発光素子及び発光素子の製造方法
【課題】凹凸構造の凹部の径、深さが均一であり、凹部が均一に分散した発光素子を簡便に製造することができる発光素子の製造方法、及びこの凹凸構造が光取り出し部に有することにより、光取り出し効率を維持しつつ、均一に発光する発光素子の提供。
【解決手段】発光素子の光取り出し部となる表面上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、前記凹部形成膜をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含む発光素子の製造方法及びこれによって複数の凹部が形成された発光素子である。
【解決手段】発光素子の光取り出し部となる表面上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、前記凹部形成膜をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含む発光素子の製造方法及びこれによって複数の凹部が形成された発光素子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光取り出し効率を向上させるために凹凸構造を有する発光素子及び発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、省エネルギーで耐久性が高く、また、発光効率が高いことから液晶のディスプレイのバックライト、車のヘッドライト、照明などの分野で幅広く使用されている。近年、液晶ディスプレイの大型化が進み、液晶ディスプレイの大型化に伴いバックライトも大型にする必要がでてきているが、液晶ディスプレイが大型化するほどバックライトが高輝度であることが求められる。このため、LEDの発光効率をさらに改善させる必要がある。
【0003】
前記LEDの発光効率を改善させるには、光取り出し効率を向上させる必要がある。光取り出し効率を改善させる手段として、光取り出し面に微細な凹凸構造を形成させることが知られている。
【0004】
前記微細な凹凸構造を形成させる方法としては、例えば、自己組織化を利用して精度良くナノ凹凸構造を作製する方法が開示されている(非特許文献1)。この方法によれば、ナノ凹凸構造を作製したい対象の表面にSOG(Spin On Glass)層を形成し、その表面に熱を加えると相分離して自己組織的に一定間隔をあけて一定の大きさに凝集するポリマーを塗布し、加熱して自己組織化を行い、その後、自己組織化した組織を残してポリマーを除去するためにプラズマエッチングを行い、残った組織のパターンを下地のSOG層に転写するために、RIE(Reactive Ion Etching)を行い、最後に加工したい表面のエッチングのために誘導結合型プラズマエッチングとアルゴンスパッタリングを行うことで、ナノ凹凸構造を形成させる。
【0005】
また、例えば、レジストやエッチングを用いることで凹凸構造を形成させる方法が開示されている(特許文献1及び特許文献2)。この方法によれば、凹凸構造を形成させたい面にレジスト組成物を塗布してパターニングしてレジストパターンを形成後、レジストパターン上からRIEやイオンミリング法でエッチングを行うことで凹凸構造を形成させる。これらのように形成した凹凸構造によって、光の入射角度が臨界角以内では無反射で光の取り出しが可能となり、臨界角以上の今まで取り出せなかった光は回折効果によって取出しができる。
【0006】
しかし、上記のような方法では、高価なフォトリソグラフィ装置を使用しなければならない。このため、工程数が多く複雑になり、製造コストが高くなるという問題がある。また、RIEなどのエッチングを行うことに伴い基板などがダメージを受けやすく歩留まりが悪化するという問題もある。
【0007】
このため、レジストやエッチングを用いないで、凹凸構造の代わりに多孔質構造を形成させる方法が開示されている(特許文献3)。この方法によれば、光取り出し面の表面をメタノール、フッ酸及び過酸化水素水の混合液に浸すことで多孔質構造を形成させる。この方法によれば、高価なフォトリソグラフィ装置を使用することも無く、エッチングによるダメージを解消させることができる。
【0008】
しかし、上記のような方法では、凹凸構造が不規則であるため多孔質構造の形態によっては、光取り出し効率が低下してしまうという問題がある。現状ではこのような問題があり、その解決が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−196152号公報
【特許文献2】特開2006−49855号公報
【特許文献3】特開2005−244201号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】東芝レビュー Vol.60 No.10 2005年、p32−35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、凹凸構造の凹部の径、深さが均一であり、凹部が均一に分散した発光素子を簡便に製造することができる発光素子の製造方法、及びこの凹凸構造が光取り出し部に有することにより、光取り出し効率を維持しつつ、均一に発光する発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 発光素子の光取り出し部上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、前記凹部形成膜をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含むことを特徴とする発光素子の製造方法である。
前記発光素子の製造方法においては、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程では、発光素子の光取り出し部の表面上に有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜が形成される。
前記水滴形成工程では、発光素子を水蒸気雰囲気中に置き、ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴が形成される。
前記凹部形成工程では、有機溶媒が蒸発すると水滴の一部が露出し、その水滴の一部がポリマー溶液塗布膜に入り込み、孔が形成される。そして、水滴が蒸発することでポリマー溶液塗布膜に複数の凹部が形成される。
前記エッチング工程では、複数の凹部が形成されたポリマー溶液塗布膜をマスクとしてエッチングを行う。その結果、光取り出し部に凹凸がある発光素子が形成される。
<2> 基材上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、前記複数の凹部に接着剤を介して発光素子の光取り出し部を貼り付け、該発光素子の光取り出し部を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記光取り出し部上に突起構造体を形成する突起構造体形成工程と、前記突起構造体をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含むことを特徴とする発光素子の製造方法である。
<3> ポリマー溶液における疎水性ポリマーの濃度が0.01質量%〜30質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<4> 水滴形成工程が10℃〜50℃の温度条件下で行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<5> 水滴形成雰囲気下で光取り出し部の表面に沿って送風が行われる前記<1>から<4>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<6> 水滴形成雰囲気中の水分の露点TD1(℃)をポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃に制御する前記<1>から<5>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<7> ポリマー溶液が両親媒性化合物を含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<8> 凹部間の平均距離が発光素子から出射される光の波長(nm)の1/4以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<9> 凹部の平均深さが0.01μm〜100μmである前記<1>から<8>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<10> 水滴形成工程後に水滴を成長させる水滴成長工程を含む前記<1>から<9>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<11> 水滴形成工程がポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる前記<1>から<10>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする発光素子である。
<13> ポリマー溶液における疎水性ポリマーの濃度が0.01質量%〜30質量%である前記<12>に記載の発光素子である。
<14> 水滴形成工程が10℃〜50℃の温度条件下で行われる前記<12>から<13>のいずれかに記載の発光素子である。
<15> 水滴形成雰囲気下で光取り出し部の表面に沿って送風が行われる前記<12>から<14>のいずれかに記載の発光素子である。
<16> 水滴形成雰囲気中の水分の露点TD1(℃)は、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃である前記<12>から<15>のいずれかに記載の発光素子である。
<17> ポリマー溶液が両親媒性化合物を含有する前記<12>から<16>のいずれかに記載の発光素子である。
<18> 凹部間の平均距離が発光素子から出射される光の波長(nm)の1/4以上である前記<12>から<17>のいずれかに記載の発光素子である。
<19> 凹部の平均深さが0.01μm〜100μmである前記<12>から<18>のいずれかに記載の発光素子である。
<20> 表面に水滴を形成させた後、前記水滴を成長させる前記<12>から<19>のいずれかに記載の発光素子である。
<21> ポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる前記<12>から<20>のいずれかに記載の発光素子である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、凹凸構造の凹部の径、深さが均一であり、凹部が均一に分散した発光素子を簡便に製造することができる発光素子の製造方法、及びこの凹凸構造が光取り出し部に有することにより、光取り出し効率を維持しつつ、均一に発光する発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、ポリマー溶液塗布膜形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1B】図1Bは、水滴形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1C】図1Cは、凹部形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1D】図1Dは、凹部形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1E】図1Eは、凹部形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図2】図2は、LEDの一例を示した概略断面図である。
【図3】図3は、有機電界発光素子の一例を示した概略断面図である。
【図4】図4は、図1Eにおける凹部の拡大図である。
【図5】図5は、凹部形成膜を示すSEM写真である。
【図6A】図6Aは、突起構造体形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図6B】図6Bは、突起構造体形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発光素子の製造方法及び発光素子)
[第1実施形態]
第1実施形態の本発明の発光素子の製造方法は、一例として図1A〜図1Eに示すように、ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、エッチング工程と、その他の工程とを含み、必要に応じて、水滴形成工程後に水滴を成長させる水滴成長工程を含んでいてもよい。
本発明の発光素子は、本発明の発光素子の製造方法により好適に製造される。以下、本発明の発光素子の製造方法の説明を通じて、本発明の発光素子の詳細についても明らかにする。
【0016】
<ポリマー溶液塗布膜形成工程>
前記ポリマー溶液塗布膜形成工程は、発光素子の光取り出し部上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成する工程である。
【0017】
−発光素子−
前記発光素子としては、特に制限はなく、例えば、LED、有機電界発光素子などが挙げられる。
前記LEDとしては、特に制限はなく、例えば、窒化ガリウム系化合物半導体、炭化シリコン系化合物半導体、セレン化亜鉛系化合物半導体、硫化亜鉛系化合物半導体などが挙げられる。
前記発光素子の光取り出し部としては、特に制限はなく、例えば、p型半導体層、n型半導体層、封止層、有機EL層などが挙げられる。前記発光素子の製造工程及び光取り出し部については後述する。
【0018】
−有機溶媒−
前記有機溶媒としては、ポリマー溶液上に水滴粒子を形成させポリマー溶液塗布膜中に水滴の一部を入り込ませるために非水溶性溶媒であることが好ましい。また、前記有機溶媒としては、ポリマー溶液上に形成された水滴を避けて先に蒸発させる必要があることから、水の沸点より低い沸点であることが好ましい。
【0019】
前記非水溶性溶媒としては、例えば、ハロゲン系有機溶剤、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類、非水溶性ケトン類、エーテル類、二硫化炭素などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記はハロゲン系有機溶剤としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。
前記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記非水溶性ケトン類としては、例えば、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0020】
−疎水性ポリマー−
前記疎水性ポリマーとしては、前記有機溶媒に溶解すれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー、ポリエステル、ポリラクトン、ポリアミド又はポリイミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ビニル重合ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸などが挙げられる。
前記ポリラクトンとしては、例えば、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。
前記ポリアミドとしては、例えば、ナイロンやポリアミド酸などが挙げられる。
【0023】
前記疎水性ポリマーを有機溶媒で溶解したポリマー膜を用いて複数の凹部を形成させる場合、前記ポリマー溶液における前記疎水性ポリマーの濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.02質量%〜10質量%がより好ましく、0.05質量%〜5質量%が特に好ましい。
前記ポリマー濃度が、0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、細孔のサイズや配列が乱れてしまったりするなどの障害が生じることがあり、30質量%を超えると、凹部が得られにくくなることがある。
【0024】
−両親媒性化合物−
前記両親媒性化合物は、親水性であるとともに親油性でもある物質であり、具体的には、親水基と疎水基をもつ化合物である。前記両親媒性化合物としては、市販される多くの界面活性剤のようなモノマーの他に、二量体や三量体等のオリゴマー、ポリマーを用いることができ、前記疎水性ポリマーに対する分散状態を制御するにはポリマーを用いることが好ましい。
【0025】
前記ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性化合物、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0026】
前記ポリマーの中でも、疎水性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶媒への溶解性に影響しない範囲で疎水性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成しているブロックポリマーであることが好ましい。
【0027】
前記疎水性側鎖としては、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。また、前記疎水性側鎖としては、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。
前記親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
【0028】
前記疎水性側鎖と前記親水性側鎖との比率としては、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶媒の疎水性の強さなどに応じて異なり一概には規定できないが、ユニット比(親水基:疎水基)が、0.1:9.9〜4.5:5.5であることが好ましい。前記ユニット比(親水基:疎水基)の親水基比が0.1未満であると、凹部のサイズが不均一となることがあり、4.5を超えると、疎水性有機溶媒に溶解せず析出するという問題がある。
【0029】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物の数平均分子量(Mn)としては、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。
前記数平均分子量が、1,000未満であると、材料が脆くなり取り扱い性が損なわれることがあり、10,000,000を超えると、疎水性溶媒に溶解しにくいという問題が生じることがある。
【0030】
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物との組成比率(質量比率)としては、99:1〜50:50が好ましく、90:10〜80:20がより好ましい。
前記比率が、50:50よりも前記疎水性ポリマーの比率が小さくなると、膜の安定性、特に力学的な安定性が十分に得られなくなることがあり、99:1よりも前記疎水性ポリマーの比率が大きくなると、均一に分散した凹部が得られなくなることがある。
【0031】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物としては、得られる膜の機械的強度の点で分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーであることが好ましい。また、前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物の少なくともいずれかとともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物により複数の凹部を形成させたポリマー溶液塗布膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことも好ましい。
【0032】
