説明

異常温度検知装置

【課題】検知領域の環境に対応した検知感度で異常な温度変化を検知し、火災等の危険性を知らせることができる。
【解決手段】赤外線検知素子から出力される検知信号に基づいて検知領域内の温度変化を検知する温度検知部と、前記温度検知部からの出力信号に基づいて検知領域内で人体(移動生物体)を検知したか否かの判定と、火災発生の危険性がある異常な温度変化を検知したか否かの判定とを行い、該判定結果をもとに出力部からの警報発報を制御する制御部と、検知領域の侵入警戒の設定/解除を制御する警備スイッチとから構成され、警戒解除時の無人条件でのTPH検知第1処理工程、若しくは警戒解除時の有人条件でのTPH検知第2処理工程、若しくは警戒時の無人条件でのTPH検知第3処理工程、若しくは警戒時の有人条件でのTPH検知第4処理工程により、検知領域の環境に対応した検知感度によって侵入と異常温度を検知・警報する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体から放射される赤外線を赤外線検知素子で検知することによって異常な温度変化を検知し、火災発生等を検知する異常温度検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体と背景との温度差を赤外線のエネルギー量の差として焦電素子等の赤外線検知素子を用いて検知させることにより、人体の存在を検知する赤外線受光式の人体検知装置がある。この人体検知装置では、赤外線検知素子からの検知領域内に見かけ上の温度変化が生じた場合に、人体が存在するとして判断するよう構成されている。
そして従来技術によれば、赤外線検知素子を備えた人体検知装置を利用し、人体検知を行うと同時に、火災発生などの異常温度検知を行う異常検知装置が知られている。(例えば特許文献1を参照)
従来の異常温度検知装置は、検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子と、赤外線検知素子から出力される検知信号に基づいて検知領域内の人体の有無を判断する人体検知部と、赤外線検知素子から出力される検知信号に基づいて検知領域内での火災発生等による異常な温度変化を検知する異常温度検知部とから構成され、前記人体検知部で人体の存在を検知した場合は侵入警報を発報するとともに、前記異常温度検知部で異常温度を検知した場合は、侵入警報と異なる警報(例えば火災警報)を発報するように構成されている。
【特許文献1】特開平5−346994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の異常温度検知装置は、検知領域から受光した赤外線の受光量が予め設定した値(設定レベル)を複数回数超え、かつ、ちらつきや揺らぎ現象を生じる炎のパルスを複数回検知した場合、火災が発生したと判断し、火災警報を発報するよう構成していた。この為、炎の発生を火災警報発報の前提としており、炎の発生前に火災の危険性がある異常温度の警報を発報することは出来なかった。
また従来技術による異常温度検知装置では、検知領域が警戒状態のときの人体検知と火災検知とを目的としているため、検知領域の環境(例えば、侵入警戒の設定/解除,有人/無人の条件切替)に対応した異常温度の検知・警報ができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による異常温度検知装置によれば、検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子と、この赤外線検知素子から出力される検知信号に基づいて検知領域内の温度変化を検知する温度検知部と、前記温度検知部からの出力信号に基づいて検知領域内で人体などの移動生物体(以下、人体という)を検知したか否かの判定と、火災発生の危険性がある異常な温度変化を検知したか否かの判定とを行い、該判定結果をもとに出力部からの警報発報を制御する制御部と、検知領域の侵入警戒の設定/解除を制御する警備スイッチとから構成され、出力部から侵入警報または異常温度検知警報を発報するにあたって、警戒解除時の無人条件(人による非管理下)でのTPH検知第1処理工程、若しくは警戒解除時の有人条件(人による管理下)でのTPH検知第2処理工程、若しくは警戒時の無人条件(不正侵入なし)でのTPH検知第3処理工程、若しくは警戒時の有人条件(不正侵入あり)でのTPH検知第4処理工程により、検知領域の環境に対応した検知感度によって侵入と異常温度を検知・警報するものである。
【0005】
