説明

異物排除装置

【課題】製造ラインで原材料を検査して異物を排除する際に、異物と共に排除される原材料の量を少なくして無駄を省く。
【解決手段】異物排除装置1は、ベルトコンベア2と、搬送される原材料Mに含まれた異物Fを検出するエックス線源4及びセンサ5を有し、位置情報検出手段6により原材料における異物の2次元の位置情報を取得する。さらにくり抜き手段9が該位置情報を受けて異物の2次元の位置に位置決めされ、下降して原材料に切り込むことにより、異物Fと異物Fの周囲にある原材料Mの一部のみを切断して除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の製造ラインに設けられ、該製造ラインを搬送される原材料を検査して異物を排除する異物排除装置に係り、特に確実に異物を排除するとともに、異物と共に排除される原材料の量を可及的に少なくして製造工程における原材料の無駄を少なくした異物排除装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、判定時の分割領域サイズを最適化して不良品を排除しつつ無駄な選別排出を低減させる物品検査装置が開示されている。この装置では、検出領域5内を通過する物品Wの品質状態を示す検出信号を出力する検出手段14と、検出信号に基づいて物品Wの品質状態を判定して選別制御信号を出力する判定手段22を備えている。この装置によれば、物品ごとに決定される可変領域幅の複数の分割判定領域のそれぞれにおいて通過物品の品質状態が判定される一方、予め設定される選別分解能に対応する固定領域幅の複数の分割選別領域の各領域について、これに対応する少なくとも1つの分割判定領域での判定結果に応じて選別制御信号が出力され、不良と判定された分割選別領域の物品がライン外に排除される。このように、この発明によれば、分割判定領域の幅が物品ごとに可変なので、判定時の分割領域サイズが不足して不良品が搬送路上に残ってしまう選別漏れが生じたり、判定時の分割領域サイズが大き過ぎるために最小サイズの物品を多くの良品と共に搬送路外に選別排出せざるを得なかったりすることなく選別作業ができるものとされている。
【0003】
下記特許文献2には、コンベア搬送路21で搬送される被検査物をX線で透過検査して異物を検出するX線異物検出装置の上流側に配置される被検査物のならし装置50が開示されている。この装置では、圧送供給される被検査物を取り込んで吐出ノズル51から吐出することにより、被検査物を搬送路上に一定の層厚で送り出しており、また搬送方向上流側には刃物等の切断手段40が設けられており、この切断手段40が、搬送路21上の被検査物を幅方向に平行に切断し、搬送方向で前後に隣接する複数の被検査物から切断分離し、異物近傍の被検査物を他の部分から切り離してラインから排除できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−244986号公報
【特許文献2】特許第3910609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の発明によれば、不良と判定された分割選別領域内にある物品はすべてライン外に排除されてしまうので、当該領域にある異物を含んだ物品だけでなく、異物を含まない物品もすべて無駄になってしまう。また、ラインで搬送されているのが後工程の加工によって最終製品となる原材料であれば、異物を含んだ物品であっても、排除したいのは異物だけであり、異物以外の部分は原材料として形状等に関わらず有用であるから、異物を含んだ物品の全体を廃棄してしまうのは無駄である。すなわち、この装置では、特に搬送中の原材料における異物の除去手段としては排除される原材料の量が多く、過大な無駄が避けられないという問題があった。
【0006】
また、上述した特許文献2に記載の発明によれば、コンベア搬送路で連続的に搬送されている被検査物中の異物が入っている部分のみをライン外に除去しようとしているが、所定の幅で連続的に流れてくる被検査物を、搬送方向に直交する刃物状の切断手段で、異物を含む搬送方向の長さの前後において幅方向に切断し、異物を含む当該部分の全体を捨てているので、捨てられる被検査物の量が多く、やはり過大な無駄が避けられないという問題があった。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、製品の製造ラインに設けられ、該製造ラインを搬送される原材料を検査して異物を排除する異物排除装置において、確実に異物を排除するとともに、異物と共に排除される原材料の量を可及的に少なくして製造ラインにおける原材料の無駄を少なくすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cは、
