説明

異常通報付き携帯型無線機、制御方法及びプログラム

【課題】携帯型無線機10は、通信部11と共に、マンダウンセンサ12及びGPSレシーバ13を装備し、マンダウンセンサ12が携帯者の異常を検出すると、GPSレシーバ13が測位した現在地を監視機へ通報するようになっている。携帯型無線機10の電力消費を抑制する。
【解決手段】GPSレシーバ13はGPS電源スイッチ21を介して給電され、GPS電源スイッチ21は常時はオフ位置にある。監視者が電源スイッチ17をオン位置へ切り替えると、通信部11は給電状態になり、マイコン20が作動する。マイコン20は、非異常期間では、電源スイッチ17をオン位置へ切り替えられた直後のみGPS電源スイッチ21をオン位置にして、GPSレシーバ13に現在地を測位させる。マイコン20は、異常時では、GPS電源スイッチ21をオン位置にして、GPSレシーバ13が測位した現在地を通信部11から送信させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人に携帯されて該人の異常時には現在地を通報するようになっている異常通報付き携帯型無線機、制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
夜警等の警備員、森林警備員及び森林伐採業者等は、仲間から離れ、所定場所へ赴いて一人で作業を行うことが多い。したがって、それら警備員等に万一の異常が発生した時には、該異常状態の発生と共に現在地を所定の監視装置へ自動通報できる装置が望まれる。そこで、そのような警備員等に異常通報付き携帯型無線機を携帯させている。
【0003】
従来の異常通報付き携帯型無線機は、マンダウンセンサと共に、現在地の検出のためにGPS受信機を装備する。そして、GPS受信機は、通信部の給電中、常時、給電されている。
【0004】
一方、マンダウンセンサは、例えば、導電性流体としての水銀を封入した細長い管を備え、通信部本体(特許文献1の図1の符号1)又はヘッドセット部(特許文献1の図1の符号21)のハウジング内に収容される。そして、携帯者が横倒れ状態になると、マンダウンセンサの管も横倒れ状態になって、水銀が該管内の接点に接触し、マンダウンセンサがオン状態へ切り替わり、携帯者の異常発生を検出するようにしている。
【特許文献1】特開平11−139691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の異常通報付き携帯型無線機では、通信部への給電中、GPS受信機も常時、給電されているので、無線機全体の消費電力が増大し、通常の通信や異常時の通報がバッテリ切れのために早期に不能になり易い。
【0006】
本発明の目的は、消費電力を抑制して使用期間を伸ばすことができる異常通報付き携帯型無線機、制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の異常通報付き携帯型無線機は次のものを有している。
通信電源の投入中は無線通信処理を実施可能になる通信部、
GPS電源の投入中にはGPS電波に基づき現在地を測位するGPS受信機、
携帯者に異常が発生したことを検出する異常検出器、
携帯者の異常時にはGPS受信機へGPS電源を投入するとともに、携帯者の非異常期間ではGPS受信機へのGPS電源の投入を特定期間に制限する電源制御手段、及び
携帯者の異常時にGPS受信機が測位した現在地に係る情報を通信部に所定の監視機へ送信させる送信制御手段。
【0008】
本発明の制御方法が適用される異常通報付き携帯型無線機は、通信電源の投入中は無線通信処理を実施可能になる通信部、GPS電源の投入中にはGPS電波に基づき現在地を測位するGPS受信機、及び携帯者に異常が発生したことを検出する異常検出器、を備えている。該制御方法は次のステップを備えている。
携帯者の異常時にはGPS受信機へGPS電源を投入するとともに、携帯者の非異常期間ではGPS受信機へのGPS電源の投入を特定期間に制限するステップ、及び
携帯者の異常時にGPS受信機が測位した現在地に係る情報を通信部に所定の監視機へ送信させるステップ。
【0009】
