説明

画像送信装置および画像受信装置

【課題】データ通信回線の伝送容量が限られている場合でも、画像データを劣化の少ない状態で送信し、受信側では元の入力画像データを劣化のない状態で再現できるようにする。
【解決手段】画像送信装置10における符号化部12は、画像取得部11で取得した画像データを構成する複数の色成分の一部を符号化対象の色成分として選択して符号化し、選択色成分をサイクリックに入れ替える。データ転送部13は、選択色成分の符号化データをネットワーク30に転送する。画像受信装置20におけるデータ受信部21は、選択色成分の符号化データをネットワーク30を介して受信し、復号化部22は受信された選択色成分の符号化データを復号化し、蓄積部23は選択色成分の復号化データを蓄積する。合成部24は、復号化された選択色成分の画像データと、色成分を異にする状態ですでに蓄積部に蓄積されている復号化された選択色成分の画像データとを合成して画像を再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークなどの伝送容量が限られたデータ通信回線に接続された機器間で動画像を送受信するシステムにおける画像送信装置および画像受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯域の制限されたネットワークを介して画像データを送信する場合に、画像の注目領域の解像度を高く設定する一方、その他の領域の解像度を低く設定して画像データを符号化することにより、情報量を削減しつつ、所望の画質を確保するシステムが開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−288806号公報(第5−10頁、第1−10図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、撮像素子の高画素化が進み、その結果として画像データのデータ量は益々増加している。このような状況下、ネットワークカメラなどネットワーク上に画像データを送信する装置において、画質劣化を最小限にとどめて動画像をネットワーク送信する技術が求められている。特許文献1のシステムでは、注目領域の解像度を高く設定した場合、その他の領域の解像度が著しく低く設定されてしまい、受信装置で画像を再生した場合に、画像の劣化が激しく内容を判別できない領域を含んでいる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による画像送信装置は、
外部からの入力画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得した画像データの色情報を構成する複数の色成分の一部を限定された符号化対象の色成分としてその都度に選択し、その選択色成分の画像データを所定の方式で符号化するとともに、前記選択色成分をサイクリックに入れ替える符号化部と、
前記符号化部で符号化された選択色成分の画像データをデータ通信回線に転送するデータ転送部とを備えたものである。
【0005】
また、本発明による画像受信装置は、
サイクリックに入れ替えられて符号化された選択色成分の画像データをデータ通信回線を介して受信するデータ受信部と、
前記データ受信部で受信された選択色成分の画像データを復号化する復号化部と、
前記復号化部で復号化された選択色成分の画像データを蓄積する蓄積部と、
前記復号化部で復号化された選択色成分の画像データと、色成分を異にする状態ですでに前記蓄積部に蓄積されている復号化された選択色成分の画像データとを合成して画像を再生する合成部とを備えたものである。
【0006】
上記構成の画像送信装置において、符号化部は、入力画像データにおける複数の色成分の一部を限定された符号化対象の色成分としてその都度に選択し、その選択色成分の画像データを所定の方式で符号化した上で、データ転送部に渡す。データ転送部は、符号化された選択色成分の画像データをデータ通信回線を介して画像受信装置に転送する。符号化部は、選択色成分をサイクリックに入れ替えながら、符号化を繰り返す。この方式においては、符号化部による符号化の対象およびデータ転送部によるデータ転送の対象として、画像取得部における入力画像データの一部の色成分に限定している。したがって、処理すべき画像データの情報量が削減され、符号化率が抑圧され、その結果、データ通信回線の伝送容量が限られている場合でも、画像データを劣化の少ない状態で送信することが可能となる。
【0007】
また、上記構成の画像受信装置において、合成部は、復号化部で復号化された現在の選択色成分の画像データと、色成分を異にする状態ですでに蓄積部に蓄積されている復号化された過去の選択色成分の画像データとを合成して、画像を再生する。このような蓄積部を付帯する合成部の機能により、データ通信回線を介して送られてくる画像データが、入力画像データにおける複数の色成分のうちから選択された一部に限定されたもの(選択色成分の画像データ)であっても、元の入力画像データを劣化のない状態で再現することが可能となる。
