説明

異方導電性接着シート及び微細接続構造体

【課題】低接続抵抗性、高絶縁信頼性、かつ微細回路接続性に優れた異方導電性接着シートの提供。
【解決手段】少なくとも硬化剤、硬化性の絶縁性樹脂(1)、導電性粒子(5)及びイオン捕捉剤粒子(2)からなる異方導電性接着シートであって、異方導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って導電性粒子(5)の平均粒径の2.0倍以内の領域中に導電性粒子個数の90%以上、イオン捕捉剤粒子個数の90%以上が存在し、かつ、導電性粒子(5)の90%以上が他の導電性粒子と接触せずに存在しており、近接する導電性粒子同士の平均粒子間隔が導電性粒子の平均粒径の0.5倍以上5倍以下であり、かつイオン捕捉剤粒子(2)の平均粒径が導電性粒子(5)の平均粒径より小さいことを特徴とする異方導電性接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細回路接続性に優れた異方導電性接着シート及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、微細回路を接続するための異方導電性接着シートに関して、接続性改良、短絡防止のために、種々の導電性粒子の検討および、異方導電性接着剤構成の検討がなされている。例えば、導電性粒子と同等の熱膨張係数をもつ絶縁粒子を配合する方法(特許文献1参照)、短絡防止のため、導電性粒子の表面に絶縁性粒子を付着させる方法(特許文献2参照)、あるいは、導電性粒子の表面を電気絶縁性樹脂で被覆する方法(特許文献3参照)、導電性粒子を含む層と含まない層とを積層し、隣接する回路間の短絡を防止する方法(特許文献4、5参照)、イオン捕捉剤粒子を配合して、イオン化しやすい材質からなる電極からのイオンマイグレーションによる短絡を防止する方法(特許文献6、7参照)等が公知である。
【0003】
しかしながら、イオン捕捉剤粒子を配合する等の従来技術においては、端子間方向においては導電性粒子同士の凝集による短絡を防止し、絶縁性を確保しなければならないので、イオン捕捉剤粒子を多く配合する必要がある。一方、圧着時に、接続性を確保するためには接続部分からイオン捕捉剤粒子を排除しなければならないため、充分な絶縁性確保のために多量のイオン捕捉剤粒子を配合することには限界があり、微細回路接続の場合、絶縁性確保と接続粒子数確保との両立を満足できるものではなかった。
【0004】
また、イオン化しやすい材質から成る配線と貴金属からなる端子、あるいは、貴金属表面を有する導電性粒子との接触界面において、電圧がかかる場合は、特に配線材料である電極端子のイオン化による配線腐食、それに伴う短絡を起こし易く、接続性と短絡防止の両立を満足できるものではなかった。接着剤構成による短絡防止等の従来技術においても、微細回路接続の場合は、絶縁性確保と電気的接続性とを同時に満足できるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−349339号公報
【特許文献2】特許第2895872号公報
【特許文献3】特公平7−99644号公報
【特許文献4】特開平6−45024号公報
【特許文献5】特開2003−49152号公報
【特許文献6】特許第3035579号公報
【特許文献7】特許第3633422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、微細回路の隣接する回路間の絶縁性を損なうことなく、良好な電気的接続性を実現する異方導電性接着シート、その製造方法、およびそれを用いた微細接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、導電性粒子が、ある特定の範囲内に、ある特定割合以上の導電性粒子と接触せずに存在しており、その導電性粒子の存在領域を含む近傍に、ある特定の平均粒子径を有するイオン捕捉剤粒子が存在していることを特徴とする異方導電性接着シートを用いることによって、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の一は、少なくとも硬化剤、硬化性の絶縁性樹脂、導電性粒子及びイオン捕捉剤粒子からなる異方導電性接着シートであって、異方導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って導電性粒子の平均粒径の2.0倍以内の領域中に導電性粒子個数の90%以上、イオン捕捉剤粒子個数の90%以上が存在し、かつ、導電性粒子の90%以上が他の導電性粒子と接触せずに存在しており、近接する導電性粒子同士の平均粒子間隔が導電性粒子の平均粒径の0.5倍以上5倍以下であり、かつイオン捕捉剤粒子の平均粒径が導電性粒子の平均粒径より小さいことを特徴とする異方導電性接着シートである。
【0009】
上記異方導電性接着シートにおいては、導電性粒子の平均粒径が1〜8μmであり、近接する導電性粒子同士の平均粒子間隔が20μm以下であり、かつ、異方導電性接着シートの厚みが平均粒子間隔の1.5倍以上40μm以下であることが好ましい。また、導電性粒子が、貴金属被覆された樹脂粒子、貴金属被覆された金属粒子、金属粒子、貴金属被覆された合金粒子、及び合金粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の導電性粒子であることが好ましい。さらに、イオン捕捉剤粒子の平均粒径が導電性粒子の平均粒径の0.05倍以上0.9倍以下であることが好ましく、イオン捕捉剤粒子個数は導電性粒子個数の0.5倍から20倍の範囲であることが好ましい。
イオン捕捉剤粒子の融点は、300℃以上の酸化物系のイオン捕捉剤粒子からなることが好ましい。
【0010】
本発明の二は、2軸延伸可能なフィルム上に粘着層を設けて積層体を形成し、該積層体の上に平均粒径1〜8μmの導電性粒子を付着させて導電性粒子付着フィルムを作製し、該導電性粒子付着フィルムを該導電性粒子同士の平均粒子間隔が該導電性粒子の平均粒径の0.5倍以上5倍以下になるように2軸延伸して保持し、その上にイオン捕捉剤粒子を散布して該導電性粒子間にイオン捕捉剤粒子を付着させた後、少なくとも硬化剤、及び硬化性の絶縁性樹脂を含んでなる接着シートに該導電性粒子及び該イオン捕捉剤粒子を転写して異方導電性接着シートを作製する工程を含むことを特徴とする、本発明の一の異方導電性接着シートの製造方法である。
上記異方導電性接着シートの製造方法においては、2軸延伸可能なフィルムが長尺のフィルムであり、接着シートが長尺の接着シートであることが好ましい。
【0011】
本発明の三は、微細接続端子を有する電子回路部品と回路基板とを本発明の一の異方導電性接着シートで電気的に接続する接続方法において、微細接続端子の高さが近接する導電性粒子の平均粒子間隔の3〜15倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子の間隔が該平均粒子間隔の1〜10倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子のピッチが該平均粒子間隔の3〜30倍かつ80μm以下であることを特徴とする接続方法である。さらには、微細接続端子を有する電子回路部品と回路基板とを本発明の一の異方導電性接着シートで電気的に接続する接続方法において、電気化学的にイオン化しやすい材質からなる端子側に、該異方導電性接着シートの該導電性粒子及びイオン捕捉剤粒子を含む面を配して接続することが好ましい。