本発明のプログラムは、本発明の制御方法の各ステップをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、GPS受信機は、携帯者の異常時以外では、特定期間のみ電源を投入されることになるので、異常時の通報を確保しつつ、GPS受信機の消費電力を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は携帯型無線機10の概略構成図である。携帯型無線機10は、例えば仲間から離れた場所で一人作業を行う警備員、森林警備員又は森林伐採業者等に携帯される。携帯型無線機10は、通信部11、マンダウンセンサ12及びGPSレシーバ13を備え、例えば、前述の特許文献1の図面に開示されている携帯型無線機とほぼ同一の大きさ及び重量となっている。マンダウンセンサ12及びGPSレシーバ13は、図1の例では、通信部11のハウジング内に収容されるが、特許文献1のヘッドセット部内に収容されてもよい。
【0012】
マンダウンセンサ12は、例えば水銀を封入した細長い管を装備している。携帯型無線機10が縦置き状態になっている場合は、該細長い管内の所定の接点は水銀に非接触であって、マンダウンセンサ12はオフ状態にある。これに対し、鉛直方向に対する携帯型無線機10の傾斜角が所定値以上になると、マンダウンセンサ12の傾斜角も所定値以上になって、該接点が水銀に接触し、マンダウンセンサ12はオン状態になる。したがって、マンダウンセンサ12のスイッチング状態からマンダウンセンサ12の傾きを検出することができる。携帯型無線機10の携帯者が横倒れしたとき、マンダウンセンサ12は鉛直方向に対して所定の傾斜角以上となる。
【0013】
GPSレシーバ13は、複数のGPS衛星からのGPS電波により現在地を検出する周知の構成を備えている。
【0014】
電源スイッチ17は、携帯型無線機10の携帯者により操作され、オン位置では、バッテリ18を送受信回路19、マイコン20及びGPS電源スイッチ21へ接続する。送受信回路19は、アンテナ24において捕捉した受信信号を処理して、オーディオ又はデータを生成し、スピーカや表示器(共に図示せず)へ出力するとともに、オーディオ又はデータから送信信号を生成して、該送信信号をアンテナ24から発信する。
【0015】
マイコン20は、マンダウンセンサ12及びGPSレシーバ13から信号を入力されるとともに、送受信回路19及びGPS電源スイッチ21を制御する。GPS電源スイッチ21は、常時はオフ位置にあり、マイコン20からオン制御信号を受けたときのみ、オン位置になる。GPSレシーバ13は、GPS電源スイッチ21がオン位置にある期間では、バッテリ18からの電力を供給されて、現在地を測位する。
【0016】
図2は携帯型無線機10とは別の携帯型無線機30の構成図である。携帯型無線機30の各素子に関して、携帯型無線機10の素子と同一のものは、同符号で指示して、説明は省略する。携帯型無線機30において、携帯型無線機10との相違点について説明する。
【0017】
携帯型無線機30は、バッテリ18とは別個にバッテリ31又は32を装備する。バッテリ31は、バッテリ18と同様に、通信部11のハウジング内に収容される。これに対して、バッテリ32は、通信部11のハウジングの外に取り付けられ、通信部11へ適宜、接続及び切り離し自在になっている。バッテリ18,31,32は、充電式のバッテリであっても、使い捨ての乾電池であってもよい。
【0018】
マイコン20は、GPS電源スイッチ33のオン位置及びオフ位置を制御することにより、バッテリ31又は32からのGPSレシーバ13への給電を制御する。携帯型無線機30におけるマイコン20によるGPS電源スイッチ33の制御方法は、携帯型無線機10におけるマイコン20によるGPS電源スイッチ21の制御方法と同一である。
【0019】
図3はマイコン20において実行されるメインプログラムのフローチャートである。該メインプログラムを参照しつつ、携帯型無線機10,30の作用について説明する。
【0020】
S41において、電源スイッチ17が携帯者によりオフ位置からオン位置へ切り替えられると、送受信回路19及びマイコン20等の通信部11の各素子は、電源スイッチ17を介してバッテリ18へ接続されて、給電状態になる。この段階では、GPS電源スイッチ21(図1)又は33(図2)はオフ位置にあり、GPSレシーバ13は非給電状態にある。
【0021】
S42では、送受信回路19及びマイコン20等の通信部11の各素子の初期化処理を行う。マンダウンセンサ12は、接点を有する単なるスイッチであり、通信部11の通電期間では、マイコン20は、その初期化処理完了後は、マンダウンセンサ12のオン位置及びオフ位置を常時、監視することができる。
