ12へ排出される。この搬送路は、MFP本体部20のコンタクトガラス上を通過するように形成されており、原稿は、コンタクトガラス上を通過する際にMFP本体部20によって読み取られる。
【0028】
原稿読取中に読取中止が指示された場合、給紙トレイ11上に載置されている原稿が搬送路を介して排紙トレイ12へ順次に排出される空送処理が行われる。この処理により、給紙トレイ11上に載置される原稿と排紙トレイ12へ排出された原稿とを重ね合わせる手間が省けるという利便性がある。
【0029】
図2は、図1の複合機100の要部の一構成例を示した断面図であり、主としてADF装置10の内部構造が模式的に示されている。図中のB1〜B5は原稿の搬送路、C1は搬送路B2及びB5の分岐点、C2は原稿の読取位置、C3は搬送路B3及びB5の合流点である。
【0030】
<スキャナユニット22>
スキャナユニット22は、読取位置C2を通過する原稿Aの画像を光学的に読み取るイメージセンサであり、投光器22a及びラインセンサ22bからなる。投光器22aからの照射光はコンタクトガラス上の原稿Aによって反射され、多数の受光素子が直線状に配置されたラインセンサ22bによって検出される。この配列方向と交差する方向に、原稿A及びラインセンサ22bを相対的に移動させれば、2次元画像を読み取ることができる。ADF方式で画像読取を行う場合、スキャナユニット22を静止させ、搬送中の原稿Aについて画像読取が行われる。なお、このスキャナユニット22は、読取位置C2に対する原稿Aの到着又は通過を検出する原稿検出センサとしても用いることもできる。
【0031】
この複合機100では、2パス1スキャナ方式を採用し、1個のスキャナユニット22を用いて原稿の両面読取を行っている。2パス1スキャナ方式とは、原稿の表裏を反転させ、同じスキャナユニット22で原稿を2回読み取らせる両面読取の方法である。一般的な2パス1スキャナ方式の画像読取装置では、原稿をスイッチバックさせることにより原稿Aの表裏を反転させ、別の搬送路を通ってスキャナユニット22の手前に合流させ、スキャナユニット22を同じ方向に2回通過させる。
【0032】
これに対し、複合機100では、原稿AをUターンさせることによって原稿Aの表裏を反転させ、スキャナユニット22を2回通過させる。このとき、原稿Aがスキャナユニット22を通過する方向は、1回目及び2回目で逆方向となる。
【0033】
<搬送路B1〜B5>
ADF装置10内には、搬送路B1〜B5が形成され、片面読取と両面読取の場合で原稿Aの搬送経路が異なる。両面読取を行う場合、原稿は搬送路B1,B2,B3,B4の順に搬送される。この搬送経路を両面パスと呼ぶことにする。一方、片面読取を行う場合、原稿は搬送路B1,B5,B3,B4の順に搬送される。この搬送経路を片面パスと呼ぶことにする。
【0034】
搬送路B1は、給紙トレイ11から繰り込まれた原稿Aを分岐点C1まで搬送する給紙路であり、片面読取及び両面読取のいずれの場合にも用いられる。
【0035】
搬送路B2は、両面読取用の原稿Aを分岐点C1から読取位置C2まで搬送する両面読取専用の導入路であり、Uターンすることなく、ほぼ直線的に読取位置C2へ原稿Aを搬送する。搬送路B2から進入し、読取位置C2を右から左へ通過した原稿は搬送路B3へ入る。
【0036】
搬送路B3は、両面読取用の原稿をUターンさせて表裏を反転させるUターン路である。読取位置C2を右から左へ通過した原稿は、搬送路B3の下側へ入り、時計回りに搬送されて表裏が反転した状態となった後、搬送路B3の上側から読取位置C2へ戻り、読取位置C2を左から右へ通過する。つまり、搬送路B3を通過することによって、原稿の表裏を反転させた状態で読取位置C2を2回通過させることができる。このとき、読取位置C2を通過する方向は1回目と2回目では逆方向になる。なお、搬送路B3のうち、合流点C3よりも下流側は、片面読取の場合にも用いられる。
【0037】
搬送路B4は、読取位置C2を左から右へ通過した原稿を排出口18へ搬送し、排紙トレイ12へ排出する排出路であり、片面読取及び両面読取のいずれの場合も用いられる。
【0038】
搬送路B5は、片面読取用の原稿Aを分岐点C1から搬送路B3上の合流点C3まで搬送する片面読取専用の導入路であり、搬送路B5及び搬送路B3によって横向きU字状の搬送路が構成されている。合流点C3から搬送路B3上に進入した片面読取用の原稿は、両面読取用の原稿と全く同様にして、読取位置C2を左から右に通過し、搬送路B4に入り、排紙トレイ12へ排出される。分岐点C1から合流点C3までの搬送距離は、搬送路B5を搬送される方が、搬送路B2,B3を搬送されるより短くなる。つまり、分岐点C1から原稿が排出されるまでの搬送距離は、片面パスの方が両面パスよりも短い。
