説明

界面の位置測定方法および位置測定装置

【課題】複数の界面を持つ光透過性のある被測定物の各界面の位置を測定する。
【解決手段】白色光源からの光を参照面および被測定物に照射して反射光を干渉させ、参照面を移動させたときの干渉縞を撮像し、界面を1つもつ基準面による干渉強度信号から直流成分を減じたスペクトルの複素共役データと、被測定物の複数の界面による干渉距度信号から直流成分を減じたスペクトルの積をとり逆フーリエ変換し相関を求めることで被測定物の界面の位置を求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクなどの複数の界面をもつ被測定物の界面の位置を測定する界面の位置測定方法及び位置測定装置である。
【背景技術】
【0002】
従来の界面の位置測定装置としては、白色光干渉に基づくものがあった(例えば、特許文献1参照)。図9は、特許文献1に記載された従来の界面の位置測定装置の模式図を示すものである。図9において、白色光光源110の射出光をバンドパスフィルター112で特定の周波数帯域だけを通過させ、対物レンズ114を通過した白色光を参照面115と被測定物131への測定光にわけ、ミラー116で反射した光と被測定物131で反射した光とを干渉させる。白色光光源110、対物レンズ114、参照ミラー115などを含む光学系ユニット101を被測定物131に対して高さ方向に所定のサンプリング周期ごとに移動させ、その干渉縞をCCD119で取り込む。所定のサンプリング周期で取り込んだ干渉縞の強度変化の理論的な波形の振幅成分に基づく特性関数を推定し、その特性関数のピーク位置に基づいて、被測定物131の高さを求めている。
【特許文献1】特開2001−66122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、被測定物に複数の界面があるときに、それぞれの界面ごとに干渉強度信号から界面の位置を計算する必要があり、界面の数が増えると計算時間が長くなるという問題がある。さらに、被測定物に複数の界面があると、特に一番奥の界面からの反射光量が小さくなりやすく、信号のSN比が小さくなり、精度のよい計測が困難となる。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、複数の界面を持つ被測定物を精度よく測定できる界面の位置測定方法および位置測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の界面の位置測定方法は、白色光源から射出光を、表面を含みこれと平行な複数の界面を有する被測定物と参照面とに照射し、前記被測定物と前記参照面間の相対距離を変化させたときの前記被測定物の各界面の反射光と前記参照面の反射光による干渉強度信号を測定して得られる前記被測定物の界面の位置を測定する界面の位置測定方法において、
空間フィルタにより制限した前記白色光源の発光径と、波長フィルタで制限した前記白色光源の波長帯域から干渉強度信号のサンプリング周期Tを求める第1の工程と、前記参照面と1つの界面(基準面と呼ぶ)を持つ測定基準物間の相対距離を前記第1の工程で求めたサンプリング周期Tに対し、mを自然数としたときに、サンプリング周期をT/mで干渉強度信号を測定し、得られた干渉強度信号から直流成分を減じたあと、フーリエ変換してスペクトルの複素共役データを求める第2の工程と、前記参照面と複数の界面を持つ被測定物間の相対距離を前記第1の工程で求めたサンプリング周期で変化させたときの干渉強度信号を測定し、得られた干渉強度信号から直流成分を減じたあとのデータ列に対し、データ間に値が0となるデータをm−1個追加し前記第2の工程とサンプリング周期が等しくなるように再サンプリングしたあと、フーリエ変換してスペクトルを求める第3の工程と前記第2の工程で得られた基準面による干渉強度信号のスペクトルの複素共役データと、前記第3の工程で得られた被測定物の複数の界面による干渉強度信号のスペクトルとの積をとり、逆フーリエ変換して得られる前記基準面による干渉強度信号と前記被測定物の界面による干渉強度信号との相関から被測定物の界面の位置を求める第4の工程とを有することを特徴とする。
【0006】
なお、前記第4の工程において、前記第2の工程で得られた基準面による干渉強度信号のスペクトルの複素共役データと、前記第3の工程で得られた被測定物の複数の界面による干渉強度信号のスペクトルとの積をとり、正、または負のいずれか一方のスペクトルを取り出し逆フーリエ変換して得られる前記基準面による干渉強度信号と前記被測定物の界面による干渉強度信号との相関から被測定物の界面の位置を求められる。
【0007】
また、本発明の界面の位置測定装置は、光源と、前記光源からの射出光を参照面および被測定物に照射し、前記参照面および前記被測定物からの反射光を干渉させる手段と、前記被測定物と前記参照面間の相対距離を変化させる移動手段と前記移動手段による前記被測定物と前記参照面間距離の変化を測定する測長手段と、前記移動手段により前記被測定物と前記参照面間の相対距離が変化することで生じる干渉縞の変化を前記測長手段を用い、空間フィルタによる発光径の制限と、波長フィルタによる波長帯域の制限から求められるサンプリング周期ごとに撮像する撮像手段と、前記光源と前記撮像手段の間に配置された前記光源の発光径を制限する前記空間フィルタおよび前記光源の波長帯域を制限する前記波長フィルタと、1つの界面(基準面と呼ぶ)を持つ測定基準物を測定し干渉強度信号から直流成分を減じてフーリエ変換したスペクトルの複素共役データを予め計算して保持し、被測定物の複数の界面による干渉距度信号から直流成分を減じてフーリエ変換したスペクトルと、予め求めておいた基準面の干渉強度信号の複素共役スペクトルとの積をとり、逆フーリエ変換した結果より被測定物の界面の位置を求める演算手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の界面の位置測定方法によれば、白色光源を用い、光源のサイズおよび波長帯域を制限し、制限した波長帯域および光源発光径に基づいたサンプリング周期であらかじめ基準面による干渉強度信号を測定し、直流成分を減じた信号をフーリエ変換したスペクトルの複素共役を保存し、次に表面を含みこれと平行な複数の界面を持つ被測定物による干渉強度信号を測定し、直流成分を減じた信号をフーリエ変換したスペクトルと、基準面によるスペクトルの複素共役との積をとり、逆フーリエ変換することにより相関を求め、被測定物の界面群の位置を一度に求めることができる。