前記多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、これらの変性物などが使用できる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物とを有機溶媒で溶解したポリマー膜を用いて複数の凹部を形成させる場合、前記ポリマー溶液における前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物の両者を合わせたポリマー濃度としては、0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%がより好ましい。
前記ポリマー濃度が、0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、細孔のサイズや配列が乱れてしまったりするなどの障害が生じることがあり、10質量%を超えると、凹部が得られにくくなることがある。
【0034】
−ポリマー溶液の塗布−
前記ポリマー溶液を光取り出し部15上に塗布する方法としては、特に限定はなく、例えば、スピンコート法、ディップ法、インクジェット塗布法、スライド法、エクストリュージョン法、バー法、グラビア法などを用いることができる。
【0035】
前記ポリマー溶液を塗布する時間(発光素子の光取り出し部上への前記ポリマー溶液の塗布の開始から終了までの時間)としては、特に限定はなく、適宜変更することができ、例えば、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。
前記塗布する時間が、60秒を超えると、塗布中に乾燥が促進するため厚みムラが生じてしまうことがある。
【0036】
前記ポリマー溶液を光取り出し部15上に塗布することで形成された前記ポリマー溶液塗布膜17のWet厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5μm〜2,000μmが好ましく、10μm〜1,000μmがより好ましく、20μm〜500μmが特に好ましい。
前記Wet厚みが、5μm未満であると、均一に塗布膜を形成することが困難となることがあり、2,000μmを超えると、生産性が低くなることがある。
前記Wet厚みは、例えばレーザー変位計(キーエンス社製、LTシリーズ又はSIシリーズ)等により測定することができる。
また、凹部形成膜のDry厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm〜100μmであることが好ましい。
【0037】
<水滴形成工程>
前記水滴形成工程(結露工程)は、図1Bに示すように、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する工程である。
【0038】
−水滴形成雰囲気−
前記水滴形成雰囲気の相対湿度としては、50%〜99%が好ましく、55%〜95%がより好ましく、60%〜90%が特に好ましい。
前記相対湿度が、50%未満であると、水滴が形成されないことがあり、99%を超えると、水滴の形成が過多になり構造が不均一になることがある。前記相対湿度は、例えば、KANOMAX社製クリモマスター風速計(Model6543−01)を使用して10回測定した平均値である。
【0039】
前記水滴形成雰囲気の温度としては、10℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃がより好ましい。
前記温度が、10℃未満であると、結露しすぎてしまい孔のサイズが不均一になることがあり、50℃を超えると、結露による水滴形成が困難になることがある。
ここで、前記温度は、例えばクリモマスター風速計(KANOMAX社製、Model6543−01)を使用して測定することができる。
【0040】
前記水滴形成雰囲気中での水滴52の露点TD1(℃)としては、ポリマー溶液塗布膜17の表面温度TL(℃)に対して0℃≦(TD1−TL)℃が好ましく、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃がより好ましく、1℃〜60℃がさらに好ましく、3℃〜20℃が特に好ましい。
前記(TD1−TL)℃が、0℃未満であると、水滴が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、水滴と乾燥とが急峻となり、凹部の孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。なお、前記水滴の露点Tdは、クリモマスター風速計(KANOMAX社製、Model6543−01)を使用して測定した平均値である。
【0041】
前記ポリマー溶液塗布膜17の表面温度TL(℃)としては、0℃〜40℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましく、0℃〜20℃が特に好ましい。
前記表面温度TLは、発光素子を温度調整が可能な支持体に載せることで積極的に制御可能である。前記支持体の温度調整方法としては、例えば、恒温槽を用いて一定温度に制御された液体の熱媒を循環させる方法や、電子冷却ユニット(ペルチェ素子)を用いる方法などがある。
前記表面温度TLが、30℃を超えると、結露による水滴形成が困難になることがある。なお、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TLは、デジタル放射温度センサ(キーエンス社製、FT−H30)を使用して測定した平均値である。
【0042】
前記水滴形成雰囲気下に発光素子を置く時間としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、1秒〜3,000秒が好ましく、10秒〜2,000秒がより好ましく、20秒〜1,500秒が特に好ましい。
前記時間が、1秒未満であると、結露による水滴が形成されず凹部が形成されないことがあり、3,000秒を超えると、凹部のサイズが不均一となったり、生産性が劣ることがある。
【0043】
前記発光素子の載置方法としては、特に限定されないが、ポリマー溶液塗布膜17上に水滴52を形成させる必要があるので、ポリマー溶液塗布膜17が上面となるように載置することが好ましい。
【0044】
前記水滴形成雰囲気下とする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結露用に調整された風の送風、などの方法が挙げられる。これらの中でも、結露の水滴形成による凹部の形成と溶媒の乾燥による凹形状の固定化両立の観点で結露用に調整された風をポリマー溶液塗布膜上に送風することが特に好ましい。
【0045】
−風−
前記風41の相対湿度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50%〜99%が好ましく、55%〜95%がより好ましく、60%〜90%が特に好ましい。
前記相対湿度が、50%未満であると、水滴が形成されないことがあり、99%を超えると、水滴の形成が過多になり構造が不均一になることがある。
【0046】
前記風41の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10℃〜100℃が好ましく、15℃〜60℃がより好ましく、20℃〜40℃が特に好ましい。
前記風の温度が、10℃未満であると、結露による水滴の形成が不均一となってしまうことがあり、100℃を超えると、ポリマー溶液塗布膜内に水滴が生じる前に、水蒸気として揮発してしまうことがある。
【0047】
前記風41の送風方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、発光素子の光取り出し部の表面に沿っての送風(平行流(並流))、垂直風、前記平行流と前記垂直流との中間の角度から送風される風などが挙げられる。これらの中でも、均一性の観点から平行流が好ましい。
【0048】
前記風41の送風速度(発光素子を移動させながら結露させるときは相対速度)としては、0.05m/s〜20m/sが好ましく、0.1m/s〜15m/sがより好ましく、2m/s〜10m/sが特に好ましい。
前記送風速度が、0.05m/s未満であると、水滴52が、ポリマー溶液塗布膜17中で充分に成長しないことがあり、20m/sを超えると、ポリマー溶液塗布膜17表面に乱れが生じたり、水滴52が十分に形成されないことがある。
【0049】
図1Bに示すように、風41中の水分(モデル的に図示している)51は、ポリマー溶液塗布膜17上で結露して水滴(液滴)52となる。そして、図1Bに示すように水滴52を核として水分51が結露して水滴52を成長させる。
【0050】
<水滴成長工程>
前記水滴成長工程は、前記水滴形成工程にてポリマー溶液塗布膜17上で形成した水滴52を好ましい大きさに成長させる工程であり、必要に応じて省略することができる。
前記水滴52を成長させる方法としては、ポリマー溶液塗布膜17の表面温度TLと水滴52の露点TD1とのいずれか一方を制御することが好ましく、水滴52の露点TD1(℃)とポリマー溶液塗布膜17の表面温度TL(℃)との差(ΔT=TD1−TL)が0℃〜20℃(0℃<ΔT<20℃)が好ましい。
前記ΔTが、0℃未満であると、水滴52の成長が不十分となり、密な状態に形成されないため、凹部の形状や大きさ及び配列が不均一となることがあり、20℃を超えると、水滴52が局所的に多層化、つまり三次元的に形成され、凹部の形状や大きさ及び配列が不均一となることがある。
【0051】
前記水滴52の露点TD1としては、送風口から送風される風41の条件を制御することで変化させることができる。前記ΔTを0℃<ΔT<20℃とすることにより、水滴52をゆっくり成長させるとともに水滴52の配列を促し、均一な水滴52を密に形成することができる。
【0052】
<凹部形成工程>
前記凹部形成工程は、図1(C)に示すように、有機溶媒321および水滴52を蒸発させて、ポリマー溶液塗布膜17に凹部18を形成し、凹部形成膜171を形成させる工程である。前記有機溶媒321及び前記水滴52を蒸発させる方法としては、乾燥雰囲気下に発光素子を置く方法が挙げられる。前記乾燥雰囲気下にする方法としては、乾燥風42を送風する方法、その他減圧乾燥法などが挙げられる。
【0053】
−乾燥雰囲気下−
前記水蒸気53の露点TD2(℃)とポリマー溶液塗布膜17の膜面温度TL(℃)との関係としては、(TL−TD2)℃≧1℃が好ましい。これにより、ポリマー溶液塗布膜17の水滴52の成長を停止させて、水滴52を構成する水分を水蒸気53として揮発させることができる。
【0054】
前記凹部形成工程においては、水滴が形成したポリマー溶液塗布膜中の有機溶媒をまず蒸発させる(溶媒蒸発工程)、塗布溶液中のポリマーが析出して凹部形成膜の流動性が低下した後に、水滴を蒸発させる(水滴蒸発工程)。凹部形成膜が固定化される前に、水滴が先に蒸発してなくなってしまうと、凹部は形成されない。
【0055】
−溶媒蒸発工程−
光取り出し部表面の温度を変えることにより、水滴形成工程から溶媒蒸発工程へ移行させる。
前記溶媒蒸発工程の開始では、送風ダクトからの空気の露点が水滴形成工程における露点よりも低くなるように制御する。
前記溶媒蒸発工程では、水滴が完全には蒸発しないように、より好ましくはできるだけ水滴の蒸発を抑えて溶媒だけを蒸発させるようにするために、光取り出し部の温度を調節し、加えて送風ダクトからの空気の条件を調節する。
溶媒がポリマー溶液塗布膜から蒸発している間に、個々の水滴は大きく成長するとともにポリマー溶液塗布膜の中に入り込む。
【0056】
溶媒蒸発工程では、0℃<TD−TS≦10℃の条件を満たすように光取り出し部の温度を制御することが好ましい。光取り出し部の温度制御に加えて、送風ダクトからの空気の条件、即ち温度、湿度、風速を制御することがより好ましい。TD−TSが0℃以下の場合には、水滴の成長が不十分で密な状態に形成せず、水滴が消滅することで、凹部が形成されなかったり、凹部の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。また、TD−TSが10℃よりも大きいと、水滴が局所的に厚み方向にも重なる等、凹部の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。
【0057】
−水滴蒸発工程−
次に、光取り出し部の表面の温度を変えることにより水滴蒸発工程を開始する。
水滴蒸発工程では、TS>TDの条件となるように光取り出し部の温度を制御することがより好ましい。光取り出し部の温度制御に加えて、送風ダクトからの送風を実施することがより好ましい。この水滴蒸発工程は、水滴の蒸発を主たる目的としているが、溶媒蒸発工程で蒸発しきれなかった溶媒も蒸発させてもよい。
【0058】
送風ダクトから出される空気の風速としては、0.02m/秒以上20m/秒以下が好ましく、0.05m/秒以上10m/秒以下がより好ましく、0.1m/秒以上5m/秒以下が特に好ましい。
前記風速が、0.02m/秒未満であると、水滴が細密に配列して形成されない場合があり、20m/秒を超えると、ポリマー溶液塗布膜の露出面が乱れたり、水滴形成工程における結露が充分に進行しなかったりすることがある。
【0059】
前記乾燥風の送風方向としては、前記光取り出し部の表面に沿って送風(平行流(並流))、垂直風、前記平行流と前記垂直流との中間の角度から送風される風などが挙げられる。これらの中でも、均一性の観点から平行流が好ましい。
【0060】
前記乾燥風の送風速度としては、0.05m/s〜20m/sが好ましく、0.1m/s〜15m/sがより好ましく、0.5m/s〜10m/sが特に好ましい。
前記送風速度が、0.05m/s未満であると、水滴からの水分の蒸発が充分に進行しないことがあり、生産性にも劣ることがあり、20m/sを超えると、水滴から水分の蒸発が急激に生じて、形成される凹部の形態が乱れることがある。
【0061】
前記乾燥風がポリマー溶液塗布膜に送風されると、有機溶媒がポリマー溶液塗布膜より揮発する。なお、この際にも水滴からも水分が揮発するが、有機溶媒は水滴よりも揮発性が高いので、有機溶媒の揮発速度の方が速い。そのため、水滴は、有機溶媒の揮発に伴い表面張力により略均一の形態となる。更に、乾燥が進行するとポリマー溶液塗布膜の水滴から水分が水蒸気として揮発する。ポリマー溶液塗布膜から水滴が蒸発すると、水滴を形成していた箇所が凹部の各孔となる。前記有機溶媒及び水滴がポリマー溶液塗布膜から完全に蒸発することで、前記光取り出し部上に凹部形成膜(ポリマー塗布膜)が形成される。
【0062】
前記乾燥風を送風する方法以外としては、減圧乾燥法により乾燥することも可能である。前記減圧乾燥法を行うことで、有機溶媒と水滴の水分との蒸発速度を調整することが可能となる。これを調整することで、ポリマー溶液塗布膜中に水滴を形成し、有機溶媒を蒸発させつつ水滴を蒸発させ、前記水滴が設けられている位置における凹部の各孔の大きさ、形状などを変化させることができる。
【0063】
また、ポリマー溶液塗布膜の表面から3mm〜20mm程度離れた位置に、ポリマー溶液塗布膜の表面より冷却され表面に溝を有する凝縮器を設けて、凝縮器の表面で水蒸気(揮発有機溶媒も含む)を凝縮させて乾燥させる方法も適用することができる。前記いずれかの乾燥方法を適用することで、ポリマー溶液塗布膜の膜面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
【0064】
また、送風機、乾燥機を複数用いたりすることにより、異なる露点条件を設定したり、異なる乾燥温度条件を設定したりすることができる。これら条件を選択することで、各凹部の寸法制御性の向上や均一性の向上を図ることができる。
【0065】
−凹部−
前記凹部18の隣接する凹部18の中心間の平均距離P(以下、ピッチ間隔ともいう。)(単位nm)としては、発光素子から出射される光の波長の1/4以上(nm)が好ましく、100nm〜10,000nmがより好ましく、150nm〜2,000nmが特に好ましい。
前記ピッチ間隔Pが、光の波長の1/4未満であると、回折が起こらず発光素子からの光取り出し効率は向上しないことがあり、2,000nmを超えると、回折による光取り出し効率向上効果が低減することがある。なお、ピッチ間隔Pは、図4に示したように、凹部18が形成されているポリマー溶液塗布膜17の表面を上から見たとき、各凹部18の外接円を計測し、隣接する外接円の中心間の平均距離を10点測定した平均値をいう。外接円は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。
【0066】
前記凹部18の平均深さDとしては、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましく、0.1μm〜30μmが特に好ましい。
前記平均深さDが、0.01μm未満であると、光取り出し効率向上の効果が発現しなくなることがあり、100μmを超えると、製造に時間がかかり過ぎて生産性が低くなったり、凹部が均一に形成されないことがある。前記凹部における凹部の平均深さDは、形状測定レーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−8700)を用いて凹部の深さを10点測定した平均値である。
【0067】
前記水滴形成工程及び前記凹部形成工程としては、風41を送風する送風機を有する結露ゾーン(水滴形成ゾーン)及び乾燥風42を送風する送風機を有する乾燥ゾーンに区画されている製造装置で行うことができる。具体的には、光取り出し部上にポリマー溶液塗布膜が形成された発光素子を流延ベルトに載置し、発光素子を結露ゾーンに搬送して前記水滴形成工程が行われる。前記水滴形成工程終了後、乾燥ゾーンに搬送し、前記凹部形成工程が行われる。
【0068】
<エッチング工程>
前記エッチング工程は、前記凹部形成膜171をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行う工程である。
【0069】
前記エッチングとしては、ドライエッチング及びウエットエッチングのいずれかであることが好ましい。
【0070】
−ドライエッチング−
前記ドライエッチングとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチングなどがある。エッチングガスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ハロゲンを含む化合物が用いられ、例えばSF6、CF4、CHF3、XeF2などが挙げられる。
ドライエッチングにおいては、用いられるガス、処理時間などによって対象物の深さや形状を変化させることができる。
【0071】
−ウエットエッチング−
前記ウエットエッチングとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば光取り出し部材をエッチングするにはフッ酸と硝酸とを混合した液を作製し、この溶液中に光取り出し部材を浸漬する方法によって処理することができる。また、浸漬時間によってエッチングにより処理される深さなどを制御可能である。
【0072】
前記凹部形成膜171をマスクとしてエッチングを行うことにより、エッチングの効率が向上し、エッチングの照射角度をふることで、異方性を出すことが可能となる。また、凹部形成膜171は、通常のレジストパターンとは形状が異なるが、露出部分の面積が同じでも、レジストパターンの体積が少ないので、エッチング後のパターンの除去が容易である。
【0073】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、光取り出し部の形成工程、洗浄工程、研磨工程などを適宜行うことができ、これらの工程は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【0074】
<<光取り出し部の形成工程>>
前記光取り出し部の形成工程とは、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、前記凹部形成工程、及び前記エッチング工程の前後に前記発光素子の光取り出し部を形成する工程である。以下、説明の便宜上、発光素子がLEDであって、光取り出し部がp型半導体層である場合及び発光素子が有機電界発光素子であって、光取り出し部が封止層である場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
<<<LEDの作製>>>