さらにこの発明の異常温度検知装置によれば、温度検知部からの出力信号(温度検知結果)に基づいて異常温度を検知するにあたって、異常温度範囲の広がり速度を判定し、当該異常温度範囲の広がり速度に応じて異なる警報を発報するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の異常温度検知装置によれば、検知領域の環境に対応した検知感度で異常温度の検知・警報をすることができ、例えば、警戒解除時の有人条件(人による管理下)では異常温度の検知感度を低くしたり、警戒時は侵入警報とともに異常温度の検知感度を高くして異常温度を検知・警報するなど、性能の高い異常温度の検知・警報をすることができる。
また本発明の異常温度検知装置では、制御部は温度検知部の出力信号(温度検知結果)に基づいて異常温度範囲の広がり速度を判定し、異常温度範囲の広がり速度に応じて異なる種類の警報を発報するよう制御するため、炎の存在の有無にかかわらず、火災発生の危険度に対応した警報を発報することができ、火災警報の誤報を抑制することができるとともに、火災発生の危険性も知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明による異常温度検知装置の好適な実施例について、図1から図6を参照して説明する。
【0008】
図1は、本発明による異常温度検知装置を説明する図である。
本発明による異常温度検知装置は、赤外線の受光量によって物体の表面温度を計測できる赤外線検知素子(サーモパイル素子)を利用し、人体検知と、異常温度検知(火災発生などの危険性がある異常な温度変化の検知)を行う異常温度検知装置10であって、図1(a)に示すように、監視したい領域に設置し(例えば監視領域の天井など)、該領域(以下、検知領域という)にある物体の温度変化を検知し、検知領域内で人体の存在を検知したときは侵入警報を発報したり、検知領域内で異常温度の発生を検知したときは異常温度検知警報を発報したりし、検知領域を監視・警備する。
そして前記赤外線検知素子からの検知信号に基づいて検知領域に在る物体の温度変化を検知する温度検知部5と、該温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいて検知領域内に人体が存在するか否かを判定(人体検知)したり、火災発生などの危険性がある異常な温度変化が発生したか否かを判定(異常温度検知)したりする制御部6とを備え、該判定結果をもとに制御部6は出力部7から警報等を発報する。
【0009】
本発明の実施例による異常温度検知装置10は、図1(b)のブロック図に示すように、集光レンズ1と、特定波長帯域の赤外線のみを透過させる光学フィルタ2と、赤外線の受光によりその検知信号を出力する赤外線検知素子3と、赤外線検知素子3から出力される検知信号を増幅する増幅部4と、当該増幅部4に接続され、温度変化を検知する温度検知部5と、前記温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)が入力される制御部6と、前記制御部6の制御によって種類の異なる警報を発報する出力部7とを備える。
【0010】
制御部6は、前記温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づき、検知領域内に人体が存在するか否かの判定(TPL検知)と、火災発生などの危険性がある異常な温度変化が発生したか否かの判定(TPH検知)とを行い、前記判定結果をもとに出力部7を制御し、例えば前記温度検知部5による出力信号(温度検知結果)に基づくTPL検知によって検知領域に人がいると判定したときは出力部7から侵入警報を発報したり、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づくTPH検知によって検知領域に火災発生の危険性がある異常な温度変化が発生したと判定したときは出力部7から異常温度検知警報を発報したりする。
なお前記TPH検知では、検知領域内で火災発生などの危険性がある異常な温度変化が発生したか否かの判定とともに、当該異常温度範囲の広がり速度を判定し、当該判定結果に基づいて制御部6が出力部7を制御することによって、火災発生の危険度に応じて種類の異なる警報を発報するよう構成した。
【0011】
さらに本発明の実施例による異常温度検知装置10では、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づきTPL検知(人体検知)とTPH検知(異常温度検知)とを行って出力部7を制御する制御部6に、検知領域の侵入警戒の設定/解除を制御する警備スイッチ8を接続した。
そして前記警備スイッチ8をOFFにしたときは検知領域の警戒を解除し、侵入警報の出力をOFFにすることによって、制御部6が温度検知部5の出力信号(温度検知結果)に基づいて検知領域内において人体の存在を検知しても、出力部7から侵入警報が発報されないように構成した。
