説明

異物検出装置及び方法、並びに露光装置及び方法

【課題】基板表面に付着した異物の検出精度を向上する。
【解決手段】レチクルRの被検査面(ガラス面RG)に波長の異なる複数のプローブ光を照射し、ガラス面RGからの散乱光を複数の受光角で受光し、受光した散乱光L,Lのそれぞれの強度を計測する。ガラス面RGでのプローブ光の照射位置と照射位置に対応する散乱光L,Lの強度の計測結果とから、複数のプローブ光の波長と複数の散乱光の受光角毎に、ガラス面RGについての散乱光の強度分布を求める。求められた複数の強度分布を相互に比較して解析することにより、レチクルパターンによる回折光からガラス面RG上に付着した異物APによる散乱光を分離して検出することができるので、精度良く異物APを検出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物検出装置及び方法、並びに露光装置及び方法に係り、さらに詳しくは、パターンを有する基板に付着した異物を検出する異物検出装置及び方法、並びに異物検出装置を備える露光装置及び異物検出方法を利用する露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、照明光がレチクル(又はマスク)及び投影光学系を介して、感応剤(レジスト)が塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上に投射されることによって、レチクルに形成されたパターン(又はその縮小像)がウエハ上の複数のショット領域に逐次転写される。ここで、レチクルの表面(ガラス面又はペリクル面)に塵等の異物が付着すると、その付着物の形状がレチクルパターンとともにウエハ上に転写されるおそれがある。かかる不都合を改善するものとして、レチクルの表面(ガラス面)にプローブ光を照射し、異物によって散乱される散乱光を検出することによって、レチクルの表面の異物を検出する異物検出装置を備える露光装置に係る発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された露光装置では、レチクルの表面に照射されたプローブ光は、そのほとんどがレチクルの表面で反射される一方で、一部がレチクルの内部を透過し、その反対面に形成されたレチクルパターンに照射されるため、異物検出装置がレチクルパターンによる回折光を異物による散乱光として誤検出するおそれがある。
【0005】
【特許文献1】特開2007−256577号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の事情の下でなされたものであり、第1の観点からすると、パターンを有する基板に付着した異物を検出する異物検出装置であって、前記基板の被検査面に波長の異なる複数のプローブ光を照射する照射系と;前記被検査面からの散乱光を複数の受光角で受光して、前記散乱光の強度を計測する受光系と;前記被検査面上での前記複数のプローブ光の照射位置と該照射位置に対応する前記受光系の計測結果とから、前記複数のプローブ光の波長と前記複数の受光角毎に、前記被検査面についての前記散乱光の強度分布を求め、該強度分布を解析することにより前記被検査面上の異物を検出する解析系と;を備える異物検出装置である。
【0007】
これによれば、照射系は、基板に波長の異なる複数のプローブ光を照射し、受光系は、該複数のプローブ光それぞれについて、異なる受光角で散乱光を受光する。解析系は、プローブ光の基板上の照射位置と、このプローブ光を受光した受光系の計測結果とから、複数のプローブ光それぞれについて、受光角毎に散乱光の強度分布を求め、これら散乱光の強度分布に基づいて異物を検出するので、異物の検出精度が向上する。
【0008】
本発明は、第2の観点からすると、前記基板は該基板が有するパターンを物体に転写するための露光用マスクであり、本発明の異物検出装置を備え、該異物検出装置を用いて前記露光用マスクの表面を検査し、検査済みの前記露光用マスクを用いて該露光用マスクのパターンを前記物体に転写する露光装置である。
【0009】
これによれば、本発明の異物検出装置を用いて被検査面が検査された露光用マスクが使用されるので、異物の形状が転写されることなく、露光用マスクのパターンを物体に転写することが可能となる。
【0010】
本発明は、第3の観点からすると、パターンを有する基板に付着した異物を検出する異物検出方法であって、前記基板の被検査面に波長の異なる複数のプローブ光を照射し、前記被検査面からの散乱光を複数の受光角で受光して、前記散乱光の強度を計測する工程と;前記被検査面上での前記複数のプローブ光の照射位置と該照射位置に対応する前記散乱光の強度の計測結果とから、前記複数のプローブ光の波長と前記複数の受光角毎に、前記被検査面についての前記散乱光の強度分布を求め、該強度分布を解析して前記被検査面上の異物を検出する工程と;を含む異物検出方法である。
【0011】
これによれば、計測する工程では、基板に波長の異なる複数のプローブ光が照射され、該複数のプローブ光それぞれについて、異なる受光角で散乱光が受光される。検出する工程では、プローブ光の基板上の照射位置と、このプローブ光を受光した受光系の計測結果とから、複数のプローブ光それぞれについて、受光角毎に散乱光の強度分布が求められ、これら散乱光の強度分布に基づいて異物が検出されるので、異物の検出精度が向上する。
【0012】
本発明は、第4の観点からすると、前記基板は該基板が有するパターンを物体に転写するための露光用マスクであり、本発明の異物検出方法を利用して前記露光用マスクの表面を検査し、検査済みの前記露光用マスクを用いて該露光用マスクのパターンを前記物体に転写する露光方法である。
【0013】
これによれば、本発明の異物検出方法を用いて被検査面が検査された露光用マスクが使用されるので、異物の形状が転写されることなく、露光用マスクのパターンを物体に転写することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図5(D)に基づいて説明する。