前記LEDとしては、図2に示すように、基板11上にn型電極12(第1の電極)とp型電極16(第2の電極)とを有し、さらに、n型半導体層13、発光層14、p型半導体層15が順次積層された構造を有する。前記LED1は、光取り出し効率を向上させるために、凹凸構造がp型半導体層15に形成されている。凹凸構造は、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、前記凹部形成工程、及び前記エッチング工程を行うことで形成される。前記LED1は、必要に応じて、各層の間に例えば、バッファ層、透明層、電子障壁層などを積層させてもよい。
【0076】
−n型半導体層の形成−
前記n型半導体層13の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記したn型半導体層13を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0077】
前記LED1の基板11としては、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、基板11の材料として公知のものの中から、適宜選択することができ、例えば、サファイア、シリコンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
前記基板11の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。前記基板11の厚みが、50μm未満であると、取り扱い性が劣り、変形するおそれがある。
【0079】
前記n型半導体層13の機能としては、後述する発光層14の発光波長において透光性を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はない。前記n型半導体層13の材料としては、例えば、GaNなどが挙げられる。
【0080】
−発光層の形成−
前記発光層14は、電界印加時に正孔を受け取り、電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。前記発光層14の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記発光層14を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0081】
前記発光層14としては、電界を印加されて光を発するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。前記発光層14の材料としては、有機発光材料からなるものであっても、無機発光材料からなるものであってもよいが、低コスト、発光効率が可能な点で、無機発光材料が好ましい。
前記無機発光材料としては、所望の色調に応じて選択することが可能であり、例えば、InGaN、GaN、GaP、AlGaAsなどが挙げられる。
【0082】
−p型半導体層の形成−
前記p型半導体層15は、前記発光層14の光取り出し側に有し、光取り出し部材として機能する層である。前記p型半導体層15の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記p型半導体層15を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0083】
前記p型半導体層15としては、発光層14の光取り出し側に有し、光取り出し部材としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はない。前記p型半導体層15を構成する材料としては、例えば、GaN、GaP、AlGaAsなどが挙げられる。
【0084】
−−凹部形成膜の形成−−
前記p型半導体層15上にポリマー溶液17を塗布し(ポリマー溶液塗布膜形成工程)、前記水滴形成工程が行われた後、ポリマー溶液塗布膜17に凹部18を形成し(凹部形成工程)、完全に有機溶媒及び水滴をポリマー溶液塗布膜17から除去した膜(凹部形成膜)をマスクとし、エッチングを行うことで凹凸構造が形成される。なお、前記p型半導体層15上にPETフィルムを積層させ、PETフィルム上にポリマー溶液を塗布するようにしてもよい。
【0085】
−n型電極の形成−
前記n型電極12は、透光性を有し、p型電極16へとLED1の厚み方向に電流を注入する。前記n型電極の形成方法としては、具体的には、p型半導体層15及び発光層14を部分的にエッチングしてn型半導体層13を露出させた後、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から適宜選択した方法に従って形成する。
【0086】
−p型電極の形成−
前記p型電極16は、透光性を有し、前記n型電極12とともにLED1の厚み方向に電流を流す。前記p型電極16の形成方法としては、前記凹部形成膜171上に公知の方法に従って形成させることができ、例えば、蒸着法、CVD、プラズマCVD法などの化学的方式などの中から、p型電極16を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0087】
<<<有機電界発光素子の作製>>>
前記有機電界発光素子2は、図3に示すように、基板21上に有機EL層22、封止層23が順次積層された構造を有する。
【0088】
−有機EL層の形成−
前記有機EL層22は、正極(第1の電極)と負極(第2の電極)とを有し、前記陽極と負極との間に正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を少なくとも含む。前記有機EL層の形成としては、基板上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び負極の順で形成する。
【0089】
前記有機電界発光素子2の基板21としては、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、情報記録媒体である場合には、円板状である。また、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、前記材質としては、基板材料として公知のものの中から、適宜選択することができ、例えば、ニッケル、アルミニウム、ガラス、シリコン、石英、透明樹脂などが挙げられる。これらの中でも、透明性の点から、石英、ガラス、透明樹脂が好ましく、石英が特に好ましい。
【0090】
前記基板21の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
前記基板2の厚みが、50μm未満であると、取り扱い性が劣り、変形するおそれがある。
【0091】
−−陽極の形成−−
前記陽極の機能としては、通常、発光層に正孔を供給する電極であればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機EL層22の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0092】
前記陽極の形成方法としては、フォトリソグラフィなどによる化学的エッチングによって行ってもよく、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよく、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0093】
前記陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、導電性金属酸化物、金属、金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、無機導電性物質、有機導電性材料及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
前記導電性金属酸化物としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などが挙げられる。
前記金属としては、アルミニウム、金、銀、クロム、ニッケルなどが挙げられる。
前記無機導電性物質としては、ヨウ化銅、硫化銅などが挙げられる。
前記有機導電性材料としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどが挙げられる。
この中で好ましいのは、金属であり、特に、生産性、高導電性、反射率等の点からはアルミニウムが好ましい。
【0094】
前記陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μmが好ましく、50nm〜20μmがより好ましい。
【0095】
−−正孔輸送層の形成−−
前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。前記正孔輸送層の形成としては、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法などの中から、正孔輸送層を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0096】
前記正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボンなどが挙げられる。
【0097】
前記正孔輸送層の厚みとしては、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下が好ましく、1nm〜500nmがより好ましく、5nm〜200nmが更に好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
【0098】
−−発光層の形成−−
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔輸送材料から正孔を受け取り、陰極、電子輸送材料から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。前記発光層の形成方法としては、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法などの中から、発光層を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0099】
前記発光層を構成する材料としては、電界を印加されて光を発するものであれば、特に制限はなく、例えば、有機発光材料、無機発光材料が挙げられるが、中でも、発光効率、装置の大型化が可能な点で、有機発光材料が好ましい。
【0100】
前記有機発光材料としては、所望の色調に応じて選択することが可能であり、例えば、青色から青緑色の発光を得るためには、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などが好ましい。
【0101】
また、前述の材料をホスト材料として用い、これにドーパントを添加することによって発光層を形成してもよい。ドーパントとして用いることができる材料としては、たとえばレーザー色素としての使用が知られているペリレン(青色)などを用いることができる。
【0102】
−−電子輸送層の形成−−
前記電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。また、発光層の光取り出し側に有し、光取り出し部材としての機能を有する。前記電子輸送層の形成としては、特に制限はなく、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法などのいずれによっても好適に形成することができる。
【0103】
前記電子輸送層を構成する材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体、金属錯体、有機シラン誘導体などが挙げられる。
前記芳香環テトラカルボン酸無水物としては、ナフタレン、ペリレンなどが挙げられる。
前記金属錯体としては、8−キノリノール誘導体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体が挙げられる。
【0104】
前記電子輸送層の厚みとしては、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下であることが好ましく、1nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜200nmであることが更に好ましく、10nm〜100nmであることが特に好ましい。
【0105】
前記電子輸送層としては、陰極側の面もしくは陰極側とは反対の面に、電子注入層を有していてもよい。前記電子注入層としては、電子輸送層の陰極側の面に有することが好ましい。前記電子注入層の材料、及び形成としては、上述した電子輸送層におけるものと同一のものが好適に挙げられる。
【0106】
前記電子注入層の厚みとしては、500nm以下であることが好ましく、0.1nm〜200nmであることがより好ましく、0.2nm〜100nmであることが更に好ましく、0.5nm〜50nmであるのが特に好ましい。
【0107】
−−陰極の形成−−
前記陰極としては、通常、発光層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、加工対象物の用途、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0108】
前記陰極の形成としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0109】
前記陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウムなどが挙げられる。
前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが挙げられる。
前記アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。
前記希土類金属としては、イッテルビウムなどが挙げられる。
【0110】
これらの中でも、前記陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、膜質、光反射に優れる点で、銀を主体とする材料が好ましい。前記銀を主体とする材料とは、銀単独、銀と0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−銀合金、マグネシウム−銀合金など)をいう。
【0111】
なお、前記陰極を構成する材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0112】
前記陰極の厚みとしては、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、10nm〜5μmが好ましく、15nm〜1μmがより好ましい。
【0113】
前記陰極としては、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、前記透明な陰極は、陰極の材料を1nm〜20nmの厚さに薄く形成し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成させることができる。
【0114】
−封止層の形成−
前記封止層23としては、外部からの水分の透過を防止することを目的としており、必要に応じて省略することができる。前記発光層の光取り出し側に位置する前記封止層23は、光取り出し部材としての機能を有する。前記封止層23の形成としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記封止層23を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0115】
前記封止層23としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、各種無機化合物又は有機化合物からなる単層構造又は積層構造であってもよい。
前記無機化合物としては、SiNx、SiON、SiO2、Al2O3、TiO2などが挙げられる。
前記有機化合物としては、シリコン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマーなどが挙げられる。
【0116】
前記封止層23の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、1μm〜5μmが好ましく、1.5μm〜4μmがより好ましい。
【0117】
−−凹部形成膜の形成−−
封止層23上にポリマー溶液を塗布し(ポリマー溶液塗布膜形成工程)、前記水滴形成工程が行われた後、ポリマー溶液塗布膜17に凹部を形成し(凹部形成工程)、完全に有機溶媒及び水滴をポリマー溶液塗布膜から除去した膜(凹部形成膜)をマスクとし、エッチングを行うことで封止層23上に凹凸構造が形成される。なお、封止層23上にPETフィルムを積層させ、PETフィルム上にポリマー溶液を塗布するようにしてもよい。
【0118】
[第2実施形態]
第2実施形態では、図6に一例を示すように、予め形成させた凹部形成膜上に、接着剤を介して光取り出し部を貼り付け、前記凹部形成膜の表面部分を剥離することで突起構造体63を形成する突起構造体形成工程を含む点で第1実施形態と相違する。また、エッチング工程では、前記突起構造体をマスクとしてエッチングを行う点で相違する。
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する。
【0119】
<突起構造体形成工程>
前記突起構造体形成工程は、前記複数の凹部18に接着剤62を介して光取り出し部15を貼り付け(図6A)、該光取り出し部15を剥がして前記複数の凹部18の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離することによって(図6B)、前記光取り出し部15上に複数の突起構造体63を形成する工程である。
前記凹部形成膜としては、基材などの上部に第1実施形態と同様に形成させる。なお、図6A中の矢印は、光取り出し部を押圧する方向を表し、図6B中の矢印は、剥離方向を表す。
【0120】
−基材−
前記基材の材質としては、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、SiO2膜被覆シリコン基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエーテルケトン、ポリフッ化エチレン等のポリマー基板;鉄、タングステン等の金属基板などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコン基板、金属基板が特に好ましい。
【0121】
−接着剤−
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などが挙げられる。
前記接着剤は、前記複数の凹部と前記光取り出し部との間に介在していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光取り出し部表面に塗布する方法、複数の凹部表面に塗布する方法などが挙げられる。
前記塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、スプレーコーター、バーコーター等を用いる塗布方法などが挙げられる。
【0122】
前記複数の凹部に接着剤を介して光取り出し部を貼り付け、該光取り出し部を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離することにより、前記光取り出し部上に突起構造体が形成される。
前記突起構造体は、凹部形成膜における力学的強度の弱いくびれた部分(中心部分)で分割された表面部分の突起構造に起因する。
前記突起構造体における突起の高さとしては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。
前記突起構造体における突起間隔としては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。ここで、前記突起間隔とは、隣接する突起構造体間の最短距離を表す。
前記突起構造体における突起の比(高さ/突起間隔)が、0.01以上100以下であることが好ましい。
前記突起構造体における突起形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、略円錐乃至略角錐形状であることが好ましい。
ここで、前記突起構造体の突起高さ、突起間隔、突起形状などは、例えば、電解放出走査型電子顕微鏡などにより測定することができる。