【0008】
上記構成の画像送信装置において、前記符号化部は、前記画像取得部で取得する画像データにおける選択色成分をY成分、U成分、Y成分、V成分、Y成分、U成分のようにフレーム毎に入れ替えて繰り返し符号化するという態様がある。
【0009】
また上記構成の画像送信装置において、前記符号化部は、前記画像取得部で取得する画像データにおける選択色成分をY成分、UV成分、Y成分、UV成分のようにフレーム毎に入れ替えて繰り返し符号化するという態様がある。
【0010】
また上記構成の画像送信装置において、さらに、色成分分割パターンを変更可能な分割パターン設定部を備え、前記符号化部は、前記分割パターン設定部で設定した色成分分割パターンに則って前記画像取得部で取得した画像データの色成分を選択し、選択色成分をフレーム毎に入れ替えながら選択色成分の画像データを符号化し、前記符号化された選択色成分の画像データに前記分割パターン設定部による色成分分割パターン情報を付加して前記データ転送部より転送するという態様がある。このように構成した場合、データ通信回線の混雑状況の変化に応じて、分割パターン設定部での色成分分割パターンを適応的に設定することが可能となる。すなわち、データ通信回線の混雑状況の変化にかかわらず、画像データを劣化の少ない状態で送信することが可能となる。
【0011】
また上記構成の画像送信装置において、さらに、前記画像取得部で取得した画像データから再生される画像の動き量を検出する動き検出部を備え、前記符号化部は、前記動き検出部で検出した画像の動き量が所定の閾値よりも大きくなった場合には、画像データの色成分の選択に代えて画像データのすべての色成分の画像データを符号化するという態様がある。画像の動きが速いときは、解像度が低いことに起因して画質劣化が生じても、視覚上はあまり問題とならない。そこで、画像の動き量が所定の閾値より大きいときは、色成分の選択をやめ、すべての色成分の画像データの符号化に切り替える。その結果として、画像処理の速度アップを図ることが可能となる。
【0012】
また上記構成の画像送信装置において、さらに、前記画像取得部で取得した画像データから再生される画像の動き量を検出する動き検出部を備え、前記符号化部は、選択色成分の画像データを符号化したデータと、前記動き検出部による前記符号化を行った色成分とは異なる色成分の動き量の情報とを前記データ転送部により転送し、フレーム毎に符号化する色成分を入れ替えるという態様がある。選択色成分の符号化データとともに符号化を行った色成分とは異なる色成分の動き量の情報をデータ転送部より転送することにより、画像受信装置側において画像の動き量に応じて過去の選択色成分の画像データの動き補償などを行うことが可能となる。
【0013】
そして、画像受信装置について、
選択色成分の画像データを符号化したデータと前記符号化を行った色成分とは異なる色成分の動き量を受信するデータ受信部と、
前記データ受信部で受信された選択色成分の画像データを復号化する復号化部と、
前記復号化部で復号化された選択色成分の画像データを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積されている過去の画像データに対して、送られてきた画像の動き量を用いて動き補償処理を行う動き補償部と、
前記蓄積部に蓄積されている過去の画像データおよび前記復号化部による復号化データを、前記画像の動き量に応じて所定のアルゴリズムで平滑化する平滑化部と、
前記平滑化部で平滑化された現在の選択色成分の復号化データと選択色成分の動き補償後のデータとを合成して画像を再生する合成部とを備えた構成の画像受信装置がある。
【0014】
現在の選択色成分の画像データと過去の選択色成分の画像データとは時間的に差異が生じているため、動きのある被写体では合成時に色ずれが生じるおそれがある。動き補償部および平滑化部は、この色ずれを緩和するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ネットワークなどのデータ通信回線を介して画像信号を伝送する際に、符号化ならびに伝送の対象とする画像データを一部の色成分に限定するように構成しているので、符号化対象の情報量を低減して符号化率を抑圧することが可能であり、画像劣化の少ない画像を伝送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下で説明する実施の形態のそれぞれはあくまで一例であり、様々な改変を行うことが可能である。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の画像通信装置A1の全体構成を示すブロック図である。
【0018】