【0015】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の概略的な構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される走査方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0016】
露光装置100は、照明系IOP、レチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルRの表面に付着した異物を検出する異物検出装置80、レチクルRに形成されたパターンの像を感応剤(レジスト)が塗布されたウエハW上に投影する投影ユニットPU、ウエハWを保持してXY平面内を移動するウエハステージWST、及びこれらの制御系等を備えている。
【0017】
照明系IOPは、光源、及び光源に送光光学系を介して接続された照明光学系を含み、レチクルブラインド(マスキングシステム)で規定されたレチクルR上でX軸方向(図1における紙面直交方向)に細長く伸びるスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明系10の構成は、例えば米国特許出願公開第2003/025890号明細書などに開示されている。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
【0018】
レチクルステージRSTは、照明系IOPの図1における下方に配置されている。レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが載置されている。レチクルRは、例えば真空吸着によりレチクルステージRST上に固定されている。なお、レチクルRについては、その表面に付着した異物を検出する異物検出装置80等とともに、さらに後述する。
【0019】
レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図2参照)によって、水平面(XY平面)内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定ストローク範囲で駆動可能となっている。レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)14によって、移動鏡12(又はレチクルステージRSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計14の計測情報は、主制御装置120(図1では不図示、図2参照)に供給される。
【0020】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLとを含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXpに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルのパターンが転写される。
【0021】
ウエハステージWSTは、リニアモータ等を含むステージ駆動系24によって、ステージベース22上をX軸方向、Y軸方向に所定ストロークで駆動されるとともに、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向に微小駆動される。ウエハステージWST上に、ウエハWが、ウエハホルダ(不図示)を介して真空吸着等によって保持されている。なお、ウエハステージWSTに代えて、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に移動する第1ステージと、該第1ステージ上でZ軸方向、θx方向及びθy方向に微動する第2ステージとを備える、ステージ装置を用いることもできる。
【0022】
ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(回転情報(ヨーイング量(θz方向の回転量θz)、ピッチング量(θx方向の回転量θx)、ローリング量(θy方向の回転量θy))を含む)は、レーザ干渉計システム(以下、「干渉計システム」と略述する)18によって、移動鏡16(ウエハステージWSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。
【0023】
干渉計システム18の計測情報は、主制御装置120に供給される(図2参照)。主制御装置120は、干渉計システム18の計測情報に従って、ステージ駆動系24を介してウエハステージWSTのXY平面内の位置(θz方向の回転を含む)を制御する。
【0024】
また、図1では図示が省略されているが、ウエハWの表面のZ軸方向の位置及び傾斜量は、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示される斜入射方式の多点焦点位置検出系から成るフォーカスセンサAFS(図2参照)によって計測される。このフォーカスセンサAFSの計測情報も主制御装置120に供給される(図2参照)。
【0025】
また、ウエハステージWST上には、その表面がウエハWの表面と同じ高さである基準板FPが固定されている。この基準板FPの表面には、アライメント検出系ASのベースライン計測等に用いられる基準マーク、及び後述するレチクルアライメント検出系で検出される一対の基準マークなどが形成されている。
【0026】