製品の製造ラインに設けられ、該製造ラインに沿って搬送される原材料Mを検査して異物Fを排除する異物排除装置において、
前記原材料Mを搬送する搬送手段2と、
前記搬送手段2で搬送されている前記原材料Mに含まれた前記異物Fを検出し、前記原材料Mにおける前記異物Fの2次元的な位置情報を取得する位置情報取得手段4,5,6と、
前記位置情報取得手段4,5,6からの位置情報を受けて作動し、前記原材料M内の前記異物Fと該異物Fの周囲にある前記原材料Mの一部を除去する排除手段7,8,9,10と、
を具備することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cは、請求項1記載の異物排除装置1,1a,1b,1cにおいて、
前記位置情報取得手段4,5,6は、前記搬送手段2の搬送方向と平行な水平面と交差する方向から前記原材料Mを検査して前記異物Fを検出することにより、前記水平面内で見た前記原材料Mにおける前記異物Fの2次元的な位置情報を取得するように構成されており、
前記排除手段7,8,9,10は、前記水平面内で見た前記原材料Mにおける前記異物Fの2次元的な位置に対応する位置に移動するとともに、前記水平面と交差する方向に移動することによって前記異物Fに到達し、前記異物Fと前記原材料Mの一部の除去を行なうように構成されたことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cは、請求項2記載の異物排除装置1,1a,1b,1cにおいて、
前記排除手段7,8,9,10は、前記搬送手段2による前記原材料Mの搬送に同期して、前記水平面内において前記搬送手段2の搬送方向と直交する方向に移動することにより前記異物Fの2次元的な位置に対応する位置に移動することを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cは、請求項3記載の異物排除装置1,1a,1b,1cにおいて、
前記排除手段7,8,9,10は、前記異物Fと該異物Fの周囲にある前記原材料Mの一部をくり抜いて排除する管状のくり抜き手段9を有していることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cは、請求項4記載の異物排除装置1,1a,1b,1cにおいて、
異なる異物Fの大きさに対応する異なる口径を備えた複数種類の前記くり抜き手段9が用意されており、
複数種類の前記くり抜き手段9は、検出された前記異物Fの大きさに応じて選択的に作動することを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cは、請求項3記載の異物排除装置1,1a,1b,1cにおいて、
前記排除手段7,8,10は、前記異物Fと該異物Fの周囲にある前記原材料Mの一部を周囲から分離して吸引する管状の吸引手段を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cによれば、搬送手段2で搬送されている製品の原材料Mを位置情報取得手段4,5,6が検査して原材料M中の異物Fの2次元的な位置情報を取得し、この位置情報に基づいて原材料M中の異物Fに2次元で対応する位置に排除手段9が移動し、原材料M内の前記異物Fと該異物Fの周囲にある原材料Mの一部のみを選択的に除去することができるので、異物Fの除去が確実に行なえるだけでなく、異物Fと共に排除される原材料Mの量が少なくなり、無駄が省ける。
【0015】
請求項2に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cによれば、請求項1記載の異物排除装置1,1a,1b,1cによる効果を次のような態様で達成することができる。すなわち、位置情報取得手段4,5,6は、搬送手段2の搬送方向と平行な水平面と交差する方向から原材料Mを検査して異物Fを検出することにより、水平面内で見た原材料Mにおける異物Fの2次元の位置情報を取得する。そして排除手段9は、位置情報取得手段6からの位置情報を受けて、水平面内で見た原材料Mにおける異物Fの2次元の位置に対応する位置に移動し、さらに水平面と交差する方向に移動して原材料M内の異物Fに到達し、異物Fとその周囲にある最小限の原材料Mの一部を除去することができる。