この実施の形態は、ネットワークなどの伝送容量が限られたデータ通信回線を介して、膨大なデータ量を持つ画像を伝送するシステムである。ネットワークに限らず、画像送信装置と画像受信装置を接続する様々なデータ通信回線に応用できる。
【0019】
本実施の形態の特徴は、1フレーム内に画像データの一部の色成分のみ(選択色成分の画像データ)を送信し、受信側で受信した現在の選択色成分の画像データと過去の選択色成分の画像データとを合成することにある。これによって、画像の情報量を削減し画像の符号化率を抑圧することができ、限られた伝送容量での画像通信時にも劣化の少ない画像を伝送することができる。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態の画像通信装置A1は、画像送信装置10と、画像受信装置20と、画像送信装置10と画像受信装置20の間のデータ伝送を行うネットワーク30の3つの部分で構成されている。また、画像送信装置10には撮像装置40が接続され、画像受信装置20には表示装置50が接続されている。画像送信装置10には撮像装置40だけでなく、画像データを出力する機器を接続できる。
【0021】
画像送信装置10は、画像取得部11、符号化部12およびデータ転送部13からなる。
【0022】
画像取得部11は、撮像装置40から入力された画像データをメモリに取り込む処理を行う。入力画像データはYUV形式とすることも、RGB形式とすることも可能である。YUVは輝度・色差マルチプレクス信号のことであり、Yは輝度信号、Uは赤の色差信号、Vは青の色差信号である。
【0023】
符号化部12は、画像取得部11のメモリから画像データを読み出し、ROMなどの記憶手段にあらかじめ設定した色成分分割パターンに従って、画像データの色情報を構成する複数の色成分の一部を限定された符号化対象の色成分としてその都度に選択し、その選択色成分の画像データを予測符号化、直交変換符号化、ベクトル量子化など既知の画像圧縮アルゴリズムで符号化し、その色成分の符号化データをデータ転送部13に出力する。
【0024】
データ転送部13は、符号化された色成分の画像データをネットワーク30に送信する。
【0025】
上記構成において、符号化される色成分は、色成分分割パターンに従って順次に入れ替えられ、またサイクリックに更新されるようになっている。
【0026】
画像受信装置20は、データ受信部21、復号化部22、蓄積部23および合成部24からなる。
【0027】
データ受信部21は、ネットワーク30から受信した選択色成分の符号化データを受信し、復号化部22に出力する。復号化部22は、選択色成分の符号化データを復号化し、蓄積部23に出力する。合成部24は、あらかじめ設定しておいた色成分分割パターン情報に従って、復号化部22で復号化され蓄積部23に蓄積された現在の選択色成分の画像データと、色成分を異にする状態ですでに蓄積されている過去の復号化された色成分の画像データとを読み出して合成し、画像を復元する。
【0028】
例えば入力画像データがYUV形式の場合に、色成分をY成分、U成分、V成分に分割してYUVYUVの順に送信している場合について、図2を用いて説明する。
【0029】
いま、画像送信装置10の画像取得部11がnフレーム目の画像データを取得したとする。符号化部12はnフレーム目の入力画像データのY成分Yn を符号化し、データ転送部13に出力する。データ転送部13はネットワーク30に符号化データを送信する。nフレーム目の入力画像データのY成分Yn の符号化データを受信した画像受信装置20の復号化部22は、画像データを復号化し蓄積部23に格納する。合成部24では、蓄積部23に格納してある現フレームで受信したnフレーム目の画像データのY成分Yn と、1フレーム前に受信した(n−1)フレーム目の画像データのV成分Vn-1 と、2フレーム前に受信した(n−2)フレーム目の画像データのU成分Un-2 とを合成して、nフレーム目の再生画像Pn を再生する。次いで、(n+1)フレーム目では、(n−1)フレーム目の画像データのV成分Vn-1 と、nフレーム目の画像データのY成分Yn と、(n+1)フレーム目の画像データのU成分Un+1 を合成して、(n+1)フレーム目の再生画像Pn+1 を再生し、順次更新する色成分を変更しながら同様の処理を繰り返す。
【0030】
また、図3、図4のように、画像データの色成分を分割して送信してもよい。
【0031】
図3の例では、画像データをY成分、U成分、V成分に分割してY・U・Y・V・Y・U・Y・Vのように入れ替えながら送信している。この場合、(n−2)フレーム目には入力画像データのU成分Un-2 が、(n−1)フレーム目には入力画像データのY成分Yn-1 の符号化データが送信されており、nフレーム目の再生画像は現フレームで受信した入力画像のV成分Vn と蓄積部23に蓄積されている(n−2)フレーム目の入力画像データのU成分Un-2 と(n−1)フレーム目の入力画像データのY成分Yn-1 の復号化データを合成した再生画像Pn となる。(n+1)フレーム目には入力画像データのY成分Yn+1 の符号化データが更新され、合成部24は(n+1)フレーム目の入力画像データのY成分Yn+1 と、nフレーム目の入力画像のV成分Vn と、(n−2)フレーム目の入力画像データのU成分Un-2 を合成して画像を再生する。