投影ユニットPUの鏡筒40の側面には、ウエハWに形成されたアライメントマーク及び基準マークを検出するアライメント検出系ASが設けられている。アライメント検出系ASとして、一例としてハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光でマークを照明し、このマーク画像を画像処理することによってマーク位置を計測する画像処理方式の結像式アライメントセンサの一種であるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。
【0027】
露光装置100では、さらに、レチクルステージRSTの上方に、例えば米国特許第5,646,413号明細書等に開示される、露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント検出系13(図1では不図示、図2参照)が設けられている。レチクルアライメント検出系13の検出信号は、主制御装置120に供給される(図2参照)。
【0028】
さらに、露光装置100では、図1に示されるように、レチクルステージRSTの上方で、照明光ILを遮らない位置(図1では光軸AXpの−Y側)に、レチクルRに付着した異物を検出する異物検出装置80が配置されている。異物検出装置80の検出信号は、主制御装置120に供給される(図2参照)。異物検出装置80の詳細は、後述する。
【0029】
図2には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。制御系は、装置全体を統括制御するマイクロコンピュータ(あるいはワークステーション)などを含む主制御装置120を中心として構成されている。
【0030】
次に、本実施形態の異物検出装置80の構成、異物の検出原理、及び検出方法等について詳述する。
【0031】
異物検出装置80は、図2に示されるように、照射系81、受光系82、及び解析系83等を備えている。図3(A)及び図3(B)には、異物検出装置80の一部を構成する照射系81と受光系82とが、レチクルRと共に示されている。
【0032】
異物検出装置80の説明に先立って、レチクルRについて説明する。レチクルRのパターン面(−Z側の面)には、図3(A)に示されるように、パターンCPが形成され、該パターンCPが形成されたパターン領域を取り囲むように、ペリクル枠PFrが接着等により取り付けられている。ペリクル枠PFrの下端面には、パターンCPを保護するための(パターンCPへの異物の付着を防ぐための)ペリクル膜PFiが接着等によって取り付けられている。
【0033】
レチクルRは、パターン面と反対側の面(以下、ガラス面RGと呼ぶ)を上方に、ペリクル膜PFiの表面(以下、ペリクル面RPとも呼ぶ)を下方に向けた状態で、レチクルステージRSTに載置されている。この場合、レチクルステージRSTには、ペリクル枠PFrより一回り大きな開口(不図示)が形成され、該開口の内部にペリクル枠PFrが挿入され、ペリクル枠PFrの周囲のパターン面の領域が、レチクルステージRSTに設けられたバキュームチャック(不図示)等により吸着保持されている。
【0034】
このように、レチクルRはレチクルステージRSTに保持されているが、図3(A)及び図3(B)においては、図面の錯綜を避けるため、レチクルステージRSTは、図示が省略されている。
【0035】
照射系81は、図3(A)に示されるように、レチクルR(レチクルステージRST)の−X側であって、レチクルRのガラス面RGよりも上方(+Z側)に配置されている。照射系81は、図3(A)に示されるように、レチクルRの表面(ガラス面RG)に対して、微少角度(鋭角)を成して入射するように、プローブ光L81を照射する。この場合、図3(B)に示されるように、プローブ光L81は、レチクルRのガラス面RG上の領域A81、すなわちX軸方向に関してほぼガラス面RGの幅に等しい長さとY軸方向に関してプローブ光L81のビーム径に等しい幅を有する矩形状の領域、に照射される。
【0036】
レチクルR(レチクルステージRST)は、前述の通り、レチクルステージ駆動系11により、走査方向(図3(B)内の矢印方向、すなわちY軸方向)に駆動される。主制御装置120は、異物検出装置80の照射系81からレチクルRにプローブ光L81を照射した状態で、レチクルステージ駆動系11を介してレチクルR(レチクルステージRST)を走査方向に駆動することにより、レチクルRのガラス面RGの全領域にプローブ光L81を照射する。なお、プローブ光L81の射出方向(光軸)とレチクルRの移動方向(移動軸)が非平行であれば、光軸と移動軸とを、露光装置100の構成に応じて、任意に配置しても良い。
【0037】
照射系81は、プローブ光L81として、波長785nm,635nmの2つのプローブ光を照射可能に設けられている。ただし、照射系81から照射されるプローブ光の波長は、これに限らず、レチクルRのパターン、特に、その微細度(例えば、ラインアンドスペースパターンのピッチなど)に応じて、適宜変更が可能である。なお、本実施形態の異物検出装置80では、照射系81は、2つの波長のプローブ光を、切り換えて検出対象(レチクル)に照射するが、これに限らず、2つのプローブ光を、同時に、ただし異なる入射角で、レチクルRのガラス面RGに照射しても良い。
【0038】
受光系82は、図3(A)及び図3(B)に示されるように、レチクルR(レチクルステージRST)の上方(+Z側)、すなわち、レチクルRのガラス面RGに対向して配置されている。ここで、レチクルRのガラス面RGには異物APが付着している。ガラス面RGに照射されたプローブ光L81は、その一部が異物APにより散乱される。受光系82は、その散乱光L82を受光し、受光した散乱光L82の強度を計測する。
【0039】