【0016】
請求項3に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cによれば、請求項2記載の異物排除装置1,1a,1b,1cによる効果を次のような態様で達成することができる。すなわち、排除手段8,9は、水平面内で搬送手段2の搬送方向と直交する方向のみについて移動できるようになっているが、その動作は搬送手段2による原材料Mの搬送と同期しているため、排除手段9は、位置情報取得手段6が取得した異物Fの2次元の位置に対応する位置に移動することができる。
【0017】
請求項4に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cによれば、請求項3記載の異物排除装置1,1a,1b,1cによる効果を次のような態様で達成することができる。すなわち、排除手段は管状のくり抜き手段9を有しており、異物Fと該異物Fの周囲にある原材料Mの一部をくり抜いて排除することができる。くり抜いた異物Fと原材料Mの一部は、そのまま下方に落下させて排除してもよいし、管状であるくり抜き手段9の空洞部から上方に吸い上げて排除してもよい。
【0018】
請求項5に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cによれば、請求項4記載の異物排除装置1,1a,1b,1cによる効果を次のような態様で達成することができる。すなわち、くり抜き手段9として、例えば予想される異なる異物Fの大きさに対応できるように、異なる口径を備えた複数種類のくり抜き手段9を用意しておき、検出された異物Fの大きさに応じて口径を選択して作動させるようにすれば、異物Fを確実に排除できるとともに、異物Fと共に排除される原材料Mの量を可及的に減少させることができる。
【0019】
請求項6に記載された異物排除装置1,1a,1b,1cによれば、請求項3記載の異物排除装置1,1a,1b,1cによる効果を次のような態様で達成することができる。すなわち、排除手段7,8,10は管状の吸引手段を有しており、異物Fと該異物Fの周囲にある原材料Mの一部を周囲から分離して吸引することにより排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る異物除去装置の模式的斜視図である。
【図2】第2実施形態に係る異物除去装置の模式的斜視図である。
【図3】第2実施形態に係る異物除去装置の模式的正面図である。
【図4】第2実施形態に係る異物除去装置の模式的平面図である。
【図5】第3実施形態に係る異物除去装置の模式的斜視図である。
【図6】第3実施形態に係る異物除去装置の模式的正面図である。
【図7】第3実施形態に係る異物除去装置の模式的平面図である。
【図8】第4実施形態に係る異物除去装置の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る異物除去装置の第1乃至第4の各実施形態についてそれぞれ説明する。
1.第1実施形態(図1)
第1実施形態を含む本発明の実施形態は、製品の製造ラインに設けられる装置に係り、特に該製造ラインに沿って搬送される原材料を検査し、その中から異物を発見して排除する異物排除装置に関するものである。ここで、原材料とは、製造ラインの後工程で何らかの加工を加えて製品とする前の段階の材料等を広く示すものであり、その性状は固体状又は粘稠性等の搬送可能な性状であり、その形態は定形又は不定形のブロック状又は連続体状等のあらゆる形態をとりうる。また具体的な材料名は問わないが、例えば製品として食品を例示すれば、その原材料としては例えばミンチ状やブロック状の肉類や、加水した穀粉等を捏ねて製造した生地類その他の上記特性を有するような食品原材料一切が含まれる。なお、以下に説明する第1実施形態を含む本発明の実施形態では、ある程度の固さを有する食材をブロック状に整形した食品用の原材料を例にとって説明する。
【0022】
この異物排除装置1は、まず原材料Mを搬送するための搬送手段として、ベルトコンベア2を備えている。ベルトコンベア2は、少なくとも一対のローラに無端ベルト3を掛け回したものであり、無端ベルト3の上に搬入された原材料Mを所定の速度で搬送する。本実施形態では、ベルトコンベア2は工場内に水平に設置されているため、その搬送方向は実質的に水平であり、無端ベルト3の表面である搬送平面は搬送方向に平行な水平面となっている。