【0039】
<給紙トレイ11>
給紙トレイ11は、原稿を積み重ねて載置する原稿台13と、これらの原稿を位置決めするための原稿ストッパ14とを備えている。原稿台13は、バネなどの付勢手段によって上方向に付勢され、最上部の原稿をピックアップローラ15aに接触させている。また、原稿台13上の原稿は、送り方向の前端(図中では左端)が原稿ストッパ14によって位置決めされている。このため、最上部の原稿は、その前端が位置決めされ、かつ、当該前端付近がピックアップローラ15aに押し付けられた状態となっている。
【0040】
<原稿繰込部15>
原稿繰込部15は、給紙トレイ11内の原稿Aを搬送路へ1枚ずつ繰り込む原稿繰込手段であり、ピックアップローラ15a、分離ローラ15b及びリタードローラ15cからなる。ピックアップローラ15a及び分離ローラ15bは原稿の送り方向に回転駆動され、リタードローラ15cは戻り方向に回転駆動される。このため、給紙トレイ11内の原稿Aは、上から順にピックアップローラ15aによって搬送路B1へ繰り込まれ、重送状態で繰り込まれた原稿Aは、互いに逆回転している分離ローラ15b及びリタードローラ15cによって最上部の原稿Aのみが分離され、送り方向に搬送される。
【0041】
<搬送ローラ16>
搬送ローラ16は、回転駆動される駆動ローラと、搬送路を挟んで駆動ローラに対向して配置された従動ローラとからなる。搬送路B1〜B5には、最短の原稿長よりも短い間隔で多数の搬送ローラ16が配置され、これらの搬送ローラ16によって原稿Aは搬送路上を搬送される。なお、搬送ローラ16は図示しない搬送モータ36により回転駆動されるが、一部の搬送モータ36を他の搬送モータ36と非同期で駆動するには、専用のクラッチなどが必要となり、構成が複雑になり高コストになる。このため、本実施の形態では、全ての搬送ローラ16が、同一のステッピングモータによって駆動され、互いに同期して回転しているものとする。
【0042】
<パス切替部17>
パス切替部17は、片面パス又は両面パスのいずれかを選択する搬送経路の切替手段であり、搬送経路の分岐点C1に配置されている。このパス切替部17は、爪状の回転部材17aと図示しないソレノイドとにより構成され、ソレノイドが回転部材17aを回動させることによって、搬送路B2及びB5を切り替えている。つまり、両面パスが選択されている場合には、分岐点C1に到達した原稿Aが搬送路B2へ搬送され、片面パスが選択されている場合には、分岐点C1に到達した原稿Aが搬送路B5へ搬送される。
【0043】
給紙トレイ11内に収容された原稿Aの下面を第1面、上面を第2面とすれば、両面パスでは、第1面及び第2面の順で原稿Aが2回読み取られ、片面パスでは、原稿Aの第2面のみが読み取られる。すなわち、両面パスが選択されている場合、原稿Aは、搬送路B1、分岐点C1、搬送路B2を順に経由して、スキャナユニット22の読取位置C2に案内され、その第1面が読み取られる。その後、原稿Aは搬送路B3を経て再び読取位置C2に案内され、その第2面が読み取られ、搬送路B4を経て排出口18から排出される。一方、片面パスが選択されている場合、原稿Aは、搬送路B1、分岐点C1、搬送路B5、合流点C3、搬送路B3の後半区間を順に経由して、スキャナユニット22の読取位置C2に案内され、その第2面が読み取られた後、搬送路B4を経て排出口18から排出される。
【0044】
<原稿検出センサDS1〜DS5>
ADF装置10には、5つの原稿検出センサDS1〜DS5が設けられている。原稿検出センサDS1,DS2は、給紙トレイ11に設けられ、原稿台13に載置された原稿Aを検出している。一方、原稿検出センサDS3〜DS5は、それぞれ異なる検出位置において、搬送中の原稿Aの到着又は通過を検出している。なお、これらの原稿検出センサDS1〜DS5には光センサを用いることができる。
【0045】
原稿検出センサDS1は、給紙トレイ11上に原稿Aが載置されているか否かを検出する原稿載置検出手段である。例えば、反射型の光センサを原稿ストッパ14付近の原稿台13に埋設し、原稿Aの前端付近を検出すれば、原稿Aの有無を判別することができる。
【0046】