また、ガラス面RGに照射されたプローブ光L81の別の一部は、ガラス面RGからレチクルRの内部に進入し、パターン面に形成されたパターンCPに照射される。この場合、パターンCPから発生する回折光を、受光系82が、異物APによる散乱光L82として、誤検出する可能性がある。ここで、パターンから発生する回折光の回折角は、その微細度及びプローブ光L81の波長に応じて定まる、換言すれば、回折光は、パターンCPに応じた指向性を有する。そこで、本実施形態の露光装置100では、受光系82による回折光の検出を抑制するために、受光系82(より詳細には、受光系82が有する受光素子)は、レチクルRのパターンCP及びプローブ光の波長に基づいて、予めプローブ光の照射によりパターンCPから発生し得る回折光が散乱し得ない方向に、あるいは十分弱い強度の回折光のみが散乱する方向に配置されている。ただし、プローブ光L81のガラス面RGでの反射光の進行方向は、除かれる。本実施形態では、受光系82の受光素子は、図3(B)に示されるように、平面視において、プローブ光L81のガラス面RG上の照射領域A81を基準として、プローブ光L81の進行方向及びそのガラス面RGでの反射光の進行方向であるX軸方向に対して垂直な方向(−Y方向)の所定の位置に、配置されている。受光系82の受光素子としては、X軸方向に細長く延びる受光面を有する、1次元CCD(Charge Coupled Device)(すなわちCCDラインセンサ)、又は2次元CCD(CCDイメージセンサ)などを用いることができる。
【0040】
本実施形態の異物検出装置80では、昨今の半導体素子の高集積化に伴うレチクルパターンCPの微細化のため、レチクルパターンCPからの回折光と、付着物APによる散乱光とを、より確実に、分離して、検出するため、上記の受光素子の配置を採用するのに加えて、受光系82が、ガラス面RGからの散乱光を複数の受光角で受光する構成が採用されている。この点について詳述する。
【0041】
図4には、受光系82の構成の一例が示されている。受光系82は、一例として、レチクルRのガラス面RGから散乱光を、85度と45度の2つの受光角で受光する。受光系82には、これら2つの受光角に対応する2系統の光学回路が含まれている。図4では、プローブ光L81は、紙面奥側から手前に向かってガラス面RGに照射され、ガラス面RGに付着した異物APによって散乱されている。ガラス面RGに対して85度の方向に散乱する散乱光Lは、順に、反射ミラーM11,M12にて反射され、コリメータレンズCLを介して集光され、CCDラインセンサDによって受光(検出)される。一方、ガラス面RGに対して45度の方向に散乱する散乱光Lは、順に、反射ミラーM21,M22にて反射され、コリメータレンズCLを介して集光され、CCDラインセンサDによって検出される。
【0042】
CCDラインセンサD,Dは、XZ平面に平行でX軸方向に延びる細長い長方形状の受光面を有する。受光面の長手方向は、ガラス面RG上のプローブ光L81の照射領域A81の長手方向と平行である。ガラス面RGからの散乱光L,Lは、コリメータレンズCLにより、それぞれ受光面上に集光される。従って、CCDラインセンサD,Dは、それぞれ散乱光L,Lの強度を、X軸方向に関する受光位置の関数として計測する。なお、CCDラインセンサD,Dの計測結果は、後述する解析系(不図示)に送信される。
【0043】
解析系83(図2参照)は、レチクルRのガラス面RG上でのプローブ光L81の照射位置(Y軸方向に関する位置)とそれに対応する受光系82の散乱光L82の強度の計測結果とから、ガラス面RGについての散乱光L82の強度分布を求め、求められた強度分布を解析してガラス面RG上に付着した異物を検出する。
【0044】
プローブ光L81の照射位置(Y軸方向に関する位置)は、レチクル干渉計14のレチクルステージRSTの位置の計測結果から求められる。主制御装置120は、異物検出装置80の照射系81からレチクルRのガラス面RG(上の領域A81)にプローブ光L81を照射させながら、レチクルステージ駆動系11を介してレチクルRが載置されたレチクルステージRSTをY軸方向(走査方向)に駆動し、この駆動と並行して、受光系82を用いて散乱光L82の強度を計測する。主制御装置120は、上記のレチクルステージRSTのY軸方向への駆動中、レチクル干渉計14の計測結果を解析系83に供給する。
【0045】
解析系83は、主制御装置120から受信したレチクル干渉計14の計測結果に対応付けて、受光系82から散乱光L82の強度の計測結果を受信する。解析系83は、レチクル干渉計14の計測結果からプローブ光L81の照射位置を求め、求められた照射位置とそれに対応する散乱光L82の強度の計測結果とを編集して、ガラス面RGの全領域についての散乱光L82の強度分布を求める。
【0046】
なお、解析系83は、受信したレチクル干渉計14の計測結果と受光系82の計測結果とをリアルタイムで処理しても良いし、受信した計測結果を一旦、不図示の記憶装置に保存し、計測終了後に保存した計測結果を処理しても良い。また、上記の説明では、解析系83は、レチクル干渉計14のレチクルステージRSTの位置の計測結果からガラス面RG上でのプローブ光L81の照射位置を求めることとしたが、レチクル干渉計14と独立のレチクルステージRSTの位置を計測する計測系を異物検出装置80に搭載し、それを用いて得られる計測結果からプローブ光L81の照射位置を求めても良い。すなわち、ガラス面RG上でのプローブ光L81の照射位置に対応付けて受光系82の計測結果を処理することができれば、照射位置の計測方法は特に限定されない。
【0047】
解析系83は、プローブ光L81の波長と散乱光L82の受光角毎に、散乱光L82の強度分布を求める。すなわち、本実施形態の異物検出装置80では、照射系81は、2つの波長(785nm,635nm)のプローブ光をガラス面RGに照射する。また、受光系82は、レチクルRのガラス面RGからの散乱光L82を2つの受光角(85度、45度)で受光し、2つの受光角で受光された散乱光L82それぞれの強度を計測する。従って、解析系83は、2つのプローブ光L81の波長(785nm,635nm)、及び2つの散乱光L82の受光角(85度、45度)についての全4通りの組み合わせに対して、散乱光L82の強度分布を求める。