【0022】
S43では、GPS電源スイッチ21(図1)又は33(図2)をオフ位置からオン位置へ切替えて、GPSレシーバ13へ電源を投入する。S43の実施後は、電源スイッチ17がユーザによりオフ位置へ切替えられて、通信部11が電源を遮断されるまで、S44、GPSレシーバの初期化処理ルーチン45及びマンダウンチェックルーチン46がサイクリックに実施される。S44では、通信部11を動作させる。
【0023】
図4はGPSレシーバの初期化処理ルーチン45のフローチャートである。
【0024】
S451では、GPS測位(GPSレシーバ13による現在地測位を適宜、「GPS測位」と呼ぶことにする。)の完了を確認済みであるか否かを判定する。そして、判定結果が正であれば、GPSレシーバの初期化処理ルーチン45を終了し、否であれば、S452へ進む。S43(図3)の実行後、GPSレシーバ13がGPS測位を1度、完了するまでは、S451の判定は否に維持され、それ以降では、正に維持される。
【0025】
S452では、GPS測位が完了したか否かを判定し、判定が正であれば、S453へ進み、否であれば、GPSレシーバの初期化処理ルーチン45を終了する。
【0026】
S453では、GPS電源スイッチ21(図1)又は33(図2)をオン位置からオフ位置へ切替えて、GPSレシーバ13の電源を切断する。
【0027】
通信部11がバッテリ18を投入開始されるのに伴って(S41)、GPSレシーバ13もまた電源を投入されて(S43)、GPS測位開始するが、該GPS測位が完了するまでは、S452を否で抜け、GPS測位が完了しだい、S452を正で抜けて、S453へ進み、S453において、GPSレシーバ13は電源を遮断される。すなわち、GPSレシーバ13は、通信部11に電源が投入された後に、1回、GPS測位を実施し、その後、マンダウンが起きるまで(図5のS461の判定が正)、電源遮断を維持される。
【0028】
図5はマンダウンチェックルーチン46のフローチャートである。
【0029】
S461では、マンダウンセンサ12の出力に基づきマンダウンの事態が起きたか、すなわち携帯型無線機10又は30の携帯者が倒れたか否かを判定する。そして、判定結果が正であれば、S462へ進み、否であれば、マンダウンチェックルーチン46を終了する。
【0030】
S462では、GPS電源スイッチ21又は33はオン位置であるか否か、すなわちGPSレシーバ13は現在、電源ON状態であるか否かを判定する。そして、判定結果が正であれば、S464へ進み、否であれば、S463において、GPS電源スイッチ21又は33をオン位置へ切り替えてから、S464へ進む。
【0031】
S464では、GPS測位が完了したか否かを判定し、判定結果が正であれば、S465へ進み、否であれば、マンダウンチェックルーチン46を終了する。前述したように、S44、GPSレシーバの初期化処理ルーチン45及びマンダウンチェックルーチン46はサイクリックに実行されるので、マンダウンが生じて、S462においてGPSレシーバ13への電源投入が行われても、GPSレシーバ13におけるGPS測位が未完了である場合は、S465へは、進まない。そして、GPSレシーバ13におけるGPS測位が完了してから、S465へ進むことになる。
【0032】
S465では、GPSレシーバ13からの出力に基づき現在地情報を取得する。GPSレシーバ13は、GPS測位を実行すると、その時に使用したアルマナックデータ等のバックアップデータ(バックアップデータについては後述する。)を更新し、その更新したバックアップデータを次のGPS測位時に利用する。
【0033】
S466では、取得した現在地情報をマンダウン発生情報と共に送受信回路19から監視者の所定の受信装置へ送信する。これにより、監視者は、携帯型無線機10を携帯する作業員等が倒れたこと及び倒れた場所を認知する。
【0034】
このように、携帯型無線機10,30では、電源スイッチ17のオン位置期間では、送受信回路19が作動状態に維持されて、他の無線通信機との無線通信が確保されつつ、マンダウンの発生時では、発生場所を速やかに監視機へ通知することができる。また、GPSレシーバ13の作動期間は、電源スイッチ17がオン位置へ切替えられた時、及びその後のマンダウン発生時となるので、GPSレシーバ13の消費電力は抑制され、携帯型無線機10の使用時間を伸ばすことができる。