【0032】
図4の例では、画像データをY成分とUV成分に分割して交互に送信している。この場合、nフレーム目に画像送信装置10は入力画像データのUV成分UVn の符号化データをネットワーク30に転送し、画像受信装置20は、蓄積部23に蓄積されている(n−1)フレーム目に受信した画像データのY成分Yn-1 と現フレームで受信した画像データのUV成分UVn を合成して画像を再生する。(n+1)フレーム目には入力画像データのY成分Yn+1 が送信され、画像受信装置20の合成部24でnフレーム目の画像データのUV成分UVn と、現フレームで受信した画像データのY成分Yn+1 を合成して画像を再生する。以後同様に交互にY成分とUV成分の更新を繰り返す。
【0033】
上記で説明した例に限らず、画像データのYU成分とYV成分を1フレームおきに送信するなど様々な色成分の分割方法と組み合わせが考えられる。YUV形式の信号は、YUV444に限らず、YUV422やYUV420、YUV411などのフォーマットを用いることでさらに情報量を削減することができる。画像取得部11にはRGB形式の画像も入力可能であるし、画像取得部11にYUV形式をRGB形式に変換する機能を持たせ、図5に示すように、R成分、G成分、B成分に分割して送信することもできる。
【0034】
合成部24は、画像データを再生するとともに、再生後の画像データを表示装置50に出力する。
【0035】
以上のように本実施の形態によれば、符号化部12が1フレーム内で符号化の対象とする画像データについて入力画像データにおける複数の色成分の一部(選択色成分の画像データ)に限定し、その選択色成分の画像データを符号化してデータ転送部13より画像受信装置20に転送するように構成してあるので、処理すべき画像データの情報量が削減されて符号化率が抑圧され、その結果、ネットワーク30の伝送容量が限られている場合でも、画像データを劣化の少ない状態で送信することができる。また、画像受信装置20では受信した現在の選択色成分の画像データと過去の選択色成分の画像データとを合成するように構成してあるので、元の入力画像データを劣化のない状態で再現することができる。
【0036】
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2の画像通信装置A2の全体構成を示すブロック図である。図6において、実施の形態1の図1におけるのと同じ符号は同一構成要素を指しているので、詳しい説明は省略する。本実施の形態においては、画像送信装置10に分割パターン設定部14が追加されている。この分割パターン設定部14はレジスタなどの変更可能な記憶手段を持ち、この記憶手段に入力画像のデータ形式、色成分分割パターンを設定しておく。ここで色成分分割パターンとは、画像データの送受信を例えば図2のような色成分分割パターンで行うか、図3のような色成分分割パターンで行うかという情報である。
【0037】
符号化部12は、分割パターン設定部14の設定に従って、画像取得部11から読み出す画像データについて色情報を構成する複数の色成分の一部を限定された符号化対象の色成分としてその都度に選択し、その選択色成分の画像データを符号化する。データ転送部13は、符号化された画像データに色成分分割パターン情報を付加してネットワーク30に送信する。
【0038】
画像受信装置20における合成部24は、画像データとともに送られてきた色成分分割パターン情報に従って、復号化部22で復号化され蓄積部23に蓄積された現在の選択色成分の画像データと、色成分を異にする状態ですでに蓄積されている過去の復号化された色成分の画像データとを読み出して合成し、画像を復元する。
【0039】
画像データの送信と再生の様子は実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0040】
以上のように本実施の形態によれば、分割パターン設定部14において、ネットワーク30の混雑状況の変化に応じて色成分分割パターンを設定することが可能であるので、ネットワーク30の混雑状況の変化にかかわらず、画像データを劣化の少ない状態で送信することができる。
【0041】
なお、データ転送部13にネットワーク30のトラフィック測定機能を持たせ、負荷状況に応じて色成分分割パターンを自動で変更するように構成することも可能である。このように構成した場合、ネットワーク30の負荷が軽いときには1フレーム内に画像データの色成分すべてを送信し、ネットワーク30が混雑しているときには一部の色成分を選択し、その選択色成分の画像データのみを送信するようにする。その結果として、ネットワーク30の輻輳状況に応じて画像データの容量を増減することができる。
