説明

異物検査装置および異物検査方法

【課題】常に検査対象基板を基準とする座標系で異物の位置を検出する。
【解決手段】検査対象基板1の外周縁1b,1cの異なる複数箇所の位置を、ステージStを基準とするステージ座標系(X,Y)において検知する非接触型の位置検知手段11と、検知された外周縁1b,1cの各位置から検査対象基板1を基準とする基板座標系(x,y)を作成し、検査対象基板1上の各点の位置をステージ座標系から基板座標系に変換するための座標変換定数を求める変換定数算出手段Paと、検査対象基板1にレーザ光Lを照射する光源部2と、このレーザ光Lの照射に伴って生じる反射散乱光Rを検出する検出部7と、前記反射散乱光Rを分析することにより検査対象基板1上の表面にある異物のステージ座標系における位置(Xa1 ,Ya1 )…を検出し、前記座標変換定数を用いて基板座標系における異物の位置(xa1 ,ya1 )…を演算する異物位置検出手段Pbとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、LSI製造プロセスにおいて半導体ウェーハに回路パターンを焼き付けるのに用いられるレティクルやマスク、あるいは、半導体ウェーハなどパターンが形成された平面基板における異物を検出してその位置を示す異物検査装置および異物検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レティクルやマスク、あるいは、半導体ウェーハなどパターンが形成された検査対象基板上の異物の位置を正確に示すためには、検査ステージ上で、検査対象基板の位置を正確に知る必要があった。このために、検査対象基板を所定の位置に形成した当たり部に機械的に押し当てて、検査対象基板の位置を固定することが行われている。
【0003】
また、特許文献1には検査対象基板にアライメントマークを形成し、このアライメントマークを撮像する撮像装置と、撮像した画像を画像処理装置を用いて分析するなどして、このアライメントマークの位置を確認しながら測定対象基板を平面方向に適宜に移動させたり、回転させることにより、検査対象基板の位置と角度を正確に合わせる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−107669公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、検査ステージ上で検査対象基板を所定の当たり部に押し当てるためには検査対象基板をステージ上で摺動させる必要があり、これが検査対象基板の汚染や傷の原因となっていた。
【0005】
一方、特許文献1に示すように検査対象基板に設けたアライメントマークを頼りに、検査対象基板の中心位置を合わせたり角度を測定するためには、検査対象基板を水平方向に所定の量だけ移動させたり、回転させて、所謂オフセット調整をするための複雑な可動部を形成する必要があった。そして、この可動部が複雑になればなるほど、制御回路が複雑化するだけでなく、トラブル発生の原因となることがあった。とりわけ、検査対象基板を水平方向に回転させるためには多くの複雑な可動部を設ける必要があり、製造コストの引き上げだけでなく各部の動作に伴う汚染などが発生する可能性が高かった。
【0006】
また、検査対象基板の位置を定めるだけのために、アライメントマークを予め形成する必要があるので、本来のレクチルやマスクを形成するための検査対象基板の一部をアライメントマークの形成のために取り分ける必要があった。加えて、このアライメントマークを検出するためには、これを画像として取り込む撮像装置や高度な画像認識を行うための画像処理装置を設ける必要があり、それだけ製造コストが引き上げられるという問題があった。
【0007】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、検査ステージ上に検査対象基板を再現性良く載置できない場合であっても、常に検査対象基板を基準とする座標系で異物の位置を検出することができる異物検査装置および異物検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1発明の異物検査装置は、検査対象基板が載置された状態で水平方向に移動可能に構成されたステージと、検査対象基板の外周縁の異なる複数箇所の位置を、ステージを基準とする座標系(以下、ステージ座標系という)において検知する非接触型の位置検知手段と、位置検知手段によって検知された外周縁の各位置から検査対象基板を基準とする座標系(以下、基板座標系という)を作成し、検査対象基板上の各点の位置をステージ座標系から基板座標系に変換するための座標変換定数を求める変換定数算出手段と、検査対象基板にレーザ光を照射する光源部と、このレーザ光の照射に伴って検査対象基板で生じる反射散乱光を検出する検出部と、前記反射散乱光を分析することにより検査対象基板上の表面にある異物のステージ座標系における位置を検出し、前記座標変換定数を用いて基板座標系における異物の位置を演算する異物位置検出手段とを有することを特徴としている(請求項1)。