また前記警備スイッチ8をONにしたときは検知領域を警戒し、侵入警報の出力をONにすることによって、制御部6が温度検知部5の出力信号(温度検知結果)に基づいて検知領域内において人体の存在を検知したときは、出力部7から侵入警報を発報するように構成した。
【0012】
図2から図6のフローチャートを参照して、本発明の異常温度検知装置による異常温度の検知方法について説明する。
【0013】
図2のフローチャートに示すように、この発明の実施例による異常温度の検知方法では、異常温度検知装置の制御部6は、警備スイッチ8のON/OFF判定結果と、温度検知部5の温度検知結果に基づく検知領域の有人/無人判定結果(TPL検知)とに基づいて検知領域の環境を判定した後、警戒解除時の無人条件(人による非管理下)での異常温度の検知(TPH検知第1処理工程)、若しくは警戒解除時の有人条件(人による管理下)での異常温度の検知(TPH検知第2処理工程)、若しくは警戒時の無人条件(不正侵入なし)での異常温度の検知(TPH検知第3処理工程)、若しくは警戒時の有人条件(不正侵入あり)での異常温度の検知(TPH検知第4処理工程)によって、検知領域の環境に対応した検知感度によって検知領域における火災発生などの危険性がある異常温度を検知・警報したり、不正侵入を警報したりして、検知領域の監視・警備を行う。
【0014】
この発明の異常温度検知装置10は、検知領域への侵入警戒(侵入警報発報による警戒)の設定/解除を制御する警備スイッチ8を有し、検知領域に一般的な人の出入りがある場合(例えば、検知領域に管理人が在室中)、前記警備スイッチ8をOFFして検知領域の警戒を解除し、検知領域への不正侵入を知らせるための侵入警報の出力をOFFし、温度検知部5の出力信号(温度検知結果)に基づくTPL検知(人体検知)によって検知領域内で人体の存在が検知されても侵入警報を発報せず、温度検知部5の出力信号(温度検知結果)に基づくTPH検知(異常温度検知)によって検知領域内で火災発生などの危険性がある異常な温度変化が検知されたときのみ異常温度検知警報を発報し、検知領域を監視する(TPH検知第1処理工程または第2処理工程)。
一方、検知領域に一般的な人の出入りがない場合(例えば、夜間警備中)、前記警備スイッチ8をONして検知領域を警戒し、検知領域への不正侵入を知らせるための侵入警報の出力をONし、温度検知部5の出力信号(温度検知結果)に基づくTPL検知(人体検知)によって検知領域内で人体の存在が検知されたときは不正侵入を検知・警報するとともに、温度検知部5の出力信号(温度検知結果)に基づくTPH検知(異常温度検知)によって検知領域内で火災発生などの危険性がある異常な温度変化が検知されたときは異常温度検知警報も発報し、検知領域を監視する(TPH検知第3処理工程または第4処理工程)。
【0015】
図2に示すように、この発明の異常温度検知装置10によれば、制御部6は初期化処理をした後(ステップS1)、警備スイッチ8がOFFであるか否かを判定し(ステップS2)、警備スイッチ8がOFFの場合(YES)、検知領域の警戒を解除し(ステップS3)、侵入警報の出力をOFFにした後(ステップS4)、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいてTPL検知をし、人体が存在するときの温度変化が検知されるか否かを判定する(ステップS5)。
TPL検知では、人体が存在することを示唆する温度(例えば30〜45℃未満)が検知領域内で検知されるか否かのほかに、当該温度検知範囲が移動するか否かを加味し、検知領域の有人/無人を判定する。
例えば、検知領域内に36℃を示す範囲が検知されても当該温度検知範囲が全く移動しない場合は、前記温度検知範囲は人によるものではないか、若しくは人であっても眠っていたりして検知領域を管理している状態ではないと判断し、検知領域は無人(人による非管理下)であると判定する。また例えば、検知領域内に36℃を示す範囲が検知され、かつ当該温度検知範囲が移動する場合は、検知領域は有人(人による管理下)であると判定する。
【0016】
一方、前記警備スイッチ8がOFFでない場合(NO)、制御部6は検知領域を警戒し(ステップS6)、侵入警報の出力をONにした後(ステップS7)、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいてTPL検知をし、人体が存在するときの温度変化が検知されるか否かを判定する(ステップS8)。
なおTPL検知では、上述したステップS5と同様に、人体が存在することを示唆する温度(例えば30〜45℃未満)が検知されるか否かの判定のほかに、当該温度検知範囲が移動するか否かを判定し、検知領域の有人/無人を判定する。