【0042】
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3の画像通信装置A3の全体構成を示すブロック図である。図7において、実施の形態1の図1におけるのと同じ符号は同一構成要素を指しているので、詳しい説明は省略する。本実施の形態においては、画像送信装置10に動き検出部15が追加されている。画像取得部11におけるメモリには1フレーム前の入力画像データを記憶しておき、動き検出部15で現在のフレームでの入力画像データと1フレーム前の入力画像データの差分から画像の動き量を検出する。動き検出部15の記憶部には、画像データの色成分分割パターン切り替えの閾値が設定記憶されるようになっている。符号化部12は、ROMなどの記憶手段にあらかじめ色成分分割パターンが設定記憶されるようになっている。
【0043】
符号化部12は、動き検出部15が検出した画像の動き量が色成分分割パターン切り替えの閾値以下の場合には、実施の形態1の場合と同様に、あらかじめ設定した色成分分割パターンに従って、画像データの複数の色成分の一部を選択し、その選択色成分の画像データを符号化を行い、一方、検出した画像の動き量が色成分分割パターン切り替えの閾値よりも大きい場合には、画像データの色成分を分割せずに、1フレームにおいてすべての色成分の画像データを符号化する。データ転送部13では符号化された画像データに色成分分割パターン情報を付加してネットワーク30に送信する。
【0044】
画像受信装置20における合成部24は、ネットワーク30から受信した符号化データが色成分分割されたものである場合は、実施の形態1の場合と同様に、あらかじめ設定しておいた色成分分割パターン情報に従って、復号化部22で復号化され蓄積部23に蓄積された現在の選択色成分の画像データと、色成分を異にする状態ですでに蓄積されている過去の復号化された色成分の画像データとを読み出して合成し、画像を復元する。一方、ネットワーク30から受信した符号化データが色成分分割されたものでなくすべての色成分を含むものである場合には、復号化部22からの復号化された画像データをそのまま表示装置50に出力する。
【0045】
なお、画像送信装置10に実施の形態2と同様の分割パターン設定部をもたせ、2つの色成分分割パターンを設定しておき、色成分分割パターン切り替えの閾値によって2つの色成分分割パターンを切り替えるようにしてもよい。
【0046】
以上のように本実施の形態によれば、動き検出部15によって画像の動きの速さを検出し、画像の動き量が所定の閾値より大きいときは、色成分の選択をやめ、すべての色成分の画像データの符号化に切り替える。これは、画像の動きが速いときは、解像度が低いことに起因して画質劣化が生じても、視覚上はあまり問題とならないことを利用したものである。その結果として、画像処理の速度アップを図ることができる。
【0047】
(実施の形態4)
図8は本発明の実施の形態4の画像通信装置A4の全体構成を示すブロック図である。図8において、実施の形態3の図7におけるのと同じ符号は同一構成要素を指しているので、詳しい説明は省略する。
【0048】
実施の形態3の場合において、合成部24は、あらかじめ設定しておいた色成分分割パターン情報に従って、復号化部22で復号化され蓄積部23に蓄積された現在の選択色成分の画像データと、色成分を異にする状態ですでに蓄積されている過去の復号化された色成分の画像データとを読み出して合成し、画像を復元する。このとき現フレームでの選択色成分の画像データと過去フレームでの選択色成分の画像データとは時間的に差異が生じているため、動きのある被写体では合成時に色ずれが生じるおそれがある。本実施の形態は、この色ずれを緩和するものである。
【0049】
本実施の形態においては、画像受信装置20に動き補償部25および平滑化部26が追加されている。
【0050】
動き補償部25は、蓄積部23に蓄積されている過去のフレームの画像データに対して、画像データとともに送られてきた予測誤差と動きベクトルを用いて動き補償処理を行い、その動き補償後の画像データを平滑化部26に出力するように構成されている。ここで、上記の画像データとともに送られてきた予測誤差と動きベクトルについて説明すると、これらは画像送信装置10における動き検出部15で算出され、データ転送部13からネットワーク30に送出されたものである。
【0051】
平滑化部26は、移動平均法などの平滑化フィルタを用いて、画像データとともに送られてきた画像の動き量に応じて、画像データをぼかす処理を行うように構成されている。
【0052】