原稿検出センサDS2は、原稿Aの送り方向の長さを検出する2つの原稿長検出手段であり、それぞれ異なる原稿長を検出することができる。例えば、原稿検出センサDS1より後方の原稿台13に光センサを埋設しておくことにより、原稿長が所定長さ以上であるか否かを判別することができる。この場合、サイズの異なる2以上の原稿Aが積み重ねて載置されていれば、最大の原稿長が検出される。
【0047】
原稿検出センサDS3〜DS5は、搬送路上の予め定められた検出位置を監視し、搬送中の原稿Aの位置を検出する搬送状態検出手段であり、上記検出位置に対する原稿Aの到達又は通過を検出している。つまり、原稿Aの前端を検出している場合には、原稿Aが検出位置に到達したことを判別することができ、原稿Aの後端を検出している場合には、原稿Aが検出位置を通過したことを判別することができる。
【0048】
原稿検出センサDS3は、分離ローラ15b及び分岐点C1に挟まれた搬送路B1上に配置され、原稿繰込部15によって給紙トレイ11から搬送路B1へ繰り込まれた原稿Aを検出している。
【0049】
原稿検出センサDS4は、分岐点C1及び読取位置C2に挟まれた搬送路B2上に配置されている。原稿検出センサDS4は、スキャナユニット22による第1面の読取タイミングを求めるためのセンサであり、原稿Aの前端が読取位置C2に到達する直前に通過する位置に配置されている。
【0050】
原稿検出センサDS5は、合流点C3及び読取位置C2に挟まれた搬送路B3上に配置されている。原稿検出センサDS5は、スキャナユニット22による第2面の読取タイミングを求めるためのセンサであり、原稿Aの前端が読取位置C2に到達する直前に通過する位置に配置されている。
【0051】
また、搬送中の原稿Aの検出には、原稿検出センサDS3〜DS5だけでなく、スキャナユニット22も用いることができる。すなわち、スキャナユニット22を原稿検出センサとして使用し、読取位置C2への原稿Aの到着又は通過を検出させることもできる。
【0052】
原稿の搬送中にユーザにより読取中止が指示されることがある。読取中止が指示された場合、複合機100は、搬送路B1〜B5及び給紙トレイ11上の原稿を排紙トレイ12へ排出する。この場合、パス切替部17の爪状の回転部材17aの向きを変更することにより、搬送経路が両面パスから片面パスに切り替えられる。このため、読取中止時に分岐点C1よりも上流側で搬送中であった原稿は、両面パスより短い片面パスを搬送され、原稿の排出時間を短縮することができる。
【0053】
<連続読取の方式>
図3〜図6は、図2のADF装置10を用いて、2以上の両面原稿A1〜A4の連続読取を行う場合の様子を示した説明図である。一般に、ADF装置10は、2以上の原稿を同時搬送することによって、連続読取時における原稿1枚当りの読取時間を短縮することができる。ADF装置10の場合、両面パスが交差しているため、順に繰り込まれる両面原稿A1〜A4が読取位置C2を通過する順序によって複数の読取方式が考えられる。本実施の形態では、順次方式、バッチ方式及び交互方式のいずれか一つが、ユーザによって選択されるものとする。なお、給紙トレイ11上で原稿検出センサDS2によって検出した原稿サイズに基づいて、これらの読取方式が選択されるようにしてもよい。
【0054】
<順次方式の連続読取>
図3の(a)〜(d)は、順次方式の連続読取についての説明図であり、搬送路B1〜B5上における原稿A1,A2の搬送状態が時系列順に示されている。順次方式では、Uターン用の搬送路B3上で2以上の原稿を同時に搬送させず、後続の原稿A2の読み取りは、先行する原稿A1の両面が読み取られた後に開始される。
【0055】
図中の(a)〜(c)に示した通り、先に繰り込まれた原稿A1は、搬送路B1〜B3上を順に搬送され、読取位置C2を2回通過する。また、図中の(c)及び(d)に示した通り、後続の原稿A2の繰り込みは、原稿A1が読取位置C2を2回通過した後に原稿A2が読取位置C2に到達するように、先行する原稿A1が排紙トレイ12へ排出されるよりも前に行われる。
【0056】
順次方式は、先行する原稿A1が排出される前に、後続の原稿A2の繰り込みを開始することによって、1枚当りの読取時間を短縮する読取方法である。順次方式は、原稿長が搬送路B3の長さ以下であれば適用できるため、比較的長い原稿の高速読取に適している。しかしながら、搬送路B3の経路長以上の原稿間隔を空ける必要があるため、片面読取及び後述の2方式に比べて、1枚当たりの搬送時間は長くなる。