【0023】
異物排除装置1は、ベルトコンベア2によって搬送される原材料Mを検査して、これに含まれている異物Fを検出し、原材料Mにおける異物の2次元の位置情報を取得する位置情報取得手段を有している。ここで原材料Mにおける異物Fの2次元の位置情報とは、原材料Mをある平面内で見た場合、その面内における異物Fの2次元の位置を示す。この例では、ベルトコンベア2は原材料Mを水平面に沿って搬送しているので、水平面内で原材料Mを見た場合の原材料M中における異物Fの位置を意味する。すなわち、原材料Mの平面図における異物Fの位置を示しており、原材料M中での高さ方向の位置情報は含まない意である。
【0024】
位置情報取得手段は、ベルトコンベア2の上方に、異物検出手段としてエックス線源4を備えている。エックス線源4はベルトコンベア2の上方に配置されており、図示のように、ベルトコンベア2の搬送方向と平行な水平面と略直交する略鉛直な面内において三角形状に拡がり、無端ベルト3に対して搬送方向と略直交するように交差するエックス線の光束を照射することができる。また、位置情報取得手段は、エックス線の光束が照射される上側の無端ベルト3の直下位置に、異物検出手段としてエックス線ラインセンサ5を備えている。エックス線ラインセンサ5は、複数のX線検出素子から構成されていて、真上を通過していく無端ベルト3及び原材料Mを透過するエックス線を検知し、原材料Mの内部にある異物Fをベルトコンベア2の幅方向の位置に対応させて検出することができる。
【0025】
位置情報取得手段は、エックス線ラインセンサ5に接続された異物Fの位置情報検出手段6を備えている。この位置情報検出手段6は、原材料M中に異物Fを検出した場合に、エックス線ラインセンサ5から来る信号とベルトコンベア2の駆動情報を共通のタイミングを基にして処理することにより、当該異物Fが水平面内で見た原材料M中のどこにあるかを決定することができる。すなわち位置情報検出手段6によれば、異物Fが当該原材料Mの平面図中のいずれの位置にあるかを示す異物Fの2次元の位置情報を算出して取得することができる。
【0026】
ベルトコンベア2の搬送方向の下流側には、ベルトコンベア2の下流側の端部に近接して異物Fの排除手段が配置されている。排除手段は、位置情報検出手段6から送られる位置情報を受けて作動し、原材料M内の異物Fと該異物Fの周囲にある原材料Mの一部を除去する装置であって、ベルトコンベア2から原材料Mが移り載る載置台7と、載置台7の左右及び上方に配置された門型のフレーム8を有する移動手段と、この移動手段に設けられて移動するくり抜き手段9と、移動手段を制御して行なうくり抜き手段9の位置制御手段10を備えている。
【0027】
くり抜き手段9は、円筒形の管状の部材であって、開放された下端部の周縁が刃物となっており、異物Fの真上に位置決めして軸方向に移動し、下方の原材料Mに切り込めば、異物Fと該異物Fの周囲にある前記原材料Mの一部をくり抜くことができる。くり抜いた異物F等は、そのまま図示しない吸引除去手段で管内から上方に吸い上げて排除してもよいし、載置台7の原材料Mの真下に設けた図示しない溝乃至孔から下方に落下させて排除してもよい。
【0028】
このようなくり抜き手段9の機能から明らかなように、くり抜き手段9を移動させるフレーム8は、まずくり抜き手段9をフレーム8の上部ビームに沿ってベルトコンベア2の幅方向(矢印Aで表示、水平面内において搬送方向と直交する方向)に移動させて同方向について位置決めすることができるとともに、フレーム8全体をベルトコンベア2の搬送方向(矢印Bで表示)に沿って移動させてくり抜き手段9を同方向について位置決めすることができ、両方向の位置決め機能により、載置台7上の原材料Mに対して、くり抜き手段9を平面内の所望の位置に位置決めすることができる。また、フレーム8は、くり抜き手段9を上下方向に移動させて原材料Mに切り込ませることができる。
【0029】
くり抜き手段9の位置制御手段10は、位置情報検出手段6から送られた異物Fの2次元の位置情報によってフレーム8を制御し、くり抜き手段9をベルトコンベア2の幅方向(A)及び搬送方向(B)に必要量だけ移動させることにより、載置台7上に搬入されて所定位置に載置された原材料Mに対し、平面内において異物Fが存在する位置の真上にくり抜き手段9を設定することができ、またくり抜き手段9を原材料Mの厚さに対応した必要量だけ下降させて原材料M中に切り込ませることにより、異物Fを含む最小限の原材料Mを円柱形に切り取ることができる。