画像送信装置10の動き検出部15において、入力画像と1フレーム前の画像データから動きベクトルを検出し、1フレーム前の画像データと動きベクトルから予測画像を作成し、現在のフレームで送信を行わない色成分の予測画像と入力画像の差分である予測誤差と動きベクトルを動き量とともに画像データに付加して送信する。動きベクトルとは、入力画像をm×nブロックに区切り符号化しようとしているブロックに最も似ているブロックを予測画像の中から検出したとき、符号化対象のブロックから予測画像中の最も類似したブロックを示すベクトルである。図9に予測誤差と動きベクトルの模式図を示す。
【0053】
データ転送部13は、符号化された画像データをネットワーク30に送信する際に、動き検出部15で算出された予測誤差と動きベクトル、画像の動き量を付加して送信する。
【0054】
例えば図2のように画像データをY成分、U成分、V成分に分割して送信しているときについて説明する。
【0055】
nフレーム目の画像データのY成分Yn を送信する際には、nフレーム目の画像データのV成分Vn と(n−1)フレーム目の画像データのV成分Vn-1 から作成した予測誤差と動きベクトル、および、nフレーム目の画像データのU成分Un と(n−1)フレーム目のU成分の予測画像Un-1 ′((n−1)フレーム目の画像データのU成分Un-1 と(n−2)フレーム目の画像データのU成分Un-2 から作成した予測画像)から作成した予測誤差と動きベクトルを付加して送信する。
【0056】
これらの画像データを受信した画像受信装置20では、動き補償部25は、蓄積部23に蓄積している(n−1)フレーム目の画像データのV成分Vn-1 と(n−2)フレーム目の画像データのU成分Un-2 に対して、画像データとともに送られてきた予測誤差と動きベクトルを用いて動き補償処理を行う。
【0057】
平滑化部26では、動き補償後の(n−1)フレーム目の画像データのV成分Vn-1 と(n−2)フレーム目の画像データのU成分Un-2 及び現フレームであるnフレーム目の画像データのY成分Yn を画像データとともに受信した動き量に応じて平滑化する。そして、合成部24では動き補償、平滑化後のnフレーム目の画像データのY成分Yn 、(n−1)フレーム目の画像データのV成分Vn-1 、(n−2)フレーム目の画像データのU成分Un-2 を合成して画像を再生する。
【0058】
人間の目の視力は動きのある被写体に対しては低下する。そのため、過去フレームおよび現フレームの選択色成分の画像データをぼかした後、合成部24で合成すれば、各選択色成分の時間的差異による色ずれを緩和することが可能となる。
【0059】
なお、動き検出部15で入力画像データをm×nブロックに区切り、そのブロックごとに動き量を検出して画像データに付加して送信し、平滑化部26でm×nブロックごとに動き量に応じて平滑化を行うようにすれば、さらに自然な画像を再生できるようになる。ただし、ブロックのサイズが小さくなるにつれて情報量は増加するため、適当なサイズのブロック数を選択する必要がある。
【0060】
また、ブロック毎に動き量に応じて平滑化を行うことで画像の一部分のみがぼけることを防ぐために、最も動き量が大きいブロックに合わせて画像全体を平滑化するようにしてもよい。また、動き量が大きい場合には色成分の彩度を落とし、色ずれを目立たなくするようにしてもよい。
【0061】
なお、画像送信装置10に分割パターン設定部をもたせ、設定した色成分分割パターンに従って符号化を行い、データ転送部13から画像データ、動き量とともに色成分分割パターン情報を送付するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の技術は、ネットワークなどの伝送容量が限られたデータ通信回線を介して動画像を送受信するシステムにおいて、画像データを劣化の少ない状態で送信する画像送信装置、また、元の入力画像データを劣化のない状態で再現する画像受信装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1における画像通信装置の全体構成を示すブロック図
【図2】実施の形態1において画像データをY成分、U成分、V成分に分割し、Y・U・Vの順番で送受信を行っている様子を表す図
【図3】実施の形態1において画像データをY成分、U成分、V成分に分割し、Y・U・Y・Vの順番で送受信を行っている様子を表す図
【図4】実施の形態1において画像データをY成分、UV成分に分割し、Y・UVの順番で送受信を行っている様子を表す図
【図5】実施の形態1において画像データをR成分、G成分、B成分に分割し、R・G・Bの順番で送受信を行っている様子を表す図
【図6】本発明の実施の形態2における画像通信装置の全体構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態3における画像通信装置の全体構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施の形態4における画像通信装置の全体構成を示すブロック図
【図9】実施の形態4において動きベクトルと予測誤差を表す図
【符号の説明】
【0064】
A1〜A4 画像通信装置
