説明

異物検出装置および繊維機械および異物検出方法

【課題】糸条に混入している異物の検出において、残存させたい異物がある場合に、残存させたい異物を検出しないようにすると、除去したい異物の検出精度を落とすことになる。
【解決手段】綿繊維で形成される紡績糸9にLED37a・37bから交互に光(直射光Da・Db)を照射して、その紡績糸9からの反射光Rb・Raの強度を測定し、その強度情報に基づいて、紡績糸9に混入している異物の有無を検出する異物検出装置32であって、LED37a・37bの光源色を、除去せず残存させたい異物である綿繊維の茎葉のトラッシュの色と、色相環において、同一の系統色もしくは類似の系統色である黄色もしくは黄燈色とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
糸条に混入している異物の有無を検出する異物検出装置、およびそれを用いた繊維機械、および異物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績糸や繊維束等の糸条の製造において、原料となる繊維に異物が混入していて、この異物が、製造工程の途中段階で除去されず、原料の繊維により糸条が形成された段階でも、残存していることがある。異物が残存していると、糸条の品質低下を招くことになるので、糸条に混入している異物の有無を検出して、糸条のうち、異物の混入している部位を切除して除去する必要がある。
綿糸(綿繊維で形成される糸条)の場合、原料としての繊維(綿樹より取り出された原綿)には、異物として、綿の茎葉のトラッシュ(くず)が含まれている。トラッシュは原綿より、梳綿(カーディング)等の工程で除去されるが、一部は残存する。また、変色した繊維なども、異物である。
【0003】
特許文献1に開示されるように、従来、糸条に混入している異物を検出するセンサーが知られている。
このセンサーは、糸条に光源より光を照射して、その反射光の強度を測定し、その強度情報に基づいて、糸条に混入している異物の有無を判定するものである。
ここで、光照射対象の外面色の相違、つまり、原料となる繊維の光反射率と、異物の光反射率とが、異なることを利用している。繊維と異物(変色繊維を含む)とで光反射率が違うため、繊維からの反射光の強度と、異物からの反射光の強度とは、異なるものとなる。
光源としては、コスト的な面で、緑色(特許文献1:赤にピークを有する)、黄緑色、等が利用されている。
また、このセンサーは、糸条の太さの変動によって、反射光の強度の大きさが変動しないように構成されている。具体的には、糸条の背後に、原料とする繊維と同じ反射率の背景(反射部)を設け、糸条および反射部からの反射光全体の強度を測定するものである。このようにすることで、糸条に異物が含まれていない場合は、糸条の太さに関わりなく、同じ強度の反射光が得られるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−292046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
綿糸の場合、後工程で染色処理等を施すと、茎葉のトラッシュが残存していても、一緒に染色されて目立たなくなるため、トラッシュを必ずしも除去する必要がない。逆に、トラッシュを悉く除去しようとすると、原綿からの綿糸の製造速度(紡績速度又は結束紡績速度)を損なって生産効率を落としたり、廃棄原料を増大させることにもなる。
このように、糸条において、原料となる繊維とは異なる異物であっても、除去しないで残存させておきたい異物が存在する場合がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来のセンサーは、原料となる繊維と色の異なる異物を、一律に異物と認識する。もちろん、トラッシュと、変色した繊維繊維とでは、色が異なり、反射光の強度の大きさが異なるため、異物と認識する閾値の大きさを適宜設定することで、トラッシュを異物として認識させないようにすることも可能である。しかし、このような閾値を設定するとなると、閾値の設定が複雑化したり、検出精度の低下を招くことにもなる。
【0007】
つまり、解決しようとする問題点は、糸条に混入している異物の検出において、残存させたい異物がある場合に、残存させたい異物を検出しないようにすると、除去したい異物の検出精度を落とすことになる点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
請求項1に係る異物検出装置は、