【0009】
さらに、基準面の干渉強度信号のサンプリング周期のみを細かくし、被測定面による干渉強度信号は、不足分を0で補うことで、測定データ数を増やすことなく、被測定物の界面の位置を精度よく求めることができる。
【0010】
また、基準面による干渉強度信号と被測定物の界面による干渉強度信号との相関を求める上で、基準面によるスペクトルの複素共役と、被測定物の界面によるスペクトルとの積をとり、正または、負のみのデータを逆フーリエ変換することにより、干渉強度信号のスペクトルの非対称性により生じる被測定物の界面位置計算での誤差を防ぎ、高精度な計測を行うことができる。
【0011】
また本発明の界面の位置測定装置によれば、被測定物の界面群の位置を求めることができる装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における界面の位置測定装置の模式図である。
【0014】
図1において、1は複数の波長を含む光源を複数集積した光源である。たとえば、すくなくとも1個以上の発光ダイオードあるいはスーパールミネッセンスダイオードなどを集積して配置したものや、少なくとも1個以上のハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプなどの射出光を集光し、光ファイバー束の一端に入射し他端から射出したものである。
【0015】
2は、光源1の射出光を平行光化するコリメータレンズであり、光源1の発光面を後ろ側焦点面とする。3は、ビームスプリッタであり、コリメータレンズ2の射出光を波面分割し、一部を透過、一部を反射する。4は、参照平面ミラーであり、ビームスプリッタ3の透過光を入射光とする。参照平面ミラー4の反射光は、ふたたびビームスプリッタ3に戻る。5は、参照平面ミラー4を光軸に平行に移動させる圧電素子である。6は、圧電素子5で移動する参照平面ミラー4の位置を測定する測長センサであり、静電容量センサ、リニアエンコーダなどである。14は試料台であり、被測定物を保持する。13は、表面を含みこれと平行な複数の界面を有する被測定物である。たとえば、複数の記録面を有する光ディスクである。被測定物13へは、ビームスプリッタ3での反射光が入射光となる。被測定物内の各界面での反射光は、ビームスプリッタ3に戻る。ビームスプリッタ3から被測定物13の各界面までの光学距離は、ビームスプリッタ3から圧電素子で移動する参照平面ミラー4までの光学距離に含まれるように配置される。参照平面ミラー4で反射し、ビームスプリッタ3で反射した光と、被測定物13の界面で反射し、ビームスプリッタ3を透過した光は互いに光干渉する。7は、被測定物13および参照平面ミラー4との干渉光を入射光とし、後ろ側焦点がほぼ被測定物13となるように配置された第1のレンズであり、8は、第1のレンズの射出光を入射光とし、第1のレンズ7の前側焦点位置を後ろ側焦点位置となるように配置された第2のレンズである。9は、第2のレンズ8の射出光を入射光とするCCDカメラであり、第2のレンズ8の前側焦点位置が撮像面となるように配置される。11は、空間フィルタであり、ピンホールや、光軸からの距離により透過率が変化するようなガラス基板上にクロム膜を蒸着したものであり、第1のレンズ7の前側焦点位置に配置される。10は、第2のレンズ8とCCDカメラ9との間に配置され、特定の波長帯域のみを通過させる波長フィルタである。12は、制御コンピュータであり、圧電素子へ移動指令をだし、参照面ミラー4の位置およびCCDカメラ9からの光干渉強度にもとづき、被測定面内の界面の位置を算出する。
【0016】
つぎに、本発明の測定原理について説明する。最初に光源サイズ、波長分布を考慮した2光束干渉について、そのスペクトルの配置から求められる信号のサンプリング周期の条件を説明し、次に、被測定物の複数の界面からの反射光と参照平面ミラーとの干渉から界面の位置をフーリエ変換を用いた相関計算により算出できることを説明する。
【0017】
最初に、2光束による光干渉を求める。図2は、本発明の光干渉部分を示すものであり、21を光源1の発光面のある微小部分から射出される光をコリメータレンズ2で平行光化した光線とすると、光線21は、ビームスプリッタ3で波面分割され、反射光22と透過光23となる。反射光22は、被測定物13内の界面で反射し、ビームスプリッタ3上の点A0に戻る。透過光23は、参照面ミラー4で反射し、ビームスプリッタ3上の点A0に戻り、被測定物13内の界面反射光22と重なり合い、光干渉が生じる。
【0018】
2光束の光路長差をsとし、2光束の光量比をa、複素単位をj(j=(−1)1/2)、波長をλ、2光束の位相をexp(−j2π×0)とa×exp(−j2π×s)とすると干渉強度は、|1+a×exp(−j2πs/λ)|2 となる。
【0019】
参照平面ミラーの初期位置をx0、参照平面ミラーの位置をxとすると、光路長差sは、図において、A1A2+A2A3で表される距離であり、s=2(x−x0)cos(θ) となる。ω=4π/λ、 ε=cosθとおくと2光束干渉の光強度f(x、ω、ε)は、式1となる。
【0020】
【数1】