本発明の四は、本発明の三の接続方法により接続された電子回路部品と回路基板を含むことを特徴とする微細接続構造体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の異方導電性接着シート及び微細接続構造体は、隣接する接続端子間の良好な絶縁特性を有し、かつ接続した接続端子間の良好な電気的接続性を有する。すなわち、絶縁性が必要な異方導電性接着シートの面内方向には特定の間隔で導電性粒子を配置させ、その間隔内にイオン捕捉剤粒子を配置させ、接続面の方向には、イオン捕捉剤粒子がないことにより、圧着時の短絡を防止する。イオン化しやすい配線部分及び接続部分近傍にイオン捕捉剤粒子を配置することにより、配線のイオン化を抑制し、良好な絶縁性を確保することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明の異方導電性接着シートにおける導電性粒子について説明する。
導電性粒子としては、貴金属被覆された樹脂粒子、貴金属被覆された金属粒子、金属粒子、貴金属被覆された合金粒子、及び合金粒子の中から選ばれた1種以上を用いることが好ましい。
貴金属被覆された樹脂粒子としては、ポリスチレン、ベンゾグアナミン、ポリメチルメタアクリレート等の球状粒子にニッケル、および金をこの順に被覆したものを用いることが好ましい。
【0014】
接続する微細接続端子(バンプ)硬度に応じて、より柔軟な樹脂粒子を用いて貴金属被覆された樹脂粒子を形成することができる。
接続するバンプ硬度がビッカース硬度で50Hv未満である場合は、ポリメタアクリレート樹脂等の柔軟な樹脂粒子を用いることが好ましい。また、バンプ硬度が50Hv以上である場合は、ベンゾグアナミン樹脂等の硬質樹脂粒子を用いることが好ましい。
【0015】
貴金属被覆された金属粒子としては、ニッケル、銅等の金属粒子に金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を最外層に被覆したものを用いることが好ましい。被覆する方法としては、蒸着法、スパッタリング法等の薄膜形成法、乾式ブレンド法によるコーティング法、無電解めっき法、電解めっき法等の湿式法を用いることができる。量産性の点から、無電解めっき法が好ましい。
【0016】
金属粒子としては、銀、銅、ニッケル等の金属から選ばれるものを用いることが好ましい。合金粒子としては、融点が150℃以上500℃以下のものが好ましく、さらには150℃以上350℃以下の低融点合金粒子を用いることがより好ましい。融点が500℃以下であると、接続端子間に金属結合を形成することも可能であり、接続信頼性の点から好ましい。また、耐熱接続信頼性の観点から、融点が150℃以上であることが好ましい。
【0017】
貴金属被覆された合金粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、錫、亜鉛、ビスマス、インジウム等から選ばれた2種以上からなる合金粒子に上記方法等を用いて貴金属被覆したものを用いることができる。
【0018】
合金粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、錫、亜鉛、ビスマス、インジウム等から選ばれた2種以上からなる合金粒子が好ましい。融点が150℃以上500℃以下の合金粒子を用いる場合は、予め粒子表面にフラックス等を被覆しておくことが好ましい。いわゆるフラックスを用いることにより、表面の酸化物等を取り除くことができ好ましい。フラックスとしては、アビエチン酸等の脂肪酸等を用いることができる。
【0019】
導電性粒子の平均粒径と最大粒径の比は2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。該導電性粒子の粒度分布はより狭いほうが好ましく、該導電性粒子の粒径分布の幾何標準偏差は、1.2〜2.5であることが好ましく、1.2〜1.4であることが特に好ましい。幾何標準偏差が上記値であると粒径のバラツキが小さくなる。通常、接続する2端子間に一定のギャップが存在する場合には、粒径が揃っているほど、導電性粒子が有効に機能すると考えられる。
【0020】
粒度分布の幾何標準偏差とは、粒度分布のσ値(累積84.13%の粒径値)を累積50%の粒径値で除した値である。粒度分布のグラフの横軸に粒径(対数)を設定し、縦軸に累積値(%、累積個数比、対数)を設定すると粒径分布はほぼ直線になり、粒径分布は対数正規分布に従う。累積値とは全粒子数に対して、ある粒径以下の粒子の個数比を示したもので、%で表す。粒径分布のシャープさはσ(累積84.13%の粒径値)と平均粒径(累積50%の粒径値)の比で表現される。σ値は実測値あるいは、前述グラフのプロット値からの読み取り値である。
【0021】
平均粒径及び粒度分布は、公知の方法、装置を用いて測定することができ、湿式粒度分布計、レーザー式粒度分布計等を用いることができる。あるいは、電子顕微鏡等で粒子を観察し、平均粒径、粒度分布を算出しても構わない。本発明の平均粒径及び粒度分布はレーザー式粒度分布計により求めることが出来る。
【0022】
導電性粒子の平均粒径は1〜8μmであることが好ましく、2〜6μmであることがさらに好ましい。絶縁性の観点から8μm以下が好ましく、接続端子等の高さバラツキ等の影響を受けにくく、また、電気的接続性の観点から1μm以上が好ましい。
【0023】
本発明の異方導電性接着シートにおける、イオン捕捉剤粒子について説明する。
該イオン捕捉剤粒子としては、有機イオン交換体、無機イオン交換体、無機イオン吸着剤等を用いることができるが、耐熱性に優れる無機イオン交換体が好ましい。
該無機イオン交換体としては、ジルコニウム系化合物、ジルコニウムビスマス系化合物、アンチモンビスマス系化合物、マグネシウムアルミニウム化合物を用いることができる。交換するイオンのタイプとしては、陽イオンタイプ、陰イオンタイプ、両イオンタイプがあるが、電極端子のイオンマイグレーション直接の原因になる金属イオン(陽イオン)、電気伝導度を上昇し、金属イオンの生成原因になる陰イオンを両方とも交換できるため両イオンタイプが好ましい。
加熱圧着時の熱の影響を排除するため、イオン捕捉剤粒子は、融点が300℃以上の無機イオン捕捉剤粒子であることが好ましく、融点が高い点で酸化物系のイオン捕捉剤粒子であることがより好ましく、酸化物系のイオン捕捉剤粒子としては含水酸化ビスマス、含水酸化チタン、含水酸化ジルコニウム、含水二酸化マンガン等を挙げることができる。
【0024】
イオン捕捉剤粒子の平均粒径は、導電性粒子の平均粒径より小さく、かつ導電性粒子間隔よりも小さいが、導電性粒子の平均粒径の0.05倍以上0.9倍以下であることが好ましい。絶縁性の観点からは0.05倍以上であることが好ましく、接続性の観点から導電性粒子の平均粒径より小さいことが好ましい。イオン捕捉剤粒子個数は導電性粒子個数の0.5倍から20倍の範囲にあることが好ましく、1倍から5倍の範囲がさらに好ましい。絶縁性確保の点から0.5倍以上が好ましく、接着性の観点から20倍以下が好ましい。