白色の繊維で形成される糸条に光源から光を照射して、その糸条からの反射光の強度を測定し、その強度情報に基づいて、前記糸条に混入している異物の有無を検出する異物検出装置であって、
前記光源の光源色を、
除去せず残存させたい異物の色と、色相環において、同一の系統色もしくは類似の系統色とする、ものである。
【0010】
前記糸条としては、紡績糸(結束紡績糸)であっても、単なる繊維束であってもよい。
前記白色の繊維としては、綿繊維や羊毛等、白色の繊維であって、糸条を形成可能な繊維であれば、限定されない。
光源色の変更は、光源自体の発色を変更しても、光源に色フィルタを設けて放射光の色を変更したものであってもよい。
【0011】
以上構成により、次の作用がある。
糸条を形成する繊維の反射率と、この糸条に混入している除去せず残存させたい異物の反射率とが、ほぼ同じとなる。そして、糸条を形成する繊維と、除去せず残存させたい異物とで、反射光の強度が、ほぼ同じとなる。このため、強度情報自体に、糸条を形成する繊維と、除去せず残存させたい異物と、を区別する情報が含まれにくくなる。
【0012】
請求項2に係る異物検出装置は、請求項1において、次の構成としたものである。
前記糸条を、綿繊維で形成される紡績糸とし、
前記除去せず残存させたい異物を、黄色もしくは黄燈色である綿の葉茎のトラッシュとし、
前記光源色を、黄色もしくは黄燈色とする、ものである。
【0013】
以上構成により、次の作用がある。
強度情報で異物の有無を検出する異物検出装置において、糸条を形成する綿繊維と、除去せず残存させたいトラッシュとの区別がつきにくくなる。
【0014】
請求項3に係る繊維機械は、次の構成としたものである。
請求項1または請求項2に係る異物検出装置と、
この異物検出装置による前記異物の検出に基づいて作動する前記糸条の切断装置と、
前記糸条を巻き取る巻取り装置と、
を備えるものである。
【0015】
以上構成により、次の作用がある。
除去せず残存させたい異物を、切断装置で除去することなく、糸条の巻取りが行われる。
【0016】
請求項4に係る異物検出方法は、
白色の繊維で形成される糸条に光源から光を照射して、その糸条からの反射光の強度を測定し、その強度情報に基づいて、前記糸条に混入している異物の有無を検出する異物検出方法であって、
前記光源の光源色を、
除去せず残存させたい異物の色と、色相環において、同一の系統色もしくは類似の系統色とする、ものである。
【0017】
以上構成により、次の作用がある。
糸条を形成する繊維の反射率と、この糸条に混入している除去せず残存させたい異物の反射率とが、ほぼ同じとなる。そして、糸条を形成する繊維と、除去せず残存させたい異物とで、反射光の強度が、ほぼ同じとなる。このため、強度情報自体に、糸条を形成する繊維と、除去せず残存させたい異物と、を区別する情報が含まれにくくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、
強度情報に、糸条を形成する繊維と、除去せず残存させたい異物と、を区別する情報が含まれにくくなるため、除去したい異物を検出するための閾値を厳しく設定しても、除去せず残存させたい異物は検出されにくい。つまり、残存させたい異物を検出しないようにしても、除去したい異物の検出精度を落とすことがない。
【0020】
請求項2においては、
トラッシュを検出しないようにしても、除去したい異物である変色繊維等の異物を検出する精度を落とすことがない。
【0021】
請求項3においては、請求項1または請求項2の効果に加えて、
原料から糸条を製造する速度(紡績速度・結束紡績速度・延伸速度など)を損なって生産効率を落としたり、廃棄原料を増大させることがない。
【0022】
請求項4においては、
強度情報に、糸条を形成する繊維と、除去せず残存させたい異物と、を区別する情報が含まれにくくなるため、除去したい異物を検出するための閾値を厳しく設定しても、除去せず残存させたい異物は検出されにくい。つまり、残存させたい異物を検出しないようにしても、除去したい異物の検出精度を落とすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0024】
まず、図1を用いて、綿糸を紡糸する空気式精紡機3を説明する。
空気式精紡機3は、綿繊維のスライバ6より、綿繊維の紡績糸9を製造する装置である。
この空気式精紡機3には、スライバ6より紡績糸9が製造される経路(以下、製造経路)に沿って、製造経路の最上流位置のケンス5、ドラフト装置7、空気式精紡装置10、糸送り装置20、糸欠点検出装置30、巻取り装置40が順に配置されている。
ケンス(スライバ収容器)5には、練条機で生成されたスライバが収容されている。