例えば、検知領域内に36℃を示す範囲が検知されても当該温度検知範囲が全く移動しない場合は、前記温度検知範囲は人によるものではないと判断し、検知領域は無人(不正侵入なし)であると判定する。また例えば、検知領域内に36℃を示す範囲が検知され、かつ当該温度検知範囲が移動する場合は、検知領域は有人(不正侵入あり)であると判定し、この場合は不正侵入を知らせるための侵入警報を出力部7から発報する。
【0017】
そして本発明による異常温度検知装置では、警戒解除時の無人条件(人による非管理下)でのTPH検知第1処理工程(ステップS9−a)、若しくは警戒解除時の有人条件(人による管理下)でのTPH検知第2処理工程(ステップS9−b)、若しくは警戒時の無人条件(不正侵入なし)でのTPH検知第3処理工程(ステップS9−c)、若しくは警戒時の有人条件(不正侵入あり)でのTPH検知第4処理工程(ステップS9−d)を経て、検知領域の異常温度を検知・警報し、検知領域を監視・警備する。
【0018】
図3を参照して、警戒解除時・無人条件(人による非管理下)で異常温度を検知・警報するTPH検知第1処理工程について説明する。
警備スイッチ8のON/OFF判定結果(ステップS2)とTPL検知結果(ステップS5)とを取得した制御部6は、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいてさらにTPH検知をし、検知領域に火災発生の危険性がある異常温度が検知されたか否かを判定する(ステップS11)。TPH検知では、火災発生時の非常に高い温度ではないが火災発生の危険性がある異常な温度(例えば、45℃以上)を検知する。
そして異常温度が検知されたときは、異常温度の検知回数を1つ加算し、TPH異常(tph)をカウントする(ステップS12)。なお異常温度を検知しない場合、TPH異常(tph)のカウントをリセットした後(ステップS16)、ステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
【0019】
TPH異常のカウント後、該TPH異常のカウントが予め設定してある第1閾値(TPH−NM)に達するか否かを判定し(ステップS13)、TPH異常のカウントが第1閾値以上の場合(tph≧TPH−NM)、制御部6は出力部7を制御して異常温度を検知したことを知らせる警報を発報する(ステップS14)。またTPH異常のカウントが第1閾値未満の場合(tph<TPH−NM)、ステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
なお温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づくTPH検知では、火災発生の危険性がある異常温度(火災時の非常に高い温度ではないが発火の可能性がある異常な温度)が検知されるか否かのほかに、当該異常温度範囲の広がり速度の解析等を行い、異常温度の度合を段階分けして検知しておくことが好ましい。
【0020】
例えば、検知領域において火災発生の危険性がある異常温度(例えば、45℃以上)が検知された場合、前記異常温度の検知サイズ(範囲・大きさ)の経時的温度検知結果をもとに一定時間内の異常温度範囲の温度上昇率(勾配)を算出し、異常温度範囲の広がり速度を判定する。そして前記異常温度範囲の広がりが速いとき(温度上昇率が急激であるとき)は「TPH−A」と判定し、一方、前記異常温度範囲の広がりが速くないとき(温度上昇率が急激でないときは)は「TPH−B」と判定する。また、異常温度範囲の広がりが速くない、または異常温度範囲(サイズ)が大きくない場合でも検知した温度が異常に高い(例えば、80℃以上)ときは「TPH−C」と判定する。
そしてTPH異常のカウントが第1閾値に達したら、異常温度の危険性度合を段階分けしてTPH検知した検知結果に対応する警報、つまり、異常温度範囲の広がりが速いときはTPH−A警報、異常温度範囲の広がりが速くないときはTPH−B警報、異常な高温が検知されたときはTPH−C警報を発報する。
【0021】
つまり本発明の異常温度検知装置によれば、警備スイッチ8をOFFして検知領域の警戒を解除してあるが、例えば検知領域に一時的に人がいなくなり該領域が無人(人による非管理下)となり、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいて制御部6は異常温度(TPH異常;TPH−A,TPH−B,TPH−C)の検知を繰り返し、該TPH異常のカウントが第1閾値に達した場合、異常温度検知警報を発報し(TPH−A発報,TPH−B発報,TPH−C発報)、警備室に待機する警備員等に対して検知領域において異常な温度変化が発生したことを知らせる。なお前記異常温度検知警報は警備員等が待機する警備室等に出力するだけでなく、検知領域にも出力されるよう構成する。