【0009】
矩形の検査対象基板に対し、前記位置検知手段が直角な角を挟む一方の辺上の異なる2点と、前記2点を通る辺に直交する他方の辺上の1点をそれぞれ検知することにより、前記変換定数算出手段が、前記一方の辺上の2点の位置から検査対象基板の傾きを求めると共に、この一方の辺上の2点の位置と前記他方の辺上の1点の位置とから検査対象基板の基準点のステージ座標系における位置を求め、この基準点の位置と傾きを前記座標変換定数とする演算処理部を有してもよい(請求項2)。
【0010】
前記位置検知手段がそれぞれ前記検査対象基板の外周縁の異なる3箇所に対応してそれぞれ固定的に配置された3個のセンサを有し、ステージ上に載置された検査対象基板を前記水平方向に移動させてその位置を変えながら前記センサが外周縁を検出することができるステージの位置を基に検査対象基板のステージ座標系における位置を求めるものであってもよい(請求項3)。
【0011】
前記センサが光反射型または光透過型の光電センサであってもよい(請求項4)。
【0012】
第2発明の異物検査方法は、検査対象基板の外周縁の異なる複数箇所の位置を、ステージを基準とするステージ座標系において検知し、検知された外周縁の各位置から検査対象基板を基準とする基板座標系を作成し、検査対象基板上の各点の位置をステージ座標系から基板座標系に変換するための座標変換定数を求める一方、検査対象基板にレーザ光を照射し、このレーザ光の照射に伴って検査対象基板で生じる反射散乱光を検出して、前記反射散乱光を分析することにより検査対象基板上の表面にある異物のステージ座標系における位置を検出し、前記座標変換定数を用いて異物の基板座標系における位置を演算することを特徴としている(請求項5)。
【0013】
検査対象基板が矩形であり、直角な角を挟む一方の辺上の異なる2点と、前記2点を通る辺に直交する他方の辺上の1点をそれぞれ検知することにより、前記一方の辺上の2点の位置から検査対象基板の傾きを求めると共に、この一方の辺上の2点の位置と前記他方の辺上の1点の位置とから検査対象基板の基準点の位置を求め、この基準点の位置と傾きを前記座標変換定数としてもよい(請求項6)。
【0014】
前記検査対象基板の外周縁の異なる3箇所に対応して固定的に配置された3個のセンサを用いて、検査対象基板をステージ上に載置させた状態でこのステージを水平方向に移動させながら前記センサが外周縁を検出することができるステージの位置を基に検査対象基板のステージ座標系における位置を求めるものであってもよい(請求項7)。
【0015】
前記検査対象基板の外周縁の位置を光反射型または光透過型のセンサを用いて検出してもよい(請求項8)。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の異物検査装置は、検査対象基板の外周縁の異なる複数箇所を位置検知手段によって検知することにより、ステージに対する検査対象基板の位置を正確に求めることができる。また、位置検知手段が非接触型であるから検査対象基板を汚損することがないだけでなく接触部分がないので耐久性に優れている。そして、本発明では検査対象基板の位置がステージ上の所定の位置から幾らかずれていたとしても、これを演算によって補正できるから、従来のように検査対象基板をステージ上の固定点に押し当てて検査対象ステージに対する基板の位置を厳密に合わせる必要がなく、検査対象基板の摺動に伴う汚染や傷の発生の恐れがない。
【0017】
そして、検査対象基板を基準とする基板座標系における異物の位置は常に同じであるから、同じ検査対象基板を検査する場合には、前回の検査と比較して今回の検査において検出された異物の増減を容易に知ることができる。また、検査対象基板が載置されたステージには検査対象基板を水平方向に移動させるための可動部が形成されるものであるから、ステージには検査対象基板の位置ずれを補正するためのオフセット調整のような特別な機構が不要であって、その構成が簡単である。つまり、その製造コストを削減することができる。
【0018】