【0025】
ドラフト装置7は、スライバ6を挟み込んで延伸するドラフトローラ対を四組備えるものである。前記四組のドラフトローラ対は、スライバ6の搬送方向に沿って配置される次のドラフトローラ対、バックローラ対11、サードローラ対12、セカンドローラ対13、フロントローラ対14よりなっている。
【0026】
空気式精紡装置10は、空気紡績ノズル(空気式精紡装置10に内蔵)において、旋回流をスライバ6の繊維束に作用させることで、紡績糸(結束紡績糸)9を製造する。
本実施の形態に係る空気式紡績機3は、その精紡速度は300〜400m/minであるため、リング精紡機の紡績速度(20〜30m/min)に対して、略20倍の高速紡績が可能である。
【0027】
糸送り装置20は、空気式精紡装置10で製造された紡績糸9を巻取り装置40へ送り出す装置であり、紡績糸9をニップして送り出すデリベリローラ21およびニップローラ22が備えられている。
【0028】
糸欠点検出装置30は、巻取り装置40へ送られる途中の紡績糸9の糸欠点を検出する装置であり、この糸欠点検出装置30での糸欠点検出情報に基づいて、糸欠点部位が除去され、不良な糸のパッケージ4への巻取りが防止される。ここで、この糸欠点検出装置30には、糸欠点の検出に応じて、紡績糸9を切断する切断装置(図示せず)が備えられている。
また、糸欠点部位の切除のため、一旦切断された紡績糸9の両端を繋ぐ糸継ぎ装置(図示せず)も、空気式紡績機3には備えられている。
【0029】
巻取り装置40は、空気式精紡装置10で製造された紡績糸9を、ボビンの軸方向にトラバースして巻き取ってパッケージ4を形成する装置である。
【0030】
糸欠点検出装置30を、より詳しく説明する。
糸欠点検出装置30は、次の二つの系統の糸欠点、スラブ等の糸太さの異常部位の検出と、変色部位等の異物混入部位の検出とを、共に可能に構成されている。
【0031】
図2(a)に示すように、糸欠点検出装置30のケーシング30a内には、紡績糸9を挿入するための開口部30bが形成されている。図2において、紙面に垂直な方向が、開口部30b内に配置された紡績糸9の移動方向である。そして、紡績糸9の径方向外側に、光源としてのLED37a・37bと、受光素子33a・33bと、反射板35a・35bと、が都合一対ずつ配置されている。開口部30b内に配置された紡績糸9を挟んで、LED37aと受光素子33aとが対向し、LED37bと受光素子33bとが対向する。
また、紡績糸9の移動方向より見て、ケーシング30aには、開口部30bを除いて、X字形の開口部が形成されており、このX字の各端部位置に、LED37a・37bおよび受光素子33a・33bが配置されている。そして、LED37a・37bおよび受光素子33a・33bのそれぞれは、開口部30b内に配置された紡績糸9の側を除いて、周囲をケーシング30aに囲まれた状態になる。
また、糸欠点検出装置30には、受光素子33a・33bからの出力信号が入力されるクリアラーコントローラ36も備えられている。
【0032】
そして、図2(b)に示すように、糸太さ異常検出装置31が、LED37aおよび受光素子33aと、LED37bおよび受光素子33bと、クリアラーコントローラ36と、から構成される。また、異物検出装置32が、LED37a・反射板35a・受光素子33bと、LED37b・反射板35b・受光素子33aと、クリアラーコントローラ36と、から構成される。これらについて、詳しくは後述する。
【0033】
糸太さ異常検出装置31について説明する。
この糸太さの検出装置は、紡績糸9にスラブ等の太さ異常が発生しているか否かを検出する手段である。本実施の形態では、この糸太さの検出装置は、光学式の検出装置として構成されている。
糸太さ異常検出装置31には、紡績糸9の移動経路を挟んで対向する位置に配置されたLEDおよび受光素子のセットが二組設けられており、LED37aおよび受光素子33aと、LED37bおよび受光素子33bと、である。そして、LED37aから放射された直接光Daが一部紡績糸9に遮断されながら受光素子33aで受光され、LED37bから放射された直接光Dbが一部紡績糸9に遮断されながら受光素子33aで受光される。受光素子33a・33bより出力される直接光の強度情報は、糸太さに関する情報を提供するものである。
【0034】
ここで、LED37a・37bは、時系列で交互に発光するように、クリアラーコントローラ36に備える時分割回路により制御されている。そして、二つの異なる方向から紡績糸9に光照射することで、紡績糸9の特定部位が扁平であったとしても、確実に糸太さ情報を得ることができるようにしている。