【0021】
つぎに、光源の波長、および光源の大きさを考慮した2光束干渉の光強度を求める。光源、参照ミラー、ビームスプリッタ、受光部、フィルタの波長特性を含めた、波長強度分布をg(ω)とする。また、光源1を微少発光点の集合と考えると、コリメートした光は、各発光点ごとに、参照平面ミラー4に対して角度θを持つ平行光束となる。そこで、コリメートしたあとの光軸に対する光束方位ごとの強度をη(ε)とする。g(ω)、η(ε)は、∫η(ε)g(2πν/ε)dεが極大値を1つだけもつように、フィルタの特性を決める。
【0022】
波長および光源の大きさを考慮した2光束が干渉したときの光強度信号h(x)は、式2となる。
【0023】
【数2】

【0024】
式2の光強度信号から直流成分を除いた信号成分をha(x)とすると、式3となる。(以下、2光束の光干渉による光強度信号から直流成分を除いた信号成分を干渉強度信号とする)。
【0025】
【数3】

【0026】
2光束の干渉強度から直流成分をのぞいた信号成分は一般的にインターフェログラムと呼ばれる(光学技術ハンドブック 朝倉書店 p946参照)。
【0027】
つぎに、干渉強度信号ha(x)に対する、サンプリング周期の条件を求める。
【0028】
ha(x)のフーリエ変換HA(ν)を求めると、式4となる。
【0029】
【数4】

【0030】
HA(ν)は、干渉強度信号ha(x)のスペクトルである。図3は、光源サイズと波長の制限を示す図であり、この図3に示すように角度強度分布η(ε)が、ε=ε1からε2までに制限され、波長強度分布が、ω=ω1からω2までに制限されているとすると、式4において、K(ν)内の積分内のg(2πν/ε)が値をもつνの範囲は、 ω1<2πν/ε<ω2 となる。ただし、ω1<ω2、ε1<ε2である。
【0031】
η(ε)が値を持つ範囲は、ε1からε2までの領域であるので、
K(ν)=∫η(ε)g(2πν/ε)dεが値を持つスペクトル座標νの範囲は、
【0032】
【数5】

【0033】
同様に、K(−ν)=∫η(ε)g(−2πν/ε)dεが値を持つスペクトル座標νの範囲は、
【0034】
【数6】

【0035】
となり、HA(ν)は干渉強度信号のスペクトルを示した図4のグラフとなる。
【0036】
次に、干渉強度信号ha(x)をサンプリング周期T、x=mT(m=0、±1、±2,...)でサンプリングした信号has(x)とすると、式7となる。
【0037】
【数7】