【実施例】
【0123】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0124】
(実施例1)
<有機電界発光素子の作製>
−発光部の形成−
TFT(アクティブマトリックス)基板上に形成された反射電極層(Al)上に、下記の条件で、正孔注入層、正孔輸送層、青色発光層、緑色発光層、赤色発光層、電子輸送層、電子注入層、及び上部電極層を、この順で形成した。
【0125】
−緑色発光層−
反射電極層(陽極)上に、ホール注入層として2−TNATA〔4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕とMnO3を7:3の割合で、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0126】
次に、ホール注入層上に、第1のホール輸送層として2−TNATAにF4−TCNQ(2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)を1.0%ドープして141nmの厚みとなるように、真空蒸着により形成した。
【0127】
次に、第1のホール輸送層上に、第2のホール輸送層としてα−NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、厚みが10nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0128】
次に、第2のホール輸送層上に、第3のホール輸送層として下記構造式で表されるホール輸送材料Aを、厚みが3nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0129】
【化1】
【0130】
次に、第3のホール輸送層上に、発光層を、ホスト材料としてCBP(4,4’−ジカルバゾール−ビフェニル)と、発光材料として下記構造式で表される発光材料Gを、85:15の割合で、厚みが20nmとなるように、真空共蒸着により形成した。
【0131】
【化2】
【0132】
次に、発光層上に、第1の電子輸送層としてBAlq(アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)−4−フェニルフェノレート)を、厚みが39nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0133】
次に、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層としてBCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリン)を、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0134】
次に、第2の電子輸送層上に、第1の電子注入層としてLiFを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0135】
次に、第1の電子注入層の上に、第2電子注入層としてAlを、厚みが0.5nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0136】
次に、第2電子注入層上に、陰極として銀(Ag)を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0137】
−赤色発光層−
反射電極層(陽極)上に、ホール注入層として2−TNATA〔4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕とMnO3を7:3の割合で、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0138】
次に、ホール注入層上に、第1のホール輸送層として2−TNATAにF4−TCNQを1.0%ドープして196nmの厚みとなるように、真空蒸着により形成した。
【0139】
次に、第1のホール輸送層上に、第2のホール輸送層としてα−NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、厚みが10nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0140】
次に、第2のホール輸送層上に、発光層を、ホスト材料としてBAlqと、発光材料として下記構造式で表される発光材料Rを、95:5の割合で、厚みが30nmとなるように、真空共蒸着により形成した。
【0141】
【化3】
【0142】
次に、発光層上に、第1の電子輸送層としてBAlqを、厚みが48nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0143】
次に、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層としてBCPを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0144】
次に、第2の電子輸送層上に、第1の電子注入層としてLiFを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0145】
次に、第1の電子注入層の上に、第2電子注入層としてAlを、厚みが0.5nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0146】
次に、第2電子注入層上に、陰極として銀(Ag)を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0147】
−青色発光層−
反射電極層(陽極)上に、ホール注入層として2−TNATA〔4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕とMnO3を7:3の割合で、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0148】
次に、ホール注入層上に、第1のホール輸送層として2−TNATAにF4−TCNQを1.0%ドープして110nmの厚みとなるように、真空蒸着により形成した。
【0149】
次に、第1のホール輸送層上に、第2のホール輸送層としてα−NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、厚みが10nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0150】
次に、第2のホール輸送層上に、第3のホール輸送層として下記構造式で表されるホール輸送材料Aを、厚みが3nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0151】
次に、第3のホール輸送層上に、発光層を、ホスト材料としてmCP(1,3−ビス(カルバゾーリル)ベンゼン)と、発光材料として下記構造式で表される発光材料Bを、85:15の割合で、厚みが30nmとなるように、真空共蒸着により形成した。
【0152】
【化4】
【0153】
次に、発光層上に、第1の電子輸送層としてBAlqを、厚みが29nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0154】
次に、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層としてBCPを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0155】
次に、第2の電子輸送層上に、第1の電子注入層としてLiFを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0156】
次に、第1の電子注入層の上に、第2電子注入層としてAlを、厚みが0.5nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0157】
次に、第2電子注入層上に、陰極として銀(Ag)を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0158】
このようにして反射電極上に形成された各色の発光層を有する発光部の発光面の発光面積は、100×100μmであった。
【0159】
このようにして形成した上部電極上に、封止層として、SiON層を低温CVD法で3μm形成した。なお、SiON層は、図3に示すように、有機EL層を覆うように形成し、形成した3μmの厚みは、発光部の発光面からSiON層の表面までの厚みをいう。光取り出し部は、有機EL層上に位置する封止層である。
【0160】
−凹部形成膜の形成−
凹部形成膜の作製は、文献(T.Nishikawa, R.Ookura, J.Nishida, K.Arai, J.Hayashi, N.Kurono, T.Sawadaishi, M.Hara, M.Shimomura, Langmuir,2002,18(15),5734.)に従った。
鋳型となる凹部形成膜の作製には、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンH−3000)と、下記構造式で表されるCap化合物(ドデシルアクリルアミド−ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)とのを質量比で10:1となるように混合したクロロホルム溶液を、封止層上に2mL滴下し、温度25℃、露点20℃の空気を風速0.5m/sで吹き付けた。
【化5】
【0161】
溶液は、次第に白濁し、干渉色が観察され、完全に溶媒、水滴が蒸発した後に走査型電子顕微鏡(SEM)で構造を観察すると、図5に示すように凹部形成膜が形成されているのが観察された。この凹部形成膜は、開口径が600nmで孔と孔のピッチは1μm、凹部の深さは400nmであり、これをそのままエッチングのマスクとして用いた。
【0162】
−エッチング工程−
エッチングには誘導結合プラズマエッチング装置(ICP;dry etching equipment、SPM−200、住友精密工業株式会社製)を用いて、エッチングガスである六フッ化硫黄(SF6)と保護ガスであるパーフルオロシクロブタン(C4F8)を用いて行った。このとき、エッチング工程としてSF6とC4F8をそれぞれ50sccmと90sccmで5.5秒間流してエッチングを行った。また、パッシベーション工程としてC4F8を140sccmで5.0秒間流す工程を行った。上記2工程を交互に繰り返し、合計で10分間エッチングした。エッチング後の封止層をアセトンの50質量%水溶液に浸漬させ、30分間超音波洗浄処理することでマスク(凹部形成膜)を除去することで有機電界発光素子1を作製した。マスクを除去後の封止層を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、マスクに形成されていた周期的な空孔と対応する微細な凹凸構造が観察された。この微細な凹凸構造は、直径が600nmで間隔が1μm、高さが約300nmであった。
【0163】
(比較例1)
<有機電界発光素子の作製>
実施例1において、封止層上に凹凸構造を形成させなかった以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子2を作製した。
【0164】
(実施例2)
<LEDの作製>
LEDの発光素子となる窒化ガリウム系化合物半導体層の積層は、以下に示すように、当該技術分野においてよく知られた通常の条件で行なった。
サファイア基板上に、MOCVD法により厚みが30nmとなるようにIn0.1Ga0.9Nからなるn型半導体層を形成した。
n型半導体層上に、MOCVD法により厚みが5nmとなるようにIn0.2Ga0.8Nからなる発光層を形成した。
発光層上に、MOCVD法により厚みが159nmとなるようにGaNからなるp型半導体層を形成した。
n型半導体層上にNi、Al、Ti、Auの4層よりなるn型電極を形成した。
【0165】
−凹部形成膜の形成−
凹部形成膜の作製は、文献(T.Nishikawa, R.Ookura, J.Nishida, K.Arai, J.Hayashi, N.Kurono, T.Sawadaishi, M.Hara, M.Shimomura, Langmuir,2002,18(15),5734.)に従った。
鋳型となる凹部形成膜の作製には、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンH−3000)と、下記構造式で表されるCap化合物(ドデシルアクリルアミド−ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)とのを質量比で10:1となるように混合したクロロホルム溶液を、封止層上に2mL滴下し、温度25℃、露点20℃の空気を風速0.5m/sで吹き付けた。
【化6】
【0166】
溶液は、次第に白濁し、干渉色が観察され、完全に溶媒、水滴が蒸発した後に走査型電子顕微鏡(SEM)で構造を観察すると、図5に示すように凹部形成膜が形成されているのが観察された。この凹部形成膜は、開口径が600nmで孔と孔のピッチは1μm、凹部の深さは400nmであり、これをそのままエッチングのマスクとして用いた。
【0167】
−エッチング工程−
作製した凹部形成膜をマスクとして塩素ガスを用いてGaNのドライエッチングを行った。エッチング後のGaNをアセトンの50質量%水溶液に浸漬させ、30分間超音波洗浄処理することで凹部形成膜を除去した。凹部形成膜を除去後のp型半導体層を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、マスクに形成されていた周期的な空孔と対応する微細な凹凸構造が観察された。この微細な凹凸構造は、直径が600nmで間隔が1μm、高さが約300nmであった。
【0168】
その後、p型半導体層表面を露出するまでドライエッチングを行い、p型電極としてCuを形成することでLED1を作製した。
【0169】
(実施例3)
<LEDの作製>
実施例2において、以下のように突起構造体を形成し、p型半導体層をエッチングした以外は、実施例2と同様にしてLED2を作製した。
−突起構造体の形成−
基材であるガラス基板上に実施例2と同様の方法により凹部形成膜を形成した後、作製した凹部形成膜をUVオゾン洗浄装置で5分間処理し、ポリビニルアルコール(PVA)の1質量%水溶液を滴下し、1,000rpmで120秒〜150秒間スピンコートした。スピンコートしたサンプルはUVオゾン洗浄装置で1時間表面洗浄したp型半導体層上に貼り付けて剥がしとり、p型半導体層上に突起構造体が残るようにした。次いで、脱イオン水で洗浄し、ドライヤーで乾燥させ、p型半導体層上の余分なPVAを除去することで突起構造体を形成した。
−エッチング工程−
形成させた突起構造体をマスクとして塩素ガスを用いてGaNのドライエッチングを行った。エッチング後のGaNをアセトンの50質量%水溶液に浸漬させ、30分間超音波洗浄処理することで突起構造体を除去した。突起構造体を除去後のp型半導体層を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、マスクに形成されていた周期的な空孔と対応する微細な凹凸構造が観察された。この微細な凹凸構造は、直径が600nmで間隔が1μm、高さが約600nmであった。
【0170】
(比較例2)
<LEDの作製>
実施例2において、p型半導体層上に凹凸構造を形成させなかった以外は、実施例2と同様にしてLED3を作製した。
【0171】
−光取り出し効率−
有機電界発光素子1〜有機電界発光素子2の緑色発光素子に一定電流が加わるように駆動させ、発光させた。その発光スペクトル(光量)を、トプコン社製輝度計SR−3を用いて測定し、発光スペクトル(光量)、及び測定時の電流から発光効率(発光の配光をランバーシアンと仮定)を算出した。有機電界発光素子2の光取り出し効率を1としたときの有機電界発光素子1の光取り出し効率を相対的に評価した。LED1〜LED3についても同様に測定し、LED3の光取り出し効率を1としたときのLED1〜3の光取り出し効率を相対的に評価した。結果を表1に示す。
【0172】
【表1】
【0173】
表1からわかるように、実施例1は比較例1と比べて、実施例2及び3は比較例2と比べて、光取り出し効率が向上していた。また、実施例2と実施例3との比較から、マスクとして突起構造体を用いた実施例3では、マスクとして凹部形成膜を用いた実施例2と比べて、同じエッチング条件で得られる凹凸構造の高さが高くなっており、光取り出し効率が向上していた。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明によれば、簡便に凹凸構造を形成させることができ、凹凸構造の凹部の径、深さが均一であり、凹部が均一に分散した発光素子の製造方法、及びこの凹凸構造が光取り出し部に有することにより、光取り出し効率を維持しつつ、均一に発光する発光素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0175】
1 LED
11 基板
12 n型電極
13 n型半導体層
14 発光層
15 p型半導体層(光取り出し部)
16 p型電極
17 ポリマー溶液塗布膜
171 凹部形成膜
18 凹部
2 有機電界発光素子
21 基板
22 有機EL層
23 封止層(光取り出し部)
321 有機溶媒
41 風
42 乾燥風
51 水分
52 水滴
53 水蒸気
61 基材
62 接着剤
63 突起構造体
【技術分野】
【0001】
本発明は、光取り出し効率を向上させるために凹凸構造を有する発光素子及び発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、省エネルギーで耐久性が高く、また、発光効率が高いことから液晶のディスプレイのバックライト、車のヘッドライト、照明などの分野で幅広く使用されている。近年、液晶ディスプレイの大型化が進み、液晶ディスプレイの大型化に伴いバックライトも大型にする必要がでてきているが、液晶ディスプレイが大型化するほどバックライトが高輝度であることが求められる。このため、LEDの発光効率をさらに改善させる必要がある。
【0003】
前記LEDの発光効率を改善させるには、光取り出し効率を向上させる必要がある。光取り出し効率を改善させる手段として、光取り出し面に微細な凹凸構造を形成させることが知られている。
【0004】
前記微細な凹凸構造を形成させる方法としては、例えば、自己組織化を利用して精度良くナノ凹凸構造を作製する方法が開示されている(非特許文献1)。この方法によれば、ナノ凹凸構造を作製したい対象の表面にSOG(Spin On Glass)層を形成し、その表面に熱を加えると相分離して自己組織的に一定間隔をあけて一定の大きさに凝集するポリマーを塗布し、加熱して自己組織化を行い、その後、自己組織化した組織を残してポリマーを除去するためにプラズマエッチングを行い、残った組織のパターンを下地のSOG層に転写するために、RIE(Reactive Ion Etching)を行い、最後に加工したい表面のエッチングのために誘導結合型プラズマエッチングとアルゴンスパッタリングを行うことで、ナノ凹凸構造を形成させる。
【0005】
また、例えば、レジストやエッチングを用いることで凹凸構造を形成させる方法が開示されている(特許文献1及び特許文献2)。この方法によれば、凹凸構造を形成させたい面にレジスト組成物を塗布してパターニングしてレジストパターンを形成後、レジストパターン上からRIEやイオンミリング法でエッチングを行うことで凹凸構造を形成させる。これらのように形成した凹凸構造によって、光の入射角度が臨界角以内では無反射で光の取り出しが可能となり、臨界角以上の今まで取り出せなかった光は回折効果によって取出しができる。
【0006】
しかし、上記のような方法では、高価なフォトリソグラフィ装置を使用しなければならない。このため、工程数が多く複雑になり、製造コストが高くなるという問題がある。また、RIEなどのエッチングを行うことに伴い基板などがダメージを受けやすく歩留まりが悪化するという問題もある。
【0007】
このため、レジストやエッチングを用いないで、凹凸構造の代わりに多孔質構造を形成させる方法が開示されている(特許文献3)。この方法によれば、光取り出し面の表面をメタノール、フッ酸及び過酸化水素水の混合液に浸すことで多孔質構造を形成させる。この方法によれば、高価なフォトリソグラフィ装置を使用することも無く、エッチングによるダメージを解消させることができる。