矩形の検査対象基板に対し、前記位置検知手段が直角な角を挟む一方の辺上の異なる2点と、前記2点を通る辺に直交する他方の辺上の1点をそれぞれ検知することにより、前記変換定数算出手段が、前記一方の辺上の2点の位置から検査対象基板の傾きを求めると共に、この一方の辺上の2点の位置と前記他方の辺上の1点の位置とから検査対象基板の基準点のステージ座標系における位置を求め、この基準点の位置と傾きを前記座標変換定数とする演算処理部を有する場合(請求項2)には、レクチルやマスクの外形として最も多い矩形の検査対象基板において、その基準点のステージ座標系の位置だけでなく、ステージに対する基板の傾きを座標変換定数として求めることができるので、異物のステージ座標系の位置を基に基板座標系の位置を的確に求めることができる。
【0019】
とりわけ、検査対象基板の傾きを正すために、従来のように検査対象基板を載置したステージを回転させる必要がないので、複雑な回転機構を必要としておらず、それだけ、異物検査装置の構成をシンプルにして製造コストの削減を行うと共に、回転機構の動作に伴う種々のトラブルの発生を防止できるので、その信頼性の向上を図ることができる。
【0020】
前記位置検知手段がそれぞれ前記検査対象基板の外周縁の異なる3箇所に対応してそれぞれ固定的に配置された3個のセンサを有し、ステージ上に載置された検査対象基板を前記水平方向に移動させてその位置を変えながら前記センサが外周縁を検出することができるステージの位置を基に検査対象基板のステージ座標系における位置を求めるものである場合(請求項3)には、位置検知手段を簡単なセンサによって構成できるので、検査対象基板の位置を検出するために撮像装置や画像認識装置のような複雑な機構を一切必要としておらず、それだけ製造コストを削減できる。また、位置検知手段の構成が簡単であり、変換定数算出手段による処理も必要十分なものでありながら可及的に簡単であるから、その動作の信頼性を高めることができる。
【0021】
前記センサが光反射型または光透過型の光電センサである場合(請求項4)には、直線性の高い光を用いて検査対象基板の外周縁の位置を検出できるので、この測位精度を可及的に高めることができる。
【0022】
請求項5に記載の異物検査方法は、検査対象基板の外周縁の異なる複数箇所の位置を検知して、ステージ座標系における検査対象基板の位置を正確に求めて、この検査対象基板の位置が所定の位置から幾らかずれていたとしてもこれを演算によって補正するものであるから、検査対象基板の位置を固定点に押し当てる必要がなく、検査対象基板の摺動に伴う汚染や傷の発生の恐れがない。また、従来のようにステージのオフセットを調整するような複雑な制御部を形成する必要がない。加えて、位置検知手段が非接触型であるから検査対象基板を汚損することがないだけでなく接触部分がないので耐久性に優れている。
【0023】
検査対象基板が矩形であり、直角な角を挟む一方の辺上の異なる2点と、前記2点を通る辺に直交する他方の辺上の1点をそれぞれ検知することにより、前記一方の辺上の2点の位置から検査対象基板の傾きを求めると共に、この一方の辺上の2点の位置と前記他方の辺上の1点の位置とから検査対象基板の基準点の位置を求め、この基準点の位置と傾きを前記座標変換定数とする場合(請求項6)には、レクチルやマスクの外形として最も多い四角形の検査対象基板において、その傾きを座標変換定数として求めることができるので、従来のように検査対象基板を載置したステージを回転させる必要がないので、とりわけ複雑な回転機構を必要としておらず、異物検査装置の構成をシンプルにして製造コストを削減し、信頼性を向上できる。
【0024】
前記検査対象基板の外周縁の異なる3箇所に対応して固定的に配置された3個のセンサを用いて、検査対象基板をステージ上に載置させた状態でこのステージを水平方向に移動させながら前記センサが外周縁を検出することができるステージの位置を基に検査対象基板のステージ座標系における位置を求めるものである場合(請求項7)には、位置検知手段を簡単なセンサによって構成できるので、それだけ製造コストを削減でき、その動作の信頼性を高めることができる。
【0025】
前記検査対象基板の外周縁の位置を光反射型または光透過型のセンサを用いて検出する場合(請求項8)には、直線性の高い光を用いて検査対象基板の外周縁の位置を精度良く求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明に係る異物検査装置のハードウェア構成を示すものである。図1において、1は表面に回路パターン(図示せず)が描かれた検査対象基板(例えばレチクルであり、以下の説明ではサンプルという)で、検査ステージ上Stに水平に載置されている。なお、検査ステージStは、例えばサンプル1を保持する2本のアームからなり、図中の矢印X,Yに示す水平の二次元方向およびこれと直交する矢印Z(高さ)方向にそれぞれスライド移動できるようにしてある。