【0035】
図6は図4のGPSレシーバの初期化処理ルーチン45の変形例としてのGPSレシーバの初期化処理ルーチン45bのフローチャートである。該GPSレシーバの初期化処理ルーチン45bでは、GPSレシーバの初期化処理ルーチン45のS451に代えてS456〜S458が実行される。
【0036】
S456〜S458の説明に先立ち、GPS測位におけるコールドスタート、ウォームスタート及びホットスタートについて概略的に説明する。GPSレシーバ13は、通常、GPS衛星から受信したアルマナックデータ、エフェメリスデータ、最後に測位した現在地データ(以下、これら3個のデータを適宜「バックアップデータ」と呼ぶ。)等をバックアップできるようになっている。GPSレシーバ13は、その電源を切断されても、数時間又は数日はバックアップ可能状態が保持され、次回の電源投入時には、バックアップデータに基づきGPS電波の再捕捉動作を行うことにより、短時間の測位が可能となる。
【0037】
アルマナックデータとは、全GPS衛星の概略軌道情報であり、通常1週間程度の有効期間がある。エフェメリスデータは、測位に使用した衛星の詳細な軌道情報を持つため、その有効期間は数時間と短い。
【0038】
コールドスタートとは、これらバックアップデータが全て消失した状態で、GPSレシーバ13が立ち上がることを言う。通常のコールドスタートでは、GPS衛星の電波を捕捉して、現在地を測位するまでに数分かかってしまう。また全てのバックアップデータが存在していても、アルマナックデータが古いものである場合は、コールドスタートとなることが多い。
【0039】
ウォームスタートとは、バックアップデータのうちエフェメリスデータのみが古い状態で立ち上がることを言う。ウォームスタートによる立ち上がりの場合、測位までに約1分程度かかる。
【0040】
ホットスタートとは、バックアップデータの全てが存在し、エフェメリスデータも新鮮な状態で立ち上がることを言う。ホットスタートによる立ち上がりの場合、測位までに数秒〜数十秒かかる。上記に示した立ち上がり後の測位時間については、GPSレシーバ13に依存するため、もっと早い場合や、もっと遅い場合もある。
【0041】
図6において、S456では、現在、もしGPS測位が行われたならば、それがコールドスタートにならず、ホットスタート(又はウォームスタート)で行われるか否かを判定する。なお、該判定は、具体的には、例えば、前回のGPS測位完了から所定時間が経過しているか否かに基づき行われる。S456の判定が正であるならば、S453へ進み、否であるならば、S457へ進む。
【0042】
S457では、GPS電源スイッチ21又は33はオン位置であるか否か、すなわちGPSレシーバ13は現在、電源ON状態であるか否かを判定する。そして、判定結果が正であれば、S452へ進み、否であれば、S458において、GPS電源スイッチ21又は33はオン位置へ切り替えてから、S452へ進む。
【0043】
S456〜S458により、マンダウン発生時に、GPSレシーバ13がホットスタート又はウォームスタートを保証されるように、GPSレシーバ13は、適当な時間を空けつつ、適宜、給電状態にされて、GPS測位を実施するようになっている。結果、実際のマンダウン時におけるS463(図5)の実施後、S464(図5)の判定が正となるまでに要する時間は、ホットスタート又はウォームスタートに対応する短い時間となる。
【0044】
図7は異常通報付き携帯型無線機60のブロック図である。異常通報付き携帯型無線機60は、その一例として前述の携帯型無線機10を含んでいる。異常通報付き携帯型無線機60は、通信部61、GPS受信機62、異常検出器63、電源制御手段64及び送信制御手段65を備えている。
【0045】
通信部61は、通信電源の投入中は無線通信処理を実施可能になる。GPS受信機62は、GPS電源の投入中にはGPS電波に基づき現在地を測位する。異常検出器63は、携帯者に異常が発生したことを検出する。
【0046】
電源制御手段64は、携帯者の異常時にはGPS受信機62へGPS電源を投入するとともに、携帯者の非異常期間ではGPS受信機62へのGPS電源の投入を特定期間に制限する。送信制御手段65は、携帯者の異常時にGPS受信機62が測位した現在地に係る情報を通信部61に所定の監視機へ送信させる。
【0047】