そして本発明の異常温度検知装置では、警備員等による異常温度検知警報の発報確認と、異常温度検知に対する解決処理(例えば、検知領域の監視映像確認や現場確認など)がなされた後(ステップS15)に、警備員等によるリセットボタンのON操作によってTPH異常カウント(tph)がリセットされることで(ステップS16)、再びステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
【0022】
続いて図4を参照して、警戒解除時・有人条件(人による管理下)での異常温度を検知・警報するTPH検知第2処理工程について説明する。
警備スイッチ8のON/OFF判定結果(ステップS2)とTPL検知結果(ステップS5)とを取得した制御部6は、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいてさらにTPH検知をし、検知領域に火災発生の危険性がある異常温度が検知されたか否かを判定する(ステップS21)。TPH検知では、上述した警戒解除時の無人条件と同様にして、火災発生時の非常に高い温度ではないが火災発生の危険性がある異常な温度(例えば、45℃以上)を検知する。
そして異常温度が検知されたときは、TPH異常(tph)をカウントする(ステップS22)。なお異常温度を検知しない場合、TPH異常(tph)のカウントをリセットした後(ステップS26)、ステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
【0023】
TPH異常のカウント後、該TPH異常のカウントが予め設定してある第2閾値(TPH−NY)に達するか否かを判定し(ステップS23)、TPH異常のカウントが第2閾値以上の場合(tph≧TPH−NY)、制御部6は出力部7を制御して異常温度を検知したことを知らせる警報を発報する(ステップS24)。またTPH異常のカウントが第2閾値未満の場合(tph<TPH−NY)、ステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
なお温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づくTPH検知では、上述した警戒解除時の無人条件と同様の、火災発生の危険性がある異常温度(火災時の非常に高い温度ではないが発火の可能性がある異常な温度)が検知されるか否かのほかに、当該異常温度範囲の広がり速度の解析や、火災発生温度の検知を行い、異常温度の度合を段階分けして検知しておくことが好ましい。
そしてTPH異常のカウントが第2閾値に達したら、異常温度の危険性度合を段階分けしてTPH検知した検知結果に対応する警報を発報、つまり、異常温度範囲の広がりが速いときはTPH−A警報、異常温度範囲の広がりが速くないときはTPH−B警報、異常温度範囲の広がりが速くない、または異常温度範囲(サイズ)が大きくない場合でも検知した温度が異常に高い(例えば、80℃以上)ときはTPH−C警報を発報する。
【0024】
警戒解除時の有人条件(人による管理下)における異常温度の検知判定基準となる第2閾値(TPH−NY)は、警戒解除時の無人条件(人による非管理下)における異常温度の検知判定基準となる第1閾値(TPH−NM)よりも大きく設定することで、警戒解除時の有人条件(人による管理下)での異常温度の検知感度を低くすることができる。
例えば、警戒解除時の無人条件(人による非管理下)での検知領域でタバコの火がついていた場合、タバコの火による火災の危険性があるため、前記タバコの火による異常温度を検知し、警報発報などによって警備員等に異常温度検知を知らせる必要がある。しかしながら、警戒解除時の有人条件(人による管理下)での検知領域でタバコの火がついていても、検知領域にいる人によってタバコの火を注意すればいいので、このような異常温度の検知感度低くし、警報発報を抑制しておくことが好ましい。
【0025】
なお出力部7から警報を発報して、警備室等に待機する警備員等に検知領域で異常温度を検知したことを知らせるにあたって、警戒解除時の有人条件(人による管理下)での異常温度検知発報では、検知領域が有人であることも分かるようにすることが好ましい。
例えば警備室に待機する警備員によって異常温度検知発報が確認された際に、検知領域が有人であることが分かるようにしておくことによって、前記警備員は検知領域にいる人に電話確認するなどして異常温度検知に対する解決処理をすることができる。
【0026】