【0057】
<バッチ方式の連続読取>
図4の(a)〜(d)は、バッチ方式の両面読取についての説明図であり、搬送路B1〜B5上における原稿A1〜A4の搬送状態が時系列順に示されている。バッチ方式では、Uターン用の搬送路B3上において2以上の原稿A1,A2を重複させることなく同時に搬送させ、これらの原稿グループを単位として両面読取を行っている。つまり、先行する原稿A1,A2は、それぞれの第1面が読み取られた後に、それぞれの第2面が読み取られ、後続の原稿A3の読み取りは、先行する原稿A1,A2の両面が読み取られた後に開始される。
【0058】
図中の(a)及び(b)に示した通り、順に繰り込まれた原稿A1,A2は、搬送路B1〜B3上を順に搬送され、それぞれの第1面が読み取られた後、搬送路B3上において同時に搬送されている状態となる。その後、原稿A1,A2は、読取位置C2を通って搬送路B4へ搬送され、それぞれの第2面が読み取られる(図中の(c))。後続の原稿A3,A4の繰り込みは、原稿A1,A2がともに読取位置C2を2回通過した後に原稿A3が読取位置C2に到達するように、先行する原稿A2が排紙トレイ12へ排出される前に行われる。
【0059】
バッチ方式は、読取位置C2に対し、搬送路B2及びB3の一方から原稿を連続して進入させ、搬送路B3上において2以上の原稿を同時に搬送させることによって、2以上の原稿A1,A2の両面読取をまとめて行うとともに、これらの原稿A1,A2がともに排出される前に、後続の原稿A3の繰り込みを開始することによって、1枚当りの読取時間を短縮する読取方法である。バッチ方式は、順次方式に比べて1枚当りの読取時間をより短縮することができるが、原稿長が搬送路B3の長さの1/2以下でなければ適用することができない。バッチ方式では、搬送路B3の経路長以上の原稿間隔を含む2以上の原稿間隔が繰り返され、この原稿間隔を平均すれば、片面読取の原稿間隔よりも広くなるため、片面読取に比べると1枚あたりの搬送時間が長くなる。
【0060】
<交互方式の連続読取>
図5及び図6の(a)〜(f)は、交互方式の両面読取についての説明図であり、搬送路B1〜B5上における原稿A1〜A4の搬送状態が時系列順に示されている。交互方式では、Uターン用の搬送路B3上において、2以上の原稿A1,A2が間隔を空けて同時に搬送され、読取位置C2に対し、搬送路B2及びB3から交互に1枚ずつ原稿が送り込まれている。
【0061】
図中の(a)〜(c)に示した通り、順に繰り込まれた原稿A1,A2は、搬送路B1〜B3上を順に搬送され、それぞれの第1面が読み取られた後、搬送路B3上において同時に搬送されている状態となる。図4のバッチ方式と比較すれば、2以上の原稿がUターン路である搬送路B3上を同時に搬送される読取方式である点で共通するが、原稿A1,A2間に原稿1枚分以上の間隔が形成されている点で異なる。つまり、交互方式では、原稿A1,A2が、原稿1枚分以上の間隔を空けて順に繰り込まれる。
【0062】
次に、原稿A1が搬送路B3から読取位置C2へ進入し、その第2面の読み取りが行われる(図中の(d))。この原稿A1が搬送路B4へ搬送されると、原稿A3が搬送路B2から読取位置C2に進入し、その第1面が読み取られる(図中の(e))。その後、原稿A3が搬送路B3へ搬送されると、原稿A2が搬送路B3から読取位置C2に進入し、その第2面が読み取られる(図中の(f))。つまり、読取位置C2では、原稿A1の第2面、原稿A3の第1面、原稿A2の第2面の順で読み取りが行われている。図中の(c)及び(f)は、原稿を1枚分進めた同じ状態であり、(f)の状態以降は、(c)〜(e)の状態を順に繰り返すことにより、連続読取を行うことができる。
【0063】
交互方式は、搬送路B3上において2以上の原稿を同時に搬送させるとともに、読取位置C2において第1面及び第2面の読み取りを交互に行う方法であり、1枚当りの読取時間を短縮する読取方法である。この交互方式では、原稿長以上、搬送路B3の経路長未満の原稿間隔で3以上の原稿が同時に搬送され、読取位置C2に対し、搬送路B2及び搬送路B3から交互に異なる原稿を進入させる。交互方式は、バッチ方式に比べて、1枚当りの読取時間をより短縮することができるが、原稿長が搬送路B3の長さの1/3以下である必要がある。また、交互方式は原稿長以上の原稿間隔を空ける必要があるため、片面読取に比べると原稿間隔が広く、搬送時間も長い。
【0064】