【0038】
サンプリングhas(x)信号のフーリエ変換HAS(ν)は、式8となる。
【0039】
【数8】

【0040】
式8は、元の信号ha(x)のスペクトルHA(ν)が周期1/Tで繰り返し現れることを示す。スペクトルの重なりが生じると、元の信号の情報が失われるため、スペクトルが重なり合わない条件から、サンプリング周期Tを、干渉強度信号をサンプリングしたスペクトルを示した図5より、
【0041】
【数9】

【0042】
式9に示すサンプリング周期の条件は、一般的な標本化定理を適用したものに相当する。
【0043】
また、干渉強度信号をサンプリングしたスペクトルを示した図6aより、
【0044】
【数10】

【0045】
あるいは、干渉強度信号をサンプリングしたスペクトルを示した図6bより、
【0046】
【数11】

【0047】
式10、式11をまとめると、
式14を満たし、mを整数(m=0,1,2,3,...)としたときに、式12または式13を満たすようなサンプリング周期Tを選ぶ。
【0048】
【数12】

【0049】
【数13】

【0050】
【数14】

【0051】
式14に示すサンプリング周期の条件は、帯域通過型標本化定理を適用したものに相当する。
【0052】
式9と式14を比べると、ω1×ε1>0であるので、式14の右辺の分母の方が小さくなり、従って式14の右辺の方が大きくなるため、式14の方がサンプリング周期を長く設定することができる。
【0053】
つぎに、被測定物の界面の位置を求めるために、基準信号波形を用いて、界面による信号波形群との相関をとる。被測定物13の表面を第1番目の界面とし、参照ミラー位置xがx−xiの位置でビームスプリッタ3から参照平面ミラー4までの光路長とビームスプリッタ3から被測定物13の第i番目の界面までの光路長が等しくなるとし、前記サンプリング周期Tによる干渉強度信号をhasi(x)とする。
【0054】
基準干渉強度信号として、界面を1つもつ平行平面ミラーを用い、前記サンプリング周期Tで信号を測定する。この干渉強度信号をhas0(x)とする。
【0055】
被測定物13の各界面の位置を求めるため、信号群Σhasi(x)とhas0(x)との相関をとる。ただし、Σは総和記号であり、iを整数とする。相関定理からhasiとhas0との相関は、それぞれをフーリエ変換し、どちらか一方の共役複素数との積を求め、その結果を逆フーリエ変換すればよいことはよく知られている。
【0056】
すなわち、式15となる。
【0057】
【数15】

【0058】
式8のHAS(ν)から1周期分のスペクトル(−1/(2T)<ν<1/(2T))を切り出すと、式15は、
【0059】
【数16】

【0060】
となり、関数K(x)の位置が被測定面13の第i番目の界面の光学的な位置となる。
式16において、スペクトルK(ν)は実関数であり、νが
ω1ε1/2π < ν < ω2ε2/2πでのみ値を持つので、
K(ν)K(−ν)=0となり、|K(ν)+K(−ν)|2=K(ν)2+K(−ν)2
となる。
【0061】
【数17】

【0062】
【数18】

【0063】
式17、式18を比べると、式17において、K(ν)とK(−ν)はy軸対称であり、式18においてK(ν‘+νc)とK(ν’―νc))は横ずらしである点が異なるが、両者とも、−ω2ε2/2π < ν <ω1ε1/2π と
ω1ε1/2π <ν <ω2ε2/2π、の領域において値を持つ点は同じであり、大部分の領域で一致する。特に、スペクトルK(ν)が中心νcを軸に対称形状であるとき、両者は一致する。この特性は、K(ν)を自乗したK(ν)2においても同じである。そこで、K(ν)2=W(ν)、 W(x)=F-1[W(ν)]とおき、フーリエ変換の特性W(x)cos(2πνc×x)=F-1[W(ν+νc)+W(ν―νc)]
を用いて、式16を書き換えると、
【0064】
【数19】

【0065】
W(ν)は、極大値を1つもち、y軸に対して対称形状であるので関数W(x)は、x=xi−x0において、最大値をとる。干渉強度信号の相関には、
式19に示すように、cos成分が乗ぜられるため、振動成分となるが関数K(ν)がν=νcを軸に対称なときは、相関の最大値とcosの最大値とは一致するので、相関の最大値から被測定物の界面の光学的な位置を求められる。
【0066】
しかし、スペクトル領域における関数K(ν)が非対称形状のとき、式17と式18とが重なり合わない部分が生じ、式19の等式が成り立たなくなる。このため、相関の最大値とcos関数の最大値とが一致しなくなる可能性がある。
【0067】
そこで、式16において、基準面による干渉強度信号has0(x)と被測定物による干渉強度信号hasi(x)との相関を求める際に、has0(x)のスペクトルの複素共役HAS0(ν)とhasi(x)のスペクトルHASi(ν)との積において、正あるいは負のみのスペクトルに制限することにより、式16は、式20となり、式19と比較して、cos成分が含まれないので、相関に振動成分が入らない。
【0068】
【数20】