【0025】
本発明の異方導電性接着シートにおいては、面方向の導電性粒子の間にイオン捕捉剤粒子を有する部分があり、接続方向である導電性粒子の上下にイオン捕捉剤粒子がない構造のため、圧着時に該接続面のイオン捕捉剤粒子を排除する必要が無く、イオン捕捉剤粒子を均一配合する構造に比較してより少量のイオン捕捉剤粒子で効果的に絶縁性を付与することが可能である。
【0026】
また、通常の製法では、イオン捕捉剤粒子を予め、絶縁性接着剤溶液中に配合する方式をとる場合が多いが、その場合は、溶剤の影響を無視できず、絶縁性接着剤溶液中でのイオン捕捉剤粒子の凝集等の懸念、あるいは溶剤等からイオン成分を捕捉するため、イオン捕捉能の低下等の懸念があった。本発明の異方導電性接着シートの製造方法では、既に溶剤を含まない状態の絶縁性接着シートへ、乾式でイオン捕捉剤粒子を転写する方法も可能である。従って、イオン捕捉剤粒子に対する溶剤種類の制限も無く、その効果を発揮することができる。
【0027】
次いで本発明の異方導電性接着シートについて説明する。
本発明の異方導電性接着シートは、導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って導電性粒子の平均粒径の2.0倍以内の領域中に導電性粒子個数の90%以上が存在している。好ましくは95%以上が存在している。
また、イオン捕捉剤粒子についても、導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って導電性粒子の平均粒径の2.0倍以内の領域中にイオン捕捉剤粒子個数の90%以上が存在している。好ましくは95%以上が存在している。
【0028】
本発明の異方導電性接着シートにおいては、近接する導電性粒子同士の平均粒子間隔は、導電性粒子の平均粒径の0.5倍以上5倍以下である。好ましくは、20μm以下で、かつ導電性粒子の平均粒径の1.5倍以上3倍以下である。接続時の粒子流動による粒子凝集の防止、及び絶縁性確保の観点から、平均粒径の0.5倍以上であることが好ましく、微細接続の観点から平均粒径の5倍以下であることが好ましい。
【0029】
本発明において、近接する導電性粒子とは、任意の導電性粒子を選定し、該導電性粒子に最も近い6個の導電性粒子を言う。また、本発明における近接する導電性粒子同士の平均粒子間隔は以下のようにして求められる。
まず、本発明の異方導電性接着シートを、導電性粒子が存在する面側から光学顕微鏡で拡大した写真を撮影する。次に、任意の20個の導電性粒子を選定し、そのそれぞれの導電性粒子に最も近い6個の導電性粒子との距離を測定し、全体の平均値を求めて、平均粒子間隔とする。イオン捕捉剤粒子の存在位置も上記と同様にして拡大写真から読み取ることができる。
【0030】
異方導電性接着シートの厚みは上述の平均粒子間隔の1.5倍以上40μm以下であることが好ましく、2倍以上40μm以下であることがより好ましい。機械的接続強度の観点から平均粒子間隔の1.5倍以上が好ましく、接続時の粒子流動による接続粒子数減少を防止する観点から40μm以下であることが好ましい。
【0031】
異方導電性接着シートにおける導電性粒子の配合量としては、硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂を合わせた成分100質量部に対して、0.5質量部から20質量部であることが好ましく、1質量部から10質量部であることが特に好ましい。絶縁性の観点から20質量部以下が好ましく、電気的接続性の観点から0.5質量部以上が好ましい。
本発明の異方導電性接着シートは、異方導電性接着シートの片側表面から一部または全部の導電性粒子およびイオン捕捉剤粒子の一部分が露出していても差し支えない。
【0032】
本発明の異方導電性接着シートにおいて、該異方導電性接着シートの厚み方向に対して、導電性粒子の存在している位置は、焦点方向の変位を測定できるレーザー顕微鏡により測定することができる。またこのとき同時に、導電性粒子が他の導電性粒子と接触せずに存在している個数を測定することもできる。前記レーザー顕微鏡を用いて焦点方向の変位を測定する場合、その変位測定分解能は0.1μm以下であることが好ましく、0.01μm以下であることが特に好ましい。
【0033】
次に、本発明の、導電性粒子が他の導電性粒子と接触せずに存在している異方導電性接着シートの製造方法について説明する。
本発明において「導電性粒子が他の導電性粒子と接触せずに存在する」とは、導電性粒子同士が凝集せずに各々単独に存在することを意味する。以下、この意味で「単独に存在する」、「単独粒子」なる表現を用いることがある。本発明においては、導電性粒子の90%以上が他の導電性粒子と接触せずに存在しているが、95%以上が他の導電性粒子と接触せずに存在しているのが、好ましい。
【0034】
本発明の異方導電性接着シートの製造方法としては、2軸延伸可能なフィルム又はシート上に、粘着層を形成し、その上に導電性粒子を単層配列し、それらを延伸することにより、該導電性粒子を分散配列させ、延伸した状態を保った状態でイオン捕捉剤粒子を散布し、導電性粒子およびイオン捕捉剤粒子を少なくとも硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂からなる接着シートに転写させる方法が好ましい。
【0035】
2軸延伸可能なフィルムとしては、公知の樹脂フィルム等を用いることができるが、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等の単独あるいは共重合体等、又は、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム等のゴムシート等の柔軟で延伸可能な樹脂フィルムを用いることが好ましい。ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂が特に好ましい。延伸後の収縮率は10%以下になることが好ましい。
【0036】
2軸延伸可能なフィルム上に導電性粒子を分散配列し、固定する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、少なくとも熱可塑性樹脂を含む粘着層を該2軸延伸可能なフィルム上に形成し、その上に導電性粒子を接触させて付着させ、ゴムロール等で荷重をかけて単層に配置する方法を採ることができる。この場合、隙間無く充填するためには、付着−ロール操作を数回繰り返す方法が好ましい。球状の導電性粒子の場合、最密充填が最も安定した構造なので比較的容易に充填することができる。あるいは、該2軸延伸可能なフィルム上に粘着剤を塗布して接着層を形成し、その上に導電性粒子を付着させ、必要なら数回付着を繰り返し、単層で分散配置する方法等を用いることができる。
【0037】