図7は、連続読取の各方式について読取位置C2における読取順序の一例を示した説明図である。図中の(a)〜(c)は、順に繰り込まれる原稿A1〜A5について、順次方式、バッチ方式、交互方式の場合に読み取られる原稿面の順序がそれぞれ示されている。
【0065】
順次方式の場合、図中の(a)に示した通り、原稿A1の第1面及び第2面が順に読み取られた後に、原稿A2の第1面及び第2面が順に読み取られる。同じ原稿の第1面の読み取りから第2面の読み取りまでの時間tは、原稿A2が搬送路B3を通過する時間に相当する。
【0066】
バッチ方式の場合、図中の(b)に示した通り、原稿A1及びA2の第1面が順に読み取られた後に、原稿A1及びA2の第2面が順に読み取られる。同じ原稿A1の第1面の読み取りから第2面の読み取りまでの時間tは、順次方式の場合と同じであるが、その間に、原稿A2の第1面の読み取りが行われている。このため、順次方式の場合よりも原稿読取のスループットを向上させることができる。
【0067】
交互方式の場合、図中の(c)に示した通り、先行する原稿が存在しない原稿A1を除き、同じ原稿の第1面の読み取りから第2面の読み取りまでの間に、他の原稿の読み取りが2回行われる。例えば、原稿A2の第1面の読み取りから第2面の読み取りまでの間に、原稿A1の第2面と、原稿A3の第1面の読み取りが行われている。この様にして、異なる原稿の第1面及び第2面を交互に読み取ることによって、バッチ方式の場合よりも更に原稿読取のスループットを向上させることができる。
【0068】
図8は、図1の複合機100の要部について一構成例を示したブロック図である。この複合機100は、操作入力部21a、原稿検出センサDS1〜DS3,DS5、読取指定部31、搬送制御部32、パス切替部17、原稿繰込部15及び搬送モータ36により構成される。
【0069】
<操作入力部21a>
操作入力部21aには、スタートキー211、ストップキー212及び読取方法選択キー213が配置されている。スタートキー211は、原稿読取の開始指示を入力するための開始入力手段である。ユーザが、給紙トレイ11上に2以上の原稿をセットし、スタートキー211を操作すれば、これらの原稿を順に読み取る連続読取が開始される。
【0070】
ストップキー212は、原稿読取の中止指示を入力するための中止入力手段である。ユーザが、連続読取の実行中にストップキー212を操作すれば、実行中の連続読取を中止させることができる。紙詰まりなどのエラー検出による読取中止とは異なり、ユーザの中止指示により原稿読取を中止した場合には、読取完了前の原稿の排出処理及び空送処理が行われる。なお、図示しないユーザ端末から中止指示の信号が入力された場合も、ストップキー212が操作された場合と全く同様である。
【0071】
読取方法選択キー213は、原稿の読取方法を選択するための入力手段である。ユーザは、読取方法として、両面読取又は片面読取のいずれかを選択することができる。また、両面読取を選択した場合には、更に順次方式、バッチ方式又は交互方式のいずれかを選択することができる。
【0072】
<読取指定部31>
読取指定部31は、ユーザ指定及び原稿長に基づいて、原稿の読取方法を指定する。片面読取又は両面読取の指定は、読取方法選択キー213によるユーザ指定の通り行われる。両面読取の読取方式は、原稿センサDS2が検出した原稿長も考慮し、順次方式、バッチ方式又は交互方式のいずれかが指定される。つまり、両面読取の読取方式をユーザが指定した場合には、原稿長に基づいて、当該読取方式による読取が可能であるか否かを判別し、読取可能であれば、ユーザ指定の読取方式をそのまま採用し、読取不可能であれば、ユーザ指定とは異なる読取可能な読取方式に変更する。例えば、ユーザが交互方式の両面読取を指定しているが、原稿長が、Uターン用の搬送経路B3の1/3を超えている場合、読取指定部31は、交互方式に代えて、バッチ方式又は順次方式を指定する。
【0073】
<搬送制御部32>
搬送制御部32は、パス切替部17、原稿繰込部15及び搬送モータ36へ制御信号を出力し、原稿の搬送制御を行っている。この搬送制御の対象は、読取中止前の通常の搬送処理だけでなく、読取中止後の排出処理及び空送処理も含まれる。
【0074】