【0048】
解析系83は、散乱光L82の強度分布を解析して、ガラス面RG上に付着した異物を検出する。図5(A)〜図5(D)には、CCDラインセンサD,Dの出力に基づく散乱光L82の強度分布の一例が示されている。図5(A)及び図5(C)には、プローブ光L81の波長を785nmとしたときのCCDラインセンサD,Dそれぞれの出力に基づく散乱光L82の強度分布が示され、図5(B)及び図5(D)には、プローブ光L81の波長を635nmとしたときのCCDラインセンサD,Dそれぞれの出力に基づく散乱光L82の強度分布が示されている。これら図5(A)〜図5(D)に示される4つの強度分布それぞれには、2つの強度分布のピーク(信号)P,Pが存在する。
【0049】
ここで、図5(A)〜図5(D)に示される強度分布のピーク(信号)Pがガラス面RG上に付着した異物APによる散乱光に由来する場合、その強度はプローブ光L81の波長に依らず、一定である(ただし、散乱光L82の受光角に依って変わり得る)。また、ピークPの位置は、プローブ光L81の波長及び散乱光L82の受光角に依らず、一定である。さらに、プローブ光L81のY軸方向についての照射領域A81の幅は、プローブ光L81のビーム径に等しく狭いので、ピークPのY位置は、ガラス面RG上に付着した異物APのY位置を反映する。そして、図5(A)〜図5(D)に示される強度分布では、ピークPの強度及び位置はほぼ一定である。従って、解析系83は、図5(A)〜図5(D)に示される強度分布に基づいて、ピークPの有無を判定することにより、ガラス面RG上に付着した異物APを検出することができる。
【0050】
一方、強度分布のピークPがパターンCPによる回折光に由来する場合、その強度及び位置はプローブ光L81の波長、及び散乱光L82の受光角によって変化する。ここで、図5(A)〜図5(D)に示される強度分布では、ピークPそれぞれの強度及び位置が異なる。従って、解析系83は、図5(A)〜図5(D)に示される強度分布に基づいて、ピークPがパターンCPによる回折光に由来するピークであると判断することができる。
【0051】
従って、解析系83は、4つの強度分布を相互比較し、ほぼ同じ強度でほぼ同じ位置に共通して現れる強度分布のピークを検出することにより、パターンCPによる回折光に由来するピークと、ガラス面RG上に付着した異物APによる散乱光に由来するピークとを、分離して検出することができる。すなわち、解析系83は、パターンCPによる回折光に影響を受けることなく、ガラス面RG上に付着した異物APを正確に検出することが可能となる。
【0052】
しかし、ガラス面RG上に付着した異物APによる散乱光は、例えば、等方的に散乱されるとは限らないので、受光角によってその検出強度が変わり得るし、さらにはその検出ができないこともあり得る。そこで、本実施形態の異物検出装置80では、以下に説明する一定の指針に基づいて、解析系83は、強度分布に表れるピーク(信号)の有意度を判断する。
【0053】
解析系83は、まず、基本的な指針として、複数のプローブ光の波長と複数の散乱光の受光角とに対して作成された複数の強度分布のうちの少なくとも2つについて共通して同じ位置に現れるピーク(信号)を検出することにより、ガラス面RG上に付着した異物に由来するピーク(信号)を検出する。なお、解析系83は、複数の強度分布の論理積より、共通して同じ位置に現れるピーク(信号)を検出する。
【0054】
次に、解析系83は、具体的な指針として、少なくとも2つの異なるプローブ光の波長と1つの共通の散乱光の受光角(例えば45度)とに対する強度分布について共通して現れる信号を、有意な信号と判断する。この理由は、異物による散乱光の強度は、プローブ光の波長には依存しないが、受光角に依存し得るからである。例えば、解析系83は、図5(C)及び図5(D)に示される強度分布において共通して現れるピーク(信号)Pを、有意な信号と判断する。そして、解析系83は、有意な信号が、少なくとも2つの異なる散乱光の受光角に対する強度分布についても確認できる場合、特に、より大きな散乱光の受光角に対する強度分布について確認できる場合、より有意な信号と判断する。すなわち、図5(C)及び図5(D)に示される強度分布において共通して現れたピーク(信号)Pが、図5(A)及び/又は図5(B)に示される強度分布においても確認できる場合、より有意な信号と判断する。
【0055】
なお、受光系82が有するCCDラインセンサD,Dの受光角と受光位置との少なくとも一方を可変に構成し、解析系83は、追加の指針として、受光角と受光位置との少なくとも一方を変えても上述の有意な信号が検出された場合、この信号をより有意な信号と判断することとしても良い。
【0056】
以上説明した解析系83による強度分布の解析より、レチクルRのガラス面RG上の異物の有無、その位置等が検出される。解析系83の検出結果は、異物検出装置80の出力として、主制御装置120に送信される(図2参照)。
【0057】
本実施形態では、主制御装置120は、レチクルステージRST上のレチクルRが交換され、その交換後のレチクルRを用いたウエハWに対する露光処理が開始される前等に、異物検出装置80を用いてレチクルRのガラス面RG上の異物を検出する。なお、これに限られず、主制御装置120は、レチクルRを用いた露光中、常時、異物を検出することとしても良い。主制御装置120は、異物が検出された際には、不図示のレチクル洗浄機を用いてレチクルRを洗浄する等してレチクルRから異物を取り除き、再度、異物検出装置80を用いて異物を検出する。異物が検出されなければ、主制御装置120は、レチクルRを用いてウエハWに対する露光処理を開始する。
【0058】