導電性粒子を単層配列させた2軸延伸可能なフィルムを延伸させる方法としては、公知の方法を用いることができるが、均一分散配列という点から、2軸延伸装置を用いることが好ましい。粒子間隔の点から延伸度合いは、50%以上、400%以下であることが好ましく、100%以上、300%以下であることがより好ましい。なお、100%延伸するとは、延伸方向に沿って延伸した部分の長さが延伸前の長さの100%であることを言う。延伸方向は、任意であるが、延伸角度が90°の2軸延伸が好ましく、同時延伸が好ましい。2軸延伸の場合、各方向の延伸度合いは同じであっても異なっていても構わない。
【0038】
2軸延伸装置としては、同時2軸連続延伸装置が好ましい。
同時2軸連続延伸装置としては、公知のものを使用することができるが、長辺側をチャック金具で固定し、それらの間隔を縦横同時に延伸することにより連続延伸するテンター型延伸機が好ましい。延伸度を調整する方式としては、スクリュー方式、パンタグラフ方式を用いることが可能だが、調整の精度の観点から、パンタグラフ方式がより好ましい。加熱しながら延伸する場合は、延伸部分の手前に予熱ゾーンを設けて、延伸部分の後方に熱固定ゾーンを設けることが好ましい。
【0039】
本発明の異方導電性接着シートは、少なくとも硬化剤、硬化性の絶縁性樹脂、導電性粒子、及びイオン捕捉剤粒子からなる単層のシートであってもよいし、さらに該シートに導電性粒子を含まず少なくとも絶縁性樹脂を含む樹脂シートを積層した複層のシートであっても構わない。
【0040】
本発明の異方導電性接着シートに用いる硬化性の絶縁性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、光及び熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を用いることができる。取り扱いの容易さから、熱硬化性の絶縁性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができるが、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、脂環式エポキシ基を有する化合物、分子内の二重結合をエポキシ化した化合物が好ましい。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂あるいは、それらの変性エポキシ樹脂を用いることができる。
【0042】
本発明に用いる硬化剤は、前記硬化性の絶縁性樹脂を硬化できるものであればよい。硬化性の絶縁性樹脂として、熱硬化性樹脂を用いる場合は、100℃以上で熱硬化性樹脂と反応し、硬化できるものが好ましい。エポキシ樹脂の場合は、保存性の点から、潜在性硬化剤であることが好ましく、例えば、イミダゾール系硬化剤、カプセル型イミダゾール系硬化剤、カチオン系硬化剤、ラジカル系硬化剤、ルイス酸系硬化剤、アミンイミド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤等を用いることができる。保存性、低温反応性の点から、カプセル型のイミダゾール系硬化剤が好ましい。
【0043】
本発明の異方導電性接着シートには、硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂以外に、熱可塑性樹脂等を配合しても構わない。熱可塑性樹脂を配合することにより、容易にシート状に形成することが出来る。この場合の配合量は、硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂を合わせた成分100質量部に対して200質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることが特に好ましい。
【0044】
本発明の硬化性の絶縁性樹脂に配合できる熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキル化セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等であり、それらから選ばれる1種または2種以上の樹脂を組み合わせても差し支えない。これらの樹脂の中、水酸基、カルボキシル基等の極性基を有する樹脂は、接着強度の点から好ましい。また、熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が80℃以上である熱可塑性樹脂を1種以上含むことが好ましい。
【0045】
本発明の異方導電性接着シートには、上記構成成分に添加剤を配合しても差し支えない。異方導電性接着シートと被着物との密着性を向上させるために、添加剤として、カップリング剤を配合することができる。該カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤等を用いることができるが、シランカップリング剤が好ましい。該シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等を用いることができる。
【0046】
該カップリング剤の配合量は硬化剤および硬化性の絶縁性樹脂を合わせた成分100質量部に対して、0.01質量部から1質量部が好ましい。密着性向上の観点から0.01質量部以上が好ましく、信頼性の観点から1質量部以下が好ましい。
本発明の異方導電性接着シートには、さらに絶縁性を増すために絶縁粒子を配合しても差し支えない。
【0047】
絶縁粒子としては、充分な絶縁性が可能であれば、どのようなものでも使用可能である。例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の熱可塑性樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂等の樹脂粒子、固形エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂粒子、酸化ケイ素、酸化チタン等のセラミックス粒子等を用いることができる。圧着時に接続性を確保しやすいため、熱可塑性樹脂であることが好ましい。加圧接続時に接続性確保の点から、ガラス転移温度が25℃以上150℃以下の樹脂であることが特に好ましい。形状としては、球状粒子が好ましい。ガラス転移温度の測定方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、TMA―50熱機械分析装置(島津製作所製)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定することができる。
【0048】
絶縁粒子の平均粒径は、導電性粒子の平均粒径より小さく、かつ導電性粒子間隔よりも小さいが、導電性粒子の平均粒径の0.05倍以上0.9倍以下であることが好ましい。絶縁性の観点からは0.05倍以上であることが好ましく、接続性の観点から導電性粒子の平均粒径より小さいことが好ましい。絶縁粒子個数は、導電性粒子個数の0.5倍から20倍の範囲にあることが好ましく、1倍から5倍の範囲がさらに好ましい。絶縁性確保の点から0.5倍以上が好ましく、接着性の観点から20倍以下が好ましい。配合量は0.1重量部から10重量部の範囲が好ましく、1重量部から5重量部がより好ましい。絶縁性付与の観点から、0.1重量部以上が好ましく、接続性の観点から10重量部未満が好ましい。