【0030】
以上の構成における作用について説明する。
ブロック状の原材料Mをベルトコンベア2に搬入して搬送する。作動しているエックス線源4の真下を原材料Mが通過すると、原材料M及び無端ベルト3を通過したエックス線がエックス線ラインセンサ5に検出される。エックス線ラインセンサ5から来る信号とベルトコンベア2の駆動情報を位置情報検出手段6が共通のタイミング信号を基にして処理し、異物Fが検出された場合には、異物Fが当該原材料Mの平面図中のいずれの位置にあるかを示す異物Fの2次元の位置情報を計算して取得する。この位置情報により、当該異物Fが水平面内で見た原材料M中のどこにあるかが特定される。
【0031】
エックス線源4によるエックス線の照射範囲を通過した原材料Mは、ベルトコンベア2から送り出されて載置台7上の所定位置に送り込まれる。位置情報検出手段6からの位置情報はくり抜き手段9の位置制御手段10に送られ、位置制御手段10はフレーム8を制御してくり抜き手段9を適宜移動させることにより、くり抜き手段9の2次元の位置を、載置台7上の所定位置に設置された原材料M内の異物Fの2次元の位置に合せて設定する。
【0032】
本実施形態では、ブロック状の原材料Mを対象としているため、異物Fの2次元の位置情報は、例えば次のように表すことができる。すなわち、搬送方向に平行な第1座標軸と、これと水平面内で直交する第2座標軸を想定した場合、原材料M内における異物Fの位置は、ブロック状の原材料Mの先端部から第1座標軸に沿って測定した所定寸法の第1特定位置と、当該第1特定位置において第2座標軸に沿って測定した所定寸法の第2特定位置とからなる2次元の座標(位置情報)によって表すことができる。そして原材料Mの先端部がエックス線ラインセンサ5を通過した時刻とベルトコンベア2の搬送速度は既知であるから、後段の排除手段の所定位置に原材料M乃至異物Fを位置決めすることができる。原材料Mの形態がブロック状でなく、連続した態様であっても同様に原材料M乃至異物Fを位置決めすることができる。
【0033】
くり抜き手段9を異物Fに対して2次元で位置決めしたところで、位置制御手段10はフレーム8を制御し、くり抜き手段9を垂直下方に移動させて原材料Mに切り込ませる。くり抜き手段9は異物Fとそのごく周辺のみの原材料Mを円筒形に切断して周囲から分離する。分離された異物F入りの原材料Mは前述したように落下乃至吸い上げ等の適宜の手段で外部に排除される。
【0034】
なお、本実施形態では、異物Fが除去された原材料Mは、排除手段の載置台7の上から作業者によって運び出され、後段に配置された図示しない製造ラインに継続的に投入され、必要な加工が施されて製品に仕あげられていく。また、異物Fが発見されなかった原材料Mは、排除手段の載置台7の上に搬入されてから作業者によって運び出され、前記製造ラインに継続的に投入され、必要な加工が施されて製品に仕あげられていく。
【0035】
このように、本実施形態によれば、製品の原材料Mを搬送しながら検査して原材料M中の異物Fの2次元の位置情報を確定し、この位置情報に基づいて、原材料M中の異物Fとその周囲にある最小限の原材料Mのみをくり抜き手段9で選択的に除去することができるので、異物Fの除去が確実に行なえるとともに、異物Fと一緒に排除される原材料Mの量が少なくなり、無駄が省けるという効果がある。
【0036】
2.第2実施形態(図2〜図4)
第2実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる部分を中心として説明し、第1実施形態と共通の部分については第1実施形態での説明を援用し、原則として本項での再度の説明を省略するものとする。
【0037】
この異物排除装置1aは、搬送手段としてのベルトコンベア2と、異物Fの位置情報取得手段であるエックス線源4と、エックス線ラインセンサ5と、異物Fの位置情報検出手段6を有している。さらに、ベルトコンベア2との下流には、仕分け手段12が配置されており、異物混入品と良品を仕分けして、それぞれ異物Fを除去するラインと良品のラインとに分配して搬送することができる。
【0038】