【0035】
以上構成により、糸太さに応じて、受光素子33a・33bで受光される直射光Da・Dbの強度が変化する。そして、受光素子33a・33bから出力される受光強度の強度情報に基づいて、クリアラーコントローラ36が、スラブ等の糸太さ異常の有無を検出する。
なお、糸太さ異常検出装置としては、糸条の断面積に応じた出力を与える静電容量式の検出装置を用いるものとしてもよい。
【0036】
異物検出装置32について説明する。
この異物検出装置32は、紡績糸9に混入している異物の有無を検出する手段である。この異物検出装置32により検出可能な異物とは、紡績糸9に混入している物のうち、正常な綿繊維(白色)とは色が異なる物を指す。正常な綿繊維と色が異なる物は、光の反射率が、正常な綿繊維とは異なっている。そこで、この異物検出装置32は、反射率の相違によって変化する反射光の強度変化を利用して、紡績糸9に混入している異物を検出するものである。異物については、より詳しくは後述する。
【0037】
異物検出装置32には、紡績糸9の移動経路を挟んで対向する位置に配置されたLED・反射板・受光素子のセットが二組設けられており、LED37a・反射板35a・受光素子33bと、LED37b・反射板35b・受光素子33aと、である。反射板35aは、紡績糸9の移動経路を挟んで、LED37aおよび受光素子33bの双方に対向する位置に配置されている。同じく、反射板35bは、紡績糸9の移動経路を挟んで、LED37bおよび受光素子33aの双方に対向する位置に配置されている。
そして、LED37aから放射された直接光Daが紡績糸9および反射板35aで反射し、その反射光Raが受光素子33aで受光される。同様に、LED37bから放射された直射光Dbが紡績糸9および反射板35bで反射し、その反射光Rbが受光素子33aで受光される。受光素子33a・33bより出力される反射光の強度情報は、異物混入に関する情報を提供するものである。
【0038】
前述したように、LED37a・37bは、時系列で交互に発光するように、クリアラーコントローラ36に備える時分割回路により制御されている。このため、LED37aが発光している際には、受光素子33bから反射光Raの強度情報が出力されると共に、受光素子33aからは直射光Daの強度情報が出力される。同様に、LED37bが発光している際には、受光素子33aから反射光Rbの強度情報が出力されると共に、受光素子33bからは直射光Dbの強度情報が出力される。
そして、この場合においても、二つの異なる方向から紡績糸9に光照射することで、紡績糸9に混入している位置が紡績糸9の外周で偏っていたとしても、確実に異物混入に関する情報を得ることができるようにしている。
【0039】
受光素子33a・33bに入射する反射光Ra・Rbの強度は、紡績糸9の糸太さの影響を受けることがないように構成されている。具体的には、次の構成である。
LED37a・37bからは拡散光が放射される。拡散光である直射光Da・Dbは、一部が紡績糸9で遮られるが、それぞれ反射板35a・35bにも到達する。このため、紡績糸9の糸太さによって、反射板35a・35bに到達する直射光Da・Dbの強度は変化する。そこで、反射板35a・35bで反射した反射光Ra・Rbの強度と、紡績糸9で反射したRa・Rbの強度と、を合わせた反射光Ra・Rb全体の強度が一定となるように、LED37a・37bに対する反射板35a・35bや受光素子33bのレイアウトや、反射板35a・35bや受光素子33bの形状等を設定している。そして、異物混入がなく、紡績糸9の糸太さのみが変動する場合には、受光素子33a・33bで受光される反射光Ra・Rb全体の強度が変動しないようにしている。
ここで、紡績糸9での直射光Da・Dbの反射率と、反射板35a・35bでの直射光Da・Dbの反射率とが、同一となるように、反射板35a・35bの表面色が設定されている。反射板35a・35bの表面色は、紡績糸9が白色の綿繊維で形成されることに合わせて、白色に設定されている。
【0040】
また、図2においては、反射板35a・35bや受光素子33a・33bは、同一平面上にあるように見えるが、紡績糸9の移動方向では、反射板35a・33bの位置は異なり、受光素子33a・33bの位置も異なる。そして、前述したように、LED37aの直射光Daは受光素子33aに到達し、その反射光Raは受光素子33bに到達し、LED37bの直射光Dbは受光素子33bに到達し、その反射光Rbは受光素子33aに到達するものとなっている。
反射板に関しては、反射板を半透過式の反射板として、反射板を透過した透過光が受光素子33a・33bに到達し、反射板を反射した反射光が受光素子33a・33bに到達するようにしてもよい。