【0049】
絶縁粒子の存在領域としては、異方導電性接着シート内に均一分散していても良いが、異方導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って導電性粒子の平均粒径の2.0倍以内の領域中に絶縁粒子個数の90%以上が存在していることは、本願発明の好ましい実施形態である。
【0050】
次に本発明の異方導電性接着シートの製造方法について説明する。
まず、2軸延伸可能なフィルム上に粘着層を設けて積層体を形成し、該積層体の上に平均粒径1〜8μmの導電性粒子を付着させ導電性粒子付着フィルムを作製し、該導電性粒子付着フィルムを該導電性粒子の近接する粒子との平均粒子間隔が導電性粒子の平均粒径の0.5倍以上5倍以下かつ20μm以下となるように2軸延伸して保持し、延伸した状態を保ったまま、その上にイオン捕捉剤粒子を散布し、その後、少なくとも硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂を含んでなる接着シートに導電性粒子およびイオン捕捉剤粒子を転写することにより、本発明の異方導電性接着シートを製造することができる。
【0051】
好ましくは、2軸延伸可能なフィルムは長尺のフィルムであり、接着シートも長尺の接着シートである。本願において長尺とは長さが10m以上であることを指す。長尺の接着シートを用いれば連続して接続構造体を生産できるため効率がよい。
接着シートは硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂を含んでなる接着層であり、この接着シートは通常は剥離可能なベースフィルム(保持フィルム)上に形成される。このため、得られる異方導電性接着シートは、通常は剥離可能なベースフィルム上に形成される。
本願明細書では、この異方導電性接着シートとベースフィルムとの積層体を異方導電性接着シートと言うことがある。
【0052】
粘着層に使用する粘着剤は、公知のものを使用することができるが、加熱しながら2軸延伸する場合は、非熱架橋性の粘着剤を用いることが好ましい。具体的には、天然ゴムラテックス系粘着剤、合成ゴムラテックス系粘着剤、合成樹脂エマルジョン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体粘着剤等を単独で、又は組み合わせて用いることができる。
【0053】
粘着層の厚みは、使用する導電性粒子の平均粒径の1/50から3倍の範囲が好ましく、1/10から2倍の範囲がより好ましい。導電性粒子付着時及び延伸時に導電性粒子を保持する観点から、粘着層の厚みは該導電性粒子の平均粒径の1/50以上が好ましく、延伸後の接着シートへの粒子転写の観点から3倍以下が好ましい。粘着層形成方法としては、溶剤又は水に分散又は溶解したものを、グラビアコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーター、スプレーコート等の公知の方法で塗布し、乾燥する方法を用いることができる。ホットメルトタイプの粘着剤を使用する場合は、無溶剤でロールコートすることができる。
【0054】
該導電性粒子を粘着層に塗布するにあたっては、ほぼ隙間無く単層に配置すること(密集充填)が好ましい。密集充填する方法としては、前述の、2軸延伸可能なフィルム上に導電性粒子を分散配列し、固定する方法を用いることができる。なお、密集充填とは、充填された粒子間の平均粒子間隔が、平均粒径の1/2以下であるように充填することをいうものとする。より好ましくは、充填された粒子間の平均粒子間隔が、平均粒径の1/5以下である。
【0055】
2軸延伸後のフィルムの膜厚は、転写する接着性シート及び接着性シートのベースフィルムの膜厚を合計した厚みの1/10から1倍であることが好ましく、1/5から1/2であることが特に好ましい。延伸後のフィルムのハンドリング性の観点から、1/10以上であることが好ましく、延伸後の接着性シートへの粒子転写の観点から1倍以下であることが好ましい。
【0056】
延伸した状態を保ったまま、イオン捕捉剤粒子を散布する方法としては、帯電によるイオン捕捉剤粒子同士の凝集を防止する為、イオン捕捉剤粒子を除電処理することが好ましい。
【0057】
次に、微細接続端子を有する電子回路部品とそれに対応する回路を有する回路基板とを異方導電性接着シートで電気的に接続する、本発明の接続方法を説明する。
該接続方法において、該電子回路部品の微細接続端子の高さは導電性粒子の平均粒子間隔の3〜15倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子の間隔は該平均粒子間隔の1〜10倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子のピッチは該平均粒子間隔の3〜30倍かつ80μm以下である。該電子回路部品とそれに対応する回路を有する回路基板とは、本発明の異方導電性接着シートを用いて電気的に接続する。
【0058】
微細接続端子の高さは、導電性粒子の平均粒子間隔の3〜15倍かつ40μm以下であり、4倍〜10倍が好ましい。微細接続構造体の機械的強度の観点から3倍以上が好ましく、接続時に接着性シートの樹脂流動により導電性粒子の移動が起こり、該微細接続端子下部にある導電性粒子数の減少による接続性低下の観点から、15倍以下であり、かつ40μm以下が好ましい。
【0059】
該微細接続端子間隔は導電性粒子の平均粒子間隔の1〜10倍かつ40μm以下であり、1〜10倍かつ20μm以下が好ましく、2〜5倍かつ15μm以下がより好ましい。絶縁性の観点から1倍以上が好ましく、微細接続の観点から10倍以下かつ40μm以下が好ましい。ピッチは、平均粒子間隔の3〜30倍かつ80μm以下であり、5〜20倍かつ40μm以下であることが好ましい。接続性の観点から3倍以上が好ましく、微細接続の観点から30倍以下かつ80μm以下が好ましい。
【0060】
微細接続端子を有する電子回路部品と回路基板とを本発明の異方導電性接着シートで電気的に接続する接続方法において、電気化学的にイオン化しやすい材質からなる端子側に、該異方導電性接着シートの該導電性粒子及びイオン捕捉剤粒子を含む面を配して接続することが好ましい。電気化学的にイオン化しやすい材質としては、一方の配線材料が金めっき配線、あるいは、金バンプの場合には、酸化物導体、例えばインジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、金属導体、例えばアルミ系合金、タンタル系合金、クロム系合金等である。
【0061】
本発明はまた、上記微細接続方法により接続された微細接続構造体にも関する。
本発明の微細接続構成体を構成する回路基板の材質は、有機基板でも無機基板でも、差し支えない。有機基板としては、ポリイミドフィルム基板、ポリアミドフィルム基板、ポリエーテルスルホンフィルム基板、エポキシ樹脂をガラスクロスに含浸させたリジッド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂をガラスクロスに含浸させたリジッド基板等を用いることができる。無機基板としては、シリコン基板、ガラス基板、アルミナ基板、窒化アルミ基板等を用いることができる。