この仕分け手段12は、多数の回動自在の搬送用丸棒が水平面内で互いに平行に配置されており、これら搬送用丸棒を所定方向に回動させることによって被搬送物を搬送する装置であるが、図示のように各搬送用丸棒を軸方向に移動させ、隣接する各搬送用丸棒の軸方向の位置が少しずつ変わるような配置とすることにより、被搬送物を搬送用丸棒と直交する本来の直進方向だけでなく、直進方向に対して任意の角度で傾斜した他の方向にも搬送できるようにしたものである。この仕分け手段12としては、本願出願人が特開昭54−131258号公報や特開昭61−7130号公報にて開示した物品分類装置を応用することもできるが、要するに検査工程から出た原材料Mを2方向に振り分けて搬送する機能を備えた手段であれば利用することができる。
【0039】
仕分け手段12の後段には、前述したように良品の搬送ラインと、異物混入品の処理・搬送ラインとが互いに平行に配置され、それぞれ仕分け手段12から原材料Mを受け入れるように構成されている。
【0040】
良品の搬送ラインは、前記ベルトコンベア2と同様の良品ベルトコンベア13からなる。良品ベルトコンベア13は、仕分け手段12から受け入れた良品の原材料Mを受け入れて搬送し、さらに後段に配置された搬送品集合手段である幅広の集合ベルトコンベア14に送り込む。集合ベルトコンベア14は、さらに後段に設けられた加工工程等に原材料Mを送り込む。
【0041】
異物混入品の処理・搬送ラインには、異物Fの排除手段が設けられている。この排除手段は、第1実施形態と概ね同様の機能を有しており、仕分け手段12から原材料Mが移り載る前段コンベア15と、除去済みの原材料Mを搬出する後段コンベア16と、前段コンベア15と後段コンベア16の間に配置された載置台7と、載置台7の左右及び上方に配置された門型のフレーム8からなる移動手段と、このフレーム8に設けられて移動するくり抜き手段9と、移動手段を制御して行なうくり抜き手段9の位置制御手段10を備えている。
【0042】
特に図3に示すように、本実施形態では、前段コンベア15と後段コンベア16の間隔は、搬送される原材料Mの搬送方向の長さよりも短く、従って前段コンベア15と後段コンベア16の間に配置された載置台7の搬送方向の長さも原材料Mよりも短い。このため原材料Mは前段コンベア15と後段コンベア16を適宜に駆動することにより、載置台7上の任意の位置に位置決めすることができる。従って、移動手段のフレーム8に取り付けられたくり抜き手段9の真下の位置に、原材料Mの異物Fの位置を合せるように原材料Mを搬送・位置決めすることができる。
【0043】
従って、本実施形態では、移動手段であるフレーム8は、搬送方向に直交する無端ベルト3の幅方向にのみ、くり抜き手段9を移動させることができればよく、従って第1実施形態のようにフレーム8自体が搬送方向に移動できるようにはなっていない。すなわち、本実施形態のフレーム8は固定されており、フレーム8に取り付けられたくり抜き手段9が搬送方向と直交する方向に移動できるのみである。
なお、その他の機能は前述したように第1実施形態と同様である。
【0044】
以上の構成における作用について説明する。
ブロック状の原材料Mをベルトコンベア2に搬入して搬送する。作動しているエックス線源4の真下を原材料Mが通過すると、原材料M及び無端ベルト3を通過したエックス線がエックス線ラインセンサ5に検出される。エックス線ラインセンサ5から来る信号とベルトコンベア2の駆動情報を位置情報検出手段6が共通のタイミング信号を基にして処理し、異物Fが検出された場合には、異物Fが当該原材料Mの平面図中のいずれの位置にあるかを示す異物Fの2次元の位置情報を計算して取得する。この位置情報により、当該異物Fが水平面内で見た原材料M中のどこにあるかが特定される。
【0045】
異物Fが検出された場合には、位置情報検出手段6からの位置情報をトリガーとして仕分け手段12は搬送方向を排除手段側に切り換える。エックス線源4によるエックス線の照射範囲を通過した原材料Mは、ベルトコンベア2から送り出された後に、仕分け手段12の誘導によって前段コンベア15に送り込まれる。位置情報検出手段6からの位置情報は、図示はしないが位置制御手段10を介して前段及び後段コンベア15,16を制御しており、原材料Mは前段コンベア15と必要に応じて駆動される後段コンベア16の作用によって、異物Fの位置がくり抜き手段9の移動範囲の真下となる載置台7上の所要位置まで搬送されて停止・位置決めされる。
【0046】
さらに、位置情報検出手段6からの位置情報はくり抜き手段9の位置制御手段10に送られており、位置制御手段10はこの位置情報に基づいてフレーム8を制御し、くり抜き手段9を搬送方向に直交する幅方向について適宜移動させる。これによって、くり抜き手段9の2次元の位置は、載置台7上に位置決めされた原材料M内の異物Fの2次元の位置に合せて設定される。