【0027】
2はサンプル1の表面にレーザ光Lを直線的に矢印Y方向に走査しながら照射するための光源部(入射光学系)であり、一定の偏光角を有するレーザ光Lを発する例えばHe−Neレーザ発振器3、ビームエキスパンダ4、ガルバノミラー5および集光レンズ6などを有し、レーザ発振器3からのレーザ光Lを、サンプル1の所定角度斜め上方向から、Y方向における所定範囲内で往復直線走査しながら照射するように構成されている。
【0028】
7はサンプル1に照射されたレーザ光Lの照射表面からの散乱光Rを検出するための検出部(検出光学系)で、サンプル1のY方向における一端側の斜め上方に配置されており、この検出部7は、サンプル1上の一点にレーザ光Lを集光させた部分からの照射表面からの散乱光Rを集光するfθレンズなどの集光レンズ8、散乱光Rに対する入射光制限用の細長いスリット9aを形成したスリット部材9、集光レンズ8により集められた散乱光Rを検出する検出器10などを有する。また、集光レンズ8の焦点は走査線のほぼすべての領域でサンプル1上に一致するように調整しておく。
【0029】
このように構成された異物検査装置においては、検査ステージStを矢印X方向に直線的に移動させつつ、レーザ発振器3からのレーザ光Lを、サンプル1の所定角度斜め上方向から、Y方向における所定範囲内で往復直線走査しながら照射し、そのときのサンプル1の表面からの散乱光Rを検出器10に入射させるようにしている。
【0030】
11はサンプル1の外周縁の異なる3箇所を検知する非接触型の位置検知手段であり、本例では矩形のサンプル1に対して、一つの直角な角1aを挟む一方の辺1b上の異なる2点と、この角1aを挟む他方の辺1c上の点をそれぞれ検知するように、各点に対応してサンプル1から少し離れた位置に固定的に配置された、3個の光透過型の光電センサ11a〜11cからなる。また、光透過型の光電センサ11a〜11cは上下一対であり一方が光源部、他方が受光部である。
【0031】
なお、本実施例に示すように、光電センサ11a〜11cは極めて簡単な構成でありながら、直線性に優れた光を用いることにより極めて正確な位置の検出を行なうことが可能である。また、本例ではセンサ11a〜11bが光透過型である例を示しており、これによって遮光するが反射/散乱しないような材質のサンプル1であっても、確実にその外周縁の位置を検出することができる。しかしながら、センサ11a〜11bは光透過型であることに限定されるものではなく、光反射型のセンサを採用してもよい。また、前記位置検知手段11として、光を用いたセンサだけでなく、超音波を利用したセンサを用いてもよい。
【0032】
12は前記ステージStのX,Y,Z方向への移動、前記ガルバノミラー5によるレーザ光Lの走査、センサ11a〜11cを用いたサンプル1の位置の検出、検出器10を用いた散乱光Rの検出などを行なうと共に、散乱光Rの強度を分析して異物の位置を検出すると共にその位置を出力する演算処理装置である。
【0033】
演算処理装置12は種々の構成が考えられるが、例えば、CPU13と、記憶部14と、前記各部材St,5,10,11a〜11cとの信号のやり取りを行なうインターフェース15とを有する。そして、演算処理装置12は、前記X,Y方向へのステージStの移動量に基づいてステージStを基準とするステージ座標系(X,Y)で、サンプル1上の各点における散乱光Rの強度を分析して異物の位置などを検出する。また、異物の位置を、サンプル1を基準とする基板座標系(x,y)に変換して出力する。
【0034】
前記記憶部14には前記位置検知手段11によって検知された外周縁のステージ座標系(X,Y)の各位置からサンプル1の基準点の位置やサンプル1の座標変換定数を求める補正量検出プログラムPaや、散乱光Rを分析することによりサンプルの表面にある異物の位置を算出する異物位置検出プログラムPbなどが記憶してあり、CPU13によってプログラムPa,Pbを実行することにより、このCPU13がそれぞれ補正量検出手段、異物位置検出手段として機能する。このような意味で、プログラムPa,Pbはそれぞれ言わば補正量検出手段,異物位置検出手段ということもできる。
【0035】
そして、Da,Dbは異物の検出結果を示すデータであり、Daは検出されたステージ座標系(X,Y)における異物の位置を示すデータ、Dbはサンプルを基準とする基板座標系(x,y)における異物の位置を示すデータである。
【0036】