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100が備える異物検出装置80によると、解析系83により、プローブ光の複数の波長及び複数の受光角毎に作成される散乱光の強度分布が、相互に比較され、解析されるので、レチクルのパターンによる回折光から異物APによる散乱光を分離して検出することが可能になる。従って、異物検出装置80によると、レチクルRのガラス面RG上の異物APを、精度良く検出することが可能となる。また、本実施形態の露光装置100によると、異物検出装置80を用いて検査を行った検査済みのレチクルRを用いてウエハWに露光処理を行うので、異物の影響等を受けることなく、レチクルRのパターンをウエハW上に精度良く転写することが可能となる。
【0059】
なお、上記実施形態では、異物検出装置80の照射系81及び受光系82は、レチクルステージRSTの上方に配置され、レチクルステージRSTに載置されたレチクルRに対して付着物を検出する構成が採用されたが、これに限らず、異物検出装置80の照射系81及び受光系82がレチクルライブラリからレチクルステージRSTへのレチクルRの搬送経路に配置され、搬送されるレチクルRに対して付着物を検出する構成が採用されても良い。この場合、照射系81及び受光系82は、上記搬送経路の上方は勿論、下方、側方などのいずれに配置しても良い。
【0060】
また、上記実施形態の異物検出装置80は、レチクルRのガラス面RGの付着物を検出する構成が採用されたが、同様にペリクル面RPの付着物を検出する構成が採用されても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、照射系81(及び受光系82)が固定され、レチクルRがY軸方向(走査方向)に移動されることで、レチクルRのガラス面RGの全領域にプローブ光L81が照射される構成の異物検出装置80について説明したが、異物検出装置の構成がこれに限定されるものではない。例えば、ガラス面にプローブ光がスポット状に照射され、レチクルがY軸方向(走査方向)及びX軸方向(非走査方向)に移動されることで、ガラス面の全領域にプローブ光が照射される構成の異物検出装置を採用することもできる。また、異物検出装置の構成としては、固定のレチクル(レチクルステージ)に対して照射系を移動させる構成、あるいは、レチクル及び照明系の両方を移動(相対移動)させる構成などを採用することもできる。また、異物検出装置は、レチクル(レチクルステージ)と照射系の両方が固定され、凹レンズ等を用いてプローブ光のビーム径が広げられることによって、あるいは可動式の光学素子(ミラー等)を用いてプローブ光が散逸されることによって、ガラス面の全領域にプローブ光が照射される構成であっても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、照射系81は、レチクルRに785nm及び635nmの波長のプローブ光を照射し、受光系82は、該2種類のプローブ光それぞれについて、85度及び45度の2つの受光角で散乱光を受光したが、プローブ光の波長、及び受光系82による散乱光の受光角は、これに限らず適宜変更が可能である。従って、例えばプローブ光の波長は3種類以上であっても良く、受光部は、これら3種類以上の波長のプローブ光それぞれについて、互いに異なる受光角(3つ以上でも良い)で散乱光を検出しても良い。
【0063】
また、異物検出装置の受光系の構成は、上記実施形態で説明した構成のものに限られず、適宜変形が可能である。例えば、図6(A)には、上記実施形態の異物検出装置に適用可能な受光系の構成の他の一例が示されている。図6(A)に示される受光系82’は、X軸方向を長手とする矩形状の受光面を有する2次元CCD(CCDイメージセンサ)Dを用いて、2つの波長のプローブ光を同時に検出する点が上記実施形態と異なる。また、図6(A)に示される受光系82’を用いる場合、2つの波長のプローブ光が互いに異なる入射角で同時にガラス面RGに照射され、受光系82’は、2つの波長のプローブ光のそれぞれに由来する散乱光を2つの受光角で受光する。
【0064】
受光系82’では、図6(A)に示されるように、2つの波長のプローブ光の一方に由来し、ガラス面RGに対して85度の方向に散乱する散乱光L11’は、反射ミラーM’(の裏面の反射面)、反射ミラーM11’にて順次反射され、コリメータレンズCL’を介して集光され、CCDイメージセンサDによって検出される。同じ一方の波長のプローブ光に由来し、ガラス面RGに対して45度の方向に散乱する散乱光L12’は、反射ミラーM’(の裏面の反射面)、反射ミラーM12’にて順次反射され、コリメータレンズCL’を介して集光され、CCDイメージセンサDによって検出される。同様に、他方の波長のプローブ光に由来し、ガラス面RGに対して85度の方向に散乱する散乱光L21’は、反射ミラーM’(の表面の反射面)、反射ミラーM21’にて順次反射され、コリメータレンズCL’を介して集光され、CCDイメージセンサDによって検出される。また、同じ他方の波長のプローブ光に由来し、ガラス面RGに対して45度の方向に散乱する散乱光L22’は、反射ミラーM’(の表面の反射面)、反射ミラーM22’にて順次反射され、コリメータレンズCL’を介して集光され、CCDイメージセンサDによって検出される。なお、プローブ光は、一方の波長を635nm、他方の波長を785nmとする。
【0065】
CCDイメージセンサDは、XZ平面に平行でX軸方向に延びる細長い長方形状の受光面を有する。受光面の長手方向は、ガラス面RG上のプローブ光L81の照射領域A81の長手方向と平行である。そして、受光系82’が有する光学素子の配置により、4つの散乱光L11’,L12’,L21’,L22’は、コリメータレンズCL’により、図6(B)に示される、CCDイメージセンサDの受光面上で相互に平行な4本のライン上のいずれかの位置に集光される。このように、受光系82’は、複数のプローブ光のそれぞれに由来する散乱光を個別に受光する複数の光学系を用いて構成されていても良い。また、複数の光学系の内の一部の素子、例えばCCDイメージセンサD及びコリメータレンズCL’は、散乱光L11’,L12’,L21’,L22’の検出系で共有されていても良い。