いずれにしても、LED37aの直射光(透過光)が受光素子33aに入射すると共に、LED37aの反射光が受光素子33bに入射し、LED37bの直射光(透過光)が受光素子33bに入射すると共に、LED37bの反射光が受光素子33bに入射する。
【0041】
以上構成により、異物検出装置32において、紡績糸9に混入している異物の量に応じて、受光素子33b・33aで受光される反射光Ra・Rbの強度が変化する。そして、受光素子33b・33aから出力される受光強度の強度情報に基づいて、クリアラーコントローラ36が、紡績糸9に混入している異物の有無を検出する。
【0042】
なお、異物検出装置32において、糸条からの反射光の強度情報から、糸条の糸太さによる影響を除く方法としては、前記反射板35a・35bを用いて反射光全体の強度を一定にする方法に限定されない。
糸太さに関する検出情報を別に検出して、この糸太さ情報に基づいて、糸条の反射光の強度情報を補正するようにして、糸太さの影響のない糸条の反射光の強度情報を得るようにしてもよい。糸太さに関する検出情報は、例えば前述の糸太さの検出装置(LED37a・37b・受光素子33a・34a・クリアラーコントローラ36)を利用して得ることが可能である。この構成とする場合は、反射板を用いる必要はない。
【0043】
なお、紡績糸9の移動方向に沿って、図2(a)に示す装置群(糸太さ検出装置31および異物検出装置32、ただしクリアラーコントローラ36を除く)を、複数組配置する構成としてもよい。そして、各組の糸太さ検出装置31および異物検出装置32(クリアラーコントローラ36を除く)に備える受光素子33a・33bの出力信号が、すべてクリアラーコントローラ36に入力される構成としてもよい。このように構成することで、クリアラーコントローラ36における糸太さ異常の検出や異物検出の精度を高めることが可能である。
また、本実施の形態では、糸太さ検出装置31および異物検出装置32において、LEDおよび受光素子(さらに反射板)のセットを二組備える構成としているが、一組であっても差し支えはない。
【0044】
紡績糸9に混入している異物について説明する。
綿繊維で形成される紡績糸9において、異物とは、紡績糸9に混入している物のうち、綿繊維の茎葉等のトラッシュや、変色した繊維などを指す。トラッシュは黄色・黄燈色であり、変色した繊維は黒系統色(黒・青・赤色)をしている。これらの異物は、正常な綿繊維(白色)とは色が異なっている。これらの異物と正常な綿繊維とでは、通常(後述のように光源色を適切に設定する場合を除く)は、光の反射率が相違するものとなっている。前述したように、異物検出装置32は、紡績糸9において異物が含まれている部位と、異物の含まれていない部位とで、反射率の相違による反射光の強度変化があることを利用して、異物の有無検出を行うものである。
【0045】
正常な綿繊維に対する異物において、紡績糸9の品質上、必ずしもすべての異物を除去する必要があるわけではなく、除去せず残存させておいても差し支えのない異物もある。
本実施の形態では、空気式紡績機3で紡糸される紡績糸9は、この紡績工程の後工程で染色するものとしている。この場合、トラッシュは、正常な綿繊維と一緒に染色されて、色違いが目立たなくなる。したがって、空気式紡績機3において、トラッシュの混入している部位を糸欠点として切除して、空気式紡績機3における紡績速度を低下させるよりも、トラッシュを残存させたまま、紡績速度を向上させたほうが、経済的に利得がある。そこで、トラッシュについては、後述する構成により、異物検出装置32において異物とは認識させないようにしている。
一方、黒系統色(黒・青・赤色)に変色した繊維については、染色した場合にも色違いが目立つため、紡績糸9の品質上、除去する必要がある。そこで、変色繊維については、異物検出装置32において異物と認識させるものとする。
【0046】
つまり、異物には、大まかに分けて二種類あり、除去したい異物と、除去せず残存させたい異物と、がある。
【0047】
除去せず残存させたい異物を、異物検出装置32に異物と認識させないための構成を説明する。
前述したように、異物検出装置32における異物検出は、正常な綿繊維と異物との色の違い(反射率の違い)を利用して行うものである。
ここで、光源であるLED37a・37bの光源色によって、異物の反射率が変化し、反射光Ra・Rbを受ける受光素子33b・33aでの受光感度が変化する。なお、正常な綿繊維は白色であるので、正常な綿繊維においては、光源色による反射率の変動は無視できる。