【0062】
配線基板の配線材料は、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物等の無機配線材料、金メッキ銅、クロム−銅、アルミニウム、金バンプ等の金属配線材料、アルミニウム、クロム等の金属材料でインジウム錫酸化物等の無機配線材料を覆った複合配線材料等を用いることができる。
【0063】
本発明の異方導電性接着シートを適用する用途、あるいは本発明の微細接続構造体を構成する電子回路部品としては、液晶ディスプレイ機器、プラズマディスプレイ機器、エレクトロルミネッセンスディスプレイ機器等の表示機器の配線板接続用途および、それら機器のLSI等の電子部品実装用途、その他の機器の配線基板接続部分、LSI等の電子部品実装用途に使用することができる。上記表示機器の中でも、信頼性を必要とされるプラズマディスプレイ機器、エレクトロルミネッセンスディスプレイ機器に用いるのが好ましい。
次に、実施例および比較例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0064】
[実施例1]
フェノキシ樹脂(ガラス転移温度98℃、数平均分子量14000)34g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、25℃粘度、14000mPa・S)29g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.4gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とする。
マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径5μm、活性温度125℃)37gを前記固形分50%溶液に配合分散させた。その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ベースフィルム)上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚18μmのフィルム状の接着シートを得た。
【0065】
厚さ90μmの無延伸ポリプロピレンフィルム上に、粘着層としてニトリルゴムラテックス−メチルメタアクリレートのグラフト共重合体接着剤を4μmの厚みに塗布したものに平均粒径3.0μmの金めっきプラスチック粒子(導電性粒子)をほぼ隙間無く単層塗布した。すなわち、該導電性粒子を該フィルム幅より大きい容器内に数層以上の厚みになるよう敷き詰めたものを用意し、該導電性粒子に対して粘着剤の塗布面を下向きにして押し付けて付着させ、その後過剰な粒子を軟質ゴムからなるスクレバーで掻き落とした。
この操作を2回繰り返すことにより、隙間無く単層塗布した導電性粒子付着フィルムを得た。
【0066】
このフィルムを2軸延伸装置(東洋精機製X6H−S、パンタグラフ方式のコーナーストレッチ型の2軸延伸装置)を用いて縦横にそれぞれ10個のチャックを用いて固定し115℃、120秒間予熱し、その後10%/秒の速度で100%延伸して固定した。固定後、イオン捕捉剤粒子として平均粒径1μmの含水酸化ビスマス(陰イオン交換型、総交換容量3.9meq/g、塩素イオン換算)を1.5g/mの割合で散布した。その後、この延伸フィルムに前記接着シートをラミネートした後、剥離し、異方導電性接着シートを得た。
【0067】
得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、焦点方向の変位を測定できるレーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK9500、形状測定分解能0.01μm)を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子の99%が異方導電性接着シート表面より5μmの範囲内に存在することがわかった。また、光学顕微鏡観察の結果、導電性粒子100個のうち98%が単独粒子であった。また、平均粒子間隔は4.28μmであり、これは、平均粒径の1.43倍であった。イオン捕捉剤粒子個数は、導電性粒子の4.1倍であり、98%が異方導電性接着シート表面より5μmの範囲内に存在していた。
【0068】
[実施例2]
フェノキシ樹脂(ガラス転移温度98℃、数平均分子量14000)37g、ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量136、半固形)37g、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン0.06gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とする。マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径7μm、活性温度125℃)26gを前記固形分50%溶液に配合分散させた。その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚17μmのフィルム状の接着シートを得た。
【0069】
厚さ75μmの無延伸ポリエチレンフィルム上に実施例1と同じニトリルゴムラテックス−メチルメタアクリレートのグラフト共重合体接着剤を3μm塗布したものに平均粒径3.8μmの金めっきプラスチック粒子を実施例1と同様の方法によりほぼ隙間無く単層塗布した導電性粒子付着フィルムを得た。
このフィルムを延伸温度を80℃にする以外は実施例1と同様の方法により2軸延伸装置を用いて縦横にそれぞれ120%延伸して固定した。固定後、イオン捕捉剤粒子として平均粒径2μmのリン酸ジルコニウム(陽イオン交換型、総交換容量6.6meq/g、ナトリウムイオン換算)を2.6g/mの割合で散布した。その後、この延伸フィルムに前記接着シートをラミネートした後、剥離し、異方導電性接着シートを得た。
【0070】
得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、焦点方向の変位を測定できるレーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK9500、形状測定分解能0.01μm)を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子の99%が異方導電性接着シート表面から7μmの範囲内により存在することがわかった。また、光学顕微鏡観察の結果、導電性粒子100個のうち97%が単独粒子であった。また、平均粒子間隔は6.43μmであり、これは、平均粒径の1.7倍であった。イオン捕捉剤粒子個数は、導電性粒子の2.4倍であり、98%が異方導電性接着シート表面より7μmの範囲内に存在していた。
【0071】
[実施例3]