【0069】
よって、スペクトルの形状を示す関数K(ν)が非対称形状のときにも、被測定物の界面の位置を求めることができる。
【0070】
つぎに、被測定物の界面の位置を高精度に測定する方法について説明する。
【0071】
相関データのサンプリング周期は、干渉強度信号のサンプリング周期と同じであるので、サンプリング周期を大きくすると、相関の最大値位置の算出において、計算誤差が出やすくなる。
【0072】
そこで、まず、基準面による干渉強度信号の測定において、式9あるいは、式12〜14で決まるサンプリング周期Tに対して、bを自然数として、T/bをサンプリング周期とする。つぎに、被測定物による干渉強度信号の測定では、サンプリング周期をTとして測定する。干渉強度信号の直流成分を減じた信号ha(x)をサンプリング周期Tでサンプリングした信号has(x)は、式7であり、信号has(x)をフーリエ変換したスペクトルHAS(ν)は、式8で与えられる。ここで、サンプリング周期Tでサンプリングした干渉強度信号has(x)をさらに、サンプリング周期T/bで再サンプリングした関数をhas‘(x)とし、そのフーリエ変換をHAS’(ν)とすると、式20となる。
【0073】
【数21】

【0074】
式20よりHAS‘(ν)は、スペクトル領域で元のスペクトルHA(ν)がb/Tの周期で繰り返され、各々のb/Tの周期内では、1/Tの周期でHA(ν)が繰り返されことを示す。bを自然数とすることにより、HAS’(ν)において、b/Tが1/Tで割り切れることからスペクトル領域で繰り返し現れるスペクトルHA(ν)は互いに重なり合わない。よって、基準面による干渉強度信号と被測定物による干渉強度信号との相関をとることにより、被測定物の界面の光学位置を求めることができる。このとき、相関のサンプリング周期は、T/bと細かくなり、界面の位置算出の分解能を向上できる。基準面による干渉強度信号の測定は、光源やフィルタを変更したときに1度だけ行えばよく、被測定物のサンプリング周期は、式9あるいは、式12〜14で示される値を用いればよく、測定データ数は増加しない。また、基準面による干渉強度信号と被測定物による干渉強度信号の相関を求める際、相関のスペクトルにおいて、正または、負のみを用いることにより、相関データから振動成分を除去する操作を組み合わせて行うことができる。
【0075】
さらに、得られた相関に対して、たとえば、ある界面と基準面との干渉強度信号の相関において、最大値の80%にしきい値を設け、しきい値以上に対して、多項式近似を行い、相関が最大となる位置を求めることにより、さらに高精度な被測定物の界面の光学位置を求めることができる。なお、しきい値の値は80%に限定されるものではない。
【0076】
また、基準面による干渉強度信号のサンプル数と、被測定物による干渉強度信号のサンプル数が異なるときは、直流成分を減じたあとの干渉強度信号のデータ列に値0を加え同じサンプル数とする。
【0077】
また、被測定物の界面の光学位置に対して、被測定物の屈折率をかけることで、被測定物の界面の位置を求めることができる。
【0078】
つぎに、被測定物の界面間での相関が重ならない条件を求める。
【0079】
簡単のために、スペクトルW(ν)を式22のようにスペクトル幅が(ω2ε2―ω1ε1)/2πの矩形領域とすると逆フーリエ変換W(x)は、式23となる。
【0080】
【数22】

【0081】
【数23】

【0082】
W(x)のサイドローブを無視すると、W(x)の幅は、4π/(ω2ε2―ω1ε1)となる。よって、基準面による干渉強度信号と被測定物の界面による干渉強度信号との相関で相関データが重ならない最小の界面間距離Δxtは、
【0083】
【数24】