【0008】
しかし、上記のような方法では、凹凸構造が不規則であるため多孔質構造の形態によっては、光取り出し効率が低下してしまうという問題がある。現状ではこのような問題があり、その解決が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−196152号公報
【特許文献2】特開2006−49855号公報
【特許文献3】特開2005−244201号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】東芝レビュー Vol.60 No.10 2005年、p32−35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、凹凸構造の凹部の径、深さが均一であり、凹部が均一に分散した発光素子を簡便に製造することができる発光素子の製造方法、及びこの凹凸構造が光取り出し部に有することにより、光取り出し効率を維持しつつ、均一に発光する発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 発光素子の光取り出し部上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、前記凹部形成膜をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含むことを特徴とする発光素子の製造方法である。
前記発光素子の製造方法においては、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程では、発光素子の光取り出し部の表面上に有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜が形成される。
前記水滴形成工程では、発光素子を水蒸気雰囲気中に置き、ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴が形成される。
前記凹部形成工程では、有機溶媒が蒸発すると水滴の一部が露出し、その水滴の一部がポリマー溶液塗布膜に入り込み、孔が形成される。そして、水滴が蒸発することでポリマー溶液塗布膜に複数の凹部が形成される。
前記エッチング工程では、複数の凹部が形成されたポリマー溶液塗布膜をマスクとしてエッチングを行う。その結果、光取り出し部に凹凸がある発光素子が形成される。
<2> 基材上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、前記複数の凹部に接着剤を介して発光素子の光取り出し部を貼り付け、該発光素子の光取り出し部を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記光取り出し部上に突起構造体を形成する突起構造体形成工程と、前記突起構造体をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含むことを特徴とする発光素子の製造方法である。
<3> ポリマー溶液における疎水性ポリマーの濃度が0.01質量%〜30質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<4> 水滴形成工程が10℃〜50℃の温度条件下で行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<5> 水滴形成雰囲気下で光取り出し部の表面に沿って送風が行われる前記<1>から<4>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<6> 水滴形成雰囲気中の水分の露点TD1(℃)をポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃に制御する前記<1>から<5>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<7> ポリマー溶液が両親媒性化合物を含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<8> 凹部間の平均距離が発光素子から出射される光の波長(nm)の1/4以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<9> 凹部の平均深さが0.01μm〜100μmである前記<1>から<8>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<10> 水滴形成工程後に水滴を成長させる水滴成長工程を含む前記<1>から<9>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<11> 水滴形成工程がポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる前記<1>から<10>のいずれかに記載の発光素子の製造方法である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする発光素子である。
<13> ポリマー溶液における疎水性ポリマーの濃度が0.01質量%〜30質量%である前記<12>に記載の発光素子である。
<14> 水滴形成工程が10℃〜50℃の温度条件下で行われる前記<12>から<13>のいずれかに記載の発光素子である。
<15> 水滴形成雰囲気下で光取り出し部の表面に沿って送風が行われる前記<12>から<14>のいずれかに記載の発光素子である。
<16> 水滴形成雰囲気中の水分の露点TD1(℃)は、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃である前記<12>から<15>のいずれかに記載の発光素子である。
<17> ポリマー溶液が両親媒性化合物を含有する前記<12>から<16>のいずれかに記載の発光素子である。
<18> 凹部間の平均距離が発光素子から出射される光の波長(nm)の1/4以上である前記<12>から<17>のいずれかに記載の発光素子である。
<19> 凹部の平均深さが0.01μm〜100μmである前記<12>から<18>のいずれかに記載の発光素子である。
<20> 表面に水滴を形成させた後、前記水滴を成長させる前記<12>から<19>のいずれかに記載の発光素子である。
<21> ポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる前記<12>から<20>のいずれかに記載の発光素子である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、凹凸構造の凹部の径、深さが均一であり、凹部が均一に分散した発光素子を簡便に製造することができる発光素子の製造方法、及びこの凹凸構造が光取り出し部に有することにより、光取り出し効率を維持しつつ、均一に発光する発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、ポリマー溶液塗布膜形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1B】図1Bは、水滴形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1C】図1Cは、凹部形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1D】図1Dは、凹部形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図1E】図1Eは、凹部形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図2】図2は、LEDの一例を示した概略断面図である。
【図3】図3は、有機電界発光素子の一例を示した概略断面図である。
【図4】図4は、図1Eにおける凹部の拡大図である。
【図5】図5は、凹部形成膜を示すSEM写真である。
【図6A】図6Aは、突起構造体形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【図6B】図6Bは、突起構造体形成工程を説明するための一例を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発光素子の製造方法及び発光素子)
[第1実施形態]
第1実施形態の本発明の発光素子の製造方法は、一例として図1A〜図1Eに示すように、ポリマー溶液塗布膜形成工程と、水滴形成工程と、凹部形成工程と、エッチング工程と、その他の工程とを含み、必要に応じて、水滴形成工程後に水滴を成長させる水滴成長工程を含んでいてもよい。
本発明の発光素子は、本発明の発光素子の製造方法により好適に製造される。以下、本発明の発光素子の製造方法の説明を通じて、本発明の発光素子の詳細についても明らかにする。
【0016】
<ポリマー溶液塗布膜形成工程>
前記ポリマー溶液塗布膜形成工程は、発光素子の光取り出し部上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成する工程である。
【0017】
−発光素子−
前記発光素子としては、特に制限はなく、例えば、LED、有機電界発光素子などが挙げられる。
前記LEDとしては、特に制限はなく、例えば、窒化ガリウム系化合物半導体、炭化シリコン系化合物半導体、セレン化亜鉛系化合物半導体、硫化亜鉛系化合物半導体などが挙げられる。
前記発光素子の光取り出し部としては、特に制限はなく、例えば、p型半導体層、n型半導体層、封止層、有機EL層などが挙げられる。前記発光素子の製造工程及び光取り出し部については後述する。
【0018】
−有機溶媒−
前記有機溶媒としては、ポリマー溶液上に水滴粒子を形成させポリマー溶液塗布膜中に水滴の一部を入り込ませるために非水溶性溶媒であることが好ましい。また、前記有機溶媒としては、ポリマー溶液上に形成された水滴を避けて先に蒸発させる必要があることから、水の沸点より低い沸点であることが好ましい。
【0019】
前記非水溶性溶媒としては、例えば、ハロゲン系有機溶剤、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類、非水溶性ケトン類、エーテル類、二硫化炭素などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記はハロゲン系有機溶剤としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。
前記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記非水溶性ケトン類としては、例えば、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0020】
−疎水性ポリマー−
前記疎水性ポリマーとしては、前記有機溶媒に溶解すれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー、ポリエステル、ポリラクトン、ポリアミド又はポリイミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ビニル重合ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸などが挙げられる。
前記ポリラクトンとしては、例えば、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。
前記ポリアミドとしては、例えば、ナイロンやポリアミド酸などが挙げられる。
【0023】
前記疎水性ポリマーを有機溶媒で溶解したポリマー膜を用いて複数の凹部を形成させる場合、前記ポリマー溶液における前記疎水性ポリマーの濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.02質量%〜10質量%がより好ましく、0.05質量%〜5質量%が特に好ましい。
前記ポリマー濃度が、0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、細孔のサイズや配列が乱れてしまったりするなどの障害が生じることがあり、30質量%を超えると、凹部が得られにくくなることがある。
【0024】
−両親媒性化合物−
前記両親媒性化合物は、親水性であるとともに親油性でもある物質であり、具体的には、親水基と疎水基をもつ化合物である。前記両親媒性化合物としては、市販される多くの界面活性剤のようなモノマーの他に、二量体や三量体等のオリゴマー、ポリマーを用いることができ、前記疎水性ポリマーに対する分散状態を制御するにはポリマーを用いることが好ましい。
【0025】
前記ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性化合物、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0026】
前記ポリマーの中でも、疎水性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶媒への溶解性に影響しない範囲で疎水性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成しているブロックポリマーであることが好ましい。
【0027】
前記疎水性側鎖としては、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。また、前記疎水性側鎖としては、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。
前記親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
【0028】
前記疎水性側鎖と前記親水性側鎖との比率としては、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶媒の疎水性の強さなどに応じて異なり一概には規定できないが、ユニット比(親水基:疎水基)が、0.1:9.9〜4.5:5.5であることが好ましい。前記ユニット比(親水基:疎水基)の親水基比が0.1未満であると、凹部のサイズが不均一となることがあり、4.5を超えると、疎水性有機溶媒に溶解せず析出するという問題がある。
【0029】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物の数平均分子量(Mn)としては、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。
前記数平均分子量が、1,000未満であると、材料が脆くなり取り扱い性が損なわれることがあり、10,000,000を超えると、疎水性溶媒に溶解しにくいという問題が生じることがある。
【0030】
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物との組成比率(質量比率)としては、99:1〜50:50が好ましく、90:10〜80:20がより好ましい。
前記比率が、50:50よりも前記疎水性ポリマーの比率が小さくなると、膜の安定性、特に力学的な安定性が十分に得られなくなることがあり、99:1よりも前記疎水性ポリマーの比率が大きくなると、均一に分散した凹部が得られなくなることがある。
【0031】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物としては、得られる膜の機械的強度の点で分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーであることが好ましい。また、前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性化合物の少なくともいずれかとともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物により複数の凹部を形成させたポリマー溶液塗布膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことも好ましい。
【0032】
前記多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、これらの変性物などが使用できる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物とを有機溶媒で溶解したポリマー膜を用いて複数の凹部を形成させる場合、前記ポリマー溶液における前記疎水性ポリマーと前記両親媒性化合物の両者を合わせたポリマー濃度としては、0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%がより好ましい。
前記ポリマー濃度が、0.01質量%未満であると、得られる膜の力学強度が不足したり、細孔のサイズや配列が乱れてしまったりするなどの障害が生じることがあり、10質量%を超えると、凹部が得られにくくなることがある。
【0034】
−ポリマー溶液の塗布−
前記ポリマー溶液を光取り出し部15上に塗布する方法としては、特に限定はなく、例えば、スピンコート法、ディップ法、インクジェット塗布法、スライド法、エクストリュージョン法、バー法、グラビア法などを用いることができる。
【0035】
前記ポリマー溶液を塗布する時間(発光素子の光取り出し部上への前記ポリマー溶液の塗布の開始から終了までの時間)としては、特に限定はなく、適宜変更することができ、例えば、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。
前記塗布する時間が、60秒を超えると、塗布中に乾燥が促進するため厚みムラが生じてしまうことがある。
【0036】
前記ポリマー溶液を光取り出し部15上に塗布することで形成された前記ポリマー溶液塗布膜17のWet厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5μm〜2,000μmが好ましく、10μm〜1,000μmがより好ましく、20μm〜500μmが特に好ましい。
前記Wet厚みが、5μm未満であると、均一に塗布膜を形成することが困難となることがあり、2,000μmを超えると、生産性が低くなることがある。
前記Wet厚みは、例えばレーザー変位計(キーエンス社製、LTシリーズ又はSIシリーズ)等により測定することができる。
また、凹部形成膜のDry厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm〜100μmであることが好ましい。
【0037】
<水滴形成工程>
前記水滴形成工程(結露工程)は、図1Bに示すように、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴形成雰囲気を供給して、該ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成する工程である。
【0038】
−水滴形成雰囲気−
前記水滴形成雰囲気の相対湿度としては、50%〜99%が好ましく、55%〜95%がより好ましく、60%〜90%が特に好ましい。
前記相対湿度が、50%未満であると、水滴が形成されないことがあり、99%を超えると、水滴の形成が過多になり構造が不均一になることがある。前記相対湿度は、例えば、KANOMAX社製クリモマスター風速計(Model6543−01)を使用して10回測定した平均値である。
【0039】
前記水滴形成雰囲気の温度としては、10℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃がより好ましい。
前記温度が、10℃未満であると、結露しすぎてしまい孔のサイズが不均一になることがあり、50℃を超えると、結露による水滴形成が困難になることがある。
ここで、前記温度は、例えばクリモマスター風速計(KANOMAX社製、Model6543−01)を使用して測定することができる。
【0040】
前記水滴形成雰囲気中での水滴52の露点TD1(℃)としては、ポリマー溶液塗布膜17の表面温度TL(℃)に対して0℃≦(TD1−TL)℃が好ましく、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃がより好ましく、1℃〜60℃がさらに好ましく、3℃〜20℃が特に好ましい。