フェノキシ樹脂(ガラス転移温度45℃、数平均分子量12000)10g、フェノキシ樹脂(ガラス転移温度98℃、数平均分子量14000)31g、ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量136、半固形)28g、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン0.1gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とする。マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径7μm、活性温度125℃)31g、前記固形分50%溶液に配合分散させた。その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚15μmのフィルム状の接着シートを得た。
【0072】
厚さ75μmの無延伸ポリプロピレンフィルム上にエチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤を3μm塗布したものに平均粒径3.2μmの金めっき銅粒子を実施例1と同様の方法によりほぼ隙間無く単層塗布した導電性粒子付着フィルムを得た。
このフィルムを実施例1と同様の方法により2軸延伸装置を用いて縦横にそれぞれ150%延伸して固定した。固定後、イオン捕捉剤粒子として平均粒径1μmの含水酸化ビスマス(陰イオン交換型、総交換容量3.9meq/g、塩素イオン換算)を2.7g/mの割合で散布した。その後、この延伸フィルムに前記接着シートをラミネートした後、剥離し、異方導電性接着シートを得た。
【0073】
得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、焦点方向の変位を測定できるレーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK9500、形状測定分解能0.01μm)を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子の98%が異方導電性接着シート表面より6μmの範囲内に存在することがわかった。また、光学顕微鏡観察の結果、導電性粒子100個のうち96%が単独粒子であった。また、平均粒子間隔は6.72μmであり、これは、平均粒径の2.11倍であった。イオン捕捉剤粒子個数は、導電性粒子の6倍であり、99%が異方導電性接着シート表面より6μmの範囲内に存在していた。
【0074】
[比較例1]
フェノキシ樹脂(ガラス転移温度98℃、数平均分子量14000)37g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、25℃粘度、14000mPa・S)26g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とする。
マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径5μm、活性温度125℃)37g、平均粒径3.8μmの金めっきプラスチック粒子2.0gを前記固形分50%溶液に配合分散させた。
その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚20μmのフィルム状の異方導電性接着シートを得た。
得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、レーザー式の変位計を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子は異方導電性接着シートの膜厚方向においてランダムに存在することがわかった。また、測定した導電性粒子100個のうち78%が単独粒子であった。また、表面に露出している粒子は1%であった。
【0075】
[比較例2]
フェノキシ樹脂(ガラス転移温度45℃、数平均分子量12000)36g、ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量136、半固形)38g、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン0.06gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とする。マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径5μm、活性温度125℃)26g、平均粒径3.2μmの金めっき銅粒子6.0g、イオン捕捉剤粒子として平均粒径2μmのリン酸ジルコニウム(陽イオン交換型、総交換容量6.6meq/g、ナトリウムイオン換算)15gを前記固形分50%溶液に配合分散させた。その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚20μmのフィルム状の異方導電性接着シートを得た。
得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、レーザー式の変位計を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子は異方導電性接着シートの膜厚方向においてランダムに存在することがわかった。また、測定した導電性粒子100個のうち57%が単独粒子であった。
次に、上記実施例及び比較例で得た異方導電性接着シートの特性を評価する方法について述べる。
【0076】
(接続抵抗値測定方法)
縦横が1.6mm×15.1mmのシリコン片(厚み0.5mm)全面に酸化膜を形成後、外辺部から40μm内側に横74.5μm、縦120μmのアルミ薄膜(1000Å)をそれぞれが0.1μm間隔になるように長辺側に各々175個、短辺側に各々16個形成する。それらアルミ薄膜上に15μm間隔になるように横25μm、縦100μmの金バンプ(厚み15μm)をそれぞれ2個ずつ形成するために、それぞれの金バンプ配置個所の外周部から7.5μm内側に横10μm、縦85μmの開口部を残す以外の部分にポリイミドの保護膜を常法により前記開口部以外の全面に形成する。その後、前記金バンプを形成し、試験チップとする。
厚み0.7mmの無アルカリガラス上に前記アルミ薄膜上の金バンプが隣接するアルミ薄膜上の金バンプと対になる位置関係で接続されるようにインジウム亜鉛酸化物膜(1500Å)の接続パッド(横66μm、縦120μm)を形成する。20個の金バンプが接続される毎に前記接続パッドにインジウム亜鉛酸化物薄膜の引き出し配線を形成し、引出し配線上はアルミニウム−チタン薄膜(チタン1%、3000Å)を形成し、接続評価基板とする。前記接続評価基板上に、前記接続パッドがすべて覆われるように、幅2mm、長さ17mmの異方導電性接着シートの該導電性粒子の存在する側を仮張りし、2.5mm幅の圧着ヘッドを用いて、80℃、0.3MPa、3秒間加圧した後、ポリエチレンテレフタレートのベースフィルムを剥離する。そこへ、前記接続パッドと金バンプの位置が合うように試験チップを載せ、210℃、5秒間2.0MPa加圧圧着する。圧着後、前記引出し配線間(金バンプ20個のデイジーチェイン)の抵抗値を四端子法の抵抗計で抵抗測定し、接続抵抗値とする。
【0077】
(絶縁抵抗試験方法)