【0084】
であり、測定器の波長特性g(ω)、空間フィルタη(ε)において、式24を満たすようにω1、ω2、ε1、ε2を定めることにより、被測定物の界面位置を分離できる。
【0085】
以上の原理に基づき、以下本発明の実施の形態1の界面の位置測定装置の処理のフローチャートを図7を用いて説明する。
【0086】
工程S1では、被測定物の界面間距離に応じて、空間フィルタおよび、波長フィルタを式24の条件を満たすように選択し、サンプリング周期を式12から式14の条件を満たすように定める。工程S1が本発明の工程1に相当する。
【0087】
工程S2では、測定基準物として、参照平面ミラーを用い、工程S1により定めたサンプリング周期のb分の1周期で、参照平面ミラーを移動させ、そのときの干渉縞の画像をCCDカメラで撮像し、制御コンピュータに画像データを保存していく。bは自然数であり、保存したデータ数をM×bとする。
【0088】
工程S3では、得られた画像データついて、CCDカメラの各画素のデータ配列を作成し、サンプリング周期ごとに得られた画像データを格納する。各配列に、直流成分をもとめ、配列の要素からその直流成分を減算し、式3で示される信号の変化成分のみを取り出す。さらに、得られた結果のフーリエ変換を行い、その複素共役データを基準面のスペクトルデータとして、制御コンピュータに保存する。フーリエ変換計算には、離散高速フーリエ変換を用いることにより計算時間を短くできる。また、工程S2および、S3については、測定のたびに繰り返し行う必要はなく、フィルタ、光源を変更した場合に1回だけ行えばよい。工程S2および工程S3が本発明の工程2に相当する。
【0089】
工程S4では、測定したいサンプルを被測定物とし、工程S1で定めたサンプリング周期で参照面ミラーを移動させ、そのときの干渉縞の画像をCCDカメラで撮像し、制御コンピュータに画像データを保存していく。保存したデータ数をMとする。
【0090】
工程S5では、工程S4で得られた画像データについて、各画素にデータ配列を作成し、サンプリング周期ごとに得られた画像データを格納する。各データ配列に直流成分を求め、配列要素からその直流成分を減算し、式3で示される信号の変化成分のみを取り出す。つぎに、配列の要素間に、b−1個の0データを挿入し、M×b個のデータ配列とする。得られたM×b個のデータをフーリエ変換し保存する。工程S4および工程S5が本発明の工程3に相当する。
【0091】
工程S6では、工程S2で保存した基準干渉強度信号複素共役のスペクトルと工程S4で保存した被測定物の界面群からの干渉強度信号のスペクトルとの積をとり、得られたスペクトルを逆フーリエ変換を行い、被測定物の界面群の位置を求める。これは、相関計算(式19)を求めることに相当する。
【0092】
あるいは、工程S6において、工程S2で保存した基準干渉強度信号複素共役のスペクトルと工程S4で保存した被測定物の界面群からの干渉強度信号のスペクトルとの積をとり、得られたスペクトルの正あるいは、負のみを取り出し、逆フーリエ変換を行い、被測定物の界面群の位置を求める。これは、相関計算(式20)を求めることに相当する。工程S6が本発明の工程4に相当する。
【0093】
上述した実施の形態1により、白色光源を用い、光源のサイズおよび波長帯域を制限し、制限した波長帯域および光源発光径に基づいたサンプリング周期であらかじめ基準面による干渉強度信号を測定し、直流成分を減じた信号をフーリエ変換したスペクトルの複素共役を保存し、次に複数の界面を持つ被測定物による干渉強度信号を測定し、直流成分を減じた信号をフーリエ変換したスペクトルと、基準面によるスペクトルの複素共役との積をとり、逆フーリエ変換することにより相関を求め、被測定物の界面群の位置を一度に求めることができる。
【0094】
さらに、基準面による干渉強度信号と被測定物の界面による干渉強度信号との相関を求める上で、基準面によるスペクトルの複素共役と、被測定物の界面によるスペクトルとの積をとり、正または、負のみのデータを逆フーリエ変換することにより、干渉強度信号のスペクトルの非対称性により生じる被測定物の界面位置計算での誤差を防ぐことができる。
【0095】
さらに、基準面の干渉強度信号のサンプリング周期のみを細かくし、被測定面による干渉強度信号は、不足分を0で補うことで、測定データ数を増やすことなく、被測定物の界面の位置を精度よく求めることができる。
【0096】
さらに、光源のサイズを考慮したサンプリング周期を設定できるので、光源を複数集積することができるので、被測定物への入射光光量を簡単に増やすことができ干渉強度信号のSN比を向上することができ、高精度な計測を行うことができる。
【0097】
なお、基準面による干渉強度信号と被測定物の界面による干渉強度信号との相関を求める上で、基準面によるスペクトルの複素共役とおよび、被測定物の界面によるスペクトルの正、または負の成分のみを先に取り出し、両者を積を逆フーリエ変換することにより、被測定物の界面の光学位置を求めてもよい。