【0047】
くり抜き手段9を異物Fに対して2次元で位置決めしたところで、位置制御手段10はフレーム8を制御し、くり抜き手段9を垂直下方に移動させて原材料Mに切り込ませる。くり抜き手段9は異物Fとそのごく周辺のみの原材料Mを円筒形に切断して周囲から分離する。分離された異物F入りの原材料Mは前述したように落下乃至吸い上げ等の適宜の手段で外部に排除される。
【0048】
その後、後段コンベア16から排出された異物除去済みの原材料Mは、さらに後段に配置された集合ベルトコンベア14に送り込まれ、良品のラインから送り込まれた原材料Mと一緒になる。異物除去済みの原材料Mは異物Fを除去した孔が開いているが、加工して製品とする前の原材料Mであるから問題はなく、良品の原材料Mと共に後段の加工工程等に送り込まれる。
【0049】
異物Fが検出されなかった場合には、位置情報検出手段6からの位置情報をトリガーとして仕分け手段12は搬送方向を良品ライン側へと切り換える。エックス線源4によるエックス線の照射範囲を通過した原材料Mは、ベルトコンベア2から送り出された後に、仕分け手段12の誘導によって良品ベルトコンベア13に送り込まれ、さらに集合ベルトコンベア14に移って異物除去済みの原材料Mと共に後段の加工工程等に送り込まれる。
【0050】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる他、良品の搬送作業を阻害することなく、異物Fの除去作業を進めることができ、全体としての作業能率が高いという効果がある。
【0051】
3.第3実施形態(図5〜図7)
第3実施形態の説明においては、第2実施形態と異なる部分を中心として説明し、第2実施形態と共通の部分については第2実施形態での説明を援用し、原則として本項での再度の説明を省略するものとする。
【0052】
本実施形態の異物排除装置1bが第2実施形態の異物排除装置1aと異なる点は、排除手段における載置台7とくり抜き手段9の構成である。本実施形態では、図6に示すようにくり抜き手段9は、円柱径の上刃9aと、上刃9aの真下に位置する円筒形の下刃9bから構成され、下刃9bは載置台7に幅方向に形成された図示しない溝内に幅方向について移動自在となるように設置されている。駆動時には、上刃9aと下刃9bは同期して幅方向に移動し、原材料Mの異物Fの位置に対応する上下位置に位置決めされ、上刃9aが下降することにより原材料Mを下刃9bとの間で上下から挟んでせん断し、異物Fとその周囲の原材料Mを円柱形に打ち抜いて除去することができる。
本実施形態によれば第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
4.第4実施形態(図8)
第4実施形態の説明においては、第2実施形態と異なる部分を中心として説明し、第2実施形態と共通の部分については第2実施形態での説明を援用し、原則として本項での再度の説明を省略するものとする。なお、図8では、集合ベルトコンベア14の図示は省略してある。
【0054】
本実施形態の異物排除装置1が第2実施形態の装置と異なる点は、搬送方向を自在に切り換えられる仕分け手段12に替えて、搬送方向と直交する方向に自在に移動可能な振り分けベルトコンベア20が設けられている点である。この振り分けベルトコンベア20は、ベルトコンベア2と、後段の排除手段であるくり抜き手段9(異物混入品の処理・搬送ライン)及び良品ベルトコンベア13(良品ライン)との間に配置され、エックス線源4とエックス線ラインセンサ5による検査を受けた原材料Mを受け入れ、異物Fの検出結果に応じて必要なラインの方向に移動して後段に当該原材料Mを振り分ける。
本実施形態によれば第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
5.実施形態の変形例について
なお、以上説明した各実施形態において、くり抜き手段9は1つだけであったが、異物Fの複数種類の大きさに対応できるように、異なる口径を備えた複数種類のくり抜き手段9を予め用意してフレーム8に設けておき、異物Fが検出された場合には、検出された異物Fの大きさよりも大きい口径のくり抜き手段9のうちで、最も小さい口径のくり抜き手段9を選択して使用するようにすれば、異物Fの除去を確実に行なえることはもちろん、異物Fと共に除去されてしまう原材料Mの量をなるべく少なくすることができる。