次に、上記構成の異物検査装置を用いてサンプル1の検査を行なう場合の各部の動作を説明する。すなわち、本実施例の異物検査装置はサンプル1の検査を行なう最初の段階で、前記演算処理装置12において変換定数算出プログラムPaを実行して、サンプル1のステージ上の位置を求める。
【0037】
図2はステージStに正方形の外形を有するサンプル1を載置した状態を示す図である。なお、ステージStへのサンプル1の載置は、人手によって行ってもよいが、ロボットによって行っても、ステージStが移動してサンプル1をすくい取るように構成してあってもよい。図2に示すように、前記センサ11a〜11cによって検知対象とする3点P1 〜P3 の位置は、何れもサンプル1の1つの辺1b上の異なる2点D1 ,D2 と、他方の辺1c上の点D3 にそれぞれ対応して、各点D1 〜D3 から少し離れた位置に固定的に配置されている。
【0038】
そして、先ず前記ステージStを所定の位置からセンサ11a,11bがサンプル1の辺1bを検出する方向、すなわち、図示左方向にX軸だけを移動させながら、センサ11a,11bの出力を監視し、各センサ11a,11bがサンプル1の辺1bを検出する時点におけるステージStの移動量をそれぞれ値X1 ,X2 として記録する。これにより、前記2点D1 ,D2 の位置をステージ座標系(X,Y)で表すと、D1 の位置を座標(X1 ,Y1 )、D2 の位置を座標(X2 ,Y2 )とすることができる。なお、前記2点D1 ,D2 の位置を表わすY座標の値Y1 ,Y2 はセンサ11a,11bを固定的に設けた固定点の位置から予め求めることができる。
【0039】
なお、前記X方向をサンプル1の搬送方向として、前記2点D1 ,D2 の座標(X1 ,Y1 )、(X2 ,Y2 )をサンプル1の搬送と同時に求めてもよい。
【0040】
次いで、前記ステージStを一旦元の位置に戻した後に、これを所定の位置からセンサ11cがサンプル1の辺1cを検出する方向、すなわち、図示下方向にY軸だけを移動させながら、センサ11cの出力を監視して、センサ11cがサンプル1の辺1cを検出する時点における移動量を値Y3 として記録する。これにより、前記点D3 の位置をステージ座標系(X,Y)で表すと、座標(X3 ,Y3 )とすることができる。また、点D3 の位置を表わすX座標の値X3 についてもセンサ11cを設けた固定点の位置から予め求めることができる。
【0041】
ここで、前記サンプル1が正方形であるから、前記2点D1 ,D2 を通る直線L1 と、この直線L1 に直角に交わり、前記点D3 を通る直線L2 を求めると、これらの直線L1 ,L2 はサンプル1の直交する2辺1b,1cに重なることがわかる。したがって、サンプル1の角1aの点D4 の座標(X4 ,Y4 )は以下の式(1),(2)に示すように求めることができる。
4 =(εX1 −Y1 +X3 /ε+Y3 )×ε/(ε2 +1) … (1)
4 =(X4 −X1 )×ε+Y1 … (2)
但し、ε=(Y2 −Y1 )/(X2 −X1 )とする
【0042】
また、サンプル1の一辺の長さの半分をαとすると、サンプル1の中心点D5 の座標(X5 ,Y5 )は以下の式(3),(4)に示すように求めることができる。
5 =X4 −Φ×α/ξ … (3)
5 =Y4 −Ψ×α/ξ … (4)
但し、Ψ=X2 −X1 、Φ=Y2 −Y1 、ξ=√(Ψ2 +Φ2 )とする
【0043】
つまり、位置検知手段11を用いてサンプル1の直角な一つの角1aを挟む一方の辺1b上の2点D1 ,D2 および他方の辺1c上の点D3 の位置を検知することにより、サンプル1の中心点D5 の座標(X5 ,Y5 )を求めることができる。
【0044】
また、図3に示すように、前記サンプル1の角1aの点D4 と中心点D5 の位置関係からサンプル1の傾きθ(後述する)を求めることができる。なお、このサンプル1の傾きθは前記2点D1 ,D2 を通る直線のY軸に対する傾きからも求めることができる。
【0045】
そして、この中心点D5 の座標(X5 ,Y5 )と、傾きθを座標変換定数(座標変換定数)として用いて、以下に説明する座標変換を行なうことにより、異物のステージ座標系(X,Y)で表わされた座標をサンプル1の中心点D5 を基準点Oとするサンプル1上の基板座標系(x,y)で表わすことができる。
【0046】
以下、図3と図1を用いて、前記座標変換定数を求めた後の異物検査装置を用いた異物の検査方法を説明する。すなわち、前記演算処理装置12において異物位置検出プログラムPbを実行する。そして、レーザ光Lをガルバノミラー5によってY軸方向に走査しながら照射し、その状態でステージStをX方向に一定速度で移動させることにより、サンプル全面にレーザ光Lを照射し、サンプル1の各部の表面から反射散乱光Rを得ることができる。