そして、光の照射対象物(正常な繊維や異物)の色が、色相環において、光源色と同一の系統色である場合、その照射対象物の反射率は、白色の照射対象物の反射率に近い値となる。一方、光の照射対象物(正常な繊維や異物)の色が、色相環において、光源色に対する補色である場合、その照射対象物の反射率は、黒色の照射対象物の反射率に近い値となる。照射対象物が黒色である場合、反射率はほとんど0になる。
【0048】
具体的には、LED37a・37bの光源色を緑とした場合、緑色の異物が紡績糸9に混じっていても、この異物の反射率が正常な繊維と変わらないため、受光素子33b・33aに入射する反射光Ra・Rbの強度が変化しない。したがって、異物検出装置32において、緑色の異物は、異物としては認識されにくくなる。
一方、この場合において、赤色(緑色の補色)の異物が紡績糸9に混じっていると、この異物の反射率が0に近い程度に低下するため、受光素子33b・33aに入射する反射光Ra・Rbの強度が低下する。この強度低下の大きさは、紡績糸9に混じっている赤色異物の量が多くなるほど、大きくなる。したがって、異物検出装置32において、赤色の異物は、異物として認識される。
【0049】
本実施の形態では、LED37a・37bは、黄色光源を採用している。
図3に示すように、より詳しくは、この光源は、放射光の波長のピーク値が580〜600nm(ナノメートル)であり、この光源より、このピーク値を挟んだ前後の波長の光も放射される。したがって、LED37a・37bの光源色は、より正確には、黄色から黄燈色に渡るものである。
本実施の形態において、綿繊維の紡績糸9中より、除去せず残存させたい異物は、茎葉のトラッシュである。この茎葉のトラッシュの色も、黄色から黄燈色の範囲内の色である。そこで、綿繊維の茎葉のトラッシュの色と、色相環において、同一または類似の系統色である黄色(黄色から黄燈色)を、LED37a・37bの光源色としている。この構成とすることで、異物検出装置32は、トラッシュを異物として認識しにくくなる。
一方、本実施の形態において、綿繊維の紡績糸9中より除去したい異物は、黒系統色(黒・青・赤色)に変色した繊維である。黒系統の色は、光源色に係りなく、反射率が低い状態にある。このため、黒系統色(黒・青・赤色)の変色繊維は、異物検出装置32により、異物として認識される。
【0050】
次に、異物検出装置32に備える光源を、黄色光源であるLED37a・37bにした場合と、緑色光源にした場合と、について比較説明する。
【0051】
図4には、黄色光源(LED37a・37b)を用いる場合の閾値設定の一例を示している。
図4の縦軸は、異物検出装置32を通過する部位(紡績糸9)からの反射光Ra・Rbの強度を示している。除去すべき異物(黒系統色(黒・青・赤色)の変色繊維)がない場合を、反射光Ra・Rbの強度を基準として、除去すべき異物がある場合に、この強度の低下割合を%表示で表現している。また、図4の横軸は、同じ強度(反射光Ra・Rbの強度)が継続する糸長さを示している。例えば、紡績糸9に黒系統色(黒・青・赤色)の変色繊維が一本混じっているような場合に、同じ強度(例えば−10%)の部位が一定の長さ(例えば30mm)の長さに渡って、異物検出装置32で検出される。ここで、同じ強度の部位の糸長さの算出は、同じ強度の部位が異物検出装置32で連続して検出される検出時間と、紡績糸9の移動速度と、を掛け合わせることで行われる。
【0052】
前記閾値は、変色部位等の異物混入部位を糸欠点と判断する場合の判定基準を与えるものである。
この閾値の設定として、設定Y1(下限強度−15%・下限長さ20mm)と、設定Y2(下限強度−10%・下限長さ35mm)と、が設けられている。設定Y1は、異物検出装置32において、強度が−15%を下回った状態が20mm以上の長さに渡る部位(紡績糸9)が検出された場合を、糸欠点と判定するための基準である。設定Y2は、異物検出装置32において、強度が−10%を下回った状態が35mm以上の長さに渡る部位(紡績糸9)が検出された場合を、糸欠点と判定するための基準である。
図4において、ドットパターンで示す領域が、設定Y1・Y2の少なくとも一方で糸欠点と判定された領域を示している。
なお、設定Y1における20mm以下、設定Y2における35mm以下、においては、強度と長さとの関係が曲線状となる判定基準が設定されており、この領域では、長さが短くても強度が高い場合には、糸欠点と判定するようにしている。
【0053】
図5には、緑色光源を用いる場合の閾値設定の一例を示している。
縦軸・横軸の設定は、図4に示す黄色光源の場合と同様である。