【0098】
なお、工程3において、各画素ごとにデータ処理を行ったが、複数画素をまとめて平均化したあとの画素群についてデータ処理を行ってもよい。
【0099】
なお、光源群の射出光を複数のレンズ群により光量分布を均一化するインテグレータを通して使用してもよい。
【0100】
なお、参照面ミラーの移動手段として圧電素子を用いたが、ステッピングモータで移動させてもよい。
【0101】
なお、コリメータレンズ、第1のレンズ、第2のレンズは組みレンズとしてもよい。
【0102】
なお、空間フィルタを第1のレンズの前側焦点位置に設けたが、光源1の発光面に設けてもよい。
【0103】
なお、波長フィルタを第2のレンズとCCDカメラ9との間に設けたが、光源からCCDカメラまでのどこに配置してもよい。
【0104】
なお、カラーCCDカメラを用い、CCDカメラに内臓されている波長フィルタをもちいてもよい。
【0105】
なお、CCDカメラは、CMOSカメラ、光電子増倍管でもよい。
【0106】
なお、光干渉像を第1のレンズと第2のレンズでCCDカメラに結像したが、1枚のレンズにより、被測定物および参照平面ミラーの像をCCDカメラに結像してもよい。
【0107】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における界面の位置測定装置の模式図である。
【0108】
図8において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。図8において、20は単色光光源であり、半導体レーザ、あるいは、半導体レーザを励起光源とした固体レーザである。21は単色光光源20の射出光を入射光とする集光するレンズである。レンズ21は、単色光光源の射出面を光ファイバー束22の入射端に結像させるように配置する。22は、光ファイバー束であり、レンズ21の射出光を入射光とする。光ファイバー束22の個々の光ファイバーの長さは、一定でなく、射出端において隣接する光ファイバー間で単色光光源のコヒーレント長以上の長さの差を持つことが好ましい。光ファイバー束22の射出光は、コリメータレンズ2の入射光となり、光ファイバー束22の射出端は、コリメータレンズ2の後ろ側焦点面に配置される。
【0109】
白色光を光源とし、波長帯域をフィルタにより制限すると光源の射出光の大部分をフィルタで吸収することとなり、光源の利用効率が低くなる。このため、高出力の光源が必要となる。一方、レーザを光源とすると、波長帯域が非常に狭いので波長フィルタで制限する必要がなく、光源の利用効率が高くなる。しかし、コヒーレンス長が長いため、被測定物の複数の界面の位置を分離できなくなる。実施の形態1で、本発明の測定原理について説明したが、波長帯域の制限のほかに、光源のサイズの制限により、被測定物の複数の界面の位置を分離できることを(式24)に示した。
【0110】
この原理を用いるためには、光源の発光面が空間的に互いに干渉しないことが条件となる。レーザ光源は、発光面内でもコヒーレンスがあるために、このままでは、本発明の測定原理を用いることができない。そこで、実施の形態2のように、光ファイバーを解して、ファイバーの長さを互いに変えることにより、発光面でのコヒーレンスを低下させることで、本発明の測定原理を適用できる。したがって、実施の形態1と同様の測定原理と測定方法により、複数の界面をもつ被測定物を測定することができる。
【0111】
光源にレーザ光を用いることで、白色光にフィルタを用いて、波長帯域を制限するよりも光源の光密度を向上しやすく、測定のSN比を向上でき、高精度な測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の界面の位置測定方法および位置測定装置は、光源の大きさを大きくでき、複数の界面を持つ被測定物の界面の位置を一度に測定できる特徴を有し、液晶パネルのガラス、セルギャップ測定、半導体、PDPなどでのレジストの界面の位置測定、積層フィルムの界面の位置測定などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施の形態1における界面の位置測定装置の模式図
【図2】本発明の実施の形態1における光干渉の説明図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における光源サイズの制限を示す図(b)本発明の実施の形態1における波長の制限を示す図
【図4】干渉強度信号のスペクトルを示す図
【図5】干渉強度信号をサンプリングしたスペクトルを示す図
【図6】(a)干渉強度信号をサンプリングしたスペクトルを示す図(b)干渉強度信号をサンプリングしたスペクトルを示す図
【図7】測定フローチャート
【図8】本発明の実施の形態2における界面の位置測定装置の模式図
【図9】従来の界面の位置測定装置の模式図
【符号の説明】
【0114】
1 光源
2 コリメータレンズ
3 ビームスプリッタ