つまり本発明の異常温度検知装置によれば、警備スイッチ8をOFFにして検知領域の警戒を解除してあり、検知領域が有人(人による管理下)である場合、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいて制御部6は異常温度(TPH異常;TPH−A,TPH−B,TPH−C)の検知を繰り返し、該TPH異常のカウントが第2閾値に達した場合、異常温度検知警報を発報し(TPH−A発報,TPH−B発報,TPH−C発報)、警備室に待機する警備員等に対して検知領域において異常な温度変化が発生したことを知らせる。なお前記異常温度検知警報は警備員等が待機する警備室等に出力するだけでなく、検知領域にも出力されるよう構成する。
そして本発明の異常温度検知装置では、警備員等による異常温度検知警報の発報確認と、異常温度検知に対する解決処理(例えば、検知領域の監視映像確認や現場確認など)がなされた後(ステップS25)に、警備員等によるリセットボタンのON操作によってTPH異常カウント(tph)がリセットされることで(ステップS26)、再びステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
【0027】
次に図5を参照して、警戒時・無人条件(不正侵入なし)での異常温度を検知・警報するTPH検知第3処理工程について説明する。
警備スイッチ8のON/OFF判定結果(ステップS2)とTPL検知結果(ステップS8)とを取得した制御部6は、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいてさらにTPH検知をし、検知領域に火災発生の危険性がある異常温度が検知されたか否かを判定する(ステップS31)。TPH検知では、上述した警戒解除時の無人条件と同様にして、火災発生時の非常に高い温度ではないが火災発生の危険性がある異常な温度(例えば、45℃以上)を検知する。
そして異常温度が検知されたときは、TPH異常(tph)をカウントする(ステップS32)。なお異常温度を検知しない場合、TPH異常(tph)のカウントをリセットした後(ステップS36)、ステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
【0028】
TPH異常のカウント後、該TPH異常のカウントが予め設定してある第3閾値(TPH−KM)に達するか否かを判定し(ステップS33)、TPH異常のカウントが第3閾値以上の場合(tph≧TPH−KM)、制御部6は出力部7を制御して異常温度を検知したことを知らせる警報を発報する(ステップS34)。またTPH異常のカウントが第3閾値未満の場合(tph<TPH−KM)、ステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
なお温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づくTPH検知では、上述した警戒解除時の無人条件と同様の、火災発生の危険性がある異常温度(火災時の非常に高い温度ではないが発火の可能性がある異常な温度)が検知されるか否かのほかに、当該異常温度範囲の広がり速度の解析や、火災発生温度の検知を行い、異常温度の度合を段階分けして検知しておくことが好ましい。
そしてTPH異常のカウントが第3閾値に達したら、異常温度の危険性度合を段階分けしてTPH検知した検知結果に対応する警報、つまり、異常温度範囲の広がりが速いときはTPH−A警報、異常温度範囲の広がりが速くないときはTPH−B警報、異常温度範囲の広がりが速くない、または、異常温度範囲(サイズ)が大きくない場合でも検知した温度が異常に高い(例えば、80℃以上)ときはTPH−C警報を発報する。
【0029】
警戒時の無人条件(不正侵入なし)における異常温度の検知判定基準となる第3閾値(TPH−KM)は、警戒解除時の無人条件(人による非管理下)における異常温度の検知判定基準となる第1閾値(TPH−NM)と同じか、それよりも小さく設定することで、警戒時の無人条件(不正侵入なし)における異常温度の検知感度を高くすることができる。
【0030】
つまり本発明の異常温度検知装置によれば、警備スイッチ8をONして検知領域を警戒しており、かつ検知領域が無人(不正侵入なし)の場合、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいて制御部6は異常温度(TPH異常;TPH−A,TPH−B,TPH−C)の検知を繰り返し、該TPH異常のカウントが第3閾値に達する。この結果、本装置は異常温度検知警報を発報し(TPH−A発報,TPH−B発報,TPH−C発報)、警備室に待機する警備員等に対して検知領域において異常な温度変化が発生したことを知らせる。なお前記異常温度検知警報は警備員等が待機する警備室等に出力するだけでなく、検知領域にも出力されるよう構成する。