【0047】
そして、集光レンズ8で集光し、スリット9aを通り抜けた散乱光Rを検出器10によって検出する。つまり、サンプル1上にレーザ光Lを散乱する異物があった場合に検出器10から信号が生じる。そして、演算処理装置12が検出器10から得られた信号を分析することにより、幾つかの異物A1 ,A2 …を検出し、ステージ座標系(X,Y)で表わされる各異物A1 ,A2 …のステージ座標位置(Xa1 ,Ya1 ),(Xa2 ,Ya2 )…をステージ座標位置データDaとして記憶部14に記憶する。
【0048】
加えて、ステージ座標系(X,Y)で表わされる異物A1 ,A2 …のステージ座標位置(Xa1 ,Ya1 ),(Xa2 ,Ya2 )…を、前記座標変換定数を用いて座標変換し、前記サンプル1の中心点D5 を基準点O〔すなわち座標(0,0)〕として座標軸x,yを前記辺1c,1bに平行な軸とするサンプル1上の基板座標系(x,y)で表わした基板座標位置(xb1 ,yb1 ),(xb2 ,yb2 )…に変換し、これを基板座標データDbとして記憶部14に記憶する。以下の説明において、各異物のステージ座標系(X,Y)におけるステージ座標位置を(Xa,Ya)、基板座標系(x,y)における基板座標位置を(xa,ya)で表わす。
【0049】
ステージ座標位置(Xa,Ya)から基板座標位置(xa,ya)への座標変換は、例えば、以下の式(5)〜(10)のように行なうことができる。
X’=Xa−X5 … (5)
Y’=Ya−Y5 … (6)
X''=X’cos θ−Y’sin θ … (7)
Y''=X’sin θ+Y’cos θ … (8)
xa=−α×X''/Px2 … (9)
ya=α×Y''/Py2 … (10)
但し、θ= tan-1(−α/α)− tan-1〔(Y4 −Y5 )/(X4 −X5 )〕、
Px2=(X4 −X5 )cos θ−(Y4 −Y5 )sin θ、
Py2=(X4 −X5 )sin θ+(Y4 −Y5 )cos θ とする。
【0050】
上述のようにして求められた異物の基板座標位置(xa,ya)はサンプル1の中心Oを基準点として求められたものであるから、検査時のサンプル1の位置および傾きに関係なく常に同じ基板座標位置を示すことができる。したがって、演算処理装置12がこの基板座標位置をディスプレイ(図示していない)などに表示することにより、常に一定の基準で異物の位置を示すことができる。
【0051】
上述した各例では、サンプル1が正方形の外形を有するものである例を示したが、本発明はこの点に限定されるものではない。すなわち、検査対象基板が半導体ウェハなどの場合は、その外形は円形であるが、このような検査対象基板であっても、位置検知手段によって、検査対象基板の外周縁の異なる3箇所を検知することにより、その中心のステージ座標位置を検出することが可能である。すなわちステージに載置した検査対象基板の位置がずれていたとしても、これを演算によって適正に補正することが可能である。
【0052】
なお、円形の検査対象基板の中心を求める場合、検査対象基板の直径が既知であれば、前記位置検知手段によって検査対象基板の外周縁の異なる2箇所の位置を検知することにより、中心の位置を検出することが可能である。しかしながら、前記位置検知手段によって検査対象基板の外周縁の少なくとも異なる3箇所の位置を検知することにより、円形の検査対象基板の中心を確実に求めることができる。また、前記位置検知手段によって検査対象基板の外周縁の異なる4箇所以上の位置を検出して、検査対象基板の位置をより正確に求めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の基板検査装置の一例の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】変換定数算出手段の動作を説明する図である。
【図3】異物位置検出手段の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
1 検査対象基板
1a 角
1b 角を挟む一方の辺
1c 角を挟む他方の辺
2 光源部
7 検出部
11 位置検知手段(光電センサ)
1 ,A2 … 異物
(Xa1 ,Ya1 )… 異物のステージ座標系における位置
(xa1 ,xa1 )… 異物の基板座標系における位置
1 〜D3 辺上の点(外周縁上の点)
(X1 ,Y1 )〜(X3 ,Y3 ) 各点のステージ座標系における位置
Da 異物のステージ座標系における位置データ
Db 異物の基板座標系における位置データ
L レーザ光
R 反射散乱光
Pa 変換定数算出手段