搬送制御部32は、パス切替部17に対し、両面パス又は片面パスのいずれかを指定するパス指定信号を出力し、搬送経路の切り替えを制御している。通常の原稿読取時には、読取指定部31が指定した読取方法に基づいて、当該読取方法に対応する両面パス又は片面パスのいずれかを指定する。一方、両面読取中にストップキー212が操作された場合には、その後の排出処理及び空送処理が終了するまで、片面パスを指定する。片面パスは、両面パスよりも短いため、両面読取の中止後に行われる排出処理及び空送処理において片面パスを指定することにより、排出処理及び空送処理にかかる時間を短縮することができる。
【0075】
また、搬送制御部32は、原稿繰込部15に対し、原稿繰込のタイミングを示す繰込信号を出力し、原稿間隔を制御している。通常の原稿読取時には、読取指定部31が指定した読取方法に対応する原稿間隔となるように、所定のタイミングで原稿繰込を指定する。一方、両面読取中にストップキー212が操作された場合には、その後の空送処理が終了するまで、片面読取用の原稿間隔となるように原稿繰込のタイミングを制御する。片面読取の原稿間隔は、両面読取のいずれの読取方式における原稿間隔よりも狭いため、両面読取の中止後に行われる排出処理及び空送処理において片面読取の原稿間隔を使用することにより、排出処理及び空送処理にかかる時間を短縮することができる。特に、空送処理の対象となる原稿数が多くなるほど、大きな効果が得られる。
【0076】
さらに、搬送制御部32は、搬送モータ36へ駆動信号を出力し、搬送モータ36の駆動軸に連結されたローラ16を回転させている。すなわち、スタートキー211の操作に基づいて、搬送モータ36の回転を開始させ、原稿検出センサDS1の検出結果に基づいて、給紙トレイ11上の全ての原稿が排紙トレイ12に排出された後に回転を停止させる。つまり、ストップキー211が操作された場合であっても、排出処理及び空送処理が終了するまで、搬送モータ36は、停止することなく回転を続けている。
【0077】
<パス切替部17>
パス切替部17は、搬送制御部32からのパス指定信号に基づいて、爪状の回転部材17aの向きを変更し、原稿の搬送経路を両面パス又は片面パスに切り替えている。両面読取中に中止指示が入力された場合、パス切替部17は、素早く搬送経路を切り替え、搬送路B1上の原稿を片面パスへ案内する。従って、読取中止時に分岐点C1よりも上流側で搬送中であった原稿は片面パスを介して排出され、排出処理にかかる時間を短縮することができる。なお、搬送経路の切り替え時に分岐点C1を通過中の原稿があれば、当該原稿に回転部材17aが接触する状態を経て、当該原稿の通過後に搬送経路が切り替わる。このとき、回転部材17aの接触により、原稿に大きなダメージを与えることはない。
【0078】
<読取中止処理>
図9のステップS101〜S106は、本発明の実施の形態1による読取中止処理の一例を示したフローチャートである。この読取中止処理は、原稿読取の中止指示が入力された場合に開始される。つまり、ユーザがストップキー212を操作したとき、又は、ユーザ端末から中止指示の信号が入力されたときに開始される。
【0079】
まず、中止指示に基づいて、スキャナユニット22による原稿読取が中止される(ステップS101)。このとき、搬送制御部32は、搬送モータ36を停止させることなく、回転駆動を継続する。このため、搬送路B1〜B5上の原稿は、読取位置C2において読み取られることなく、排出口18まで搬送され、排出トレイ12へ排出される。
【0080】
上記読取中止が、両面読取の中止であった場合、パス切替部17により、搬送経路が両面パスから片面パスへ切り替えられる(ステップS102,S103)。搬送制御部32は、操作入力部21aから中止指示が出力されると、片面パスを指定するパス指定信号を直ちに出力する。このため、両面読取中に中止指示が入力されると、搬送経路が、両面パスから片面パスへ切り替えられる。
【0081】
この搬送経路の切り替えにより、読取中止時に搬送路B1上にあった原稿、つまり、中止指示の入力直前に繰り込みが開始され、中止指示の入力時点では、その先端が分岐点C1に到達していなかった原稿は、片面パスへ案内される。従って、読取中止前と同様にして、この様な原稿を両面パスへ案内する従来の画像読取装置に比べ、排出処理にかかる時間を短縮することができる。
【0082】
次に、給紙トレイ11上に原稿が残っていれば、空送処理のための原稿繰込が行われる(ステップS104,S105)。搬送制御部32は、原稿検出センサDS1の検出結果に基づいて、給紙トレイ11上の原稿の有無を判別しながら、原稿繰込部15に対し、原稿がなくなるまで繰込信号を繰り返し出力する。このとき、繰込信号は、原稿間隔が片面読取時の間隔となるタイミングで出力される。つまり、空送処理では、原稿間隔が両面読取時よりも狭くなるように原稿が順に繰り込まれていく。従って、両面読取が中止された場合であっても、その後の空送処理では、片面読取時と同様、狭い原稿間隔で原稿が繰り込まれ、かつ、当該原稿が片面パスへ案内されることにより、空送処理にかかかる時間を短縮することができる。