通信部61、GPS受信機62及び異常検出器63の一例はそれぞれ送受信回路19、GPSレシーバ13及びマンダウンセンサ12である。共通の電源が通信電源及びGPS電源として利用されてもよい。共通の電源としての一例は、バッテリ18(図1)であり、GPS電源が通信電源とは別個に専用に設けられている場合のGPS電源の例は、バッテリ31又は32(いずれも図2)である。
【0048】
携帯者は、例えば警備員や森林伐採業者に限定されず、異常時に監視者へ異常発生及び発生場所の速やかな無線通知が望まれる任意の人であってもよい。
【0049】
こうして、GPS受信機62は、携帯者の非異常時では、特定期間に限定されて、給電状態になるので、GPS受信機62の消費電力が抑えられ、異常通報付き携帯型無線機60の作動期間を伸ばすことができる。
【0050】
異常通報付き携帯型無線機60の具体的態様について説明する。
【0051】
電源制御手段64は、通信部61への通信電源の投入開始に伴ってGPS受信機62へGPS電源を投入してから、GPS受信機62が現在地の測位を完了するまでの期間を特定期間(GPS電源投入期間)に含めてもよい。前述の図3及び図4のフローチャートでは、GPSレシーバ13は、通信部11の起動時に(S41)、電源を投入されて(S43)、現在地測位を行い、現在地測位が完了しだい(S452)、すなわち、特定期間の終了後、電源を切断されるようになっている(S453)。
【0052】
好ましくは、異常検出器63は、前述した水銀入り細管のように、異常通報付き携帯型無線機60の傾斜角に基づき携帯者の異常を検出するものである。通常、携帯者の異常は、携帯者の横倒れによって検出されるが、異常検出器63は、携帯者の横倒れ以外の事態、例えば心電図や脈拍の異常を検出するものであってもよい。また、ペット等の動物や所定の自動車等の移動体に、異常通報付き携帯型無線機60を取り付け、それら動物等の所定の異常状態を監視者へ通報させるようにすることも可能である。
【0053】
電源制御手段64は、携帯者の次の異常発生時におけるGPS受信機62の起動においてGPS受信機62がホットスタート又はウォームスタートできることを保証する時間間隔で特定期間を設定し、該特定期間において、GPS受信機62へGPS電源を投入して、GPS受信機62に現在地の測位を実施させてもよい。なお、当然のことであるが、GPS受信機62がホットスタートできることを保証する電源投入時間間隔は、GPS受信機62がウォームスタートできることを保証する電源投入時間間隔より短くなる。
【0054】
このような非異常期間におけるGPS受信機62の適宜のGPS電源投入により、バックアップデータが更新され、異常発生時には、GPS受信機62は、速やかに、現在地測位を実施して、監視機への異常発生場所の通報を早めることができる。
【0055】
図8は異常通報付き携帯型無線機制御方法80のフローチャートである。該異常通報付き携帯型無線機制御方法80は、異常通報付き携帯型無線機60の作動をステップ化したものであり、異常通報付き携帯型無線機60に適用される種々の作動に係る具体的態様は、異常通報付き携帯型無線機制御方法80にもステップ化して適用可能である。異常通報付き携帯型無線機制御方法80は、その一例として図4〜図6に関連して説明した無線通信機用メインプログラム40を含む。
【0056】
異常通報付き携帯型無線機制御方法80では、携帯者の非異常期間では(S81の判定が否)、GPS受信機62へのGPS電源の投入を特定期間に制限するとともに(S82の判定が正及びS83)、携帯者の異常期間には(S81の判定が正)、GPS受信機62へGPS電源を投入する(S88)。なお、GPS受信機62は、GPS電源の投入に伴い、現在地測位を実行する(S83,S88)。
【0057】
携帯者の異常時(S81の判定が正)にGPS受信機62が測位した現在地に係る情報(S88)は、通信部61に所定の監視機へ送信させる(S89)。
【0058】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを異常通報付き携帯型無線機60の各手段として機能させる。あるいは、本発明を適用した別のプログラムは、異常通報付き携帯型無線機制御方法80の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0059】