【0066】
なお、上記実施形態では、主制御装置120が、異物検出装置の制御系をも兼ねる場合について説明したが、異物検出装置に専用の制御系を設けても良い。反対に、異物検出装置の解析系の機能を、主制御装置120又はその他の制御装置に持たせても良い。
【0067】
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。
【0068】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0069】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0070】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0071】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0072】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0073】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0074】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の異物検出装置及び方法は、パターンを有する基板に付着した異物を検出するのに適している。また、本発明の露光装置及び方法は、基板が有するパターンを物体に転写するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】一実施形態の露光装置の制御系の主要な構成を示すブロック図である。
【図3】図3(A)及び図3(B)は、異物検出装置の概略構成を示す図である。
【図4】異物検出装置が有する受光系の概略構成を示す図である。
【図5】図5(A)〜図5(D)は、異物検出装置の検出結果を示す図である。
【図6】図6(A)は異物検出装置が有する受光系の概略構成の他の例を示す図、図6(B)は他の例における異物検出装置が有する2次元CCDの検出面を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
10…照明系、11…レチクルステージ駆動系、14…レチクル干渉計、24…ステージ駆動系、80…異物検出装置、81…照射系、82,82’…受光系、120…主制御装置、100…露光装置、D,D,D…受光素子、PL…投影光学系、PU…投影ユニット、R…レチクル、RST…レチクルステージ、W…ウエハ、WST…ウエハステージ、WTB…ウエハテーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを有する基板に付着した異物を検出する異物検出装置であって、
前記基板の被検査面に波長の異なる複数のプローブ光を照射する照射系と;
前記被検査面からの散乱光を複数の受光角で受光して、前記散乱光の強度を計測する受光系と;
前記被検査面上での前記複数のプローブ光の照射位置と該照射位置に対応する前記受光系の計測結果とから、前記複数のプローブ光の波長と前記複数の受光角毎に、前記被検査面についての前記散乱光の強度分布を求め、該強度分布を解析することにより前記被検査面上の異物を検出する解析系と;を備える異物検出装置。
【請求項2】
前記解析系は、前記複数のプローブ光の波長と前記複数の受光角に対して作成された前記強度分布のうちの少なくとも2つについて共通して現れる有意な信号を確認することにより、異物を検出する請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記解析系は、少なくとも2つの異なる前記波長と1つの共通の前記受光角に対する前記強度分布について共通して現れる信号を前記有意な信号とする請求項2に記載の異物検出装置。
【請求項4】
前記解析系は、前記有意な信号が、少なくとも2つの異なる前記受光角に対する前記強度分布について確認できる場合、前記有意な信号をより有意な信号とする請求項3に記載の異物検出装置。
【請求項5】
前記解析系は、前記有意な信号が、より大きな前記受光角に対する前記強度分布について確認できる場合、前記有意な信号をより有意な信号とする請求項3又は4に記載の異物検出装置。
【請求項6】
前記受光系は、前記散乱光の受光角と受光位置との少なくとも一方が可変であり、
前記解析系は、前記有意な信号が、前記散乱光の受光角と受光位置との少なくとも一方を変えても確認できる場合、前記有意な信号をより有意な信号とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項7】
前記基板と前記照射系は、相対的に、前記基板の被検査面にほぼ平行な面内の少なくとも一軸方向に移動可能であり、
前記照射系は、前記被検査面に、前記複数のプローブ光を前記一軸と非平行に照射する請求項1〜6のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項8】
前記照射系は、前記複数のプローブ光を、前記平行な面内で前記一軸に直交する軸にほぼ平行な前記被検査面内の直線上に照射する請求項7に記載の異物検出装置。
【請求項9】
前記受光系は、前記散乱光を受光する少なくとも1つの1次元受光素子を有する請求項8に記載の異物検出装置。
【請求項10】
前記1次元受光素子は、前記直線とほぼ平行に配置される請求項9に記載の異物検出装置。
【請求項11】
前記照射系は、前記複数のプローブ光を、順次、前記被検査面に照射する請求項1〜10のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項12】