4 参照平面ミラー
5 圧電素子
6 測長センサ
7 第1のレンズ
8 第2のレンズ
9 CCDカメラ
10 波長フィルタ
11 空間フィルタ
12 制御コンピュータ
13 被測定物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光源からの射出光を、表面を含みこれと平行な複数の界面を持つ被測定物と参照面とに照射し、前記被測定物と前記参照面間の相対距離を変化させたときの前記被測定物の各界面の反射光と前記参照面の反射光による干渉強度信号を測定して得られる前記被測定物の界面の位置を測定する界面の位置測定方法において、
空間フィルタにより制限した前記白色光源の発光径と、波長フィルタで制限した前記白色光源の波長帯域から干渉強度信号のサンプリング周期Tを求める第1の工程と、
前記参照面と1つの界面(基準面と呼ぶ)を持つ測定基準物間の相対距離を前記第1の工程で求めたサンプリング周期Tに対し、mを自然数としたときに、サンプリング周期をT/mで干渉強度信号を測定し、得られた干渉強度信号から直流成分を減じたあと、フーリエ変換してスペクトルの複素共役データを求める第2の工程と、
前記参照面と複数の界面を持つ被測定物間の相対距離を前記第1の工程で求めたサンプリング周期で変化させたときの干渉強度信号を測定し、得られた干渉強度信号から直流成分を減じたあとのデータ列に対し、データ間に値が0となるデータをm−1個追加し前記第2の工程とサンプリング周期が等しくなるように再サンプリングしたあと、フーリエ変換してスペクトルを求める第3の工程と、
前記第2の工程で得られた基準面による干渉強度信号のスペクトルの複素共役データと、前記第3の工程で得られた被測定物の複数の界面による干渉強度信号のスペクトルとの積をとり、逆フーリエ変換して得られる前記基準面による干渉強度信号と前記被測定物の界面による干渉強度信号との相関から被測定物の界面の位置を求める第4の工程とを有することを特徴とする界面の位置測定方法。
【請求項2】
前記第4の工程において、
前記第2の工程で得られた基準面による干渉強度信号のスペクトルの複素共役データと、前記第3の工程で得られた被測定物の複数の界面による干渉強度信号のスペクトルとの積をとり、正、または負のいずれか一方のスペクトルを取り出し逆フーリエ変換して得られる前記基準面による干渉強度信号と前記被測定物の界面による干渉強度信号との相関から被測定物の界面の位置を求めることを特徴とする請求項1に記載の界面の位置測定方法。
【請求項3】
光源と、
前記光源からの射出光を参照面および被測定物に照射し、前記参照面および前記被測定物からの反射光を干渉させる手段と、
前記被測定物と前記参照面間の相対距離を変化させる移動手段と、
前記移動手段による前記被測定物と前記参照面間距離の変化を測定する測長手段と、
前記移動手段により前記被測定物と前記参照面間の相対距離が変化することで生じる干渉縞の変化を前記測長手段を用い、空間フィルタによる発光径の制限と、波長フィルタによる波長帯域の制限から求められるサンプリング周期ごとに撮像する撮像手段と、
前記光源と前記撮像手段の間に配置された前記光源の発光径を制限する前記空間フィルタおよび前記光源の波長帯域を制限する前記波長フィルタと、
1つの界面(基準面と呼ぶ)を持つ測定基準物を測定し干渉強度信号から直流成分を減じてフーリエ変換したスペクトルの複素共役データを予め計算して保持し、被測定物の複数の界面による干渉距度信号から直流成分を減じてフーリエ変換したスペクトルと、予め求めておいた基準面の干渉強度信号の複素共役スペクトルとの積をとり、逆フーリエ変換した結果より被測定物の界面の位置を求める演算手段とを備えたことを特徴とする界面の位置測定装置。
【請求項4】
前記光源は、白色光源であり、少なくとも1つ以上の発光体を集積したことを特徴とする請求項3記載の界面の位置測定装置。
【請求項5】
前記光源は、白色光源であり、複数の光ファイバー束の一端にそれぞれ発光体からの射出光を入射し、ファイバー束の他端より射出させたことを特徴とする請求項3記載の界面の位置測定装置。
【請求項6】
前記光源は、発光面が空間的にインコヒーレントな単色光光源であり、
前記単色光光源は、半導体レーザと、半導体レーザの射出光を光ファイバー束に入射する集光レンズと、射出端において隣接する光ファイバー間の長さの差が少なくとも半導体レーザの可干渉距離より大きな光ファイバー束とを備え、光ファイバー束の射出端を前記光源の発光面とすることを特徴とする請求項3記載の界面の位置測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−71685(P2007−71685A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258786(P2005−258786)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】