10 画像送信装置
11 画像取得部
12 符号化部
13 データ転送部
14 分割パターン設定部
15 動き検出部
20 画像受信装置
21 データ受信部
22 復号化部
23 蓄積部
24 合成部
25 動き補償部
26 平滑化部
30 ネットワーク
40 撮像装置
50 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの入力画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得した画像データの色情報を構成する複数の色成分の一部を限定された符号化対象の色成分としてその都度に選択し、その選択色成分の画像データを所定の方式で符号化するとともに、前記選択色成分をサイクリックに入れ替える符号化部と、
前記符号化部で符号化された選択色成分の画像データをデータ通信回線に転送するデータ転送部とを備えた画像送信装置。
【請求項2】
サイクリックに入れ替えられて符号化された選択色成分の画像データをデータ通信回線を介して受信するデータ受信部と、
前記データ受信部で受信された選択色成分の画像データを復号化する復号化部と、
前記復号化部で復号化された選択色成分の画像データを蓄積する蓄積部と、
前記復号化部で復号化された選択色成分の画像データと、色成分を異にする状態ですでに前記蓄積部に蓄積されている復号化された選択色成分の画像データとを合成して画像を再生する合成部とを備えた画像受信装置。
【請求項3】
前記符号化部は、前記画像取得部で取得する画像データにおける選択色成分をY成分、U成分、Y成分、V成分、Y成分、U成分のようにフレーム毎に入れ替えて繰り返し符号化する請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項4】
前記符号化部は、前記画像取得部で取得する画像データにおける選択色成分をY成分、UV成分、Y成分、UV成分のようにフレーム毎に入れ替えて繰り返し符号化する請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項5】
さらに、色成分分割パターンを変更可能な分割パターン設定部を備え、
前記符号化部は、前記分割パターン設定部で設定した色成分分割パターンに則って前記画像取得部で取得した画像データの色成分を選択し、選択色成分をフレーム毎に入れ替えながら選択色成分の画像データを符号化し、前記符号化された選択色成分の画像データに前記分割パターン設定部による色成分分割パターン情報を付加して前記データ転送部より転送する請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項6】
さらに、前記画像取得部で取得した画像データから再生される画像の動き量を検出する動き検出部を備え、
前記符号化部は、前記動き検出部で検出した画像の動き量が所定の閾値よりも大きくなった場合には、画像データの色成分の選択に代えて画像データのすべての色成分の画像データを符号化する請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項7】
さらに、前記画像取得部で取得した画像データから再生される画像の動き量を検出する動き検出部を備え、
前記符号化部は、選択色成分の画像データを符号化したデータと、前記動き検出部による前記符号化を行った色成分とは異なる色成分の動き量の情報とを前記データ転送部により転送し、フレーム毎に符号化する色成分を入れ替える請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項8】
選択色成分の画像データを符号化したデータと前記符号化を行った色成分とは異なる色成分の動き量を受信するデータ受信部と、
前記データ受信部で受信された選択色成分の画像データを復号化する復号化部と、
前記復号化部で復号化された選択色成分の画像データを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積されている過去の画像データに対して、送られてきた画像の動き量を用いて動き補償処理を行う動き補償部と、
前記蓄積部に蓄積されている過去の画像データおよび前記復号化部による復号化データを、前記画像の動き量に応じて所定のアルゴリズムで平滑化する平滑化部と、
前記平滑化部で平滑化された現在の選択色成分の復号化データと選択色成分の動き補償後のデータとを合成して画像を再生する合成部とを備えた画像受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−290662(P2009−290662A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142391(P2008−142391)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】