【0083】
そして、給紙トレイ11上の全ての原稿が、排紙トレイ12へ排出されれば、搬送制御部32が搬送モータ36を停止させ、この読取中止処理を終了する(ステップS106)。
【0084】
実施の形態2.
実施の形態1では、両面読取が中止された場合に、直ちに搬送経路を切り替える場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、搬送経路を切り替えによる原稿同士の接触を回避する動作例について説明する。
【0085】
図10のステップS201〜S208は、本発明の実施の形態2による読取中止処理の一例を示したフローチャートである。この読取中止処理は、ステップS203及びS205を除き、図9のステップS101〜S106と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0086】
ステップS203では、両面読取の中止時に直ちに搬送経路を切り替えると、原稿同士の接触が生じる場合に、搬送経路の切替タイミングを遅延させ、原稿同士の接触を回避している。搬送制御部32は、搬送経路の切り替えによって、合流点C3において原稿同士の接触が生じるか否かを判別し、接触が生じる可能性があれば、搬送経路の切替タイミングを遅延させる。
【0087】
中止した両面読取が交互方式又はバッチ方式であった場合、搬送経路を直ちに切り替え、搬送路B1上の原稿を片面パスに案内すると、合流点C3において、先行する原稿と接触する可能性がある。このため、搬送制御部32からパス切替部17へ出力されるパス指定信号を遅延させ、排出処理中に原稿同士が接触するのを回避する。つまり、交互方式又はバッチ方式の両面読取を中止した場合には、その後の排出処理において片面パスを使用しない。
【0088】
例えば、搬送制御部32が、原稿検出センサDS3又はDS4の検出結果に基づいて、搬送路B1上の原稿が分岐点C1を通過したことを判別し、その後にパス指定信号を出力するように構成される。あるいは、搬送制御部32が、読取中止の直前に繰り込まれた原稿が分岐点C1を通過するのに十分な一定時間だけ遅延させて、パス指定信号を出力するように構成してもよい。
【0089】
一方、中止した両面読取が順次方式であった場合には、中止指示に基づいて、搬送経路が直ちに切り替えられる。順次方式では原稿間隔が十分に広いため、読取中止時に、搬送経路を直ちに切り替えても、交互方式やバッチ方式の場合のように、合流点C3において原稿同士が接触することはない。
【0090】
ステップS206では、読取中止の前後に繰り込まれた原稿同士が合流点C3において接触するのを回避するために、空送処理における最初の原稿の繰込タイミングを調整している。両面読取の中止後に空送処理を行う場合、片面パスを通る空送処理の最初の原稿が、両面パスを通る排出処理中の最後の原稿に追いつき、両原稿が合流点C3において互いに接触する可能性がある。
【0091】
このような原稿同士の接触を回避するため、搬送制御部32は、空送処理を開始する際、原稿繰込部15へ繰込信号を出力するタイミングを調整している。つまり、中止指示の入力前に最後に繰り込まれた原稿の後端が合流点C3を通過した後に、中止処理後に最初に繰り込まれる原稿が合流点C3を通過するように、読取中止時に原稿繰込を一旦中止した後、原稿繰込を再開させる。このような空送処理の開始タイミングの調整は、交互方式、バッチ方式だけでなく、順次方式の場合にも行われる。
【0092】
例えば、搬送制御部32が、原稿検出センサDS4又はDS5の検出結果に基づいて、中止指示の入力前に繰り込まれた最後の原稿の搬送位置を判別し、空送処理における最初の原稿が排出力中の上記原稿と接触しないタイミングで繰込信号を出力し、空送処理における最初の原稿繰込を開始するように構成される。あるいは、搬送制御部32が、読取中止の前後に繰り込まれた原稿の合流点C3における接触を回避するのに十分な一定時間だけ遅延させて、空送処理における最初の繰込信号を出力するように構成してもよい。
【0093】