厚み0.7mmの無アルカリガラス上に前記アルミ薄膜上の2個の金バンプがそれぞれ接続されるような位置関係にインジウム亜鉛酸化物膜(1500Å)の接続パッド(横65μm、縦120μm)を形成する。前記接続パッドを1個おきに5個接続できるようにインジウム亜鉛酸化物薄膜の接続配線を形成し、さらにそれらと対になり、櫛型パターンを形成するように1個おきに5個接続できるようにインジウム亜鉛酸化物薄膜の接続配線を形成する。それぞれの接続配線にインジウム亜鉛酸化物薄膜の引出し配線を形成し、引き出し配線上にアルミニウム−チタン薄膜(チタン1%、3000Å)を形成して、絶縁性評価基板とする。前記絶縁性評価基板上に、前記接続パッドがすべて覆われるように、幅2mm、長さ17mmの異方導電性接着シートを仮張りし、2.5mm幅の圧着ヘッドを用いて、80℃、0.3MPa、3秒間加圧した後、ポリエチレンテレフタレートのベースフィルムを剥離する。そこへ、前記接続パッドと金バンプの位置が合うように試験チップを載せ、200℃、10秒間1.2MPa加圧圧着し、絶縁抵抗試験基板とする。
この絶縁抵抗試験基板を85℃、85%相対湿度中に保持しながら、定電圧定電流電源を用いて、対になる引き出し配線間に35Vの直流電圧を印加する。この配線間の絶縁抵抗を5分間毎に測定し、絶縁抵抗値が10MΩ以下になるまでの時間を測定し、その値を絶縁低下時間とする。この絶縁低下時間が240時間未満の場合を×、240時間以上の場合を○とする。
【0078】
以上の評価方法によって実施例1〜3及び比較例1、2で得た試料を評価した結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明の異方導電性接着シートは、非常に優れた低接続抵抗性と絶縁信頼性とを示す。
【0079】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の異方導電性接着シートは、低接続抵抗性、高絶縁信頼性を示し、微細回路接続が求められるベアチップ接続用材料および、高精細なディスプレイ装置等の接続材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の異方導電性接着シートの断面の構造を示す概略図である。
【符号の説明】
【0082】
1 硬化剤と硬化性の絶縁性樹脂
2 イオン捕捉剤粒子
3 貴金属被覆
4 樹脂粒子
5 導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも硬化剤、硬化性の絶縁性樹脂、導電性粒子及びイオン捕捉剤粒子からなる異方導電性接着シートであって、異方導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って導電性粒子の平均粒径の2.0倍以内の領域中に導電性粒子個数の90%以上、イオン捕捉剤粒子個数の90%以上が存在し、かつ、導電性粒子の90%以上が他の導電性粒子と接触せずに存在しており、近接する導電性粒子同士の平均粒子間隔が導電性粒子の平均粒径の0.5倍以上5倍以下であり、かつイオン捕捉剤粒子の平均粒径が導電性粒子の平均粒径より小さいことを特徴とする異方導電性接着シート。
【請求項2】
導電性粒子の平均粒径が1〜8μmであり、近接する導電性粒子同士の平均粒子間隔が20μm以下であり、かつ、異方導電性接着シートの厚みが該平均粒子間隔の1.5倍以上40μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の異方導電性接着シート。
【請求項3】
導電性粒子が、貴金属被覆された樹脂粒子、貴金属被覆された金属粒子、金属粒子、貴金属被覆された合金粒子、及び合金粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の導電性粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の異方導電性接着シート。
【請求項4】
イオン捕捉剤粒子の平均粒径が導電性粒子の平均粒径の0.05倍以上0.9倍以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方導電性接着シート。
【請求項5】
イオン捕捉剤粒子個数が導電性粒子個数の0.5倍から20倍の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性接着シート。
【請求項6】
イオン捕捉剤粒子が、融点300℃以上の酸化物系のイオン捕捉剤粒子からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の異方導電性接着シート。
【請求項7】
2軸延伸可能なフィルム上に粘着層を設けて積層体を形成し、該積層体の上に平均粒径1〜8μmの導電性粒子を付着させて導電性粒子付着フィルムを作製し、該導電性粒子付着フィルムを該導電性粒子同士の平均粒子間隔が該導電性粒子の平均粒径の0.5倍以上5倍以下になるように2軸延伸して保持し、2軸延伸して保持した導電性粒子付着フィルムの上にイオン捕捉剤粒子を散布して該導電性粒子間にイオン捕捉剤粒子を付着させた後、少なくとも硬化剤、及び硬化性の絶縁性樹脂を含んでなる接着シートに該導電性粒子及び該イオン捕捉剤粒子を転写して異方導電性接着シートを作製する工程を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の異方導電性接着シートの製造方法。
【請求項8】
2軸延伸可能なフィルムが長尺のフィルムであり、接着シートが長尺の接着シートである請求項7に記載の異方導電性接着シートの製造方法。
【請求項9】
微細接続端子を有する電子回路部品と回路基板とを請求項1〜6のいずれか1項に記載の異方導電性接着シートで電気的に接続する接続方法において、微細接続端子の高さが近接する導電性粒子の平均粒子間隔の3〜15倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子の間隔が該平均粒子間隔の1〜10倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子のピッチが該平均粒子間隔の3〜30倍かつ80μm以下であることを特徴とする接続方法。
【請求項10】
微細接続端子を有する電子回路部品と回路基板とを請求項1〜6のいずれか1項に記載の異方導電性接着シートで電気的に接続する接続方法において、電気化学的にイオン化しやすい材質からなる端子側に、該異方導電性接着シートの該導電性粒子及びイオン捕捉剤粒子を多く含む面を配して接続することを特徴とする接続方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法により接続された電子回路部品と回路基板を含むことを特徴とする微細接続構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−16088(P2007−16088A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196983(P2005−196983)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】