Pb 異物位置検出手段
5 中心(基準点)
(X5 ,Y5 ) 基準点のステージ座標系における位置
O 基準点
(X,Y) ステージ座標系
(x,y) 基板座標系
θ 傾き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象基板が載置された状態で水平方向に移動可能に構成されたステージと、検査対象基板の外周縁の異なる複数箇所の位置を、ステージを基準とする座標系において検知する非接触型の位置検知手段と、
位置検知手段によって検知された外周縁の各位置から検査対象基板を基準とする座標系を作成し、検査対象基板上の各点の位置をステージを基準とする座標系から検査対象基板を基準とする座標系に変換するための座標変換定数を求める変換定数算出手段と、
検査対象基板にレーザ光を照射する光源部と、
このレーザ光の照射に伴って検査対象基板で生じる反射散乱光を検出する検出部と、
前記反射散乱光を分析することにより検査対象基板上の表面にある異物のステージを基準とする座標系における位置を検出し、前記座標変換定数を用いて検査対象基板を基準とする座標系における異物の位置を演算する異物位置検出手段とを有することを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
矩形の検査対象基板に対し、
前記位置検知手段が直角な角を挟む一方の辺上の異なる2点と、前記2点を通る辺に直交する他方の辺上の1点をそれぞれ検知することにより、
前記変換定数算出手段が、前記一方の辺上の2点の位置から検査対象基板の傾きを求めると共に、この一方の辺上の2点の位置と前記他方の辺上の1点の位置とから検査対象基板の基準点のステージを基準とする座標系における位置を求め、この基準点の位置と傾きを前記座標変換定数とする演算処理部を有する請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記位置検知手段がそれぞれ前記検査対象基板の外周縁の異なる3箇所に対応してそれぞれ固定的に配置された3個のセンサを有し、
ステージ上に載置された検査対象基板を前記水平方向に移動させてその位置を変えながら前記センサが外周縁を検出することができるステージの位置を基に検査対象基板のステージを基準とする座標系における位置を求めるものである請求項1または2に記載の異物検査装置。
【請求項4】
前記センサが光反射型または光透過型の光電センサである請求項3に記載の異物検査装置。
【請求項5】
検査対象基板の外周縁の異なる複数箇所の位置を、ステージを基準とする座標系において検知し、
検知された外周縁の各位置から検査対象基板を基準とする座標系を作成し、検査対象基板上の各点の位置をステージを基準とする座標系から検査対象基板を基準とする座標系に変換するための座標変換定数を求める一方、
検査対象基板にレーザ光を照射し、
このレーザ光の照射に伴って検査対象基板で生じる反射散乱光を検出して、
前記反射散乱光を分析することにより検査対象基板上の表面にある異物のステージを基準とする座標系における位置を検出し、
前記座標変換定数を用いて異物の検査対象基板を基準とする座標系における位置を演算することを特徴とする異物検査方法。
【請求項6】
検査対象基板が矩形であり、
直角な角を挟む一方の辺上の異なる2点と、前記2点を通る辺に直交する他方の辺上の1点をそれぞれ検知することにより、
前記一方の辺上の2点の位置から検査対象基板の傾きを求めると共に、この一方の辺上の2点の位置と前記他方の辺上の1点の位置とから検査対象基板の基準点の位置を求め、この基準点の位置と傾きを前記座標変換定数とする請求項5に記載の異物検査方法。
【請求項7】
前記検査対象基板の外周縁の異なる3箇所に対応して固定的に配置された3個のセンサを用いて、
検査対象基板をステージ上に載置させた状態でこのステージを水平方向に移動させながら前記センサが外周縁を検出することができるステージの位置を基に検査対象基板のステージを基準とする座標系における位置を求めるものである請求項5または6に記載の異物検査方法。
【請求項8】
前記検査対象基板の外周縁の位置を光反射型または光透過型のセンサを用いて検出する請求項5〜7の何れかに記載の異物検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−10544(P2006−10544A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189289(P2004−189289)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】