【0056】
また、以上説明した各実施形態において、排除手段としてはくり抜き手段9を説明したが、その他、異物Fと該異物Fの周囲にある原材料Mの一部を周囲から分離して吸引する管状の吸引手段を排除手段としてもよい。
【0057】
また、以上説明した各実施形態において、位置情報取得手段の異物検出手段としては、エックス線源4とエックス線ラインセンサ5を例示したが、これは一例にすぎず、原材料M中の異物Fを検出することができる手段であればよい。例えば、磁石やコイルから発生させた磁力線を透過線として被検査体である原材料Mに出力し、原材料Mを透過した磁力線の強さをコイルやホール素子等によって検出する透過センサを用いて、金属からなる異物Fの有無を検査する手段も同様に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1,1a,1b,1c…異物排除手段
2…搬送手段としてのベルトコンベア
4…位置情報取得手段を構成する異物検出手段としてのエックス線源
5…位置情報取得手段を構成する異物検出手段としてのエックス線ラインセンサ
6…位置情報取得手段を構成する位置情報検出手段
7…排出手段を構成する載置台
8…排出手段を構成する移動手段としてのフレーム
9…排出手段を構成するくり抜き手段
10…排出手段を構成する位置制御手段
M…原材料M
F…異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の製造ラインに設けられ、該製造ラインに沿って搬送される原材料(M)を検査して異物(F)を排除する異物排除装置(1,1a,1b,1c)において、
前記原材料を搬送する搬送手段(2)と、
前記搬送手段で搬送されている前記原材料に含まれた前記異物を検出し、前記原材料における前記異物の2次元の位置情報を取得する位置情報取得手段(4,5,6)と、
前記位置情報取得手段からの位置情報を受けて作動し、前記原材料内の前記異物と該異物の周囲にある前記原材料の一部を除去する排除手段(7,8,9,10)と、
を具備することを特徴とする異物排除装置(1,1a,1b,1c)。
【請求項2】
前記位置情報取得手段(4,5,6)は、前記搬送手段(2)の搬送方向と平行な水平面と交差する方向から前記原材料(M)を検査して前記異物(F)を検出することにより、前記水平面内で見た前記原材料における前記異物の2次元の位置情報を取得するように構成されており、
前記排除手段(7,8,9,10)は、前記水平面内で見た前記原材料における前記異物の2次元の位置に対応する位置に移動するとともに、前記水平面と交差する方向に移動することによって前記異物に到達し、前記異物と前記原材料の一部の除去を行なうように構成されたことを特徴とする請求項1記載の異物排除装置(1,1a,1b,1c)。
【請求項3】
前記排除手段(7,8,9,10)は、前記搬送手段(2)による前記原材料(M)の搬送に同期して、前記水平面内において前記搬送手段の搬送方向と直交する方向に移動することにより前記異物(F)の2次元の位置に対応する位置に移動することを特徴とする請求項2記載の異物排除装置(1,1a,1b,1c)。
【請求項4】
前記排除手段(7,8,9,10)は、前記異物(F)と該異物の周囲にある前記原材料(M)の一部をくり抜いて排除する管状のくり抜き手段(9)を有していることを特徴とする請求項3記載の異物排除装置(1,1a,1b,1c)。
【請求項5】
異なる異物(F)の大きさに対応する異なる口径を備えた複数種類の前記くり抜き手段(9)が用意されており、
複数種類の前記くり抜き手段は、検出された前記異物の大きさに応じて選択的に作動することを特徴とする請求項4記載の異物排除装置(1,1a,1b,1c)。
【請求項6】
前記排除手段(7,8,10)は、前記異物と該異物の周囲にある前記原材料の一部を周囲から分離して吸引する管状の吸引手段を有していることを特徴とする請求項3記載の異物排除装置(1,1a,1b,1c)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−131125(P2011−131125A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290720(P2009−290720)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】