前記(TD1−TL)℃が、0℃未満であると、水滴が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、水滴と乾燥とが急峻となり、凹部の孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。なお、前記水滴の露点Tdは、クリモマスター風速計(KANOMAX社製、Model6543−01)を使用して測定した平均値である。
【0041】
前記ポリマー溶液塗布膜17の表面温度TL(℃)としては、0℃〜40℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましく、0℃〜20℃が特に好ましい。
前記表面温度TLは、発光素子を温度調整が可能な支持体に載せることで積極的に制御可能である。前記支持体の温度調整方法としては、例えば、恒温槽を用いて一定温度に制御された液体の熱媒を循環させる方法や、電子冷却ユニット(ペルチェ素子)を用いる方法などがある。
前記表面温度TLが、30℃を超えると、結露による水滴形成が困難になることがある。なお、ポリマー溶液塗布膜の表面温度TLは、デジタル放射温度センサ(キーエンス社製、FT−H30)を使用して測定した平均値である。
【0042】
前記水滴形成雰囲気下に発光素子を置く時間としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、1秒〜3,000秒が好ましく、10秒〜2,000秒がより好ましく、20秒〜1,500秒が特に好ましい。
前記時間が、1秒未満であると、結露による水滴が形成されず凹部が形成されないことがあり、3,000秒を超えると、凹部のサイズが不均一となったり、生産性が劣ることがある。
【0043】
前記発光素子の載置方法としては、特に限定されないが、ポリマー溶液塗布膜17上に水滴52を形成させる必要があるので、ポリマー溶液塗布膜17が上面となるように載置することが好ましい。
【0044】
前記水滴形成雰囲気下とする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結露用に調整された風の送風、などの方法が挙げられる。これらの中でも、結露の水滴形成による凹部の形成と溶媒の乾燥による凹形状の固定化両立の観点で結露用に調整された風をポリマー溶液塗布膜上に送風することが特に好ましい。
【0045】
−風−
前記風41の相対湿度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50%〜99%が好ましく、55%〜95%がより好ましく、60%〜90%が特に好ましい。
前記相対湿度が、50%未満であると、水滴が形成されないことがあり、99%を超えると、水滴の形成が過多になり構造が不均一になることがある。
【0046】
前記風41の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10℃〜100℃が好ましく、15℃〜60℃がより好ましく、20℃〜40℃が特に好ましい。
前記風の温度が、10℃未満であると、結露による水滴の形成が不均一となってしまうことがあり、100℃を超えると、ポリマー溶液塗布膜内に水滴が生じる前に、水蒸気として揮発してしまうことがある。
【0047】
前記風41の送風方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、発光素子の光取り出し部の表面に沿っての送風(平行流(並流))、垂直風、前記平行流と前記垂直流との中間の角度から送風される風などが挙げられる。これらの中でも、均一性の観点から平行流が好ましい。
【0048】
前記風41の送風速度(発光素子を移動させながら結露させるときは相対速度)としては、0.05m/s〜20m/sが好ましく、0.1m/s〜15m/sがより好ましく、2m/s〜10m/sが特に好ましい。
前記送風速度が、0.05m/s未満であると、水滴52が、ポリマー溶液塗布膜17中で充分に成長しないことがあり、20m/sを超えると、ポリマー溶液塗布膜17表面に乱れが生じたり、水滴52が十分に形成されないことがある。
【0049】
図1Bに示すように、風41中の水分(モデル的に図示している)51は、ポリマー溶液塗布膜17上で結露して水滴(液滴)52となる。そして、図1Bに示すように水滴52を核として水分51が結露して水滴52を成長させる。
【0050】
<水滴成長工程>
前記水滴成長工程は、前記水滴形成工程にてポリマー溶液塗布膜17上で形成した水滴52を好ましい大きさに成長させる工程であり、必要に応じて省略することができる。
前記水滴52を成長させる方法としては、ポリマー溶液塗布膜17の表面温度TLと水滴52の露点TD1とのいずれか一方を制御することが好ましく、水滴52の露点TD1(℃)とポリマー溶液塗布膜17の表面温度TL(℃)との差(ΔT=TD1−TL)が0℃〜20℃(0℃<ΔT<20℃)が好ましい。
前記ΔTが、0℃未満であると、水滴52の成長が不十分となり、密な状態に形成されないため、凹部の形状や大きさ及び配列が不均一となることがあり、20℃を超えると、水滴52が局所的に多層化、つまり三次元的に形成され、凹部の形状や大きさ及び配列が不均一となることがある。
【0051】
前記水滴52の露点TD1としては、送風口から送風される風41の条件を制御することで変化させることができる。前記ΔTを0℃<ΔT<20℃とすることにより、水滴52をゆっくり成長させるとともに水滴52の配列を促し、均一な水滴52を密に形成することができる。
【0052】
<凹部形成工程>
前記凹部形成工程は、図1(C)に示すように、有機溶媒321および水滴52を蒸発させて、ポリマー溶液塗布膜17に凹部18を形成し、凹部形成膜171を形成させる工程である。前記有機溶媒321及び前記水滴52を蒸発させる方法としては、乾燥雰囲気下に発光素子を置く方法が挙げられる。前記乾燥雰囲気下にする方法としては、乾燥風42を送風する方法、その他減圧乾燥法などが挙げられる。
【0053】
−乾燥雰囲気下−
前記水蒸気53の露点TD2(℃)とポリマー溶液塗布膜17の膜面温度TL(℃)との関係としては、(TL−TD2)℃≧1℃が好ましい。これにより、ポリマー溶液塗布膜17の水滴52の成長を停止させて、水滴52を構成する水分を水蒸気53として揮発させることができる。
【0054】
前記凹部形成工程においては、水滴が形成したポリマー溶液塗布膜中の有機溶媒をまず蒸発させる(溶媒蒸発工程)、塗布溶液中のポリマーが析出して凹部形成膜の流動性が低下した後に、水滴を蒸発させる(水滴蒸発工程)。凹部形成膜が固定化される前に、水滴が先に蒸発してなくなってしまうと、凹部は形成されない。
【0055】
−溶媒蒸発工程−
光取り出し部表面の温度を変えることにより、水滴形成工程から溶媒蒸発工程へ移行させる。
前記溶媒蒸発工程の開始では、送風ダクトからの空気の露点が水滴形成工程における露点よりも低くなるように制御する。
前記溶媒蒸発工程では、水滴が完全には蒸発しないように、より好ましくはできるだけ水滴の蒸発を抑えて溶媒だけを蒸発させるようにするために、光取り出し部の温度を調節し、加えて送風ダクトからの空気の条件を調節する。
溶媒がポリマー溶液塗布膜から蒸発している間に、個々の水滴は大きく成長するとともにポリマー溶液塗布膜の中に入り込む。
【0056】
溶媒蒸発工程では、0℃<TD−TS≦10℃の条件を満たすように光取り出し部の温度を制御することが好ましい。光取り出し部の温度制御に加えて、送風ダクトからの空気の条件、即ち温度、湿度、風速を制御することがより好ましい。TD−TSが0℃以下の場合には、水滴の成長が不十分で密な状態に形成せず、水滴が消滅することで、凹部が形成されなかったり、凹部の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。また、TD−TSが10℃よりも大きいと、水滴が局所的に厚み方向にも重なる等、凹部の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。
【0057】
−水滴蒸発工程−
次に、光取り出し部の表面の温度を変えることにより水滴蒸発工程を開始する。
水滴蒸発工程では、TS>TDの条件となるように光取り出し部の温度を制御することがより好ましい。光取り出し部の温度制御に加えて、送風ダクトからの送風を実施することがより好ましい。この水滴蒸発工程は、水滴の蒸発を主たる目的としているが、溶媒蒸発工程で蒸発しきれなかった溶媒も蒸発させてもよい。
【0058】
送風ダクトから出される空気の風速としては、0.02m/秒以上20m/秒以下が好ましく、0.05m/秒以上10m/秒以下がより好ましく、0.1m/秒以上5m/秒以下が特に好ましい。
前記風速が、0.02m/秒未満であると、水滴が細密に配列して形成されない場合があり、20m/秒を超えると、ポリマー溶液塗布膜の露出面が乱れたり、水滴形成工程における結露が充分に進行しなかったりすることがある。
【0059】
前記乾燥風の送風方向としては、前記光取り出し部の表面に沿って送風(平行流(並流))、垂直風、前記平行流と前記垂直流との中間の角度から送風される風などが挙げられる。これらの中でも、均一性の観点から平行流が好ましい。
【0060】
前記乾燥風の送風速度としては、0.05m/s〜20m/sが好ましく、0.1m/s〜15m/sがより好ましく、0.5m/s〜10m/sが特に好ましい。
前記送風速度が、0.05m/s未満であると、水滴からの水分の蒸発が充分に進行しないことがあり、生産性にも劣ることがあり、20m/sを超えると、水滴から水分の蒸発が急激に生じて、形成される凹部の形態が乱れることがある。
【0061】
前記乾燥風がポリマー溶液塗布膜に送風されると、有機溶媒がポリマー溶液塗布膜より揮発する。なお、この際にも水滴からも水分が揮発するが、有機溶媒は水滴よりも揮発性が高いので、有機溶媒の揮発速度の方が速い。そのため、水滴は、有機溶媒の揮発に伴い表面張力により略均一の形態となる。更に、乾燥が進行するとポリマー溶液塗布膜の水滴から水分が水蒸気として揮発する。ポリマー溶液塗布膜から水滴が蒸発すると、水滴を形成していた箇所が凹部の各孔となる。前記有機溶媒及び水滴がポリマー溶液塗布膜から完全に蒸発することで、前記光取り出し部上に凹部形成膜(ポリマー塗布膜)が形成される。
【0062】
前記乾燥風を送風する方法以外としては、減圧乾燥法により乾燥することも可能である。前記減圧乾燥法を行うことで、有機溶媒と水滴の水分との蒸発速度を調整することが可能となる。これを調整することで、ポリマー溶液塗布膜中に水滴を形成し、有機溶媒を蒸発させつつ水滴を蒸発させ、前記水滴が設けられている位置における凹部の各孔の大きさ、形状などを変化させることができる。
【0063】
また、ポリマー溶液塗布膜の表面から3mm〜20mm程度離れた位置に、ポリマー溶液塗布膜の表面より冷却され表面に溝を有する凝縮器を設けて、凝縮器の表面で水蒸気(揮発有機溶媒も含む)を凝縮させて乾燥させる方法も適用することができる。前記いずれかの乾燥方法を適用することで、ポリマー溶液塗布膜の膜面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
【0064】
また、送風機、乾燥機を複数用いたりすることにより、異なる露点条件を設定したり、異なる乾燥温度条件を設定したりすることができる。これら条件を選択することで、各凹部の寸法制御性の向上や均一性の向上を図ることができる。
【0065】
−凹部−
前記凹部18の隣接する凹部18の中心間の平均距離P(以下、ピッチ間隔ともいう。)(単位nm)としては、発光素子から出射される光の波長の1/4以上(nm)が好ましく、100nm〜10,000nmがより好ましく、150nm〜2,000nmが特に好ましい。
前記ピッチ間隔Pが、光の波長の1/4未満であると、回折が起こらず発光素子からの光取り出し効率は向上しないことがあり、2,000nmを超えると、回折による光取り出し効率向上効果が低減することがある。なお、ピッチ間隔Pは、図4に示したように、凹部18が形成されているポリマー溶液塗布膜17の表面を上から見たとき、各凹部18の外接円を計測し、隣接する外接円の中心間の平均距離を10点測定した平均値をいう。外接円は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。
【0066】
前記凹部18の平均深さDとしては、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましく、0.1μm〜30μmが特に好ましい。
前記平均深さDが、0.01μm未満であると、光取り出し効率向上の効果が発現しなくなることがあり、100μmを超えると、製造に時間がかかり過ぎて生産性が低くなったり、凹部が均一に形成されないことがある。前記凹部における凹部の平均深さDは、形状測定レーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−8700)を用いて凹部の深さを10点測定した平均値である。
【0067】
前記水滴形成工程及び前記凹部形成工程としては、風41を送風する送風機を有する結露ゾーン(水滴形成ゾーン)及び乾燥風42を送風する送風機を有する乾燥ゾーンに区画されている製造装置で行うことができる。具体的には、光取り出し部上にポリマー溶液塗布膜が形成された発光素子を流延ベルトに載置し、発光素子を結露ゾーンに搬送して前記水滴形成工程が行われる。前記水滴形成工程終了後、乾燥ゾーンに搬送し、前記凹部形成工程が行われる。
【0068】
<エッチング工程>
前記エッチング工程は、前記凹部形成膜171をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行う工程である。
【0069】
前記エッチングとしては、ドライエッチング及びウエットエッチングのいずれかであることが好ましい。
【0070】
−ドライエッチング−
前記ドライエッチングとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチングなどがある。エッチングガスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ハロゲンを含む化合物が用いられ、例えばSF6、CF4、CHF3、XeF2などが挙げられる。
ドライエッチングにおいては、用いられるガス、処理時間などによって対象物の深さや形状を変化させることができる。
【0071】
−ウエットエッチング−
前記ウエットエッチングとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば光取り出し部材をエッチングするにはフッ酸と硝酸とを混合した液を作製し、この溶液中に光取り出し部材を浸漬する方法によって処理することができる。また、浸漬時間によってエッチングにより処理される深さなどを制御可能である。
【0072】
前記凹部形成膜171をマスクとしてエッチングを行うことにより、エッチングの効率が向上し、エッチングの照射角度をふることで、異方性を出すことが可能となる。また、凹部形成膜171は、通常のレジストパターンとは形状が異なるが、露出部分の面積が同じでも、レジストパターンの体積が少ないので、エッチング後のパターンの除去が容易である。
【0073】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、光取り出し部の形成工程、洗浄工程、研磨工程などを適宜行うことができ、これらの工程は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【0074】
<<光取り出し部の形成工程>>
前記光取り出し部の形成工程とは、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、前記凹部形成工程、及び前記エッチング工程の前後に前記発光素子の光取り出し部を形成する工程である。以下、説明の便宜上、発光素子がLEDであって、光取り出し部がp型半導体層である場合及び発光素子が有機電界発光素子であって、光取り出し部が封止層である場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
<<<LEDの作製>>>
前記LEDとしては、図2に示すように、基板11上にn型電極12(第1の電極)とp型電極16(第2の電極)とを有し、さらに、n型半導体層13、発光層14、p型半導体層15が順次積層された構造を有する。前記LED1は、光取り出し効率を向上させるために、凹凸構造がp型半導体層15に形成されている。凹凸構造は、前記ポリマー溶液塗布膜形成工程、前記水滴形成工程、前記凹部形成工程、及び前記エッチング工程を行うことで形成される。前記LED1は、必要に応じて、各層の間に例えば、バッファ層、透明層、電子障壁層などを積層させてもよい。
【0076】
−n型半導体層の形成−
前記n型半導体層13の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記したn型半導体層13を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0077】
前記LED1の基板11としては、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、基板11の材料として公知のものの中から、適宜選択することができ、例えば、サファイア、シリコンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
前記基板11の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。前記基板11の厚みが、50μm未満であると、取り扱い性が劣り、変形するおそれがある。
【0079】
前記n型半導体層13の機能としては、後述する発光層14の発光波長において透光性を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はない。前記n型半導体層13の材料としては、例えば、GaNなどが挙げられる。
【0080】
−発光層の形成−
前記発光層14は、電界印加時に正孔を受け取り、電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。前記発光層14の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記発光層14を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0081】
前記発光層14としては、電界を印加されて光を発するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。前記発光層14の材料としては、有機発光材料からなるものであっても、無機発光材料からなるものであってもよいが、低コスト、発光効率が可能な点で、無機発光材料が好ましい。
前記無機発光材料としては、所望の色調に応じて選択することが可能であり、例えば、InGaN、GaN、GaP、AlGaAsなどが挙げられる。
【0082】
−p型半導体層の形成−
前記p型半導体層15は、前記発光層14の光取り出し側に有し、光取り出し部材として機能する層である。前記p型半導体層15の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記p型半導体層15を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0083】
前記p型半導体層15としては、発光層14の光取り出し側に有し、光取り出し部材としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はない。前記p型半導体層15を構成する材料としては、例えば、GaN、GaP、AlGaAsなどが挙げられる。
【0084】
−−凹部形成膜の形成−−
前記p型半導体層15上にポリマー溶液17を塗布し(ポリマー溶液塗布膜形成工程)、前記水滴形成工程が行われた後、ポリマー溶液塗布膜17に凹部18を形成し(凹部形成工程)、完全に有機溶媒及び水滴をポリマー溶液塗布膜17から除去した膜(凹部形成膜)をマスクとし、エッチングを行うことで凹凸構造が形成される。なお、前記p型半導体層15上にPETフィルムを積層させ、PETフィルム上にポリマー溶液を塗布するようにしてもよい。
【0085】
−n型電極の形成−