そして本発明の異常温度検知装置では、警備員等による異常温度検知警報の発報確認と、異常温度検知に対する解決処理(例えば、検知領域の監視映像確認や現場確認など)がなされた後(ステップS35)に、警備員等によるリセットボタンのON操作によってTPH異常カウント(tph)がリセットされることで(ステップS36)、再びステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
【0031】
さらに図6を参照して、警戒時・有人条件(不正侵入あり)での異常温度を検知・警報するTPH検知第4処理工程について説明する。
警備スイッチ8のON/OFF判定結果(ステップS2)とTPL検知結果(ステップS5)とを取得した制御部6は、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいてさらにTPH検知をし、検知領域に火災発生の危険性がある異常温度が検知されたか否かを判定する(ステップS41)。TPH検知では、火災発生時の非常に高い温度ではないが火災発生の危険性がある異常な温度(例えば、45℃以上)を検知する。
【0032】
異常温度を検知しない場合、検知領域内で人体の存在を検知したこと(不正侵入あり)を知らせる侵入警報のみを発報し(ステップS42)、警備員等による侵入警報の発報確認と、侵入に対する解決処理(例えば、検知領域の監視映像確認や現場確認など)がなされる(ステップS43)。なお侵入警報は警備員等が待機する警備室等に出力するだけでなく、検知領域にも出力されるよう構成する。
その後、例えば警備員等によるリセットボタンのON操作によってTPH異常カウント(tph)がリセットされ(ステップS50)ることで、再びステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
【0033】
異常温度を検知した場合、TPH異常(tph)をカウントした後(ステップS44)、該TPH異常のカウントが予め設定してある第4閾値(TPH−KY)に達するか否かを判定する(ステップS45)。
TPH異常のカウントが第4閾値未満の場合(tph<TPH−KY)、検知領域内で人体の存在を検知したこと(不正侵入あり)を知らせる侵入警報のみを発報し(ステップS46)、警備員等による侵入警報の発報確認と、侵入に対する解決処理(例えば、検知領域の監視映像確認や現場確認など)がなされる(ステップS47)。なお侵入警報は警備員等が待機する警備室等に出力するだけでなく、検知領域にも出力されるよう構成する。
その後、異常温度検知装置では、再びステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
【0034】
TPH異常のカウントが第4閾値以上の場合(tph≧TPH−KY)、制御部6は出力部7を制御して、不正侵入を検知したこと知らせる警報(侵入警報)とともに、異常温度を検知したことを知らせる警報(異常温度検知警報)を発報する(ステップS48)。
なお温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づくTPH検知では、上述した警戒解除時の無人条件と同様の、火災発生の危険性がある異常温度(火災時の非常に高い温度ではないが発火の可能性がある異常な温度)が検知されるか否かのほかに、当該異常温度範囲の広がり速度の解析や、火災発生温度の検知を行い、異常温度の度合を段階分けして検知しておくことが好ましい。
そしてTPH異常のカウントが第4閾値に達したら、異常温度の危険性度合を段階分けしてTPH検知した検知結果に対応する警報、つまり、異常温度範囲の広がりが速いときはTPH−A警報、異常温度範囲の広がりが速くないときはTPH−B警報、異常温度範囲の広がりが速くない、または、異常温度範囲(サイズ)が大きくない場合でも検知した温度が異常に高い(例えば、80℃以上)ときはTPH−C警報を発報する。
【0035】
警戒時の無人条件(不正侵入なし)における異常温度の検知判定基準となる第4閾値(TPH−KY)は、警戒解除時の無人条件(人による非管理下)における異常温度の検知判定基準となる第1閾値(TPH−NM)と同じか、それよりも小さく設定することで、第4閾値を第1閾値よりも小さく設定した場合、警戒時の有人条件(不正侵入あり)における異常温度の検知感度を高くすることができる。
【0036】