また、この場合の閾値の設定として、設定U1(下限強度−30%・下限長さ15mm)と、設定U2(下限強度−20%・下限長さ35mm)と、が設けられている。設定U1における15mm以下、設定U2における35mm以下、においては、前記設定Y1・Y2の場合と同様に、長さが短くても強度が高い場合には、糸欠点と判定するように設定されている。
図5に示す緑色光源の閾値設定は、図4に示す黄色光源の閾値設定の場合に比べて、糸欠点の判定基準としては、より緩い設定となっている。
【0054】
図6には、黄色光源・緑色光源の場合のカット数の比較を示している。
これは、空気式紡績機3において、黄色光源を用いた場合と、緑色光源を用いた場合とで、同じ原料より製造した紡績糸9について、一定長さ(例えば100km)でのカット数を比較したものである。したがって、黄色光源を用いた場合と、緑色光源を用いた場合とで、紡績糸9の組成は、同等とみなすことができるものである。
ここで、変色部位等の異物混入部位を糸欠点としてカットした場合のカット数のみを示しており、糸太さ異常による糸欠点のカット数は除いている。
【0055】
図6に示すように、除去せず残存させたい異物であるトラッシュのカット数は、黄色光源を用いた場合は、緑色光源を用いた場合の半分程度となっている。しかも、前述したように、黄色光源を用いた場合は、緑色光源を用いた場合よりも、糸欠点の判定基準を厳しくしたものである。
一方、除去すべき異物である黒系統色(黒・青・赤色)の変色繊維については、黄色光源を用いた場合と、緑色光源を用いた場合とで、相違はない。
【0056】
このように、光源色を、除去せず残存させたい異物の色と、色相環において、同一または類似の系統色とすることで、他の色の光源や、可視光線外の光源を用いる場合よりも、除去せず残存させたい異物を、異物検出装置32に異物として検出させないようにすることが可能である。したがって、空気式紡績機3の紡績速度を落とすことなく、しかも除去すべき異物を適切に除去でき、紡績糸9の品質を損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】空気式紡績機の構成を示す図である。
【図2】糸欠点検出装置の構成を示す図である。
【図3】黄色光源のスペクトルを示す図である。
【図4】黄色光源を用いる場合の閾値設定の一例を示す図である。
【図5】緑色光源を用いる場合の閾値設定の一例を示す図である。
【図6】黄色光源・緑色光源の場合のカット数の比較図である。
【符号の説明】
【0058】
3 空気式紡績機
9 紡績糸
30 糸欠点検出装置
32 異物検出装置
37a・37b LED(黄色光源)
40 巻取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色の繊維で形成される糸条に光源から光を照射して、その糸条からの反射光の強度を測定し、その強度情報に基づいて、前記糸条に混入している異物の有無を検出する異物検出装置であって、
前記光源の光源色を、
除去せず残存させたい異物の色と、色相環において、同一の系統色もしくは類似の系統色とする、
ことを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
前記糸条を、綿繊維で形成される紡績糸とし、
前記除去せず残存させたい異物を、黄色もしくは黄燈色である綿の葉茎のトラッシュとし、
前記光源色を、黄色もしくは黄燈色とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の異物検出装置と、
この異物検出装置による前記異物の検出に基づいて作動する前記糸条の切断装置と、
前記糸条を巻き取る巻取り装置と、
を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項4】
白色の繊維で形成される糸条に光源から光を照射して、その糸条からの反射光の強度を測定し、その強度情報に基づいて、前記糸条に混入している異物の有無を検出する異物検出方法であって、
前記光源の光源色を、
除去せず残存させたい異物の色と、色相環において、同一の系統色もしくは類似の系統色とする、
ことを特徴とする異物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−212423(P2007−212423A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37693(P2006−37693)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】