前記n型電極12は、透光性を有し、p型電極16へとLED1の厚み方向に電流を注入する。前記n型電極の形成方法としては、具体的には、p型半導体層15及び発光層14を部分的にエッチングしてn型半導体層13を露出させた後、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から適宜選択した方法に従って形成する。
【0086】
−p型電極の形成−
前記p型電極16は、透光性を有し、前記n型電極12とともにLED1の厚み方向に電流を流す。前記p型電極16の形成方法としては、前記凹部形成膜171上に公知の方法に従って形成させることができ、例えば、蒸着法、CVD、プラズマCVD法などの化学的方式などの中から、p型電極16を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0087】
<<<有機電界発光素子の作製>>>
前記有機電界発光素子2は、図3に示すように、基板21上に有機EL層22、封止層23が順次積層された構造を有する。
【0088】
−有機EL層の形成−
前記有機EL層22は、正極(第1の電極)と負極(第2の電極)とを有し、前記陽極と負極との間に正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を少なくとも含む。前記有機EL層の形成としては、基板上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び負極の順で形成する。
【0089】
前記有機電界発光素子2の基板21としては、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、情報記録媒体である場合には、円板状である。また、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、前記材質としては、基板材料として公知のものの中から、適宜選択することができ、例えば、ニッケル、アルミニウム、ガラス、シリコン、石英、透明樹脂などが挙げられる。これらの中でも、透明性の点から、石英、ガラス、透明樹脂が好ましく、石英が特に好ましい。
【0090】
前記基板21の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
前記基板2の厚みが、50μm未満であると、取り扱い性が劣り、変形するおそれがある。
【0091】
−−陽極の形成−−
前記陽極の機能としては、通常、発光層に正孔を供給する電極であればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機EL層22の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0092】
前記陽極の形成方法としては、フォトリソグラフィなどによる化学的エッチングによって行ってもよく、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよく、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0093】
前記陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、導電性金属酸化物、金属、金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、無機導電性物質、有機導電性材料及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
前記導電性金属酸化物としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などが挙げられる。
前記金属としては、アルミニウム、金、銀、クロム、ニッケルなどが挙げられる。
前記無機導電性物質としては、ヨウ化銅、硫化銅などが挙げられる。
前記有機導電性材料としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどが挙げられる。
この中で好ましいのは、金属であり、特に、生産性、高導電性、反射率等の点からはアルミニウムが好ましい。
【0094】
前記陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μmが好ましく、50nm〜20μmがより好ましい。
【0095】
−−正孔輸送層の形成−−
前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。前記正孔輸送層の形成としては、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法などの中から、正孔輸送層を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0096】
前記正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボンなどが挙げられる。
【0097】
前記正孔輸送層の厚みとしては、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下が好ましく、1nm〜500nmがより好ましく、5nm〜200nmが更に好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
【0098】
−−発光層の形成−−
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔輸送材料から正孔を受け取り、陰極、電子輸送材料から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。前記発光層の形成方法としては、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法などの中から、発光層を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0099】
前記発光層を構成する材料としては、電界を印加されて光を発するものであれば、特に制限はなく、例えば、有機発光材料、無機発光材料が挙げられるが、中でも、発光効率、装置の大型化が可能な点で、有機発光材料が好ましい。
【0100】
前記有機発光材料としては、所望の色調に応じて選択することが可能であり、例えば、青色から青緑色の発光を得るためには、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などが好ましい。
【0101】
また、前述の材料をホスト材料として用い、これにドーパントを添加することによって発光層を形成してもよい。ドーパントとして用いることができる材料としては、たとえばレーザー色素としての使用が知られているペリレン(青色)などを用いることができる。
【0102】
−−電子輸送層の形成−−
前記電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。また、発光層の光取り出し側に有し、光取り出し部材としての機能を有する。前記電子輸送層の形成としては、特に制限はなく、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法などのいずれによっても好適に形成することができる。
【0103】
前記電子輸送層を構成する材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体、金属錯体、有機シラン誘導体などが挙げられる。
前記芳香環テトラカルボン酸無水物としては、ナフタレン、ペリレンなどが挙げられる。
前記金属錯体としては、8−キノリノール誘導体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体が挙げられる。
【0104】
前記電子輸送層の厚みとしては、駆動電圧を下げるという観点から、500nm以下であることが好ましく、1nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜200nmであることが更に好ましく、10nm〜100nmであることが特に好ましい。
【0105】
前記電子輸送層としては、陰極側の面もしくは陰極側とは反対の面に、電子注入層を有していてもよい。前記電子注入層としては、電子輸送層の陰極側の面に有することが好ましい。前記電子注入層の材料、及び形成としては、上述した電子輸送層におけるものと同一のものが好適に挙げられる。
【0106】
前記電子注入層の厚みとしては、500nm以下であることが好ましく、0.1nm〜200nmであることがより好ましく、0.2nm〜100nmであることが更に好ましく、0.5nm〜50nmであるのが特に好ましい。
【0107】
−−陰極の形成−−
前記陰極としては、通常、発光層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、加工対象物の用途、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0108】
前記陰極の形成としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0109】
前記陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウムなどが挙げられる。
前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが挙げられる。
前記アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。
前記希土類金属としては、イッテルビウムなどが挙げられる。
【0110】
これらの中でも、前記陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、膜質、光反射に優れる点で、銀を主体とする材料が好ましい。前記銀を主体とする材料とは、銀単独、銀と0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−銀合金、マグネシウム−銀合金など)をいう。
【0111】
なお、前記陰極を構成する材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0112】
前記陰極の厚みとしては、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、10nm〜5μmが好ましく、15nm〜1μmがより好ましい。
【0113】
前記陰極としては、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、前記透明な陰極は、陰極の材料を1nm〜20nmの厚さに薄く形成し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成させることができる。
【0114】
−封止層の形成−
前記封止層23としては、外部からの水分の透過を防止することを目的としており、必要に応じて省略することができる。前記発光層の光取り出し側に位置する前記封止層23は、光取り出し部材としての機能を有する。前記封止層23の形成としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、蒸着法、MOCVD、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記封止層23を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0115】
前記封止層23としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、各種無機化合物又は有機化合物からなる単層構造又は積層構造であってもよい。
前記無機化合物としては、SiNx、SiON、SiO2、Al2O3、TiO2などが挙げられる。
前記有機化合物としては、シリコン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマーなどが挙げられる。
【0116】
前記封止層23の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、1μm〜5μmが好ましく、1.5μm〜4μmがより好ましい。
【0117】
−−凹部形成膜の形成−−
封止層23上にポリマー溶液を塗布し(ポリマー溶液塗布膜形成工程)、前記水滴形成工程が行われた後、ポリマー溶液塗布膜17に凹部を形成し(凹部形成工程)、完全に有機溶媒及び水滴をポリマー溶液塗布膜から除去した膜(凹部形成膜)をマスクとし、エッチングを行うことで封止層23上に凹凸構造が形成される。なお、封止層23上にPETフィルムを積層させ、PETフィルム上にポリマー溶液を塗布するようにしてもよい。
【0118】
[第2実施形態]
第2実施形態では、図6に一例を示すように、予め形成させた凹部形成膜上に、接着剤を介して光取り出し部を貼り付け、前記凹部形成膜の表面部分を剥離することで突起構造体63を形成する突起構造体形成工程を含む点で第1実施形態と相違する。また、エッチング工程では、前記突起構造体をマスクとしてエッチングを行う点で相違する。
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する。
【0119】
<突起構造体形成工程>
前記突起構造体形成工程は、前記複数の凹部18に接着剤62を介して光取り出し部15を貼り付け(図6A)、該光取り出し部15を剥がして前記複数の凹部18の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離することによって(図6B)、前記光取り出し部15上に複数の突起構造体63を形成する工程である。
前記凹部形成膜としては、基材などの上部に第1実施形態と同様に形成させる。なお、図6A中の矢印は、光取り出し部を押圧する方向を表し、図6B中の矢印は、剥離方向を表す。
【0120】
−基材−
前記基材の材質としては、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、SiO2膜被覆シリコン基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエーテルケトン、ポリフッ化エチレン等のポリマー基板;鉄、タングステン等の金属基板などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコン基板、金属基板が特に好ましい。
【0121】
−接着剤−
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などが挙げられる。
前記接着剤は、前記複数の凹部と前記光取り出し部との間に介在していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光取り出し部表面に塗布する方法、複数の凹部表面に塗布する方法などが挙げられる。
前記塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、スプレーコーター、バーコーター等を用いる塗布方法などが挙げられる。
【0122】
前記複数の凹部に接着剤を介して光取り出し部を貼り付け、該光取り出し部を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離することにより、前記光取り出し部上に突起構造体が形成される。
前記突起構造体は、凹部形成膜における力学的強度の弱いくびれた部分(中心部分)で分割された表面部分の突起構造に起因する。
前記突起構造体における突起の高さとしては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。
前記突起構造体における突起間隔としては、50nm〜10,000nmが好ましく、100nm〜5,000nmがより好ましい。ここで、前記突起間隔とは、隣接する突起構造体間の最短距離を表す。
前記突起構造体における突起の比(高さ/突起間隔)が、0.01以上100以下であることが好ましい。
前記突起構造体における突起形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、略円錐乃至略角錐形状であることが好ましい。
ここで、前記突起構造体の突起高さ、突起間隔、突起形状などは、例えば、電解放出走査型電子顕微鏡などにより測定することができる。
【実施例】
【0123】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0124】
(実施例1)
<有機電界発光素子の作製>
−発光部の形成−
TFT(アクティブマトリックス)基板上に形成された反射電極層(Al)上に、下記の条件で、正孔注入層、正孔輸送層、青色発光層、緑色発光層、赤色発光層、電子輸送層、電子注入層、及び上部電極層を、この順で形成した。
【0125】
−緑色発光層−
反射電極層(陽極)上に、ホール注入層として2−TNATA〔4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕とMnO3を7:3の割合で、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0126】
次に、ホール注入層上に、第1のホール輸送層として2−TNATAにF4−TCNQ(2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)を1.0%ドープして141nmの厚みとなるように、真空蒸着により形成した。
【0127】
次に、第1のホール輸送層上に、第2のホール輸送層としてα−NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、厚みが10nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0128】
次に、第2のホール輸送層上に、第3のホール輸送層として下記構造式で表されるホール輸送材料Aを、厚みが3nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0129】
【化1】
【0130】
次に、第3のホール輸送層上に、発光層を、ホスト材料としてCBP(4,4’−ジカルバゾール−ビフェニル)と、発光材料として下記構造式で表される発光材料Gを、85:15の割合で、厚みが20nmとなるように、真空共蒸着により形成した。
【0131】
【化2】
【0132】
次に、発光層上に、第1の電子輸送層としてBAlq(アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)−4−フェニルフェノレート)を、厚みが39nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0133】
次に、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層としてBCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリン)を、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0134】
次に、第2の電子輸送層上に、第1の電子注入層としてLiFを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0135】
次に、第1の電子注入層の上に、第2電子注入層としてAlを、厚みが0.5nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0136】
次に、第2電子注入層上に、陰極として銀(Ag)を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0137】
−赤色発光層−
反射電極層(陽極)上に、ホール注入層として2−TNATA〔4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕とMnO3を7:3の割合で、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0138】
次に、ホール注入層上に、第1のホール輸送層として2−TNATAにF4−TCNQを1.0%ドープして196nmの厚みとなるように、真空蒸着により形成した。
【0139】