つまり本発明の異常温度検知装置によれば、警備スイッチ8をONして検知領域を警戒しており、かつ検知領域が有人(不正侵入あり)の場合、侵入警報を発報して警備室に待機する警備員等に対して検知領域において不正侵入を検知したことを知らせるとともに、温度検知部5からの出力信号(温度検知結果)に基づいて制御部6は異常温度(TPH異常;TPH−A,TPH−B,TPH−C)の検知を繰り返し、該TPH異常のカウントが第4閾値に達する。この場合、本装置は、異常温度検知警報を発報し(TPH−A発報,TPH−B発報,TPH−C発報)、警備室に待機する警備員等に対して検知領域において異常な温度変化が発生したことを知らせる。なお前記侵入警報及び異常温度検知警報は警備員等が待機する警備室等に出力するだけでなく、検知領域にも出力されるよう構成する。
そして本発明の異常温度検知装置では、警備員等による侵入警報や異常温度検知警報の発報確認と、不正侵入や異常温度の発生に対する解決処理(例えば、検知領域の監視映像確認や現場確認など)がなされた後(ステップS49)に、警備員等によるリセットボタンのON操作によってTPH異常カウント(tph)がリセットされ(ステップS50)ることで、再びステップS2(警備スイッチのON/OFF判定)に戻り、検知領域の人体検知(TPL検知)と異常温度検知(TPH検知)とを繰返す。
【0037】
このように本発明の温度検知装置によれば、制御部が温度検知部の出力信号(温度検知結果)に基づいて異常温度範囲の広がり速度を判定し、異常温度範囲の広がり速度に応じて異なる種類の警報を発報するため(TPH−A発報、TPH−B発報、TPH−B発報)、炎の存在の有無にかかわらず、火災発生の危険度に対応した警報を発報することができ火災発生の危険性も知らせることができるとともに、検知領域の環境に対応した検知感度で異常温度を検知するため、火災警報の誤報を抑制することができ、性能の高い異常温度の検知・警報をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】異常温度検知装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す異常温度検知装置による異常温度監視方法を示すフローチャートである。
【図3】TPH検知第1処理工程(警戒解除・無人)を示すフローチャートである。
【図4】TPH検知第2処理工程(警戒解除・有人)を示すフローチャートである。
【図5】TPH検知第3処理工程(警戒・無人)を示すフローチャートである。
【図6】TPH検知第4処理工程(警戒・有人)を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 集光レンズ
2 光学フィルタ
3 赤外線検知素子
4 増幅部
5 温度検知部
6 制御部
7 出力部
8 警備スイッチ
10 異常温度検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子(3)と、この赤外線検知素子から出力される検知信号に基づいて検知領域内の温度変化を検知する温度検知部(5)と、前記温度検知部からの出力信号に基づいて検知領域内で人体を検知したか否かの判定と、火災発生の危険性がある異常な温度変化を検知したか否かの判定とを行い、該判定結果をもとに出力部(7)からの警報発報を制御する制御部(6)と、検知領域の侵入警戒の設定/解除を制御する警備スイッチ(8)とから構成され、
出力部(7)から侵入警報または異常温度検知警報を発報するにあたって、警戒解除時の無人条件(人による非管理下)でのTPH検知第1処理工程、若しくは警戒解除時の有人条件(人による管理下)でのTPH検知第2処理工程、若しくは警戒時の無人条件(不正侵入なし)でのTPH検知第3処理工程、若しくは警戒時の有人条件(不正侵入あり)でのTPH検知第4処理工程により、検知領域の環境に対応した検知感度によって侵入と異常温度を検知・警報することを特徴とする異常温度検知装置。
【請求項2】
TPH検知第2処理工程における異常温度の検知判定基準となる第2閾値を、TPH検知第1処理工程における異常温度の検知判定基準となる第1閾値よりも大きく設定し、警戒解除時の有人条件(人による管理下)では低い検知感度で異常温度を検知・警報することを特徴とする請求項1に記載の異常温度検知装置。
【請求項3】
温度検知部(5)からの出力信号に基づいて異常温度を検知するにあたって、異常温度範囲の広がり速度を判定し、当該異常温度範囲の広がり速度に応じて異なる警報を発報することを特徴とする請求項1または2に記載の異常温度検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−183820(P2007−183820A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1632(P2006−1632)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【Fターム(参考)】