本発明を最良の形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、最良の形態における各構成要素を変形して具体化できる。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、最良の形態に開示されている複数の構成要素を便宜、組み合わせて、追加したり、いくつかの構成要素を削除したりして、種々の発明を形成することができる。さらに、開示した複数の実施形態間で、所定の構成要素を選択し、それらを組み合わせても、種々の発明を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】携帯型無線機の概略構成図である。
【図2】別の携帯型無線機の構成図である。
【図3】マイコンにおいて実行されるメインプログラムのフローチャートである。
【図4】GPSレシーバの初期化処理ルーチンのフローチャートである。
【図5】マンダウンチェックルーチンのフローチャートである。
【図6】図4のGPSレシーバの初期化処理ルーチンの変形例のフローチャートである。
【図7】異常通報付き携帯型無線機のブロック図である。
【図8】異常通報付き携帯型無線機制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
60:異常通報付き携帯型無線機、61:通信部、62:GPS受信機、63:異常検出器、64:電源制御手段、65:送信制御手段、80:異常通報付き携帯型無線機制御方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信電源の投入中は無線通信処理を実施可能になる通信部、
GPS電源の投入中にはGPS電波に基づき現在地を測位するGPS受信機、
前記携帯者に異常が発生したことを検出する異常検出器、
前記携帯者の異常時には前記GPS受信機へ前記GPS電源を投入するとともに、前記携帯者の非異常期間では前記GPS受信機への前記GPS電源の投入を特定期間に制限する電源制御手段、及び
前記携帯者の異常時に前記GPS受信機が測位した現在地に係る情報を前記通信部に所定の監視機へ送信させる送信制御手段、
を備えていることを特徴とする異常通報付き携帯型無線機。
【請求項2】
前記電源制御手段は、前記通信部への前記通信電源の投入開始に伴って前記GPS受信機へ前記GPS電源を投入してから、前記GPS受信機が現在地の測位を完了するまでの期間を前記特定期間に含めることを特徴とする請求項1記載の異常通報付き携帯型無線機。
【請求項3】
前記異常センサは、前記異常通報付き携帯型無線機の傾斜角に基づき前記携帯者の異常を検出するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の異常通報付き携帯型無線機。
【請求項4】
前記電源制御手段は、前記携帯者の次の異常発生時における前記GPS受信機の起動において前記GPS受信機がホットスタート又はウォームスタートできることを保証する時間間隔で前記特定期間を設定し、該特定期間において前記GPS受信機へ前記GPS電源を投入して前記GPS受信機に現在地の測位を実施させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の異常通報付き携帯型無線機。
【請求項5】
通信電源の投入中は無線通信処理を実施可能になる通信部、
GPS電源の投入中にはGPS電波に基づき現在地を測位するGPS受信機、及び
前記携帯者に異常が発生したことを検出する異常検出器、
を備えている異常通報付き携帯型無線機の制御方法において、
前記携帯者の異常時には前記GPS受信機へ前記GPS電源を投入するとともに、前記携帯者の非異常期間では前記GPS受信機への前記GPS電源の投入を特定期間に制限するステップ、及び
前記携帯者の異常時に前記GPS受信機が測位した現在地に係る情報を前記通信部に所定の監視機へ送信させるステップ、
を備えていることを特徴とする異常通報付き携帯型無線機の制御方法。
【請求項6】
請求項5記載の制御方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−166197(P2007−166197A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359428(P2005−359428)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】