なお、上記実施の形態では、両面読取時に原稿の第1面及び第2面を順に読み取る構成の例について説明したが、本発明はこの様な場合には限定されない。すなわち、両面読取時に第2面及び第1面を順に読み取る画像読取装置についても本発明を適用することができる。このような画像読取装置における片面読取は、第2面を読み取るものであってもよいし、第1面を読み取るものであってもよい。
【0094】
また、本実施の形態では、空送処理において、片面読取用の原稿間隔で原稿が搬送される構成について説明したが、本発明は、この様な場合には限定されない。すなわち、空送処理における原稿間隔は、両面読取用の原稿間隔よりも狭ければよく、片面読取用の原稿間隔と一致している必要は必ずしもない。
【符号の説明】
【0095】
10 ADF装置
11 給紙トレイ
12 排紙トレイ
15 原稿繰込部
16 搬送ローラ
17 パス切替部
20 本体部
21 操作パネル
21a 操作入力部
21b 液晶表示部
211 スタートキー
212 ストップキー
213 読取方法選択キー
22 スキャナユニット
31 読取指定部
32 搬送制御部
36 搬送モータ
100 複合機
B1〜B5 搬送路
C1 分岐点
C2 読取位置
C3 合流点
DS1〜DS5 原稿検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の読取方法として両面読取及び片面読取のいずれかを指定する読取指定手段と、
給紙トレイから原稿を繰り込む原稿繰込手段と、
両面読取用の第1搬送路及び片面読取用の第2搬送路の分岐点において、指定された上記読取方法に基づいて、原稿の搬送経路を切り替える経路切替手段と、
両面読取の中止指示を入力するための中止入力手段とを備え、
上記経路切替手段は、上記中止指示に基づいて、第2搬送路を選択し、
第1搬送路は、第2搬送路よりも長く、
上記中止指示の入力時に上記給紙トレイ上に残っている原稿が、上記中止指示の入力後に繰り込まれ、第2搬送路を介して排出されることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
第1搬送路は、上記分岐点から読取位置へ原稿を搬送する導入路と、
上記導入路から進入して上記読取位置を通過した原稿をUターンさせ、再び上記読取位置に進入させるUターン路とを有し、
第2搬送路は、上記読取位置を通過することなく、上記Uターン路上の合流点において第1搬送路と合流し、
上記原稿繰込手段は、上記中止指示の入力時に給紙トレイ上に2以上の原稿が残っている場合に、上記中止指示の入力前の両面読取よりも狭い原稿間隔で原稿を繰り込むことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記給紙トレイから上記分岐点へ原稿を搬送する給紙路を備え、
上記中止指示の入力時に上記給紙路を搬送中の原稿が、第2搬送路を介して排出されることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
上記原稿繰込手段は、上記中止指示の入力後に最初に繰り込まれた原稿の前端が、上記中止指示の入力前に最後に繰り込まれた原稿の後端が上記合流点を通過した後に上記合流点に到達するように、上記中止指示の入力後に原稿繰込を一旦中止し、その後に再開することを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
原稿の読取方法として両面読取及び片面読取のいずれかを指定する読取指定ステップと、
給紙トレイから原稿を繰り込む原稿繰込ステップと、
両面読取の中止指示を入力するための中止入力ステップと、
両面読取用の第1搬送路及び第1搬送路よりも短い片面読取用の第2搬送路の分岐点において、指定された上記読取方法に基づいて、原稿の搬送経路を切り替えるとともに、上記中止指示に基づいて、第2搬送路を選択する経路切替ステップとを備え、
上記中止指示の入力時に上記給紙トレイ上に残っている原稿が、上記中止指示の入力後に繰り込まれ、第2搬送路を介して排出されることを特徴とする原稿搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−66856(P2011−66856A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218065(P2009−218065)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】