次に、第1のホール輸送層上に、第2のホール輸送層としてα−NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、厚みが10nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0140】
次に、第2のホール輸送層上に、発光層を、ホスト材料としてBAlqと、発光材料として下記構造式で表される発光材料Rを、95:5の割合で、厚みが30nmとなるように、真空共蒸着により形成した。
【0141】
【化3】
【0142】
次に、発光層上に、第1の電子輸送層としてBAlqを、厚みが48nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0143】
次に、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層としてBCPを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0144】
次に、第2の電子輸送層上に、第1の電子注入層としてLiFを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0145】
次に、第1の電子注入層の上に、第2電子注入層としてAlを、厚みが0.5nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0146】
次に、第2電子注入層上に、陰極として銀(Ag)を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0147】
−青色発光層−
反射電極層(陽極)上に、ホール注入層として2−TNATA〔4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕とMnO3を7:3の割合で、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0148】
次に、ホール注入層上に、第1のホール輸送層として2−TNATAにF4−TCNQを1.0%ドープして110nmの厚みとなるように、真空蒸着により形成した。
【0149】
次に、第1のホール輸送層上に、第2のホール輸送層としてα−NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、厚みが10nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0150】
次に、第2のホール輸送層上に、第3のホール輸送層として下記構造式で表されるホール輸送材料Aを、厚みが3nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0151】
次に、第3のホール輸送層上に、発光層を、ホスト材料としてmCP(1,3−ビス(カルバゾーリル)ベンゼン)と、発光材料として下記構造式で表される発光材料Bを、85:15の割合で、厚みが30nmとなるように、真空共蒸着により形成した。
【0152】
【化4】
【0153】
次に、発光層上に、第1の電子輸送層としてBAlqを、厚みが29nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0154】
次に、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層としてBCPを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0155】
次に、第2の電子輸送層上に、第1の電子注入層としてLiFを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0156】
次に、第1の電子注入層の上に、第2電子注入層としてAlを、厚みが0.5nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0157】
次に、第2電子注入層上に、陰極として銀(Ag)を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0158】
このようにして反射電極上に形成された各色の発光層を有する発光部の発光面の発光面積は、100×100μmであった。
【0159】
このようにして形成した上部電極上に、封止層として、SiON層を低温CVD法で3μm形成した。なお、SiON層は、図3に示すように、有機EL層を覆うように形成し、形成した3μmの厚みは、発光部の発光面からSiON層の表面までの厚みをいう。光取り出し部は、有機EL層上に位置する封止層である。
【0160】
−凹部形成膜の形成−
凹部形成膜の作製は、文献(T.Nishikawa, R.Ookura, J.Nishida, K.Arai, J.Hayashi, N.Kurono, T.Sawadaishi, M.Hara, M.Shimomura, Langmuir,2002,18(15),5734.)に従った。
鋳型となる凹部形成膜の作製には、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンH−3000)と、下記構造式で表されるCap化合物(ドデシルアクリルアミド−ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)とのを質量比で10:1となるように混合したクロロホルム溶液を、封止層上に2mL滴下し、温度25℃、露点20℃の空気を風速0.5m/sで吹き付けた。
【化5】
【0161】
溶液は、次第に白濁し、干渉色が観察され、完全に溶媒、水滴が蒸発した後に走査型電子顕微鏡(SEM)で構造を観察すると、図5に示すように凹部形成膜が形成されているのが観察された。この凹部形成膜は、開口径が600nmで孔と孔のピッチは1μm、凹部の深さは400nmであり、これをそのままエッチングのマスクとして用いた。
【0162】
−エッチング工程−
エッチングには誘導結合プラズマエッチング装置(ICP;dry etching equipment、SPM−200、住友精密工業株式会社製)を用いて、エッチングガスである六フッ化硫黄(SF6)と保護ガスであるパーフルオロシクロブタン(C4F8)を用いて行った。このとき、エッチング工程としてSF6とC4F8をそれぞれ50sccmと90sccmで5.5秒間流してエッチングを行った。また、パッシベーション工程としてC4F8を140sccmで5.0秒間流す工程を行った。上記2工程を交互に繰り返し、合計で10分間エッチングした。エッチング後の封止層をアセトンの50質量%水溶液に浸漬させ、30分間超音波洗浄処理することでマスク(凹部形成膜)を除去することで有機電界発光素子1を作製した。マスクを除去後の封止層を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、マスクに形成されていた周期的な空孔と対応する微細な凹凸構造が観察された。この微細な凹凸構造は、直径が600nmで間隔が1μm、高さが約300nmであった。
【0163】
(比較例1)
<有機電界発光素子の作製>
実施例1において、封止層上に凹凸構造を形成させなかった以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子2を作製した。
【0164】
(実施例2)
<LEDの作製>
LEDの発光素子となる窒化ガリウム系化合物半導体層の積層は、以下に示すように、当該技術分野においてよく知られた通常の条件で行なった。
サファイア基板上に、MOCVD法により厚みが30nmとなるようにIn0.1Ga0.9Nからなるn型半導体層を形成した。
n型半導体層上に、MOCVD法により厚みが5nmとなるようにIn0.2Ga0.8Nからなる発光層を形成した。
発光層上に、MOCVD法により厚みが159nmとなるようにGaNからなるp型半導体層を形成した。
n型半導体層上にNi、Al、Ti、Auの4層よりなるn型電極を形成した。
【0165】
−凹部形成膜の形成−
凹部形成膜の作製は、文献(T.Nishikawa, R.Ookura, J.Nishida, K.Arai, J.Hayashi, N.Kurono, T.Sawadaishi, M.Hara, M.Shimomura, Langmuir,2002,18(15),5734.)に従った。
鋳型となる凹部形成膜の作製には、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンH−3000)と、下記構造式で表されるCap化合物(ドデシルアクリルアミド−ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)とのを質量比で10:1となるように混合したクロロホルム溶液を、封止層上に2mL滴下し、温度25℃、露点20℃の空気を風速0.5m/sで吹き付けた。
【化6】
【0166】
溶液は、次第に白濁し、干渉色が観察され、完全に溶媒、水滴が蒸発した後に走査型電子顕微鏡(SEM)で構造を観察すると、図5に示すように凹部形成膜が形成されているのが観察された。この凹部形成膜は、開口径が600nmで孔と孔のピッチは1μm、凹部の深さは400nmであり、これをそのままエッチングのマスクとして用いた。
【0167】
−エッチング工程−
作製した凹部形成膜をマスクとして塩素ガスを用いてGaNのドライエッチングを行った。エッチング後のGaNをアセトンの50質量%水溶液に浸漬させ、30分間超音波洗浄処理することで凹部形成膜を除去した。凹部形成膜を除去後のp型半導体層を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、マスクに形成されていた周期的な空孔と対応する微細な凹凸構造が観察された。この微細な凹凸構造は、直径が600nmで間隔が1μm、高さが約300nmであった。
【0168】
その後、p型半導体層表面を露出するまでドライエッチングを行い、p型電極としてCuを形成することでLED1を作製した。
【0169】
(実施例3)
<LEDの作製>
実施例2において、以下のように突起構造体を形成し、p型半導体層をエッチングした以外は、実施例2と同様にしてLED2を作製した。
−突起構造体の形成−
基材であるガラス基板上に実施例2と同様の方法により凹部形成膜を形成した後、作製した凹部形成膜をUVオゾン洗浄装置で5分間処理し、ポリビニルアルコール(PVA)の1質量%水溶液を滴下し、1,000rpmで120秒〜150秒間スピンコートした。スピンコートしたサンプルはUVオゾン洗浄装置で1時間表面洗浄したp型半導体層上に貼り付けて剥がしとり、p型半導体層上に突起構造体が残るようにした。次いで、脱イオン水で洗浄し、ドライヤーで乾燥させ、p型半導体層上の余分なPVAを除去することで突起構造体を形成した。
−エッチング工程−
形成させた突起構造体をマスクとして塩素ガスを用いてGaNのドライエッチングを行った。エッチング後のGaNをアセトンの50質量%水溶液に浸漬させ、30分間超音波洗浄処理することで突起構造体を除去した。突起構造体を除去後のp型半導体層を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、マスクに形成されていた周期的な空孔と対応する微細な凹凸構造が観察された。この微細な凹凸構造は、直径が600nmで間隔が1μm、高さが約600nmであった。
【0170】
(比較例2)
<LEDの作製>
実施例2において、p型半導体層上に凹凸構造を形成させなかった以外は、実施例2と同様にしてLED3を作製した。
【0171】
−光取り出し効率−
有機電界発光素子1〜有機電界発光素子2の緑色発光素子に一定電流が加わるように駆動させ、発光させた。その発光スペクトル(光量)を、トプコン社製輝度計SR−3を用いて測定し、発光スペクトル(光量)、及び測定時の電流から発光効率(発光の配光をランバーシアンと仮定)を算出した。有機電界発光素子2の光取り出し効率を1としたときの有機電界発光素子1の光取り出し効率を相対的に評価した。LED1〜LED3についても同様に測定し、LED3の光取り出し効率を1としたときのLED1〜3の光取り出し効率を相対的に評価した。結果を表1に示す。
【0172】
【表1】
【0173】
表1からわかるように、実施例1は比較例1と比べて、実施例2及び3は比較例2と比べて、光取り出し効率が向上していた。また、実施例2と実施例3との比較から、マスクとして突起構造体を用いた実施例3では、マスクとして凹部形成膜を用いた実施例2と比べて、同じエッチング条件で得られる凹凸構造の高さが高くなっており、光取り出し効率が向上していた。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明によれば、簡便に凹凸構造を形成させることができ、凹凸構造の凹部の径、深さが均一であり、凹部が均一に分散した発光素子の製造方法、及びこの凹凸構造が光取り出し部に有することにより、光取り出し効率を維持しつつ、均一に発光する発光素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0175】
1 LED
11 基板
12 n型電極
13 n型半導体層
14 発光層
15 p型半導体層(光取り出し部)
16 p型電極
17 ポリマー溶液塗布膜
171 凹部形成膜
18 凹部
2 有機電界発光素子
21 基板
22 有機EL層
23 封止層(光取り出し部)
321 有機溶媒
41 風
42 乾燥風
51 水分
52 水滴
53 水蒸気
61 基材
62 接着剤
63 突起構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子の光取り出し部上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、
前記凹部形成膜をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項2】
基材上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して発光素子の光取り出し部を貼り付け、該発光素子の光取り出し部を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記光取り出し部上に突起構造体を形成する突起構造体形成工程と、
前記突起構造体をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項3】
ポリマー溶液における疎水性ポリマーの濃度が0.01質量%〜30質量%である請求項1から2のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
水滴形成工程が10℃〜50℃の温度条件下で行われる請求項1から3のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
水滴形成雰囲気下で光取り出し部の表面に沿って送風が行われる請求項1から4のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
水滴形成雰囲気中の水分の露点TD1(℃)をポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃に制御する請求項1から5のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
ポリマー溶液が両親媒性化合物を含有する請求項1から6のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
凹部間の平均距離が発光素子から出射される光の波長(nm)の1/4以上である請求項1から7のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
凹部の平均深さが0.01μm〜100μmである請求項1から8のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
水滴形成工程後に水滴を成長させる水滴成長工程を含む請求項1から9のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項11】
水滴形成工程がポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる請求項1から10のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする発光素子。
【請求項1】
発光素子の光取り出し部上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、
前記凹部形成膜をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項2】
基材上に、有機溶媒に疎水性ポリマーを溶解したポリマー溶液を塗布しポリマー溶液塗布膜を形成するポリマー溶液塗布膜形成工程と、
前記発光素子を相対湿度が50%〜99%の水滴形成雰囲気中に置き、前記ポリマー溶液塗布膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程と、
前記有機溶媒及び前記水滴を蒸発させ、前記ポリマー溶液塗布膜に複数の凹部を形成し凹部形成膜を形成させる凹部形成工程と、
前記複数の凹部に接着剤を介して発光素子の光取り出し部を貼り付け、該発光素子の光取り出し部を剥がして前記複数の凹部の少なくとも表面部分を厚み方向に剥離し、前記光取り出し部上に突起構造体を形成する突起構造体形成工程と、
前記突起構造体をマスクとして前記光取り出し部のエッチングを行うエッチング工程と、を含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項3】
ポリマー溶液における疎水性ポリマーの濃度が0.01質量%〜30質量%である請求項1から2のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
水滴形成工程が10℃〜50℃の温度条件下で行われる請求項1から3のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
水滴形成雰囲気下で光取り出し部の表面に沿って送風が行われる請求項1から4のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
水滴形成雰囲気中の水分の露点TD1(℃)をポリマー溶液塗布膜の表面温度TL(℃)に対して、0℃≦(TD1−TL)℃≦80℃に制御する請求項1から5のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
ポリマー溶液が両親媒性化合物を含有する請求項1から6のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
凹部間の平均距離が発光素子から出射される光の波長(nm)の1/4以上である請求項1から7のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
凹部の平均深さが0.01μm〜100μmである請求項1から8のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
水滴形成工程後に水滴を成長させる水滴成長工程を含む請求項1から9のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項11】
水滴形成工程がポリマー溶液塗布膜中の固形分が0.01質量%〜30質量%の状態で行われる請求項1から10のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする発光素子。
【図6A】
【図6B】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6B】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−43902(P2012−43902A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182478(P2010−182478)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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