前記照射系は、前記複数のプローブ光のうちの少なくとも2つを、同時に、前記被検査面に照射する請求項1〜11のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項13】
前記照射系は、前記少なくとも2つのプローブ光を、それぞれ異なる入射角で、前記被検査面に照射する請求項12に記載の異物検出装置。
【請求項14】
前記受光系は、前記複数のプローブ光のそれぞれに由来する散乱光を個別に受光する複数の光学系を有する請求項1〜13のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項15】
前記受光系は、前記複数のプローブ光のそれぞれに由来する散乱光を受光する共通の受光素子を有する請求項1〜14のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項16】
前記基板は、該基板を保持して移動することができる移動体を用いることにより、前記照射系に対して相対的に移動することができる請求項1〜15のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項17】
前記解析系は、前記移動体の位置を計測し、該位置の計測結果より、前記被検査面上での前記複数のプローブ光の照射位置を求める請求項16に記載の異物検出装置。
【請求項18】
前記基板は該基板が有するパターンを物体に転写するための露光用マスクであり、
請求項1〜17のいずれか一項に記載の異物検出装置を備え、該異物検出装置を用いて前記露光用マスクの表面を検査し、検査済みの前記露光用マスクを用いて該露光用マスクのパターンを前記物体に転写する露光装置。
【請求項19】
パターンを有する基板に付着した異物を検出する異物検出方法であって、
前記基板の被検査面に波長の異なる複数のプローブ光を照射し、前記被検査面からの散乱光を複数の受光角で受光して、前記散乱光の強度を計測する工程と;
前記被検査面上での前記複数のプローブ光の照射位置と該照射位置に対応する前記散乱光の強度の計測結果とから、前記複数のプローブ光の波長と前記複数の受光角毎に、前記被検査面についての前記散乱光の強度分布を求め、該強度分布を解析して前記被検査面上の異物を検出する工程と;
を含む異物検出方法。
【請求項20】
前記検出する工程では、前記複数のプローブ光の波長と前記複数の受光角に対して作成された前記強度分布のうちの少なくとも2つについて共通して現れる有意な信号を確認することにより、異物を検出する請求項19に記載の異物検出方法。
【請求項21】
前記検出する工程では、少なくとも2つの異なる前記波長と1つの共通の前記受光角に対する前記強度分布について共通して現れる信号を前記有意な信号とする請求項20に記載の異物検出方法。
【請求項22】
前記検出する工程では、前記有意な信号が、少なくとも2つの異なる前記受光角に対する前記強度分布について確認できる場合、前記有意な信号をより有意な信号とする請求項21に記載の異物検出方法。
【請求項23】
前記検出する工程では、前記有意な信号が、より大きな前記受光角に対する前記強度分布について確認できる場合、前記有意な信号をより有意な信号とする請求項21又は22に記載の異物検出方法。
【請求項24】
前記計測する工程では、さらに、前記散乱光の受光角と受光位置との少なくとも一方を変えて前記散乱光の強度を計測し、
前記検出する工程では、前記有意な信号が、前記散乱光の受光角と受光位置との少なくとも一方を変えても確認できる場合、前記有意な信号をより有意な信号とする請求項20〜23のいずれか一項に記載の異物検出方法。
【請求項25】
前記計測する工程では、前記基板と前記照射系を、相対的に、前記基板の被検査面にほぼ平行な面内の少なくとも一軸方向に移動させ、前記被検査面に前記複数のプローブ光を前記一軸と非平行に照射して、前記散乱光の強度を計測する請求項19〜24のいずれか一項に記載の異物検出方法。
【請求項26】
前記計測する工程では、前記複数のプローブ光を、前記平行な面内で前記一軸に直交する軸にほぼ平行な前記被検査面内の直線上に照射して、前記散乱光の強度を計測する請求項25に記載の異物検出方法。
【請求項27】
前記計測する工程では、前記複数のプローブ光を、順次、前記被検査面に照射する請求項19〜26のいずれか一項に記載の異物検出方法。
【請求項28】
前記計測する工程では、前記複数のプローブ光のうちの少なくとも2つを、同時に、前記被検査面に照射する請求項19〜27のいずれか一項に記載の異物検出方法。
【請求項29】
前記計測する工程では、前記少なくとも2つのプローブ光を、それぞれ異なる入射角で、前記被検査面に照射する請求項28に記載の異物検出方法。
【請求項30】
前記計測する工程では、前記基板を、該基板を保持して移動することができる移動体を用いて、前記照射系に対して相対的に移動させる請求項19〜29のいずれか一項に記載の異物検出方法。
【請求項31】
前記計測する工程では、さらに、前記移動体の位置を計測し、
前記検出する工程では、前記移動体の位置の計測結果より、前記被検査面上での前記複数のプローブ光の照射位置を求める請求項30に記載の異物検出方法。
【請求項32】
前記基板は該基板が有するパターンを物体に転写するための露光用マスクであり、
請求項19〜31のいずれか一項に記載の異物検出方法を利用して前記露光用マスクの表面を検査し、検査済みの前記露光用マスクを用いて該露光用マスクのパターンを前記物体に転写する露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−133864(P2010−133864A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311374(P2008−311374)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】